(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】ワーク保持装置、アライメント装置及び成膜装置
(51)【国際特許分類】
C23C 14/50 20060101AFI20240329BHJP
C23C 14/04 20060101ALI20240329BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20240329BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20240329BHJP
H01L 21/677 20060101ALI20240329BHJP
H01L 21/68 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
C23C14/50 D
C23C14/04 A
H05B33/14 A
H05B33/10
H01L21/68 A
H01L21/68 G
(21)【出願番号】P 2022071817
(22)【出願日】2022-04-25
【審査請求日】2023-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健太郎
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-057675(JP,A)
【文献】特開2022-131449(JP,A)
【文献】特開2011-195907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00-14/58
H10K 50/10
H05B 33/10
H01L 21/677
H01L 21/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを支持する第一の支持ユニットと、
前記第一の支持ユニットを吊り下げて支持する第二の支持ユニットと、
を備えたワーク保持装置であって、
前記第一の支持ユニットは、
第一の方向に延設された第一のベース部材と、
前記第一の方向に延設され、かつ、前記第一の方向と交差する第二の方向に前記第一のベース部材から離間した第二のベース部材と、
前記第一のベース部材に、前記第一の方向に沿って設けられ、前記ワークの周縁部を支持する複数の第一の支持部と、
前記第二のベース部材に、前記第一の方向に沿って設けられ、前記ワークの周縁部を支持する複数の第二の支持部と、
前記第二の方向に延設され、前記第一のベース部材と前記第二のベース部材とを接続する接続部材と、を備え、
前記第二の支持ユニットは、
前記第一のベース部材を吊り下げる第一の支持軸と、
前記第二のベース部材を吊り下げる第二の支持軸と、を備え、
前記接続部材は、
前記複数の第一の支持部のうち、前記第一の方向で端部に位置する第一の支持部よりも、前記第一の支持軸に近い部位で前記第一のベース部材に接続され、
前記複数の第二の支持部のうち、前記第一の方向で端部に位置する第二の支持部よりも、前記第二の支持軸に近い部位で前記第二のベース部材に接続される、
ことを特徴とするワーク保持装置。
【請求項2】
請求項1に記載のワーク保持装置であって、
前記第二の支持ユニットは、
前記第一の支持軸を昇降する第一の昇降手段と、
前記第一の昇降手段とは独立して駆動され、前記第二の支持軸を昇降する第二の昇降手段と、を備える、
ことを特徴とするワーク保持装置。
【請求項3】
請求項2に記載のワーク保持装置であって、
前記第一の支持軸の昇降位置を検知する第一のセンサと、
前記第二の支持軸の昇降位置を検知する第二のセンサと、
前記第一のセンサの検知結果に基づいて前記第一の昇降手段を制御し、前記第二のセンサの検知結果に基づいて前記第二の昇降手段を制御する制御手段と、を備える、
ことを特徴とするワーク保持装置。
【請求項4】
請求項1に記載のワーク保持装置であって、
前記接続部材は、
前記第一のベース部材に対して、前記第一の方向の軸周りに回動可能に接続され、かつ、
前記第二のベース部材に対して、前記第一の方向の軸周りに回動可能に接続される、
ことを特徴とするワーク保持装置。
【請求項5】
請求項1に記載のワーク保持装置であって、
前記第二の支持ユニットは、
前記第一の方向に離間した二つの前記第一の支持軸と、
前記第一の方向に離間した二つの前記第二の支持軸と、を備え、
前記第一のベース部材は、
二つの前記第一の支持軸がそれぞれ接続される二つの第一の本体部と、
前記二つの第一の本体部の間の第一の連結部と、を備え、
前記第二のベース部材は、
二つの前記第二の支持軸がそれぞれ接続される二つの第二の本体部と、
前記二つの第二の本体部の間の第二の連結部と、を備え、
前記第一の連結部は、二つの前記第一の本体部に、それぞれ、前記第二の方向の軸周りに回動可能に連結され、
前記第二の連結部は、二つの前記第二の本体部に、それぞれ、前記第二の方向の軸周りに回動可能に連結される、
ことを特徴とするワーク保持装置。
【請求項6】
基板を保持するキャリアを支持するキャリア支持ユニットと、
マスクを支持するマスク支持手段と、
前記マスクの上方で前記キャリア支持ユニットを吊り下げて支持し、該キャリア支持ユニットを前記マスクに対して昇降する昇降ユニットと、
前記基板と前記マスクとの位置ずれ量を計測する計測手段と、
前記基板と前記マスクとの相対位置を調整する位置調整手段と、
を備えたアライメント装置であって、
前記キャリア支持ユニットは、
第一の水平方向に延設された第一のベース部材と、
前記第一の水平方向に延設され、かつ、前記第一の水平方向と交差する第二の水平方向に前記第一のベース部材から離間した第二のベース部材と、
前記第一のベース部材に、前記第一の水平方向に沿って設けられ、前記キャリアの周縁部を支持する複数の第一の支持部と、
前記第二のベース部材に、前記第一の水平方向に沿って設けられ、前記キャリアの周縁部を支持する複数の第二の支持部と、
前記第一の水平方向に離間して設けられ、前記第二の水平方向に延設され、前記第一のベース部材と前記第二のベース部材とを接続する複数の接続部材と、を備え、
前記昇降ユニットは、
前記第一の水平方向に離間して配置され、前記第一のベース部材を吊り下げる複数の第一の支持軸と、
前記第一の水平方向に離間して配置され、前記第二のベース部材を吊り下げる複数の第二の支持軸と、を備え、
前記複数の第一の支持軸及び前記複数の接続部材は、前記複数の第一の支持部の、前記第一の水平方向で両端部の第一の支持部よりも中央側に位置し、
前記複数の第二の支持軸及び前記複数の接続部材は、前記複数の第二の支持部の、前記第一の水平方向で両端部の第二の支持部よりも中央側に位置する、
ことを特徴とするアライメント装置。
【請求項7】
請求項6に記載のアライメント装置であって、
前記複数の接続部材、前記複数の第一の支持軸及び前記複数の第二の支持軸は、同じ数でだけ設けられ、かつ、それぞれ前記第一の水平方向の位置が同じである、
ことを特徴とするアライメント装置。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載のアライメント装置と、
マスクを介して基板に蒸着物質を放出する蒸着手段と、を備える、
ことを特徴とする成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク保持装置、アライメント装置及び成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークが大型化すると、ワークを支持する支持構造の側の荷重の負担を考慮する必要が生じ得る。例えば、有機ELディスプレイの大面積化や生産効率向上のために、大きなサイズの基板を用いて成膜を行うことが求められている。一般に、有機ELディスプレイの製造時にはガラスや樹脂等の薄板が基板として用いられることが多く、基板のサイズが大きくなると基板を水平に保持した際の撓みが大きくなり、キャリアに基板を保持して搬送する場合がある。特許文献1や特許文献2には基板を支持する構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】韓国公開特許第10-2018-0067031号公報
【文献】特開2005-248249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基板の大型化・高重量化により、これを支持する支持構造が反力を受けて変形が生じ得る。有機ELディスプレイの製造のように、基板とマスクとをアライメントした上で、所定のパターンをマスクを介して基板に成膜する分野においては、支持構造の変形はアライメント精度の低下の要因となる。
【0005】
本発明は、ワークを支持する構造において、より変形の少ない構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、
ワークを支持する第一の支持ユニットと、
前記第一の支持ユニットを吊り下げて支持する第二の支持ユニットと、
を備えたワーク保持装置であって、
前記第一の支持ユニットは、
第一の方向に延設された第一のベース部材と、
前記第一の方向に延設され、かつ、前記第一の方向と交差する第二の方向に前記第一のベース部材から離間した第二のベース部材と、
前記第一のベース部材に、前記第一の方向に沿って設けられ、前記ワークの周縁部を支持する複数の第一の支持部と、
前記第二のベース部材に、前記第一の方向に沿って設けられ、前記ワークの周縁部を支持する複数の第二の支持部と、
前記第二の方向に延設され、前記第一のベース部材と前記第二のベース部材とを接続する接続部材と、を備え、
前記第二の支持ユニットは、
前記第一のベース部材を吊り下げる第一の支持軸と、
前記第二のベース部材を吊り下げる第二の支持軸と、を備え、
前記接続部材は、
前記複数の第一の支持部のうち、前記第一の方向で端部に位置する第一の支持部よりも、前記第一の支持軸に近い部位で前記第一のベース部材に接続され、
前記複数の第二の支持部のうち、前記第一の方向で端部に位置する第二の支持部よりも、前記第二の支持軸に近い部位で前記第二のベース部材に接続される、
ことを特徴とするワーク保持装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ワークを支持する構造において、より変形の少ない構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る成膜装置の概略図。
【
図5】位置合わせ時の基板を保持したキャリアの支持態様、及び、マスクの支持態様を示す図。
【
図9】(A)及び(B)は
図1の成膜装置の動作説明図。
【
図10】(A)は有機EL表示装置の全体図、(B)は1画素の断面構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
<成膜装置の概要>
図1は本発明の一実施形態に係る成膜装置1の概略図(正面図)である。
図2は成膜装置1の側面図である。
図3及び
図4は成膜装置1の一部の構成を示す斜視図であり、
図4は一部破断図である。
【0011】
成膜装置1は、キャリア100に保持された基板101に蒸着物質を成膜する装置であり、マスク102を用いて所定のパターンの蒸着物質の薄膜を形成する。成膜装置1は、制御ユニット10により動作が制御される。制御ユニット10は、CPU等のプロセッサ、記憶部及びインタフェース部を備え、プロセッサが記憶部に記憶されたプログラムを実行することで成膜装置1を制御する。記憶部は、ROM、RAM等の半導体メモリやハードディスクなどの一又は複数の記憶デバイスで構成され、インタフェース部は、センサやアクチュエータとプロセッサとの間で信号を中継する。
【0012】
成膜装置1で成膜が行われる基板101の材質は、ガラス、樹脂、金属等の材料を適宜選択可能であり、ガラス上にポリイミド等の樹脂層が形成されたものが好適に用いられる。蒸着物質としては、有機材料、無機材料(金属、金属酸化物など)などの物質である。成膜装置1は、例えば表示装置(フラットパネルディスプレイなど)や薄膜太陽電池、有機光電変換素子(有機薄膜撮像素子)等の電子デバイスや、光学部材等を製造する製造装置に適用可能であり、特に、有機ELパネルを製造する製造装置に適用可能である。以下の説明においては成膜装置1が真空蒸着によって基板101に成膜を行う例について説明するが、本発明はこれに限定はされず、スパッタやCVD等の各種成膜方法を適用可能である。
【0013】
なお、各図において矢印X、Y、Zは互いに交差する方向を示す。本実施形態の場合、矢印X及び矢印Yは互いに直交する水平方向を示し、矢印Zは上下方向(重力方向)を示す。
【0014】
成膜装置1は、箱型の真空チャンバ2を有する。真空チャンバ2は、天壁20、複数の側壁21及び底壁22を有する。真空チャンバ2の内部空間(成膜空間)は、真空雰囲気か、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気に維持されている。なお、本明細書において「真空」とは、大気圧(1atm:1013hPa)より低い圧力の気体で満たされた状態、換言すれば減圧状態をいう。
【0015】
真空チャンバ2の内部空間のうち、アライメント室には、キャリア100を水平姿勢で支持するキャリア支持ユニット3、マスク102を水平姿勢で支持するマスク支持ユニット4が配置され、後段の成膜室には蒸着源5が配置される。搬送ローラ9はアライメント室から成膜室に渡って配置される。真空チャンバ2の外部(天壁20上)には、キャリア支持ユニット3を支持する支持ユニット6、位置調整ユニット7及び複数の計測ユニット8が配置される。支持ユニット6はキャリア支持ユニット3を昇降する機構を有する点で昇降ユニット6と呼ぶ場合がある。キャリア支持ユニット3、マスク支持ユニット4、昇降ユニット6、位置調整ユニット7及び計測ユニット8は、基板101とマスク102との位置合わせを行うアライメント装置を構成している。また、キャリア支持ユニット3及び昇降ユニット6は、ワークとしてキャリア100を保持するワーク保持装置を構成している。
【0016】
蒸着源5は、ヒータ、シャッタ、蒸発源の駆動機構、蒸発レートモニタなどから構成され、蒸着物質を基板101に放出して蒸着する。例えば、蒸着源5は複数のノズル(不図示)が配置され、それぞれのノズルから蒸着材料が放出されるリニア蒸発源である。蒸発源5を、基板101及びマスク102に対して相対的に変位させ、基板101への成膜を均一化する往復移動機構を設けてもよい。
【0017】
基板101には、蒸発源5から基板101に向けて飛翔した蒸着材料がマスク102を介して到達し、基板101上に膜が形成される。本実施形態では、
図4に示すように、マスク102は枠状のマスクフレーム102aに数μm~数十μm程度の厚さのマスク箔102bが溶接固定された構造を有する。マスクフレーム102aは、マスク箔102bが撓まないように、マスク箔102bをその面方向(X方向およびY方向)に引っ張った状態で支持する。マスク箔102bには、所望の成膜パターンに応じた開口が形成されている。
【0018】
基板101としてガラス基板またはガラス基板上にポリイミド等の樹脂製のフィルムが形成された基板を用いる場合、マスクフレーム102aおよびマスク箔102bの主要な材料としては、鉄合金を用いることができ、ニッケルを含む鉄合金を用いることが好ましい。ニッケルを含む鉄合金の具体例としては、34質量%以上38質量%以下のニッケルを含むインバー材、30質量%以上34質量%以下のニッケルに加えてさらにコバルトを含むスーパーインバー材、38質量%以上54質量%以下のニッケルを含む低熱膨張Fe-Ni系めっき合金などを挙げることができる。
【0019】
なお、本実施形態では成膜時に基板101の成膜面が重力方向下方を向いた状態で成膜されるデポアップの構成について説明する。しかし、成膜時に基板101の成膜面が重力方向上方を向いた状態で成膜されるデポダウンの構成でもよい。また、基板101が垂直に立てられて成膜面が重力方向と略平行な状態で成膜が行われる、サイドデポの構成でもよい。
【0020】
本実施形態の場合、キャリア100、基板101及びマスク102の外形はいずれもY方向に長い矩形状である。しかし、これらの外形状はY方向に短い矩形状でもよく、或いは、正方形であってもよい。
【0021】
基板101を保持したキャリア100と、マスク102とは、それぞれ別々の搬送経路を辿って異なるタイミングで真空チャンバ2に搬送され、搬送ローラ9によって、真空チャンバ2の外部から内部に搬送される。搬送ローラ9は、Y方向に列状に配置されており、この搬送ローラ列はX方向に離間して二列設けられている。
【0022】
キャリア100は、X方向に対向する長辺側の周縁部が搬送ローラ9に支持され、Y方向に搬送される。キャリア支持ユニット3はY方向に配列された複数の支持部31を、X方向に離間して二組有しており、キャリア100はその周縁部が複数の支持部31により支持される。キャリア100が真空チャンバ2の外部から内部に搬送される際、複数の支持部31の受け爪31aは搬送ローラ9の搬送面よりも低い位置に降下しており、キャリア100が真空チャンバ2の内部に搬送されると
図1や
図2に示す位置に昇降ユニット6によって上昇され、キャリア100が搬送ローラ9からキャリア支持ユニット3に移載される。
【0023】
マスク支持ユニット4は、X方向に離間した、複数の昇降台41及び昇降案内部40の組を二組備え、不図示の駆動機構によって複数の昇降台41が同期的に昇降される。マスク102は、X方向に対向する長辺側の周縁部(マスクフレーム102a)が昇降台41に支持される。マスク102が真空チャンバ2の外部から内部に搬送される際、昇降台41は搬送ローラ9の搬送面よりも低い位置に降下しており、マスク102が真空チャンバ2の内部に搬送されると
図1や
図2に示す位置に上昇され、マスク102が搬送ローラ9から昇降台41に移載される。
【0024】
本実施形態の場合、キャリア100が先に真空チャンバ2内に搬入される。搬送ローラ9からキャリア支持ユニット3へキャリア100が受け渡され、キャリア100はキャリア支持ユニット3と共に、昇降ユニット6によって搬送ローラ9の搬送面の上方に退避される。その後、マスク102が真空チャンバ2内に搬入される。マスク102は搬送ローラ9から複数の昇降台41に移載される。これにより、キャリア100及び基板101と、マスク102とが、互いに所定の距離を隔てて上下方向に重なる配置で、それぞれ別々に支持された状態となる。この状態で基板101とマスク102との位置合わせを行うことができ、位置合わせ後に基板101とマスク102とを上下に重ね、そして成膜を行う。
【0025】
キャリア支持ユニット3を昇降する昇降ユニット6について説明する。昇降ユニット6は、複数の昇降機構60を備える。本実施形態では、4つの昇降機構60が設けられている。各昇降機構60は、位置調整ユニット7の可動プレート71に搭載されている。各昇降機構60は、モータ62を駆動源とし、支持軸61を昇降する機構(例えばボールねじ機構)を備える。支持軸61は、Z方向に延びる部材であり、その下端部にキャリア支持ユニット3が吊り下げられている。4つの支持軸61は、X方向及びY方向に互いに離間している。各支持軸61は、真空チャンバ2の上方から、位置調整ユニット7のベースプレート73に形成された穴及び真空チャンバ2の天壁20に形成された開口部20aを通して、真空チャンバ2の内部に延設されている。開口部20aとベースプレート73との間や、ベースプレート73の穴には、真空チャンバ2の内部の気密性を維持するために必要なシール構造が設けられる。
【0026】
各昇降機構60は、支持軸61と一体的に昇降するエンコーダヘッド(エンコーダセンサ)64と、Z方向に延設された固定のエンコーダスケール63とを備える。エンコーダスケール63とエンコーダヘッド64とは、本実施形態の場合、アブソリュートエンコーダを構成し、エンコーダヘッド64がエンコーダスケール63を読み取ることで、支持軸61の昇降位置を検知する。
【0027】
制御ユニット10は、各昇降機構60を独立して駆動する。例えば、4つの昇降機構60の各エンコーダヘッド64の昇降位置の検知結果の相互差がゼロになるように、各エンコーダヘッド64の昇降位置の検知結果に基づいて対応するモータ62の制御量を決定する。こうした制御によれば、キャリア支持ユニット3の姿勢を水平に維持することができ、マスク102へキャリア100を降下して着座する際に、着座点の再現性を向上することができる。特に、大型の基板101を対象とする場合、キャリア100も大型化し、基板101とキャリア100はその中央部が自重で下向きに凸となる形状に撓む。4つの支持軸61の昇降位置を制御することで、キャリア100及び基板101の中央部をマスク102への接触開始の基準点とし、キャリア100の降下制御を行える。
【0028】
位置調整ユニット7は、昇降ユニット6のX方向、Y方向の位置及びZ方向の軸周りの向き(θ方向の位置と呼ぶ)を調整する機構である。昇降ユニット6のX方向、Y方向及びθ方向の各位置を調整することで、キャリア支持ユニット3のX方向、Y方向及びθ方向の各位置を調整し、したがって、マスク102に対する基板101のX方向、Y方向及びθ方向の各相対位置の位置ずれを調整することができる。
【0029】
本実施形態では、4つの昇降機構60によりキャリア支持ユニット3の支持及び昇降を行うことで、比較的高重量の基板101やキャリア100に対応できる。例えば、G8サイズの基板は1辺が2mを超えるサイズになり、基板の自重たわみを抑制するため基板キャリアによる保持が必須となっている。この基板キャリア自体も金属製であると数100Kgを超えるものとなる。本実施形態では、独立した駆動源であるモータ62をそれぞれ備えた複数の昇降機構60を設けたことで、こうした高重量の基板101やキャリア100に対応できる。
【0030】
位置調整ユニット7は、ベースプレート73と、ベースプレート73とZ方向に離間した可動プレート71と、ベースプレート73と、これらのプレートの間に配置された複数のアクチュエータ70とを備える。可動プレート71及びベースプレート73は本実施形態の場合、矩形状を有している。ベースプレート73は、天壁20に開口部20aを塞ぐように固定されている。可動プレート71には昇降ユニット6が搭載されている。
【0031】
アクチュエータ70は、本実施形態の場合、4つ設けられており、ベースプレート73の四隅に位置している。各アクチュエータ70は、モータ72を駆動源として、ベースプレート73に対して可動プレート71をX方向又はY方向に移動する機構である。例えば、4つのアクチュエータ70のうち、ベースプレート73の対角上に位置する2つのアクチュエータ70による可動プレート71の移動方向はX方向であり、残り2つのアクチュエータ70による可動プレート71の移動方向はY方向である。4つのアクチュエータ70による可動プレート71の移動量の組み合わせによって、ベースプレート73に対して可動プレート71をX方向、Y方向及びθ方向に変位することができる。移動量は、例えば、各モータ72の回転量を検知するロータリエンコーダ等のセンサの検知結果から制御することができる。
【0032】
本実施形態では、駆動源及び可動部を多く含む昇降機構60や位置調整ユニット7を真空チャンバ2の外部に配置することで、真空チャンバ2内の成膜空間内での発塵を抑制することができる。なお、本実施形態では、キャリア100及び基板101をXYθ方向およびZ方向に移動させる構成について説明したが、これに限定はされず、マスク102を移動させてもよいし、キャリア100及び基板101とマスク102との双方を移動させてもよい。
【0033】
計測ユニット8は、基板101とマスク102との位置ずれを計測する。計測ユニット8の計測結果に応じて位置調整ユニット7を制御することで、基板101とマスク102との位置合わせを行うことができる。本実施形態の場合、計測ユニット8は、光軸8aを有し、画像を撮像する撮像装置(CCDカメラ等)である。光軸8a上において、天壁20、キャリア100には、透明部又は開口部を有している。計測ユニット8は、基板101、マスク102にそれぞれ設けられたアライメントマークを撮像し、制御ユニット10はその撮像結果から基板101とマスク102との位置ずれ量を演算する。そして、位置調整ユニット7の制御量を決定する。
【0034】
<キャリア>
キャリア100の構成について
図5及び
図6を参照して説明する。
図5は、位置合わせ時の基板101を保持したキャリア100の支持態様、及び、マスク102の支持態様を示す図、
図6は
図5の部分拡大図である。
【0035】
キャリア100は、板状の本体101cに、着座部材100aと、チャック部材100bとが設けている。本体101cは、金属等で構成された板状部材であり、基板101をその下面側に保持する保持面を構成する部材である。本体101cは、ある程度の剛性(少なくとも基板101よりも高い剛性)を有しており、基板101自体の撓みを抑制しつつ基板101を保持する。
【0036】
着座部材100aは、本体101cの保持面の基板保持エリアの外側に、保持面から突出して複数配置されている。着座部材100aは基板101がキャリア100に保持された状態で、基板101よりもマスク102側に突出するように設けられている。基板101とマスク102との位置合わせ後、キャリア100は、着座部材100aを介してマスクフレーム102a上に着座する。
【0037】
チャック部材100bは、基板101を本体100cの保持面に沿って保持するための部材である。本実施形態のチャック部材101bは、粘着性の部材であり、粘着力によって基板101を保持することができる。チャック部材100bは粘着パッドと呼ぶこともできる。
【0038】
なお、本実施形態ではチャック部材100bとして粘着力によって基板101を保持する部材を用いているが、本発明はこれに限定はされず、チャック部材100bとして静電気力によって基板101を保持する部材(静電チャック)を用いることもできる。
【0039】
キャリア100は、さらに、保持した基板101を介してマスク102を磁気吸着するための磁気吸着部を有していてもよい。磁気吸着部としては永久磁石や電磁石、永久磁石を備えた磁石プレートを用いることができる。また、磁気吸着部は本体100cに対して相対移動可能に設けられていてもよい。より具体的には、磁気吸着部は、本体100cとの間のZ方向の距離を変更可能に設けられてもよい。
【0040】
キャリア100は、その四辺のうち、X方向に対向する二辺における周縁部が、複数の支持部31aによって支持されている。マスク102も、その四辺のうち、X方向に対向する二辺における周縁部が、複数の昇降台41によって支持されている。キャリア100、基板101及びマスク102は、自重によってX方向の中央部が撓んでいる。キャリア100、基板101及びマスク102を水平姿勢で支持するとは、こうした撓みが生じている場合も含み、支持位置(X方向に対向する二辺における周縁部)が水平な位置関係にあれば水平姿勢に含まれる。
【0041】
<キャリア支持ユニット>
キャリア支持ユニット3の構成について、
図1~
図6に加えて
図7を参照して説明する。
図7はキャリア支持ユニット3の平面図である。
【0042】
キャリア支持ユニット3は、一対のベース部材30を備える。各ベース部材30はY方向に延設された梁部材である。一対のベース部材30は、X方向に離間している。各ベース部材30には、複数の支持部31が支持されている。本実施形態では、一つのベース部材30に4つの支持部31が支持されている。支持部31は、ベース部材30から下方に延設された柱31bと、柱31bの下端部に固定され、柱31bからX方向に突出した受け爪31aとを備え、全体としてL字型又はJ字型を有している。キャリア100は、その周縁部が受け爪31a上に載置され、支持される。
【0043】
ベース部材30は、Y方向に離間した2つの本体部32と、2つの本体部32の間に位置し、これら本体部32を連結する連結部33とを備える。各本体部32は、支持部31を支持する。本実施形態の場合、一つの本体部32に二つの支持部31が支持されている。また、本体部32は、支持軸61の下端部に固定されている。本実施形態の場合、一つの支持軸61に、一つの本体部32が固定されている。支持軸61は、Y方向で2つの支持部31の間に位置している。連結部33は、2つの端部33aと、中央部33bと、中央部33bと2つの端部33aとの間の可動部33cとを有している。2つの端部33aの一方は、一方の本体部32に固定され、他方の端部33aは他方の本体部32に固定されている。
【0044】
2つの可動部33cは、それぞれ、中央部33bに対する端部33aの回動を可能とする回動部である。本実施形態の場合、可動部33cは、
図2において矢印D2で示すように、X方向の軸周りに中央部33bに対する端部33aの回動を許容するヒンジ部である。しかし、可動部33cは、球面軸受けや弾性ヒンジであってもよく、X方向の軸周り以外の方向についても、中央部33bに対する端部33aの回動を可能とするものであってもよい。可動部33cを設けたことで、連結部33に対して本体部32が(より正確に言えば、中央部33bに対して本体部32が)
図2の矢印D2方向に回動することが可能となる。
【0045】
一対のベース部材30は、複数の接続部材34によって接続されている。本実施形態の場合、一対のベース部材30は2つの接続部材34によって接続されている。各接続部材34はX方向に延設された梁部材である。接続部材34は、2つの端部34aと、中央部34bと、中央部34bと2つの端部34aとの間の可動部34cとを有している。2つの端部34aの一方は、一方のベース部材30に固定され、他方の端部34aは他方のベース部材30に固定されている。端部34aは本体部32に複数のボルト35で固定されている。固定位置は、Y方向で2つの支持部31の間で、かつ、支持部31と支持軸61の間の2か所と、X方向で支持軸61と可動部34cとの間の1か所である。支持軸61の周囲の複数個所で端部34aと本体部32とを固定することでねじれ変形に対する剛性を向上できる。
【0046】
2つの可動部34cは、それぞれ、中央部34bに対する端部34aの回動を可能とする回動部である。本実施形態の場合、可動部34cは、
図1において矢印D1で示すように、Y方向の軸周りに中央部34bに対する端部34aの回動を可能とするヒンジ部である。しかし、可動部34cは、球面軸受けや弾性ヒンジであってもよく、Y方向の軸周り以外の方向についても、中央部34bに対する端部34aの回動を可能とするものであってもよい。可動部34cを設けたことで、接続部材34に対してベース部材30が(より正確に言えば、中央部34bに対してベース部材30が)
図1の矢印D1方向に回動することが可能となる。
【0047】
接続部材34と、ベース部材30との接続位置について説明する。本実施形態の場合、Y方向で、両端部に位置する各支持部31の位置P1、P2に対して、接続部材34の接続位置P11、P12は、支持軸61に近い位置にあり、特に、接続位置P11、P12は、Y方向で支持軸61と同じ位置である。各接続部材34及び各支持軸61は、Y方向で、位置P1、P2よりも中央側に位置している。両端部に位置する各支持部31間の距離と、接続部材34間の距離とで比較すると、位置P1、P2間の距離L1に対して、接続位置P11、P12の距離L2は、L1>L2の関係にある。
【0048】
こうした構造によって、キャリア支持ユニット3の剛性を向上でき、より変形の少ない構造を提供することができる。比較例として、
図8に接続部材34を備えていないキャリア支持ユニット3’における課題を説明する。
【0049】
キャリア100が支持部31によって支持されている状態を、
図8のように装置正面から見ると、その自重によって下方に撓んで凸となる形状に変形している。この変形は基板101及びキャリア100のサイズが大きくなるほど大きくなる。この状態で、キャリア支持ユニット3’を降下して、キャリア100をマスク102上へ着座させると、まず基板102の撓みの最下部がマスク102に着座する。更に、キャリア支持ユニット3’を降下させて基板101をマスク102に密着させると、キャリア100の撓みが減少して平坦な形状に復帰することによって、キャリア支持ユニット3’には、X方向外側へ、反力FhlおよびFhrが作用する。
【0050】
反力FhlおよびFhrによるモーメントによって、支持軸61及びベース部材30が外方へ傾き、結果的にマスク102と基板101のX方向の位置ズレが発生してアライメント精度を悪化させる。また反力の大きさや、反力FhlおよびFhrの差(偏り)の状態によっては、昇降機構60の動作の支障にもなる。
【0051】
本実施形態では、接続部材34による補強によって、一対のベース部材30がX方向に離間することが抑制される。この結果、
図8に示した課題を解決することができる。
図9(A)はその説明図である。
【0052】
図9(A)は、基板101とマスク102との位置合わせ後、昇降ユニット6によってキャリア支持ユニット3を降下させ、キャリア100をマスク102上に載置した状態を示す。本実施形態では、キャリア100をマスク102に着座させる際、キャリア100の自重たわみの変化によって
図8で説明した反力FhlおよびFhrが発生したとしても、一対のベース部材30が接続部材34で接続されているため、支持軸61及びベース部材30が外方へ傾くことを防止できる。しかも、接続部材34とベース部材30との接続位置(
図7のP11、P12)が、両端部の支持部31の位置(
図7のP1、P2)よりも支持軸61に近いことから、反力FhlおよびFhrに対して支持軸61の位置を拘束し、支持軸61が傾くことを強く防止することができる。
【0053】
すなわち接続部材34が、Y方向で最も外側となる支持部31よりも支持軸61に近い位置でベース部材30と接続されることで、Y方向で最も外側となる支持部31に作用する応力(キャリア100の撓みに起因する応力)によるベース部材30及び支持軸61に及ぼすに及ぼすモーメント力に対する剛性を高めることができる。特に、反力FhlおよびFhrは、昇降機構60から最も離れた支持軸61の下端部で作用するので、昇降機構60には反力FhlおよびFhrがモーメント力として作用することになるが、このモーメント力を低減する点でも極めて効果的である。
【0054】
仮に接続部材34のY方向の位置がY方向で最も外側となる支持部31よりも外側に位置している場合(
図7でL2>L1の場合)、反力FhlおよびFhrを受けた際に、支点である支持軸61から接続部材34がY方向に離れているため、接続部材34自体の強度によっては局所的に変形し十分な剛性向上の効果が得られない場合がある。また、ベース部材30を、支持軸61を中心とする回転方向に歪ませる懸念もある。したがって、キャリア100やマスク102のサイズ、重量、精度に応じて、
図7でL2<L1の関係が維持されることが重要であり、実際の設計値はこの範囲内で適宜選択を行えばよい。
【0055】
なお、
図9(A)の後、
図9(B)に示すように、マスク102は昇降台41が降下することによって、搬送ローラ9に受け渡される。この際、搬送ローラ9によってキャリア100、基板101及びマスク102が搬送される空間すなわち搬送パスライン11は破線で示される範囲であり、X方向に搬送され、アライメント室から後段の成膜室に移動して蒸着源5により成膜される。
【0056】
同図から明らかなように、接続部材34は搬送パスライン11の外となる上方に配置されており、補強による効果を確保しつつ搬送機能と干渉することはない。なお、搬送パスライン11の高さは、マスク102の厚みとキャリア100の厚みの和以上になっており、受け爪31aが受け渡し時に退避するストロークも加味されていることが望ましい。
【0057】
次に、可動部33c及び34cの機能について説明する。ベース部材30を可動部33cが無く、剛性の高い単一の部材で構成した場合や、接続部材34を可動部34cが無く、剛性の高い単一の部材で構成した場合、4つの昇降機構60の同期が何らかの理由で解除された場合にキャリア支持ユニット3や各昇降機構60に過剰な負荷が作用する場合がある。4つの昇降機構60の同期が解除される場合としては、例えば、エンコーダヘッド64の検出結果がノイズ等によって取得困難になった場合(同期が切れた場合)が挙げられる。4つの昇降機構60のうちの一つが、他の昇降機構60に対して勝手に動作すると、キャリア支持ユニット3が、4つの支持軸61との接続部位によってZ方向の力が異なってZ方向の変形を招き、その反力として昇降機構60に大きな負荷が作用する。
【0058】
本実施形態の場合、可動部33c及び34cの回動により、各本体部32や各中央部34bは互いに変形可能となっている。万が一、誤作動などで各昇降機構60の一部が単独で駆動しても可動部33c及び34cの回動により、各本体部32や各中央部34bに作用するせん断方向の力をかわすことができる。したがって、キャリア支持ユニット3や各昇降機構60に過剰な負荷が作用することを防止できる。
【0059】
<電子デバイス>
次に、電子デバイスの一例を説明する。以下、電子デバイスの例として有機EL表示装置の構成を例示する。
【0060】
まず、製造する有機EL表示装置について説明する。
図10(A)は有機EL表示装置500の全体図、
図10(B)は1画素の断面構造を示す図である。
【0061】
図10(A)に示すように、有機EL表示装置500の表示領域51には、発光素子を複数備える画素52がマトリクス状に複数配置されている。詳細は後で説明するが、発光素子のそれぞれは、一対の電極に挟まれた有機層を備えた構造を有している。
【0062】
なお、ここでいう画素とは、表示領域51において所望の色の表示を可能とする最小単位を指している。カラー有機EL表示装置の場合、互いに異なる発光を示す第1発光素子52R、第2発光素子52G、第3発光素子52Bの複数の副画素の組み合わせにより画素52が構成されている。画素52は、赤色(R)発光素子と緑色(G)発光素子と青色(B)発光素子の3種類の副画素の組み合わせで構成されることが多いが、これに限定はされない。画素52は少なくとも1種類の副画素を含めばよく、2種類以上の副画素を含むことが好ましく、3種類以上の副画素を含むことがより好ましい。画素52を構成する副画素としては、例えば、赤色(R)発光素子と緑色(G)発光素子と青色(B)発光素子と黄色(Y)発光素子の4種類の副画素の組み合わせでもよい。
【0063】
図10(B)は、
図10(A)のA-B線における部分断面模式図である。画素52は、基板53上に、第1の電極(陽極)54と、正孔輸送層55と、赤色層56R・緑色層56G・青色層56Bのいずれかと、電子輸送層57と、第2の電極(陰極)58と、を備える有機EL素子で構成される複数の副画素を有している。これらのうち、正孔輸送層55、赤色層56R、緑色層56G、青色層56B、電子輸送層57が有機層に当たる。赤色層56R、緑色層56G、青色層56Bは、それぞれ赤色、緑色、青色を発する発光素子(有機EL素子と記述する場合もある)に対応するパターンに形成されている。
【0064】
また、第1の電極54は、発光素子ごとに分離して形成されている。正孔輸送層55と電子輸送層57と第2の電極58は、複数の発光素子52R、52G、52Bにわたって共通で形成されていてもよいし、発光素子ごとに形成されていてもよい。すなわち、
図11(B)に示すように正孔輸送層55が複数の副画素領域にわたって共通の層として形成された上に赤色層56R、緑色層56G、青色層56Bが副画素領域ごとに分離して形成され、さらにその上に電子輸送層57と第2の電極58が複数の副画素領域にわたって共通の層として形成されていてもよい。
【0065】
なお、近接した第1の電極54の間でのショートを防ぐために、第1の電極54間に絶縁層59が設けられている。さらに、有機EL層は水分や酸素によって劣化するため、水分や酸素から有機EL素子を保護するための保護層600が設けられている。
【0066】
図10(B)では正孔輸送層55や電子輸送層57が一つの層で示されているが、有機EL表示素子の構造によって、正孔ブロック層や電子ブロック層を有する複数の層で形成されてもよい。また、第1の電極54と正孔輸送層55との間には第1の電極54から正孔輸送層55への正孔の注入が円滑に行われるようにすることのできるエネルギーバンド構造を有する正孔注入層を形成してもよい。同様に、第2の電極58と電子輸送層57の間にも電子注入層を形成してもよい。
【0067】
赤色層56R、緑色層56G、青色層56Bのそれぞれは、単一の発光層で形成されていてもよいし、複数の層を積層することで形成されていてもよい。例えば、赤色層56Rを2層で構成し、上側の層を赤色の発光層で形成し、下側の層を正孔輸送層又は電子ブロック層で形成してもよい。あるいは、下側の層を赤色の発光層で形成し、上側の層を電子輸送層又は正孔ブロック層で形成してもよい。このように発光層の下側又は上側に層を設けることで、発光層における発光位置を調整し、光路長を調整することによって、発光素子の色純度を向上させる効果がある。
【0068】
なお、ここでは赤色層56Rの例を示したが、緑色層56Gや青色層56Bでも同様の構造を採用してもよい。また、積層数は2層以上としてもよい。さらに、発光層と電子ブロック層のように異なる材料の層が積層されてもよいし、例えば発光層を2層以上積層するなど、同じ材料の層が積層されてもよい。
【0069】
こうした電子デバイスの製造において、上述した成膜装置1が適用可能であり、当該製造方法は、基板とマスクの位置合わせを行うアライメント工程と、基板に蒸着源5によって各層の少なくともいずれか一つの層を蒸着する蒸着工程と、を含むことができる。
【0070】
<他の実施形態>
上記実施形態では、キャリア100により基板101を保持する構成を例示したが、キャリア100を用いない構成も採用可能である。この場合、キャリア支持ユニット3を基板101を直接支持する支持ユニットとして構成すればよい。また、キャリア支持ユニット3と同様の構成の支持ユニットをマスク102の支持ユニットとして採用してもよい。ワークとしてキャリア100を例示したが、基板101やマスク102の他、成膜装置以外の装置における各種のワークにおける保持装置として本発明は適用可能である。
【0071】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0072】
1 成膜装置、3 キャリア支持ユニット、6 支持ユニット(昇降ユニット)、30 ベース部材、31 支持部、34 接続部材、61 支持軸