(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】エキゾーストマニホールドの固定構造及びエキゾーストマニホールド
(51)【国際特許分類】
F01N 13/10 20100101AFI20240329BHJP
【FI】
F01N13/10
(21)【出願番号】P 2022158939
(22)【出願日】2022-09-30
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】519196405
【氏名又は名称】株式会社IJTT
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】玉氣 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】大山 佳祐
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 俊彰
(72)【発明者】
【氏名】中村 匡孝
(72)【発明者】
【氏名】昆 伸茂
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102013019476(DE,A1)
【文献】特開2000-027643(JP,A)
【文献】特開2002-195031(JP,A)
【文献】特開平09-324625(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107795365(CN,A)
【文献】中国実用新案第202370637(CN,U)
【文献】欧州特許出願公開第02075429(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボルトによってシリンダヘッドと固定されるエキゾーストマニホールドの固定構造であって、
当該固定構造は、前記エキゾーストマニホールドから外側に向かって延設された固定部からなり、
前記固定部は、前記ボルトが挿入される挿入穴を有するフランジ部と、挿入された前記ボルトの両側面を覆うように形成され、かつ、互いに離間した一対の壁面部とを備え、
前記一対の壁面部は、その一端が当該フランジ部に連続し、その他端がシリンダヘッドに接触
し、前記一端から前記シリンダヘッド側に向かって高さが低くなるように傾斜が設けられていることを特徴とするエキゾーストマニホールドの固定構造。
【請求項2】
前記フランジ部の厚さ方向における長さは、前記壁面部の長さよりも短いことを特徴とする請求項1記載のエキゾーストマニホールドの固定構造。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載のエキゾーストマニホールドの固定構造を複数有することを特徴とするエキゾーストマニホールド。
【請求項4】
前記固定部のうち、前記エキゾーストマニホールドの長手方向中央に位置する中央固定部の前記挿入穴は、他の前記固定部の前記挿入穴よりも穴径が小さいことを特徴とする請求項
3記載のエキゾーストマニホールド。
【請求項5】
前記固定部のうち、前記エキゾーストマニホールドの長手方向両端に位置する左端固定部及び/又は右端固定部の前記挿入穴は、楕円形状であり、その楕円長手幅は他の前記固定部の前記挿入穴の穴径よりも長いことを特徴とする請求項
3記載のエキゾーストマニホールド。
【請求項6】
前記エキゾーストマニホールドは、前記シリンダヘッドに接触する面において、排気用通路同士の間、又はEGR用通路と前記排気用通路との前記間の隔壁内に肉盗み部を有することを特徴とする請求項
3記載のエキゾーストマニホールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエキゾーストマニホールドの固定構造及びエキゾーストマニホールドに関する。
【背景技術】
【0002】
乗用車やトラック等の建機・産業・農業車両に用いられる内燃機関の排気系部品としては、ターボハウジングやエキゾーストマニホールドなどがある。このような排気系部品は、昇温・冷却により膨張・収縮を繰り返すので、部材同士の接合部分において締結部品の熱膨張により部材間でガス漏れが生じる可能性がある。さらに近年では環境規制に伴う燃費向上に対応するため、排気ガス温度は上昇する傾向にあり、排気系部品が受ける温度変化はますます大きくなってきており、ガス漏れが生じにくい排気系部品が求められている。
【0003】
このため、耐熱変形性を向上させてガス漏れを防ぐべく、例えば特許文献1に記載の発明では、高SiMo鋳鉄にV等を添加したフェライト系球状黒鉛鋳鉄を排気系部品に用いており、また、特許文献2に記載の発明では、高SiMo鋳鉄にV、Nb、Wを添加したフェライト系球状黒鉛鋳鉄を排気系部品に用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3936849号公報
【文献】特許第5232620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの球状黒鉛鋳鉄は鋳造欠陥(例えば引け巣欠陥)が発生しやすいことが知られており、鋳造生産性への影響が高い。また、耐熱変形性を向上させることはできるものの、原価の高い合金を添加するため、高コストとなりやすい。
【0006】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解消することにあり、昇温・冷却により膨張・収縮を繰り返す部材同士の接合部を、原価の高い合金の使用有無に寄らず強固に固定することができるエキゾーストマニホールドの固定構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のエキゾーストマニホールドの固定構造は、ボルトによってシリンダヘッドと固定されるエキゾーストマニホールドの固定構造であって、当該固定構造は、前記エキゾーストマニホールドから外側に向かって延設された固定部からなり、前記固定部は、前記ボルトが挿入される挿入穴を有するフランジ部と、挿入された前記ボルトの両側面を覆うように形成され、かつ、互いに離間した一対の壁面部とを備え、前記一対の壁面部は、前記フランジ部にその一端が連続し、他端はシリンダヘッドに接触することを特徴とする。本発明では、固定部の一対の壁面部が、ボルトの全周囲を覆うような形状ではなく、互いに離間することでボルトの一部のみを覆うような形状とされている。これにより、固定部のシリンダヘッドとの接触面積をボルトの全周囲を覆う場合よりも減らすことができ、固定部を構成する部材の昇温を抑制し、ボルトの熱膨張を抑制し、その結果部材同士を強固に固定することができる。
【0008】
前記一対の壁面部は、前記一端から前記シリンダヘッド側に向かって高さが低くなるように傾斜が設けられていることが好ましい。このように構成することで、上述したよりもさらに固定部のシリンダヘッドとの接触面積を低下させて、より固定部を構成する部材の昇温を抑制し、ボルトの熱膨張を抑制し、その結果ガス漏れが生じないように部材同士を強固に固定することができる。
【0009】
前記フランジ部の厚さ方向における長さは、前記壁面部の長さよりも短いことが好ましい。フランジ部の厚みが前記壁面部の長さよりも短いことで、ボルトの熱膨張を好ましく抑制し、部材同士をガス漏れが生じないように強固に固定することができる。
【0010】
本発明のエキゾーストマニホールドは、上記いずれかに記載のエキゾーストマニホールドの固定構造を複数有することを特徴とする。エキゾーストマニホールドの固定構造を複数有することで、部材同士をガス漏れが生じないように強固に固定することができる。
【0011】
前記固定部のうち、前記エキゾーストマニホールドの長手方向中央に位置する中央固定部の前記挿入穴は、他の前記固定部の前記挿入穴よりも穴径が小さいことが好ましい。このように構成することで、位置決めを高精度に行うことが可能である。
【0012】
前記固定部のうち、前記エキゾーストマニホールドの長手方向両端に位置する左端固定部及び/又は右端固定部の前記挿入穴は、楕円形状であり、その楕円長手幅は他の前記固定部の前記挿入穴の穴径よりも長いことが好ましい。左端固定部及び右端固定部の前記挿入穴のうち少なくとも一方の挿入穴がこのように構成されることで、この固定部の挿入穴と前記中央固定部の前記挿入穴の穴を用いて上下左右の位置決めすることが可能である。
【0013】
前記エキゾーストマニホールドは、前記シリンダヘッドに接触する面において、排気用通路同士の間、又はEGR用通路と前記排気用通路との前記間の隔壁内に肉盗み部を有することが好ましい。このように構成することでエキゾーストマニホールド自体がシリンダヘッドからの熱影響を直接受けにくくなり、エキゾーストマニホールドの熱膨張を抑え、シリンダヘッドとエキゾーストマニホールドとのずれを抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のエキゾーストマニホールドの固定構造によれば、昇温・冷却により膨張・収縮を繰り返す部材同士の接合部を、ガス漏れが生じないように強固に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態にかかるエキゾーストマニホールドの(1)斜視図、(2)反対方向から見た斜視図である。
【
図2】実施形態にかかるエキゾーストマニホールドのシリンダヘッド側から見た図である。
【
図3】実施形態にかかるエキゾーストマニホールドの固定構造を示す斜視図である。
【
図4】実施形態にかかるエキゾーストマニホールドの固定構造を示す上面図である。
【
図5】実施形態にかかるエキゾーストマニホールドの固定構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態にかかるエキゾーストマニホールドについて
図1~
図5を用いて説明する。ただし、この実施形態は例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。また、実施形態において、同じ部材については同じ参照番号を付しているが、部材の設置位置により同じ部材同士を区別する際には、参照番号にa、b、、、とアルファベットを付すことにより区別を行う。
【0017】
図1~5に示すように、本実施形態のエキゾーストマニホールド10は、エキゾーストマニホールド本体11を備える。エキゾーストマニホールド本体11は、一の排気通路に形成されている基端部12が互いに分岐してなる複数の分岐管14を有する。基端部12には基端側フランジ部121が設けられ、基端側フランジ部121と図示しないターボチャージャーのフランジ部とがボルトにより固定される。
【0018】
分岐管14内部には、排気通路15が形成されている。複数の排気通路15は、それぞれが図示しないシリンダヘッドの対応するエキゾーストポートに連通される。また、エキゾーストマニホールド本体11には、図示しないEGR(Exhaust Gas Recirculation:排気再循環)が接続されるので、このEGRに排気ガスを送るためのEGR用排気通路16が形成されている。EGR用排気通路16に隣接する排気通路15aとEGR用排気通路16と間には肉盗み部17が、排気通路15bと15cの間に肉盗み部18が設けられている。
【0019】
エキゾーストマニホールド本体11には、シリンダヘッドとエキゾーストマニホールドとを固定するための固定部20が設けられている。固定部20a~20dは、それぞれ排気通路15a~15dの上部に設けられているとともに、固定部20e~20hは、それぞれ排気通路15a~15dの下部に設けられている。さらに、EGR用排気通路16の、
図2中左斜め上側(エキゾーストマニホールド本体11の端部側の上方)及び右斜め下側(エキゾーストマニホールド本体11の隣接する排気通路15a側の下方)にも固定部20i、20jがそれぞれ設けられている。このように、排気通路15及びEGR用排気通路16に対応して固定部20が設けられていることで、効率的にガス漏れを防ぐことができる。
【0020】
各固定部20は、エキゾーストマニホールド本体11の外側に向かって延設されている。具体的には、各固定部20は、エキゾーストマニホールド本体11の上側に形成されているものは上方向に向かって延設され、エキゾーストマニホールド本体11の下側に形成されているものは下方向に向かって延設されているフランジ部21を備える。フランジ部21は、その中央にボルトの挿入穴22を有する。
【0021】
図5に示すように、固定部20は、ボルトBによりシリンダヘッドと固定される。ボルトBは、エキゾーストマニホールド10側からシリンダヘッド側に向かって挿入穴22に挿入される。本実施形態では、ボルトBはスタッドボルトを用いており、カラーK及び六角ナットNをともに使用して固定している。挿入穴22からボルトBが挿入され、カラーKの座面がフランジ部21に接触して保持される。このようにフランジ部21を備えることで、ボルトBの軸力を均一に伝えて保持することができ、その結果フランジ部21のボルトB、カラーK及び六角ナットNによる座面陥没を防ぐことができ、ボルトBの軸力を保つことが出来る。
【0022】
また、固定部20は、フランジ部21にその幅方向の一端側が連続する一対の壁面部23を備える。一対の壁面部23は、それぞれ挿入されたボルトを横のみ覆うような形状とされている。また、一対の壁面部23は、互いに離間しているので一対の壁面部23間に開放部24が形成されている。したがって、挿入穴22からボルトBが挿入されるとボルトBが開放部24から露出する。すなわち、開放部24により一対の壁面部23はエキゾーストマニホールド本体11の外周側(
図5中上部)において接続されておらず、ボルトBが挿入穴22に挿入されるとボルトBが開放部24から露出する。
【0023】
一対の壁面部23は、フランジ部21とは逆側の端部(幅方向の他端側)でシリンダヘッドと接触する。本実施形態では、固定部20の壁面部23が、シリンダヘッドと接続する部分においてボルトの全周囲を覆うような形状ではなく、ボルトの側面のみを覆うような形状とされていることで、固定部20のシリンダヘッドとの接触面積をボルトBの全面を覆う場合よりも減らすことができ、固定部20を構成する部材の昇温を抑制して、熱膨張を小さくし、その結果部材を強固に固定することができる。
【0024】
仮に壁面部がフランジ部から連続した円筒状でボルトの全周囲を覆うとすれば、シリンダヘッドから伝達した熱が高温になるほど、ボルトの熱膨張による変形や部品の機械的性質の低下により強度が落ちる。これに加えて、ボルトにかかる締結軸力によりボルトが塑性変形を起こし、軸力が低下して締結力が落ちてしまうという問題があった。これに対し、本実施形態では、一対の壁面部23とシリンダヘッドとの接触面積が少なく固定部20へ熱が伝わりにくいため、ボルトBの熱膨張による変形を抑制できる。その結果、固定部20は、ボルトB自体の強度を保持し、かつ塑性変形を防止することができるので強固にシリンダヘッドにエキゾーストマニホールド10を固定することができる。そして、このような固定部20を設けることで、締結部品やエキゾーストマニホールド10の材料自体を変更することなく、コストを抑制した材料からなるボルト(例えばクロームモリブデン鋼など)や排気系部品材料を用いて、排気ガス漏れを起こさず、かつ、鋳造部品としての不良が少ない、生産性の高いエキゾーストマニホールド10を得ることが出来る。
【0025】
また、固定部20では、ボルトの外周全体を一対の壁面部23が覆うのではなく、開放部24が形成されて一対の壁面部23はボルトの外周の一部のみ覆っていることで、ボルトBの放熱性を向上することができる。これにより、ボルトBの熱膨張による変形を抑制できる。固定部20は、ボルトB自体の強度を保持し、かつ塑性変形を防止することができるので強固に固定することができる。
【0026】
また、固定部20のシリンダヘッドとの接触する接触面は加工面とされ鋳造欠陥(例えば引け巣欠陥)が発生することがあり、生産性を落とす原因となるところ、本実施形態の固定部20では、壁面部がフランジ部21から連続した円筒状でボルトの全周囲を覆う場合よりも接触面の面積が減少している。これにより、欠陥による生産性への影響を少なくすることができる。更に、開放部24を設けることで、素材重量、加工量の削減にもなり、コストも削減することができる。
【0027】
また、一対の壁面部23は、その幅方向の一端側はフランジ部21と同じ高さから連続して設けられており、他端側、つまりシリンダヘッド側はこの一端側よりも低くなるように設けられている。すなわち、一対の壁面部23は、シリンダヘッド側に向かって低くなるように傾斜が設けられている。このように一対の壁面部23に傾斜をつけていることで、さらに壁面部23とシリンダヘッドとの接触面の面積を減少させることが可能であり、固定部20を構成する部材の昇温を減少させて、熱膨張・収縮の幅を小さくし、その結果部材を強固に固定することができる。
【0028】
一対の壁面部23は、その幅方向の他端側、つまりシリンダヘッド側の高さH1(挿入穴22の下端から壁面部23のシリンダヘッド側端部における上端部までの高さ)は、挿入穴22に挿入されたボルトBのボルト中心H2よりも高くなるように、かつ、フランジ部21の高さH3(挿入穴22の下端からフランジ部上端までの高さ)よりは低くなるように形成されていることが好ましい。シリンダヘッド側の高さH1が挿入されたボルトBのボルト中心H2よりも低いとシリンダヘッドとエキゾーストマニホールド10間で十分な面圧が与えられず、ガス漏れの原因となってしまうことがあるからである。さらに、例えば一対の壁面部23の傾斜の角度は、110~130°が好ましい。
【0029】
開放部24の距離、すなわち一対の壁面部23の距離は、ボルトの直径に対し150~170%であることが好ましい。170%より大きいと、シリンダヘッドとエキゾーストマニホールド間でより十分な面圧を与えられずガス漏れの原因となることもあり、150%より小さいと、シリンダヘッドの熱影響を受けやすくなる。
【0030】
フランジ部21の厚み方向の長さは壁面部23の長さよりも短いことが好ましく、例えば8~12mm程度、好ましくは10mm程度とすることが挙げられる。フランジ部21の厚みが壁面部の長さよりも長いと、ボルトからの放熱が不十分である場合もある。特に、12mm程度より厚いとボルトからの放熱が不十分である場合も十分に考えられ、かつ、8mmより薄いと、カラーKやナットNがフランジ21の座面に接触した場合にボルトヘッド等の座面が接触した場合に座面強度が保てず、座面が変形してしまう場合がある。必ずしもフランジ部21の厚み方向の長さが壁面部23の長さよりも短くなければならないわけではないが、そのようになっていれば、ボルトの熱膨張を好ましく抑制し、部材同士をガス漏れが生じないように強固に固定することができる。
【0031】
また、各挿入穴22は、エキゾーストマニホールド10の固定時の位置決めとしても機能する。本実施形態では、エキゾーストマニホールド10の長手方向中心側に位置する固定部(中央固定部)20bの挿入穴22bは、他の挿入穴22に比べて穴の直径が小さく、挿入するボルトBに対するクリアランスが小さい。このため、固定部(中央固定部)20bの挿入穴22bは、上下左右方向において位置決めを行うことができる。シリンダヘッドにエキゾーストマニホールド10を固定する時には、まずこの挿入穴22bにボルトを挿入し、上下左右の位置決めする。なお、本実施形態では、挿入穴22bを基準として位置決めをしたが、長手方向のいずれの挿入穴22を基準としても位置決めすることは可能である。また、エキゾーストマニホールド10の長手方向端部側に位置する固定部20dの挿入穴22dは、楕円形状であり、その楕円長手幅はそれぞれ他の挿入穴22の直径に比べて大きい。この場合に、挿入穴22dの楕円長手幅が長いことから、エキゾーストマニホールドが仮に大きく熱膨張をしたとしてもこの穴で膨張を吸収することができ、シリンダヘッドとエキゾーストマニホールド10とのずれを抑制できる。なお、本実施形態では右端固定部である固定部20dの挿入穴22dのみ楕円形状としたが、左端固定部である固定部20iの挿入穴22iを楕円形状としてもよい。
【0032】
また、エキゾーストマニホールド10に肉盗み部17、18が設けられていることで、エキゾーストマニホールド本体11の加工面において欠陥が発生することを抑制し、かつ素材重量や加工量の削減をすることができる。
【0033】
本発明は、上述した実施形態に限定されない。エキゾーストマニホールド本体11の構成は一例であり、その構造には限定されない。また、締結部品も一例であり、ボルトの形状等は限定されるものではない。
【符号の説明】
【0034】
10 エキゾーストマニホールド
11 エキゾーストマニホールド本体
12 基端部
14 分岐管
15 排気通路
16 EGR用排気通路
17、18 肉盗み部
20 固定部
21 フランジ部
22 挿入穴
23 壁面部
24 開放部
B ボルト
K カラー
N 六角ナット
【要約】
【課題】昇温・冷却により膨張・収縮を繰り返す部材同士の接合部を、原価の高い合金の使用有無に寄らず強固に固定することができるエキゾーストマニホールドの固定構造及びこれを用いたエキゾーストマニホールドを提供する。
【解決手段】ボルトによってシリンダヘッドと固定されるエキゾーストマニホールドの固定構造であって、固定構造は、前記エキゾーストマニホールドから外側に向かって延設された固定部20からなり、固定部20は、ボルトBが挿入される挿入穴22を有するフランジ部21と、挿入されたボルトの両側面を覆うように形成され、かつ、互いに離間した一対の壁面部23とを備え、一対の壁面部23は、その一端がフランジ部21に連続し、その他端がシリンダヘッドに接触する。
【選択図】
図1