(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、ドライフィルムレジスト及びそれらの硬化物
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20240329BHJP
G03F 7/038 20060101ALI20240329BHJP
H05K 3/28 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
G03F7/004 503Z
G03F7/038 503
G03F7/004 512
H05K3/28 F
H05K3/28 D
(21)【出願番号】P 2022199885
(22)【出願日】2022-12-15
(62)【分割の表示】P 2019558172の分割
【原出願日】2018-11-29
【審査請求日】2023-01-11
(31)【優先権主張番号】P 2017234009
(32)【優先日】2017-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】今泉 尚子
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第02/08309(WO,A1)
【文献】米国特許第6166233(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004
G03F 7/038
H05K 3/28
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)光カチオン重合開始剤および(B)エポキシ化合物を含む
ネガ型レジスト用感光性樹脂組成物であって、
該(A)光カチオン重合開始剤(A)が、下記式(1)
【化1】
(式(1)中、R
1乃至R
4はそれぞれ独立に炭素数1乃至18のアルキル基又は炭素数6乃至14のアリール基を表す。但し、R
1乃至R
4の少なくとも一つは炭素数6乃至14のアリール基を表す。)
で表されるアニオンとカチオンからなる塩を含有し、かつ
該(B)エポキシ化合物が、
下記式(4)
【化4】
(式(4)中、R
8はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1乃至4のアルキル基を表す。nは平均繰り返し数であって0乃至30の範囲にある実数を表す。)
で表されるエポキシ化合物(b-3)、
下記式(5)乃至(7)
【化5】
【化6】
(式(6)中、R
9はそれぞれ独立に水素原子又はグリシジル基を表す。)
【化7-1】
【化7-2】
(式(7)中、R
10はそれぞれ独立に水素原子又はグリシジル基を表す。)
で表されるエポキシ化合物の群より選択される一種以上のエポキシ化合物(b-4)、
下記式(8)及び/又は式(9)
【化8】
で示される化合物と、
下記式(10)及び/又は式(11)
【化9】
で示される化合物との共縮合物であるエポキシ化合物(b-5)、
下記式(13)
【化11】
(式(13)中、qは平均繰り返し数であって0乃至5の範囲にある実数を表す。)
で表されるエポキシ化合物(b-7)、
下記式(15)
【化13】
(式(15)中、R
13はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1乃至4のアルキル基を表す。sは平均繰り返し数であって0乃至30の範囲にある実数を表す。)
で表されるエポキシ化合物(b-9)、及び
下記式(16)
【化14】
(式(16)中、t、u及びvは平均繰り返し数であって2≦t+u+v≦60の関係を満たす実数をそれぞれ表す。)
で表されるエポキシ化合物(b-10)からなる群より選択される1種類又は2種類以上のエポキシ化合物を含有する、
ネガ型レジスト用感光性樹脂組成物。
【請求項2】
R
1乃至R
4がそれぞれ独立にパーフルオロアルキル基を置換基として有するフェニル基又はフッ素原子を置換基として有するフェニル基である、請求項1に記載の
ネガ型レジスト用感光性樹脂組成物。
【請求項3】
R
1乃至R
4がそれぞれ独立にペンタフルオロフェニル基又はビス(トリフルオロメチル)フェニル基である、請求項2に記載の
ネガ型レジスト用感光性樹脂組成物。
【請求項4】
(A)光カチオン重合開始剤が、式(1)で表されるアニオンとヨウ素原子又は硫黄原子を有するカチオンからなる塩を含有する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の
ネガ型レジスト用感光性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の
ネガ型レジスト用感光性樹脂組成物を基材で挟み込んで得られるドライフィルムレジスト。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の
ネガ型レジスト用感光性樹脂組成物又は請求項5に記載のドライフィルムレジストの硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMS(微小電子機械システム)部品、マイクロマシン部品、マイクロ流体部品、μ-TAS(微小全分析システム)部品、インクジェットプリントヘッド部品、マイクロリアクター部品、コンデンサやインダクタ等の電子部品の絶縁層、LIGA部品、微小射出成形及び熱エンボス向け型及びスタンプ、微細印刷用途向けスクリーン又はステンシル、携帯端末やIoT部品に搭載されるMEMSセンサー、半導体デバイス、周波数フィルターデバイス等のパッケージ部品、バイオMEMS及びバイオフォトニックデバイス、並びに、プリント配線板の製作において有用である、解像性に優れ、かつその硬化物は湿熱溶出汚染が極めて低く、しかも湿熱試験後の基板との接着性に優れた感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトリソグラフィー加工可能なレジストは、半導体やMEMS、マイクロマシンアプリケーションに広範に用いられている。このようなアプリケーションでは、フォトリソグラフィー加工は、基板上でパターニング露光し、ついで、現像液で現像することで露光領域もしくは非露光領域を選択的に除去することで達成される。フォトリソグラフィー加工可能なレジスト(フォトレジスト)にはポジ型又はネガ型があり、露光部が現像液に溶解するのがポジ型、同じく不溶となるものがネガ型である。
ジアゾナフトキノン-ノボラックの組合せに基づく従来のポジ型レジストは、厚膜が要求される用途には適切ではない。この厚みの制約は、レジストを露光させるのに典型的に使用される光学スペクトルの近赤外領域(350乃至450nm)における波長においてジアゾナフトキノン型光活性化合物の吸光度が比較的高いことに起因する。
一方、ポジ型レジストの課題を解決したネガ型レジストとしては、多官能エポキシ樹脂と光重合開始剤を含む厚膜パターンを形成可能な感光性エポキシ樹脂組成物が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、アンチモン化合物である特定構造の光重合開始剤を含む感光性樹脂組成物が開示されている。当該文献には、このような特定構造の光重合開始剤を用いて良好な画像解像性、接着性等の特性を向上させる手法が記載されている。しかしながら、フッ化アンチモン系化合物を含有する光重合開始剤は、比較的高感度ではあるが、アンチモンの毒性の問題がある。多くのアンチモン化合物は劇物に指定され、用途制限を強いられるだけでなく、加工条件によってはフッ化アンチモン系化合物からフッ化水素が遊離し、金属部分を腐蝕させる原因となる。そのため、腐蝕不良を回避する工程の追加が余儀なくされるという不都合がある。また、この開始剤による重合硬化物は、耐湿熱性の指標であるプレッシャークッカー試験(以降、「PCT試験」)を硬化物単独で行うと、抽出水は強酸性を呈し、遊離フッ化水素および樹脂の酸化分解物などが多量に溶出する。
【0004】
特許文献2及び3には、アニオン部の中心元素がホウ素またはリンである特定構造の非アンチモン化合物の光カチオン重合開始剤を使用した感光性樹脂組成物が提案されている。これらの文献には、非アンチモン化合物の光カチオン重合開始剤を用いた感光性樹脂組成物がアンチモン化合物の光カチオン重合開始剤を用いた感光性樹脂組成物と同等又はそれ以上の感度を示したことが記載されている。しかしながら、これらの文献に記載されている非アンチモン化合物の光重合開始剤を用いた組成物の硬化物をPCT試験に供すると、その抽出水は高い導電率及び低いpHを示す。このような硬化物は、耐水性や耐湿熱性が不充分なばかりでなく、湿熱環境下または耐水環境下において酸性溶出物による汚染を招く恐れがある、そのため、これらの文献の感光性樹脂組成物は、水系の流体を使用するマイクロ流体部品、μ-TAS(微小全分析システム)部品及びインクジェットノズル部品等の用途や、樹脂封止の際に高い耐湿熱性が要求される携帯情報端末機器に搭載される周波数フィルターデバイスやIoT部品に搭載されるセンサー等のエレクトロパッケージアプリケーション等の用途への適用には制限を強いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4691047号公報
【文献】特許第6205522号公報
【文献】特許第5020646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、良好な画像解像性を保有し、且つ硬化物の湿熱溶出汚染を低減し、湿熱接着性の良好な感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の諸態様は、以下のとおりである。
[1].
(A)光カチオン重合開始剤および(B)エポキシ化合物を含む感光性樹脂組成物であって、
該(A)光カチオン重合開始剤(A)が、下記式(1)
【化1】
(式(1)中、R
1乃至R
4はそれぞれ独立に炭素数1乃至18のアルキル基又は炭素数6乃至14のアリール基を表す。但し、R
1乃至R
4の少なくとも一つは炭素数6乃至14のアリール基を表す。)で表されるアニオンとカチオンからなる塩を含有し、かつ
該(B)エポキシ化合物が、
下記式(2)
【化2】
(式(2)中、R
5はそれぞれ独立にグリシジル基又は水素原子を示し、複数存在するR
5のうちの少なくとも2つはグリシジル基である。kは平均繰り返し数であって0乃至30の範囲にある実数を表す。)で表されるエポキシ化合物(b-1)、
下記式(3)
【化3】
(式(3)中、R
6はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基又はトリフルオロメチル基を表す。R
7は水素原子又はグリシジル基を表し、R
7が複数存在する場合、それぞれのR
7は同一でも異なっていてもよい。mは平均繰り返し数であって0乃至30の範囲にある実数を表す。)
で表されるエポキシ化合物(b-2)、
下記式(4)
【化4】
(式(4)中、R
8はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1乃至4のアルキル基を表す。nは平均繰り返し数であって0乃至30の範囲にある実数を表す。)
で表されるエポキシ化合物(b-3)、
下記式(5)乃至(7)
【化5】
【化6】
(式(6)中、R
9はそれぞれ独立に水素原子又はグリシジル基を表す。)
【化7-1】
【化7-2】
(式(7)中、R
10はそれぞれ独立に水素原子又はグリシジル基を表す。)
で表されるエポキシ化合物の群より選択される一種以上のエポキシ化合物(b-4)、
下記式(8)及び/又は式(9)
【化8】
で示される化合物と、
下記式(10)及び/又は式(11)
【化9】
で示される化合物との共縮合物であるエポキシ化合物(b-5)、
下記式(12)
【化10】
(式(12)中、R
12はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1乃至4のアルキル基を表す。pは平均繰り返し数であって0乃至10の範囲にある実数を表す。)
で表されるエポキシ化合物(b-6)、
下記式(13)
【化11】
(式(13)中、qは平均繰り返し数であって0乃至5の範囲にある実数を表す。)
で表されるエポキシ化合物(b-7)、
下記式(14)
【化12】
(式(14)中、rは平均繰り返し数であって0乃至6の範囲にある実数を表す。)
で表されるエポキシ化合物(b-8)、
下記式(15)
【化13】
(式(15)中、R
13はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1乃至4のアルキル基を表す。sは平均繰り返し数であって0乃至30の範囲にある実数を表す。)
で表されるエポキシ化合物(b-9)、及び
下記式(16)
【化14】
(式(16)中、t、u及びvは平均繰り返し数であって2≦t+u+v≦60の関係を満たす実数をそれぞれ表す。)
で表されるエポキシ化合物(b-10)からなる群より選択される1種類又は2種類以上のエポキシ化合物を含有する、感光性樹脂組成物。
[2].
R
1乃至R
4がそれぞれ独立にパーフルオロアルキル基を置換基として有するフェニル基又はフッ素原子を置換基として有するフェニル基である、上記[1]項に記載の感光性樹脂組成物。
[3].
R
1乃至R
4がそれぞれ独立にペンタフルオロフェニル基又はビス(トリフルオロメチル)フェニル基である、上記[2]項に記載の感光性樹脂組成物。
[4].
(A)光カチオン重合開始剤が、式(1)で表されるアニオンとヨウ素原子又は硫黄原子を有するカチオンからなる塩を含有する、上記[1]乃至[3]項のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
[5].
上記[1]乃至[4]項のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を基材で挟み込んで得られるドライフィルムレジスト。
[6].
上記[1]乃至[4]項のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物又は上記[5]項に記載のドライフィルムレジストの硬化物。
【発明の効果】
【0008】
本発明の感光性樹脂組成物は解像度に優れると共に、該組成物の硬化物は湿熱溶出汚染が極めて低く、しかも湿熱試験後の基板との接着性に優れるため、水系の流体を使用する用途や樹脂封止の際に高い耐湿熱性が要求される用途に用いられるMEMS部品等に好適に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明について説明する。
本発明の感光性樹脂組成物に含まれる(A)光カチオン重合開始剤は、前記式(1)で表されるアニオンとカチオンからなる塩を含有する。
式(1)中、R1乃至R4は、それぞれ独立に炭素数1乃至18のアルキル基又は炭素数6乃至14のアリール基を表すが、R1乃至R4の少なくとも一つは、炭素数6乃至14のアリール基を表す。即ち、式(1)におけるR1乃至R4は以下いずれかの組合せである。
(i)R1乃至R4のうちの一つがアリール基で残りの三つがアルキル基の組合せ。
(ii)R1乃至R4のうちの二つがアリール基で残りの二つがアルキル基の組合せ。
(iii)R1乃至R4のうちの三つがアリール基で残りの一つがアルキル基の組合せ。
(iv)R1乃至R4の全てがアリール基の組合せ。
上記の組合せのうち、(iii)又は(iv)のアニオンが好ましく、(iv)のアニオンがより好ましい。
【0010】
式(1)のR1乃至R4が表す炭素数1乃至18のアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状又は環状の何れにも限定されない。その具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、iso-ペンチル基、t-ペンチル基、sec-ペンチル基、n-ヘキシル基、iso-ヘキシル基、n-ヘプチル基、sec-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、sec-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等が挙げられる。
式(1)のR1乃至R4が表す炭素数1乃至18のアルキル基は、置換基を有していてもよい。ここで言う「置換基を有するアルキル基」とは、アルキル基がその構造中に有する水素原子が置換基で置換されたアルキル基を意味する。置換基の位置及び置換基の数は特に限定されない。尚、置換基が炭素原子を有する場合、R1乃至R4が表すアルキル基の炭素数には置換基が有する炭素原子の数は含まれない。具体的には、例えばフェニル基を置換基として有するエチル基の場合、炭素数2のアルキル基とみなす。
【0011】
式(1)のR1乃至R4が表す炭素数1乃至18のアルキル基が有していてもよい置換基は、特に限定されない(但し、アルキル基は除く)が、例えばアルコキシ基、芳香族基、複素環基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、メルカプト基、ニトロ基、アルキル置換アミノ基、アリール置換アミノ基、非置換アミノ基(NH2基)、シアノ基、イソシアノ基等が挙げられる。
式(1)のR1乃至R4が表す炭素数1乃至18のアルキル基が置換基として有していてもよいアルコキシ基とは、酸素原子とアルキル基が結合した置換基である。アルコキシ基が有するアルキル基としては、例えば式(1)のR1乃至R4が表す炭素数1乃至18のアルキル基の項に記載したアルキル基と同じものが挙げられる。
式(1)のR1乃至R4が表す炭素数1乃至18のアルキル基が置換基として有していてもよい芳香族基とは、芳香族化合物の芳香環から水素原子を一つ除いた残基であれば特に限定されない。例えばフェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、クオーターフェニル基、トリル基、インデニル基、ナフチル基、アントリル基、フルオレニル基、ピレニル基、フェナンスニル基及びメスチル基等が挙げられる。
【0012】
式(1)のR1乃至R4が表す炭素数1乃至18のアルキル基が置換基として有していてもよい複素環基とは、複素環化合物の複素環から水素原子を一つ除いた残基であれば特に限定されない。例えばフラニル基、チエニル基、チエノチエニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、N-メチルイミダゾリル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、ピリジル基、ピラジル基、ピリミジル基、キノリル基、インドリル基、ベンゾピラジル基、ベンゾピリミジル基、ベンゾチエニル基、ナフトチエニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチアゾリル基、ピリジノチアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピリジノイミダゾリル基、N-メチルベンゾイミダゾリル基、ピリジノ-N-メチルイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ピリジノオキサゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基、ピリジノチアジアゾリル基、ベンゾオキサジアゾリル基、ピリジノオキサジアゾリル基、カルバゾリル基、フェノキサジニル基及びフェノチアジニル基等が挙げられる。
【0013】
式(1)のR1乃至R4が表す炭素数1乃至18のアルキル基が置換基として有していてもよいハロゲン原子の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
式(1)のR1乃至R4が表す炭素数1乃至18のアルキル基が置換基として有していてもよいアルキル置換アミノ基は、モノアルキル置換アミノ基及びジアルキル置換アミノ基の何れにも制限されない、これらアルキル置換アミノ基におけるアルキル基としては、例えば式(1)のR1乃至R4が表す炭素数1乃至18のアルキル基の項に記載したアルキル基と同じものが挙げられる。
式(1)のR1乃至R4が表す炭素数1乃至18のアルキル基が置換基として有していてもよいアリール置換アミノ基は、モノアリール置換アミノ基及びジアリール置換アミノ基の何れにも制限されない。これらアリール置換アミノ基におけるアリール基としては、式(1)のR1乃至R4が表す炭素数1乃至18のアルキル基が置換基として有していてもよい芳香族基と同じものが挙げられる。
【0014】
式(1)のR1乃至R4が表す炭素数6乃至14のアリール基の具体例としては、式(1)のR1乃至R4が表す炭素数1乃至18のアルキル基が有していてもよい置換基としての芳香族基と同じものが挙げられる。
式(1)のR1乃至R4が表す炭素数6乃至14のアリール基は置換基を有していてもよい。ここで言う「置換基を有するアリール基」とは、アリール基がその構造中に有する水素原子が置換基で置換されたアリール基を意味する。置換基の位置及び置換基の数は特に限定されない。尚、置換基が炭素原子を有する場合、R1乃至R4が表すアリール基の炭素数には置換基が有する炭素原子の数は含まれない。具体的には、例えばエチル基を置換基として有するフェニル基の場合、炭素数6のアリール基とみなす。
【0015】
式(1)のR1乃至R4が表す炭素数6乃至14のアリール基が有していてもよい置換基は、特に限定されないが、例えばアルキル基、アルコキシ基、芳香族基、複素環基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、メルカプト基、ニトロ基、アルキル置換アミノ基、アリール置換アミノ基、非置換アミノ基(NH2基)、シアノ基、イソシアノ基等が挙げられる。
式(1)のR1乃至R4が表す炭素数6乃至14のアリール基が置換基として有していてもよいアルキル基としては、例えば式(1)のR1乃至R4が表す炭素数1乃至18のアルキル基の項に記載したアルキル基と同じものが挙げられる。
式(1)のR1乃至R4が表す炭素数6乃至14のアリール基が置換基として有していてもよいアルコキシ基、芳香族基、複素環基、ハロゲン原子、アルキル置換アミノ基及びアリール置換アミノ基の具体例としては、式(1)のR1乃至R4が表す炭素数1乃至18のアルキル基が置換基として有していてもよいアルコキシ基、芳香族基、複素環基、ハロゲン原子、アルキル置換アミノ基及びアリール置換アミノ基と同じものが挙げられる。
【0016】
式(1)におけるR1乃至R4としては、ハロゲン原子を置換基として有する炭素数1乃至18のアルキル基又はハロゲン原子を置換基として有する炭素数6乃至14のアリール基であることが好ましく、フッ素原子を置換基として有する炭素数1乃至18のアルキル基又はフッ素原子を置換基として有する炭素数6乃至14のアリール基であることがより好ましい。
【0017】
式(1)で表されるアニオンと塩を形成するカチオンは、一価の陽イオンであれば特に限定されないが、オキソニウムイオン、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、スルホニウムイオン又はヨードニウムイオンが好ましく、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、スルホニウムイオン又はヨードニウムイオンがより好ましく、スルホニウムイオン又はヨードニウムイオンが更に好ましい。
【0018】
オキソニウムイオンとしては、例えばトリメチルオキソニウム、ジエチルメチルオキソニウム、トリエチルオキソニウム及びテトラメチレンメチルオキソニウム等のオキソニウム、4-メチルピリリニウム、2,4,6-トリメチルピリリニウム、2,6-ジ-tert-ブチルピリリニウム及び2,6-ジフェニルピリリニウム等のピリリニウム、2,4-ジメチルクロメニウム及び1,3-ジメチルイソクロメニウム等のクロメニウムやイソクロメニウム等が挙げられる。
【0019】
アンモニウムイオンとしては、例えばN,N-ジメチルピロリジニウム、N-エチル-N-メチルピロリジニウム及びN,N-ジエチルピロリジニウム等のピロリジニウム、N,N’-ジメチルイミダゾリニウム、N,N’-ジエチルイミダゾリニウム、N-エチル-N’-メチルイミダゾリニウム、1,3,4-トリメチルイミダゾリニウム及び1,2,3,4-テトラメチルイミダゾリニウム等のイミダゾリニウム、N,N’-ジメチルテトラヒドロピリミジニウム等のテトラヒドロピリミジニウム、N,N’-ジメチルモルホリニウム等のモルホリニウム、N,N’-ジエチルピペリジニウム等のピペリジニウム、N-メチルピリジニウム、N-ベンジルピリジニウム及びN-フェナシルピリジウム等のピリジニウム、N,N’-ジメチルイミダゾリウム等のイミダゾリウム、N-メチルキノリウム、N-ベンジルキノリウム及びN-フェナシルキノリウム等のキノリウム、N-メチルイソキノリウム等のイソキノリウム、ベンジルベンゾチアゾニウム及びフェナシルベンゾチアゾニウム等のチアゾニウム、ベンジルアクリジウム及びフェナシルアクリジウム等のアクリジウム等が挙げられる。
【0020】
ホスホニウムイオンとしては、例えばテトラフェニルホスホニウム、テトラ-p-トリルホスホニウム、テトラキス(2-メトキシフェニル)ホスホニウム、テトラキス(3-メトキシフェニル)ホスホニウム及びテトラキス(4-メトキシフェニル)ホスホニウム等のテトラアリールホスホニウム、トリフェニルベンジルホスホニウム、トリフェニルフェナシルホスホニウム、トリフェニルメチルホスホニウム及びトリフェニルブチルホスホニウム等のトリアリールホスホニウム、トリエチルベンジルホスホニウム、トリブチルベンジルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、テトラヘキシルホスホニウム、トリエチルフェナシルホスホニウム及びトリブチルフェナシルホスホニウム等のテトラアルキルホスホニウム等が挙げられる。
【0021】
スルホニウムイオンとしては、例えばトリフェニルスルホニウム、トリ-p-トリルスルホニウム、トリ-o-トリルスルホニウム、トリス(4-メトキシフェニル)スルホニウム、1-ナフチルジフェニルスルホニウム、2-ナフチルジフェニルスルホニウム、トリス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、トリ-1-ナフチルスルホニウム、トリ-2-ナフチルスルホニウム、トリス(4-ヒドロキシフェニル)スルホニウム、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、4-(p-トリルチオ)フェニルジ-p-トリルスルホニウム、4-(4-メトキシフェニルチオ)フェニルビス(4-メトキシフェニル)スルホニウム、4-(フェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、4-(フェニルチオ)フェニルビス(4-メトキシフェニル)スルホニウム、4-(フェニルチオ)フェニルジ-p-トリルスルホニウム、[4-(4-ビフェニリルチオ)フェニル]-4-ビフェニリルフェニルスルホニウム、[4-(2-チオキサントニルチオ)フェニル]ジフェニルスルホニウム、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド、ビス〔4-{ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホニオ}フェニル〕スルフィド、ビス{4-[ビス(4-フルオロフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、ビス{4-[ビス(4-メチルフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、ビス{4-[ビス(4-メトキシフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、4-(4-ベンゾイル-2-クロロフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、4-(4-ベンゾイル-2-クロロフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、4-(4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、4-(4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、7-イソプロピル-9-オキソ-10-チア-9,10-ジヒドロアントラセン-2-イルジ-p-トリルスルホニウム、7-イソプロピル-9-オキソ-10-チア-9,10-ジヒドロアントラセン-2-イルジフェニルスルホニウム、2-[(ジ-p-トリル)スルホニオ]チオキサントン、2-[(ジフェニル)スルホニオ]チオキサントン、4-(9-オキソ-9H-チオキサンテン-2-イル)チオフェニル-9-オキソ-9H-チオキサンテン-2-イルフェニルスルホニウム、4-[4-(4-tert-ブチルベンゾイル)フェニルチオ]フェニルジ-p-トリルスルホニウム、4-[4-(4-tert-ブチルベンゾイル)フェニルチオ]フェニルジフェニルスルホニウム、4-[4-(ベンゾイルフェニルチオ)]フェニルジ-p-トリルスルホニウム、4-[4-(ベンゾイルフェニルチオ)]フェニルジフェニルスルホニウム、5-(4-メトキシフェニル)チオアンスレニウム、5-フェニルチオアンスレニウム、5-トリルチオアンスレニウム、5-(4-エトキシフェニル)チオアンスレニウム及び5-(2,4,6-トリメチルフェニル)チオアンスレニウム等のトリアリールスルホニウム、ジフェニルフェナシルスルホニウム、ジフェニル4-ニトロフェナシルスルホニウム、ジフェニルベンジルスルホニウム及びジフェニルメチルスルホニウム等のジアリールスルホニウム、フェニルメチルベンジルスルホニウム、4-ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、4-メトキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、4-アセトカルボニルオキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、4-ヒドロキシフェニル(2-ナフチルメチル)メチルスルホニウム、2-ナフチルメチルベンジルスルホニウム、2-ナフチルメチル(1-エトキシカルボニル)エチルスルホニウム、フェニルメチルフェナシルスルホニウム、4-ヒドロキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム、4-メトキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム、4-アセトカルボニルオキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム、2-ナフチルメチルフェナシルスルホニウム、2-ナフチルオクタデシルフェナシルスルホニウム及び9-アントラセニルメチルフェナシルスルホニウム等のモノアリールスルホニウム、ジメチルフェナシルスルホニウム、フェナシルテトラヒドロチオフェニウム、ジメチルベンジルスルホニウム、ベンジルテトラヒドロチオフェニウム及びオクタデシルメチルフェナシルスルホニウム等のトリアルキルスルホニウム等が挙げられる。
【0022】
ヨードニウムイオンとしては、例えばジフェニルヨードニウム、ジ-p-トリルヨードニウム、ビス(4-ドデシルフェニル)ヨードニウム、ビス(4-メトキシフェニル)ヨードニウム、(4-オクチルオキシフェニル)フェニルヨードニウム、ビス(4-デシルオキシ)フェニルヨードニウム、4-(2-ヒドロキシテトラデシルオキシ)フェニルフェニルヨードニウム、4-イソプロピルフェニル(p-トリル)ヨードニウム及び4-イソブチルフェニル(p-トリル)ヨードニウム等のヨードニウムイオン等が挙げられる。
【0023】
式(1)で表されるアニオンとカチオンからなる塩は、例えば特開2013-043864号公報等に記載の公知の方法に準じて合成することが可能である。また市販されているCPI-310FG(商品名、光カチオン重合開始剤、サンアプロ社製)等を入手して用いてもよい。
【0024】
本発明の感光性樹脂組成物に含まれる(A)光カチオン重合開始剤が含有する式(1)で表されるアニオンとカチオンからなる塩の具体例を以下に例示するが、これらに限定されるものではない。
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
本発明の感光性樹脂組成物における(A)光カチオン重合開始剤の含有量は、(B)エポキシ化合物の含有量に対して好ましくは0.05乃至15質量%、より好ましくは0.07乃至10質量%、更に好ましくは0.1乃至8質量%、最も好ましくは0.5乃至5質量%である。(A)光カチオン重合開始剤の、波長300乃至380nmにおけるモル吸光係数が高い場合は、感光性樹脂組成物を用いる際の体積や厚みに応じて適切な配合量に調整しても良い。
また、(A)光カチオン重合開始剤中の式(1)で表されるアニオンとカチオンからなる塩の含有量は、本発明の効果が損なわれない限り特に限定されるものではないが、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、最も好ましくは100%である。
【0029】
本発明の感光性樹脂組成物に含まれる(B)エポキシ化合物は、上記したエポキシ化合物(b-1)乃至(b-10)からなる群より選択される1種又は2種以上のエポキシ化合物を含有する。
前記エポキ化合物(b-1)の具体例としては、KM-N LCL(商品名、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、日本化薬社製、エポキシ当量195乃至210g/eq.、軟化点78乃至86℃)、jER157(商品名、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、三菱ケミカル社製、エポキシ当量200乃至220g/eq.、軟化点70℃)、EPON SU-8(商品名、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ヘキシオン社製、エポキシ当量195乃至230g/eq.、軟化点80乃至90℃)等が挙げられる。
【0030】
前記エポキシ化合物(b-2)は、例えばビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、及びこれらのエポキシ化合物がその構造中に有するアルコール性水酸基の一部又は全部がエポキシ化されたエポキシ化合物等である。ビスフェノールA型エポキシ化合物の具体例としては、新日鉄住金化学社製のYDシリーズ、三菱ケミカル社製のjER828シリーズやjER1000シリーズ、及びDIC社製のEPICLONシリーズ等(エポキシ当量及び軟化点は平均繰り返し数の違いにより多種多様である)が挙げられる。ビスフェノールF型エポキシ化合物の具体例としては、新日鉄住金化学社製のYDFシリーズ、三菱ケミカル社製のjER800シリーズやjER4000シリーズ、及びDIC社製のEPICLONシリーズ等(エポキシ当量及び軟化点は平均繰り返し数の違いにより多種多様である)が挙げられる。また、ビスフェノールA型エポキシ化合物やビスフェノールF型エポキシ化合物がその構造中に有するアルコール性水酸基の一部又は全部がエポキシ化されたエポキシ化合物の具体例としては、NER-7604及びNER-7403(いずれも商品名、日本化薬社製、エポキシ当量200乃至500g/eq.、軟化点55乃至80℃)、NER-1302及びNER-7516(いずれも商品名、日本化薬社製、エポキシ当量200乃至500g/eq.、軟化点55乃至80℃)等が挙げられる。
なお、本明細書において、エポキシ化合物中の構造単位の繰り返し数は、GPCの測定結果に基づいてポリスチレン換算で算出した数平均分子量と一般式から算出される値を指す。後述の実施例で用いたエポキシ化合物についての繰り返し数はこの手法により算出された値である。
【0031】
前記エポキシ化合物(b-3)の具体例としては、NC-3000H等のNC-3000シリーズ(商品名、ビフェニル-フェノールノボラック型エポキシ樹脂、日本化薬社製、エポキシ当量270乃至300g/eq.、軟化点55乃至75℃)が挙げられる。
前記エポキシ化合物(b-4)の具体例としては、NC-6300H(商品名、日本化薬社製、エポキシ当量226乃至238g/eq.、軟化点67乃至74℃)が挙げられる。
前記エポキシ化合物(b-5)は、例えば、特開2007-291263号公報に記載の方法により得ることができる。
前記エポキシ化合物(b-6)の具体例としては、EPPN-201(商品名、日本化薬社製、エポキシ当量180乃至200g/eq.、軟化点65乃至78℃)、EOCN-1020-70等のEOCN-1020シリーズ(商品名、日本化薬社製、エポキシ当量190乃至210g/eq.、軟化点55乃至85℃)等が挙げられる。
【0032】
前記エポキシ化合物(b-7)の具体例としては、EPPN-501H(商品名、日本化薬社製、エポキシ当量162乃至172g/eq.、軟化点51乃至57℃)、EPPN-501HY(商品名、日本化薬社製、エポキシ当量163乃至175g/eq.、軟化点57乃至63℃)、EPPN-502H(商品名、日本化薬社製、エポキシ当量158乃至178g/eq.、軟化点60乃至72℃)が挙げられる。
前記エポキシ化合物(b-8)の具体例としては、XD-1000(商品名、日本化薬株式会社製、エポキシ当量245乃至260g/eq.、軟化点68乃至78℃)が挙げられる。
前記エポキシ化合物(b-9)の具体例としては、NC-7700(商品名、日本化薬社製、エポキシ当量210乃至250g/eq.、軟化点86乃至91℃)が挙げられる。
前記エポキシ化合物(b-10)の具体例としては、EHPE3150(商品名、ダイセル化学社製:エポキシ当量170乃至190g/eq.、軟化点70乃至90℃)が挙げられる。
【0033】
本発明の感光性樹脂組成物に含まれる(B)エポキシ化合物のエポキシ当量及び分子量に特に制限はなく、また軟化点についても特に制限はない。後述するドライフィルムレジストをフォトマスクに直接接触させて用いる場合には、マスクスティッキングを防ぐために、(B)エポキシ化合物の軟化点が40℃以上であることが好ましく、55℃以上であることがより好ましい。
尚、本明細書におけるエポキシ当量とは、JIS K7236に準拠した方法で測定した値である。本明細書における分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーの測定結果に基づいてポリスチレン換算で算出した重量平均分子量の値である。本明細書における軟化点とは、JIS K7234に準拠した方法で測定した値である。
【0034】
本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じて、エポキシ化合物(b-1)乃至(b-10)以外のエポキシ化合物、溶剤、接着性付与剤、ポリオール化合物、多価フェノール化合物、増感剤又はイオンキャッチャー等の成分を任意選択で併用することが出来る。併用可能な任意成分は、感光性樹脂組成物の機能・効果を阻害しない限りは、特に限定されない。
【0035】
本発明の感光性樹脂組成物に併用し得るエポキシ化合物(b-1)乃至(b-10)以外のエポキシ化合物は、特に限定されず、公知のグリシジルエーテル型エポキシ化合物や脂環式エポキシ化合物を用いることができる。一般に反応性希釈剤とも呼ばれるジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ジメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(アデカ社製、ED506)、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(アデカ社製、ED505)、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(低塩素タイプ、ナガセケムテックス社製、EX321L)、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル等を併用することは、感光性樹脂組成物の反応性や硬化膜の物性の改善等に効果的である。
本発明の感光性樹脂組成物における任意成分としてのエポキシ化合物の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されず、溶剤を除く感光性樹脂組成物の固形分中に好ましくは10質量%以下となる量が用いられる。
【0036】
本発明の感光性樹脂組成物に併用し得る溶剤は、特に限定されないが、インキや塗料等に通常用いられる有機溶剤であって感光性樹脂組成物の各成分を溶解可能なものが好ましく用いられる。このような有機溶剤としては、アセトン、エチルメチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン及びシクロペンタノン等のケトン類、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン及びテトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、ジグライム、ジプロピレングリコールジメチルエーテル及びジプロピレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル、酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、メチル-3-メトキシプロピオネート、エチル-3-メトキシプロピオネート、エチル-3-エトキシプロピオネート、プロピル-3-メトキシプロピオネート、酢酸ブチル、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類、α-アセトラクトン、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン及びδ-バレロラクトン等のラクトン類、メタノール、エタノール、セロソルブ及びメチルセロソルブ等のアルコール類、オクタン及びデカン等の脂肪族炭化水素、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ及びソルベントナフサ等の石油系溶剤等を挙げることができる。これらの溶剤は単独で用いても複数種を混合して用いてもよい。
本発明の感光性樹脂組成物における溶剤の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されず、感光性樹脂組成物中に通常95質量%以下、好ましくは10乃至90質量%となる量が用いられる。
【0037】
本発明の感光性樹脂組成物に併用し得る接着性付与剤は、特に限定されず、公知のシランカップリング剤やチタンカップリング剤等を用いることができる。好ましくはシランカップリング剤である。これらの接着性付与剤は単独で用いても複数種を混合して用いてもよい。
シランカップリング剤の具体例としては、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、8-グリシジルオクチルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらのカップリング剤は単独で用いても複数種を混合して用いてもよい。
本発明の感光性樹脂組成物における接着性付与剤の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されず、溶剤を除く感光性樹脂組成物の固形分中に好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下となる量が用いられる。
【0038】
本発明の感光性樹脂組成物に併用し得るポリオール化合物は、特に限定されないが、典型的には、強酸触媒の影響の下でエポキシ基と反応するヒドロキシ基を含むポリエステルポリオール系化合物である。例えば、特許公報5901070号に挙げられているポリオール化合物を併用できる。これを用いることで、フォトリソグラフィー加工時における露光硬化、現像、及び熱硬化工程での応力誘発を回避し、収縮を低減させ、感光画像の亀裂を防止することができる。本発明の感光性樹脂組成物におけるポリオール化合物の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されず、(B)エポキシ化合物の合計質量に対して通常1乃至30質量%、好ましくは、2乃至25質量%である。
【0039】
本発明の感光性樹脂組成物に併用し得る多価フェノール化合物は、加熱によってエポキシ化合物の架橋密度を高く硬化させることができる化合物である。例えば、特許公報5967824号に挙げられている多価フェノール化合物を併用できる。これを用いることで、樹脂硬化物に低透湿性、高接着性、強靱性の機能を付与せしめることができる。本発明の感光性樹脂組成物における多価フェノール化合物の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されず、(B)エポキシ化合物の合計質量に対して通常3乃至40質量%、好ましくは4乃至30質量%であり、更に好ましくは5乃至25質量%である。
【0040】
本発明の感光性樹脂組成物に併用し得る増感剤は、吸収した光エネルギーを光カチオン重合開始剤に供与する役割を果たすものであれば特に制限なく用いることができる。例えば、チオキサントン類、9位と10位にアルコキシ基を有するアントラセン化合物(9,10-ジアルコキシアントラセン誘導体)が好ましい。前記アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1乃至4のアルコキシ基が挙げられる。9,10-ジアルコキシアントラセン誘導体は、さらに置換基を有していても良い。置換基としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1乃至4のアルキル基やスルホン酸アルキルエステル基、カルボン酸アルキルエステル基等が挙げられる。スルホン酸アルキルエステル基やカルボン酸アルキルエステルにおけるアルキルとしては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1乃至4のアルキルが挙げられる。これらの置換基の置換位置は2位が好ましい。
【0041】
チオキサントン類の具体例としては、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等が挙げられる。2,4-ジエチルチオキサントン(例えば、商品名 カヤキュアーDETX-S、日本化薬社製)、2,4-ジイソプロピルチオキサントンが好ましい。
9,10-ジアルコキシアントラセン誘導体としては、例えば9,10-ジメトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、9,10-ジプロポキシアントラセン、9,10-ジブトキシアントラセン、9,10-ジメトキシ-2-エチルアントラセン、9,10-ジエトキシ-2-エチルアントラセン、9,10-ジプロポキシ-2-エチルアントラセン、9,10-ジメトキシ-2-クロロアントラセン、9,10-ジメトキシアントラセン-2-スルホン酸メチルエステル、9,10-ジエトキシアントラセン-2-スルホン酸メチルエステル、9,10-ジメトキシアントラセン-2-カルボン酸メチルエステル等が挙げられる。これらの増感剤は単独で用いても複数種を混合して用いてもよい。
本発明の感光性樹脂組成物における増感剤の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されず、(A)光カチオン重合開始剤に対して好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下となる量が用いられる。
【0042】
本発明の感光性樹脂組成物に併用し得るイオンチャッチャーは、(A)光カチオン重合開始剤由来のイオンによる悪影響を低減し得るものであれば特に制限なく用いることができる。例えば、有機アルミニウム化合物類、具体的にはトリスメトキシアルミニウム、トリスエトキシアルミニウム、トリスイソプロポキシアルミニウム、イソプロポキシジエトキシアルミニウム及びトリスブトキシアルミニウム等のアルコキシアルミニウム、トリスフェノキシアルミニウム及びトリスパラメチルフェノキシアルミニウム等のフェノキシアルミニウム、トリスアセトキシアルミニウム、トリスステアラトアルミニウム、トリスブチラトアルミニウム、トリスプロピオナトアルミニウム、トリスアセチルアセトナトアルミニウム、トリストリフルオロアセチルアセナトアルミニウム、トリスエチルアセトアセタトアルミニウム、ジアセチルアセトナトジピバロイルメタナトアルミニウム及びジイソプロポキシ(エチルアセトアセタト)アルミニウム等が挙げられる。これらのイオンキャッチャーは単独で用いても複数種を混合して用いてもよい。
【0043】
また、紫外線照射によって弱酸を発するオニウム弱酸塩化合物も、イオンキャッチャーとして好適に併用し得る。具体的には、オニウム塩のアニオン部としては、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、カンファースルホン酸等のアルキルスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、シクロヘキサンスルホン酸、アダマンタンスルホン酸、ジシクロペンタジエンスルホン酸等の弱酸構造が挙げられる。これらは、単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。オニウム塩のカチオン部としては一価の有機陽イオンであれば特に限定されないが、オキソニウムイオン、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、スルホニウムイオン又はヨードニウムイオンが好ましい。アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、スルホニウムイオンまたはヨードニウムイオンがより好ましく、スルホニウムイオン又はヨードニウムイオンが更に好ましい。オニウム弱酸塩化合物は光重合を著しく阻害させない程度に併用してもよい。
本発明の感光性樹脂組成物におけるイオンキャッチャーの含有量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されない。有機アルミニウム化合物類の場合は、溶剤を除く感光性樹脂組成物の固形分中に好ましくは10質量%以下となる量が用いられる。
オニウム弱酸塩化合物の場合は、本発明の(A)光カチオン重合開始剤の配合量に対し好ましくは0.001乃至2質量%となる量が用いられる。
【0044】
本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じて、熱可塑性樹脂、着色剤、増粘剤、消泡剤、レベリング剤等の各種添加剤を用いることも出来る。熱可塑性樹脂としては、例えばポリエーテルスルホン、ポリスチレン、ポリカーボネート等が挙げられる。着色剤としては、例えばフタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオジングリーン、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラック等が挙げられる。増粘剤としては、例えばオルベン、ベントン、モンモリロナイト等が挙げられる。消泡剤としては、例えばシリコーン系、フッ素系および高分子系等の消泡剤が挙げられる。
本発明の感光性樹脂組成物におけるこれら各種添加剤の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されず、溶剤を除く感光性樹脂組成物の固形分中に好ましくは30質量%以下となる量が用いられる。
【0045】
本発明の感光性樹脂組成物には、更に必要に応じて、例えば硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化ケイ素、無定形シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、雲母粉等の無機充填剤を用いることができる。
本発明の感光性樹脂組成物におけるこれら無機充填材の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されず、溶剤を除く感光性樹脂組成物の固形分中に好ましくは60質量%以下となる量が用いられる。
【0046】
本発明の感光性樹脂組成物は、必須成分である(A)光カチオン重合開始剤と(B)エポキシ化合物を配合した後、必要により任意成分を添加して、通常の方法で混合、攪拌することにより得ることができる。あるいは、必要に応じディゾルバー、ホモジナイザー、3本ロールミルなどの分散機を用いて分散、混合させてもよい。また、混合した後で、さらにメッシュ、メンブレンフィルターなどを用いてろ過してもよい。
【0047】
本発明の感光性樹脂組成物は、好ましくは液状で使用される。
基板上に硬化物を形成するために本発明の感光性樹脂組成物を使用するには、例えば、シリコン基板、アルミニウム、銅、白金、金、チタン、クロム、タンタル等の金属膜または金属酸化物膜付き基板、リチウムタンタレート、ガラス、シリコンオキサイド、シリコンナイトライド等のセラミック基板、ポリイミド、ポリエチレンテレフタラート等の基板上に0.1乃至1000μmの厚みでスピンコーター等を用いて塗布し、60乃至130℃で5乃至60分間程度、熱処理し溶剤を除去し感光性樹脂組成物層を形成することができる。次いで、所定のパターンを有するマスクを載置して紫外線を照射し、50乃至130℃で1乃至50分間程度、加熱処理を行った後、未露光部分を、現像液を用いて室温(例えば15℃以上)乃至50℃で1乃至180分間程度現像してパターンを形成し、次いで130乃至200℃で加熱処理をすることにより、諸特性を満足する硬化物を得ることができる。
現像液としては、例えばγ-ブチロラクトン、トリエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の有機溶剤、あるいは、前記有機溶剤と水の混合液等を用いることができる。現像にはパドル型、スプレー型、シャワー型等の現像装置を用いてもよく、必要に応じて超音波照射を行ってもよい。尚、本発明の感光性樹脂組成物を使用するにあたり好ましい金属基板としては、アルミニウムが挙げられる。
本発明の感光性樹脂組成物を用いて硬化物を形成するための諸条件は、上記に限定されるわけではなく、必要に応じて適宜調整可能である。
【0048】
本発明の感光性樹脂組成物は、ベースフィルム上にロールコーター、ダイコーター、ナイフコーター、バーコーター、グラビアコーター等を用いて該組成物を塗布した後、45乃至100℃に設定した乾燥炉で乾燥し、所定量の溶剤を除去することにより、又必要に応じてカバーフィルム等を積層することによりドライフィルムレジストとすることができる。この際、ベースフィルム上のレジストの厚みは、2乃至200μmに調整される。ベースフィルム及びカバーフィルムとしては、例えばポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、TAC、ポリイミド等のフィルムが使用される。これらフィルムには、必要に応じてシリコーン系離型処理剤や非シリコーン系離型処理剤等により離型処理されたフィルムを用いてもよい。このドライフィルムレジストを使用するには、例えばカバーフィルムをはがして、ハンドロール、ラミネーター等により、温度40乃至100℃、圧力0.05乃至2MPaで基板に転写し、前記硬化物の形成の場合と同様に露光、露光後ベーク、現像、加熱処理をすればよい。
本発明の感光性樹脂組成物を用いてドライフィルムレジストを形成・使用するための諸条件は、上記に限定されるわけではなく、必要に応じて適宜調整可能である。
【0049】
前述のように感光性樹脂組成物をドライフィルムレジストとして供給すれば、支持体上への塗布、および乾燥の工程を省略することが可能であり、より簡便に本発明の感光性樹脂組成物を用いたパターン形成が可能となる。
【0050】
MEMSパッケージ及び半導体パッケージとして用いる場合は、本発明の感光性樹脂組成物で被覆、又は中空構造を作製することにより使用できる。MEMS及び半導体パッケージの基板としては、種々の形状のシリコンウエハ上に、スパッタリング又は蒸着又はCVD法によりアルミニウム、銅、白金、金、チタン、クロム、タンタル等の金属薄膜を10乃至5000Åの膜厚で成膜し、エッチング法等によりその金属を微細加工した基板等が用いられる。場合によっては、さらに無機の保護膜としてシリコンオキサイドやシリコンナイトライドが10乃至10000Åの膜厚で成膜されることもある。次いで基板上に、MEMS又は半導体デバイスを作製又は設置し、このデバイスを外気から遮断するために、被覆又は中空構造を作製する必要がある。本発明の感光性樹脂組成物で被覆する場合は、前記の方法で行なうことができる。また、中空構造を作製する場合は、基板上へ前記の方法で隔壁を形成させ、その上にさらに、前記の方法でドライフィルムをラミネート及び隔壁上の蓋となるようにパターニングを行なうことで、中空パッケージ構造を作製することができる。また、作製後、必要に応じて130乃至200℃で10乃至120分間、加熱処理をすることで諸特性を満足するMEMSパッケージ部品及び半導体パッケージ部品を得ることができる。
【0051】
尚、「パッケージ」とは、基板、配線、素子等の安定性を保つため、外気の気体、液体の浸入を遮断するために用いられる封止方法である。本発明で記載するパッケージとは、MEMSのような駆動部があるものや、SAWデバイス等の振動子をパッケージするための中空パッケージや、半導体基板、プリント配線版、配線等の劣化を防ぐために行う表面保護や、樹脂封止等を表す。
【0052】
本発明の感光性樹脂組成物は、MEMS(微小電子機械システム)部品、マイクロマシン部品、マイクロ流体部品、μ-TAS(微小全分析システム)部品、インクジェットプリントヘッド部品、マイクロリアクター部品、コンデンサやインダクタ等の電子部品の絶縁層、LIGA部品、微小射出成形及び熱エンボス向け型及びスタンプ、微細印刷用途向けスクリーン又はステンシル、携帯端末やIoT部品に搭載されるMEMSセンサー、半導体デバイス、周波数フィルターデバイス等のパッケージ部品、バイオMEMS及びバイオフォトニックデバイス、並びに、プリント配線板の製作等に利用される。中でも特に、当該感光性樹脂組成物は、MEMSパッケージ部品及び半導体パッケージ部品、マイクロ流体部品、インクジェットプリントヘッド部品において有用である。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。これらの実施例は、本発明を好適に説明するための例示に過ぎず、なんら本発明を限定するものではない。
【0054】
実施例1乃至16及び比較例1乃至12
(感光性樹脂組成物液の調製)
表1~3に記載の樹脂組成(単位は質量部、溶媒を除く固形分の質量のみ記載した)に粘度が1乃至10Pa・sとなる量の溶剤を加え、攪拌機付きフラスコで80℃、3時間の条件で攪拌混合して溶解し、放冷後、孔径5μmのメンブレンフィルターによって濾過を施し、本発明及び比較用の感光性樹脂組成物液を得た。
【0055】
(感光性樹脂組成物の感度、解像度評価)
実施例1乃至16及び比較例1乃至12で得られた各感光性樹脂組成物液を、シリコンウエハ上にスピンコーターで塗工後、95℃のホットプレートにより15分間のプレベークを行い、平滑に形成された感光性樹脂組成物層を得た。その後、エッジビードを除去乾燥後、i線露光装置(マスクアライナー:ウシオ電機社製)を用いて解像性評価用グレースケール付きフォトマスクを介して、紫外線を照射した。続いて、95℃のホットプレートにより5分間の露光後ベークを行った。次にSU-8Developer(商品名、マイクロケム社製、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート主成分)によって23℃で3分間浸漬現像し、2-プロパノールでリンス洗浄、乾燥を経て、シリコンウエハ上に硬化した樹脂パターンを得た。マスク転写精度が最良となる露光量を最適露光量として感度及び解像度の評価を行った。結果を下記表1に示した。尚、表1中の「膜厚」は、硬化した樹脂パターンの膜厚を意味する。
【0056】
(感光性樹脂組成物のフィルム状硬化物の作製)
実施例1乃至16及び比較例1乃至12で得られた本発明及び比較用の感光性樹脂組成物液を用いてフィルム状硬化物を以下の工程で作製した。
1)ベーカー式アプリケータによってPETフィルム上に感光性樹脂組成物液を塗工する。
2)50℃3分間、次いで95℃30分間の条件で、ホットプレート上で乾燥させ、膜厚約100μmの塗膜とする。
3)i線露光装置(マスクアライナー:ウシオ電機社製)で、表1乃至3記載の露光量を紫外線照射する。
4)95℃10分間の条件で、ホットプレート上で重合促進加熱を行う。
5)PETフィルムから樹脂組成物膜を剥がし、200℃のオーブンで60分間、焼成ベークを行う。
【0057】
(感光性樹脂組成物の各フィルム状硬化物のPCT抽出水評価)
上記のようにして得られたフィルム状硬化物を切り出して約3グラム精秤した後、テフロン(登録商標)製のPCT容器に入れ、精秤したイオン交換蒸留水50gをPCT容器に加えた。SUS製の圧力容器にPCT容器を密閉し、121℃、2気圧の条件下に24時間放置した後、室温まで放冷してから抽出水を取り出して導電率と水素イオン指数を測定し、以下の基準で評価した。結果を表1乃至3に示した。
・抽出水の導電率の評価基準
120μS/cm未満;「○」
120μS/cm以上1200μS/cm未満;「×」
1200μS/cm以上;「××」
・水素イオン指数比
純水ブランク試験水に対する水素イオン指数比が0.7以上;「○」、0.7未満;「×」
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
尚、表1乃至3における(A-1)乃至(SC-1)はそれぞれ以下のものを示す。
(A-1):商品名 CPI-310FG(式(1)で表されるアニオンとカチオンからなる塩、トリアリールスルホニウム-テトラキスペンタフルオロフェニルガレイト、サンアプロ社製)
(A-2):商品名 CPI-310B(比較用の光カチオン重合開始剤、トリアリールスルホニウム-テトラキスペンタフルオロフェニルボレイト、サンアプロ社製)
(A-3):商品名 Irgacure 290(比較用の光カチオン重合開始剤、トリス[4-(4-アセチルフェニル)スルホニルフェニル]スルホニウムテトラキス(2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル)ボレイト、BASF社製)
(A-4):商品名 TAG-382(比較用の光カチオン重合開始剤、アリールスルホニウム-テトラキスペンタフルオロボレイト、東洋インキ社製)
(A-5):商品名 GSID-26-1(比較用の光カチオン重合開始剤、トリス[4-(4-アセチルフェニル)スルホニルフェニル]スルホニウムトリス[(トリフルオロメチル)スルホニウム]メタン、BASF社製)
(A-6):商品名 CPI-210S(比較用の光カチオン重合開始剤、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート、サンアプロ社製)
(A-7):商品名 CPI-101A(比較用の光カチオン重合開始剤、ジフェニル[p-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、サンアプロ社製)
(A-8):商品名 SP-172(比較用の光カチオン重合開始剤、アリールスルホニウム-ヘキサフルオロアンチモネート、ADEKA社製)
(A-9):商品名 CPI-310CS(比較用の光カチオン重合開始剤、アリールスルホニウム-カンファースルホネート、サンアプロ社製)
(B-1):商品名 KM-N LCL(式(2)で表されるエポキシ化合物(b-1)、平均繰り返し数k=4、R5はグリシジル、エポキシ当量210g/eq.、日本化薬社製)
(B-2):商品名 NER-7604(式(3)で表されるエポキシ化合物(b-2)、平均繰り返し数m=4、R6は水素、R7はグリシジル、エポキシ当量347g/eq.、日本化薬社製)
(B-3):商品名 NC-3000H(式(4)で表されるエポキシ化合物(b-3)、平均繰り返し数n=2、R8は水素、エポキシ当量285g/eq.、日本化薬社製)
(B-4):商品名 NC-6300H(式(5)乃至(7)で表される化合物の混合物であるエポキシ化合物(b-4)、R9およびR10は水素またはグリシジル、エポキシ当量225g/eq.、日本化薬社製)
(B-5):商品名 KHE-2033(式(8)で表される化合物と式(10)及び(11)で表される化合物の混合物との共縮合反応の生成物であるエポキシ化合物(b-5)、エポキシ当量495g/eq.、日本化薬社製)
(B-6):商品名 EOCN-1020-70(式(12)で表されるエポキシ化合物(b-6)、エポキシ当量200g/eq.、日本化薬社製)
(B-7):商品名 EPPN-201(式(12)で表されるエポキシ化合物(b-6)、pは4、R12はメチル、エポキシ当量190g/eq.、日本化薬社製)
(B-8):商品名 EPPN-502H(式(13)で表されるエポキシ化合物(b-7)、qは1、エポキシ当量170g/eq.、日本化薬社製)
(B-9):商品名 XD-1000(式(14)で表されるエポキシ化合物(b-8)、rは1、エポキシ当量253g/eq.、日本化薬社製)
(B-10):商品名 NC-7700(式(15)で表されるエポキシ化合物(b-9)、sは1、R13は水素、エポキシ当量230g/eq.、日本化薬社製)
(B-11):商品名 jER-1007(式(3)で表されるエポキシ化合物(b-2)、平均繰り返し数m=13、R6はメチル、R7は水素、エポキシ当量2,000g/eq.、三菱ケミカル社製)
(B-12):商品名 EHPE-3150(式(16)で表されるエポキシ化合物(b-10)、平均繰り返し数t+u+v=36、エポキシ当量180g/eq.、ダイセル社製)
(B-13):商品名 YD-8125(式(3)で表されるエポキシ化合物(b-2)、平均繰り返し数m=1、R6はメチル、R7は水素、エポキシ当量172g/eq.、新日鉄住金化学社製)
(B-14):商品名 ED-505(エポキシ化合物、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、エポキシ当量130g/eq.、ADEKA社製)
(B-15):商品名 ED-506(エポキシ化合物、ポリプロピレングリコールポリグリシジルエーテル、エポキシ当量310g/eq.、ADEKA社製)
(B-16):商品名 セロキサイド2021P(エポキシ化合物、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、エポキシ当量126g/eq.、ダイセル社製)
(PF-1):商品名 PN-80(フェノールノボラック樹脂、明和化成社製、水酸基当量104g/eq.)
(PF-2):商品名 PN-152(フェノールノボラック樹脂、明和化成社製、水酸基当量105g/eq.)
(PO-1):プラクセル308(商品名、ダイセル社製、三官能ポリオール樹脂、分子量850、OH当量195mgKOH/g)
(SC-1):3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
【0062】
(感光性樹脂組成物の湿熱試験後接着力評価)
感光性樹脂組成物を用い、膜厚38±5μm、一辺が100μmの正方形である直方体型硬化物パターンをシリコンウエハ上にフォトグラフィによって作製した。80℃に加熱した湿熱試験用の純水に24時間浸漬後の直方体型硬化物パターンの接着強度を測定し、結果を表4に記載した。測定機器としてRHESCA製「PTR-1000」を用い、一辺が100μmの正方形である直方体型硬化物パターンのシェア強度を測定し、これを接着強度とした。
【0063】
【0064】
表1乃至3の結果のとおり、各実施例から得られた組成物の特性は、高感度に紫外線フォトリソグラフィーが可能である。また、硬化物のPCT抽出水の液性が中性側であり、且つ、低導電率であることから低溶出性で低汚染性の硬化物を得られることは明確である。
また、表4の結果のとおり、湿熱試験後の基板への接着強度が強力であることも明確である。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の感光性樹脂組成物は、解像度に優れると共に、該組成物の硬化物は湿熱溶出汚染が極めて低く、しかも湿熱試験後の基板との接着性に優れるため、水系の流体を使用する用途や樹脂封止の際に高い耐湿熱性が要求される用途に用いられる。より具体的には、本発明の感光性樹脂組成物は、MEMSパッケージ部品及び半導体パッケージ部品、マイクロマシン部品、マイクロ流体部品、μ-TAS(微小全分析システム)部品、インクジェットプリントヘッド部品、マイクロリアクター部品、コンデンサやインダクタ等の電子部品の絶縁層、LIGA部品、微小射出成形及び熱エンボス向け型及びスタンプ、微細印刷用途向けスクリーン又はステンシル、携帯端末やIoT部品に搭載されるMEMSセンサー、半導体デバイス、周波数フィルターデバイス等のパッケージ部品、バイオMEMS及びバイオフォトニックデバイス、並びに、プリント配線板の製作において特に好適に用いられる。