(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】低ノイズFMファイバ・レーザ増幅器
(51)【国際特許分類】
H01S 3/13 20060101AFI20240329BHJP
H01S 3/067 20060101ALI20240329BHJP
H01S 3/10 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
H01S3/13
H01S3/067
H01S3/10 D
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022210475
(22)【出願日】2022-12-27
(62)【分割の表示】P 2021502695の分割
【原出願日】2019-02-25
【審査請求日】2023-01-05
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520128820
【氏名又は名称】ノースロップ グラマン システムズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100173565
【氏名又は名称】末松 亮太
(72)【発明者】
【氏名】グッドノ,グレゴリー・ディー
(72)【発明者】
【氏名】フアン,イェ
(72)【発明者】
【氏名】ローゼンバーグ,ジョシュア・イー
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-527124(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0107257(US,A1)
【文献】特開2011-043808(JP,A)
【文献】特表2017-525146(JP,A)
【文献】米国特許第09106051(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00-3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファイバ増幅システムを動作させる方法であって、
光シード・ビームを供給するステップと、
周波数変調(FM)-振幅変調(AM)変換を発生させて、ピークおよびヌルを有する前記光シード・ビームの不均一スペクトル透過を生じさせる1つ以上の光学部品において、前記光シード・ビームを受けるステップと、
1つ以上のアクチュエータを、前記光学部品のそれぞれ1つの前に、若しくは前記光学部品のそれぞれ1つの後ろに位置付けるか、または、前記光学部品のそれぞれ1つに結合されて位置付けるステップであって、各アクチュエータが、前記それぞれの光学部品によって生じた前記光シード・ビームのスペクトル透過においてシフトを発生させるように動作可能とする、ステップと、
前記1つ以上のアクチュエータおよび前記1つ以上の光学部品の後ろにあるファイバ増幅器において、前記光シード・ビームを増幅させて、増幅出力ビームを生成するステップと、
前記増幅出力ビームをサンプルして、サンプル・ビームを供給するステップと、
前記サンプル・ビームにおける振幅変調の量を検出して、前記振幅変調の量を識別する制御メトリック信号を生成するステップと、
前記制御メトリック信号に応答して、前記1つ以上のアクチュエータに調節を行わせ、前記1つ以上の光学部品によって生じたスペクトル透過をシフトさせるように、前記1つ以上のアクチュエータを制御するステップであって、前記不均一スペクトル透過のピークまたはヌルが前記光シード・ビームの中心周波数と整列して、前記光シード・ビームにおける前記振幅変調を低減させる、ステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、前記1つ以上の光学部品が、ポンプ・ビーム・コンバイナ、光ファイバ・スプライス、光アイソレータ、スペクトル・フィルタ、前置増幅段、1本の光ファイバ、およびモード・フィールド・アダプタから成る一群から選択される、方法。
【請求項3】
請求項1記載の方法において、前記サンプル・ビームにおける振幅変調の量を検出することが、
前記サンプル・ビームに応答し、前記振幅変調の量を識別する変動と前記サンプル・ビームのパワーを識別するDCオフセットとを含む時変電気信号を生成する光検出器と、
前記時変電気信号における前記DCオフセットを排除するハイパス・フィルタと、
前記ハイパス・フィルタを通過した信号を整流する整流器と、
前記ハイパス・フィルタを通過し前記整流された信号にローパス・フィルタリングを施して前記制御メトリック信号を生成するローパス・フィルタと、
を使用することを含む、方法。
【請求項4】
請求項1記載の方法において、前記1つ以上のアクチュエータの内少なくとも1つが偏光アクチュエータであり、
前記1つ以上のアクチュエータを制御することがスペクトル・シフト偏光コントローラを使用し、
前記スペクトル・シフト偏光コントローラが、前記光シード・ビームの偏光を変化させて、前記それぞれの光学部品によって発生するスペクトル透過がシフトされるように、前記偏光アクチュエータを制御する、方法。
【請求項5】
請求項4記載の方法において、前記偏光アクチュエータが、前記それぞれの光学部品の前に、前記光シード・ビームに応答する、方法。
【請求項6】
請求項1記載の方法において、前記1つ以上のアクチュエータの内少なくとも1つが、前記それぞれの光学部品に結合され、その温度を制御する加熱/冷却デバイスであり、
前記1つ以上のアクチュエータを制御することがスペクトル・シフト・コントローラを使用し、
前記スペクトル・シフト・コントローラがスペクトル・シフト温度コントローラであり、
前記スペクトル・シフト温度コントローラが、前記それぞれの光学部品の温度を変化させて、前記それぞれの光学部品によって生ずるスペクトル透過がシフトされるように、前記1つ以上のアクチュエータを制御することが、前記少なくとも1つの加熱/冷却デバイスを制御する、方法。
【請求項7】
スペクトル・ビーム結合(SBC)を有するファイバ増幅システムであって、
少なくとも1つの光シード・ビームを供給する少なくとも1つの光源と、
前記光シード・ビームに応答して増幅出力ビームを生成する少なくとも1つのファイバ増幅器と、
増幅チェーン内にあり、前記光シード・ビームに応答する複数の光学部品であって
、前記光学部品のうち1つ以上が、前記光シード・ビームに周波数変調(FM)-振幅変調(AM)変換を発生させて、伝達関数を有する前記光シード・ビームの不均一スペクトル透過を生じる振幅変調を発生させる、光学部品と、
前記増幅チェーン内に設けられたプログラム可能なスペクトル・フィルタであって、前記伝達関数の逆を適用することにより、前記光シード・ビームを予歪させるように動作可能であり、前記伝達関数の逆が、前記振幅変調を低減させるために、前記増幅チェーンの末端において前記光シード・ビームの正味スペクトル透過プロファイルを等化することによりそれに関する正味伝達関数を生成する、プログラム可能なスペクトル・フィルタと、
前記増幅出力ビームに応答して、サンプル・ビームを供給するビーム・サンプラと、
前記サンプル・ビームに応答して、前記光シード・ビームにおける前記振幅変調の量を検出する検出サブシステムであって、
前記サンプル・ビームに応答して、前記振幅変調の量を識別する変動と前記サンプル・ビームのパワーを識別するDCオフセットとを含む時変電気信号を生成する光検出器と、
前記電気信号における前記DCオフセットを排除するハイパス・フィルタと、
前記ハイパス・フィルタを通過した信号を整流する整流器と、
前記ハイパス・フィルタを通過し前記整流
された信号にローパス・フィルタリングを施し、前記振幅変調の量を識別する制御メトリック信号を生成するローパス・フィルタと、
を含む、検出サブシステムと、
前記検出サブシステムからの前記制御メトリック信号に応答し、前記伝達関数の逆を生成するよう前記プログラム可能なスペクトル・フィルタを制御する、スペクトル・コントローラと、
を備える、ファイバ増幅システム。
【請求項8】
請求項7記載のファイバ増幅システムにおいて、前記増幅チェーン内の前記光学部品のうち1つが、スペクトル位相によって生じる振幅変調を低減させるスペクトル位相補償を行う発散補償ファイバ(DCF)である、ファイバ増幅システム。
【請求項9】
請求項7記載のファイバ増幅システムにおいて、
前記少なくとも1つの光源が、それぞれが異なる波長で光シード・ビームを発生させる複数の光源であり、
前記少なくとも1つのファイバ増幅器が、それぞれが前記光シード・ビームのうち1つを増幅させる複数のファイバ増幅器であり、
当該ファイバ増幅システムが、更に、
前記光シード・ビームの全てを共通のファイバに多重化して、前記光シード・ビームの全てを前記プログラム可能なスペクトル・フィルタに送るマルチプレクサと、
前記予歪された光シード・ビームの全てを、増幅のために前記増幅器に送られるのよりも前に別個のファイバに分離するデマルチプレクサと、を備え、
当該ファイバ増幅器システムが、更に、SBC光学システムを備え、前記増幅されたファイバ・ビームを、前記ビーム・サンプラよりも前に単一のビームに結合する、ファイバ増幅システム。
【請求項10】
請求項7記載のファイバ増幅システムであって、更に、偏光状態(SOP)アクチュエータおよびSOPコントローラを備え、
前記検出サブシステムが、前記サンプル・ビームにおける前記振幅変調の量を識別する変動を排除するローパス・フィルタを含み、
前記ローパス・フィルタを通過した信号が、前記SOPコントローラに送られ、前記SOP偏光コントローラが、前記光シード・ビームのSOPを変化させて前記出力ビームを所望のSOPに維持するように前記SOPアクチュエータを制御する、ファイバ増幅システム。
【請求項11】
請求項7記載のファイバ増幅システムにおいて、前記複数の光学部品が、ポンプ・ビーム・コンバイナ、光ファイバ・スプライス、光アイソレータ、スペクトル・フィルタ、前置増幅段、1本の光ファイバ、およびモード・フィールド・アダプタのうち1つ以上を含む、ファイバ増幅システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本開示は、一般に、周波数変調(FM)/振幅変調(AM)変換の能動的な低減(active reduction)を可能にするファイバ・レーザ増幅器に関し、更に特定すれば、増幅器における1つ以上の光学部品によって生じるスペクトル透過のピークまたはヌルをシード・ビームの中心波長と整列させる(co-align)ように動作するパラメータを能動的に制御することによって、増幅器におけるFM-AM変換を低減するファイバ・レーザ増幅器に関する。
【従来技術】
【0002】
[0002] 高パワー・レーザ増幅器には、産業、商業、軍事等を含む多くの用途がある。レーザ増幅器の設計者は、これらおよび他の用途のためにレーザ増幅器のパワーを高める方法を調査し続けている。知られているレーザ増幅器の一種に、シード・ビームと、このシード・ビームを増幅するポンプ・ビームとを受光するドープ・ファイバ(doped fiber)を採用し、高パワー・レーザ・ビームを生成するファイバ・レーザ増幅器がある。このファイバは約10~20μm以上の有効コア直径を有する。ファイバ・レーザ増幅器は、それらの高い効率、高いパワー調整性(scalability)、および優れたビーム品質のために、指向性エネルギ兵器のエネルギ源として有用である。
【0003】
[0003] ファイバ・レーザ増幅器の設計を改良したことによって、ファイバの出力パワーが増大し、その実用上のパワーおよびビーム品質の限界に近づいた。ファイバ増幅器の出力パワーを更に高めるために、複数のファイバ・レーザ増幅器を採用し、増幅されたビームを何らかの様式で結合し、更に高いパワーを生成するファイバ・レーザ・システムがある。この種のファイバ・レーザ増幅システムの設計課題は、ビームを小さい焦点に合焦できるように、ビームが1つのビーム出力を供給するようなやり方で、複数のファイバ増幅器からのビームを結合することである。遠く離れた小さなスポットに、結合したビームを合焦する(遠視野)ことにより、ビームの品質を定める。
【0004】
[0004] コヒーレント・ビーム結合(CBC:coherent beam combining)と呼ばれる1つの知られている多重ビーム増幅器設計では、主発振器(MO:master oscillator)がシード・ビームを生成し、このシード・ビームを分割して、各々共通波長を有する複数のファイバ・シード・ビームを得て、共通波長において各ファイバ・ビームを増幅する。増幅されたファイバ・シード・ビームは、次に、回折光学素子(DOE:diffractive optical element)に誘導され、回折光学素子は、コヒーレント・ファイバ・ビームを結合して(combine)1つの出力ビームを得る。DOEは、素子自体の中に周期的構造が形成されているので、各々多少異なる角方向を有する個々のファイバ・ビームが周期的構造によって方向転換させられると、これらのビーム全てがDOEから同じ方向に回折する。各ビーム・ビームは位相変調器に供給され、位相変調器は、全てのファイバ・ビームの位相がコヒーレントに維持されるように、ビームの位相を制御する。しかしながら、位相制御帯域幅の限界、および波面誤差のために、コヒーレントに結合することができるファイバ・ビームの数が限られてしまい、このためレーザの出力パワーが頭打ちとなる。
【0005】
[0005] スペクトル・ビーム結合(SBC:spectral beam combining)と呼ばれる他の知られている多重ファイバ増幅器設計では、複数の主発振器(MO)が複数の波長において複数のファイバ・シード・ビームを生成し、各ファイバ・シード・ビームを増幅する。次いで、増幅されたファイバ・シード・ビームは、回折格子または他の波長選択素子に導かれ、異なる波長ファイバ・ビームを結合して1つの出力ビームを得る。回折格子は、素子内に形成された周期的構造を有するので、各々多少異なる波長および角方向を有する個々のファイバ・ビームが周期的構造によって方向転換させられると、ビームの全てが回折格子から同じ方向に回折する。しかしながら、スペクトル輝度の限界のために、波長結合することができるファイバ・ビームの数が限られてしまい、このためレーザの出力パワーが頭打ちとなる。
【0006】
[0006] これらの限界を克服しレーザ・ビーム・パワーを更に高めるためには、複数の主発振器を設けて、異なる波長においてシード・ビームを生成することができ、個々の波長シード・ビームの各々は、複数の(a number of)ファイバ・シード・ビームに分割され、ファイバ・シード・ビームの各グループは同じ波長を有し、相互にコヒーレントである。それぞれの波長におけるコヒーレント・ファイバ・シード・ビームの各グループは、最初にDOEによってコヒーレントに結合され、次いで、コヒーレントに結合されたビームの各グループは、多少異なる角度でSBC格子に導かれる。SBCは、これらのビームを同じ方向に、複数の波長の結合した1つのビームとして回折する。また、SBC格子は、異なる波長のビームを結合するための周期的構造も含む。
【0007】
[0007] 高パワー、単一モード光が増幅されるときまたは長いファイバを通って伝搬するとき、ファイバ・カー非線形のために多くの非線形効果が生じる可能性がある。ファイバ・カー非線形は、ビームの光干渉性またはスペクトル純度を劣化させるように作用する。カー非線形の最も明らかな発現は、典型的には、自己位相変調(SPM:self-phase modulation)である。これは、B-積分、即ち、非線形位相シフトによってパラメータ化され、低レベルの対処しようがない振幅変調(AM)を位相ノイズに変換することによって、ビーム干渉性を劣化させる可能性がある。この非線形効果は、CBCの効率またはSBCのビーム品質を圧迫し、したがってレーザ・システムの性能を低下させる可能性がある。具体的には、スペクトル純度の低下、または光干渉性の損失がある。
【0008】
[0008] これらの効果を回避または低減するためには、一般に、ファイバ増幅器をシードするシード・ビーム内を伝搬するAMの量を抑えることが望ましい。このAMは、相対強度ノイズ(RIN:relative intensity noise)としても知られている。振幅変調を行わずに周波数変調を行うシード・ビームのスペクトルを広げる技法は、ファイバ増幅器において実現することができ、シード・ビームに周波数変調だけが行われる場合、カー非線形は問題を発生させない。即ち、シード・ビームの時間依存非線形位相シフトは発生しない。しかしながら、これはスペクトル・ビームを広げる結果となり、SBCの間ビーム品質を低下させる可能性がある。
【0009】
[0009] 一般に、ビーム結合ファイバ・レーザ兵器システムにおいて、ストレール比によって定められるビーム品質の劣化を1%未満に維持するためには、非線形SPM位相変動B×RINを0.1ラジアン未満に維持することが望ましい。B-積分が10ラジアンである典型的な1.5~2kWのファイバ増幅器では、これはRIN<1%を維持する必要があることを暗示する。したがって、AMを殆どまたは全く有さないFMシード・ビーム源、即ち、一定のパワー対時間の関係を有するものを採用することが、業界の標準的な慣例となっている。しかしながら、FMを対処しようがないAMに部分的に変換する多数の効果がなおも観察されており、SPMによる非線形劣化の原因となる可能性がある。これらの効果には、偏光混合、波長分散、スペクトル・フィルタリング、または一般に、あらゆるマルチパス干渉(MPI:multi-path interference)効果が含まれる。ファイバ部品またはファイバ・ベース・システムにおけるMPI効果の典型的な痕跡(signature)は、周期的な変調パターンを呈するスペクトル依存透過である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
[0010] スペクトル変調の自由スペクトル範囲(FSR)よりも著しく小さいFM線幅では、FM-AM変換の大きさ(magnitude)はシード・ビームおよびスペクトル透過ピークの相対波長に依存して大きく変動する可能性があることは、当技術分野では周知である。ファイバにおけるFM-AM変換は、ビーム波長が透過スペクトルのピークまたはヌルと整列するときに最小となり、ビーム波長がピークとヌルとの間にあるときに最大となる。これは、FM信号の瞬時周波数が時間と共に変化しており、したがってその透過振幅が時間と共に変化し、時変出力パワー、即ち、AMを引き起こすからである。FM-AM変換は、ビーム帯域幅にわたるスペクトル透過ができるだけ均一なときに、最も少なくなる。これが起こるのは透過ピークまたはヌルの近くである。したがって、非線形スペクトル透過を呈する部品が存在しても、FM-AM変換を最小限にしてFM光を増幅し、低ノイズ出力を生成するファイバ振幅器のアーキテクチャが求められている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、能動制御を使用してFM-AM変換を低減するファイバ・レーザ増幅システムの模式ブロック図である。
【
図2】
図2は、能動偏光制御を使用してFM-AM変換を低減するファイバ・レーザ増幅システムの模式ブロック図である。
【
図3】
図3は、能動偏光制御を使用してFM-AM変換を低減し、シード・ビームSOP制御を行う(provide)ファイバ・レーザ増幅システムの模式ブロック図である。
【
図4】
図4は、能動温度制御を使用してFM-AM変換を低減するファイバ・レーザ増幅システムの模式ブロック図である。
【
図5】
図5は、能動温度制御を使用してFM-AM変換を低減し、シード・ビームSOP制御を行うファイバ・レーザ増幅システムの模式ブロック図である。
【
図6】
図6は、複数の光学部品に対して能動制御を使用してFM-AM変換を低減するファイバ・レーザ増幅システムの模式ブロック図である。
【
図7】
図7は、増幅システムを伝搬するシード・ビームのスペクトル透過を平坦化または等化するプログラマブル・スペクトル・フィルタを使用してFM-AM変換を低減するファイバ・レーザ増幅システムの模式ブロック図である。
【
図8】
図8は、増幅システムを伝搬するシード・ビームのスペクトル透過を平坦化または等化するプログラマブル・スペクトル・フィルタを使用してFM-AM変換を低減し、シード・ビームSOP制御を行うファイバ・レーザ増幅システムの模式ブロック図である。
【
図9】
図9は、増幅システムを伝搬するシード・ビームのスペクトル透過を平坦化または等化するプログラマブル・スペクトル・フィルタを使用してFM-AM変換を低減し、シード・ビームの入力および出力パワー・スペクトルを測定する光スペクトル・アナライザを採用する、ファイバ・レーザ増幅システムの模式ブロック図である。
【
図10】
図10は、増幅システムを伝搬するシード・ビームのスペクトル透過を平坦化または等化するプログラマブル・スペクトル・フィルタを使用してFM-AM変換を低減し、分散補償ファイバを含む、ファイバ・レーザ増幅システムの模式ブロック図である。
【
図11】
図11は、増幅システムを伝搬するシード・ビームのスペクトル透過を平坦化または等化するプログラマブル・スペクトル・フィルタを使用してFM-AM変換を低減し、SBCを採用する、ファイバ・レーザ増幅システムの模式ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[0022] 本開示の実施形態についての以下の論述は、FM-AM変換を能動的に低減するために種々の技法を採用するファイバ・レーザ増幅システムを対象とするが、本質的に例示に過ぎず、本開示あるいはその用途または使用を限定することは全く意図していない。
【0013】
[0023] 以下で詳しく論ずるが、本開示は、システムにおける特定のパラメータを能動的に制御することによって、ファイバ・レーザ増幅システムにおいてFM-AM変換を低減するための種々の技法を提案する。これらの技法は、大まかに2種類に分けることができる。第1の種類は、1つ以上の増幅素子によって生ずるスペクトル透過のピークまたはヌルを、シード・ビームの中心周波数と整列させる(co-align)処理を含む。1~2kWファイバ増幅器のFM線幅は、通例、20~30GHzであり、ファイバにおける誘導ブリュアン散乱の閾値未満に留まるという要件によって決定される。これは、種々の増幅素子において100GHz程度までの典型的な測定FSRと比較すると小さい。したがって、シード・ビームの中心波長を透過スペクトルのピークまたはヌルと整列させる(co-alignment)ことにより、FM-AM変換を最小に抑え、非線形SPMノイズによる障害を抑えた低ノイズFMファイバ増幅器が得られる。例えば、典型的なファイバ増幅システム内にある部品のスペクトル透過は偏光に依存するまたは温度に依存する可能性があるので、シード・ビームの偏光状態(SOP:seed beam state of polarization)または部品温度を手作業で調節することによって、増幅出力ビーム上のRINを劇的に低減することができる。
【0014】
[0024] 第2の種類は、FM-AM変換を誘発する(initiate)スペクトル振幅および位相歪みを補償するためにプログラマブル・スペクトル・フィルタを採用することによってというようにして、シード・ビームのスペクトル等化を行う処理を含む。スペクトル振幅の歪みに対して、ファイバ増幅システム全体にわたる正味スペクトル透過プロファイルを平坦化するように、スペクトル・フィルタをプログラミングする。スペクトル位相の歪みに対して、ファイバ群速度分散(GVD:fiber group velocity dispersion)あるいは増幅または成分透過スペクトルから生ずる他の分散効果を補償するように、スペクトル・フィルタをプログラミングする。静止スペクトル位相の補正のために、スペクトル・フィルタは、1本の分散補償ファイバも備えることもできる。この分散補償ファイバは、補償に必要なストローク(stroke)を減らす場合または精度を高める場合、動的スペクトル・フィルタと直列にして使用される。
【0015】
[0025] ファイバ・レーザ増幅システムにおいてFM-AM変換を低減するためのこれらの種類の技法は双方共、
図1に示すファイバ・レーザ増幅システム10によって全体的に示すことができる。システム10は、特定の波長を有するシード・ビームをファイバ14上で生成する主発振器(MO)12を含む。シード・ビームはRF光電変調器(EOM:electro-optical modulator)16に供給され、RF光電変調器16は、周波数変調拡大(frequency modulation broadening)を行うために、白色ノイズまたは擬似ランダム・ビット・シーケンス(PRBS:pseudo-random bit sequence)のような、シード・ビームを周波数変調するためのRF信号を受信する。尚、EOM16は、システム10において、シード・ビームが増幅される前の任意の適した位置に配置できることを注記しておく。次いで、広げられたシード・ビームはアクチュエータ18に送られ、アクチュエータ18は、本明細書において論じられるようにFM-AM変換を低減するために、シード・ビームの位相、偏光等というような、シード・ビームの何らかの側面(aspect)またはパラメータを制御する。次いで、作用を受けたシード・ビームは増幅器または光学部品20に送られる。増幅器または光学部品20は、システム10内に存在することができる複数の光学部品の内、個々の用途に応じて特定の光機能を果たし、先に論じたようにSPMを通じてシード・ビームにおける周波数変調を振幅変調に変換させるおそれがある任意のものを表すことを意図している。光学部品20の適した例には、ポンプ・ビーム・コンバイナ(pump beam combiner)、光スプライス、光アイソレータ、スペクトル・フィルタ、1本の光ファイバ、前置増幅段、モード・フィールド・アダプタ(mode field adapter)等が含まれるが、これらに限定されるのではない。尚、これらの部品20の内様々なものを採用できることを注記しておく。
【0016】
[0026] 次いで、シード・ビームを増幅し、増幅出力ビーム26を供給するために、非線形ファイバ増幅器22に、シード・ビームを送る。 非線形ファイバ増幅器22は、複数のファイバ増幅段であってもよく、各ファイバ増幅段が、 ポンプ・ビーム源と、イッテルビウム(Yb)がドープされ10~20μmのコアを有する、1本のファイバのような、1本のドープ・ファイバとを含む。次いで、ビーム・スプリッタ30を介して出力ビーム26を送り、ビーム・スプリッタ30は、出力ビーム26の小さいサンプル部分をサンプル・ビーム32として分割する。サンプル・ビーム32は検出器34に送られ、検出器34は、増幅されたビーム26においてAMを識別する特定の被監視パラメータの量または大きさ(magnitude)を判定する。検出器34は、制御メトリックを生成して、これをコントローラ36に送る。コントローラ36は、このパラメータを調節するようにアクチュエータ18を制御し、こうして制御メトリックを最適化し、FM-AM変換を排除または低減する。
【0017】
[0027]
図2は、FM-AM変換を低減する第1の種類の技法についての一実施形態として、シード・ビームの偏光制御を採用するファイバ・レーザ増幅システム40の模式ブロック図である。このシステムは、部品20によって生じるスペクトル透過のピークまたはヌルをシード・ビームの中心波長と整列させる(co-align)。システム10と同様の要素は、同じ参照番号によって識別される。増幅システム40において、アクチュエータ18が偏光アクチュエータ42と置き換えられている。更に具体的には、サンプル・ビーム32は特定のSOPに対して偏光濾波されていないが、サンプル・ビーム32における未偏光光が検出され、部品20によって生じる不均一なスペクトル透過が振幅変調を発生することがないように、シード・ビームの偏光を調節するために使用される。
【0018】
[0028] この実施形態では、サンプル・ビーム32は高速光検出器44によって検出され、高速光検出器44は、時変電気AC信号を有する光電流を生成する。このAC信号は、サンプル・ビーム32上において振幅変調によって生ずる光パワー変動に比例し、サンプル・ビーム32の光パワーに比例するDCオフセットを有する。光電流は、DCオフセットを除去するために、ハイパス・フィルタ46によって濾波される。フィルタ46は、光検出器44の検出帯域幅より低く所望のフィードバック制御ループ・レートよりも高いカットオフ周波数を有する。AC信号は、フィルタ46を通され、整流器48によって整流されて、信号の負部が正部に変換される。整流された信号は、ローパス・フィルタ52によって濾波および時間平均され、制御メトリック信号を供給する。制御メトリック信号は、偏光コントローラ50に供給されるサンプル・ビーム32における振幅変調またはRINパワーに比例する。ローパス・フィルタ52は、所望のフィードバック制御ループ・レートよりは高いが、制御メトリック信号が安定したフィードバック制御を可能にするには相応しい信号対ノイズ比を得る(provide)のに十分小さいカットオフ周波数を有する。偏光コントローラ50は、制御メトリック信号の大きさおよび動力学(dynamics)に依存する制御信号を偏光アクチュエータ42に供給する。制御メトリック信号は、部品20によって生じるスペクトル透過のピークまたはヌルをシード・ビームの中心波長と整列させるようにシフトさせるために、シード・ビームの偏光を変化させる、または調節する。言い換えると、シード・ビームの偏光を変化させることによって、光学部品20によって生ずるシード・ビームのスペクトル透過がずらされ、振幅変調の大きさを監視することによって、振幅変調を最小限に抑えるために最適な偏光をシード・ビームに付与する(provide)ことができる。
【0019】
[0029] システム40は、低ノイズのFM増幅出力レーザ・ビームを生成する。しかしながら、対処しようがないファイバ部品の複屈折に基づいて、出力ビーム26が不確定に偏光される。偏光の影響を受けない(polarization-independent)結合格子を使用するSBCに基づくビーム結合レーザ・アーキテクチャのような、偏光シード・ビームを必要としない用途には、これは容認可能である。しかしながら、レーザ・システム40は、CBCに基づくビーム結合レーザ兵器アーキテクチャ、または偏光依存格子を使用するSBCに基づくビーム結合レーザ兵器アーキテクチャのような、偏光シード・ビームを必要とする用途には、有用でない場合もある。
【0020】
[0030]
図3は、先に論じたようにFM-AM変換を低減するための偏光制御を行い(provide)、更に特定の偏光状態に偏光された出力ビーム58を生成するためにシード・ビームの偏光制御も行うファイバ・レーザ増幅システム60の模式ブロック図である。システム40と同様の要素は、同じ参照番号によって識別される。システム60は、シード・ビームのSOPを個々の用途に望まれる偏光状態に調節する偏光アクチュエータ62を含む。これは、システム40において偏光アクチュエータ42によって行われる偏光制御と同じではない。システム40において偏光アクチュエータ42によって行われる偏光制御では、部品20によって生じる透過スペクトルにおけるピークおよびヌルをシード・ビームの中心周波数と整列させるようにシード・ビームの偏光を変化させる。サンプル・ビーム32は、偏光フィルタ64によって濾波され、偏光フィルタ64は、所望の偏光状態にあるサンプル・ビーム32の光パワーを透過させる。偏光フィルタを通過したサンプル・ビームは、高速光検出器44によって検出され、高速光検出器44は、時変電気AC信号を有する光電流を生成する。このAC信号は、振幅変調によってサンプル・ビーム32上に生じる光パワー変動に比例し、所望の偏光状態にあるサンプル・ビーム32の光パワーに比例するDCオフセットを有する。出力ビーム58のSOPは、電気信号を光検出器44からローパス・フィルタ66に供給することによって制御され、ローパス・フィルタ66は、周波数変動を排除する(filter out)ので、所望の偏光を有するサンプル・ビーム32の大きさを識別するDCオフセットが残る。フィルタを通過した信号は偏光コントローラ68に供給され、偏光コントローラ68は、シード・ビームの偏光を調節して、偏光フィルタ64によって供給されるパワー量を最大化するように、偏光アクチュエータ62を制御する。ローパス・フィルタ66のカットオフ周波数は、偏光制御ループの所望のループ・レート、例えば、1~100kHzに基づいて選択され、ハイパス・フィルタ46のカットオフ周波数は、ローパス・フィルタ66のカットオフ周波数よりも高いが、光検出器44の帯域幅よりも低くなるように選択される。
【0021】
[0031] 偏光アクチュエータ62はシード・ビームの偏光を所望のSOPに制御するので、光学部品20によって生ずる透過スペクトルのピークおよびヌルの位置も変化させ、これによって、部品20が行う(create)振幅変調の量を増大または減少させることができる。システム60において、シード・ビームのスペクトル透過においてシフトを生じさせるように、偏光アクチュエータ42を部品20の下流側に移動させる。前述のように、FM-AM変換を低減させるための偏光制御の制御帯域幅またはサンプリング周波数は、出力SOPが所望の偏光に固定され続けることを確保するために、出力ビーム偏光制御の制御帯域幅よりもはるかに遅く選択される。この実施形態では、部品20の下流側に偏光アクチュエータ42を移動させることが可能であり、それでもなお効果的にFM-AM変換を低減することができる。何故なら、偏光アクチュエータ62は、出力SOPを維持するために、偏光アクチュエータ42によって行われる偏光における変化に応答するからである。偏光アクチュエータ62は、偏光アクチュエータ42によって生じる変化に応答してシード・ビームの偏光を変化させるので、シード・ビームの偏光は、事実上、光学系におけるアクチュエータ62とアクチュエータ42との間における位置でのみ、偏光アクチュエータ42によって変化させられる。即ち、SOPは他の全ての位置では一定となる。
【0022】
[0032]
図4は、FM-AM変換を低減するために、部品20によって生ずる透過スペクトルのピークまたはヌルをシード・ビームの中心周波数と整列させる(co-align)第1の種類の技法の他の実施形態として、能動温度制御を採用するファイバ・レーザ増幅システム70の模式ブロック図である。システム40と同様の要素は、同じ参照番号によって識別される。サンプル・ビーム32におけるAMパワーに比例する制御メトリック信号を、温度コントローラ72に供給する。温度コントローラ72は、ヒータ/クーラ・デバイス74の温度を制御する。ヒータ/クーラ・デバイス74は、光学部品20に結合され、その温度を変化させるように動作する。この実施形態では、デバイス74はアクチュエータ18である。したがって、ローパス・フィルタ52からの制御メトリック信号の大きさに応じて、温度コントローラ72は、部品20の温度を上昇または低下させ、これによって、ピークまたはヌルがシード・ビームの中心周波数と整列するようにそのスペクトル透過をシフトさせる。
【0023】
[0033]
図5は、先に論じたように、FM-AM変換を低減するために光学部品20の温度制御を行い、更に所望の偏光状態に偏光された偏光出力ビーム58を供給する、ファイバ・レーザ増幅システム80の模式ブロック図である。システム60および70と同様の要素は、同じ参照番号によって識別される。FM-AM変換を補正するために、システム70によって使用される同じプロセスを、光学部品20の温度を制御するために採用する。部品20の温度を変化させると、その複屈折も変化させることができるが、これらの変化は非常に遅いので、典型的な100Hz以上の帯域幅を有する偏光コントローラ68には熱の増減がない(adiabatic)ように見え、増幅された出力ビーム58が低いRINを有し同時に適正に偏光されるように、動的に補償することができる。したがって、偏光アクチュエータ62は、シード・ビームの偏光状態を所望の偏光に変化させるように素早く動作することができ、温度コントローラ72によって行われるFM-AM変換の補正は、もっと遅く動作することができる。
【0024】
[0034] 部品20によって生ずるスペクトル透過のピークまたはヌルをシード・ビームの中心周波数と整列させる(co-align)ことによって、FM-AM変換を低減するための第1の種類の技法に関する以上の論述は、偏光制御または温度制御を行うことに特化した。しかしながら、これらは、部品20のスペクトル透過のピークおよびヌルをシード・ビームの中心周波数と整列させるのに適した技法の例に過ぎず、他の技法も同様に適用可能であるのはもっともであることを注記しておく。例えば、光学部品20上の機械的応力を制御してその複屈折を変化させることが可能であり、更に、部品20の不均一なスペクトル透過をシフトさせて、シード・ビームの中心波長と整列させるように動作することもできると考えられる。この実施形態では、デバイス74は、機械的応力を光学部品20およびコントローラ72に加えるデバイスであり、コントローラ72は応力コントローラである。
【0025】
[0035] 注記したように、ファイバ・レーザ増幅システム内にある複数の部品が発生させるAMによって、不均一なスペクトル透過が生ずる可能性がある。したがって、増幅チェーン内にある種々の部品の内複数個または全てに対してAM低減制御を行うことが望ましいのはもっともである。この実施形態は、
図6において、ファイバ・レーザ増幅システム90によって示され、システム80と同様の要素は、同じ参照番号によって識別される。システム90は、偏光アクチュエータ62とファイバ増幅器22との間に位置付けられた複数の光学部品20を含み、各光学部品20は、先に論じたような、温度アクチュエータ、偏光アクチュエータ、応力アクチュエータ等のような、何らかの種類の作動デバイス92を含む。複数の部品を同時に制御してFM-AM変換を最小限に抑えるために、多値ディザ制御方式、例えば、確率的並列勾配降下法(SPGD:stochastic parallel gradient descent)アルゴリズムを採用することができる。このようなコントローラは、マルチチャネル・コントローラ94によって例示されている。マルチチャネル・コントローラ94は、アクチュエータ92の各々を制御して、部品20の各々によって生じるスペクトル透過を独立してシフトさせ、ピークまたはヌルをシード・ビームの中心波長と整列させる。
【0026】
[0036] スペクトル等化を行うことによってFM-AM変換を低減する、先に引用した第2の種類の技法は、第1の種類の技法よりも直接的な技法であり、プログラマブル・スペクトル・フィルタをシステム10におけるアクチュエータ18として使用する。このフィルタは、ファイバ増幅システム10を伝搬するシード・ビームの正味スペクトル透過プロファイルを平坦化または等化するように動作する。このプログラマブル・スペクトル・フィルタがない場合に、MO12からファイバ増幅器22までの全ての光学部品を通過するシード・ビームのスペクトル透過が、初期状態において伝達関数T1(λ)である場合、逆伝達関数T2(λ)=1/T1(λ)を生成するようにプログラミングされたスペクトル・フィルタを使用することによって、シード・ビームがシステム10を伝搬した後における正味スペクトル透過は、T1(λ)T2(λ)=1となり、低ノイズの出力ビームを生ずるはずである。一般に、伝達関数T1(λ)およびT2(λ)は双方共複素値関数とすることができる。即ち、スペクトル振幅および位相の双方を不均一にすることができる。つまり、ファイバ増幅システム10の伝達関数の逆によってシード・ビームを予め歪ませるので、シード・ビームの不均一スペクトル透過は、システム10を伝搬するときに、その伝達関数をその元の伝達関数(transfer function)に変化させるので、振幅変調を含まない。この手法は、主に、複数の発生源から生ずるFM-AM変換を補償することができるので、第1の種類の技法と比べて利点がある。言い換えると、この技法は、スペクトル透過に対する任意の障害(impairment)を補正することができ、周期的なスペクトル透過プロファイルに限定されない。
【0027】
[0037]
図7は、シード・ビームのスペクトル等化制御を採用するファイバ・レーザ増幅システム100の模式ブロック図であり、FM-AM変換を低減するための第2の種類の技法についてこの実施形態を概略的に示す。システム40と同様の要素は、同じ参照番号によって識別される。この実施形態では、偏光アクチュエータ42は、プログラマブル・スペクトル・フィルタ102と置き換えられている。プログラマブル・スペクトル・フィルタ102は、シード・ビームがファイバ増幅器22に送られる前に、増幅チェーンにおける部品によって付与されるスペクトル歪みの逆として、シード・ビームの予歪(pre-distortion)を行う。この実施形態では、システム100は、先に論じたような方法で、光検出器44、ハイパス・フィルタ46、整流器48、およびローパス・フィルタ52を使用して、不均一スペクトル透過を識別するサンプル・ビーム32におけるAMパワーに比例する制御メトリック信号を生成する。コントローラ104は、ローパス・フィルタ52から制御メトリック信号を受け取り、メトリック信号をゼロに駆動する所望の逆伝達関数を形成し(provide)、したがってFM-AM変換を低減するようにスペクトル・フィルタ102を制御する。
【0028】
[0038] 先に論じたように、ファイバ・レーザ増幅システムが特定の用途のために偏光出力ビーム58を供給する必要がある場合、先に論じたのと同じ方法で偏光制御を設けることができる。この実施形態は、
図8においては、ファイバ・レーザ増幅システム106として示されており、システム60および100と同様の要素は、同じ参照番号によって識別される。
【0029】
[0039] 以上の論述では、AMを最小限に抑えるスペクトル形状を得るために先進のアルゴリズムを使用して、スペクトル・フィルタ102に対してフィードバック制御を行う。シード・ビームの中心波長周囲におけるスペクトル透過のテイラー展開に関連する1つ以上のパラメータを調節することに基づくと、もっと簡単な手法であれば、単純な多値可変コントローラ(multi-variable controller)を伴うだけで済む。例えば、波長と共に線形に変化するスペクトル透過をシード・ビームに重ね合わせる(impose)こともでき、この場合、制御パラメータは、最低次のスペクトル不均一性を大きく補償する役割を果たすスペクトル透過曲線の傾斜となる。また、二次的に変化するスペクトル透過または更に高次の項を補償するためのパラメータも含ませることができる。通例、対象となる最低次項のスペクトル位相は、群速度分散(GVD)に対応する二次方程式になる。何故なら、線形に変化するスペクトル位相は、単に一定の時間遅延に対応するに過ぎず、FM-AM変換に影響を及ぼさないからである。
【0030】
[0040] 第2の種類の技法の代替実施形態では、検出器34は、分光計または光スペクトル・アナライザのような、スペクトル検出器とすることもできる。このスペクトル検出器は、サンプル・ビーム32の出力パワー・スペクトルS
out(λ)、およびシード・ビームがプログラマブル・スペクトル・フィルタ102に送られる前の入力パワー・スペクトルS
in(λ)の双方の測定値を提示する。この実施形態は、
図9において、ファイバ・レーザ増幅システム110として示されている。システム100と同様の要素は、同じ参照番号によって識別される。システム110は、スイッチ112を含む。スイッチ112は、出力パワー・スペクトルS
out(λ)を有するサンプル・ビーム32と、入力パワー・スペクトルS
in(λ)を有するEOM16からのシード・ビームとを受け取る。スイッチ112は、入力および出力パワー・スペクトルの間で所望のサンプリング・レートで双方向に切り替え、光スペクトル・アナライザ14は、これらのパワー・スペクトルの大きさを交互に測定する。コントローラ116は、測定されたパワー・スペクトルの大きさを受け取り、正味システム伝達関数T
1(λ)=S
out(λ)/S
in(λ)を計算し、逆伝達関数T
2(λ)=1/T
1(λ)をシード・ビームに適用するように、プログラマブル・スペクトル・フィルタ102を制御する。代替実施形態では、2つの光スペクトル・アナライザを採用することができ、各アナライザがこれらのパワー・スペクトルの内1つを測定する。他の代替実施形態では、入力パワー・スペクトルS
in(λ)が時間的に一定である状況において、入力パワー・スペクトルをコントローラ104のメモリに格納することができ、1つの光スペクトル・アナライザを使用して、出力パワー・スペクトルS
out(λ)だけを動的に測定する。閉ループ構成において動的不安定性を回避するために、コントローラ116は、通例、繰り返しにおける各ループにおいて、伝達関数T(λ)に小さな補正を適用するようにプログラミングされる。例えば、閉ループのn回目の繰り返しでは、
【数1】
ここで、nはn回目のループの繰り返しを示し、g<1は安定性およびループ集束速度の均衡を取るために設定される利得係数、即ち、動的制御帯域幅であり、KはT
2を最大化するように設定された正規化定数である。
【0031】
[0041] 尚、システム110における光スペクトル・アナライザ114の使用は、入力パワーおよび出力パワーのスペクトル振幅を測定することができるだけであり、FM-AM変換の補償をスペクトル位相に付与することはできないことを注記しておく。しかしながら、通例これらの種類のシステムでは、スペクトル位相は時変ではなく、したがって固定である。ファイバ分散は、通例、一回較正測定(one-time calibration measurement)によって補償することができる。何故なら、ファイバ・レーザ増幅システムの通常使用の間では、ファイバ分散が動的に変化することは予期されないからである。つまり、FM-AM変換を低減する能動制御は、全てのシステム・パラメータに要求される訳ではない。
【0032】
[0042] ファイバ分散を補償するため、そしてスペクトル位相補正を行うために、発散補償ファイバ(DCF:dispersion compensating fiber)を増幅チェーンにおいてファイバ増幅器22の前に使用すると、静止GVDに対処し、能動制御に必要なスペクトル位相補正量を減らすことができ、即ち、スペクトル位相制御を行うことができる。この実施形態は、
図10においてファイバ・レーザ増幅システム120として示されている。システム10および100と同様の構成要素は、同じ参照番号によって識別される。システム120において、スペクトル位相補正を行うDCF122がプログラマブル・スペクトル・フィルタ102の前に設けられる。図示のようにDCF122を設けることによって、スペクトル・アナライザ114によって得ることができなかった、スペクトル位相に対する静止補償が得られることによって、システム110に有利になる(benefit)だけでなく、FM-AM変換に対するスペクトル位相補正の殆どをDFC122に任せることによっても、システム100に有利になる。ここで、追加のスペクトル位相補正はコントローラ116によって行われる。
【0033】
[0043] 先に論じたように、レーザ増幅システムには、マルチチャネルまたはSBCアーキテクチャを採用するものがある。FM-AM変換を低減するためのプログラマブル・スペクトル・フィルタの使用は、特にこれらの種類のSBCアーキテクチャに適用することができる。何故なら、1つのプログラマブル・スペクトル・フィルタで、多くのスペクトル・ビーム結合ファイバ増幅器全体に対して、FM-AM変換補償を行うことができるからである。これは、ファイバ当たりのパワーを高め、長距離ファイバ配線(long delivery fiber cabling)を可能にするだけでなく、1つの変調チャネルによって全てのシード・ビーム波長の多重化を可能にすることによって、光電変調器および高周波RF駆動電子部品のような、高価な部品を不要にする。
【0034】
[0044] この実施形態は、
図11において、ファイバ・レーザ増幅システム130によって例示され、システム100と同様の要素は同じ参照番号によって識別される。システム130は、複数の主発振器12を含み、各主発振器12は異なる波長λにおいてシード・ビームを生成する。シード・ビームの全てが波長分割マルチプレクサ132に供給され、波長分割マルチプレクサ132は、これらのビームを1本のファイバ134に結合する。一旦シード・ビームの全てが同じファイバ上にあり、EOM16によって周波数変調されたなら、プログラマブル・スペクトル・フィルタ102は、先に論じた方法でスペクトル・フィルタリングを行い、伝搬する異なる波長のシード・ビームの全てを、逆伝達関数によって、予歪させる(pre-distort)。一旦シード・ビームの全てが予歪されたなら、これらは波長分割デマルチプレクサ136に送られ、波長分割デマルチプレクサ136は、予歪された異なる波長のシード・ビームを別個のファイバ上に分離し、別個のファイバ増幅器22に送る。一旦個々のビームがそれらのそれぞれの波長で増幅されたなら、これらはSBC光学素子138によって結合され、高パワー出力ビーム140を生成する。EOM16からの入力パワー・スペクトル、およびサンプル・ビーム32からの出力パワー・スペクトルは、光スペクトル・アナライザ114によって交互に測定され、コントローラ116がプログラマブル・スペクトル・フィルタ102を制御することができるように、コントローラ116は先に論じた方法で正味システム伝達関数を計算する。尚、スペクトル・アナライザは、先に論じたように、光検出器44、ハイパス・フィルタ46、整流器48、およびローパス・フィルタ52を採用する、検出実施形態で置換できることを注記しておく。
【0035】
[0045] 以上の論述は、本開示の例示的な実施形態を開示および説明するに過ぎない。このような論述から、そして添付図面および請求項から、種々の変更、修正、および変形も、以下の特許請求の範囲に定められる本開示の主旨および範囲から逸脱することなく、行えることは、当業者には容易に認められよう。