(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】鼻用粉末吐出装置
(51)【国際特許分類】
A61M 15/08 20060101AFI20240329BHJP
B65D 83/76 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
A61M15/08
B65D83/76
(21)【出願番号】P 2022501032
(86)(22)【出願日】2020-07-09
(86)【国際出願番号】 FR2020051232
(87)【国際公開番号】W WO2021005311
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2023-07-06
(32)【優先日】2019-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502343252
【氏名又は名称】アプター フランス エスアーエス
【氏名又は名称原語表記】APTAR FRANCE SAS
【住所又は居所原語表記】Lieu-dit Le Prieure,27110 Le Neubourg,France
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】弁理士法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】ポーレイン フランク
(72)【発明者】
【氏名】カンポット アンヌ-セシル
(72)【発明者】
【氏名】カビリック グウェノレ
(72)【発明者】
【氏名】アーネット ジェイムズ
【審査官】関本 達基
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-509070(JP,A)
【文献】特表2016-523647(JP,A)
【文献】特開2017-136270(JP,A)
【文献】特表2019-515848(JP,A)
【文献】米国特許第6708846(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 15/08
B65D 83/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鼻用粉末吐出装置(100)であって、
少なくとも1回分の用量の粉末を収容している容器(110)と、
ユーザの鼻孔に挿入される、吐出口(121)を備える鼻用吐出ヘッド(120)と、
当該装置の作動時に、圧縮空気の流れを生成し、前記吐出口(121)を通じて前記鼻孔内に粉末を吐出させる空気送出システム(130)と、
を備え、
前記空気送出システムは、
スカート部(125)内に配されている空気チャンバ(131)と、当該装置の作動時に前記空気チャンバ(131)内を密封状態で摺動し、前記空気チャンバ(131)内の空気を圧縮するピストン(132)と、
を備え、
前記ピストン(132)は、作動部材(140)に強固に接続されており、
作動前に、少なくとも1つの断裂可能ブリッジ(200)が、前記スカート部(125)と前記作動部材(140)との間に設けられ、前記断裂可能ブリッジ(200)のそれぞれは、前記スカート部(125)上に形成され、前記作動部材(140)上に形成された半径方向突起部(210)と協働し、
前記半径方向突起部(210)のそれぞれは、対応する前記断裂可能ブリッジ(200)よりも軸方向に大きく広がっており、当該断裂可能ブリッジ(200)の両側に軸方向傾斜部が形成されている
ことを特徴とする鼻用粉末吐出装置。
【請求項2】
前記スカート部(125)は、その軸方向下端の近傍に、半径方向内側に突出する下部フランジ(127)を備え、
前記少なくとも1つの断裂可能ブリッジ(200)は、前記下部フランジ(127)の半径方向内縁に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の鼻用粉末吐出装置。
【請求項3】
前記各断裂可能ブリッジ(200)の材料の量が、対応する前記半径方向突起部(210)の頂部(211)の位置で最小である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の鼻用粉末吐出装置。
【請求項4】
前記作動部材(140)は、その外側面上に、複数の軸方向リブ(145)のような半径方向外側に突出する複数のプロファイルを含み、
前記半径方向突起部(210)のそれぞれは、前記突出するプロファイル(145)と半径方向の高さが少なくとも同じになるよう半径方向外側に延在する
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の鼻用粉末吐出装置。
【請求項5】
前記容器(110)は、当該鼻用粉末吐出装置(100)の1回の作動時に吐出される1回分の用量の粉末を含む
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の鼻用粉末吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鼻用粉末吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鼻用粉末吐出装置は周知である。鼻用粉末吐出装置は、一般に1回分以上の用量の粉末を収容する容器と、吐出手段と、ユーザの鼻孔に挿入されることを意図された吐出ヘッドを備え、この吐出ヘッドは、吐出口を備える。吐出手段は、一般に空気送出システムを含む。吐出装置が作動されると、粉末がユーザの鼻孔内に吐出される。
【0003】
従来技術のこれらの装置の欠点は、装置の信頼性、特に作動時の信頼性に関する。したがって、一般に、作動時に互いに対して移動する2つの部分の間に断裂可能なブリッジが設けられ、そのブリッジは、特に、ユーザの手にエネルギーを蓄積し、作動に至るのに必要な大きさの力の閾値を所定の方法で規定する。しかし、これらの断裂可能ブリッジは、装置の作動時に妨げとなる可能性があるそのブリッジの残留物または残骸をときどき残すという欠点を有する。
【0004】
特許文献1~8には、従来の構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第1999/46055号
【文献】国際公開第2002/45866号
【文献】国際公開第2015/001281号
【文献】国際公開第2017/118827号
【文献】米国特許出願公開第2016/296957号明細書
【文献】国際公開第2017/191400号
【文献】米国特許第6708846号明細書
【文献】米国特許第6321942号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述の欠点を有しない鼻用粉末吐出装置を提供することを目的とする。
【0007】
本発明はまた、作動中の装置の信頼性を改善する、粉末のための鼻用粉末吐出装置を提供することを目的とする。
【0008】
本発明はまた、製造および組み立てが簡単かつ安価である鼻用粉末吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る鼻用粉末吐出装置は、少なくとも1回分の用量の粉末を収容している容器と、ユーザの鼻孔に挿入される、吐出口を備える鼻用吐出ヘッドと、当該装置の作動時に、圧縮空気の流れを生成し、前記吐出口を通じて前記鼻孔内に粉末を吐出させる空気送出システムと、を備え、前記空気送出システムは、スカート部内に配されている空気チャンバと、当該装置の作動時に前記空気チャンバ内を密封状態で摺動し、前記空気チャンバ内の空気を圧縮するピストンと、を備え、前記ピストンは、作動部材に強固に接続されており、作動前に、少なくとも1つの断裂可能ブリッジが、前記スカート部と前記作動部材との間に設けられ、前記断裂可能ブリッジのそれぞれは、前記スカート部上に形成され、前記作動部材上に形成された半径方向突起部と協働し、前記半径方向突起部のそれぞれは、対応する前記断裂可能ブリッジよりも軸方向に大きく広がっており、当該断裂可能ブリッジの両側に軸方向傾斜部が形成されていることを特徴とする。
【0010】
有利には、前記スカート部は、その軸方向下端の近傍に、半径方向内側に突出する下部フランジを備え、前記少なくとも1つの断裂可能ブリッジは、前記下部フランジの半径方向内縁に形成されている。
【0011】
有利には、前記各断裂可能ブリッジの材料の量が、対応する前記半径方向突起部の頂部の位置で最小である。
【0012】
有利には、前記作動部材は、その外側面上に、複数の軸方向リブのような半径方向外側に突出する複数のプロファイルを含み、前記半径方向突起部のそれぞれは、前記突出するプロファイルと半径方向の高さが少なくとも同じになるよう半径方向外側に延在する。
【0013】
有利には、前記容器は、当該鼻用粉末吐出装置の1回の作動時に吐出される1回分の用量の粉末を含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明の特徴、利点および他の事項は、非限定的な例として以下に示す詳細な説明および添付の図面を参照することにより、さらに明らかになる。
【
図1】1つの有利な実施形態における鼻用粉末吐出装置の概略断面図であり、作動前の休止位置の様子を示す図である。
【
図2】作動開始時における、
図1と同様の鼻用粉末吐出装置の概略断面図である。
【
図3】
図1と同様の鼻用粉末吐出装置の概略断面図であり、作動中の様子を示す図である。
【
図4】
図1と同様の鼻用粉末吐出装置の概略断面図であり、作動中においてピストンが
図3とは異なる位置に存する様子を示す図である。
【
図5】
図1と同様の鼻用粉末吐出装置の概略断面図であり、作動中においてピストンが
図3と
図4とは異なる位置に存する様子を示す図である。
【
図6】作動終了時における、
図1と同様の鼻用粉末吐出装置の概略断面図である。
【
図7】1つの有利な実施形態による断裂可能ブリッジの詳細な上面図である。
【
図8】1つの有利な実施形態による断裂可能ブリッジの詳細な側面図である。
【
図9】作動前の断裂可能ブリッジによって接続された、装置の2つの部分の概略部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の説明において、用語「軸方向」および「半径方向」は、
図1に示す装置の長手方向の中心軸Aに対する方向を表わし、用語「近位」および「遠位」は、前記装置の吐出口に対する位置を表わす。用語「上」、「下」、「上方」および「下方」は、各図に示す当該装置の直立姿勢に対するものである。
【0016】
本発明は、より具体的には、各図に示されているような粉末タイプの単一用量の装置に適用される。もちろん、他のタイプの鼻用粉末吐出装置も考慮され得る。
【0017】
図に示される鼻用粉末吐出装置100は、1回分の用量の粉末を収容する容器110を備える。2回分以上の用量を収容する容器を有する装置も可能である。同様に、各々が1回分の用量を収容する複数の容器を含む装置も可能である。
【0018】
鼻用吐出ヘッド120は、容器110上に組み立てられており、ユーザの鼻孔に挿入されることを意図されている。この吐出ヘッドは、吐出口121を含む。吐出ヘッド120は、有利には、作動を容易にするために半径方向に延在する指当て部122を備える。中空スリーブ123は、指当て部122から軸方向上方に延び、吐出口121で終端する。好ましくは、この中空スリーブ123は、作動時に鼻孔に挿入することができるように、半径方向寸法が小さくなっている。スカート部125は、指当て部122の半径方向外側端部から軸方向下方に延在している。このスカート部125は、その軸方向下端の近傍に、半径方向内側に突出する下部フランジ127を備える。
【0019】
装置100はさらに、空気送出システム130を備える。空気送出システム130は、装置100の作動時に、圧縮空気の流れを生成して、容器内の粉末を吐出口121を通じて鼻孔内に排出させる。空気送出システムは、空気チャンバ131とピストン132を備える。ピストン132は、空気チャンバ131内を密封状態で摺動して、空気チャンバ131内の空気を圧縮することで、上記の圧縮空気の流れを生成する。ピストン132は、好ましくは、上部リップ132aと下部リップ132bを備える。空気チャンバ131は、吐出ヘッド120の指当て部122に、堅固に接続された、好ましくは一体にされた中空の軸方向シリンダ128によって形成されている。中空シリンダ128の下側は開放端であるが、ピストン132によって閉じられている。スカート部125は、有利には、中空シリンダ128の周りに配置されており、特に、吐出ヘッド120の指当て部122に固定、例えばスナップ留めされた中空スリーブによって形成することができる。空気チャンバ131は、有利には、作動前に大気に開放されている。
【0020】
ピストン132は、好ましくは作動部材140に強固に接続されており、作動時にユーザが作動部材140を押すことで、ピストン132が空気チャンバ131内を移動する。この作動部材140は、その外側面上に、
図9に示す軸方向リブ145のような複数の突出プロファイルが形成される構成とすることができる。
【0021】
作動前に、少なくとも1つの断裂可能ブリッジ200が、スカート部125と作動部材140との間に設けられる。有利には、断裂可能ブリッジ200のそれぞれは、スカート部125の半径方向フランジ127の半径方向内縁に形成され、作動部材140まで延びている。破断点は、一般に、材料の量を少なくした部分に画定され、作動部材140との接触部に形成される。これらの断裂可能ブリッジ200は、保管若しくは輸送中、または偶発的な落下のときに、偶発的なまたは望ましくない作動を防止することを可能にする。ブリッジの断裂には所定の大きさの力が掛かる必要があり、このことは断裂までの間にユーザの手に一定の予圧を生じさせることを可能にする。断裂可能ブリッジの数はいくつでも良く、例えば装置の周囲に分配された3つのブリッジを有することができる。
【0022】
各図に示す例では、容器110は、中空管111によって形成されている。中空管111は、軸方向両端部が開口端であり、その近位側の端部がボールなどの閉鎖要素112によって閉鎖されており、その遠位側の端部がインサート115によって閉鎖されている。インサート115は、ロッドを形成する軸方向延長部を備え、作動時に、中空管111内を摺動して、閉鎖要素112をその閉鎖位置の外側に押し出すことができる。この例では、空気送出システム130のピストン132は、近位側に向かって延在する軸方向突起135に堅固に接続されており、軸方向突起135は、作動中、空気チャンバ131内の空気の圧縮中にピストン132と一緒に移動する。ピストン132の軸方向突起135が容器110内のインサート115と接触すると、ピストン132の継続的な動きにより、インサート115が中空管111内をその閉鎖位置から上に摺動する。このインサート115は、一方では、空気送出システム130と容器110との間の通路を開き、他方では、閉鎖要素112の押し出しを引き起こす。したがって、空気チャンバ131内で圧縮された空気は、容器110内に流れ込み、その用量の粉末を容器110の外側に吐出口121に向けて追い出す。特許文献1~4には、このタイプの装置が記載されている。もちろん、他のタイプの装置も可能である。
【0023】
本発明によれば、断裂可能ブリッジ200のそれぞれは、作動部材140上に形成された半径方向突起部210と協働する。
【0024】
半径方向突起部210のそれぞれは、対応する断裂可能ブリッジ200よりも軸方向に大きく広がっており、
図8に示すように断裂可能ブリッジ200の両側に軸方向傾斜部を形成している。
【0025】
断裂可能ブリッジ200の材料の量は、好ましくは、半径方向突起部210の最も突出した部分または頂部211の位置で最小であり、断裂可能ブリッジがこの位置で破断することを保証する。
【0026】
本発明は、作動ストロークの間、一旦断裂した断裂可能ブリッジによる摩擦のいかなるリスクも回避することを可能にする。実際、断裂可能ブリッジ200が断裂すると直ちに、作動のまさに開始時に、作動部材140は、スカート部125に対して軸方向に動き、その結果、断裂可能ブリッジ200は、半径方向突起部210の頂部211に対してオフセットされ、作動部材140の外面から離れる。したがって、断裂可能ブリッジが作動時にこの作動部材140の外面を擦るというリスクがなくなる。
【0027】
このリスクは、作動部材140の外面がリブ145を有する場合に、さらに大きくなる。実際、この場合、断裂可能ブリッジの断裂後に作動部材140がわずかに回転すると、断裂後の断裂可能ブリッジがリブに面することになり、作動を妨害する摩擦を潜在的に引き起こす可能性がある。
【0028】
本発明では、半径方向突起部210がリブ145と半径方向の高さが少なくとも同じ高さになるよう半径方向に延在している構成にして、このリスクを制限し、さらには排除することが行われている。
【0029】
本発明について、上記の有利な実施形態に基づいて説明してきたが、当業者は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、任意の変形を適用可能である。