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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】糖尿病を治療するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 321/04 20060101AFI20240329BHJP
   A61K 33/242 20190101ALI20240329BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240329BHJP
   C07C 323/12 20060101ALI20240329BHJP
   C07C 323/18 20060101ALI20240329BHJP
   C07C 323/52 20060101ALI20240329BHJP
   C07C 323/58 20060101ALI20240329BHJP
   C07C 323/59 20060101ALI20240329BHJP
   C07F 1/12 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
C07C321/04
A61K33/242
A61P3/10
C07C323/12
C07C323/18
C07C323/52
C07C323/58
C07C323/59
C07F1/12
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022523035
(86)(22)【出願日】2020-10-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-22
(86)【国際出願番号】 CN2020121079
(87)【国際公開番号】W WO2021073563
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2019/111962
(32)【優先日】2019-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519000526
【氏名又は名称】深▲セン▼深見医薬科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHENZHEN PROFOUND VIEW PHARMACEUTICAL TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 3311, Building 9A,District II,Shenzhen Bay Eco-Technology Park, No. 3609, Baishi Road, High-tech Zone Community, Yuehai Street, Nanshan District, Shenzhen, Guangdong 518000 (CN)
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】スゥン、タオレイ
【審査官】鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/024111(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0216588(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0054202(US,A1)
【文献】国際公開第2018/095429(WO,A1)
【文献】ZHANG, Y. et al.,Gold nanoclusters for controlled insulin release and glucose regulation in diabetes,Nanoscale,2019年03月,No.11,pp.6471-6479
【文献】CHEN, H. et al.,Gold nanoparticles improve metabolic profile of mice fed a high-fat diet,Journal of Nanobiotechnology,2018年,16:11,12 pages
【文献】BARATHMANIKANTH, S. et al.,Anti-oxidant effect of gold nanoparticles restrains hyperglycemic conditions in diabetic mice,Journal of Nanobiotechnology,2010年,8:16,15 pages
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07F
A61K
A61P
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リガンド修飾金クラスター(AuCs)の製造方法であって、
HAuCl溶液を提供することと、
前記HAuCl溶液に、第1のリガンドとHAuClとのモル比が1:1~20:1の範囲となるように、順次に酸性溶液と第1のリガンドの溶液を加えて第1の混合溶液とすることと、
前記第1の混合溶液に、NaBHとHAuClとのモル比が1:1~10:1の範囲となるように、NaBH溶液を加えて第2の混合溶液とすることと、
前記第2の混合溶液に非プロトン性極性溶媒を加えて反応を停止し、第3の混合溶液を得ることと、
前記第3の混合溶液を遠心して、固形沈殿物を回収することと、
第2のリガンドとHAuClとのモル比が1:1~20:1の範囲となるように、回収された固形沈殿物を前記第2のリガンドの溶液に溶解して第4の混合溶液を得て、そして第4の混合溶液を一定時間維持することと、
前記第4の混合溶液を遠心して上澄み液を得ることと、
前記上澄み液を所定のカットオフ分子サイズを有する透析バッグで透析することと、
を含
前記金クラスターは、直径が3nm未満である金コアと、前記金コアを修飾するリガンドと、を含み、
前記第1のリガンド及び前記第2のリガンドは、L-システイン、N-イソブチリル-L-システイン(L-NIBC)、N-アセチル-L-システイン(L-NAC)、D-システイン、N-イソブチリル-D-システイン(D-NIBC)、N-アセチル-D-システイン(D-NAC)、L-システイン-L-アルギニンジペプチド(CR)、L-アルギニン-L-システインジペプチド(RC)、L-ヒスチジン-L-システインジペプチド(HC)、L-システイン-L-ヒスチジンジペプチド(CH)、グリシン-L-システイン-L-アルギニントリペプチド(GCR)、L-プロリン-L-システイン-L-アルギニントリペプチド(PCR)、L-リシン-L-システイン-L-プロリントリペプチド(KCP)、L-グルタチオン(GSH)、グリシン-L-セリン-L-システイン-L-アルギニンテトラペプチド(GSCR)、グリシン-L-システイン-L-セリン-L-アルギニンテトラペプチド(GCSR)、1-[(2S)-2-メチル-3-チオール-1-オキソプロピル]-L-プロリン、チオグリコール酸、メルカプトエタノール、チオフェノール、D-ペニシラミン、N-(2-メルカプトプロピオニル)-グリシン、及びドデシルメルカプタンからなる群より選ばれる、方法。
【請求項2】
前記HAuCl溶液は、水、メタノール、エタノール、n-プロパノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、ペンタノール、ペンタン、ギ酸、酢酸、ジエチルエーテル、アセトン、アニソール、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、t-ブチルメチルエーテル、ジメチルスルホキシド、2-メチル-1-プロパノール、及びそれらの2種類以上の混合物からなる群より選ばれる中性又は酸性溶媒を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酸性溶液は、塩酸、リン酸、硫酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、及びそれらの2種類以上の混合物からなる群より選ばれる酸から構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のリガンドの溶液及び前記第2のリガンドの溶液は、水、メタノール、エタノール、n-プロパノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、ペンタノール、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、2-メチル-1-プロパノール、及びそれらの2種類以上の混合物からなる群より選ばれる溶媒を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記NaBH溶液は、水、メタノール、エタノール、n-プロパノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、ペンタノール、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、2-メチル-1-プロパノール、及びそれらの2種類以上の混合物からなる群より選ばれる溶媒を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記非プロトン性極性溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、ヘキサメチルホスホルアミド(HMP)、クロロホルム、四塩化炭素、ピリジン、及びそれらの2種類以上の混合物からなる群より選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第4の混合溶液を維持する時間は、3~24時間の範囲にある、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
透析された上澄み液を凍結乾燥してAuCs粉末を得ること、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
対象において糖尿病を治療するための医薬組成物であって、
前記医薬組成物は、金クラスター(AuC)を含み、
前記AuCが、
金コアと
前記金コアを修飾するリガンド(ただし、リガンドにインスリンを含む場合を除く。)と、
を含
前記金コアは、直径が3nm未満であり、
前記リガンドは、L-システイン、N-イソブチリル-L-システイン(L-NIBC)、N-アセチル-L-システイン(L-NAC)、D-システイン、N-イソブチリル-D-システイン(D-NIBC)、N-アセチル-D-システイン(D-NAC)、L-システイン-L-アルギニンジペプチド(CR)、L-アルギニン-L-システインジペプチド(RC)、L-ヒスチジン-L-システインジペプチド(HC)、L-システイン-L-ヒスチジンジペプチド(CH)、グリシン-L-システイン-L-アルギニントリペプチド(GCR)、L-プロリン-L-システイン-L-アルギニントリペプチド(PCR)、L-リシン-L-システイン-L-プロリントリペプチド(KCP)、L-グルタチオン(GSH)、グリシン-L-セリン-L-システイン-L-アルギニンテトラペプチド(GSCR)、グリシン-L-システイン-L-セリン-L-アルギニンテトラペプチド(GCSR)、1-[(2S)-2-メチル-3-チオール-1-オキソプロピル]-L-プロリン、チオグリコール酸、メルカプトエタノール、チオフェノール、D-ペニシラミン、N-(2-メルカプトプロピオニル)-グリシン、及びドデシルメルカプタンからなる群より選ばれる、医薬組成物。
【請求項10】
前記金コアは、直径が0.5~2.6nmの範囲にある、請求項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖尿病の技術分野に関し、特に糖尿病を治療するための組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病(DMとも呼ばれる)は、高血糖状態が長期にわたり持続することを特徴とし、代謝障害を伴う疾患群であり、世界中で何億人もの人々に影響を及ぼす。高血糖の症状には、排尿の増加(多尿症)、喉の渇き(多飲症)、空腹感(多食症)などが含まれる。治療せずに放置すると、糖尿病は、急性及び慢性の合併症を引き起こす。急性合併症としては、糖尿病性ケトアシドーシス、高浸透圧高血糖状態、又は死亡があります。慢性合併症としては、心血管疾患、脳卒中、慢性腎臓病、足部潰瘍、及び眼の損傷があります。
【0003】
糖尿病の原因は、インスリン不足(すなわち、膵臓がインスリンをまったく産生しない、又は、産生した量が不十分である)又はインスリン抵抗性(すなわち、体内の細胞でのインスリンに対する反応が正常ではない)である。糖尿病は主に1型糖尿病、2型糖尿病及び妊娠糖尿病の3つのタイプに分類される。1型糖尿病は、β細胞の損失により膵臓が十分なインスリンを産生できなかったことを原因とする。1型糖尿病の治療法は、インスリン注射である。2型糖尿病は、インスリン抵抗性から始まり、細胞でのインスリン対する反応が正常ではない病気である。2型糖尿病は、インスリンの使用の有無にかかわらず、医薬で治療することが可能である。病気の進行は、インスリン不足を引き起こす可能性がある。妊娠糖尿病は、3番目の主要な形態であり、糖尿病の既往歴のない妊婦が高血糖になると妊娠糖尿病を発症する。
【0004】
利用可能な医薬は、血糖値を下げるのに役立つが、糖尿病を治療するための新しい医薬と方法が依然として強く求められている。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、糖尿病を治療するための医薬組成物及び方法を提供することを目的とする。
【0006】
特定の実施形態では、リガンド修飾金クラスター(AuC)の製造方法は、HAuCl溶液を提供することと;順次に、第1のリガンドとHAuClとのモル比が1:1~20:1の範囲となるように、酸性溶液と第1のリガンドの溶液をHAuCl溶液に加えて第1の混合溶液とすることと;NaBHとHAuClとのモル比が1:1~10:1の範囲となるように、NaBH溶液を第1の混合溶液に加えて第2の混合溶液とすることと;非プロトン性極性溶媒を第2の混合溶液に加えて反応を停止し、第3の混合溶液を得ることと;第3の混合溶液を遠心して下部の固形沈殿物を回収することと;第2のリガンドとHAuClとのモル比が1:1~20:1の範囲となるように、回収された下部の固形沈殿物を第2のリガンドの溶液に溶解して第4の混合溶液を得て、そして第4の混合溶液を一定時間維持することと;第4の混合溶液を遠心して上澄み液を得ることと;上澄み液を所定のカットオフ分子サイズを有する透析バッグで透析することと、を含む。
【0007】
かかる方法の特定の実施形態では、HAuCl溶液は、水、メタノール、エタノール、n-プロパノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、ペンタノール、ペンタン、ギ酸、酢酸、ジエチルエーテル、アセトン、アニソール、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、t-ブチルメチルエーテル、ジメチルスルホキシド、2-メチル-1-プロパノール、及びそれらの2種類以上の混合物からなる群より選ばれる中性又は酸性溶媒を含む。
【0008】
かかる方法の特定の実施形態では、酸性溶液は、塩酸、リン酸、硫酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、及びそれらの2種類以上の混合物からなる群より選ばれる酸から構成される。
【0009】
かかる方法の特定の実施形態では、第1のリガンド及び第2のリガンドは、L-システイン、D-システイン及びその他のシステイン誘導体;システイン含有オリゴペプチドとこれらの誘導体;その他のチオール含有化合物;及びそれらの2種類以上の混合物からなる群より選ばれる。
【0010】
かかる方法の特定の実施形態では、第1のリガンドの溶液及び第2のリガンドの溶液は、水、メタノール、エタノール、n-プロパノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、ペンタノール、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、2-メチル-1-プロパノール、及びそれらの2種類以上の混合物からなる群より選ばれる溶媒を含む。
【0011】
かかる方法の特定の実施形態では、NaBH溶液は、水、メタノール、エタノール、n-プロパノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、ペンタノール、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、2-メチル-1-プロパノール、及びそれらの2種類以上の混合物からなる群より選ばれる溶媒を含む。
【0012】
かかる方法の特定の実施形態では、非プロトン性極性溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、ヘキサメチルホスホルアミド(HMP)、クロロホルム、四塩化炭素、ピリジン、及びそれらの2種類以上の混合物からなる群より選ばれる。
【0013】
かかる方法の特定の実施形態では、第4の混合溶液を維持する時間は、3~24時間の範囲にある。
【0014】
特定の実施形態では、前記方法は、さらに、透析された上澄み液を凍結乾燥してAuC粉末を得ること、を含む。
【0015】
特定の実施形態では、本発明は、前記本発明の方法により製造される、AuC粉末を提供する。
【0016】
本発明の特定の実施形態は、対象において糖尿病を治療するための医薬を製造するために、金コアと、前記金コアを修飾するリガンドとを含む、金クラスター(AuC)を使用する。
【0017】
かかる使用の特定の実施形態では、金コアは、直径が3nm未満である。特定の実施形態では、金コアは、直径が0.5~2.6nmの範囲にある。
【0018】
かかる使用の特定の実施形態では、リガンドは、L-システインとその誘導体、D-システインとその誘導体、システイン含有オリゴペプチドとこれらの誘導体、及びその他のチオール含有化合物からなる群より選ばれる一つである。
【0019】
かかる使用の特定の実施形態では、L-システインとその誘導体は、L-システイン、N-イソブチリル-L-システイン(L-NIBC)、及びN-アセチル-L-システイン(L-NAC)からなる群より選ばれ、及び、D-システインとその誘導体は、D-システイン、N-イソブチリル-D-システイン(D-NIBC)、及びN-アセチル-D-システイン(D-NAC)からなる群より選ばれる。
【0020】
かかる使用の特定の実施形態では、システイン含有オリゴペプチドとこれらの誘導体は、システイン含有ジペプチド、システイン含有トリペプチド又はシステイン含有テトラペプチドである。
【0021】
かかる使用の特定の実施形態では、システイン含有ジペプチドは、L-システイン-L-アルギニンジペプチド(CR)、L-アルギニン-L-システインジペプチド(RC)、L-ヒスチジン-L-システインジペプチド(HC)、及びL-システイン-L-ヒスチジンジペプチド(CH)からなる群より選ばれる。
【0022】
かかる使用の特定の実施形態では、システイン含有トリペプチドは、グリシン-L-システイン-L-アルギニントリペプチド(GCR)、L-プロリン-L-システイン-L-アルギニントリペプチド(PCR)、L-リシン-L-システイン-L-プロリントリペプチド(KCP)、及びL-グルタチオン(GSH)からなる群より選ばれる。
【0023】
かかる使用の特定の実施形態では、システイン含有テトラペプチドは、グリシン-L-セリン-L-システイン-L-アルギニンテトラペプチド(GSCR)、及びグリシン-L-システイン-L-セリン-L-アルギニンテトラペプチド(GCSR)からなる群より選ばれる。
【0024】
かかる使用の特定の実施形態では、その他のチオール含有化合物は、1-[(2S)-2-メチル-3-チオール-1-オキソプロピル]-L-プロリン、チオグリコール酸、メルカプトエタノール、チオフェノール、D-ペニシラミン(D-3-trolovol)、N-(2-メルカプトプロピオニル)-グリシン、及びドデシルメルカプタンからなる群より選ばれる。
【0025】
本発明の目的及び利点は、添付の図面に関連するその好ましい実施形態の以下の詳細な説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
次に、本発明による好ましい実施形態を、同様の参照番号が同様の要素を示す図を参照して説明する。
【0027】
図1】異なる粒子サイズを有するリガンドL-NIBC修飾金ナノ粒子(L-NIBC-AuNP)の紫外線可視光(UV)スペクトル、透過型電子顕微鏡(TEM)画像及び粒子サイズ分布図を示す。
【0028】
図2】異なる粒子サイズを有するリガンドL-NIBC修飾金クラスター(L-NIBC-AuC)の紫外線可視光(UV)スペクトル、TEM画像及び粒子サイズ分布図を示す。
【0029】
図3】異なる粒子サイズを有するL-NIBC-AuCの赤外線スペクトルを示す。
【0030】
図4】リガンドCR修飾金クラスター(CR-AuC)のUV、赤外線、TEM、及び粒子サイズ分布図を示す。
【0031】
図5】リガンドRC修飾金クラスター(RC-AuC)のUV、赤外線、TEM、及び粒子サイズ分布図を示す。
【0032】
図6】リガンド1-[(2S)-2-メチル-3-チオール-1-オキソプロピル]-L-プロリン(すなわち、Cap)修飾金クラスター(Cap-AuC)のUV、赤外線、TEM、及び粒子サイズ分布図を示す。
【0033】
図7】リガンドGSH修飾金クラスター(GSH-AuC)のUV、赤外線、TEM、及び粒子サイズ分布図を示す。
【0034】
図8】リガンドD-NIBC修飾金クラスター(D-NIBC-AuC)のUV、赤外線、TEM、及び粒子サイズ分布図を示す。
【0035】
図9】膵臓のHE染色結果を示す。(a)陰性対照群;異常な変化なし;(b)モデル対照群;膵島数、膵島体積及び膵島細胞数、及び明らかな膵島へのリンパ球浸潤の重度な減少;(c)陽性対照群;膵島数、膵島体積及び膵島細胞数の中等度な減少、及び明らかな膵島へのリンパ球浸潤;(d)サンプル群;膵島数、膵島体積及び膵島細胞数の明らかな減少なし、及び膵島へのリンパ球浸潤なし。
【0036】
図10】膵臓におけるインスリン免疫組織化学の結果を示す。(a)陰性対照群;正常なインスリン陽性膵島;(b)モデル対照群;インスリン陽性膵島の重度な減少;(c)陽性対照群;インスリン陽性膵島の有意な減少;(d)サンプル群;インスリン陽性膵島の明らかな減少なし。
【0037】
図11】膵島におけるインスリン免疫組織化学の結果を示す。(a)陰性対照群;正常な数のインスリン陽性細胞;(b)モデル対照群;重度な減少された数のインスリン陽性細胞;(c)陽性対照群;有意な減少された数のインスリン陽性細胞;(d)サンプル群;明らかな減少なしの数のインスリン陽性細胞。
【0038】
図12】本発明の特定の実施形態に係る前記AuCの製造方法のフローチャートを示す。
【0039】
図13】正常な対照群とモデル対照群との比較を示す。(a)マウスの体重、脂肪及び赤身肉重量の相違;(b)空腹時血糖指数及びインスリン血糖降下能力;(c)耐糖能指数。
【0040】
図14】(a)正常なマウス;(b)モデルマウスにおけるA-03薬物の急性血糖降下作用を示す。
【0041】
図15】モデルマウスに対するA-03薬物の作用を示す。(a)体重;(b)脂肪、ここで(1)が正常対照群、(2)がモデル対照群、(3)がA-03中用量投与群であり;(c)筋肉組織、ここで(1)が正常対照群、(2)がモデル対照群、及び(3)がA-03中用量投与群である。
【0042】
図16】一か月投与後のA-03薬物の血糖降下作用を示す。ここで(1)がモデル対照群;(2)が高用量投与群;(3)が中用量投与群;及び(4)が低用量投与群である。
【0043】
図17】二か月投与後のA-03薬物の血糖降下作用を示す。ここで(1)がモデル対照群;(2)が高用量投与群;(3)が中用量投与群;及び(4)が低用量投与群である。
【0044】
図18】(a)耐糖能及び(b)インスリン血糖降下作用A-03薬物の作用を示す(*とは、P<0.05を意味する)。
【0045】
図19】モデルマウスにおいて血中脂質に対する中用量及び高用量のA-03薬物の作用を示す:(a)血漿非エステル化脂肪酸含有量(血漿NEFA);(b)血清トリグリセリド(血漿TG);(c)血清総コレステロール(血漿TC)、ここで(1)が正常対照群;(2)がモデル対照群;(3)がA-03中用量投与群;(4)がA-03高用量投与群である。
【0046】
図20】(a)空腹時血糖値及び(b)血中インスリン含有量に対するA-03中用量投与の作用を示す、ここで(1)が正常対照群;(2)がモデル対照群;及び(3)がA-03中用量投与群である。
【0047】
図21】マウスの肝臓に対するA-03中用量投与の作用を示す。(a)グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6Pase)の発現、ここで(1)が正常対照群、(2)がモデル対照群、(3)がA-03中用量群であり;(b)肝臓グリコーゲンの量、ここで(1)が正常対照群、(2)がモデル対照群、(3)がA-03中用量群であり;(c)グルコース代謝中の酸化的リン酸化における重要な分子の発現、ここで、各遺伝子では、左から右の列が、それぞれ、正常対照群、モデル対照群及びA-03中用量群である。
【0048】
図22】肝臓に対するA-03薬物の作用を示す。(a)ウエスタンブロッティングは、pS473 PKB、PKB、pT389-S6k及びS6Kの代表的なタンパク質バンドを示した。(b)及び(c)が、対応する発現の統計学的分析の結果であり、ここで、1~3が、正常対照群、モデル対照群及びA-03中用量投与群であった。
【0049】
図23】高脂肪食モデルマウスにおける(a)グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ及び(b)アラニンアミノトランスフェラーゼに対するA-03投与の作用を示す。ここで、1~3が、正常対照群、モデル対照群及びA-03中用量投与群であった。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本発明は、本発明の特定の実施形態の以下の詳細な説明を参照することにより、より容易に理解することができる。
【0051】
本発明に関係する最新技術をより完全に説明するために、本願に参考として援用される刊行物は、参照によってその開示全体が本願に組み込まれる。
【0052】
金クラスター(AuCs)は、金原子と金ナノ粒子の間にある特殊な形態の金である。AuCは、サイズが3nm未満であり、数個から数百個の金原子で構成されているため、金ナノ粒子の面心立方積層構造が崩壊する。その結果、AuCsは、金ナノ粒子の持つ連続又は準連続のエネルギー準位とは異なり、違うHOMO-LUMOギャップを持つ分子のような離散化した電子構造を示す。これにより、従来の金ナノ粒子が持つ表面プラズモン共鳴効果と、uv-visスペクトルでの対応するプラズモン共鳴吸収帯(520±20nm)が消失する。
【0053】
本発明は、リガンド修飾AuCを提供する。
【0054】
特定の実施形態では、リガンド修飾AuCは、リガンドと、直径が0.5~3nmの範囲にある金コアとを含む。特定の実施形態では、金コアの直径は、0.5~2.6nmの範囲にある。
【0055】
特定の実施形態では、リガンド修飾AuCのリガンドは、チオール含有化合物又はオリゴペプチドである。リガンドによりAu-S結合を介して金コアを修飾し、リガンド修飾AuCを形成する。
【0056】
特定の実施形態では、リガンドは、L-システイン、D-システイン、又はシステイン誘導体であるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、システイン誘導体は、N-イソブチリル-L-システイン(L-NIBC)、N-イソブチリル-D-システイン(D-NIBC)、N-アセチル-L-システイン(L-NAC)、又はN-アセチル-D-システイン(D-NAC)である。
【0057】
特定の実施形態では、リガンドは、システイン含有オリゴペプチドとその誘導体であるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、このシステイン含有オリゴペプチドは、システイン含有ジペプチドである。特定の実施形態では、このシステイン含有ジペプチドは、L-システイン-L-アルギニンジペプチド(CR)、L-アルギニン-L-システインジペプチド(RC)、又はL-システイン-L-ヒスチジンジペプチド(CH)である。特定の実施形態では、このシステイン含有オリゴペプチドは、システイン含有トリペプチドである。特定の実施形態では、このシステイン含有トリペプチドは、グリシン-L-システイン-L-アルギニントリペプチド(GCR)、L-プロリン-L-システイン-L-アルギニントリペプチド(PCR)、又はL-グルタチオン(GSH)である。特定の実施形態では、このシステイン含有オリゴペプチドは、システイン含有テトラペプチドである。特定の実施形態では、このシステイン含有テトラペプチドは、グリシン-L-セリン-L-システイン-L-アルギニンテトラペプチド(GSCR)又はグリシン-L-システイン-L-セリン-L-アルギニンテトラペプチド(GCSR)である。
【0058】
特定の実施形態では、リガンドは、チオール含有化合物である。特定の実施形態では、チオール含有化合物は、1-[(2S)-2-メチル-3-チオール-1-オキソプロピル]-L-プロリン、チオグリコール酸、メルカプトエタノール、チオフェノール、D-ペニシラミン、又はドデシルメルカプタンである。
【0059】
本発明は、対象の糖尿病を治療するための医薬組成物を提供する。特定の実施形態では、上記対象は、人である。特定の実施形態では、上記対象は、犬のような、ペットである。
【0060】
特定の実施形態では、上記医薬組成物は、上文で開示されたリガンド修飾AuCと、薬理学的に許容される賦形剤を含む。特定の実施形態では、上記賦形剤は、リン酸緩衝液、又は生理食塩水である。
【0061】
本発明は、対象の糖尿病を治療するための医薬の製造における上文で開示されたAuCsの使用を提供する。
【0062】
本発明は、対象の糖尿病を治療するための、上文で開示されたAuCsの使用、又は上文で開示されたAuCsを使用する、対象の糖尿病を治療する方法を提供する。特定の実施形態では、前記治療方法は、薬理学的に有効な量のAuCsを前記対象に投与することを含む。前記薬理学的に有効な量は、通常な体内研究により確定されることができる。
【0063】
本発明は、リガンド修飾金クラスター(AuCs)の製造方法を提供する。図12を参照しながら、本発明の特定の実施形態に係る方法のフローチャートが提供される。前記方法1200は、以下のステップ1210~1290を含む。
【0064】
ステップ1210において、HAuCl溶液を提供する。上記HAuCl溶液は、水、メタノール、エタノール、n-プロパノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、ペンタノール、ペンタン、ギ酸、酢酸、ジエチルエーテル、アセトン、アニソール、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、t-ブチルメチルエーテル、ジメチルスルホキシド、2-メチル-1-プロパノール、及びそれらの2種類以上の混合物からなる群より選ばれる中性又は酸性溶媒を含む。特定の実施形態では、前記溶媒は、メタノールである。特定の実施形態では、上記HAuCl溶液は、遮光しながらゆっくりと撹拌し、0℃以下に予め冷却されたものである。特定の実施形態では、上記HAuCl溶液中のHAuClの濃度は、1~20g/Lの範囲にあり、好ましくは2~10g/Lの範囲にある。特定の実施形態では、完全反応の合計体積が1体積部とされる場合、上記HAuCl溶液は、0.1~0.7体積部の範囲にあり、好ましくは0.2~0.5体積部の範囲にある。
【0065】
ステップ1220において、順次に、酸性溶液と第1のリガンドの溶液をHAuCl溶液に加えて第1の混合溶液とする。特定の実施形態では、この酸性溶液は、塩酸、リン酸、硫酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、及びそれらの2種類以上の混合物からなる群より選ばれる酸から構成される。特定の実施形態では、この酸性溶液は、0.01~0.1体積部の範囲にある。特定の実施形態では、この酸性溶液は、反応がpH<5で、好ましくはpHが1~3の範囲で、最も好ましくはpHが1~2の範囲で行われることを確保する。特定の実施形態では、反応温度は、4℃未満である。特定の実施形態では、上記第1のリガンドは、L-システイン、D-システイン、及び、N-イソブチリル-L-システイン(L-NIBC)、N-イソブチリル-D-システイン(D-NIBC)、N-アセチル-L-システイン(L-NAC)、及びN-アセチル-D-システイン(D-NAC)等のその他のシステイン誘導体;システイン含有オリゴペプチドとこれらの誘導体(L-システイン-L-アルギニンジペプチド(CR)、L-アルギニン-L-システインジペプチド(RC)、L-システイン-L-ヒスチジン(CH)、グリシン-L-システイン-L-アルギニントリペプチド(GCR)、L-プロリン-L-システイン-L-アルギニントリペプチド(PCR)、L-グルタチオン(GSH)、グリシン-L-セリン-L-システイン-L-アルギニンテトラペプチド(GSCR)及びグリシン-L-システイン-L-セリン-L-アルギニンテトラペプチド(GCSR)等の、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、及びその他のシステイン含有ペプチドを含むが、これらに限定されない);及び、1-[(2S)-2-メチル-3-チオール-1-オキソプロピル]-L-プロリン、チオグリコール酸、メルカプトエタノール、チオフェノール、D-ペニシラミン、ドデシルメルカプタンの一つ又は複数等のその他のチオール含有化合物、及びそれらの2種類以上の混合物からなる群より選ばれる。特定の実施形態では、第1のリガンドの溶液は、水、メタノール、エタノール、n-プロパノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、ペンタノール、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、2-メチル-1-プロパノール、及びそれらの2種類以上の混合物からなる群より選ばれる溶媒を含む。特定の実施形態では、第1のリガンドの溶液中の第1のリガンドの濃度は、5~150g/Lの範囲にあり、好ましくは20~80g/Lの範囲にある。特定の実施形態では、第1のリガンドの溶液は、0.01~0.6体積部の範囲にある。特定の実施形態では、第1のリガンドとHAuClとのモル比は、1:1~20:1、好ましくは2:1~5:1の範囲にある。特定の実施形態では、第1の混合溶液の反応時間は、0.5~2時間である。
【0066】
ステップ1230において、第1の混合溶液にNaBH溶液を加えて第2の混合溶液とする。特定の実施形態では、このNaBH溶液は、水、メタノール、エタノール、n-プロパノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、ペンタノール、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、2-メチル-1-プロパノール、及びそれらの2種類以上の混合物からなる群より選ばれる溶媒を含む。特定の実施形態では、このNaBH溶液中のNaBHの濃度は、1~100g/L、好ましくは10~50g/Lの範囲にある。特定の実施形態では、このNaBH溶液は、0.01~0.6体積部の範囲にある。特定の実施形態では、NaBHとHAuClとのモル比は、1:1~10:1、好ましくは1:1~5:1の範囲にある。特定の実施形態では、第2の混合溶液の反応時間は、5~100分間の範囲にある。
【0067】
ステップ1240において、第2の混合溶液に非プロトン性極性溶媒を加えて反応を停止し、第3の混合溶液を得る。特定の実施形態では、この非プロトン性極性溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、ヘキサメチルホスホルアミド(HMP)、クロロホルム、四塩化炭素、ピリジン、及びそれらの2種類以上の混合物からなる群より選ばれるものである。
【0068】
ステップ1250において、第3の混合溶液を遠心して、固形沈殿物を回収する。特定の実施形態では、遠心は、1,500~6,000g、好ましくは2,000~5,000gの範囲にある。
【0069】
ステップ1260において、ステップ1250からの固形沈殿物を第2のリガンドの溶液に溶解して、第4の混合溶液を得て、そして第4の混合溶液を一定時間維持する。特定の実施形態では、第2のリガンドは、L-システイン、D-システイン、及び、N-イソブチリル-L-システイン(L-NIBC)、N-イソブチリル-D-システイン(D-NIBC)、N-アセチル-L-システイン(L-NAC)、及びN-アセチル-D-システイン(D-NAC)等のその他のシステイン誘導体;システイン含有オリゴペプチドとこれらの誘導体(L-システイン-L-アルギニンジペプチド(CR)、L-アルギニン-L-システインジペプチド(RC)、L-システイン-L-ヒスチジン(CH)、グリシン-L-システイン-L-アルギニントリペプチド(GCR)、L-プロリン-L-システイン-L-アルギニントリペプチド(PCR)、L-グルタチオン(GSH)、グリシン-L-セリン-L-システイン-L-アルギニンテトラペプチド(GSCR)及びグリシン-L-システイン-L-セリン-L-アルギニンテトラペプチド(GCSR)等の、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド及びその他のシステイン含有ペプチドを含むが、これらに限定されない)、及び、1-[(2S)-2-メチル-3-チオール-1-オキソプロピル]-L-プロリン、チオグリコール酸、メルカプトエタノール、チオフェノール、D-ペニシラミン、ドデシルメルカプタンの一つ又は複数等のその他のチオール含有化合物、及びそれらの2種類以上の混合物からなる群より選ばれる。特定の実施形態では、第2のリガンドの溶液は、水、メタノール、エタノール、n-プロパノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、ペンタノール、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、2-メチル-1-プロパノール、及びそれらの2種類以上の混合物からなる群より選ばれる溶媒を含む。特定の実施形態では、第1のリガンド及び第2のリガンドは、同じである。特定の実施形態では、第1のリガンドの溶液及び第2のリガンドの溶液における溶媒は、同じである。特定の実施形態では、第2のリガンドの溶液中の第2のリガンドの濃度は、5~100g/L、好ましくは20~50g/Lの範囲にある。特定の実施形態では、第2のリガンドの溶液は、0.1~10体積部、好ましくは1~2体積部の範囲にある。なお、ここでいう「体積部」は、上述した「体積部」と同じ意味である。特定の実施形態では、第2のリガンドとHAuClとのモル比は、1:1~20:1、好ましくは2:1~5:1の範囲にある。特定の実施形態では、前記時間は、3~24時間の範囲にある。
【0070】
ステップ1270において、第4の混合溶液を遠心して、上澄み液を得る。特定の実施形態では、遠心は、2,000~8,000g、好ましくは3,000~5,000gの範囲にある。特定の実施形態では、遠心の時間は、3~50分間、好ましくは5~15分間の範囲にある。
【0071】
ステップ1280において、所定のカットオフ分子サイズを有する透析バッグで上記上澄み液を透析する。特定の実施形態では、上記カットオフ分子サイズは、500~5,000ダルトンの範囲にあり。特定の実施形態では、上記透析は、超純水に行われ、そしてこの水は、3~10回交換される。
【0072】
ステップ1290において、透析された上澄み液を凍結乾燥してAuCs粉末を得る。
【0073】
以下の実施例は、単に本発明の原理を説明することを目的として提供されたものである。それらは、決して本発明の範囲を制限することを意図するものではない。
【0074】
実施例
【0075】
実施形態1. リガンド修飾AuCの調製
【0076】
1.1 HAuClをメタノール、水、エタノール、n-プロパノール、又は酢酸エチルに溶解して、HAuCl濃度0.01~0.03Mの溶液Aを取得した。
【0077】
1.2 リガンドを溶媒に溶解して、リガンド濃度0.01~0.18Mの溶液Bを取得した。リガンドは、L-システイン、D-システイン、及び、N-イソブチリル-L-システイン(L-NIBC)、N-イソブチリル-D-システイン(D-NIBC)、N-アセチル-L-システイン(L-NAC)、及びN-アセチル-D-システイン(D-NAC)等のその他のシステイン誘導体;システイン含有オリゴペプチドとこれらの誘導体(L-システイン-L-アルギニンジペプチド(CR)、L-アルギニン-L-システインジペプチド(RC)、L-システイン-L-ヒスチジン(CH)、グリシン-L-システイン-L-アルギニントリペプチド(GCR)、L-プロリン-L-システイン-L-アルギニントリペプチド(PCR)、L-グルタチオン(GSH)、グリシン-L-セリン-L-システイン-L-アルギニンテトラペプチド(GSCR)及びグリシン-L-システイン-L-セリン-L-アルギニンテトラペプチド(GCSR)等の、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド及びその他のシステイン含有ペプチドを含むが、これらに限定されない);及び1-[(2S)-2-メチル-3-チオール-1-オキソプロピル]-L-プロリン、チオグリコール酸、メルカプトエタノール、チオフェノール、D-ペニシラミン及びドデシルメルカプタンのうちの一つ又は複数等のその他のチオール含有化合物を含むが、これらに限定されない。前記溶媒は、メタノール、酢酸エチル、水、エタノール、n-プロパノール、ペンタン、ギ酸、酢酸、ジエチルエーテル、アセトン、アニソール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、ペンタノール、酢酸ブチル、t-ブチルメチルエーテル、酢酸イソプロピル、ジメチルスルホキシド、ギ酸エチル、酢酸イソブチル、酢酸メチル、2-メチル-1-プロパノール及び酢酸プロピルのうちの一つ又は複数であった。
【0078】
1.3 HAuClとリガンドとのモル比が1:(0.01~100)となるように、溶液Aと溶液Bを混合して、氷浴において0.1~48時間撹拌し、0.025~0.8M NaBHの水、エタノール又はメタノール溶液を加えて、氷水浴において引き続き撹拌し、0.1~12時間反応させた。NaBHとリガンドとのモル比は、1:(0.01~100)であった。
【0079】
1.4 反応終了した後、MWCOが3K~30Kの限外ろ過チューブを使用して、8000~17500r/分の勾配で反応溶液を10~100分間遠心することにより、異なる平均粒子サイズを有するリガンド修飾AuCs沈殿を得た。異なるMWCOの限外ろ過チューブのろ過メンブレンの開口は、直接的に、前記メンブレンを通過できるリガンド修飾AuCのサイズを決定した。当該ステップは、任意に省略されてもよい。
【0080】
1.5 ステップ(1.4)で得られた異なる平均粒子サイズを有するリガンド修飾AuCs沈殿を水に溶解し、透析バッグに投入し、そして水において室温で1~7日間透析した。
【0081】
1.6 透析後、リガンド修飾AuCsを12~24時間凍結乾燥して、粉末状又は凝集状物質であるリガンド修飾AuCsを得た。
【0082】
測定からわかるように、前記方法により得られた粉末状又は凝集状物質の粒子サイズは、3nm未満であった(全体的に、0.5~2.6nmにわたって分布した)。520nmで明らかな吸収ピークがなかった。得られた粉末又は凝集体はリガンド修飾AuCsであることがわかった。
【0083】
実施形態2. 異なるリガンドにより修飾されたAuCsの調製及び同定
【0084】
2.1 L-NIBC-AuCsの調製
【0085】
リガンドであるL-NIBCを例とし、L-NIBCにより修飾されたAuCsの調製及び確認を以下で詳細に説明する。
【0086】
2.1.1 1.00gのHAuClを量り、100mLのメタノールに溶解して、0.03Mの溶液Aを得た。
【0087】
2.1.2 0.57gのL-NIBCを量り、100mLの氷酢酸(酢酸)に溶解して、0.03Mの溶液Bを得た。
【0088】
2.1.3 1mLの溶液Aを量り、0.5mL、1mL、2mL、3mL、4mL、又は5mLの溶液Bとそれぞれ混合し(すなわち、HAuClとL-NIBCとのモル比が、それぞれ、1:0.5、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5であった。)、氷浴において撹拌しながら2時間反応させ、溶液が明るい黄色から無色になると、速やかに1mLの新たに調製された0.03M(11.3mgのNaBHを量り、10mLのエタノールに溶解することにより調製された。)のNaBHエタノール溶液を加えて、溶液が濃褐色になった後、引き続き30分間反応し、そして10mLのアセトンを加えて反応を停止した。
【0089】
2.1.4 反応後、反応溶液に対して勾配遠心を行い、異なる粒子サイズを有するL-NIBC-AuCs粉末を得た。具体的な方法は以下のとおりである。即ち、反応完了後、反応溶液を30KのMWCO及び50mLの体積を有する限外ろ過チューブに転移し、10000r/分で20分間を遠心し、そして内チューブ中の保持液(retentate)を超純水に溶解して、約2.6nmの粒子サイズを有する粉末を得た。その後、外チューブ中の混合液を50mLの体積及び10KのMWCOを有する限外ろ過チューブに転移し、13,000r/分で30分間を遠心した。内チューブ中の保持液を超純水に溶解して、約1.8nmの粒子サイズを有する粉末を得た。その後、外チューブ中の混合液を50mLの体積及び3KのMWCOを有する限外ろ過チューブに転移し、17,500r/分で40分間を遠心した。内チューブ中の保持液を超純水に溶解して、約1.1nmの粒子サイズを有する粉末を得た。
【0090】
2.1.5 勾配遠心により得られた3つの異なる粒子サイズでの粉末を沈殿させ、それぞれ溶媒を除去し、粗生成物をNでブロー乾燥させ、5mLの超純水に溶解し、透析バッグ(MWCOが3KDa)に置き、透析バッグを2Lの超純水に置き、一日おきに水を交換し、7日間透析し、凍結乾燥し、そして将来の使用のために保持した。
【0091】
2.2 L-NIBC-AuCの同定
【0092】
上記で得られた粉末(L-NIBC-AuC)に対して同定実験は行われた。同時に、L-NIBC修飾金ナノ粒子(L-NIBC-AuNPs)は、対照例として使用された。リガンドがL-NIBCである金ナノ粒子の製造方法は、参考文献(W.Yan、L.Xu、C.Xu、W.Ma、H.Kuang、L.Wang及びN.A.Kotov、Journal of American Chemical Society 2012、134、15114;X.Yuan、B.Zhang、Z.Luo、Q.Yao、D.T.Leong、N.Yan及びJ.Xie、Angewandte Chemie International Edition 2014、53、4623)に参照する。
【0093】
2.2.1 透過型電子顕微鏡(TEM)によるモルフォロジーの観察
【0094】
試験粉末(L-NIBC-AuCsサンプル及びL-NIBC-AuNPsサンプル)を超純水に2mg/Lになるまで溶解してサンプルとし、そして懸滴法により試験サンプルを製造した。より具体的に、5μLのサンプルを超薄型カーボンフィルムに滴下し、水滴がなくなるまで自然蒸発させ、そしてJEM-2100F STEM/EDS電界放出形高分解能TEMによりサンプルのモルフォロジーを観察した。
【0095】
L-NIBC-AuNPs の4つのTEM画像は、図1のB、E、H、及びKに示され、L-NIBC-AuCsの3つのTEM画像は、図2のB、E、及びHに示される。
【0096】
図2中の画像で示されるように、各L-NIBC-AuCsサンプルは、均一な粒子サイズ及び良好な分散性を有し、及びL-NIBC-AuCsの平均直径(金コアの直径と指す)がそれぞれ1.1nm、1.8nm及び2.6nmであり、図2のC、F及びI中の結果とよく一致した。これに対して、L-NIBC-AuNPsサンプルは、より大きい粒子サイズを有した。これらの平均直径(金コアの直径と指す)がそれぞれ3.6nm、6.0nm、10.1nm及び18.2nmであり、図1のC、F、I及びL中の結果とよく一致した。
【0097】
2.2.2 紫外線(UV)-可視光(vis)吸収スペクトル
【0098】
試験粉末(L-NIBC-AuCsサンプル及びL-NIBC-AuNPsサンプル)を超純水に濃度が10mg・L-1になるまで溶解し、室温でUV-vis吸収スペクトルが測定された。走査範囲が190~1100nmであり、サンプルセルが光路長1cmの標準石英キュベットであり、参照セルが超純水により充填された。
【0099】
異なるサイズを有する4つのL-NIBC-AuNPsサンプルのUV-vis吸収スペクトルは、図1のA、D、G及びJに示され、粒子サイズの統計学的分布は、図1のC、F、I及びLに示され、異なるサイズを有する3つのL-NIBC-AuCsサンプルのUV-vis吸収スペクトルは、図2のA、D及びGに示され、粒子サイズの統計学的分布は、図2のC、F及びIに示される。
【0100】
図1で示されるように、表面プラズモン作用により、L-NIBC-AuNPsは、約520nmで吸収ピークを有した。吸収ピークの位置は、粒子サイズに関連した。粒子サイズが3.6nmである場合、UV吸収ピークが516nmで現れ、粒子サイズが6.0nmである場合、UV吸収ピークが517nmで現れ、粒子サイズが10.1nmである場合、UV吸収ピークが520nmで現れ、粒子サイズが18.2nmである場合、吸収ピークが523nmで現れた。4つのサンプルは、いずれも560nm以上で吸収ピークを有しなかった。
【0101】
図2で示されるように、異なる粒子サイズを有するL-NIBC-AuCsサンプルのUV吸収スペクトルでは、520nmでの表面プラズモン作用による吸収ピークがなくなり、560nm以上で2つの明らかな吸収ピークが現れ、吸収ピークの位置がAuCの粒子径により僅かな相違があった。これは、AuCが面心立方構造の崩壊により分子のような特性を示し、その結果、AuCの状態密度の不連続性、エネルギー準位の分裂、プラズモン共鳴効果の消失、及び長波方向の新しい吸収ピークの現れを引き起こすためである。上記で得られた異なる粒子サイズの3つの粉末サンプルは、いずれもリガンド修飾AuCsであったと結論付けることができる。
【0102】
2.2.3 フーリエ変換赤外線分光法
【0103】
赤外線スペクトルは、Bruker製のVERTEX80Vフーリエ変換赤外線分光計で固体粉末高真空全反射モードで測定された。走査範囲が、4000~400 cm-1であり、走査回数が64であった。L-NIBC-AuCsサンプルを例とし、試験サンプルは、3つの異なる粒子サイズを有するL-NIBC-AuCs乾燥粉末であり、対照サンプルは、純粋なL-NIBC粉末であった。結果は、図3に示した。
【0104】
図3は、異なる粒子サイズを有するL-NIBC-AuCsの赤外線スペクトルを示す。純粋なL-NIBC(下部の曲線)と比較すると、異なる粒子サイズを有するL-NIBC-AuCsのSH伸縮振動は、全て、2500~2600cm-1で完全に消失したが、L-NIBCの他の特徴的なピークは、依然として残っていて、L-NIBC分子がAu-S結合を介してAuCの表面に成功に固定されていたことが証明された。この図は、リガンド修飾AuCsの赤外スペクトルがそのサイズとは無関係であることも示した。
【0105】
溶液Bの溶媒、HAuClとリガンドとの仕込み比、反応時間及び添加されたNaBHの量を小幅に調整した以外、上記方法と同じように、その他のリガンドにより修飾されたAuCsを製造した。例えば、L-システイン、D-システイン、N-イソブチリル-L-システイン(L-NIBC)又はN-イソブチリル-D-システイン(D-NIBC)がリガンドとして使用された場合、溶媒として酢酸が選択され、ジペプチドCR、ジペプチドRC又は1-[(2S)-2-メチル-3-チオール-1-オキソプロピル]-L-プロリンがリガンドとして使用された場合、溶媒として水が選択され、同様にし、その他のステップが同じようにするため、更なる詳細をここで省略する。
【0106】
本発明は、前述の方法により、一連のリガンド修飾AuCsを製造して得た。リガンドと製造プロセスのパラメーターを表1に示す。
【0107】
【0108】
表1に挙げられたサンプルは、前記方法により確認された。5つの異なるリガンド修飾AuCの特性を図4(CR-AuCs)、図5(RC-AuCs)、図6(Cap-AuCs)(Capは1-[(2S)-2-メチル-3-チオール-1-オキソプロピル]-L-プロリンである)、図7(GSH-AuCs)、及び図8(D-NIBC-AuCs)に示す。図4図8は、UVスペクトル(A)、赤外線スペクトル(B)、TEM画像(C)、及び粒子サイズ分布(D)を示す。
【0109】
その結果、表1から得られた異なるリガンドにより修飾されたAuCsの直径は、いずれも、3nm未満であることを示した。紫外線スペクトルは、520±20nmでのピークの消失、及び560nm以上での吸収ピークの出現も示した。この吸収ピークの位置のみが、リガンドと粒子サイズによりわずかに変化する。一方、フーリエ変換赤外スペクトルは、リガンドチオール赤外線吸収ピーク(図4~8のBの点線の間)の消失も示したが、他の赤外特性ピークはいずれも保持されており、全てのリガンド分子がAuCsの表面に成功に固定されていて、本発明は、表1に記載されるリガンドにより修飾されたAuCsを取得することに成功したと示した。
【0110】
実施形態3
【0111】
3.1 材料及び動物
【0112】
3.1.1 試験サンプル
【0113】
3.1.1.1 コア直径1.5nmのL-NIBC-AuCsは、以下の流れに従って合成された。
【0114】
0.5体積部の5g/L HAuClメタノール溶液を反応容器に加えて、遮光しながら予め0℃まで冷却した。その後、HAuClメタノール溶液をゆっくりと撹拌しながら0℃で維持した。0.05体積部の酢酸(分析純度以上)及び0.1体積部の40g/L NIBCメタノール溶液を順次に加えた。1時間反応後、回転数を上げて、0.3体積部の15g/L NaBH エタノール溶液を加えた。溶液を引き続き30分間反応させ、そして反応を十分なアセトンを加えることにより停止した。その後、溶液を4000r/分で10分間遠心した。上澄み液を除去して、下部の固形沈殿物を回収した。その後、固形沈殿物に1体積部の30g/LのNIBC水溶液を加えて、溶解及び密封して熟成させた。24時間熟成後、溶液を4000r/分で10分間遠心して、沈殿物を除去し、そして上澄み液を、分子量3000かつ超純水が透析のために入れた透析バッグに入れた。5時間透析後、透析バッグにおける溶液を取り出し、そして粉末に凍結乾燥して、サンプルとされた。試験サンプルは、直径が1.5nmで、TEM画像(図2K)に示すように球形であった。試験サンプルのUV-vis吸収スペクトルを図2Jに示し、粒子サイズの統計的分布を図2Lに示す。
【0115】
3.1.1.2 規格:25mg/バイアル;
【0116】
3.1.1.3 特性:灰褐色粉末;
【0117】
3.1.1.4 保管条件:2~8℃密封乾燥保存;
【0118】
3.1.2 陽性対照サンプル
【0119】
3.1.2.1 名称:塩酸ピオグリタゾン錠;
【0120】
3.1.2.2 バッチ番号:1809001;
【0121】
3.1.2.3 特性:白色又は近白色ピース;
【0122】
3.1.2.4 規格/純度:ピオグリタゾン15mg;
【0123】
3.1.2.5 包装:アルミプラスチック包装、7ピース/箱;
【0124】
3.1.2.6 製造日付:20180901;
【0125】
3.1.2.7 有効期限:202108;
【0126】
3.1.2.8 製造者:Yantai Zhengfang Pharmaceutical Co.,Ltd.;
【0127】
3.1.2.9 人に対する臨床的用量又は推薦用量:初期用量が15mg又は30mg、一日一回であってもよい。臨床的用量に十分に応答されていない場合、45mg、一日一回まで追加する。
【0128】
3.1.2.10 保存条件:遮光、密封。
【0129】
3.1.3 機器
【0130】
3.1.3.1 電子分析天秤(Shanghai Yousheng Weighing Apparatus Co.,Ltd.;Sartorius Scientific Instrument(Beijing)Technology Co.,Ltd.);
【0131】
3.1.3.2 血糖計及び血糖測定ストリップ(Johnson & Johnson);
【0132】
3.1.3.3 LEICA(登録商標)自動脱水機ASP300S;
【0133】
3.1.3.4 LEICA(登録商標)生物組織埋め込み機EG1150;
【0134】
3.1.3.4 LEICA(登録商標)回転式スライサーモデルRM2235;
【0135】
3.1.3.5 LEICA(登録商標)スプレッダーHI1210;
【0136】
3.1.3.6 LEICA(登録商標)乾燥機HI1220;
【0137】
3.1.3.7 LEICA(登録商標)自動染色機AutoStainer-XL;
【0138】
3.1.3.8 OLYMPUS(登録商標)生物顕微鏡BX43;
【0139】
3.1.3.9 OLYMPUS(登録商標)顕微鏡画像ソフトCellSens Dimension;
【0140】
3.1.3.10 Image-Pro(登録商標)画像解析ソフトImage-Pro Plus version 6.0。
【0141】
3.1.4 試薬
【0142】
3.1.4.1 塩化ナトリウム溶液(Guangdong Kelun Pharmaceutical Co.,Ltd.);
【0143】
3.1.4.2 カルボキシメチルセルロースナトリウム(Tianjin Fuchen Chemical Reagent Factory);(正確的に量った5.0g CMC-Naを、ゆっくりと800mLの精製水に加えて、ビーカーにおいてマグネチック撹拌機により、溶解まで撹拌し、2~8℃一晩置き、翌日1000mLに希釈し;そして2~8℃で後の使用のために保存した。)
【0144】
3.1.4.3 グルコース(Guangdong Guanghua Technology Co.,Ltd.);(0.25g/mLグルコース溶液は、7.5gのグルコースを、30mLの最終体積となるように、精製水に加えることにより製造され、0.125g/mLグルコース溶液は、7.5gのグルコースを、60mLの最終体積となるように、精製水に加えることにより製造された。)
【0145】
3.1.4.4 ストレプトゾトシン(STZ)(MP Bio company);(5mg/mL STZ適用溶液は、0.15gのSTZを30mLの0.1mol/Lクエン酸緩衝液に溶解することにより製造された。)
【0146】
3.1.4.5 クエン酸一水和物、無水エタノール、95%エタノール(Guangdong Guanghua Technology Co.,Ltd.);クエン酸ナトリウム(Guangzhou Zhongnan Chemical Reagent Co.,Ltd.);(0.1mol/Lクエン酸緩衝液は、2.1gのクエン酸一水和物を、100mLの最終体積となるように、脱イオン水に加えて、液体Aとなり、2.94gのクエン酸ナトリウムを、100mLの最終体積となるように脱イオン水に加えて、液体Bとなり、使用する際に、AとBを1:1~1.2の比率で混合し、pHを4.2~4.5まで調整し、2~8℃で保存することにより製造された。)
【0147】
3.1.4.6 パラフィン(Maoming Dachuan Special Wax Factory Co.,Ltd.);
【0148】
3.1.4.7 透明剤(Shanghai Hongzi Industrial Co.,Ltd.);
【0149】
3.1.4.8 頬紅(水溶性)(Shanghai Aladdin Biochemical Technology Co.,Ltd.);及び
【0150】
3.1.4.9 Su Musu(Shanghai Aladdin Biochemical Technology Co.,Ltd)。
【0151】
3.2 動物実験
【0152】
3.2.1 C57BL/6マウスは、糖尿病検査でより一般的に使用される。体重18.8~24.2gのC57BL/6雄マウス(SPFレベル)90匹実験の開始時に広東省医療研究所動物センターから購入した(実験動物生産ライセンス番号SCXK(Yue)2018-0002;動物証明書番号44007200059759)。
【0153】
3.2.2 動物実験に関連する内容と手順は、実験動物の使用と管理を規制する関連法規制、及び動物福祉を確保するための施設内実験動物倫理委員会の関連規定に準拠した。
【0154】
3.2.3 実験の最後に、マウスに3%ペントバルビタールナトリウム溶液を1mL/kg体重で腹腔内注射し、眼球と血液を採取して、頸椎脱臼により犠牲にした。
【0155】
3.2.4 マウスは、毎日の検査で4日間隔離された。
【0156】
3.2.5 マウスを12時間:12時間昼間/夜間照明付きの単一ケージに収容した。テスト結果の信頼性を確保するために、部屋の状態は常に安定していた。実験中、マウスは自由に食べたり飲んだりした。
【0157】
3.2.6 用量設計及び群分け
【0158】
3.2.6.1 用量設計:試験サンプルの投与量は10mg/kg体重であった。塩酸ピオグリタゾン錠の臨床用量は、ヒトで45mg/日である。つまり、成人の平均体重60kgに基づいて0.75mg/kg体重である。試験用量は、ヒトの臨床用量の30倍であった。したがって、陽性対照群は22.5mg/kg体重の用量で投与された;
【0159】
3.2.6.2 群分け:動物検疫の終了後、約5時間絶食し、尾血を採取し、血糖値(0時間)を測定し、0.25g/mLグルコース溶液を10mL/kg体重で投与した。血糖値は0.5時間で測定された。血糖値が高すぎる又は低すぎる6匹のマウスを排除した。残りのマウスは、陰性対照群、モデル対照群、陽性対照群、及びサンプル群に12匹のマウス/群で分けられた(表2)。
【0160】
表2. 群分け of Mice
【0161】
【0162】
3.2.7 方法
【0163】
3.2.7.1 高エネルギー食
【0164】
ラード10%、スクロース15%、卵黄粉末15%、カゼイン5%、コレステロール1.2%、コール酸ナトリウム0.2%、リン酸水素カルシウム0.6%、石粉0.4%、マウス維持材料52.6%。
【0165】
3.2.7.2 サンプル調製:本発明の試験サンプルは、塩化ナトリウム注射液を、0.5mg/mLの濃度となるように、サンプルバイアルに添加することにより調製された。その後、2~8℃で遮光しながら保管した。陽性対照サンプルは、1錠の塩酸ピオグリタゾン(規格15mg/錠)を0.5%CMC-Na溶液と混合し、均一に粉砕した後、0.5%CMC-Na溶液を最終体積13.3mLとなるように添加して調製した。使用する前によく振動した。
【0166】
3.2.7.3 糖尿病モデルの確立
【0167】
各群に1週間の維持飼料を与えた後、陰性対照群以外の群は3.1.7.1からの高エネルギー飼料に置き換えられた。3週間の給餌後、各群を24時間絶食させた。陰性対照群以外の群には、20mL/kg体重の用量で5mg/mLのSTZ溶液を腹腔内注射した。全ての群に4日間給餌した。5日目に空腹時血糖値と耐糖能を測定し、翌日試験を終了した。
【0168】
3.2.7.4 試験サンプルと陽性対照サンプルの投与
【0169】
維持の給餌から飼料として、試験終了まで34日間、サンプル群に試験サンプル溶液を1日1回20mL/kg体重で腹腔内注射し、陰性対照群とモデル対照群に塩化ナトリウム溶液を腹腔内注射し、陽性対照群に、20mL/kg体重の用量でピオグリタゾン塩酸塩溶液を胃内投与した。STZの注射の日に、各群はSTZ注射の4時間後に投与された。
【0170】
3.2.7.5 最後空腹時血糖値及び耐糖能の測定、及び物質抽出
【0171】
STZの腹腔内注射後5日目に、各マウス群に水を与えて約5時間絶食させた。空腹時血糖値を測定した後(0時間)、サンプル群と陽性対照群対応する薬剤を腹腔内注射した。陰性対照群及びモデル対照群には、塩化ナトリウム溶液を腹腔内注射した。20分後、各群に20mL/kg体重の0.125g/mLグルコース溶液を胃内投与し、グルコース溶液投与の0.5、1、1.5、2時間後に血糖値を測定した。翌日、各マウス群を投与後5時間絶食させた。マウスを10mL/kg体重の3%ペントバルビタールナトリウム溶液で麻酔し、眼球と血液を採取した後に犠牲にした。血液サンプルを3000r/minで10分間遠心分離し、血清インスリン、トリグリセリド、及び総コレステロールを検出するために血清を収集した。同時に、各動物の膵臓を収集した。各群の6匹の動物を、膵臓のHE染色及びインスリン免疫組織化学的染色のために10%パラホルムアルデヒドで固定した。残りの6匹の動物は、インスリン含有量の測定のために-80℃で保存された。
【0172】
3.2.8 検出インジケーター
【0173】
3.2.8.1 一般的な臨床観察
【0174】
動物の一般的な臨床状態は、試験が終了するまで1日1回観察された。
【0175】
3.2.8.2 体重
【0176】
試験開始時、試験終了時、及び試験中は週に1回体重を測定した。
【0177】
3.2.8.3 飼料摂取量
【0178】
毎週、2日間の動物の飼料摂取量を、追加された飼料と翌日の残りの飼料を計量することにより1回測定した。
【0179】
3.2.8.4 血糖降下率
【0180】
血糖降下率=(実験前の血糖値-実験後の血糖値)/(実験前の血糖値)×100%。
【0181】
3.2.8.5 耐糖能血糖曲線下面積
【0182】
グルコース投与後0、0.5、1、1.5、2時間での血糖曲線下面積を計算した。式は次のとおりである。
【0183】
血糖曲線下面積:[(0時間血糖+0.5時間血糖)×0.5]/2+[(0.5時間血糖+1時間血糖)×0.5]/2+[(1時間血糖+1.5時間)血糖値)×0.5]/2+[(1.5時間血糖値+2時間血糖値)×0.5]/2。
【0184】
3.2.8.6 血清インスリン、コレステロール、及びトリグリセリド
【0185】
実験の終わりに、血清インスリン、トリグリセリド、及び総コレステロールを測定するために血清を収集した。インスリン抵抗性指数を計算した。
【0186】
インスリン抵抗性指数=インスリン/22.5e-ln血中グルコース
【0187】
3.2.8.7 HE染色
【0188】
各群6匹の膵臓を10%パラホルムアルデヒドで固定した後、HE染色により膵島の炎症を観察し、0~4のスケールで半定量的評価を行った。
【0189】
0:病理学的変化なし;
【0190】
1:末梢膵島の炎症:病理学的浸潤の兆候、病理学的変化は膵島の末梢に限定された;
【0191】
2:軽度の膵島の炎症:膵島の25%未満が病理学的浸潤の変化を示した;
【0192】
3:中等度の膵島の炎症:膵島の25%から75%が病理学的浸潤の変化を示した;
【0193】
4:重度の膵島の炎症:膵島の75%以上が病理学的浸潤の変化を示した。
【0194】
3.2.8.8 免疫組織化学
【0195】
インスリン発現を検出するための免疫組織化学には、10%パラホルムアルデヒド固定膵臓組織を使用した。
【0196】
3.2.8.9 膵臓組織のインスリン含有量の測定
【0197】
各群の残りの6匹の動物の膵臓組織は、膵臓のインスリン含有量を検出するためのELISAのために80℃で保存された。
【0198】
3.2.9 結果の評価
【0199】
3.2.9.1 糖代謝障害モデルを確立するための条件
【0200】
モデル対照群は、0.5時間で10mmol/L以上の血糖値があったか、0.5、1、1.5、及び2時間の任意の時点で血糖値又は血糖曲線下面積が陰性対照群に対して統計的に有意に増加した。
【0201】
3.2.9.2 空腹時血糖指数
【0202】
グルコース代謝障害モデルの確立を前提として、モデル対照群と比較して、空腹時血糖値の低下又は血糖値の低下率が統計的に有意であり、試験サンプルの空腹時血糖指数は陽性であった。
【0203】
3.2.9.3 耐糖能指数
【0204】
糖代謝障害モデルの確立を前提として、モデル対照群と比較して、試験サンプル群は、グルコース溶液を投与してから0、1、1.5、及び2時間後に統計的に有意であるか、0、0.5、1、1.5、及び2時間の血糖曲線下面積は統計的に有意であり、試験サンプルの耐糖能指数は陽性であった。
【0205】
3.2.10 統計分析
【0206】
統計分析にSPSS21.0ソフトウェアを使用して、全てのデータは、()で表された。反復測定分散分析を使用して、試験後の体重、食物摂取量、空腹時血糖、耐糖能を分析し;ログ変換後の分散分析を使用して、試験前の空腹時血糖、TC含有量、血清インスリン、膵臓インスリンを分析した。膵臓インスリンの平均光学密度は、T検定により測定された。血糖降下の百分率、血糖曲線下面積、TG含有量をランクサム試験で分析した。カイ二乗検定を使用して、膵島炎症スコアの統計分析を行った。試験レベルはα=0.05であり、カイ二乗試験レベルはα=0.0024に修正された。
【0207】
3.3 結果
【0208】
3.3.1 観察
【0209】
STZの腹腔内注射前の動物の一般的な臨床状況及び2番目の便に異常はなかった。STZの腹腔内注射後、体重は減少した。
【0210】
3.3.2 体重
【0211】
試験中、群間で体重に統計的差異はなかった(表3)。
【0212】
【0213】
3.3.3 食物摂取量
【0214】
モデル対照群と比較して、陽性対照群は1週目で食物摂取量が増加し、サンプル群は1週目で食物摂取量が増加したが、2週目と5週目に食物摂取量が減少した(表4)。
【0215】
【0216】
3.3.4 空腹時血糖指数
【0217】
陰性対照群と比較して、モデル対照群は空腹時血糖値が上昇した。空腹時血糖値の増加率の値は陰性であり、陰性対照群と比較して統計的に有意であった(P<0.05)。モデル対照群と比較して、サンプル群及び陽性対照群の空腹時血糖値は有意に減少した(P<0.05)。
【0218】
【0219】
3.3.5 耐糖能指数
【0220】
陰性対照群と比較して、0.5時間、1時間、1.5時間、2時間でのモデル対照群の血糖値、及び血糖曲線下面積は統計的に有意であり(P<0.01)、グルコース代謝障害が確立された。モデル対照群と比較して、0.5時間、1時間、1.5時間、及び2時間でのサンプル群の血糖値は統計的に有意であった(P<0.05又はP<0.01)。
【0221】
【0222】
3.3.6 血清インスリン含有量
【0223】
陰性対照群と比較して、モデル対照群の血清インスリン含有量は統計的に減少した(P<0.01)。モデル対照群と比較して、陽性対照群の血清インスリン含有量は統計的に増加した(P<0.05)。
【0224】
3.3.7 膵臓インスリン含有量
【0225】
陰性対照群と比較して、モデル対照群の膵臓インスリン含有量は統計的に減少した(P<0.01)。モデル対照群と比較して、陽性対照群の膵臓インスリン含有量増加したが、有意でなかった(P>0.05)。
【0226】
3.3.8 コレステロール(TC)含有量
【0227】
陰性対照群と比較して、モデル対照群のTC含有量は統計的に増加した(P<0.01)。モデル対照群と比較して、サンプル群のTC含有量は統計的に減少した(P<0.01)。
【0228】
3.3.9 トリグリセリド(TG)含有量
【0229】
陰性対照群と比較して、モデル対照群のTG含有量は増加したが、統計的有意性はなかった(P>0.05)。陽性薬物群とサンプル群のTG含有量は減少したが、有意性はなかった(P>0.05)。
【0230】
【0231】
3.3.10 HE染色結果
【0232】
陰性対照群(図9(a))と比較して、モデル対照群は、膵島数、膵島体積及び膵島細胞数の重度の減少、ならびに明らかな膵島へのリンパ球浸潤を示し(図9(b))、陽性対照群は、膵島数、膵島体積及び膵島細胞数の適度な減少、及び明らかな膵島へのリンパ球浸潤を示した(図9(c))が、サンプル群は、膵島数、膵島体積及び膵島細胞数の明らかな減少を示さず、膵島へのリンパ球浸潤を示さなかった(図9(d))。
【0233】
3.3.11 インスリン免疫組織化学結果
【0234】
陰性対照群(図10(a)及び図11(a))と比較して、モデル対照群は、インスリン陽性膵島の重度な減少及び膵臓細胞を示し(図10(b)及び図11(b))、陽性対照群は、インスリン陽性膵島の有意な減少及び膵臓細胞を示した(図10(c)及び図11(c))が、サンプル群は、インスリン陽性膵島及び膵臓細胞の明らかな減少を示さなかった(図10(d)及び図11(d))。
【0235】
実施形態4
【0236】
4.1 試薬
【0237】
コレステロールテストキット、LabAssayTM Cholestro、Baobai Bio/Wako
【0238】
トリグリセリド検出キット、LabAssay トリグリセリド、Baobai Bio/Wako
【0239】
遊離脂肪酸検出キット、LabAssay NEFA、Baobai Bio/Wako
【0240】
グルコーステストキット、LabAssay グルコース、Baobai/Wako
【0241】
インスリンテストキット、ラット/マウスインスリンELISA、Shanghai Jifeng/Millipore
【0242】
GOT、GPTキット、Nanjing Jiancheng Biology Co.,Ltd
【0243】
逆転写試薬、Novozan
【0244】
HieffTM qPCR SBYR Green Mastey Mix、Eason Biotechnology(Shanghai)Co.,Ltd
【0245】
高脂肪食、研究食、カタログ番号D12492
【0246】
4.2テスト薬物
【0247】
A-03:サイズ0.5~2.6nmのL-NIBC-AuCs
【0248】
4.3 動物試験方法
【0249】
マウスモデル:B6高脂肪マウスモデル。
【0250】
B6マウスは5つの群に分けられた:通常の対照群(B6マウスは通常実験を通して給餌された)。A-03薬物対照群(B6マウスは通常、実験全体を通して給餌され、生後5か月からA-03高用量(10mg/Kgマウス体重)を腹腔内注射された);モデル対照群(B6マウスに2か月齢から高脂肪食を与え、5か月齢から通常の生理食塩水を腹腔内注射した);低用量群(B6マウスに2ヶ月齢から高脂肪食を与え、5ヶ月齢からA-03低用量(1mg/Kgマウス体重)を腹腔内注射した;中用量群(B6マウスは2ヶ月齢から高脂肪食を与えられ、5ヶ月齢からA-03中用量(5mg/Kgマウス体重)を腹腔内注射された;そして高用量群(B6マウスはから高脂肪食を与えられた2ヶ月齢で、5ヶ月齢からA-03高用量(10mg/Kgマウス体重)を腹腔内注射した。
【0251】
4.4 結果
【0252】
4.4.1 糖尿病マウスモデルの確立
【0253】
高脂肪食により誘発された肥満マウスモデルを使用して、糖尿病に対するA-03薬の治療効果を研究した。
【0254】
図13aは、正常対照群とモデル対照群との間の体重、脂肪及び赤身肉重量の比較を示す。正常対照群と比較して、モデル対照群の体重と脂肪重量は有意に増加した(P<0.05、*)が、赤身の肉の含有量には有意な変化はなかった。
【0255】
図13bは、正常対照群とモデル対照群の間の空腹時血糖指数とインスリン低血糖能力の比較を示す(すべて有意差あり;P<0.05、*)。
【0256】
図13cは、正常対照群とモデル対照群の耐糖能指数の比較を示す(すべて有意差あり、P<0.05、*)。
【0257】
全ての治療群はモデル対照群と同じであった。結果として、モデルが成功に確立されたことを示した。
【0258】
4.4.2 糖尿病マウスの血糖値に対するA-03薬の作用
【0259】
2つの投与スキームが設定された。1つ目は急性薬物投与であった。つまり、薬物投与の30分後に試験を実施した。2つ目は長期の薬剤投与であり、1日1回2ヶ月連続投与し、投与1ヶ月後と2ヶ月後に試験を行った。
【0260】
4.4.2.1 急性薬物投与の結果
【0261】
正常マウス及びモデルマウスについては、A-03薬物(10mg/kgマウス体重)の急性投与の30分後に、耐糖能に対するA-03d薬物の作用が検出された(正常及びモデルマウスの両方の対照として生理食塩水を注射した。)。A-03の高用量投与の30分後、高脂肪食モデルマウスの耐糖能は有意に改善された(図14b、15分及び30分で、A-03高用量投与群の血糖は正常な生理食塩水対照群よりも有意に低かった、P<0.05、*)が、正常なマウスでは有意な変化はなかった(図14a)。
【0262】
4.4.2.2 長期薬物投与の結果
【0263】
図15aは、モデル対照群と比較した、A-03低用量、中用量、及び高用量投与群の体重変化を示す。
【0264】
図15b及び15cは、それぞれ、脂肪及び赤身肉に対する例示的な中用量のA-03薬物の作用を示す。
【0265】
結論として、モデルマウスと比較して、A-03の3つの用量の長期薬物投与は、モデルマウスの体重及び体脂肪率に有意な影響を与えなかった。したがって、薬物毒性は最初に除外され、薬物の使用はマウスの食餌及び代謝消費に有意な影響を及ぼさないと説明することができた。
【0266】
投与1ヶ月後、モデル対照群及び各薬物投与群の血糖値をランダム食(飢餓なし)の条件下で測定した。図16は、3つの濃度のA-03薬が有意な血糖降下作用を有することを示す(P<0.05、*)。
【0267】
投与2ヶ月後、一晩飢餓状態にした後、モデル対照群及び各薬物投与群の空腹時血糖を測定した。図17は、血糖値に対するA-03薬の有意な制御作用があることを示す(P<0.05、*)。
【0268】
これらの結果は、A-03薬が血糖値に対して有意な抑制作用を持っていることを示す。
【0269】
さらなる実験は、低、中、高用量のA-03薬が、高脂肪食により誘発される耐糖能とインスリン抵抗性を大幅に改善できたことを示す。図18は、(a)耐糖能及び(b)インスリン低血糖作用に対する例示的な中用量A-03薬物の作用を示す(*はP<0.05を意味する)。
【0270】
4.4.3 モデルマウスの血漿総コレステロール含有量に対するA-03薬の作用
【0271】
低血糖作用に加えて、薬物治療後に血中脂質が大幅に改善されることもわかった。ここで血中脂質とは、血清総コレステロール、トリグリセリド、及び非エステル化脂肪酸を指す。図19は、血清非エステル化脂肪酸含有量(図19a)、血清トリグリセリド(図19b)及び血清総コレステロール(図19c)に対する中用量及び高用量のA-03薬物の作用を示し、ここで、1~4は、それぞれ、正常対照群、モデル対照群、A-03中用量投与群及びA-03高用量投与群を示す。A-03の中用量及び高用量は、NEFA及びTGに有意な影響を与えなかったが、TCを243.2±9.7mg/dL(モデル対照群)からそれぞれ188.4±9.4mg/dL及び197.1±10.4mg/dLに減少させ、差は有意であった(P<0.05、*)。
【0272】
4.4.4 モデルマウスの血中インスリン含有量に対するA-03薬の作用
【0273】
図20は、絶食条件下でのモデルマウスにおける血糖(図20a)及び血中インスリン含有量(図20b)に対する中用量薬物の2ヶ月間の投与後のA-03薬物の作用を示す。ここで、1~3は、それぞれ、正常対照群、モデル対照群、及びA-03中用量投与群を示す。空腹時血糖値は10.38±0.39mmから8.55±0.45mmに減少した(P<0.05、*)。対応する血中インスリン含有量は、6.03±0.85ng/mlから3.86±0.38ng/mlに減少した(P<0.05、*)。
【0274】
4.4.5 肝臓に対するA-03薬の作用
【0275】
上記の長期薬物投与流れに従って、マウスにA-03薬物を与えて投与し、薬物投与の期間は2.5ヶ月であった。
【0276】
4.4.5.1 糖新生の主要な律速酵素であるG6Paseへの影響
【0277】
糖新生は、非グルコース前駆体が主に肝臓で発生するグルコースに変換されるプロセスである。グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(G6Pase)は、糖新生の重要な律速酵素である。G6Paseの発現は、グルコース産生の速度と直接相関している。図21aは、例示的な中用量のA-03薬物が、G6Paseの遺伝子発現を有意に阻害できたことを示し(P<0.05、*)、図21bは、肝臓のグリコーゲン含有量が有意に減少したことを示す(P<0.05、*)。図21Cは、シトクロムcオキシダーゼIV(Cox4)、シトクロムcオキシダーゼVII(Cox7)、水素イオン輸送ATPaseのミトコンドリアF1複合体のアルファペプチド(Atp5a)、ミトコンドリアDNAのシトクロムc(Cycs)、シトクロムb遺伝子(Cytb)、及びカルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ1A(Ctp1a)など、グルコース代謝における酸化的リン酸化の他の重要な分子の発現への影響を示す。酸化的リン酸化は増加しなかったが、Cox4、Cox7及びAtp5aは有意に減少した(P<0.05、*)ことがわかった。これは、血糖値の減少が、消費の増加ではなく、肝臓の糖新生の作用的な薬物制御による可能性があったことを示す。
【0278】
4.4.5.2 肝内インスリン感受性への影響
【0279】
組織処理、タンパク質電気泳動分離、及びウエスタンブロッティングはよく知られた方法であり、ここでは説明しない。図22は、プロテインキナーゼB(PKB)及びリン酸化リボソームタンパク質S6キナーゼ(S6K)を含む、インスリン感受性の主要な調節タンパク質のリン酸化に対する例示的な中用量のA-03薬物の作用を示す。図22aは、pS473-PKB、PKB、pT389-S6K及びS6Kの代表的なタンパク質バンドを示し、図22b及び22cは、対応する発現の統計分析の結果である(それらのうち、1~3は、順次に、正常対照群、モデル対照群及びA-03中用量群を示す。)。高脂肪食は、総タンパク質中のリン酸化プロテインキナーゼBの割合を大幅に減少させたことがわかった(pS473-PKB/PKB)。モデル対照群と比較して、A-03薬物投与は、PKBタンパク質のリン酸化を有意に増加させ(P<0.05、*)、リン酸化リボソームタンパク質S6キナーゼ/リボソームタンパク質S6キナーゼ(pT389-S6K/S6K)のタンパク質比を有意に増加させた(P<0.05、*)。結果として、A-03薬物がPKB-S6Kシグナル伝達経路を有意に活性化し、インスリンに対する標的細胞の感受性を高め、インスリン抵抗性を改善することを示した。
【0280】
4.4.5.3 肥満糖尿病による肝機能障害の予防作用
【0281】
血液中のグルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ及びアラニンアミノトランスフェラーゼの検出方法はよく知られており、ここでは説明しない。マウスの血液中のグルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(AST)とアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の含有量の検出は、ASTとALTの両方が高脂肪食モデルマウスで有意に増加したことを示した。A-03薬物治療後、非常に効果的な管理が達成された。図23a及び図23bは、それぞれAST又はGOT及びALT又はGPTに対する中用量A-03薬物の作用を示す。ここで、ヒストグラムの1~3は、それぞれ、正常対照群、モデル対照群、及びA-03中用量投与群を示す。A-03薬物投与後、ASTとALTが大幅に減少したことがわかった(P<0.05、*)。これは、A-03薬物が肥満糖尿病による肝機能障害に対して有意な治療作用があることを示す。
【0282】
サイズの異なるその他のリガンド修飾AuCsも同様の作用がある。ここでは詳しく説明しない。
【0283】
[産業上の利用可能性]
【0284】
AuCsは、糖尿病の治療のために用いられる。それらは、産業的応用に適する。
図1
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【図 】
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