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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】複合吸音材
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/168 20060101AFI20240329BHJP
   B32B 5/24 20060101ALI20240329BHJP
   D04H 3/16 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
G10K11/168
B32B5/24 101
D04H3/16
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022524495
(86)(22)【出願日】2021-05-18
(86)【国際出願番号】 JP2021018842
(87)【国際公開番号】W WO2021235446
(87)【国際公開日】2021-11-25
【審査請求日】2022-07-27
(31)【優先権主張番号】P 2020087357
(32)【優先日】2020-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】523419521
【氏名又は名称】エム・エーライフマテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】山室 信也
(72)【発明者】
【氏名】岡村 知恵
(72)【発明者】
【氏名】中西 康夫
(72)【発明者】
【氏名】小松 隆志
(72)【発明者】
【氏名】塩田 英治
【審査官】大石 剛
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/124231(WO,A1)
【文献】特開2006-098890(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/168
B32B 5/24
D04H 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と表皮材とを含む2層以上で構成され、該表皮材が最外層に配置された複合吸音材であって、該表皮材の単位面積当たりの表面積(m2/m2)と、該基材の単位面積当たりの表面積(m2/m2)との比率(表皮材:基材)が1:5以上1:40未満であり、かつ、該表皮材の単位面積当たりの表面積が10m 2 /m 2 以上20m 2 /m 2 以下であり、かつ、基材の単位面積当たりの表面積が100m 2 /m 2 以上500m 2 /m 2 以下である、複合吸音材。
【請求項2】
前記表皮材の単位面積当たりの表面積(m2/m2)と、前記基材の単位面積当たりの表面積(m2/m2)との比率(表皮材:基材)が1:10以上1:35以下である、請求項1に記載の複合吸音材。
【請求項3】
前記複合吸音材の厚みが40mm以下である、請求項1又は2に記載の複合吸音材。
【請求項4】
前記表皮材の目付が25g/m2以上70g/m2以下である、請求項1~のいずれかに記載の複合吸音材。
【請求項5】
前記表皮材が熱圧着により一体化されている不織布である、請求項1~のいずれか1項に記載の複合吸音材。
【請求項6】
前記熱圧着が部分熱圧着である、請求項に記載の複合吸音材。
【請求項7】
前記表皮材が、平均繊維径0.3μm以上7μm以下の少なくとも1層の極細繊維層(M)と、平均繊維径10μm以上30μm以下の少なくとも1層の太径繊維層(S)とが一体化された不織布である、請求項1~のいずれか1項に記載の複合吸音材。
【請求項8】
前記表皮材の極細繊維層(M)の目付が1g/m2以上40g/m2以下である、請求項に記載の複合吸音材。
【請求項9】
前記表皮材が3g/m2以上20g/m2以下の含有量で合成樹脂を含む充填材を含有する、請求項1~のいずれか1項に記載の複合吸音材。
【請求項10】
前記基材が連続気泡樹脂発泡体である、請求項1~のいずれか1項に記載の複合吸音材。
【請求項11】
前記基材が繊維多孔質材である、請求項1~のいずれか1項に記載の複合吸音材。
【請求項12】
音源側に前記表皮材が少なくとも1層配置される、請求項1~11のいずれか1項に記載の複合吸音材。
【請求項13】
JIS A 1405に準拠する垂直入射の測定法において表皮材側から入射する音の周波数1000Hzでの吸音率が30%以上、2500Hzでの吸音率が90%以上、及び5000Hzでの吸音率が80%以上である、請求項1~12のいずれか1項に記載の複合吸音材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材と表皮材とを含む2層以上で構成される複合吸音材に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等が走行する際には、車両に搭載されるエンジン及び駆動系からの騒音や走行中のロードノイズ、風切り音などの、種々の騒音が発生する。このような騒音が搭乗員に不快感を与えないように、エンジンフード、ダッシュパネル、天井材、ドアトリム、キャブフロア等の壁面には、騒音対策として吸音材が適用される。例えば、特許文献1には、吸音材としては、不織布、樹脂発泡体などの多孔質材からなる吸音材や、それらの吸音材を基材として、通気性を一定の範囲に制御した不織布、樹脂膜などの表皮層(表皮材、表面材、表皮ともいう)を積層一体化した積層構造体が提案されている。
【0003】
以下の特許文献2には、メルトブロー極細繊維層と合繊長繊維層との熱圧着により一体化した積層不織布からなる不織布表面材と、嵩密度が0.005~0.15g/cm3という粗な構造をもつ合繊繊維不織布裏面材とからなる吸音材が提案されているが、表面の合成繊維不織布の影響が大きく、広い周波数の音を吸収するものは実現できていない。
【0004】
以下の特許文献3には、メルトブロー極細繊維層とスパンボンド不織布の基布入り短繊維不織布とが機械交絡法によって積層一体化した、成型性に優れた不織布が提案されているが、機械交絡法で積層一体化しているため、自動車部材としての省スペース化の観点では、不織布の厚みが厚いという欠点がある。また、機械交絡法によって生じた孔に音が直進して侵入する箇所となるため吸音性が悪いという欠点がある。
【0005】
以下の特許文献4には、特定の平均流量細孔径を有し、通気性を制御したる少なくとも2層の繊維層を含み、その間に基材層を配置した複合吸音材がされている。しかしながら吸音率測定の際に、背後空気層を5mm設けて測定を行っており、透過後の反射音が再度裏面繊維層に侵入する際の吸音効果を利用しており、実質的に厚みが厚い。また、自動車の壁面に配置する場合、背後空気層を設けることが難しい。
【0006】
このように、吸音性基材に表皮材を複合させた吸音材が提案されているが、厚みが薄く、低目付で広い周波数を吸音する吸音材は、通気性の観点のみでは到達が難しく、十分な吸音性能を得るには背後空気などで厚みを厚くする必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-121631号公報
【文献】特開2006-028708号公報
【文献】特開2002-161464号公報
【文献】国際公開第2019/172016号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記した従来技術に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、厚みが薄く、低目付領域でも、低周波数、中周波数、高周波数の広域で吸音性が発揮できる複合吸音材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討し実験を重ねた結果、基材と表皮材を含む、少なくとも2層以上で構成される複合吸音材において、基材の単位面積当たりの表面積と、表皮材の単位面積当たりの表面積の比が特定範囲にあることで、低周波数、中周波数、高周波数の広域で吸音性に優れながらも、省スペース性に優れ軽量である事を見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0010】
すなわち、本発明は以下の通りのものである。
[1]基材と表皮材とを含む2層以上で構成され、該表皮材が最外層に配置された複合吸音材であって、該表皮材の単位面積当たりの表面積(m2/m2)と、該基材の単位面積当たりの表面積(m2/m2)との比率(表皮材:基材)が1:5以上1:40未満であり、かつ、該表皮材の単位面積当たりの表面積が10m 2 /m 2 以上20m 2 /m 2 以下であり、かつ、基材の単位面積当たりの表面積が100m 2 /m 2 以上500m 2 /m 2 以下である、複合吸音材。
[2]前記表皮材の単位面積当たりの表面積(m2/m2)と、前記基材の単位面積当たりの表面積(m2/m2)との比率(表皮材:基材)が1:10以上1:35以下である、前記[1]に記載の複合吸音材。
]厚みが40mm以下である、前記[1]又は[2]に記載の複合吸音材。
]前記表皮材の目付が25g/m2以上70g/m2以下である、前記[1]~[]のいずれかに記載の複合吸音材。
]前記表皮材が熱圧着により一体化されている不織布である、前記[1]~[]のいずれかに記載の複合吸音材。
]前記熱圧着が、部分熱圧着である、前記[]に記載の複合吸音材。
]前記表皮材が、平均繊維径0.3μm以上7μm以下の少なくとも1層の極細繊維層(M)と、平均繊維径10μm以上30μm以下の少なくとも1層の太径繊維層(S)とが一体化された不織布である、前記[1]~[]のいずれかに記載の複合吸音材。
]前記表皮材の極細繊維層(M)の目付が1g/m2以上40g/m2以下である、前記[]に記載の複合吸音材。
]前記表皮材が3g/m2以上20g/m2以下の含有量で合成樹脂を含む充填材を含有する、前記[1]~[]いずれかに記載の複合吸音材。
10]前記基材が連続気泡樹脂発泡体である、前記[1]~[]のいずれかに記載の複合吸音材。
11]前記基材が繊維多孔質材である、前記[1]~[]のいずれかに記載の複合吸音材。
12]音源側に前記表皮材が少なくとも1層配置される、前記[1]~[11]のいずれかに記載の複合吸音材。
13]JIS A 1405に準拠する垂直入射の測定法において表皮材側から入射する音の周波数1000Hzでの吸音率が30%以上、2500Hzでの吸音率が90%以上、及び5000Hzでの吸音率が80%以上である、前記[1]~[12のいずれかに記載複合吸音材。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る複合吸音材は、薄く、軽量でありながらも低周波数、中周波数、高周波数の広域で吸音性に優れるため、特に自動車用、住宅、家電製品、建設機械等の成型性複合吸音材の表皮材として好適に利用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本実施形態の複合吸音材は、基材と表皮材とを含む2層以上で構成され、該表皮材が最外層に配置された複合吸音材であって、該表皮材の単位面積当たりの表面積(m2/m2)と、該基材の単位面積当たりの表面積(m2/m2)との比率(表皮材:基材)が1:5以上1:40未満である、複合吸音材である。
【0013】
本実施形態の複合吸音材は多孔質吸音効果と面振動吸音効果の両側面の効果を発現することで、低周波、中周波、高周波の広い領域での吸音効果を発現している。多孔質吸音効果とは、音の振動エネルギーを骨格との摩擦により熱エネルギーに変換する効果であり、高周波数領域に対し有効である。また、面振動吸音効果とは、密な構造に音が進入する際、音の振動エネルギーを受け面全体で振動し、背後の基材のもつ空気がバネの役割となることで、基材内の空気をより効率的に振動させて、基材の骨格との摩擦により、音の振動エネルギーを熱エネルギーに変換する効果であり、低周波数領域に対し有効である。
【0014】
複合吸音材は、単体で吸音性能の良い表皮材と基材を組み合わせたとしても、一概に良好な吸音性能を示すわけではなく、音の侵入のしやすさ、空気との摩擦のしやすさの観点からそれぞれ最適化する事で、より優れた吸音性を得ることができる。
【0015】
本実施形態の複合吸音材を構成する表皮材は、布帛であれば特には限定されず、織布、編布、不織布等であることができるが、好ましくは不織布である。表皮材は、布帛以外に、布帛の表面及び/又は空隙に、合成樹脂を含有する充填材(以下、単に「充填材」ともいう。)を含有してもよい。
【0016】
本実施形態の複合吸音材を構成する表皮材の単位面積当たりの表面積(m2/m2)と、基材の単位面積当たりの表面積(m2/m2)の比率(表皮材:基材)は、1:5以上1:40未満であり、好ましくは1:10以上1:35以下、より好ましくは1:10以上1:30以下である。該比率が1:5以上であると、表皮材の面振動を基材の空気へ伝達させた際、基材との空気との摩擦を起こす表面積が大きく効率的に、振動エネルギーを熱エネルギーへ変換しやすく、また、表皮材での音の反射を抑えやすいため、吸音性能向上を発揮しやすい。他方、該比率が1:40未満であると、表皮材と基材の過度な緻密さ勾配が付きにくく、基材の厚み方向全域への音の侵入を阻害しにくく薄くとも十分な吸音性能を得ることができる。このように、表皮材と基材の単位面積当たりの表面積の比率を調整することで、厚み方向全量域での吸音への関与を実現することができ、薄くかつ軽量な複合吸音材を得ることができる。尚、本実施形態の複合吸音材を構成する表皮材の単位面積当たりの表面積は、該表皮材が充填材を含む場合、布帛と充填材を合わせた表皮材トータルでの表面積を指す。
【0017】
本実施形態の複合吸音材を構成する表皮材の単位面積当たりの表面積は、多孔質吸音効果と面振動吸音効果の両側面の効果を発現させる観点において、10~20m2/m2が好ましく、より好ましくは11~19m2/m2、さらに好ましくは12~18m2/m2である。10m2/m2以上であると、多孔質吸音効果と面振動吸音効果の両側面の効果を発現することで、低周波、中周波、高周波の広い領域での吸音効果を発現できる。20m2/m2以下であれば、過剰な密な構造を抑制でき音の反射が少なく、基材まで音を侵入させやすく、複合吸音材全体での吸音効果を得やすい。
単位面積当たりの表面積には、繊維径と繊維重量が大きく関与するため、繊維径と繊維重量を最適な範囲に設定することで、単位面積当たりの表面積を調整可能である。但し、スパンボンド不織布を表皮材として用いる場合、単位面積当たりの表面積を前記した好ましい範囲に収めると高目付となりやすいため、フィラーや顔料等を含む充填材による表面積アップや極細繊維を含有させることで、薄さと軽量を達成しやすくなる。また、スパンボンド不織布を使用せず、極細繊維単体を表皮材とすることも好ましい。しかしながら、例えば、メルトブロー法で作製された極細繊維は糸同士の融着が多く発生しやすく、平均繊維径を低下させても単位表面積が大きく向上しにくい。そのため、後述するように、極細繊維紡糸時の樹脂粘度、紡糸温度、吹き付け距離などの紡糸条件の設定が非常に重要となる。
【0018】
本実施形態の複合吸音材を構成する基材材の単位面積当たりの表面積は、十分な吸音効果を持ち、厚み方向全域で熱エネルギーへの変換しながらも、表皮材の吸音付与効果を十分に得ることを発現させる観点において、100~500m2/m2が好ましく、より好ましくは150~450m2/m2、さらに好ましくは200~400m2/m2である。100m2/m2以上であると、多孔質吸音効果に必要な音の振動エネルギーを骨格との摩擦により熱エネルギーに変換する領域が多く十分な吸音効果が得やすく、低周波、中周波、特に高周波の広い領域での吸音効果を発現できる。他方、500m2/m2以下であれば、過剰な密な構造を抑制でき中~高周波音の反射が少なく、基材まで音を侵入させやすく、中~高周波音の吸音率の低下が抑制できる。
【0019】
本実施形態の複合吸音材の厚みは、好ましくは5~40mmであり、より好ましくは7~30mmである。厚みが5~40mmであることで、薄くかつ軽量な吸音材であるとともに音の周波数の比較的広い範囲において、高い吸音効果が得られる。
【0020】
本実施形態の複合吸音材を構成する表皮材の目付は、25~70g/m2が好ましく、より好ましくは27~60g/m2である。表皮材の目付が25g/m2以上であると、十分に表皮の通気制御が可能であり、さらに単位面積当たりの表面積が十分となりやすい。また、基材の摩耗等からの保護としての必要強度を達成しやすく、意匠性の観点から基材の目隠しを行いやすい。他方、表皮材の目付が70g/m2以下であると、過剰な密な構造を抑制でき音の反射が少なく、基材まで音を侵入させやすく複合吸音材全体での吸音効果を得やすい。また表皮の柔軟性、延伸性、追随性を得やすく、これらの特性が必要な、例えばフードインシュレーター等の熱成型を要する部材においても使い勝手が良い。
【0021】
本実施形態の複合吸音材を構成する表皮材を一体化する方法としては、熱圧着による一体化や、カーディングを経たウェブを接着樹脂の塗布による一体化、ニードルパンチ、水流交絡等の機械交絡によって一体化する方法が挙げられるが、吸音性の観点や、軽量化の観点から熱圧着による一体化が望ましい。熱圧着による一体化された表皮材は、表皮が面として適度に固定化されているため、膜振動吸音効果が発現しやすく、十分な強度を与えやすい為取り扱い性も良好となる。
【0022】
本実施形態の複合吸音材を構成する表皮材が熱圧着によって一体化されている場合、該熱圧着は、公知のエンボスロールと平滑ロール(以下、フラットロールともいう)間での加熱圧着による接合、平滑ロールと平滑ロール間での加熱圧着による接合、熱平板間での加熱圧着による接合が可能である。最も好ましくは、エンボスロールと平滑ロール間で加熱圧着して接合する手法であり、非(部分)熱圧着部(この方法においては、非エンボス部と同視される)において、緻密化が抑制できることで音の侵入を阻害しにくくなる。さらには、(部分)熱圧着部(この方法においては、エンボス部と同視される)での強固な一体化が行われるため、十分な強度を持ち取り扱い性が良く、熱成型が必要な部材への適用が可能となり、幅広く用いることができる。
【0023】
エンボスロールと平滑ロール間で加熱圧着して接合する手法の場合、不織布全面積に対して6%以上30%以下の範囲の圧着面積率で部分熱圧着が行われることが好ましく、より好ましくは7%以上25%以下である。熱圧着面積率が6%以上であると、毛羽立ちが少なく、30%以下であると不織布がペーパーライクになりにくく、破断伸度、引裂強力等の機械的物性が低下しにくい。圧着面積率がこの範囲内であれば、良好な繊維相互間の熱圧着処理を実施することができ、得られる不織布を、適度な機械的強度、剛性、寸法安定性を有するものとすることができる。
熱圧着の温度は、供給されるウェブの目付、速度等の条件によって適宜選択されるべきものであり、一概には定められないが、繊維を構成する樹脂の融点よりも30℃以上90℃以下低い温度であることが好ましく、より好ましくは40℃以上70℃以下低い温度である。また、エンボスロールと平滑ロール間で加熱、圧着して接合する場合であって、エンボスロール面に接する樹脂種とフラットロール面に接する樹脂種が同じ場合、エンボスロールとフラットロールの温度差は、10℃未満であることが好ましく、より好ましくは5℃未満、さらに好ましくは3℃未満である。但し、エンボスロール面に接する樹脂種とフラットロール面に接する樹脂種の融点が異なる場合、紡糸速度、糸の配向結晶性が異なる場合は、この限りではない。エンボスロールとフラットロールの温度差が上記範囲内であれば、ロール温度が低い側の毛羽も立ちにくくなり、成型により毛羽立ちも抑制でき、成型時の延伸の際、毛羽立ちによって熱圧着部から糸が外れにくくなり、糸が外れた部分へ応力集中しにくくなり延伸斑を抑制でき、吸音基材の露出を抑えることができる。また、温度の差が過度に大きくなければ、片面側の熱量不足による耐熱性不足となりにくい。尚、ロール温度の差をつけた場合には、延伸時の応力を下げることができ、成型性が向上する。
【0024】
熱圧着の圧力も、供給されるウェブの目付、速度等の条件によって適宜選択されるべきものであり、一概には定められないが、10N/mm以上100N/mm以下であることが好ましく、より好ましくは30N/mm以上70N/mm以下であり、この範囲内であれば、良好な繊維相互間の熱圧着処理を行うことができ、得られる不織布を適度な機械的強度、剛性、寸法安定性を有するものとすることができる。
熱圧着部の形状については、特には限定されないが、好ましくは織目柄、アイエル柄(長方形柄)、ピンポイント柄、ダイヤ柄、四角柄、亀甲柄、楕円柄、格子柄、水玉柄、丸柄などが例示できる。
【0025】
平滑ロールと平滑ロール間で加熱圧着して接合する場合や、熱平板間加熱圧着して接合する場合は、不織布の全面に圧力がかかるため、面全体が過剰に緻密となり音の侵入を阻害しない様に、また、層間剥離を引き起こさない程度に、低圧低温での加熱圧着とすることが好ましい。
【0026】
本実施形態の複合吸音材を構成する表皮材は、太径繊維層(S)1層以上から、極細繊維層(M)1層以上から、又は、少なくとも1層の太径繊維層(S)と少なくとも1層の極細繊維層(M)との複合体から構成されることが好ましい。例えば、太径繊維層(S)1層以上から構成される場合はS、SS、極細繊維層(M)1層以上から構成される場合はM、MM、少なくとも1層の太径繊維層(S)と少なくとも1層の極細繊維層(M)との複合から構成される場合はSM、SMS、SMM、SMMS、SMSMS、SMSSMS等が挙げられる。
太径繊維層(S)のみから構成される場合、強度が高く取り扱い性に優れるが、吸音効果発現に必要な表皮材の通気性と、単位面積当たりの表面積を向上させる為には、充填材等を含有させ、緻密にさせることが好ましい。
極細繊維層(M)のみから構成される場合、吸音効果発現に必要な表皮材の通気性とさせ、十分な単位面積当たりの表面積を得やすいが、取り扱い性が良く、熱圧着工程での布の破断が発生しないようにするためには、低速での熱圧着を行うことや、3~7μm程度の繊維径とすることが好ましい。
特に好ましい構成は、太径繊維層(S)と極細繊維層(M)の複合体から構成される場合であり、前記の太径繊維層(S)のみ、極細繊維層(M)のみの両方の特性を得ることができる。すなわち吸音性と取り扱い性の両立を、充填材を含有させずして、極細繊維を非常に細くする事で、低目付化で達成可能となる。
【0027】
本実施形態の複合吸音材を構成する表皮材が、太径繊維層(S)と極細繊維層(M)の複合から構成される場合、平均繊維径0.3μm以上7μm以下の少なくとも1層の極細繊維層(M)と、平均繊維径10μm以上30μm以下の少なくとも1層の太径繊維層(S)とが一体化された不織布が好ましい。これにより、吸音効果と取り扱い性を両立できる。さらに、成型時に破れが生じやすい極細繊維層(M)を高強度な太径繊維層(S)と積層し、例えば、熱圧着により一体化することにより、延伸の際、太径繊維層(S)が柱の役割を果たし、極細繊維層(M)に極端な応力がかかることないため、極細繊維層(M)を破れなく均一に延伸しやすくなる。
【0028】
本実施形態の複合吸音材を構成する表皮材が太径繊維層(S)を含む場合、該太径繊維層(S)は連続長繊維で構成されることが好ましく、その紡糸方法は、既知のスパンボンド法が好ましく、紡糸時に摩擦帯電やコロナ帯電などにより糸条を均一に分散させる条件が好ましい。このような条件を用いれば、未結合状態のウェブを作製しやすく、かつ、経済性に優れる。また、太径繊維層のウェブは単層でも複数の層を重ねてもよい。
【0029】
太径繊維層(S)を構成する素材としては溶融紡糸法で繊維化できる熱可塑性合成樹脂が用いられる。熱可塑性合成樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、共重合ポリプロピレンなど)、芳香族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリエステル系樹脂(ポリD-乳酸、ポリL-乳酸、D-乳酸とL-乳酸との共重合体、D-乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、L-乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、D-乳酸とL-乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、これらのブレンド体など)、ポリアミド系樹脂(ポリアミド6、ポリアミド66、共重合ポリアミドなど)、ポリフェニレンサルファイドなどが挙げられる。熱可塑性合成樹脂としては、特に、耐熱性、耐水性などに優れる芳香族ポリエステル系樹脂が好ましく用いられる。芳香族ポリエステル系樹脂としては、熱可塑性ポリエステルであって、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートが代表例として挙げられる。また、芳香族ポリエステル系樹脂は、エステルを形成する酸成分としてイソフタル酸やフタル酸等が重合又は共重合されたポリエステルであってもよい。
【0030】
複合吸音材の基材と接する不織布の太径繊維層(S)は、他層の繊維の融点より30℃以上低い融点を有する繊維を含んでもよい。すなわち、不織布面材と基材の接着性を良好に保つために、基材と接触する層を低融点の繊維構成にすることもできる。低融点の繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートにフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸、アジピン酸、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオールの1種又は2種以上の化合物を共重合した芳香族ポリエステル共重合体、脂肪族エステルなどのポリエステル系繊維などが挙げられる。これらの繊維は、単独でもよく、2種以上複合混繊してもよく、また、低融点繊維と高融点繊維とを複合混繊してもよい。更に、低融点成分を鞘部に有する、鞘芯構造の複合繊維を用いてもよい。鞘芯構造の複合繊維としては、例えば、芯が高融点成分であるポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、共重合ポリエステル、鞘が低融点成分である共重合ポリエステル、脂肪族エステルなどが挙げられる
【0031】
太径繊維層(S)を構成する繊維の平均繊維径は好ましくは10.0μm以上30.0μm以下であり、より好ましくは12.0μm以上30.0μm以下、さらに好ましくは12.0μm以上20.0μm以下、よりさらに好ましくは13.0μm以上20.0μm以下、最も好ましくは13.0μm以上18.0μm以下である。紡糸安定性の観点から10.0μm以上であり、他方、強力や耐熱性の観点から30μm以下である。繊維の平均繊維径が上記範囲内であれば、繊維の結晶性が高すぎず、結晶部分が少なくなり繊維の伸度が向上し、成型性が良くなりやすく、部分熱圧着時に熱収縮が生じにくく、繊維が熱圧着ロールの熱により融解してロールに取られにくいため、不織布の生産性も良好となり、さらに、カバーリング性も向上し、不織布強度も向上し、紡糸安定性も良好となる。
【0032】
本実施形態の複合吸音材を構成する表皮材が極細繊維層(M)を含む場合は、該極細繊維層(M)はメルトブロー法によって製造することが好ましい。メルトブロー法では、溶融した樹脂を紡糸ノズルから吐出した直後に高温高速のエアーにより牽引を行うため、比較的生産コストの低く細い繊維径が得やすい。しかし、その製法上の特徴から溶融・吐出した樹脂の固化がしにくく、繊維同士の融着などにより、十分な表面積が得られない場合がある。そのため、この繊維同士の融着を防ぐために、樹脂粘度や、コンベアまたは太径繊維層(S)上に吹き付ける距離等を適宜調整することが好ましい。
【0033】
極細繊維層(M)の素材がPET又はその共重合体の場合には、極細繊維の溶液粘度(ηsp/c)は0.35以上0.6以下が好ましく、より好ましくは0.37以上0.55以下である。PET又はその共重合体の極細繊維の溶液粘度(ηsp/c)が0.3以上であれば、過度な低結晶の高流動性を抑制することで、固化を早め糸同士の融着を抑制し、表面積の低下を抑制することができる。PET又はその共重合体の極細繊維の溶液粘度(ηsp/c)が0.6以下であれば、過度な延伸エネルギーを要せずとも細い繊維が得やすく、生産コストを低くすることができる。
【0034】
極細繊維層をメルトブロー法で形成する場合は、メルトブロー法で加熱空気の吹き飛ばしにより細繊化し、裏側から吸引しているコンベアネット上、又は太径繊維層上の補集面に、高温で吹き付け繊維間の融着による自己接着を利用してシート化される。そのため、一般的にメルトブロー法で細繊化を行うと、繊維間の融着による自己接着が強くなることで、極細繊維同士の融着現象を引き起こしてしまう。しかしながら、本発明者らは、検討の結果、メルトブローノズルと捕集面との距離を所定の距離とすることで、細繊維化しても融着度合を制御することができることを見出した。
メルトブローノズルと捕集面との距離は、100mm以上180mm以下の距離が好ましく、より好ましくは110mm以上150mm以下、さらに好ましくは120mm以上140mm以下である。メルトブローノズルと捕集面との距離が100mm以上であると、加熱空気の温度、流量を高くしても極細繊維同士の融着が抑えやすい。180mm以下であると、空気中での繊維間の絡み合いが発生しにくく、斑が発生しにくくなると共に、融着による自己接着が弱すぎず積層工程等での取り扱いが良好となる。
【0035】
極細繊維層(M)の平均繊維径は好ましくは0.3μm以上7μm以下、より好ましくは0.4μm以上5μm以下、さらに好ましくは0.6μm以上2μm以下である。0.3μm以上であれば、メルトブロー法での紡糸に過酷な条件は必要とされず、安定した繊維が得られる。他方、繊維径が7μm以下であれば、十分に細い繊維径となり、吸音効果が十分に得られ、また、太径繊維層(S)と極細繊維層(M)の複合から構成される場合には、太径繊維層(S)の隙間に微細繊維として入り込んで該隙間を埋める作用が得られるため、緻密な構造となり吸音効果をより高めることができる。
【0036】
極細繊維層(M)の目付は、低目付で十分な吸音性を得る点から、1g/m2以上40g/m2、好ましくは2g/m2以上25g/m2以下、より好ましくは3g/m2以上20g/m2以下である。
【0037】
極細繊維層(M)の素材としては、前記した太径繊維層(S)に使用可能な熱可塑性合成樹脂を同様に用いることができる。
【0038】
本実施形態の複合吸音材を構成する表皮材の繊維断面の形状は、特に制限されないが、強度の観点からは、丸断面が好ましく、繊維の表面積の増加、微細空隙の形成の観点からは、偏平糸などの異型断面糸が好ましい。
【0039】
本実施形態の複合吸音材を構成する表皮材には、合成樹脂を含む充填材が含有されていてもよい。特に太径繊維層(S)のみから構成される場合は、低目付において、通気性を制御し、単位面積当たりの表面積を十分なものとして吸音効果を得るためには、充填材を含有させことが非常に好ましい。
表皮材の充填材の含有量は、3g/m2以上25g/m2以下が好ましく、より好ましくは、3g/m2以上20g/m2以下である。本範囲であれば十分に通気性の制御と単位面積当たりの表面積を向上させることができると共に、熱成型時の金型への樹脂の付着を抑制しやすく、成型体の金型への貼り付きを抑制でき良好な成型性を得ることができ、成型体の打ち抜き加工性も良好となる。尚、前記充填材の含有量は、合成樹脂と、フィラー、顔料、難燃剤等との合計の含有量である。
【0040】
充填材に用いる合成樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂が用いることができ、熱硬化性樹脂としては、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、エステル結合型熱硬化性アクリル樹脂、フェノール樹脂、熱硬化型ポリエステル系樹脂等を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂等が使用される。
【0041】
前記熱硬化性樹脂として望ましいものの一つは、エステル結合型熱硬化性アクリル樹脂である。エステル結合型熱硬化性アクリル樹脂は、エチレン性不飽和ジカルボン酸からなるラジカル重合により得られたポリマーの酸と、ヒドロキシル基を有するアルカノールアミンに含まれる水酸基とのエステル化反応によって硬化を行う。架橋はエステル化反応によるから水のみが副成され、ホルムアルデヒド等の有害物質が副成されないという利点が、自動車内装材などに適している。
【0042】
前記熱硬化性樹脂として望ましい他の一つは、フェノール系樹脂のフェノール-アルキルレゾルシン共縮合物である。フェノール-アルキルレゾルシン共縮合物は水溶液の安定性が良く、かつフェノールのみからなる縮合物に比較して、常温で長期間保存する事が出来るという利点がある。また、アルキルレゾルシンはホルムアルデヒド類との反応性が高く、遊離アルデヒドを補足して反応するので、樹脂中の遊離アルデヒド量が少なくなる利点がある。
【0043】
前記熱可塑性樹脂として望ましいのは、ポリエステル系樹脂である。ポリエステル系樹脂は比較的Tgが高く、表皮材へ含有させた後、低温での乾燥でもべたつきが少なく良好な肌触りを持ち、樹脂移りが少ない。
【0044】
充填材中に、表皮材を緻密にさせながらも、適度な表面積を持たせることを目的に、フィラーを混合してもよい。フィラーとしては、シラスバルーン、パーライト、ガラスバルーン、中空セラミックス等の中空粒体、プラスチック発泡体や発泡粒、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、シリカ、コロイダルシリカ等の無機充填剤等が例示される。これらの中でもシラスバルーン等の中空粒体は、内部が中空であることから吸音性能の向上に寄与しやすく望ましい。
【0045】
前記フィラーの平均粒径は1~100μmが好ましく、より好ましくは10~90μm、さらに好ましくは15~70μmである。平均粒径が1μm以上であると、フィラー同地の隙間が形成されやすく、過度に緻密と緻密性が高過ぎず、空隙が少なくなりすぎず、音の進入が十分となり吸音効果を高めやすい。他方、100μm以下であると、過度な大きな隙間の形成が抑制しやすく、表皮を緻密にさせながらも、適度な表面積を持たせやすい。フィラーと樹脂の混合比は、固形分比で55:45~70:30で使用できる。この範囲であれば、フィラーの表皮材への固着が十分であり、フィラー同士の隙間を樹脂で埋め尽くす可能性を低減させることができる。
【0046】
表皮材へ充填材を含有させる方法としては、充填材を含む液(以下、「充填材液」とも言う。)をロールコーター、ナイフコーター、フローコーター等を用いて片面へコーティングする方法や、ディップニップ等の含侵による厚み方向全面へのコーティング方法が使用できる。表皮材が太径繊維層(S)のみから構成されるような不織布の場合、熱成型時の金型への樹脂の付着を抑制する、又は、成型体の金型への貼り付きを抑制するという観点からは、片面に樹脂が存在するコーティング方法、特にロールコートが望ましい。他方、表皮材が、例えば、SMSのような太径繊維層(S)と極細繊維層(M)の複合から構成される場合は、ディップニップを用いても、充填材液が極細繊維層(M)表面に付着して表面張力を発生させ、太径繊維層(S)の表面まで合成樹脂がにじみ出しにくく、よって熱成型時の金型への樹脂の付着を抑制する、又は、成型体の金型への貼り付きを抑制することができるため、望ましい。さらには、樹脂が表皮の厚み方向全域に存在することで、極少量の樹脂量で表皮を緻密にさせながらも、適度な表面積を持たせやすい。また、充填材液としては、取り扱いが容易な点から、水溶液、水性エマルジョン、水性ディスパーションが好ましい。
【0047】
コーティングの乾燥温度は、100~130℃の範囲が好ましい。この範囲であると、充填材液の乾燥を十分に行うことができると共に、熱での表皮材の結晶化促進により、柔軟性・成型性の低下を抑制でき、また熱硬化性樹脂を用いた場合、熱成型前に硬化状態となることを抑制でき、熱成型時に優れた成型性を発揮することができる。
【0048】
充填材中に、黒顔料や、燐系などの難燃剤、撥水剤を同時に混合し、フードインシュレーター等の表皮に必要な、黒着色、難燃性、撥水性を付与することができる。
【0049】
本実施形態の複合吸音材を構成する表皮材の嵩密度は、0.1g/cm3以上0.7g/cm3以下であることが好ましく、より好ましくは0.15g/cm3以上0.6g/cm3以下、さらに好ましくは0.2g/cm3以上0.55g/cm3以下である。嵩密度が0.1g/cm3以上であれば、不織布の緻密性が向上し、音の減少する効果が向上する。他方、嵩密度が0.7g/cm3以下であれば、表皮材の緻密性が高過ぎず、空隙が少なくなりすぎず、音の進入が十分となり、特に中周波数4000Hz付近の吸音率が下がりにくく、加工性も向上する。
【0050】
本実施形態の複合吸音材を構成する表皮材の、JIS L 1906フラジール形法によって測定される通気度は、100mL/cm2/sec以下が好ましく、より好ましくは0.1mL/cm2/sec以上50mL/cm2/sec以下、さらに好ましくは0.5mL/cm2/sec以上30mL/cm2/secである。通気度が100mL/cm2/sec以下であれば、進入する音の波長を小さくすることができ、音エネルギーの減少効果を得やすい。
【0051】
本実施形態の複合吸音材を構成する表皮材が不織布である場合、該不織布の180℃雰囲気下、10分間における乾熱収縮率は、好ましくは5%以下、より好ましくは4%以下であり、さらに好ましくは3.5%以下である。5%を超えない場合、成形加工時、収縮によりシワが顕著に発生しにくい。
【0052】
吸音基材と表皮材を組み合わせて、高い吸音性を有しながらも、薄く、軽量で、形態安定性に優れた複合吸音材とするためには、吸音基材を特定の嵩密度とすることが望ましい。吸音基材の嵩密度は、不織布及び積層不織布との組み合わせ前に公知の熱プレス機などで圧縮調整されていてもよく、自動車部材等に熱成型加工で合繊繊維不織布を積層した後、吸音基材と一体成型する際に圧縮調整されていてもよい。本実施形態の複合吸音材に用いられる基材の嵩密度は、0.01g/cm3以上0.1g/cm3以下が好ましく、より好ましくは0.02g/cm3以上0.08g/cm3以下、さらに好ましくは0.03g/cm3以上0.05g/cm3以下である。嵩密度が0.01g/cm3以上であれば、吸音性が低下しにくく必要以上に厚みを厚くする必要がない。他方、嵩密度が0.1g/cm3以下であれば、不織布表皮材を透過した音が吸音基材に進入しやすく、また、耐摩耗性、加工性も向上する。
【0053】
吸音基材の素材としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、メラミン樹脂などがからなる連続気泡樹脂発泡体や、ポリエチレン、ポリプロピレン、共重合ポリプロピレンなどのポリオレフィン系繊維、ナイロン6、ナイロン66、共重合ポリアミドなどのポリアミド系繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、共重合ポリエステル、脂肪族ポリエステルなどのポリエステル系繊維、鞘がポリエチレン、ポリプロピレン、共重合ポリエステル、芯がポリプロピレン、ポリエステルなどの組み合わせからなる芯鞘構造等の複合繊維、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネートなどの生分解性繊維などの短繊維及び/又は長繊維を積層して公知のニードルパンチ法などで交絡して得られた吸音性合成繊維不織布、フェルトが挙げられる。さらに、無機素材として、例えば、ガラス繊維、ガラスウール等が挙げられる。
連続気泡樹脂発泡体としては、軽量性、吸音性の観点から、メラミン樹脂、ウレタン樹脂が好ましく、吸音性合成繊維不織布としては、難燃性、耐熱性などからポリエステル系繊維からなる不織布が好ましい。
【0054】
本実施形態の複合吸音材は、表皮材と粗な構造の吸音基材とを接合一体化して得られる。表皮材と吸音基材の接合は、例えば、熱融着繊維を接合面に介在させる方法、ホットメルト系樹脂や接着剤を塗布する方法などにより行うことができる。
【0055】
接着剤を用いた表皮材と吸音基材の接合方法においては、カーテンスプレー方式、ドット方式、スクリーン方式などにより、不織布表皮材にホットメルト系接着剤を2g/m2以上30g/m2以下の割合で塗布し、不織布表皮材側から加熱して、塗布した接着剤を軟化、融解させて吸音基材に接着することができる。
【0056】
表皮材と吸音基材との間の接着力としては、0.1N/10mm以上が好ましく、より好ましくは0.2N/10mm以上5N/10mm以下である。接着力が0.1N/10mm以上であると、吸音材の裁断、輸送などの間に剥離するなどの問題が生じにくい。高い接着力を得るためには、不織布表皮材の接着面に低融点成分層を設けることが好ましく、更に、連続気泡樹脂発泡体、繊維多孔質材にホットメルト系の接着剤を塗布することも好ましい。
【0057】
本実施形態の複合吸音材は、JIS-1405に準拠する垂直入射の測定法において、周波数1000Hz(低周波)の吸音率が、30%以上、2500Hz(中周波)の吸音率が90%以上、5000Hz(高周波)80%以上であることが好ましい。
【実施例
【0058】
以下、本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、不織布製造における流れ方向(機械方向)をMD方向、その方向と直角方向で巾方向をCD方向という。
以下の実施例等における各物性は、下記方法により測定して得られたものである。尚、以下の実施例等では、各物性は、原則、下記方法により測定されるが、下記方法により測定できない事情がある場合は、適宜合理的な代替方法によって測定することが可能である。
【0059】
(1)単位面積当たり表面積(m2/m2
セルに表皮材または基材のサンプルを適量詰め(0.02~2.5g程度)、島津製作所製の試料前処理装置バキュプレップ061LBを用いて前処理を行う(70℃×40分乾燥後、40分冷却)。これを島津製作所製の自動比表面積測定装置トライスターII3020にセットし、サンプル表面へのクリプトンガス吸着により、下記BETの式:
P/(V(P0-P))=1/(Vm×C)+((C-1)/(Vm×C))(P/P0)
{式中、P:吸着平衡圧、P0:飽和水蒸気圧(Pa)、Vm:単分子層吸着量(mg/g)、C:吸着熱などに関するパラメーター(-)<0であり本関係式は、特にP/P0=0.05~0.35の範囲で良く成り立つ。}
を適用し、比表面積値(m2/g)を求め、比表面積値(m2/g)×目付(g/m2)により単位面積当たり表面積(m2/m2)を算出する。BETの式とは、一定温度で吸着平衡状態である時、吸着平衡圧Pと、その圧力での吸着量Vmの関係式を表した式である。
【0060】
(2)目付(g/m2
表皮材及び基材の目付は、JIS L 1913に準拠して測定する。また、積層体(複合吸音材、及び、積層不織布である表皮材)において、各層の目付は本実施例では製造条件から計算される値を各層の目付とする。尚、製造条件が不明である場合、各層目付は、層間剥離できるものは剥がして単層としてからJIS L 1913に準拠して測定することができる。また、層間剥離ができない場合は、不織布のX線CT画像を撮り、X線CT画像から、観察範囲の面積、極細繊維層が占める体積と樹脂密度、厚みから計算することができる。
【0061】
(3)平均繊維径(μm)
キーエンス社製のマイクロスコープVHX-700Fを用いて500倍の拡大写真を撮り、観察視野においてピントの合った繊維10本の平均値で求める。
【0062】
(4)嵩密度(g/cm3
(目付)/(厚み)から算出し、単位容積あたりの重量を求める。
【0063】
(5)厚み(mm)
JIS L 1913 B法に準拠する。荷重0.02kPaの圧力の厚みを3カ所以上測定し、その平均値を求める。但し、不織布表皮材の厚みは荷重20kPaで測定する。
【0064】
(6)通気性
JIS L 1906フラジール形法で測定する。
【0065】
(7)複合吸音材の吸音率
JIS A 1405に準拠し、垂直の入射法の測定機(ブリュエル・ケアー社製Type4206T)を用いて、代表値として周波数1000Hz、2500Hz、及び5000Hzでの吸音率(%)を測定する。基材は各実施例・比較例の記載に従って作製し使用する。
【0066】
(8)打ち抜き加工性
複合吸音材の上に打ち抜き刃を乗せ、油圧裁断機で打ち抜きを行う。断面を目視し、以下の評価基準で判断する。
(評価基準)
〇:断面の荒れ及び未切断糸が生じない
△:断面の荒れ及び/又は未切断糸がやや生じる
×:断面の荒れが及び/又は未切断糸が多く生じる。
【0067】
[実施例1]
ポリエチレンテレフタレート(オルソクロロフェノールを用いた1%、25℃法の溶液粘度ηsp/c 0.77、融点263℃)樹脂を、常用の溶融紡糸装置に供給して300℃で溶融し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から吐出し、エアジェットによる高速気流牽引装置を使用して延伸しながら、糸を冷却し繊維ウェブ(S1)(目付15.0g/m2、平均繊維径13μm)を捕集し、ネット上に形成した。得られた太径繊維ウェブ(S1)上に、ポリエチレンテレフタレート(同じく溶液粘度ηsp/c 0.50、融点260℃)をメルトブローノズルから、紡糸温度300℃、加熱空気320℃で1000Nm3/hrの条件下で直接噴出させ、極細繊維ウェブ(M)(目付10.0g/m2、平均繊維径1.7μm)を形成した。この際、メルトブローノズルから太径繊維層までの距離を110mmとし、メルトブロウンノズル直下の捕集面における吸引風速を7m/secに設定した。更に得られた極細繊維ウェブ上に、繊維ウェブ(S1)と同様にポリエチレンテレフタレートの太径繊維ウェブ(S2)を形成した。次に得られた積層ウェブを、熱圧着時に圧着面積率11%である、アイエル柄エンボスロールとフラットロールを用いて、該エンボスロールの表面温度を220℃、該フラットロールの表面温度を220℃とし、カレンダ線圧30N/mmで熱圧着することにより、目付40g/m2、嵩密度0.19g/cm3、単位面積あたり表面積16.4m2/m2の不織布表皮材を得た。
基材としては、厚さ20mm、目付け1400g/m2、嵩密度0.070g/cm3、単位面積当たり表面積368(m2/m2)のフェルト(寺田タカロン社製 レジンフェルト)を用い、前記不織布表皮材との接合を行った。接合は、面材と基材の間に共重合ポリエステル系ホットメルトパウダー(融点130℃)を10g/m2 塗布して加熱処理で接合して本発明の複合吸音材を得た。その特性を以下の表1に示す。
【0068】
[実施例2]
基材に、厚さ20mm、平均繊維径7μm、目付け1000g/m2の嵩密度0.050g/cm3、単位面積当たり表面積331(m2/m2)のグラスウールを用いた以外は、実施例1と同様に複合吸音材を得た。その特性を以下の表1に示す。
【0069】
[実施例3]
基材に、厚さ20mm、目付け200g/m2、嵩密度0.010g/cm3、単位面積当たり表面積234(m2/m2)のメラミン樹脂発泡体(BASF社製メラミン樹脂連続発泡体、バソテクト TG)を用いた以外は、実施例1と同様に複合吸音材を得た。その特性を以下の表1に示す。
【0070】
[実施例4]
基材に、厚さ20mm、目付け320g/m2、嵩密度0.016g/cm3、単位面積当たり表面積102(m2/m2)のウレタン樹脂発泡体(イノアック社製ウレタン樹脂連続発泡体、F-KL)を用いた以外は、実施例1と同様に複合吸音材を得た。その特性を以下の表1に示す。
【0071】
[実施例5]
不織布表皮材の太径繊維ウェブ(S1,S2)の目付をそれぞれ11.2g/m2、極細繊維ウェブ(M)の目付を7.6g/m2としたこと、熱圧着時に圧着面積率15%である、織目柄エンボスロールとフラットロールを用いたこと、基材に厚さ15mm、目付け1100g/m2、嵩密度0.073g/cm3、単位面積当たり表面積289(m2/m2)のフェルト(寺田タカロン社製 レジンフェルト)を用いた以外は、実施例1と同様に複合吸音材を得た。その特性を以下の表1に示す。
【0072】
[実施例6]
不織布表皮材の太径繊維ウェブ(S1,S2)の目付をそれぞれ26.9g/m2、極細繊維ウェブ(M)の目付を16.3g/m2、平均繊維径を2.2μmとしたこと、基材に厚さ15mm、目付け1100g/m2、嵩密度0.073g/cm3、単位面積当たり表面積289(m2/m2)のフェルト(寺田タカロン社製 レジンフェルト)を用いた以外は、実施例1と同様に複合吸音材を得た。その特性を以下の表1に示す。
【0073】
[実施例7]
ポリエチレンテレフタレート(オルソクロロフェノールを用いた1%、25℃法の溶液粘度ηsp/c 0.77、融点263℃)樹脂を、常用の溶融紡糸装置に供給して300℃で溶融し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から吐出し、エアジェットによる高速気流牽引装置を使用して延伸しながら、糸を冷却し繊維ウェブ(S1)(目付11.2g/m2、平均繊維径13μm)を捕集し、ネット上に形成した。得られた太径繊維ウェブ(S1)上に、ポリエチレンテレフタレート(同じく溶液粘度ηsp/c 0.50、融点260℃)をメルトブローノズルから、紡糸温度330℃、加熱空気370℃で1300Nm3/hrで糸条直接噴出させ、極細繊維ウェブ(M) (目付け7.6g/m2、平均繊維径0.8μmを形成した。この際、メルトブローノズルから太径繊維層までの距離を120mmとし、メルトブロウンノズル直下の捕集面における吸引風速を7m/secに設定した。更に得られた極細繊維ウェブ上に、繊維ウェブ(S1)と同様にポリエチレンテレフタレートの太径繊維ウェブ(S2)を形成した。次に得られた積層ウェブを、熱圧着時に圧着面積率11%である、アイエル柄エンボスロールとフラットロールを用いて、該エンボスロールの表面温度を220℃、該フラットロールの表面温度を220℃とし、カレンダ線圧30N/mmで熱圧着することにより、目付30g/m2、嵩密度0.19g/cm3の単位面積あたり表面積17.5m2/m2の不織布表皮材を得た。
基材としては、厚さ15mm、目付け1100g/m2、嵩密度0.073g/cm3、単位面積当たり表面積289(m2/m2)のフェルト(寺田タカロン社製 レジンフェルト)を用い、前記不織布表皮材との接合を行った。接合は、面材と基材の間に共重合ポリエステル系ホットメルトパウダー(融点130℃)を10g/m2 塗布して加熱処理で接合して複合吸音材を得た。その特性を以下の表1に示す。
【0074】
[実施例8]
鞘成分が共重合ポリエステル樹脂(融点208℃)であり、かつ、芯成分がポリエチレンテレフタレート(オルソクロロフェノールを用いた1%、25℃法の溶液粘度ηsp/c 0.77、融点263℃)樹脂を、常用の溶融紡糸装置に供給して300℃で溶融し、円形断面の紡糸孔を有する2成分紡糸口金から吐出し、エアジェットによる高速気流牽引装置を使用して延伸しながら、糸を冷却し繊維ウェブ(S1)(目付15.0g/m2、平均繊維径13.0μm)をネット上に形成した。得られた太径繊維ウェブ(S1)上に、ポリエチレンテレフタレート(同じく溶液粘度ηsp/c 0.50、融点260℃)をメルトブローノズルから、紡糸温度300℃、加熱空気320℃で1000Nm3/hrの条件下で直接噴出させ、極細繊維ウェブ(M)(目付10.0g/m2、平均繊維径1.7μm)を形成した。この際、メルトブローノズルから太径繊維層までの距離を110mmとし、メルトブロウンノズル直下の捕集面における吸引風速を7m/secに設定した。更に得られた極細繊維ウェブ上に、ポリエチレンテレフタレート(同じく溶液粘度ηsp/c 0.77、融点263℃)樹脂を円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から吐出し、繊維ウェブ(S1)と同様にして得られた太径繊維ウェブ(S2)(目付15.0g/m2、平均繊維径13.0μm)を形成した。次に得られた積層ウェブを、熱圧着時に圧着面積率11%のアイエル柄エンボスロールとフラットロールを用いて、エンボスロールの表面温度を220℃、フラットロールの表面温度を120℃とし、カレンダ線圧30N/mmで熱圧着することにより、目付40g/m2、嵩密度0.19g/cm3、単位面積あたり表面積16.2m2/m2の不織布表皮材を得た。
【0075】
基材としては、厚さ20mm、目付け1400g/m2、嵩密度0.070g/cm3、単位面積当たり表面積368(m2/m2)のフェルト(寺田タカロン社製 レジンフェルト)を用い、前記不織布表皮材との接合を行った。接合は、太径繊維ウェブ(S2)面とフェルトを重ね、メッシュ状のコンベアベルトに挟み、温度150℃の雰囲気中で加熱、加圧の熱処理で接合して複合吸音材を得た。その特性を以下の表1に示す。
【0076】
[実施例9]
ポリエチレンテレフタレート(オルソクロロフェノールを用いた1%、25℃法の溶液粘度ηsp/c 0.77、融点263℃)樹脂を、常用の溶融紡糸装置に供給して300℃で溶融し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から吐出し、エアジェットによる高速気流牽引装置を使用して延伸しながら、糸を冷却し繊維ウェブ(S1)(目付10.7g/m2、平均繊維径13μm)を捕集し、ネット上に形成した。得られた太径繊維ウェブ(S1)上に、ポリエチレンテレフタレート(同じく溶液粘度ηsp/c 0.50、融点260℃)をメルトブローノズルから、紡糸温度300℃、加熱空気320℃で1000Nm3/hrの条件下で直接噴出させ、極細繊維ウェブ(M) (目付け6.6g/m2、平均繊維径1.7μm)を形成した。この際、メルトブローノズルから太径繊維層までの距離を110mmとし、メルトブロウンノズル直下の捕集面における吸引風速を7m/secに設定した。更に得られた極細繊維ウェブ上に、繊維ウェブ(S1)と同様にポリエチレンテレフタレートの太径繊維ウェブ(S2)を形成した。次に得られた積層ウェブを、熱圧着時に圧着面積率15%である、織目柄エンボスロールとフラットロールを用いて、該エンボスロールの表面温度を220℃、該フラットロールの表面温度を220℃とし、カレンダ線圧30N/mmで熱圧着を実施した。
【0077】
その後、水中に顔料(水中固形分2.1質量%)、難燃剤(水中固形分6.0質量%)、水溶性エステル系バインダー(水中固形分1.0質量%)混合させた槽中に通し、ゴムロール間でニップさせるディップニップ工程を経た後、100℃のピンテンターオーブンを用いて乾燥させ、樹脂付着量3g/m2、Total目付28g/m2の不織布表皮材を得た。
【0078】
基材に、厚さ20mm、平均繊維径4μm、目付け700g/m2、嵩密度0.035g/cm3、単位面積当たり表面積489(m2/m2)のグラスウールを用い、前記不織布表皮材との接合を行った。接合は、面材と基材の間に共重合ポリエステル系ホットメルトパウダー(融点130℃)を10g/m2 塗布して加熱処理で接合して複合吸音材を得た。その特性を以下の表1に示す。
【0079】
[実施例10]
ポリエチレンテレフタレート(オルソクロロフェノールを用いた1%、25℃法の溶液粘度ηsp/c 0.77、融点263℃)樹脂を、常用の溶融紡糸装置に供給して300℃で溶融し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から吐出し、エアジェットによる高速気流牽引装置を使用して延伸しながら、糸を冷却し繊維ウェブ(S1)(目付40.0g/m2、平均繊維径13μm)を捕集し、ネット上に形成した。ウェブを、熱圧着時に圧着面積率11%である、アイエルエンボスロールとフラットロールを用いて、該エンボスロールの表面温度を220℃、該フラットロールの表面温度を220℃とし、カレンダ線圧30N/mmで熱圧着を実施した。
【0080】
熱硬化性樹脂液としてレゾール型フェノール・アルキルレゾルシン初期共縮合樹脂(固形分45質量%の水溶液)を用い、これにフィラーとしてシラスバルーン(平均粒径:45μm)をフィラー/熱硬化性樹脂の混合比:55/45に添加し、更にアクリル系増粘剤を添加して、粘度が150Poiseで固形分20質量%の水溶液となるように調整して得た塗工液を固形分換算で塗布量が25g/m2となるようにロールコート法で塗布した後、120℃の加熱温度で3分間の加熱乾燥を行い、前記熱硬化性樹脂を半硬化状態にして不織布表皮材を得た。
【0081】
基材としては、厚さ15mm、目付け1100g/m2、嵩密度0.073g/cm3、単位面積当たり表面積289(m2/m2)のフェルト(寺田タカロン社製 レジンフェルト)を用い、前記不織布表皮材との接合を行った。接合は、面材と基材の間に共重合ポリエステル系ホットメルトパウダー(融点130℃)を10g/m2 塗布して加熱処理で接合して複合吸音材を得た。その特性を以下の表1に示す。
【0082】
[実施例11]
ポリエチレンテレフタレート(同じく溶液粘度ηsp/c 0.50、融点260℃)をメルトブローノズルから、紡糸温度300℃、加熱空気320℃で1000Nm3/hrの条件下で直接噴出させ、極細繊維ウェブ(M) (目付け40.0g/m2、平均繊維径3.5μm)を形成した。この際、メルトブローノズルから太径繊維層までの距離を100mmとし、メルトブロウンノズル直下の捕集面における吸引風速を7m/secに設定した。ウェブを、熱圧着時に圧着面積率11%である、アイエルエンボスロールとフラットロールを用いて、該エンボスロールの表面温度を120℃、該フラットロールの表面温度を120℃とし、カレンダ線圧30N/mmで熱圧着を実施した。
【0083】
基材としては、厚さ15mm、目付け1100g/m2、嵩密度0.073g/cm3、単位面積当たり表面積289(m2/m2)のフェルト(寺田タカロン社製 レジンフェルト)を用い、前記不織布表皮材との接合を行った。接合は、面材と基材の間に共重合ポリエステル系ホットメルトパウダー(融点130℃)を10g/m2 塗布して加熱処理で接合して複合吸音材を得た。その特性を以下の表1に示す。
【0084】
[実施例12]
充填材を含有させる処理を行わなかったこと以外は、実施例9と同様に複合吸音材を得た。その特性を以下の表1に示す。
【0085】
[実施例13]
15μm及び4μmの繊維径を有する短繊維(繊維長10mm)を用い、水溶性エステル系バインダー(水中固形分1.0質量%)、増粘剤、分散剤、水と共に混合し、2種類の混合液を作製し、抄造法により、太径繊維層A/極細繊維層/太径繊維層Bという積層体を得た。この積層体を130℃で3分間 加熱して不織布表皮材を得た。基材としては、厚さ20mm、目付け1400g/m2、嵩密度0.070g/cm3、単位面積当たり表面積368(m2/m2)のフェルト(寺田タカロン社製 レジンフェルト)を用い、前記不織布表皮材との接合を行った。接合は、面材と基材の間に共重合ポリエステル系ホットメルトパウダー(融点130℃)を10g/m2 塗布して加熱処理で接合して本発明の複合吸音材を得た。その特性を以下の表1に示す。
【0086】
【表1】
【0087】
[比較例1]
ポリエチレンテレフタレート(オルソクロロフェノールを用いた1%、25℃法の溶液粘度ηsp/c 0.77、融点263℃)樹脂を、常用の溶融紡糸装置に供給して300℃で溶融し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から吐出し、エアジェットによる高速気流牽引装置を使用して延伸しながら、糸を冷却し繊維ウェブ(S1)(目付40.0g/m2、平均繊維径13μm)を捕集し、ネット上に形成した。ウェブを、熱圧着時に圧着面積率11%である、アイエルエンボスロールとフラットロールを用いて、該エンボスロールの表面温度を220℃、該フラットロールの表面温度を220℃とし、カレンダ線圧30N/mmで熱圧着を実施した。
【0088】
基材としては、厚さ20mm、目付け1400g/m2、嵩密度0.070g/cm3、単位面積当たり表面積368(m2/m2)のフェルト(寺田タカロン社製 レジンフェルト)を用い、前記不織布表皮材との接合を行った。接合は、面材と基材の間に共重合ポリエステル系ホットメルトパウダー(融点130℃)を10g/m2 塗布して加熱処理で接合して複合吸音材を得た。その特性を以下の表2に示す。
【0089】
[比較例2]
不織布表皮材の太径繊維ウェブ(S1,S2)の目付をそれぞれ30.0g/m2、極細繊維ウェブ(M)の目付を20.0g/m2とした以外は、実施例4と同様に複合吸音材を得た。その特性を以下の表2に示す。
【0090】
[比較例3]
基材に、厚さ20mm、平均繊維径4μm、目付け1000g/m2の嵩密度0.050g/cm3、単位面積当たり表面積774(m2/m2)のグラスウールを用いた以外は、実施例2と同様に複合吸音材を得た。その特性を以下の表2に示す。
【0091】
[比較例4]
基材に、厚さ15mm、目付け240g/m2、嵩密度0.016g/cm3、単位面積当たり表面積75(m2/m2)のウレタン樹脂発泡体(イノアック社製ウレタン樹脂連続発泡体、F-KL)を用いた以外は、実施例4と同様に複合吸音材を得た。その特性を以下の表2に示す。
【0092】
[比較例5]
ポリエチレンテレフタレート(オルソクロロフェノールを用いた1%、25℃法の溶液粘度ηsp/c 0.77、融点263℃)樹脂を、常用の溶融紡糸装置に供給して300℃で溶融し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から吐出し、エアジェットによる高速気流牽引装置を使用して延伸しながら、糸を冷却し繊維ウェブ(S1)(目付11.2g/m2、平均繊維径13μm)を捕集し、ネット上に形成した。得られた太径繊維ウェブ(S1)上に、ポリエチレンテレフタレート(同じく溶液粘度ηsp/c 0.30、融点260℃)をメルトブローノズルから、紡糸温度300℃、加熱空気320℃で900Nm3/hrの条件下で直接噴出させ、極細繊維ウェブ(M)(目付7.6g/m2、平均繊維径2.0μm)を形成した。この際、メルトブローノズルから太径繊維層までの距離を80mmとし、メルトブロウンノズル直下の捕集面における吸引風速を7m/secに設定した。更に得られた極細繊維ウェブ上に、繊維ウェブ(S1)と同様にポリエチレンテレフタレートの太径繊維ウェブ(S2)を形成した。次に得られた積層ウェブを、熱圧着時に圧着面積率11%である、アイエルエンボスロールとフラットロールを用いて、該エンボスロールの表面温度を220℃、該フラットロールの表面温度を220℃とし、カレンダ線圧30N/mmで熱圧着することにより、目付30g/m2、嵩密度0.19g/cm3、単位面積あたり表面積9.1m2/m2の不織布表皮材を得た。
【0093】
基材としては、厚さ20mm、目付け1400g/m2、嵩密度0.070g/cm3、単位面積当たり表面積368(m2/m2)のフェルト(寺田タカロン社製 レジンフェルト)を用い、前記不織布表皮材との接合を行った。接合は、面材と基材の間に共重合ポリエステル系ホットメルトパウダー(融点130℃)を10g/m2 塗布して加熱処理で接合して本発明の複合吸音材を得た。その特性を以下の表2に示す。
【0094】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明に係る複合吸音材は、低周波数、中周波数、高周波数の広域で吸音性に優れながらも、厚みが薄く、低目付領域でも十分な吸音付与効果が発揮でき、特に自動車用、住宅、家電製品、建設機械等の複合吸音材として好適に利用可能である。