(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】はんだペースト
(51)【国際特許分類】
B23K 35/363 20060101AFI20240329BHJP
B23K 35/26 20060101ALN20240329BHJP
C22C 13/00 20060101ALN20240329BHJP
【FI】
B23K35/363 D
B23K35/363 E
B23K35/26 310A
C22C13/00
(21)【出願番号】P 2022529108
(86)(22)【出願日】2020-09-04
(86)【国際出願番号】 EP2020074721
(87)【国際公開番号】W WO2021115644
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-07-25
(32)【優先日】2019-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515131116
【氏名又は名称】ヘレウス ドイチェラント ゲーエムベーハー ウント カンパニー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】ワン、レイ
(72)【発明者】
【氏名】フリッチェ、セバスチャン
【審査官】川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-266597(JP,A)
【文献】特開2019-042805(JP,A)
【文献】国際公開第2018/003820(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/042926(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/00-35/40
C22C 13/00-13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スズ系はんだ85~92重量%、及びフラックス8~15重量%からなるはんだペーストであって
、
前記スズ系はんだが、少なくとも80重量%のスズを含むはんだ付け合金であり、
前記フラックスが、
i)その総重量に基づいて、30~50重量%の、少なくとも2つの任意に変性された天然樹脂の組み合わせと、
ii)その総重量に基づいて、5~20重量%の少なくとも1つのジカルボン酸と、
iii)その総重量に基づいて、0.4~10重量%の少なくとも1つのアミンと、を含み、
前記フラックスが、全体で111~131mgKOH/gの範囲の酸価を有し、
前記任意に変性された天然樹脂の前記組み合わせが、複合GPCにおいて、150以上550以下の分子量範囲における45~70面積%の積分分子量分布、及び550超10,000以下の分子量範囲における30~55面積%の積分分子量分布を有
し、
前記少なくとも1つのジカルボン酸が、シュウ酸、アジピン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸及びトリデカン二酸からなる群から選択されることを特徴とする、はんだペースト。
【請求項2】
前記スズ系はんだが、200~250℃の範囲の液相線温度を有する、
請求項1に記載のはんだペースト。
【請求項3】
前記任意に変性された天然樹脂が、未変性の天然樹脂、又はそれらのカルボキシル基の水素化、二量体化、及び/又はエステル化によって変性された天然樹脂である、請求項1
又は2に記載のはんだペースト。
【請求項4】
分子量150を下回り分子量10,000を超える複合GPCが、前記少なくとも2つの任意に変性された天然樹脂に対してシグナルを有していない、請求項
1~3のいずれか一項に記載のはんだペースト。
【請求項5】
前記少なくとも2つの任意に変性された天然樹脂が、それらの平均分子量M
wに関して異なる、請求項
1~4のいずれか一項に記載のはんだペースト。
【請求項6】
150以上550以下の範囲のM
wを有する少なくとも1つの任意に変性された天然樹脂と、550超10,000以下の範囲のM
wを有する少なくとも1つの任意に変性された天然樹脂との組み合わせである、
請求項5に記載のはんだペースト。
【請求項7】
前記少なくとも2つの任意に変性された天然樹脂が、その酸価に関して異なる、請求項
1~6のいずれか一項に記載のはんだペースト。
【請求項8】
前記より高い方のM
wを有する前記任意に変性された天然樹脂が、1~50mgKOH/gの範囲の酸価を有し、前記より低い方のM
wを有する前記任意に変性された天然樹脂が、180~280mgKOH/gの範囲の酸価を有する、
請求項7に記載のはんだペースト。
【請求項9】
前記少なくとも1つのアミンが、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラエチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラプロピルエチレンジアミン、N-ココ-1,3-ジアミノプロパン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、及び1,10-ジアミノデカン、ビス(2-エチルヘキシル)アミン、ビス(2-メチルヘキシル)アミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、水素化獣脂アルキルアミン、水素化(獣脂アルキル)ジメチルアミン、並びに水素化ビス(獣脂アルキル)メチルアミンからなる群から選択される、請求項
1~8のいずれか一項に記載のはんだペースト。
【請求項10】
前記フラックスが、1~5重量%の1種以上の増粘剤、及び/又は32~46重量%の1種以上の有機溶媒、及び/又は0.1~3重量%の1種以上のハロゲン含有化合物を含む、請求項
1~9のいずれか一項に記載のはんだペースト。
【請求項11】
電子部品を基板に接続するための、又ははんだ付着物を基板上に生成するための、請求項
1~10のいずれか一項に記載のはんだペーストの使用。
【請求項12】
請求項
1~10のいずれか一項に記載のはんだペーストを使用して電子部品を基板に取り付けるための方法であって、
a)接触面を有する電子部品を準備する工程と、
b)接触面を有する基板を準備する工程と、
c)前記電子部品の前記接触面及び/又は前記基板の前記接触面に、本発明による前記はんだペーストを準備する工程と、
d)前記電子部品の前記接触面を、前記はんだペーストを介して前記基板の前記接触面に接触させる工程と、
e)前記はんだペーストを前記はんだの液相線温度より高く加熱し、その後、前記はんだを冷却して固化させながら、前記電子部品と前記基板との間に強固な接続部を形成する工程と、を含む,方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に電子部品を基板に取り付けるためのはんだペーストに関するものである。
【0002】
はんだペースト、特に軟質はんだペーストは、主に電子回路の製造に使用され、電子部品と基板の間、より正確にはこの目的のために提供されるそれらの接触面の間に機械的、電気的、熱的接続部を作り出す役割を果たす。
【0003】
本特許出願の意味における電子部品の例としては、ダイオード、LED(発光ダイオード)、ダイ、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ、絶縁ゲート電極を備えたバイポーラトランジスタ)、MOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)、IC(集積回路)、センサ、ヒートシンク、抵抗器、コンデンサ、コイル、接続素子(例えばクリップ)、ベースプレート、アンテナ等が挙げられる。
【0004】
本特許出願の意味における基板の例としては、リードフレーム、PCB(プリント回路板)、フレキシブル電子機器、セラミック基板、DCB基板(ダイレクトボンド銅基板)、IMS(絶縁金属基板)などの金属セラミックス基板などが挙げられる。
【0005】
電子部品は、通常、はんだペーストを介して基板に接触又は適用される。このはんだペーストを加熱し、リフロー処理によってペースト中のはんだを溶融し、電子部品と基板との接点を形成する。はんだが冷却して固化した後、電子部品と基板は互いに接続接合される。
【0006】
はんだペーストは、概ねフラックスを含み、フラックスは、とりわけ、はんだ粉末、部品、及び基板の表面の酸化膜を溶解し、ひいてははんだ付けプロセス時の濡れ性を向上させる役割を担っている。はんだペーストは、電子回路の自動生産におけるスクリーン印刷やステンシル印刷で主に処理されるため、フラックスには概ね、フラックスひいてははんだペーストのレオロジー特性を改善する、界面活性及び添加剤などの物質が追加的に含まれている。
【0007】
はんだ付けプロセス後、電子アセンブリにはフラックスに由来するはんだ残渣が残り、いわゆる無洗浄はんだペーストの場合、はんだ付けしたアセンブリから除去する必要がない。しかし、はんだ接合部に由来するエレクトロマイグレーション及び/又はデンドライト形成の傾向があり、望ましくない短絡につながる。特に、小型化が進むにつれて、互いに電気的に絶縁されたままであるべき電子部品が同時にますます近接するようになることにより、エレクトロマイグレーション及び/又はデンドライト形成の問題はますます重要になってきている。
【0008】
本発明の目的は、無洗浄はんだペーストに、無洗浄はんだペーストから形成されたはんだ接合部のエレクトロマイグレーション及び/又はデンドライト形成の傾向を低減すること、又はその傾向をなくすことである。
【0009】
本出願人は、特にその平均分子量(Mw)に関して互いに異なる少なくとも2つの天然樹脂が同時に存在することを特徴とし、任意に変性することができる新規の特殊な構成のフラックスを使用して、目的を達成するはんだペーストを開発することができた。
【0010】
したがって、本発明は、85~92重量%(重量パーセント)のスズ系はんだ、及び8~15重量%のフラックスからなるはんだペーストであって、フラックスが、
i)その総重量に基づいて、30~50重量%の、少なくとも2つの任意に変性された天然樹脂の組み合わせと、
ii)その総重量に基づいて、5~20重量%の少なくとも1つの低分子カルボン酸と、
iii)その総重量に基づいて、0.4~10重量%の少なくとも1つのアミンと、を含み、
任意に変性された天然樹脂の組み合わせが、複合GPC(ゲル浸透クロマトグラム)において、150~550の分子量範囲における45~70面積%の積分分子量分布、及び>550~10,000の分子量範囲における30~55面積%の積分分子量分布を有することを特徴とする、はんだペーストを提供することにある。
【0011】
積分分子量分布の形態で言及された複合GPCを含むGPCは、当業者に公知の通常の方法で、例えば、DIN 55672-1(2016年3月)に従って、不動相として架橋ポリスチレン、液相としてテトラヒドロフラン、及びポリスチレン標準を使用し、温度23℃で記録することが可能である。
【0012】
特に断りのない限り、本特許出願で引用された全ての規格は、いずれの場合も優先日時点の現行版である。
【0013】
本発明によるはんだペーストは、85~92重量%のスズ系はんだを含む。
【0014】
「スズ系はんだ」という用語は、少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも83重量%、特に85~90重量%のスズを含むはんだ付け合金を意味する。
【0015】
好ましい実施形態では、はんだ付け合金は、0.1~8重量%、好ましくは0.2~6重量%の銀、及び/又は0.1~1.5重量%、好ましくは0.2~1重量%の銅を含む。
【0016】
はんだ付け合金が鉛フリーである実施形態が、更に好ましい。
【0017】
特に好ましくは、はんだ付け合金は、スズと、前述の割合の銀及び銅とを含むか、又はそれらからなる。
【0018】
はんだ付け合金は、200~250℃の範囲、好ましくは200~230℃の範囲の液相線温度を有することが好ましい。
【0019】
好ましい実施形態では、スズ系はんだは、はんだ粉末として存在し、好ましくは、IPC-TM-650 2.2.14.2に従って決定される、15~50μm、好ましくは20~45μmの重量平均粒径を有する。
【0020】
本発明によるはんだペーストは、8~15重量%のフラックスを含む。本発明によるはんだペースト自体によって構成されるこの新しいフラックスは、いずれの場合も、その総重量に基づいて、i)30~50重量%の、少なくとも2つの任意に変性された天然樹脂の組み合わせと、ii)5~20重量%の少なくとも1つの低分子カルボン酸と、iii)0.4~10重量%の少なくとも1つのアミンと、を含み、任意に変性された天然樹脂の組み合わせが、複合GPCにおいて、150~550の分子量範囲における45~70面積%の積分分子量分布、及び>550~10,000の分子量範囲における30~55面積%の積分分子量分布を有する。
【0021】
フラックスは、i)その総重量に基づいて、30~50重量%の、少なくとも2つの任意に変性された天然樹脂の組み合わせ(混合物)を含む。当業者にとって、「変性された」は化学変性を意味することは、説明するまでもないことである。任意に変性された天然樹脂は、未変性の天然樹脂又は変性された天然樹脂、例えば、そのカルボキシル基の水素化、二量体化、及び/又はエステル化によって変性された天然樹脂であり得る。特に、天然樹脂は、ロジン樹脂タイプの天然樹脂、すなわち、未変性の天然樹脂又は変性ロジン樹脂、例えば、そのカルボキシル基の水素化、二量体化、及び/又はエステル化による変性ロジン樹脂である。
【0022】
既に述べたように、少なくとも2つの任意に変性された天然樹脂の組み合わせは、複合GPCにおいて、150~550の分子量範囲における45~70面積%、>550~10,000の分子量範囲における30~55面積%の積分分子量分布を有する。言い換えると、分子量範囲150~550の面積%、及び分子量範囲>550~10,000の面積%は、合計すると100面積%の分子量範囲150~10,000の積分分子量分布になる。分子量150を下回り、分子量10,000を超えると、複合GPCは、好ましくは、少なくとも2つの任意に変性された天然樹脂のシグナルを有していない。
【0023】
当該組み合わせの少なくとも2つの任意に変性された天然樹脂は、その平均分子量Mwに関して異なる。これは、好ましくは、150~550の範囲のMwを有する少なくとも1つの任意に変性された天然樹脂と、>550~10,000の範囲のMwを有する少なくとも1つの任意に変性された天然樹脂との組み合わせである。平均分子量Mwは、GPCにより当業者に公知の通常の方法で、例えば、DIN 55672-1(2016年3月、不動相として架橋ポリスチレン、液相としてテトラヒドロフラン、ポリスチレン標準、23℃)に従って求めることができる。
【0024】
当該組み合わせの少なくとも2つの任意に変性された天然樹脂は、その他の点では、その酸価(AN)に関して異なり得る。一実施形態では、より高い方のMw、例えば、>550~10,000の範囲のMwを有する任意に変性された天然樹脂は、例えば、1~50mgKOH/gの範囲の酸価を有し得、より低い方のMw、例えば、150~550の範囲のMwを有する任意に変性された天然樹脂は、例えば、180~280mgKOH/gの範囲の酸価を有し得る。
【0025】
本特許出願で使用される「酸価」という用語は、DIN EN ISO 2114に従ってmgKOH/g(ミリグラムKOH/グラム)で決定可能な酸価に関するものである。
【0026】
構成成分ii)として、フラックスは、5~20重量%の少なくとも1つの低分子カルボン酸、好ましくはジカルボン酸を含む。例としては、シュウ酸、アジピン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸が挙げられる。
【0027】
一実施形態では、本発明によるはんだペーストのフラックスは、全フラックスに基づいて、85~145mgKOH/gの範囲の酸価を有する。このフラックスの総酸価は、構成成分i)及びii)の酸の寄与によって実質的に決定される。
【0028】
構成成分iii)として、フラックスは、0.4~10重量%の少なくとも1つのアミンを含む。アミンの例としては、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラエチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラプロピルエチレンジアミン、N-ココ-1,3-ジアミノプロパン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン及び1,10-ジアミノデカン、ビス(2-エチルヘキシル)アミン、ビス(2-メチルヘキシル)アミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、水素化獣脂アルキルアミン、水素化(獣脂アルキル)ジメチルアミン、並びに水素化ビス(獣脂アルキル)メチルアミンが挙げられる。
【0029】
更に、フラックスは、任意に、例えば、合計1~5重量%、好ましくは1.7~4.5重量%の割合で、1種以上の増粘剤を含み得る。例としては、エチルセルロース、水添ヒマシ油、グリセロールトリス-12ヒドロキシステアリン、及び変性グリセロールトリス-12ヒドロキシステアリンが挙げられる。
【0030】
更に、フラックスは、任意に、例えば、合計32~46重量%、好ましくは36~42重量%の割合で、1種以上の有機溶媒を含み得る。例としては、25℃で液体であるジオール、アルコール、エーテルアルコール、及びケトン、特にトリメチルプロパノール、1,2-オクタンジオール、1,8-オクタンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、イソボルニルシクロヘキサノール、グリコールエーテル、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、n-デシルアルコール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、テルピネオール、及びイソプロパノール、並びにこれらの混合物が挙げられる。グリコールエーテルの例としては、モノ-、ジ-、トリプロピレングリコールメチルエーテル、モノ-、ジ-、トリプロピレングリコールn-ブチルエーテル、モノ-、ジ-、トリエチレングリコールn-ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0031】
更に、フラックスは、任意に、例えば、合計0.1~3重量%、好ましくは0.5~2重量%の割合で、1種以上のハロゲン含有化合物を含み得る。例としては、アニリン塩酸塩、グルタミン酸塩酸塩、ジエタノールアミン塩酸塩、ジエタノールアミン臭化水素酸塩、トリエタノールアミン塩酸塩、トリエタノールアミン臭化水素酸塩、及びトランス-2,3-ジブロモ-2-ブテン-1,4-ジオールが挙げられる。
【0032】
本発明によるはんだペーストは、プレートコーンレオメータ(例えば、Anton-PaarのPhysicaプレートコーンレオメータ)を使用して測定した、23℃、剪断速度10s-1で求められる、50~200Pa・sの粘度を有することが好ましい。
【0033】
本発明の更なる主題は、本発明によるはんだペーストを製造するための方法である。
【0034】
本発明によるはんだペーストを製造するための方法は、
フラックスの構成成分、特に構成成分i)、ii)及びiii)を混合する工程と、
上記のように、はんだ粉末を添加する工程と、を含む。
【0035】
はんだ粉末の添加を、好ましくは数回に分けて行い、撹拌しながら、概ね加熱せずにフラックスの構成成分の提示された混合物を形成する。
【0036】
本発明によるはんだペーストを使用して、電子部品を基板に接続することができる。また、これを使用して、はんだ付着物を基板上に生成することもできる。
【0037】
電子部品を基板に接続する場合、基板の接触面と電子部品の接触面とを、本発明によるはんだペーストを介して接触させる。
【0038】
本発明によるはんだペーストを使用して電子部品を基板に取り付けるための方法は、
a)接触面を有する電子部品を準備する工程と、
b)接触面を有する基板を準備する工程と、
c)電子部品の接触面及び/又は基板の接触面に、本発明によるはんだペーストを準備する工程と、
d)電子部品の接触面を、はんだペーストを介して基板の接触面に接触させる工程と、
e)はんだペーストをはんだの液相線温度より高く加熱し、その後、はんだを冷却して固化させながら、電子部品と基板との間に強固な接続部を形成する工程と、を含み得る。
【0039】
工程a)及びb)は、自明であり、これ以上の説明は必要がない。
【0040】
工程c)において、本発明によるはんだペーストは、当業者に知られている従来の方法、例えばスクリーン印刷又はステンシル印刷によって、一方又は両方の接触面に適用することができる。
【0041】
工程d)では、電子部品と基板との接触面を、はんだペーストを介して互いに接触させることができる。つまり、電子部品と基板とから、それらの接触面の間にはんだペーストを使用して、サンドイッチ状配置を作り出すことができる。
【0042】
工程e)では、はんだペーストをはんだの液相線温度より高く加熱することにより、サンドイッチ状配置にはんだ付けすることで、その後のはんだの冷却及び固化の後に、はんだペーストを介して電子部品と基板との間に強固な接続部を生成することができる。この場合、はんだペーストは、好ましくは、はんだが液相に転移するが、はんだペースト、電子部品、及び/又は基板を損傷させることはないように、加熱する。サンドイッチ状の配置又ははんだペーストは、好ましくは、はんだの液相線温度よりも5~60℃高い、好ましくは10~50℃高い温度に加熱される。
【0043】
本発明による取り付け方法に従って電子部品と基板とがはんだ付けされた電子モジュールは、短絡の発生頻度が著しく低い。この望ましい挙動は、本発明による方法で形成されたはんだ接合部のエレクトロマイグレーション及び/又はデンドライト形成の傾向が減少したこと又は存在しないことの結果である。
【実施例】
【0044】
使用した試験方法:
1.濡れ能:
IPC-TM-650(1/95)の試験方法2.4.45による溶融試験ではんだペーストの濡れ性を評価した。この目的のために、試験されるはんだペーストを銅板(20mm×20mm×0.5mm)に適用した。銅板の表面に酸化膜がある場合は、P600級のサンドペーパーで金属が露出するまで磨き上げ、アルコールで洗浄した。銅板の表面が明るく純粋なものは、アルコールだけで洗浄した。
【0045】
準備した銅板に、ステンシルを使用して印刷を行った。そのために、ステンシルの開口部が銅板の中央にくるように、銅板にしっかりと押し付けた。試験するはんだペーストを日本製のヘラの上に載せ、最初は軽く広げ、次にステンシル上のはんだペーストがなくなるまで、ステンシルの開口部にやや圧力を強くして広げた。その後、ステンシルを慎重に剥がし、ステンシルによって与えられたパターンを得た。印刷された銅板を、200℃に設定した第1の加熱プレート上にはんだの液相線温度より低い温度まで2分間置いた後、直ちにはんだの液相線温度より約50℃高い温度(ピーク温度)の第2の加熱プレート上に載せた。はんだペースト又ははんだが溶融した後、銅板を更に5秒間加熱プレート上に放置し、取り出して冷却した。
【0046】
はんだペーストが冷却された後、それがステンシルの開口部のサイズに対応したスポットに溶融しているか、複数の小さなスポットに溶融しているか、及び溶融した後のはんだペーストが鋭いエッジを有しているかどうかを評価した。更に、表面が光沢であるかマットであるかを評価した。
【0047】
はんだペーストは4つのクラスに分けられ、クラス1と2は満足のいく結果、クラス3と4は不十分な結果にクラス分けされた。
クラス1:再溶融した面積が、以前にはんだペーストで印刷した面積より大きかった。
クラス2:再溶融した面積が、以前にはんだペーストを印刷した面積に相当した。
クラス3:再溶融した面積が、以前にはんだペーストで印刷した面積よりも小さかった(わずかにはんだはじきが確認できる)。
クラス4:はんだペーストが1つ以上のはんだボールを形成しており、銅板を濡らしていないか、完全に溶融していなかった。
【0048】
2.表面絶縁抵抗(SIR)試験、はんだ接合部の腐食挙動
J-STD-004B:2011に準拠した試験方法。但し、以下の点を変更した:
IPC-B-24に準拠したプリント回路板、線幅200μm、線間距離200μm、
周囲条件:65℃/93%相対湿度、
腐食電圧100V、測定電圧100V、測定頻度60分
試験時間1,000時間
【0049】
SIR試験の評価には、2つの基準が使用された。
【0050】
基準1(視覚的に検出可能なデンドライト形成):光学顕微鏡で倍率25倍にて観察した場合、はんだ付けしたSIR導体トラックの部分にデンドライトが形成されているかどうかを目視で確認した。
【0051】
基準2(安定性基準を表す100MΩを超える抵抗の望ましくない不足分を1時間ごとに確認):抵抗値の測定は、合計1,000時間にわたって1時間ごとに実施され、その間に測定された全ての抵抗値が100MΩ超である場合、SIR試験の結果を安定していると評価した。一方、1,000個の測定値のうち1個以上が100MΩ以下である場合、SIR試験の結果を不安定であると評価した。
【0052】
表1に、比較はんだペースト1~6及び本発明によるはんだペースト7~13のフラックス組成を示す。各数値は重量%を指す。それぞれの場合において、11重量部のこれらのフラックスを、89重量部のはんだ粉末(SnAgCu:Sn96.5重量%、Ag3.0重量%、Cu0.5重量%、IPC J-STD-006規格のタイプ3)と混合して、はんだペーストを形成した。はんだペーストの特性を、上記の方法で測定し、表1に概要も示す。
【0053】
【0054】