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  • 特許-触媒粒子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】触媒粒子
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/60 20240101AFI20240329BHJP
   B01J 31/06 20060101ALI20240329BHJP
   B01J 31/26 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
B01J35/60 Z
B01J31/06 Z
B01J31/26 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022535321
(86)(22)【出願日】2021-07-05
(86)【国際出願番号】 JP2021025326
(87)【国際公開番号】W WO2022009842
(87)【国際公開日】2022-01-13
【審査請求日】2022-11-18
(31)【優先権主張番号】P 2020117363
(32)【優先日】2020-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153591
【氏名又は名称】株式会社巴川コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100105315
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 温
(72)【発明者】
【氏名】森内 英輝
(72)【発明者】
【氏名】佐野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】神野 友希
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-063010(JP,A)
【文献】特表2016-527356(JP,A)
【文献】特開2016-204428(JP,A)
【文献】特開2020-059836(JP,A)
【文献】特開2003-238656(JP,A)
【文献】特開2013-014697(JP,A)
【文献】特開2011-012168(JP,A)
【文献】FUJITA, Shin-ichiro et al.,Supported liquid-phase catalysts containing ruthenium complexes for selective hydrogenation of α,β-unsaturated aldehyde: importance of interfaces between liquid film, solvent, and support for the control of product selectivity,J. Catal.,米国,Elsevier Inc.,2004年04月24日,Vol. 225, No. 1,pp. 95-104,DOI: 10.1016/j.jcat.2004.03.037
【文献】REILLY, Carlonda R. et al.,Supported liquid phase catalysis in selective oxidation,Catal. Today,NL,Elsevier Science B.V.,1998年06月25日,Vol. 41, No. 4,pp. 433-441,DOI: 110.1016/S0920-5861(98)00029-7
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
C08G 2/00-2/38
C08G 61/00-61/12
C08G 81/00-85/00
Scopus
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質粒子と、前記多孔質粒子が有する孔内に保持された触媒液と、を含むことを特徴とする、触媒液保持粒子を含み、
前記触媒液保持粒子が樹脂で覆われていることを特徴とする、触媒粒子
【請求項2】
請求項に記載の触媒粒子の表面の一部又は全部が、無機粒子で覆われていることを特徴とする、触媒粒子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の触媒粒子の表面の一部又は全部が、さらに樹脂(B)で覆われていることを特徴とする、触媒粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省資源・省エネの観点で、金型中で硬化反応と賦形を同時に行う成形方式として反応射出成型方式(RIM方式)により作製された大型成型物が普及しつつある。反応射出成型では、硬化性樹脂の反応熱により、大型成型物全体で、硬化反応が連鎖的に発生して成形される。
【0003】
成形物の形状として、面積や体積が大きい部分では絶対量として反応する樹脂や触媒が多量に存在するため、発生する熱量も大きく、連鎖反応が速やかに進むことが可能であり、良好な硬化性を示す。一方、面積や体積が小さい部分では、反応する樹脂や触媒が多量に存在できないため、十分な熱量が得られず、硬化性が低くなる。その結果、面積や体積が大きい部分と小さい部分とで硬化反応にムラができる。このような成形不良を低減させるため、硬化反応の制御が重要となる。反応を制御する一つの方法として、潜在性触媒を用いることが考えられている。
【0004】
潜在性触媒としては、例えば、特許文献1等には、熱硬化型樹脂の硬化触媒が提案されている。即ち、本来低温での硬化に使用される低温硬化触媒を樹脂であるマイクロカプセルに内包させることで、マイクロカプセルの融解温度まで低温硬化触媒と硬化性樹脂とを隔離しておく。マイクロカプセルの融解温度に達したのち触媒を作用させ、硬化性樹脂を速やかに硬化させることができる。このように、潜在性触媒を用いることで、反応を制御することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平06-211969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に低温で使用される速反応性(速硬化性)の触媒は、硬化性樹脂に混合して用いる場合に、保存性が良くない。換言すれば、速反応性の触媒は、いわゆるポットライフが短い。その為、作業者はその都度組成物を調製しなければならないため作業性が悪い。また、余った組成物は、保存しておくことができないため廃棄しなければならず、資源の節約、環境問題の点からも好ましくなかった。一方、ポットライフが長い硬化触媒は、高温に加熱しても反応性が低く、硬化性が低くなってしまう。このように、硬化触媒において、ポットライフと作業性や保存性等とはトレードオフの問題があった。また、保管時に空気中の水分などにより、触媒の活性が失われる場合もあった。
【0007】
また、例えばジシクロペンタジエンを主原料とする成形用樹脂の成形方法としては、A液(ジシクロペンタジエン+触媒)とB液(ジシクロペンタジエン+触媒活性化剤)とを使用する方法が知られている。具体的には、A液とB液とを成形型に流し込むと、2液が混合され、A液中の触媒とB液中の触媒活性化剤とが反応し、重合触媒としての機能が発現し、重合が開始され、成形品を得ることができる。しかしながら、ジシクロペンタジエンの重合は、2液が混合されると、極めて速い速度で重合が進行する。従って、大型の成形品を得るためには、高速重合を開始したジシクロペンタジエンを速やかに成形型内の隅々まで導入するための設備が必要であった。
【0008】
また、例えば付加型シリコーンを主原料とする成形用樹脂を成形する方法としては、シリコーン主剤に白金触媒を添加することで重合反応を開始させ、成形品を得る方法が知られている。しかしながら、主剤であるシリコーンは粘度が高く、かつ、白金触媒を用いた重合は速やかに進行する。そのため、大型の成形品を得るためには、高速重合を開始したシリコーンを速やかに成形型内の隅々まで導入するための設備が必要であった。
【0009】
本発明は、前記従来技術の有する問題点を解決したものであって、その目的は、反応の制御が容易である触媒粒子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、触媒を含む特定の触媒粒子とすることで、上記課題を解決可能なことを見出し、本発明を完成させた。即ち、本発明は下記の通りである。
【0011】
本発明(1)は、多孔質粒子と、前記多孔質粒子が有する孔内に保持された触媒液と、を含む、触媒粒子である。
本発明(2)は、前記発明(1)に記載の触媒粒子が樹脂で覆われている、触媒粒子である。
本発明(3)は、樹脂マイクロカプセルを外殻とする触媒粒子であって、前記樹脂マイクロカプセルは、触媒又は触媒液を内包する、触媒粒子である。
本発明(4)は、樹脂粒子(A)と、樹脂粒子(A)に内包される触媒と、を含む触媒粒子である。
本発明(5)は、前記発明(1)~(4)いずれかの触媒粒子の表面の一部又は全部が、無機粒子で覆われている、触媒粒子である。
本発明(6)は、前記発明(2)~(5)のいずれかの触媒粒子の表面の一部又は全部が、さらに樹脂(B)で覆われている、触媒粒子である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、反応の制御が容易である触媒粒子を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は反応性評価に用いた注型加工用容器の正面図、側面図、断面図である 。
【発明を実施するための形態】
【0014】
触媒粒子は、一般に、例えば常温、室内光の通常の環境条件で活性を示さず、直接的に又は間接的に、加熱、光照射といった外部刺激により活性を示す物質であるが、これには限定されない。本発明の触媒粒子は、例えば、触媒粒子を構成する要素が経時的に変化することで、触媒としての活性を示すような場合も含む。本発明の触媒粒子は、例えば、樹脂マイクロカプセル(マイクロカプセルと略す場合がある)に内包された触媒と溶媒とからなる触媒粒子である場合において、触媒が溶解した溶媒が樹脂マイクロカプセルを浸透して外部に達する際に、溶媒に溶解している触媒と反応物とが接触することで反応が開始されるようなものも含む。
【0015】
ここで、「直接的に」とは、外部刺激が直接触媒を活性化する場合を示す。また、「間接的に」とは、外部刺激により、触媒以外の構成要素(樹脂マイクロカプセルや樹脂、あるいは溶媒など)に変化が起こり、その結果触媒が活性化することを意味する。例えば、熱や光により樹脂マイクロカプセルが融解し、触媒が反応物と接触することで反応が開始されるものを意味する。
【0016】
本発明において、樹脂マイクロカプセルとは、微小な粒子または液滴を覆ったもののことで、微小なカプセルに加工したもののことである。
【0017】
本発明において、触媒粒子、多孔質粒子、樹脂マイクロカプセル、樹脂粒子、無機粒子等の平均粒径(体積平均粒径)の測定方法は、レーザー回折法を用いた装置により測定することができる。
【0018】
<<第I実施形態>>
第I実施形態に係る触媒粒子は、多孔質粒子と、前記多孔質粒子が有する孔内に保持された触媒液と、を含む触媒粒子である。
【0019】
<多孔質粒子>
多孔質粒子は、粒子表面に多数の孔を有する粒子である。
【0020】
多孔質粒子の材質は特に限定されず、無機系多孔質粒子であっても有機系多孔質粒子であってもよい。
無機系多孔質粒子としては、非晶質シリカ、無水シリカ、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸亜鉛、ケイ酸カルシウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、ゼオライト、ケイ藻土、カオリン、タルク、ベントナイト等が挙げられる。
有機系多孔質粒子としては、ポリエチレン樹脂粉末、アクリル樹脂粉末、スチレン-アクリル樹脂粉末、ポリアミド樹脂粉末、尿素樹脂粉末、イオン交換樹脂粉末等が挙げられる。多孔質粒子は、アエロゲル状の形態、中空状の形態等であってもよい。
これらは、単独で、又は、複数を組み合せて用いることができる。
多孔質粒子としては、シリカ系粒子であることが好ましい。
【0021】
多孔質粒子の形状は、触媒粒子の用途に応じて適宜変更可能であり特に限定されないが、不定形、球状、多面体状、繊維状、板状、扁平状等が挙げられる。多孔質粒子を球状とすることで、後述する触媒粒子の被覆等が実施しやすくなる。
【0022】
多孔質粒子の粒子径(体積平均粒子径)は、特に限定されないが、好ましくは1mm以下であり、より好ましくは500um以下であり、さらに好ましくは100um以下であり、最も好ましくは50um以下である。粒子径を小さくすることで、反応に寄与する比表面積を大きくすることができる。
【0023】
多孔質粒子の細孔容積は、触媒粒子の用途等に応じて適宜変更可能であり、特に限定されないが、好ましくは10mL/100g以上、より好ましくは30mL/100g以上、さらに好ましくは70ml/100g以上、最も好ましくは100ml/100g以上である。
このような細孔容積は、BET法(クリプトンガス)に準じて測定することができる。本発明では、マイクロメリティックス社製3Flexを使用し、前処理装置としてマイクロメリティックス社製:Smart VacPrepを使用する。測定は、試料1gを分析用セルに採取し、前記前処理装置で200℃で6時間減圧脱気処理し、クリプトンガス吸着法で比表面積を分析する。
【0024】
多孔質粒子の比表面積は、触媒粒子の用途等に応じて適宜変更可能であり特に限定されない。
反応を促進する場合の多孔質粒子の比表面積は、好ましくは200m/g以上、より好ましくは500m/g以上、さらに好ましくは1000m/g以上である。この場合の多孔質粒子の比表面積の上限は、例えば、2,500m/gである。反応を促進させる上で、比表面積が前記範囲にあると、反応場となる面積が増える為、加熱反応までの時間が短くなる。
反応を遅延させる場合の多孔質粒子の比表面積は、好ましくは20m/g以上、より好ましくは50m/g以上、さらに好ましくは100m/g以上、最も好ましくは300m/g以上である。この場合の多孔質粒子の比表面積の上限は、例えば、1000m/gである。多孔質粒子の比表面積をかかる範囲とすることで、適度な外殻を形成でき、触媒含浸後の流動性や液中分散性を高めることができる。
このような比表面積は、BET法(クリプトンガス)に準じて測定することができる。
【0025】
なお、多孔質粒子が有する孔は、特に限定されず、窪み(直径の10~80%の深さのものを示す。)や貫通孔も含む。多孔質粒子が有する孔は、多孔質粒子自体の径によっても異なるが、例えば、径が2nm~1mm程度の細孔であることが好ましい。
【0026】
<触媒液>
触媒液とは、触媒が、溶媒に溶解する乃至は分散媒に分散することで得られる組成物である。換言すれば、触媒と、溶媒乃至は分散媒と、を含む組成物(触媒溶液乃至は触媒分散液)を触媒液と表現する。触媒液は、触媒の溶媒と、触媒の分散媒と、を同時に含むものであってもよい。本明細書において単に触媒と表現した場合、触媒液以外の、固体状(例えば、粉末状)の触媒を示す場合がある。
【0027】
触媒は、特に限定されず、触媒粒子の用途に応じて選択することができる。例えば、触媒として、熱硬化触媒、光硬化触媒、ウレタン化触媒、開環メタセシス重合触媒などを挙げることができる。これらは、単独で、又は、複数を組み合せて用いることができる。
【0028】
溶媒又は分散媒は、特に限定されず、触媒粒子の用途、触媒の溶媒に対する溶解度、触媒の分散媒に対する分散度、他の構成成分(多孔質粒子や、後述する樹脂マイクロカプセルの外殻等)の材質等に応じて、選択することができる。例えば、水、メタノール、エタノール等の親水性の高い溶媒を使用してもよい。これらは、単独で、又は、複数を組み合せて用いることができる。
【0029】
触媒液において、触媒と、溶媒又は分散媒と、の含有比率は、特に限定されないが、例えば、触媒:溶媒又は分散媒は、1:10000~1:1000とすることができ、1:100~1:10が好ましい。触媒と、溶媒又は分散媒と、の含有比率が、かかる範囲にある場合には、硬化反応が開始された後に速やかに硬化が完了するという効果を得ることができる。
【0030】
触媒液は、本発明の効果を阻害しない範囲内で、その他の成分(例えば、着色材(カーボン、顔料)、UV吸収材、難燃材、酸化防止剤等)を含んでいてもよい。
【0031】
<触媒粒子の製造方法>
触媒粒子の製造方法は特に限定されない。例えば、攪拌容器に多孔質粒子および触媒液を投入し、ペイントシェーカー等で攪拌することで、多孔質粒子の細孔中に触媒溶液または触媒分散液を染み込ませることで触媒粒子を製造することができる。なお、あらかじめ調製した触媒液を攪拌容器に投入することで、多孔質粒子に含まれる触媒液を均質なものとすることができるが、触媒と、溶媒/分散媒とを、別々に攪拌容器に投入してもよい。
【0032】
また、多孔質粒子の表面、乃至は、触媒粒子(触媒液を含む多孔質粒子)の表面を、熱風や溶射(プラズマ)等で溶融乃至は軟化させ、変形させてもよい。この場合、多孔質粒子の内部空間(つまり、多孔質粒子が保持可能な触媒液の量)を変えることなく多孔質粒子表面の細孔の開口径を調整し、多孔質粒子から滲出される触媒液の量を調整することもできる。別の表現によれば、触媒粒子は、細孔を有する多孔質粒子と触媒液とを含む触媒粒子であって、細孔内に触媒液が充填された状態の多孔質粒子の表面を、多孔質粒子の溶融温度乃至は軟化温度以上に加熱して得られた触媒粒子であることが好ましい。
【0033】
構成成分が樹脂である多孔質粒子の表面を溶融乃至は軟化することで得られる、多孔質粒子の内部空間が維持されたまま当該多孔質粒子の孔の表面が覆われた(孔が塞がれた)構造は、多孔質粒子の表面が樹脂で被覆されている構造であると判断される。多孔質粒子の表面を樹脂で被覆する構造については、後述する。
【0034】
<触媒粒子の用途>
触媒粒子は、触媒として利用可能なあらゆる用途にて使用することができる。例えば、樹脂成形(注型、RIM成型、フィルム成形)等に用いることができる。また、触媒粒子は、多孔質粒子を構成する各孔における、触媒液や粒子自体の比重を変更することや、触媒液と空隙との比率(触媒液の充填率)を変更することで、触媒粒子自体の比重を制御することができる。そのため、触媒を含む系において、容器の比較的下方から反応を開始させたい場合は沈降しやすい(比重の重い)粒子を使用すること、容器の比較的上方から反応を開始させたい場合は、浮きやすい(比重の軽い)粒子を使用すること、及び、その両方を併用すること等によって、容器の高さ方向における反応箇所を制御することが可能である。
【0035】
<<第II実施形態>>
第I実施形態においては、細孔を有する多孔質粒子と、前記多孔質粒子が有する孔内に保持された触媒液と、を必須的に含む触媒粒子(以下、第I触媒粒子と表現する。)について説明した。
次に、第II実施形態として、多孔質粒子を必須としない、種々の触媒粒子について説明する。
【0036】
触媒、溶媒、分散媒等については、第I実施形態にて説明した通りであるので、説明を省略する場合がある。
【0037】
第II実施形態に係る触媒粒子としては、触媒粒子本体部と、触媒粒子本体部の少なくとも一部を覆う被覆部と、を含む形態が示されているが、この触媒粒子本体部と、被覆部によって被覆された後の触媒粒子全体(触媒粒子本体部と被覆部との合計)とを特に区別せず、共に「触媒粒子」と表現している。
【0038】
第II実施形態に係る触媒粒子は、第I実施形態に係る触媒粒子と同様に、より確実に反応を制御することができる触媒粒子に関する。第II実施形態に係る触媒粒子は、特に、高い熱潜在性を有し、熱潜在性触媒における反応温度等の意図された反応開始トリガーによって反応を開始できるように構成されたものである。即ち、第II実施形態に係る触媒粒子が熱潜在性触媒の場合には、硬化温度(例えば、マイクロカプセルの融解温度等)に達するまで、温度以外の因子によって反応が開始せず、温度を硬化温度に制御するのみで反応が開始される、高い信頼性を有する触媒粒子とすることができる。
【0039】
第II実施形態に係る触媒粒子は、以下のように表現することができる。
発明(i)は、
樹脂マイクロカプセルを外殻とする触媒粒子であって、
前記樹脂マイクロカプセルは、触媒と、溶媒又は分散媒と、を内包することを特徴とする、触媒粒子である。
発明(ii)は、
前記樹脂マイクロカプセルの表面の一部又は全部が、さらに無機粒子で覆われていることを特徴とする、前記発明(i)の触媒粒子である。
発明(iii)は、
樹脂粒子(A)と、前記樹脂粒子(A)に内包される触媒と、を含む触媒粒子であって、前記触媒粒子の表面の一部又は全部が、無機粒子で覆われていることを特徴とする、触媒粒子である。
発明(iv)は、
樹脂マイクロカプセルを有する触媒粒子であって、
前記樹脂マイクロカプセルは、触媒を内包しており、
前記樹脂マイクロカプセルの表面の一部又は全部が、無機粒子で覆われていることを特徴とする、触媒粒子である。
発明(v)は、
前記発明(i)~(iv)のいずれかの触媒粒子の表面の一部又は全部が、さらに樹脂(B)で覆われていることを特徴とする、触媒粒子触媒粒子である。
発明(vi)は、
樹脂粒子と、前記樹脂粒子(A)に内包される触媒と、を含む触媒粒子であって、
前記触媒粒子の表面の一部又は全部が、樹脂(B)で覆われていることを特徴とする、触媒粒子である。
発明(vii)は、
樹脂マイクロカプセルを外殻とする触媒粒子であって、
前記樹脂マイクロカプセルは、触媒を内包しており、
前記樹脂マイクロカプセルの表面の一部又は全部が、樹脂(B)で覆われていることを特徴とする、触媒粒子である。
【0040】
さらに、上述した発明に係る概念を、第I実施形態に係る触媒粒子に適用することも可能である。
つまり、本発明は以下の形態も含む。
発明(A)は、第I触媒粒子が樹脂で覆われていることを特徴とする、触媒粒子である。
発明(B)は、第I触媒粒子または発明(A)の触媒粒子の表面の一部又は全部が、無機粒子で覆われている、触媒粒子である。
発明(C)は、第I触媒粒子、発明(A)の触媒粒子または、発明(B)の触媒粒子の表面の一部又は全部が、さらに樹脂(B)で覆われている、触媒粒子である。
【0041】
以下、第II実施形態に含まれる種々の触媒粒子の態様について詳述する。
【0042】
<第1の実施の態様>
第1の実施の態様の触媒粒子は、樹脂マイクロカプセルを外殻とする触媒粒子であり、樹脂マイクロカプセルは、触媒と、溶媒又は分散媒と、を内包することを特徴とする。つまり、第1の実施の態様の触媒粒子を、樹脂マイクロカプセルと、樹脂マイクロカプセルに内包された触媒液とを有する粒子と表現することもできる。
【0043】
樹脂マイクロカプセルの材質は、触媒と、溶媒又は分散媒とを内包するように形成することが可能であり、外部刺激等により触媒が活性化される性質を有する限りにおいて、特に限定されない。
外部刺激等によって触媒が活性化される性質とは、例えば、熱潜在性を有する触媒においては、樹脂マイクロカプセルが所定の温度に達した際に、樹脂マイクロカプセルが融解して、反応物と触媒が接触することが可能となる性質である。熱潜在性以外には、光潜在性等を挙げることが可能である。また、内包された溶媒や分散媒により、内部の触媒が樹脂マイクロカプセル外に浸透して、あるいは、樹脂マイクロカプセルが膨潤して、触媒が活性化する場合等も挙げることができる。
樹脂マイクロカプセルの材質としては、例えば、付加または縮合重合で作製される天然または合成有機ポリマー(炭素原子を含む)が挙げられる。一般に、ポリマーは、1種以上の重合性単量体をフリーラジカル、イオン、配位、または縮合重合して生成されるホモポリマーまたはランダムおよびブロックコポリマーである。例として、ポリオレフィン、スチレン系ポリマー、ポリエーテル、ポリ尿素、アクリル系ポリマー、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリシロキサン、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体、ポリサッカライド、ポリペプチド、ポリヌクレオチド等、ならびにそれらの混合物が挙げられる。好ましくは、スチレン系ポリマー、ポリオレフィン、およびそれらの混合物である。特に好ましくは、ポリオレフィンである。ポリマーは、バルク、溶液、懸濁、または乳化重合によって生成できる。ポリマーは炭化水素類でもよく、または、ハロゲン、水酸基、アミン、ホスフィン、ホスフィンオキシド、アルシン、硫黄、硫黄酸化物、アルコキシ、シラン、シロキシ、カルボキシなどの官能基を含んでいてもよい。ポリウレア樹脂、ポリスチレン樹脂、シクロペンタジエン樹脂、ノルボルネン樹脂、ナイロンおよびその誘導体等が挙げられる。これらの材質は、単独で、又は、複数を組み合せて用いることができる。
【0044】
樹脂マイクロカプセルの形状は、特に限定されるものではないが、略球形や略楕円体とすることができる。
【0045】
樹脂マイクロカプセルの平均粒径は、特に限定されないが、10nm~5mmとすることができ、1μm~100μmが好ましい。樹脂マイクロカプセルの平均粒径がかかる範囲にある場合には、硬化速度を制御しやすい。
【0046】
樹脂マイクロカプセルの外殻(カプセル壁)の厚さは、1nm~100μmとすることができ、100nm~50μmが好ましい。樹脂マイクロカプセルの外殻(カプセル壁)の厚さがかかる範囲にある場合には、硬化速度を制御しやすい。
【0047】
本態様の触媒粒子の平均粒径は、特に限定されないが、10nm~5mmとすることができ、1μm~100μmが好ましい。触媒粒子の平均粒径がかかる範囲にある場合には、溶媒または分散媒に触媒粒子を均一分散しやすく、硬化反応のばらつきを抑えることができる。
【0048】
第1の実施の態様の触媒粒子の製造方法(主に、マイクロカプセル化方法)は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、触媒粒子の製造方法としては、物理学的な方法、物理化学的な方法、化学的な方法を挙げることができる。特に、医薬品等の分野で研究、報告されている様々な手法を用いることができる。例えば、高分子の溶液に金属触媒を溶解し、攪拌、冷却した後、金属触媒が分散導入された高分子の貧溶媒を添加し、膨潤した高分子を硬化させてマイクロカプセルとする方法(Microcapsules and Nanoparticles in Medicine and Pharmacy; CRC Press: Boca Raton, 1992)等を用いることができる。マイクロカプセル内に溶媒又は分散媒を残留させるには、乾燥工程を省くことで達成することができる。これらの製造方法は、触媒、溶媒又は分散媒、樹脂マイクロカプセル外殻の材質の組合せ等により、任意に選択することができる。
【0049】
物理学的な方法としては、液体をコア物質とする公知の方法を用いることができ、例えば、Centrifugal extrusion 法や振動ノズル法を挙げることができる。
【0050】
物理化学的な方法としては、例えば、コアセルベーション法を用いることができる。
【0051】
化学的な方法としては、例えば、界面重合法、In-situ重合法、懸濁重合法等を用いることができる。
【0052】
第1の実施の形態の触媒粒子の具体的な製造方法の例について説明する。
触媒を攪拌容器に所定量計量(例えば、1質量部)し、溶媒又は分散媒を所定量(例えば、99質量部)加え、ペイントシェーカーで、30分攪拌し、触媒が均一に、溶解又は分散した、所定濃度(例えば、1質量%)の触媒溶解液又は触媒分散液A-1を調製する。
【0053】
得られた触媒溶解液又は分散液を所定量(例えば、1質量部)計量し、攪拌容器に投入する。さらにイオン交換水を9質量部加え、ペイントシェーカーで30分間攪拌し、触媒溶解液又は触媒分散液が液滴状態で水中に懸濁する触媒懸濁液B-1を調製する。
【0054】
得られた触媒懸濁液を100質量部計量し攪拌容器に投入し、外殻形成用の硬化性樹脂(例えば、ジシクロペンタジエン)を1質量部加え、ペイントシェーカーで30分間攪拌し、常温下で60分間静置し、触媒分散液を内包する懸濁粒子を得る。外殻形成用の硬化性樹脂を除く為、前記の懸濁粒子を含む全液を分液ロートに移し複数回水洗し、水に分散された懸濁粒子C-1を得る。
【0055】
得られた懸濁粒子の水分散液から水をスポイトで除き、十分量の置換液(例えば、イソプロピルアルコール、以降IPAと略す場合がある)を加え、手でゆるやかに攪拌する。懸濁粒子の分散液から置換液をスポイトで除き、十分量(例えば、すべての懸濁粒子が浸漬可能な量)の置換液を加えて攪拌する。この洗浄作業を3回繰り返し、懸濁粒子を脱水し、置換液に分散した触媒粒子C-1とする。
【0056】
<第2の実施の態様>
第2の実施の態様の触媒粒子は、第1の実施の態様の樹脂マイクロカプセル若しくは第I触媒粒子の表面の一部又は全部が、さらに無機粒子で覆われている態様である。別の表現によれば、第2の実施の態様の触媒粒子は、第1の実施の態様の樹脂マイクロカプセル若しくは第I触媒粒子の表面の少なくとも一部に、無機粒子が付着している態様である。なお、一部の無機粒子が、触媒粒子の内部に包埋されていてもよい。
【0057】
無機粒子は、特に限定されないが、MgO、CaCO、Al、SiO、ZrO等の金属酸化物を挙げることができる。これらの無機粒子は、単独で、又は、複数を組み合せて用いることができる。これら無機粒子が、触媒粒子の表面の一部又は全部を覆うことで、樹脂マイクロカプセルの粒子径を均一にする効果を得ることができる。また、後述するように、無機粒子で覆われた触媒粒子の表面の一部又は全部を、さらに樹脂で覆う態様の場合には、無機粒子の存在により、樹脂との濡れ性を調整することができる。
【0058】
無機粒子の平均粒径は、特に限定されないが、例えば、1nm~100μmであり、10nm~1μmが好ましく、20~500nmがより好ましい。無機粒子の平均粒径が、かかる範囲にある場合には、樹脂マイクロカプセルの粒子径を均一化させやすく、樹脂マイクロカプセルや触媒粒子の表面を覆い易い。
【0059】
触媒粒子の表面の一部又は全部を無機粒子で覆う方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。無機粒子で覆う方法としては、例えば、湿式懸濁、乾式混合等の方法を挙げることができる。
【0060】
触媒粒子の表面の一部又は全部を無機粒子で覆う場合、無機粒子の被覆率は特に限定されないが、例えば、触媒粒子の表面積の10%~100%とすることができ、30%~100%が好ましく、50%~100%がより好ましい。第1の実施の態様の触媒粒子の表面の一部又は全部を、無機粒子で覆う場合の被覆率がかかる範囲にあることで、樹脂マイクロカプセルが安定化しやすい。無機粒子の被覆率(無機粒子の付着量)は、触媒粒子の用途や反応性等を考慮して任意の範囲に変更可能である。
【0061】
触媒粒子の平均粒径は、特に限定されないが、20nm~5mmとすることができ、1μm~100μmが好ましい。触媒粒子の平均粒径がかかる範囲にある場合には、樹脂マイクロカプセルが安定化しやすく、硬化速度を制御しやすい。
【0062】
第2の実施の形態の触媒粒子の具体的な製造方法の例について説明する。
前記所定濃度(例えば、1質量%)の触媒溶解液又は触媒分散液A―1を所定量(例えば、1質量部)攪拌容器に投入し、純水を所定量(例えば、9重量部)、所定の粒子径(例えば、1次粒子径が約2μm)の無機粒子(例えば、MgO粒子)を所定量(例えば、0.1質量部)加え、ペイントシェーカーで30分間攪拌し、触媒分散液が液滴状態で水中に懸濁された触媒懸濁液B―2を得る。なお、必要に応じて、懸濁安定剤を添加してもよい。ここで、無機粒子と懸濁安定剤は同一の物でもよい。
【0063】
触媒懸濁液B-2を所定量(例えば、100質量部)攪拌容器に投入し、外殻形成用の硬化性樹脂(例えば、ジシクロペンタジエン)を、所定量(例えば、1質量部)加え、ペイントシェーカーで30分間攪拌し、常温下で60分間静置し、触媒分散液を内包する懸濁粒子を得る。外殻形成用の硬化性樹脂を除く為、前記の懸濁粒子を含む全液を分液ロートに移し複数回水洗し、水に分散された懸濁粒子C-2を得る。
【0064】
懸濁粒子の水分散液から水をスポイトで除き、十分量の置換液(例えば、IPA)を加え、手でゆるやかに攪拌した。懸濁粒子の分散液から置換液をスポイトで除き、十分量の置換液を加えて攪拌する洗浄作業を3回繰り返し、懸濁粒子を脱水し、置換液に分散された触媒粒子C-2とする。
【0065】
ここで、第I実施形態に係る触媒粒子を無機粒子で被覆する方法としては、触媒液の粘性を利用して触媒粒子表面へ無機粒子を付着させる方法、静電的に触媒粒子へ無機粒子を付着させる方法、触媒粒子と無機粒子とを混合した後に熱風や溶射(プラズマ)等で触媒粒子の表面(好ましくは触媒粒子の表面のみ)を溶融乃至は軟化させて触媒粒子へ無機粒子を付着させる方法等を適用することができる。触媒粒子を溶融乃至は軟化させる方法は、より具体的には、触媒粒子の溶融温度乃至は軟化温度以上であり、無機粒子の溶融温度未満の温度条件である加熱によって実施することが好ましい。
【0066】
<第3の実施の態様>
第3の実施の態様の触媒粒子は、第1の実施の態様の触媒粒子、第2の実施の態様の触媒粒子、若しくは、第I触媒粒子の表面の一部又は全部が、さらに樹脂(B)で覆われている態様である。別の表現によれば、第3の実施の態様の触媒粒子は、第1の実施の態様の触媒粒子、第2の実施の態様の触媒粒子、または、第I触媒粒子の表面の少なくとも一部に、樹脂(B)が付着している態様である。
【0067】
樹脂(B)としては、外部刺激等により触媒が活性化される性質を有する限りにおいて、特に限定されない。
外部刺激等によって触媒が活性化される性質とは、例えば、熱潜在性を有する触媒においては、樹脂マイクロカプセルが所定の温度に達した際に、樹脂マイクロカプセルが融解して、反応物と触媒が接触することが可能となる性質である。熱潜在性以外には、光潜在性等を挙げることが可能である。また、内包された溶媒や分散液により、内部の触媒がマイクロカプセル外に浸透して、あるいは、マイクロカプセルが膨潤して、触媒が活性化する場合等も挙げることができる。
樹脂(B)としては、例えば、付加または縮合重合で作製される天然または合成有機ポリマー(炭素原子を含む)が挙げられる。一般に、ポリマーは、1種以上の重合性単量体をフリーラジカル、イオン、配位、または縮合重合して生成されるホモポリマーまたはランダムおよびブロックコポリマーである。例として、スチレン系ポリマー、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリ尿素、アクリル系ポリマー、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリシロキサン、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体、ポリサッカライド、ポリペプチド、ポリヌクレオチド等、ならびにそれらの混合物が挙げられる。好ましくは、スチレン系ポリマー、ポリオレフィン、およびそれらの混合物である。特に好ましくは、ポリスチレンである。ポリマーは、バルク、溶液、懸濁、または乳化重合によって生成できる。ポリマーは炭化水素類でもよく、または、ハロゲン、水酸基、アミン、ホスフィン、ホスフィンオキシド、アルシン、硫黄、硫黄酸化物、アルコキシ、シラン、シロキシ、カルボキシなどの官能基を含んでいてもよい。ポリウレア樹脂、ポリスチレン樹脂、シクロペンタジエン樹脂、ナイロン、ワックス等が挙げられる。これらの材質は、単独で、又は、複数を組み合せて用いることができる。
【0068】
なお、第1の実施の形態の触媒粒子及び第2の実施の形態の触媒粒子のいずれの触媒を用いた場合においても、マイクロカプセルの材質と、樹脂(B)の材質とは、同じものでも、異なるものでもよい。
【0069】
本態様における樹脂(B)の被覆方法は、公知の方法を用いることができ、特に限定されない。被覆方法としては、例えば、熱溶融した樹脂又はモノマー中に触媒を配合し、冷却による固化、熱硬化反応、光硬化反応、ウレタン化反応、開環メタセシス重合反応等により、触媒表面を樹脂(B)で被覆する方法を挙げることができる。また、樹脂(B)を溶媒に溶解させた樹脂組成物(乃至は樹脂(B)を分散媒に分散させた樹脂組成物)を準備し、当該樹脂組成物を触媒表面に塗布/スプレーする(乃至は、当該樹脂組成物中に触媒を浸漬する)ことで触媒表面に樹脂組成物を付着させ、次いで樹脂組成物を乾燥させることで、触媒表面を樹脂(B)で被覆することもできる。
樹脂(B)の被覆率(樹脂(B)の付着量)は、触媒粒子の用途や反応性等を考慮して任意の範囲に変更可能である。樹脂(B)の被覆率は、例えば、触媒粒子最表層の表面積に対して50%~100%とすることが好ましい。
【0070】
触媒粒子の表面を覆う樹脂(B)は、1種のみから構成されてもよいし、2種以上の樹脂から構成されてもよい。例えば、触媒粒子の表面を覆う樹脂(B1)層、及び、樹脂(B1)層を覆う樹脂(B2)層を有するような、複数の樹脂層によって触媒粒子を覆う構造も本態様に含まれる。
【0071】
ここで、第I触媒粒子に関して、構成成分が樹脂である多孔質粒子の表面を溶融乃至は軟化することで形成される、多孔質粒子の内部空間が維持されたまま当該多孔質粒子の孔の表面が覆われた(孔が塞がれた)構造は、第I触媒粒子の表面の一部又は全部が樹脂で覆われている構造と見なされる。
この場合、多孔質粒子を構成する樹脂と、多孔質粒子の表面を覆う樹脂(多孔質粒子由来の樹脂)とは同じ材質となる。
更にこの場合、触媒粒子の表面に、別の樹脂(多孔質粒子の樹脂とは異種の樹脂)を付着させてもよい。
【0072】
多孔質粒子の孔が樹脂によって覆われているか否かは、粒子の断面をTEM等で観察することにより判断することができる。
またこの場合、多孔質粒子に対する樹脂の被覆率については、多孔質材料がもともと有していた孔の個数を基準として、樹脂によって塞がれた孔の割合をもって、被覆率とすることができる。
【0073】
本態様の触媒粒子の平均粒径は、特に限定されないが、100nm~5mmとすることができ、1μm~100μmが好ましい。触媒粒子の平均粒径が、かかる範囲にある場合には、硬化速度を制御しやすい。
【0074】
第3の実施の形態の触媒粒子の具体的な製造方法の例について説明する。
触媒粒子C-1、触媒粒子C-2、または第I触媒粒子の分散液から置換液をスポイトで除き、予め融点以上に加温して液状とした樹脂(B)(例えば、融点50℃のパラフィンワックスを70℃に加温して液状とする)を十分量(例えば、すべての触媒粒子C-1又はC-2が浸漬する量)加え、懸濁粒子(前記触媒粒子)の分散液を得る。前記分散液からワックスの付着した懸濁粒子を取り出し、所定の温度(パラフィンワックスを用いる場合は70℃)の温水中に投入し、緩やかに攪拌しながら、樹脂(B)が固化する温度まで徐々に自然冷却する。このようにして、懸濁粒子(前記触媒粒子)が樹脂(B)で包埋された触媒粒子Dを得ることができる。
【0075】
<第4の実施の態様>
第4の実施の態様の触媒粒子は、樹脂粒子(A)と、前記樹脂粒子(A)に内包される触媒と、を含む触媒粒子であって、前記触媒粒子の表面の一部又は全部が、無機粒子で覆われていることを特徴とする、触媒粒子である。別の表現によれば、第4の実施の態様の触媒粒子は、樹脂粒子(A)と、前記樹脂粒子(A)に内包される触媒と、を含む触媒粒子であって、前記触媒粒子の表面に無機粒子が付着している触媒粒子である。なお、一部の無機粒子が、触媒粒子の内部に包埋されていてもよい。
【0076】
樹脂粒子(A)としては、外部刺激等により触媒が活性化される性質を有する限りにおいて、特に限定されない。
外部刺激等によって触媒が活性化される性質とは、例えば、熱潜在性を有する触媒においては、樹脂粒子(A)が所定の温度に達した際に、樹脂粒子(A)が融解して、反応物と触媒が接触することが可能となる性質である。熱潜在性以外には、光潜在性等を挙げることが可能である。また、内包された溶媒や分散液により、内部の触媒が樹脂粒子(A)外に浸透して、あるいは、樹脂粒子(A)が膨潤して、触媒が活性化する場合等も挙げることができる。
樹脂粒子(A)としては、例えば、付加または縮合重合で作製される天然または合成有機ポリマー(炭素原子を含む)が挙げられる。一般に、ポリマーは、1種以上の重合性単量体をフリーラジカル、イオン、配位、または縮合重合して生成されるホモポリマーまたはランダムおよびブロックコポリマーである。例として、スチレン系ポリマー、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリ尿素、アクリル系ポリマー、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリシロキサン、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体、ポリサッカライド、ポリペプチド、ポリヌクレオチド等、ならびにそれらの混合物が挙げられる。好ましくは、スチレン系ポリマー、ポリオレフィン、およびそれらの混合物である。特に好ましくは、ポリスチレンである。ポリマーは、バルク、溶液、懸濁、または乳化重合によって生成できる。ポリマーは炭化水素類でもよく、または、ハロゲン、水酸基、アミン、ホスフィン、ホスフィンオキシド、アルシン、硫黄、硫黄酸化物、アルコキシ、シラン、シロキシ、カルボキシなどの官能基を含んでいてもよい。ポリウレア樹脂、ポリスチレン樹脂、シクロペンタジエン樹脂、ナイロン、ワックス等が挙げられる。これらの材質は、単独で、又は、複数を組み合せて用いることができる。
【0077】
触媒は、第1の実施の態様において述べた触媒と同様である。
【0078】
無機粒子は、第2の実施の態様において述べた無機粒子と同様である。
【0079】
樹脂粒子(A)に触媒を内包させる方法は、公知の方法を用いることができ、特に限定されない。触媒を内包させる方法としては、例えば、機械的な分散を利用する方法や、融点差を利用する方法等を挙げることができる。
【0080】
無機粒子の被覆方法は、第2の実施の態様において述べた方法と同様である。
【0081】
本実施の態様の触媒粒子において、触媒と樹脂粒子(A)との含有比率は、特に限定されないが、例えば、触媒:樹脂粒子(A)を、1:10~10:1とすることができ、3:10~5:10が好ましい。触媒と樹脂粒子(A)との含有比率が、かかる範囲にある場合には、硬化反応が開始された後に速やかに硬化が完了する。
【0082】
本態様の触媒粒子の平均粒径は、特に限定されないが、10nm~5mmとすることができ、1μm~100μmが好ましい。触媒粒子の平均粒径が、かかる範囲にある場合には、硬化反応を制御しやすい。
【0083】
第4の実施の態様の触媒粒子の具体的な製造方法の例について、説明する。なお、樹脂粒子(A)を構成する樹脂成分を樹脂(A)と表現する場合がある。
触媒を所定量(例えば、10重量部)計量し、樹脂(A)(例えば、パラフィンワックス)を粉砕分級して得た平均粒子径が1μmの樹脂(A)を所定量(例えば、50質量部)計量し、これらを乾式で混合する。この混合物を、所定の温度(樹脂(A)が液体となる温度、例えば、パラフィンワックスを用いる場合は約70℃)に加熱して、30分加温し、触媒の周りに樹脂(A)の粒子が付着した樹脂粒子包埋触媒を得る。樹脂粒子包埋触媒を粉砕し、所定の平均粒子径(例えば、30μm)の触媒粒子Eを得る。
【0084】
得られた触媒粒子Eを所定量(例えば、1質量部)攪拌容器に投入し、所定の平均粒子径(例えば、0.5μm)の無機粒子(例えば、シリカ粒子)を所定量(例えば、100質量部)加え、ペイントシェーカーで10分攪拌し、所定の温度(樹脂(A)が液体となる温度、例えば、パラフィンワックスの場合は約70℃)で30分加温し、触媒粒子Eの表面に無機粒子が付着した樹脂粒子で包埋された触媒粒子Fを得ることができる。
【0085】
<第5の実施の態様>
第5の実施の態様の触媒粒子は、第4の実施の態様の触媒粒子の表面の一部又は全部が、さらに樹脂(B)で覆われている態様である。別の表現によれば、第5の実施の態様の触媒粒子は、第4の実施の態様の触媒粒子の表面に樹脂(B)が付着している態様である。
【0086】
樹脂(B)は、第3の実施の態様において述べた樹脂(B)と同様である。
【0087】
本態様の触媒粒子の平均粒径は、特に限定されないが、100nm~5mmとすることができ、1μm~100μmが好ましい。触媒粒子の平均粒径が、かかる範囲にある場合には、硬化反応を制御しやすい。
【0088】
なお、第4の実施の態様の触媒粒子に含まれる樹脂(A)の材質と、本実施の態様の樹脂(B)の材質とは、同じものでも、異なるものでもよい。
【0089】
第5の実施の形態の触媒粒子の製造方法の例について、説明する。
第4の実施の形態である触媒粒子Fを気流(例えば、乾燥空気流や窒素流)で充満した容器内に入れ、樹脂(B)が液状となる温度(例えば、樹脂(B)として、融点が90℃のパラフィンワックスを用いる場合には100℃)に加温して液状となった樹脂(B)を噴霧し、触媒粒子Fと樹脂(B)とを気流中で混合し、冷却する。このようにして、無機粒子樹脂粒子包埋触媒粒子Fの周りに樹脂(B)が付着した触媒粒子Gを得ることができる。
【0090】
<第6の実施の態様>
本態様における触媒粒子は、樹脂マイクロカプセルを有する触媒粒子であって、前記樹脂マイクロカプセルは、触媒を内包しており、前記樹脂マイクロカプセルの表面の一部又は全部が、無機粒子で覆われていることを特徴とする、触媒粒子である。
【0091】
樹脂マイクロカプセルは、第1の実施の態様において述べた樹脂マイクロカプセルと同様である。
【0092】
触媒は、第1の実施の態様において述べた触媒と同様である。
【0093】
無機粒子は、第1の実施の態様において述べた無機粒子と同様である。
【0094】
樹脂マイクロカプセルの製造方法は、溶媒又は分散液を含まない以外は、第1の実施の態様において述べた触媒粒子の製造方法と同様である。
【0095】
本態様の触媒粒子の平均粒径は、特に限定されないが、10nm~5mmとすることができ、1μm~100μmが好ましい。触媒粒子の平均粒径が、かかる範囲にある場合には、硬化速度を制御しやすい。
【0096】
第6の実施の態様の触媒粒子の具体的な製造方法の例について説明する。
第2の実施の態様で得た分散媒(例えばIPA)に分散された懸濁粒子C-2を凍結乾燥し、分散媒と懸濁粒子内に含まれる溶媒を気化させることで、懸濁粒子内に固体状態の触媒が内包された触媒粒子Hを得ることができる。
【0097】
<第7の実施の態様>
第7の実施の態様の触媒粒子は、第6の実施の態様の触媒粒子の表面の一部又は全部が、さらに樹脂(B)で覆われている態様である。
【0098】
本態様においては、溶剤又は分散液を含まない以外は、第3の実施の態様の触媒粒子と同様である。
【0099】
本態様の触媒粒子の平均粒径は、特に限定されないが、100nm~5mmとすることができ、1μm~100μmが好ましい。触媒粒子の平均粒径が、かかる範囲にある場合には、硬化速度を制御しやすい。
【0100】
第7の実施の態様の触媒粒子の具体的な製造方法の例について説明する。
第6の実施の態様の触媒粒子Hを気流(例えば、乾燥空気流や窒素流)で充満した容器内に入れ、樹脂(B)が液状になる温度(樹脂(B)として融点90℃のパラフィンワックスを用いる場合には100℃)に加温して液状とした樹脂(B)を噴霧し、触媒粒子Hと樹脂(B)とを気流中で混合し、冷却する。このようにして、触媒粒子Hの周りに樹脂(B)が付着した触媒粒子Gを得ることができる。
【0101】
<第8の実施の態様>
第8の実施の態様は、樹脂粒子(A)と、前記樹脂粒子(A)に内包される触媒と、を含む触媒粒子であって、前記触媒粒子の表面の一部又は全部が、樹脂(B)で覆われていることを特徴とする、触媒粒子である。ここで、樹脂(A)と樹脂(B)は、同じものでも、異なるものでもよい。
【0102】
本態様においては、無機粒子を含まないこと以外は、第5の実施の態様と同様である。
【0103】
本態様の触媒粒子の平均粒径は、特に限定されないが、100nm~5mmとすることができ、1μm~100μmが好ましい。触媒粒子の平均粒径が、かかる範囲にある場合には、硬化速度を制御しやすい。
【0104】
第8の実施の態様の触媒粒子の具体的な製造方法について説明する。
第4の実施の態様の触媒粒子Eを気流(例えば、乾燥空気流や窒素流)で充満した容器内に入れ、樹脂(A)が液状となる温度(樹脂(A)として融点90℃のパラフィンワックスを用いる場合には100℃)に加温して液状とした樹脂(A)を噴霧し、触媒粒子Eと樹脂(A)とを気流中で混合し、冷却する。このようにして、触媒粒子Eの周りに樹脂(A)が付着した触媒粒子Hを得ることができる。
【0105】
<第9の実施の態様>
樹脂マイクロカプセルを外殻とする触媒粒子であって、前記樹脂マイクロカプセルは、触媒を内包しており、前記樹脂マイクロカプセルの表面の一部又は全部が、樹脂(B)で覆われていることを特徴とする、触媒粒子である。
【0106】
本態様においては、無機粒子を含まないこと以外は、第7の実施の態様と同様である。
【0107】
本態様の触媒粒子の平均粒径は、特に限定されないが、100nm~5mmとすることができ、1μm~100μmが好ましい。触媒粒子の平均粒径が、かかる範囲にある場合には、硬化速度を制御しやすいという効果が得られる。
【0108】
第9の実施の態様の触媒粒子の具体的な製造方法について説明する。
第1の実施の態様で得た分散媒(例えば、IPA)に分散された触媒粒子C-1を凍結乾燥し、分散溶媒と懸濁粒子内に含まれる溶媒を気化させることで、触媒粒子内に固体状態の触媒が内包された触媒粒子Iとする。
【0109】
触媒粒子Iを気流(例えば、乾燥空気流や窒素流)で充満した容器内に入れ、樹脂(B)が液状となる温度(樹脂(B)として、例えば、融点90℃のパラフィンワックス用いる場合は100℃)に加温して液状とした樹脂(B)を噴霧する。触媒粒子Iと樹脂(B)とを気流中で混合し、冷却する。このようにして、触媒粒子Iの周りに樹脂(B)が付着した触媒粒子Jを得ることができる。
【0110】
上述した第I実施形態および第II実施形態の第1~9の態様において、これらを組み合わせて得られるあらゆる触媒粒子が、本発明に含まれる。また、第II実施形態にて説明した、触媒粒子への微粒子の付着、及び/又は触媒粒子への樹脂の付着を複数回実施して多層化された触媒粒子も、本発明に含まれる。
【0111】
上述した各実施形態では、樹脂からなる層や無機粒子からなる層等を有する多層構造の触媒粒子について説明したが、触媒粒子は、樹脂と無機粒子との混合物からなる層を1層または複数層有していてもよい。その場合、樹脂と無機粒子との混合比は適宜調整可能である。また、このような触媒粒子は、触媒粒子の表面に樹脂を付着させる際に、樹脂に無機粒子を混合すること等で製造することができる。
なお、「触媒粒子の表面の一部が、無機粒子で覆われている形態」とは、(1)触媒粒子の表面の一部の領域が無機粒子で覆われており、その他の領域は触媒粒子の表面がむき出しになっているような形態、(2)触媒粒子の表面の一部を覆う無機粒子からなる領域と、触媒粒子の表面の他の部分を覆う樹脂からなる領域と、を有するような形態、(3)触媒粒子の表面の一部又は全部の領域が、樹脂と無機粒子との混合物からなる層で覆われているような形態、等のいずれの形態であってもよい。
「触媒粒子の表面の一部が、樹脂で覆われている形態」についても同様である。
【0112】
上述した各実施形態において、触媒粒子を被覆する層を設ける場合、被覆面積、層の厚さ、積層数等を増やすことで、触媒粒子からの触媒液の滲出速度等を減少させることができる。
【0113】
<<本発明の用途>>
本発明の触媒粒子は、攪拌機、モーター、ポンプ等の樹脂成型等に用いることができる。また、本発明の触媒粒子は、激しい撹拌状態が必要であり、従来のマイクロカプセル等を有する触媒粒子では潜在性を維持できないような製造工程における触媒として用いることができる。本発明の触媒粒子は、特に、金型中で硬化反応と賦形を同時に行う成形方式である反応射出成型方式(RIM方式)の成形加工において好適に使用できる。
【実施例
【0114】
<<<多孔質粒子を使用しない触媒粒子の作製方法>>>
<<実施例1>>
実施例1の触媒粒子は、下記のように作製した。
<触媒溶液の作製方法>
触媒であるUmicore M42(富士フイルム和光純薬(株))をガラスバイアル瓶に1質量部計量し、溶媒であるシクロヘキサン99質量部を加えて、ペイントシェーカーで10分間攪拌し、触媒が均一に溶解された1質量%の触媒溶液Aを得た。
【0115】
<触媒懸濁液の作製方法>
得られた触媒溶液Aをガラスバイアル瓶に1質量部計量し、イオン交換水を9質量部、無機粒子として1次粒子径が約2μmのMgO粒子を0.1質量部加えて、ペイントシェーカーで10分間攪拌し、触媒溶液が液滴状態で水中に懸濁された触媒懸濁液Bを得た。
【0116】
<懸濁粒子の作製方法>
得られた触媒懸濁液Bをガラスバイアル瓶に100質量部計量し、外殻形成用の硬化性樹脂であるジシクロペンタジエン1質量部を加え、ペイントシェーカーで10分間攪拌し、常温下で60分間静置し、触媒分散液を内包する懸濁粒子を得た。外殻形成用の硬化性樹脂を除く為、前記の懸濁粒子を含む全液を分液ロートに移し複数回水洗し、水に分散された懸濁粒子を得た。
【0117】
<懸濁粒子の脱水方法>
懸濁粒子の水分散液から水をスポイトで除き、十分量のイソプロピルアルコール(IPA)を加え、手でゆるやかに攪拌した。懸濁粒子のIPA分散液からIPAをスポイトで除き、十分量のIPAを加えて攪拌する洗浄作業を3回繰り返し、懸濁粒子を脱水し、平均粒子径が0.8mmの実施例1の触媒粒子を得た。得られた触媒粒子の外殻の厚みは、2.1μmであった。
触媒粒子の体積平均粒径は、レーザー回折法を用いたレーザー回折式粒子径分布測定装置(島津製作所製:SALD-2300)にて湿式法により測定した。
触媒粒子の外殻の厚みは、ミクロトームを用いて切断し、その断面を、走査型顕微鏡を用いて測定した。測定は、10個の触媒粒子について外殻の厚みを測定したものの平均値とした。
【0118】
<<実施例2及び3>>
実施例1の懸濁粒子の作製方法のジシクロペンタジエンの配合量を、実施例2は、50質量部、実施例3は75質量部とした以外は、実施例1と同様にして実施例2及び3の触媒粒子を得た。実施例2及び実施例3の触媒粒子の平均粒径は、0.8mmであった。また、実施例2の触媒粒子の外殻の厚みは、46μm、実施例3の触媒粒子の外殻の厚みは、78μmであった。
【0119】
<<比較例1>>
実施例1の製造方法のうち、触媒溶液の作製方法のみを行ったものを比較例1の触媒溶液とした。
【0120】
<<比較例2>>
実施例1の製造方法のうち、触媒溶液の作製方法と、触媒懸濁液の作製方法を行ったのち、氷結乾燥して得られた触媒粒子を比較例2の触媒粒子とした。比較例2の触媒粒子の平均粒径は、0.9mmであった。触媒粒子には外殻がされていないため測定していない。
【0121】
<<評価>>
<反応性評価>
図1に、評価用の注型加工用容器を示した。この成型容器には20cmのスリットから1cmのスリットが設けられており、各実施例及び各比較例の触媒粒子を含む、硬化性樹脂液(反応液)を毎分2Lの速度で充填した際の硬化性を評価した。硬化性の評価は以下の観点で目視にて確認した。
(1)成型容器内(20cmスリット→1cmスリット)にムラなく、反応液が充填できるか。
(2)反応液が充填された成型容器の下面から面ヒーターで加熱することで樹脂包埋された触媒粒子から触媒が硬化性樹脂に拡散し、速やかにかつムラなく反応が進行するか確認した。
判定は基準としては、下記とした。結果を表1に示した。
○:速やかに硬化反応が進行し、成形品の成形状態も良好である。
△:若干の成形ムラがあるものの、実用上問題ない成形品が得られた。
×:硬化反応不良が見られ、良好な成形品が得られなかった。
【0122】
表1の結果から本発明の触媒粒子を用いた硬化性樹脂液は、十分な潜在性を示し、均一な成形物を作製することが可能であることが理解できる。
【0123】
【表1】
【0124】
<<<多孔質粒子を使用した触媒粒子の作製方法>>>
以下、多孔質粒子を使用した触媒粒子の作製方法について説明する。なお、メソ孔とは径が2nm~50nmの孔を示し、マクロ孔とは径が50nm以上の孔を示す。
<<実施例4>>
実施例4の触媒粒子は、下記のように作製した。
【0125】
<触媒溶液の作製方法>
触媒であるUmicore M42(富士フイルム和光純薬(株))をガラスバイアル瓶に1質量部計量し、溶媒であるシクロヘキサン99質量部を加えて、ペイントシェーカーで10分間攪拌し、触媒が均一に溶解された1質量%の触媒溶液Aを得た。
【0126】
<触媒粒子Cの作製方法>
触媒溶液Aをガラスバイアル瓶に10部計量し、平均粒子径35um、BET比表面積310m/g、全細孔容量1.7ml/g、メソ孔を有するシリカ多孔質粒子を10部加え、ペイントシェーカーで10分撹拌し、触媒溶液を含む触媒粒子Cを得た。この触媒粒子は、多孔質粒子と、多孔質粒子が有する孔内に保持された触媒液と、を含む触媒粒子である。
【0127】
<反応液の作製方法>
ジシクロペンタジエンをポリ瓶に100部計量し、実施例4の触媒粒子Cを5部加え、ペイントシェーカーで2分撹拌し、反応性評価用の反応液を得た。
【0128】
(発熱反応の開始時間)
前記ポリ瓶中で作製した反応液が、発熱を伴う反応を開始するまでの時間を調べた。実施例4の触媒粒子を用いた反応液は、発熱を伴う反応の開始時間が25分であった。
【0129】
<<実施例5>>
実施例5の触媒粒子は、下記のように作製した。
【0130】
<触媒溶液の作製方法>
触媒であるUmicore M42(富士フイルム和光純薬(株))をガラスバイアル瓶に1質量部計量し、溶媒であるシクロヘキサン99質量部を加えて、ペイントシェーカーで10分間攪拌し、触媒が均一に溶解された1質量%の触媒溶液Aを得た。
【0131】
<触媒粒子Cの作製方法>
触媒溶液Aをガラスバイアル瓶に10部計量し、平均粒子径35um、BET比表面積310m/g、全細孔容量1.7ml/g、メソ孔を有するシリカ多孔質粒子を10部加え、平均粒子径2um、融点61℃のワックス粉砕粒子を5部加え、ペイントシェーカーで10分撹拌し、触媒溶液、ワックス粒子を含む触媒粒子Cを得た。
【0132】
<触媒粒子Cの外殻形成>
実施例5の触媒粒子Cの表面に、電気加熱あるいはプラズマ加熱によって発生させた熱風を当てることで粒子表面の一部を溶融あるいは軟化変形させることで触媒粒子表面の一部または全面を覆った。この触媒粒子は、多孔質粒子と、多孔質粒子が有する孔内に保持された触媒液とを含み、表面の少なくとも一部が樹脂で覆われている触媒粒子である。
【0133】
<反応液の作製方法>
ジシクロペンタジエンをポリ瓶に100部計量し、実施例5の触媒粒子Cを5部加え、ペイントシェーカーで2分撹拌し、反応性評価用の反応液を得た。
【0134】
(発熱反応の開始時間)
前記ポリ瓶中で作製した反応液が、発熱を伴う反応を開始するまでの時間を調べた。実施例5の触媒粒子を用いた反応液は、発熱を伴う反応の開始時間が90分であった。
【0135】
<<実施例6>>
実施例6の触媒粒子は、下記のように作製した。
【0136】
<触媒溶液の作製方法>
触媒であるUmicore M42(富士フイルム和光純薬(株))をガラスバイアル瓶に1質量部計量し、溶媒であるシクロヘキサン99質量部を加えて、ペイントシェーカーで10分間攪拌し、触媒が均一に溶解された1質量%の触媒溶液Aを得た。
【0137】
<触媒粒子Cの作製方法>
触媒溶液Aをガラスバイアル瓶に10部計量し、平均粒子径35um、BET比表面積310m/g、全細孔容量1.7ml/g、メソ孔を有するシリカ多孔質粒子を10部加え、ペイントシェーカーで10分撹拌し、触媒溶液を含む触媒粒子Cを得た。
【0138】
<触媒粒子Cの外殻形成>
実施例6の触媒粒子Cの表面に、電気加熱あるいはプラズマ加熱によって発生させた熱風を当てた。この触媒粒子は、多孔質粒子と、多孔質粒子が有する孔内に保持された触媒液と、を含む触媒粒子である。
【0139】
<反応液の作製方法>
ジシクロペンタジエンをポリ瓶に100部計量し、実施例6の触媒粒子Cを5部加え、ペイントシェーカーで2分撹拌し、反応性評価用の反応液を得た。
【0140】
(発熱反応の開始時間)
前記ポリ瓶中で作製した反応液が、発熱を伴う反応を開始するまでの時間を調べた。実施例6の触媒粒子を用いた反応液は、発熱を伴う反応の開始時間が60分であった。
【0141】
<<実施例7>>
実施例7の触媒粒子は、下記のように作製した。
【0142】
<触媒溶液の作製方法>
触媒であるUmicore M42(富士フイルム和光純薬(株))をガラスバイアル瓶に1質量部計量し、溶媒であるシクロヘキサン99質量部を加えて、ペイントシェーカーで10分間攪拌し、触媒が均一に溶解された1質量%の触媒溶液Aを得た。
【0143】
<触媒粒子Cの作製方法>
触媒溶液Aをガラスバイアル瓶に10部計量し、平均粒子径35um、BET比表面積310m/g、全細孔容量1.7ml/g、メソ孔を有するシリカ多孔質粒子を10部加え、平均粒子径0.1umのMgO粒子を3部加え、ペイントシェーカーで10分撹拌し、触媒溶液ならびにMgO粒子を含む触媒粒子Cを得た。
【0144】
<触媒粒子Cの外殻形成>
実施例7の触媒粒子Cの表面に、電気加熱あるいはプラズマ加熱によって発生させた熱風を当てた。この触媒粒子は、多孔質粒子と、多孔質粒子が有する孔内に保持された触媒液と、を含み、表面の少なくとも一部が無機粒子で覆われている(即ち、無機粒子が表面に付着している)触媒粒子である。
【0145】
<反応液の作製方法>
ジシクロペンタジエンをポリ瓶に100部計量し、実施例7の触媒粒子Cを5部加え、ペイントシェーカーで2分撹拌し、反応性評価用の反応液を得た。
【0146】
(発熱反応の開始時間)
前記ポリ瓶中で作製した反応液が、発熱を伴う反応を開始するまでの時間を調べた。実施例7の触媒粒子を用いた反応液は、発熱を伴う反応の開始時間が90分であった。
【0147】
<<実施例8>>
実施例8の触媒粒子は、下記のように作製した。
【0148】
<触媒溶液の作製方法>
触媒であるUmicore M42(富士フイルム和光純薬(株))をガラスバイアル瓶に1質量部計量し、溶媒であるシクロヘキサン99質量部を加えて、ペイントシェーカーで10分間攪拌し、触媒が均一に溶解された1質量%の触媒溶液Aを得た。
【0149】
<触媒粒子Cの作製方法>
触媒溶液Aをガラスバイアル瓶に10部計量し、平均粒子径35um、BET比表面積310m/g、全細孔容量1.7ml/g、メソ孔を有するシリカ多孔質粒子を10部加え、平均粒子径0.1umのMgO粒子を3部加え、平均粒子径2um、融点61℃のワックス粉砕粒子を5部加え、ペイントシェーカーで10分撹拌し、触媒溶液、MgO粒子ならびにワックス粒子を含む触媒粒子Cを得た。
【0150】
<触媒粒子Cの外殻形成>
実施例8の触媒粒子Cの表面に、電気加熱あるいはプラズマ加熱によって発生させた熱風を当てることで粒子表面の一部を溶融あるいは軟化変形させることで触媒粒子表面の一部または全面を覆った。この触媒粒子は、多孔質粒子と、多孔質粒子が有する孔内に保持された触媒液と、を含み、表面の少なくとも一部が無機粒子及び樹脂(多孔質粒子由来の樹脂)で覆われている(即ち、無機粒子及び樹脂が表面に付着している)触媒粒子である。
【0151】
<反応液の作製方法>
ジシクロペンタジエンをポリ瓶に100部計量し、実施例8の触媒粒子Cを5部加え、ペイントシェーカーで2分撹拌し、反応性評価用の反応液を得た。
【0152】
(発熱反応の開始時間)
前記ポリ瓶中で作製した反応液が、発熱を伴う反応を開始するまでの時間を調べた。実施例8の触媒粒子を用いた反応液は、加熱を伴う反応の開始時間が120分であった。
【0153】
<<実施例9>>
実施例9の触媒粒子は、下記のように作製した。
【0154】
<触媒溶液の作製方法>
触媒であるUmicore M42(富士フイルム和光純薬(株))をガラスバイアル瓶に1質量部計量し、溶媒であるシクロヘキサン99質量部を加えて、ペイントシェーカーで10分間攪拌し、触媒が均一に溶解された1質量%の触媒溶液Aを得た。
【0155】
<触媒粒子Cの作製方法>
触媒溶液Aをガラスバイアル瓶に10部計量し、平均粒子径10um、BET比表面積90m/g、全細孔容量1.5ml/g、メソ孔を有するアクリル多孔質粒子を10部加え、ペイントシェーカーで10分撹拌し、触媒溶液を含む触媒粒子Cを得た。この触媒粒子は、多孔質粒子と、多孔質粒子が有する孔内に保持された触媒液と、を含む触媒粒子である。
【0156】
<反応液の作製方法>
ジシクロペンタジエンをポリ瓶に100部計量し、実施例9の触媒粒子Cを5部加え、ペイントシェーカーで2分撹拌し、反応性評価用の反応液を得た。
【0157】
(発熱反応の開始時間)
前記ポリ瓶中で作製した反応液が、発熱を伴う反応を開始するまでの時間を調べた。実施例9の触媒粒子を用いた反応液は、発熱を伴う反応の開始時間が25分であった。
【0158】
<<実施例10>>
実施例10の触媒粒子は、下記のように作製した。
【0159】
<触媒溶液の作製方法>
触媒であるUmicore M42(富士フイルム和光純薬(株))をガラスバイアル瓶に1質量部計量し、溶媒であるシクロヘキサン99質量部を加えて、ペイントシェーカーで10分間攪拌し、触媒が均一に溶解された1質量%の触媒溶液Aを得た。
【0160】
<触媒粒子Cの作製方法>
触媒溶液Aをガラスバイアル瓶に10部計量し、平均粒子径10um、BET比表面積90m/g、全細孔容量1.5ml/g、メソ孔を有するアクリル多孔質粒子を10部加え、ペイントシェーカーで10分撹拌し、触媒溶液を含む触媒粒子Cを得た。
【0161】
<触媒粒子Cの外殻形成>
実施例10の触媒粒子Cの表面に、電気加熱あるいはプラズマ加熱によって発生させた熱風を当てることで粒子表面の一部を溶融あるいは軟化変形させることで触媒粒子表面の一部または全面を覆った。この触媒粒子は、多孔質粒子と、多孔質粒子が有する孔内に保持された触媒液と、を含み、表面の少なくとも一部が樹脂(多孔質粒子由来の樹脂)で覆われている触媒粒子である。
【0162】
<反応液の作製方法>
ジシクロペンタジエンをポリ瓶に100部計量し、実施例10の触媒粒子Cを5部加え、ペイントシェーカーで2分撹拌し、反応性評価用の反応液を得た。
【0163】
(発熱反応の開始時間)
前記ポリ瓶中で作製した反応液が、発熱を伴う反応を開始するまでの時間を調べた。実施例10の触媒粒子を用いた反応液は、発熱を伴う反応の開始時間が75分であった。
【0164】
<<<実施例11>>
実施例11の触媒粒子は、下記のように作製した。
【0165】
<触媒溶液の作製方法>
触媒であるUmicore M42(富士フイルム和光純薬(株))をガラスバイアル瓶に1質量部計量し、溶媒であるシクロヘキサン99質量部を加えて、ペイントシェーカーで10分間攪拌し、触媒が均一に溶解された1質量%の触媒溶液Aを得た。
【0166】
<触媒粒子Cの作製方法>
触媒溶液Aをガラスバイアル瓶に10部計量し、平均粒子径10um、BET比表面積90m/g、全細孔容量1.5ml/g、メソ孔を有するアクリル多孔質粒子を10部加え、平均粒子径0.1umのMgO粒子を3部加え、ペイントシェーカーで10分撹拌し、触媒溶液ならびにMgO粒子を含む触媒粒子Cを得た。
【0167】
<触媒粒子Cの外殻形成>
実施例11の触媒粒子Cの表面に、電気加熱あるいはプラズマ加熱によって発生させた熱風を当てることで粒子表面の一部を溶融あるいは軟化変形させることで触媒粒子表面の一部または全面を覆った。この触媒粒子は、多孔質粒子と、多孔質粒子が有する孔内に保持された触媒液と、を含み、表面の少なくとも一部が無機粒子及び樹脂(多孔質粒子由来の樹脂)で覆われている(即ち、無機粒子及び樹脂が表面に付着した)触媒粒子である。
【0168】
<反応液の作製方法>
ジシクロペンタジエンをポリ瓶に100部計量し、実施例11の触媒粒子Cを5部加え、ペイントシェーカーで2分撹拌し、反応性評価用の反応液を得た。
【0169】
(発熱反応の開始時間)
前記ポリ瓶中で作製した反応液が、発熱を伴う反応を開始するまでの時間を調べた。実施例11の触媒粒子を用いた反応液は、発熱を伴う反応の開始時間が110分であった。
【0170】
<<実施例12>>
実施例12の触媒粒子は、下記のように作製した。
【0171】
<触媒溶液の作製方法>
触媒であるUmicore M42(富士フイルム和光純薬(株))をガラスバイアル瓶に1質量部計量し、溶媒であるシクロヘキサン99質量部を加えて、ペイントシェーカーで10分間攪拌し、触媒が均一に溶解された1質量%の触媒溶液Aを得た。
【0172】
<触媒粒子Cの作製方法>
触媒溶液Aをガラスバイアル瓶に10部計量し、平均粒子径10um、BET比表面積90m/g、全細孔容量1.5ml/g、メソ孔を有するアクリル多孔質粒子を10部加え、平均粒子径0.1umのMgO粒子を3部加え、平均粒子径2um、融点61℃のワックス粉砕粒子を5部加え、ペイントシェーカーで10分撹拌し、触媒溶液、MgO粒子ならびにワックス粒子を含む触媒粒子Cを得た。
【0173】
<触媒粒子Cの外殻形成>
実施例12の触媒粒子Cの表面に、電気加熱あるいはプラズマ加熱によって発生させた熱風を当てることで粒子表面の一部を溶融あるいは軟化変形させることで触媒粒子表面の一部または全面を覆った。この触媒粒子は、多孔質粒子と、多孔質粒子が有する孔内に保持された触媒液と、を含み、表面の少なくとも一部が樹脂及び無機粒子で覆われている(即ち、樹脂及び無機粒子が表面に付着している)触媒粒子である。
【0174】
<反応液の作製方法>
ジシクロペンタジエンをポリ瓶に100部計量し、実施例12の触媒粒子Cを5部加え、ペイントシェーカーで2分撹拌し、反応性評価用の反応液を得た。
【0175】
(発熱反応の開始時間)
前記ポリ瓶中で作製した反応液が、発熱を伴う反応を開始するまでの時間を調べた。実施例12の触媒粒子を用いた反応液は、加熱を伴う反応の開始時間が150分であった。
【0176】
<<実施例13>>
実施例13の触媒粒子は、下記のように作製した。
【0177】
<触媒溶液の作製方法>
触媒であるUmicore M42(富士フイルム和光純薬(株))をガラスバイアル瓶に1質量部計量し、溶媒であるシクロヘキサン99質量部を加えて、ペイントシェーカーで10分間攪拌し、触媒が均一に溶解された1質量%の触媒溶液Aを得た。
【0178】
<触媒粒子Cの作製方法>
触媒溶液Aをガラスバイアル瓶に10部計量し、平均粒子径5um、BET比表面積300m/g、全細孔容量0.4ml/g、マクロ孔を有するカーボン多孔質粒子を10部加え、ペイントシェーカーで10分撹拌し、触媒溶液を含む触媒粒子Cを得た。この触媒粒子は、多孔質粒子と、多孔質粒子が有する孔内に保持された触媒液と、を含む触媒粒子である。
【0179】
<反応液の作製方法>
ジシクロペンタジエンをポリ瓶に100部計量し、実施例13の触媒粒子Cを5部加え、ペイントシェーカーで2分撹拌し、反応性評価用の反応液を得た。
【0180】
(発熱反応の開始時間)
前記ポリ瓶中で作製した反応液が、発熱を伴う反応を開始するまでの時間を調べた。実施例13の触媒粒子を用いた反応液は、発熱を伴う反応の開始時間が25分であった。
【0181】
<<実施例14>>
実施例14の触媒粒子は、下記のように作製した。
【0182】
<触媒溶液の作製方法>
触媒であるUmicore M42(富士フイルム和光純薬(株))をガラスバイアル瓶に1質量部計量し、溶媒であるシクロヘキサン99質量部を加えて、ペイントシェーカーで10分間攪拌し、触媒が均一に溶解された1質量%の触媒溶液Aを得た。
【0183】
<触媒粒子Cの作製方法>
触媒溶液Aをガラスバイアル瓶に10部計量し、平均粒子径5um、BET比表面積300m/g、全細孔容量0.4ml/g、マクロ孔を有するカーボン多孔質粒子を10部加え、ペイントシェーカーで10分撹拌し、触媒溶液を含む触媒粒子Cを得た。
【0184】
<触媒粒子Cの外殻形成>
実施例14の触媒粒子Cの表面に、電気加熱あるいはプラズマ加熱によって発生させた熱風を当てた。この触媒粒子は、多孔質粒子と、多孔質粒子が有する孔内に保持された触媒液と、を含む触媒粒子である。
【0185】
<反応液の作製方法>
ジシクロペンタジエンをポリ瓶に100部計量し、実施例14の触媒粒子Cを5部加え、ペイントシェーカーで2分撹拌し、反応性評価用の反応液を得た。
【0186】
(発熱反応の開始時間)
前記ポリ瓶中で作製した反応液が、発熱を伴う反応を開始するまでの時間を調べた。実施例14の触媒粒子を用いた反応液は、発熱を伴う反応の開始時間が60分であった。
【0187】
<<実施例15>>
実施例15の触媒粒子は、下記のように作製した。
<触媒溶液の作製方法>
触媒であるUmicore M42(富士フイルム和光純薬(株))をガラスバイアル瓶に1質量部計量し、溶媒であるシクロヘキサン99質量部を加えて、ペイントシェーカーで10分間攪拌し、触媒が均一に溶解された1質量%の触媒溶液Aを得た。
【0188】
<触媒粒子Cの作製方法>
触媒溶液Aをガラスバイアル瓶に10部計量し、平均粒子径5um、BET比表面積300m/g、全細孔容量0.4ml/g、マクロ孔を有するカーボン多孔質粒子を10部加え、平均粒子径0.1umのMgO粒子を3部加え、ペイントシェーカーで10分撹拌し、触媒溶液ならびにMgO粒子を含む触媒粒子Cを得た。
【0189】
<触媒粒子Cの外殻形成>
実施例15の触媒粒子Cの表面に、電気加熱あるいはプラズマ加熱によって発生させた熱風を当てた。この触媒粒子は、多孔質粒子と、多孔質粒子が有する孔内に保持された触媒液と、を含み、表面の少なくとも一部が無機粒子で覆われている(即ち、無機粒子が表面に付着している)触媒粒子である。
【0190】
<反応液の作製方法>
ジシクロペンタジエンをポリ瓶に100部計量し、実施例15の触媒粒子Cを5部加え、ペイントシェーカーで2分撹拌し、反応性評価用の反応液を得た。
【0191】
(発熱反応の開始時間)
前記ポリ瓶中で作製した反応液が、発熱を伴う反応を開始するまでの時間を調べた。実施例15の触媒粒子を用いた反応液は、発熱を伴う反応の開始時間が90分であった。
【0192】
<<実施例16>>
実施例16の触媒粒子は、下記のように作製した。
【0193】
<触媒溶液の作製方法>
触媒であるUmicore M42(富士フイルム和光純薬(株))をガラスバイアル瓶に1質量部計量し、溶媒であるシクロヘキサン99質量部を加えて、ペイントシェーカーで10分間攪拌し、触媒が均一に溶解された1質量%の触媒溶液Aを得た。
【0194】
<触媒粒子Cの作製方法>
触媒溶液Aをガラスバイアル瓶に10部計量し、平均粒子径5um、BET比表面積300m/g、全細孔容量0.4ml/g、マクロ孔を有するカーボン多孔質粒子を10部加え、平均粒子径0.1umのMgO粒子を3部加え、平均粒子径2um、融点61℃のワックス粉砕粒子を5部加え、ペイントシェーカーで10分撹拌し、触媒溶液、MgO粒子ならびにワックス粒子を含む触媒粒子Cを得た。
【0195】
<触媒粒子Cの外殻形成>
実施例16の触媒粒子Cの表面に、電気加熱あるいはプラズマ加熱によって発生させた熱風を当てることで粒子表面の一部を溶融あるいは軟化変形させることで触媒粒子表面の一部または全面を覆った。この触媒粒子は、多孔質粒子と、多孔質粒子が有する孔内に保持された触媒液と、を含み、表面の少なくとも一部が樹脂及び無機粒子で覆われている(即ち、樹脂及び無機粒子が表面に付着している)触媒粒子である。
【0196】
<反応液の作製方法>
ジシクロペンタジエンをポリ瓶に100部計量し、実施例16の触媒粒子Cを5部加え、ペイントシェーカーで2分撹拌し、反応性評価用の反応液を得た。
【0197】
(発熱反応の開始時間)
前記ポリ瓶中で作製した反応液が、発熱を伴う反応を開始するまでの時間を調べた。実施例16の触媒粒子を用いた反応液は、加熱を伴う反応の開始時間が120分であった。
【0198】
<<実施例17>>
実施例17の触媒粒子は、下記のように作製した。
【0199】
<触媒溶液の作製方法>
触媒であるUmicore M42(富士フイルム和光純薬(株))をガラスバイアル瓶に1質量部計量し、溶媒であるシクロヘキサン99質量部を加えて、ペイントシェーカーで10分間攪拌し、触媒が均一に溶解された1質量%の触媒溶液Aを得た。
【0200】
<触媒粒子Cの作製方法>
触媒溶液Aをガラスバイアル瓶に10部計量し、平均粒子径5um、BET比表面積750m/g、全細孔容量1.8ml/g、メソ孔を有するカーボン多孔質粒子を10部加え、ペイントシェーカーで10分撹拌し、触媒溶液を含む触媒粒子Cを得た。この触媒粒子は、多孔質粒子と、多孔質粒子が有する孔内に保持された触媒液と、を含む触媒粒子である。
【0201】
<反応液の作製方法>
ジシクロペンタジエンをポリ瓶に100部計量し、実施例17の触媒粒子Cを5部加え、ペイントシェーカーで2分撹拌し、反応性評価用の反応液を得た。
【0202】
(発熱反応の開始時間)
前記ポリ瓶中で作製した反応液が、発熱を伴う反応を開始するまでの時間を調べた。実施例17の触媒粒子を用いた反応液は、発熱を伴う反応の開始時間が9分であった。
【0203】
<<実施例18>>
実施例18の触媒粒子は、下記のように作製した。
【0204】
<触媒溶液の作製方法>
触媒であるUmicore M42(富士フイルム和光純薬(株))をガラスバイアル瓶に1質量部計量し、溶媒であるシクロヘキサン99質量部を加えて、ペイントシェーカーで10分間攪拌し、触媒が均一に溶解された1質量%の触媒溶液Aを得た。
【0205】
<触媒粒子Cの作製方法>
触媒溶液Aをガラスバイアル瓶に10部計量し、平均粒子径5um、BET比表面積1,200m/g、全細孔容量2.2ml/g、メソ孔を有するカーボン多孔質粒子を10部加え、ペイントシェーカーで10分撹拌し、触媒溶液を含む触媒粒子Cを得た。この触媒粒子は、多孔質粒子と、多孔質粒子が有する孔内に保持された触媒液と、を含む触媒粒子である。
【0206】
<反応液の作製方法>
ジシクロペンタジエンをポリ瓶に100部計量し、実施例18の触媒粒子Cを5部加え、ペイントシェーカーで2分撹拌し、反応性評価用の反応液を得た。
【0207】
(発熱反応の開始時間)
前記ポリ瓶中で作製した反応液が、発熱を伴う反応を開始するまでの時間を調べた。実施例18の触媒粒子を用いた反応液は、発熱を伴う反応の開始時間が7分であった。
【0208】
<<比較例4>>
比較例4の触媒粒子は、下記のように作製した。
【0209】
<触媒溶液の作製方法>
触媒であるUmicore M42(富士フイルム和光純薬(株))をガラスバイアル瓶に1質量部計量し、溶媒であるシクロヘキサン99質量部を加えて、ペイントシェーカーで10分間攪拌し、触媒が均一に溶解された1質量%の触媒溶液Aを得た。
【0210】
<触媒粒子Cの作製方法>
触媒溶液Aをガラスバイアル瓶に10部計量し、平均粒子径1um、BET比表面積5m/g、のシリカ粒子を10部加え、ペイントシェーカーで10分撹拌し、触媒溶液を含む触媒粒子Cを得た。
【0211】
<反応液の作製方法>
ジシクロペンタジエンをポリ瓶に100部計量し、触媒液Aを5部、比較例4のシリカ粒子を5部加え、ペイントシェーカーで2分撹拌し、反応性評価用の反応液を得た。
【0212】
(発熱反応の開始時間)
前記ポリ瓶中で作製した反応液が、発熱を伴う反応を開始するまでの時間を調べた。比較例4の触媒粒子を用いた反応液は、発熱を伴う反応の開始時間は30分であった。
【0213】
<<比較例5>>
比較例5の触媒粒子は、下記のように作製した。
【0214】
<触媒溶液の作製方法>
触媒であるUmicore M42(富士フイルム和光純薬(株))をガラスバイアル瓶に1質量部計量し、溶媒であるシクロヘキサン99質量部を加えて、ペイントシェーカーで10分間攪拌し、触媒が均一に溶解された1質量%の触媒溶液Aを得た。
【0215】
<触媒粒子Cの作製方法>
触媒溶液Aをガラスバイアル瓶に10部計量し、平均粒子径5umのアクリル粒子を10部加え、ペイントシェーカーで10分撹拌し、触媒溶液を含む触媒粒子Cを得た。
【0216】
<反応液の作製方法>
ジシクロペンタジエンをポリ瓶に100部計量し、触媒液Aを5部、比較例5のアクリル粒子を5部加え、ペイントシェーカーで2分撹拌し、反応性評価用の反応液を得た。
【0217】
(発熱反応の開始時間)
前記ポリ瓶中で作製した反応液が、発熱を伴う反応を開始するまでの時間を調べた。比較例5の触媒粒子を用いた反応液は、発熱を伴う反応の開始時間は30分であった。
【0218】
実施例4-18および比較例1、比較例4-5について、製造条件および評価結果を表2、表3にまとめた。
【0219】
【表2】
【0220】
【表3】
【0221】
<<実施例19>>
実施例19の触媒粒子は、下記のように作製した。
【0222】
<触媒分散液の作製方法>
触媒である白金は、平均粒子径5nmのものを使用し、これをガラスバイアル瓶に1質量部計量し、分散媒である1,3,5-トリメチルベンゼン99質量部を加えて、ペイントシェーカーで10分間攪拌し、触媒が均一に分散された1質量%の触媒分散液Aを得た。
【0223】
<触媒粒子Cの作製方法>
触媒分散液Aをガラスバイアル瓶に10部計量し、平均粒子径35um、BET比表面積310m/g、全細孔容量1.7ml/g、メソ孔を有するシリカ多孔質粒子を10部加え、平均粒子径0.1umのMgO粒子を3部加え、平均粒子径2um、融点61℃のワックス粉砕粒子を5部加え、ペイントシェーカーで10分撹拌し、触媒分散液、MgO粒子ならびにワックス粒子を含む触媒粒子Cを得た。
【0224】
<触媒粒子Cの外殻形成>
実施例19の触媒粒子Cの表面に、電気加熱あるいはプラズマ加熱によって発生させた熱風を当てることで粒子表面の一部を溶融あるいは軟化変形させることで触媒粒子表面の一部または全面を覆った。この触媒粒子は、多孔質粒子と、多孔質粒子が有する孔内に保持された触媒液と、を含み、表面の少なくとも一部が樹脂及び無機粒子で覆われている(即ち、樹脂及び無機粒子が表面に付着している)触媒粒子である。
【0225】
<反応液の作製方法>
付加型シリコーン主剤(旭化成ワッカーシリコーン製、ELASTISIL M4600)をポリ瓶に100部計量し、実施例19の触媒粒子Cを5部加え、ペイントシェーカーで2分撹拌し、反応性評価用の反応液を得た。
【0226】
<<比較例6>>
比較例6の触媒分散液は、下記のように作製した。
【0227】
<触媒分散液の作製方法>
触媒である白金は、平均粒子径5nmのものを使用し、これをガラスバイアル瓶に1質量部計量し、分散媒である1,3,5-トリメチルベンゼン99質量部を加えて、ペイントシェーカーで10分間攪拌し、触媒が均一に分散された1質量%の触媒分散液Aを得た。
【0228】
<反応液の作製方法>
付加型シリコーン主剤(旭化成ワッカーシリコーン製、ELASTISIL M4600)をポリ瓶に100部計量し、比較例6の触媒分散液Aを5部加え、ペイントシェーカーで2分撹拌し、反応性評価用の反応液を得た。
【0229】
(反応性評価)
実施例19及び比較例6の反応性は以下の方法により確認した。実施例19及び比較例6の反応液を50℃に加温し、図1に示す評価用の注型加工用容器に毎分2Lの速度で充填した。その後、130℃となるように下面から面ヒーターで加熱し、硬化性を評価した。硬化性の評価は以下の観点で目視にて確認した。
(1)成型容器内(20cmスリット→1cmスリット)にムラなく、反応液が充填できるか。
(2)反応液が充填された成型容器の下面から面ヒーターで加熱することで樹脂包埋された触媒粒子から触媒が硬化性樹脂に拡散し、速やかにかつムラなく反応が進行するか確認した。
判定は基準としては、下記とした。結果を表4に示した。
○:速やかに硬化反応が進行し、成形品の成形状態も良好である。
×:硬化反応にムラがあり、均質な成形品が得られなかった。
【0230】
実施例19および比較例6について、製造条件および評価結果を表4にまとめた。
【0231】
【表4】
【0232】
<<実施例20>>
実施例20の触媒粒子は、下記のように作製した。
【0233】
<触媒溶液の作製方法>
触媒であるUmicore M42(富士フイルム和光純薬(株))をガラスバイアル瓶に1質量部計量し、溶媒であるシクロヘキサン99質量部を加えて、ペイントシェーカーで10分間攪拌し、触媒が均一に溶解された1質量%の触媒溶液Aを得た。
【0234】
<樹脂粒子Aの作製方法>
触媒溶液Aをガラスバイアル瓶に10部計量し、融点61℃のパラフィンワックスを熱溶融したものを10部計量し、70℃に加温した状態でペイントシェーカーで1分撹拌し、ワックスが固化するまで十分冷却した。その後、窒素雰囲気下で50℃で12時間放置し、溶剤であるシクロヘキサンを十分気化させた後に、平均粒子径が20umとなるように粉砕し、ワックス中に触媒を含む樹脂粒子Aを得た。
【0235】
<反応液の作製方法>
ジシクロペンタジエンをポリ瓶に100部計量し、実施例20の樹脂粒子Aを10部加え、ペイントシェーカーで2分撹拌し、反応性評価用の反応液を得た。
【0236】
<樹脂粒子Aの外殻形成>
実施例20の樹脂粒子Aの表面に、電気加熱あるいはプラズマ加熱によって発生させた熱風を当てることで粒子表面の一部を溶融あるいは軟化変形させることで触媒粒子表面の一部または全面を覆った。この触媒粒子は、樹脂粒子と、樹脂粒子に内包される触媒と、を含む触媒粒子である。
【0237】
(発熱反応の開始時間)
前記ポリ瓶中で作製した反応液が、発熱を伴う反応を開始するまでの時間を調べた。実施例20の触媒粒子を用いた反応液は、発熱を伴う反応の開始時間が120分であった。
【0238】
実施例20について、製造条件および評価結果を表5にまとめた。
【0239】
【表5】
【0240】
<<<実施例21>>
実施例21の触媒粒子は、下記のように作製した。
【0241】
<触媒溶液の作製方法>
触媒であるUmicore M42(富士フイルム和光純薬(株))をガラスバイアル瓶に1質量部計量し、溶媒であるシクロヘキサン99質量部を加えて、ペイントシェーカーで10分間攪拌し、触媒が均一に溶解された1質量%の触媒溶液Aを得た。
【0242】
<触媒粒子Cの作製方法>
触媒溶液Aをガラスバイアル瓶に10部計量し、平均粒子径10um、BET比表面積90m/g、全細孔容量1.5ml/g、メソ孔を有するアクリル多孔質粒子を10部加え、平均粒子径0.1umのCaCO粒子を3部加え、ペイントシェーカーで10分撹拌し、触媒溶液ならびにCaCO粒子を含む触媒粒子Cを得た。
【0243】
<触媒粒子Cの外殻形成>
実施例21の触媒粒子Cの表面に、電気加熱あるいはプラズマ加熱によって発生させた熱風を当てることで粒子表面の一部を溶融あるいは軟化変形させることで触媒粒子表面の一部または全面を覆った。この触媒粒子は、多孔質粒子と、多孔質粒子が有する孔内に保持された触媒液と、を含み、表面の少なくとも一部が無機粒子及び樹脂で覆われている(即ち、無機粒子及び樹脂が表面に付着している)触媒粒子である。
【0244】
<反応液の作製方法>
ジシクロペンタジエンをポリ瓶に100部計量し、実施例21の触媒粒子Cを5部加え、ペイントシェーカーで2分撹拌し、反応性評価用の反応液を得た。
【0245】
(発熱反応の開始時間)
前記ポリ瓶中で作製した反応液が、発熱を伴う反応を開始するまでの時間を調べた。実施例21の触媒粒子を用いた反応液は、発熱を伴う反応の開始時間が100分であった。
【0246】
<<<実施例22>>
実施例22の触媒粒子は、下記のように作製した。
【0247】
<触媒溶液の作製方法>
触媒であるUmicore M42(富士フイルム和光純薬(株))をガラスバイアル瓶に1質量部計量し、溶媒であるシクロヘキサン99質量部を加えて、ペイントシェーカーで10分間攪拌し、触媒が均一に溶解された1質量%の触媒溶液Aを得た。
【0248】
<触媒粒子Cの作製方法>
触媒溶液Aをガラスバイアル瓶に10部計量し、平均粒子径10um、BET比表面積90m/g、全細孔容量1.5ml/g、メソ孔を有するアクリル多孔質粒子を10部加え、平均粒子径0.1umのAl粒子を3部加え、ペイントシェーカーで10分撹拌し、触媒溶液ならびにAl粒子を含む触媒粒子Cを得た。
【0249】
<触媒粒子Cの外殻形成>
実施例22の触媒粒子Cの表面に、電気加熱あるいはプラズマ加熱によって発生させた熱風を当てることで粒子表面の一部を溶融あるいは軟化変形させることで触媒粒子表面の一部または全面を覆った。この触媒粒子は、多孔質粒子と、多孔質粒子が有する孔内に保持された触媒液と、を含み、表面の少なくとも一部が無機粒子及び樹脂で覆われている(即ち、無機粒子及び樹脂が表面に付着している)触媒粒子である。
【0250】
<反応液の作製方法>
ジシクロペンタジエンをポリ瓶に100部計量し、実施例22の触媒粒子Cを5部加え、ペイントシェーカーで2分撹拌し、反応性評価用の反応液を得た。
【0251】
(発熱反応の開始時間)
前記ポリ瓶中で作製した反応液が、発熱を伴う反応を開始するまでの時間を調べた。実施例22の触媒粒子を用いた反応液は、発熱を伴う反応の開始時間が95分であった。
【0252】
<<実施例23>>
実施例23の触媒粒子は、下記のように作製した。
【0253】
<触媒溶液の作製方法>
触媒であるUmicore M42(富士フイルム和光純薬(株))をガラスバイアル瓶に1質量部計量し、溶媒であるシクロヘキサン99質量部を加えて、ペイントシェーカーで10分間攪拌し、触媒が均一に溶解された1質量%の触媒溶液Aを得た。
【0254】
<触媒粒子Cの作製方法>
触媒溶液Aをガラスバイアル瓶に10部計量し、平均粒子径10um、BET比表面積90m/g、全細孔容量1.5ml/g、メソ孔を有するアクリル多孔質粒子を10部加え、ペイントシェーカーで10分撹拌し、触媒溶液を含む触媒粒子Cを得た。
【0255】
<触媒粒子Cの外殻形成>
実施例23の触媒粒子Cの表面に、電気加熱あるいはプラズマ加熱によって発生させた熱風を当てることで粒子表面の一部を溶融あるいは軟化変形させることで触媒粒子表面の一部または全面を覆った。この触媒粒子は、多孔質粒子と、多孔質粒子が有する孔内に保持された触媒液と、を含み、表面の少なくとも一部が樹脂(多孔質粒子由来の樹脂)で覆われている(即ち、樹脂が表面に付着している)触媒粒子である。
【0256】
<樹脂Bの調整>
ポリビニルアルコール樹脂(PVAとする、三菱ケミカル製、ゴーセネックス、LW-100)を1重量%になるようにメタノールに溶解し、樹脂B溶液を得た。
【0257】
<外殻形成された触媒粒子Cの樹脂被覆>
実施例23の触媒粒子Cの表面に、前記樹脂B溶液をスプレーで吹き付け、更に樹脂B溶液を乾燥させることで、触媒粒子表面の一部または全面を樹脂Bで覆った。この触媒粒子は、多孔質粒子と、多孔質粒子が有する孔内に保持された触媒液と、を含み、表面の少なくとも一部が第1の樹脂及び第2の樹脂で覆われている(つまり、2種以上の樹脂が表面に付着している)触媒粒子である。
【0258】
<反応液の作製方法>
ジシクロペンタジエンをポリ瓶に100部計量し、実施例23の触媒粒子Cを5部加え、ペイントシェーカーで2分撹拌し、反応性評価用の反応液を得た。
【0259】
(発熱反応の開始時間)
前記ポリ瓶中で作製した反応液が、発熱を伴う反応を開始するまでの時間を調べた。実施例23の触媒粒子を用いた反応液は、発熱を伴う反応の開始時間が90分であった。
【0260】
<<実施例24>>
実施例24の触媒粒子は、下記のように作製した。
【0261】
<触媒溶液の作製方法>
触媒であるUmicore M42(富士フイルム和光純薬(株))をガラスバイアル瓶に1質量部計量し、溶媒であるシクロヘキサン99質量部を加えて、ペイントシェーカーで10分間攪拌し、触媒が均一に溶解された1質量%の触媒溶液Aを得た。
【0262】
<触媒粒子Cの作製方法>
触媒溶液Aをガラスバイアル瓶に10部計量し、平均粒子径10um、BET比表面積90m/g、全細孔容量1.5ml/g、メソ孔を有するアクリル多孔質粒子を10部加え、平均粒子径0.1umのMgO粒子を3部加え、平均粒子径2um、融点61℃のワックス粉砕粒子を5部加え、ペイントシェーカーで10分撹拌し、触媒溶液、MgO粒子ならびにワックス粒子を含む触媒粒子Cを得た。
【0263】
<触媒粒子Cの外殻形成>
実施例24の触媒粒子Cの表面に、電気加熱あるいはプラズマ加熱によって発生させた熱風を当てることで粒子表面の一部を溶融あるいは軟化変形させることで触媒粒子表面の一部または全面を覆った。この触媒粒子は、多孔質粒子と、多孔質粒子が有する孔内に保持された触媒液と、を含み、表面の少なくとも一部が樹脂で覆われている(即ち、樹脂が表面に付着している)触媒粒子である。
【0264】
<樹脂Bの調整>
ポリビニルアルコール樹脂(PVAとする、三菱ケミカル製、ゴーセネックス、LW-100)を1重量%になるようにメタノールに溶解し、樹脂B溶液を得た。
【0265】
<外殻形成された触媒粒子Cの樹脂被覆>
実施例24の触媒粒子Cの表面に、前記樹脂B溶液をスプレーで吹き付け、更に樹脂B溶液を乾燥させることで、触媒粒子表面の一部または全面を樹脂Bで覆った。この触媒粒子は、多孔質粒子と、多孔質粒子が有する孔内に保持された触媒液と、を含み、表面の少なくとも一部が、第1の樹脂及び第2の樹脂で覆われている(つまり、2種以上の樹脂が表面に付着している)触媒粒子である。
【0266】
<反応液の作製方法>
ジシクロペンタジエンをポリ瓶に100部計量し、実施例24の触媒粒子Cを5部加え、ペイントシェーカーで2分撹拌し、反応性評価用の反応液を得た。
【0267】
(発熱反応の開始時間)
前記ポリ瓶中で作製した反応液が、発熱を伴う反応を開始するまでの時間を調べた。実施例24の触媒粒子を用いた反応液は、加熱を伴う反応の開始時間が140分であった。
【0268】
<<実施例25>>
実施例25の触媒粒子は、下記のように作製した。
【0269】
<触媒溶液の作製方法>
触媒であるUmicore M42(富士フイルム和光純薬(株))をガラスバイアル瓶に1質量部計量し、溶媒であるシクロヘキサン99質量部を加えて、ペイントシェーカーで10分間攪拌し、触媒が均一に溶解された1質量%の触媒溶液Aを得た。
【0270】
<触媒粒子Cの作製方法>
触媒溶液Aをガラスバイアル瓶に10部計量し、平均粒子径10um、BET比表面積90m/g、全細孔容量1.5ml/g、メソ孔を有するアクリル多孔質粒子を10部加え、平均粒子径1.8um、融点85℃のポリ塩化ビニル(PVCとする)粉砕粒子を5部加え、ペイントシェーカーで10分撹拌し、触媒溶液ならびにPVC粒子を含む触媒粒子Cを得た。
【0271】
<触媒粒子Cの外殻形成>
実施例25の触媒粒子Cの表面に、電気加熱あるいはプラズマ加熱によって発生させた熱風を当てることで粒子表面の一部を溶融あるいは軟化変形させることで触媒粒子表面の一部または全面を覆った。この触媒粒子は、多孔質粒子と、多孔質粒子が有する孔内に保持された触媒液と、を含み、表面の少なくとも一部が樹脂で覆われている(即ち、樹脂が表面に付着している)触媒粒子である。
【0272】
<反応液の作製方法>
ジシクロペンタジエンをポリ瓶に100部計量し、実施例25の触媒粒子Cを5部加え、ペイントシェーカーで2分撹拌し、反応性評価用の反応液を得た。
【0273】
(発熱反応の開始時間)
前記ポリ瓶中で作製した反応液が、発熱を伴う反応を開始するまでの時間を調べた。実施例25の触媒粒子を用いた反応液は、加熱を伴う反応の開始時間が160分であった。
【0274】
<<実施例26>>
実施例26の触媒粒子は、下記のように作製した。
【0275】
<触媒溶液の作製方法>
触媒であるUmicore M42(富士フイルム和光純薬(株))をガラスバイアル瓶に1質量部計量し、溶媒であるシクロヘキサン99質量部を加えて、ペイントシェーカーで10分間攪拌し、触媒が均一に溶解された1質量%の触媒溶液Aを得た。
【0276】
<触媒粒子Cの作製方法>
触媒溶液Aをガラスバイアル瓶に10部計量し、平均粒子径10um、BET比表面積90m/g、全細孔容量1.5ml/g、メソ孔を有するアクリル多孔質粒子を10部加え、平均粒子径0.1umのMgO粒子を3部加え、平均粒子径1.8um、融点85℃のポリ塩化ビニル(PVCとする)粉砕粒子を5部加え、ペイントシェーカーで10分撹拌し、触媒溶液、MgO粒子ならびにPVC粒子を含む触媒粒子Cを得た。
【0277】
<触媒粒子Cの外殻形成>
実施例26の触媒粒子Cの表面に、電気加熱あるいはプラズマ加熱によって発生させた熱風を当てることで粒子表面の一部を溶融あるいは軟化変形させることで触媒粒子表面の一部または全面を覆った。この触媒粒子は、多孔質粒子と、多孔質粒子が有する孔内に保持された触媒液と、を含み、表面の少なくとも一部が、樹脂及び無機粒子で覆われている(つまり、樹脂及び無機粒子が表面に付着している)触媒粒子である。
【0278】
<反応液の作製方法>
ジシクロペンタジエンをポリ瓶に100部計量し、実施例26の触媒粒子Cを5部加え、ペイントシェーカーで2分撹拌し、反応性評価用の反応液を得た。
【0279】
(発熱反応の開始時間)
前記ポリ瓶中で作製した反応液が、発熱を伴う反応を開始するまでの時間を調べた。実施例26の触媒粒子を用いた反応液は、加熱を伴う反応の開始時間が165分であった。
【0280】
実施例21~実施例26について、製造条件および評価結果を表6にまとめた。
【0281】
【表6】
【0282】
上記各実施例において、樹脂の被覆率、及び、無機粒子の被覆率は、50%以上であった。

図1