(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】画像センサ及びその作成方法並びに電子装置
(51)【国際特許分類】
H04N 25/13 20230101AFI20240329BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
H04N25/13
H01L27/146 D
(21)【出願番号】P 2022540551
(86)(22)【出願日】2019-12-31
(86)【国際出願番号】 CN2019130438
(87)【国際公開番号】W WO2021134450
(87)【国際公開日】2021-07-08
【審査請求日】2022-07-22
(73)【特許権者】
【識別番号】503433420
【氏名又は名称】華為技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUAWEI TECHNOLOGIES CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Huawei Administration Building, Bantian, Longgang District, Shenzhen, Guangdong 518129, P.R. China
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133569
【氏名又は名称】野村 進
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 友明
(72)【発明者】
【氏名】▲孫▼ 立峰
【審査官】鈴木 明
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-184986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 25/00-25/79
H01L 27/14-27/148
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタサーフェイス構造の配列と
媒介物と光電変換部の配列とを備える画像センサであって、メタサーフェイス構造の前記配列は
前記媒介物の上に位置し、前記媒介物は光電変換部の前記配列の上に位置し、
前記光電変換部は複数の光電変換素子を備え、前記光電変換部の各光電変換素子はスペクトル中の1つの周波数帯に対応し、前記メタサーフェイス構造は第1の基板と、前記第1の基板の
表面上に位置する微細構造とを備え、前記微細構造及び前記第1の基板は各周波数帯の光信号を各周波数帯に対応する光電変換素子に伝送するように構成され、前記微細構造は回転対称構造であり、前記回転対称構造の回転角度は90度以下で
あり、
前記媒介物は第2の基板を備える、
画像センサ。
【請求項2】
前記微細構造及び前記第1の基板は、空間伝送位相勾配を得るためにメタサーフェイス構造の前記配列の接線の方向に空間伝送位相を発生するように構成され、前記空間伝送位相勾配は各周波数帯の前記光信号を各周波数帯に対応する前記光電変換素子に伝送するのに用いられる、請求項1に記載の画像センサ。
【請求項3】
前記空間伝送位相は、各周波数帯の前記光信号の波長と、各周波数帯の前記光信号が前記メタサーフェイス構造に入射する位置と、各周波数帯の前記光信号が、各周波数帯に対応する前記光電変換素子に伝送される位置と、前記メタサーフェイス構造と前記光電変換素子との間の
前記媒介物の屈折率とに関係する、請求項2に記載の画像センサ。
【請求項4】
前記空間伝送位相φ(x,y,λ
n)は、
【数1】
を満たし、
x,yは前記メタサーフェイス構造上の位置の座標を表わし、λ
nは第nの周波数帯の光信号の波長を表わし、f
nは前記第nの周波数帯の前記光信号に対応する焦点距離を表わし、x
f,n及びy
f,nは、前記第nの周波数帯の前記光信号が、前記第nの周波数帯に対応する光電変換素子に伝送される位置の座標を表わし、n
subは前記メタサーフェイス構造と前記光電変換部との間の
前記媒介物の屈折率を表わし、Cは所定の位相である、
請求項2又は3に記載の画像センサ。
【請求項5】
前記微細構造は円筒形構造、四角柱構造又は十字形構造を備える、請求項1から
4のいずれか一項に記載の画像センサ。
【請求項6】
前記微細構造の材料は二酸化チタン、窒化ガリウム又は炭化ケイ素を含む、請求項1から
5のいずれか一項に記載の画像センサ。
【請求項7】
前記複数の光電変換素子は前記スペクトル中のV個の異なる周波数帯に対応し、Vは3を超える整数である、請求項1から
6のいずれか一項に記載の画像センサ。
【請求項8】
光電変換部の配列を作成するステップと、
光電変換部の前記配列上に媒介物を作成するステップと、
前記媒介物上にメタサーフェイス構造の配列を作成するステップであって、前記光電変換部は複数の光電変換素子を備え、前記光電変換部の各光電変換素子はスペクトル中の1つの周波数帯に対応し、前記メタサーフェイス構造は第1の基板と、前記第1の基板の
表面上に位置する微細構造とを備え、前記微細構造及び前記第1の基板は各周波数帯の光信号を各周波数帯に対応する光電変換素子に伝送するように構成され、前記微細構造は回転対称構造であり、前記回転対称構造の回転角度は90度以下である、ステップと
を
備え、
前記媒介物は第2の基板を備える、画像センサ作成方法。
【請求項9】
前記微細構造及び前記第1の基板は、空間伝送位相勾配を得るためにメタサーフェイス構造の前記配列の接線の方向に空間伝送位相を発生するように構成され、前記空間伝送位相勾配は各周波数帯の前記光信号を各周波数帯に対応する前記光電変換素子に伝送するのに用いられる、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
光電変換部の配列を作成するステップと、
光電変換部の前記配列上に媒介物を作成するステップと、
前記媒介物上にメタサーフェイス構造の配列を作成するステップと、
画像センサを得るためにメタサーフェイス構造の前記配列と光電変換部の前記配列とを組み合せるステップと
を備える画像センサ作成方法であって、
前記光電変換部は複数の光電変換素子を備え、前記光電変換部の各光電変換素子はスペクトル中の1つの周波数帯に対応し、前記メタサーフェイス構造は第1の基板と、前記第1の基板の
表面上に位置する微細構造とを備え、前記微細構造及び前記第1の基板は各周波数帯の光信号を各周波数帯に対応する光電変換素子に伝送するように構成され、前記微細構造は回転対称構造であり、前記回転対称構造の回転角度は90度以下で
あり、
前記媒介物は第2の基板を備える、
画像センサ作成方法。
【請求項11】
前記微細構造及び前記第1の基板は、空間伝送位相勾配を得るためにメタサーフェイス構造の前記配列の接線の方向に空間伝送位相を発生するように構成され、前記空間伝送位相勾配は各周波数帯の前記光信号を各周波数帯に対応する前記光電変換素子に伝送するのに用いられる、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1から
7のいずれか一項に記載の画像センサを備える電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願の実施形態は光学イメージングの分野に関し、特に、画像センサ及びその作成方法並びに電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像センサは光学的な像を電気信号に変換することができ、複数の電子装置、たとえばデジタルカメラに広く応用されている。デジタルカメラのハードウェアにはレンズ群、画像センサ、電気信号プロセッサなどが主に含まれる。レンズ群は画像センサ上に光学的な像を結像するように構成されている。画像センサは像の光信号をアナログ電気信号に変換してアナログ電気信号を電気信号プロセッサに入力するように構成されている。電気信号プロセッサはアナログ電気信号をデジタル信号に変換してデータ処理後に写真を出力する。光電変換器として、画像センサはデジタルカメラのコア部品の1つであり、その性能によって出力写真の品質が直接決まる。
【0003】
画像センサの光電変換素子は異なる強さの光信号を異なる強さの電気信号に変換することができる。しかし、光電変換素子は光の周波数を識別することができず、すなわち、色を識別することができない。したがって、色収集層を用いずに画像センサから直接得られた画像は白黒である。カラー画像を得るためには、画像の色情報を得る色収集層としてカラーフィルタリングシステムが用いられる必要がある。たとえば、人間の眼が赤、緑、青(red,green,blue,RGB)の三原色のスペクトルを感じることができるという特性に基づいて、RGBモザイクベイヤーカラーフィルタシステムを形成するようにRGBカラーフィルタが光電変換素子に配置され、これにより、カラー画像が得られることが可能である。しかし、各スペクトルチャンネルでは、ベイヤーカラーフィルタによって光の70%以上が除去され、光の30%未満しか光電変換素子に達することができず、光の30%未満しか最終的な計算によるイメージングに用いる電気信号に変換することができない。この結果、ベイヤーカラーフィルタシステムに基づく画像センサの光利用率はきわめて低い。
【発明の概要】
【0004】
本出願では、画像センサの光利用率を改善する、画像センサ及びその作成方法並びに電子装置が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様によれば、メタサーフェイス構造の配列と光電変換部の配列とを含む画像センサが提供される。メタサーフェイス構造の配列は光電変換部の配列の上に位置し、メタサーフェイス構造は第1の基板と、第1の基板の上に位置する微細構造とを含み、微細構造及び第1の基板は各周波数帯の光信号を各周波数帯に対応する光電変換素子に伝送するように構成され、微細構造は回転対称構造であり、回転対称構造の回転角度は90度以下である。
【0006】
本出願の本実施形態では、微細構造及び第1の基板が各周波数帯の光信号を各周波数帯に対応する光電変換素子に伝送するように構成されていることが当然分かる。場合によっては、微細構造及び第1の基板が、各周波数帯の光信号の焦点を各周波数帯に対応する光電変換素子に合せるように構成されることも分かる。
【0007】
回転対称構造は、回転対称構造の中心点まわりに所定の角度だけ回転して回転対称構造に重なることができる構造である。回転の角度は上記の回転角度である。本出願の本実施形態の微細構造は微細構造の中心点まわりに90度回転したり90度未満の角度だけ回転したりして、微細構造に重なることができる。
【0008】
メタサーフェイス構造に1つ以上の微細構造が存在してもよい。
【0009】
本出願の本実施形態の解決手段によれば、メタサーフェイス構造は、光信号の伝送方向を調節し、メタサーフェイス構造全体によって受光された光信号中の各周波数帯の光信号を当該周波数帯に対応する光電変換素子に伝送するのに用いられることが可能である。既存の光フィルタリング方式が光分割方式に置き替えられ、光フィルタリング過程での光信号損失が避けられる。回転角度が90度以下である回転対称構造が用いられ、この構造は異なる偏光に対しても同じ対光信号応答を示し、したがって、偏光依存性がない。これにより、各スペクトルチャンネルの光伝送率(light transmittance)と、画像センサの全体の光利用率と、出力画像のイメージング品質とが改善される。たとえば、偏光は直線偏光と円偏光とを含んでもよい。
【0010】
第1の態様に関して、第1の態様のいくつかの実現例では、微細構造及び第1の基板は、空間伝送位相勾配を得るためにメタサーフェイス構造の配列の接線の方向に空間伝送位相を発生するように構成される。空間伝送位相勾配は各周波数帯の光信号を各周波数帯に対応する光電変換素子に伝送するのに用いられる。
【0011】
本出願の本実施形態の解決手段によれば、異なる周波数帯の光信号の伝送方向がメタサーフェイス構造の配列上で発生する空間伝送位相勾配を用いて調整され、これにより、異なる周波数帯の光信号が、異なる周波数帯に対応する光電変換素子に伝送されることが可能である。これにより各スペクトルチャンネルの光伝送率が改善され、画像センサの全体の光利用率が改善される。
【0012】
第1の態様に関して、第1の態様のいくつかの実現例では、空間伝送位相は、各周波数帯の光信号の波長と、各周波数帯の光信号がメタサーフェイス構造に入射する位置と、各周波数帯の光信号が、各周波数帯に対応する光電変換素子に伝送される位置とに関係する。
【0013】
適宜、メタサーフェイス構造は光電変換部と直接接触しなくてもよい。空間伝送位相分布はメタサーフェイス構造と光電変換素子との間の媒介物の屈折率にさらに関係する。場合によっては、説明の視点を換えるが、空間伝送位相分布はメタサーフェイス構造と光電変換部との間の媒介物の屈折率に関係する。
【0014】
たとえば、メタサーフェイス構造の所定の位置での第nの周波数帯の空間伝送位相は、第nの周波数帯の光信号の波長と、第nの周波数帯の光信号が、第nの周波数帯に対応する光電変換素子に伝送される位置の座標と、メタサーフェイス構造と光電変換部との間の媒介物の屈折率とに関係する。
【0015】
第1の態様に関して、第1の態様のいくつかの実現例では、空間伝送位相分布φ(x,y,λ
n)は、
【数1】
を満たす。
【0016】
x,yはメタサーフェイス構造上の位置の座標を表わし、λnは第nの周波数帯の光信号の波長を表わし、fnは第nの周波数帯の光信号に対応する焦点距離を表わし、xf,n及びyf,nは、第nの周波数帯の光信号が、第nの周波数帯に対応する光電変換素子に伝送される位置の座標を表わし、nsubはメタサーフェイス構造と光電変換部との間の媒介物の屈折率を表わし、Cは所定の位相である。
【0017】
第1の態様に関して、第1の態様のいくつかの実現例では、媒介物は空気である。
【0018】
言い換えると、メタサーフェイス構造と光電変換部との間に中空構造が形成されてもよく、中空構造内に空気が存在してもよい。
【0019】
第1の態様に関して、第1の態様のいくつかの実現例では、媒介物は第2の基板を含む。
【0020】
メタサーフェイス構造が第2の基板を用いて光電変換部と接触してもよく、第2の基板はメタサーフェイス構造を支持するように構成されてもよい。
【0021】
任意選択的に、第2の基板の材料は低損失の透明な誘電材料であってもよい。たとえば、第2の基板の材料は二酸化ケイ素のガラスなどであってもよい。
【0022】
第1の態様に関して、第1の態様のいくつかの実現例では、微細構造は円筒形構造、四角柱構造又は十字形構造を含む。
【0023】
第1の態様に関して、第1の態様のいくつかの実現例では、微細構造の材料は二酸化チタン、窒化ガリウム又は炭化ケイ素を含む。
【0024】
第1の態様に関して、第1の態様のいくつかの実現例では、第1の基板の材料は二酸化ケイ素、二酸化チタン、窒化ガリウム又は炭化ケイ素を含む。
【0025】
第1の態様に関して、第1の態様のいくつかの実現例では、複数の光電変換素子はスペクトル中のV個の異なる周波数帯に対応し、Vは3を超える整数である。
【0026】
たとえば、Vは4であってもよい。4つの周波数帯は赤色、黄色、シアン及び紫色であってもよい。4つの周波数帯はターコイズブルー、マゼンタ、黄色及び白色でもあってもよい。
【0027】
別の例では、Vは7であってもよい。7つの周波数帯は赤色、オレンジ、黄色、緑色、シアン、青色及び紫色であってもよい。
【0028】
本出願の本実施形態の解決手段によれば、1つの光電変換部に対応する異なる周波数帯の個数が増大し、これにより、光利用率の減損を小さくしつつ、より多くの周波数スペクトル情報を得ることができる。これにより、画像センサの周波数スペクトル利用率が改善され、画像の色情報の喪失が抑えられ、イメージングの色の忠実度が改善され、イメージング品質が改善される。
【0029】
第2の態様によれば、光電変換部の配列を作成するステップと、光電変換部の配列上にメタサーフェイス構造の配列を作成するステップとを含む画像センサ作成方法が提供される。光電変換部は複数の光電変換素子を含み、光電変換部の各光電変換素子はスペクトル中の1つの周波数帯に対応し、メタサーフェイス構造は第1の基板と、第1の基板の上に位置する微細構造とを含み、微細構造及び第1の基板は各周波数帯の光信号を各周波数帯に対応する光電変換素子に伝送するように構成され、微細構造は回転対称構造であり、回転対称構造の回転角度は90度以下である。
【0030】
たとえば、光電変換部の配列とメタサーフェイス構造の配列とが相補型金属酸化物半導体(complementary metal oxide semiconductor,CMOS)プロセスを用いて集積方式で加工される。
【0031】
本出願の本実施形態の解決手段によれば、光電変換部の配列とメタサーフェイス構造の配列とが集積方式で加工され、これにより、光電変換部とメタサーフェイス構造との間の優れた位置合せ効果が確保されることが可能である。これにより画像センサの精度が改善される。メタサーフェイス構造を用いて、メタサーフェイス構造全体によって受光された光信号中の各周波数帯の光信号を当該周波数帯に対応する光電変換素子に伝送することができる。既存の光フィルタリング方式が光分割方式に置き替えられ、光フィルタリング過程での光信号損失が避けられる。回転角度が90度以下である回転対称構造が用いられ、この構造は光信号の偏光に対して同じ応答を示すので、偏光依存性がない。これにより、各スペクトルチャンネルの光伝送率(light transmittance)と、画像センサの全体の光利用率と、出力画像のイメージング品質とが改善される。たとえば、光信号の偏光は直線偏光と円偏光とを含んでもよい。
【0032】
第2の態様に関して、第2の態様のいくつかの実現例では、微細構造及び第1の基板は、空間伝送位相勾配を得るためにメタサーフェイス構造の配列の接線の方向に空間伝送位相を発生するように構成される。空間伝送位相勾配は各周波数帯の光信号を各周波数帯に対応する光電変換素子に伝送するのに用いられる。
【0033】
本出願の本実施形態の解決手段によれば、異なる周波数帯の光信号の伝送方向がメタサーフェイス構造の配列上で発生する空間伝送位相勾配を用いて変更され、これにより、異なる周波数帯の光信号が、異なる周波数帯に対応する光電変換素子に伝送されることが可能である。これにより各スペクトルチャンネルの光伝送率が改善され、画像センサの全体の光利用率が改善される。
【0034】
第3の態様によれば、光電変換部の配列を作成するステップと、メタサーフェイス構造の配列を作成するステップと、画像センサを得るためにメタサーフェイス構造の配列と光電変換部の配列とを組み合せるステップとを含む画像センサ作成方法が提供される。光電変換部は複数の光電変換素子を含み、光電変換部の各光電変換素子はスペクトル中の1つの周波数帯に対応し、メタサーフェイス構造は第1の基板と、第1の基板の上に位置する微細構造とを含み、微細構造及び第1の基板は各周波数帯の光信号を各周波数帯に対応する光電変換素子に伝送するように構成され、微細構造は回転対称構造であり、回転対称構造の回転角度は90度以下である。
【0035】
たとえば、メタサーフェイス構造の配列がCMOSプロセスを用いて作成され、その後、光電変換部の配列と組み合せられる。
【0036】
本出願の本実施形態の解決手段によれば、光電変換部の配列とメタサーフェイス構造の配列とが個別に加工され、加工技術が単純になる。メタサーフェイス構造を用いて、メタサーフェイス構造全体によって受光された光信号中の各周波数帯の光信号を当該周波数帯に対応する光電変換素子に伝送することができる。既存の光フィルタリング方式が光分割方式に置き替えられ、光フィルタリング過程での光信号損失が避けられる。回転角度が90度以下である回転対称構造が用いられ、この構造は光信号の偏光に対して同じ応答を示すので、偏光依存性がない。これにより、各スペクトルチャンネルの光伝送率(light transmittance)と、画像センサの全体の光利用率と、出力画像のイメージング品質とが改善される。たとえば、光信号の偏光は直線偏光と円偏光とを含んでもよい。
【0037】
第3の態様に関して、第3の態様のいくつかの実現例では、微細構造及び第1の基板は、空間伝送位相勾配を得るためにメタサーフェイス構造の配列の接線の方向に空間伝送位相を発生するように構成される。空間伝送位相勾配は各周波数帯の光信号を各周波数帯に対応する光電変換素子に伝送するのに用いられる。
【0038】
本出願の本実施形態の解決手段によれば、異なる周波数帯の光信号の伝送方向がメタサーフェイス構造の配列上で発生する空間伝送位相勾配を用いて変更され、これにより、異なる周波数帯の光信号が、異なる周波数帯に対応する光電変換素子に伝送されることが可能である。これにより各スペクトルチャンネルの光伝送率が改善され、画像センサの全体の光利用率が改善される。
【0039】
第4の態様によれば、第1の態様又は第1の態様の実現例のいずれか1つに係る画像センサを含む電子装置が提供される。
【0040】
本出願の本実施形態の解決手段によれば、電子装置はメタサーフェイス構造に基づく画像センサを含む。メタサーフェイス構造は、メタサーフェイス構造全体によって受光された光信号中の各周波数帯の光信号を当該周波数帯に対応する光電変換素子に伝送することができる。既存の光フィルタリング方式が光分割方式に置き替えられ、光フィルタリング過程での光信号損失が避けられる。回転角度が90度以下である回転対称構造が用いられ、この構造は光信号の偏光に対して同じ応答を示すので、偏光依存性がない。これにより、各スペクトルチャンネルの光伝送率(light transmittance)と、画像センサの全体の光利用率と、出力画像のイメージング品質とが改善される。たとえば、光信号の偏光は直線偏光と円偏光とを含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図2】ベイヤーフィルタシステムに基づく画像センサの構成の概略図である。
【
図3】ベイヤーフィルタシステムに基づく画像センサのカラー画素単位単体の構成の概略図である。
【
図4】スペクトルチャンネルの1つにおける光信号伝送の概略図である。
【
図5】本出願の実施形態に係る画像センサの構成の概略図である。
【
図6】
図6(a)から6(c)は、本出願の実施形態に係る微細構造の構成の概略図である。
【
図7】
図7(a)から7(c)は、本出願の実施形態に係る画像センサでの光路伝送の概略図である。
【
図8】
図8(a)及び8(b)は、本出願の実施形態に係る画像センサのカラー画素単位1つの概略図である。
【
図9】本出願の実施形態に係る光電変換素子の配置の仕方の概略図である。
【
図10】
図10(a)及び10(b)は、本出願の実施形態に係る光信号の屈折及び反射の概略図である。
【
図11】
図11(a)から11(c)は、本出願の実施形態に係る異なる周波数帯の1つに対応する空間伝送位相分布の概略図である。
【
図12】本出願の実施形態に係る画像センサ作成方法の概略図である。
【
図13】本出願の実施形態に係る別の画像センサ作成方法の概略図である。
【
図14】本出願の実施形態に係る画像センサ設計方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、添付の図面を参照して本出願の技術的解決手段を説明する。
【0043】
本出願の実施形態の電子装置はハンドヘルドデバイス、車載デバイス、ウェアラブルデバイス、コンピューティングデバイスや、無線モデムに接続される別の処理デバイスを含んでもよい。電子装置はデジタルカメラ(digital camera)、携帯電話器(cellular phone)、スマートフォン(smart phone)、パーソナルデジタルアシスタント(personal digital assistant,PDA)コンピュータ、タブレットコンピュータ、ラップトップコンピュータ(laptop computer)、マシンタイプコミュニケーション(machine type communication,MTC)端末、ポイント・オブ・セールス(point of sales,POS)端末、車載コンピュータ、及びイメージング機能を持つ別の電子装置をさらに含んでもよい。
【0044】
理解を容易にするために、以下、まず本出願の専門用語の説明及び記載を行なう。
【0045】
メタマテリアル(metamaterial):広義には、メタマテリアルとは、人間の手によって設計され、従来の天然材料にはない物理的特性を持つ単位構造の複合体を指す。メタマテリアルの物理的特性は主にサブ波長(波長よりもはるかに短い)の単位構造の構造及び配置によって決まる。
【0046】
メタサーフェイス(metasurface):メタサーフェイスとは、メタマテリアルの2次元形態であり、すなわち、サブ波長マイクロ単位構造によって形成される表面構造である。
【0047】
焦点:光がメタサーフェイス構造内に照射されると、光はメタサーフェイス構造の背後にある数箇所に収束する。光が収束する数箇所が焦点である。
【0048】
焦点距離(focal length):距離に関するものであり、光学系での光の収束又は発散を定量するのに用いられる定量指標である。本出願の実施形態では、焦点距離は、メタサーフェイス構造を用いて無限遠のシーンによって焦点面上に鮮明な画像が形成されるときの、メタサーフェイス構造の光学的中心から焦点までの距離を示し、また、メタサーフェイス構造の光学的中心から焦点面までの垂直距離としても解することができる。
【0049】
図1は電子装置の概略図を示す。図示されているように、電子装置はレンズ(lens)群110、画像センサ(sensor)120及び電気信号プロセッサ130を含んでもよい。電気信号プロセッサ130はアナログデジタル(A/D)コンバータ131とデジタルシグナルプロセッサ132を含んでもよい。アナログデジタルコンバータ131はアナログデジタル信号コンバータであり、アナログ電気信号をデジタル電気信号に変換するように構成されている。
【0050】
図1に示されている電子装置は上記の構成要素に限定されず、バッテリ、フラッシュ、ボタンやセンサなどの他の構成要素をさらに含んでもよいことが当然分かる。本出願の本実施形態では、画像センサ120が設置された電子装置のみが説明の例として用いられているが、電子装置に設置される構成要素はこれに限定されない。
【0051】
被写体によって反射された光信号がレンズ群110を用いることによって収束し、その像が画像センサ120上で結像する。画像センサ120は光信号をアナログ電気信号に変換する。アナログ電気信号は電気信号プロセッサ130のアナログデジタル(A/D)コンバータ131を用いてデジタル電気信号に変換され、デジタル電気信号はデジタルシグナルプロセッサ132を用いて処理される。たとえば、デジタル信号は一連の複雑な数学的アルゴリズム演算を用いて最適化され、最終的に画像が出力される。電気信号プロセッサ130はアナログ信号プリプロセッサ133をさらに含んでもよく、これは、画像センサによって送られたアナログ電気信号を前処理して、前処理されたアナログ電気信号をアナログデジタルコンバータ131に出力するように構成されている。
【0052】
画像センサ120の性能は最終的な出力画像の品質に影響する。画像センサ120は受光チップ、受光素子などとも称される場合があり、数十万個から数百万個の光電変換素子を含む。画像センサ120に対して露光を行なうと、電荷が発生し、アナログデジタルコンバータチップを用いることによってデジタル信号に変換される。
【0053】
通常、画像センサ120はカラーフィルタリングシステムを用いて像の色情報を取得することができる。カラーフィルタリングシステムはベイヤーカラーフィルタ(Bayer color filter)システムであってもよい。言い換えると、画像センサ120の光電変換素子の上でベイヤーカラーフィルタが覆われてカラーフィルタリングシステムが形成される。光電変換素子はフォトダイオードであってもよい。ベイヤーフィルタはベイヤーフィルタとも称される場合がある。
図2はベイヤーカラーフィルタシステムに基づく画像センサの概略図を示す。画像センサはマイクロレンズ121、ベイヤーカラーフィルタ122及びフォトダイオード123を含む。ベイヤーカラーフィルタ122はRGBカラーフィルタを含み、RGBカラーフィルタはRGBモザイクカラーフィルタシステムを形成するようにフォトダイオードの格子上に配置される。人間の眼の網膜にある緑色用の光受容細胞の数量が最大であるという生体特性にしたがって、ベイヤーフィルタがRGGB形態で配置されるのが通常である。
【0054】
図3はベイヤーカラーフィルタシステムに基づく画像センサのカラー画素単位1つの構成の概略図を示す。
図3に示されているように、1つのカラー画素単位が4つのカラーフィルタ122と4つの対応するフォトダイオード123画素素子とを含む。4つのカラーフィルタ122がRGGB形態で配置され、具体的には、赤色カラーフィルタと青色カラーフィルタとが対角位置に位置し、2つの緑色光フィルタが対角位置に位置する。フォトダイオード123の光感知領域が、フォトダイオード画素素子によって占められる領域の中央に位置することから、カラーフィルタ122の上にあるマイクロレンズ121アレイを1つのカラー画素単位がさらに含む。マイクロレンズ121アレイは、光信号をフォトダイオード123の光感知領域に収束させて、光を確実に利用するように構成されている。マイクロレンズ121アレイは入射光信号を4つのカラーフィルタ122に個別に収束させる。入射光信号は4つのカラーフィルタ122によってフィルタリングされた後、4つのカラーフィルタ122によって覆われたフォトダイオード123に個別に伝送される。このようにして、像の光強度情報とおおよその色情報とが同時に得られ、現実に最も近いカラー画像がソフトウェア差分アルゴリズムを用いた最適化を通じて復元されることが可能である。
【0055】
しかし、ベイヤーフィルタシステムに基づく画像センサの光利用率はきわめて低い。各カラー画素チャンネル(スペクトルチャンネルとも称される場合がある)ではベイヤーカラーフィルタによって光信号の70%以上が除去され、光の30%未満しかフォトダイオードに達することができず、光の30%未満しか最終的な計算によるイメージングに用いる電気信号に変換することができない。
図4はカラー画素単位におけるスペクトルチャンネルの1つの、光束の概略図を示す。
図4に示されているように、RGGBの形態で配置された1つのカラー画素単位では、入射光が白色光である場合、具体的には、入射光が400nm~700ナノメートルの波長すべての光信号を含む場合において、カラーフィルタが理想的な色フィルタリング効果を発揮するとき、カラーフィルタ後の光束の理論上の最大値は入射光束の僅か1/3である。入射光が赤色光又は青色光である場合、色フィルタリング後の光束の理論上の最大値は入射光束の1/4である。入射光が緑色光である場合、2つの緑色チャンネルがあるので、色フィルタリング後の理論上の最大光束は入射光束の1/2である。これに加えて、実際には、カラーフィルタの色フィルタリング効果は完全ではなく、すなわち、カラーフィルタの色フィルタリング効率及び光透過効率が100%に達することは不可能である。したがって、実際の光利用率はより低い。入射光が白色光である場合、総光利用率は約25%にしかならない。入射光が赤色光である場合、光利用率は約23%である。入射光が青色光である場合、光利用率は約20%にしかならない。入射光が緑色光である場合、光利用率は約32%である。
【0056】
上記に加えて、ベイヤーカラーフィルタシステムに基づく画像センサによって得られる画像には色歪みがある。ベイヤーフィルタには3つのスペクトルチャンネルRGBしかないが、実際の像スペクトルは400~700ナノメートルの可視光帯に連続的に分布する。したがって、実際には、ベイヤーカラーフィルタを用いて得られるスペクトル情報は、RGBの3色を用いて連続スペクトルに対して離散的なデジタル化を実行することによって得られ、すなわち、400~500ナノメートルの帯域の光すべてが青色とみなされ、500~600ナノメートルの帯域の光すべてが緑色であるとみなされ、600~700ナノメートルの帯域の光すべてが赤色とみなされる。上記の周波数スペクトル帯域の値は参考データとして用いられているのにすぎず、各周波数スペクトルチャンネルの具体的な周波数範囲は実際の画像センサの周波数スペクトル全体の設計とフォトダイオードの実際の周波数スペクトル応答範囲とにしたがうことが当然分かる。上記の解決手段では、画像の実際のスペクトル情報が大幅に失われ、その結果、最終的に得られる画像の色歪みが生じる。これに加えて、実際には、カラーフィルタによって透過スペクトル上で重複が生じる。この仕方では、入射スペクトルが重複位置にある場合、カラーフィルタを用いると、2つのスペクトルチャンネルに光が同時に入射し、色の再現の誤りがさらに生じる。
【0057】
ベイヤーフィルタの本質はスペクトル情報、すなわち色情報と引きかえに光利用率を犠牲にすることである。1つのカラー画素単位において別のスペクトルチャンネルの個数を増加させることによってスペクトル情報をより多く得ることができる。物理的ハードウェアについて、現在のところ、連続スペクトルが離散的スペクトル情報に変換される場合に生じるスペクトル情報の喪失は、ベイヤーカラーフィルタのスペクトルチャンネルの個数を増加させることによってしか抑えることができないが、これでは光利用率がさらに下がる。
【0058】
図5は本出願の実施形態に係る画像センサ200の構成の概略図を示す。画像センサ200は
図1の画像センサ120であってもよい。
【0059】
画像センサ200はメタサーフェイス構造210の配列と光電変換部220の配列とを含む。メタサーフェイス構造210の配列は光電変換部220の配列の上に位置する。光電変換部220は複数の光電変換素子を含む。光電変換部220の各光電変換素子はスペクトル中の1つの周波数帯に対応する。メタサーフェイス構造210は第1の基板と、第1の基板の上に位置する微細構造とを含み、微細構造及び第1の基板は各周波数帯の光信号を各周波数帯に対応する光電変換素子に伝送するように構成されている。微細構造は回転対称構造であり、回転対称構造の回転角度は90度以下である。
【0060】
1つのメタサーフェイス構造210が複数の微細構造を含んでもよい。
【0061】
回転対称構造は、回転対称構造の中心点まわりに所定の角度だけ回転して回転対称構造に重なることができる構造である。回転の角度は上記の回転角度である。本出願の本実施形態の微細構造は微細構造の中心点まわりに90度回転したり90度未満の角度だけ回転したりして、微細構造に重なることができる。
【0062】
本出願の本実施形態では、各光電変換素子がスペクトル中の1つの周波数帯に対応することは、各光電変換素子が1つの周波数スペクトルチャンネルに対応することでもあってもよい。
【0063】
任意選択的に、
図6(a)~
図6(c)は本出願の実施形態に係る微細構造の概略図を示す。微細構造は
図6(a)に示されているような円筒形構造であってもよい。これの代わりに、微細構造は
図6(b)に示されているような十字形構造であってもよい。これの代わりに、微細構造は
図6(c)に示されているような四角柱構造であってもよい。3つの構造は例にすぎず、微細構造の形状は3つの構造に限定されないことが当然分かる。
【0064】
任意選択的に、メタサーフェイス構造210が光電変換部220と直接接触しなくてもよく、言い換えると、メタサーフェイス構造210と光電変換部220との間に媒介物が存在してもよい。
【0065】
特に、媒介物は空気であってもよい。
【0066】
たとえば、メタサーフェイス構造210と光電変換部220との間に中空構造が形成されてもよく、中空構造内に空気が存在してもよい。
【0067】
特に、媒介物は第2の基板230であってもよい。
【0068】
たとえば、メタサーフェイス構造210が第2の基板230を用いて光電変換部220と接触してもよく、第2の基板はメタサーフェイス構造210を支持するように構成されてもよい。
【0069】
任意選択的に、第2の基板の材料は低損失の透明な誘電材料であってもよい。たとえば、第2の基板の材料は二酸化ケイ素のガラスなどであってもよい。
【0070】
本出願の本実施形態では、微細構造及び第1の基板が各周波数帯の光信号を各周波数帯に対応する光電変換素子に伝送するように構成されていることが当然分かる。場合によっては、微細構造及び第1の基板が、各周波数帯の光信号の焦点を各周波数帯に対応する光電変換素子に合せるように構成されることも分かる。
【0071】
1つのメタサーフェイス構造210が1つの光電変換部220に対応してもよく、メタサーフェイス構造210が光電変換部220を覆ってもよく、各メタサーフェイス構造210上の微細構造及び第1の基板が入射光信号をメタサーフェイス構造210に対応する光電変換部220に伝送してもよい。説明を容易にするために、メタサーフェイス構造210上の微細構造及び第1の基板が入射光信号をメタサーフェイス構造210に対応する光電変換部220に伝送するという記載が、表現を変えて、メタサーフェイス構造210が入射光信号をメタサーフェイス構造210に対応する光電変換部220に伝送するという記載になっている場合がある。
【0072】
1つのカラー画素単位が1つのメタサーフェイス構造210と1つの光電変換部220を含んでもよい。カラー画素単位が第2の基板230をさらに含んでもよい。画像センサ200が複数のカラー画素単位を含んでもよい。
【0073】
図7(a)~
図7(c)は画像センサの、1つのカラー画素単位内の光路伝送の概略図を示す。
図7(a)~
図7(c)に示されているように、
図7(a)~
図7(c)のメタサーフェイス構造210は
図7(a)~
図7(c)の光電変換部220(光電変換部220の例)に対応する。光電変換部220はn個の光電変換素子を含み、n個の光電変換素子はスペクトル中のn個の周波数帯にそれぞれ対応し、n個の周波数帯は同じ周波数帯を含んでもよい。メタサーフェイス構造210はn個の周波数帯に基づいて、受光されたすべての光信号をn個の周波数帯に対応する光電変換部220の光電変換素子に個別に伝送することができる。
【0074】
各周波数帯の光信号について、各周波数帯の光信号が、各周波数帯に対応する光電変換素子上の光感知領域に伝送されることが可能である。たとえば、
図7(a)に示されているように、焦点が各周波数帯に対応する光電変換素子の下に位置してもよく、
図7(b)に示されているように、焦点が周波数帯に対応する光電変換素子の上にも位置してもよく、
図7(c)に示されているように、焦点が周波数帯に対応する光電変換素子上にも位置してもよい。本出願の本実施形態では焦点の位置は限定されない。
【0075】
光電変換素子は光信号を電気信号に変換するように構成されている。例として、光電変換素子は相補型金属酸化物半導体(complementary metal oxide semiconductor,CMOS)中のフォトダイオードであってもよい。別の例では、これの代わりに光電変換素子は電荷結合素子(charge-coupled device,CCD)であってもよい。
【0076】
図5及び
図7(a)~
図7(c)の光電変換素子が1次元方式で配置されていることは例にすぎず、本出願の本実施形態に対する限定とは当然みなされないことが当然分かる。光電変換素子は2次元方式でも配置されてもよい。
【0077】
たとえば、1つの光電変換部220が4つの光電変換素子を含んでもよい。4つの光電変換素子が3つの周波数帯、すなわち、赤色光、緑色光及び青色光のうちの1つに個別に対応してもよい。赤色光の波長は600~700ナノメートルであるといえ、緑色光の波長は500~600ナノメートルであるといえ、青色光の波長は400~500ナノメートルといえる。4つの光電変換素子に対応する周波数帯はRGGB方式で配置されてもよく、具体的には、所定の対角線上に位置する2つの光電変換素子が緑色光の周波数帯に対応し、これとは別の対角線上に位置する2つの光電変換素子が赤色光の周波数帯及び青色光の周波数帯にそれぞれ対応する。説明を容易にするために、本出願の本実施形態における光電変換素子に対応する周波数帯が、光電変換素子の配置の仕方としても説明に用いられる場合がある。たとえば、光電変換素子がRGGB方式で配置されていることは、光電変換素子に対応する周波数帯がRGGB方式で配置されている場合があることを意味する。
【0078】
図8(a)は本出願の実施形態に係る1つのカラー画素単位の構成の概略図を示す。
図8(a)に示されているように、1つのカラー画素単位は1つのメタサーフェイス構造210と、メタサーフェイス構造210の下に2次元的に配置された隣接する4つの光電変換素子とを含んでもよい。4つの光電変換素子は
図8(b)の光電変換素子A、光電変換素子B、光電変換素子C及び光電変換素子Dにそれぞれ対応する。4つの光電変換素子はRGGB方式で配置されてもよい。たとえば、光電変換素子A、光電変換素子B、光電変換素子C及び光電変換素子Dは3つの周波数帯、すなわち、赤色光、緑色光、緑色光及び青色光にそれぞれ対応してもよい。メタサーフェイス構造210によって赤色光、緑色光及び青色光の焦点を光電変換素子A、光電変換素子B、光電変換素子C及び光電変換素子Dの光感知位置にそれぞれ合せてもよい。
【0079】
上述の周波数スペクトル帯域の値は説明のための参考データとして用いられているのにすぎず、本出願の本実施形態に対する限定とは当然みなされないことが当然分かる。各周波数スペクトルチャンネルの具体的な周波数範囲は実際の画像センサの周波数スペクトル全体の設計と光電変換素子の実際の周波数スペクトル応答範囲とにしたがう。
図8(a)及び
図8(b)に示されている1つのカラー画素単位の光電変換素子の個数は例にすぎず、本出願の本実施形態に対する限定を構成しない。
【0080】
図9は光電変換部220の配列の概略図を示す。
図9に示されているように、各光電変換部220が4つの光電変換素子に対応してもよく、4つの光電変換素子がRGGB方式で配置されている。
【0081】
図8(a)及び
図8(b)並びに
図9に示されている1つの光電変換部220の光電変換素子の個数は例にすぎず、本出願の本実施形態に対する限定を構成しないことが当然分かる。
【0082】
上述されているように、各光電変換部220はn個の光電変換素子を含み、n個の光電変換素子はn個の周波数帯に対応してもよい。n個の周波数帯はV個の異なる周波数帯を含んでもよい。言い換えると、nとVとは異なってもよく、各光電変換部220はスペクトル中のV個の異なる周波数帯に対応してもよい。
【0083】
たとえば、nは4であってもよく、Vは3であってもよい。たとえば、3つの周波数帯が赤色光、緑色光及び青色光であってもよい。1つの光電変換部220が4つの光電変換素子を含んでもよく、言い換えると、1つのメタサーフェイス構造210が4つの光電変換素子を覆ってもよい。4つの光電変換素子が3つの周波数帯、すなわち、赤色光、緑色光及び青色光のうちの1つに個別に対応してもよい。
【0084】
任意選択的に、複数の光電変換素子がスペクトル中のV個の異なる周波数帯に対応し、Vが3を超える整数であってもよい。
【0085】
言い換えると、1つの光電変換部220に含まれる光電変換素子の個数が3を超える。
【0086】
たとえば、Vが4であってもよく、4つの周波数帯が赤色、黄色、シアン及び紫色であってもよい。4つの周波数帯はシアン(cyan,C)、マゼンタ(magenta,M)、黄色(yellow,Y)及び白色(white,W)でもあってもよい。
【0087】
Vとnとが同じであってもよい。たとえば、1つの光電変換部220が4つの光電変換素子を含んでもよく、言い換えると、1つのメタサーフェイス構造210が4つの光電変換素子を覆ってもよい。4つの光電変換素子は4つの周波数帯、すなわち、赤色、黄色、シアン及び紫色にそれぞれ対応する。
【0088】
たとえば、Vは7であってもよく、7つの周波数帯が赤色、オレンジ、黄色、緑色、シアン、青色及び紫色であってもよい。
【0089】
Vとnとが異なってもよい。たとえば、1つの光電変換部220は9つの光電変換素子を含んでもよく、言い換えると、1つのメタサーフェイス構造210が9つの光電変換素子を覆ってもよい。9つの光電変換素子は7つの周波数帯、すなわち、赤色、オレンジ、黄色、緑色、シアン、青色及び紫色にそれぞれ対応し、言い換えると、9つの光電変換素子に対応する9つの周波数帯に2つの同じ周波数帯が存在する。
【0090】
1つの光電変換部220に対応する異なる周波数帯の個数が増大し、言い換えると、1つのメタサーフェイス構造210によって覆われる光電変換素子の個数が増大する。これにより、光利用率の減損を小さくしつつ、画像センサによって収集される周波数スペクトル情報の喪失を大幅に抑えることができ、より多くの周波数スペクトル情報を得ることができ、したがって、画像センサの周波数スペクトル利用率が改善され、画像の色情報の喪失が抑えられ、イメージングの色の忠実度が増大する。
【0091】
1つの光電変換部220において、光電変換素子に対応する周波数帯の個数が周波数スペクトルチャンネルの個数として通用する場合があり、1つの周波数帯に対応する1つの光電変換素子の位置が周波数スペクトルチャンネルの位置として通用する場合がある。
【0092】
周波数スペクトルチャンネルの個数と周波数スペクトルチャンネルの位置とが異なるイメージング要件に関係する。周波数スペクトルチャンネルの異なる個数、及び/又は周波数スペクトルチャンネルの異なる位置が、異なるイメージング要件を満たす場合がある。
【0093】
たとえば、マルチスペクトルイメージングが実行される必要がある場合、すなわち、被写体の周波数スペクトル情報を取得することによって被写体の材料が決定される場合、1つの光電変換部220が9つの光電変換素子を含んでもよく、言い換えると、各メタサーフェイス構造210が9つの光電変換素子を覆ってもよく、各光電変換素子が1つの周波数帯に対応してもよい。たとえば、9つの光電変換素子が7つの周波数帯、すなわち、赤色、オレンジ、黄色、緑色、シアン、青色及び紫色にそれぞれ対応する。
【0094】
例として、別の配色が必要とされる場合、たとえば、4つの周波数帯、すなわち、シアン(cyan,C)、マゼンタ(magenta,M)、黄色(yellow,Y)及び白色(white,W)が必要とされる場合、1つの光電変換部220が4つの光電変換素子を含んでもよく、言い換えると、各メタサーフェイス構造210が4つの光電変換素子を覆ってもよく、4つの光電変換素子に対応する周波数帯がCMYW方式で配置されてもよい。別の例では、3つの周波数帯、すなわち、赤色、黄色及び青色が必要とされる。1つの光電変換部220が4つの光電変換素子を含んでもよく、言い換えると、各メタサーフェイス構造210が4つの光電変換素子を覆ってもよい。4つの光電変換素子に対応する周波数帯がRYYB方式で配置されてもよい。
【0095】
図10(a)及び
図10(b)は光信号の反射及び屈折の伝送経路の概略図を示す。一般化されたスネル(snell)の法則によれば、反射光と透過光との方向は境界面の材料の屈折率だけでなく、境界面の位相勾配分布にも依存する。一般化されたスネルの法則の屈折率を計算する式は、
【数2】
である。
【0096】
n
1は入射空間の屈折率を示し、n
2は出射空間の屈折率を示し、θ
2は入射角を示し、θ
1は屈折角を示し、
【数3】
はx方向の空間伝送位相勾配(spatial transmission phase gradient)を示し、λ
0は光信号の波長を示す。
【0097】
図10(a)は境界面での空間伝送位相勾配がゼロである場合の屈折光及び反射光の伝送経路を示す。
図10(b)は境界面での空間伝送位相勾配がゼロではない場合の屈折光及び反射光の伝送経路を示す。
【0098】
任意選択的に、微細構造及び第1の基板は、空間伝送位相勾配を得るためにメタサーフェイス構造210の配列の接線方向に空間伝送位相を発生するように構成される。空間伝送位相勾配は各周波数帯の光信号を各周波数帯に対応する光電変換素子に伝送するのに用いられる。本出願の本実施形態では、伝送位相は伝送位相とも称される場合がある。
【0099】
空間伝送位相勾配が存在することで、メタサーフェイス構造210によって入射光信号が共振効果を形成することが可能になる。異なる周波数帯の光信号がメタサーフェイス構造210を通過するとき、メタサーフェイス構造210で異なる伝送位相変化が発生し、これにより、光信号の屈折角が変更されることが可能であり、言い換えると、光信号の伝播方向が調整され、異なる周波数帯の光信号が、異なる周波数帯に対応する光電変換素子に伝送される。
【0100】
異なる周波数帯に対応する光電変換部220の光電変換素子の位置に基づいて、メタサーフェイス構造210の各位置での各周波数帯の光信号に対応する屈折角、言い換えると、各位置での各周波数帯の光信号に対応する伝送方向を計算によって取得することができ、これにより、メタサーフェイス構造210の空間伝送位相分布を取得することができる。
【0101】
空間伝送位相分布は、各周波数帯の光信号の波長と、各周波数帯の光信号がメタサーフェイス構造に入射する位置と、各周波数帯の光信号が、各周波数帯に対応する光電変換素子に伝送される位置とに関係する。
【0102】
任意選択的に、メタサーフェイス構造210が光電変換部220と直接接触しない場合、言い換えると、メタサーフェイス構造210と光電変換部220との間に媒介物が存在する場合、空間伝送位相分布はメタサーフェイス構造210と光電変換部220との間の媒介物の屈折率にさらに関係する。場合によっては、説明の視点を換えるが、空間伝送位相分布はメタサーフェイス構造210と光電変換部220との間の媒介物の屈折率に関係する。たとえば、1つの光電変換部220の複数の光電変換素子とメタサーフェイス構造210との間の媒介物が同じである場合、空間伝送位相分布はメタサーフェイス構造210と光電変換部220との間の媒介物の屈折率に関係する。空間伝送位相分布はメタサーフェイス構造210と光電変換部220との間の媒介物の屈折率に関係することが分かる。
【0103】
たとえば、メタサーフェイス構造210の所定の位置での第nの周波数帯の空間伝送位相は、第nの周波数帯の光信号の波長と、第nの周波数帯の光信号が、第nの周波数帯に対応する光電変換素子に伝送される位置の座標と、メタサーフェイス構造210と光電変換部220との間の媒介物の屈折率とに関係する。
【0104】
光信号が伝送過程で異なる距離を通過するので、位相差が生じる。あらゆる周波数帯について、メタサーフェイス構造により、物体の所定の点からメタサーフェイス構造上のいずれの位置に入射する光信号でも、光電変換素子に到達するときに同じ位相を持つことを可能にすることができ、言い換えると、異なる光路によって生じる位相差を補償するのにメタサーフェイス構造を用いることができる。たとえば、メタサーフェイス構造上の位置Aでの空間伝送位相がφであり、位置Aから光電変換素子上の位置Bまでの伝送によって発生する位相がφ1であり、メタサーフェイス構造上の位置Cから光電変換素子上の位置Bまでの距離が最短であり、位置Cから光電変換素子上の位置Bまでの伝送によって生じる位相がφ0であり、位置Aでの空間伝送位相φは、
φ=φ0-φ1
を満たす。
【0105】
特に、第nの周波数帯について、φ
0は
【数4】
を満たす。
【0106】
第nの周波数帯について、φ
1は、
【数5】
を満たす。
【0107】
λnは第nの周波数帯の光信号の波長を示し、fnは第nの周波数帯の光信号に対応する焦点距離を示し、焦点距離は、第nの周波数帯の光信号が、第nの周波数帯に対応する光電変換素子の光感知位置に伝送されることを確実とするのに用いられ、nsubはメタサーフェイス構造210と光電変換部220との間の媒介物の屈折率を示し、Cは所定の位相である。第nの周波数帯の光信号に対応する焦点距離は、メタサーフェイス構造と、第nの周波数帯の光信号に対応する焦点との垂直距離であってもよい。
【0108】
たとえば、第nの周波数帯の光信号が、第nの周波数帯に対応する光電変換素子上の光感知領域に伝送されることが可能であるのであれば、焦点は第nの周波数帯に対応する光電変換素子に位置してもよいし、第nの周波数帯に対応する光電変換素子の上に位置してもよいし、第nの周波数帯に対応する光電変換素子の下に位置してもよい。
【0109】
任意選択的に、メタサーフェイス構造210の空間伝送位相分布φ(x,y,λ
n)は、
【数6】
を満たす。
【0110】
φ(x,y,λn)はメタサーフェイス構造210上での各位置及び各周波数帯に対応する位相分布を示し、x,yはメタサーフェイス構造210上の座標を示し、λnは第nの周波数帯の光信号の波長を示し、fnは第nの周波数帯の光信号に対応する焦点距離を示し、焦点距離は、第nの周波数帯の光信号が、第nの周波数帯に対応する光電変換素子の光感知位置に伝送されることを確実とするのに用いられ、xf,n及びyf,nは、第nの周波数帯の光信号が、第nの周波数帯に対応する光電変換素子に伝送される位置の座標を示し、nsubはメタサーフェイス構造210と光電変換部220との間の媒介物の屈折率を示し、Cは所定の位相である。
【0111】
画像センサ200が第2の基板230を含む場合、媒介物が第2の基板230であってもよい。
【0112】
たとえば、
図8(a)に示されているカラー画素単位について、(a)~
図11(c)は異なる周波数帯のメタサーフェイス構造210の空間伝送位相分布の概略図を示す。1つの光電変換素子の寸法が1.6μm×1.6μmであってもよく、すなわち、1つの光電変換部220の寸法が3.2μm×3.2μmであってもよく、1つのメタサーフェイス構造210の寸法が3.2μm×3.2μmであってもよく、第2の基板の厚さが15μmであってもよい。中心波長が赤色スペクトルの650nmである光の焦点が光電変換素子Aの中央に合せられ、中心波長が緑色スペクトルの550nmである光の焦点が光電変換素子B及び光電変換素子Cの中央に合せられ、中心波長が青色スペクトルの450nmである光の焦点が光電変換素子Dの中央に合せられる。第2の基板の材料が屈折率n
sub=1.47~1.46である二酸化ケイ素のガラスであってもよく、得られた空間伝送位相分布が
図11(a)~
図11(c)に示されている。
図11(a)は650nmの波長に対応する空間伝送位相分布を示し、
図11(b)は550nmの波長に対応する空間伝送位相分布を示し、
図11(c)は450nmの波長に対応する空間伝送位相分布を示す。
【0113】
上記では各周波数帯の中心波長のみを例として用いている。別の周波数又は別の波長についても、対応する空間伝送位相分布が上述の式を用いて計算されてもよい。
【0114】
たとえば、各周波数帯の中心周波数を用いて最大の合焦効率を実現することを可能にしてもよく、周波数帯の別の周波数の合焦効率が中心周波数の合焦効率よりも低くてもよい。言い換えると、中心周波数の焦点が、周波数帯に対応する光電変換素子の中央位置に合せられ、周波数帯の別の周波数については、当該周波数が属する周波数帯に基づいて、周波数帯に対応する光電変換素子上の対応する光送り先位置に集光されることを要する。
【0115】
メタサーフェイス構造210上で生じる伝送位相変化は微細構造の寸法、微細構造の形状、微細構造の材料や第1の基板の材料などの要因に関係する。
【0116】
任意選択的に、微細構造の材料は低損失の誘電体、たとえば、二酸化チタン、窒化ガリウムや炭化ケイ素であってもよい。
【0117】
任意選択的に、第1の基板の材料は低損失の誘電体、たとえば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、窒化ガリウムや炭化ケイ素であってもよい。
【0118】
本出願の本実施形態で提供されている解決手段によれば、メタサーフェイス構造は、光信号の伝送方向を調節し、メタサーフェイス構造全体によって受光された光信号中の各周波数帯の光信号を当該周波数帯に対応する光電変換素子に伝送するのに用いられることが可能である。既存の光フィルタリング方式が光分割方式に置き替えられ、光フィルタリング過程での光信号損失が避けられる。回転角度が90度以下である回転対称構造が用いられ、この構造は異なる偏光に対しても同じ対光信号応答を示すので、偏光依存性がない。これにより、各スペクトルチャンネルの光伝送率(light transmittance)と、画像センサの全体の光利用率と、出力画像のイメージング品質とが改善される。たとえば、偏光は直線偏光と円偏光とを含んでもよい。ベイヤーカラーフィルタシステムと比較して、本出願の本実施形態の解決手段では、光フィルタリングが実行されず、マイクロレンズアレイ及びベイヤーカラーフィルタがメタサーフェイス構造の配列と置換され、言い換えると、色分解解決手段及び合焦解決手段が光フィルタリング解決手段及び合焦解決手段の代わりに用いられる。これにより、光フィルタリング過程での光信号損失が避けられ、原理的に画像センサの光利用率が改善され、出力画像のイメージング品質が改善される。これに加えて、本出願の本実施形態の解決手段では、1つの光電変換部に対応する異なる周波数帯の個数が増大し、これにより、光利用率の減損を小さくしつつ、より多くの周波数スペクトル情報を得ることができる。これにより、画像センサの周波数スペクトル利用率が改善され、画像の色情報の喪失が抑えられ、イメージングの色の忠実度が改善され、イメージング品質が改善される。
【0119】
図12は本出願の実施形態に係る画像センサ作成方法300の概略図を示す。方法300は本出願の上述の実施形態の画像センサ200を作成するのに用いられてもよい。不要な繰り返しを避けるために、以下では、本出願の本実施形態の画像センサ作成方法を説明するときには重複説明を適切に省略する。方法300はステップ310及び320を含む。以下、ステップ310とステップ320とを詳細に説明する。
【0120】
310:光電変換部の配列を作成する。
【0121】
320:光電変換部の配列上にメタサーフェイス構造の配列を作成する。光電変換部は複数の光電変換素子を含み、光電変換部の各光電変換素子はスペクトル中の1つの周波数帯に対応し、メタサーフェイス構造は第1の基板と、第1の基板の上に位置する微細構造とを含み、微細構造及び第1の基板は各周波数帯の光信号を各周波数帯に対応する光電変換素子に伝送するように構成され、微細構造は回転対称構造であり、回転対称構造の回転角度は90度以下である。
【0122】
たとえば、光電変換部の配列とメタサーフェイス構造の配列とがCMOSプロセスを用いて集積方式で加工される。
【0123】
たとえば、ステップ320は第1の基板を光電変換部の配列上に堆積させ、第1の基板上に微細構造を作成するステップであってもよい。
【0124】
任意選択的に、微細構造及び第1の基板は、空間伝送位相勾配を得るためにメタサーフェイス構造の配列の接線方向に空間伝送位相を発生するように構成される。空間伝送位相勾配は各周波数帯の光信号を各周波数帯に対応する光電変換素子に伝送するのに用いられる。
【0125】
任意選択的に、画像センサが第2の基板をさらに含んでもよい。
【0126】
たとえば、ステップ320は、第2の基板を光電変換部の配列上に堆積させ、第2の基板上にメタサーフェイス構造の配列を作成するステップであってもよい。
【0127】
本出願の本実施形態の解決手段によれば、光電変換部の配列とメタサーフェイス構造の配列とが集積方式で加工され、これにより、光電変換部とメタサーフェイス構造との間の優れた位置合せ効果が確保されることが可能である。これにより画像センサの精度が改善される。メタサーフェイス構造を用いて、メタサーフェイス構造全体によって受光された光信号中の各周波数帯の光信号を当該周波数帯に対応する光電変換素子に伝送することができる。既存の光フィルタリング方式が光分割方式に置き替えられ、回転角度が90度以下である回転対称構造が用いられ、この構造は異なる偏光に対しても同じ対光信号応答を示すので、偏光依存性がない。これにより各スペクトルチャンネルの光伝送率が改善され、画像センサの全体の光利用率が改善される。
【0128】
図13は本出願の実施形態に係る画像センサ作成方法400の概略図を示す。方法400は本出願の上述の実施形態の画像センサ200を作成するのに用いられてもよい。不要な繰り返しを避けるために、以下では、本出願の本実施形態の画像センサ作成方法を説明するときには重複説明を適切に省略する。方法400はステップ410~430を含む。以下、ステップ410~ステップ430を詳細に説明する。
【0129】
410:光電変換部の配列を作成する。
【0130】
420:メタサーフェイス構造の配列を作成する。
【0131】
430:画像センサを得るためにメタサーフェイス構造の配列と光電変換部の配列とを組み合せる。光電変換部は複数の光電変換素子を含み、光電変換部の各光電変換素子はスペクトル中の1つの周波数帯に対応し、メタサーフェイス構造は第1の基板と、第1の基板の上に位置する微細構造とを含み、微細構造及び第1の基板は各周波数帯の光信号を各周波数帯に対応する光電変換素子に伝送するように構成され、微細構造は回転対称構造であり、回転対称構造の回転角度は90度以下である。
【0132】
たとえば、メタサーフェイス構造の配列がCMOSプロセスを用いて作成され、その後、光電変換部の配列と組み合せられる。
【0133】
たとえば、ステップ420は、メタサーフェイス構造の配列の第1の基板を堆積させ、第1の基板上にメタサーフェイス構造の配列の微細構造を作成するステップであってもよい。
【0134】
任意選択的に、微細構造及び第1の基板は、空間伝送位相勾配を得るためにメタサーフェイス構造の配列の接線方向に空間伝送位相を発生するように構成される。空間伝送位相勾配は各周波数帯の光信号を各周波数帯に対応する光電変換素子に伝送するのに用いられる。
【0135】
任意選択的に、画像センサが第2の基板をさらに含んでもよい。
【0136】
たとえば、ステップ430は、第2の基板を光電変換部の配列上に堆積させ、第2の基板を含む光電変換部の配列とメタサーフェイス構造の配列とを組み合せて画像センサを得るステップであってもよい。
【0137】
本出願の本実施形態の解決手段によれば、光電変換部の配列とメタサーフェイス構造の配列とが個別に加工され、加工技術が単純になる。メタサーフェイス構造を用いて、メタサーフェイス構造全体によって受光された光信号中の各周波数帯の光信号を当該周波数帯に対応する光電変換素子に伝送することができる。既存の光フィルタリング方式が光分割方式に置き替えられ、回転角度が90度以下である回転対称構造が用いられ、この構造は異なる偏光に対しても同じ対光信号応答を示すので、偏光依存性がない。これにより各スペクトルチャンネルの光伝送率が改善され、画像センサの全体の光利用率が改善される。
【0138】
図14は本出願の実施形態に係る画像センサ設計方法500の概略図を示す。方法500は本出願の上述の実施形態の画像センサ200を設計するのに用いられてもよい。不要な繰り返しを避けるために、以下では、本出願の本実施形態の画像センサ設計方法を説明するときには重複説明を適切に省略する。設計方法500はステップ510~550を含む。以下、ステップ510~ステップ550を詳細に説明する。
【0139】
510:画像センサのカラー画素単位の構成を設計する。
【0140】
構成は
図8(a)に示されているものであってもよい。画像センサは複数のカラー画素単位を含んでもよい。1つのカラー画素単位が光電変換部とメタサーフェイス構造とを含んでもよい。1つのカラー画素単位の最下層が光電変換部であってもよい。光電変換部は光電変換素子の配列であってもよい。光電変換部の各光電変換素子がスペクトル中の1つの周波数帯に対応してもよい。メタサーフェイス構造は光電素子の配列上にあってもよい。言い換えると、メタサーフェイス構造が複数の光電変換素子を覆ってもよい。
【0141】
カラー画素単位は光電変換部とメタサーフェイス構造との間に位置する第2の基板をさらに含んでもよい。第2の基板はメタサーフェイス構造を支持するように構成されてもよい。
【0142】
520:メタサーフェイス構造の機能モデルを決定する。言い換えると、画像センサにおける周波数スペクトルチャンネルの位置と周波数スペクトルチャンネルの個数とが決定される。
【0143】
1つのカラー画素単位において、メタサーフェイス構造は異なる周波数帯の光信号の焦点を異なる光電変換素子の光感知位置に個別に合せるように構成されている。メタサーフェイス構造の機能モデルを決定することは、光電変換素子に対応する周波数帯、光電変換素子に対応する周波数帯の配置の仕方、光電変換部の光電変換素子の個数などを決定することである。
【0144】
たとえば、メタサーフェイス構造の機能モデルがイメージング要件に基づいて決定されてもよく、言い換えると、光電変換素子に対応する周波数帯、光電変換素子に対応する周波数帯の配置の仕方、光電変換部の光電変換素子の個数などがイメージング要件に基づいて決定されてもよい。たとえば、光電変換素子に対応する周波数帯が赤色光、緑色光及び青色光を含んでもよい。1つの光電変換部が4つの光電変換素子を含んでもよく、4つの光電変換素子は赤色光、緑色光及び青色光のうちの1つの周波数帯にそれぞれ対応する。4つの光電変換素子に対応する周波数帯が
図8(b)に示されているようにRGGB方式で配置されてもよい。メタサーフェイス構造によって赤色光、緑色光及び青色光の焦点を
図8(a)及び
図8(b)の4つの光電変換素子の光感知位置にそれぞれ合せてもよい。
【0145】
上述は例にすぎない。より多くの周波数スペクトル情報が必要とされる場合には、メタサーフェイス構造によって覆われる光電変換素子の個数と、光電変換素子に対応する異なる周波数帯の個数とが増やされてもよく、これに応じて、メタサーフェイス構造はより多くの周波数スペクトル情報を得るように適切に変更される。別の周波数帯の情報が必要とされる場合、フォトエレクトリック素子に対応する異なる周波数帯を変更すること、メタサーフェイス構造を適切に変更することなどによって別の周波数帯の情報を得てもよい。言い換えると、メタサーフェイス構造の設計はメタサーフェイス構造によって覆われる光電変換素子の個数、光電変換素子に対応する周波数帯、光電変換素子に対応する周波数帯の配置の仕方などを変更することによって変更され、異なるイメージング要件を満たすことができる周波数スペクトルチャンネルの位置と、対応する周波数とに基づいてメタサーフェイス構造の光分割合焦位置を修正することによってより多くの周波数スペクトル情報が得られる。
【0146】
530:メタサーフェイス構造の理論モデルを設計する。メタサーフェイス構造の理論モデルはメタサーフェイス構造の空間伝送位相とも考えてもよい。
【0147】
異なる周波数帯に対応する光電変換部の光電変換素子の位置がステップ520でメタサーフェイス構造の機能モデルに基づいて決定されてもよく、メタサーフェイス構造上で各周波数帯の光信号に対して実施される必要がある屈折角が計算され、メタサーフェイス構造の各位置での各周波数帯の光信号に対応する屈折角、すなわち各位置での各周波数帯の光信号に対応する伝送方向が計算によって得られ、これにより、メタサーフェイス構造の空間伝送位相分布が得られてもよい。
【0148】
任意選択的に、メタサーフェイス構造210の空間伝送位相分布は、
【数7】
を満たす。
【0149】
φ(x,y,λn)はメタサーフェイス構造上での各位置及び周波数帯に対応する位相分布を示し、x,yはメタサーフェイス構造上の座標を示し、λnは第nの周波数帯の光信号の波長を示し、fnは第nの周波数帯の光信号に対応する焦点距離を示し、焦点距離は、第nの周波数帯の光信号の焦点が第nの周波数帯に対応する光電変換素子の光感知位置に合せられることを確実とするのに用いられ、xf,n及びyf,nは、第nの周波数帯の光信号が、第nの周波数帯に対応する光電変換素子に伝送される位置の座標を示し、nsubはメタサーフェイス構造と光電変換部との間の媒介物の屈折率を示し、Cは所定の定数である。
【0150】
画像センサが第2の基板を含む場合、媒介物が第2の基板であってもよい。
【0151】
540:メタサーフェイス構造の設計、説明の視点を換えると、メタサーフェイス構造部の設計を行なう。
【0152】
メタサーフェイス構造は、メタサーフェイス構造上で必要とされ、ステップ530で得られた空間伝送位相分布に基づいて設計されてもよい。
【0153】
メタサーフェイス構造は第1の基板と微細構造とを含んでもよい。メタサーフェイス構造を設計することは、第1の基板と微細構造とを設計することである。
【0154】
特に、空間伝送位相分布に基づいて微細構造の外形構造が設計されてもよい。微細構造は回転対称構造であり、回転対称構造の回転角度は90度以下である。たとえば、微細構造は円筒形構造であっても四角柱構造であっても十字形構造であってもよい。微細構造の材料も設計対象であってもよい。微細構造の材料は二酸化チタン、窒化ガリウムや炭化ケイ素などの低損失の誘電体であってもよい。第1の基板の材料も設計対象であってもよい。基板の材料は二酸化チタン、窒化ガリウムや炭化ケイ素などの低損失の誘電体であってもよい。
【0155】
上述の方法に係れば、メタサーフェイス構造によって必要とされる空間伝送位相分布を満たす第1の基板及び微細構造の複数のグループを得ることができる。異なる周波数でのメタサーフェイス構造の伝送位相及び伝送率がフルウエーブシミュレーションに基づいて得られてもよい。ステップ530の理論モデルにおいて必要とされる空間伝送位相分布が満たされると、最終的な微細構造として、伝送率が最大である微細構造が選択され、微細構造の空間分布が得られる。
【0156】
550:画像センサを加工する。
【0157】
たとえば、まず光電変換部の配列が作成されてもよく、その後、光電変換部の配列上にメタサーフェイス構造の配列が作成される。
【0158】
たとえば、光電変換部の配列とメタサーフェイス構造の配列とがCMOSプロセスを用いて集積方式で加工されてもよい。
【0159】
たとえば、光電変換部の配列とメタサーフェイス構造の配列とが作成されてもよく、その後、画像センサを得るためにメタサーフェイス構造の配列と光電変換部の配列とが組み合される。このようにして、既存の画像センサ加工技術を適合させることができる。
【0160】
たとえば、メタサーフェイス構造の配列がCMOSプロセスを用いて作成され、その後、光電変換部の配列と組み合される。
【0161】
本出願では、「中央」、「上」、「下」、「左」、「右」、「上部」、「下部」などの方向を示す用語は、添付の図面に概略的に配置されている構成要素の方向又は位置を基準にして定められている。これらの方向を示す用語は相対的な概念であり、相対的な説明と明確化のために用いられ、示されている装置や構成要素が特定の方向性を持ったり、特定の方向性を持って構成されて特定の方向に動作したりすることを要することを示したり示唆したりするのに用いられないことが当然分かる。これらの用語は、添付の図面の構成要素が配置される方向に応じて変化し得るので、本出願の限定として解釈することはできない。
【0162】
本出願の実施形態では、同じ参照番号が同じ構成要素や同じ部分を示す点にさらに留意するべきである。本出願の実施形態の同じ部分について、参照番号が付された一部のみや一構成要素のみが図において例として用いられている場合がある。その参照番号が別の同じ部分や構成要素にも適用可能であることが当然分かる。
【0163】
本明細書における用語「及び/又は」は、関連する物を説明するための関連の関係を記述するのにすぎず、3つの関係が存在し得ることを表わすことが当然分かる。たとえば、A及び/又はBは、Aのみが存在、AとBとの両方が存在、Bのみが存在という3つの場合を表わす場合がある。上記に加えて、本明細書中の記号「/」は、通常、関連する物の間の「又は」の関係を示す。
【0164】
上述のプロセスの順序番号は本出願の様々な実施形態で実行順序を意味しないことが当然分かる。プロセスの実行順序はプロセスの機能及び内部ロジックにしたがって決定されるべきであり、本出願の実施形態の実施プロセスに対するいかなる限定としても解釈されるべきではない。
【0165】
本明細書に開示されている実施形態で説明されている例中の部位及びアルゴリズムステップと考え合せれば、電子ハードウェア、又はコンピュータソフトウェアと電子ハードウェアとの組合せによって本出願が実施されることが可能であることに当業者は想到し得る。機能がハードウェアによって実行されるのかソフトウェアによって実行されるのかは、技術的解決手段の具体的な用途と設計上の制約条件に依存する。当業者は、具体的な用途の各々に対して、説明されている機能を実施するのに異なる方法を用いることができるが、本実施が本出願の範囲を越えるとは当然みなされない。
【0166】
説明を簡便にするために、上述のシステム、装置及び部位の詳細な動作プロセスについて、上述の方法の実施形態の対応するプロセスを参照することができることは当業者は明確に理解することができる。本明細書では詳細を重ねて説明しない。
【0167】
本出願に設けられているいくつかの実施形態では、開示されているシステム、装置及び方法が他の仕方で実施されてもよいことが当然分かる。たとえば、説明されている装置の実施形態は例にすぎない。たとえば、部位への分割は論理的機能の分割にすぎず、実際の実施の際には他の分割であってもよい。たとえば、複数の部位や構成要素が別のシステムに組み込まれたり統合されたりしてもよいし、いくつかの特徴が無視されたり実行されなかったりしてもよい。上記に加えて、表示されたり説明されたりしている相互接続又は直接接続又は通信接続がいくつかの境界部を通じて実施されてもよい。装置や部位間の間接接続又は通信接続が電子的に実施されても、機械的に実施されても、他の形態で実施されてもよい。
【0168】
別体の構成要素として説明されている部位が物理的に分離していても物理的に分離していなくてもよく、部位として表示されている構成要素が物理的部位であっても物理的部位でなくてもよく、言い換えると、一箇所に位置してもよいし、複数のネットワークユニットに分散されてもよい。実施形態の解決手段の目的を達成するために、実際の要求に基づいて部位の一部又は全部を選択してもよい。
【0169】
上記に加えて、本出願の実施形態の機能部位が統合されて1つの処理部位にされてもよいし、部位の各々が物理的に単独で存在してもよいし、あるいは、2つ以上の部位が統合されて1つの部位にされる。
【0170】
機能がソフトウェア機能部位の形態で実施され、独立した製品として販売されたり使用されたりする場合、機能がコンピュータ可読記憶媒体に記憶されてもよい。このような理解に基づけば、ソフトウェア製品の形態で、本出願の技術的解決手段が必須なものとして実施されてもよし、従来の技術に貢献する部分が実施されてもよいし、技術的解決手段の一部が実施されてもよい。コンピュータソフトウェア製品は記憶媒体に記憶され、コンピュータデバイス(パーソナルコンピュータ、サーバやネットワークデバイスであってもよい)に本出願の実施形態で説明されている方法のステップの全部又は一部を実行するように指示するためのいくつかの指示を含む。上述の記憶媒体は、ユニバーサル・シリアル・バス・フラッシュ・ディスク(USB flash disk,UFD)、リムーバブルハードディスク、読出し専用メモリ(read-only memory,ROM)、ランダムアクセスメモリ(random access memory,RAM)、磁気ディスクやコンパクトディスクなど、プログラムコードを記憶することができるあらゆる媒体を含む。UFDはUSBフラッシュドライブやUSBフラッシュドライブとも略称される場合がある。
【0171】
上述の説明は本出願の特定の実現例にすぎず、一方で本出願の保護範囲を限定することを意図していない。本出願で開示されている技術的範囲の当業者によって容易に想到されるあらゆる変形や置換が本出願の保護範囲に含まれる。したがって、本出願の保護範囲は請求項の保護範囲にしたがう。
【符号の説明】
【0172】
110 レンズ群
120 画像センサ
121 マイクロレンズ
122 ベイヤーカラーフィルタ
123 フォトダイオード
130 電気信号プロセッサ
131 アナログデジタルコンバータ
132 デジタルシグナルプロセッサ
133 アナログ信号プリプロセッサ
200 画像センサ
210 メタサーフェイス構造
220 光電変換部
230 基板
300 画像センサ作成方法
400 画像センサ作成方法
500 画像センサ設計方法