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特許7462776L-分岐鎖アミノ酸の生産能が強化された微生物及びそれを用いたL-分岐鎖アミノ酸の生産方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】L-分岐鎖アミノ酸の生産能が強化された微生物及びそれを用いたL-分岐鎖アミノ酸の生産方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/77 20060101AFI20240329BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240329BHJP
   C12P 13/04 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
C12N15/77 Z
C12N1/21 ZNA
C12P13/04
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022549559
(86)(22)【出願日】2021-05-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-07
(86)【国際出願番号】 KR2021005641
(87)【国際公開番号】W WO2021235742
(87)【国際公開日】2021-11-25
【審査請求日】2022-08-17
(31)【優先権主張番号】10-2020-0061174
(32)【優先日】2020-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【微生物の受託番号】KCCM  KCCM12707P
(73)【特許権者】
【識別番号】513178894
【氏名又は名称】シージェイ チェイルジェダン コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125081
【弁理士】
【氏名又は名称】小合 宗一
(72)【発明者】
【氏名】ユン、ビョン フン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヒョ ジン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ソン ヘ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヒュン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】チェ、スン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジ ヘ
【審査官】大西 隆史
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-521363(JP,A)
【文献】国際公開第2019/147059(WO,A1)
【文献】特開2006-149214(JP,A)
【文献】LANGE, C. et al.,Applied and Environmental Microbiology,2003年05月,Vol. 69, Issue 5,pp. 2521-2532,DOI: 10.1128/AEM.69.5.2521-2532.2003
【文献】MORMANN, S. et al.,BMC Genomics,2006年,Vol. 7, Article No. 205,pp. 1-20,DOI: 10.1186/1471-2164-7-205
【文献】KENNERKNECHT, N. et al.,Journal of Bacteriology,2002年07月,Vol 184, No. 14,pp. 3947-3956,DOI: 10.1128/JB.184.14.3947-3956.2002
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12N 1/00- 7/08
C12P 1/00-41/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式1:
[一般式1]
X-Z-Y-Z’
(上記式において、
Xは配列番号1又はこれと90%以上の相同性を有する配列であり、
Yはトランスポゾン(transposon)であり、
Zは配列番号5の0から11番目までの配列であり、Z’は配列番号5の12番目から188番目の配列である)
で表されるポリヌクレオチド配列を染色体に含む、L-分岐鎖アミノ酸生産用コリネバクテリウム属微生物。
【請求項2】
上記Yは、配列番号5の11番目の配列の後に挿入される、請求項1に記載の微生物。
【請求項3】
上記Z及びZ’は、配列番号5またはこれと90%以上の相同性を有する配列である、請求項1に記載の微生物。
【請求項4】
上記X、Z又はZ’は、これを含む微生物由来の配列である、請求項1に記載の微生物。
【請求項5】
上記一般式のポリヌクレオチド配列中、Yは配列番号3からなるものである、請求項1に記載の微生物。
【請求項6】
上記Z’の3’末端に配列番号6、配列番号7またはこれと90%以上の相同性を有する配列をさらに含む、請求項1に記載の微生物。
【請求項7】
上記Z’の3’末端にさらに含まれる配列は、該さらに含まれる配列を含む微生物由来の配列である、請求項6に記載の微生物。
【請求項8】
コリネバクテリウム属微生物は、コリネバクテリウム・グルタミクムである、請求項1~7のいずれか一項に記載の微生物。
【請求項9】
コリネバクテリウム属微生物の染色体に導入し、L-分岐鎖アミノ酸の生産を増加させるための、
下記一般式1:
[一般式1]
X-Z-Y-Z’
(上記一般式において、
Xは配列番号1またはこれと90%以上の相同性を有するものであり、
Yはトランスポゾン(transposon)であり、
Zは配列番号5の0から11番目までの配列であり、Z’は配列番号5の12番目から188番目の配列である)
で示されるポリヌクレオチド配列の使用
【請求項10】
上記Yは、配列番号5の11番目の配列の後に挿入される、請求項9に記載の使用
【請求項11】
上記Z及びZ’は、配列番号5又はこれと90%以上の相同性を有する配列である、請求項9に記載の使用
【請求項12】
請求項1~7のいずれか一項に記載のコリネバクテリウム属微生物を培地で培養する段階
;及び
上記培地又はその培養物からL-分岐鎖アミノ酸を回収する段階を含むL-分岐鎖アミノ酸を生産する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、新規なポリヌクレオチドを含むL-分岐鎖アミノ酸の生産能が強化された微生物及びそれを用いたL-分岐鎖アミノ酸の生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
L-アミノ酸は、タンパク質の基本構成単位であり、薬品原料と食品添加剤、動物飼料、栄養剤、殺虫剤、殺菌剤などの重要素材として使われる。特に、分岐鎖アミノ酸(Brached Chain Amino Acids, BCAA)は、必須アミノ酸であるL-バリン、L-ロイシン、L-イソロイシンの総称であり、前記分岐鎖アミノ酸は、抗酸化効果及び筋肉細胞のタンパク質合成作用を直接的に促進させる効果があることが知られている。
【0003】
一方、微生物を用いた分岐鎖アミノ酸の生産は、主にエシェリキア属微生物またはコリネバクテリウム属微生物を通じて行われ、ピルビン酸からいくつかの段階を経てケトイソカプロン酸(2-ketoisocaproate)を前駆体として生合成されることが知られている(韓国特許登録番号第10-0220018号、韓国特許登録番号第10-0438146号)。しかし、上記微生物によるL-分岐鎖アミノ酸の生産は、工業的に大量製造が容易ではない問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】韓国特許登録番号第10-0220018号
【文献】韓国特許登録番号第10-0438146号
【文献】韓国登録特許第10-1117022号
【文献】韓国登録特許第10-0924065号
【文献】国際公開特許第2008-033001号
【文献】韓国登録特許第10-1851898号
【文献】韓国登録特許第10-1796830号
【文献】韓国登録特許第10-1335789号
【非特許文献】
【0005】
【文献】Pearson et al(1988)[Proc.Natl. Acad.Sci.USA 85]:2444
【文献】Rice et al., 2000, Trends Genet. 16: 276-277
【文献】Needleman and Wunsch, 1970, J. Mol. Biol. 48: 443-453
【文献】Devereux, J., et al, Nucleic Acids Research 12: 387 (1984)
【文献】Atschul, [S.] [F.,] [ET AL, J MOLEC BIOL 215]: 403 (1990)
【文献】Guide to Huge Computers, Martin J. Bishop, [ED.,] Academic Press, San Diego,1994
【文献】[CARILLO ETA/.](1988) SIAM J Applied Math 48: 1073
【文献】Smith and Waterman、Adv.Appl.Math(1981)2:482
【文献】Schwartz and Dayhoff、eds.、Atlas Of Protein Sequence And Structure、National Biomedical Research Foundation、pp.353-358(1979)
【文献】Gribskov et al(1986)Nucl. Acids Res.14:6745
【文献】Sambrook et al., supra, 9.50-9.51, 11.7-11.8
【文献】Introduction to Biotechnology and Genetic Engineering, A. J. Nair., 2008
【文献】van der Rest et al., Appl Microbiol Biotechnol 52:541-545, 1999
【文献】Biotechnology and Bioprocess Engineering, June 2014, Volume 19, Issue 3, pp 456-467
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは新規なポリヌクレオチドを含むL-分岐鎖アミノ酸の生産能が強化された微生物を製造するために鋭意努力した結果、上記ポリヌクレオチドが導入されたコリネ型微生物においてL-アミノ酸の生産能が向上することを確認することにより本出願を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願の一つの目的は、ポリヌクレオチド配列を含む、L-分岐鎖アミノ酸生産用コリネバクテリウム属微生物を提供することにある。
【0008】
本出願のもう一つの目的は、ポリヌクレオチド配列を含む、L-分岐鎖アミノ酸生産用組成物を提供することにある。
【0009】
本出願のもう一つの目的は、上記コリネバクテリウム属微生物を培地で培養する段階及び上記培地またはその培養物からL-分岐鎖アミノ酸を回収する段階を含むL-分岐鎖アミノ酸を生産する方法を提供することにある。
【0010】
本出願のもう一つの目的は、微生物にポリヌクレオチド配列を含む、L-分岐鎖アミノ酸の生産増加方法を提供する。
【0011】
本出願のもう一つの目的は、L-分岐鎖アミノ酸を生産するためのポリヌクレオチド配列の用途を提供することにある。
【0012】
本出願のもう一つの目的は、L-分岐鎖アミノ酸を生産するための上記微生物の用途を提供することにある。
【発明の効果】
【0013】
本出願の新規なポリヌクレオチドを含むL-分岐鎖アミノ酸を生産する微生物を培養する場合、L-分岐鎖アミノ酸を高効率で生産することができる。また、製造されたアミノ酸は動物飼料または動物飼料添加剤だけでなく、ヒトの食品または食品添加剤、医薬品など多様な製品に応用できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本出願をさらに詳細に説明する。しかし、本出願に開示した一実施態様の説明及び実施例は、共通する事項について他の実施態様の説明及び実施例でも適用され得る。また、本出願の詳細な説明に開示された様々な要素の全ての組み合わせは本出願の権利範囲に属することは勿論である。それだけでなく、下記の具体的な説明により本発明出願の権利範囲が制限されるものではない。
【0015】
また、当該技術分野における通常の知識を有する者は、通常の実験のみを使用し、本出願に記載された本出願の特定様態に対する多数の等価物を認知したり確認することができる。また、このような等価物は本出願に含まれることが意図される。
【0016】
本出願の一つの形態はポリヌクレオチド配列を含む、L-分岐鎖アミノ酸生産用コリネバクテリウム属微生物を提供する。
【0017】
本出願において用語、「ポリヌクレオチド」は、ヌクレオチド単量体(monomer)が共有結合により長く鎖状につながったヌクレオチドの重合体(polymer)で一定の長さ以上のDNA鎖である。
【0018】
本出願の目的上、上記ポリヌクレオチドは、アミノ酸、具体的には分岐鎖アミノ酸、より具体的にはロイシン、バリン、イソロイシンを含むアミノ酸の生産、または生産量を増加させるのに関与するポリヌクレオチドを意味するが、これに制限されない。
【0019】
また、上記ポリヌクレオチドはX-Z-Y-Z’[一般式1]で示されるものであってもよく、上記式において、Xは配列番号1またはこれと90%以上の相同性を有する配列であり、Yはトランスポゾン(transposon)であり、Zは配列番号5の0からn番目までの配列であり、Z’は配列番号5のn+1番目から配列番号5の最後の順序である188番目の配列であってもよく、上記配列番号5の188番目の配列は‘N’であり、A(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、及びC(シトシン)から選択されるいずれか一つであってもよく、具体的にはA(アデニン)またはG(グアニン)であってもよいが、これに制限されない。
【0020】
上記nは‘0’を含む自然数を意味する。上記においてnが0である場合、これはXのすぐ後の3’の方にYが連結されることを意味する。また、上記Z及びZ’は配列番号5またはこれと90%以上の相同性を有する配列であってもよいが、これに制限されない。
【0021】
また、上記一般式1において、Yはトランスポゾン(transposon)で配列番号3からなるものであってもよく、配列番号5のn番目の配列の後に挿入されるものであり、Z及びZ’の配列のいずれの位置にも挿入され得るものである。具体的には、Yが挿入される部位であるZ及びZ’は目的遺伝子の発現増大のためにYが挿入され得る目的遺伝子のアップストリーム(upstream)の位置に存在する部位であり、内生的にはZ及びZ’は互いに連結されて一つのアップストリームを構成するが、これに制限されない。このようなZ及びZ’は目的遺伝子の発現増大のために挿入される一つのアップストリームの位置の一部を構成する、一つの連続的な配列であり、YがZの3’末端に(ZのO番目の配列に連結する際はXの3’末端に)、Z’の5’末端に位置するようになって互いにZ及びZ’に分離され得る。一例として、Z及びZ’は配列番号5の塩基配列として計188個の塩基配列を有しており、i)1番目の配列の後にYであるトランスポゾンが挿入されると、配列番号5の塩基配列において5’末端から1番目の塩基配列がZとなり、配列番号5の塩基配列において5’末端から1個の塩基配列を除いた187個の塩基配列がZ’となる。また、ii)11番目の配列の後にYであるトランスポゾンが挿入されると、配列番号5の塩基配列において5’末端から11個の塩基配列がZとなり、配列番号5の塩基配列において5’末端から11個の塩基配列を除いた177個の塩基配列がZ’となり、iii)187番目の配列の後にYであるトランスポゾンが挿入されると、配列番号5の塩基配列において5’末端から187個の塩基配列がZとなり、配列番号5の塩基配列において5’末端から187個の塩基配列を除いた1個の塩基配列がZ’となるが、上記記載は一例に過ぎないため、これに限定されない。
【0022】
具体的には、11番目の後の塩基配列にYであるトランスポゾンが挿入された場合、塩基配列であるZは配列番号2またはこれと90%以上の相同性を有する配列であってもよく、配列番号5の塩基配列において5’末端から11個の塩基配列を除いた177個の塩基配列であるZ’は配列番号4またはこれと90%以上の相同性を有する配列であってもよいが、これに制限されない。上記配列番号4の最後の配列は「N」であり、A(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、及びC(シトシン)から選択されるいずれか一つであってもよく、具体的にはA(アデニン)またはG(グアニン)であってもよいが、これに制限されない。
【0023】
X、ZまたはZ’はこれを含む微生物由来の配列であれば制限なく含まれてもよい。また、上記配列番号1、配列番号2、配列番号4、及び配列番号5のヌクレオチド配列は、公知のデータベースであるNCBI Genbankでその配列を確認することができる。
【0024】
上記ポリヌクレオチドは、Xが配列番号1及び/又は上記配列番号1と少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%以上の相同性(homology)または同一性(identity)を有するヌクレオチド配列であってもよく、Z及びZ’の配列番号5及び/又は上記配列番号5と少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%以上の相同性(homology)または同一性(identity)を有するヌクレオチド配列であってもよく、相同性または同一性を有するヌクレオチド配列は、上記範疇中、100%の同一性を有する配列は除外されたり、100%未満の同一性を有する配列であってもよい。
【0025】
本出願の目的上、上記ポリヌクレオチドは、X、Z及びZ’を含む微生物由来の配列にトランスポゾンであるYが挿入されさえすれば、L-分岐鎖アミノ酸の生産を増加させる役割をし得ることを意味する。
【0026】
また、上記Z’の3’末端に配列番号6、配列番号7またはこれらと90%以上の相同性を有する配列をさらに含むものであってもよいが、これに制限されない。具体的には、上記ポリヌクレオチドはZ’の3’末端に配列番号6、配列番号7またはこれらと90%以上の相同性を有する配列を含む微生物由来の配列であれば、これに制限されない。
【0027】
一例として、上記一般式1で示されたポリヌクレオチド配列中、トランスポゾンであるYを除いたX-Z-Z’の配列及びZ’の3’末端に追加された配列を含む配列はNCgl2472のアップストリーム(upstream)の配列に該当してもよいが、これに制限されない。
【0028】
具体的には、上記一般式1で示されたポリヌクレオチド配列は、配列番号16または配列番号17であってもよいが、これに制限されない。
【0029】
相同性(homology)及び同一性(identity)は、二つの与えられた塩基配列と関連した程度を意味し、百分率で表示することができる。
【0030】
用語、相同性と同一性は、しばしば相互交換的に利用できる。
【0031】
保存された(conserved)ポリヌクレオチドの配列相同性または同一性は標準配列アルゴリズムにより決定され、使用されるプログラムにより確立されたデフォルトギャップのペナルティが共に利用できる。実質的に、相同性を有したり(homologous)または同一な(identical)配列は、一般に、配列の全体または全長の少なくとも約50%、60%、70%、80%または90%により中間または高いストリンジェントな条件(stringent conditions)でハイブリダイズすることができる。ハイブリダイズするポリヌクレオチドにおいてコドンの代わりに縮退コドンを含むポリヌクレオチドも考慮される。
【0032】
任意の二つのポリヌクレオチド配列が相同性、類似性または同一性を有するかどうかは、例えば、Pearson et al(1988)[Proc.Natl. Acad.Sci.USA 85]:2444でのようなデフォルトパラメータを用いて「FASTA」プログラムのような公知のコンピュータアルゴリズムを用いて決定することができる。または、EMBOSSパッケージのニードルマンプログラム(EMBOSS: The European Molecular Biology Open Software Suite, Rice et al., 2000, Trends Genet. 16: 276-277)(バージョン5.0または以降のバージョン)で行われるような、ニードルマン-ウンシュ(Needleman-Wunsch)アルゴリズム(Needleman and Wunsch, 1970, J. Mol. Biol. 48: 443-453)を使用して決定することができる(GCGプログラムパッケージ(Devereux, J., et al, Nucleic Acids Research 12: 387 (1984)), BLASTP, BLASTN, FASTA (Atschul, [S.] [F.,] [ET AL, J MOLEC BIOL 215]: 403 (1990); Guide to Huge Computers, Martin J. Bishop, [ED.,] Academic Press, San Diego,1994,及び[CARILLO ETA/.](1988) SIAM J Applied Math 48: 1073を含む)。例えば、国立生物工学情報データベースセンターのBLAST、またはClustalWを用いて相同性、類似性または同一性を決定することができる。
【0033】
ポリヌクレオチドの相同性、類似性または同一性は、例えば、Smith and Waterman、Adv.Appl.Math(1981)2:482に公知となった通り、例えば、Needleman et al.(1970)、J Mol Biol.48:443のようなGAPコンピュータプログラムを用いて配列情報を比較することにより決定することができる。要約すると、GAPプログラムは、二配列中、より短いものにおける記号の総数であり、類似の配列された記号(すなわち、ヌクレオチドまたはアミノ酸)の数を除した値と定義する。GAPプログラムのためのデフォルトパラメータは、(1)一進法比較マトリックス(同一性のために1、そして非同一性のために0の値を含有する)及びSchwartz and Dayhoff、eds.、Atlas Of Protein Sequence And Structure、National Biomedical Research Foundation、pp.353-358(1979)により開示された通り、Gribskov et al(1986)Nucl. Acids Res.14:6745の加重比較マトリックス(またはEDNAFULL(NCBI NUC4.4のEMBOSSバージョン)置換マトリックス);(2)各ギャップのための3.0のペナルティ及び各ギャップにおいて各記号のための追加の0.10ペナルティ(またはギャップ開放ペナルティ10、ギャップ延長ペナルティ0.5);及び(3)末端ギャップのための無ペナルティを含むことができる。したがって、本出願で使用されたものとして、用語「相同性」または「同一性」は配列間の関連性(relevance)を示す。
【0034】
また、本出願のポリヌクレオチドは、コドンの縮退性(degeneracy)により、または上記ポリヌクレオチドを発現させようとする生物で好まれるコドンを考慮し、ポリヌクレオチド配列を変化させない範囲内でコード領域に、多様な変形が行われてもよい。また、公知の遺伝子配列から製造され得るプローブ、例えば、上記塩基配列の全体又は一部に対する相補配列とストリンジェントな条件の下にハイブリダイズし、配列番号1及び/又は配列番号3のヌクレオチドの配列において一つ以上のヌクレオチドが他のヌクレオチドに置換され、プロモーター活性を有するポリヌクレオチド配列であれば、制限なく含むことができる。上記「ストリンジェントな条件(stringent condition)」とは、ポリヌクレオチド間の特異的ハイブリダイゼーションを可能にする条件を意味する。このような条件は、文献(例えば、J.Sambrook et al.、同上)に具体的に記載されている。例えば、相同性(homology)または同一性(identity)が高い遺伝子同士、40%以上、具体的には70%以上、80%以上、85%以上、90%以上、より具体的には95%以上、さらに具体的には97%以上、特に具体的には99%以上の相同性または同一性を有する遺伝子同士をハイブリダイズし、それより相同性または同一性が低い遺伝子同士をハイブリダイズしない条件、または通常のサザンハイブリダイゼーション(southern hybridization)の洗浄条件である60℃ 1XSSC、0.1% SDS、具体的には60℃ 0.1XSSC、0.1% SDS、より具体的には68℃ 0.1XSSC、0.1% SDSに相当する塩濃度及び温度で1回、具体的には、2回~3回洗浄する条件を列挙することができる。
【0035】
ハイブリダイゼーションは、たとえハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに応じて塩基間のミスマッチ(mismatch)が可能であっても、2つの核酸が相補的配列を有することを要求する。用語「相補的」は、互いにハイブリダイズ可能なヌクレオチド塩基間の関係を記述するのに使用される。例えば、DNAに関し、アデニンはチミンに相補的であり、シトシンはグアニンに相補的である。したがって、本出願は、また、実質的に類似の核酸配列だけでなく、配列全体に相補的な単離された核酸断片を含んでもよい。
【0036】
具体的には、相同性または同一性を有するポリヌクレオチドは、55℃のTm値でハイブリダイゼーション段階を含むハイブリダイゼーション条件を用い、上述の条件を用いて探知することができる。また、前記Tm値は、60℃、63℃または65℃であってもよいが、これに限定されるものではなく、その目的に応じて当業者により適宜調節されてもよい。
【0037】
ポリヌクレオチドをハイブリダイズする適切なストリンジェンシーは、ポリヌクレオチドの長さ及び相補性の程度に依存し、変数は当技術分野においてよく知られている (Sambrook et al., supra, 9.50-9.51, 11.7-11.8を参照)。
【0038】
本出願で使用される用語「ポリヌクレオチドを含む微生物」とは、自然に分岐鎖アミノ酸の生産能を有する微生物または分岐鎖アミノ酸の生産能のない親株に分岐鎖アミノ酸の生産能が付与された微生物を意味する。具体的には、上記微生物はX-Z-Y-Z’[一般式1]のポリヌクレオチドを含むL-分岐鎖アミノ酸の生産用微生物であってもよいが、これに制限されない。具体的には、上記微生物は、ポリヌクレオチドが一般式X-Z-Y-Z’で示され、上記式において、Xは配列番号1またはこれと90%以上の相同性を有する配列であり、Yはトランスポゾン(transposon)であり、Z及びZ’は配列番号5またはこれと90%以上の相同性を有する配列であってもよい。
【0039】
本出願の目的上、上記微生物は、上記ポリヌクレオチドを含み、分岐鎖アミノ酸を生産できる微生物であれば、いずれも可能である。
【0040】
本出願において上記「分岐鎖アミノ酸を生産できる微生物」は「分岐鎖アミノ酸を生産する微生物」、「分岐鎖アミノ酸の生産能を有する微生物」と混用され得る。
【0041】
本出願の用語「分岐鎖アミノ酸」とは、側鎖に分岐アルキル基のあるアミノ酸をいい、バリン、ロイシン及びイソロイシンを含む。具体的には、本出願において上記分岐鎖アミノ酸はL-分岐鎖アミノ酸であってもよく、上記L-分岐鎖アミノ酸は、L-バリン、L-ロイシンまたはイソロイシンであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0042】
本出願において用語、「分岐鎖アミノ酸を生産する微生物」は、野生型微生物や自然的または人為的に遺伝的変形が起きた微生物を全て含み、外部遺伝子が挿入されたり内在的遺伝子の活性が強化されたり不活性化されるなどの原因により特定の機序が弱化または強化された微生物であり、目的とする分岐鎖アミノ酸の生産のために遺伝的変異が起きたり活性を強化させた微生物であってもよい。本出願の目的上、上記分岐鎖アミノ酸を生産する微生物は、上記ポリヌクレオチドを含み、目的とする分岐鎖アミノ酸の生産能が増加したことを特徴とし、具体的には、コリネバクテリウム属微生物であってもよい。具体的には、本出願において分岐鎖アミノ酸を生産する微生物または分岐鎖アミノ酸の生産能を有する微生物は、分岐鎖アミノ酸生合成経路内の遺伝子の一部が強化または弱化されたり、分岐鎖アミノ酸分解経路内の遺伝子の一部が強化または弱化された微生物であってもよいが、これに制限されない。
【0043】
本出願において用語「分岐鎖アミノ酸を生産するコリネバクテリウム属(the genus Corynebacterium)微生物」とは、天然型または変異を通じて分岐鎖アミノ酸の生産能を有しているコリネバクテリウム属微生物であってもよい。具体的には、本出願において分岐鎖アミノ酸の生産能を有するコリネバクテリウム属微生物とは、本出願のポリヌクレオチドを含むか、または上記ポリヌクレオチドをコードする遺伝子を含むベクターで形質転換され、向上した分岐鎖アミノ酸の生産能を有するようになったコリネバクテリウム属微生物を意味する。上記「向上した分岐鎖アミノ酸の生産能を有するようになったコリネバクテリウム属微生物」は、形質変化前の親株または非変形微生物より分岐鎖アミノ酸の生産能が向上した微生物を意味する。上記「非変形微生物」は天然型菌株自体であるか、上記アセトヒドロキシ酸イソメロレダクターゼをコードする遺伝子を含まない微生物、または上記ポリヌクレオチド及び目的タンパク質をコードする遺伝子を含むベクターで形質転換されない微生物を意味する。
【0044】
本出願において、「コリネバクテリウム属微生物」は、具体的には、 コリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)、コリネバクテリウム・アンモニアゲネス(Corynebacterium ammoniagenes)、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)、ブレビバクテリウム・フラバム(Brevibacterium flavum)、コリネバクテリウム・サーモアミノゲネス(Corynebacterium thermoaminogenes)、コリネバクテリウム・エフィシエンス(Corynebacterium efficiens)、コリネバクテリウム・スタティオニス(Corynebacterium stationis) などであるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0045】
本出願のもう一つの形態は、上記ポリヌクレオチド配列を含む、L-分岐鎖アミノ酸生産用組成物を提供する。
【0046】
上記L-分岐鎖アミノ酸生産用組成物は、本出願のポリヌクレオチドによりL-分岐鎖アミノ酸を生産できる組成物を意味する。その例として、上記組成物は、上記ポリヌクレオチドを含み、さらに上記ポリヌクレオチドを作動させる構成を制限なく含むことができる。上記ポリヌクレオチドは、導入された宿主細胞で作動可能に連結された遺伝子を発現させるようにベクター内に含まれた形態であってもよい。
【0047】
本出願のもう一つの様態は、上記コリネバクテリウム属微生物を培地で培養する段階及び上記培地またはその培養物からL-分岐鎖アミノ酸を回収する段階を含むL-分岐鎖アミノ酸を生産する方法を提供することである。
【0048】
上記方法において、上記微生物を培養する段階は、特に制限されないが、公知となった回分式培養方法、連続式培養方法、流加式培養方法などにより行うことができる。この時、培養条件は、特にこれに制限されないが、塩基性化合物(例:水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたはアンモニア)または酸性化合物(例:リン酸または硫酸)を使用して適正pH(例えば、pH5~9、具体的にはpH6~8、最も具体的にはpH6.8)を調節することができ、酸素または酸素含有ガス混合物を培養物に導入させて好気性条件を維持することができる。培養温度は20~45℃、具体的には25~40℃を維持することができ、約10~160時間培養できるが、これに制限されるものではない。上記培養により生産されたアミノ酸は培地中に分泌されたり、細胞内に残留してもよい。
【0049】
併せて、用いられる培養用培地は、炭素供給源としては、糖及び炭水化物(例:グルコース、スクロース、ラクトース、フルクトース、マルトース、モラセス、澱粉及びセルロース)、油脂及び脂肪(例:大豆油、ひまわり種子油、ピーナッツ油及びココナッツ油)、脂肪酸(例:パルミチン酸、ステアリン酸及びリノール酸)、アルコール(例:グリセロール及びエタノール)及び有機酸(例:酢酸)などを個別に用いたり、または混合して用いられるが、これに制限されない。窒素供給源としては、窒素含有有機化合物(例:ペプトン、酵母抽出液、肉汁、麦芽抽出液、トウモロコシ浸漬液、大豆粕粉及びウレア)、または無機化合物(例:硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム及び硝酸アンモニウム)などを個別に用いたり、または混合して用いられるが、これに制限されない。リン供給源としては、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、これに対応するナトリウム含有塩などを個別に用いたり、または混合して用いられるが、これに制限されない。また、培地にはその他の金属塩(例:硫酸マグネシウムまたは硫酸鉄)、アミノ酸及びビタミンのような必須成長促進物質を含んでもよい。
【0050】
本出願の上記培養段階で生産されたアミノ酸を回収する方法は、培養方法により当該分野において公知となった適合した方法を用いて培養液から目的とするアミノ酸を収集(collect)することができる。例えば、遠心分離、ろ過、陰イオン交換クロマトグラフィー、結晶化及びHPLCなどが使用されてもよく、当該分野において公知となった適合した方法を用いて培地または微生物から目的とするアミノ酸を回収することができる。
【0051】
また、上記回収段階は、精製工程を含むことができ、当該分野において公知となった適合した方法を用いて行うことができる。したがって、上記回収されるアミノ酸は、精製された形態またはアミノ酸を含有した微生物発酵液であってもよい(Introduction to Biotechnology and Genetic Engineering, A. J. Nair., 2008)。
【0052】
また、本出願の目的上、上記プロモーター活性を有するポリヌクレオチドを含む微生物の場合、バリン、ロイシンまたはイソロイシンを含む分岐鎖アミノ酸の生産量が増加することを特徴とする。これは、野生型コリネバクテリウム属菌株が分岐鎖アミノ酸を非常に極微量で生産できたり生産できないことに比べ、本出願のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドを通じて分岐鎖アミノ酸の生産量を増加させることができることに意義がある。
【0053】
本出願のもう一つの様態は、微生物にポリヌクレオチド配列を含ませることを含む、L-分岐鎖アミノ酸生産増加方法を提供する。
【0054】
本出願のもう一つの様態は、L-分岐鎖アミノ酸を生産するためのポリヌクレオチド配列の用途を提供することである。
【0055】
本出願のもう一つの様態は、L-分岐鎖アミノ酸を生産するための上記微生物の用途を提供することである。
【0056】
上記「L-分岐鎖アミノ酸の生産増加」は、上記ポリヌクレオチド配列を含む前の微生物、即ち、非変形微生物に比べて高いL-分岐鎖アミノ酸の生産収率でL-分岐鎖アミノ酸を生産させる、L-分岐鎖アミノ酸の生産能を高めることを意味することができる。
【0057】
「ポリヌクレオチド」、「L-分岐鎖アミノ酸」は上記で説明した通りである。
【実施例
【0058】
以下、本出願を、実施例を通じてより詳細に説明する。しかし、これら実施例は、本出願を例示的に説明するためのものであり、本出願の範囲がこれら実施例に限定されるものではない。
【0059】
実施例1:ランダム為突然変異法によるバリン生産能増加変異株の選別
実施例1-1:UV照射によるランダム突然変異の誘発
バリン生産能が増加した変異株を選別するためにバリン生産菌株であるコリネバクテリウム・グルタミクムKCCM11201P(韓国登録特許第10-1117022号)を寒天を含む栄養培地に塗抹して30℃で36時間培養した。このように獲得した数百のコロニーを室温でUVを照射して菌株内のゲノム上にランダム突然変異を誘発させた。
【0060】
実施例1-2:突然変異誘発菌株の発酵力価の実験及び菌株の選別
親株として使用されたコリネバクテリウム・グルタミクムKCCM11201Pに比べてL-バリンの生産能が増加した変異株を選別するために無作為突然変異が誘発された菌株を対象に発酵力価実験を行った。それぞれのコロニーは栄養培地で継代培養された後、生産培地25mlを含有する250mlのコーナーバッフルフラスコに各菌株を接種し、30℃で72時間、200rpmで振とう培養した。その後、HPLCを用いてL-バリンの濃度を分析し、分析したL-バリンの濃度を下記表1に示した。
【0061】
<栄養培地(pH 7.2)>
ブドウ糖10g、肉汁5g、ポリペプトン10g、塩化ナトリウム2.5g、酵母抽出物5g、寒天20g、ウレア2g(蒸留水1リットルを基準)
【0062】
<生産培地(pH 7.0)>
ブドウ糖100g、硫酸アンモニウム40g、大豆タンパク質2.5g、トウモロコシ浸漬固形分(Corn Steep Solids)5g、尿素3g、第2リン酸カリウム1g、硫酸マグネシウム7水塩0.5g、ビオチン100μg、チアミン-HCl 1mg、パントテン酸カルシウム2mg、ニコチンアミド3mg、炭酸カルシウム30g(蒸留水1リットルを基準)
【0063】
【表1】
【0064】
表1を参考にすると、対照群であるKCCM11201P菌株に比べてバリン生産量が最も多く増加したC10菌株を選別した。
【0065】
実施例2:遺伝子シーケンシングによる変異の確認
バリン生産能が増加した上記C10菌株の主要遺伝子をシーケンシングしてKCCM11201P菌株及びコリネバクテリウム・グルタミクムATCC14067野生型菌株と比較した。その結果、上記C10菌株が特定位置にトランスポゾン(transposon)を含んでいることを確認した。
【0066】
具体的には、C10は配列番号5の11番目の配列の3’末端に配列番号3で示されるトランスポゾンが挿入されることを確認した。
【0067】
以下の実施例では、上記特定位置に挿入されたトランスポゾンがコリネバクテリウム属微生物の分岐鎖アミノ酸であるバリン、イソロイシン、ロイシンの生成量に影響を及ぼすかを確認しようとした。
【0068】
実施例3:トランスポゾンが挿入された菌株の製作及びバリン生産能の確認
実施例3-1:コリネバクテリウム・グルタミクムKCCM11201P菌株においてトランスポゾンが挿入された菌株の製作及びL-バリン生産能の評価
配列番号3で示されるトランスポゾンをグルタミクムKCCM11201Pに挿入するためにターゲット変異を含むベクターを製作した。具体的には、上記C10菌株のゲノム(genomic)DNAをG-spin Total DNA抽出ミニキット(Intron社、Cat. No 17045)を用いてキットに提供されたプロトコルに従って抽出し、上記ゲノムDNAを鋳型としてPCRを行った。PCRの条件は94℃で5分間変性した後;94℃で30秒間変性、55℃で30秒間アニーリング、及び72℃で150秒間の重合を25回繰り返した後;72℃で7分間重合反応を行い、配列番号8のプライマー1と配列番号9のプライマー2を用いて1485bpのPCR結果物(以下、「変異導入断片1」と命名する)を得た。
【0069】
上記得られた変異導入断片1を制限酵素XbaI(New England Biolabs, Beverly, MA)で処理した後、同一の制限酵素で処理されたpDZベクター(韓国登録特許第10-0924065号及び国際公開特許第2008-033001号)とT4リガーゼ(New England Biolabs, Beverly, MA)を用いてライゲーションした。上記製作した遺伝子を大腸菌DH5αに形質転換させた後、これをカナマイシン含有LB培地で選別し、DNA-spinプラスミドDNA精製キット(iNtRON社)でDNAを獲得して上記変異導入断片1を含むベクターpDZ-PNCgl2472(Tn)を製造した。
【0070】
【表2】
【0071】
上記pDZ-PNCgl2472(Tn)を染色体上における相同組換えによりコリネバクテリウム・グルタミクムKCCM11201Pに形質転換させた(van der Rest et al., Appl Microbiol Biotechnol 52:541-545, 1999)。相同性配列の組換えにより染色体上にベクターが挿入された菌株は、カナマイシン(Kanamycin)25mg/lを含む培地で選別した。その後、2次組換えが完了した上記コリネバクテリウム・グルタミクム形質転換株を対象に配列番号8のプライマー1と配列番号9のプライマー2を利用したPCRを通じて配列番号5の11番目の配列の3’末端に配列番号3のトランスポゾンが挿入された菌株を確認した。上記組換え菌株をコリネバクテリウム・グルタミクムKCCM11201P-PNCgl2472-TnをCA08-1533と命名し、(KCCM12707P)として寄託した。
【0072】
バリン生産菌株であるコリネバクテリウム・グルタミクムKCCM11201PとCA08-1533のバリン生成能を比較するためにフラスコの評価を行った。それぞれ菌株を栄養培地で継代培養した後、生産培地25mlを含む250mlのコーナーバッフルフラスコに各菌株を接種し、30℃で72時間、200rpmで振とう培養した。その後、HPLCを用いてL-バリンの濃度を分析し、分析したL-バリンの濃度を下記表3に示した。
【0073】
<栄養培地(pH7.2)>
ブドウ糖10g、肉汁5g、ポリペプトン10g、塩化ナトリウム2.5g、酵母抽出物5g、寒天20g、ウレア2g(蒸留水1リットルを基準)
【0074】
<生産培地(pH7.0)>
ブドウ糖100g、硫酸アンモニウム40g、大豆タンパク質2.5g、トウモロコシ浸漬固形分(Corn Steep Solids)5g、尿素3g、第二リン酸カリウム1g、硫酸マグネシウム7水塩0.5g、ビオチン100μg、チアミン-HCl1mg、パントテン酸カルシウム2mg、ニコチンアミド3mg、炭酸カルシウム30g(蒸留水1リットルを基準)
【0075】
【表3】
【0076】
その結果、CA08-1533菌株のL-バリン生産能はKCCM11201Pに比べて7.4%増加することを確認した。
【0077】
実施例3-2:コリネバクテリウム・グルタミクムCJ7V菌株においてトランスポゾンが挿入された菌株の製作及びL-バリン生産能の評価
L-バリンを生産する他のコリネバクテリウム・グルタミクムに属する菌株でもL-バリン生産能の増加効果があるかを確認するために、野生株コリネバクテリウム・グルタミクムATCC14067に1種の変異[ilvN(A42V); Biotechnology and Bioprocess Engineering, June 2014, Volume 19, Issue 3, pp 456-467]を導入してL-バリン生産能が向上した菌株を製作した。
【0078】
具体的には、コリネバクテリウム・グルタミクム野生型であるATCC14067菌株のゲノムDNAをG-spin Total DNA抽出ミニキット(Intron社、Cat. No 17045)を用いてキットに提供されたプロトコルに従って抽出した。上記ゲノムDNAを鋳型としてPCRを行った。ilvN遺伝子にA42V変異を導入するベクターを製作するために、配列番号10のプライマー3と配列番号11のプライマー4のプライマー対及び配列番号12のプライマー5と配列番号13のプライマー6のプライマー対を用いて遺伝子断片(A、B)をそれぞれ得た。PCRの条件は94℃で5分間変性した後;94℃で30秒間変性、55℃で30秒間アニーリング、及び72℃で60秒間の重合を25回繰り返した後;72℃で7分間重合反応を行った。
【0079】
その結果、断片A、Bはいずれも537bpのポリヌクレオチドを得ることができた。上記両断片を鋳型として配列番号10のプライマー3と配列番号13のプライマー6を用いてオーバーラッピング(Overlapping)PCRを行い、1044bpのPCR結果物(以下、「変異導入断片2」と命名する)を得た。
【0080】
上記得られた変異導入断片2を制限酵素XbaI(New England Biolabs, Beverly, MA)で処理した後、同じ制限酵素で処理されたpDZベクターとT4リガーゼ(New England Biolabs, Beverly, MA)を用いてライゲーションした。上記製作した遺伝子を大腸菌DH5αに形質転換させた後、これをカナマイシン含有LB培地で選別し、DNA-spinプラスミドDNA精製キット(iNtRON社)でDNAを得た。上記ilvN遺伝子のA42V変異導入を目的とするベクターをpDZ-ilvN(A42V)と命名した。
【0081】
【表4】
【0082】
その後、上記pDZ-ilvN(A42V)を染色体上における相同組換えにより野生型であるコリネバクテリウム・グルタミクムATCC14067に形質転換させた(van der Rest et al., Appl Microbiol Biotechnol 52:541-545, 1999)。相同性配列の組換えにより染色体上にベクターが挿入された菌株は、カナマイシン(kanamycin)25mg/lを含む培地で選別した。
【0083】
その後、2次組換えが完了した上記コリネバクテリウム・グルタミクム形質転換株を対象に配列番号10のプライマー3と配列番号13のプライマー6を利用したPCRを通じて遺伝子断片を増幅した後、遺伝子配列分析を通じて変異挿入菌株を確認した。上記組換え菌株をコリネバクテリウム・グルタミクムCJ7Vと命名した。
【0084】
最後に、上記コリネバクテリウム・グルタミクムCJ7Vを上記実施例3-1と同様な方法でpDZ-PNCgl2472(Tn)を形質転換させた菌株を製作し、CJ7V-PNCgl2472-Tnと命名した。具体的には、CJ7V-PNCgl2472-Tnは配列番号5の11番目の配列の3’末端に配列番号3で示されるトランスポゾンが挿入されることを確認した。
【0085】
製作された菌株のL-バリン生産能を比較するために、上記実施例3-1と同様な方法で培養してL-バリンの濃度を分析し、分析したL-バリンの濃度を下記表5に示した。
【0086】
【表5】
【0087】
その結果、CJ7V-NCgl2472(Tn)菌株のL-バリン生産能はCJ7Vに比べて9.4%増加することを確認した。
【0088】
実施例3-3:コリネバクテリウム・グルタミクムCJ8V菌株においてトランスポゾンが挿入された菌株の製作及びL-バリン生産能の評価
L-バリンを生産する他のコリネバクテリウム・グルタミクムに属する菌株でもL-バリン生産能の増加効果があるかを確認するために、上記実施例3-2と同様な方法で野生株コリネバクテリウム・グルタミクムATCC13869に1種の変異[ilvN(A42V)]を導入してL-バリン生産能を有するようになった変異株を製作し、上記組換え菌株をコリネバクテリウムCJ8Vと命名した。
【0089】
配列番号3で示されるトランスポゾンをバリン生産菌株コリネバクテリウム・グルタミクムCJ8Vに挿入するためにターゲット変異を含むベクターを製作した。具体的には、上記C10菌株のゲノムDNAをG-spin Total DNA抽出ミニキット(Intron社、Cat. No 17045)を用いてキットに提供されたプロトコルに従って抽出し、上記ゲノムDNAを鋳型としてPCRを行った。PCRの条件は94℃で5分間変性した後;94℃で30秒間変性、55℃で30秒間アニーリング、及び72℃150秒間の重合を25回繰り返した後;72℃で7分間重合反応を行い、配列番号8のプライマー1と配列番号14のプライマー7を用いて1082bpのPCR結果物(断片A’)を得た。そして、ATCC13869菌株のゲノムDNAをG-spin Total DNA抽出ミニキット(Intron社、Cat. No 17045)を用いてキットに提供されたプロトコルに従って抽出し、上記ゲノムDNAを鋳型としてPCRを行った。PCRの条件は94℃で5分間変性した後;94℃で30秒間変性、55℃で30秒間アニーリング、及び72℃150秒間の重合を25回繰り返した後;72℃で7分間重合反応を行い、配列番号9のプライマー2と配列番号15のプライマー8を用いて328bpのPCR結果物(断片B’)を得た。上記両断片を鋳型として配列番号8のプライマー1と配列番号9のプライマー2を用いてオーバーラッピングPCRを行い、1390bpのPCR結果物(以下、「変異導入断片3」と命名する)を得た。
【0090】
上記得られた変異導入断片3を制限酵素XbaI(New England Biolabs, Beverly, MA)で処理した後、同一の制限酵素で処理されたpDZベクター(韓国登録特許第10-0924065号及び国際公開特許第2008-033001号)とT4リガーゼ(New England Biolabs, Beverly, MA)を用いてライゲーションした。上記製作した遺伝子を大腸菌DH5αに形質転換させた後、これをカナマイシン含有LB培地で選別し、DNA-spinプラスミドDNA精製キット(iNtRON社)でDNAを得、上記変異導入断片3を含むベクターpDZ-PNCgl2472(Tn)-1を製造した。使用したプライマー配列を下記表6に示す。
【0091】
【表6】
【0092】
上記pDZ-PNCgl2472(Tn)-1を染色体上における相同組換えによりL-バリン生産菌株であるコリネバクテリウム・グルタミクムCJ8Vに上記実施例3-1と同様な方法で形質転換させ、CJ8V-PNCgl2472-Tn-1と命名した。具体的には、CJ8V-PNCgl2472-Tn-1は、配列番号5の11番目の配列の3’末端に配列番号3で示されるトランスポゾンが挿入されることを確認した。
【0093】
製作した上記CJ8V-PNCgl2472-Tn-1菌株のL-バリン生産能を確認するために、上記実施例3-1と同様な方法で培養してL-バリンの濃度を分析し、分析したL-バリンの濃度を下記表7に示した。
【0094】
【表7】
【0095】
その結果、CJ8V-PNCgl2472-Tn-1菌株のL-バリン生産能はCJ8Vに比べて8.7%増加することを確認した。
【0096】
実施例4:L-ロイシン生産菌株コリネバクテリウム・グルタミクムKCCM11661P、KCCM11662P菌株においてトランスポゾンが挿入された菌株の製作及びL-ロイシン生産能の評価
上記pDZ-PNCgl2472(Tn)-1、pDZ-PNCgl2472(Tn)を染色体上における相同組換えにより、L-ロイシン生産菌株であるコリネバクテリウム・グルタミクムKCCM11661P(韓国登録特許第10-1851898号)、KCCM11662P(韓国登録特許第10-1796830号)にそれぞれ形質転換させた(van der Rest et al., Appl Microbiol Biotechnol 52:541-545, 1999)。相同性配列の組換えにより染色体上にベクターが挿入された菌株は、カナマイシン(kanamycin)25/Lを含む培地で選別した。その後、2次組換えが完了した上記コリネバクテリウム・グルタミクム形質転換株を対象に配列番号8のプライマー1と配列番号9のプライマー2を利用したPCRを通じて染色体上でトランスポゾンが挿入された菌株を確認した。上記組換え菌株をコリネバクテリウム・グルタミクムKCCM11661P-PNCgl2472-Tn、KCCM11662P-PNCgl2472-Tn-1と命名した。
【0097】
上記コリネバクテリウム・グルタミクムKCCM11661P-PNCgl2472-Tn-1、KCCM11662P-PNCgl2472-Tnのロイシン生成能を比較するために発酵力価の評価を行った。それぞれの菌株を栄養培地で継代培養した後、生産培地25mlを含む250mlのコーナーバッフルフラスコに各菌株を接種し、30℃で72時間、200rpmで振とう培養した。その後、HPLCを用いてL-ロイシンの濃度を分析し、分析したL-ロイシンの濃度を下記表7に示す。
【0098】
<栄養培地(pH7.2)>
ブドウ糖10g、肉汁5g、ポリペプトン10g、塩化ナトリウム2.5g、酵母抽出物5g、寒天20g、ウレア2g(蒸留水1リットルを基準)
【0099】
<生産培地(pH7.0)>
ブドウ糖50g、硫酸アンモニウム20g、トウモロコシ浸漬固形分(Corn Steep Solids)20g、第2リン酸カリウム1g、硫酸マグネシウム7水塩0.5g、ビオチン100μg、チアミン-HCl1mg、炭酸カルシウム15g(蒸留水1リットルを基準)
【0100】
【表8】
【0101】
その結果、KCCM11661P-PNCgl2472-Tn、KCCM11662P-PNCgl2472-Tn-1菌株のL-ロイシン生産能はそれぞれKCCM11661P及びKCCM11662Pに比べて約10%増加することを確認した。
【0102】
実施例5:L-イソロイシン生産菌株コリネバクテリウム・グルタミクムKCCM11248P菌株においてトランスポゾンが挿入された菌株の製作及びL-イソロイシン生産能の評価
上記実施例3-1と同様の方法で、L-イソロイシン生産菌株であるコリネバクテリウム・グルタミクムKCCM11248P(韓国登録特許第10-1335789号)にpDZ-PNCgl2472(Tn)-1を染色体上における相同組換えにより挿入した菌株を製作し、KCCM11248P-PNCgl2472-Tn-1と命名した。
【0103】
上記KCCM11248P-PNCgl2472-Tn-1菌株を以下と同様な方法で培養し、イソロイシン生産能を評価した。
【0104】
種培地25mlを含む250mlのコーナーバッフルフラスコに各菌株を接種し、30℃で20時間、200rpmで振とう培養した。その後、生産培地24mlを含有する250mlのコーナーバッフルフラスコに1mlの種培養液を接種し、30℃で48時間、200rpmで振とう培養した。上記種培地と生産培地の組成はそれぞれ下記の通りである。
【0105】
<種培地(pH7.0)>
ブドウ糖20g、ペプトン10g、酵母抽出物5g、尿素1.5g、KHPO 4g、KHPO 8g、MgSO7HO 0.5g、ビオチン100μg、チアミンHCl 1000μg、パントテン酸カルシウム2000μg、ニコチンアミド2000μg(蒸留水1リットルを基準)
【0106】
<生産培地(pH7.0)>
ブドウ糖50g、(NHSO 12.5g、大豆タンパク質2.5g、トウモロコシ浸漬固形分(Corn Steep Solids)5g、尿素3g、KHPO 1g、MgSO7HO 0.5g、ビオチン100μg、チアミン塩酸塩1000μg、パントテン酸カルシウム2000μg、ニコチンアミド3000μg、CaCO 30g(蒸留水1リットルを基準)
【0107】
培養終了後、HPLCを用いてL-イソロイシンの濃度を測定し、測定したL-イソロイシン濃度は下記表9の通りである。
【0108】
【表9】
【0109】
その結果、KCCM11248P-PNCgl2472-Tn-菌株のL-ロイシン生産能はKCCM11248Pに比べて約34%増加することを確認した。
【0110】
以上の説明から、本発明が属する技術分野の当業者であれば、本出願がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施されうることが理解できるだろう。これに関連し、以上で記述した実施例はあくまで例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。本出願の範囲は上記詳細な説明よりは、後述する特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から導かれるあらゆる変更または変形された形態が本出願の範囲に含まれるものと解釈すべきである。
【受託番号】
【0111】
寄託機関名:韓国微生物保存センター(国外)
受託番号:KCCM12707P
受託日:20200427
【0112】
【配列表】
0007462776000001.app