(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】振動センサ
(51)【国際特許分類】
H04R 1/22 20060101AFI20240329BHJP
H04R 1/40 20060101ALN20240329BHJP
【FI】
H04R1/22 320
H04R1/40 320B
(21)【出願番号】P 2022556200
(86)(22)【出願日】2021-08-11
(86)【国際出願番号】 CN2021112017
(87)【国際公開番号】W WO2023015478
(87)【国際公開日】2023-02-16
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】521080118
【氏名又は名称】シェンツェン・ショックス・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】袁 永▲帥▼
(72)【発明者】
【氏名】▲デン▼ 文俊
(72)【発明者】
【氏名】周 文兵
(72)【発明者】
【氏名】黄 雨佳
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲風▼云
(72)【発明者】
【氏名】▲齊▼ 心
【審査官】大石 剛
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第212086490(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/22
H04R 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響トランスデューサと、
前記音響トランスデューサに接続された振動アセンブリと、を含む振動センサであって、
前記振動アセンブリは、外部振動信号を前記音響トランスデューサに伝達して電気信号を生成するように構成され、1組以上の振動膜及び質量ブロックを含み、前記質量ブロックは前記振動膜に物理的に接続され、
前記振動アセンブリは、1つ以上のターゲット周波数帯域において前記振動センサの感度を前記音響トランスデューサの感度よりも高くするように構成される、振動センサ。
【請求項2】
前記1組以上の振動膜及び質量ブロックは、前記振動膜の振動方向に沿って順に設置され、前記振動アセンブリの隣接する振動膜の間の距離は、前記隣接する振動膜の最大振幅以上である、請求項1に記載の振動センサ。
【請求項3】
前記振動膜の振動方向において、前記質量ブロックの投影領域は前記振動膜の投影領域内にある、請求項1に記載の振動センサ。
【請求項4】
前記1組以上の振動膜及び質量ブロックのうちの各組の振動膜及び質量ブロックは、前記1つ以上の異なるターゲット周波数帯域のうちの1つのターゲット周波数帯域に対応し、かつ前記対応するターゲット周波数帯域において前記振動センサの感度が前記音響トランスデューサの感度よりも高い、請求項1に記載の振動センサ。
【請求項5】
前記1組以上の振動膜及び質量ブロックの共振周波数は、前記1つ以上のターゲット周波数帯域において前記振動センサの感度を前記音響トランスデューサの感度よりも高くするように、前記音響トランスデューサの共振周波数よりも小さい、請求項4に記載の振動センサ。
【請求項6】
複数組の振動膜及び質量ブロックのうちの少なくとも2組の振動膜及び質量ブロックの共振周波数は異なる、請求項4又は5に記載の振動センサ。
【請求項7】
前記複数組の振動膜及び質量ブロックの共振周波数のうちの隣接する2つの共振周波数の差は2kHz未
満である、請求項6に記載の振動センサ。
【請求項8】
前記振動アセンブリは、前記1組以上の振動膜及び質量ブロックを支持するための支持構造体をさらに含み、前記支持構造体は前記音響トランスデューサに物理的に接続され、前記1組以上の振動膜及び質量ブロックは前記支持構造体に接続される、請求項1~7のいずれか一項に記載の振動センサ。
【請求項9】
前記振動膜の前記質量ブロックに接続された表面と垂直な方向において、前記質量ブロックの投影領域は前記支持構造体の投影領域と重ならない、請求項8に記載の振動センサ。
【請求項10】
前記振動アセンブリは、位置制限構造体をさらに含み、前記位置制限構造体は、前記振動アセンブリの隣接する振動膜の間の距離が前記隣接する振動膜の最大振幅以上であるように構成される、請求項2に記載の振動センサ。
【請求項11】
前記音響トランスデューサは、収音孔を含む気導マイクロホンであり、前記1組以上の振動膜及び質量ブロックは、前記収音孔の径方向断面と平行に前記収音孔内に設置されるか又は前記収音孔の外側に設置される、請求項1に記載の振動センサ。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の振動センサを含む、音声入力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、センサの分野に関し、特に振動アセンブリを含む振動センサに関する。
【背景技術】
【0002】
振動センサは、振動信号を電気信号に変換するエネルギー変換デバイスであり、マイクロフォン(例えば、気導マイクロホン、骨伝導マイクロフォンなど)又は監視装置などとしての用途を有する。振動センサは、振動の振幅及び方向などのデータを取得して、さらなる分析及び処理のためにデータを電気信号又は他の必要な形態に変換することができる。
【0003】
本明細書は、トランスデューサを追加せずに感度を向上させる振動センサを提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書の一実施例に係る振動センサは、音響トランスデューサと、音響トランスデューサに接続された振動アセンブリと、を含む。前記振動アセンブリは、外部振動信号を前記音響トランスデューサに伝達して音声信号を生成するように構成され、1組以上の振動膜及び質量ブロックを含み、前記質量ブロックは前記振動膜に物理的に接続され、前記振動アセンブリは、1つ以上のターゲット周波数帯域において前記振動センサの感度を前記音響トランスデューサの感度よりも高くするように構成される。
【0005】
いくつかの実施例において、前記1組以上の振動膜及び質量ブロックは、前記振動膜の振動方向に沿って順に設置され、前記振動アセンブリの隣接する振動膜の間の距離は、前記隣接する振動膜の最大振幅以上である。
【0006】
いくつかの実施例において、前記振動膜の振動方向において、前記質量ブロックの投影領域は前記振動膜の投影領域内にある。
【0007】
いくつかの実施例において、前記1組以上の振動膜及び質量ブロックのうちの各組の振動膜及び質量ブロックは、前記1つ以上の異なるターゲット周波数帯域のうちの1つのターゲット周波数帯域に対応し、かつ前記対応するターゲット周波数帯域において前記振動センサの感度が前記音響トランスデューサの感度よりも高い。
【0008】
いくつかの実施例において、前記1組以上の振動膜及び質量ブロックの共振周波数は、前記1つ以上のターゲット周波数帯域において前記振動センサの感度を前記音響トランスデューサの感度よりも高くするように、前記音響トランスデューサの共振周波数よりも小さい。
【0009】
いくつかの実施例において、前記1組以上の振動膜及び質量ブロックの前記共振周波数と前記音響トランスデューサの前記共振周波数との間の差は1kHz~10kHz内にある。
【0010】
いくつかの実施例において、前記複数組の振動膜及び質量ブロックのうちの少なくとも2組の振動膜及び質量ブロックの共振周波数は異なる。
【0011】
いくつかの実施例において、前記複数組の振動膜及び質量ブロックの共振周波数のうちの隣接する2つの共振周波数の差は2kHzよりも小さい。
【0012】
いくつかの実施例において、前記複数組の振動膜及び質量ブロックの共振周波数のうちの隣接する2つの共振周波数の差は1kHz以下である。
【0013】
いくつかの実施例において、前記1組以上の振動膜及び質量ブロックの共振周波数は1kHz~10kHz内にある。
【0014】
いくつかの実施例において、前記1組以上の振動膜及び質量ブロックの共振周波数は1kHz~5kHz内にある。
【0015】
いくつかの実施例において、前記1組以上の振動膜及び質量ブロックの共振周波数は、前記振動膜及び/又は前記質量ブロックのパラメータに関連し、前記パラメータは、前記振動膜の弾性率、前記音響トランスデューサと前記振動膜との間に形成されたキャビティの体積、前記質量ブロックの半径、前記質量ブロックの高さ及び前記質量ブロックの密度のうちの少なくとも1つを含む。
【0016】
いくつかの実施例において、前記振動膜の弾性率は1GPa~10GPa内にある。
【0017】
いくつかの実施例において、前記質量ブロックの半径は500μm~3mm内にある。
【0018】
いくつかの実施例において、前記振動センサは、前記1組以上の振動膜及び質量ブロックの作用下で、周波数応答曲線が複数の共振ピークを有する。
【0019】
いくつかの実施例において、前記振動アセンブリは、前記1組以上の振動膜及び質量ブロックを支持するための支持構造体をさらに含み、前記支持構造体は前記音響トランスデューサに物理的に接続され、前記1組以上の振動膜及び質量ブロックは前記支持構造体に接続される。
【0020】
いくつかの実施例において、前記支持構造体は、不通気性材料で製造される。
【0021】
いくつかの実施例において、前記振動膜の前記質量ブロックに接続された表面と垂直な方向において、前記質量ブロックの投影領域は前記支持構造体の投影領域と重ならない。
【0022】
いくつかの実施例において、前記質量ブロックは、前記振動膜と同心状に設置される。
【0023】
いくつかの実施例において、前記振動膜は、空気が通過できるように構成される。
【0024】
いくつかの実施例において、複数の前記振動膜のうち、前記音響トランスデューサから最も遠い振動膜は、空気が通過できないように構成される。いくつかの実施例において、前記振動膜に貫通孔が設置される。
【0025】
いくつかの実施例において、前記振動膜は通気膜を含む。
【0026】
いくつかの実施例において、前記振動膜は、ポリテトラフルオロエチレン、延伸ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ニトロセルロース又は混合セルロースのうちの少なくとも1種を含む。
【0027】
いくつかの実施例において、振動アセンブリは、位置制限構造体をさらに含み、前記位置制限構造体は、前記振動アセンブリの隣接する振動膜の間の距離が前記隣接する振動膜の最大振幅以上であるように構成される。
【0028】
いくつかの実施例において、前記音響トランスデューサは気導マイクロホンであり、前記1つ以上のターゲット周波数帯域の共振周波数は、前記気導マイクロホンの共振周波数よりも1kHz~10kHz低いように設定される。
【0029】
いくつかの実施例において、前記気導マイクロホンは収音孔を含み、前記1組以上の振動膜及び質量ブロックは、前記収音孔の径方向断面と平行に前記収音孔内に設置されるか又は前記収音孔の外側に設置される。
【0030】
いくつかの実施例において、前記質量ブロックは、前記収音孔の内壁と接触しない。
【0031】
本明細書の一実施例に係る音声入力装置は、上記いずれか1つの振動センサを含む。
【0032】
例示的な実施例の方式で本明細書をさらに説明し、これらの例示的な実施例を図面により詳細に説明する。これらの実施例は、限定的なものではなく、これらの実施例において、同じ番号は同様の構造を表す。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本明細書のいくつかの実施例に係る振動センサのモジュール化概略図である。
【
図2】本明細書のいくつかの実施例に係る振動センサの概略構成図である。
【
図3】本明細書のいくつかの実施例に係る振動センサの概略構成図である。
【
図4】本明細書のいくつかの実施例に係る振動アセンブリの概略構成図である。
【
図5】本明細書のいくつかの実施例に係る振動センサの周波数応答曲線図である。
【
図6】本明細書のいくつかの実施例に係る振動センサの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本明細書の実施例の技術的解決手段をより明確に説明するために、以下、実施例の説明に必要な図面を簡単に説明する。明らかに、以下に説明される図面は、単に本明細書の例又は実施例の一部に過ぎず、当業者であれば、創造的な労力を要することなく、これらの図面に基づいて本明細書を他の類似するシナリオに応用することができる。これらの例示的な実施例は、当業者が本発明をよりよく理解して実施することを可能にするためのものに過ぎず、いかなる方法によっても本発明の範囲を限定するものではないことが理解されたい。特に言語環境から明らかではないか又は明記しない限り、図面において同じ符号は同じ構造又は操作を表す。
【0035】
本明細書及び特許請求の範囲に示すように、文脈が明確に別段の指示をしない限り、「1つ」、「1個」、「1種」及び/又は「該」などの用語は、特に単数形を指すものではなく、複数形を含んでもよい。一般的には、用語「含む」及び「含有」は、明確に特定されたステップ及び要素のみを含むように提示し、これらのステップ及び要素は、排他的な羅列ではなく、方法又は設備は、また他のステップ又は要素を含む可能性がある。用語「基づく」は、「少なくとも部分的に基づく」ことを表す。用語「1つの実施例」は、「少なくとも1つの実施例」を表し、用語「他の実施例」は、「少なくとも1つの他の実施例」を表す。その他の用語の関連定義については後述する。
【0036】
いくつかの実施例において、振動センサをマイクロフォン(例えば、気導マイクロホン、骨伝導マイクロフォンなど)とする場合、振動を電気信号に変換するための装置は、音響トランスデューサを含む。一般的には、単一の音響トランスデューサには1つの共振ピークのみが存在し、該音響トランスデューサは、共振ピークの周波数近傍のみに高い感度を有する。いくつかの実施例において、振動センサの感度を向上させるために、様々な共振ピークを有する複数の音響トランスデューサを設置することにより、受信周波数範囲を拡大して感度を向上させるが、音響トランスデューサの数を増加させると、振動センサの体積及び製造コストが増加する。
【0037】
以上に鑑みて、本明細書は、音響トランスデューサに接続された振動アセンブリにより、ターゲット周波数帯域での感度を音響トランスデューサの感度よりも高くする振動センサに関する。該振動センサは、外部からの振動信号を受信して、該振動信号を、音声情報を反映できる電気信号に変換するために用いられ、外部からの信号は、機械振動信号又は音響信号などを含んでもよい。振動アセンブリは、1組以上の振動膜及び質量ブロックを含み、質量ブロックは振動膜に物理的に接続される。振動アセンブリは、1つ以上のターゲット周波数帯域において上記振動センサの感度を上記音響トランスデューサの感度よりも高くするように構成される。
【0038】
図1に示すように、振動センサ100は、音響トランスデューサ120及び振動アセンブリ130を含んでもよい。いくつかの実施例において、音響トランスデューサ120は振動アセンブリ130に接続され、振動アセンブリ130は、外部振動信号を音響トランスデューサに伝達して電気信号を生成するように構成される。外部環境において振動が発生する場合、振動アセンブリ130は、外部環境の振動に応答して振動信号を音響トランスデューサ120に伝達してから音響トランスデューサ120により振動信号を電気信号に変換する。振動センサ100は、モバイル装置、ウェアラブル装置、仮想現実装置、拡張現実装置など、又はそれらの任意の組み合わせに適用されてもよい。いくつかの実施例において、モバイル装置は、スマートフォン、タブレットコンピュータ、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、ゲーム装置、ナビゲーション装置など、又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施例において、ウェアラブル装置は、スマートブレスレット、イヤホン、補聴器、スマートヘルメット、スマートウォッチ、スマート衣類、スマートバックパック、スマートアクセサリなど、又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。いくつかの実施例において、仮想現実装置及び/又は拡張現実装置は、仮想現実ヘルメット、仮想現実メガネ、仮想現実パッチ、拡張現実ヘルメット、拡張現実メガネ、拡張現実パッチなど、又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。例えば、仮想現実装置及び/又は拡張現実装置は、Google Glass、Oculus Rift、Hololens、Gear VRなどを含んでもよい。
【0039】
図1に示すように、振動アセンブリ130は、振動膜131及び質量ブロック132を含み、質量ブロック132は、振動膜131に物理的に接続される。振動アセンブリ130は、1つ以上のターゲット周波数帯域において振動センサ100の感度を音響トランスデューサ120の感度よりも高くするように構成される。
【0040】
いくつかの実施例において、1組以上の振動膜131及び質量ブロック132は、上記振動膜131の振動方向に沿って順に設置され、振動アセンブリ130のうちの隣接する振動膜131の間の距離は、上記隣接する振動膜131の最大振幅以上である。いくつかの実施例において、上記振動膜131は、空気が通過できるように構成される。
【0041】
いくつかの実施例において、1組以上の振動膜131及び質量ブロック132のうちの各組の振動膜131及び質量ブロック132は、1つ以上の異なるターゲット周波数帯域のうちの1つのターゲット周波数帯域に対応し、かつ対応するターゲット周波数帯域において上記振動センサ100の感度が音響トランスデューサ120の感度よりも高くてもよい。いくつかの実施例において、1組以上の質量ブロック132及び振動膜131を追加した振動センサ100の感度は、ターゲット周波数帯域において、音響トランスデューサ120の感度よりも3dB~30dB向上することができる。なお、いくつかの実施例において、1組以上の質量ブロック132及び振動膜131を追加した振動センサ100の感度は、例えば複数組の質量ブロック132及び振動膜131が同じ共振ピークを有すると、音響トランスデューサ120の感度よりもさらに30dB高くなるように向上することができる。
【0042】
いくつかの実施例において、振動センサ100及び音響トランスデューサ120の感度を測定する方法は、所定の加速度(例えば1g、gは重力加速度である)の励起下で、デバイスの電気信号(例えば-30dBV)を収集すると、感度が-30dBV/gとなることである。いくつかの実施例において、例えば、音響トランスデューサ120が気導マイクロホンであると、感度を測定する場合、前述した励起源を音圧に変換すればよく、すなわち特定の周波数帯域内の音圧を励起として入力し、収集されたデバイスの電気信号を測定する。
【0043】
いくつかの実施例において、上記振動センサ100は、1組以上の振動膜131及び質量ブロック132の作用下で、周波数応答曲線が複数の共振ピークを有してもよい。
【0044】
いくつかの実施例において、1組以上の質量ブロック132及び振動膜131の共振周波数は1kHz~10kHz内にある。いくつかの実施例において、1組以上の質量ブロック132及び振動膜131の共振周波数は1kHz~5kHz内にある。いくつかの実施例において、複数組の質量ブロック132及び振動膜131のうちの少なくとも2組の質量ブロック132及び振動膜131の共振周波数は異なる。いくつかの実施例において、複数組の質量ブロック132及び振動膜131の共振周波数のうちの隣接する2つの共振周波数の差は2kHzよりも小さい。隣接する2つの共振周波数は、共振周波数の大きさにおいて数値が隣接する2つの共振周波数を意味する。共振周波数以外の周波数での振動センサ100の感度が急速に低下するため、共振周波数の差を制御することにより、振動センサ100が広い周波数帯域においてより高い感度を有すると共に、感度が大幅に変化しない。いくつかの実施例において、複数組の質量ブロック132及び振動膜131の共振周波数のうちの隣接する2つの共振周波数の差は1.5kHz以下である。いくつかの実施例において、複数組の質量ブロック132及び振動膜131の共振周波数のうちの隣接する2つの共振周波数の差は、1kHz以下であり、例えば、500Hz、700Hz、又は800Hzなどである。いくつかの実施例において、複数組の質量ブロック132及び振動膜131の共振周波数のうちの隣接する2つの共振周波数の差は500Hz以下である。
【0045】
いくつかの実施例において、振動膜131は通気膜を含んでもよい。振動アセンブリのさらなる説明については、
図2~
図6の詳細な説明を参照することができる。
【0046】
図2は、本明細書のいくつかの実施例に係る振動センサの概略構成図である。
【0047】
図2に示す振動センサ200は、
図1に示す振動センサ100の一実施形態であってもよい。いくつかの実施例において、振動センサ200は、音響トランスデューサ220及び振動アセンブリ230を含む。音響トランスデューサ220は気導マイクロホンを含んでもよく、気導マイクロホンは、空気伝導マイクロフォンとも呼ばれ、収音領域(例えば、収音孔211で)の音圧変化を取得して、電気信号に変換することができる。説明の便宜上、以下では、いずれも気導マイクロホンによって説明する。なお、いくつかの他の実施例において、音響トランスデューサは、さらに他の形態、例えば液体伝声器及びレーザ伝声器であってもよい。
【0048】
図2を参照すると、いくつかの実施例において、気導マイクロホンは、ハウジング210及び収音装置221を含み、いくつかの実施例において、収音装置221は、変換原理に基づいて、静電容量型、圧電型などの形態のトランスデューサを含んでもよいが、本明細書において限定されない。
【0049】
いくつかの実施例において、ハウジング構造体210の形状は、直方体、略直方体、円筒体、球体又は他の任意の形状であってもよい。ハウジング構造体210は収容空間を囲み、収音装置221は収容空間内に設置される。いくつかの実施例において、収音装置221とハウジング構造体210とは物理的に接続され、具体的には、物理的な接続方式は、溶接、係止、接着又は一体成形などの接続方式を含んでもよく、本明細書においてその接続方式が限定されない。いくつかの実施例において、ハウジング構造体210は、収音装置221及び内部素子を保護することができるために、所定の硬度を有する材料で製造されてもよい。いくつかの実施例において、ハウジング構造体210の材質は、金属、合金材料(例えば、アルミニウム合金、クロムモリブデン鋼、スカンジウム合金、マグネシウム合金、チタン合金、マグネシウム-リチウム合金、ニッケル合金など)、ガラス繊維又は炭素繊維、高分子材料(例えば、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリプロピレンなど)などのうちの1種以上を含んでもよいが、それらに限定されない。
【0050】
いくつかの実施例において、ハウジング構造体210に収音用の収音孔211が形成されている。いくつかの実施例において、振動アセンブリ230は、ハウジング構造体210の収音孔211の近くに設置される。いくつかの実施例において、上記1組以上の振動膜及び質量ブロックは、上記収音孔の外側に設置される。いくつかの実施例において、振動アセンブリ230とハウジング構造体は物理的に接続され、具体的には、物理的な接続方式は、溶接、係止、接着又は一体成形などの接続方式を含んでもよく、本明細書においてその接続方式が限定されない。なお、いくつかの実施例において、1組以上の振動膜及び質量ブロックは、上記収音孔の径方向断面と平行に上記収音孔内に設置されてもよく、具体的には後述する
図5についての関連説明を参照することができる。
【0051】
いくつかの実施例において、振動センサ200が空気伝導収音を行うために用いられる場合、外部環境において振動(例えば、音波)が発生する場合、1組以上の振動膜及び振動膜上の質量ブロックが外部環境の振動に応じて振動し、空気が振動膜を通過できるため、振動膜及び質量ブロックによる振動が外部の振動信号(例えば、音波)と共に収音孔211内の音圧変化(又は空気振動)を引き起こして、振動信号を収音孔211を通して収音装置221に伝達して電気信号に変換することにより、振動信号を1つ以上のターゲット周波数帯域において増強してから電気信号に変換するというプロセスを実現する。ターゲット周波数帯域は、1組の振動膜及び質量ブロックに対応する共振周波数(又は共鳴周波数)がある周波数範囲であってもよい。例示的には、振動センサ200がマイクロフォンとして使用される場合、ターゲット周波数帯域の範囲は、200Hz~2kHzであってもよく、具体的には、いくつかの実施例において、音響トランスデューサの共振周波数が2kHzである場合、振動アセンブリ230の共振周波数は1kHzに設定されてもよい。
【0052】
いくつかの実施例において、振動センサ200が骨伝導収音を行うために用いられる場合、収音孔211の外側に伝導ハウジングが設置されてもよく、音響トランスデューサ220及び伝導ハウジングは収容空間を囲むことができ、1組以上の振動膜及び質量ブロックは収容空間内に設置される。いくつかの実施例において、振動アセンブリ(例えば、振動部材)はハウジングに物理的に接続されてもよく、外部環境において振動が発生する場合、伝導ハウジングにより振動を受けて振動アセンブリを振動させ、振動アセンブリの振動は収容空間内の空気を振動させることができ、振動膜及び質量ブロックによる振動は収容空間内の振動信号と共に、収音孔211を通して収音装置221に伝達されて電気信号に変換される。
【0053】
図2に示すように、いくつかの実施例において、振動センサ200は、3組の振動膜及び質量ブロックを含み、具体的には、3組の振動膜及び質量ブロックは、異なる共振周波数を有してもよく、各組の振動膜及び質量ブロックは、外部振動信号のうちの異なる周波数の振動の作用で共振することができ、その結果、振動センサ200が取得した音声信号において、3つのターゲット周波数帯域において振動センサ200の感度が音響トランスデューサ220の感度よりも高い。なお、いくつかの実施例において、ターゲット周波数帯域での感度を大幅に向上させるために、複数組の振動膜及び質量ブロックは同じ共振周波数を有してもよい。例示的には、該振動センサ200が主に5kHz~5.5kHzの機械的振動を検出するために用いられる場合、複数組の振動膜及び質量ブロックの共振周波数を該検出範囲内の値(例えば5.3kHz)に設定することにより、振動センサ200は、検出範囲において、1組の振動膜及び質量ブロックのみを設置する場合より、より高い感度を有することができる。なお、
図2に示す振動膜及び質量ブロックの組数は、解釈及び説明のためのものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。例えば、振動膜及び質量ブロックの組数は、1組、2組、4組などであってもよい。
【0054】
いくつかの実施例において、振動アセンブリ230が複数の振動膜を含む場合、音響トランスデューサ220から最も遠い振動膜は、空気が通過できないように構成される。
図2に示すように、図示した第3の振動膜2313は、空気が通過できないように構成されてもよく、該設置方法により、第3の振動膜2313と音響トランスデューサ220との間に密閉空間が形成されることで、振動情報をよりよく反映させることができる。なお、いくつかの実施例において、音響トランスデューサ220から最も遠い振動膜は、空気が通過できるように構成されてもよく、例示的には、収音孔211の外側に伝導ハウジングを設置する場合、伝導ハウジングと音響トランスデューサ220が収容空間を囲み、該収容空間内の空気は振動情報をよりよく反映させることができる。
【0055】
図3は、本明細書のいくつかの実施例に係る振動センサの概略構成図である。
【0056】
図3に示すように、いくつかの実施例において、振動センサ300の振動アセンブリ330は、支持構造体333により音響トランスデューサ320に接続される1組の振動膜331及び質量ブロック332を含んでもよい。具体的には、質量ブロック332は振動膜331に物理的に接続され、質量ブロック332は振動膜331の外側に設置される。いくつかの実施例において、質量ブロック332が外部環境の振動に応じて同時に共振し、振動膜331及び質量ブロック332による共振を外部の振動信号と共に音響トランスデューサ320に伝達することにより、該振動アセンブリ330の共振周波数近傍の感度を向上させ、振動信号を該ターゲット周波数帯域において増強してから電気信号に変換するというプロセスを実現する。
【0057】
いくつかの実施例において、振動センサ300には1組の振動膜331及び質量ブロック332のみが含まれるため、より高い収音効果を有するために、いくつかの実施例において、振動膜331は不通気性であってもよい。
【0058】
いくつかの実施例において、各組の振動膜及び質量ブロックの共振周波数は、振動膜及び/又は質量ブロックのパラメータに関連し、パラメータは、振動膜の弾性率、音響トランスデューサと振動膜との間に形成されたキャビティの体積、質量ブロックの半径、質量ブロックの高さ、質量ブロックの密度など又はそれらの組み合わせを含む。具体的には、共振周波数とパラメータとの間の数学的関係については、明細書に記載の式1の関連説明を参照することができる。
【0059】
図2を引き続き参照すると、実施例において、振動アセンブリ230は、振動方向に順に設置された第1の振動膜2311、第2の振動膜2312及び第3の振動膜2313を含んでもよく、質量ブロックは、振動方向に順に設置された第1の質量ブロック2321、第2の質量ブロック2322及び第3の質量ブロック2323を含んでもよく、第1の振動膜2311は第1の質量ブロック2321に接続され、第2の振動膜2312は第2の質量ブロック2322に接続され、第3の振動膜2313は第3の質量ブロック2323に接続される。いくつかの実施例において、第1の振動膜2311、第2の振動膜2312及び第3の振動膜2313のうちの任意の2つの隣接する振動膜の間の距離は、該2つの隣接する振動膜の最大振幅以上であり、このように設置すると、振動膜が振動するときに隣接する振動膜と干渉して、振動信号の伝達効果に影響を与えることはないように確保することができる。いくつかの実施例において、振動アセンブリ230が複数組の振動膜及び質量ブロックを含む場合、振動膜は振動膜に垂直な振動方向に沿って順に設置され、いくつかの実施例において、隣接する振動膜の間の距離は、同じであっても異なってもよい。いくつかの実施例において、振動膜とそれに隣接する振動膜との間の隙間に複数のキャビティが形成されてもよく、振動膜とそれに隣接する振動膜との間の複数のキャビティは、空気を収容し、振動膜がその中で振動するために用いられる。
【0060】
いくつかの実施例において、振動アセンブリ230は、振動アセンブリの隣接する振動膜の間の距離が上記隣接する振動膜の最大振幅以上であるように構成される位置制限構造体(図示せず)をさらに含んでもよい。いくつかの実施例において、位置制限構造体は振動膜の縁部に接続されてもよく、該位置制限構造体の減衰を制御することにより位置制限構造体が振動膜の振動を干渉しない。
【0061】
いくつかの実施例において、複数組の振動アセンブリ230の質量ブロックの数は複数であってもよく、複数の質量ブロックはそれぞれ振動膜の両側に設置されてもよい。例示的には、1組の振動アセンブリが2つの質量ブロックを含むと仮定すると、2つの質量ブロックが振動膜の両側に対称的に設置される。いくつかの実施例において、複数組の振動アセンブリ230の質量ブロックは振動膜の同じ側に位置してもよく、質量ブロックは振動膜の外側又は内側に設置されてもよく、振動膜の音響トランスデューサ220に近い側は内側であり、音響トランスデューサ220から離れる側は外側である。なお、いくつかの実施例において、複数組の振動アセンブリの質量ブロックは振動膜の異なる側に位置してもよく、例えば第1の質量ブロック2321及び第2の質量ブロック2322は対応する振動膜の外側に位置し、第3の質量ブロック2323は対応する振動膜の内側に位置する。
【0062】
いくつかの実施例において、振動膜は、空気が通過できるフイルム状構造体に構成され、いくつかの実施例において、振動膜は通気膜であってもよい。空気が通過できるように振動膜を構成することにより、振動信号は、振動アセンブリ230を振動させると共に、さらに通気膜を貫通して、音響トランスデューサにより受信されることで、ターゲット周波数帯域での感度を向上させることができる。いくつかの実施例において、振動膜の材料は、所定の範囲内に弾性変形できる材料である。具体的には、振動膜は、少なくとも、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ePTFE(延伸ポリテトラフルオロエチレン)、PES(ポリエーテルスルホン)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PP(ポリプロピレン)、PETE(ポリエチレンテレフタレート)、ナイロン、NC(ニトロセルロース)及びMCE(混合セルロース)などのうちの1種以上の材料で製造されてもよい。いくつかの実施例において、振動膜及び質量ブロックは、係止、接着又は一体成形などの方式で接続されてもよく、本明細書においてその接続方式が限定されない。いくつかの実施例において、振動膜の厚さは0.05μm~100μmであってもよい。具体的には、振動膜の厚さは振動膜の材料に関連し、例えばePTFE(延伸ポリテトラフルオロエチレン)を振動膜の材料として選択する場合、その厚さは0.5μm~100μmであり、好ましいePTFEフィルムの厚さは、1μm~10μmであり、例えば2μm、5μm、7μmなどである。いくつかの実施例において、好ましくは、ePTFEフィルムの最小通気量が10L/hr以上であるように制御して、良好な通気性能を保証することができると共に、ePTFEフィルムはある程度の防水性能を提供し、内部部品を保護する。いくつかの実施例において、振動膜の弾性率が1GPa~10GPaであるか又は音響トランスデューサ220の感応素子222の弾性率の10分の1~100分の1である他の通気性材料を選択してもよく、本明細書において一々列挙せず、感応素子は、音響トランスデューサ220における振動信号を受信するためのデバイスである。いくつかの実施例において、振動アセンブリ230の複数の振動膜の材料及び寸法は異なっても同じであってもよく、例示的には、第1の振動膜2311はナイロンで製造されてもよく、第2の振動膜2312はePTFE材料で製造されてもよく、第3の振動膜2313の半径は、第1の振動膜2311及び第2の振動膜2312の半径よりも大きくてもよい。
【0063】
いくつかの実施例において、振動膜が通気しないように構成される場合、振動膜の材料は、例えばポリウレタン系、エポキシ樹脂系、アクリレート系フィルムなどの高分子フィルムであってもよく、例えば銅、アルミニウム、スズ又は他の合金及びその複合フィルムなどの金属フィルムであってもよい。いくつかの実施例において、上記通気膜を処理する(例えば、通気孔を被覆する)ことにより達成してもよい。
【0064】
いくつかの実施例において、振動膜は、貫通孔を有するフィルム材料であってもよく、具体的には、貫通孔の孔径は0.01μm~10μmである。好ましくは、貫通孔の孔径は、0.1μm~5μm、例えば0.2μm、0.5μm、0.8μm、1μm、2μmなどであってもよい。いくつかの実施例において、振動アセンブリ230の複数の振動膜の貫通孔の直径は同じであっても異なってもよく、単一振動膜の貫通孔の直径は同じであっても異なってもよい。いくつかの実施例において、貫通孔の孔径は5μmより大きくてもよい。貫通孔の孔径が5μmより大きい場合、通気に影響を与えない前提で、振動膜に他の材料(例えば、シリコーンゴムなど)を設置して一部の貫通孔又は貫通孔の一部の領域を被覆してもよい。
【0065】
いくつかの実施例において、質量ブロックの材料は、銅、スズ又は他の合金及びその複合材料のうちの1種であってもよい。いくつかの実施例において、振動センサ200は、MEMSデバイスの設計に適用されてもよく、MEMSデバイスのプロセスにおいて、振動膜は、その厚さ方向に沿って、例えばSi、SiO2、SiNx、SiCなどの単層材料であってもよく、例えばSi/SiO2、SiO2/Si、Si/SiNx、SiNx/Si/SiO2などの二層又は多層複合材料であってもよい。カウンターウエイトは、例えばSi、Cuなどの単層材料であってもよく、例えばSi/SiO2、SiO2/Si、Si/SiNx、SiNx/Si/SiO2などの二層又は多層複合材料であってもよい。
【0066】
いくつかの実施例において、振動アセンブリ230は、1組以上の振動膜及び質量ブロックを支持するための支持構造体233をさらに含んでもよい。支持構造体233は音響トランスデューサ220(例えば、ハウジング構造体210)に物理的に接続され、1組以上の振動膜及び質量ブロックは支持構造体233に接続される。具体的には、支持構造体233はハウジング構造体210に物理的に接続され、物理的な接続方式は、係止、接着又は一体成形などの接続方式を含んでもよく、いくつかの実施例において、好ましくは、支持構造体233及びハウジング構造体210は接着により接続され、接着材料は、エポキシ樹脂接着剤及びシリカゲルなどを含んでもよいが、それらに限定されない。
【0067】
いくつかの実施例において、振動膜は、支持構造体233に接続されて、固定支持を実現して隣接する振動膜の間の間隔を制御することにより、振動信号の伝達効果を保証することができる。
【0068】
図4は、本明細書のいくつかの実施例に係る振動アセンブリの概略構成図である。
【0069】
図2及び
図4を同時に参照すると、いくつかの実施例において、振動アセンブリの1組以上の振動膜及び質量ブロックは、支持構造体233で囲まれた空間内に位置し、かつ支持構造体233に物理的に接続される。具体的には、ここでいう物理的な接続方式は、接着、係止などの方式であってもよい。好ましくは、接着により接続されてもよく、接着材料は、エポキシ樹脂接着剤及びシリカゲルなどを含んでもよいが、それらに限定されない。いくつかの実施例において、支持構造体233は、中空で両端に開口部を有する管状構造を備えてもよく、管状構造の断面は矩形、三角形、円形又は他の形状であってもよい。いくつかの実施例において、管状構造の断面積は、どこでも同じであってもよく、完全に同じでなくてもよく、例えば音響トランスデューサ220に近接する一端がより大きい断面積を有する。いくつかの実施例において、振動アセンブリ230の1組の振動膜及び質量ブロックは、支持構造体233の開口部に取り付けられてもよい。
【0070】
いくつかの実施例において、振動膜は、支持構造体233の内壁に嵌め込んで設置されてもよく、支持構造体233内に嵌め込まれてもよい。いくつかの実施例において、振動膜は、支持構造体233の内部の空間内に振動することができると共に、支持構造体の開口部を完全に遮蔽することができ、すなわち、振動膜の面積が支持構造体の開口部面積以上であってもよく、このように設置すると、外部環境における空気振動(例えば、音波)ができるだけ振動膜を完全に通過して収音装置221により該振動をピックアップすることで、収音品質を効果的に向上させることができる。
【0071】
いくつかの実施例において、支持構造体233は不通気性材料で製造され、不通気性の支持構造体233は、空気中の振動信号の伝達プロセスにおいて、支持構造体233内の音圧変化(又は空気振動)を引き起こして、支持構造体233の内部の振動信号を収音孔211を通して音響トランスデューサ220内に伝達し、伝達プロセスにおいて支持構造体233を貫通して外部へ漏れることがないようにして、音圧強度を保証し、音伝達効果を向上させることができる。いくつかの実施例において、支持構造体233は、金属、合金材料(例えば、アルミニウム合金、クロムモリブデン鋼、スカンジウム合金、マグネシウム合金、チタン合金、マグネシウム-リチウム合金、ニッケル合金など)、硬質プラスチック、発泡体などのうちの1種以上を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0072】
図4を参照すると、いくつかの実施例において、振動膜の振動方向において、質量ブロックの投影領域は振動膜の投影領域内に位置し、すなわち、振動膜の質量ブロックに接続された表面と平行な方向(すなわち、振動方向に垂直である)において、質量ブロックの断面積は振動膜の断面積よりも小さい。
図2を参照すると、例えば、第1の質量ブロック2321は第1の振動膜2311の投影領域内に位置し、第2の質量ブロック2322は第2の振動膜2312の投影領域内に位置し、第3の質量ブロック2323は第3の振動膜2313の投影領域内に位置する。質量ブロックの断面寸法が振動膜の断面寸法よりも小さいことを保証することにより、質量ブロックが振動膜の振動に干渉しない。
【0073】
いくつかの実施例において、振動膜の質量ブロックに接続された表面と垂直な方向(すなわち、振動方向に平行である)において、質量ブロックの投影領域は支持構造体の投影領域と重ならない。このように設置すると、振動膜及び質量ブロックの振動が支持構造体233によって制限されることを回避する。
【0074】
いくつかの実施例において、振動膜の形状は、円形、矩形、三角形又は不規則図形などを含んでもよく、いくつかの実施例において、振動膜の形状は、支持構造体又は導管の形状に応じて設置されてもよく、本明細書において限定されない。いくつかの実施例において、質量ブロックの形状は、円筒体、円錐台、円錐、立方体、三角体などであってもよく、その大きさ及び材質は後述し、本明細書において形状が限定されない。
【0075】
いくつかの実施例において、質量ブロック又は振動膜が円形の外輪郭を有する場合、質量ブロックが振動膜と同心状に設置されてもよく、同心状に設置された質量ブロックが振動する場合、運動エネルギーが振動膜に均一に分散されることにより、振動膜が振動によりよく応答することができる。いくつかの他の実施例において、質量ブロックは、振動膜の他の位置、例えば、偏心位置に設置されてもよく、偏心位置は、質量ブロックが振動膜と同心状に設置されないことを意味し、好ましくは、質量ブロックと振動膜との偏心距離が50μm以下である。いくつかの実施例において、1組以上の振動膜及び質量ブロックの共振周波数は、1つ以上のターゲット周波数帯域において振動センサの感度を音響トランスデューサの感度よりも高くするように、音響トランスデューサの共振周波数よりも小さく、いくつかの実施例において、振動膜、質量ブロック及び音響トランスデューサの共振周波数と感度との関係については、
図5に示す振動センサの周波数応答曲線図を参照することができる。
【0076】
具体的には、いくつかの実施例において、複数組の質量ブロック及び振動膜の共振周波数を、音響トランスデューサの共振周波数よりも1kHz~10kHz、例えば2kHz、3kHz、5kHz又は7.5kHz低いように設定することにより、振動センサ全体の感度を向上させる。いくつかの実施例において、音響トランスデューサが前述した例における気導マイクロホンである場合、複数組の質量ブロック及び振動膜は、1つ以上のターゲット周波数帯域において振動センサの感度を音響トランスデューサの感度よりも高くするように構成され、1つ以上のターゲット周波数帯域の共振周波数は、上記気導マイクロホンの共振周波数よりも1kHz~10kHz低いように構成される。具体的には、1.5kHz、2kHz、3kHz又は5kHzなどであってもよい。
【0077】
図5は、本明細書のいくつかの実施例に係る振動センサの周波数応答曲線図である。
【0078】
図5に示すように、いくつかの実施例において、振動センサは、上記1組以上の振動膜及び質量ブロックの作用下で、周波数応答曲線が複数の共振ピークを有する。図において、f
1、f
2及びf
3は、それぞれ追加された複数組の質量ブロック及び振動膜の共振ピークに対応し、f
0は音響トランスデューサの共振ピークである。いくつかの実施例において、1組以上の振動膜及び質量ブロックのうちの各組の振動膜及び質量ブロックは、上記1つ以上の異なるターゲット周波数帯域のうちの1つのターゲット周波数帯域に対応し、かつ上記対応するターゲット周波数帯域において上記振動センサの感度が上記音響トランスデューサの感度よりも高い。図において、実線は、複数組の質量ブロック及び振動膜を追加した振動センサの周波数応答曲線500である。共振周波数が音響トランスデューサの共振周波数よりも小さい1組以上の振動膜及び質量ブロックを追加すると、振動センサは、1つ以上の共振ピークが対応して増加する。
【0079】
図から分かるように、振動センサは、周波数応答曲線500が4つの共振ピークを有し、また、感度が音響トランスデューサの感度よりも少なくともΔS向上する。そして、音響トランスデューサの周波数応答曲線(すなわち、共振ピークf0が位置する曲線)から、振動センサは、f1~f3周波数帯域において、より高い感度を有することが分かり、振動膜及び質量ブロックにより、振動センサの高い感度を有する周波数帯域の幅を広げることで、振動センサは、より広い周波数範囲において振動信号を受信して、振動センサの受信周波数範囲を拡大し感度を向上させることができることが分かる。異なる共振ピークを有する複数組の音響トランスデューサを追加することにより受信周波数範囲を拡大する方法と比べて、装置全体の体積を減少させ、コストを削減し、集積性をより高くすると共に、性能をより高くする。
【0080】
例示的には、
図4に示す3組の振動膜及び質量ブロックを例として、3組の振動膜の共振ピークf
1、f
2及びf
3に対応する共振周波数はそれぞれ1.5kHz、2kHz及び2.5kHzであってもよく、いくつかの実施例において、該設置方法により、該振動センサは、より良好な収音能力を取得することができ、特に、音声対応周波数帯域内の音声情報をよりよく取得することができる。
【0081】
いくつかの実施例において、1組以上の振動膜及び質量ブロックの共振周波数は、振動膜及び/又は質量ブロックのパラメータに関連し、パラメータは、振動膜の弾性率、音響トランスデューサと振動膜との間に形成されたキャビティの体積、質量ブロックの半径、質量ブロックの高さ及び質量ブロックの密度のうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施例において、複数組の振動膜及び質量ブロックの共振周波数と感度との関係は以下のように表すことができる。
【0082】
【数1】
式中、Sは振動アセンブリを設置した振動センサの感度であり、fは振動アセンブリの共振周波数であり、K
filmは振動膜の剛性であり、K
foamは支持構造体の剛性であり、V
cavityはキャビティの体積であり、R
mは質量ブロックの半径であり、h
mは質量ブロックの高さであり、ρ
mは質量ブロックの密度である。キャビティの体積V
cavityは、収音装置221の感応素子222とそれに最も近接する振動アセンブリ230の振動膜(
図2に示す第1の振動膜2311)との間に形成された空間の体積である。
【0083】
具体的には、いくつかの実施例において、感度Sは、振動膜の剛性Kfilmの向上に伴って低下し、支持構造体の剛性Kfoamの向上に伴って低下し、キャビティの体積Vcavityの増大に伴って向上してから低下し、質量ブロックの半径Rmの増大に伴って向上してから低下し、質量ブロックの高さhmの増大に伴って向上し、質量ブロックの密度ρmの増大に伴って向上する。振動アセンブリの共振周波数fは、振動膜の剛性Kfilmの向上に伴って増大し、支持構造体の剛性Kfoamの向上に伴って増大し、質量ブロックの半径Rmの増大に伴って減少してから増大し、質量ブロックの高さhmの増大に伴って減少し、質量ブロックの密度ρmの増大に伴って減少する。いくつかの実施例において、振動膜の剛性、キャビティの体積及び質量ブロックの材料及び大きさを制御することにより、感度の大きさ及び共振周波数を調整することができる。
【0084】
図6は、本明細書のいくつかの実施例に係る振動センサの概略構成図である。
【0085】
いくつかの実施例において、振動センサ600の1組以上の振動膜及び質量ブロックは、上記収音孔の径方向断面と平行(振動方向と垂直)に上記収音孔内に設置されてもよい。
図6に示すように、いくつかの実施例において、収音孔に導管611が設置されてもよく、振動膜及び質量ブロックは、上記収音孔の径方向断面と平行に上記収音孔内に設置された第1の振動膜6311及び第2の振動膜6312と第1の質量ブロック6321及び第2の質量ブロック6322を含む。いくつかの実施例において、導管611は、不通気性材料で製造されてもよく、その作用が前述した振動センサ200の支持構造体233と類似し、感度及び振動アセンブリの共振周波数を計算する場合、支持構造体の剛性K
foamは、導管611の材料の剛性であってもよい。いくつかの実施例において、質量ブロックの自由振動を保証するために、質量ブロックは、収音孔の内壁又は導管611と接触しない。なお、導管611の設置は、具体的な実施例に過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。例えば、いくつかの実施例において、導管611を設置せず、1組以上の振動膜及び質量ブロックが収音孔に直接接続されるか又は支持構造体を収音孔内に設置し、かつ1組以上の振動膜及び質量ブロックを支持してもよい。
【0086】
いくつかの実施例において、第1の質量ブロック6321及び第2の質量ブロック6322は、外部環境の振動に応じて同時に共振することができ、第1の振動膜6311及び第2の振動膜6312と第1の質量ブロック6321及び第2の質量ブロック6322による共振を外部の振動信号と共に導管611を介して音響センサ620に伝達して電気信号に変換することにより、振動信号を1つ以上のターゲット周波数帯域において増強してから電気信号に変換するというプロセスを実現する。なお、
図6に示す振動膜及び質量ブロックの組数が2組であることは、説明のためのものに過ぎず、本発明の保護範囲を限定するものではなく、例えば、振動膜及び質量ブロックの組数は、1組、3組又は他の数であってもよい。
【0087】
本明細書のいくつかの実施例において、前述した実施例に記載の振動センサを含み、振動センサにより収音して、さらなる処理のために電気信号に変換する音声入力装置がさらに提供される。
【0088】
上記で基本概念を説明してきたが、当業者にとっては、上記発明の開示は、単なる例として提示されているに過ぎず、本明細書を限定するものではないことは明らかである。本明細書において明確に記載されていないが、当業者は、本明細書に対して様々な変更、改良及び修正を行うことができる。これらの変更、改良及び修正は、本明細書によって示唆されることが意図されておるため、本明細書の例示的な実施例の精神及び範囲内にある。
【0089】
さらに、本明細書の実施例を説明するために、本明細書において特定の用語が使用されている。例えば、「1つの実施例」、「一実施例」、及び/又は「いくつかの実施例」は、本明細書の少なくとも1つの実施例に関連した特定の特徴、構造又は特性を意味する。したがって、本明細書の様々な部分における「一実施例」又は「1つの実施例」又は「1つの代替的な実施例」の2つ以上の言及は、必ずしもすべてが同一の実施例を指すとは限らないことを強調し、理解されたい。また、本明細書の1つ以上の実施例における特定の特徴、構造、又は特性は、適切に組み合わせられてもよい。
【0090】
さらに、当業者には理解されように、本明細書の各態様は、任意の新規かつ有用なプロセス、機械、製品又は物質の組み合わせ、又はそれらへの任意の新規かつ有用な改善を含むいくつかの特許可能なクラス又はコンテキストで、例示及び説明され得る。よって、本明細書の各態様は、完全にハードウェアによって実行されてもよく、完全にソフトウェア(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどを含む)によって実行されてもよく、ハードウェア及びソフトウェアの組み合わせによって実行されてもよい。以上のハードウェア又はソフトウェアは、いずれも「データブロック」、「モジュール」、「エンジン」、「ユニット」、「アセンブリ」又は「システム」と呼ばれてもよい。さらに、本明細書の各態様は、コンピュータ読み取り可能なプログラムコードを含む1つ以上のコンピュータ読み取り可能な媒体に具現化されたコンピュータプログラム製品の形態を取ることができる。
【0091】
さらに、特許請求の範囲に明確に記載されていない限り、本明細書に記載の処理要素又はシーケンスの列挙した順序、英数字の使用、又は他の名称の使用は、本明細書の手順及び方法の順序を限定するものではない。上記開示において、発明の様々な有用な実施例であると現在考えられるものを様々な例を通して説明しているが、そのような詳細は、単にその目的のためであり、添付の特許請求の範囲は、開示される実施例に限定されないが、反対に、本明細書の実施例の趣旨及び範囲内にある全ての修正及び等価な組み合わせをカバーするように意図されることが理解されよう。例えば、上述したシステムアセンブリは、ハードウェアデバイスにより実装されてもよいが、ソフトウェアのみのソリューション、例えば、既存のサーバ又はモバイル装置に説明されたシステムをインストールすることにより実装されてもよい。
【0092】
同様に、本明細書の実施例の前述の説明では、本明細書を簡略化して、1つ以上の発明の実施例への理解を助ける目的で、様々な特徴が1つの実施例、図面又はその説明にまとめられることがあることが理解されよう。しかしながら、このような開示方法は、特許請求される主題が各請求項で列挙されるよりも多くの特徴を必要とするという意図を反映するものとして解釈されるべきではない。むしろ、特許請求される主題は、前述の単一の開示された実施形態の全ての特徴より少ない場合がある。
【0093】
いくつかの実施例において成分及び属性の数を説明する数字が使用されており、このような実施例を説明するための数字は、いくつかの例において修飾語「約」、「ほぼ」又は「実質的」などによって修飾されるものとして理解されるべきである。特に明記しない限り、「約」、「ほぼ」又は「実質的」は、上記数字が説明する値の±20%の変動が許容されることを示す。よって、いくつかの実施例において、明細書及び特許請求の範囲において使用されている数値データは、いずれも特定の実施例に必要な特性に応じて変化し得る近似値である。いくつかの実施例において、数値データについては、規定された有効桁数を考慮すると共に、通常の丸め手法を適用するべきである。本明細書のいくつかの実施例におけるその範囲を決定するための数値範囲及びデータは近似値であるにもかかわらず、特定の実施例において、このような数値は可能な限り正確に設定される。
【0094】
最後に、本明細書に記載の実施例は、単に本明細書の実施例の原理を説明するものであることが理解されよう。他の変形例も本明細書の範囲内にある可能性がある。したがって、限定するものではなく、例として、本明細書の実施例の代替構成は、本明細書の教示と一致するように見なされてもよい。よって、本明細書の実施例は、本明細書において明確に紹介して説明された実施例に限定されない。
【符号の説明】
【0095】
100 振動センサ
120 音響トランスデューサ
130 振動アセンブリ
131 振動膜
132 質量ブロック
200 振動センサ
210 ハウジング構造体
211 収音孔
220 音響トランスデューサ
221 収音装置
230 振動アセンブリ
233 支持構造体
300 振動センサ
320 音響トランスデューサ
330 振動アセンブリ
331 振動膜
332 質量ブロック
333 支持構造体
600 振動センサ
611 導管
620 音響センサ