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特許7462791光回折素子ユニット、多段光回折装置、及び、多段光回折装置の製造方法
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  • 特許-光回折素子ユニット、多段光回折装置、及び、多段光回折装置の製造方法 図1
  • 特許-光回折素子ユニット、多段光回折装置、及び、多段光回折装置の製造方法 図2
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  • 特許-光回折素子ユニット、多段光回折装置、及び、多段光回折装置の製造方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】光回折素子ユニット、多段光回折装置、及び、多段光回折装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/18 20060101AFI20240329BHJP
   G02B 7/00 20210101ALI20240329BHJP
【FI】
G02B5/18
G02B7/00 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022560653
(86)(22)【出願日】2021-08-18
(86)【国際出願番号】 JP2021030182
(87)【国際公開番号】W WO2022097347
(87)【国際公開日】2022-05-12
【審査請求日】2023-04-17
(31)【優先権主張番号】P 2020186055
(32)【優先日】2020-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】山岸 裕幸
【審査官】小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/115606(WO,A1)
【文献】特開2000-131508(JP,A)
【文献】特開2002-372658(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/18
G02B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有する基板と、
前記基板の一方の主面に設けられた光回折素子と、
前記一方の主面において前記光回折素子の近傍に設けられ、且つ、厚さが前記光回折素子の厚さよりも厚い3次元アライメントマークと、を備えている、
ことを特徴とする光回折素子ユニット。
【請求項2】
前記主面を平面視した場合に、前記3次元アライメントマークは、前記光回折素子を連続的に取り囲む環状、又は、前記光回折素子を断続的に取り囲む略環状であり、
前記主面を平面視した場合に、前記3次元アライメントマークの一部、直線により構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の光回折素子ユニット。
【請求項3】
前記3次元アライメントマークは、厚さが最も厚い部分である肉厚部を含み、
前記肉厚部は、前記光回折素子を連続的に取り囲むように設けられている、
ことを特徴とする請求項2に記載の光回折素子ユニット。
【請求項4】
前記3次元アライメントマークは、透光性を有する材料により構成されており、且つ、厚さが最も厚い部分である肉厚部と、当該肉厚部よりも厚さが薄い部分である肉薄部と、により構成されており、
前記肉厚部と前記肉薄部との境界には、段差が設けられている、
ことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の光回折素子ユニット。
【請求項5】
前記3次元アライメントマークは、前記光回折素子と同じ材料により構成されている、ことを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の光回折素子ユニット。
【請求項6】
前記光回折素子は、厚み又は屈折率が互いに独立に設定された複数のセルを含む、
ことを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載の光回折素子ユニット。
【請求項7】
前記複数のセルの各々は、マイクロセルである、
ことを特徴とする請求項6に記載の光回折素子ユニット。
【請求項8】
請求項1~7の何れか1項に記載の光回折素子ユニットをn個(nは、2以上の整数)重ねることによって構成された多段光回折装置であって、
i番目(iは、1≦i≦n-1の整数)の光回折素子ユニットの基板と、i+1番目の光回折素子ユニットの基板との間には、i番目の光回折素子ユニットの3次元アライメントマークが介在している、
ことを特徴とする多段光回折装置。
【請求項9】
前記n個の光回折素子ユニットのうち何れかの光回折素子ユニットの基板の主面を平面視した場合に、前記n個の光回折素子ユニットは、各光回折素子ユニットに設けられた前記3次元アライメントマークが重なるように固定されている、
ことを特徴とする請求項8に記載の多段光回折装置。
【請求項10】
請求項1~7の何れか1項に記載の光回折素子ユニットをn個(nは、2以上の整数)備えている多段光回折装置の製造方法であって、
i番目(iは、1≦i≦n-1の整数)の光回折素子ユニットの基板と、i+1番目の光回折素子ユニットの基板との間にi番目の光回折素子ユニットの3次元アライメントマークが介在するように、i番目の光回折素子ユニットとi+1番目の光回折素子ユニットとを重ねる第1の工程と、
i番目の光回折素子ユニットの前記3次元アライメントマークと、i+1番目の光回折素子ユニットの3次元アライメントマークとが重なるように、i番目の光回折素子ユニットに対するi+1番目の光回折素子ユニットの位置を調整する第2の工程と、
i番目の光回折素子ユニットに対してi+1番目の光回折素子ユニットを固定する第3の工程と、を含んでいる、
ことを特徴とする多段光回折装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光回折素子を備えた光回折素子ユニットに関する。また、そのような光回折素子ユニットを複数備えた多段光回折装置、及び、多段光回折装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、入力光の光路上にレンズや光回折素子など複数の光学素子を重ねて配置し、これらの光学素子を入力光に順に作用させる技術が開示されている。なお、光学素子の一例としては、微細な凹凸構造を有するものの、巨視的には2次元的にパターニングされ、且つ、典型的な厚さが数μmである平面状の光回折素子が挙げられる。これらの光回折素子は、透光性を有する基板の主面上に設けられている。以下において、光回折素子及び基板のことを光回折素子ユニットと称する。
【0003】
複数の光回折素子ユニットを入力光に順に作用させる多段光回折装置においては、各光回折素子ユニットの入力光に対する位置及び方向を予め定められた位置及び方向に調整することが重要である。なぜなら、光回折素子ユニットの入力光に対する位置及び方向が予め定められた位置及び方向からずれると、所期の作用を入力光に対して及ぼすことが困難になるからである。なお、各光回折素子ユニットの入力光に対する位置及び方向の調整は、調整する光回折素子ユニットにおける基板の主面を平面視した状態で、当該主面の面内方向において当該光回折素子ユニットを動かすことによって行われる。したがって、以下においては、各光回折素子ユニットにおけるこの調整のことを面内方向における調整と呼ぶ。
【0004】
これらの面内方向における調整の方法としては、各光回折素子ユニットにおいて光回折素子が設けられている主面上の予め定められた位置に、当該光回折素子とともにアライメントマークを設けておく方法が考えられる。各基板上にアライメントマークが設けられていることにより、アライメントマークを手がかりとして、重ねられている各光回折素子ユニットの面内方向における位置及び方向を調整することができる(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
特許文献2に記載されているアライメントマークは、フォトリソグラフィの技術を用いて薄膜材料をパターニングすることによって得られる。そのため、当該アライメントマークは、厚さ方向には構造をもたない2次元的な構造物であり、その厚さは、当該アライメントマークと同時にパターニングされる薄膜材料と同じ(例えば、0.5μmあるいは2μm)である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2013/027340号公報
【文献】日本国特開2000-96263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、複数の光回折素子ユニットを入力光に順に作用させる多段光回折装置においては、上述した面内方向における調整に加えて、積層方向において隣接する光回折素子ユニット同士の間隔を予め定められた間隔(以下において、設計間隔と称する)に略一致させることが求められる。
【0008】
上述したように、特許文献2に記載されているアライメントマークは、面内方向における調整を想定したものであり、積層方向において隣接する光回折素子ユニット同士の間隔を設計間隔に略一致させることを想定したものではない。
【0009】
本発明の一態様は、上述した課題に鑑みなされたものであり、面内方向における調整に加えて、積層方向において隣接する光回折素子ユニット同士の間隔を規定することができる光回折素子ユニットを提供することを目的とする。また、そのような光回折素子ユニットを複数備えている多段光回折装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る光回折素子ユニットは、透光性を有する基板と、前記基板の一方の主面に設けられた光回折素子と、前記一方の主面において前記光回折素子の近傍に設けられ、且つ、厚さが前記光回折素子の厚さよりも厚い3次元アライメントマークと、を備えている。
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る多段光回折装置は、本発明の何れか一態様に係る光回折素子ユニットをn個(nは、2以上の整数)重ねることによって構成された多段光回折装置である。本多段光回折装置においては、i番目(iは、1≦i≦n-1の整数)の光回折素子ユニットの基板と、i+1番目の光回折素子ユニットの基板との間には、i番目の光回折素子ユニットの3次元アライメントマークが介在している、構成が採用されている。
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る多段光回折装置の製造方法は、本発明の何れか一態様に係る光回折素子ユニットをn個(nは、2以上の整数)備えている多段光回折装置の製造方法である。本製造方法は、i番目(iは、1≦i≦n-1の整数)の光回折素子ユニットの基板と、i+1番目の光回折素子ユニットの基板との間にi番目の光回折素子ユニットの3次元アライメントマークが介在するように、i番目の光回折素子ユニットとi+1番目の光回折素子ユニットとを重ねる第1の工程と、i番目の光回折素子ユニットの前記3次元アライメントマークと、i+1番目の光回折素子ユニットの3次元アライメントマークとが重なるように、i番目の光回折素子ユニットに対するi+1番目の光回折素子ユニットの位置を調整する第2の工程と、i番目の光回折素子ユニットに対してi+1番目の光回折素子ユニットを固定する第3の工程と、を含んでいる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、面内方向における調整に加えて、積層方向において隣接する光回折素子ユニット同士の間隔を規定することができるアライメントマークを備えている光回折素子ユニットを提供することができる。また、そのような光回折素子ユニットを複数備えている多段光回折装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施形態に係る多段光回折装置を構成する3つの光回折素子ユニットの分解斜視図である。
図2】(a)は、図1に示した多段光回折装置の断面図である。(b)及び(c)は、それぞれ、図1に示した多段光回折装置を構成する光回折素子ユニットの平面図である。
図3図1に示した多段光回折装置を構成する光回折素子の一例の斜視図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係る多段光回折装置の製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔第1の実施形態〕
<多段光回折装置の構成>
本発明の第1の実施形態に係る多段光回折装置11について、図1図2、及び図3を参照して説明する。図1は、多段光回折装置11を構成する3つの光回折素子ユニット111~113の分解斜視図である。図2の(a)は、多段光回折装置11の断面図であって、図1に示したA-A’線を通り且つz軸に平行なA-A’断面における断面図である。図2の(b)及び(c)は、それぞれ、多段光回折装置11を構成する光回折素子ユニット111及び光回折素子ユニット113の平面図である。図3は、多段光回折装置11を構成する光回折素子の一例である光回折素子ciの斜視図である。
【0016】
図1に示すように、多段光回折装置11は、n個(nは、2以上の整数)の光回折素子ユニット111,・・・,11nを備えている。本実施形態において、n=3である。ただし、nは、3に限定されるものではない。また、光回折素子ユニット111~113の各々を特に区別しない場合には、各光回折素子ユニットのことを光回折素子ユニット11i(iは、1≦i≦nの整数)とも呼ぶ。
【0017】
また、図2の(a)に示すように、多段光回折装置11は、光回折素子ユニット111~113に加えて、基板114及び基板115を更に備えている。基板114及び基板115は、光回折素子ユニット111~113を挟持するとともに固定している。
【0018】
多段光回折装置11は、光回折素子ユニット111、光回折素子ユニット112、及び光回折素子ユニット113を、この順番で重ねることによって構成されている。以下では、光回折素子ユニット111~113を重ねる方向を積層方向と呼び、積層方向に直交する平面であって、光回折素子ユニット111~113の基板11a1~11a3の主面と平行な方向を面内方向と呼ぶ。光回折素子ユニット111~113の積層構造については、図2の(a)を参照して後述する。
【0019】
図1においては、積層方向のうち光回折素子ユニット111から光回折素子ユニット113に向かう方向をz軸正方向と定めている。また、図1においては、基板11a1~11a3の主面がxy平面と平行になるように、且つ、x軸及びy軸の各々がそれぞれ光回折素子11ciの各辺と平行になるように、直交座標系を定めている。図2の(a)~(c)及び図3に示す直交座標系も、図1に示した直交座標系と同様に定めている。
【0020】
なお、本実施形態において、光回折素子ユニット111と光回折素子ユニット112とは、同一に構成されている。したがって、図2においては、光回折素子ユニット112の平面図の図示を省略している。
【0021】
(光回折素子ユニットの構成)
図1に示すように、光回折素子ユニット11iは、基板11aiと、アライメントマーク11biと、光回折素子11ciと、を備えている。
【0022】
基板11aiは、透光性を有する板状部材である。本実施形態では、基板11aiを構成する透光性を有する材料として石英ガラスを採用している。ただし、基板11aiを構成する透光性を有する材料は、石英ガラスに限定されるものではなく、透光性を有するガラス又は樹脂のなかから適宜選択することができる。
【0023】
また、本実施形態において、光回折素子ユニット11iは、主面の法線方向(例えばz軸正方向)からみた場合に、正方形となるように成形されている。以下において、光回折素子ユニット11iを主面の法線方向からみることを「主面を平面視する」と表現する。
【0024】
光回折素子11ciは、基板11aiの一方の主面(本実施形態では、z軸正方向側の主面)に設けられた、平面状の光回折素子である。光回折素子11ciは、基板11aiと同様に、透光性を有する材料により構成されている。本実施形態では、光回折素子11ciを構成する透光性を有する材料として紫外線硬化樹脂を採用している。光回折素子11ciの構成については、図3を参照して後述する。
【0025】
3次元アライメントマークの一例であるアライメントマーク11biは、光回折素子11ciと同様に、基板11aiの一方の主面に設けられている。アライメントマーク11biは、基板11aiと同様に、透光性を有する材料により構成されている。本実施形態では、アライメントマーク11biを構成する透光性を有する材料として、光回折素子11ciを構成する材料と同じ紫外線硬化樹脂を採用している。
【0026】
アライメントマーク11biは、基板11aiの一方の主面うち、光回折素子11ciの近傍に設けられ、且つ、厚さが光回折素子11ciの厚さよりも厚い3次元的な構造物である。
【0027】
アライメントマーク11biの厚さが光回折素子11ciの厚さよりも厚いことによって、アライメントマーク11biは、i番目の基板である基板11aiと、i+1番目の基板である基板11ai+1との間隔を設計間隔に一致させるスペーサとして機能する。設計間隔は、多段光回折装置11の設計時に予め定められた間隔である。
【0028】
図2の(a)に示すように、アライメントマーク11b1は、基板11a1と基板11a2との間に、且つ、基板11a1及び基板11a2の各々に直接接するように介在しており、アライメントマーク11b2は、基板11a2と基板11a3との間に、且つ、基板11a2及び基板11a3の各々に直接接するように介在しており、アライメントマーク11b3は、基板11a3と後述する基板115との間に、且つ、基板11a3及び基板115の各々に直接接するように介在している。
【0029】
主面を平面視した場合に、アライメントマーク11biの形状は、光回折素子11ciを連続的に取り囲む環状(本実施形態においては、外縁11bi5が円形状である円環状)である。ただし、アライメントマーク11biは、径方向に沿って設けられた1又は複数の溝部又は切り欠き部により複数に分割されていてもよい。この場合、アライメントマーク11biの形状は、光回折素子11ciを断続的に取り囲む略環状になる。
【0030】
また、主面を平面視した場合に、アライメントマーク11biの中央には、光回折素子11ciを収容するための空隙が設けられている。この空隙は、主面を平面視した場合に、アライメントマーク11biの内縁11bi3であって、正方形と円形とを組み合わせた形状を有する内縁11bi3により取り囲まれており、当該正方形の中心と当該円形の中心とは一致している。なお、正方形の中心とは、2本の対角線同士の交点と意味し、正方形の重心とも言い替えられる。本実施形態において、空隙を構成する円の直径は、空隙を構成する正方形の一辺の長さより長く、且つ、当該正方形の対角線よりも短い(図2の(b)及び(c)参照)。このように、主面を平面視した場合に、アライメントマーク11biは、主面の直線により構成された構造を含んでいる。ただし、この空隙は、光回折素子11ciを包含するように構成されていればよく、その形状は、正方形及び円形を組み合わせた形状に限定されるものではない。
【0031】
なお、本実施形態においては、主面を平面視した場合において、内縁11bi3を構成する正方形の4つの角がアライメントマーク11biの境界11bi4に到達している。したがって、境界11bi4も直線により構成された構造を含んでいると言える。ただし、内縁11bi3を構成する正方形の4つの角は、境界11bi4に到達しておらず、境界11bi4に包含されていてもよい。
【0032】
このように、主面を平面視した場合に、アライメントマーク11biが円環状に構成されていることによって、光回折素子11ciは、アライメントマーク11biの空隙の内部に収容される(図2の(a)参照)。
【0033】
アライメントマーク11biは、図4を参照して後述するように、i番目の光回折素子ユニット11iに対するi+1番目の光回折素子ユニット11i+1の位置及び面内方向における向きを調整するための手がかりとして利用される。光回折素子ユニット11iに対する光回折素子ユニット11i+1の向きを特定するために、主面を平面視した場合に、アライメントマーク11biは、直線により構成された構造を含むことが好ましい。図2の(b)及び(c)に示すように、平面視した場合のアライメントマーク11biの形状は、内縁11bi3、境界11bi4、及び外縁11bi5により規定される。本実施形態において、アライメントマーク11biは、外縁11bi5の形状が等方的な円形状であるものの、内縁11bi3及び境界11bi4が正方形状及び円形状を組み合わせた形状であり、直線により構成された構造を含む。
【0034】
ただし、アライメントマーク11biの構造は、隣接する光回折素子ユニット(例えば、光回折素子ユニット11i及び光回折素子ユニット11i+1)同士の向きが一致しているか否かを特定可能な構造に限定されるものではない。例えば、アライメントマーク11biは、内縁11bi3、境界11bi4、及び外縁11bi5が何れも円形であり、それぞれが同心円になるように構成されていてもよい。
【0035】
図2の(a)に示すように、アライメントマーク11biは、厚さが最も厚い部分である肉厚部11bi2と、当該肉厚部よりも厚さが薄い部分である肉薄部11bi1と、により構成されている。本実施形態において、肉厚部11bi2は、光回折素子11ciを連続的に取り囲むように設けられており、肉薄部11bi1は、肉厚部11bi2の内側に、且つ、肉厚部11bi2に沿って設けられている(図2の(b)及び(c)参照)。
【0036】
本実施形態においては、肉薄部11bi1の厚さと肉厚部11bi2の厚さとは、不連続に変化する。したがって、肉薄部11bi1と肉厚部11bi2との境界11bi4には段差が設けられている(図2の(b)及び(c)参照)。
【0037】
多段光回折装置11においては、光回折素子ユニット111~113のうち何れかの光回折素子ユニット11iの基板11aiの主面を平面視した場合に、光回折素子ユニット111~113は、各光回折素子ユニット11iに設けられたアライメントマーク11biが重なるように、紫外線硬化樹脂を用いて固定されている。ただし、光回折素子ユニット111~113の各々の相対的な位置を固定する固定手段は、光硬化性樹脂であればよく、紫外線硬化型樹脂に限定されるものではなく、適宜選択することができる。
【0038】
なお、アライメントマーク11biが重なっている状態とは、平面視した場合に、i番目の光回折素子ユニットのアライメントマーク11biの形状と、i+1番目の光回折素子ユニットのアライメントマーク11bi+1の形状とが略一致している状態を意味する。なお、平面視した場合におけるアライメントマーク11biの形状は、内縁11bi3、境界11bi4、及び外縁11bi5により規定される。
【0039】
以上のように、光回折素子ユニット111~113が重ねられた多段光回折装置11において、(1)光回折素子11c1が収容されている空隙は、基板11a1と、基板11a2と、アライメントマーク11b1とにより密閉されており、(2)光回折素子11c2が収容されている空隙は、基板11a2と、基板11a3と、アライメントマーク11b2とにより密閉されており、(3)光回折素子11c3が収容されている空隙は、基板11a3と、基板115と、アライメントマーク11b3とにより密閉されている。
【0040】
本実施形態において、これらの密閉された空隙には、ガスの一例である乾燥空気が充填されている。光回折素子11ciは、空気中に含まれる水分により経年劣化(例えば加水分解)する場合がある。光回折素子11ciが収容されている空隙に乾燥空気を充填し、且つ、当該空隙を密閉することによって、光回折素子11ciを異物(水分を含む)から保護することができる。
【0041】
ただし、これらの密閉された空隙に充填されるガスは、酸素による酸化を抑制するという観点では、乾燥窒素であることが好ましい。ただし、このガスは、乾燥空気及び乾燥窒素に限定されるものではなく、適宜選択することができる。また、これらの密閉された空隙に充填するガスの圧力は、適宜選択することができ、大気圧と等しくてもよいし、大気圧より低くてもよいし、大気圧よりも高くてもよい。
【0042】
また、これらの密閉された空隙には、ガスの代わりに透光性を有する液体が充填されていてもよい。透光性を有する液体の一例としては、オイルが挙げられる。オイルの種類は、特に限定されないが、シリコーン系又はパラフィン系のオイルが安定性及び入手性の面で優れている。また、オイルの種類を適宜選択することによって、オイルの屈折率を所望の値に近づけることができる。したがって、光回折素子11ciと、光回折素子11ciに接するオイルとの屈折率差、及び、当該オイルと、基板11ai又は基板115との屈折率差を設計時に定めた屈折率差に近づけることができる。
【0043】
(光回折素子の構成)
図3に示すように、光回折素子11ciは、平面状の光回折素子であり、厚み又は屈折率が個別に且つ互いに独立に設定された複数のマイクロセルにより構成されている。ここで、マイクロセルとは、例えば、セルサイズが10μm未満のセルのことを指す。また、セルサイズとは、セルの面積の平方根のことを指す。例えば、マイクロセルの平面視形状が正方形である場合、セルサイズとは、セルの一辺の長さである。セルサイズの下限は、特に限定されないが、例えば1nmである。また、光回折素子11ciの厚み(すなわち、各マイクロセルの厚みのうち最大の厚み)は、特に限定されないが、典型的には数μmである。
【0044】
上述した複数のマイクロセルは、基板11aiの有効領域内に形成されている。本実施形態において、基板11aiの有効領域は、一辺1.0mmの正方形であり、マトリックス状に配置された1000×1000個のマイクロセルにより構成されている。各マイクロセルは、厚さ100μmのベース上に形成された、1辺1μmの底辺を有するピラーにより構成されている。各ピラーの高さは、例えば、0nm、100nm、200nm、…、1100nm、1200nm(100nmステップ13段階)の何れかであり、そのピラーにより構成されるマイクロセルの屈折率が所期の屈折率になるように決められている。
【0045】
なお、本実施形態において、光回折素子11ciにおけるピラーのサイズは1μmであるが、これに限定されない。すなわち、光回折素子11ciのピラーのサイズは、10μm未満であってもよい。また、光回折素子11ciのセル数及び有効領域サイズも任意である。
【0046】
多段光回折装置11は、各マイクロセルを透過した光(主に可視光及び赤外光の少なくとも何れかを想定)を相互に干渉させることによって、予め定められた光演算を実行するように設計されたものである。このような光回折素子11ciを並べてN回の光演算を順次実行する場合、基板11a1~11a3の相対的な位置関係を所期の関係に保つことが重要になる。
【0047】
多段光回折装置11においては、アライメントマーク11biを手がかりとして、重ねられている各光回折素子ユニット11iの面内方向における調整を実施することができる。なお、面内方向における調整の方法については、図4を参照して後述する。また、多段光回折装置11においては、アライメントマーク11biの厚さを、設計間隔に略一致させておくことにより、積層方向において隣接する光回折素子ユニット同士の間隔を設計間隔に略一致させることができる。したがって、多段光回折装置11は、アライメントマーク11biを用いて、面内方向における調整に加えて、積層方向において隣接する光回折素子ユニット同士の間隔を規定することができる。
【0048】
〔第2の実施形態〕
本発明の第2の実施形態に係る多段光回折装置の製造方法M1について、図4を参照して説明する。本実施形態では、第1の実施形態で説明した多段光回折装置11を説明する場合を例に、製造方法M1について説明する。図4は、製造方法M1のフローチャートである。なお、第1の実施形態にて説明した多段光回折装置11の構成については、その説明を省略する。
【0049】
図4に示すように、製造方法M1は、成形工程S11と、積層工程S12と、調整工程S13と、固定工程S14とを含んでいる。
【0050】
<成形工程>
成形工程S11は、基板11aiの一方の主面の有効領域に、アライメントマーク11biと、光回折素子11ciとを形成する工程である。本実施形態においては、以下のように、光造形の手法を用いてアライメントマーク11bi及び光回折素子11ciを形成する。成形工程S11を実施することによって、光回折素子ユニット111~113(図1参照)を製造することできる。
【0051】
まず、基板11aiの一方の主面に直接接するように未硬化状態の紫外線硬化樹脂の層を形成する。そのうえで、前記有効領域において、各ピラーに対応する所定の領域ごとに、所定の強度及びパルス幅の紫外線レーザ光を所定の回数照射することによって、光回折素子11ci(図3参照)を形成する。また、前記有効領域を取り囲む所定の領域に、紫外線レーザ光を照射することによって、アライメントマーク11bi(図1参照)を形成する。
本実施形態においては、アライメントマーク11bi及び光回折素子11ciを形成するための紫外線硬化樹脂として、同一の紫外線硬化樹脂を用いる。したがって、アライメントマーク11bi及び光回折素子11ciは、同じ材料により構成されている。
【0052】
また、本実施形態においては、単一の光造形のプロセスを用いて、アライメントマーク11bi及び光回折素子11ciの各々を区別することなく、アライメントマーク11bi及び光回折素子11ciを一括して形成する。これにより、アライメントマーク11biを形成する光造形のプロセスと、光回折素子11ciを形成する光造形のプロセスとの間において、光造形に用いる座標系がリセットされることを回避することができる。座標系がリセットされた場合、リセットの前後において座標系がランダムにずれるため、アライメントマーク11biと光回折素子11ciとの相対位置が、光回折素子ユニット11iごとにばらついてしまう。その結果、アライメントマーク11biを手がかりとして面内方向における位置の調整を実施することができなくなる。アライメントマーク11bi及び光回折素子11ciを一括して形成することにより、各光回折素子ユニット11iにおけるアライメントマーク11biと光回折素子11ciとの相対位置を一致させることができる。
【0053】
<繰り返し工程>
積層工程S12、調整工程S13、及び固定工程S14の各々は、それぞれ、請求の範囲における第1の工程、第2の工程、及び、第3の工程の一例である。積層工程S12、調整工程S13、及び固定工程S14は、i≦n-1である限り繰り返される。多段光回折装置11においては、n=3であるので、本実施形態において、積層工程S12、調整工程S13、及び固定工程S14は、2回繰り返される。
【0054】
(積層工程)
積層工程S12は、i番目(iは、1≦i≦n-1の整数)の光回折素子ユニット11iとi+1番目の光回折素子ユニット11i+1とを重ねる工程である。積層工程S12において、光回折素子ユニット11i及び光回折素子ユニット11i+1は、光回折素子ユニット11iの基板11aiと、光回折素子ユニット11i+1の基板11ai+1との間にi番目の光回折素子ユニット11iのアライメントマーク11biが介在するように重ねられる。積層工程S12を実施することによって、基板11aiと基板11ai+1との間隔が設計間隔に略一致する。
【0055】
(調整工程)
調整工程S13は、光回折素子ユニット11iとi+1番目の光回折素子ユニット11i+1とにおいて、面内方向における調整を実施する工程である。具体的には、i番目の光回折素子ユニット11iのアライメントマーク11biと、i+1番目の光回折素子ユニット11i+1のアライメントマーク11bi+1とが重なるように、i番目の光回折素子ユニット11iに対するi+1番目の光回折素子ユニット11i+1の位置及び面内方向における向きを調整する。
【0056】
i番目の光回折素子ユニット11iに対するi+1番目の光回折素子ユニット11i+1の位置を調整する場合、アライメントマーク11bi,11bi+1の外縁11bi5,11bi+15及び境界11bi4,11bi+14を手がかりとして利用することができるし、i番目の光回折素子ユニット11iに対するi+1番目の光回折素子ユニット11i+1の面内方向における向きを調整する場合、アライメントマーク11bi,11bi+1の内縁11bi3,11bi+13を利用することができる。
【0057】
調整工程S13は、多段光回折装置の製造者が顕微鏡像をみながら手作業で実施してもよいし、面内方向における位置を自動で調整する調整装置が実施してもよい。
【0058】
(固定工程)
固定工程S14は、光回折素子ユニット11iに対して光回折素子ユニット11i+1を固定する工程である。本実施形態においては、互いに接している光回折素子ユニット11iのアライメントマーク11biと、光回折素子ユニット11i+1の11ai+1とを、紫外線硬化樹脂を用いて接着する。ただし、光回折素子ユニット11i+1は、光回折素子ユニット11iに対して直接固定されていてもよいし、他の部材を介して間接的に固定されていてもよい。他の部材の一例としては、重ねられた状態の光回折素子ユニット111~113を収容する筒状部材が挙げられる。筒状部材の横断面の形状は、平面視した場合における基板11aiの形状に対応して定めればよい。
【0059】
(その他の工程)
なお、光回折素子11ciが収容される空隙にオイルなどの液体を充填する場合、調整工程S13と固定工程S14との間に、当該空隙にオイルを満たす工程を追加すればよい。
【0060】
また、多段光回折装置11は、光回折素子ユニット113の光回折素子11c3が収容されている空隙を密閉する基板115を備えている。この場合、積層工程S12、調整工程S13、及び固定工程S14の繰り返しが実施されたあとに、光回折素子ユニット113の基板11a3と基板115とを重ねる工程と、光回折素子ユニット113に対して基板115を固定する工程と、を実施する。本実施形態において、基板11a3と基板115とは、各々の間にアライメントマーク11b3が介在するように重ねられる。また、基板115は、アライメントマーク11b3に対して固定される。
【0061】
〔まとめ〕
本発明の第1の態様に係る光回折素子ユニットは、透光性を有する基板と、前記基板の一方の主面に設けられた光回折素子と、前記一方の主面において前記光回折素子の近傍に設けられ、且つ、厚さが前記光回折素子の厚さよりも厚い3次元アライメントマークと、を備えている。
【0062】
このように構成された光回折素子ユニットを複数重ねて多段光回折装置を構成する場合に、多段光回折装置の製造者、あるいは、面内方向における調整を自動で行う調整装置は、3次元アライメントマークを手がかりとして、重ねられている各光回折素子ユニットの面内方向における調整を実施することができる。また、多段光回折装置の製造者は、3次元アライメントマークの厚さを、上述した設計間隔に略一致させておくことにより、積層方向において隣接する光回折素子ユニット同士の間隔を設計間隔に略一致させることができる。したがって、第1の態様は、面内方向における調整に加えて、積層方向において隣接する光回折素子ユニット同士の間隔を規定することができる。
【0063】
また、本発明の第2の態様に係る光回折素子ユニットは、上述した第1の態様に係る光回折素子ユニットの構成に加えて、前記主面を平面視した場合に、前記3次元アライメントマークは、前記光回折素子を連続的に取り囲む環状、又は、前記光回折素子を断続的に取り囲む略環状であり、前記主面を平面視した場合に、前記3次元アライメントマークは、少なくとも直線により構成された構造を含む、構成が採用されている。
【0064】
このように構成された光回折素子ユニットを複数重ねて多段光回折装置を構成する場合に、多段光回折装置の製造者、あるいは、面内方向における調整を自動で行う調整装置は、3次元アライメントマークの形状と、少なくとも直線により構成された構造とを手がかりとして、重ねられている各光回折素子ユニットの面内方向における位置及び方向を調整することができる。したがって、第2の態様は、光回折素子ユニットを複数重ねて多段光回折装置を構成する場合に、面内方向における調整を容易に行うことができる。
【0065】
また、本発明の第3の態様に係る光回折素子ユニットは、上述した第2の態様に係る光回折素子ユニットの構成に加えて、前記3次元アライメントマークは、厚さが最も厚い部分である肉厚部を含み、前記肉厚部は、前記光回折素子を連続的に取り囲むように設けられている、構成が採用されている。
【0066】
このように構成された光回折素子ユニットを複数重ねて多段光回折装置を構成する場合に、光回折素子は、当該光回折素子が設けられている基板と、当該基板の一方の主面に設けられた3次元アライメントマークと、当該3次元アライメントマークの上に重ねられた別の基板と、により取り囲まれた空間内に収容される。
【0067】
そのうえで、上記の構成によれば、肉厚部が光回折素子を連続的に取り囲んでいる。したがって、光回折素子を収容している空間は、2枚の基板と、当該2枚の基板の間に介在する3次元アライメントマークとにより密閉される。したがって、第3の態様は、光回折素子を、大気中に含まれ得る水分や外部から加わり得る衝撃などから保護することができる。
【0068】
また、本発明の第4の態様に係る光回折素子ユニットは、上述した第1の態様~第3の態様の何れか一態様に係る光回折素子ユニットの構成に加えて、前記3次元アライメントマークは、透光性を有する材料により構成されており、且つ、厚さが最も厚い部分である肉厚部と、当該肉厚部よりも厚さが薄い部分である肉薄部と、により構成されており、前記肉厚部と前記肉薄部との境界には、段差が設けられている、構成が採用されている。
【0069】
複数の光回折素子ユニットを重ねてなる多段光回折装置において面内方向における調整を実施する場合、固定されている側の光回折素子ユニットの3次元アライメントマークと、調整する側の光回折素子ユニットの3次元アライメントマークと、を顕微鏡で観察し、3次元アライメントマーク同士を一致させる。このとき、多段光回折装置の製造者、あるいは、面内方向における調整を自動で行う調整装置は、光回折素子及び3次元アライメントマークの大きさに応じて顕微鏡の倍率を決定するので、顕微鏡の焦点深度は、光回折素子及び3次元アライメントマークの大きさに応じて自動的に決まる。
【0070】
上記の構成によれば、基板の厚さと3次元アライメントマークの厚さとの和が厚いことに起因して両方の3次元アライメントマークにピントを合わせることが難しい場合であっても、肉薄部の外縁に設けられた段差を手がかりにすることによって、3次元アライメントマーク同士を一致させることができる。
【0071】
また、本発明の第5の態様に係る光回折素子ユニットは、上述した第1の態様~第4の態様の何れか一態様に係る光回折素子ユニットの構成に加えて、前記3次元アライメントマークは、前記光回折素子と同じ材料により構成されている、構成が採用されている。
【0072】
上記の構成によれば、3次元アライメントマークを光回折素子とは異なる材料を用いて構成する場合と比較して、材料ごとの装置コストを削減することができ、且つ、製造条件を単純化することができる。
【0073】
また、本発明の第6の態様に係る光回折素子ユニットは、上述した第1の態様~第5の態様の何れか一態様に係る光回折素子ユニットの構成に加えて、前記光回折素子は、厚み又は屈折率が互いに独立に設定された複数のセルを含む、構成が採用されている。
【0074】
多段光回折装置が含む光回折素子の例としては、厚み又は屈折率が互いに独立に設定された複数のセルを含む光回折素子が挙げられる。
【0075】
また、本発明の第7の態様に係る光回折素子ユニットは、上述した第6の態様に係る光回折素子ユニットの構成に加えて、前記複数のセルの各々は、マイクロセルである、構成が採用されている。
【0076】
なお、マイクロセルとは、例えば、セルサイズが10μm未満のセルのことを指す。また、セルサイズとは、セルの面積の平方根のことを指す。
【0077】
本発明の第8の態様に係る多段光回折装置は、上述した第1の態様~第7の態様の何れか一態様に係る光回折素子ユニットをn個(nは、2以上の整数)重ねることによって構成された多段光回折装置であって、i番目(iは、1≦i≦n-1の整数)の光回折素子ユニットの基板と、i+1番目の光回折素子ユニットの基板との間には、i番目の光回折素子ユニットの3次元アライメントマークが介在している。
【0078】
多段光回折装置の製造者、あるいは、面内方向における調整を自動で行う調整装置は、3次元アライメントマークを手がかりとして、重ねられている各光回折素子ユニットの面内方向における調整を実施することができる。また、多段光回折装置の製造者は、3次元アライメントマークの厚さを、上述した設計間隔に略一致させておくことにより、積層方向において隣接する光回折素子ユニット同士の間隔を設計間隔に略一致させることができる。したがって、第7の態様においては、各光回折素子ユニットに設けられた3次元アライメントマークを用いて面内方向における調整を実施可能であり、且つ、各光回折素子ユニットに設けられた3次元アライメントマークを用いて隣接する光回折素子ユニット同士の間隔を規定することができる。
【0079】
また、本発明の第9の態様に係る多段光回折装置は、上述した第8の態様に係る多段光回折装置の構成に加えて、前記n個の光回折素子ユニットのうち何れかの光回折素子ユニットの基板の主面を平面視した場合に、前記n個の光回折素子ユニットは、各光回折素子ユニットに設けられた前記3次元アライメントマークが重なるように固定されている、構成が採用されている。
【0080】
多段光回折装置において、各光回折素子ユニットに設けられた前記3次元アライメントマークが重なっているということは、各光回折素子ユニットに設けられた光回折素子の面内方向における位置の調整が完了していることを意味する。したがって、第8の態様によれば、各光回折素子ユニットに設けられた光回折素子の面内方向における位置が調整済である多段光回折装置を提供することができる。
【0081】
本発明の第10の態様に係る多段光回折装置の製造方法は、上述した第1の態様から第7の態様の何れか一態様に係る光回折素子ユニットをn個(nは、2以上の整数)備えている多段光回折装置の製造方法であって、i番目(iは、1≦i≦n-1の整数)の光回折素子ユニットの基板と、i+1番目の光回折素子ユニットの基板との間にi番目の光回折素子ユニットの3次元アライメントマークが介在するように、i番目の光回折素子ユニットとi+1番目の光回折素子ユニットとを重ねる第1の工程と、i番目の光回折素子ユニットの前記3次元アライメントマークと、i+1番目の光回折素子ユニットの3次元アライメントマークとが重なるように、i番目の光回折素子ユニットに対するi+1番目の光回折素子ユニットの位置を調整する第2の工程と、i番目の光回折素子ユニットに対してi+1番目の光回折素子ユニットを固定する第3の工程と、を含んでいる。
【0082】
上記の構成によれば、積層方向において隣接するi番目の光回折素子ユニットとi+1番目の光回折素子ユニットとの間隔が3次元アライメントマークにより規定されており、且つ、各光回折素子ユニットに設けられた光回折素子の面内方向における位置が調整済である多段光回折装置を提供することができる。
【0083】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0084】
なお、本明細書における「光回折素子」は、或る情報(例えば、或る画像)を表す光信号を別の情報(例えば、別の画像)を表す光信号に変換する素子である。このため、或る画像を表す電気信号を別の画像を表す電気信号に変換する素子をフィルタと呼ぶのと同様の意味で、本明細書における「光回折素子」は、「光フィルタ」と言い換えることができる。この場合、本明細書に開示した光演算システムは、以下のように表現することもできる。
【0085】
本発明の第Aの態様に係るフィルタユニットは、透光性を有する基板と、前記基板の一方の主面に設けられた光フィルタと、前記一方の主面において前記光フィルタの近傍に設けられ、且つ、厚さが前記光フィルタの厚さよりも厚い3次元アライメントマークと、を備えている。
【0086】
また、本発明の第Bの態様に係るフィルタユニットは、上述した第Aの態様に係るフィルタユニットの構成に加えて、前記主面を平面視した場合に、前記3次元アライメントマークは、前記光フィルタを連続的に取り囲む環状、又は、前記光フィルタを断続的に取り囲む略環状であり、前記主面を平面視した場合に、前記3次元アライメントマークは、少なくとも直線により構成された構造を含む、構成が採用されている。
【0087】
また、本発明の第Cの態様に係るフィルタユニットは、上述した第Bの態様に係るフィルタユニットの構成に加えて、前記3次元アライメントマークは、厚さが最も厚い部分である肉厚部を含み、前記肉厚部は、前記光フィルタを連続的に取り囲むように設けられている、構成が採用されている。
【0088】
また、本発明の第Dの態様に係るフィルタユニットは、上述した第Aの態様~第Cの態様の何れか一態様に係るフィルタユニットの構成に加えて、前記3次元アライメントマークは、透光性を有する材料により構成されており、且つ、厚さが最も厚い部分である肉厚部と、当該肉厚部よりも厚さが薄い部分である肉薄部と、により構成されており、前記肉厚部と前記肉薄部との境界には、段差が設けられている、構成が採用されている。
【0089】
また、本発明の第Eの態様に係るフィルタユニットは、上述した第Aの態様~第Dの態様の何れか一態様に係るフィルタユニットの構成に加えて、前記3次元アライメントマークは、前記光フィルタと同じ材料により構成されている、構成が採用されている。
【0090】
また、本発明の第Fの態様に係るフィルタユニットは、上述した第Aの態様~第Eの態様の何れか一態様に係るフィルタユニットの構成に加えて、前記光フィルタは、屈折率が互いに独立に設定された複数のセルを含む、構成が採用されている。
【0091】
また、本発明の第Gの態様に係るフィルタユニットは、上述した第Fの態様に係るフィルタユニットの構成に加えて、前記複数のセルの各々は、マイクロセルである、構成が採用されている。
【0092】
本発明の第Hの態様に係る多段光フィルタ装置は、上述した第Aの態様~第Gの態様の何れか一態様に係るフィルタユニットをn個(nは、2以上の整数)重ねることによって構成された多段光フィルタ装置であって、i番目(iは、1≦i≦n-1の整数)のフィルタユニットの基板と、i+1番目のフィルタユニットの基板との間には、i番目のフィルタユニットの3次元アライメントマークが介在している。
【0093】
また、本発明の第Iの態様に係る多段光フィルタ装置は、上述した第Hの態様に係る多段光フィルタ装置の構成に加えて、前記n個のフィルタユニットのうち何れかのフィルタユニットの基板の主面を平面視した場合に、前記n個のフィルタユニットは、各フィルタユニットに設けられた前記3次元アライメントマークが重なるように固定されている、構成が採用されている。
【0094】
本発明の第Jの態様に係る多段光フィルタ装置の製造方法は、上述した第Aの態様から第Gの態様の何れか一態様に係るフィルタユニットをn個(nは、2以上の整数)備えている多段光フィルタ装置の製造方法であって、i番目(iは、1≦i≦n-1の整数)のフィルタユニットの基板と、i+1番目のフィルタユニットの基板との間にi番目のフィルタユニットの3次元アライメントマークが介在するように、i番目のフィルタユニットとi+1番目のフィルタユニットとを重ねる第1の工程と、i番目のフィルタユニットの前記3次元アライメントマークと、i+1番目のフィルタユニットの3次元アライメントマークとが重なるように、i番目のフィルタユニットに対するi+1番目のフィルタユニットの位置を調整する第2の工程と、i番目のフィルタユニットに対してi+1番目のフィルタユニットを固定する第3の工程と、を含んでいる。
【符号の説明】
【0095】
11 多段光回折装置
111,112,113 光回折素子ユニット
11a1,11a2,11a3 基板
11b1,11b2,11b3 アライメントマーク(3次元アライメントマーク)
11b11,11b31 肉薄部
11b12,11b32 肉厚部
11b13,11b33 内縁
11b14,11b34 境界
11b15,11b35 外縁
11c1,11c2,11c3 光回折素子
図1
図2
図3
図4