(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-28
(45)【発行日】2024-04-05
(54)【発明の名称】水硬性組成物用早強剤
(51)【国際特許分類】
C04B 22/10 20060101AFI20240329BHJP
C04B 24/26 20060101ALI20240329BHJP
C04B 28/02 20060101ALI20240329BHJP
C01F 11/18 20060101ALI20240329BHJP
C08L 33/02 20060101ALI20240329BHJP
C08K 3/26 20060101ALI20240329BHJP
【FI】
C04B22/10 ZAB
C04B24/26 E
C04B24/26 F
C04B24/26 H
C04B28/02
C01F11/18 C
C08L33/02
C08K3/26
(21)【出願番号】P 2023175225
(22)【出願日】2023-10-10
【審査請求日】2024-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2022169973
(32)【優先日】2022-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100203242
【氏名又は名称】河戸 春樹
(72)【発明者】
【氏名】川上 博行
(72)【発明者】
【氏名】島田 恒平
(72)【発明者】
【氏名】名越 悠登
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第111925138(CN,A)
【文献】韓国登録特許第10-2278202(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B
C01F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分、(b)成分、及び水を含有する、水硬性組成物用早強剤。
(a)成分:カルサイト
(b)成分:下記一般式(1b)で示される単量体(1b)と、下記一般式(2b)で示される単量体(2b)とを構成単量体として含み、全構成単量体中、単量体(1b)と単量体(2b)の合計量中の単量体(1b)の割合が、10質量%以上35質量%以下である、共重合体
【化1】
〔式中、
R
1b、R
2b、R
3b:同一でも異なっていても良く、水素原子、メチル基又は(CH
2)
rCOOM
2であり、(CH
2)
rCOOM
2は、COOM
1又は他の(CH
2)
rCOOM
2と無水物を形成していてもよく、その場合、それらの基のM
1、M
2は存在しない。
M
1、M
2:同一でも異なっていても良く、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、置換アルキルアンモニウム基、アルキル基、ヒドロアルキル基又はアルケニル基
r:0以上2以下の数
を示す。〕
【化2】
〔式中、
R
4b、R
5b、R
6b:同一でも異なっていても良く、水素原子、メチル基、(CH
2)
sCOOM
3、又は(CH
2)
q1(CO)
p1O(AO)
n1-R
7b
R
7b:水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基
AO:炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基
n1:AOの平均付加モル数であり、4以上200以下の数
q1:0以上2以下の数
p1:0又は1
M
3:水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、置換アルキルアンモニウム基、アルキル基、ヒドロアルキル基又はアルケニル基
s:0以上2以下の数
を示す。〕
【請求項2】
(a)成分が、Scherrerの式で算出される(104)面の結晶子サイズが50nm以下のカルサイトである、請求項1に記載の水硬性組成物用早強剤。
【請求項3】
(a)成分が、BET比表面積が20m
2/g以上のカルサイトである、請求項1又は2に記載の水硬性組成物用早強剤。
【請求項4】
(a)成分が、平均一次粒子径が75nm以下のカルサイトである、請求項
1又は2に記載の水硬性組成物用早強剤。
【請求項5】
(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(a)/(b)が、1以上100以下である、請求項
1又は2に記載の水硬性組成物用早強剤。
【請求項6】
(b)成分が、単量体(1b)中のCOOM
1及びCOOM
2の合計量が6質量%以上25質量%以下の共重合体である、請求項
1又は2に記載の水硬性組成物用早強剤。
【請求項7】
(b)成分の重量平均分子量が30,000以上80,000以下である、請求項
1又は2に記載の水硬性組成物用早強剤。
【請求項8】
請求項
1又は2に記載の水硬性組成物用早強剤、水硬性粉体、及び水を含有する、水硬性組成物。
【請求項9】
更に(c)分散剤(但し、(b)成分を除く)を含有する、請求項8に記載の水硬性組成物。
【請求項10】
請求項
1又は2に記載の水硬性組成物用早強剤、水硬性粉体、及び水を混合する、水硬性組成物の製造方法。
【請求項11】
更に(c)分散剤(但し、(b)成分を除く)を混合する、請求項10に記載の水硬性組成物の製造方法。
【請求項12】
下記(a)成分、(b)成分、及び水を混合する、水硬性組成物用早強剤の製造方法。
(a)成分:カルサイト
(b)成分:下記一般式(1b)で示される単量体(1b)と、下記一般式(2b)で示される単量体(2b)とを構成単量体として含み、全構成単量体中、単量体(1b)と単量体(2b)の合計量中の単量体(1b)の割合が、10質量%以上35質量%以下である、共重合体
【化3】
〔式中、
R
1b、R
2b、R
3b:同一でも異なっていても良く、水素原子、メチル基又は(CH
2)
rCOOM
2であり、(CH
2)
rCOOM
2は、COOM
1又は他の(CH
2)
rCOOM
2と無水物を形成していてもよく、その場合、それらの基のM
1、M
2は存在しない。
M
1、M
2:同一でも異なっていても良く、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、置換アルキルアンモニウム基、アルキル基、ヒドロアルキル基又はアルケニル基
r:0以上2以下の数
を示す。〕
【化4】
〔式中、
R
4b、R
5b、R
6b:同一でも異なっていても良く、水素原子、メチル基、(CH
2)
sCOOM
3、又は(CH
2)
q1(CO)
p1O(AO)
n1-R
7b
R
7b:水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基
AO:炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基
n1:AOの平均付加モル数であり、4以上200以下の数
q1:0以上2以下の数
p1:0又は1
M
3:水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、置換アルキルアンモニウム基、アルキル基、ヒドロアルキル基又はアルケニル基
s:0以上2以下の数
を示す。〕
【請求項13】
(a)成分が、Scherrerの式で算出される(104)面の結晶子サイズが50nm以下のカルサイトである、請求項12に記載の水硬性組成物用早強剤の製造方法。
【請求項14】
(a)成分が、BET比表面積が20m
2/g以上のカルサイトである、請求項12又は13に記載の水硬性組成物用早強剤の製造方法。
【請求項15】
(a)成分が、平均一次粒子径が75nm以下のカルサイトである、請求項
12又は13に記載の水硬性組成物用早強剤の製造方法。
【請求項16】
(a)成分の混合量と(b)成分の混合量との質量比(a)/(b)が、1以上100以下である、請求項
12又は13に記載の水硬性組成物用早強剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水硬性組成物用早強剤、並びに水硬性組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートは、ポルトランドセメント等の水硬性粉体と骨材、水とを混合後、型枠に打設した際、早期に脱型強度を発現することが求められる場合がある。例えば、トンネルの二次覆工コンクリートを移動式セントル型枠を用いて打設する場合、生産性の観点から、打設翌朝に脱型できることが求められる。特に冬場においてはコンクリートの硬化反応が遅くなるために、早強性が求められる場合が多く存在する。またプレキャストコンクリートの製造現場においては、少ない型枠で数多くの製品を製造するために、1日に同一型枠への打設を2回行う、所謂2回転生産を行う場合がある。その際、短時間でコンクリートの打設から脱型までを行う必要があるために、早強性を求められる場合が多く存在する。早強性を得るためには蒸気養生や加温養生によってコンクリート温度を向上させることが効果的であるが、経済的、環境的観点から、蒸気養生や加温養生は好ましくなく、低温で十分な早強性が得られることが求められている。
他方で、低炭素社会の実現の観点から、二酸化炭素を炭素資源と捉え、これを回収し、多様な炭素化合物として再利用する、所謂カーボンリサイクルが注目されている。二酸化炭素を再利用できる材料の一つとして炭酸カルシウムが挙げられ、炭酸カルシウムを高付加価値化する技術が求められている。
【0003】
特許文献1には、エチレン性不飽和モノカルボン酸(A)、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート(B)及びエチレン性不飽和ジカルボン酸(C)を共重合して得られる共重合体の塩で、該共重合体を構成する(A)、(B)及び(C)成分の合計モル数に対する(A)成分の割合が40~89モル%、(B)成分の割合が1~10モル%、(C)成分の割合が10~59モル%であり、重量平均分子量(Mw)が25000~65000である共重合体の塩を含有する、無機顔料用分散剤が開示され、前記無機顔料用分散剤は、微細な顔料の高濃度スラリーにおいても低粘度化が可能であり、また、高剪断下におけるスラリーの粘度を小さく維持することが可能であることを開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、せん断時の粘度が低いことから輸送時や水硬性組成物調製時の作業性に優れ、且つ調製から例えば5~20時間後の水硬性組成物硬化体の強度を向上させる、水硬性組成物用早強剤及びその製造方法、並びに調製から例えば5~20時間後の水硬性組成物硬化体の強度が向上する、水硬性組成物及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記(a)成分、(b)成分、及び水を含有する、水硬性組成物用早強剤に関する。
(a)成分:カルサイト
(b)成分:下記一般式(1b)で示される単量体(1b)と、下記一般式(2b)で示される単量体(2b)とを構成単量体として含み、全構成単量体中、単量体(1b)と単量体(2b)の合計量中の単量体(1b)の割合が、10質量%以上35質量%以下である、共重合体
【0007】
【0008】
〔式中、
R1b、R2b、R3b:同一でも異なっていても良く、水素原子、メチル基又は(CH2)rCOOM2であり、(CH2)rCOOM2は、COOM1又は他の(CH2)rCOOM2と無水物を形成していてもよく、その場合、それらの基のM1、M2は存在しない。
M1、M2:同一でも異なっていても良く、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、置換アルキルアンモニウム基、アルキル基、ヒドロアルキル基又はアルケニル基
r:0以上2以下の数
を示す。〕
【0009】
【0010】
〔式中、
R4b、R5b、R6b: 同一でも異なっていても良く、水素原子、メチル基、(CH2)sCOOM3、又は(CH2)q1(CO)p1O(AO)n1-R7b
R7b:水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基
AO:炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基
n1:AOの平均付加モル数であり、4以上200以下の数
q1:0以上2以下の数
p1:0又は1
M3:水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、置換アルキルアンモニウム基、アルキル基、ヒドロアルキル基又はアルケニル基
s:0以上2以下の数
を示す。〕
【0011】
また本発明は、本発明の水硬性組成物用早強剤、水硬性粉体、及び水を含有する、水硬性組成物に関する。
【0012】
また本発明は、本発明の水硬性組成物用早強剤、水硬性粉体、及び水を混合する、水硬性組成物の製造方法に関する。
【0013】
また本発明は、前記(a)成分、(b)成分、及び水を混合する、水硬性組成物用早強剤の製造方法に関する。
【0014】
また本発明は、前記(a)成分、(b)成分、及び水を含有する剤の、水硬性組成物用早強剤としての使用に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、せん断時の粘度が低いことから輸送時や水硬性組成物調製時の作業性に優れ、且つ調製から例えば5~20時間後の水硬性組成物硬化体の強度を向上させる、水硬性組成物用早強剤及びその製造方法、並びに調製から例えば5~20時間後の水硬性組成物硬化体の強度が向上する、水硬性組成物及びその製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の水硬性組成物用早強剤が、せん断時の粘度が低いことから輸送時や水硬性組成物調製時の作業性に優れ、且つ調製から例えば5~20時間後の水硬性組成物硬化体の強度を向上させる作用機構は必ずしも定かではないが以下のように推定される。
炭酸カルシウムの分散剤としては、従来からアクリル酸重合体またはアクリル酸と無水マレイン酸の共重合物、およびポリオキシエチレン鎖を少量含む組成物等が使用されている。上記分散剤は炭酸カルシウムに対する優れた吸着性と、静電反発力によって、優れた分散性を示すことが知られている。ここで共重合体中のカルボキシル基量が十分でない場合、炭酸カルシウムに対する吸着性が大きく低下し、十分な分散性が得られないと推察できる。
一方、例えば普通ポルトランドセメントなどの水硬性粉体を含む水硬性組成物の調製から例えば5~20時間後の初期強度は、一般的にセメントの主成分であるエーライトの水和反応に大きく影響されることが知られている。エーライトの水和反応は、水和反応によって生成するカルシウムシリケート水和物(C-S-H)の核生成および成長が律速していると考えられていることから、エーライトの水和反応を促進する手段として、C-S-Hの核、もしくは、反応場となり得る化合物を添加することが有効であることが知られている。炭酸カルシウム、特にカルサイトは、C-S-Hの核、もしくは、反応場となり得る化合物の一つとして公知である。
ここで、カルサイト表面に、アクリル酸、無水マレイン酸などのカルボキシル基を含む単量体の比率が高い共重合体を吸着させたものを水硬性組成物に含有させた場合、前記共重合体がカルサイト表面を被覆することでC-S-Hの発生および成長が妨げられ、カルサイト自身の水和促進効果が打ち消され、高い初期強度が得られないと推察される。併せて、カルサイト表面に吸着した前記共重合体がセメント粒子とヘテロ凝集を形成し、水硬性組成物の流動性も悪化することが考えられる。この現象に対し、本発明では、(b)成分として、カルボキシル基を有する単量体(1b)と立体反発基を有する単量体(2b)を特定の比率で含む共重合体を用いることで、(a)成分のカルサイト表面に少量吸着するだけで高い分散性によりせん断時の粘度が低くなり、輸送時や水硬性組成物調製時の作業性に優れ、またC-S-Hの発生および成長を妨げることもなく、またヘテロ凝集を生じることもないことから、調製から例えば5~20時間後の水硬性組成物硬化体の強度を向上させたものと推察される。
【0017】
[水硬性組成物用早強剤]
本発明の水硬性組成物用早強剤は、(a)成分として、カルサイトを含有する。また、本発明の水硬性組成物用早強剤組成物はカルサイト以外の鉱物として、炭酸化反応時に未反応分として残存する水酸化カルシウム、バテライト、アラゴナイト等の炭酸カルシウム、イカアイト等の炭酸カルシウム水和物、塩基性炭酸カルシウム、その他非結晶性の炭酸カルシウムを含有してもよい。
但し、カルサイト以外のこれらの炭酸カルシウムは、本発明の(a)成分には含まれない。
カルサイトは、方解石(カルサイト)の結晶構造を有する炭酸カルシウムである。
バテライトは、ファーテル石(バテライト又はヴァテライト)の結晶構造を有する炭酸カルシウムである。
アラゴナイトは、アラレ石(アラゴナイト)の結晶構造を有する炭酸カルシウムである。
イカアイトは、イカ石(イカアイト)の結晶構造を有する炭酸カルシウム6水和物である。
塩基性炭酸カルシウムとは、Ca3(OH)2(CO3)2・1.5H2Oの化学組成で表される結晶鉱物である。
【0018】
(a)成分のカルサイトのBET比表面積は、水硬性組成物の早強性の観点から、好ましくは20m2/g以上、より好ましくは40m2/g以上、更に好ましくは60m2/g以上、そして、好ましくは200m2/g以下、より好ましくは100m2/g以下、更に好ましくは80m2/g以下である。
BET比表面積とは、窒素(N2)などの気体粒子を固体粒子に吸着させ、吸着した量から表面積を測定する気体吸着法である。具体的には、圧力Pと吸着量Vとの関係からBET式(Brunauer,Emmet and Teller’s equation)によって、単分子吸着量VMを測定することで、比表面積が求められるものであり、測定装置としては、全自動比表面積測定装置(例えば、全自動比表面積測定装置 Macsorb、株式会社マウンテック製)を用いて測定することができる。
【0019】
(a)成分のカルサイトの平均一次粒子径は、水硬性組成物の早強性の観点から、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上、更に好ましくは15nm以上、より更に好ましくは20nm以上、より更に好ましくは25nm以上、そして、好ましくは75nm以下、より好ましくは50nm以下、更に好ましくは40nm以下、更に好ましくは35nm以下である。
(a)成分のカルサイトの平均一次粒子径は、走査電子顕微鏡(SEM)、透過電子顕微鏡(TEM)等による直接観察の他に、以下の式を用いて算出することもできる。
d=6/(ρ×s)
d:平均粒子径(nm)
ρ:炭酸カルシウムの密度
s:比表面積
本発明における比表面積は窒素、水蒸気、アルゴン、クリプトン等を用いたガス吸着法で測定することが可能であり、上記した窒素ガスを用いたBET法により測定したBET比表面積を用いることが好ましい。また、本発明における炭酸カルシウムの平均一次粒子径は、炭酸カルシウムの密度を2.71として計算する。
【0020】
(a)成分のカルサイトは、Scherrerの式で算出される(104)面の結晶子サイズが、水硬性組成物の早強性の観点から、好ましくは30nm以下、より好ましくは25nm以下、更に好ましくは23nm以下、より更に好ましくは20nm以下、そして、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上、更に好ましくは15nm以上、より更に好ましくは18nm以上である。
【0021】
カルサイトの(104)面の結晶子サイズは、X線構造回折装置(例えば、卓上X線回折装置 MiniFlex600、株式会社リガク製)を用いて、以下のScherrerの式を用いて算出することができる。
D=Kλ/(βcosθ)
D:結晶子サイズ(nm)
K:Scherrer定数
λ:測定X線の波長
β:測定対象のX線ピークの半値幅
θ:測定対象のX線ピークのBragg角
本発明における結晶子サイズは、X線としてCuKα線を用いて測定することが好ましい。CuKαを用いる場合の波長はλ=1.5406Åとする。またScherrer定数は0.9とし、カルサイトの(104)面のBragg角は14.657degとして計算する。
【0022】
本発明の水硬性組成物用早強剤は、(a)成分のカルサイトが凝集した二次粒子として含有してよい。本発明において「二次粒子」とは、カルサイトの一次粒子がそれぞれの外周(粒界)の一部を共有するようにして凝集し、他の粒子と孤立した粒子を意味するものである。
(a)成分のカルサイトの二次粒子は球状および連鎖状の凝集粒子として存在してもよい。これらのうち水硬性組成物の早強性の観点から、球状であることが好ましい。球状とは、真球状のみを意味するものではなく、楕円や略球状、表面に微細な穴や凹凸があるものでもよく、短径と長径の比率が1:1~1:2のものである。球状にはカルサイトの一次粒子が連鎖状に連なったものは含まれない。カルサイトの二次粒子の形状は、透過型電子顕微鏡または走査型電子顕微鏡などで観察することができる。
【0023】
(a)成分のカルサイトの製造方法は、以下の方法が挙げられる。
水酸化カルシウム、水酸化カルシウム以外の化合物、及び水を混合して、水分散体を調製し、前記水分散体に一定水温の条件で炭酸ガスをpHが7になるまで導入することで、炭酸カルシウムのカルサイトを製造する。
水酸化カルシウム以外の化合物としては、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸亜鉛、ミョウバン等の硫酸塩、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム等のマグネシウム塩、塩化亜鉛、硝酸亜鉛等の亜鉛塩、酢酸、クエン酸、グルコン酸等の有機酸およびその塩、ポリアクリル酸等の高分子有機酸およびその塩等が挙げられる。水酸化カルシウム以外の化合物は、生成するカルサイトの結晶子サイズの観点から、水酸化マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、及び硫酸亜鉛から選ばれる1種以上が好ましく、硫酸ナトリウム、及び水酸化マグネシウムから選ばれる1種以上がより好ましく、水酸化マグネシウムが更に好ましい。
ここで、水分散体における、水酸化カルシウムの混合量と水酸化カルシウム以外の化合物の混合量の質量比(水酸化カルシウム/水酸化カルシウム以外の化合物)は、生成するカルサイトの結晶子サイズの観点から、好ましくは10以上、より好ましくは30以上、更に好ましくは50以上、そして、好ましくは100以下、より好ましくは80以下である。
【0024】
本発明の水硬性組成物用早強剤は、(a)成分を、組成物中、早強剤組成物の貯蔵安定性の観点から、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、より更に好ましくは35質量%以上、そして、組成物の扱いやすさの観点から、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、より更に好ましくは45質量%以下含有する。
【0025】
本発明の水硬性組成物用早強剤は、(b)成分として、下記一般式(1b)で示される単量体(1b)と、下記一般式(2b)で示される単量体(2b)とを構成単量体として含み、全構成単量体中、単量体(1b)と単量体(2b)の合計量中の単量体(1b)の割合が、10質量%以上35質量%以下である、共重合体を含有する。
【0026】
【0027】
〔式中、
R1b、R2b、R3b:同一でも異なっていても良く、水素原子、メチル基又は(CH2)rCOOM2であり、(CH2)rCOOM2は、COOM1又は他の(CH2)rCOOM2と無水物を形成していてもよく、その場合、それらの基のM1、M2は存在しない。
M1、M2:同一でも異なっていても良く、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、置換アルキルアンモニウム基、アルキル基、ヒドロアルキル基又はアルケニル基
r:0以上2以下の数
を示す。〕
【0028】
【0029】
〔式中、
R4b、R5b、R6b: 同一でも異なっていても良く、水素原子、メチル基、(CH2)sCOOM3、又は(CH2)q1(CO)p1O(AO)n1-R7b
R7b:水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基
AO:炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基
n1:AOの平均付加モル数であり、4以上200以下の数
q1:0以上2以下の数
p1:0又は1
M3:水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、置換アルキルアンモニウム基、アルキル基、ヒドロアルキル基又はアルケニル基
s:0以上2以下の数
を示す。〕
【0030】
一般式(1b)中、入手性の観点から、R1bは、水素原子が好ましい。
一般式(1b)中、入手性および単量体(2b)との共重合性の観点から、R2bは、水素原子及びメチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
一般式(1b)中、入手性の観点から、R3bは、水素原子が好ましい。
(CH2)rCOOM2については、COOM1又は他の(CH2)rCOOM2と無水物を形成していてもよく、その場合、それらの基のM1、M2は存在しない。
M1とM2は同一でも異なっていても良く、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、置換アルキルアンモニウム基、アルキル基、ヒドロアルキル基又はアルケニル基である。
M1、M2のアルキル基、ヒドロアルキル基、及びアルケニル基は、それぞれ、炭素数1以上4以下が好ましい。
M1とM2は、同一でも異なっていても良く、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム基、又はアルキルアンモニウム基が好ましく、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、又はアンモニウム基がより好ましく、水素原子、アルカリ金属、又はアルカリ土類金属(1/2原子)が更に好ましく、水素原子、又はアルカリ金属がより更に好ましい。
一般式(1b)中の(CH2)rCOOM2のrは、0が好ましい。
【0031】
(b)成分の共重合体中のCOOM1及びCOOM2の合計量は、炭酸カルシウムの分散性の観点から、好ましくは6質量%以上、より好ましくは8質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、そして、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。
(b)成分の共重合体中のCOOM1及びCOOM2の合計量は、以下の式より算出する。
WCOOH=nCOOH×W1b×MCOOH/M1b
WCOOH:共重合体中のCOOM1及びCOOM2の合計質量%
nCOOH:単量体(1b)中のCOOM1及びCOOM2の合計数量
W1b:共重合体中の単量体(1b)の質量%(M1およびM2はHとして計算)
MCOOH:COOHの分子量(45として計算)
M1b:単量体(1b)の分子量(M1およびM2はHとして計算)
【0032】
一般式(2b)中、R4bは、入手性の観点から、水素原子が好ましい。
一般式(2b)中、R5bは、入手性および単量体(1b)との共重合性の観点から、水素原子又はメチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
一般式(2b)中、R6bは、入手性の観点から、水素原子が好ましい。
一般式(2b)中、R7bは、製造の容易さ及び製造物の品質安定性の観点から、水素原子又はメチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
一般式(2b)中、AOは、炭酸カルシウムの分散性の観点から、エチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基から選ばれる基が好ましく、エチレンオキシ基がより好ましい。AOはエチレンオキシ基を含むことが好ましい。
一般式(2b)中、n1は、AOの平均付加モル数であり、炭酸カルシウムの分散性の観点から、好ましくは4以上、より好ましくは20以上、更に好ましくは40以上、更に好ましくは50以上、更に好ましくは60以上、そして、好ましくは200以下、より好ましくは150以下、更に好ましくは120以下である。
一般式(2b)中、入手性の観点から、q1は、0、1又は2が好ましく、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。
一般式(2b)中、炭酸カルシウムの分散性および単量体(1b)との共重合性の観点から、p1は、0又は1が好ましく、1がより好ましい。
一般式(2b)中、M3は水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、置換アルキルアンモニウム基、アルキル基、ヒドロアルキル基又はアルケニル基である。
M3のアルキル基、ヒドロアルキル基、及びアルケニル基は、それぞれ、炭素数1以上4以下が好ましい。
M3は、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム基、又はアルキルアンモニウム基が好ましく、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、又はアンモニウム基がより好ましく、水素原子、アルカリ金属、又はアルカリ土類金属(1/2原子)が更に好ましく、水素原子、又はアルカリ金属がより更に好ましい。
一般式(2b)中、の(CH2)sCOOM3のsは、0が好ましい。
【0033】
一般式(2b)中、p1が1の場合、n1は100以上150以下が好ましく、単量体(1b)はメタクリル酸が好ましい。
一般式(2b)中、p1が0の場合、n1は45以上60以下が好ましく、単量体(1b)はアクリル酸が好ましい。
【0034】
(b)成分の全構成単量体中、単量体(1b)と単量体(2b)の合計量中の単量体(1b)の割合は、炭酸カルシウムの分散性の観点から、10質量%以上、好ましくは11質量%以上、より好ましくは12質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上、そして、35質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。
【0035】
(b)成分の全構成単量体中、単量体(1b)の割合は、炭酸カルシウムの分散性の観点から、10質量%以上、好ましくは11質量%以上、より好ましくは12質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上、そして、35質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。
【0036】
(b)成分の全構成単量体中、単量体(1b)と単量体(2b)の合計量は、炭酸カルシウムの分散性の観点から、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、そして、好ましくは100質量%以下である。この合計量は、100質量%であってよい。
【0037】
(b)成分の重量平均分子量は、炭酸カルシウムの分散性の観点から、好ましくは5,000以上、より好ましくは10,000以上、更に好ましくは20,000以上、より更に好ましくは30,000以上、そして、好ましくは10,0000以下、より好ましくは80,000以下、更に好ましくは60,000以下、より更に好ましくは50,000以下である。
【0038】
(b)成分の重量平均分子量は、以下の条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されたものである。
*GPC条件
装置:GPC(HLC-8320GPC)東ソー株式会社製
カラム:G4000PWXL+G2500PWXL(東ソー株式会社製)
溶離液:0.2Mリン酸バッファー/CH3CN=9/1
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出:RI
サンプルサイズ:0.2mg/mL
標準物質:ポリエチレングリコール換算(分子量既知の単分散ポリエチレングリコール、分子量87,500、250,000、145,000、46,000、24,000
【0039】
本発明の水硬性組成物用早強剤は、(b)成分を、組成物中、水硬性組成物の早強性と早強剤組成物の粘度の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5.0質量%以下、より更に好ましくは2.0質量%以下含有する。
【0040】
本発明の水硬性組成物用早強剤中、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(a)/(b)は、水硬性組成物の早強性と早強剤組成物の粘度の観点から、好ましくは1以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは10以上、より更に好ましくは15以上、より更に好ましくは20以上、より更に好ましくは25以上、より更に好ましくは30以上、そして、好ましくは100以下、より好ましくは90以下、更に好ましくは80以下、より更に好ましくは70以下、より更に好ましくは60以下、より更に好ましくは50以下、より更に好ましくは40以下、より更に好ましくは35以下である。
【0041】
本発明の水硬性組成物用早強剤は、水を含有する液体組成物、好ましくは水分散液である。
すなわち、本発明の水硬性組成物用早強剤は、(a)成分、(b)成分、及び水を含有し、(a)成分を(b)成分により分散させた水分散液であることが好ましい。
本発明の水硬性組成物用早強剤は、水を、組成物中、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下含有する。
【0042】
本発明の水硬性組成物用早強剤は、更にその他の成分を含有することもできる。例えば、AE剤、遅延剤、起泡剤、増粘剤、発泡剤、防水剤、流動化剤、消泡剤等(但し、(a)成分、(b)成分を除く)が挙げられる。
【0043】
本発明の水硬性組成物用早強剤は、せん断速度20(1/秒)時の粘度が、水硬性組成物用早強剤の扱いやすさおよび貯蔵安定性の観点から、好ましくは10mPa・s以上、より好ましくは50mPa・s以上、更に好ましくは100mPa・s以上、更に好ましくは200mPa・s以上、そして、好ましくは1500mPa・s以下、より好ましくは1000mPa・s以下、更に好ましくは700mPa・s以下、更に好ましくは500mPa・s以下、より更に好ましくは400mPa・s以下である。前記粘度は、例えばレオメーター(Anton Paar社製 MCR-301 直径50mmパラレルプレート使用)を用いて測定することができる。
本発明の水硬性組成物用早強剤は、せん断時の粘度が前記範囲にあることから、水硬性組成物用早強剤の輸送時や水硬性組成物に混合する際の作業性に優れる。
【0044】
本発明の水硬性組成物用早強剤は、セメント等の水硬性粉体と水とを混合する水硬性組成物の調製時に添加して用いることができる。また本発明の水硬性組成物用早強剤は、水硬性組成物の早強性の観点から、(a)成分を(b)成分により分散させた水分散液の状態で、水硬性組成物の調製時に添加して用いることが好ましい。また本発明の水硬性組成物用早強剤は、水硬性粉体との混合性を向上する観点から、水硬性粉体と水とを混合する際に、予め水と混合して用いることが好ましい。
【0045】
本発明の水硬性組成物用早強剤を用いて、室温(例えば10~35℃)での気中養生で水硬性組成物の硬化体を得ることができる。本発明では、40℃以上の加熱下での養生、すなわち、いわゆる加熱養生を行わなくても5~20時間後の硬化体の強度を向上させることができる。
【0046】
本発明の水硬性組成物用早強剤は、(a)成分、(b)成分、及び水を混合することで製造することができる。すなわち、本発明により、(a)成分、(b)成分、及び水を混合する水硬性組成物用早強剤の製造方法が提供される。
(a)成分に、(b)成分、及び水を混合することにより、(a)成分を水に分散させた水分散液の状態の水硬性組成物用早強剤を得ることができる。
本発明の水硬性組成物用早強剤の製造方法には、本発明の水硬性組成物用早強剤で述べた事項を適宜適用することができる。例えば、各成分の具体例及び好ましい態様も本発明の水硬性組成物用早強剤と同じである。また、本発明の水硬性組成物用早強剤における各成分の含有量、及び各質量比は、各成分の含有量を混合量に置き換えて本発明の水硬性組成物用早強剤の製造方法に適用することができる。
【0047】
本発明は、(a)成分、(b)成分、及び水を含有する剤の、水硬性組成物用早強剤としての使用を提供する。
(a)成分、(b)成分、及び水を含有することにより、(a)成分を水に分散させた水分散液の状態の剤を得ることができる。
本発明の水硬性組成物用早強剤としての使用には、本発明の水硬性組成物用早強剤で述べた事項を適宜適用することができる。例えば、各成分の具体例及び好ましい態様も本発明の水硬性組成物用早強剤と同じである。また、本発明の水硬性組成物用早強剤における各成分の含有量、及び各質量比も、本発明の水硬性組成物用早強剤としての使用に適用することができる。
【0048】
[水硬性組成物、及びその製造方法]
本発明は、本発明の水硬性組成物用早強剤、水硬性粉体、及び水を含有する、水硬性組成物を提供する。
また本発明は、(a)成分、(b)成分、水硬性粉体、及び水を含有する水硬性組成物を提供する。
(a)成分、(b)成分は、本発明の水硬性組成物用早強剤で記載した態様と同じである。
本発明の水硬性組成物は、本発明の水硬性組成物用早強剤で記載した態様を適宜適用することができる。
【0049】
本発明の水硬性組成物に使用される水硬性粉体とは、水と混合することで硬化する粉体であり、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント、エコセメント(例えばJISR5214等)が挙げられる。これらの中でも、水硬性組成物の必要な強度に達するまでの時間を短縮する観点から、早強ポルトランドセメント、普通ポルトランドセメント、耐硫酸性ポルトランドセメント及び白色ポルトランドセメントから選ばれるセメントが好ましく、早強ポルトランドセメント、及び普通ポルトランドセメントから選ばれるセメントがより好ましい。
【0050】
また、水硬性粉体には、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカヒューム、無水石膏等が含まれてよく、また、非水硬性の石灰石微粉末等が含まれていてもよい。水硬性粉体として、セメントと高炉スラグ、フライアッシュ、シリカヒューム等とが混合された高炉セメントやフライアッシュセメント、シリカヒュームセメントを用いてもよい。
また、水硬性粉体は、セメント又はセメントとベントナイトとの混合粉末が挙げられる。
【0051】
本発明の水硬性組成物は、(a)成分を、水硬性粉体100質量部に対して、水硬性組成物の早強性の観点から、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは0.2質量部以上、より更に好ましくは0.5質量部以上、そして、水硬性組成物の早強性と経済性の観点から、好ましくは5質量部以下、より好ましくは2質量部以下、更に好ましくは1質量部以下、更に好ましくは0.9質量部以下、更に好ましくは0.8質量部以下含有する。
【0052】
本発明の水硬性組成物は、(b)成分を、水硬性粉体100質量部に対して、水硬性組成物の早強性と分散性の観点から、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.005質量部以上、更に好ましくは0.01質量部以上、より更に好ましくは0.015質量部以上、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下、更に好ましくは0.05質量部以下、より更に好ましくは0.03質量部以下含有する。
【0053】
本発明の水硬性組成物中、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(a)/(b)は、水硬性組成物の早強性と分散性の観点から、好ましくは1以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは10以上、より更に好ましくは15以上、より更に好ましくは20以上、より更に好ましくは25以上、より更に好ましくは30以上、そして、好ましくは100以下、より好ましくは90以下、更に好ましくは80以下、より更に好ましくは70以下、より更に好ましくは60以下、より更に好ましくは50以下、より更に好ましくは40以下である。
【0054】
本発明の水硬性組成物において、前記水硬性組成物中の水と水硬性粉体の質量百分率(水/水硬性粉体比(W/C))は、水硬性組成物の早強性、経済性、作業性、及び硬化体の耐久性の観点から、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは25質量%以上、より更に好ましくは30質量%以上、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下、より更に好ましくは50質量%以下である。
ここで、水/水硬性粉体比(W/C)は、水硬性組成物中の水と水硬性粉体の質量百分率(質量%)であり、水/水硬性粉体×100で算出される。
なお、水硬性粉体が、セメントなどの水和反応により硬化する物性を有する粉体の他、ポゾラン作用を有する粉体、及び潜在水硬性を有する粉体を含む場合、本発明では、それらの量も水硬性粉体の量に算入する(但し、(a)成分である炭酸カルシウムの量は算入しない。)。また、水和反応により硬化する物性を有する粉体が、高強度混和材を含有する場合、高強度混和材の量も水硬性粉体の量に算入する。これは、水硬性粉体の質量が関係する他の質量部などにおいても同様である。
【0055】
本発明の水硬性組成物は、水硬性組成物の作業性の観点から、更に(c)成分として、分散剤を含有することができる。但し、(c)成分からは(b)成分に該当するものは除かれる。
(c)成分の分散剤は、ナフタレン系重合体、ポリカルボン酸系重合体(但し、(b)成分を除く)、リグニンスルホン酸系重合体、メラミン系重合体、リン酸基を構造中に含む重合体、及びポリアルキレンオキシ基を有する芳香族を含む重合体から選ばれる1種以上の化合物が好ましく、ポリカルボン酸系重合体(但し、(b)成分を除く)、リグニンスルホン酸系重合体、リン酸基を構造中に含む重合体、及びポリアルキレンオキシ基を有する芳香族を含む重合体から選ばれる1種以上の化合物がより好ましい。
【0056】
ナフタレン系重合体は、例えば、縮合重合による重合体が挙げられる。具体的には、例えば、ナフタレン系化合物の、ホルムアルデヒド縮合を代表とする、アルデヒド類による付加縮合による重合体が挙げられる。ナフタレン系重合体は、アルデヒド類による縮合重合体が好ましく、ホルムアルデヒド縮合重合体がより好ましい。
【0057】
ナフタレン系重合体としては、好ましくはナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩が挙げられる。ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩は、ナフタレンスルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合物又はその塩である。ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物は、性能を損なわない限り、単量体として、例えばメチルナフタレン、エチルナフタレン、ブチルナフタレン、ヒドロキシナフタレン、ナフタレンカルボン酸、アントラセン、フェノール、クレゾール、クレオソート油、タール、メラミン、尿素、スルファニル酸及び/又はこれらの誘導体などのような、ナフタレンスルホン酸と共縮合可能な芳香族化合物と共縮合させてもよい。
【0058】
ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩は、例えば、マイテイ150、デモール N、デモール RN、デモール MS、デモールSN-B、デモール SS-L(いずれも花王株式会社製)、セルフロー 120、ラベリン FD-40、ラベリン FM-45(いずれも第一工業株式会社製)などのような市販品を用いることができる。
【0059】
ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩は、水硬性スラリー組成物の流動性向上の観点から、重量平均分子量が、好ましくは200,000以下、より好ましくは100,000以下、更に好ましくは80,000以下、より更に好ましくは50,000以下、より更に好ましくは30,000以下である。そして、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩は、水硬性スラリー組成物の流動性向上の観点から、重量平均分子量が、好ましくは1,000以上、より好ましくは3,000以上、更に好ましくは4,000以上、より更に好ましくは5,000以上である。ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物は酸の状態あるいは中和物であってもよい。
【0060】
ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩の分子量は下記条件にてゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定することができる。
[GPC条件]
カラム:G4000SWXL+G2000SWXL(東ソー)
溶離液:30mM CH3COONa/CH3CN=6/4
流量:0.7ml/min
検出:UV280nm
サンプルサイズ:0.2mg/ml
標準物質:西尾工業(株)製 ポリスチレンスルホン酸ソーダ換算(単分散ポリスチレンスルホン酸ナトリウム:分子量、206、1,800、4,000、8,000、18,000、35,000、88,000、780,000)
検出器:東ソー株式会社 UV-8020
【0061】
ポリカルボン酸系重合体は、ポリカルボン酸系分散剤としては、ポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのモノエステルと(メタ)アクリル酸等のカルボン酸との共重合体(例えば特開平8-12397号公報に記載の化合物等)、ポリアルキレングリコールを有する不飽和アルコールと(メタ)アクリル酸等のカルボン酸との共重合体、ポリアルキレングリコールを有する不飽和アルコールとマレイン酸等のジカルボン酸との共重合体等を用いることができる。ここで、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれるカルボン酸の意味である。
【0062】
ポリカルボン酸系重合体(以下(c1)ともいう)としては、下記一般式(11c)で示される単量体(11c)と、下記一般式(12c)で示される単量体(12c)とを構成単量体として含む共重合体が挙げられる。
【0063】
【0064】
〔式中、
R11c、R12c、R13c:同一でも異なっていても良く、水素原子、メチル基又は(CH2)rCOOM12であり、(CH2)rCOOM12は、COOM11又は他の(CH2)rCOOM12と無水物を形成していてもよく、その場合、それらの基のM11、M12は存在しない。
M11、M12:同一でも異なっていても良く、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、置換アルキルアンモニウム基、アルキル基、ヒドロアルキル基又はアルケニル基
r:0以上2以下の数
を示す。〕
【0065】
【0066】
〔式中、
R14c、R15c、R16c: 同一でも異なっていても良く、水素原子、メチル基、(CH2)sCOOM13、又は(CH2)q1(CO)p1O(AO)n1-R17c
:水素原子又は-COO(AO)n1R17c
R17c:水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基
AO:炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基
n1:AOの平均付加モル数であり、4以上200以下の数
q1:0以上2以下の数
p1:0又は1
M13:水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、置換アルキルアンモニウム基、アルキル基、ヒドロアルキル基又はアルケニル基
s:0以上2以下の数
を示す。〕
【0067】
一般式(11c)中、入手性の観点から、R11cは、水素原子が好ましい。
一般式(11c)中、入手性の観点から、R12cは、メチル基が好ましい。
一般式(11c)中、入手性の観点から、R13cは、水素原子が好ましい。
(CH2)rCOOM12については、COOM11又は他の(CH2)rCOOM12と無水物を形成していてもよく、その場合、それらの基のM11、M12は存在しない。
M11とM12は同一でも異なっていても良く、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、置換アルキルアンモニウム基、アルキル基、ヒドロアルキル基又はアルケニル基である。
M11、M12のアルキル基、ヒドロアルキル基、及びアルケニル基は、それぞれ、炭素数1以上4以下が好ましい。
M11、M12は、同一でも異なっていても良く、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム基、又はアルキルアンモニウム基が好ましく、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、又はアンモニウム基がより好ましく、水素原子、アルカリ金属、又はアルカリ土類金属(1/2原子)が更に好ましく、水素原子、又はアルカリ金属がより更に好ましい。
一般式(11c)中の(CH2)rCOOM12のrは、0が好ましい。
【0068】
一般式(12c)中、R14cは、入手性の観点から、水素原子が好ましい。
一般式(12c)中、R15cは、入手性と水硬性組成物の分散性の観点から、水素原子またはメチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
一般式(12c)中、R16cは、入手性の観点から、水素原子が好ましい。
一般式(12c)中、R17cは、入手性の観点から、水素原子又はメチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
一般式(12c)中、AOは、水硬性組成物の分散性の観点から、エチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基から選ばれる基が好ましく、エチレンオキシ基がより好ましい。AOはエチレンオキシ基を含むことが好ましい。
一般式(12c)中、n1は、AOの平均付加モル数であり、水硬性組成物の分散性の観点から、好ましくは4以上、より好ましくは20以上、そして、好ましくは100以下、より好ましくは60以下である。
一般式(12c)中、水硬性組成物の分散性の観点から、q1は、0、1又は2が好ましく、0又は1がより好ましく、0がさらに好ましい。
一般式(12c)中、水硬性組成物の分散性の観点から、p1は、0又は1が好ましく、1がより好ましい。
一般式(12c)中、M13は水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、置換アルキルアンモニウム基、アルキル基、ヒドロアルキル基又はアルケニル基である。
M13のアルキル基、ヒドロアルキル基、及びアルケニル基は、それぞれ、炭素数1以上4以下が好ましい。
M13は、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム基、又はアルキルアンモニウム基が好ましく、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、又はアンモニウム基がより好ましく、水素原子、アルカリ金属、又はアルカリ土類金属(1/2原子)が更に好ましく、水素原子、又はアルカリ金属がより更に好ましい。
一般式(12c)中、の(CH2)sCOOM13のsは、0が好ましい。
【0069】
(c1)の共重合体の全構成単量体中、単量体(11c)と単量体(12c)の合計量中の単量体(11c)の割合は、水硬性組成物の分散性の観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは4質量%以上、そして、好ましくは10質量%未満である。
【0070】
(c1)の共重合体の全構成単量体中、単量体(11c)の割合は、水硬性組成物の分散性の観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは4質量%以上、そして、好ましくは10質量%未満である。
【0071】
(c1)の共重合体の全構成単量体中、単量体(11c)と単量体(12c)の合計量は、水硬性組成物の分散性の観点から、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、そして、好ましくは100質量%以下である。この合計量は、100質量%であってよい。
【0072】
(c1)の共重合体の重量平均分子量は、水硬性組成物の分散性の観点から、好ましくは5,000以上、より好ましくは10,000以上、更に好ましくは20,000以上、そして、好ましくは10,0000以下、より好ましくは80,000以下、更に好ましくは60,000以下である。
【0073】
前記共重合体の重量平均分子量は、以下の条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されたものである。
*GPC条件
装置:GPC(HLC-8320GPC)東ソー株式会社製
カラム:G4000PWXL+G2500PWXL(東ソー株式会社製)
溶離液:0.2Mリン酸バッファー/CH3CN=9/1
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出:RI
サンプルサイズ:0.2mg/mL
標準物質:ポリエチレングリコール換算(分子量既知の単分散ポリエチレングリコール、分子量87,500、250,000、145,000、46,000、24,000
【0074】
(c1)の共重合体は、単量体(11c)、単量体(12c)の他に、任意に、単量体(11c)および/または単量体(12c)と共重合可能な1種類以上の単量体(13c)を有していてもよい。単量体(13c)としては、アクリル酸エステルが挙げられる。(c1)の共重合体は、全構成単位中、単量体(11c)、及び単量体(12c)の合計、又は単量体(11c)、単量体(12c)、及び単量体(13c)の合計が100質量%であってよい。
【0075】
リグニンスルホン酸系重合体としては、リグニンスルホン酸塩又はその誘導体が挙げられる。リグニンスルホン酸塩又はその誘導体は、市販品を用いることが出来る。例えば、BASFジャパン社のマスターポゾリスNo.70、マスターポリヒード15Sシリーズ、フローリック社のフローリックSシリーズ、フローリックRシリーズ、グレースケミカル社のダーレックスWRDA、日本シーカ社のプラスクリートNC、プラスクリートR、山宗化学社のヤマソー80P、ヤマソー90シリーズ、ヤマソー98シリーズ、ヤマソー02NL-P、ヤマソー02NLR-P、ヤマソー09NL-P、ヤマソーNLR-P、竹本油脂社のチューポールEX60シリーズ、チューポールLS-Aシリーズ、リグエース社のリグエースUAシリーズ、リグエースURシリーズ、リグエースVFシリーズなどが挙げられる。
【0076】
リグニンスルホン酸塩、若しくはその誘導体の具体例を以下に挙げる。
(I)リグニンスルホン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、又はアミン塩
(II)リグニンスルホン酸塩にアミン化合物又はアミノ基が導入されたリグニン誘導体(例えば、特開2016-108183号)
(III)リグニンスルホン酸塩とホルムアルデヒドと反応させたリグニン誘導体(例えば、特開2015-229764号)
(IV)酸化リグニン、スルホン化リグニンなどの変性リグニン(例えば、特開2003-2714号)
(V)リグニンスルホン酸化合物ポリオール複合体(例えば、特開2007-105899号)
(VI)下記1)~3)のリグニンスルホン酸塩変性物(例えば、特開2007-261119号)
1)リグニンスルホン酸又はその塩と、官能基を有するアクリル系モノマーとをグラフト共重合したリグニンスルホン酸塩変性物
2)リグニンスルホン酸又はその塩と、官能基を有するビニル系モノマーとをグラフト共重合したリグニンスルホン酸塩変性物
3)リグニンスルホン酸又はその塩にナフタレンスルホン酸塩ホルムアルデヒド縮合物を付加したリグニンスルホン酸塩変性物
(VII)リグニンスルホン酸塩にポリアルキレングリコール化合物を導入したリグニン誘導体(例えば、特開2015-193804号)
(VIII)リグニンスルホン酸系化合物と水溶性単量体との反応物(例えば、特開2011-240224号)
ここで、リグニンスルホン酸系化合物としては、リグニンのヒドロキシフェニルプロパン構造の側鎖α位の炭素が開裂してスルホン基が導入された骨格を有する化合物が挙げられる。
また、水溶性単量体としては、例えば、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン基、ニトロキシル基、カルボニル基、リン酸基、アミノ基、エポキシ基などのイオン性官能基、その他極性基を少なくとも1種類以上有する化合物が挙げられる。
(IX)下記4)~5)のリグニンスルホン酸誘導体(例えば、特開2015-212216号)
4)リグニンスルホン酸系化合物に含まれるフェノール性ヒドロキシル基、アルコール性ヒドロキシル基、チオール基などの官能基に、少なくとも1種の水溶性単量体を反応させて得られるリグニン誘導体
5)リグニンスルホン酸系化合物に(通常は該化合物の官能基に)、少なくとも1種の水溶性単量体を、ラジカル開始剤を用いてラジカル共重合することによって得られるリグニン誘導体
ここで、リグニンスルホン酸系化合物は、特に限定されないが、木材を亜硫酸法によって蒸解して得られるものが例示される。
また、水溶性単量体のうち、リグニンスルホン酸系化合物に含まれるフェノール性ヒドロキシル基および/またはアルコール性ヒドロキシル基と反応し得る水溶性単量体として、エチレンオキシドやプロピレンオキシドなどのアルキレンオキシドなどが挙げられる。
また、水溶性単量体のうち、リグニンスルホン酸系化合物に含まれるチオール基と反応し得る水溶性単量体として、エチレンオキシドやプロピレンオキシドなどのアルキレンオキシド、エチレンイミンやプロピレンイミンなどのアルキレンイミンなどが挙げられる。
また、ラジカル共重合に用いる水溶性単量体として、特開2015-212216号の[0071]~[0074]に記載の単量体、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、(メタ)アクリル酸への炭素原子数2~18のアルキレンオキシドの1~500モル付加物類、アリルアルコールにアルキレンオキシドを2~300モル付加して得られるアルキレンオキシド付加化合物類等が挙げられる。
【0077】
メラミン系重合体としては、例えば、メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩が挙げられる。メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩は、メラミンにホルムアルデヒドを反応させて得られたN-メチロール化メラミンに重亜硫酸塩を反応させてメチロール基の一部をスルホメチル化し、次いで酸を加えてメチロール基を脱水縮合させてホルムアルデヒド縮合物とし、アルカリで中和して得られる化合物である(例えば特公昭63-37058号公報参照)。アルカリとしては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア、モノ、ジ、トリアルキル(炭素数2~8)アミン、モノ、ジ、トリアルカノール(炭素数2~8)アミン等を挙げることができる。
【0078】
メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩の市販品として、マイテイ150V-2(花王(株)製)、SMF-PG(日産化学工業(株))、メルフロー(三井化学(株))、メルメントF-10(昭和電工(株)製)、スーパーメラミン(日産化学社製)、フローリックMS(フローリック社製)、メルメントF4000、メルメントF10M、メルメントF245(いずれもBASFジャパン社製)等がある。
【0079】
メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の分子量は、好ましくは1,000以上、より好ましくは5,000以上、そして、好ましくは10万以下、より好ましくは5万以下、更に好ましくは2万以下である(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法、ポリスチレンスルホン酸換算)。
【0080】
リン酸基を構造中に含む重合体(以下(c2)ともいう)は、ポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのモノエステルとヒドロキシエチル(メタ)アクリラートとリン酸のモノエステルおよびジエステル等との共重合体(例えば特開)等を用いることができる。
【0081】
(c2)としては、下記一般式(21c)で表される単量体(21c)と、下記一般式(22c)で表される単量体(22c)と、下記一般式(23c)で表される単量体(23c)とを構成単量体として含む共重合体が好ましい。
【0082】
【0083】
〔式中、R21c、R22cは、それぞれ水素原子又はメチル基、R23cは水素原子又は-(CH2)q(CO)pO(AO)nR24c、AOは炭素数2以上4以下のオキシアルキレン基又はオキシスチレン基、pは0又は1の数、qは0以上2以下の数、nはAOの平均付加モル数であり、10以上150以下の数、R24cは水素原子又は炭素数1以上18以下のアルキル基を表す。〕
【0084】
【0085】
〔式中、R25cは水素原子又はメチル基、R26cは炭素数2以上12以下のアルキレン基、m1は1以上30以下の数、M21c、M22cはそれぞれ水素原子、アルカリ金属又はアルカリ土類金属(1/2原子)を表す。〕
【0086】
【0087】
〔式中、R27c、R29cは、それぞれ水素原子又はメチル基、R28c、R30cは、それぞれ炭素数2以上12以下のアルキレン基、m2、m3は、それぞれ1以上30以下の数、M23cは水素原子、アルカリ金属又はアルカリ土類金属(1/2原子)を表す。〕
【0088】
単量体(21c)において、一般式(21c)中のR21c、R22cは、それぞれ水素原子又はメチル基である。R23cは、水素原子又は-(CH2)q(CO)pO(AO)nR24cであり、水素原子が好ましい。R24cは水素原子又は炭素数1以上18以下のアルキル基であり、更に炭素数12以下、更に4以下のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基が好ましく、更にメチル基が好ましい。pが0の場合、AO(オキシアルキレン基)は、(CH2)qとエーテル結合、pが1の場合はエステル結合をする。qは0以上2以下であり、好ましくは0又は1であり、更に好ましくは0である。AOは炭素数2以上4以下のオキシアルキレン基、又はオキシスチレン基であり、AOは炭素数2以上4以下のオキシアルキレン基が好ましく、エチレンオキシ基(以下、EO基)を含むことがより好ましい。
【0089】
nはAOの平均付加モル数であり、水硬性組成物の分散性の観点から、好ましくは15以上、より好ましくは20以上、そして、好ましくは100以下、より好ましくは75以下、更に好ましくは50以下、より更に好ましくは40以下、より更に好ましくは30以下の数である。また、平均n個の繰り返し単位中にAOが異なるもので、ランダム付加又はブロック付加又はこれらの混在を含むものであっても良い。AOは、EO基が70モル%以上、更に80モル%以上、更に90モル%以上、更に全AO基がEO基であることが好ましい。例えばAOは、EO以外にもプロピレンオキシ基、ブチレンオキシ基等を含むこともできる。
【0090】
単量体(21c)としては、メトキシポリエチレングリコール、メトキシポリプロピレングリコール、メトキシポリブチレングリコール、メトキシポリスチレングリコール、エトキシポリエチレンポリプロピレングリコール等の片末端アルキル封鎖ポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸、マレイン酸との(ハーフ)エステル化物や、(メタ)アリルアルコールとのエーテル化物、及び(メタ)アクリル酸、マレイン酸、(メタ)アリルアルコールへの炭素数2以上4以下のアルキレンオキシド付加物が好ましく用いられる。なお、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸の意味であり、(メタ)アリルは、アリル及び/又はメタリルの意味である(以下同様)。
【0091】
単量体(21c)としては、好ましくはアルコキシ、より好ましくはメトキシポリエチレングリコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物である。具体的には、ω-メトキシポリオキシアルキレンメタクリル酸エステル、ω-メトキシポリオキシアルキレンアクリル酸エステル等を挙げることができ、ω-メトキシポリオキシアルキレンメタクリル酸エステルがより好ましい。ω-メトキシポリオキシエチレンメタクリル酸エステルが更に好ましい。
【0092】
単量体(22c)は、一般式(22c)において、R25cは水素原子又はメチル基であり、R26cは炭素数2以上12以下のアルキレン基である。m1は1以上30以下の数であり、M21c、M22cはそれぞれ水素原子、アルカリ金属又はアルカリ土類金属(1/2原子)である。一般式(22c)中のR26cのアルキレン基の炭素数は、10以下が好ましく、8以下がより好ましく、6以下が更に好ましく、4以下がより更に好ましく、2がより更に好ましい。一般式(22c)中のm1は、20以下が好ましく、10以下がより好ましく、5以下が更に好ましく、3以下がより更に好ましく、1がより更に好ましい。
【0093】
単量体(22c)としては、有機ヒドロキシ化合物のリン酸モノエステルが挙げられる。具体的には、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートアシッドリン酸エステル等が挙げられる。更に、リン酸モノ-〔(2-ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステル、及びリン酸モノ-〔(2-ヒドロキシエチル)アクリル酸エステル〕から選ばれる化合物が挙げられる。中でも、製造の容易さ及び製造物の品質安定性の観点から、リン酸モノ-〔(2-ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステルが好ましい。また、これらの化合物のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩などであっても良い。
【0094】
単量体(23c)は、一般式(23c)において、R27c、R29cは、それぞれ水素原子又はメチル基であり、R28c、R30cは、それぞれ炭素数2以上12以下のアルキレン基である。m2、m3は、それぞれ1以上30以下の数であり、M23cは水素原子、アルカリ金属又はアルカリ土類金属(1/2原子)である。一般式(23c)中のR28c、R30cは、それぞれのアルキレン基の炭素数が、10以下が好ましく、8以下がより好ましく、6以下が更に好ましく、4以下がより更に好ましく、2がより更に好ましい。一般式(23c)中のm2、m3は、それぞれ20以下が好ましく、10以下がより好ましく、5以下が更に好ましく、3以下がより更に好ましく、1がより更に好ましい。
【0095】
単量体(23c)としては、有機ヒドロキシ化合物のリン酸ジエステルが挙げられる。具体的には、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートアシッドリン酸ジエステル等が挙げられる。更に、リン酸ジ-〔(2-ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステル、及びリン酸ジ-〔(2-ヒドロキシエチル)アクリル酸〕エステルから選ばれる化合物が挙げられる。中でも、製造の容易さ及び製造物の品質安定性の観点から、リン酸ジ-〔(2-ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステルが好ましい。また、これらの化合物のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩などであっても良い。
【0096】
(c2)は、構成単量体中の単量体(21c)の割合が、好ましくは45質量%以上、より好ましくは55質量%以上、更に好ましくは65質量%以上、より更に好ましくは70質量%以上、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは87質量%以下、更に好ましくは85質量%以下、より更に好ましくは82質量%以下である。
【0097】
(c2)は、構成単量体中の単量体(22c)と単量体(23c)の合計割合が、好ましくは14.5質量%以上、より好ましくは15.0質量%以上、更に好ましくは20質量%以上、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、より更に好ましくは25質量%以下である。
【0098】
(c2)は、構成単量体中の単量体(21c)と単量体(22c)と単量体(23c)の合計の割合が、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、そして、好ましくは100質量%以下、より好ましくは98.5質量%以下、更に好ましくは98.3質量%以下である。
【0099】
(c2)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは25,000以上、より好ましくは30,000以上、更に好ましくは35,000以上、より更に好ましくは40,000以上、より更に好ましくは50,000以上、より更に好ましくは60,000以上、そして、好ましくは100,000以下、より好ましくは85,000以下、更に好ましくは80,000以下、より更に好ましくは75,000以下、より更に好ましくは70,000
以下である。
【0100】
(c2)は、前述のMwを有し、かつMw/Mnが1.0~2.6であることが好ましい。ここで、Mnは数平均分子量である。
【0101】
(c2)のMw及びMnは、下記条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定されたものである。
【0102】
[GPC条件]
カラム:G4000PWXL+G2500PWXL(東ソー)
溶離液:0.2Mリン酸バッファー/CH3CN=9/1
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出:RI
サンプルサイズ:0.5mg/mL
検量線作成用標準物質:ポリエチレングリコール換算(重量平均分子量258,000、185,000、101,000、21,000、12,600、6,450、1,420)
【0103】
(c2)は、例えば特開2015―113248号公報に記載の方法で製造することができる。
【0104】
ポリアルキレンオキシ基を有する芳香族を含む重合体(以下、(c3)ともいう)とは、カルボン酸基及びリン酸基から選ばれる基を有するモノマー単位と、ポリアルキレンオキシ基を有するモノマー単位を含む重合体である。(c3)は、付加重合、縮合重合によって得られる化合物である。付加重合としては不飽和結合を有するモノマーを反応させる手法である、ラジカル重合、イオン重合等が挙げられる。縮合重合としては芳香族化合物のホルムアルデヒド縮合を代表とする、アルデヒド類による付加縮合等が挙げられる。(c3)の合成方法は、アルデヒド類による縮合重合体が好ましく、ホルムアルデヒド縮合重合体がより好ましい。
【0105】
ポリアルキレンオキシ基を有する芳香族を含む重合体(c3)としては、下記に示す単量体(31c)と、単量体(32c)と、単量体(33c)とを構成単量体として含む共重合体が好ましい。
【0106】
単量体(31c)としては、ポリアルキレンオキシ基を有し、ポリアルキレンオキシ基以外の置換基を有してもよいベンゼン化合物、及びポリアルキレンオキシ基を有し、ポリアルキレンオキシ基以外の置換基を有してもよいナフタレン化合物から選ばれる1種以上の化合物から得られる単量体が挙げられ、ポリアルキレンオキシ基を有し、ポリアルキレンオキシ基以外の置換基を有してもよいベンゼン化合物から得られる単量体が好ましい。ポリアルキレンオキシ基以外の置換基としては、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数2以上4以下のアルケニル基、水酸基、及びハロゲノ基から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0107】
単量体(31c)において、アルキレンオキシ基は、炭素数2以上3以下のアルキレンオキシ基が好ましく、エチレンオキシ基がより好ましい。単量体(31c)において、アルキレンオキシ基の平均付加モル数は、分散性の観点から、5以上、好ましくは10以上、より好ましくは20以上、更に好ましくは35以上、より更に好ましくは37以上、より更に好ましくは42以上、より更に好ましくは50以上、より更に好ましくは70以上、そして、300以下、好ましくは200以下、より好ましくは150以下、更に好ましくは110以下、より更に好ましくは90以下である。単量体(31c)において、アルキレンオキシ基の平均付加モル数は、水硬性組成物の初期強度の観点から、5以上、好ましくは10以上、より好ましくは20以上、更に好ましくは30以上、より更に好ましくは35以上、そして、300以下、好ましくは200以下、より好ましくは150以下、更に好ましくは110以下、より更に好ましくは90以下、より更に好ましくは70以下、より更に好ましくは50以下である。
【0108】
単量体(31c)は、分散性の観点から、下記一般式(31c)で表される化合物から得られる単量体が好ましい。
【0109】
【0110】
〔式中、AOはアルキレンオキシ基であり、mはアルキレンオキシ基の平均付加モル数であり、5以上300以下の数である。Y1はベンゼン環の任意の置換基であり、炭素数1以上4以下のアルキル基、炭素数2以上4以下のアルケニル基、水酸基、及びハロゲノ基から選ばれる1種以上である。〕
【0111】
一般式(31c)中、AOは、炭素数2以上3以下のアルキレンオキシ基が好ましく、エチレンオキシ基がより好ましい。一般式(31c)中、mは、分散性の観点から、5以上、好ましくは10以上、より好ましくは20以上、更に好ましくは35以上、より更に好ましくは37以上、より更に好ましくは42以上、より更に好ましくは50以上、より更に好ましくは70以上、そして、300以下、好ましくは200以下、より好ましくは150以下、更に好ましくは110以下、より更に好ましくは90以下である。一般式(31c)中、mは、水硬性組成物の初期強度の観点から、5以上、好ましくは10以上、より好ましくは20以上、更に好ましくは30以上、より更に好ましくは35以上、そして、300以下、好ましくは200以下、より好ましくは150以下、更に好ましくは110以下、より更に好ましくは90以下、より更に好ましくは70以下、より更に好ましくは50以下である。一般式(31c)中、Y1を有する場合、Y1は、炭素数1以上4以下のアルキル基から選ばれる1種以上が好ましく、炭素数1以上2以下のアルキル基がより好ましい。またY1を有しなくてもよい。
【0112】
単量体(31c)は、ポリオキシアルキレンフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンナフチルエーテルから選ばれる1種以上の化合物から得られるモノマー単位が挙げられる。単量体(31c)の原料化合物は、具体的には、フェノール、クレゾール、ノニルフェノール、ナフタレン、メチルナフタレン、ブチルナフタレン、ビスフェノール等へオキシアルキレン基を平均で5~300モル付加した化合物である。
【0113】
(c3)は、分散性の観点から、更にカルボン酸基と、芳香環とを有する単量体(以下、単量体(32c)という)またはリン酸基と、芳香環とを有する単量体(以下、単量体(33c)という)を含む重合体が好ましい。すなわち(c3)は、単量体(31c)と単量体(32c)または単量体(33c)を含む重合体が好ましい。また(c3)は、単量体(31c)と単量体(32c)を含む、ホルムアルデヒド縮合重合体、または単量体(31c)と単量体(33c)を含む、ホルムアルデヒド縮合重合体、または単量体(31c)と単量体(32c)と単量体(33c)を含む、ホルムアルデヒド縮合重合体がより好ましい。そして(c3)は、単量体(31c)と単量体(33c)を含む、ホルムアルデヒド縮合重合体がさらに好ましい。
【0114】
単量体(32c)のカルボン酸基を有する芳香族化合物としては、カルボン酸基を有し、カルボン酸基以外の置換基を有してもよいベンゼン化合物、及びカルボン酸基を有し、カルボン酸基以外の置換基を有してもよいナフタレン化合物から選ばれる1種以上の化合物から得られる単量体が挙げられ、カルボン酸基を有し、カルボン酸基以外の置換基を有してもよいベンゼン化合物から得られる単量体が好ましい。
カルボン酸基は、カルボキシ基及び塩となっているカルボキシ基から選ばれる基であり、カルボキシ基が、他のカルボキシ基と無水物を形成したものも含まれる。
カルボン酸基以外の置換基としては、炭素数1以上20以下のアルキル基、炭素数2以上4以下のアルケニル基、水酸基、及びハロゲノ基から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0115】
単量体(32c)は、分散性の観点から、下記一般式(32c)で表される化合物から得られる単量体が好ましい。
【0116】
【0117】
〔式中、Z1は、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基又は置換アルキルアンモニウム基である。Y2はベンゼン環の任意の置換基であり、炭素数1以上20以下のアルキル基、炭素数2以上4以下のアルケニル基、水酸基、及びハロゲノ基から選ばれる1種以上である。〕
【0118】
一般式(32c)中、Z1は、水素原子、又はアルカリ金属が好ましく、水素原子がより好ましい。
一般式(32c)中、Y2を有する場合、Y2は、水酸基、及び炭素数1以上20以下のアルキル基から選ばれる1種以上が好ましく、水酸基がより好ましい。またY2を有しなくてもよい。
【0119】
単量体(32c)は、ベンゼン又はナフタレン誘導体、具体的には、ヒドロキシ安息香酸、安息香酸、イソフタル酸、オキシナフトエ酸、及びこれらの異性体から選ばれる1種以上の化合物から得られる単量体が挙げられ、流動性の観点から、ヒドロキシ安息香酸、及び安息香酸選ばれる1種以上の化合物から得られる単量体が好ましく、ヒドロキシ安息香酸から得られる単量体がより好ましい。
【0120】
単量体(33c)のリン酸基を有する芳香族化合物としては、リン酸基を有し、カルボン酸基以外の置換基を有してもよいベンゼン化合物、及びリン酸基を有し、リン酸基以外の置換基を有してもよいナフタレン化合物から選ばれる1種以上の化合物から得られる単量体が挙げられ、リン酸基を有し、リン酸基以外の置換基を有してもよいベンゼン化合物から得られる単量体が好ましい。
リン酸基は、リン酸基及び塩となっているリン酸基から選ばれる基であり、リン酸基が、他のリン酸基と脱水縮合したものも含まれる。
リン酸基以外の置換基としては、炭素数1以上20以下のアルキル基、炭素数2以上4以下のアルケニル基、水酸基、及びハロゲノ基から選ばれる1種以上が挙げられる。
リン酸基は芳香族化合物に置換基として配位してもよく、また芳香族アルコールのリン酸エステルまたはリン酸ジエステルであってもよい。
【0121】
単量体(33c)はベンゼン又はナフタレン誘導体、具体的には、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、ナフチルホスホン酸、ナフチルホスフィン酸、フェニルホスフェート(モノ-、ジ-、若しくはトリエステル、又はその混合物)、フェノキシエタノールホスフェート(モノ-、ジ-、若しくはトリエステル、又はその混合物)、フェノキシジグリコールホスフェート(モノ-、ジ-、若しくはトリエステル、又はその混合物)フェノキシ(ポリ)アルキレングリコールホスフェート(モノ-、ジ-、若しくはトリエステル、又はその混合物である)、ナフトールホスフェート(モノ-、ジ-、若しくはトリエステル、又はその混合物)、ポリオキシアルキレンナフタレートホスフェート(モノ-、ジ-、若しくはトリエステル、又はその混合物)及びこれらの異性体から選ばれる1種以上の化合物から得られる単量体が挙げられ、流動性の観点から、フェノキシエタノールホスフェート(モノ-、ジ-、若しくはトリエステル、又はその混合物)から得られる単量体が好ましい。
【0122】
(c3)は、単量体(31c)、単量体(32c)、およびまたは単量体(33c)以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、他の重合可能な単量体を有してもよい。単量体(31c)、単量体(32c)、及び単量体(33c)以外の単量体としては、例えばフェノール、クレゾール等のアルキルフェノールから得られる単量体、ベンゼン又はナフタレン誘導体、具体的には、ベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、ナフトールスルホン酸、化合物から得られる単量体が挙げられる。
【0123】
(c3)が単量体(32c)を含む場合、(c3)中の単量体(31c)と単量体(32c)とのモル比(32c)/(31c)が、流動保持性の観点から、好ましくは5/95以上、より好ましくは10/90以上、更に好ましくは15/85以上、より更に好ましくは20/80以上、より更に好ましくは30/70以上、より更に好ましくは40/60以上、より更に好ましくは50/50以上、より更に好ましくは60/40以上、より更に好ましくは70/30以上、より更に好ましくは72/28以上、そして、好ましくは95/5以下、より好ましくは90/10以下、更に好ましくは80/20以下、より更に好ましくは77/23以下である。
(c3)中の単量体(32c)と単量体(31c)とのモル比(32c)/(31c)が、初期強度の観点から、好ましくは5/95以上、より好ましくは10/90以上、更に好ましくは15/85以上、より更に好ましくは20/80以上、より更に好ましくは30/70以上、より更に好ましくは40/60以上、より更に好ましくは50/50以上、より更に好ましくは60/40以上、より更に好ましくは70/30以上、より更に好ましくは72/28以上、より更に好ましくは77/23以上、そして、好ましくは95/5以下、より好ましくは90/10以下、更に好ましくは82/18以下である。
(c3)中の単量体(31c)と単量体(32c)とのモル比(32c)/(31c)は、(c3)成分を製造する際の、単量体(31c)となる原料化合物、単量体(32c)となる原料化合物の仕込み比から計算されてもよい。
【0124】
(c3)が単量体(33c)を含む場合、(c3)中の単量体(31c)と単量体(33c)とのモル比(33c)/(31c)が、流動保持性の観点から、好ましくは5/95以上、より好ましくは10/90以上、更に好ましくは15/85以上、より更に好ましくは20/80以上、より更に好ましくは30/70以上、より更に好ましくは40/60以上、より更に好ましくは50/50以上、より更に好ましくは60/40以上、より更に好ましくは70/30以上、より更に好ましくは72/28以上、そして、好ましくは95/5以下、より好ましくは90/10以下、更に好ましくは80/20以下、より更に好ましくは77/23以下である。
(c3)中の単量体(33c)と単量体(31c)とのモル比(33c)/(31c)が、初期強度の観点から、好ましくは5/95以上、より好ましくは10/90以上、更に好ましくは15/85以上、より更に好ましくは20/80以上、より更に好ましくは30/70以上、より更に好ましくは40/60以上、より更に好ましくは50/50以上、より更に好ましくは60/40以上、より更に好ましくは70/30以上、より更に好ましくは72/28以上、より更に好ましくは77/23以上、そして、好ましくは95/5以下、より好ましくは90/10以下、更に好ましくは82/18以下である。
(c3)中の単量体(31c)と単量体(33c)とのモル比(33c)/(31c)は、(c3)を製造する際の、単量体(31c)となる原料化合物、単量体(33c)となる原料化合物の仕込み比から計算されてもよい。
【0125】
(c3)が単量体(32c)と単量体(33c)を含む場合、(c3)中の単量体(31c)と単量体(32c)の合計と単量体(33c)とのモル比((31c)+(32c))/(33c)が、流動性の観点から、好ましくは以上、より好ましくは99/1以上、更に好ましくは95/5以上、より更に好ましくは90/10以上、より更に好ましくは90/10以上、そして、好ましくは1/99以下、より好ましくは10/90以下、更に好ましくは20/80以下、より更に好ましくは30/70以下である。
(c3)中の単量体(31c)と単量体(32c)の合計と単量体(33c)とのモル比((31c)+(32c))/(33c)は、(c3)成分を製造する際の、単量体(31c)となる原料化合物、単量体(32c)となる原料化合物、単量体(33c)となる原料化合物の仕込み比から計算されてもよい。
【0126】
(c3)が単量体(32c)を含む場合、(c3)の全構成単量体中、単量体(31c)と単量体(32c)の合計量が、70モル%以上、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、そして、100モル%以下である。この合計量は、100モル%であってもよい。(c3)の構成単量体中の単量体(31c)と単量体(32c)の合計量は、(c3)が縮合重合体である場合、(c3)成分の構成単量体に、縮合重合反応に用いるホルムアルデヒド等のアルデヒド類が含まれないものとして算出するものとする。
【0127】
(c3)が単量体(33c)を含む場合、(c3)成分の全構成単量体中、単量体(31c)と単量体(33c)の合計量が、70モル%以上、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、そして、100モル%以下である。この合計量は、100モル%であってもよい。(c3)の構成単量体中の単量体(31c)と単量体(33c)の合計量は、(c3)が縮合重合体である場合、(c3)の構成単量体に、縮合重合反応に用いるホルムアルデヒド等のアルデヒド類が含まれないものとして算出するものとする。
【0128】
(c3)が単量体(32c)と単量体(33c)を含む場合、(c3)の全構成単量体中、単量体(31c)と単量体(32c)と単量体(33c)の合計量が、70モル%以上、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、そして、100モル%以下である。この合計量は、100モル%であってもよい。
(c3)の構成単量体中の単量体(31c)と単量体(32c)と単量体(33c)の合計量は、(c3)が縮合重合体である場合、(c3)の構成単量体に、縮合重合反応に用いるホルムアルデヒド等のアルデヒド類が含まれないものとして算出するものとする。
【0129】
(c3)の重量平均分子量は、分散性の観点から、好ましくは5,000以上、より好ましくは8,000以上、更に好ましくは10,000以上、そして、好ましくは150,000以下、より好ましくは100,000以下、更に好ましくは50,000以下である。この重量平均分子量は、以下の条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定されたものである。
*GPC条件
装置:GPC(HLC-8320GPC)東ソー株式会社製
カラム:G4000SWXL+G2000SWXL+ガードカラムSWXL(東ソー株式会社製)
溶離液:30mM CH3COONa/CH3CN=6/4
流量:0.7mL/min
カラム温度:室温
検出:RI
サンプルサイズ:0.2mg/mL
【0130】
ポリアルキレンオキシ基を有する芳香族を含む重合体は、市販品を用いることが出来る。例えば、ポゾリスソリューションズ社のマスターグレニウムACEシリーズ、マスターイースシリーズなどが挙げられる。
【0131】
本発明の水硬性組成物は、(c)成分を含有する場合、(c)成分を、水硬性粉体100質量部に対して、水硬性組成物の早強性と分散性の観点から、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.10質量部以上、更に好ましくは0.20質量部以上、より更に好ましくは0.40質量部以上、そして、水硬性組成物の早強性と分散性の観点から、好ましくは1.5質量部以下、より好ましくは1.0質量部以下、更に好ましくは0.80質量部以下含有する。
【0132】
本発明の水硬性組成物は、骨材を含有することができる。骨材としては、細骨材及び粗骨材から選ばれる骨材が挙げられる。細骨材として、JISA0203-2014中の番号2311で規定されるものが挙げられる。細骨材としては、川砂、陸砂、山砂、海砂、石灰砂、珪砂及びこれらの砕砂、高炉スラグ細骨材、フェロニッケルスラグ細骨材、軽量細骨材(人工及び天然)及び再生細骨材等が挙げられる。また、粗骨材として、JISA 0203-2014中の番号2312で規定されるものが挙げられる。例えば粗骨材としては、川砂利、陸砂利、山砂利、海砂利、石灰砂利、これらの砕石、高炉スラグ粗骨材、フェロニッケルスラグ粗骨材、軽量粗骨材(人工及び天然)及び再生粗骨材等が挙げられる。細骨材、粗骨材は種類の違うものを混合して使用しても良く、単一の種類のものを使用しても良い。
【0133】
水硬性組成物がコンクリートの場合、粗骨材の使用量は、水硬性組成物の強度の発現とセメント等の水硬性粉体の使用量を低減し、型枠等への充填性を向上する観点から、嵩容積が、好ましくは50%以上、より好ましくは55%以上、更に好ましくは60%以上であり、そして、好ましくは100%以下、より好ましくは90%以下、更に好ましくは80%以下である。嵩容積は、コンクリート1m3中の粗骨材の容積(空隙を含む)の割合である。
また、水硬性組成物がコンクリートの場合、細骨材の使用量は、型枠等への充填性を向上する観点から、好ましくは500kg/m3以上、より好ましくは600kg/m3以上、更に好ましくは700kg/m3以上であり、そして、好ましくは1000kg/m3以下、より好ましくは900kg/m3以下である。
水硬性組成物がモルタルの場合、細骨材の使用量は、好ましくは800kg/m3以上、より好ましくは900kg/m3以上、更に好ましくは1000kg/m3以上であり、そして、好ましくは2000kg/m3以下、より好ましくは1800kg/m3以下、更に好ましくは1700kg/m3以下である。
【0134】
本発明の水硬性組成物は、コンクリート、モルタルであってよい。本発明の水硬性組成物は、セルフレベリング用、耐火物用、プラスター用、軽量又は質量コンクリート用、AE用、補修用、プレパックド用、トレーミー用、地盤改良用、グラウト用、寒中用等の何れの分野においても有用である。水硬性組成物調製後5~20時間程度で強度を発現し、早期に型枠から脱型が可能になる観点から、コンクリート振動製品や遠心成形品、トンネルの二次覆工、土木構造物の橋脚、梁、ボックスカルバート、コンクリート舗装等に用いることが好ましい。
【0135】
本発明の水硬性組成物は、室温(例えば10~35℃)での気中養生で硬化させることができる。本発明の水硬性組成物は、40℃以上の加熱下での養生、すなわち、いわゆる加熱養生を行わなくても5~20時間後の硬化体の強度が向上したものを得ることができる。
【0136】
本発明の水硬性組成物は、本発明の水硬性組成物用早強剤、水硬性粉体、及び水を混合することで製造できる。すなわち、本発明により、本発明の水硬性組成物用早強剤、水硬性粉体、及び水を混合する、水硬性組成物の製造方法が提供される。
また本発明の水硬性組成物の製造方法は、水硬性組成物の早強性の観点から、本発明の水硬性組成物用早強剤を、(a)成分を(b)成分により分散させた水分散液の状態で混合することが好ましい。
本発明の水硬性組成物の製造方法は、更に(c)成分を混合することができる。
本発明の水硬性組成物の製造方法には、本発明の水硬性組成物用早強剤及び水硬性組成物で記載した事項を適宜適用することができる。例えば、各成分の具体例及び好ましい態様も本発明の水硬性組成物用早強剤及び水硬性組成物と同じである。また、本発明の水硬性組成物用早強剤及び水硬性組成物における各成分の含有量、及び各質量比は、各成分の含有量を混合量に置き換えて本発明の水硬性組成物の製造方法に適用することができる。
例えば、本発明の水硬性組成物の製造方法では、本発明の水硬性組成物用早強剤を、前記早強剤中に含まれる(a)成分が、本発明の水硬性組成物で記載した(a)成分の含有量の範囲となるように混合量を調整することで製造することができる。
【0137】
上述した実施の形態に加え、本発明は以下の態様を開示する。
【0138】
<1>
下記(a)成分、(b)成分、及び水を含有する、水硬性組成物用早強剤。
(a)成分:カルサイト
(b)成分:下記一般式(1b)で示される単量体(1b)と、下記一般式(2b)で示される単量体(2b)とを構成単量体として含み、全構成単量体中、単量体(1b)と単量体(2b)の合計量中の単量体(1b)の割合が、10質量%以上35質量%以下である、共重合体
【0139】
【0140】
〔式中、
R1b、R2b、R3b:同一でも異なっていても良く、水素原子、メチル基又は(CH2)rCOOM2であり、(CH2)rCOOM2は、COOM1又は他の(CH2)rCOOM2と無水物を形成していてもよく、その場合、それらの基のM1、M2は存在しない。
M1、M2:同一でも異なっていても良く、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、置換アルキルアンモニウム基、アルキル基、ヒドロアルキル基又はアルケニル基
r:0以上2以下の数
を示す。〕
【0141】
【0142】
〔式中、
R4b、R5b、R6b: 同一でも異なっていても良く、水素原子、メチル基、(CH2)sCOOM3、又は(CH2)q1(CO)p1O(AO)n1-R7b
R7b:水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基
AO:炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基
n1:AOの平均付加モル数であり、4以上200以下の数
q1:0以上2以下の数
p1:0又は1
M3:水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、置換アルキルアンモニウム基、アルキル基、ヒドロアルキル基又はアルケニル基
s:0以上2以下の数
を示す。〕
【0143】
<2>
(b)成分において、単量体(1b)がメタクリル酸、単量体(2b)が、一般式(2b)中、p1が1であり、n1が4以上200以下の単量体である、前記<1>に記載の水硬性組成物用早強剤。
【0144】
<3>
(b)成分において、単量体(1b)がメタクリル酸、単量体(2b)が、一般式(2b)中、p1が1であり、n1が100以上150以下の単量体である、前記<1>に記載の水硬性組成物用早強剤。
【0145】
<4>
(b)成分において、単量体(1b)がアクリル酸、単量体(2b)が、一般式(2b)中、p1が0であり、n1が4以上200以下の単量体である、前記<1>に記載の水硬性組成物用早強剤。
【0146】
<5>
(b)成分において、単量体(1b)がアクリル酸、単量体(2b)が、一般式(2b)中、p1が0であり、n1が45以上60以下の単量体である、前記<1>に記載の水硬性組成物用早強剤。
【0147】
<6>
(a)成分が、Scherrerの式で算出される(104)面の結晶子サイズが10nm以上50nm以下のカルサイトであり、(b)成分において、単量体(1b)がメタクリル酸、単量体(2b)が、一般式(2b)中、p1が1であり、n1が4以上200以下の単量体である、前記<1>に記載の水硬性組成物用早強剤。
【0148】
<7>
(a)成分が、Scherrerの式で算出される(104)面の結晶子サイズが10nm以上50nm以下のカルサイトであり、(b)成分において、単量体(1b)がメタクリル酸、単量体(2b)が、一般式(2b)中、p1が1であり、n1が100以上150以下の単量体である、前記<1>に記載の水硬性組成物用早強剤。
【0149】
<8>
(a)成分が、Scherrerの式で算出される(104)面の結晶子サイズが10nm以上50nm以下のカルサイトであり、(b)成分において、単量体(1b)がアクリル酸、単量体(2b)が、一般式(2b)中、p1が0であり、n1が4以上200以下の単量体である、前記<1>に記載の水硬性組成物用早強剤。
【0150】
<9>
(a)成分が、Scherrerの式で算出される(104)面の結晶子サイズが10nm以上50nm以下のカルサイトであり、(b)成分において、単量体(1b)がアクリル酸、単量体(2b)が、一般式(2b)中、p1が0であり、n1が45以上60以下の単量体である、前記<1>に記載の水硬性組成物用早強剤。
【0151】
<10>
(a)成分が、Scherrerの式で算出される(104)面の結晶子サイズが15nm以上25nm以下のカルサイトであり、(b)成分において、単量体(1b)がメタクリル酸、単量体(2b)が、一般式(2b)中、p1が1であり、n1が4以上200以下の単量体である、前記<1>に記載の水硬性組成物用早強剤。
【0152】
<11>
(a)成分が、Scherrerの式で算出される(104)面の結晶子サイズが15nm以上25nm以下のカルサイトであり、(b)成分において、単量体(1b)がメタクリル酸であり、単量体(2b)が、一般式(2b)中、p1が1であり、n1が100以上150以下の単量体である、前記<1>に記載の水硬性組成物用早強剤。
【0153】
<12>
(a)成分が、Scherrerの式で算出される(104)面の結晶子サイズが15nm以上25nm以下のカルサイトであり、(b)成分において、単量体(1b)がアクリル酸、単量体(2b)が、一般式(2b)中、p1が0であり、n1が4以上200以下の単量体である、前記<1>に記載の水硬性組成物用早強剤。
【0154】
<13>
(a)成分が、Scherrerの式で算出される(104)面の結晶子サイズが15nm以上25nm以下のカルサイトであり、(b)成分において、単量体(1b)がアクリル酸、単量体(2b)が、一般式(2b)中、p1が0であり、n1が45以上60以下の単量体である、前記<1>に記載の水硬性組成物用早強剤。
【0155】
<14>
(a)成分が、Scherrerの式で算出される(104)面の結晶子サイズが10nm以上50nm以下のカルサイトであり、(b)成分において、単量体(1b)がメタクリル酸、単量体(2b)が、一般式(2b)中、p1が1であり、n1が100以上150以下の単量体であり、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(a)/(b)が、1以上100以下である、前記<1>に記載の水硬性組成物用早強剤。
【0156】
<15>
(a)成分が、Scherrerの式で算出される(104)面の結晶子サイズが10nm以上50nm以下のカルサイトであり、(b)成分において、単量体(1b)がアクリル酸、単量体(2b)が、一般式(2b)中、p1が0であり、n1が4以上200以下の単量体であり、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(a)/(b)が、1以上100以下である、前記<1>に記載の水硬性組成物用早強剤。
【0157】
<16>
(a)成分が、Scherrerの式で算出される(104)面の結晶子サイズが10nm以上50nm以下のカルサイトであり、(b)成分において、単量体(1b)がアクリル酸、単量体(2b)が、一般式(2b)中、p1が0であり、n1が45以上60以下の単量体であり、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(a)/(b)が、1以上100以下である、前記<1>に記載の水硬性組成物用早強剤。
【0158】
<17>
(a)成分が、Scherrerの式で算出される(104)面の結晶子サイズが15nm以上25nm以下のカルサイトであり、(b)成分において、単量体(1b)がメタクリル酸、単量体(2b)が、一般式(2b)中、p1が1であり、n1が4以上200以下の単量体であり、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(a)/(b)が、1以上100以下である、前記<1>に記載の水硬性組成物用早強剤。
【0159】
<18>
(a)成分が、Scherrerの式で算出される(104)面の結晶子サイズが15nm以上25nm以下のカルサイトであり、(b)成分において、単量体(1b)がメタクリル酸、単量体(2b)が、一般式(2b)中、p1が1であり、n1が100以上150以下の単量体であり、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(a)/(b)が、1以上100以下である、前記<1>に記載の水硬性組成物用早強剤。
【0160】
<19>
(a)成分が、Scherrerの式で算出される(104)面の結晶子サイズが15nm以上25nm以下のカルサイトであり、(b)成分において、単量体(1b)がアクリル酸、単量体(2b)が、一般式(2b)中、p1が0であり、n1が4以上200以下の単量体であり、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(a)/(b)が、1以上100以下である、前記<1>に記載の水硬性組成物用早強剤。
【0161】
<20>
(a)成分が、Scherrerの式で算出される(104)面の結晶子サイズが15nm以上25nm以下のカルサイトであり、(b)成分において、単量体(1b)がアクリル酸、単量体(2b)が、一般式(2b)中、p1が0であり、n1が45以上60以下の単量体であり、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(a)/(b)が、1以上100以下である、前記<1>に記載の水硬性組成物用早強剤。
【0162】
<21>
(a)成分が、Scherrerの式で算出される(104)面の結晶子サイズが10nm以上50nm以下のカルサイトであり、(b)成分において、単量体(1b)がメタクリル酸、単量体(2b)が、一般式(2b)中、p1が1であり、n1が100以上150以下の単量体であり、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(a)/(b)が、25以上35以下である、前記<1>に記載の水硬性組成物用早強剤。
【0163】
<22>
(a)成分が、Scherrerの式で算出される(104)面の結晶子サイズが10nm以上50nm以下のカルサイトであり、(b)成分において、単量体(1b)がアクリル酸、単量体(2b)が、一般式(2b)中、p1が0であり、n1が4以上200以下の単量体であり、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(a)/(b)が、25以上35以下である、前記<1>に記載の水硬性組成物用早強剤。
【0164】
<23>
(a)成分が、Scherrerの式で算出される(104)面の結晶子サイズが10nm以上50nm以下のカルサイトであり、(b)成分において、単量体(1b)がアクリル酸、単量体(2b)が、一般式(2b)中、p1が0であり、n1が45以上60以下の単量体であり、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(a)/(b)が、25以上35以下である、前記<1>に記載の水硬性組成物用早強剤。
【0165】
<24>
(a)成分が、Scherrerの式で算出される(104)面の結晶子サイズが15nm以上25nm以下のカルサイトであり、(b)成分において、単量体(1b)がメタクリル酸、単量体(2b)が、一般式(2b)中、p1が1であり、n1が4以上200以下の単量体であり、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(a)/(b)が、25以上35以下である、前記<1>に記載の水硬性組成物用早強剤。
【0166】
<25>
(a)成分が、Scherrerの式で算出される(104)面の結晶子サイズが15nm以上25nm以下のカルサイトであり、(b)成分において、単量体(1b)がメタクリル酸、単量体(2b)が、一般式(2b)中、p1が1であり、n1が100以上150以下の単量体であり、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(a)/(b)が、25以上35以下である、前記<1>に記載の水硬性組成物用早強剤。
【0167】
<26>
(a)成分が、Scherrerの式で算出される(104)面の結晶子サイズが15nm以上25nm以下のカルサイトであり、(b)成分において、単量体(1b)がアクリル酸、単量体(2b)が、一般式(2b)中、p1が0であり、n1が4以上200以下の単量体であり、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(a)/(b)が、25以上35以下である、前記<1>に記載の水硬性組成物用早強剤。
【0168】
<27>
(a)成分が、Scherrerの式で算出される(104)面の結晶子サイズが15nm以上25nm以下のカルサイトであり、(b)成分において、単量体(1b)がアクリル酸、単量体(2b)が、一般式(2b)中、p1が0であり、n1が45以上60以下の単量体であり、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(a)/(b)が、25以上35以下である、前記<1>に記載の水硬性組成物用早強剤。
【0169】
<28>
前記<1>~<27>の何れかに記載の水硬性組成物用早強剤。と水硬性粉体と水を含有する水硬性組成物。
【0170】
<29>
更に(c)分散剤(但し、(b)成分を除く)を含有する、前記<28>に記載の水硬性組成物。
【0171】
<30>
(c)成分が、ポリカルボン酸系分散剤(但し、(b)成分を除く)である、前記<29>に記載の水硬性組成物。
【0172】
<31>
下記(a)成分、(b)成分、及び水を含有する剤の、水硬性組成物用早強剤としての使用。
(a)成分:カルサイト
(b)成分:下記一般式(1b)で示される単量体(1b)と、下記一般式(2b)で示される単量体(2b)とを構成単量体として含み、全構成単量体中、単量体(1b)と単量体(2b)の合計量中の単量体(1b)の割合が、10質量%以上35質量%以下である、共重合体
【0173】
【0174】
〔式中、
R1b、R2b、R3b:同一でも異なっていても良く、水素原子、メチル基又は(CH2)rCOOM2であり、(CH2)rCOOM2は、COOM1又は他の(CH2)rCOOM2と無水物を形成していてもよく、その場合、それらの基のM1、M2は存在しない。
M1、M2:同一でも異なっていても良く、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、置換アルキルアンモニウム基、アルキル基、ヒドロアルキル基又はアルケニル基
r:0以上2以下の数
を示す。〕
【0175】
【0176】
〔式中、
R4b、R5b、R6b: 同一でも異なっていても良く、水素原子、メチル基、(CH2)sCOOM3、又は(CH2)q1(CO)p1O(AO)n1-R7b
R7b:水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基
AO:炭素数2以上4以下のアルキレンオキシ基
n1:AOの平均付加モル数であり、4以上200以下の数
q1:0以上2以下の数
p1:0又は1
M3:水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、置換アルキルアンモニウム基、アルキル基、ヒドロアルキル基又はアルケニル基
s:0以上2以下の数
を示す。〕
【0177】
<32>
(b)成分において、単量体(1b)がメタクリル酸、単量体(2b)が、一般式(2b)中、p1が1であり、n1が4以上200以下の単量体である、前記<31>に記載の剤の水硬性組成物用早強剤としての使用。
【0178】
<33>
(b)成分において、単量体(1b)がメタクリル酸、単量体(2b)が、一般式(2b)中、p1が1であり、n1が100以上150以下の単量体である、前記<31>に記載の剤の水硬性組成物用早強剤としての使用。
【0179】
<34>
(b)成分において、単量体(1b)がアクリル酸、単量体(2b)が、一般式(2b)中、p1が0であり、n1が4以上200以下の単量体である、前記<31>に記載の剤の水硬性組成物用早強剤としての使用。
【0180】
<35>
(b)成分において、単量体(1b)がアクリル酸、単量体(2b)が、一般式(2b)中、p1が0であり、n1が45以上60以下の単量体である、前記<31>に記載の剤の水硬性組成物用早強剤としての使用。
【0181】
<36>
(a)成分が、Scherrerの式で算出される(104)面の結晶子サイズが10nm以上50nm以下のカルサイトであり、(b)成分において、単量体(1b)がメタクリル酸、単量体(2b)が、一般式(2b)中、p1が1であり、n1が4以上200以下の単量体である、前記<31>に記載の剤の水硬性組成物用早強剤としての使用。
【0182】
<37>
(a)成分が、Scherrerの式で算出される(104)面の結晶子サイズが10nm以上50nm以下のカルサイトであり、(b)成分において、単量体(1b)がメタクリル酸、単量体(2b)が、一般式(2b)中、p1が1であり、n1が100以上150以下の単量体である、前記<31>に記載の剤の水硬性組成物用早強剤としての使用。
【0183】
<38>
(a)成分が、Scherrerの式で算出される(104)面の結晶子サイズが10nm以上50nm以下のカルサイトであり、(b)成分において、単量体(1b)がアクリル酸、単量体(2b)が、一般式(2b)中、p1が0であり、n1が4以上200以下の単量体である、前記<31>に記載の剤の水硬性組成物用早強剤としての使用。
【0184】
<39>
(a)成分が、Scherrerの式で算出される(104)面の結晶子サイズが10nm以上50nm以下のカルサイトであり、(b)成分において、単量体(1b)がアクリル酸、単量体(2b)が、一般式(2b)中、p1が0であり、n1が45以上60以下の単量体である、前記<31>に記載の剤の水硬性組成物用早強剤としての使用。
【0185】
<40>
(a)成分が、Scherrerの式で算出される(104)面の結晶子サイズが15nm以上25nm以下のカルサイトであり、(b)成分において、単量体(1b)がメタクリル酸、単量体(2b)が、一般式(2b)中、p1が1であり、n1が4以上200以下の単量体である、前記<31>に記載の剤の水硬性組成物用早強剤としての使用。
【0186】
<41>
(a)成分が、Scherrerの式で算出される(104)面の結晶子サイズが15nm以上25nm以下のカルサイトであり、(b)成分において、単量体(1b)がメタクリル酸、単量体(2b)が、一般式(2b)中、p1が1であり、n1が100以上150以下の単量体である、前記<31>に記載の剤の水硬性組成物用早強剤としての使用。
【0187】
<42>
(a)成分が、Scherrerの式で算出される(104)面の結晶子サイズが15nm以上25nm以下のカルサイトであり、(b)成分において、単量体(1b)がアクリル酸、単量体(2b)が、一般式(2b)中、p1が0であり、n1が4以上200以下の単量体である、前記<31>に記載の剤の水硬性組成物用早強剤としての使用。
【0188】
<43>
(a)成分が、Scherrerの式で算出される(104)面の結晶子サイズが15nm以上25nm以下のカルサイトであり、(b)成分において、単量体(1b)がアクリル酸、単量体(2b)が、一般式(2b)中、p1が0であり、n1が45以上60以下の単量体である、前記<31>に記載の剤の水硬性組成物用早強剤としての使用。
【0189】
<44>
(a)成分が、Scherrerの式で算出される(104)面の結晶子サイズが10nm以上50nm以下のカルサイトであり、(b)成分において、単量体(1b)がメタクリル酸、単量体(2b)が、一般式(2b)中、p1が1であり、n1が100以上150以下の単量体であり、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(a)/(b)が、1以上100以下である、前記<31>に記載の剤の水硬性組成物用早強剤としての使用。
【0190】
<45>
(a)成分が、Scherrerの式で算出される(104)面の結晶子サイズが10nm以上50nm以下のカルサイトであり、(b)成分において、単量体(1b)がアクリル酸、単量体(2b)が、一般式(2b)中、p1が0であり、n1が4以上200以下の単量体であり、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(a)/(b)が、1以上100以下である、前記<31>に記載の剤の水硬性組成物用早強剤としての使用。
【0191】
<46>
(a)成分が、Scherrerの式で算出される(104)面の結晶子サイズが10nm以上50nm以下のカルサイトであり、(b)成分において、単量体(1b)がアクリル酸、単量体(2b)が、一般式(2b)中、p1が0であり、n1が45以上60以下の単量体であり、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(a)/(b)が、1以上100以下である、前記<1>に記載の剤の水硬性組成物用早強剤としての使用。
【0192】
<47>
(a)成分が、Scherrerの式で算出される(104)面の結晶子サイズが15nm以上25nm以下のカルサイトであり、(b)成分において、単量体(1b)がメタクリル酸、単量体(2b)が、一般式(2b)中、p1が1であり、n1が4以上200以下の単量体であり、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(a)/(b)が、1以上100以下である、前記<31>に記載の剤の水硬性組成物用早強剤としての使用。
【0193】
<48>
(a)成分が、Scherrerの式で算出される(104)面の結晶子サイズが15nm以上25nm以下のカルサイトであり、(b)成分において、単量体(1b)がメタクリル酸、単量体(2b)が、一般式(2b)中、p1が1であり、n1が100以上150以下の単量体であり、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(a)/(b)が、1以上100以下である、前記<31>に記載の剤の水硬性組成物用早強剤としての使用。
【0194】
<49>
(a)成分が、Scherrerの式で算出される(104)面の結晶子サイズが15nm以上25nm以下のカルサイトであり、(b)成分において、単量体(1b)がアクリル酸、単量体(2b)が、一般式(2b)中、p1が0であり、n1が4以上200以下の単量体であり、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(a)/(b)が、1以上100以下である、前記<31>に記載の剤の水硬性組成物用早強剤としての使用。
【0195】
<50>
(a)成分が、Scherrerの式で算出される(104)面の結晶子サイズが15nm以上25nm以下のカルサイトであり、(b)成分において、単量体(1b)がアクリル酸、単量体(2b)が、一般式(2b)中、p1が0であり、n1が45以上60以下の単量体であり、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(a)/(b)が、1以上100以下である、前記<31>に記載の剤の水硬性組成物用早強剤としての使用。
【0196】
<51>
(a)成分が、Scherrerの式で算出される(104)面の結晶子サイズが10nm以上50nm以下のカルサイトであり、(b)成分において、単量体(1b)がメタクリル酸、単量体(2b)が、一般式(2b)中、p1が1であり、n1が100以上150以下の単量体であり、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(a)/(b)が、25以上35以下である、前記<31>に記載の剤の水硬性組成物用早強剤としての使用。
【0197】
<52>
(a)成分が、Scherrerの式で算出される(104)面の結晶子サイズが10nm以上50nm以下のカルサイトであり、(b)成分において、単量体(1b)がアクリル酸、単量体(2b)が、一般式(2b)中、p1が0であり、n1が4以上200以下の単量体であり、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(a)/(b)が、25以上35以下である、前記<31>に記載の剤の水硬性組成物用早強剤としての使用。
【0198】
<53>
(a)成分が、Scherrerの式で算出される(104)面の結晶子サイズが10nm以上50nm以下のカルサイトであり、(b)成分において、単量体(1b)がアクリル酸、単量体(2b)が、一般式(2b)中、p1が0であり、n1が45以上60以下の単量体であり、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(a)/(b)が、25以上35以下である、前記<31>に記載の剤の水硬性組成物用早強剤としての使用。
【0199】
<54>
(a)成分が、Scherrerの式で算出される(104)面の結晶子サイズが15nm以上25nm以下のカルサイトであり、(b)成分において、単量体(1b)がメタクリル酸、単量体(2b)が、一般式(2b)中、p1が1であり、n1が4以上200以下の単量体であり、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(a)/(b)が、25以上35以下である、前記<31>に記載の剤の水硬性組成物用早強剤としての使用。
【0200】
<55>
(a)成分が、Scherrerの式で算出される(104)面の結晶子サイズが15nm以上25nm以下のカルサイトであり、(b)成分において、単量体(1b)がメタクリル酸、単量体(2b)が、一般式(2b)中、p1が1であり、n1が100以上150以下の単量体であり、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(a)/(b)が、25以上35以下である、前記<31>に記載の剤の水硬性組成物用早強剤としての使用。
【0201】
<56>
(a)成分が、Scherrerの式で算出される(104)面の結晶子サイズが15nm以上25nm以下のカルサイトであり、(b)成分において、単量体(1b)がアクリル酸、単量体(2b)が、一般式(2b)中、p1が0であり、n1が4以上200以下の単量体であり、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(a)/(b)が、25以上35以下である、前記<31>に記載の剤の水硬性組成物用早強剤としての使用。
【0202】
<57>
(a)成分が、Scherrerの式で算出される(104)面の結晶子サイズが15nm以上25nm以下のカルサイトであり、(b)成分において、単量体(1b)がアクリル酸、単量体(2b)が、一般式(2b)中、p1が0であり、n1が45以上60以下の単量体であり、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比(a)/(b)が、25以上35以下である、前記<31>に記載の剤の水硬性組成物用早強剤としての使用。
【実施例】
【0203】
実施例、比較例で使用した材料を以下に示す。
<(a)成分>
・a-1の合成
攪拌機付きガラス製反応容器(四つ口フラスコ)にイオン交換水959g、水酸化カルシウム(試薬特級、富士フィルム和光純薬製)50g、水酸化マグネシウム(試薬特級、富士フィルム和光純薬製)1gを仕込んだ。水温15℃の一定の条件下、pHが7になるまで窒素/二酸化炭素混合気体(二酸化炭素比率50体積%)を流量4L/分で吹き込み、炭酸カルシウム(カルサイト)a-1のスラリーを得た。得られた炭酸カルシウムスラリーをブフナーロートで吸引ろ過し、炭酸カルシウムa-1の脱水ケーキを作成した。
【0204】
・a-2の合成
攪拌機付きガラス製反応容器(四つ口フラスコ)にイオン交換水380g、水酸化カルシウム(試薬特級、富士フィルム和光純薬製)20gを仕込み、水温7℃の一定の条件下、pHが7になるまで窒素/二酸化炭素混合気体(二酸化炭素比率50体積%)を流量1.6L/分で吹き込み、炭酸カルシウム(カルサイト)a-2のスラリーを得た。得られた炭酸カルシウムスラリーをブフナーロートで吸引ろ過し、炭酸カルシウムa-2の脱水ケーキを作成した。
【0205】
合成したa-1、a-2の脱水ケーキについて、窒素環境下で常温乾燥させ、BET比表面積、平均一次粒子径、(104)面の結晶子サイズを測定した。結果を表1に示す。
【0206】
【0207】
(a)成分の各BET比表面積は、吸着ガスを窒素ガスとして、全自動比表面積測定装置(全自動比表面積測定装置 Macsorb、株式会社マウンテック製)を用いて、BET法により測定した。
また(a)成分の各平均一次粒子径は、上記で測定したBET比表面積を用いて、以下の式より算出した。
d=6/(ρ×s)
d:平均粒子径(nm)
ρ:炭酸カルシウムの密度(2.71)
s:BET比表面積
【0208】
(a)成分の(104)面の結晶子サイズは、X線構造回折装置(卓上X線回折装置 MiniFlex600、株式会社リガク製))を用いて測定し、以下のScherrerの式を用いて算出した。
D=Kλ/(βcosθ)
D:結晶子サイズ(nm)
K:Scherrer定数
λ:測定X線の波長
β:測定対象のX線ピークの半値幅
θ:測定対象のX線ピークのBragg角
X線としてCuKα線を用いて測定し、CuKαの波長はλ=1.5406Åとする。またScherrer定数は0.9とし、カルサイトの(104)面のBragg角は14.657degとして計算した。またX線構造回折装置の測定条件は、高速一次元検出器を使用し、管電圧40kV、管電流15mV、ステップ幅0.02deg、ステップ速度10min/degで測定した。
【0209】
<(b)成分又は(b’)成分>
・b-1の合成
撹拌機付きガラス製反応容器にイオン交換水350.65gを仕込み、撹拌しながら窒素置換をし、窒素雰囲気中で80℃まで昇温した。(i)単量体(1b)としてメタクリル酸、及び単量体(2b)としてメタクリル酸(メトキシポリエチレングリコール120モル(平均付加モル数))エステル(以下、MEPEG(120)エステルという)を含む水溶液(水分量39.15質量%、メタクリル酸量2.97質量%、MEPEG(120)エステル量51.37質量%)512.49gと、メタクリル酸64.38gと、2-メルカプトエタノール7.98gとを混合溶解したもの、(ii)過硫酸アンモニウム5.55gをイオン交換水22.19gに溶解したもの、の2者を、それぞれ1.5時間かけて、前記容器内に滴下した。次に過硫酸アンモニウム4.44gをイオン交換水17.76gに溶解したものを30分かけて滴下し、その後、1時間同温度(80℃)で熟成した。熟成終了後に48%水酸化ナトリウム水溶液11.28gで中和し、重量平均分子量(Mw)44,000の共重合体(以下、共重合体b-1という)と水とを含む反応生成物を得た。この方法では、単量体(1b)及び単量体(2b)の合計に対する単量体(1b)の割合は、23.1質量%であった。また、単量体(1b)及び単量体(2b)の全量を滴下してから反応終了(熟成終了)までの反応媒体中の固形分濃度は40質量%であった。
【0210】
・b-2の合成
攪拌機付きガラス製反応容器にイオン交換水292.1g、単量体(2b)としてメタリルアルコール(ポリエチレングリコール50モル(平均付加モル数))エーテル431.6g、過酸化水素1.84gを仕込み、窒素雰囲気下で65℃に昇温した。そこへ(i)単量体(1b)としてアクリル酸69.1gとイオン交換水69.1gとの混合物、(ii)L-アスコルビン酸0.83gとイオン交換水82.5gとの混合物、(iii)3-メルカプトプロピオン酸3.01gをとイオン交換水18.0gとの混合物、の三者を、それぞれ反応容器内に3時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間引き続いて65℃に温度を維持し、熟成を行った。熟成終了後に48%水酸化ナトリウム水溶液31.94gを用いて反応溶液を中和し、重量平均分子量40,000の共重合体(以下、共重合体b-2という)と水とを含む反応生成物を得た。この方法では、単量体(1b)及び単量体(2b)の合計に対する単量体(1b)の割合は、11.5質量%であった。また、単量体(1b)の全量を滴下してから反応終了(熟成終了)までの反応媒体中の固形分濃度は50質量%であった。
【0211】
・b-3の合成
表2に記載の通り、単量体(1b)としてアクリル酸、及び単量体(2b)としてイソプレノール(ポリエチレングリコール50モル(平均付加モル数))エーテルを、単量体(1b)及び単量体(2b)の合計に対する単量体(1b)の割合、及び単量体(2b)の割合が表2に記載の値となるように調整した以外はb-2と同一の条件で合成を行い、共重合体b-3を得た。
【0212】
<(b’)成分((b)成分の比較成分)>
・b’-1の合成
表2に記載の通り、単量体(1b)としてメタクリル酸、及び単量体(2b)としてメタクリル酸(メトキシポリエチレングリコール120モル(平均付加モル数))エステルを、単量体(1b)及び単量体(2b)の合計に対する単量体(1b)の割合、及び単量体(2b)の割合が表2に記載の値となるように調整した以外はb-1と同一の条件で合成を行い、共重合体b’-1を得た。
【0213】
・b’-2の合成
表2に記載の通り、単量体(1b)としてアクリル酸、及び単量体(2b)としてイソプレノール(ポリエチレングリコール50モル(平均付加モル数))エーテルを、単量体(1b)及び単量体(2b)の合計に対する単量体(1b)の割合、及び単量体(2b)の割合が表2に記載の値となるように調整した以外はb-2と同一の条件で合成を行い、共重合体b’-2を得た。
【0214】
・b’-3の合成
攪拌機付きガラス製反応容器に、単量体(1b)としてイタコン酸52.0g及びイオン交換水101.1gを仕込み、窒素雰囲気下で100℃に昇温した。そこへ(i)単量体(1b)としてアクリル酸36.1gとイオン交換水9.0gとの混合物、(ii)単量体(2b)としてメタクリル酸(メトキシポリエチレングリコール23モル(平均付加モル数)))エステル111.2gとイオン交換水111.2gとの混合物、(iii)35質量%過酸化水素水溶液48.6g、の三者を、それぞれ反応容器内に3時間かけて滴下した。滴下終了後、10時間引き続いて100℃に温度を維持し、熟成を行った。熟成終了後に60℃以下まで冷却し、30%水酸化ナトリウム水溶液144.0gを用いて反応溶液を中和し、重量平均分子量65,000の共重合体(以下、共重合体b’-3という)と水とを含む反応生成物を得た。この方法では、単量体(1b)及び単量体(2b)の合計に対する単量体(1b)の割合は、44.2質量%であった。また、単量体(1b)及び単量体(2b)の全量を滴下してから反応終了(熟成終了)までの反応媒体中の固形分濃度は40質量%であった。
【0215】
【0216】
表2中、各(b)成分、(b’)成分について、各共重合体中のCOOH量(質量%)を示す。
共重合体中のCOOH量は、以下の式より算出する。
WCOOH=nCOOH×W1b×MCOOH/M1b
WCOOH:共重合体中のCOOM1及びCOOM2の合計質量%
nCOOH:単量体(1b)中のCOOM1及びCOOM2の合計数量
W1b:共重合体中の単量体(1b)の質量%(M1およびM2はHとして計算)
MCOOH:COOHの分子量(45として計算)
M1b:単量体(1b)の分子量(M1およびM2はHとして計算)
例えば、b-1では、共重合体中のCOOH量(質量%)は、nCOOHが、メタクリル酸のため1、W1bが23質量%、M1bがメタクリル酸の分子量である87であるため、以下のように計算される。
WCOOH=1×23×45/87≒12
【0217】
<(c)成分>
・c-1:ポリカルボン酸系重合体、マイテイ3000、花王(株)製
【0218】
・セメント:普通ポルトランドセメント(太平洋セメント(株)製と住友大阪セメント(株)製を質量比50/50で混合した物、比重3.16)
・水:上水道水(和歌山市上水、比重1.00)
・細骨材:山砂(京都市城陽産、表乾比重2.50)
【0219】
(1)水硬性組成物用早強剤の調製
(a)成分に、(b)成分又は(b’)成分、及びイオン交換水を、表3の含有量(残部がイオン交換水)となるように添加後、ホモジナイザーにて6000rpm、2分間攪拌を行い、水硬性組成物用早強剤の水分散液を調製した。
得られた各水硬性組成物用早強剤をレオメーター(Anton Paar社製 MCR-301 直径50mmパラレルプレート使用)にセットし、せん断速度20(1/秒)時の粘度を測定した。結果を表3に示す。
また得られた各水硬性組成物用早強剤を100mlバイアル管に100g投入後、20℃で1日間静置した。静置したバイアル管をゆっくりと傾けた際の流動性に関して、以下の指標で評価を行った。結果を表3に示す。
〇:液面が直ぐに動き、容易に流動する。
×:スラリーがゲル化しており、傾けても液面が動かず、流動しない。
【0220】
【0221】
表3中の(a)成分の含有量、及び(b)成分又は(b’)成分の含有量は、共に有効分である。
また早強剤8のせん断時粘度が「測定不可」としているのは、早強剤がケーキ状で粘度が高く、せん断速度20(1/秒)時の粘度を測定できなかった。
【0222】
(2)モルタルの調製
20℃±2℃に調整された試験室内にて、モルタルミキサー(株式会社ダルトン製 万能混合撹拌機 型式:5DM-03-γ)を用いて、表4に記載の配合量となるように、セメント(C)、細骨材(S)を投入し空練りをモルタルミキサーの低速回転(63rpm)にて10秒行い、表5に記載の含有量となるように調製した水硬性組成物用早強剤、及び(c)成分を含む練り水(W)を加えた。そして、モルタルミキサーの低速回転(63rpm)にて120秒間本混練りして、モルタルを調製した。
【0223】
【0224】
(3)モルタルフローの測定
JIS R5201の試験方法に従って、調製したモルタルのフローを測定した。結果を表5に示す。
【0225】
(4)型枠充填、養生
JIS A1132に基づき、円柱型プラモールド(底面の直径:5cm、高さ:10cm)の型枠に、2層詰め方式によりモルタルを充填し、表5に記載の所定の温度に調整された恒温槽(エスペック株式会社 PR-3J)にて封緘養生を行い、硬化させた。セメントに最初に練り水が接した時点を始点とし、表5に記載の所定の材齢に達した供試体を脱型し、強度試験用の供試体を得た。調製したモルタルごとに供試体を3個それぞれ作製した。
【0226】
(5)硬化強度の評価
作製した各供試体の圧縮強度をJIS A1108に基づき測定し、供試体3個の平均値を求めた。結果を表5に示す。
【0227】
【0228】
表5中、水硬性組成物用早強剤の含有量は、水硬性組成物中の水硬性粉体100質量部に対する含有量(質量部)を示し、(c)成分の含有量は、水硬性組成物中の水硬性粉体100質量部に対する含有量(質量部)を示した。
また表5中、実施例1~4、比較例1~2の圧縮強度については、比較例1を100とした場合の圧縮強度の相対比を示した。
【0229】
表3から、(b)成分として、単量体(1b)及び単量体(2b)の合計に対する単量体(1b)の割合が10質量%以上となる重合体を含有する水硬性組成物用早強剤は、せん断時の粘度が低く、輸送する際や水硬性組成物を調製する際の作業性に優れることがわかる。また表5から、(b)成分として単量体(1b)及び単量体(2b)の合計に対する単量体(1b)の割合が本発明の範囲となる重合体を含有する水硬性組成物用早強剤を水硬性組成物に添加した場合、モルタルの流動性が良好であり、圧縮強度に優れることが分かる。
【要約】
【課題】せん断時の粘度が低いことから輸送時や水硬性組成物調製時の作業性に優れ、且つ調製から例えば5~20時間後の水硬性組成物硬化体の強度を向上させる、水硬性組成物用早強剤及びその製造方法、並びに調製から例えば5~20時間後の水硬性組成物硬化体の強度が向上する、水硬性組成物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】下記(a)成分、(b)成分、及び水を含有する、水硬性組成物用早強剤組成物。
(a)成分:カルサイト
(b)成分:一般式(1b)で示される単量体(1b)と、一般式(2b)で示される単量体(2b)とを構成単量体として含み、全構成単量体中、単量体(1b)と単量体(2b)の合計量中の単量体(1b)の割合が、10質量%以上35質量%以下である、共重合体
【選択図】なし