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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】文具
(51)【国際特許分類】
   B43L 7/00 20060101AFI20240401BHJP
   B43K 29/00 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
B43L7/00 A
B43K29/00 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023194856
(22)【出願日】2023-11-16
【審査請求日】2023-11-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521250397
【氏名又は名称】河原 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】110004163
【氏名又は名称】弁理士法人みなとみらい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河原 陽一
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-112908(JP,A)
【文献】特開平06-106894(JP,A)
【文献】特開昭60-087097(JP,A)
【文献】特開2004-070210(JP,A)
【文献】特開2023-087150(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43L 1/00-12/02
B43L 15/00-27/04
B43K 1/00- 1/12
B43K 5/00- 8/24
B43K 21/00-21/26
B43K 24/00-24/18
B43K 27/00-27/12
B43K 29/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筆記具による筆記対象が積層される土台部と、前記土台部に移動可能に取付けられる移動体と、を備え、
前記土台部は、略直線状に延びる複数の磁極が所定の着磁ピッチでもって多極着磁された着磁面を有し、
前記移動体は、略板状体の移動体本体と、前記移動体本体に設けられ、前記着磁面に磁着する磁性体と、前記移動体本体に着脱可能に取付けられる被覆体と、を有し、
前記磁性体は、前記着磁面と略同一の着磁ピッチで着磁され、
前記移動体本体には、前記筆記具の先端側が挿通可能に構成された貫通孔が設けられ
前記被覆体は、前記貫通孔を覆って前記移動体本体に着脱可能に取付けられ、
前記被覆体には、前記貫通孔と連通し、前記筆記具の先端側が挿通可能に構成されたスリットが設けられ、
前記スリットは、平面視における面積が、前記貫通孔の平面視における面積よりも小さく、その全長が前記貫通孔に連通可能に構成されている、文具。
【請求項2】
前記被覆体は、前記スリットの延びる方向が、前記各磁極が延びる方向と略垂直方向となるように、前記移動体本体に取付け可能に構成されている、請求項1に記載の文具。
【請求項3】
前記被覆体は、略透明に構成されている、請求項2に記載の文具。
【請求項4】
前記スリットは、平面視で線対称となるように、複数配置されている、請求項2に記載の文具。
【請求項5】
前記土台部及び前記移動体は、可撓性素材により形成されている、請求項1に記載の文具。
【請求項6】
前記土台部には、その周縁から突設された舌片が設けられ、
前記舌片は、前記各磁極が延びる方向と略垂直方向に所定の長さを有している、請求項5に記載の文具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具と共に用いられる文具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、物品の収納や壁面の装飾、玩具としての応用等、磁石の性質を利用した製品が多種多様に展開されてきた。
【0003】
特に、特許文献1には、直線状に延びる異方性マグネットを、N極とS極とが交互に配置されるように隣接配置したシート体と、これに磁着され、同態様で異方性マグネットが配置された表示部と、を備える表示装置が記載されている。
【0004】
上記発明によれば、シート体の表面が無地であっても、複数の表示部を整列させて配置させることができる上、異方性マグネットが延びる方向に沿って、表示部をぶれずに摺動させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実用新案登録第3039710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、定規を用いて直線を描画する際、通常は、片方の手で定規を抑え、もう一方の手で筆記具を持つことで、描画が行われる。
このところ、例えば、荷物等で片手が塞がっている場合や、片手を負傷しているような場合には、定規を抑えることができず、綺麗な直線を描画する作業が困難となる。
【0007】
このことに関し、本発明の発明者は、上記した磁石の吸着力と着磁ピッチを利用することで、上記問題を解決できると考えた。
【0008】
本発明は上記のような実状に鑑みてなされたものであって、片手であっても、直線の描画を容易に行うことができ、利便性を向上させた文具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明は、筆記具による筆記対象が積層される土台部と、前記土台部に移動可能に取付けられる移動体と、を備え、
前記土台部は、略直線状に延びる複数の磁極が所定の着磁ピッチでもって多極着磁された着磁面を有し、
前記移動体は、略板状体の移動体本体と、前記移動体本体に設けられ、前記着磁面に磁着する磁性体と、を有し、
前記磁性体は、前記着磁面と略同一の着磁ピッチで着磁され、
前記移動体本体には、前記筆記具の先端側が挿通可能に構成された貫通孔が設けられている。
【0010】
本発明によれば、移動体は、磁性体により着磁面(各磁極)に磁着することで、各磁極の延びる方向に沿った摺動動作が可能となる。
そして、使用者は、筆記具の先端側を貫通孔に挿通させることで、この先端側を貫通孔に係止させ、筆記具で牽引するようにして、移動体を摺動させることができる。
【0011】
このため、使用者は、土台部と移動体との間に筆記対象が配置(挟持)された状態で、上記のように移動体を摺動させることで、貫通孔を介して筆記対象に当接した筆記具の先端で、直線を描画することができる。
このとき、移動体が土台部に磁着していることで、使用者は、筆記具を把持していない手で移動体を抑える必要が無く、片手での直線の描画が可能となる。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記移動体は、前記貫通孔を覆って前記移動体本体に着脱可能に取付けられる被覆体を有し、
前記被覆体には、前記貫通孔と連通し、前記筆記具の先端側が挿通可能に構成されたスリットが設けられ、
前記スリットは、平面視における面積が、前記貫通孔の平面視における面積よりも小さく、その全長が前記貫通孔に連通可能に構成されている。
【0013】
このような構成とすることで、使用者は、必要に応じて、移動体に被覆体を取付け、スリットを介して筆記対象に当接した筆記具の先端部(以下、単に先端部)で、直線を描画することができる。
このとき、スリットにより、筆記具の可動領域が制限されるため、不意の外力等により直線がぶれてしまうような事態を抑制し、安定した描画が可能となる。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記被覆体は、前記スリットの延びる方向が、前記各磁極が延びる方向と略垂直方向となるように、前記移動体本体に取付け可能に構成されている。
【0015】
このような構成とすることで、使用者は、先端部のサイズによっては、必要に応じて、筆記対象に対する先端部の位置を微調整することができる。
【0016】
本発明の好ましい形態では、前記被覆体は、略透明に構成されている。
【0017】
このような構成とすることで、使用者は、描画中に、筆記対象における先端部近傍の領域を視認することができる。
【0018】
本発明の好ましい形態では、前記スリットは、平面視で線対称となるように、複数配置されている。
【0019】
このような構成とすることで、使用者は、自身の利き手、或いは直線を描画したい方向に応じて、描画し易いスリットを選択して、直線を描画することができる。
【0020】
本発明の好ましい形態では、前記土台部及び前記移動体は、柔軟性を有している。
【0021】
このような構成とすることで、冊子における一頁を筆記対象とした際、この頁の湾曲に、土台部及び移動体が追従し、安定した描画が可能となる。
【0022】
本発明の好ましい形態では、前記土台部には、その周縁から突設された舌片が設けられ、前記舌片は、前記各磁極が延びる方向と略垂直方向に所定の長さを有している。
【0023】
このような構成とすることで、特に厚みのある冊子に本文具を用いる際、冊子の綴込み部分に舌片を差込むことで、土台部を筆記対象の下層に安定して保持することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、片手であっても、直線の描画を容易に行うことができ、利便性を向上させた文具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態に係る文具を示す図であって、(a)土台部を示す斜視図、(b)移動体を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る土台部を示す図であって、(a)分解斜視図、(b)平面図である。
図3】本発明の実施形態に係る移動体を示す図であって、(a)移動体本体及び磁着部の平面図等、(b)被覆体の平面図等である。
図4】本発明の実施形態に係る文具の使用方法の説明図である。
図5】本発明の実施形態に係る文具の使用方法の説明図である。
図6】本発明の実施形態に係る文具の使用方法の説明図である。
図7】本発明の実施形態に係る文具の使用方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図1図7を用いて、本発明の実施形態に係る文具について説明する。
なお、以下に示す実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の実施形態に限定するものではない。
また、これらの図において、符号Xは、本実施形態に係る文具を示す。
なお、以下に示す実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の各実施形態に限定するものではない。
【0027】
<構成>
以下、図1図3を用いて文具Xの構成について説明する。
なお、以下、説明の便宜上、図1に示すx軸方向を左右方向、y軸方向を上下方向と称することとする。
【0028】
図1図3に示すように、文具Xは、筆記具W(図5等参照)による筆記対象P(図4等参照)が積層される土台部1と、土台部1に移動可能に取付けられる移動体2と、を備えている。
【0029】
土台部1は、可撓性素材で形成されることで柔軟性を有する、略長方形のシート状体である。
また、土台部1は、特に図2に示すように、表側シート体11と、裏側シート体12と、着磁面Mが形成された着磁シート体13と、を有している。
【0030】
そして、表側シート体11と裏側シート体12で着磁シート体13を挟持するように、各構成が積層及び接着されることで、土台部1が形成されている。
なお、各構成は、例えば塩化ビニル等の樹脂素材が好適に用いられる。
【0031】
表側シート体11の表面には、複数のガイドラインgが設けられている。
【0032】
ガイドラインgは、表側シート体11の右方に、その長辺と略平行に一本、上方及び下方それぞれに、その短辺と略平行に一本設けられ、それぞれ、長辺及び短辺の全長に亘って延びている。
【0033】
裏側シート体12には、その左側長辺から突設された舌片tが設けられている。
【0034】
舌片tは、上下方向(即ち、後述する各磁極ms、mnが延びる方向と略垂直方向)に所定の長さを有している、略長方形状のシート状体である。
なお、舌片tは、表側シート体11や着磁シート体13に設けられていても良い。
【0035】
着磁シート体13における着磁面M(表側シート体11の裏面と対向する面)は、略直線状に延びる磁極ms、mnが、所定の着磁ピッチでもって多極着磁された面である。
なお、着磁ピッチとは、各磁極ms、mn間の距離、つまり、隣り合うS極とN極との間の距離のことをいう。
【0036】
詳述すれば、図2(b)に示すように、S極である磁極ms及びN極である磁極mnは、それぞれ、着磁シート体13の左右方向全長に亘って延びており、これらが、上下方向全長に亘って交互に配置されている。
また、これにより、隣接する各磁極ms、mnの境界線bは、略直線状(左右方向)に延びている。
【0037】
なお、着磁面Mは、摺動抵抗が大きくならないよう、表面を平滑に構成することが好ましい。
また、着磁面Mは、等方性マグネット、又はこれと比して吸着力の大きい異方性マグネットの何れで構成されていても良いが、後述する移動体2の摺動動作を行う観点から、等方性マグネットにより構成されることが好ましい。
さらに、境界線bは、図示した態様よりも太くして、隣接する磁極ms、mnの間隔がより大きくなるように構成しても良く、着磁ピッチは2.0mm~5.0mm程度とすることが好ましい。
【0038】
移動体2は、略板状体の移動体本体21と、移動体本体21に設けられ、着磁面Mに磁着する磁性体22と、複数のスリットSが設けられた被覆体23と、を有している。
【0039】
移動体本体21は、可撓性素材で形成されることで柔軟性を有している、略四角形状の薄板状体である。
また、移動体本体21の略中央には、筆記具Wの先端側が挿通可能に構成された貫通孔Tが設けられている。
なお、移動体本体21の素材としては、例えば塩化ビニルや可塑性エラストマー等の樹脂素材が好適に用いられる。
【0040】
貫通孔Tは、略四角形状の主貫通孔T1と、主貫通孔T1の上下に一対設けられ、主貫通孔T1と連接された、山なり状の副貫通孔T2と、により構成されている。
【0041】
磁性体22は、移動体本体21の上部に設けられた第一磁着部22aと、移動体本体21の下部に設けられた第二磁着部22bと、を含む。
【0042】
第一磁着部22aは、移動体本体21の周縁に沿うように、移動体本体21の裏面の上部に一対設けられている。
第二磁着部22bも、移動体本体21の周縁に沿うように、移動体本体21の裏面の下部に一対設けられている。
【0043】
なお、各第一磁着部22a及び各第二磁着部22bは、着磁面Mと同様に、摺動動作を行う観点から、等方性マグネットにより構成されることが好ましいが、大きな外力を要求される用途の場合等には、異方性マグネットにより構成されていても良い。
また、各第一磁着部22a及び各第二磁着部22bは、略長方形状の薄板状体であり、例えばラバーマグネットとして構成されることで、全体として柔軟性を有している。
このように、磁性体22が所定の厚みを有することにより、筆記対象Pと貫通孔Tとの間に所定の間隔が生じ、移動体本体21や被覆体23に付着したインク等が筆記対象Pに付着する事態が抑制される。
【0044】
ここで、特に図3(a-1)、(a-2)に示すように、各磁性体22は、正面視で各副貫通孔T2の裏面側端部を部分的に覆うように設けられている。
即ち、各磁性体22は、正面視で、副貫通孔T2を介して部分的に視認可能に設けられている。
【0045】
また、特に図3(a-2)、(a-3)に示すように、第一磁着部22a及び第二磁着部22bは、中央に所定の間隙を空けて、一対設けられており、移動体本体21におけるこの間隙部分に、上下方向に延びる切込みnが設けられている。
【0046】
さらに、特に図3(a-4)に示すように、磁性体22(各第一磁着部22a及び各第二磁着部22b)は、着磁面Mと略同一の着磁ピッチで、磁極ms、mnが着磁されている。
【0047】
なお、図3(a-1)は、移動体本体21(及び磁性体22)の平面図、図3(a-2)は、移動体本体21(及び磁性体22)の底面図、図3(a-3)は、移動体本体21(及び磁性体22)の側面図を、図3(a-4)は、着磁態様を示した磁性体22の拡大図を、それぞれ示している。
【0048】
被覆体23は、その厚みが移動体本体21よりも薄く、可撓性素材で形成されることで柔軟性を有している薄板状体であり、全体として略透明に構成されている。
また、被覆体23は、貫通孔Tを覆って移動体本体21に着脱可能に取付けられる。
詳述すれば、被覆体23は、貫通孔Tと略同一の外形状を呈しており、これにより、副貫通孔T2を部分的に覆っている各磁性体22に積層されるように、貫通孔Tに嵌合可能に構成されている。
なお、被覆体23の移動体本体21への着脱手段は、上記に限られず、例えば、被覆体23の裏面を移動体本体21の表面に貼付ける、互いに磁着させる、といった手段を用いても良い。
【0049】
ここで、被覆体23には、貫通孔Tと連通し、筆記具Wの先端側が挿通可能に構成された複数のスリットSが設けられている。
【0050】
スリットSは、平面視における面積が、貫通孔Tの平面視における面積よりも小さく、被覆体23を移動体本体21に取付けた状態において、その全長が貫通孔Tに連通可能に構成されている。
また、スリットSは、中央に配置されたスリットS(以下、第一スリットS1)と、左右に配置されたスリットS(以下、第二スリットS2)と、により構成されている。
【0051】
さらに、特に図3(b-1)、(b-2)に示すように、各スリットSは、平面視で線対称となるように配置されている。
詳述すれば、第一スリットS1は、被覆体23の中央から上下及び左右に一対、計4つ配置され、第二スリットS2は、左右の第一スリットS1の左方及び右方に一つずつ、計2つ配置されている。
【0052】
第一スリットS1は、上下方向に延びており、その略中央から左右方向に延びる小孔hが連接されており、これにより、第一スリットS1は、略十字形状を呈している。
また、第一スリットS1の全長は、一般的な蛍光ペンのペン幅が4mmであることを考慮し、後述する上下位置の微調整を行う観点から、6mm程度に設定しておくことが好ましい。
【0053】
第二スリットS2は、第一スリットS1と同様に、上下方向に延びており、第一スリットS1のような小孔hは連接されていない。
また、第二スリットS2の全長は、第一スリットS1よりもやや短く構成されており、例えば4mm程度に設定しておくことが好ましい。
【0054】
なお、図3(b-1)は、移動体本体21(及び磁性体22)の平面図、図3(b-2)は、(b-1)の拡大図を、それぞれ示している。
【0055】
<使用方法>
以下、図4図7を用いて文具Xの使用方法について説明する。
なお、図4図6においては、説明の便宜上、筆記対象Pを、独立した一枚のシート状体とする。
また、図4(b-2)は、(b-1)におけるQQ´線拡大断面模式図を示しており、着磁面M等の厚みについては、説明の便宜上、誇張して示している。
【0056】
まず、使用者は、図4(a)に示すように、被覆体23を貫通孔Tに嵌込む。
【0057】
このとき、被覆体23は、各副貫通孔T2に適合する上下の突出部が、各磁性体22に載置されるようにして、被覆体23が貫通孔Tに嵌込まれる。
このように、各副貫通孔T2及び各磁性体22の構成により、被覆体23が貫通孔T内に安定的に取付けられる。
【0058】
次に、使用者は、図4(b-1)に示すように、所望の筆記対象Pを土台部1(表側シート体11)に積層し、筆記具Wにより直線を描画したい所望の箇所に、移動体2を磁着させる。
これにより、特に図4(b-2)に示すように、筆記対象Pは、土台部1(表側シート体11)と移動体2(磁性体22)とにより挟持された態様となる。
なお、使用者は、各ガイドラインgを目安に、土台部1と筆記対象Pとの長辺及び短辺が略平行となるように、筆記対象Pの傾きを調整する。
【0059】
このとき、図4(b-2)に示すように、第一磁着部22a及び第二磁着部22bの磁極msは、それぞれ着磁面Mの磁極mnに磁着し、第一磁着部22a及び第二磁着部22bの磁極mnは、それぞれ着磁面Mの磁極msに磁着する。
【0060】
次に、使用者は、図5(a)に示すように、所望のスリットSに筆記具Wの先端側を挿通させる。
これにより、筆記具Wの先端部は、スリットS(及び貫通孔T)を介して、筆記対象Pに当接する。
なお、図5(a)において、各磁極ms、mnの境界線bを、仮想的に破線で示している。
【0061】
そして、使用者は、図5(b)に示すように、筆記具Wを、その先端側を小孔hに係止させ、移動体2を牽引するように、右方に移動させることで、左右方向に延びる直線Lを描画することができる。
【0062】
なお、使用者は、必要に応じて、筆記具Wにより移動体2を上方或いは下方に牽引することで、磁性体22が磁着する着磁面Mの磁極ms、mnを変え、移動体2の、土台部1に対しる上下方向の配置を変化させることができる。
【0063】
この場合、磁性体22を、それまで磁着していた磁極ms、mnから離す必要があるため、使用者は、左右方向の摺動と比較して大きな外力を加える必要がある。
また、移動体2の上方或いは下方への移動においては、所望の位置に磁着するにあたって、同極同士での反発力が生じた後、異極同士で磁着する、という過程を、一ないしは複数回経ることとなる。
そして、この一過程が、使用者にとって、自身の手に伝えられるクリック感として作用するため、このクリック感を得た回数に依拠して、直線同士の間隔を微調整することができ、等間隔の直線を引くことも容易に可能となる。
【0064】
ここで、図5では、筆記具Wとして、鉛筆やボールペンといった、先端側が円錐形状のものを想定しており、先端側を左側の第一スリットS1における小孔hに係止させ、直線Lを描画する例を示したが、使用する筆記具W等により、その使用態様は様々である。
【0065】
即ち、筆記具Wが蛍光ペンである場合、第一スリットS1の全長は、蛍光ペンのペン幅よりも長く構成されているため、使用者は、第一スリットS1に挿通された筆記具Wの先端側を、上下に数mm移動させることができる。
【0066】
このため、使用者は、図6(a)及び(b)に示すように、一の第一スリットS1の中で、描画される直線Lの上下位置を微調整することができる。
【0067】
図6(a)は、上側の第一スリットS1に、筆記具Wの先端側を挿通し、この先端側を第一スリットS1の内周面上部に押当てつつ、移動体2を牽引して、直線Lを描画している使用態様を示している。
図6(b)は、同様に上側の第一スリットS1に、筆記具Wの先端側を挿通し、この先端側を第一スリットS1の内周面上部に押当てつつ、移動体2を牽引して、直線Lを描画している使用態様を示している。
なお、使用者は、筆記具Wとして、鉛筆やボールペンといった、先端側が円錐形状のものを用いた場合でも、必ずしも小孔hに係止させる必要はなく、第一スリットS1による上下位置の微調整を行い、直線Lを描画しても良い。
【0068】
また、図6(c)に示すように、使用者は、筆記具Wの先端側を挿通させる第一スリットS1自体を変更することで、上下位置を大幅に調整できるし、図6(a)及び(b)に示した微調整も、他の第一スリットS1を用いて当然に行うことができる。
【0069】
また、図6(d)に示すように、使用者は、上下位置の微調整が不要であれば、筆記具Wの先端側を第二スリットS2に挿通させることで、直線Lの描画を安定的に行うことができる。
【0070】
また、図6(e)に示すように、使用者が左利きである等、右から左に筆記具Wを移動させた方が直線の描画が容易である場合、使用者は、筆記具Wの先端側を左方の第二スリットS2に挿通させることで、右から左への直線Lの描画を安定的に行うことができる。
なお、上記場合で、直線Lの上下位置を微調整したい場合には、使用者は、左方の第一スリットS1を用いれば良い。
【0071】
また、図6(f)に示すように、筆記具Wの先端部が大きい場合、使用者は、被覆体23を移動体本体21から取外し、貫通孔Tに筆記具Wの先端側を係止させることで移動体2を牽引し、直線Lを描画することができる。
なお、使用者は、必要に応じて、鉛筆やボールペン、蛍光ペン等を筆記具Wとした場合であっても、被覆体23を移動体本体21から取外して、直線を描画しても良い。
【0072】
ここで、文具Xは、図7(a)に示すように、複数頁から成る冊子Bの一頁を筆記対象Pとすることができる。
【0073】
即ち、使用者は、筆記対象Pとする一頁とこれの次頁との間に土台部1を配置し、図4(b)にて示したように、筆記具Wにより直線を描画したい所望の箇所に、移動体2を磁着させる。
このとき、使用者は、舌片tを冊子Bの綴込み部分に挿通・挟持させる。
【0074】
また、特に、冊子Bは、図7(a)に示すように、使用者が、筆記具Wを把持しない方の手(図においては左手)で下部を支えた場合、大きく湾曲するが、土台部1は、柔軟性を有しているため、この湾曲に追従して湾曲する。
そして、移動体2を図5図6に示した流れで移動させる際、移動体2は、図7(b)に示すように、切込みnにより、冊子Bの湾曲に追従して、滑らかに湾曲する。
これにより、筆記対象Pと移動体本体21(及び被覆体23)との間に、常に一定の空間を維持することができ、筆記対象Pへのインク等の付着を抑制できる。
【0075】
<主な効果>
本実施形態によれば、移動体2を土台部1に磁着させ、移動体2を各磁極ms、mnの延びる方向に摺動させることができるため、使用者は、筆記具Wを把持していない手で移動体2を抑える必要が無く、片手で、貫通孔Tを介して直線の描画が可能となる。
【0076】
また、被覆体23に設けられたスリットSにより、筆記具Wの可動領域が制限されるため、不意の外力等により直線がぶれてしまうような事態を抑制し、安定した描画が可能となる。
【0077】
また、被覆体23が、スリットSが上下方向に延びるように、移動体本体21に取付けられることで、使用者は、必要に応じて、筆記対象Pに対する筆記具Wの先端部の上下位置を微調整することができる。
【0078】
また、被覆体23が略透明に構成されていることで、使用者は、描画中に、筆記対象Pにおける筆記具Wの先端部近傍の領域を視認することができる。
【0079】
また、スリットSが平面視で線対称となるように複数配置されていることで、使用者は、自身の利き手等に応じて、描画し易いスリットSを選択して、直線を描画することができる。
【0080】
また、土台部1及び移動体2が柔軟性を有していることで、冊子Bにおける一頁を筆記対象Pとした際、この頁の湾曲に、土台部1及び移動体2が追従し、安定した描画が可能となる。
【0081】
また、舌片tにより、冊子Bの綴込み部分にこの舌片tを差込むことで、土台部1を筆記対象Pの下層に安定して保持することができる。
【0082】
なお、出願書類中の「略」は、その後に続く形状に面取りや丸め加工がなされていること、また形状を構成する要素がその形状の目的を阻害しない範囲内で変形や長さ変更されているものを含むことを意味する概念である。
また、上述の実施形態において示した各構成部材の諸形状や寸法等は一例であって、設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0083】
例えば、着磁面Mの着磁ピッチは、利用目的に応じて適宜設定可能であるし、これに応じて、磁性体22(第一磁着部22a及び第二磁着部22b)の着磁ピッチも適宜変更され得る。
また、スリットSの数や全長、配置態様について、設計者の意図等に合わせて、柔軟に変更可能である。
【符号の説明】
【0084】
X 文具
1 土台部
11 表側シート体
12 裏側シート体
13 着磁シート体
M 着磁面
ms、mn 磁極
b 境界線
2 移動体
21 移動体本体
T 貫通孔
22 磁性体
23 被覆体
S スリット
W 筆記具
P 筆記対象
B 冊子
【要約】
【課題】片手であっても、直線の描画を容易に行うことができ、利便性を向上させた文具を提供する。
【解決手段】筆記具Wによる筆記対象Pが積層される土台部1と、土台部1に移動可能に取付けられる移動体2と、を備え、土台部1は、略直線状に延びる複数の磁極ms、mnが所定の着磁ピッチでもって多極着磁された着磁面Mを有し、移動体2は、略板状体の移動体本体21と、移動体本体21に設けられ、着磁面Mに磁着する磁性体22と、を有し、磁性体22は、着磁面Mと略同一の着磁ピッチで着磁され、移動体本体21には、筆記具Wの先端側が挿通可能に構成された貫通孔Tが設けられている。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7