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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】放熱フィンの形成方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20240401BHJP
   B21D 53/08 20060101ALI20240401BHJP
   H05K 7/20 20060101ALN20240401BHJP
【FI】
H01L23/36 Z
B21D53/08 K
H05K7/20 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021063803
(22)【出願日】2021-02-12
(65)【公開番号】P2022123805
(43)【公開日】2022-08-24
【審査請求日】2023-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】317000821
【氏名又は名称】株式会社カスタム・クール・センター
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 政晴
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-121671(JP,A)
【文献】特開2018-183859(JP,A)
【文献】特開2001-127201(JP,A)
【文献】特開2019-169691(JP,A)
【文献】特開2007-123547(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0163749(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/36
B21D 53/08
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板と掘り起こし工具とを所定の角度を有した状態で相対移動させ、前記掘り起こし工具の刃部により上記金属板を掘り下げて、板状の放熱フィンを一体に起立形成する掘り起こし工程を順次繰り返し、前記金属板に複数の前記放熱フィンを連続して形成する放熱フィンの形成方法であって、
前記金属板の所定位置には、予め、前記掘り起こし工具の進行方向に至るに従って深くした傾斜面を有するテーパ溝を形成し、前記テーパ溝の上流側から、前記金属板と前記掘り起こし工具とを相対移動させ、前記掘り起こし工具により前記金属板を掘り起こすことにより板状の前記放熱フィンを一体に起立形成し、その後前記掘り起こし工程を順次繰り返して前記金属板に複数の前記放熱フィンを連続して形成することを特徴とする放熱フィンの形成方法。
【請求項5】
前記掘り起こし工具の刃部を予め形成された前記テーパ溝の上流側に当接させた後、前記テーパ溝の傾斜に沿って、上記金属板と上記掘り起こし工具とを相対移動させ、上記金属板を掘り起こすことにより板状の上記放熱フィンを一体に起立形成した請求項1乃至4のいずれかに記載の放熱フィンの形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電子部品等から生ずる熱を放熱するための放熱器の板状の放熱フィンを掘り起こし工具によって形成する放熱フィン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体集積回路等の電子部品から生ずる熱を放熱するために、従来一般に実用に供されている放熱器は、ベース上に多数の櫛歯状の放熱フィンを立設している。この放熱器を電子部品等に直接又は間接的に接合することによって、放熱器の放熱フィンを介して外方に放熱するようにしている。この放熱器は、通常、アルミニウムからなる熱伝導率が良好な金属材を、押し出し加工や鋳造加工を施すことによって製造されている。
【0003】
また、掘り起こし工具を用いて放熱フィンを形成する放熱器の製造方法は、特開2001-156224(特許文献1)や特開2005-142247号公報(特許文献2)に開示されている。特許文献1に示された放熱器の製造方法は、基板部の上面側に突提状のフィン形成用被削部が形成されたアルミニウム合金押出形材からなるヒートシンク素材が用いられ、上記フィン形成用被削部をバイト等の切削工具を用いて掘り起こし、それによって複数のフィンが形成される。
【0004】
この特許文献1及び2に示されるように、掘り起こし工具を用いて形成される放熱フィンは、基板部の一端側から掘り起こし工具によって順次形成している。このため、効果的に放熱しなければならない電子部品の位置と放熱フィンの位置が離間して、電子部品から生ずる熱が放熱できない問題がある。
【0005】
このような問題を解決するために、特開2009-32755号公報(特許文献3)には、金属板の一端側よりも離間した所定位置に掘り起こし工具を挿入し、まず、掘り起こし工具の刃部が所定の深さに達するまで複数枚の小形フィンを順次形成し、その後、小形フィンに続き、掘り起こし工具により板状の放熱フィンを形成するフィン形成工程を順次繰り返し、金属板に複数の放熱フィンを連続して形成することが示されている。この特許文献3に開示した方法によれば、基板の所定位置に配設された電子部品に対応して放熱フィンを形成ことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-156224号公報
【文献】特開2005-142247号公報
【文献】特開2009-32755号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献3に開示された放熱器の製造方法は、放熱を要する電子部品に対応させて放熱することが可能となるので、放熱効率の向上に寄与できる。しかしながら、所定の位置に放熱フィンを形成するために、掘り起こし工具の刃部が金属板の所定の深さに達するまで複数枚の小形フィンを順次形成している。ところが、この小形フィンを形成するときに、各小型フィンの間隔が小さくなることから、形成時に使用する切削油や粉塵が侵入し、また、その後放熱器を使用する際にも粉塵等が侵入し、排除が困難になる。この結果、残存した粉塵等により、放熱効率を低下させる原因となる他、場合によっては発火して電子部品等を焼失させる問題が生ずる。
【0008】
そこで、本発明の課題は、金属板の任意の位置に、複数枚の放熱フィンを容易に形成することができる放熱フィンの形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明にかかる放熱フィンの形成方法は、金属板と掘り起こし工具とを所定の角度を有した状態で相対移動させ、前記掘り起こし工具の刃部により上記金属板を掘り下げて、板状の放熱フィンを一体に起立形成する掘り起こし工程を順次繰り返し、前記金属板に複数の前記放熱フィンを連続して形成する放熱フィンの形成方法であって、前記金属板の所定位置には、予め、前記掘り起こし工具の進行方向に至るに従って深くした傾斜面を有するテーパ溝を形成し、前記テーパ溝の上流側から、前記金属板と前記掘り起こし工具とを相対移動させ、前記掘り起こし工具により前記金属板を掘り起こすことにより板状の前記放熱フィンを一体に起立形成し、その後前記掘り起こし工程を順次繰り返して前記金属板に複数の前記放熱フィンを連続して形成することを要旨としている。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記金属板に形成する前記テーパ溝は、先端を前記テーパ溝のテーパ角に形成するとともに、前記掘り起こし工具の刃部の幅と同寸法以上の幅のパンチを前記金属板の一方面に押圧して凹溝状に形成する。
【0011】
さらに、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記金属板に形成する前記テーパ溝は、先端を前記テーパ溝のテーパ角に形成するとともに、前記掘り起こし工具の刃部の幅と同寸法以上の幅のパンチを前記金属板の一方面に押圧し、前記テーパ溝の最深側を前記金属板の他方面から突出させた半抜き加工により形成する。
【0012】
さらにまた、請求項4に記載の発明は、請求項2及び3に記載の発明において、前記金属板に形成する前記テーパ溝は、最深部の深さを前記金属板の板厚よりも小さくし、前記金属板の他方面側で連通させるように形成する。
【0013】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明において、前記掘り起こし工具の刃部を予め形成された前記テーパ溝の上流側に当接させた後、前記テーパ溝の傾斜に沿って、上記金属板と上記掘り起こし工具とを相対移動させ、上記金属板を掘り起こすことにより板状の上記放熱フィンを一体に起立形成する。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかる放熱フィンの形成方法によれば、金属板の所定位置に、予め、傾斜面を有するテーパ溝を形成するので、その後、テーパ溝の傾斜面に沿って掘り起こし工具を相対移動させ、金属板を掘り起こすことにより板状の放熱フィンを一体に起立形成することができる。このとき、テーパ溝を形成しているので、当初から所定の高さの放熱フィンを形成することが可能であり、次に形成される放熱フィンとの間を所定の間隔に大きくすることができるので、粉塵等が侵入しても容易に排除することが可能なことから、放熱効率の低下を防止することが可能となる。また、テーパ溝の傾斜面に沿って掘り起こし工具により放熱フィンを形成することから、スクラップが発生しないので、微小なフィンが飛散または油等により吸着することを未然に防止することが可能となる。
【0015】
また、先端をテーパ溝のテーパ角に形成したパンチを使用して金属板の一方面に押圧することにより、凹溝状のテーパ溝を容易に形成することができる。このテーパ溝の幅を掘り起こし工具の刃部の幅と同寸法以上に設定するならば、容易に放熱フィンを容易に形成することができる。
【0016】
さらにまた、先端をテーパ溝のテーパ角に形成したパンチにより金属板の一方面から押圧してテーパ溝を形成し、このテーパ溝の最深側を金属板の他方面から突出させた半抜き加工により形成すると、パンチの押圧によって金属板の肉を金属板の他方面側に逃がすことができることから、金属板及びテーパ溝にストレスを与えることなく形成することが可能となる。
【0017】
また、金属板に形成するテーパ溝の最深部の深さを、金属板の板厚よりも小さくし、前記金属板の他方面側で連通させるように形成しているので、掘り起こし工具の刃部によって最初の放熱フィンを形成したとき、放熱フィンの基部を金属板から離脱すること無く形成することができる。
【0018】
また、掘り起こし工具の刃部を予め形成されたテーパ溝の上流側に当接させた後、テーパ溝の傾斜に沿って、金属板と掘り起こし工具とを相対移動させて金属板を掘り起こすことにより、最初から板状の放熱フィンを所定の高さに一体に起立形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】 本発明にかかる放熱フィン形成方法の一例を示す側面図である。
図2】 フィン起こしブロックの動作を示す説明図である。
図3】 放熱フィン形成装置によって形成される放熱器を示す斜視図である。
図4】 (A)(B)は、テーパ溝を形成する第1の実施例を示す側面図である。
図5】 (A)乃至(E)は、第1の実施例における前段の放熱フィンの形成工程を示す説明図である。
図6】 (A)乃至(D)は、後段の放熱フィンの形成工程を示す説明図である。
図7】 (A)(B)は、テーパ溝を形成する第2の実施例を示す側面図である。
図8】 (A)乃至(E)は、第2の実施例における前段の放熱フィンの形成工程を示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明にかかる放熱フィン形成方法は、金属板と掘り起こし工具とを所定の角度を有した状態で相対移動させ、前記掘り起こし工具の刃部により上記金属板を掘り下げて、板状の放熱フィンを一体に起立形成する掘り起こし工程を順次繰り返し、前記金属板に複数の前記放熱フィンを連続して形成する放熱フィンの形成方法であって、前記金属板の所定位置には、予め、前記掘り起こし工具の進行方向に至るに従って深くした傾斜面を有するテーパ溝を形成し、前記テーパ溝の上流側から、前記金属板と前記掘り起こし工具とを相対移動させ、前記掘り起こし工具により前記金属板を掘り起こすことにより板状の前記放熱フィンを一体に起立形成し、その後前記掘り起こし工程を順次繰り返して前記金属板に複数の前記放熱フィンを連続して形成する。
【0021】
以下、図面を参照して、本発明による放熱フィンの形成方法について詳細に説明する。図1は、本発明による放熱フィンを形成するための形成装置を示している。移動部1は、図示しない駆動装置に取り付けられていて、後述する金属板7の平面に対して所定の角度θを保持した状態で進退する。この移動部1の移動方向(図示右側方向)の先端側には、掘り起こし工具2が取り付けられ、移動方向の先端側には刃部2aが形成されている。この刃部2aの幅は、図3に示すように、金属板7の幅よりも小さく設定されている。この刃部2aの幅は、後述する放熱フィン6の幅に応じて適宜設定される。
【0022】
移動部1には、掘り起こし工具2と一体にフィン起こしブロック3が配設されている。このフィン起こしブロック3には、前進側の上部を突出させた突出部3aが形成され、移動部1の進退移動方向に対して直行した方向に透孔3bが形成されている。この透孔3bには可動押圧板4が移動可能に配設されている。可動押圧板4には段部4aが形成され、透孔3bの内部に形成されたストッパーとしての段部3cに当接するようにしている。そして、透孔3b内の段部3cに可動押圧板4には段部4aが当接したとき、可動押圧板4の最下点となるように設定されている。可動押圧板4の下方の先端は、後述する放熱フィンとの接触を防止するようにナイフ状に形成されている。また、可動押圧板4の幅は、図3に示すように、後述する放熱フィン6の幅とほぼ同じに形成している。
【0023】
可動押圧板4は、常時は下方に向けて垂下させ、フィン起こしブロック3のストッパーとしての段部3cに段部4aが当接するようにバネ5によって付勢している。一方、可動押圧板4は、図2に示すように上昇が許容され、その上昇可能な寸法Lは、後述する放熱フィン6の頂部を越えることができる寸法にしている。この可動押圧板4は、合成樹脂材または金属材で形成され、特に放熱フィン6に摺接する部分は円滑にしている。可動押圧板4を合成樹脂材で形成した場合には、軽量のためバネ5により付勢することができ、金属材で形成した場合には、自重により垂下させることができる。
【0024】
なお、可動押圧板4は、移動部1の進退移動方向に対して直行した方向に移動するように配設しているが、この角度は、例えば、掘り起こし工具2の刃部2aから上面に傾斜した摺接面2bと約60度に設定されている。これは、後述する放熱フィンに不可を与えないような角度が望ましく、概ね45度~70度の範囲に設定される。
【0025】
一方、掘り起こし工具2には、刃部2aから上面に傾斜した摺接面2bが形成されている。この摺接面2bは、放熱フィン6を掘り起こし形成する際に抵抗にならないように摩擦係数を低くしている。このように、摺接面2bの摩擦を小さくすることにより、放熱フィン6を掘り起こし形成するときに、摺接面2bの抵抗を受けることなく金属板7が摺接面2bに沿って摺接するので、平坦な板状の放熱フィン6を起立形成することが可能となる。また、移動部1及び掘り起こし工具2の傾斜角度θは、後述する放熱フィン6の高さ、板厚、或いは、金属板7の材質等によって適宜に設定されるが、概ね5度から20度に設定されている。なお、上記掘り起こし工具2の幅方向両側はほぼ直角に形成されているが、刃部2aが形成されている底面側の両側を底面に至るに従って幅狭となるテーパ状、或いは円弧状に形成しても良い。
【0026】
次に、図4乃至図6を参照して、上述した放熱フィン形成装置により、放熱フィンの形成方法の第1の実施例について説明する。図3に示す放熱器10として使用される金属板7は、塑性加工が可能であり、しかも熱伝導率が良好な金属素材として、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金、銅合金あるいはステンレス鋼等の素材により形成された、所定の板厚を有する素材が使用される。
【0027】
まず、放熱フィン6を起立形成する金属板7の一方面7aには、図4に示すように、予め、テーパ溝71を形成する。このテーパ溝71の位置は、例えば放熱を必要とする電子部品等の発熱体に対応した任意の位置に形成する。
【0028】
テーパ溝71は、図4(B)に示すように、上流側には垂直面が形成され、下流側には所定のテーパ角とした傾斜面が形成された凹溝状に形成している。そして、下流側の最深部71aの深さは金属板7の板厚よりも小さくし、金属板の他方面側7bを連通させている。このテーパ溝71は、先端をテーパ溝71のテーパ角に形成するとともに、掘り起こし工具2の刃部2aの幅と同寸法以上の幅のパンチ9を金属板7の一方面7aに押圧して凹溝状に形成する。このようにパンチ9を押圧することにより、金属板7の肉がテーパ溝71の傾斜面方向に移行し、一方面7aに隆起した膨出部71bが形成される。一方、金属板7の他方面7bは、テーパ溝71の形成によって膨出することはなく、平坦な状態が維持されている。
【0029】
このようにテーパ溝71を形成した後、図5(A)に示すように、掘り起こし工具2を所定の角度θとした状態で矢示の方向に移動して、テーパ溝71の下流側に隆起した膨出部71bに当接する。その後、掘り起こし工具2を移動し、図5(B)に示すように、膨出部71bを切削する。このとき、小さなスクラップSが切除されるが、テーパ溝71の上流側が開放されているので、スクラップSは速やかに排出される。
【0030】
次いで、掘り起こし工具2を後退させた後、金属板2に当接させる。この当接位置は、放熱フィン6が所定の板厚となるように設定される。そして、図5(C)に示すように、掘り起こし工具2の傾斜角度を保ちながら所定の深さに達するまで前進移動させることにより、所定の高さを有する平面状の放熱フィン6が起立形成される。このとき、放熱フィン6は金属板2に対して傾斜し、この角度は、掘り起こし工具2の摺接面と同じ角度となる。
【0031】
その後、掘り起こし工具2を、図5(D)に示すように、次の放熱フィン6を起立形成するために後退させると、垂下している可動押圧板4の下端が、事前に形成された傾斜した放熱フィン6の先端側によって上昇し、その後先端側から離脱したときに下降する。そして、図5(E)に示すように、掘り起こし工具2を次の放熱フィン6が所定の板厚となる位置まで後退した後、掘り起こし工具2の傾斜角度を保ちながら所定の深さに達するまで前進移動させることにより、所定の高さを有する平面状の次の放熱フィン6が起立形成される。
【0032】
その後、次の放熱フィン6を起立形成するとき、図6(A)に示すように、垂下している可動押圧板4の下端が、事前に形成された傾斜した放熱フィン6の先端側に当接し、掘り起こし工具2と一体に前進移動すると、事前に形成された傾斜した放熱フィン6を押圧し、図6(B)に示すように、次の放熱フィン6を起立形成した工程中に、事前に形成された放熱フィン6が、金属板7の平面に対して垂直に形成される。
【0033】
次いで、さらに次の放熱フィン6を起立形成するために、移動部1によって掘り起こし工具2とフィン起こしブロック3を後退させると、前述した図5(D)に示すように、さらに次に形成された傾斜した放熱フィン6の斜面を可動押圧板4の下端が摺接し、可動押圧板4の自重またはバネ5の押圧力に抗し、放熱フィン6により上昇する。そして、可動押圧板4の下端が放熱フィン6の先端を乗り越えた後に、可動押圧板4が垂下して元の状態に復帰する。そして、移動部1とともに掘り起こし工具2とフィン起こしブロック3は、図5(E)の状態に復帰し、1枚の垂直な放熱フィン6の起立形成工程が終了し、さらに次の垂直な放熱フィン6の起立形成工程に移行される。その後、放熱フィン6の形成工程を繰り返すことにより、図3に示すような、金属板7に対して垂直な複数の放熱フィン6を形成した放熱器10が製造される。
【0034】
図7及び図8は、本発明による放熱フィンの形成方法の第2の実施例を示している。この第2の実施例において、図1に示す放熱フィンを形成するための形成装置としては同様であり、詳細な説明は省略する。また、前述した第1の実施例と相違することは、放熱フィン6を起立形成するとき、事前に金属板7の一方面7aに形成するテーパ溝72であり、テーパ溝72を形成した後の放熱フィンを形成する工程についてはほぼ同様としているので、この放熱フィン形成工程についても、詳細な説明は省略する。
【0035】
本発明の第2の実施例において、金属板7に予め形成するテーパ溝72は、図7(B)に示すように、上流側には垂直面が形成され、下流側には所定のテーパ角とした傾斜面が形成された凹溝状に形成している。そして、下流側の最深部72aの深さは金属板7の板厚よりも小さくし、金属板の他方面側7bを連通させている。さらに、金属板7の他方面7bには傾斜した突堤部71bが形成されている。
【0036】
このテーパ溝72は、図7(A)に示すように、先端をテーパ溝71のテーパ角に形成するとともに、掘り起こし工具2の幅と同寸法以上の幅のパンチ9を金属板7の一方面7aから押圧するとともに、金属板7が他方面まで突出するように半抜き加工を施すことにより、金属板7の一方面7aには、所定のテーパ角とした傾斜面が形成された凹溝状のテーパ溝72が形成され、金属板7の一方面7bには、半抜き加工によって傾斜した突堤部71bが形成される。また、このように形成されたテーパ溝72の傾斜面の角度は、前述した放熱フィン6を起立形成するために用いる掘り起こし工具2の傾斜角度と同じにすることが望ましい。なお、このテーパ溝72を形成する位置は、前述した第1の実施例と同様に、例えば放熱を必要とする電子部品等の発熱体に対応した任意の位置に形成する。
【0037】
このように、テーパ溝72を形成した後、放熱フィン6の起立工程に移行する。まず、図8(A)に示すように、掘り起こし工具2を所定の角度θとした状態で、放熱フィン6が所定の板厚となる上流側の位置に刃部2aを当接させる。そして、図8(B)に示すように、掘り起こし工具2の傾斜角度を保ちながら所定の深さに達するまで前進移動させることにより、所定の高さを有する平面状の放熱フィン6が起立形成される。テーパ溝72の傾斜面の角度を掘り起こし工具2の傾斜角度と同じにするならば、最初の放熱フィン6が起立形成するときにスクラップは生じない。
【0038】
その後、掘り起こし工具2を、図8(C)に示すように、次の放熱フィン6を起立形成するために後退させると、垂下している可動押圧板4の下端が、事前に形成された傾斜した放熱フィン6の先端側によって上昇し、その後先端側から離脱したときに下降する。そして、図8(D)に示すように、掘り起こし工具2を次の放熱フィン6が所定の板厚となる位置まで後退する。その後、次の放熱フィン6を起立形成し、以後、図6(A)(B)に示す放熱フィン形成工程を順次繰り返すことにより、図3に示すような、金属板7に対して垂直な複数の放熱フィン6を形成した放熱器10が製造される。
【0039】
以上、本発明を実施例に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、金属板として、板状の熱伝導率が良好なアルミニウムや銅等の金属素材の他に、加工が施された或いは後加工が施される、例えば、上記金属素材をコアとするプリント配線基板、発光素子等の発熱を放熱するために金属製保持部材、放熱機能を必要とする筐体等の一部に放熱フィンを形成するようにしても良い。また、前述した各実施例において、垂直な放熱フィンを起立形成するための方法を例示したが、周知の放熱フィンの形成方法により、傾斜した、或いは、カーリングした放熱フィンを形成しても良い。さらに、複数の放熱フィンを金属板の一端に対して平行に形成したが、所定の角度で形成するようにしても良く、さらには、複数のフィン群を形成するとき、第1のフィン群と第2のフィン群を互いに直行させる等、形成角度を適宜に異ならせて形成しても良い。
【符号の説明】
【0040】
1 移動部
2 掘り起こし工具
2a 刃部
6 放熱フィン
7 金属板
71 テーパ溝
9 パンチ
10 放熱器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8