(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】圧電振動子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H03H 9/02 20060101AFI20240401BHJP
H03H 3/02 20060101ALI20240401BHJP
H01L 23/24 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
H03H9/02 A
H03H3/02 B
H01L23/24
(21)【出願番号】P 2021117396
(22)【出願日】2021-07-15
【審査請求日】2023-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【氏名又は名称】佐藤 睦
(72)【発明者】
【氏名】松村 威哉
【審査官】志津木 康
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-218375(JP,A)
【文献】国際公開第2009/072351(WO,A1)
【文献】特開平11-261364(JP,A)
【文献】特開平09-246867(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/54-23/26
H03H3/007-3/10
H03H9/00-9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電片及び前記圧電片に電圧を印加可能に構成された励振電極を有する圧電振動素子と、
前記圧電振動素子が搭載されたベース部材と、
前記圧電振動素子と前記ベース部材とを電気的に接続する導電性保持部材と、
前記ベース部材との間に設けられた内部空間に前記圧電振動素子を収容する蓋部材と、
前記ベース部材と前記蓋部材とを接合する接合部材と、
を備え、
前記内部空間において、前記ベース部材及び前記蓋部材の少なくとも一方には、前記内部空間に存在する異物を被覆するための樹脂膜の供給源となる樹脂部材が設けられ
、
平面視において、前記樹脂部材は、前記圧電振動素子の外側の領域に設けられ、
前記樹脂部材は、複数の樹脂片を含む、
圧電振動子。
【請求項2】
平面視において、前記複数の樹脂片は、前記圧電振動素子の周囲に均等に配置されている、
請求項
1に記載の圧電振動子。
【請求項3】
平面視において、前記複数の樹脂片の少なくとも1つは、前記圧電振動素子における前記導電性保持部材とは
前記励振電極を挟んで反対側に設けられている、
請求項
1又は2に記載の圧電振動子。
【請求項4】
平面視において、前記樹脂部材は、前記圧電振動素子の少なくとも一部を囲むL字状、U字状又は枠状に設けられている、
請求項
1に記載の圧電振動子。
【請求項5】
前記樹脂部材は、前記接合部材から離間している、
請求項1から
4のいずれか1項に記載の圧電振動子。
【請求項6】
前記圧電振動素子は、前記圧電片として水晶片を用いる水晶振動素子である、
請求項1から
5のいずれか1項に記載の圧電振動子。
【請求項7】
ベース部材を準備することと、
蓋部材を準備することと、
前記ベース部材及び前記蓋部材の少なくとも一方に樹脂部材を設けることと、
前記ベース部材に圧電振動素子を搭載することと、
前記ベース部材及び前記蓋部材の一方に他方を搭載することと、
前記ベース部材と前記蓋部材との間の内部空間に収容された前記樹脂部材を供給源として、前記内部空間に存在する異物を被覆するために樹脂膜を形成することと、
を含
み、
平面視において、前記樹脂部材は、前記圧電振動素子の外側の領域に設けられ、
前記樹脂部材は、複数の樹脂片を含む、
圧電振動子の製造方法。
【請求項8】
前記ベース部材と前記蓋部材との接合部材を加熱する第1加熱処理と、
前記樹脂部材を供給源として前記樹脂膜を形成する第2加熱処理と
を含む、
請求項
7に記載の圧電振動子の製造方法。
【請求項9】
前記第1加熱処理と前記第2加熱処理とは、同一加熱処理である、
請求項
8に記載の圧電振動子の製造方法。
【請求項10】
前記第1加熱処理と前記第2加熱処理とは、異なる加熱処理である、
請求項
8に記載の圧電振動子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
移動通信端末、通信基地局、家電などの各種電子機器において、タイミングデバイス、センサ、発振器などの様々な用途に圧電振動子が用いられている。
【0003】
圧電振動子の一例として、特許文献1には、矩形状の基板と、基板の上面の外周縁に沿って設けられた枠体と、基板の上面に設けられた電極パッドと、電極パッドに実装された水晶素子と、水晶素子を気密封止するための蓋体と、基板の上面に設けられた粘着層とを備える水晶デバイスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の水晶デバイスによれば、基板の上面に設けた粘着層に異物を付着させることができるため、水晶素子の直下の異物が水晶素子へ付着することによって生じ得る周波数変動が抑制される。しかしながら、例えば、水晶素子に付着した異物が基板の粘着層以外の領域又は蓋体に飛散した場合や、異物が蓋体に付着している場合等には、異物を補足することが困難であり、水晶素子への異物の着脱によって周波数変動が生じる場合があった。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、周波数変動が抑制可能な圧電振動子及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る圧電振動子は、圧電片及び圧電片に電圧を印加可能に構成された励振電極を有する圧電振動素子と、圧電振動素子が搭載されたベース部材と、圧電振動素子とベース部材とを電気的に接続する導電性保持部材と、ベース部材との間に設けられた内部空間に圧電振動素子を収容する蓋部材と、ベース部材と蓋部材とを接合する接合部材と、を備え、内部空間において、ベース部材及び蓋部材の少なくとも一方には、内部空間に存在する異物を被覆するための樹脂膜の供給源となる樹脂部材が設けられている。
【0008】
本発明の他の一態様に係る圧電振動子の製造方法は、ベース部材を準備することと、蓋部材を準備することと、ベース部材及び蓋部材の少なくとも一方に樹脂部材を設けることと、ベース部材に圧電振動素子を搭載することと、ベース部材及び蓋部材の一方に他方を搭載することと、ベース部材と蓋部材との間の内部空間に収容された樹脂部材を供給源として、内部空間に存在する異物を被覆するために樹脂膜を形成することと、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、周波数変動が抑制可能な圧電振動子及びその製造方法が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る水晶振動子の構成を概略的に示す分解斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る水晶振動子の構成を概略的に示す断面図である。
【
図3】第1実施形態に係るベース部材及び水晶振動素子の構成を概略的に示す平面図である。
【
図4】第1実施形態に係る水晶振動子の製造方法を概略的に示すフローチャートである。
【
図5】第2実施形態に係る水晶振動子の構成を概略的に示す断面図である。
【
図6】第3実施形態に係るベース部材及び水晶振動素子の構成を概略的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。各実施形態の図面は例示であり、各部の寸法や形状は模式的なものであり、本願発明の技術的範囲を当該実施形態に限定して解するべきではない。
【0012】
各々の図面には、各々の図面相互の関係を明確にし、各部材の位置関係を理解する助けとするために、便宜的にX軸、Y’軸及びZ’軸からなる直交座標系を付すことがある。X軸、Y’軸及びZ’軸は水晶片の一例であるATカット型水晶の構造を特定するために用いられる直交座標系を示したものである。X軸、Y’軸及びZ’軸は各図面において互いに対応している。X軸、Y’軸及びZ’軸は、それぞれ、後述の水晶片11の結晶軸(Crystallographic Axes)に関係している。具体的には、水晶結晶の電気軸(極性軸)をX軸とし、水晶結晶の機械軸をY軸とし、水晶結晶の光学軸をZ軸とする直交座標系において、Y’軸及びZ’軸は、それぞれ、Y軸及びZ軸をX軸の周りにY軸からZ軸の方向に35度15分±1分30秒回転させた軸に相当する。
【0013】
<第1実施形態>
まず、
図1~
図3を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係る水晶振動子1の構成について説明する。
図1は、第1実施形態に係る水晶振動子の構成を概略的に示す分解斜視図である。
図2は、第1実施形態に係る水晶振動子の構成を概略的に示す断面図である。
図3は、第1実施形態に係るベース部材及び水晶振動素子の構成を概略的に示す平面図である。なお、
図2は、
図1に示した水晶振動子1のII-II線に沿った断面図である。
【0014】
水晶振動子(Quartz Crystal Resonator Unit)1は、水晶振動素子(Quartz Crystal Resonator)10と、ベース部材30と、一対の導電性保持部材を構成する第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bと、蓋部材40と、接合部材50と、樹脂部材70と、を備えている。水晶振動素子10は、ベース部材30と蓋部材40との間に設けられた内部空間に収容されている。すなわち、ベース部材30及び蓋部材40は、水晶振動素子10を収容するための保持器を構成している。保持器の内部空間において、水晶振動素子10は、例えば真空状態で封止されているが、窒素や希ガスなどの不活性ガスが充填された状態で封止されてもよい。
図1及び
図2に示した例では、ベース部材30が平板状を成しており、蓋部材40の凹部49に水晶振動素子10が収容されている。但し、水晶振動素子10のうち少なくとも励振される部分が保持器に収容されれば、ベース部材30及び蓋部材40の形状は上記に限定されるものではない。例えば、ベース部材30は、蓋部材40の側に水晶振動素子10の少なくとも一部を収容する凹部を有してもよい。
【0015】
水晶振動素子10は、圧電効果により電気エネルギーと機械エネルギーとに変換可能な電気機械エネルギー変換素子である。水晶振動素子10は、薄片状の水晶片(Quartz Crystal Element)11と、一対の励振電極を構成する第1励振電極14a及び第2励振電極14bと、一対の引出電極を構成する第1引出電極15a及び第2引出電極15bと、一対の接続電極を構成する第1接続電極16a及び第2接続電極16bとを備えている。
【0016】
水晶片11は、互いに対向する上面11A及び下面11Bを有している。上面11Aは、ベース部材30に対向する側とは反対側、すなわち後述する蓋部材40の天壁部41に対向する側、に位置している。下面11Bは、ベース部材30に対向する側に位置している。上面11A及び下面11Bは、水晶片11の一対の主面に相当する。
【0017】
水晶片11は、例えば、ATカット型の水晶結晶である。ATカット型の水晶結晶は、X軸及びZ’軸によって特定される面と平行な面(以下、「XZ’面」とする。他の軸によって特定される面についても同様である。)が主面となり、Y’軸と平行な方向が厚みとなるように形成される。一例として、上面11Aを平面視したときの水晶片11の外縁は、X軸と平行な方向(以下、「X軸方向」とする。他の軸と平行な方向についても同様とする。)に延在する長辺と、Z’軸方向に延在する短辺とを有している。
【0018】
ATカット型の水晶片11を用いた水晶振動素子10は、広い温度範囲で高い周波数安定性を有する。ATカット型の水晶片11を用いた水晶振動素子10では、厚みすべり振動モード(Thickness Shear Vibration Mode)が主要振動として用いられる。水晶片11のカット角度は、ATカット以外の異なるカットを適用してもよい。例えばBTカット、GTカット、SCカットなどを適用してよい。
【0019】
水晶片11の上面11Aを平面視したとき、水晶片11は、電気機械エネルギー変換が行われる励振部17と、励振部17の外側に位置する周辺部18とを有している。励振部17は、矩形状の島状に設けられ、枠状の周辺部18に囲まれている。励振部17は上面17A及び下面17Bを有し、周辺部18は上面18A及び下面18Bを有している。上面17A,18Aは水晶片11の上面11Aの一部であり、下面17B,18Bは水晶片11の下面11Bの一部である。
【0020】
水晶片11は、励振部17の厚みが周辺部18の厚みよりも大きい、いわゆるメサ型構造である。メサ型構造を有する水晶片11によれば、水晶振動素子10からの振動漏れが抑制できる。また、外部応力が励振部17に伝搬することで生じる周波数変動が抑制できる。水晶片11は両面メサ型構造であり、上面11A及び下面11Bの両側において、励振部17が周辺部18から突出している。励振部17と周辺部18との間の境界領域は、厚みが連続的に変化するテーパ形状を成している。言い換えると、励振部17及び周辺部18のそれぞれの上面17Aと上面18Aとを繋ぐ面、及び、下面17Bと下面18Bとを繋ぐ面は、傾きが一様な傾斜面である。
【0021】
なお、励振部17及び周辺部18の構造は上記に限定されるものではない。例えば、励振部17及び周辺部18は、それぞれ、水晶片11のZ’軸方向に沿った全幅に亘って帯状に形成されてもよい。また、励振部17と周辺部18との間の境界領域は、厚みの変化が不連続な階段形状を成してもよい。当該境界領域は、厚みの変化量が連続的に変化するコンベックス構造、又は厚みの変化量が不連続に変化するベベル構造であってもよい。また、水晶片11は、励振部17の厚みが周辺部18の厚みよりも小さい、いわゆる逆メサ型構造であってもよい。水晶片11は、励振部17の厚みと周辺部18の厚みとが略等しい平板状であってもよい。
【0022】
第1励振電極14a及び第2励振電極14bは、励振部17の中央部に設けられている。第1励振電極14aは、励振部17の上面17Aに設けられ、第2励振電極14bは、励振部17の下面17Bに設けられている。第1励振電極14aと第2励振電極14bとは、励振部17を挟んで互いに対向し、励振部17に対して電圧を印加可能に構成されている。
【0023】
第1引出電極15a及び第2引出電極15bは、励振部17から周辺部18に亘って設けられている。第1引出電極15aは、励振部17の上面17Aにおいて第1励振電極14aに接続され、周辺部18において第1接続電極16aに接続されている。第2引出電極15bは、励振部17の下面17Bにおいて第2励振電極14bに接続され、周辺部18において第2接続電極16bに接続されている。
【0024】
第1接続電極16a及び第2接続電極16bは、周辺部18の下面18Bに設けられている。第1接続電極16a及び第2接続電極16bは、周辺部18のうち、第1励振電極14a及び第2励振電極14bに対してX軸方向の負方向(矢印の向きとは反対方向)側に位置する領域に設けられている。また、第1接続電極16a及び第2接続電極16bはZ’軸方向に並んでおり、第2接続電極16bは第1接続電極16aよりもZ’軸方向の負方向側に位置している。第1接続電極16aは、第1引出電極15aを介して第1励振電極14aに電気的に接続されている。第2接続電極16bは、第2引出電極15bを介して第2励振電極14bに電気的に接続されている。
【0025】
第1励振電極14a、第1引出電極15a及び第1接続電極16aは、連続しており一体的に形成されている。第2励振電極14b、第2引出電極15b及び第2接続電極16bも同様である。これら水晶振動素子10の電極は、例えば、水晶片11との密着性が良好な材料で設けられた下地層と、化学的安定性が良好な材料で設けられた表面層とを含む導電性の多層膜である。下地層は例えばクロム(Cr)層であり、最表層は例えば金(Au)層である。
【0026】
ベース部材30は、基体31と、一対の電極パッドを構成する第1電極パッド33a及び第2電極パッド33bと、一対の貫通電極を構成する第1貫通電極34a及び第2貫通電極34bと、第1外部電極35a~第4外部電極35dとを備えている。
【0027】
基体31は、上面31A及び下面31Bを有する板状の絶縁体である。基体31は、例えば絶縁性セラミック(アルミナなど)の焼結材である。リフロー等の熱履歴によってベース部材30から水晶振動素子10に作用する熱応力を抑制する観点から、基体31は耐熱性材料によって構成されることが好ましい。基体31は、水晶片11に近い熱膨張率を有する材料(例えば水晶)によって設けられてもよい。
【0028】
第1電極パッド33a及び第2電極パッド33bは、基体31の上面31Aに設けられている。第1電極パッド33a及び第2電極パッド33bは、ベース部材30に水晶振動素子10を電気的に接続するための端子である。第1電極パッド33a及び第2電極パッド33bは、例えば、表面にAu層を含む導電性の多層膜である。
【0029】
第1貫通電極34a及び第2貫通電極34bは、基体31をZ’軸方向に貫通している。第1貫通電極34aは、第1電極パッド33aと第1外部電極35aとを電気的に接続している。第2貫通電極34bは、第2電極パッド33bと第2外部電極35bとを電気的に接続している。
【0030】
第1外部電極35a~第4外部電極35dは、基体31の下面31Bに設けられている。第1外部電極35a及び第2外部電極35bは、水晶振動子1を外部基板に電気的に接続するための端子である。第3外部電極35c及び第4外部電極35dは、例えば電気信号等が入出力されないダミー電極であるが、蓋部材40を接地させて蓋部材40の電磁シールド機能を向上させる接地電極であってもよい。
【0031】
第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bは、水晶振動素子10を励振可能に保持している。言い換えると、第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bは、励振部17がベース部材30及び蓋部材40に接触しないように、水晶振動素子10を保持している。また、第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bは、水晶振動素子10とベース部材30とを電気的に接続している。具体的には、第1導電性保持部材36aが第1電極パッド33aと第1接続電極16aとを電気的に接続し、第2導電性保持部材36bが第2電極パッド33bと第2接続電極16bとを電気的に接続している。
【0032】
第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bは、熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂等を含む導電性接着剤の硬化物である。第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bの主成分は、例えばシリコーン樹脂である。第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bは導電性粒子を含んでおり、当該導電性粒子としては例えば銀(Ag)を含む金属粒子が用いられる。
【0033】
第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bの主成分は、硬化性樹脂であればシリコーン樹脂に限定されるものではなく、例えばエポキシ樹脂やアクリル樹脂などであってもよい。また、第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bの導電性は、銀粒子による付与に限定されるものではなく、その他の金属、導電性セラミック、導電性有機材料などによって付与されてもよい。第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bの主成分が導電性高分子であってもよい。
【0034】
蓋部材40は、ベース部材30との間に水晶振動素子10を収容する内部空間を形成する。蓋部材40はベース部材30の側に開口する凹部49を有しており、本実施形態における内部空間は、凹部49の内側の空間に相当する。蓋部材40は、平板状の天壁部41と、天壁部41の外縁からベース部材30に向かって延在する側壁部42とを有している。蓋部材40の凹部49は、天壁部41と側壁部42とによって形成されている。蓋部材40はさらに、側壁部42のベース部材30側の先端部に接続されており且つ基体31の上面31Aに沿って外側に延在するフランジ部43を有している。基体31の上面31Aを平面視したとき、フランジ部43は、水晶振動素子10を囲むように枠状に延在している。
【0035】
蓋部材40の材質は、望ましくは導電材料であり、さらに望ましくは気密性の高い金属材料である。蓋部材40が導電材料で構成されることによって、内部空間への電磁波の出入りを低減する電磁シールド機能が蓋部材40に付与される。熱応力の発生を抑制する観点から、蓋部材40の材質は、基体31に近い熱膨張率を有する材料であることが望ましく、例えば常温付近での熱膨張率がガラスやセラミックと広い温度範囲で一致するFe-Ni-Co系合金である。
【0036】
接合部材50は、ベース部材30及び蓋部材40の各全周に亘って設けられ、矩形の枠状をなしている。ベース部材30の上面31Aを平面視したとき、第1電極パッド33a及び第2電極パッド33bは接合部材50の内側に配置されており、接合部材50は水晶振動素子10を囲むように設けられている。接合部材50は、ベース部材30と蓋部材40とを接合し、内部空間に相当する凹部49を封止している。具体的には、接合部材50は、基体31とフランジ部43とを接合している。
【0037】
接合部材50は、例えば、基体31の上面31Aに設けられたモリブデン(Mo)からなるメタライズ層と、メタライズ層とフランジ部43との間に設けられた金錫(Au-Sn)系の共晶合金からなる金属半田層とによって設けられている。接合部材50の材質は上記に限定されるものではないが、水晶振動素子10の周波数特性の変動を抑制する観点から透湿性が低いことが望ましく、ガス透過性が低いことがさらに望ましい。また、接合部材50を介して蓋部材40を接地電位に電気的に接続するためには、接合部材50が導電性を有することが望ましい。
【0038】
接合部材50は上記の金属接合に限定されるものではない。接合部材50は、例えば樹脂系接着剤やガラス系接着剤によって設けられてもよい。接合部材50を接着剤によって設ける場合、接合部材50は、導電性接着剤によって設けられてもよく、絶縁性接着剤によって設けられてもよい。また、ベース部材30と蓋部材40とは、シーム溶接によって接合されてもよい。
【0039】
樹脂部材70は、内部空間に存在する異物DSを被覆するための樹脂膜CTの供給源となる。具体的には、樹脂部材70から飛散した樹脂材料が、内部空間の内壁、すなわち、水晶振動素子10、ベース部材30、蓋部材40、接合部材50等の内部空間に露出する表面に堆積し、樹脂膜CTを当該表面に形成する。樹脂膜CTによって被覆された異物DSはその位置が固定される。このため、例えば、落下等によって水晶振動子1に衝撃が作用した場合や、異物DSが付着した水晶振動素子10が励振された場合であっても、異物DSの水晶振動素子10への付着又は水晶振動素子10からの脱落は抑制される。
【0040】
樹脂部材は、内部空間においてベース部材30及び蓋部材40の少なくとも一方に設けられていればよく、樹脂部材70は、ベース部材30に設けれている。
図3に示すように、平面視において、樹脂部材70は、水晶振動素子10の外側の領域に設けられており、水晶振動素子10の振動を阻害しない。樹脂部材70は、接合部材50から離間しており、平面視において水晶振動素子10と接合部材50との間の領域に設けられている。また、樹脂部材70は、第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bから離間している。
【0041】
樹脂部材70は、例えば、シリコーン樹脂や、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、等を主成分とする非導電性の樹脂材料によって形成される。樹脂部材70は加熱によって樹脂膜CTを供給可能であれば、その材料を上記に限定されるものではない。樹脂部材70から飛散する樹脂膜CTの原料は、例えば、樹脂部材70を設けるときに発生した未反応モノマーやオリゴマー等、又は、樹脂部材70の熱分解によって発生した低分子量ポリマーやオリゴマー等である。なお、接合部材50が樹脂によって設けられる場合、樹脂部材70の耐熱性は、接合部材50の耐熱性より低いことが望ましい。これによれば、封止性を損なうことなく、樹脂部材70から樹脂膜CTの原料を供給することができる。
【0042】
樹脂部材70は、4つの樹脂片71,72,73,74を含んでいる。樹脂片71は水晶振動素子10に対してX軸正方向側に位置し、樹脂片72は水晶振動素子10に対してX軸負方向側に位置し、樹脂片73は水晶振動素子10に対してZ’軸正方向側に位置し、樹脂片74は水晶振動素子10に対してZ’軸負方向側に位置している。すなわち、平面視において、樹脂片71と樹脂片72とは水晶振動素子10の互いに対向する短辺にそれぞれ隣接し、樹脂片73と樹脂片74とは水晶振動素子10の互いに対向する長辺にそれぞれ隣接している。
【0043】
樹脂膜CTのムラを低減するため、樹脂膜CTの供給源となる複数の樹脂片71~74は、水晶振動素子10の周囲に均等に配置されている。言い換えると、平面視において水晶振動素子10を囲む周方向において、複数の樹脂片71~74のうち互いに隣接する樹脂片の間隔は略等しい。具体的には、樹脂片71と樹脂片73との間隔、樹脂片73と樹脂片72との間隔、樹脂片72と樹脂片74との間隔、及び、樹脂片74と樹脂片71との間隔は、互いに略等しい。さらに樹脂膜CTのムラを低減するため、樹脂片71及び樹脂片72のそれぞれは、水晶振動子1のZ’軸方向における中央部に設けられ、樹脂片73及び樹脂片74のそれぞれは、水晶振動子1のX軸方向における中央部に設けられている。
【0044】
なお、樹脂部材70に含まれる樹脂片の数は4つに限定されるものではない。樹脂片の数は3つ以下でもよく、5つ以上でもよい。但し、樹脂片のすくなくとも1つは、望ましくは、水晶振動素子10における導電性保持部材36a,36bとは反対側に設けられている。例えば、樹脂部材70は
図3に示した樹脂片71のみから成ってもよく、
図3に示した樹脂片72を除く樹脂片71,73,74を含んでもよい。これらの場合、第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bも樹脂膜CTの供給源とすることで、樹脂片72を省略することによる省スペース化を図りつつ、樹脂膜CTのムラを低減することができる。樹脂部材70は、水晶振動素子10の角部の近傍に配置された樹脂片を含んでもよい。
【0045】
次に、
図4を参照しつつ、第1実施形態に係る水晶振動子1の製造方法について説明する。
図4は、第1実施形態に係る水晶振動子の製造方法を概略的に示すフローチャートである。
【0046】
まず、ベース部材30を準備する(S10)。
【0047】
ベース部材30は、例えば、セラミック粉末を焼結して形成される。一例として、アルミナのグリーンシートに貫通孔を形成、貫通孔に電極材料を充填する。次に、グリーンシートに金属膜を印刷(スクリーン印刷、インクジェット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷など)し、グリーンシート、電極材料及び金属膜を焼結する。これにより、アルミナのグリーンシートは基体31となり、電極材料は貫通電極34a,34bとなり、金属膜は接合部材50のメタライズ層、電極パッド33a,33b及び外部電極35a~35dとなる。金属膜の成膜方法は上記の印刷法に限定されるものではなく、各種の塗布法(キャスト、ディスペンスなど)、及び各種の湿式メッキ法(無電解メッキ、溶融メッキ、電気メッキなど)などのウェットプロセスによって形成されてもよい。
【0048】
基体31は、インゴットから切り出したウェハによって形成されてもよい。金属膜は、PVD(Physical Vapor Deposition)やCVD(Chemical Vapor Depositon)などの各種の気相成長法を一例とするドライプロセスによって形成されてもよい。接合部材50のメタライズ層、電極パッド33a,33b及び外部電極35a~35dのそれぞれの少なくとも一部は、グリーンシートの焼結後に形成されてもよい。
【0049】
次に、蓋部材40を準備する(S20)。
【0050】
蓋部材40は、例えば、金属板のプレス加工によって形成される。一例として、Fe-Ni-Co系合金からなる金属板を用意する。次に、金属板をパンチで押し込んで凹状に変形させ、天壁部41、側壁部42及びフランジ部43の形状を形成する。
【0051】
蓋部材40は、セラミック基板や水晶基板等にエッチング加工によって凹部49を設けることで形成されてもよい。
【0052】
次に、水晶振動素子10を搭載する(S30)。
【0053】
まず、水晶振動素子を準備する。水晶の結晶体をスライスして水晶ウェハを形成する。水晶ウェハには、化学機械研磨などの平坦化処理や、リンス液による洗浄処理など、適宜必要な処理が実施されてもよい。次に、水晶ウェハの一部を除去加工し、互いに連結した複数の水晶片の輪郭を形成する。次に、複数の水晶片のそれぞれの一部を除去加工し、複数の水晶片のそれぞれをメサ型構造に加工する。除去加工は、例えばフォトリソグラフィを利用したエッチングによって行われるが、プラズマCVM(Chemical Vaporization Machining)などの他の処理方法によって実施されてもよい。
【0054】
次に、複数の水晶片のそれぞれの表面に金属膜を設け、フォトリソグラフィを利用したエッチングによって金属膜の一部を除去加工し、金属膜から電極を形成する。なお、電極の形成方法はエッチングに限定されるものではなく、電極はリフトオフによって形成されてもよい。
【0055】
最後に、水晶振動素子を個片化する。複数の水晶片を連結する部分には、周囲よりも厚みの薄い薄肉部分が形成されており、曲げ応力を加えることで薄肉部分が亀裂の起点となり、複数の水晶片を連結する部分が割断される。薄肉部分は、例えば、複数の水晶片の輪郭を形成する工程や、複数の水晶片のそれぞれをメサ型構造に加工する工程におけるエッチングを利用して形成される。薄肉部分は、スクライブツールによって形成されてもよい。なお、水晶振動素子は、レーザーカッターやダイシングソーなどによる切断によって個片化されてもよい。
【0056】
次に、水晶振動素子10をベース部材30に接合する。ます、熱硬化性樹脂を含む導電性接着剤ペーストを準備する。次に、昇温していないホットプレートの上にベース部材30を載置する。次に、ベース部材30の第1電極パッド33a及び第2電極パッド33bのそれぞれの上に導電性接着剤ペーストを塗布する。次に、水晶振動素子10の先端がベース部材30に接触しないように、導電性接着剤ペーストの上に水晶振動素子10を載置する。次に、ホットプレートで加熱して導電性接着剤ペーストを硬化させて第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bを形成する。これにより、ベース部材30の第1電極パッド33a及び第2電極パッド33bのそれぞれと、水晶振動素子10の第1接続電極16a及び第2接続電極16bのそれぞれとを接合する。
【0057】
なお、導電性接着剤ペーストの上に水晶振動素子10を載置する前に、導電性接着剤ペーストの粘度を調整するための予備加熱を行ってもよい。また、導電性接着剤ペーストの樹脂組成物は、熱硬化性樹脂の組成物に限定されず、光(UV)硬化性樹脂の組成物を含んでもよい。この場合、本工程S40では、導電性接着剤ペーストに光(UV)を照射する工程を含んでもよい。
【0058】
樹脂部材70を設ける工程では、例えば、まず、水晶振動素子10を搭載する前のベース部材30に、熱硬化性樹脂を含む非導電性の樹脂系接着剤ペーストを塗布する。次に、加熱によって導電性接着剤ペーストを硬化させて、樹脂部材70を形成する。樹脂部材70となる樹脂系接着剤ペーストを硬化させる加熱処理は、第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bとなる導電性接着剤ペーストを硬化させる加熱処理と同時に行われる。
【0059】
樹脂部材70を硬化させる加熱処理は、第1導電性保持部材36a及び第2導電性保持部材36bを硬化させる加熱処理の前又は後に行われてもよい。また、樹脂部材70は、ベース部材30に水晶振動素子10を搭載した後に設けられてもよい。樹脂部材70は、光硬化性樹脂を含む樹脂系接着剤ペーストによって形成されてもよい。
【0060】
次に、水晶振動素子10を収容する(S40)。
【0061】
まず、蓋部材40を収納トレイに入れる。収納トレイには、蓋部材40がほぼ隙間なく収納可能な有底の開口部が設けられている。天壁部41の天壁上面41Aを開口部の底に向けて、蓋部材を開口部に収納する。
【0062】
次に、フランジ部43のフランジ下面43Bの上に、金属半田を設ける。金属半田は、金錫(Au-Sn)系の共晶合金である。なお、金属半田は、ベース部材30に設けられたメタライズ層の上に設けられていてもよい。
【0063】
次に、ベース部材を収納トレイに入れる。水晶振動素子10を蓋部材40側に向けて、水晶振動素子10が搭載されたベース部材30を開口部に収納する。このとき、蓋部材40の金属半田に、ベース部材30のメタライズ層が重なる。
【0064】
次に、ベース部材30と蓋部材40とを接合する(S50)。
【0065】
金属半田を加熱して軟化させ、軟化した金属半田を冷却して固化させる。固化した金属半田はベース部材30のメタライズ層とともに接合部材50を形成し、ベース部材30と蓋部材40とを接合して内部空間に相当する凹部49を封止する。工程S50における加熱処理は、本発明に係る「第1加熱処理」の一例に相当する。
【0066】
次に、樹脂膜CTを形成する(S60)。
【0067】
封止された水晶振動子1を加熱し、樹脂部材70から樹脂膜CTの原料を供給する。具体的には、樹脂部材70から樹脂膜CTの原料を飛散させ、当該原料を内部空間の露出面に堆積させて樹脂膜CTを成膜する。樹脂膜CTは、水晶振動素子10、ベース部材30、蓋部材40及び接合部材50を覆う。工程S60における加熱処理は、本発明に係る「第2加熱処理」の一例に相当する。
【0068】
なお、本実施形態において、第1加熱処理と第2加熱処理とは異なる加熱処理であるとして説明したが、第1加熱処理と第2加熱処理とは同一加熱処理であってもよい。すなわち、一回の加熱処理で、ベース部材30と蓋部材40とを接合するとともに、樹脂膜CTを形成してもよい。
【0069】
最後に、水晶振動子1を収納トレイから取り出す。
【0070】
なお、ベース部材30を準備する工程S10と、蓋部材40を準備する工程S20と、水晶振動素子10を準備する工程との順番は、上記に限定されるものではない。工程S10は、工程S20の後に実施されてもよく、水晶振動素子10を準備する工程の後に実施されてもよい。工程S20は、水晶振動素子10を準備する工程の後に実施されてもよい。
【0071】
また、樹脂部材70となる樹脂系接着剤ペーストは、水晶振動素子10を収容する工程S40の後に硬化させてもよい。例えば、ベース部材30と蓋部材40とを接合する工程S50の接合部材50を硬化させる加熱処理を利用して、樹脂部材70となる樹脂系接着剤ペーストを加熱して硬化させてもよい。このような場合、樹脂部材70の硬化工程において樹脂膜CTを形成してもよい。
【0072】
以上のように、第1実施形態では、異物DSを被覆するための樹脂膜CTの供給源となる樹脂部材70がベース部材30に設けられている。これによれば、異物DSの水晶振動素子10への付着又は水晶振動素子10からの脱落が抑制されることにより、周波数変動が抑制される。
【0073】
樹脂部材70は、平面視において水晶振動素子10の外側の領域に設けられているため、水晶振動素子10と樹脂部材70との干渉による振動特性の劣化が生じない。
【0074】
樹脂部材70は複数の樹脂片71~74からなり、平面視において複数の樹脂片71~74は水晶振動素子10の周囲に均等に配置さているため、樹脂膜CTのムラを低減することができる。
【0075】
なお、複数の樹脂片71~74の少なくとも1つは、平面視において水晶振動素子10における導電性保持部材36a,36bとは反対側に設けられている。したがって、たとえ平面視において水晶振動素子10における導電性保持部材36a,36b側の樹脂片を省略したとしても、導電性保持部材36a,36bも樹脂膜CTの供給源として利用することで、樹脂膜CTのムラを低減することができる。つまり、樹脂片の一部省略によって小型化しつつ周波数変動を抑制することができる。
【0076】
以下に、本発明の他の実施形態に係る水晶振動子1の構成について説明する。なお、下記の実施形態では、上記の第1実施形態と共通の事柄については記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については逐次言及しない。
【0077】
<第2実施形態>
図5を参照しつつ、第2実施形態に係る水晶振動子2の構成について説明する。
図5は、第2実施形態に係る水晶振動子の構成を概略的に示す断面図である。
【0078】
本実施形態において、樹脂部材270は、蓋部材40の天壁部41に設けられている。なお、樹脂部材270は、蓋部材40の側壁部42に設けられてもよい。
【0079】
<第3実施形態>
図6を参照しつつ、第2実施形態に係る水晶振動子3の構成について説明する。
図6は、第3実施形態に係るベース部材及び水晶振動素子の構成を概略的に示す平面図である。
【0080】
平面視において、樹脂部材370は、水晶振動素子10を囲む枠状に設けられている。なお、樹脂部材370は水晶振動素子10を囲む領域において、水晶振動素子10又は接合部材50に沿って設けられていれば、その形状は枠状に限定されるものではない。例えば、樹脂部材370は、水晶振動素子10の角部に沿ってL字状に設けられてもよく、水晶振動素子10における導電性保持部材36a,36bの側とは反対側においてU字状に設けられてもよい。
【0081】
以下に、本発明の実施形態の一部又は全部を付記する。なお、本発明は以下の付記に限定されるものではない。
【0082】
本発明の一態様によれば、圧電片及び圧電片に電圧を印加可能に構成された励振電極を有する水晶振動素子と、水晶振動素子が搭載されたベース部材と、水晶振動素子とベース部材とを電気的に接続する導電性保持部材と、ベース部材との間に設けられた内部空間に水晶振動素子を収容する蓋部材と、ベース部材と蓋部材とを接合する接合部材と、を備え、内部空間において、ベース部材及び蓋部材の少なくとも一方には、内部空間に存在する異物を被覆するための樹脂膜の供給源となる樹脂部材が設けられている、水晶振動子が提供される。
【0083】
一態様として、平面視において、樹脂部材は、水晶振動素子の外側の領域に設けられている。
【0084】
一態様として、樹脂部材は、複数の樹脂片を含む。
【0085】
一態様として、平面視において、複数の樹脂片は、水晶振動素子の周囲に均等に配置されている。
【0086】
一態様として、平面視において、複数の樹脂片の少なくとも1つは、水晶振動素子における導電性保持部材とは反対側に設けられている。
【0087】
一態様として、平面視において、樹脂部材は、水晶振動素子の少なくとも一部を囲むL字状、U字状又は枠状に設けられている。
【0088】
一態様として、樹脂部材は、接合部材から離間している。
【0089】
本発明の他の一態様によれば、ベース部材を準備することと、蓋部材を準備することと、ベース部材及び蓋部材の少なくとも一方に樹脂部材を設けることと、ベース部材に水晶振動素子を搭載することと、ベース部材及び蓋部材の一方に他方を搭載することと、ベース部材と蓋部材との間の内部空間に収容された樹脂部材を供給源として、内部空間に存在する異物を被覆するために樹脂膜を形成することと、を含む、水晶振動子の製造方法が提供される。
【0090】
一態様として、ベース部材と蓋部材との接合部材を加熱する第1加熱処理と、樹脂部材を供給源として樹脂膜を形成する第2加熱処理とを含む。
【0091】
一態様として、第1加熱処理と第2加熱処理とは、同一加熱処理である。
【0092】
一態様として、第1加熱処理と第2加熱処理とは、異なる加熱処理である。
【0093】
なお、本発明に係る実施形態は、水晶振動子に限定されるものではなく、他の圧電振動子(Piezoelectric Resonator Unit)にも適用可能である。本実施形態に係る圧電振動子に好適に用いられる圧電片としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)や窒化アルミニウムなどの圧電セラミック、ニオブ酸リチウムやタンタル酸リチウムなどの圧電単結晶、を挙げることができるが、これらに限定されるものではなく適宜選択可能である。
【0094】
本発明に係る実施形態は、タイミングデバイス、発音器、発振器、荷重センサなど、圧電効果により電気機械エネルギー変換を行うデバイスであれば、特に限定されることなく適宜適用可能である。
【0095】
以上説明したように、本発明の一態様によれば、周波数変動が抑制可能な圧電振動子及びその製造方法が提供できる。
【0096】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。即ち、各実施形態に当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、各実施形態が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、各実施形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0097】
1…水晶振動子、
10…水晶振動素子、
11…水晶片、
14a,14b…励振電極、
15a,15b…引出電極、
16a,16b…接続電極、
17…励振部、
18…周辺部、
30…ベース部材、
36a,36b…導電性保持部材
40…蓋部材、
50…接合部材
70…樹脂部材、
71,72,73,74…樹脂片、
CT…樹脂膜、
DS…異物。