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特許7462888埋設型連結具および埋設型連結具装着部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】埋設型連結具および埋設型連結具装着部品
(51)【国際特許分類】
   F16B 35/04 20060101AFI20240401BHJP
【FI】
F16B35/04 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020101829
(22)【出願日】2020-06-11
(65)【公開番号】P2021195981
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000208684
【氏名又は名称】第一工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136674
【弁理士】
【氏名又は名称】居藤 洋之
(72)【発明者】
【氏名】山田 邦男
(72)【発明者】
【氏名】黒柳 英世
(72)【発明者】
【氏名】桐生 裕史
(72)【発明者】
【氏名】羽生 卓矢
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-077908(JP,A)
【文献】特開昭63-176808(JP,A)
【文献】特開2015-183695(JP,A)
【文献】特開2008-138739(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02546533(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 35/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状または筒状に形成された埋設部本体と、
前記埋設部本体の外周面上に径方向外側に突出して形成された複数の係合突起からなる係合突起群と、
前記埋設部本体における一方の端部から軸線方向に張り出して延びる雄ネジ部とを備えて前記埋設部本体が取付対象物の表層に埋設される埋設型連結具であって、
前記埋設部本体は、
軸線方向における両端部のうちの少なくとも一方側の部分に前記係合突起の突出量よりも少ない突出量または深さの複数の凹凸からなる小凹凸部を備え
前記小凹凸部は、
前記埋設部本体の外周面上から突出して形成されており、
前記係合突起よりも径方向外側に張り出して形成されていることを特徴とする埋設型連結具。
【請求項2】
筒状に形成された埋設部本体と、
前記埋設部本体の外周面上に径方向外側に突出して形成された複数の係合突起からなる係合突起群と、
前記埋設部本体の内周面に形成された雌ネジ部とを備えて前記埋設部本体が取付対象物の表層に埋設される埋設型連結具であって、
前記埋設部本体は、
軸線方向における両端部のうちの少なくとも一方側の部分に前記係合突起の突出量よりも少ない突出量または深さの複数の凹凸からなる小凹凸部を備え
前記小凹凸部は、
前記埋設部本体の外周面上から突出して形成されており、
前記係合突起よりも径方向外側に張り出して形成されていることを特徴とする埋設型連結具。
【請求項3】
柱状または筒状に形成された埋設部本体と、
前記埋設部本体の外周面上に径方向外側に突出して形成された複数の係合突起からなる係合突起群と、
前記埋設部本体における一方の端部から軸線方向に張り出して延びる雄ネジ部とを備えて前記埋設部本体が取付対象物の表層に埋設される埋設型連結具であって、
前記埋設部本体は、
軸線方向における両端部のうちの少なくとも一方側の部分に前記係合突起の突出量よりも少ない突出量または深さの複数の凹凸からなる小凹凸部を備え
前記係合突起群よりも前記取付対象物の表面側となる部分に径方向外側にフランジ状に張り出すフランジ部を有し、
前記フランジ部は、
外周面が径方向外側に張り出す凸状に形成されていることを特徴とする埋設型連結具。
【請求項4】
筒状に形成された埋設部本体と、
前記埋設部本体の外周面上に径方向外側に突出して形成された複数の係合突起からなる係合突起群と、
前記埋設部本体の内周面に形成された雌ネジ部とを備えて前記埋設部本体が取付対象物の表層に埋設される埋設型連結具であって、
前記埋設部本体は、
軸線方向における両端部のうちの少なくとも一方側の部分に前記係合突起の突出量よりも少ない突出量または深さの複数の凹凸からなる小凹凸部を備え
前記係合突起群よりも前記取付対象物の表面側となる部分に径方向外側にフランジ状に張り出すフランジ部を有し、
前記フランジ部は、
外周面が径方向外側に張り出す凸状に形成されていることを特徴とする埋設型連結具。
【請求項5】
柱状または筒状に形成された埋設部本体と、
前記埋設部本体の外周面上に径方向外側に突出して形成された複数の係合突起からなる係合突起群と、
前記埋設部本体における一方の端部から軸線方向に張り出して延びる雄ネジ部とを備えて前記埋設部本体が取付対象物の表層に埋設される埋設型連結具であって、
前記埋設部本体は、
軸線方向における両端部のうちの少なくとも一方側の部分に前記係合突起の突出量よりも少ない突出量または深さの複数の凹凸からなる小凹凸部を備え
前記係合突起群に隣接して同係合突起群よりも径方向外側に張り出した隣接張出部を備え、
前記隣接張出部は、
前記係合突起群に向かって連続的に外径が細くなるテーパ部を備え、
前記テーパ部は、
径方向外側に突出して形成された複数のテーパ部突起部を備えることを特徴とする埋設型連結具。
【請求項6】
筒状に形成された埋設部本体と、
前記埋設部本体の外周面上に径方向外側に突出して形成された複数の係合突起からなる係合突起群と、
前記埋設部本体の内周面に形成された雌ネジ部とを備えて前記埋設部本体が取付対象物の表層に埋設される埋設型連結具であって、
前記埋設部本体は、
軸線方向における両端部のうちの少なくとも一方側の部分に前記係合突起の突出量よりも少ない突出量または深さの複数の凹凸からなる小凹凸部を備え
前記係合突起群に隣接して同係合突起群よりも径方向外側に張り出した隣接張出部を備え、
前記隣接張出部は、
前記係合突起群に向かって連続的に外径が細くなるテーパ部を備え、
前記テーパ部は、
径方向外側に突出して形成された複数のテーパ部突起部を備えることを特徴とする埋設型連結具。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のうちのいずれか1つに記載した埋設型連結具が表層に埋設されていることを特徴とする埋設型連結具装着部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品の表層に埋設されて部品同士の連結に用いられるボルトまたはナットを備えた埋設型連結具および埋設型連結具装着部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、2つの部品をネジを用いて連結する場合、一方の部品の表層にボルトまたはナットを備えた埋設型連結具が装着されることがある。例えば、エンジンの吸気系を構成するインテークマニホールドなどの車両用樹脂製部品においては、この車両用樹脂製部品に他の部品をネジ留めするために車両用樹脂製部品の表層に金属製の埋設型ナットが埋め込まれて用いられている。例えば、下記特許文献1には、円筒体で構成されて取付対象物の表層に埋設される埋設部本体の外周面上に複数の係合突起が形成された埋設型連結具としての埋設型ナットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-183695号公報
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に示された埋設型連結具においては、取付対象物に対する埋設部本体の取付強度の向上は常に求められるものである。
【0005】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、取付対象物に対する埋設部本体の取付強度を向上させることができる埋設型連結具および埋設型連結具装着部品を提供することにある。
【発明の概要】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、柱状または筒状に形成された埋設部本体と、埋設部本体の外周面上に径方向外側に突出して形成された複数の係合突起からなる係合突起群と、埋設部本体における一方の端部から軸線方向に張り出して延びる雄ネジ部とを備えて埋設部本体が取付対象物の表層に埋設される埋設型連結具であって、埋設部本体は、軸線方向における両端部のうちの少なくとも一方側の部分に係合突起の突出量よりも少ない突出量または深さの複数の凹凸からなる小凹凸部を備え、小凹凸部は、埋設部本体の外周面上から突出して形成されており、係合突起よりも径方向外側に張り出して形成されていることにある。
【0007】
また、上記目的を達成するため、本発明の特徴は、筒状に形成された埋設部本体と、埋設部本体の外周面上に径方向外側に突出して形成された複数の係合突起からなる係合突起群と、埋設部本体の内周面に形成された雌ネジ部とを備えて埋設部本体が取付対象物の表層に埋設される埋設型連結具であって、埋設部本体は、軸線方向における両端部のうちの少なくとも一方側の部分に係合突起の突出量よりも少ない突出量または深さの複数の凹凸からなる小凹凸部を備え、小凹凸部は、埋設部本体の外周面上から突出して形成されており、係合突起よりも径方向外側に張り出して形成されていることにある。
【0008】
これらの場合、埋設型連結具は、埋設型連結具が埋設される取付対象物に対して取付対象物の成形加工時に取付対象物内に一体的に埋設されて装着されるインサート型と、一旦成形された取付対象物に対して圧入やねじ込みによって装着されるアウトサート型とがある。
【0009】
このように構成した本発明の特徴によれば、埋設型連結具は、埋設部本体に係合突起群とは別に小凹凸部を備えているため、取付対象物と埋設部本体との間の摩擦抵抗を増加させて取付対象物に対する埋設部本体の取付強度を向上させることができネジ締め時における供廻りおよび引き抜きを抑制して高い締付力に耐えて連結力を向上させることができる。また、本発明に係る埋設型連結具によれば、小凹凸部が埋設部本体の外周面上から突出して形成されているため、アウトサート型の埋設型連結具においても高い取付強度を実現することができる。また、本発明に係る埋設型連結具によれば、小凹凸部が係合突起群を構成する突起よりも径方向外側に張り出して形成されているため、アウトサート型の埋設型連結具においても高い取付強度を実現することができる。
【0010】
また、本発明の他の特徴は、柱状または筒状に形成された埋設部本体と、埋設部本体の外周面上に径方向外側に突出して形成された複数の係合突起からなる係合突起群と、埋設部本体における一方の端部から軸線方向に張り出して延びる雄ネジ部とを備えて埋設部本体が取付対象物の表層に埋設される埋設型連結具であって、埋設部本体は、軸線方向における両端部のうちの少なくとも一方側の部分に係合突起の突出量よりも少ない突出量または深さの複数の凹凸からなる小凹凸部を備え、係合突起群よりも取付対象物の表面側となる部分に径方向外側にフランジ状に張り出すフランジ部を有し、フランジ部は、外周面が径方向外側に張り出す凸状に形成されていることにある。
【0011】
また、本発明の他の特徴は、筒状に形成された埋設部本体と、埋設部本体の外周面上に径方向外側に突出して形成された複数の係合突起からなる係合突起群と、埋設部本体の内周面に形成された雌ネジ部とを備えて埋設部本体が取付対象物の表層に埋設される埋設型連結具であって、埋設部本体は、軸線方向における両端部のうちの少なくとも一方側の部分に係合突起の突出量よりも少ない突出量または深さの複数の凹凸からなる小凹凸部を備え、係合突起群よりも取付対象物の表面側となる部分に径方向外側にフランジ状に張り出すフランジ部を有し、フランジ部は、外周面が径方向外側に張り出す凸状に形成されていることにある。
【0012】
これらの場合、埋設型連結具は、埋設型連結具が埋設される取付対象物に対して取付対象物の成形加工時に取付対象物内に一体的に埋設されて装着されるインサート型と、一旦成形された取付対象物に対して圧入やねじ込みによって装着されるアウトサート型とがある。
【0013】
このように構成した本発明の特徴によれば、埋設型連結具は、埋設部本体に係合突起群とは別に小凹凸部を備えているため、取付対象物と埋設部本体との間の摩擦抵抗を増加させて取付対象物に対する埋設部本体の取付強度を向上させることができネジ締め時における供廻りおよび引き抜きを抑制して高い締付力に耐えて連結力を向上させることができる。また、本発明に係る埋設型連結具によれば、埋設部本体における係合突起群よりも取付対象物の表面側となる部分に径方向外側にフランジ状に張り出してフランジ部を有するとともに、このフランジ部の外周面が径方向外側に張り出す凸状に形成されているため、取付対象物に対して埋設部本体が引き抜き難くすることができる。この場合、フランジ部は、外周面が凸状に膨らむ曲面、または凸状に突出する段付き形状に形成することができる。
【0014】
また、本発明の他の特徴は、柱状または筒状に形成された埋設部本体と、埋設部本体の外周面上に径方向外側に突出して形成された複数の係合突起からなる係合突起群と、埋設部本体における一方の端部から軸線方向に張り出して延びる雄ネジ部とを備えて埋設部本体が取付対象物の表層に埋設される埋設型連結具であって、埋設部本体は、軸線方向における両端部のうちの少なくとも一方側の部分に係合突起の突出量よりも少ない突出量または深さの複数の凹凸からなる小凹凸部を備え、係合突起群に隣接して同係合突起群よりも径方向外側に張り出した隣接張出部を備え、隣接張出部は、係合突起群に向かって連続的に外径が細くなるテーパ部を備え、テーパ部は、径方向外側に突出して形成された複数のテーパ部突起部を備えることにある。
【0015】
また、本発明の他の特徴は、筒状に形成された埋設部本体と、埋設部本体の外周面上に径方向外側に突出して形成された複数の係合突起からなる係合突起群と、埋設部本体の内周面に形成された雌ネジ部とを備えて埋設部本体が取付対象物の表層に埋設される埋設型連結具であって、埋設部本体は、軸線方向における両端部のうちの少なくとも一方側の部分に係合突起の突出量よりも少ない突出量または深さの複数の凹凸からなる小凹凸部を備え、係合突起群に隣接して同係合突起群よりも径方向外側に張り出した隣接張出部を備え、隣接張出部は、係合突起群に向かって連続的に外径が細くなるテーパ部を備え、テーパ部は、径方向外側に突出して形成された複数のテーパ部突起部を備えることにある。
【0016】
これらの場合、埋設型連結具は、埋設型連結具が埋設される取付対象物に対して取付対象物の成形加工時に取付対象物内に一体的に埋設されて装着されるインサート型と、一旦成形された取付対象物に対して圧入やねじ込みによって装着されるアウトサート型とがある。
【0017】
このように構成した本発明の特徴によれば、埋設型連結具は、埋設部本体に係合突起群とは別に小凹凸部を備えているため、取付対象物と埋設部本体との間の摩擦抵抗を増加させて取付対象物に対する埋設部本体の取付強度を向上させることができネジ締め時における供廻りおよび引き抜きを抑制して高い締付力に耐えて連結力を向上させることができる。また、本発明に係る埋設型連結具によれば、係合突起群に隣接した位置に同係合突起群よりも径方向外側に張り出した状態で形成された隣接張出部にテーパ部を備えるとともに、このテーパ部にテーパ部突起部を備えているため、取付対象物への圧入時における圧入抵抗の増加を抑えつつ取付対象物への装着後における取付強度を向上させることができる。
【0018】
削除
【0019】
削除
【0020】
削除
【0021】
削除
【0022】
また、本発明は埋設型連結具の発明として実施できるばかりでなく、埋設型連結具が取り付けられた埋設型連結具装着部品の発明としても実施できるものである。
【0023】
具体的には、埋設型連結具装着部品は、請求項1ないし請求項6のうちのいずれか1つに記載した埋設型連結具が表層に埋設されていればよい。この場合、埋設する手法としては、埋設型連結具が埋設される取付対象物に対して取付対象物の成形時に取付対象物内に一体的に埋設する方法や、一旦成形された取付対象物に対して圧入やねじ込みによって埋設する方法がある。これらによれば、埋設型連結具装着部品は、前記埋設型連結具と同様の効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係る埋設型連結具の外観構成を概略的に示す斜視図である。
図2図1に示した埋設型連結具の外観構成を概略的に示す正面図である。
図3図1に示した埋設型連結具の半加工品の外観構成を概略的に示す斜視図である。
図4図1に示す埋設型連結具を取付対象物に埋設した状態を示す埋設型連結具および埋設型連結具装着部品の断面図である。
図5】本発明の変形例に係る埋設型連結具の外観構成を概略的に示す正面図である。
図6】本発明の他の変形例に係る埋設型連結具の外観構成を概略的に示す斜視図である。
図7】本発明の他の変形例に係る埋設型連結具を取付対象物に埋設した状態を示す埋設型連結具および埋設型連結具装着部品の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る埋設型連結具および埋設型連結具装着部品の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る埋設型連結具100の外観構成を概略的に示す斜視図である。また、図2は、図1に示した埋設型連結具100の外観構成を概略的に示す正面図である。なお、本明細書において参照する各図は、本発明の理解を容易にするために一部の構成要素を誇張して表わすなど模式的に表していることがあるため、各構成要素間の寸法や比率などは異なっていることがある。
【0026】
この埋設型連結具100は、例えば、自走式車両のエンジンにおける吸気系を構成するインテークマニホールドなどの樹脂製部品をシリンダヘッドなどの他の部品に連結するために樹脂製部品の表層に埋設される連結具である。なお、この埋設型連結具100が埋設されるインテークマニホールドなどの取付対象物WKに埋設型連結具100を介して連結される部品を被連結対象物(図示せず)と称する。
【0027】
(埋設型連結具100の構成)
埋設型連結具100は、埋設部本体101を備えている。埋設部本体101は、係合突起群103、小凹凸部111およびフランジ部112がそれぞれ形成される部品であり、金属材料(例えば、炭素鋼)を円柱状に形成して構成されている。より具体的には、埋設部本体101は、互いに異なる3つの外径に形成された突起形成部102、小凹凸形成部110およびフランジ部112によって構成されている。
【0028】
突起形成部102は、係合突起群103が形成される部分であり、埋設部本体101のうちで最も小径の円柱状に形成されている。この場合、突起形成部102の軸線方向の長さは、取付対象物WKへの取付強度に応じて適宜設定される。
【0029】
係合突起群103は、取付対象物WKの内部に引っ掛かって取付強度を確保するための引っ掛かる部分であり、複数の係合突起104の集合によって構成されている。係合突起104は、突起形成部102の外周面に突起形成部102の周方向に沿って断続的に突出する山形形状に形成されている。本実施形態においては、係合突起104は、突起形成部102の周方向に等間隔に8つ形成されるとともに、突起形成部102の軸線方向に6~7つ形成されている。
【0030】
この場合、突起形成部102の軸線方向側に並ぶ各係合突起104は、同軸線方向に沿って一直線上に形成されるが、同軸線方向側に各係合突起104が千鳥状に配置されて形成されていてもよい。これにより、係合突起群103は、本実施形態においては、断続する複数の係合突起104によって全体として雄ネジ状に形成されている。
【0031】
係合突起104には、張出部105が形成されている。張出部105は、係合突起104とともに取付対象物WKの内部に引っ掛かって取付強度を増強させるための部分であり、各係合突起104の外縁部に突起形成部102の周方向側に張り出して形成されている。より具体的には、張出部105は、係合突起104の先端部と突起形成部102の表面との間に延びる稜線上に張り出して形成されている。
【0032】
この場合、張出部105は、係合突起104の先端部から突起形成部102の表面に向かって張出量が次第に増加するように形成されている。なお、係合突起104は、張出部105を省略して構成してもよいことは当然である。
【0033】
小凹凸形成部110は、小凹凸部111が形成される部分であり、突起形成部102よりも大きな外径の円柱状に形成されている。この場合、小凹凸形成部110の軸線方向の長さは、本実施形態においては突起形成部102における軸線方向の長さよりも短い長さに形成されているが、取付対象物WKへの取付強度に応じて適宜設定されるものであり、突起形成部102における軸線方向の長さよりも長い長さに形成されることもある。
【0034】
小凹凸部111は、取付対象物WKの内部に引っ掛かって取付強度を増強させるための部分であり、微小な凹凸で構成されている。この場合、小凹凸部111を構成する微小な凹凸は、係合突起104の突出量よりも少ない突出量または深さの凹凸であり、最小の突出量または深さとしては1mmが好適である。本実施形態においては、小凹凸部111は、無数の四角錐状の突起の集合であるアヤメ状のローレットが小凹凸形成部110の全面に形成されて構成されている。
【0035】
この場合、小凹凸部111は、小凹凸形成部110が突起形成部102よりも大きな外径に形成されているため、係合突起104よりも径方向外側に張り出して形成されている。なお、ローレットの深さは、一般的にピッチの1/2に形成されているが、同ピッチよりも深くまたは浅く形成されていてもよいものである。
【0036】
フランジ部112は、取付対象物WKの表層に端面を露出させた状態で埋設される部分であり、小凹凸形成部110よりも大きな外径の円板状に形成されている。すなわち、フランジ部112は、小凹凸形成部110に対してフランジ状に張り出して埋設部本体101の最大の外径部を構成している。このフランジ部112には、小凹凸形成部110とは反対側に雄ネジ部120が形成されている。
【0037】
雄ネジ部120は、被取付対象物が取り付けられる部分であり、フランジ部112の軸線上に延びる円柱体の表面に被取付対象物に設けられる雌ネジ(図示せず)に噛み合う雄ネジが形成されて構成されている。この雄ネジ部120の先端部には、案内突起121が形成されている。
【0038】
案内突起121は、雄ネジ部120を被取付対象物に設けられる雌ネジ内に嵌合させる際に斜めに方向に誤ってネジ嵌合することを防止するための部分であり、雄ネジ部120の先端部から軸線方向に延びる円柱状に形成されている。この場合、案内突起121は、雄ネジ部120よりも小径に形成されている。
【0039】
(埋設型連結具100の製造方法)
次に、このように構成された埋設型連結具100の製造方法について簡単に説明する。まず、この埋設型連結具100を製造する作業者は、第1工程として、図3に示すように、段付き円柱状の埋設部本体101および雄ネジが形成されていない丸棒状の雄ネジ部120をそれぞれ成形する。具体的には、作業者は、棒状または線状の金属材料に対して機械加工(例えば、鍛造加工や切削加工)を行うことにより突起形成部102、小凹凸形成部110、フランジ部112および雄ネジ部120をそれぞれ成形する。
【0040】
この場合、作業者は、突起形成部102の外周面上に凸部102aも成形する。凸部102aは、係合突起104および張出部105をそれぞれ成形するための予備成形部分であり、突起形成部102の軸線方向に沿って突出して延びるとともに突起形成部102の周方向に沿って間隔を空けて成形される。
【0041】
次に、作業者は、第2工程として、雄ネジ部120を成形する。具体的には、作業者は、フランジ部112から軸線方向に延びる丸棒体の外周面上に切削加工または転造加工を用いて雄ネジを加工する。この場合、作業者は、雄ネジ部120の先端部に案内突起121も併せて成形する。
【0042】
次に、作業者は、第3工程として、小凹凸形成部110の外周面上に小凹凸部111を成形する。具体的には、作業者は、小凹凸部111をローレット加工(転造加工)によって成形する。すなわち、作業者は、小凹凸形成部110の外周面上にローレット工具を押し付けて小凹凸形成部110の外周面上を組成変形させることで小凹凸部111を成形する。なお、作業者は、切削加工によって小凹凸部111を成形することもできる。
【0043】
次に、作業者は、第4工程として、突起形成部102の外周面上に係合突起104および張出部105をそれぞれ成形する。具体的には、作業者は、係合突起104および張出部105を転造加工によって成形する。すなわち、作業者は、係合突起104が全体として構成する雄ネジ形状を形成するための雄ネジ状の歯型が形成された金型を突起形成部102に押し付けることによって突起形成部102における主として凸部102aを塑性変形させて係合突起104を成形する。
【0044】
この係合突起104の成形時においては、係合突起104を成形する金型が突起形成部102の凸部102aに押し付けられることによって凸部102aおよび谷部102bがそれぞれ成形される。この場合、谷部102bが成形される部分における材料の一部が係合突起104の稜線側に逃げることによって張出部105が成形される。すなわち、張出部105は、係合突起104の転造加工時に同時に成形される。これらの各加工工程によって埋設型連結具100が製造される(図1参照)。なお、上記した第2工程、第3工程および第4工程は、実施する順番を適宜入れ替えることができる。
【0045】
(埋設型連結具100の作動)
次に、このように構成された埋設型連結具100の作動について説明する。まず、作業者は、埋設型連結具100および取付対象物WKをそれぞれ用意する。この場合、取付対象物WKは、樹脂材の射出成型によって予め別工程で成形される。
【0046】
次に、作業者は、図4に示すように、埋設型連結具100を取付対象物WKの表層に埋設する。具体的には、作業者は、取付対象物WKの表層に埋設型連結具100を直接圧入する圧入方式および取付対象物WKを加熱して軟化させた状態で埋設型連結具100を圧入する熱圧入方式を用いて埋設型連結具100を取付対象物WKの表層に埋設することができる。
【0047】
この場合、熱圧入方式には、超音波や誘導電流を用いて取付対象物WKを直接加熱することで軟化させて埋設型連結具100を圧入する方法のほか、超音波や誘導電流を用いて加熱した埋設型連結具100を取付対象物WKに圧入する方法がある。また、埋設型連結具100を取付対象物WKの表層に埋設する場合においては、取付対象物WKの表層に下穴を形成しておいて埋設型連結具100を圧入してもよいが、熱した取付対象物WKの表層に埋設型連結具100を圧入する場合には下穴をしょうりゃくすることもできる。
【0048】
また、作業者は、埋設型連結具100のフランジ部112の端面が取付対象物WKの表面に面一となるように埋設する。これにより、作業者は、雄ネジ部120が取付対象物WKの表面から起立した状態で埋設型連結具100を取付対象物WKに取り付けることができる。
【0049】
次に、作業者は、取付対象物WKに連結される被取付対象物を用意した後、この被取付対象物を取付対象物WKに連結する。具体的には、作業者は、被取付対象物が備える雌ネジを取付対象物WKから突出する埋設型連結具100の雄ネジ部120にねじ込む。この場合、埋設型連結具100は、係合突起104に加えて小凹凸部111が形成されているため、取付対象物WKに対する摩擦抵抗が増大して供廻りおよび引き抜けを抑制することができる。そして、埋設型連結具100は、被取付対象物が取り付けられた後においても、係合突起104に加えて小凹凸部111が形成されているため、取付対象物WKに対する摩擦抵抗が増大して供廻りおよび引き抜けを抑制することができる。
【0050】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、埋設型連結具100は、埋設部本体101に係合突起群103とは別に小凹凸部111を備えているため、取付対象物WKと埋設部本体101との間の摩擦抵抗を増加させて取付対象物WKに対する埋設部本体101の取付強度を向上させることができネジ締め時における供廻りおよび引き抜きを抑制して高い締付力に耐えて連結力を向上させることができる。
【0051】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、下記各変形例の説明においては、参照する図における上記実施形態と同様の部分については同じ符号を付すとともに重複する部分の説明は省略する。
【0052】
例えば、上記実施形態においては、小凹凸部111は、アヤメ状のローレットで構成した。しかし、小凹凸部111は、係合突起104の突出量よりも少ない突出量または深さの複数の凹凸で構成されていればよい。したがって、小凹凸部111は、例えば、埋設部本体101の軸線方向に延びる突起または溝、埋設部本体101の周方向に延びる突起または溝、小凹凸形成部110に規則的または不規則な配置で突出する突起または凹むディンプルなどで構成することができる。
【0053】
すなわち、小凹凸部111は、小凹凸形成部110の表面から突出する突起のほかに、小凹凸形成部110の表面から陥没する凹状の凹みで構成することができる。また、小凹凸部111は、小凹凸形成部110の全面に形成することに代えて小凹凸形成部110の一部にのみ形成することもできる。
【0054】
また、上記実施形態においては、小凹凸部111は、係合突起104よりも埋設部本体101の径方向外側に張り出して形成した。しかし、小凹凸部111は、係合突起104と同じ径方向位置(つまり、面一)または係合突起104よりも径方向内側に形成することもできる。
【0055】
また、上記実施形態においては、小凹凸部111は、埋設部本体101における係合突起群103よりも取付対象物WKの表面側となる部分(換言すれば、雄ネジ部120側の部分)に形成した。しかし、小凹凸部111は、図5に示すように、埋設部本体101における係合突起群103よりも取付対象物WKの表面側(雄ネジ部120側)とは反対側の突起形成部102の先端部側に形成することもできる。
【0056】
この場合、小凹凸部111は、係合突起104よりも埋設部本体101の径方向外側に張り出して形成してもよいし、係合突起104と面一に形成してもよいし、係合突起104よりも径方向内側に形成してもよい。これらによれば、埋設型連結具100は、取付対象物WK内に圧入する際における初期の大きな圧入抵抗を抑えて挿入し易くすることができる。
【0057】
また、図5において埋設部本体101は、突起形成部102とフランジ部112との間に小凹凸部111が形成されていない滑らかな曲面からなる円柱状の中間部113を形成した。これにより、埋設型連結具100は、係合突起群103および小凹凸部111を取付対象物WKの表層の奥深くに配置することができる。しかし、埋設部本体101は、突起形成部102とフランジ部112とを直接繋げて形成して中間部113を省略して構成することもできる。
【0058】
また、小凹凸部111は、埋設部本体101における係合突起群103よりも取付対象物WKの表面側(雄ネジ部120側)および同表面側とは反対側の突起形成部102の先端部側の両方にそれぞれ形成することもできる。すなわち、小凹凸部111は、図5における中間部113にも形成することで、係合突起群103の軸線方向の両側に形成することもできる。
【0059】
また、中間部113は、係合突起群103に隣接する位置に係合突起群103よりも径方向外側に張り出して形成した。すなわち、中間部113は、本発明に係る隣接張出部に相当する。そして、この中間部113には、突起形成部102に対して連続的に外径が小さくなるテーパ部114が形成されているとともに、このテーパ部114に係合突起群103を構成する係合突起104の一部がテーパ部突起部115として形成されている。
【0060】
これにより、埋設型連結具100は、取付対象物WKへの圧入時における圧入抵抗の増加を抑えつつ取付対象物WKへの装着後における取付強度を向上させることができる。なお、テーパ部114は、上記実施形態における小凹凸形成部110に形成することもできる。すなわち、上記実施形態における小凹凸形成部110は、本発明に係る隣接張出部に相当する。
【0061】
また、テーパ部突起部115は、係合突起104と同じ形状に形成してもよいが、係合突起104とは異なる形状に形成してもよい。また、図5においては、テーパ部突起部115は、埋設部本体101の軸線方向に沿って並んだ係合突起104に隣接して同一の軸線方向状に形成する(換言すれば、周方向において同一の位置に形成)ことで取付対象物WKへの圧入時における圧入抵抗の増加を抑えることができる。しかし、テーパ部突起部115は、係合突起104に対して周方向において異なる位置に形成することで埋設型連結具100の取付対象物WKからの引き抜き抵抗力を向上させることができる。なお、このテーパ部突起部115は、小凹凸部111が形成されていない埋設型連結具100に対しても形成することができる。
【0062】
また、上記実施形態においては、埋設型連結具100は、雄ネジ部120を備えて構成した。しかし、埋設型連結具100は、図6に示すように、雄ネジ部120に代えて雌ネジ部130を備えて構成することもできる。この場合、雌ネジ部130は、筒状に形成した埋設部本体101の内周部に形成することができる。なお、埋設型連結具100は、雄ネジ部120と雌ネジ部130とを同時に備えて構成することもできる。
【0063】
また、上記実施形態においては、埋設部本体101は、柱状に形成した。しかし、埋設部本体101は、有底筒状に形成することができる。
【0064】
また、上記実施形態においては、フランジ部112は、外周面を埋設部本体101の軸線方向に平行な面で構成した。しかし、フランジ部112は、図7に示すように、外周面を径方向外側に凸状に膨らむ曲面に形成することもできる。これによれば、埋設型連結具100は、取付対象物WKに対して埋設部本体101を引き抜き難くすることができる。なお、フランジ部112は、外周面が凸状に膨らむ曲面以外に凸状に突出する段付き形状に形成することもできる。
【0065】
また、上記実施形態においては、埋設型連結具100は、係合突起104を突起形成部102の周方向に等間隔に8つ形成するとともに、突起形成部102の軸線方向に6~7つ形成して構成した。しかし、係合突起104の形成数は、必ずしも上記実施形態に限定されるものではない。したがって、埋設型連結具100は、係合突起104を突起形成部102の周方向に等間隔または異間隔に7つ以下または9つ以上形成することができるとともに、突起形成部102の軸線方向に5つ以下または8つ以上形成して構成することもできる。
【0066】
また、上記実施形態においては、係合突起群103は、全体として雄ネジ状に形成して構成した。しかし、係合突起群103は、必ずしも雄ネジ状に形成する必要はなく、係合突起104を突起形成部102上にらせん状以外に規則的またはランダムに配置して雄ネジ状以外の形状に形成されていてもよい。例えば、係合突起群103は、係合突起104を周方向に沿って断続的に形成したリング状に形成することもできる。
【0067】
また、上記実施形態においては、埋設部本体101は、フランジ部112を備えて構成した。しかし、埋設部本体101は、フランジ部112を省略して構成することもできる。
【0068】
また、上記実施形態においては、埋設型連結具100は、成形された取付対象物WKに対して圧入した。しかし、埋設型連結具100は、成形された取付対象物WKに対して圧入以外の方法、例えば、取付対象物WKに形成した穴や同穴に形成した雌ネジにねじ込んで取付対象物WKに設置することができる。すなわち、上記実施形態における埋設型連結具100は、一旦成形された取付対象物WKに対して圧入やねじ込みによって装着されるアウトサートナットである。しかし、埋設型連結具100は、埋設型連結具100が埋設される取付対象物WKに対して取付対象物WKの成形時に取付対象物WK内に一体的に埋設されて装着されるインサートナットとして構成することができる。例えば、埋設型連結具100は、埋設型連結具100が配置された成形金型内に溶融した樹脂材を流し込んで取付対象物WKを一体的に射出成形するようにしてもよい。
【0069】
また、上記実施形態においては、埋設型連結具100を金属材料で構成した。しかし埋設型連結具100は、金属以外の材料、例えば、樹脂材や木材で構成することもできる。したがって、埋設型連結具100は、自走式車両におけるエンジン部品以外の部品、例えば、机や椅子などの家具やコンクリートブロックなどに埋設して用いることができる。
【符号の説明】
【0070】
WK…取付対象物、
100…埋設型連結具、101…埋設部本体、102…突起形成部、102a…凸部、102b…谷部、103…係合突起群、104…係合突起、105…張出部、
110…小凹凸形成部、111…小凹凸部、112…フランジ部、113…中間部、114…テーパ部、115…テーパ部突起部、
120…雄ネジ部、121…案内突起、
130…雌ネジ部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7