(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】骨伝導イヤホン及び骨伝導イヤホンの使用方法
(51)【国際特許分類】
H04R 1/00 20060101AFI20240401BHJP
H04R 1/10 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
H04R1/00 317
H04R1/10 104A
H04R1/10 104Z
H04R1/10 101A
(21)【出願番号】P 2023197708
(22)【出願日】2023-11-21
【審査請求日】2023-11-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520470981
【氏名又は名称】ソリッドソニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100170025
【氏名又は名称】福島 一
(72)【発明者】
【氏名】久保 貴弘
【審査官】冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-094986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00
H04R 1/10
H04R 25/00-25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声信号を発信する発音部と、
前記発信された音声信号を所定の電気信号に変換する制御回路と、
ユーザーの耳に装着可能な形状を有し、前記変換された電気信号に基づいて、前記音声信号に対応した振動を発生する振動部と、
生体適合性を有する成分で構成され、可塑性を有し、前記振動部の外表面に取り付け可能である粘土と、
を備え、
前記粘土を前記振動部の外表面に取り付けて、前記ユーザーの外耳、外耳道、又は両方の耳内部表面に密着させることで、前記粘土を前記耳内部表面に適合する形状に変形させて、当該変形後の粘土を、前記振動部の振動を前記ユーザーの骨組織に伝えるイヤホンとする、
骨伝導イヤホン。
【請求項2】
前記発音部は、外部の音を収集して、収集した音に対応する音声信号を発信するマイク部であり、
前記ユーザーの左右一対の耳に対応して、前記ユーザーの左右側に左右一対の前記発音部と、前記制御回路とを設け、前記ユーザーの左右一対の耳に左右一対の前記振動部と、前記粘土とを設置する、
請求項1に記載の骨伝導イヤホン。
【請求項3】
前記振動部の外周部を装着可能なリング状の外枠部を更に備える、
請求項1に記載の骨伝導イヤホン。
【請求項4】
音声信号を発信する発音部と、
前記発信された音声信号を所定の電気信号に変換する制御回路と、
ユーザーの耳に装着可能な形状を有し、前記変換された電気信号に基づいて、前記音声信号に対応した振動を発生する振動部と、
生体適合性を有する成分で構成され、可塑性を有し、前記振動部の外表面に取り付け可能である粘土と、
を備える骨伝導イヤホンの使用方法であって、
前記粘土を前記振動部の外表面に取り付けて、前記ユーザーの外耳、外耳道、又は両方の耳内部表面に密着させることで、前記粘土を前記耳内部表面に適合する形状に変形させて、当該変形後の粘土を、前記振動部の振動を前記ユーザーの骨組織に伝えるイヤホンとする、
骨伝導イヤホンの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨伝導イヤホン及び骨伝導イヤホンの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、密着性や音量を高めるイヤホン(耳挿入具ともいう)に関する技術が多種存在する。例えば、特表2017-521021号公報(特許文献1)には、本体と、光源と、を備えるカスマイズ可能な耳挿入具及び方法が開示されている。本体は、光硬化性ポリマーにより構成されており、第一の形状において、ユーザーの外耳道へ挿入されるように設定されている。光源は、本体に隣接しては位置され、光源から発生した光が、本体を、ユーザーの外耳、又は外耳道、又は両方の内部表面に適合する第二の形状に硬化させる。これにより、ユーザーの外耳、又は外耳道、又は両方の内部に適合するカスタマイズ可能な耳挿入具及び方法を提供することが出来るとしている。
【0003】
又、特開2012-222682号公報(特許文献2)には、骨伝導振動部と、正面側凸部と、背面側凸部と、を備える骨伝導イヤホンが開示されている。骨伝導振動部は、楕円体上に形成され、且つ、音声振動を発生させる。正面側凸部は、骨伝導振動部の長さ方向の一端部側、且つ、厚さ方向の正面側に突設される。背面側凸部は骨伝導振動部の長さ方向の一端部側、且つ、厚さ方向の背面側に突設される。骨伝導振動部の長さ方向の一端部側を、耳甲介腔の窪みに挿入し、骨伝導振動部の幅方向の下部が耳甲介腔の窪みの底部に密着するように回転させて装着すると、骨伝導イヤホンは、耳珠と、耳甲介腔と、対珠と、外耳道の入口周辺に圧接する。これにより、音声情報の再現性に優れると共に、耳甲介腔の窪みに挿入し易くかつ装着後の支持安定性に優れた骨伝導イヤホンを提供することが出来るとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2017-521021号公報
【文献】特開2012-222682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在、骨組織を介して音声の振動を内耳へ伝達する骨伝導イヤホンが登場してきている。ここで、一般的な骨伝導イヤホンでは、振動部分をユーザーの耳のこめかみ付近に設置することで、ユーザーの頭蓋骨等の骨組織を振動させて、ユーザーの内耳を直接震わせて、ユーザーの脳へ音声を伝える。そのため、骨伝導イヤホンは、ユーザーの外耳道を塞ぐことが無いことから、例えば、外部の音も聞き取ることが可能となり、日常的に使用したり、運動中に使用したりすることが出来る。
【0006】
しかしながら、骨伝導イヤホンでは、外耳道が開放されることから、ユーザーにとって音声振動とともに外部からの雑音が混ざって認識される。そのため、ユーザーは、音声を正確に認識し難いという課題がある。又、骨伝導イヤホンは、ユーザーの耳のこめかみ付近に設置されることから、ユーザーが眼鏡を掛ける場合は、耳の周囲に眼鏡の先セル(モダン)や骨伝導イヤホンが密集し、ユーザーの耳の周囲に違和感が生じるという課題がある。
【0007】
ここで、特許文献1に記載の技術では、光硬化性ポリマーを用いることで、ユーザーの耳に適合する形の耳挿入具を作ることが出来るが、光源を使って光硬化処理を行う必要がある。又、特許文献1に記載の技術では、イヤホンとして使用する場合に、音孔やスピーカー等を予め設定する必要があり、手間や時間が掛かるという課題がある。
【0008】
又、特許文献2に記載の技術では、骨伝導振動部を耳珠と対珠との間に挟み込むと、骨伝導振動部が発生した振動を減衰することなく耳の内部に伝えることが出来るが、骨伝導振動部のサイズとして、例えば、S、M、L等の複数種類のサイズを用意する必要がある。そのため、万人の耳穴に合わせることは難しく、骨伝導振動部との密着性が弱く、音声振動が伝わり難かったり、外部からの雑音が入ったりして、ユーザーが音声を正確に認識することが出来ないという課題がある。
【0009】
特に、聴覚障がい者や難聴者に対しては、音声を正確に伝えることが重要である。又、上述のように、サイズの種類によっては、万人の耳穴に合致させることが難しいため、装着感が劣ったり、遮音性や音量が悪かったりするという課題があった。そのため、装着感に優れ、且つ、遮音性や音量が共に優れる骨伝導イヤホンが求められていた。
【0010】
そこで、本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、ユーザーの耳への装着感を高めるとともに、音量と遮音性とを向上させることが可能な骨伝導イヤホン及び骨伝導イヤホンの使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る骨伝導イヤホンは、発音部と、制御回路と、振動部と、粘土と、を備える。発音部は、音声信号を発信する。制御回路は、前記発信された音声信号を所定の電気信号に変換する。振動部は、ユーザーの耳に装着可能な形状を有し、前記変換された電気信号に基づいて、前記音声信号に対応した振動を発生する。粘土は、生体適合性を有する成分で構成され、可塑性を有し、前記振動部の外表面に取り付け可能である。本発明に係る骨伝導イヤホンは、前記粘土を前記振動部の外表面に取り付けて、前記ユーザーの外耳、外耳道、又は両方の耳内部表面に密着させることで、前記粘土を前記耳内部表面に適合する形状に変形させて、当該変形後の粘土を、前記振動部の振動を前記ユーザーの骨組織に伝えるイヤホンとする。
【0012】
又、本発明に係る骨伝導イヤホンの使用方法は、発音部と、制御回路と、振動部と、粘土と、を備える骨伝導イヤホンの使用方法である。本発明に係る骨伝導イヤホンの使用方法は、前記粘土を前記振動部の外表面に取り付けて、前記ユーザーの外耳、外耳道、又は両方の耳内部表面に密着させることで、前記粘土を前記耳内部表面に適合する形状に変形させて、当該変形後の粘土を、前記振動部の振動を前記ユーザーの骨組織に伝えるイヤホンとする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ユーザーの耳への装着感を高めるとともに、音量と遮音性とを向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る骨伝導イヤホンの一例を示す概念図と、振動部から粘土までの一例を示す拡大図とである。
【
図2】本発明の実施形態に係る骨伝導イヤホンの粘土をユーザーの耳に取り付ける前後の一例を示す断面図と正面図とである。
【
図3】本発明の実施形態に係る骨伝導イヤホンの振動部の振動が伝わる様子の一例を示す断面図と正面図とである。
【
図4】本発明の実施形態に係る骨伝導イヤホンにペンダントバンドを設けた場合の一例を示す正面図(
図4A)と、骨伝導イヤホンの発音部と制御回路とが無線通信する場合の一例を示す正面図(
図4B)とである。
【
図5】本発明の実施形態に係る骨伝導イヤホンに外枠部を設けた場合の振動部から粘土までの一例を示す拡大図と、粘土をユーザーの耳に取り付けた後の一例を示す断面図とである。
【
図6】実施例1と比較例1の骨伝導イヤホンの一例を示す写真である。
【
図7】実施例1-2と比較例1の骨伝導イヤホンと評価結果の表である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、添付図面を参照して、本発明に係る実施形態について説明し、本発明の理解に供する。尚、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0016】
本発明の実施形態に係る骨伝導イヤホン1は、
図1に示すように、発音部10と、制御回路11と、振動部12と、粘土13とを備える。尚、
図1では、本発明の実施形態において、発音部10と、制御回路11と、振動部12と、粘土13とは、それぞれ左右一対設けている。
【0017】
ここで、発音部10は、音声信号を発信し、制御回路11は、発信された音声信号を所定の電気信号に変換する。又、発音部10は、例えば、外部の音を収集して、収集した音に対応する音声信号を発信するマイク部を挙げることが出来る。又、制御回路11は、例えば、電源部を有し、電線によって発音部10と電気的に接続されており、発音部10からの音声信号に電源部の電圧を利用して、音声信号を電気信号に変換する変換回路を挙げることが出来る。制御回路11は、音声信号の増幅機能を果たす。
【0018】
又、振動部12は、ユーザーの耳に装着可能な形状を有し、変換された電気信号に基づいて、音声信号に対応した振動を発生する。ここで、振動部12は、例えば、ユーザーの耳甲介腔に収納可能な小型の円柱状の形状であり、振動部12は、例えば、圧電セラミックスで構成された振動子である。又、振動部12は、電線によって制御回路11と電気的に接続されており、制御回路11からの電気信号を受信することで、電気信号に対応して振動する。電気信号は、電圧を基準とした電圧信号や電流を基準とした電流信号を含み、例えば、振動部12が、圧電セラミックスの場合は、制御回路11は、電圧信号を振動部12に入力し、振動部12が、磁気式であれば、制御回路11は、電流信号を振動部12に入力するであろう。
【0019】
又、粘土13は、生体適合性を有する成分で構成され、可塑性を有し、振動部12の外表面(外面)に取り付け可能である。ここで、生体適合性とは、生体組織と親和性があり、異物反応や拒絶反応等を生じない性質を意味し、本発明の実施形態では、耳の表面に接触しても異物反応や拒絶反応等を生じない性質を挙げることが出来る。又、可塑性とは、固体に力を加えて変形を与えた場合に、その力を取り去っても、変形(歪み)がそのまま残る性質(塑性ともいう)を意味し、本発明の実施形態では、ユーザーが力を加えることで、様々な形状に変形することが出来る性質を挙げることが出来る。
【0020】
又、本発明の実施形態に係る骨伝導イヤホン1は、
図2に示すように、粘土13を振動部12の外表面に取り付けて、ユーザーの外耳OE、外耳道EC、又は両方の耳内部表面OES、ECSに密着させることで、粘土13を耳内部表面OES、ECSに適合する形状に変形させて、当該変形後の粘土13を、振動部12の振動をユーザーの骨組織に伝えるイヤホンとする。
図2では、粘土13が、ユーザーの外耳OEの耳内部表面OESと外耳道ECの耳内部表面ECSの形状に合致する形状に変形している。
【0021】
これにより、ユーザーの耳への装着感を高めるとともに、音量と遮音性とを向上させることが可能となる。即ち、本発明の実施形態では、振動部12と、ユーザーの耳(外耳OEの耳内部表面OES、外耳道ECの耳内部表面ECS)との間に、可塑性の粘土13をイヤホンとして設けることで、粘土13が、ユーザーの耳の形状に合致する形状によって、振動部12をユーザーの耳に隙間なく密着させることが可能となる。そのため、ユーザーが、多少動いたとしても、粘土13が、振動部12とユーザーの耳との密着性を保持する保持手段として機能し、ユーザーの耳への装着感を高めることが可能となる。
【0022】
ここで、本発明の実施形態では、単に粘土13を耳内部表面OES、ECSに密着させるだけでも良いし、粘土13を耳珠と対耳珠に挟み込むようにして耳内部表面OES、ECSに密着させても構わない。粘土13を耳珠と対耳珠に挟み込む形にすれば、振動部12の振動が、ユーザーの耳へより伝わり易くなるであろう。
【0023】
特に、本発明の実施形態では、振動部12の外表面に粘土13を直接取り付けているため、振動部12の振動を粘土13を介して直接ユーザーの耳に伝えることが可能である。例えば、振動部12と粘土13との間に他の物質を設けた場合、振動が他の物質を通過して粘土13へ伝わることになるため、振動の波形が変わり、目的の振動がユーザーの耳に伝わらない可能性がある。従って、振動部12の外表面に粘土13を設ける点は、重要である。
【0024】
又、本発明の実施形態では、粘土13が、振動部12をユーザーの耳に隙間なく密着させることから、粘土13の接触面積を広くすることが可能であり、この接触面積の増大により、
図3に示すように、粘土13を介して、振動部12の振動を内部の骨組織に直接伝達する。そのため、ユーザーは、振動部12の振動をしっかりと骨組織で受け止めることが出来ることから、音声を正確に認識することが可能となる。つまり、粘土13を設けることで、骨伝導の能力を十分に引き出し、振動部12の振動を最大限に骨組織に伝えることが出来るのである。これにより、ユーザーに伝わる音量を向上させることが可能となる。
【0025】
更に、本発明の実施形態では、粘土13が、外耳道ECの形状に沿って合致することで、粘土13が、外部の音を遮断するイヤホンとして機能する。そのため、ユーザーには、振動部12の振動しか骨組織に伝わらない環境にすることが可能となる。つまり、粘土13が遮音性を高めることで、外部の雑音が無い状態で、ユーザーに音声を鮮明に伝えることが可能となる。特に、聴覚障がい者や難聴者に対しては、音声を正確に伝えることが可能となり、画期的な発明となる。
【0026】
そして、本発明の実施形態では、粘土13が、振動部12の保持手段として機能することで、耳の周囲に骨伝導イヤホンを設ける必要が無くなり、ユーザーが眼鏡を掛ける場合であっても、ユーザーの耳の周囲に違和感が生じさせることは無い。
【0027】
又、粘土13は、ユーザーの外耳OEの耳内部表面OESと外耳道ECの耳内部表面ECSの形状に合わせて変形させることが出来ることから、どのようなユーザーの耳に対しても調整することが可能となる。そして、粘土13の可塑性により、骨伝導イヤホン1のメーカーは、複数種類の形状のイヤーパッドやイヤーピースを用意する必要が無くなり、メーカーにとっても部品点数の削減に繋げることが出来る。そして、粘土13が、長期使用により劣化したとしても、新しい粘土13に取り換えれば済むため、ユーザーにとってメンテナンスし易いという利点もある。
【0028】
このように、本発明では、ユーザーの耳への装着感を高め、外部の音に対する遮音性を高めることで、骨伝導の能力を最大限に引き出し、ユーザーに正確な音声を伝えることが可能となるのである。
【0029】
ここで、発音部10の構成に特に限定は無いが、例えば、
図1に示すように、発音部10が、外部の音を収集して、収集した音に対応する音声信号を発信するマイク部であっても良いし、その他に、音楽プレイヤーやラジオ等の音楽や音声を発声する発声装置であっても構わない。
【0030】
又、制御回路11の構成に特に限定は無いが、例えば、
図1に示すように、単純に、音声信号を電気信号に変換する変換回路であっても良いし、その他に、電気信号の大小を調整する調整回路(音量調整回路に対応する)や電源の入り切りを制御するスイッチ部、音声信号に含まれるノイズ信号を遮断するフィルタ回路のいずれか、又はこれらの組み合わせを更に備えても構わない。
【0031】
又、振動部12の構成に特に限定は無いが、例えば、
図1に示すように、圧電セラミックスで構成された振動子でも良いし、電気信号に基づいて振動可能な水晶振動子や圧電素子、磁気式振動子でも構わない。
【0032】
又、振動部12の形状は、ユーザーの耳に装着可能な形状であれば、特に限定は無いが、例えば、小型の円柱状の形状でも良いし、細長いピンが円盤に接続された形状でも良いし、長尺状の形状でも構わない。振動部12の形状が、ユーザーの耳穴に挿入可能な形状であれば、振動部12の振動を更に鮮明に耳の内部に伝えることが可能である。又、振動部12の形状は、一般的な形状として、円柱、多角柱、円筒、多角筒、円錐、多角錐等を挙げても良いし、一般的なイヤホンのサイズのように、縦横高さのサイズがそれぞれ1cm以下の形状を挙げても良い。又、粘土13が取り付けられる振動部12の外表面を一方の外表面とした場合、一方の外表面に対向する位置に存在する振動部12の他方の外面(外表面)に外面カバー部12aを設けても良く、この外面カバー部12aは、振動部12の形状に応じて適宜設計変更される。
【0033】
又、振動部12は、必要に応じて、カバー部を設けても構わない。カバー部は、例えば、裏面(内面)を振動部12の外面に密着して、当該振動部12の外面を覆うことになる。この場合、カバー部の外表面に粘土13が取り付けられる。
【0034】
又、粘土13の成分に特に限定は無いが、例えば、生体適合性を有する成分として、シリコンやポリウレタン、ポリエチレン、テトラフルオロエチレン、ポリアミノ酸エステル、ポリジメチルシロキサン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)等を挙げることが出来る。又、粘土13は、可塑性があれば良いため、例えば、軟質なエラストマーや軟質の硬化性樹脂であっても構わない。
【0035】
又、カバー部の構成に特に限定は無いが、例えば、粘土13の成分に対応する成分で構成された樹脂を挙げることが出来る。例えば、粘土13の成分が、シリコンであれば、カバー部の成分は、シリコン樹脂又はシリコンゴムを挙げることが出来る。その他に、粘土13の成分が、ポリウレタンであれば、カバー部の成分は、ポリウレタン樹脂又はポリウレタンゴムを挙げることが出来る。カバー部が、粘土13の成分と同じ成分とすることで、振動がカバー部を通過したとしても、粘土13と同じ成分であることから、粘土13を通過したものと同じとなり、振動の波形の変動を抑えることが可能となる。
【0036】
又、カバー部の裏面を振動部12の外面に密着させる方法に特に限定は無いが、例えば、カバー部の成分に対応する成分の接着剤や接着テープを用いて、カバー部の裏面を振動部12の外面に密着させる方法を挙げることが出来る。
【0037】
又、振動部12に取り付けられる粘土13の構成に特に限定は無いが、例えば、
図1に示すように、振動部12に対して粘土13が別体で構成されても良いし、インサート成形等によって、振動部12に対して粘土13が一体として構成されても構わない。
【0038】
又、骨伝導イヤホン1の構成に特に限定は無いが、
図1に示すように、Cの字状の形状で構成され、両方の先端部に発音部10と制御回路11とをそれぞれ内蔵したネックバンド14を備えても良い。これにより、ユーザーへの装着性を向上させることが可能となる。又、ネックバンド14の先端部の制御回路11から電線を介して振動部12に電気的に接続して、ネックバンド14の先端部の発音部10と振動部12とを離すことで、発音部10がマイク部である場合に、マイク部10と振動部12との間で発生するハウリングを防止することが出来る。又、発音部10は、外部の音を収集して、収集した音に対応する音声信号を発信するマイク部とし、ネックバンド14のように、ユーザーの左右一対の耳に対応して、ユーザーの左右側に左右一対の発音部10と、制御回路11とを設け、ユーザーの左右一対の耳に左右一対の振動部12と、粘土13とを設置しても良い。これにより、それぞれの振動部12は、それぞれの発音部10の音に対応して振動を発生させることから、ユーザーの左右の耳のそれぞれに音を独立して伝えることが可能となり、ユーザーに対して音が発生している方向を示す音の方向感を体験させることが出来る。
【0039】
又、骨伝導イヤホン1の構成は、
図4Aに示すように、Oの字状の形状で構成され、中央部に発音部10と制御回路11とを内蔵したペンダントバンド15を備えても良い。この場合、左右一対の振動部12と、粘土13とが設けられ、左右一対の振動部12が、ペンダントバンド15の中央部の発音部10で収集された音を共通して振動を発生させることから、ユーザーの左右の耳に共通の音を伝えることが可能となり、ユーザーに音声を正確に伝えることが出来る。尚、
図4Aでは、制御回路11において、音量を調整するための音量ボタン11a(音量を上げるボタンと、音量を下げるボタン)と、電源の入り切りを制御するためのスイッチ11bとが設けられている。
【0040】
又、骨伝導イヤホン1の構成は、
図4Bに示すように、発音部10と、制御回路11とを分離して、発音部10に無線発信部16を設け、左右一対の振動部12に制御回路11と無線受信部17とをそれぞれ設け、発音部10が、無線発信部16を使って、音声信号を無線で発信し、制御回路11が、無線受信部17を使って、音声信号を無線で受信し、電気信号に変換して振動部12に伝えるように構成しても良い。この場合は、左右一対の振動部12と制御回路11とが、発音部10と分離されることから、電線等のコードがユーザーに引っ掛かることが無くなり、ユーザーの装着感や操作性を向上させることが可能となる。尚、音量ボタン11aやスイッチ11bは、他の制御回路18を設けて制御すれば良い。
【0041】
又、骨伝導イヤホン1の構成について、
図5に示すように、振動部12の外周部を装着可能なリング状の外枠部19を更に備えても良い。外枠部19は、リング状であれば、特に限定は無く、Cの字状であっても、O字状であっても構わない。又、外枠部19は、例えば、耳甲介や耳珠に装着可能な楕円状であっても良いし、耳珠と対耳珠に挟み込む形であっても構わない。外枠部19を振動部12の外周部に装着させることで、外枠部19に粘土13を沿わせて、ユーザーの耳内部表面OES、ECSに密着させることが可能となる。又、外枠部19が、ユーザーの耳甲介や耳珠に引っ掛かることで、より強固に振動部12と粘土13とユーザーの耳とを密着させることが可能となり、振動部12の振動をしっかりと骨組織に伝えることが可能となる。ここで、外枠部19の成分に特に限定は無いが、例えば、粘土13の成分に対応する成分で構成された樹脂を挙げることが出来る。又、外枠部19の線径(厚み)に特に限定は無いが、例えば、Oリングのように、線径が1.0mm~5.0mmの範囲内を挙げることが出来る。
【0042】
又、本発明の実施形態では、骨伝導イヤホン1の使用方法として提供することが出来る。骨伝導イヤホン1の使用方法は、上述のように、発音部10と、制御回路11と、振動部12と、粘土13と、を備える骨伝導イヤホンの使用方法であって、粘土13を振動部12の外表面に取り付けて、ユーザーの外耳OE、外耳道EC、又は両方の耳内部表面OES、ECSに密着させることで、粘土13を耳内部表面OES、ECSに適合する形状に変形させて、当該変形後の粘土13を、振動部12の振動をユーザーの骨組織に伝えるイヤホンとする。これにより、ユーザーの耳への装着感を高めるとともに、音量と遮音性とを向上させることが可能となる。
【実施例】
【0043】
以下に、本発明における実施例、比較例等を具体的に説明するが、本発明の適用が本実施例などに限定されるものではない。
【0044】
(骨伝導イヤホンの製造)
図1に示す骨伝導イヤホンを参考に、本発明に係る骨伝導イヤホンを製造した。振動部12は、圧電セラミックスを採用し、粘土13は、シリコン粘土又はポリウレタン粘土を採用した。粘土13がシリコン粘土の場合を実施例1とし、粘土13がポリウレタン粘土の場合を実施例2とした。一方、粘土13の代わりに、市販のイヤーチップ、イヤーパッド、バンパーを振動部12に被せた骨伝導イヤホンを比較例1として製造した。
図6には、実施例1と比較例1の骨伝導イヤホンの一例を示す。
【0045】
(評価方法)
次に、製造した骨伝導イヤホンの性能評価を行った。性能評価の項目は、(1)装着感、(2)音量、(3)遮音性である。
【0046】
(1)装着感
所定数の試験者に骨伝導イヤホンを装着してもらい、装着具合が良いかどうかをアンケートで聞いた。装着具合の評価項目には、装着具合が良い、装着具合が悪いの2種類を用意して、試験者数分を集計し、装着具合が良いという評価結果数を試験者数で除算した除算値を装着感良好割合(%)として算出し、以下の基準によってランク付けをした。「〇」の評価が製品として合格である。
<基準>
○:装着感良好割合が75%~100%の場合
△:装着感良好割合が50%~75%の場合
×:装着感良好割合が0%~50%の場合
【0047】
(2)音量
所定数の試験者に骨伝導イヤホンを装着してもらい、発音部10でクラシック音楽等の市販の音楽を流して、音量が良いかどうかをアンケートで聞いた。この際、制御回路11では、日常生活の普通の会話レベルの音量の60dBよりも低い音量の30dBとし、出力される音楽の音量が小さくても、骨伝導イヤホンで試験者に音量が届いているかを確認した。音量の評価項目には、音量が良い、音量が悪いの2種類を用意して、試験者数分を集計し、音量が良いという評価結果数を試験者数で除算した除算値を音量良好割合(%)として算出し、以下の基準によってランク付けをした。「〇」の評価が製品として合格である。
<基準>
○:音量良好割合が75%~100%の場合
△:音量良好割合が50%~75%の場合
×:音量良好割合が0%~50%の場合
【0048】
(3)遮音性
所定数の試験者に骨伝導イヤホンを装着してもらい、外部に発声装置を用意して、クラシック音楽等の市販の音楽を流して、外部の音楽が遮断されているかどうかという点から、遮音性が良いかどうかをアンケートで聞いた。この際、発声装置では、音楽の音量を、耳障りが悪いとされるレベルの音量の100dBとし、出力される音楽の音量が大きくても、骨伝導イヤホンが遮音されているかを確認した。遮音性の評価項目には、遮音性が良い、遮音性が悪いの2種類を用意して、試験者数分を集計し、遮音性が良いという評価結果数を試験者数で除算した除算値を遮音性良好割合(%)として算出し、以下の基準によってランク付けをした。「〇」の評価が製品として合格である。
<基準>
○:遮音性良好割合が75%~100%の場合
△:遮音性良好割合が50%~75%の場合
×:遮音性良好割合が0%~50%の場合
【0049】
(評価結果)
評価結果を確認すると、
図7に示すように、比較例1では、(1)装着感では、「△」であったが、(2)音量と(3)遮音性は、ともに「×」であり、製品として不合格であった。一方、実施例1、2では、(1)装着感と(2)音量と(3)遮音性が、ともに「〇」であり、製品として合格であった。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上のように、本発明に係る骨伝導イヤホン及び骨伝導イヤホンの使用方法は、一般的な骨伝導イヤホンに限らず、聴覚障がい者や難聴者向けの骨伝導イヤホンの分野において有用であり、ユーザーの耳への装着感を高めるとともに、音量と遮音性とを向上させることが可能な骨伝導イヤホン及び骨伝導イヤホンの使用方法として有効である。
【符号の説明】
【0051】
1 骨伝導イヤホン
10 発音部
11 制御回路
12 振動部
13 粘土
【要約】 (修正有)
【課題】ユーザーの耳への装着感を高めるとともに、音量と遮音性とを向上させる骨伝導イヤホン及び骨伝導イヤホンの使用方法を提供する。
【解決手段】骨伝導イヤホン1において、発音部10は、音声信号を発信し、制御回路11は、発信された音声信号を所定の電気信号に変換する。振動部12は、ユーザーの耳に装着可能な形状を有し、変換された電気信号に基づいて、音声信号に対応した振動を発生する。粘土13は、生体適合性を有する成分で構成され、可塑性を有し、振動部12の外表面に取り付け可能である。粘土13を振動部12の外表面に取り付けて、ユーザーの外耳、外耳道又は両方の耳内部表面に密着させることで、粘土13を耳内部表面に適合する形状に変形させて、変形後の粘土13を、振動部12の振動をユーザーの骨組織に伝えるイヤホンとする。
【選択図】
図4