(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】杭頭処理構造および杭頭処理工法
(51)【国際特許分類】
E02D 27/12 20060101AFI20240401BHJP
E02D 5/34 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
E02D27/12 Z
E02D5/34 A
(21)【出願番号】P 2021032424
(22)【出願日】2021-03-02
【審査請求日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】P 2020052735
(32)【優先日】2020-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】510333025
【氏名又は名称】パイルフォーラム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174207
【氏名又は名称】筬島 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】加倉井 正昭
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-205038(JP,A)
【文献】特開2005-307722(JP,A)
【文献】特開2006-052550(JP,A)
【文献】特開2009-091899(JP,A)
【文献】特開2000-027198(JP,A)
【文献】特許第3455713(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/00-27/52
E02D 5/22- 5/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭頭部の外周に鋼管を備えた基礎杭の前記杭頭部外周面に、基礎構造物と接合するためのアンカー鉄筋を複数本設けてなる杭頭処理構造であって、
前記複数本のアンカー鉄筋はそれぞれ、異形鉄筋を重ねて溶接することで一体化されており、前記異形鉄筋を前記鋼管に溶接することで前記複数本のアンカー鉄筋が前記異形鉄筋を介して前記基礎杭の杭頭部外周面に設けられてなること
(但し、前記異形鉄筋は、開先付き異形棒鋼を除く)を特徴とする、杭頭処理構造。
【請求項2】
前記アンカー鉄筋と前記基礎杭の杭頭部外周面との間に介在される異形鉄筋は、1本の異形鉄筋、又は複数本を重ねて溶接してなる異形鉄筋であることを特徴とする、請求項1に記載した杭頭処理構造。
【請求項3】
前記異形鉄筋と一体化されるアンカー鉄筋は、1本のアンカー鉄筋、又は複数本のアンカー鉄筋を重ねて溶接してなるアンカー鉄筋であることを特徴とする、請求項1又は2に記載した杭頭処理構造。
【請求項4】
前記アンカー鉄筋の頭部に、異形鉄筋が重ねて溶接されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載した杭頭処理構造。
【請求項5】
前記アンカー鉄筋における前記異形鉄筋との溶接部位は、外周面を切削する開先加工が施されていることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載した杭頭処理構造。
【請求項6】
前記基礎杭は、鋼管被覆コンクリート杭又は鋼管杭であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載した杭頭処理構造。
【請求項7】
前記アンカー鉄筋は、前記杭頭部に対し、正八角形の頂点に相当する部位に計8本、又は正十角形の頂点に相当する部位に計10本、又は正十二角形の頂点に相当する部位に計12本配設されていることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載した杭頭処理構造。
【請求項8】
杭頭部の外周に鋼管を有する基礎杭の前記杭頭部外周面に、基礎構造物と接合するためのアンカー鉄筋を複数本設ける杭頭処理工法であって、
前記複数本のアンカー鉄筋をそれぞれ、異形鉄筋を重ねて溶接することで一体化し
たユニットとし、前記ユニットの異形鉄筋をそれぞれ、地盤に設けた基礎杭の杭頭部外周面に溶接することで前記複数本のアンカー鉄筋を前記異形鉄筋を介して前記基礎杭の杭頭部外周面に設けること
(但し、前記異形鉄筋は、開先付き異形棒鋼を除く)を特徴とする、杭頭処理工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、杭頭部の外周に鋼管を備えた基礎杭(鋼管が被覆されたコンクリート杭、又は鋼管杭)の杭頭部外周面に、基礎構造物と接合するためのアンカー鉄筋を複数本設けてなる杭頭処理構造及び杭頭処理工法の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来、基礎杭の杭頭部と基礎構造物とを接合するための杭頭処理構造(工法)として、基礎杭の杭頭部の外周面等に複数のアンカー鉄筋を溶接し、当該アンカー鉄筋を基礎構造物内に配置する形態で基礎構造物と接合する技術がよく知られている。
前記アンカー鉄筋(杭頭鉄筋とも言う。)は、特許文献1、2に示したように、杭頭部に、多数の鋼板(又はこれに類するフラット面を備えたプレート部材)を介して配設されている場合が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-84573号公報
【文献】特開2017-172310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記アンカー鉄筋を杭頭部へ定着させるために用いる鋼板等は、フラット面を備えた構成であるが故に、当該フラットな部分において、基礎構造物を構築するために打設するコンクリートとの付着強度が弱く、コンクリートとの一体性が損なわれるという問題があった。この問題は、基礎構造物、ひいては構造物全体の強度・剛性、および健全性に影響を与えるため、解決するべき課題である。
【0005】
本発明は、上述した背景技術の課題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、コンクリートとの付着強度を高めて、コンクリートと確実に一体化することができ、基礎構造物、ひいては構造物全体の強度・剛性、および健全性に優れた杭頭処理構造および杭頭処理工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記背景技術の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係る杭頭処理構造は、杭頭部の外周に鋼管を備えた基礎杭の前記杭頭部外周面に、基礎構造物と接合するためのアンカー鉄筋を複数本設けてなる杭頭処理構造であって、
前記複数本のアンカー鉄筋はそれぞれ、異形鉄筋を重ねて溶接することで一体化されており、前記異形鉄筋を前記鋼管に溶接することで前記複数本のアンカー鉄筋が前記異形鉄筋を介して前記基礎杭の杭頭部外周面に設けられてなること(但し、前記異形鉄筋は、開先付き異形棒鋼を除く)を特徴とする。
【0007】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した杭頭処理構造において、前記アンカー鉄筋と前記基礎杭の杭頭部外周面との間に介在される異形鉄筋は、1本の異形鉄筋、又は複数本を重ねて溶接してなる異形鉄筋であることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載した発明は、請求項1又は2に記載した杭頭処理構造において、前記異形鉄筋と一体化されるアンカー鉄筋は、1本のアンカー鉄筋、又は複数本のアンカー鉄筋を重ねて溶接してなるアンカー鉄筋であることを特徴とする。
請求項4に記載した発明は、請求項1~3のいずれか1項に記載した杭頭処理構造において、前記アンカー鉄筋の頭部に、異形鉄筋が重ねて溶接されていることを特徴とする。
請求項5に記載した発明は、請求項1~4のいずれか1項に記載した杭頭処理構造において、前記アンカー鉄筋における前記異形鉄筋との溶接部位は、外周面を切削する開先加工が施されていることを特徴とする。
請求項6に記載した発明は、請求項1~5のいずれか1項に記載した杭頭処理構造において、前記基礎杭は、鋼管被覆コンクリート杭又は鋼管杭であることを特徴とする。
【0009】
請求項7に記載した発明は、請求項1~6のいずれか1項に記載した杭頭処理構造において、前記アンカー鉄筋は、前記杭頭部に対し、正八角形の頂点に相当する部位に計8本、又は正十角形の頂点に相当する部位に計10本、又は正十二角形の頂点に相当する部位に計12本配設されていることを特徴とする。
【0010】
請求項8に記載した発明に係る杭頭処理工法は、杭頭部の外周に鋼管を有する基礎杭の前記杭頭部外周面に、基礎構造物と接合するためのアンカー鉄筋を複数本設ける杭頭処理
工法であって、
前記複数本のアンカー鉄筋をそれぞれ、異形鉄筋を重ねて溶接することで一体化したユニットとし、前記ユニットの異形鉄筋をそれぞれ、地盤に設けた基礎杭の杭頭部外周面に溶接することで前記複数本のアンカー鉄筋を前記異形鉄筋を介して前記基礎杭の杭頭部外周面に設けること(但し、前記異形鉄筋は、開先付き異形棒鋼を除く)を特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
(1)本発明に係る杭頭処理構造および杭頭処理工法によれば、複数本のアンカー鉄筋をそれぞれ、異形鉄筋を重ねて溶接することで一体化し
たユニットとし、前記ユニットの異形鉄筋をそれぞれ、地盤に設けた基礎杭の杭頭部外周面に溶接することで前記複数本のアンカー鉄筋を前記異形鉄筋を介して前記基礎杭の杭頭部外周面に設ける構造で実施することにより、前記アンカー鉄筋と杭頭部とを繋ぐ連結部材として異形鉄筋を用いるので、当該連結部材にコンクリートとの付着強度を十分に高めて、コンクリートと確実に一体化することができ、本当の意味での鉄筋コンクリート構造(RC構造)を実現することができる。よって、基礎構造物、ひいては構造物全体の強度・剛性、および健全性、ならびに確実性に優れた杭頭処理構造および杭頭処理工法を実現することができる。
(2)
図5~
図7に示したように、前記アンカー鉄筋の頭部に前記異形鉄筋を重ねて溶接して実施する場合(請求項4記載の発明)、コンクリートとの付着面積が増大するので基礎構造物との付着強度をより高めることができることに加え、当該異形鉄筋によるアンカー効果も期待でき、基礎構造物、ひいては構造物全体の強度・剛性、および健全性、ならびに確実性に優れた杭頭処理構造および杭頭処理工法を実現することができる。その他、当該アンカー鉄筋の長さを短くして実施できる等、経済性にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】Aは、本発明に係る杭頭処理構造および杭頭処理工法の実施例を概略的に示した立面図であり、Bは、同平面図である。なお、溶接箇所3、4は、Aでは少し誇張して描き、Bでは図示の便宜上省略している。
【
図2】Aは、本発明に係る杭頭処理構造および杭頭処理工法の異なる実施例を概略的に示した立面図であり、Bは、同平面図である。なお、溶接箇所3、4は、Aでは少し誇張して描き、Bでは図示の便宜上省略している。
【
図3】本発明に係る杭頭処理構造および杭頭処理工法の異なる実施例を概略的に示した平面図である。
【
図4】Aは、本発明に係る杭頭処理構造および杭頭処理工法の異なる実施例を概略的に示した立面図であり、Bは、同平面図である。なお、溶接箇所3、4は、Aでは少し誇張して描き、Bでは図示の便宜上省略している。
【
図5】本発明に係る杭頭処理構造および杭頭処理工法の異なる実施例を概略的に示した立面図である。
【
図6】本発明に係る杭頭処理構造および杭頭処理工法の異なる実施例を概略的に示した立面図である。
【
図7】本発明に係る杭頭処理構造および杭頭処理工法の異なる実施例を概略的に示した立面図である。
【
図8】Aは、本発明に係る杭頭処理構造および杭頭処理工法の適用対象である基礎杭を例示した立断面図であり、Bは、AのB-B線矢視断面図であり、Cは、Aの平面図である。
【
図9】Aは、本発明に係る杭頭処理構造および杭頭処理工法の適用対象である基礎杭を例示した立断面図であり、Bは、AのB-B線矢視断面図であり、Cは、Aの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明に係る杭頭処理構造および杭頭処理工法の実施例を図面に基づいて説明する。
【0014】
本発明に係る杭頭処理構造は、
図1~
図3に例示したように、杭頭部の外周に鋼管10aを備えた基礎杭10の前記杭頭部外周面に、基礎構造物11と接合するためのアンカー鉄筋1を複数本設けてなる杭頭処理構造であり、前記複数本のアンカー鉄筋1はそれぞれ、異形鉄筋2を重ねて溶接3することで一体化されており、前記異形鉄筋2を前記鋼管10aに溶接4することで前記複数本のアンカー鉄筋1が前記異形鉄筋2を介して前記基礎杭10の杭頭部外周面に設けられてなる
(但し、前記異形鉄筋は、開先付き異形棒鋼を除く)構造を呈する。
【0015】
前記杭頭部の外周に鋼管10aを備えた基礎杭10とは、少なくとも杭頭部(杭頭露出部)の外周に鋼管10aを有する基礎杭10であればよく、杭全長にわたり鋼管10aを被覆したSC杭等の鋼管被覆コンクリート杭、又は鋼管杭、或いは現場打ちコンクリートに鋼管10aを外付けした杭を当然に含む意である。
ちなみに、
図1、
図2に係る基礎杭10は前記SC杭10を適用した場合の実施例を示している。前記SC杭10の代わりに、
図8、
図9に示したような、本出願人が開発した鋼管被覆コンクリート杭10でも同様に実施できる。この
図8、
図9に係る鋼管被覆コンクリート杭10の構成については後述する。
【0016】
前記アンカー鉄筋1は、本実施例では
図1B等に示したように、前記杭頭部に対し、正八角形の頂点に相当する部位に計8本配設して実施しているが、使用本数は勿論これに限定されず、構造設計に応じて適宜増減される。例えば、正十角形の頂点に相当する部位に計10本、又は正十二角形の頂点に相当する部位に計12本配設して実施することも当然にできる。
【0017】
前記異形鉄筋2は、本実施例では、前記アンカー鉄筋1と略同径サイズを用いている。
ここで、本発明に用いる構成部材の大きさ等について例示すると、前記基礎杭(SC杭)1は、杭径が300~1000mm程度、長さが5~15m程度、鋼管厚が4.5~19mm程度である。前記アンカー鉄筋1は、径(φ)が25~35mm程度で、長さは構造設計に応じて適宜設計変更される。前記異形鉄筋2は、径(φ)が25~35mm程度で、長さは前記アンカー鉄筋1よりも短いサイズ、例えば1/4程度の長さで実施されている。
【0018】
前記アンカー鉄筋1と前記異形鉄筋2とを(両者の外周面同士を)重ねて溶接する手段3として、本実施例ではフレア溶接で実施している。溶接長は、異形鉄筋2の径(φ)の4倍以上に設定して実施することが好ましい。同様に、前記異形鉄筋2と前記鋼管10aとを重ねて溶接する手段4として、本実施例ではフレア溶接で実施している。溶接長は、異形鉄筋2の径(φ)の4倍以上に設定して実施することが好ましい。
なお、前記溶接手段3、4はフレア溶接手段に限定されず、所要の強度・剛性を確実に発揮できるのであれば溶接手段は問わない。
【0019】
本発明に係る杭頭処理工法の作業手順は、先ず地盤12に基礎杭10を打設し、前記基礎杭10の杭頭部を露出させる作業を行う。前記基礎杭10は、外側に鋼管10aを備えた基礎杭10であれば、既製杭でも場所打ち杭でもよい。なお、前記アンカー鉄筋1は、予め工場等で、前記異形鉄筋2とフレア溶接手段3等で一体化することにより、使用する個数分をユニット化しておく。
次に、必要に応じて杭頭部の鋼管10a表面の黒皮をサンドブラストで除去する等の準備が整った段階で、前記ユニット化したアンカー鉄筋1及び異形鉄筋2のうち、当該異形鉄筋2を前記基礎杭10の杭頭部の鋼管10aの所定の外周面に位置決めし、フレア溶接手段4等で溶接して一体化する。かくして、前記ユニット化された複数本(図示例では8本)のアンカー鉄筋1は、前記異形鉄筋2を介して前記基礎杭10の杭頭部10a外周面にバランスよく配設される。
なお、前記した作業手順はあくまでも一例であることを念のため特記しておく。
【0020】
図2に係る実施例の場合は、予め工場等で、1本のアンカー鉄筋1と2本の前記異形鉄筋2、2とをそれぞれ重ね合わせた当接部においてフレア溶接手段3で一体化することによりユニット化して実施する。この
図2に係る実施例の場合も、現場では、前記ユニット化したアンカー鉄筋1及び2本の異形鉄筋2、2のうち、1本の異形鉄筋2を前記基礎杭10の杭頭部の鋼管10aの所定の外周面に位置決めし、フレア溶接手段4等で溶接して一体化する。
すなわち、この実施例によれば、現場での作業は、
図1に係る実施例の場合と同様に、1本の異形鉄筋2を前記基礎杭10の杭頭部の鋼管10aの所定の外周面に位置決めしてフレア溶接手段4等で溶接して一体化することに何ら変わりはない。よって、
図1に係る実施例と同様の工期で実現可能である。それでいて、異形鉄筋2を複数本(図示例では2本)重ねて溶接すると、杭頭部(基礎杭10)は異形鉄筋2の本数に応じて、仮想鉄筋コンクリート断面Dを大きくできるので、前記杭頭部(基礎杭10)の剛性(曲げ抵抗)と強度を大きくすることができる。
なお、図示例では、2本の異形鉄筋2を重ねて溶接する形態で実施しているが、これに限定されず、図示は省略するが、3本以上の異形鉄筋同士を重ねて溶接して実施することもできる。このような構成で実施すると、仮想鉄筋コンクリート断面Dを大きくできるだけでなく、前記アンカー鉄筋1と杭頭部との繋ぎ材(連結部材)の役割を果たす異形鉄筋2の幅寸、形態を自在に変更できるので、基礎構造物11の内部に配筋された鉄筋と干渉を生じない、例えば
図3に示したような、柔軟な配筋ができる利点もある。
【0021】
図4に係る実施例の場合は、予め工場等で、2本のアンカー鉄筋1、1と1本の前記異形鉄筋2とをそれぞれ重ね合わせた当接部においてフレア溶接手段3で一体化することによりユニット化して実施する。この
図4に係る実施例の場合も、現場では、前記ユニット化した2本のアンカー鉄筋1、1及び1本の異形鉄筋2のうち、1本の異形鉄筋2を前記基礎杭10の杭頭部の鋼管10aの所定の外周面に位置決めし、フレア溶接手段4等で溶接して一体化する。
すなわち、この実施例によれば、現場での作業は、
図1に係る実施例の場合と同様に、1本の異形鉄筋2を前記基礎杭10の杭頭部の鋼管10aの所定の外周面に位置決めしてフレア溶接手段4等で溶接して一体化することに何ら変わりはない。よって、
図1に係る実施例と同様の工期で実現可能である。それでいて、アンカー鉄筋1を複数本(図示例では2本)重ねて溶接すると、杭頭部(基礎杭10)はアンカー鉄筋1の本数を増加させたことにより、基礎構造物11、ひいては構造物全体の強度・剛性を高めることができる。
なお、図示例では、2本のアンカー鉄筋1を重ねて溶接する形態で実施しているが、これに限定されず、図示は省略するが、3本以上のアンカー鉄筋同士を重ねて溶接して実施することもできる。
【0022】
したがって、本発明に係る杭頭処理構造および杭頭処理工法によれば、以下の効果を奏する。
複数本のアンカー鉄筋1をそれぞれ、異形鉄筋2を重ねて溶接することで一体化し
たユニットとし、前記ユニットの異形鉄筋2をそれぞれ、地盤に設けた基礎杭10の杭頭部外周面に溶接することで前記複数本のアンカー鉄筋1を前記異形鉄筋2を介して前記基礎杭10の杭頭部外周面に設ける構造で実施することにより、前記アンカー鉄筋1と杭頭部とを繋ぐ連結部材として異形鉄筋2を用いるので、当該連結部材(異形鉄筋2)にコンクリートとの付着強度を十分に高めて、コンクリートと確実に一体化することができ、本当の意味での鉄筋コンクリート構造(RC構造)を実現することができる。
よって、基礎構造物11、ひいては構造物全体の強度・剛性、および健全性、ならびに確実性に優れた杭頭処理構造および杭頭処理工法を実現することができる。
また、前記連結部材として用いる異形鉄筋2を複数本重ね溶接して連結部材の長さ(幅寸)を適宜長くして実施すると(
図2、
図3参照)、杭頭部(基礎杭10)は、異形鉄筋2の本数に応じて、仮想鉄筋コンクリート断面Dを大きくできるので、前記杭頭部(基礎杭10)の剛性(曲げ抵抗)と強度を大きくすることができる。
その他、前記アンカー鉄筋1の長さが十分に長いので、その外側に配置する予定の鉄筋と重ね継ぎ手での接続が十分に可能となり、事後的に行う溶接作業の手間を省くこともできる。
【0023】
(基礎杭の構成についての補足説明)
前記段落[0015]の末文でも言及しているが、次に、
図8、
図9に係る鋼管被覆コンクリート杭10の構成について説明する。
図8と
図9は、本出願人が開発した基礎杭10を示している。前記
図1~
図4に係る基礎杭10は、SC杭10を想定した実施例であるが、SC杭10の代わりに前記本出願人が開発した基礎杭10でも同様に実施できる。
この本出願人が開発した基礎杭10は、SPHC杭(SPHCは本出願人の登録商標)と称される鋼管被覆コンクリート杭(鋼管被覆高強度コンクリート杭)であり、PHC杭10bと、PHC杭10bの外周に隙間を確保して同心の配置に設けられる鋼管10aと、前記隙間に充填される充填材10cとで一体的に構成される。ちなみに図中の符号10dは、PHC杭10bの端板を示している。
前記SPHC杭10の前記鋼管10aは、その上端部が基礎構造物11の基礎と水平力を伝達可能に接合される構成で、前記PHC杭10bよりも短い長さで実施される。前記充填材10cは、主としてセメントミルクが好適に用いられている。
図8と
図9とは、
図8に係る鋼管10aが中空の筒体であるのに対し、
図9に係る鋼管10aは有底筒体である点が相違し、その他の構成は同様である。
よって、この本出願人が開発したSPHC杭(鋼管被覆コンクリート杭)10によれば、前記SC杭10と同様、外側に鋼管10aを備えた構成であることに変わりはない。よって、上記実施例(
図1~
図4参照)と同様に実施することができ、同様の作用効果を奏する。
【0024】
以上、実施例を図面に基づいて説明したが、本発明は、図示例の限りではなく、その技術的思想を逸脱しない範囲において、当業者が通常に行う設計変更、応用のバリエーションの範囲を含むことを念のために言及する。
【0025】
例えば、
図5~
図7に示したように、前記アンカー鉄筋1の頭部に、異形鉄筋2を重ねて溶接して実施することもできる。
これらの実施例によれば、コンクリートとの付着面積が増大するので基礎構造物11との付着強度をより高めることができることに加え、当該異形鉄筋2によるアンカー効果も期待でき、基礎構造物11、ひいては構造物全体の強度・剛性、および健全性、ならびに確実性に非常に優れた杭頭処理構造および杭頭処理工法を実現することができる。その他、当該アンカー鉄筋1の長さを短くして実施できる等、経済性にも優れている(例えば、
図1Aと
図5とを対比して参照)。
【0026】
その他、溶接作業の確実性および作業容易性を高めるべく、前記アンカー鉄筋1における前記異形鉄筋2との溶接部位に、外周面を切削して開先加工を施す等の工夫は適宜行われるところである。
【符号の説明】
【0027】
1 アンカー鉄筋
2 異形鉄筋
3 溶接(溶接手段)
4 溶接(溶接手段)
10 基礎杭
10a 鋼管
11 基礎構造物
12 地盤
D 仮想鉄筋コンクリート断面