(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】粘着式クリーナー
(51)【国際特許分類】
B65H 35/07 20060101AFI20240401BHJP
A47L 25/00 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
B65H35/07 G
A47L25/00 A
(21)【出願番号】P 2021163234
(22)【出願日】2021-10-04
【審査請求日】2023-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】514111403
【氏名又は名称】誠和産業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】595002982
【氏名又は名称】竹元 通則
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】徳原 哲豪
(72)【発明者】
【氏名】新長 恵梨香
(72)【発明者】
【氏名】竹元 通則
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-131360(JP,A)
【文献】特開2000-287911(JP,A)
【文献】特開2020-022598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 35/07
B65H 16/06
A47L 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着ロール紙を保持するロール保持部の後方に、前記粘着ロール紙に対して接触して前記粘着ロール紙の切断を可能にするカッターが進退可能に設けられるとともに、前記カッターの下方に前記カッターの前進時に前記カッターよりも先に前記粘着ロール紙に接触して前記粘着ロール紙を回転させて前記粘着ロール紙における残る部分に折り返し部を形成する押し片が設けられた粘着式クリーナーであって、
前記カッターが手で保持される部分とは別体に設けられ、
前記押し片の基部が前記カッターの下方に枢着されるとともに、
前記押し片の先端が下がる回動により上方への復元力を作用させる付勢手段が設けられた
粘着式クリーナー。
【請求項2】
前記カッターを収納する筐体が設けられた
請求項1に記載の粘着式クリーナー。
【請求項3】
前記筐体がカッターの全体を収納するものである
請求項2に記載の粘着式クリーナー。
【請求項4】
前記筐体に前記ロール保持部が形成された
請求項2または請求項3に記載の粘着式クリーナー。
【請求項5】
前記ロール保持部が前記粘着ロール紙の両端を保持する両持ち構造であるとともに、
一方が前記筐体に一体形成され、他方が前記筐体に対して枢着された枢着支持部材で形成され、
前記枢着支持部材が、前記粘着ロール紙を保持する位置と保持する位置から退避する位置とに回動可能に設けられた
請求項2から請求項4のうちいずれか一項に記載の粘着式クリーナー。
【請求項6】
前記筐体の下面に、前記押し片を埋没させる凹溝と、前記凹溝の基部において前記押し片を突出させる貫通穴が形成された
請求項2から請求項5のうちいずれか一項に記載の粘着式クリーナー。
【請求項7】
前記ロール保持部における当該粘着式クリーナーの上面側位置に、前記粘着ロール紙の長手方向の端部に対応する位置から前記ロール保持部の中央側に向けて張り出して前記粘着ロール紙との間に空間を形成する誘導部が設けられた
請求項1から請求項6のうちいずれか一項に記載の粘着式クリーナー。
【請求項8】
前記カッターを前記ロール保持部よりも上にした起立姿勢の前記粘着式クリーナーにおける前記ロール保持部を受ける受け部と、前記受け部の間に前記粘着ロール紙を受け入れる収容空間を有したスタンドが備えられ、
前記スタンドには、前記誘導部が嵌合する嵌合凹部が形成された
請求項7に記載の粘着式クリーナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、粘着ロール紙の切断機構を有する粘着式クリーナーに関し、より詳しくは、切断されて残った端部に剥離時の端緒となる折り返し部を形成する折り返し切断機構を備えた粘着式クリーナーに関する。
【背景技術】
【0002】
折り返し切断機構を備えた粘着式クリーナーとして、下記特許文献1に開示されたものがある。
【0003】
この粘着式クリーナーは、柄を上下に二分割して、上側の部材を柄スライド部とし、柄スライド部の先端に幅広板状の刃を備え、刃の下側の面に、舌状押し板を備えた構成である。
【0004】
スライド柄部を前方に押し出すと、まず舌状押し板が粘着ロール紙の粘着面に触れる。スライド柄部をさらに押し出すと、刃の刃先が粘着ロール紙に当接するが、その際に舌状押し片が変形しながら粘着ロール紙を回転して、引き出された粘着ロール紙の基部に折り返し部を形成する。
【0005】
刃先で粘着ロール紙を切除すると、折り返し部の粘着面は粘着ロール紙における引き出されていない部分の粘着面に接合して、折り返し部では粘着面と反対側の非粘着面が露出した状態になる。
【0006】
このため、ごみ取り作業をして粘着ロール紙の外周面が汚れても、折り返し部分は汚れず、汚れた部分を切除して新たな粘着面を露出させるための端緒を確認しやすいうえに、折り返されて段差ができているので剥離しやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の粘着式クリーナーは、ハンドルの上側部分に折り返し切断機構を一体に形成している。つまり折り返し切断機構はハンドルの先に筒体を保持する線材からなる支持部材の上に設けられている。そのうえ、刃の下面に備えられた舌状押し板も支持部材より上に位置しているので、刃と舌状押し板の作用を確実にするためには、粘着ロール紙を保持する筒体を上方へ変位させる必要がある。筒体を上方に変位させることによって、筒体の中心とハンドルを結ぶ線上に近い位置に刃を位置させることができる。
【0009】
しかし、筒体を上方に変位させると、筒体から見れば支持部材が偏って存在することになる。このため、粘着ロール紙の粘着面は粘着式クリーナーの上面側部分が下面側部分よりも大きく露出した偏った状態となって、ごみ取り作業時の使い勝手がよくない。
【0010】
また、ハンドル(柄)を上下に分割してその上側部分に折り返し切断機構を形成している。このため、ハンドルを持つと必然的にスライド柄部を持つことになり、不用意にスライド柄部を動かしてしまう可能性があって、この点からもごみ取り作業時の使い勝手が良くない。
【0011】
加えて、舌状押し板は弾性変形するものであるので、粘着ロール紙の残量によって粘着ロール紙の回転に差が生じることがある。
【0012】
この発明は、ごみ取り作業が良好に行えるとともに、必要な時に所望の折り返し部が形成できるようにすることを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そのための手段は、粘着ロール紙を保持するロール保持部の後方に、前記粘着ロール紙に対して接触して前記粘着ロール紙の切断を可能にするカッターが進退可能に設けられるとともに、前記カッターの下方に前記カッターの前進時に前記カッターよりも先に前記粘着ロール紙に接触して前記粘着ロール紙を回転させて前記粘着ロール紙における残る部分に折り返し部を形成する押し片が設けられた粘着式クリーナーであって、前記カッターが手で保持される部分とは別体に設けられ、前記押し片の基部が前記カッターの下方に枢着されるとともに、前記押し片の先端が下がる回動により上方への復元力を作用させる付勢手段が設けられた粘着式クリーナーである。
【0014】
この構成では、カッターは、手で保持される部分、すなわちごみ取り作業時や粘着ロール紙の切断作業時に手で持つハンドル(柄)やボディとは別体であって独立させることができ、カッターとロール保持部との位置関係は自由に設定し得る。また、手で保持される部分とは別体に構成されるカッターは、粘着ロール紙の切断作業時以外には触らないようにすることが可能である。カッターの下方に枢着され付勢手段で付勢された押し片は、粘着ロール紙の残量に関わらず粘着ロール紙を回転できるように構成し得る。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、カッターとロール保持部との位置関係は自由に設定できる構成であるので、粘着ロール紙の外周面が粘着式クリーナーの上面側と下面側で偏りなく均等に露出する形状にすることができ、ごみ取り作業が良好に行える粘着式クリーナーを得られる。
【0016】
そのうえ、手で保持される部分とは別体に設けられたカッターは、粘着ロール紙の切断作業時以外には触らないようにすることができるので、この点からもごみ取り作業が良好に行えるとともに、必要な時のみに折り返し部が形成できる。
【0017】
その折り返し部は、押し片が弾性変形して回転させるのではなく、付勢力に抗して回動しながら押すことで回転させるので、粘着ロール紙の残量に関わらず安定した回転を実現でき、所望の折り返し部を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図10】アッパー部材を除去した状態の一部破断正面図。
【
図16】粘着式クリーナーをスタンドに立てた状態の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
【0020】
図1に粘着式クリーナー11の斜視図を示す。
図1に例示の粘着式クリーナー11は、片手に持って使用するハンディタイプのものであり、
図1では、粘着ロール紙12を保持し、この粘着ロール紙12を下にして手に持つハンドル11aを立てた起立姿勢で示している。
【0021】
粘着式クリーナー11は、上面側を示す正面図である
図2に示したように、粘着ロール紙12を保持するロール保持部13を先端に有し、後端に前述のハンドル11aを有している。そしてロール保持部13とハンドル11aとの間に折り返し切断機構15を備えている。折り返し切断機構15は、粘着ロール紙12の外周面の粘着面にゴミを付着させるごみ取り作業をしたのち新たな粘着面を露出させる場合に、粘着ロール紙12における切断されて残った端部に剥離時の端緒となる折り返し部12aを形成するものである。
【0022】
すなわち、ロール保持部13の後方に、粘着ロール紙12に対して接触して粘着ロール紙12の切断を可能にするカッター51が進退可能に設けられている。また、カッター51の下方にカッター51の前進時にカッター51よりも先に粘着ロール紙12に接触して粘着ロール紙12を回転させて粘着ロール紙12における残る部分に折り返し部12aを形成する押し片52が設けられている。カッター51よりも先に粘着ロール紙12に接触する押し片52は、カッター51よりも前方にせり出している。押し片52のせり出し長さは、所望の折り返し部12aが形成できるように設定される。
【0023】
カッター51は、手で保持される部分、つまりハンディタイプであってハンドル11aを有するのでそのハンドル11aと、ハンドル11aに連続してカッター51等を備える部分であるボディ11bとは別体に設けられている。
【0024】
この例の粘着式クリーナー11は、カッター51を収納する筐体17を有しており、この筐体17に、先端のロール保持部13から後端のハンドル11aまでが形成されている。
【0025】
筐体17は、
図2に示したようにカッター51の全体を収納するものであり、後端のハンドル11aと先端のロール保持部13との間のボディ11bが、棒状のハンドル11aの先から左右均等な三角形状に広がる形状に形成されている。粘着式クリーナー11の左側面図である
図3やその底面図である
図4に示したように、筐体17は2つの部材で構成されている。
【0026】
2つの部材は、上面側を構成するアッパー部材71と下面側を構成するロア部材72である。これらアッパー部材71とロア部材72は合成樹脂成形品であり、カッター51等を収容した状態で互いに結合されて一体化される。アッパー部材71とロア部材72との間には、段差によって形成される細い溝73が線状にあらわれる。
【0027】
まず、ロール保持部13について説明する。
【0028】
ロール保持部13は、
図2に示したように粘着ロール紙12の両端を保持する両持ち構造であり、粘着ロール紙12の巻き芯(図示せず)の長さよりも幅広に配設された一対の支持部31,32が形成されている。これら支持部31,32は側面視円形であり、相対向する内側面には、巻き芯の端部に嵌め込まれる嵌合部33が回転可能に設けられている。
【0029】
図5に、支持部31,32と、支持部31,32に対して回転可能な嵌合部33の片側断面図を示す。この図に示すように支持部31,32は、内側面に円形の貫通保持穴34を有した中空形状である。また、
図4に示したように左右一対のうち一方の支持部31は、筐体17のアッパー部材71とロア部材72に形成され、これらを結合して形成される。他方の支持部32は、筐体17と同様に上面側を構成する部材32aと下面側を構成する部材32bを結合して形成される。
【0030】
嵌合部33は、支持部31,32の貫通保持穴34に回転可能に嵌まる円柱状の軸部33aと、軸部33aの先で全周に広がり略短円柱形状なす頭部33bを有している。軸部33aの下端には筒状をなす嵌合凸部33cが形成され、中央に軸穴33dが形成されている。頭部33bは、上端面の外周側部分に外周側ほど下がる傾斜面33eを有し、外周面には複数本の突条33fが等間隔に形成されている。頭部33bの下端には、外周側に張り出して嵌めた巻き芯の端を受ける円環状の鍔部33gが全周に形成されている。
【0031】
このような嵌合部33は、軸部33aの嵌合凸部33cに対する保持キャップ35の固定と、支持部31,32の構成部材(アッパー部材71とロア部材72、上面側を構成する部材32aと下面側を構成する部材32b)同士の接合で、支持部31,32に回転可能に保持される。保持キャップ35は、嵌合凸部33cに嵌合する嵌合凹溝35aと、嵌合部33の軸穴33dに挿入固定される軸部材36が通る貫通穴35bを有している。
【0032】
前述したように一方の支持部31は、筐体17に一体形成されており、他方の支持部32は筐体17に対して枢着された枢着支持部材37で構成されている。支持部31,32の態様は一方と他方で異なるものの、前述した嵌合部33の取付け構造については同じである。
【0033】
枢着支持部材37は、基部が筐体17に枢着されており、
図6に示したようにその枢着軸37aは筐体17の厚さ方向に延びている。つまり、枢着支持部材37の回動方向は左右方向であり、一方の支持部31と平行になって粘着ロール紙12を保持する位置(保持位置、仮想線参照)と、保持する位置から退避する位置(退避位置、実線参照)とに回動可能に設けられている。
【0034】
枢着支持部材37を保持位置に選択的に保持するためのロックスイッチ38は筐体17に設けられる。すなわち、筐体17における枢着支持部材37が枢着される部分の側面に、周囲よりも若干凹んだスライド溝74が形成されている。スライド溝74は中央に四角形の貫通窓74aを有している。貫通窓74aはアッパー部材71とロア部材72の双方に設けられた切り欠き71a,72aにより構成される。またスライド溝74は、底に近い部分の左右両側の内側面に、スライド溝74に沿ったガイド溝部74bを有している。
【0035】
枢着支持部材37における枢着軸37aの側部には、保持位置に位置する枢着支持部材37においてスライド溝74の延長上に存在する凹部37bが形成されている。凹部37bとスライド溝74の底面は面一である。
【0036】
ロックスイッチ38は薄い板状であり、後端部、つまり枢着支持部材37側の左右両側に、外側に張り出すガイド片38aを有している。ガイド片38aは、ガイド溝部74b内を移動する部分である。またロックスイッチ38の下面、つまりスライド溝74の底面に接する面には、貫通窓74aを通って先を裏面側に出す首部38bを介してスライド片38cが一体形成されている。スライド片38cは、ガイド片38aと平行であり、貫通窓74aよりも左右方向外側に広がっている。このスライド片38cはスライド溝74の裏側を、スライド溝74に沿って前後に移動する。
【0037】
図7に示したように一方のスライド片38cにおける外側の縁には筐体17の被係合部74cに係合する突起38dが形成され、ロックスイッチ38の後端部を枢着支持部材37の凹部37bに嵌めて保持位置に位置させた状態を保てるように構成されている。
【0038】
また、枢着支持部材37は、
図4に示したように、ロア側、つまり下面側の下端部の内側に切欠き部37cを有している。切欠き部37cは、左右方向の肉厚を半分ほどに薄くするものであり、側面視略横D字状をなし、前後方向に向けて真っすぐに切り欠かれている。
【0039】
さらに、ロール保持部13における粘着式クリーナー11の上面側位置に、粘着ロール紙12の長手方向の端部に対応する位置からロール保持部13の中央側に向けて張り出して粘着ロール紙12との間に空間を形成する誘導部39が設けられる。この例では、筐体17に一体形成された一方の支持部31に誘導部39が形成されている。
【0040】
誘導部39は
図1、4に示したように断面L字形状をなす板状であり、支持部31の表面に固定される基部39aと、基部39aの先端から横に張り出す張り出し部39bを有している。基部39aの高さは、張り出し部39bと粘着ロール紙12との間に、引き出した粘着ロール紙12が通るように適宜設定され、張り出し部39bの長さも適宜設定される。張り出し部39bの表面には文字や図形など適宜の表示を施すとよい。
【0041】
つぎに、カッター51と押し片52で構成される折り返し切断機構15について説明する。
【0042】
この折り返し切断機構15は、押し片52の基部がカッター51の下方に枢着されるとともに、押し片52の先端が下がる回動により上方への復元力を作用させる付勢手段53が設けられている(
図2参照)。
【0043】
カッター51は合成樹脂成形品であり、
図8に示したように板状に形成されている。すなわちカッター51は、筐体17のハンドル11a内に入る大きさに形成された長方形板状の軸部51aと、軸部51aの先において左右方向に均等に広がる先端板部51bと、先端板部51bの先端の全体に形成された鋸刃状の切断刃51cを有している。
【0044】
軸部51aの後端には、円柱状のスライド突起54が表裏両面に突設されている。また軸部51aの上面における基部には筐体17の上面から突出する高さの操作突起部55が形成されている。先端板部51bの下面には、断面図である
図9、アッパー部材71を外した状態の正面図である
図10に示したように前後方向に延びる長方形板状の規制片56が形成されている。規制片56は左右に一対設けられる。
【0045】
切断刃51cは、
図9に示したように斜め上に向けられている。切断刃51cの傾斜角度は、ロール保持部13との位置関係等、他の部位との関係にもよるが、例えば35度程度に設定するとよい。
【0046】
このようなカッター51は、
図9、10に示したように、ロア部材72の上に支持されて、主としてアッパー部材71部分に収納される。
【0047】
このため、筐体17のアッパー部材71の内面におけるスライド突起54が移動する部分には、スライド突起54を摺動可能に収める長円形状の案内溝75が形成されている。案内溝75はハンドル11aの長さ方向に直線状に延びている。また、アッパー部材71におけるハンドル11aから三角形に広がるボディ11bにかけての部位に開口部76が形成されている。開口部76は縦長の長方形であり、操作突起部55を通す部分である。さらにアッパー部材71におけるロール保持部13を除く部分の先端に、幅方向全体にわたって下端からの切り欠きからなる先端開口77が形成され、カッター51の先端板部51bが出没できるように構成されている。
【0048】
ロア部材72は次のように構成されている。すなわち、カッター51のスライド突起54は下にも形成されているので、ロア部材72にもスライド突起54を摺動可能に収める案内溝78が形成されている。
【0049】
ロア部材72とアッパー部材71の案内溝75,78の近傍には、カッター51を後方向けて付勢するばね部材19が設けられる。ばね部材19は、引っ張りコイルばねで構成され、ばね部材19の一端の環状部がカッター51の下面側に突出するスライド突起54に取り付けられる。ばね部材19の他端の環状部は、ロア部材72におけるカッター51の後端よりも後方に形成され、アッパー部材71に嵌合する嵌合突起79の基部に係止される。
【0050】
ロア部材72における案内溝78の先端よりも先の部分であって常態においてカッター51の操作突起部55に対応する部位には、上に向けて凹む側面視半円形の凹所81が形成されている。凹所81は取扱い時に指を引っかける部分であり、指を引っかけられる大きさに形成される。
【0051】
ロア部材72のボディ11bに相当する部分は、アッパー部材71の対応する部分に比べてやや厚く形成されて空間が設けられる。この空間には、補強のためのリブ82が縦横に適宜形成されており、特にカッター51の下面で前後に延びる規制片56に沿う位置、具体的には外側から接する部位のリブ82は規制リブ82aとして規制片56と相対摺動する部分となる。
【0052】
ロア部材72におけるボディ11bに相当する部分の空間は、カッター51の先端板部51bと共に押し片52が収容される部分である。筐体17の下面、つまりロア部材72の下面には、
図4に示したように先端が開放された凹溝83が形成されている。この凹溝83は押し片52を埋没させる部分であって、押し片52の厚さよりも深い。
【0053】
凹溝83の基部には前後に貫通する貫通穴84が形成されている。貫通穴84は押し片52を前方に突出させる部分である。凹溝83の底には、基部から先端に向けて切欠き部85が形成される。切欠き部85は押し片52の前進を許容するための部位であり、先端部83aを除いて大きく形成されている。
【0054】
ロア部材72におけるロール保持部13を除く部分の先端には、凹溝83部分を除いて全体を塞ぐ先端壁86が幅方向全体にわたって形成されている。
【0055】
ロア部材72部分に収容される押し片52は、カッター51と一体でカッター51と共に前後方向に進退するものである。
【0056】
前述のように押し片52はカッター51の下方に枢着されるが、押し片52はカッター51の下面に対して回動可能に直接固定されるのではなく、カッター51の下方に介装部材57を介して間接的に固定される。換言すれば、押し片52はカッター51の下方に適宜の隙間を隔てて設けられる。介装部材57は側面視略L字形状であり、カッター51の下方にあける間隔の高さに形成される。
【0057】
介装部材57の後端部には、カッター51の軸部51aの下面における基部に突設した連結突起58(
図8参照)が嵌まる円筒部59が形成されている。円筒部59は筐体17の厚み方向に対応する上下方向に延びており、連結突起58と同様に左右一対形成されている。
【0058】
介装部材57の先端部は、押し片52の後端部を枢着する部分であり、軸部材を挿通可能な枢着部61(
図10参照)が形成されている。
【0059】
押し片52は弾性変形しない剛性を有するものであって、後端に軸部材を挿通可能な枢着部62を有し、介装部材57の先端の枢着部61に枢着される。枢着部61,62には前述した付勢手段53が取り付けられる。付勢手段53にはトーションばねが好適に用いられる。
【0060】
押し片52の枢着部62には、
図11に示したように、後方へ突出する規制突片62aが形成されており、規制突片62aは付勢手段53の付勢力で水平になったときに介装部材57の対応部位に形成された凹段部61aに嵌まり、先端が上方に上がる方向の回動が規制される。
【0061】
押し片52の先端は、押し片52を上面側から見た図である
図12に示したように、左右方向の中間が最も突出するように大きく湾曲した形状であり、全体に角アールを有する丸みを帯びた形状である。そのうえ、先端部の上面には、左右方向に延びる複数の凹溝63が形成されており、粘着ロール紙12との接着が抑制されている。
【0062】
図11は、ロール保持部13とカッター51と押し片52の位置関係を示す側面図である。この図に示すように、ロール保持部13の嵌合部33の中心高さLより上にカッター51を位置させ、嵌合部33の中心高さLより下に押し片52を位置させている。具体的には、嵌合部33の中心高さLとカッター51との間の距離よりも、押し片52との間の距離のほうが短く設定される。また、カッター51も押し片52も嵌合部33の直径の範囲に収まる位置に設定されるが、カッター51は嵌合部33の半径の中間位置よりも外側に位置させ、押し片52は半径の中間位置よりもやや内側に位置させている。
【0063】
折り返し切断機構15とは関係ない構成であるが、筐体17におけるハンドル11aの後端部には、厚み方向に貫通する長穴89が形成されている。この長穴89は吊り下げ等に使用される部分である。
【0064】
このような粘着式クリーナー11には、使用しないときに立てておくためのスタンド21が備えられる(
図13参照)。スタンド21は、ハンドル11aを立てた起立姿勢の粘着式クリーナー11を支持可能な大きさの平面視長方形の板状の底板部22を有し、底板部22の上面に粘着式クリーナー11を安定して支持するための支持構造が形成される。
【0065】
すなわち、底板部22の長手方向両端部には、起立姿勢の粘着式クリーナー11におけるロール保持部13を受ける受け部23,24が形成され、左右の受け部23同士の間には粘着ロール紙12を受け入れる収容空間25が形成されている。
【0066】
左右の受け部23,24は、それぞれ支持部31,32を受ける部分であり、立設された壁状の部分に円弧状に凹む切欠きが形成された形状である。左右の支持部31,32はそれぞれ形状が異なるので、これに伴って左右の受け部23,24は互いに異なる形状である。枢着支持部材37からなる他方の支持部32を受ける受け部23は、略半円弧状の切欠きで形成され、背面側に位置する一端の内側角部には、枢着支持部材37の切欠き部37cが嵌まる形の嵌合凸部23aが形成されている。
【0067】
筐体17に一体の支持部31を受ける受け部24は、支持部31に誘導部39が形成されているため、誘導部39が嵌合する嵌合凹部24aを有している。嵌合凹部24aは受け部24を構成する切欠きと連続している。
【0068】
前述した収容空間25の底面は、横断面円弧状に凹んでおり、底板部22における粘着式クリーナー11の上面側に対応する正面側の辺には起立片26が形成されている。起立片26はロール保持部13の半分ほどの高さに形成され、正面側に露出する粘着ロール紙12の下側部分を隠蔽する。
【0069】
底板部22における粘着式クリーナー11の下面側に対応する背面側の辺には正面側の起立片26のような壁を形成することなく、背面側を開放している。
【0070】
以上のように構成された粘着式クリーナー11は、次のように使用される。
【0071】
まず、粘着ロール紙12の取付けは、
図14に示したように、ロックスイッチ38を支持部32から離れる方向に移動して支持部32である枢着支持部材37を拓く方向に回動する。この状態で
図14に仮想線で示したように粘着ロール紙12の一端を、一方の支持部31の嵌合部33に対して嵌めて、他方の支持部32を保持位置に戻す。この動作によって、支持部32の嵌合部33は粘着ロール紙12の他端にスッと嵌まり、粘着ロール紙12は回転可能に保持される。
【0072】
ロックスイッチ38は、支持部32側に移動すると、枢着支持部材37を保持位置に保持できる。
【0073】
粘着ロール紙12の保持に際しては、先端12bを上面側におけるハンドル11a後端に向けて引き出せる向きにする。
【0074】
ごみ取り作業は、粘着式クリーナー11のハンドル11aやボディ11bを手で持ち、粘着ロール紙12の粘着面を転がせる。このとき、カッター51の操作突起部55が筐体17から突出しているものの、カッター51はハンドル11a等とは別体に設けられているので、ばね部材19の付勢力に抗して不測に押し下げてしまうような不都合は回避できる。このことから、ごみ取り作業は操作性よく快適に行える。
【0075】
また、ロール保持部13とカッター51等との位置関係を前述のように設定したので、粘着ロール紙12の外周面が上面側と下面側とで偏りなく露出した状態を得られ、ごみ取り作業は良好に行える。
【0076】
そして、粘着ロール紙12の汚れた部分を切除して粘着ロール紙12を更新する場合には、
図15に仮想線で示したように、粘着ロール紙12の先端12bを誘導部39の下に通して手前に引き出す。誘導部39は粘着ロール紙12の引き出し動作を誘導し、正しい操作を促す。引き出しに伴って汚れの無い部分が露出してその先端が先端開口77に相当する位置に達したところで、カッター51の操作突起部55をばね部材19の付勢力に抗して前方に押す。
【0077】
カッター51を押し出すと、これと同時に前進する押し片52が先に粘着ロール紙12の外周面に当たり、付勢手段53の付勢力に抗して押し片52は下方へ回動しながら前進に伴って粘着ロール紙12を回転させる。
【0078】
この粘着ロール紙12の回転中に、さらに前進するカッター51の切断刃51cが粘着ロール紙12に接触して、接触した部分に折り返し部12aを形成する。折り返し部12aの先端は切断刃51cに押圧されて、粘着ロール紙12の粘着面に接着する。
【0079】
このあと、粘着ロール紙12の引き出した部分を動かして切断刃51cによる切断を行うと、切除されて残った粘着ロール紙12の端部に折り返し部12aがあらわれる。
【0080】
カッター51の切断刃51cの接触に先立って粘着ロール紙12を回転させる押し片52は、それ自体変形せずに回動する構成であるので、回転させる部材自体が弾性変形するものである場合比べて、粘着ロール紙12の残量に関わらず安定した回転を実現できる。このため、常に所望の折り返し部12aを形成できる。
【0081】
しかも、前述のようにカッター51はハンドル11a等とは別体であり機能上独立しているので、必要な時だけ折り返し部12aを形成できる。
【0082】
次に粘着ロール紙12を更新する際には、折り返し部12aを剥離の端緒にできて、作業性がよい。
【0083】
使用しないときには、
図16に示したように、粘着式クリーナー11はスタンド21に立てておくことができる。スタンド21に立てた状態において、粘着式クリーナー11の誘導部39とスタンド21の嵌合凹部24aが嵌り合い、粘着式クリーナー11の切欠き部37cとスタンド21の嵌合凸部23aが嵌り合って位置規制がなされ、前後方向の傾倒が防止される。このため、粘着式クリーナー11は不測に倒れたりすることなく、安定して支持される。
【0084】
以上のようにこの粘着式クリーナー11によれば、ごみ取り作業が良好に行えるとともに、必要な時に所望の折り返し部12aを形成できる。
【0085】
そのうえ、カッター51は全体が筐体17に収納されるので、切断刃51cが露出している場合と比べて安全性がきわめて高い。
【0086】
また、ロール保持部13が両持ち構造であるので、ロール保持部13からハンドル11aまでが合成樹脂製であっても粘着ロール紙12を強固に保持可能で、たとえ粘着式クリーナー11を落下させてしまった場合でも損傷を回避できる堅固な構成にすることがきる。
【0087】
しかも、一対の支持部31,32のうち一方を保持位置と対比位置とに回動可能にした構成であるので、粘着ロール紙12の取り付けや取り外しは簡単に行える。ロックスイッチ38を備えているが、その操作はスライドするだけでよいので、操作は至って簡単である。
【0088】
また、枢着保持された押し片52であるが、押し片52は、筐体17の下面の凹溝83に埋没している。押し片52の先端部は筐体17の厚み内で粘着ロール紙12に対して臨むように突出しているが、押し片52の多くの部分が露出している場合と比べて、ごみ取り作業性がよいうえに、押し片52に不測の力が作用したりすることを回避でき、不測の損傷を防止できる。
【0089】
支持部31に形成された誘導部39は、粘着ロール紙12の剥ぎ取りに際して正しい操作を促すが、そのほかにも、スタンド21との嵌合で前方(正面側)への傾倒が防止される。このため、スタンド21は簡素な構成でありながらも、粘着式クリーナー11の安定した支持が可能である上に、スタンド21は上面開放型の構造であるので、着脱作業は極めて簡単である。
【0090】
以上の構成はこの発明を説明するための一形態であって、この発明は前述の構成のみに限定されるものではなく、その他の構成を採用することもできる。
【0091】
たとえば粘着式クリーナー11は、ハンディタイプのものではなく、長い柄を有する構造のものとすることもできる。
【0092】
また、ロール保持部13cからハンドル11aまでの支持構造を前述のような合成樹脂製の筐体17で構成するのではなく、従来例のような鋼製の線材で構成することも可能である。
【符号の説明】
【0093】
11…粘着式クリーナー
11a…ハンドル
11b…ボディ
12…粘着ロール紙
12a…折り返し部
13…ロール保持部
17…筐体
21…スタンド
23,24…受け部
24a…嵌合凹部
31,32…支持部
37…枢着支持部材
37a…枢着軸
39…誘導部
51…カッター
52…押し片
53…付勢手段
62…枢着部
83…凹溝
84…貫通穴