(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 33/14 20060101AFI20240401BHJP
B29C 45/16 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
B29C33/14
B29C45/16
(21)【出願番号】P 2019110462
(22)【出願日】2019-06-13
【審査請求日】2022-05-16
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000158781
【氏名又は名称】紀伊産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142022
【氏名又は名称】鈴木 一晃
(72)【発明者】
【氏名】小松 冨士夫
(72)【発明者】
【氏名】井上 直明
【審査官】田中 則充
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-267505(JP,A)
【文献】特開2002-360809(JP,A)
【文献】特開2007-290315(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00-33/76
B29C 45/00-45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加飾シートを用いてインサート成形することによって、樹脂成形品の一面を加飾する樹脂成形品の製造方法であって、
前記樹脂成形品の加飾部分の形状に合わせた形状の加飾部と前記加飾部の周囲に位置する挟持部とを有し、
切り込みによって前記加飾部と前記挟持部と
が分離
されている加飾フィルムと、前記加飾フィルムの加飾面に付着され
、前記加飾部と前記挟持部とを保持する弾性変形可能な保護フィルムを有し、前記挟持部および前記保護フィルムを貫通する、位置決め用の複数の貫通孔が形成されている加飾シートを用意する工程と、
前記加飾シートを、キャビティおよびコアを有する金型に配置し、前記キャビティの前記コアとの当接面には複数の位置決め用突起が設けられており、
前記加飾シートの厚み方向に見て前記加飾部が前記キャビティの加飾面成形部に重なるように前記加飾シートを前記キャビティに配置するために、前記保護フィルムが前記キャビティと当接するように、前記貫通孔に前記位置決め用突起を挿入する工程と、
前記コアの前記キャビティとの当接面には、前記樹脂成形品を成形する成形部および複数の前記位置決め用突起が挿入される複数の位置決め用孔が設けられており、前記キャビティの位置決め用突起を前記コアの位置決め用孔に挿入し、前記キャビティの表面と前記コアの表面とで前記加飾シートの前記挟持部を挟んで固定する工程と、
前記金型内に樹脂を射出して
、前記加飾シートのうち、前記加飾部と前記加飾部を保持している前記保護フィルムとを前記加飾面成形部に合わせて変形させ、前記樹脂成形品をインサート成形する工程と、
前記金型から
前記加飾シートが付着した状態の前記樹脂成形品を取り外す工程
と、
成形後、前記加飾シートを前記樹脂成形品から取り外すことにより、前記保護フィルム及び前記挟持部を前記樹脂成形品から取り除く工程と、を有し、
前記保護フィルム
及び前記挟持部をはがすことにより、前記加飾部によって前記樹脂成形品の表面の加飾が行われ
、前記加飾シートの加飾部の平面形状が、円形または楕円形であることを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
【請求項2】
前記キャビティにおいて前記加飾部に対応する部分に凹状の曲面を設け、前記樹脂成形品の表面を凸状の曲面に形成し、前記樹脂成形品の曲面の表面を前記加飾部によって加飾することを特徴とする請求項1に記載の樹脂成形品の製造方法。
【請求項3】
加飾シートを用いてインサート成形することによって、樹脂成形品の一面を加飾する樹脂成形品の製造方法であって、
前記樹脂成形品の加飾部分の形状に合わせた形状の加飾部と前記加飾部の周囲に位置する挟持部とを有し、
切り込みによって前記加飾部と前記挟持部と
が分離
されている加飾フィルムと、前記加飾フィルムの加飾面に付着され
、前記加飾部と前記挟持部とを保持する弾性変形可能な保護フィルムを有し、前記挟持部および前記保護フィルムを貫通する、位置決め用の複数の貫通孔が形成されている加飾シートを用意する工程と、
前記加飾シートを、キャビティおよびコアを有する金型に配置し、前記コアの前記キャビティとの当接面には、前記樹脂成形品を成形する成形部および複数の位置決め用突起が設けられており、
前記加飾シートの厚み方向に見て前記加飾部が前記キャビティの加飾面成形部に重なるように前記加飾シートを前記コアに配置するために、前記加飾フィルムが前記コアと当接するように、前記貫通孔に前記位置決め用突起を挿入する工程と、
前記キャビティの前記コアとの当接面には、複数の前記位置決め用突起が挿入される複数の位置決め用孔が設けられており、前記コアの位置決め用突起を前記キャビティの位置決め用孔に挿入し、前記キャビティの表面と前記コアの表面とで前記加飾シートの前記挟持部を挟んで固定する工程と、
前記金型内に樹脂を射出して
、前記加飾シートのうち、前記加飾部と前記加飾部を保持している前記保護フィルムとを前記加飾面成形部に合わせて変形させ、前記樹脂成形品をインサート成形する工程と、
前記金型から
前記加飾シートが付着した状態の前記樹脂成形品を取り外す工程
と、
成形後、前記加飾シートを前記樹脂成形品から取り外すことにより、前記保護フィルム及び前記挟持部を前記樹脂成形品から取り除く工程と、を有し、
前記保護フィルム
及び前記挟持部をはがすことにより、前記加飾部によって前記樹脂成形品の表面の加飾が行われ
、前記加飾シートの加飾部の平面形状が、円形または楕円形であることを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
【請求項4】
前記キャビティにおいて前記加飾部に対応する部分に、凹状の曲面を設け、前記樹脂成形品の表面を凸状の曲面に形成し、前記樹脂成形品の曲面の表面を前記加飾部によって加飾することを特徴とする請求項3に記載の樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加飾シートを用いてインサート成形することによって、樹脂成形品の一面を加飾する樹脂成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
加飾フィルムを用いて、樹脂成形品の成形と同時に加飾を行う方法として、主にインモールド成形とインサート成形の2種類の成形方法が用いられている。インモールド成形は、金型でロール状の加飾フィルムを挟み込んだ状態で、樹脂を射出し射出成形を行うことにより、樹脂成形品の表面に転写する(特許文献1参照)。インモールド成形は、樹脂成形品からはみ出した加飾フィルムは箔バリとなるので箔バリを除去する工程が必要であり、また、ロール状の加飾フィルムを金型で挟み込むことから位置ずれが生じるという問題がある。
【0003】
インサート成形は、所定の形状にカット加工した加飾シートを金型内に入れ、金型内に樹脂を射出して成形することによって、樹脂成形品の表面に加飾シートを一体化させる方法である(特許文献2参照)。インサート成形は、インモールド成形と比べて、箔バリの問題が無く、位置ずれが生じ難くはなるが、加飾シートをカット加工する際に発生する切り粉や加飾シート表面へのごみなどの付着、加飾シートの形状が円形の場合だと位置決めが難しいという問題があり、加飾シートと金型との間に樹脂が流れ込む、あるいは、加飾シートがずれるという問題もあり、特に曲面への加飾が困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-172196号公報
【文献】特開2013-184294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、加飾シートを用いてインサート成形する際に、加飾シートの位置決めが簡単かつ正確であり、製造時の加飾シート表面へのごみなどの付着および破損を防止し、さらに、樹脂を射出した際の加飾シートの位置ずれなどを防止し、樹脂成形品の曲面への加飾が可能な樹脂成形品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の樹脂成形品の製造方法は、加飾シートを用いてインサート成形することによって、樹脂成形品の一面を加飾する樹脂成形品の製造方法であって、加飾部と前記加飾部の周囲に位置する挟持部とを有し、前記加飾部と前記挟持部とを分離する切り込みが形成されている加飾フィルムと、前記加飾フィルムの加飾面に付着された保護フィルムを有し、前記挟持部および前記保護フィルムを貫通する、位置決め用の複数の貫通孔が形成されている加飾シートを用意する工程と、前記加飾シートを、キャビティおよびコアを有する金型に配置し、前記キャビティの前記コアとの当接面には複数の位置決め用突起が設けられており、前記加飾シートを前記キャビティに配置するために、前記保護フィルムが前記キャビティと当接するように、前記貫通孔に前記位置決め用突起を挿入する工程と、前記コアの前記キャビティとの当接面には、前記樹脂成形品を成形する成形部および複数の前記位置決め用突起が挿入される複数の位置決め用孔が設けられており、前記キャビティの位置決め用突起を前記コアの位置決め用孔に挿入し、前記キャビティの表面と前記コアの表面とで前記加飾シートの前記挟持部を挟んで固定する工程と、前記金型内に樹脂を射出して樹脂成形品をインサート成形する工程と、前記金型から前記樹脂成形品を取り外す工程を含み、前記保護フィルムをはがすことにより、前記加飾部によって前記樹脂成形品の表面の加飾が行われることを特徴とする。
【0007】
前記キャビティにおいて前記加飾部に対応する部分に凹状の曲面を設け、前記樹脂成形品の表面を凸状の曲面に形成し、前記樹脂成形品の曲面の表面を前記加飾部によって加飾することも可能である。
【0008】
前記加飾シートの加飾部の平面形状を、円形または楕円形とすることができる。
【0009】
本発明の樹脂成形品の別の形態の製造方法は、加飾シートを用いてインサート成形することによって、樹脂成形品の一面を加飾する樹脂成形品の製造方法であって、加飾部と前記加飾部の周囲に位置する挟持部とを有し、前記加飾部と前記挟持部とを分離する切り込みが形成されている加飾フィルムと、前記加飾フィルムの加飾面に付着された保護フィルムを有し、前記挟持部および前記保護フィルムを貫通する、位置決め用の複数の貫通孔が形成されている加飾シートを用意する工程と、前記加飾シートを、キャビティおよびコアを有する金型に配置し、前記コアの前記キャビティとの当接面には、前記樹脂成形品を成形する成形部および複数の位置決め用突起が設けられており、前記加飾シートを前記コアに配置するために、前記加飾フィルムが前記コアと当接するように、前記貫通孔に前記位置決め用突起を挿入する工程と、前記キャビティの前記コアとの当接面には、複数の前記位置決め用突起が挿入される複数の位置決め用孔が設けられており、前記コアの位置決め用突起を前記キャビティの位置決め用孔に挿入し、前記キャビティの表面と前記コアの表面とで前記加飾シートの前記挟持部を挟んで固定する工程と、前記金型内に樹脂を射出して樹脂成形品をインサート成形する工程と、前記金型から前記樹脂成形品を取り外す工程を含み、前記保護フィルムをはがすことにより、前記加飾部によって前記樹脂成形品の表面の加飾が行われることを特徴とする。
【0010】
前記キャビティにおいて前記加飾部に対応する部分に、凹状の曲面を設け、前記樹脂成形品の表面を凸状の曲面に形成し、前記樹脂成形品の曲面の表面を前記加飾部によって加飾することも可能である。
【0011】
前記加飾シートの加飾部の平面形状を、円形または楕円形とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の樹脂成形品の製造方法は、加飾シートを用いてインサート成形することによって、樹脂成形品の一面を加飾する樹脂成形品の製造方法であって、加飾部と前記加飾部の周囲に位置する挟持部とを有し、前記加飾部と前記挟持部とを分離する切り込みが形成されている加飾フィルムと、前記加飾フィルムの加飾面に付着された保護フィルムを有し、前記挟持部および前記保護フィルムを貫通する、位置決め用の複数の貫通孔が形成されている加飾シートを用意する工程と、前記加飾シートを、キャビティおよびコアを有する金型に配置し、前記キャビティの前記コアとの当接面には複数の位置決め用突起が設けられており、前記加飾シートを前記キャビティに配置するために、前記保護フィルムが前記キャビティと当接するように、前記貫通孔に前記位置決め用突起を挿入する工程と、前記コアの前記キャビティとの当接面には、前記樹脂成形品を成形する成形部および複数の前記位置決め用突起が挿入される複数の位置決め用孔が設けられており、前記キャビティの位置決め用突起を前記コアの位置決め用孔に挿入し、前記キャビティの表面と前記コアの表面とで前記加飾シートの前記挟持部を挟んで固定する工程と、前記金型内に樹脂を射出して樹脂成形品をインサート成形する工程と、前記金型から前記樹脂成形品を取り外す工程を含み、前記保護フィルムをはがすことにより、前記加飾部によって前記樹脂成形品の表面の加飾が行われた状態となるので、前記加飾シートの位置決めが簡単に、かつ、正確に行うことができるようになり、前記樹脂成形品の表面に、位置ずれ、または、皺などを生じることなく綺麗に加飾することが可能となり、さらに、加飾シートをカット加工する際に発生する切り粉や加飾シート表面へのごみなどの付着および損傷が少なくなって歩留まりが向上することで、加飾された樹脂成形品の製造コストを低減することができるようになる。
【0013】
本発明の樹脂成形品の別の形態の製造方法は、加飾シートを用いてインサート成形することによって、樹脂成形品の一面を加飾する樹脂成形品の製造方法であって、加飾部と前記加飾部の周囲に位置する挟持部とを有し、前記加飾部と前記挟持部とを分離する切り込みが形成されている加飾フィルムと、前記加飾フィルムの加飾面に付着された保護フィルムを有し、前記挟持部および前記保護フィルムを貫通する、位置決め用の複数の貫通孔が形成されている加飾シートを用意する工程と、前記加飾シートを、キャビティおよびコアを有する金型に配置し、前記コアの前記キャビティとの当接面には、前記樹脂成形品を成形する成形部および複数の位置決め用突起が設けられており、前記加飾シートを前記コアに配置するために、前記加飾フィルムが前記コアと当接するように、前記貫通孔に前記位置決め用突起を挿入する工程と、前記キャビティの前記コアとの当接面には、複数の前記位置決め用突起が挿入される複数の位置決め用孔が設けられており、前記コアの位置決め用突起を前記キャビティの位置決め用孔に挿入し、前記キャビティの表面と前記コアの表面とで前記加飾シートの前記挟持部を挟んで固定する工程と、前記金型内に樹脂を射出して樹脂成形品をインサート成形する工程と、前記金型から前記樹脂成形品を取り外す工程を含み、前記保護フィルムをはがすことにより、前記加飾部によって前記樹脂成形品の表面の加飾が行われた状態となるので、前記加飾シートの位置決めが簡単に、かつ、正確に行うことができるようになり、前記樹脂成形品の表面に、位置ずれ、または、皺などを生じることなく綺麗に加飾することが可能となり、さらに、加飾シートをカット加工する際に発生する切り粉や加飾シート表面へのごみなどの付着および損傷が少なくなって歩留まりが向上することで、加飾された樹脂成形品の製造コストを低減することができるようになる。
【0014】
前記キャビティにおいて前記加飾部に対応する部分に凹状の曲面を設け、前記樹脂成形品の表面を凸状の曲面に形成し、前記樹脂成形品の曲面の表面を前記加飾部によって加飾することにより、前記樹脂成形品の表面に、位置ずれ、または、皺などを生じることなく加飾することが可能となる。
【0015】
前記加飾シートの加飾部の平面形状を、円形または楕円形とした場合でも、前記加飾シートのずれを防止し、さらに、前記加飾シートの位置決めを容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1の実施形態の樹脂成形品の製造方法に使用する加飾シートの斜視図である。
【
図2】第1の実施形態で使用する加飾シートの断面図である。
【
図3】第1の実施形態で使用するキャビティの斜視図である。
【
図4】第1の実施形態で使用するコアの斜視図である。
【
図5】第1の実施形態の樹脂成形品の製造方法の工程を示す断面図である。
【
図6】第1の実施形態の樹脂成形品の製造方法の工程を示す断面図である。
【
図7】第1の実施形態の樹脂成形品の製造方法の工程を示す断面図である。
【
図8】第1,2の実施形態で製造した樹脂成形品から加飾シートを取り外す前の斜視図である。
【
図9】第1,2の実施形態で製造した樹脂成形品から加飾シートを取り外した後の斜視図である。
【
図10】第2の実施形態で使用するコアの斜視図である。
【
図11】第2の実施形態で使用するキャビティの斜視図である。
【
図12】第2の実施形態の樹脂成形品の製造方法の工程を示す断面図である。
【
図13】第2の実施形態の樹脂成形品の製造方法の工程を示す断面図である。
【
図14】第2の実施形態の樹脂成形品の製造方法の工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の樹脂成形品の製造方法について、図面を参照しながら以下に詳細に説明する。最初に、本発明の第1の実施形態の樹脂成形品の製造方法について説明するが、第1の実施形態で使用する加飾シート1から説明する。
図1に示すのが、本発明の第1の実施形態の樹脂成形品の製造方法に使用する加飾シート1の斜視図であり、
図2が断面図である。第1の実施形態の樹脂成形品の製造方法の説明は、樹脂成形品10として円形の蓋を用いて説明し、前記蓋の表面に加飾を施す場合について説明する。樹脂成形品の用途、形状、加飾する場所については、特に限定するものではなく、本発明は、様々な用途、形状の樹脂成形品に適用することが可能であり、加飾する面については、樹脂成形品の一面であれば表面に限定するものではない。
【0018】
第1の実施形態の樹脂成形品の製造方法に使用する加飾シート1は、樹脂成形品10である蓋の表面を加飾するためのシートであって、
図1に示すように、加飾フィルム2および保護フィルム3から構成されている。前記加飾フィルム2は、
図1に示すように、樹脂成形品10の加飾部分に合わせた円形の加飾部21、前記加飾部21の周囲に位置し、矩形の輪郭を有する挟持部22から構成されており、前記加飾部21と前記挟持部22とは環状の切り込み23によって分離されている。前記加飾フィルム2の挟持部22には、2つの貫通孔24が、前記加飾部21を挟むように設けられている。
【0019】
前記加飾フィルム2は、一面に印刷などによって加飾が施された加飾面を有するフィルムであって、少なくとも前記加飾部21だけに加飾が施されていればよく、場合によっては前記挟持部22にも加飾が施されていてもよい。前記加飾部21の形状は円形に限定するものではなく、樹脂成形品10の加飾部分に合わせた形状であればよく、楕円形とすることも可能であり、その他にも様々な形状とすることができる。また、前記加飾部21の加飾方法についても限定するものではなく、従来の様々な手段を用いることができる。
【0020】
前記切り込み23は、前記樹脂成形品10の加飾部分の形状に合わせて、前記加飾フィルム2をカットしたラインであり、前記切り込み23を前記加飾フィルム2に設けておくことにより、前記樹脂成形品10を成形した後、前記加飾部21を前記樹脂成形品10の表面に残した状態で、簡単に前記加飾シート1を前記樹脂成形品10から取り外すことができる。
【0021】
前記保護フィルム3は一面が粘着面となっており、前記粘着面に前記加飾フィルム2が付着されている。前記保護フィルム3は、前記加飾フィルム2の貫通孔24の位置に、2つの貫通孔31が設けられており、
図2に示すように、前記貫通孔24および前記貫通孔31によって、前記加飾シート1を貫通する孔が2か所に形成されることになり、前記貫通孔24,31を用いて前記加飾シート1は、金型に対して位置決めが行われる。本実施形態では、前記貫通孔24,31はそれぞれ2つとしているが、位置決めに使用することから、少なくとも2つであればよく、3つ以上とすることも可能である。
【0022】
前記保護フィルム3の粘着力は、前記加飾フィルム2を保持し、樹脂成形品10を成形後、前記加飾部21を残した状態で前記加飾シート1を取り外すことができる粘着力があればよく、前記保護フィルム3として、一般的な粘着フィルムを用いることができる。前記保護フィルム3は、例えば、ポリエチレン系のフィルムの一面に粘着面を設けたものを用いることができるが、特に材質を限定するものではなく、様々なフィルムを用いることができ、透明、半透明、または、不透明でもよい。樹脂成形品の表面が平坦ではない場合は、射出成形の際に前記保護フィルム3が変形する必要があることから、この場合、変形しやすい材質を用いることが好ましい。
【0023】
前記加飾シート1は、前記加飾フィルム2の加飾面に前記保護フィルム3を付着させていることにより、前記樹脂成形品10の成形が完了するまで、加飾面を保護することができ、前記加飾フィルム2の表面にごみなどが付着することや、表面を損傷することといった不具合を防ぐことができる。従来のような製造過程において生じる加飾フィルムの不具合による歩留まりを向上させることができ、製造コストの低減が可能となる。
【0024】
次に、第1の実施形態の樹脂成形品の製造方法に使用する金型について説明する。前記金型は、キャビティ5およびコア6から構成されている。前記キャビティ5は、前記コア6と組み合わせた時に前記コア6と当接する面に、
図3に示すように、前記樹脂成形品10の加飾部分を成形する加飾面成形部51および2つの位置決め用突起52が設けられている。本実施形態では、前記加飾面成形部51は、前記樹脂成形品10の加飾部分の平面形状(本実施形態では円形)に合わせて円形の平面形状を有しており、さらに、前記樹脂成形品10の加飾部分を凸状の曲面とするために、凹状の曲面となっている。
【0025】
2つの前記位置決め用突起52は、
図3に示すように、前記キャビティ5の前記コア6との当接面に、前記加飾面成形部51を挟むように配置されている。前記位置決め用突起52は、前記加飾シート1を位置決めするために設けられており、
図5(b)に示すように、前記加飾シート1の貫通孔24,31に挿入される。そのために、2つの位置決め用突起52は前記貫通孔24,31と同じ間隔で配置されており、前記貫通孔24,31が挿入可能であり、前記貫通孔24、31に挿入した後、前記加飾シート1がずれないような大きさに設定されている。
【0026】
前記位置決め用突起52に前記加飾シート1の貫通孔24,31を挿入した時に前記加飾シート1を確実に保持するために、前記キャビティ5の表面に吸引溝を設けることも可能である。前記吸引溝は、例えば、前記加飾面成形部51を囲むように環状に配置することができ、前記吸引溝によって前記加飾シート1を吸引することにより、前記キャビティ5と前記コア6とを組み合わせるまでの間、確実に前記保護シート1を保持することが可能となる。
【0027】
前記コア6は、前記キャビティ5との当接面に、
図4に示すように、前記樹脂成形品10を成形するための成形部61が設けられている。前記キャビティ5の前記コア6との当接面には前記成形部61の開口が位置しており、前記開口の形状は、前記樹脂成形品10の平面形状に合わせて円形となっている。さらに、前記コア6は、前記キャビティ5との当接面に、
図4に示すように、前記開口を挟むように、2つの位置決め用孔62が設けられている。前記位置決め用孔62は、2つの前記位置決め用突起52に対応するように配置されており、前記キャビティ5と前記コア6とを組み合わせる際に、
図5(c),
図6(a)に示すように、前記位置決め用突起52が、前記加飾シート1が位置決めされた状態で前記位置決め用孔62に挿入される。
【0028】
前記コア6と前記キャビティ5とを組み合わせるために、前記キャビティ5の2つの位置決め用突起52を前記コア6の2つの位置決め用孔62に挿入すると、前記コア6の表面が前記キャビティ5の表面と当接し、この時、
図6(a)に示すように、前記コア6の表面と前記キャビティ5の表面とによって、前記加飾シート1の挟持部22の部分を挟み込むことにより、前記加飾シート1を所定の位置で固定することができる。
【0029】
前記金型には、シートインサート成形に必要な樹脂を射出するゲートなどが設けられているが、このような射出成形に必要な従来の構造については、従来の金型の様々な構造を用いることができることから、図示しておらず、詳細な説明は省略している。前記金型については、前記樹脂成形品10の形状に合わせて様々な形状および構造に変更することや、彫刻などの加工を施すことにより、様々な模様を形成することができる。
【0030】
また、前記キャビティ5の加飾面成形部51、前記コア6の成形部61などについては、前記樹脂成形品10の形状に合わせて適宜変更可能である。そして、前記加飾シート1の貫通孔24,31、前記キャビティ5の位置決め用突起52、および、前記コア6の位置決め用孔62の数については、少なくとも2つあればよく、3つ以上とすることも可能であり、位置についても本実施形態に限定するものではなく、適宜、変更可能である。
【0031】
本発明の第1の実施形態の樹脂成形品の製造方法について説明する。第1の実施形態の樹脂成形品の製造方法は、前記加飾シート1および前記金型を用いて、蓋である樹脂成形品10をインサート成形し、前記樹脂成形品10の表面を加飾する製造方法である。
図1に示すような、所定のデザインで加飾した前記加飾シート1を用意し、
図5(a),(b)に示すように、前記金型のキャビティ5の位置決め用突起52を前記加飾シート1の貫通孔24,31に挿入し、前記キャビティ5の表面に前記加飾シート1を配置する。
【0032】
前記加飾シート1は、前記保護フィルム3が前記キャビティ5側となるような状態で前記キャビティ5の表面に配置されており、この時、前記加飾シート1が、前記位置決め用突起52によって保持されて位置決めされていることにより、
図5(b)に示すように、前記加飾シート1の加飾フィルム2の加飾部21は、前記キャビティ5の加飾面成形部51と正確に重なるように配置されている。
【0033】
このように、前記加飾シート1に2つの貫通孔24,31を設け、前記キャビティ5に2つの位置決め用突起52設けることによって、前記貫通孔24,31に位置決め用突起52を挿入して前記加飾シート1を前記キャビティ5に配置するという簡単な動作で、前記加飾シート1を正確に所定の位置に正確に配置することができ、前記加飾部21は前記加飾面成形部51と正確に重なった状態となる。この時、前記キャビティ5の表面に前記吸引溝が設けられていれば、前記加飾シート1をより確実に保持した状態を維持することができるようになる。
【0034】
前記加飾シート1を前記キャビティ5に配置した後、前記コア6と前記キャビティ5とを組み合わせて前記金型を組み立てるために、
図5(c),
図6(a)に示すように、前記キャビティ5の位置決め用突起52を、前記コア6の位置決め用孔62に挿入する。前記位置決め用突起52を前記位置決め用孔62に挿入すると、
図6(a)に示すように、前記コア6の表面は前記加飾シート1の加飾フィルム2と当接し、前記加飾シート1の挟持部22の部分が、前記キャビティ5の表面と前記コア6の表面によって挟まれて、前記加飾シート1が固定された状態となる。
【0035】
この時、前記キャビティ5の表面に設けられた加飾面成形部51は、前記加飾シート1の加飾部21と前記保護フィルム3を介して、前記コア6の成形部61の開口と重なるように位置しているが、前記加飾面成形部51は凹状の曲面を有していることにより、
図6(a)の断面図に示すように、前記加飾シート1とは当接しておらず、前記加飾面成形部51と前記加飾シート1の保護フィルム3との間には隙間が生じた状態となっている。前記加飾面成形部51が平坦な場合にはこのような隙間は生じない。
【0036】
このようにして、前記キャビティ5と前記コア6とを組み合わせて前記金型を組み立てて、前記キャビティ5と前記コア6とによって前記加飾シート1の挟持部22の部分を挟み込んだ状態で、前記キャビティ5と前記コア6とを互いに固定すると、前記加飾シート1は、前記金型内において所定の位置に正確に位置決めされた状態で強固に固定される。
【0037】
このようにして前記加飾シート1を前記金型内に固定した後、前記金型の前記成形部61内にゲートを通じて樹脂を射出し、前記樹脂成形品10をインサート成形する。前記金型内にゲートから射出された樹脂は、前記成形部61内に射出されて、前記加飾シート1の加飾フィルム2の加飾部21を前記キャビティ5の前記加飾面成形部51へと押圧し、
図6(b)に示すように、前記樹脂成形品10の加飾部分が成形される。
【0038】
この時、前記加飾部21は、前記切り込み23によって前記挟持部22とは分離されていることから、前記加飾フィルム2は、前記加飾部21だけが前記樹脂成形品10の加飾部分に合わせて変形し、前記加飾部21が付着されている前記保護フィルム3については、前記加飾部21が付着された部分が弾性変形する。このように、本発明の樹脂成形品の製造方法は、前記加飾フィルム2の加飾部21が、前記切り込み23によって前記挟持部22と分離されていることから、前記挟持部22は固定された状態で、前記加飾部21だけが変形できることから、曲面を加飾した場合に、前記加飾フィルム2に皺などが生じにくいという効果を奏する。
【0039】
さらに、本実施形態の樹脂成形品の製造方法は、前記加飾フィルム2の加飾部21の表面が前記保護フィルム3によって保護されていることによって、射出成形の際に前記加飾部21の表面に樹脂が回り込むことを防止することができ、前記樹脂成形品10の加飾面を綺麗に仕上げることができるという効果を奏する。また、前記加飾部21が前記保護フィルム3と付着されていることにより、前記加飾部21が樹脂によって押され、動いて位置ずれが生じることを防止することができるという効果を奏する。
【0040】
前記金型内への樹脂の射出が終わり、前記樹脂成形品10の成形が完了したら、
図7(a)に示すように、前記加飾シート1の貫通孔24,31から前記キャビティ5の位置決め用突起52を抜きながら、前記コア6を前記キャビティ5から取り外して前記金型の面を開放し、その後、
図7(b)に示すように、前記樹脂成形品10を前記コア6内から取り出す。前記樹脂成形品10を取り出すと、
図8に示すように、前記樹脂成形品10に前記加飾シート1が付着した状態となっている。
【0041】
このような状態の前記樹脂成形品10から、前記加飾シート1を取り外すと、前記保護フィルム3および前記加飾フィルム2の挟持部22が取り除かれて、
図9に示すように、表面に前記加飾部21が一体に成形されて加飾された状態の前記樹脂成形品10が完成する。前記樹脂成形品10から取り外した前記加飾シート1は、
図9に示すように、前記加飾部21が除去された状態となる。
【0042】
前記加飾シート1を取り外す際、前記加飾部21は前記切り込み23によって分離されていることから、前記加飾シート1を引っ張る、あるいは、前記樹脂成形品10を引っ張るだけで、前記加飾部21を前記樹脂成形品10の表面に残した状態で、簡単に前記樹脂成形品10から取り外すことができる。
【0043】
前記加飾シート1を前記樹脂成形品10から取り外すタイミングは、前記樹脂成形品10を前記金型から取り外した直後とする必要はなく、前記加飾シート1が不要となる工程まで、前記樹脂成形品10から前記加飾シート1を取り外さないで、前記樹脂成形品10の加飾部分を保護する保護シートとして使用することも可能である。
【0044】
本発明の樹脂成形品の製造方法は、前記加飾シート1および前記金型を用いることにより、従来よりも簡単にかつ正確に加飾を行うことができるという優れた効果を奏し、さらに、前記樹脂成形品10を成形後の工程は、前記加飾シート1を取り外すだけであることから、前記保護フィルム3によって樹脂成形前および樹脂成形中に前記加飾部21を保護することで歩留まりが向上することにより、製造コストを低減することができるという優れた効果を奏する。
【0045】
次に、第2の実施形態の樹脂成形品の製造方法について説明する。第2の実施形態で使用する加飾シート1は、第1の実施形態と同じものを使用することから、加飾シート1に関する説明は省略し、第2の実施形態の樹脂成形品の製造方法に使用する金型について説明する。前記金型は、コア7およびキャビティ8から構成されている。
図10に示すように、前記コア7は、前記樹脂成形品10を成形するための成形部71が設けられており、前記キャビティ8と当接する面には、前記成形部71の開口が位置しており、前記開口の形状は、前記樹脂成形品10の加飾部分の平面形状(本実施形態では円形)と同じになっている。
【0046】
さらに、前記コア7は、前記キャビティ8との当接面に、
図10に示すように、前記開口を挟むように、2つの位置決め用突起72が設けられている。前記位置決め用突起72は、前記加飾シート1を位置決めするために設けられており、
図12(b)に示すように、前記加飾シート1の貫通孔24,31に挿入される。そのために、2つの位置決め用突起72は前記貫通孔24,31と同じ間隔で配置されており、前記貫通孔24,31が挿入可能であり、前記貫通孔24、31に挿入した後、前記加飾シート1がずれないような大きさに設定されている。
【0047】
前記キャビティ8は、前記コア7と組み合わせた時に、前記コア7との当接面に、
図11に示すように、前記加飾面成形部81および2つの位置決め用孔82が設けられている。前記加飾面成形部81は、
図13(a)に示すように、前記キャビティ8を前記コア7と組み合わせた時に、前記成形部71の開口に重なる位置に設けられており、前記成形部71の開口を塞ぎ、前記樹脂成形品10の加飾部分を成形するための表面形状を有している。本実施形態では、前記加飾面成形部81は円形の平面形状を有し、さらに、前記樹脂成形品10の加飾部分を凸状の曲面とするために、凹状の曲面に形成されている。
【0048】
2つの前記位置決め用孔82は、
図11に示すように、前記キャビティ8の前記コア7との当接面に、前記加飾面成形部81を挟むように配置されており、2つの前記位置決め用突起72に対応しており、前記コア7と前記キャビティ8とを組み合わせる際に、
図12(c),
図13(a)に示すように、前記位置決め用突起72が、前記加飾シート1が位置決めされた状態で前記位置決め用孔82に挿入される。
【0049】
前記位置決め用突起72に前記加飾シート1の貫通孔24,31を挿入した時に前記加飾シート1を確実に保持するために、前記コア7の表面に吸引溝を設けることも可能である。前記吸引溝は、例えば、前記成形部71を囲むように環状に配置することができ、前記吸引溝によって前記加飾シート1を吸引することにより、前記コア7と前記キャビティ8とを組み合わせるまでの間、確実に前記保護シート1を保持することが可能となる。
【0050】
前記キャビティ8と前記コア7とを組み合わせるために、前記コア7の2つの位置決め用突起72を前記キャビティ8の位置決め用孔82に挿入すると、前記キャビティ8の表面が前記コア7の表面と当接し、この時、
図13(a)に示すように、前記キャビティ8の表面と前記コア7の表面とによって、前記加飾シート1の挟持部22の部分を挟み込むことにより、前記加飾シート1を所定の位置で固定することができる。
【0051】
前記金型には、シートインサート成形に必要な樹脂を射出するゲートなどが設けられているが、図示しておらず、詳細な説明は省略している。前記金型については、前記樹脂成形品10の形状に合わせて様々な形状および構造に変更することができる。また、前記コア7の成形部71の形状、前記キャビティ8の形状、および、前記加飾面成形部81の形状については、前記樹脂成形品10の形状に合わせて適宜変更可能である。そして、前記加飾シート1の貫通孔24,31、前記コア7の位置決め用突起72、および、前記キャビティ8の位置決め用孔82の数については、少なくとも2つあればよく、3つ以上とすることも可能であり、位置についても本実施形態に限定するものではなく、適宜、変更可能である。
【0052】
本発明の第2の実施形態の樹脂成形品の製造方法について説明する。第2の実施形態の樹脂成形品の製造方法は、第1の実施形態と同様に、蓋である樹脂成形品10をインサート成形し、前記樹脂成形品10の表面を加飾する製造方法である。
図1に示すような、所定のデザインで加飾した前記加飾シート1を用意し、
図12(a),(b)に示すように、前記金型のコア7の位置決め用突起72を前記加飾シート1の貫通孔24,31に挿入し、前記コア7の表面に前記加飾シート1を配置する。
【0053】
前記加飾シート1は、前記加飾フィルム2が前記コア7側となるような状態で前記コア7の表面に配置されており、この時、前記加飾シート1が、前記位置決め用突起72によって保持されて位置決めされていることにより、
図12(b)に示すように、前記加飾シート1の加飾フィルム2の加飾部21は、前記コア7の成形部71の開口と正確に重なるように配置されている。
【0054】
このように、前記加飾シート1に2つの貫通孔24,31を設け、前記コア7に2つの位置決め用突起72を設けることによって、前記貫通孔24,31に位置決め用突起72を挿入するように、前記加飾シート1を前記コア7に配置するという簡単な動作で、前記加飾シート1を正確に所定の位置に正確に配置することができ、前記加飾部21は成形部71の開口と正確に重なった状態とすることができる。この時、前記コア7の表面に前記吸引溝が設けられていれば、前記加飾シート1をより確実に保持した状態を維持することができるようになる。
【0055】
前記加飾シート1を前記コア7に配置した後、前記キャビティ8と前記コア7とを組み合わせて前記金型を組み立てるために、
図12(c),
図13(a)に示すように、前記コア7の位置決め用突起72を、前記キャビティ8の位置決め用孔82に挿入する。前記位置決め用突起72を前記位置決め用孔82に挿入すると、
図13(a)に示すように、前記キャビティ8の表面は前記加飾シート1の保護フィルム3と当接し、前記加飾シート1の挟持部22の部分が、前記コア7の表面と前記キャビティ8の表面によって挟まれて、前記加飾シート1が固定された状態となる。
【0056】
この時、前記キャビティ8の表面に設けられた加飾面成形部81は、前記加飾シート1の加飾部21と前記保護フィルム3を介して、前記コア7の成形部71の開口と重なるように位置しているが、前記加飾面成形部81は凹状の曲面を有していることにより、
図13(a)の断面図に示すように、前記加飾シート1とは当接しておらず、前記加飾面成形部81と前記加飾シート1の保護フィルム3との間には隙間が生じた状態となっている。前記加飾面成形部81が平坦な場合にはこのような隙間は生じない。
【0057】
このようにして、前記コア7と前記キャビティ8とを組み合わせて前記金型を組み立てて、前記コア7と前記キャビティ8とによって前記加飾シート1の挟持部22の部分を挟み込んだ状態で、前記コア7と前記キャビティ8とを互いに固定すると、前記加飾シート1は、前記金型内において所定の位置に正確に位置決めされた状態で強固に固定される。
【0058】
このようにして前記加飾シート1を前記金型内に固定した後、前記金型の前記成形部71内にゲートを通じて樹脂を射出し、前記樹脂成形品10をインサート成形する。前記金型内にゲートから射出された樹脂は、前記成形部71内に射出されて、前記加飾シート1の加飾フィルム2の加飾部21を前記キャビティ8の前記加飾面成形部81へと押圧し、
図13(b)に示すように、前記樹脂成形品10の加飾部分が成形される。
【0059】
この時、前記切り込み23によって前記挟持部22と分離されている前記加飾部21だけが射出された樹脂によって前記樹脂成形品10の加飾部分の形状に合わせて変形し、同時に、前記保護フィルム3は、前記加飾部21が付着された部分が同様に変形することから、曲面に加飾を行ったとしても、前記加飾フィルム2に皺などが生じにくく、綺麗な仕上がりを実現するという効果を奏する。
【0060】
さらに、本発明の樹脂成形品の製造方法は、前記加飾フィルム2の加飾部21の表面が前記保護フィルム3と付着していることによって、射出成形の際に前記加飾部21の表面への樹脂の回り込みを防止し、また、前記加飾部21が射出された樹脂によって動かされて位置ずれが生じることを防止することができるという優れた効果を奏する。
【0061】
前記金型内への樹脂の射出が終わり、前記樹脂成形品10の成形が完了したら、
図14(a)に示すように、前記キャビティ8を前記コア7から取り外して前記金型の面を開放し、その後、前記保護シート1の貫通孔24,31から前記コア7の位置決め用突起72を抜きながら、
図14(b)に示すように、前記樹脂成形品10を前記コア7内から取り出す。前記樹脂成形品10を取り出すと、
図8に示すように、前記樹脂成形品10に前記加飾シート1が付着した状態となっている。
【0062】
このような状態の前記樹脂成形品10から、前記加飾シート1が不要になった段階で前記加飾シート1を取り外すと、前記保護フィルム3および前記加飾フィルム2の挟持部22が取り除かれて、
図9に示すように、表面に前記加飾部21が一体に成形されて加飾された状態の前記樹脂成形品10が完成する。前記樹脂成形品10から取り外した前記加飾シート1は、
図9に示すように、前記加飾部21が除去された状態となっている。
【0063】
前記加飾部21は前記切り込み23によって分離されていることから、前記加飾シート1を引っ張るだけで、前記加飾部21を前記樹脂成形品10の表面に残した状態で、簡単に前記加飾シート1を取り外すことができる。
【0064】
本発明の樹脂成形品の製造方法は、前記加飾シート1および前記金型を用いることにより、従来よりも簡単にかつ正確に加飾を行うことができるという優れた効果を奏し、さらに、前記加飾シート1を使用する前の段階でも前記保護フィルム3によって前記加飾フィルム2を保護することができ、さらに、樹脂成形中においても、前記保護フィルム3によって前記加飾フィルム2は保護されており、さらに、樹脂成形後も前記保護フィルム3によって前記加飾部21を保護することは可能であることから、全工程を通じて樹脂成形品10の加飾面となる前記加飾部21を保護することができるという優れた効果を奏する。
【符号の説明】
【0065】
1 加飾シート
2 加飾フィルム
21 加飾部
22 挟持部
23 切り込み
24 貫通孔
3 保護フィルム
31 貫通孔
5,8 キャビティ
51,81 加飾面成形部
52,72 位置決め用突起
6,7 コア
61,71 成形部
62,82 位置決め用孔
10 樹脂成形品