(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】ダクト付き風力タービンおよび支持プラットフォーム
(51)【国際特許分類】
F03D 1/04 20060101AFI20240401BHJP
F03D 1/02 20060101ALI20240401BHJP
F03D 7/04 20060101ALI20240401BHJP
F03D 13/25 20160101ALI20240401BHJP
【FI】
F03D1/04 Z
F03D1/02
F03D7/04 M
F03D13/25
(21)【出願番号】P 2019521836
(86)(22)【出願日】2017-10-20
(86)【国際出願番号】 GB2017053186
(87)【国際公開番号】W WO2018073609
(87)【国際公開日】2018-04-26
【審査請求日】2020-10-19
【審判番号】
【審判請求日】2022-07-07
(32)【優先日】2016-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】519142837
【氏名又は名称】シーマッチ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SEAMACH LTD
【住所又は居所原語表記】Unit 10, The Bluestone Centre, Sunrise Way, Amesbury SP4 7YR United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(72)【発明者】
【氏名】ウィットフィールド, グレン アンドュリュー ハント
【合議体】
【審判長】村上 聡
【審判官】窪田 治彦
【審判官】西 秀隆
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第4154556(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0082839(US,A1)
【文献】特表2016-520167(JP,A)
【文献】特開2010-280301(JP,A)
【文献】特開2014-219012(JP,A)
【文献】実開昭64-21095(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D1/00-80/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中を通り抜ける空気から運動エネルギーを取り出すように適合され、ロータ先端部
でスイープ
される円周を画定する最外端部にロータ先端部を有する複数の回転羽根を備える少なくとも1つのタービンロータアセンブリと、
前記ロータ先端部
でスイープ
される円周を少なくとも部分的に囲うダクトアセンブリと、
を備える、ダクト付き風力タービンと、
前記ダクト付き風力タービンを支持するように適合された半潜水式基底プラットフォームであって、下向きに延在する複数の不連続浮動部材を有する三角翼形機構を備え、前記三角翼形機構が、1対の垂下翼が前記半潜水式基底プラットフォームの先端角部から後方へ延びて三角翼形となるように形成される、半潜水式基底プラットフォームと
、
を備え、
風向の変化に応じて前記タービンロータアセンブリを中心にして前記ダクトアセンブリが風見をするように、前記ダクトアセンブリが風見軸受機構によって前記
半潜水式基底プラットフォーム上に搭載され、
ダク
ト流路が前記ダクトアセンブリのダク
ト吸気口とダク
ト排気口との間に設けられ、
前記ダク
ト吸気口および前記ダク
ト排気口がそれぞれ
長手方向軸を有し、
前記ダク
ト吸気口および前記ダク
ト排気口が、それぞれの
長手方向軸がリダイレクト角度αで交差するように配置され、
前記タービンロータアセンブリの前記複数のタービン回転羽根が、少なくとも一方の方向に回転する一次組の回転羽根と、少なくとも反対方向に回転する二次組の回転羽根とが得られるように、
同軸上で反対方向に回転する2組のハブ上に組み立てられる、
洋上風力発電モジュール。
【請求項2】
前記リダイレクト角度
が90~170度である、請求項1に記載の
洋上風力発電モジュール。
【請求項3】
前記
ダクト付き風力タービンを通る空気のディフューザ効果を生むため、前記ダク
ト吸気口の面積が前記ダク
ト排気口の面積より小さい、請求項1または2に記載の
洋上風力発電モジュール。
【請求項4】
前記ダク
ト吸気口および前記ダク
ト排気口がそれぞれ、円形、卵型または方形の部分を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の
洋上風力発電モジュール。
【請求項5】
前記ダク
ト流路が、前記ダク
ト流路を通って前記タービンロータアセンブリへ気流を導くように適合された少なくとも1つの案内羽根機構を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の
洋上風力発電モジュール。
【請求項6】
使用中、前記タービンロータアセンブリを中心にして前記ダクトアセンブリが風見をするように、前記風見軸受機構が、前記
ダクト付き風力タービ
ンと前記半潜水式基底プラットフォームとの間に略円形の耐力板とそれに対応する略円形の凹部とを備える、請求項1から
5のいずれか一項に記載の
洋上風力発電モジュール。
【請求項7】
各波動エネルギー吸収体の一端が前記
半潜水式基底プラットフォームによって直接的または間接的に支持され、他端が水との浮揚接触によって支持されるように、複数の波動エネルギー吸収体が前記半潜水式基底プラットフォーム上の取付位置から水に向かって延在する、請求項1から
6のいずれか一項に記載の
洋上風力発電モジュール。
【請求項8】
前記波動エネルギー吸収体が、前記
ダクト付き風力タービ
ンの両側において前記半潜水式基底プラットフォームの後縁から後方へ延在する、請求項
7に記載の
洋上風力発電モジュール。
【請求項9】
使用中、前記
ダクト付き風力タービ
ンを通りすぎる波が連続的に、一番前の波動エネルギー吸収体から一番後ろの波動エネルギー吸収体に順々に干渉するように、前記波動エネルギー吸収体の前記取付位置が前記半潜水式
基底プラットフォーム上で後方へ連続的に配置される、請求項
7または
8に記載の
洋上風力発電モジュール。
【請求項10】
水と浮揚干渉するように、前記波動エネルギー吸収体にエネルギー浮動モジュールが設けられる、請求項
7から
9のいずれか一項に記載の
洋上風力発電モジュール。
【請求項11】
前記エネルギー浮動モジュールが、前記波動エネルギー吸収体の構造アームの末端に設けられた略半球状の浮動部材を備える、請求項
10に記載の
洋上風力発電モジュール。
【請求項12】
前記エネルギー浮動モジュール
が構造アーム
と浮動チャンバ
とを備
え、前記構造アームと前記浮動チャンバとが張殻に複合されている、請求項
10に記載の
洋上風力発電モジュール。
【請求項13】
第1回転可能部材と、前記第1回転可能部材と回転可能に連通する第2回転可能部材と、前記
第1回転可能部材および前記第2回転
可能部材のうちの少なくとも1つが他方の回転可能部材に対して回転させられたとき、その動きに対するねじり抵抗が前記
第1回転可能部材および前記第2回転可能部材間に生じるように、前記第1回転可能部材と前記第2回転可能部材との間に設けられたねじり抵抗手段とを備えるねじれ軸受機構によって前記波動エネルギー吸収体が前記半潜水式
基底プラットフォームに取り付けられた、請求項
7から
12のいずれか一項に記載の
洋上風力発電モジュール。
【請求項14】
前記半潜水式
基底プラットフォームによって水面下で支持される少なくとも1つの水力タービン機構をさらに備える、請求項1から
13のいずれか一項に記載の
洋上風力発電モジュール。
【請求項15】
前記タービンロータアセンブリ内の空気の流れを良くするように適合されたディフューザ機構をさらに備える、請求項1から
14のいずれか一項に記載の
洋上風力発電モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はダクト付き風力タービンに関し、特に洋上環境で用いる浮動ダクト付き風力タービンに関するが、これに限るものではない。ダクト付き風力タービンと一緒または別個に用いる半潜水式支持プラットフォーム、波動エネルギー取込装置およびねじれ支持軸受についても説明する。
【背景技術】
【0002】
近年、風力タービン等の再生可能エネルギー源によって発電される電力に対する需要が高まっている。結果としてそのようなタービンの効率性がますます求められるため、羽根をより長くしたタービンが開発されるようになってきている。例えば、羽根の長さが80メートルを超え、それに伴い約8MWの発電能力を有する風力タービンが存在する。
【0003】
しかし、そのようなタービンのサイズおよび発電能力を大きくし続けることはできないというのが一般的な認識である。これは、そのようなタービンのサイズおよび発電能力をゆくゆくは実際に制限することになる数々の要因があるためである。例えば、材料工学では、そのような大型構造物にかかる空力、動的、静的な力に耐え得る材料を引き続き得られないかもしれない。社会政治的な圧力により、そのような大型タービンの建設が不可能になるかもしれない。また、他の物流や製造に関する事情によって、そのような構造物は実現不可能になったり、高額になりすぎたりするおそれもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの問題等に対応することを目的に、洋上の風力、波力、潮流力タービンが開発されてきたが、そのようなタービンの多くは、発電寿命のあいだに遭遇するであろう固有の厳しい環境条件を耐え抜く見込みが低い。実際、そのような装置で電力の大部分を発電し得るのは振幅最大波および最強風であるが、既知のシステムの多くはそのような状況のあいだ、損傷を免れるために停止、待機、または固定させておかなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、
中を通り抜ける空気から運動エネルギーを取り出すように適合され、ロータ先端部スイープ円周を画定する最外端部にロータ先端部を有する複数の回転羽根を備える少なくとも1つのタービンロータアセンブリと、
前記ロータ先端部スイープ円周を少なくとも部分的に囲うダクトアセンブリと、
ダクト付き風力タービンを支持するように適合された基底プラットフォームと
を備えるダクト付き風力タービンであって、
風向の変化に応じてタービンロータアセンブリを中心にしてダクトアセンブリが風の方向を向く(風見をする)ように、ダクトアセンブリが風見軸受機構によって基底プラットフォーム上に搭載される、ダクト付き風力タービンが提供される。
【0006】
ダクト付き風力タービンは、水上で浮動するための基底プラットフォームを備えてもよい。前記基底プラットフォームは半潜水式基底プラットフォームを備えてもよい。
【0007】
ダクト運搬流路を風力タービンアセンブリのダクト運搬吸気口とダクト運搬排気口との間に設けてもよく、ダクト運搬吸気口およびダクト運搬排気口はそれぞれ前後軸を有する。ダクト運搬吸気口およびダクト運搬排気口は、それぞれの前後軸が略平行でありながら垂直または横にずらして配置されてもよい。また、ダクト運搬吸気口およびダクト運搬排気口は、それぞれの前後軸がリダイレクト角度αで交差するように配置されてもよい。
【0008】
リダイレクト角度αは約90~170度であってもよい。
【0009】
風力タービンを通る空気の圧縮または膨張を極力抑えるため、ダクト運搬吸気口およびダクト運搬排気口の面積は互いに略等しくてもよい。
【0010】
タービンを通る空気のラム効果を生むため、ダクト運搬吸気口の面積はダクト運搬排気口の面積より大きくてもよい。
【0011】
タービンを通る空気のディフューザ効果を生むため、ダクト運搬吸気口の面積はダクト運搬排気口の面積より小さくてもよい。
【0012】
ダクト運搬吸気口およびダクト運搬排気口は、円形、卵型または方形の部分を備えてもよい。
【0013】
ダクト運搬流路は、ダクト運搬流路を通ってタービンロータアセンブリへ気流を導くように適合された少なくとも1つの案内羽根機構を備えてもよい。
【0014】
タービンロータアセンブリの複数のタービンロータは、一方の方向に回転する一次組のロータと、反対方向に回転する二次組のロータとが得られるように、2組の同軸反転ハブ上に組み立てられてもよい。
【0015】
エネルギー損失を極力抑えて中で気流が円滑に流れやすくなるように、ダクト運搬流路の内部表面を空力的に最適化してもよい。
【0016】
タービン全体の気流とエネルギーの取り込みを助けるため、気流を強め、ダクト運搬排気口内を低圧化し、タービン排気口からの排気の流れに勢いをつけるとともに、構造負荷とタービン上および半潜水式基底プラットフォーム上の空力的攪流とを極力抑えるためにダクト運搬流路の外側表面を空力的に最適化してもよい。
【0017】
前記風見運動を容易にするため、ダクト付き風力タービンと一体化している、または分離しているものの接続されている垂直安定化テールを風力タービン機構に設けてもよい。テールは可動制御面および/またはトリムタブを備えてもよい。
【0018】
半潜水式基底プラットフォームは、下向きに延在する複数の不連続浮動部材を有する三角翼形機構を備えてもよい。
【0019】
半潜水式基底プラットフォームは4つの不連続浮動部材を備えてもよく、前方浮動部材が1つ、後方浮動部材が1つ、側方浮動部材が2つ得られるようにそれぞれが半潜水式基底プラットフォームの各角部に、または各角部に向けて設けられる。
【0020】
得られる支持の安定性を最大化するために、水面におけるハル断面積が小さい支持支柱によって半潜水式プラットフォームに取り付けられた下側浮動部材を、不連続浮動部材のそれぞれが備えてもよい。
【0021】
使用中、タービンロータアセンブリを中心にしてダクトアセンブリが風見をするように、風見軸受機構は、風力タービン機構と半潜水式基底プラットフォームとの間に略円形の耐力板とそれに対応する略円形の凹部とを備えてもよい。
【0022】
卓越風方向の動きに応じて半潜水式基底プラットフォームに対してダクトアセンブリが負荷状態で回転運動しやすいように、風見軸受機構に摩擦低減手段をさらに設けてもよい。
【0023】
各波動エネルギー吸収体の一端が基底プラットフォームによって直接的または間接的に支持され、他端が水との浮揚接触によって支持されるように、複数の波動エネルギー吸収体が半潜水式基底プラットフォーム上の取付位置から水に向かって延在してもよい。
【0024】
前記波動エネルギー吸収体は、タービン機構の両側において半潜水式基底プラットフォームの後縁から後方へ延在してもよい。
【0025】
使用中、風力タービン機構を通りすぎる波が連続的に、一番前の波動エネルギー吸収体から一番後ろの波動エネルギー吸収体に順々に干渉するように、波動エネルギー吸収体の前記取付位置が半潜水式プラットフォーム上で後方へ連続的に配置されてもよい。
【0026】
水と浮揚干渉するように、波動エネルギー吸収体にエネルギー浮動モジュールを設けてもよい。
【0027】
エネルギー浮動モジュールは、波動エネルギー吸収体の構造アームの末端に設けられた略半球状の浮動部材を備えてもよい。
【0028】
エネルギー浮動モジュールは複合張殻構造アーム浮動チャンバを備えてもよい。
【0029】
第1回転可能部材と、第1回転可能部材と回転可能に連通する第2回転可能部材と、回転部材のうちの少なくとも1つが他方の回転可能部材に対して回転させられたとき、その動きに対するねじり抵抗が前記回転可能部材間に生じるように、第1回転可能部材と第2回転可能部材との間に設けられたねじり抵抗手段とを備えるねじれ軸受機構によって波動エネルギー吸収体が半潜水式プラットフォームに取り付けられてもよい。
【0030】
少なくとも1つの水力タービン機構が半潜水式プラットフォームによって水面下で支持されてもよい。
【0031】
タービンロータアセンブリ内の空気の流れを良くするように適合されたディフューザ機構を設けてもよい。
【0032】
本発明の第2の態様によれば、
物品、機械、建物、機器またはその他の物品が上に設置され得る上側支持デッキと、
複数の下側不連続浮動部材と、
支持デッキの各角部からそれぞれ対応する浮動部材へ延在し、上側支持デッキが受ける支持の安定性を最大化するために、断面積を浮動部材の断面積と比較して小さくした複数の対応支持支柱と、
支持プラットフォームが固定機構を中心にして風見をすることができ、前方浮動部材を1つ、後方浮動部材を1つ、側方浮動部材を2つ構築できるように、支持デッキの先端角部に設けられた固定機構と
を備える半潜水式支持プラットフォームが提供される。
【0033】
卓越風方向の変化に応じてダクトアセンブリが半潜水式基底プラットフォームに対して風見をするように、風見軸受機構を設けてもよい。
【0034】
風力タービンアセンブリはダクト付き風力タービンを備えてもよい。
【0035】
風力タービンアセンブリは、ダクト運搬流路が風力タービンアセンブリのダクト運搬吸気口とダクト運搬排気口との間に設けられたダクト付き風力タービンを備えてもよく、ダクト運搬吸気口およびダクト運搬排気口はそれぞれ前後軸を有する。ダクト運搬吸気口およびダクト運搬排気口は、それぞれの前後軸が略平行でありながら垂直または横にずらして配置されてもよい。また、ダクト運搬吸気口およびダクト運搬排気口は、それぞれの前後軸がリダイレクト角度αで交差するように配置されてもよい。
【0036】
リダイレクト角度αは約90~170度であってもよい。
【0037】
原子炉施設の設置に上側支持デッキを適合してもよい。
【0038】
上側支持デッキは三角翼形機構を備えてもよい。
【0039】
各波動エネルギー吸収体の一端が基底プラットフォームによって直接的または間接的に支持され、他端が水との浮揚接触によって支持されるように、半潜水式基底プラットフォーム上の取付位置から水に向かって延在する複数の波動エネルギー吸収体を設けてもよい。
【0040】
半潜水式プラットフォームによって水面下で支持される少なくとも1つの水力タービン機構が設けられてもよい。
【0041】
本発明の第3の態様によれば、
波動エネルギー取込装置用の取付旋回位置を与える支持プラットフォームと、
支持プラットフォームに取り付けられ、通過波に応じて前記旋回位置を中心に回転するように前記通過波と浮揚干渉するための張殻構造浮揚浮体を備える長尺アーム部材と
を備える波動エネルギー取込装置が提供される。
【0042】
本発明の第4の態様によれば、
第1回転可能部材と、
第1回転可能部材と回転可能に連通する第2回転可能部材と、
回転部材のうちの少なくとも1つが他方の回転可能部材に対して回転させられたとき、その動きに対するねじり抵抗が前記回転可能部材間に生じるように、第1回転可能部材と第2回転可能部材との間に設けられたねじり抵抗手段と
を備えるねじれ軸受機序が提供される。
【0043】
ねじり抵抗部材は、金属または非金属の棒を備えてもよい。
【0044】
第1回転可能部材と第2回転可能部材とが相対的に回転するあいだ前記部材を構造的に支持するために、前記部材間に補助の略非ねじれの支持部材を設けてもよい。
【0045】
本発明の第5の態様によれば、
外周面と、
対応内周面と、
外周面と内周面との間に設けられた複数の交差筋違構造部材と
を備える格子造り風力タービンタワーが提供される。
【0046】
外周面および/または内周面は、複数の曲線状または直線状の構造筋違部材を備えてもよい。
【0047】
格子造りタービンタワーは、格子造りの構造筋違部材の上および間に設けられた空力カバーを備えてもよい。
【0048】
本発明の更なる特徴および利点は、特許請求の範囲および下記の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
本発明の実施形態は、以下の図面を参照しながら例示によってのみ説明される。
【
図1A】本発明の第1実施形態に係る、付属の半潜水式プラットフォームに搭載されたダクト付き風力タービンの概略透視側面図である。
【
図1B】別の連結浮動ハル機構の横向きの概略図である。
【
図1C】本発明の第2実施形態に係る、浮動ダクト付き風力タービンの概略透視側面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る、付属の半潜水式プラットフォームに搭載されたダクト付き風力タービンの概略透視側面図である。
【
図3B】別の形状をした支持プラットフォームおよび浮動機構の例の概略平面図である。
【
図3C】別の形状をした支持プラットフォームおよび浮動機構の例の概略平面図である。
【
図5】
図1Aおよび
図2のタービンのタービン羽根、ハブおよび内部タワー機構のより詳細な概略図である。
【
図6】内部タワープロファイルの断面が狭くなっている、別の実施形態のタービンのより詳細な概略図である。
【
図7A】
図5および
図6の鉄道車両車軸および付属のレールのより詳細な概略前面図である。
【
図8A】2つの例示のタービン羽根構成が取り付けられた別の実施形態に係るタービンタワーを表す概略平面図である。
【
図8B】
図8Aのタービンタワーの一部を表す概略透視図である。
【
図8C】
図8Aのタービンタワーの上部をより詳細に表す概略透視図である。
【
図9A】ねじれ軸受機構に取り付けられた別の波動エネルギー吸収体の下方透視概略図である。
【
図10】波動エネルギー吸収体の動作の基本原理を表す概略図である。
【
図11】1対の追加の傾斜軸水力タービン機構が後縁から延在している、
図3の機構の透視図である。
【
図12A】傾斜軸水力タービン機構および付属の構成部品のより詳細な平面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
特に
図1から
図3を参照すると、全体として10で示される洋上風力発電モジュールは、全体として14で示される半潜水式プラットフォーム(SSP)上に搭載された、全体として12で示される浮動ダクト付き風力タービン(DWT)を備える。
【0051】
DWT12はカーブをつけて成形された外側カウル16を備えており、内側に空力的カーブをつけることでエネルギー損失を極力抑えて、中での気流の円滑な流れを助け、外側に空気的カーブをつけることで構造負荷とDWT12上およびそれが上に搭載されるSSP14上の空力的攪流とを極力抑えている。カウル16の下流は、カウル16から付属の垂直安定板20に向かって先細になった中間尾翼部18となっている。
【0052】
カウル16、尾翼18およびテール20の部分を形成するのに、いくつかの種類および様態の材料が利用可能であるが、例として帆布、ガラス繊維、測地構造等が挙げられる。
【0053】
外側カウル16は、その使用前端の方形部吸気ダクト22から上部表面の円形部排気ダクト24に向かって徐々に空力的に先細になっている。中心を外れた突風にあたったときにそれが中に入りやすいように、吸気口22に隣接したカウル16の側壁に先細の切り欠き(図示せず)を設けてもよい。
図4に表されているように、吸気ダクト22には前後軸L1が設けられ、排気ダクト24には前後軸L2が設けられる。吸気ダクト22に隣接した方形の部分から排気ダクト24に隣接した円形の部分に沿うように、カウル16は2つの軸L1とL2との間の角度であるリダイレクト角度α(
図4)にわたって向きを変える。図示された実施形態において、このリダイレクト角度αは約100度であるが、要求仕様によってはそれよりはるかに小さくても大きくてもよい。
【0054】
図2および
図4Aに最もよく表されているように、カウル16の内部には、水平方向に並べられた気流案内羽根26の列と、中央の垂直配置された気流バッフル28とがさらに備わっている。
【0055】
特に
図4Aを参照すると、DWT12の内部には主空気ダクト25が設けられ、中を通る空気の流れを同じように導くために、案内羽根26が吸気口前後軸L1から排気口前後軸L2に向かって徐々に湾曲している。円滑な空気の流れを促し、排気口24に向かって空気が均一に分散し易くなるように、案内羽根26同士の間の垂直方向離隔距離も同様に吸気ダクト22から排気ダクト24に向かって進むにしたがい徐々に広がっている。装置の効率を最大化するため、DWT排気口24から排出される気流と好適に干渉するように、DWT排気口24上の適切な距離を隔てた位置に(
図4Aの領域Dに線Fで示されているように)ディフューザ翼27を任意選択で設けてもよい。太陽エネルギーからさらにエネルギーを取り込めるように、要望に応じて、ディフューザ翼27の上面に光電池アレイを設けてもよい。
【0056】
二重反転タービンアセンブリ(CRTA)30が主空気ダクト25内へ突出している。
図5を参照すると、CRTA30は、互いに反転するように配置された一次組のタービン羽根32と二次組のタービン羽根34とを備えている。一次羽根32は一次タワー36上に搭載され、二次羽根34は一次タワー36によって同軸上に囲われた二次タワー38上に搭載される(
図5では図解のために一次タワーおよび二次タワーは部分切取内部図で表されている)。
図5の羽根の向きの場合、DWT12を通る気流Aを受けると、一次羽根は(上から見て)時計回り方向に回転し、二次羽根は(上から見て)反時計回り方向に回転するが、これらの方向は羽根を所望の向きにすることにより変化させることができる。さらに、要望に応じて、アクティブ羽根ピッチ調整機構を利用してもよい。
【0057】
図6を参照すると、別の実施形態において、DWT12内で矢印A1で示されるように流れが動的に変化するように、CRTA30またはその近傍における主空気ダクト25の断面が狭くなった部分を含んでもよい。
【0058】
図5および
図6で表される実施形態において、一次組の羽根32と二次組の羽根34は、それぞれのタワー36、38上に回転自在に取り付けられてはいない。かわりに、羽根32、34はそれぞれのタワー36、38上に強固に固定され、タワー36およびタワー38はパワーデッキモジュール40でそれぞれの土台に回転自在に取り付けられている。しかし、別の実施形態では、必要に応じてタワーの頂上でタービン羽根と同じ高さに(後述する)軸受および発電機を設置することにより、上記とは逆にすることも可能である。
【0059】
図5および
図6で表される実施形態において、タワー36およびタワー38は、外側断面が円形となるように配置された湾曲部材を有する格子造り立体骨格構造を備えるが、他の構造を適宜利用してもよい。
【0060】
図8Aを参照すると、別の実施形態において、タービンタワー136(一次タービンタワーであっても二次タービンタワーであってもよい)が多面格子造り立体骨格構造を備える。図示された実施形態において、当該構造の断面は六角形として表されているが、タワーに必要な360度構成を形成するための直線の辺の数はいくつでもよい。格子造りのそれぞれの目は、外面支柱136Aと内面支柱136Bと対角線状の交差筋違支柱136Cとを有する。例えば外面支柱136Aの長さが約6メートルの場合、360度のアセンブリを得るために、タワー136の周縁に約40個の平坦な面が設けられる。
【0061】
図8Bを参照すると、二重壁多面格子造りタワーとするために、格子造りのそれぞれの目は、同様に配置された目の上および隣にのっている。
【0062】
図8Cを参照すると、タービン羽根132が1または複数の羽根根本棒135によってタワー136の目に取り付けられている。使用中、
図8Cの矢印Aで示される方向にタービン羽根が駆動されると、羽根根本棒135が対になった力T1およびT2を生み、タワー136に回転力Fを及ぼすため、発電モジュール(図示せず)が駆動されて発電が行われる。
【0063】
図8Aから
図8Cを参照しながら説明した格子造り骨組機構により、一次タワーおよび/または二次タワー全体の重量、材料コストおよび建設コストが極力抑えられる。
【0064】
DWT12の主要ダクト内で上述の構造を通り抜ける空気を極力乱さないように、必要に応じて当該構造に抵抗減少空力外殻を設けてもよい。
【0065】
図5および
図6を再び参照すると、パワーデッキモジュール40には、一次タワーに付随し、それにより一次羽根32に付属する、一次組のころ軸受アセンブリ42と一次発電機44とが備わっている。二次タワー38に関しても同様に、パワーデッキモジュール40には、二次タワーに付随し、それにより二次羽根34に付属する、二次組のころ軸受アセンブリ46と二次発電機48とが備わっている。
【0066】
図7Aおよび
図7Bを参照すると、ころ軸受アセンブリ42、46は、弾性のばね/ダンパ機構52によってボギー機構50内に配置された1対の車輪組48を備え、車輪組48は付属の軌道54の円形に曲がった部分を辿ることができるようになっている。
【0067】
発電機44、48は、例えば大径永久磁石コイル発電機等の好適な発電機を備える。
【0068】
図1Aを参照すると、SSP14は四角形で平面状の上側支持デッキ56を備え、
図1Aに矢印60で図示されたテザーで留められた際に三角翼形になるように、1対の垂下翼58がデッキ56の相対する角部から後方へ延びている。
【0069】
ただし、
図3Bおよび
図3Cで表された別の実施形態においては、SSP14およびその付属のいずれの浮動機構も、要求仕様によっては別の外形プロファイルで配置されてもよい。
【0070】
図1Aの機構に戻り、4つのハル支持支柱62が、支持デッキ56から、ヒーブプレート66が設けられた対応する浮動ハル64に向かって、下方へ突出している。支持支柱62の相対寸法および浮動ハル64の寸法/浮力は、「半没式双胴船」(SWATH)理論に従って得られる支持の安定性を最大化するために、支持支柱62の水線にあたると考えられる箇所の断面積が比較的(ハル64によってもたらされる浮力に対して)小さくなるような大きさとされる。水線の標準的な予想平均位置は
図4AにWとして示されている。要求仕様によっては、ハル支持支柱の数を4つより多くしても少なくしてもよい。
【0071】
図1Bを参照すると、別の実施形態において、浮動ハル64Aが連結路65によって互いに連結され、要望に応じて1または複数の支持支柱62AによってSSP14に接続されてもよい。
図1Bに表される連結路65は浮動ハル64Aの前後軸に沿って表されているが、別の実施形態(図示せず)では、連結浮動ハル前後軸に対して垂直に連結路が連結されてもよい。
【0072】
垂下翼58から後方へいくつかの波動エネルギー吸収体68が延在している。これらは互いに同じ長さであることから、次に説明する目的のため、実質上これらの端部が垂下翼58の三角翼形を反映している。波動エネルギー吸収体68には、一端において車軸関節72によって垂下翼58に接続され、水面/通過波と接触するため他端に半球状浮動機構74が設けられた長尺アーム70が備わっている。
【0073】
図9Aおよび
図9Bを参照すると、別の実施形態では、波動エネルギー吸収体が、一端にねじれ軸受80と動力取出接合部78とを有する複合張殻構造アーム浮動チャンバ機構68Aを備える。ねじれ軸受80は、浮動チャンバ68AのSSP14への旋回取付を可能にするために設けられ、浮動チャンバ68Aに強固に接続された中心ディスク76と、SSP14上の適切な固定地点に強固に接続された1対の端部ディスク82と、端部ディスク82を中心ディスク76に接続するねじれ/支持棒84とを備える。
【0074】
図1から
図3を参照すると、全体として86で示され、DWT14の下面に取り付けられた円形耐力板88とSSP14の上側デッキ56上に設けられた対応する円形凹部90とを備える回転台機構によって、DWT12がSPP14に取り付けられる。たとえば上述のころ軸受アセンブリ42、46に類似した車輪軌道機構または玉軸受機構等の摩擦低減手段により、卓越風方向の変化に応じて、矢印Wで示されるようにDWT12はSSP14上で風見をすることができるようになる。
【0075】
既述の実施形態において、DWTとSSPの複合構造全体の高さが約200~800メートルであり得るとともに、先端から先端までの翼幅も約200~800であり得るが、必要に応じて、予測される力、発電要求仕様、配置場所等に合わせてこれらの寸法を大幅に変更してもよいと解される。
【0076】
また、洋上風力発電モジュール10には、(
図3の75によって図示された)垂直「差渡し」軸タービン、水平「差渡し」軸タービンまたは(
図12、12A、12Bの90によって図示された)軸流タービン等の潮流力タービン機構を設けてもよい。
【0077】
図12Aおよび12Bを参照すると、複合タービンはメインタービンシャフト92がSSP14から水中に傾いており、下端にタービン機構94が設けられる。メインシャフト92および/またはタービン94は浮揚性であるので、引上げ荷重が極力抑えられ、ハブ/旋回位置においてラジアル軸受荷重が減少する。この浮力がまた、シャフト回転から生じる疲労荷重を減少させるために、タービン質量を支えメインシャフトにかかる曲げモーメントを減少させる。タービン内への流れは、整形板96によってタービン内に向かって増強される。
【0078】
使用中、洋上風力発電モジュール10はまず、好適な船または自航モータ等によって所望の水上の稼働地点にけん引される。この地点は、浅いまたは深い海、河川、河口、または湖や入り江等の内水地物にあってもよい。
【0079】
好適な地点に来ると、モジュール10は
図1Aに矢印60で図示されるように好適な固定機構によってそこでつながれる。そのような状態で、SSP14が受ける卓越流によってSSP14はおのずとテザーを中心にして風見をするようになり、おのずと卓越流と一直線になる。
【0080】
DWT14が卓越風(卓越流の向きとは異なる向きの場合がある)を受けると、この風の力が中間尾翼部18および垂直安定板20と干渉することによって、
図1Aに矢印Wで表される風の方向にタービンモジュールを中心にしてその軸受台86上で、DWT14の前面であるカウル16がおのずと風見をする。
【0081】
このようにして、SSP14は常におのずと卓越流と一直線になり、DWT12は常におのずと卓越風方向と一直線になる。
【0082】
これに替えて、またはこれに加えて、前向きの検出システムを用いて卓越風方向に対するDWT12のカウル16の向きを能動的に制御してもよい。そのようなシステムの一例がLIDARであり、LIDARセンサがカウル16の上または周辺に設けられる。そのような機構において、検出データは機上または遠隔のコンピュータ制御システムによって処理され、電気機械、空気圧、磁気および/または水圧アクチュエータに対して制御応答を送信することにより、風力タービンカウル16を直接動かして風の方向に向けるか、テール20の構成部品を偏向させてカウル16を風の向きに回転させる。
【0083】
そのような制御システムによれば、受動的風見制御のみの場合と比べて、カウル16がより素早く風向の変化に応答できるようになる場合がある。上記制御システムは、当該システム内のあらゆる空力システムまたは他のシステムを制御または調整するために付加的または別々に用いてもよい。
【0084】
そのような制御システムと一緒にLIDARセンサを設けることにより、対向する波やうねりの状態および発電モジュール10と干渉し得るプロファイルを検知することも可能になる。そのような予期された状態が検知されると、この情報が当該システムに入力され、あらゆる構成部品の応答を全て最適化して、システムの様々な構成部品によって周囲からエネルギーを取り入れる効率を確実に最大化することができるようになる。例えば、高波が予想されるときは、波動エネルギー吸収体の動きに対する抵抗を高めることができる。これは、プラットフォームの安定性を高め、全体としてシステム中の機械的および電気的ストレスを減らすことにもなり、ひいてはシステムの寿命を延ばし、保守整備の必要を減らすのに役立つ。
【0085】
そのような制御システムおよびソフトウェアは、前もってプログラミングされていても、学習アルゴリズムを内蔵してもよい。制御入力要求は、発電モジュール10上で生成しても、操作員制御センターにおいて生成しても、(例えば電力網またはエネルギー供給会社等の)デマンドサイド入力から生成してもよい。
【0086】
図4Aを参照すると、DWT12のダクト吸気口22が卓越風の真向かいにある状態で、到来する気流Aは吸気口22を通ってDWTの主空気ダクト25に入り、案内羽根26に導かれて内部主空気ダクト25に沿って上へ進み、タービン機構30に向かって上方へ誘導される。
【0087】
図5を参照すると、そのようなダクトを伝わる気流Aが一次組のタービン羽根32にあたると、そこに(上から見て)時計回りの回転力を及ぼす。車輪軸受42に取り付けられた一次タワー36上に一次羽根32が取り付けられているため、一次タワー36はその回転力の作用で回転する。これが生じると、一次発電機44で発電が行われる。
【0088】
同様にして、空気の流れが一次組の羽根32を通りすぎると、これを二次組のタービン羽根34が受けて、そこに回転力が及ぼされる。しかし、二次羽根34は一次羽根32とは反対を向いているため、これは(上から見て)反時計回りの回転力となる。車輪軸受46に取り付けられた二次タワー38上に二次羽根34が取り付けられているため、二次タワー38はその反時計回りの回転力の作用で回転する。これが生じると、二次発電機48でも発電が行われる。
【0089】
上述のような動作により、タービンロータアセンブリを全体として回転させる必要なく、タービン機構を中心にしてダクトまたはカウルアセンブリ16が自由に風見をするものと解される。これにより、ダクトまたはカウルアセンブリ16の角度方向と発電モジュール10のその他の構成部品の角度方向との間に機械的な分離が生じる。
【0090】
上述のように二次羽根34に対して一次羽根32が反対に回転するということは、一方の組の羽根によって生じたトルクの大部分が他方の組の羽根によって生じたトルクで相殺されることになる。その結果、DWT12が搭載されているSSP14には最小限の残余トルクがかかることになる。
【0091】
次に、SSP14配置下の水からエネルギーを取り込むプロセスを説明する。分かりやすくするために例示の通過波と例示の卓越流とを別々に扱いながらこれを説明するが、当該モジュールは、風、波および海流から同時にエネルギーを取り出すことが可能であると解される。
【0092】
例示の波がモジュール10に近づくにつれ、その最初の有益干渉は、先頭の2つの波動エネルギー吸収体(例えば、SSP14の中心線に最も近い2つの波動エネルギー吸収体)の半球状浮動機構74に対するものとなる。
図9を参照すると、方向Aに進む波面Wが浮体74と干渉するとき、浮体自体が持つ浮力により浮体74および付属のアーム70が回転して(前後軸が位置P1にある)中正点から離れて(前後軸が位置P2にある)負荷時の位置に上がる。中立位置P1から離れるこのような回転の最中、浮体74の浮力が作用してねじれ軸受80にねじり荷重をかけ、動力取出接合部78に取り付けられた動力取出機構を有効に動かして発電する。このようにねじれ軸受80に荷重をかけることで、波動エネルギー吸収体68が上向く動きから取り出された運動エネルギーの一部をねじれ軸受80内の位置エネルギーとして実質的に蓄積する。また、水柱内の垂直方向の動きにSSPヒーブプレート66が抵抗することにより反力が生じ、この上昇行程負荷段階において浮体74がこれに逆らう。
【0093】
浮体74が波面Wの頂に到達すると、アーム70が位置P2につき、ねじれ軸受80にはその波面Wについて十分に荷重がかかっているとみなすことができる。この時点で、波面Wが崩れ落ち始め、波動エネルギー吸収体68の重量を十分に支えられないため、波動エネルギー吸収体68は通過する波面Wの頂に乗ってこれをつぶし始める。そうしているあいだ、ねじれ軸受80内に蓄積された位置エネルギーが放出されて、波動エネルギー吸収体68の当該下降行程が容易になる。
【0094】
上述のように上昇行程の波動エネルギー吸収体68からの運動エネルギーを、ねじれ軸受80に一時的に蓄積される位置エネルギーに変え、その後、下降行程の波動エネルギー吸収体68の運動エネルギーに戻すことは、(エネルギー取り出しによって有益に取り出される力を除いて)実質上エネルギー中立的であるが、これによって、最小限の摩擦損失で所望の旋回能力を有する、強度の高い支持軸受が得られる。
【0095】
波形は数学の正弦波におおむね近似することができるため、波動エネルギー吸収体68それぞれの運動プロファイル、ひいては発電プロファイルも数学の正弦波におおむね近似することができる。所定の波が波動エネルギー吸収体68のそれぞれを通過すると、さらなる正弦波エネルギープロファイルがつくられる。これにより、システムによって取り込まれる合成エネルギーのプロファイルを平滑化するのに役立つ1組の位相偏移エネルギーパルスが生じる。三角翼機構に配置された複数の波動エネルギー吸収体68によってさらにこの効果が高まるが、これは、古い通過波面が後方の波動エネルギー吸収体68とまだ干渉しているあいだに、新たな波面が前方の波動エネルギー吸収体68において正弦波エネルギープロファイルを生むためである。
【0096】
波およびうねりが形成されて発電モジュール10のそばを通りすぎるのに応じて個々の吸収体機構が上下に動かされるとき、その浮力剛性を調整すべく、波動エネルギー吸収体68を能動的に制御してもよい。
【0097】
SSP14は、常に卓越流としっかり一直線になっており、重心が低く中心に集まっており、それ自体に形状安定性という強みがあり、水線面積の小さい支柱/浮体およびヒーブプレートを活用していることから、SSP14自体が既述の様々な構成部品にとって非常に安定した構造となっている。
【0098】
調整または平滑化されたエネルギーパルスが電力網に適宜供給されるように、複数の前述の機構によって同時に取り出されるエネルギーを機械的または電気的手段によって蓄積することができる。機械式アキュムレータの例として、空気圧または水圧アキュムレータ、ばね、弾み車等が挙げられる。電気式アキュムレータの例として、コンデンサや蓄電器等が挙げられる。これに替えて、またはこれに加えて、取り出されたエネルギーを、モジュール10上でガス(水素、酸素等)の生成または脱塩/電解作業等に有効に利用することもできる。
【0099】
前述の事項に加え、本発明には、水面よりも相当上にある、飛沫帯から離れた場所に、多くの可動の複雑な機械部品が留まることができるというメリットがある。その結果、衰耗が少なくなるため、予想寿命が伸びる。
【0100】
さらに、既述の発明は実際にどんな規模でも構成できるというメリットがあるとともに、単一ユニットとしてまたはいくつかのユニットからなる場に設けるのにも好適であると解される。
【0101】
本発明の特定の実施形態が本明細書で詳細に開示されているが、これは例示により、説明のみを目的としてなされたものである。前述の実施形態は添付の特許請求の範囲について制限を加えるものではない。
【0102】
発明者は、特許請求の範囲で規定する本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく、本発明に様々な置換、変更および修正が行われることを想定している。以下にその例を述べる。
【0103】
本願において既述の実施形態では水体上に設けられる浮動機構について主に言及してきたが、本発明は浮動プラットフォーム上に設けられるものに限られず、陸地または氷など考えられる様々な地盤上に設けられてもよく、本発明がそのような地盤に直接取り付けられている(タービンが陸地の一片に直接載っている場合等)か、または本発明が車両または建物上に設置されている(例えばタービンが建物の上に設置されている場合)かどうかは問わない。
【0104】
タービンの稼働効率と出力とが最大化されるように、浮動プラットフォームで正しいレベルの浮力を維持するためおよび/または環境およびデマンドサイドデータ信号を取り込むための制御システムを本発明に設けてもよい。これは、必要に応じて、前もってプログラミングされた制御、学習アルゴリズムまたはその他の適切な制御方法によって実現されてもよい。
【0105】
図1Cで図解される別の実施形態において、前述のLIDAR性能を得るために、発電モジュール210にLIDARセンサ212を設けてもよい。さらに、垂直安定板220に、対応する方向舵制御面221、水平安定板223および対応する昇降舵制御面230が設けられる。航空機の尾翼が偏揺れ角と対向気流に対する迎え角を制御できるのと同じように、これらの面によってダクトまたはカウル216の向きを制御することができる。卓越風方向に対してカウル216を最適な向きに維持するのに必要な力を削るためにトリムタブをさらに設けてもよい。
【0106】
図1Cに図示した実施形態には、カウル216の上部および周囲で空気を空力的に効率よくいっそう流れやすくする外部空力羽根225を設けてもよい。前縁空力下げ翼227が吸気ダクト222に隣接して設けられ、対応する後縁空力下げ翼229が排気ダクト224に隣接して設けられる。下げ翼227、229は、前向きの風況または海況センサの情報(LIDARシステムから得られる上述の情報等)に応じて、機上または遠隔の制御システムによって制御または展開されてもよい。