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特許7462924サイドステイ、ヘルドフレーム、及び、織機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】サイドステイ、ヘルドフレーム、及び、織機
(51)【国際特許分類】
   D03C 9/06 20060101AFI20240401BHJP
【FI】
D03C9/06 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020032204
(22)【出願日】2020-02-27
(65)【公開番号】P2021134453
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000110664
【氏名又は名称】ナンカイ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100157428
【弁理士】
【氏名又は名称】大池 聞平
(72)【発明者】
【氏名】野上 佳重
(72)【発明者】
【氏名】修行 淳
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】特公昭55-014185(JP,B2)
【文献】特開平02-104738(JP,A)
【文献】米国特許第06131619(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03C 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘルドフレームの一部を構成するサイドステイであって、
前記ヘルドフレームでは、正面視において枠形状の開口側を内側とした場合に、フレームスティーブの内端部に、ヘルドの一端側が取り付けられるヘルドロッドが固定されており、
当該サイドステイの前記開口側の側面では、前記ヘルドロッドの前記サイドステイ側の端から前記ヘルドが抜けることを防止するステイ側突起が設けられ、
前記サイドステイを前記フレームスティーブに連結した連結状態では、前記開口側の側面における前記ステイ側突起の設置位置が、上下方向において前記フレームスティーブの内端より内側であり、
前記ヘルドでは、前記ヘルドロッドの挿通部が形成された両端部の方が前記両端部間の線状部に比べて、当該ヘルドフレームの前後方向の寸法が大きく、
前記連結状態では、前記ステイ側突起の先端が、前記ヘルドのうち前記端部の高さ範囲に位置している、サイドステイ。
【請求項2】
前記連結状態では、前記開口側の側面における前記ステイ側突起の設置位置が、上下方向において前記フレームスティーブの内端より内側の範囲で前記内端の近傍である、請求項1に記載のサイドステイ。
【請求項3】
ヘルドフレームの一部を構成するサイドステイであって、
前記ヘルドフレームでは、正面視において枠形状の開口側を内側とした場合に、フレームスティーブの内端部に、ヘルドの一端側が取り付けられるヘルドロッドが固定されており、
当該サイドステイの前記開口側の側面では、前記ヘルドロッドの前記サイドステイ側の端から前記ヘルドが抜けることを防止するステイ側突起が設けられ、
前記サイドステイを前記フレームスティーブに連結した連結状態では、前記開口側の側面における前記ステイ側突起の設置位置が、上下方向において前記フレームスティーブの内端より内側であり、
前記ステイ側突起では、先端の方が付け根に比べて、前記ヘルドフレームの前後方向の寸法が大きい、サイドステイ。
【請求項4】
前記サイドステイにおける前記開口側の側面は、前記開口側とは反対側に凸なアーチ状に形成されている、請求項1乃至の何れか1つに記載のサイドステイ。
【請求項5】
請求項1乃至の何れか1つに記載のサイドステイを備えている、ヘルドフレーム。
【請求項6】
サイドステイと、
フレームスティーブと、
前記サイドステイと前記フレームスティーブにより挟まれたパッキンを備えたヘルドフレームであって、
当該ヘルドフレームでは、正面視において枠形状の開口側を内側とした場合に、前記フレームスティーブの内端部に、ヘルドの一端側が取り付けられるヘルドロッドが固定されており、
前記サイドステイの前記開口側の側面では、前記ヘルドロッドの前記サイドステイ側の端から前記ヘルドが抜けることを防止するステイ側突起が設けられ、
前記サイドステイを前記フレームスティーブに連結した連結状態では、前記開口側の側面における前記ステイ側突起の設置位置が、上下方向において前記フレームスティーブの内端より内側であり、
前記パッキンは、前記サイドステイと前記フレームスティーブとの間の領域から、前記ステイ側突起側に延びて、該ステイ側突起に保持されている、ヘルドフレーム。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のヘルドフレームを備えている、織機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘルドフレームの一部を構成するサイドステイ等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、織機において、これまで以上にヘルドフレームの往復動の高速化が求められており、その高速化に対応できるようにヘルドフレームの開発がなされている。
【0003】
特許文献1には、軽量化と高剛性により、高速化を達成できるヘルドフレームが記載されている。このヘルドフレームでは、炭素繊維強化複合材製ヘルドフレームスティーブが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-83727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ヘルドフレームの往復動の高速化への対応として、サイドステイにおける負荷低減を目的として、サイドステイの開口側の側面を、開口側とは反対側に凸なアーチ状にしているヘルドフレームがある。しかし、この場合、サイドステイの開口側の側面がヘルドロッドの端から離れ、ヘルドロッドの端からヘルドが抜けやすくなる。そのため、ヘルド抜けの対策として、サイドステイの開口側の側面に突起を設けることが考えられる。また、サイドステイの開口側の側面をアーチ状にしない場合であっても、サイドステイの開口側の側面に、ヘルド抜け防止用の突起を設けることはあり得る。しかし、従来は、開口側の側面において突起の適切な位置について、特に考えられていない。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、側面にヘルド抜け防止用の突起を設けるサイドステイにおいて、高速運転に使用されるヘルドフレームに有用なサイドステイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するべく、第1の発明は、ヘルドフレームの一部を構成するサイドステイであって、ヘルドフレームでは、正面視において枠形状の開口側を内側とした場合に、フレームスティーブの内端部に、ヘルドの一端側が取り付けられるヘルドロッドが固定されており、サイドステイの開口側の側面では、ヘルドロッドのサイドステイ側の端からヘルドが抜けることを防止するステイ側突起が設けられ、サイドステイをフレームスティーブに連結した連結状態では、開口側の側面におけるステイ側突起の設置位置が、上下方向においてフレームスティーブの内端より内側である。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、連結状態では、開口側の側面におけるステイ側突起の設置位置が、上下方向においてフレームスティーブの内端より内側の範囲で内端の近傍である。
【0009】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、ヘルドでは、ヘルドロッドの挿通部が形成された両端部の方が両端部間の線状部に比べて、当該ヘルドフレームの前後方向の寸法が大きく、連結状態では、ステイ側突起の先端が、ヘルドのうち端部の高さ範囲に位置している。
【0010】
第4の発明は、第1乃至3の何れか1つの発明において、ステイ側突起では、先端の方が付け根に比べて、ヘルドフレームの前後方向の寸法が大きい。
【0011】
第5の発明は、第1乃至4の何れか1つの発明において、サイドステイにおける開口側の側面は、開口側とは反対側に凸なアーチ状に形成されている。
【0012】
第6の発明は、第1乃至第5の何れか1つの発明のサイドステイを備えている、ヘルドフレームである。
【0013】
第7の発明は、第6の発明において、サイドステイとフレームスティーブにより挟まれたパッキンを備え、パッキンは、サイドステイとフレームスティーブとの間の領域から、ステイ側突起側に延びて、そのステイ側突起に保持されている。
【0014】
第8の発明は、第6又は第7の発明のヘルドフレームを備えている、織機である。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、サイドステイの開口側の側面におけるステイ側突起の設置位置が、上下方向においてフレームスティーブの内端より内側になるようにしている。ここで、ヘルドロッドの端からヘルドの抜けを防止するためには、ヘルドのうち前後方向の寸法が大きい端部(ヘルドロッドの挿通部が設けられた部分)に対し、ステイ側突起の先端を対向させることが有効である。このようにするために、サイドステイの開口側の側面におけるステイ側突起の設置位置を、上下方向において、フレームスティーブとの連結構造寄りの位置にすることが考えられる。しかし、本願の発明者は、構造解析により、サイドステイの開口側の側面にステイ側突起を設ける場合、サイドステイでは、フレームスティーブとの連結構造の近傍だけでなく、ステイ側突起の近傍にも応力が集中し、その結果、連結構造の近傍の応力増大を招くことに気が付いた。そのため、本発明では、ステイ側突起の設置位置を、連結構造から離して、フレームスティーブの内端よりも内側にしている。従って、サイドステイにおける応力集中を抑制することができ、高速運転に使用されるヘルドフレームに有用なサイドステイを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施形態に係るヘルドフレームの後ろ側を正面から見た図である。
図2図2(a)は、図1のA-A切断位置におけるフレームスティーブの断面図であり、図2(b)は、ダンパーを取り外した状態における、フレームスティーブのヘルドロッド側の拡大断面図である。
図3図3は、ヘルドがダンパーに接触する様子を説明するための説明図であり、図3(a)は、ヘルドがダンパーから離れた状態を表し、図3(b)は、ヘルドがダンパーに接触した状態を表す。
図4図4(a)は、サイドステイの要部の拡大正面図であり、図4(b)は、サイドステイの一部を開口側から見た図である。
図5図5(a)は、その他の実施形態に係るサードステイの要部の拡大正面図であり、図5(b)は、サイドステイ及びステイ側突起を上方から見た図である。
図6図6は、その他の実施形態に係るサードステイの要部について、図5とは別の形態の拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の一例のサイドステイ及びヘルドフレーム等であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0018】
[ヘルドフレームの概略構成]
ヘルドフレーム10は、織機に用いられる枠状の部品である。織機では、開口装置を用いて複数のヘルドフレーム10を上下動させることで、織物が製造される。ヘルドフレーム10は、図1に示すように、枠の横部材(横桁)を構成する一対のフレームスティーブ12と、枠の縦部材を構成する一対のサイドステイ14とを備えている。一対のフレームスティーブ12は、上下方向(縦方向)において互いに間隔を隔てて配置されている。一対のサイドステイ14は、左右方向(横方向)において互いに間隔を隔てて配置されている。各サイドステイ14は、上部で上側のフレームスティーブ12に連結され、下部で下側のフレームスティーブ12に連結されている。
【0019】
なお、本実施形態では、一対のフレームスティーブ12は互いに同じ構成である。また、一対のサイドステイ14も互いに同じ構成である。但し、一対のフレームスティーブ12で構成が互いに異なっていてもよいし、一対のサイドステイ14で構成が互いに異なっていてもよい。また、上述したように、本明細書では、ヘルドフレーム10の正面視において枠形状の開口11側を内側として、「内」と「外」の語を用いている。上側のフレームスティーブ12における内側は「下側」を意味し、下側のフレームスティーブ12における内側は「上側」を意味する。
【0020】
[フレームスティーブの構成]
次に、フレームスティーブ12について説明を行う。
【0021】
フレームスティーブ12は、アルミ合金、ステンレスなどの金属を材料として用いて、押出成形により形成されている。断面視において、フレームスティーブ12は、図2(a)に示すように、中空構造のスティーブ本体21と、スティーブ本体21の内端部から内側に延びる壁面部22と、壁面部22の後ろ面側(片面側)に設けられて複数のヘルド25(図1参照)の一端側が取り付けられるヘルドロッド23とを備えている。各ヘルド25は、図1に示すように、上側のフレームスティーブ12のヘルドロッド23と、下側のフレームスティーブ12のヘルドロッド23との間に掛け渡されている。なお、図1では、一部のヘルド25だけを記載している。
【0022】
断面視において、スティーブ本体21は、前壁部16と、前壁部16に略平行な後壁部17と、前壁部16と後壁部17を互いに連結する複数の横梁18a~18c(本実施形態では、3つの横梁18a~18c)とを備えている。スティーブ本体21は、前壁部16と後壁部17が互いに間隔を隔て設けられ、複数の横梁18a~18cが互いに間隔を隔てて設けられていることで中空構造になっている。以下では、最も外側(図2(a)では上側)の横梁18aを「第1横梁」、真ん中の横梁18bを「第2横梁」、最も内側の横梁18cを「第3横梁」と言う。
【0023】
スティーブ本体21では、左右の各端部において、連結構造によりサイドステイ14が連結されている。連結構造は、サイドステイ14における開口11側の側面14aから突出する板状凸部14b(図4(a)参照)と、スティーブ本体21の端部の内部空間において板状凸部14bを保持するステイ保持部(図示省略)とを有する。ステイ保持部は、スティーブ本体21の内部空間のうち第2横梁18bと第3横梁18cの間に固定されている。
【0024】
壁面部22は、スティーブ本体21の内端面における前側の位置から、ヘルドフレーム10の内側に真っすぐ延びる、平板状の部分である。壁面部22には、左右方向に沿って複数の検査窓22aが等間隔に形成されている。壁面部22の後ろ面には、図2(b)に示すように、内側から順番に、ロッド支持部31と、ダンパー取付部32と、ダンパー当接板33とが設けられている。ロッド支持部31とダンパー取付部32とダンパー当接板33の各々は、フレームスティーブ12の左右方向の全長に亘って設けられている。なお、図2(a)は、後述するダンパー30を取り付けた状態を表し、図2(b)は、ダンパー30を取り外した状態を表す。
【0025】
ロッド支持部31は、壁面部22の後ろ面における下部から後方に少し突出した部分である。ロッド支持部31の後ろ面には、リベット等の固定具により、ヘルドロッド23が固定されている。
【0026】
ヘルドロッド23は、長板状に形成され、その幅方向が上下を向くように立てた状態でロッド支持部31の後ろ面に固定されている。ヘルドロッド23は、フレームスティーブ12の左右方向の全長に亘って延びている。
【0027】
ここで、ヘルド25は、図1に示すように、経糸を通すメール(穴)が中央部に設けられた、棒状の部品である。ヘルド25の各端部25aには、ヘルドロッド23を挿通させる挿通部25bが形成されている。図3に示すように、挿通部25bは、ヘルド25の長さ方向に延びる長穴であり、側面が開口している。挿通部25bの高さは、ヘルドロッド23の高さより少し大きい。そのため、ヘルド25は、ヘルドロッド23に対し、少しの遊びがある状態で取り付けられる。
【0028】
ダンパー取付部32は、ヘルド25用のダンパー30が取り付けられる突起である。ダンパー取付部32は、壁面部22の後ろ面において、高さ方向の真ん中よりもスティーブ本体21寄りの位置から後方に突出している。断面視において、ダンパー取付部32は、壁面部22に対し略垂直に設けられている。但し、ダンパー取付部32は、壁面部22に対し斜めに設けてもよい。ダンパー取付部32の先端部では、ダンパー当接板33側の面に凸部32aが形成されている。なお、凸部32aは、ダンパー取付部32の先端部ではなく、付け根側に形成してもよいし、複数個形成してもよい。
【0029】
ここで、ダンパー30は、弾性変形可能でクッション性を有する材料(例えば、ウレタン、エラストマーなどの樹脂材料)が用いられた棒状の部品である。ダンパー30は、ダンパー取付部32に取り付けられた取付状態において、図1に示すように、フレームスティーブ12の左右方向に延びている。また、ダンパー30の断面形状(横断面の形状)は、長さ方向に亘って同じである。ダンパー30の断面形状は、図2(b)に示すように、やや縦長で、1つの角部が切り欠かれた略長方形状を呈する。取付状態において、切欠き部30bは、前後方向では壁面部22とは反対側で、上下方向ではダンパー当接板33側に位置する。なお、図1では、ダンパー30部分にハッチングを付している。
【0030】
ダンパー30には、ダンパー取付部32が嵌め込まれる突起受入れ部36が形成されている。突起受入れ部36は、ダンパー30の片方の側面(図2(b)では右側の側面)から、ダンパー30の幅方向に延びる横穴である。突起受入れ部36は、上下方向の中心より一端寄り(図2(b)では上寄り)の位置に形成されている。突起受入れ部36は、ダンパー取付部32の断面形状に対応した形状に形成されている。具体的に、突起受入れ部36の奥側における一端側には、凸部32aに対応した形状の窪み36aが形成されている。突起受入れ部36は、ダンパー30の長さ方向の全長に亘って形成されている。なお、ダンパー30は、ヘルドフレーム10の製造工場でダンパー取付部32に取り付けた状態にしてもよいし、織機が設置された工場で、織機の使用者がダンパー取付部32に取り付けてもよい。
【0031】
ここで、図3(a)は、下側のフレームスティーブ12に取り付けられたダンパー30に対しヘルド25の下端が衝突した後に、ヘルド25がフレームスティーブ12に対し相対的に少し上側(太線の矢印の方向)に移動したタイミングの図である。このタイミングでは、上側のフレームスティーブ12に取り付けられたダンパー30に対してヘルド25の上端Pは離間している。
【0032】
そして、図3(a)に示す状態から、ヘルド25がさらに上側に移動すると、図3(b)に示すように、下側のフレームスティーブ12のヘルドロッド23の外端Qに対しヘルド25の下側の挿通部25b(長穴)の外端Rが接触する手前で、上側のフレームスティーブ12のダンパー30に対してヘルド25の上端Pが衝突する。また、この状態から、ヘルド25が下側に移動する時も、上側のフレームスティーブ12のヘルドロッド23の外端Qに対しヘルド25の上側の挿通部25bの外端Rが接触する手前で、下側のフレームスティーブ12のダンパー30に対してヘルド25の下端が衝突する。そのため、ヘルド25における挿通部25bの摩耗を抑制することができ、ヘルド25の破損を抑制することができる。また、ヘルドロッド23の摩耗や衝突による騒音も抑制することができる。
【0033】
ダンパー30のうち、ダンパー当接板33側の端面30cの幅X(図2(b)参照)は、ダンパー当接板33の幅(突出長)以下である。本実施形態では、図3(a)に示すように、端面30cの幅Xが、ダンパー当接板33の幅よりも短い。ダンパー30が取り付けられた状態のダンパー当接板33のうちダンパー30側の面は、少なくとも先端側が露出している。そのため、ダンパー30の取り付け時に、突起受入れ部36にダンパー取付部32を嵌め込むと、ダンパー当接板33がダンパー30よりも後方に突出した状態となる。そのため、この状態から、ローラを用いてダンパー30を壁面部22側に押し込む際に、ダンパー当接板33の先端側の下面にローラを沿わせて動かし、ダンパー30を押し込むことができるため、この押し込み作業の作業性が良好である。
【0034】
ダンパー当接板33は、平板状に形成され、壁面部22の後ろ面において、スティーブ本体21の内端面とダンパー取付部32との間の位置から後方に突出している。本実施形態では、スティーブ本体21の内端面の近傍から、ダンパー当接板33が突出している。ダンパー当接板33は、ダンパー取付部32に取り付けられたダンパー30に当接するように、ダンパー取付部32の外側近傍に配置されている。ダンパー当接板33は、例えばヘルドロット23の真上(前後方向の中心位置の真上)まで少なくとも突出している。断面視において、ダンパー当接板33は、壁面部22に対し略垂直に設けられている。
【0035】
本実施形態では、ダンパー当接板33を設けることで、ダンパー30に対し多数のヘルド25が同時に衝突しても、ダンパー30が外側に動くことが阻止され、ダンパー30がダンパー取付部32から外れることを防止することができる。また、ダンパー取付部32の凸部32aがダンパー当接板33側に設けられているため、ダンパー取付部32及びダンパー当接板33により、ダンパー30がより拘束されてダンパー取付部32から外れにくくもなっている。
【0036】
[サイドステイの構成]
次に、サイドステイ14について説明を行う。
【0037】
サイドステイ14は、図1に示すように、縦方向に延びる棒状の部品である。断面視において、サイドステイ14の外周形状は略矩形である。サイドステイ14の太さは、上側のフレームスティーブ12への連結箇所の下端と、下側のフレームスティーブ12への連結箇所の上端との間の径間区間で、変化している。径間区間では、サイドステイ14の太さが、上下方向の真ん中に近づく従って細くなっている。径間区間では、サイドステイ14の開口11側の側面14aが、開口11とは反対方向(外方向)に凸なアーチ状の曲面に形成されている。サイドステイ14の開口11側の側面14aのうちアーチ状側面14aは、ヘルドロッド23の端(図4(a)において左端)から少し離れている。なお、サイドステイ14は、長さ方向において太さが一定であってもよい。
【0038】
アーチ状側面14aには、図4(a)に示すように、ヘルド25がヘルドロッド23の端から抜けることを防止するための抜け防止構造として、ステイ側突起24が設けられている。ステイ側突起24は、例えば平板状の突起である。ステイ側突起24は、アーチ状側面14aから横方向に突出し、ヘルドフレーム10の正面視においてヘルドロッド23の端より少しだけ中央側まで延びている。また、ステイ側突起24の前後方向の位置は、付け根においては、図4(b)に示すように、アーチ状側面14aの略真ん中であり、先端においてはヘルド25に対向する位置となっている。
【0039】
ここで、ヘルドフレーム10を往復動させた場合、サイドステイ14では、上述の板状凸部14bの開口11側(図4(a)の太矢印の箇所)に応力が集中する。また、構造解析によれば、アーチ状側面14aにステイ側突起24を設けた場合、サイドステイ14では、ステイ側突起24の近傍にも応力が集中することが分かった。従って、板状凸部14bの近傍にステイ側突起24を設置すると、板状凸部14bの開口11側の応力増大を招く。そこで、本実施形態では、図4(a)に示すように、アーチ状側面14aにおけるステイ側突起24の設置位置を、板状凸部14bから離して、上下方向においてフレームスティーブ12の内端12aよりも内側にしている。これにより、板状凸部14bの開口11側の応力増大を抑制することができる。
【0040】
また、より具体的に、アーチ状側面14aにおけるステイ側突起24の設置位置は、上下方向において、フレームスティーブ12の内端12aより内側の範囲で、その内端12aの近傍である。ステイ側突起24の先端は、ヘルド25の端部25aの高さ範囲(ヘルドロッド23が挿通部25bの高さ方向の真ん中にある状態で、端部25aの外端から内端の範囲)に位置している。なお、ヘルド25の端部25aは、太さが一定の線状部25cの端Zよりも外側の部分を言い、ヘルド25がテーパー状に太くなっている部分を含む。ヘルド25では、端部25aの太さ(前後方向の寸法)が線状部25cに比べて大きいため、ステイ側突起24によりヘルド25の脱落を確実に防止することができる。
【0041】
また、ステイ側突起24は、フレームスティーブ12とサイドステイ14の間に設けられるパッキン26を保持する役割も担う。具体的に、パッキン26は、図4に示すように、長板状の部材である。パッキン26には、上述の板状凸部14bが挿通される主挿通穴27が形成され、その主挿通穴27の周囲が、フレームスティーブ12とサイドステイ14とに挟まれる。また、パッキン26は、フレームスティーブ12とサイドステイ14との間の領域から、ステイ側突起24側に延びている。パッキン26には、主挿通穴27以外に、保持用の副挿通穴28が、一端側と他端側とにそれぞれ形成されている。パッキン26の一端側の副挿通穴28には、ステイ側突起24が嵌め込まれる。また、サイドステイ14の側面のうち、フレームスティーブ12の端面と対向する領域の外側端部には、保持用突起29が形成され、パッキン26の他端側の副挿通穴28には保持用突起29が嵌め込まれる。これにより、パッキン26は上下のそれぞれで保持されるため、ヘルドフレーム10の往復動の際に上下のガタつきがなく、安定して保持される。なお、図4(b)ではパッキン26にハッチングを付けている。
【0042】
[実施形態の効果等]
本実施形態では、サイドステイ14のアーチ状側面14aにおけるステイ側突起24の設置位置が、上下方向においてフレームスティーブ12の内端12aより内側であり、板状凸部14bの開口11側から離れているため、サイドステイ14における応力集中を抑制することができる。本実施形態によれば、高速運転に使用されるヘルドフレーム10に有用なサイドステイ14を提供することができる。
【0043】
[その他の実施形態]
上述の実施形態について、サイドステイ14のアーチ状側面14aにおいて、上下方向におけるステイ側突起24の設置位置を、図5(a)に示すように、フレームスティーブ12の内端12aから離れた位置としてもよい。図5(a)では、上下方向におけるステイ側突起24の設置位置は、ヘルド25における線状部25c(両端部25aの間の部分)の高さ範囲にある。この場合に、ステイ側突起24において、図5(b)に示すように、先端24aの方が付け根24bに比べて、ヘルドフレーム10の前後方向の寸法を大きくしてもよい。
【0044】
上述の実施形態について、図5と同様に、上下方向におけるステイ側突起24の設置位置を、フレームスティーブ12の内端12aから離れた位置とする場合において、図6に示すように、ステイ側突起24をフレームスティーブ12側に曲げてもよい。図6では、ステイ側突起24を2回屈曲させることで、ステイ側突起24の先端が、ヘルド25の端部25aの高さ範囲に位置するようにしている。また、ステイ側突起24の先端側ほどヘルドロッド23に近づくようにステイ側突起24の延伸方向を斜めにしてもよい。
【0045】
上述の実施形態では、ステイ側突起24は水平方向に突出しているが、アーチ状側面14aに対し略垂直に突出させてもよい。
【0046】
上述の実施形態では、ステイ側突起24によりパッキン26が保持されているが、ステイ側突起24によりパッキン26を保持しなくてもよい。例えば、パッキン26は、フレームスティーブ12とサイドステイ14との間にだけ設けるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、ヘルドロッドの端からヘルドが抜けることを防止するための抜け防止構造が設けられたサイドステイ等に適用可能である。
【符号の説明】
【0048】
10 ヘルドフレーム
11 開口
12 フレームスティーブ
14 サイドステイ
21 スティーブ本体
22 壁面部
23 ヘルドロッド
24 ステイ側突起
25 ヘルド
図1
図2
図3
図4
図5
図6