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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】流量制御装置及び方法、並びにチラー
(51)【国際特許分類】
   G05D 7/06 20060101AFI20240401BHJP
   F04B 49/06 20060101ALI20240401BHJP
   H02P 6/08 20160101ALI20240401BHJP
【FI】
G05D7/06 Z
F04B49/06 311
H02P6/08
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020103920
(22)【出願日】2020-06-16
(65)【公開番号】P2021196966
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】594185097
【氏名又は名称】伸和コントロールズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100164688
【弁理士】
【氏名又は名称】金川 良樹
(72)【発明者】
【氏名】池上 徹
【審査官】影山 直洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-142216(JP,A)
【文献】特開平04-284191(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 7/06
F04B 49/06
H02P 6/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラシレスモータ又は交流モータの駆動によりポンプから吐出される体の流量を検出する流量計と、
前記流量計が検出した前記体の流量と目標流量との差分に応じて、前記ブラシレスモータ又は交流モータを駆動させるための駆動入力電圧の周波数を変更するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記体の流量と前記目標流量との差分の絶対値が属する範囲を、それぞれが有する下限値及び上限値によって定める複数の差分範囲と、前記複数の差分範囲それぞれに対応して定められる複数の調整周波数との関係を記録する調整周波数テーブルを保持しており、
前記コントローラは、前記体の流量と前記目標流量との差分と、前記調整周波数テーブルとに基づいて、前記複数の調整周波数の中から前記体の流量と前記目標流量との差分に対応する前記調整周波数を特定し、当該特定した前記調整周波数を、当該調整周波数を特定した際の前記駆動入力電圧の周波数に対し加算又は減算すことで、前記駆動入力電圧の周波数を変更する、流量制御装置。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記調整周波数(Δf)が1回加算又は減算された後、前記体の流量と前記目標流量との差分が、前記調整周波数(Δf)を特定した際の前記体の流量と前記目標流量との差分である周波数特定時差分の符号に対して反転しない場合又は無くならない場合に、前記体の流量と前記目標流量との差分が、前記調整周波数(Δf)を特定した際の前記周波数特定時差分の符号に対して反転するまで又は無くなるまで、前記調整周波数(Δf)を、さらに1回又は複数回繰り返し加算又は減算するように動作する前段調整動作をまず行い、
前記前段調整動作後、前記体の流量と前記目標流量との差分が無くならない場合に、前記前段調整動作で用いた前記調整周波数(Δf)よりも小さい微調整周波数(Δfn)を、前記駆動入力電圧に対して1回又は複数回繰り返し加算又は減算するように動作する微調整単位処理を、前記体の流量と前記目標流量とが一致するまでn回行う後段調整動作を行い、
前記微調整単位処理が複数回(n≧2で)行われる場合、前記微調整単位処理で用いられる前記微調整周波数(Δfn)を、1回前の前記微調整単位処理で用いられた前記微調整周波数(Δfn)よりも小さくなるように設定する、請求項1に記載の流量制御装置。
【請求項3】
前記前段調整動作を0回目の前記微調整単位処理として定義したとき、
前記後段調整動作におけるn回目の前記微調整単位処理では、
n-1回目の前記微調整単位処理後に算出される前記体の流量が前記目標流量を上回っている場合には、前記体の流量と前記目標流量との差分の符号がマイナスに転じるまで又は前記体の流量と前記目標流量との差分が無くなるまで、前記微調整周波数(Δfn)を、n-1回目の前記微調整単位処理後の前記駆動入力電圧の周波数に対して1回又は複数回繰り返し減算するための動作が行われ、
n-1回目の前記微調整単位処理後に算出される前記体の流量が前記目標流量を下回っている場合には、前記体の流量と前記目標流量との差分の符号がプラスに転じるまで又は前記体の流量と前記目標流量との差分が無くなるまで、前記微調整周波数(Δfn)を、n-1回目の前記微調整単位処理後の前記駆動入力電圧の周波数に対して1回又は複数回繰り返し加算するための動作が行われ、
n回目の前記微調整単位処理後に前記体の流量と前記目標流量との差分が無くならない場合、前記コントローラは、前記後段調整動作において次の前記微調整単位処理を行う、請求項2に記載の流量制御装置。
【請求項4】
n回目の前記微調整単位処理で用いられる前記微調整周波数(Δfn)は、前記前段調整動作で用いられた前記調整周波数(ΔF)を、2のn乗で割った値に設定される、請求項2又は3に記載の流量制御装置。
【請求項5】
前記調整周波数(Δf)は、前記調整周波数(Δf)を前記駆動入力電圧の周波数に対して加算又は減算した場合に増加又は減少する前記体の流量変化量の絶対値が、前記調整周波数(Δf)に対応する前記差分範囲の前記下限値よりも小さくなるように設定されている、請求項1乃至4のいずれかに記載の流量制御装置。
【請求項6】
前記上限値は、前記下限値を2倍した値よりも小さくなるように設定されており、
前記調整周波数(Δf)は、前記調整周波数(Δf)を前記駆動入力電圧の周波数に対して加算又は減算した場合に増加又は減少する前記体の流量変化量の絶対値が、前記調整周波数(Δf)に対応する前記差分範囲の前記上限値の半分の値よりも大きくなるように設定されている、請求項5に記載の流量制御装置。
【請求項7】
ブラシレスモータ又は交流モータの駆動によりポンプから吐出される体の流量を検出する流量検出工程と、
前記流量検出工程で検出した前記体の流量と目標流量との差分に応じて、前記ブラシレスモータ又は交流モータを駆動させるための駆動入力電圧の周波数を変更する制御工程と、を備え、
前記制御工程は、前記体の流量と前記目標流量との差分の絶対値が属する範囲を、それぞれが有する下限値及び上限値によって定める複数の差分範囲と、前記複数の差分範囲それぞれに対応して定められる複数の調整周波数との関係を記録する調整周波数テーブルを用いて行われ、
前記制御工程では、前記体の流量と前記目標流量との差分と、前記調整周波数テーブルとに基づいて、前記複数の調整周波数の中から前記体の流量と前記目標流量との差分に対応する前記調整周波数を特定し、当該特定した前記調整周波数を、当該調整周波数を特定した際の前記駆動入力電圧の周波数に対し加算又は減算することで、前記駆動入力電圧の周波数を変更する、流量制御方法。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれかに記載の流量制御装置と、
冷却された液体を通流させる液体通流装置と、を備え、
前記液体の流量を前記流量制御装置によって制御する、チラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプや送風機等の流体機械から吐出される流体の流量を制御する流量制御装置及び方法、並びに当該流量制御装置を備えるチラーに関する。
【背景技術】
【0002】
ポンプから吐出される液体の流量を検出する流量計と、流量計の検出値と目標流量との差分に応じてポンプの駆動を制御するコントローラと、を備える流量制御装置が従来から知られている。
【0003】
このような流量制御装置では、流量計として、羽根車式流量計を用いることがある。羽根車式流量計は、液体の通流に応じてパルス信号を繰り返し生成する。生成されるパルス信号は、液体の流量が大きくなるほど、そのパルス幅が小さくなる。つまり、周期が小さくなって、周波数が大きくなる。そのため、羽根車式流量計では、計測する液体の流量が大きくなるほどパルス信号が一定期間内により多く生成される。
【0004】
上記コントローラがCPUを用いるものである場合、CPUは、羽根車式流量計が繰り返し生成するパルス信号からなるパルス入力波の電位レベルを所定のサンプリング周期で取得し、パルス信号の電位レベルがハイレベルであるか又はローレベルであるかを判定することで、現在の流量を特定できる。すなわち、例えば電位レベルが連続的にハイレベルとなる区域を挟んで隣り合うローレベル検出点間の時間間隔からパルス信号のパルス幅を特定でき、これにより現在の流量を特定できる。この際、パルス幅が小さいほど、大きい流量が特定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4569324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
流量制御においてはPID制御が一般に用いられるが、CPUによりPID制御を実行しようとする場合、CPUの処理負荷が大きくなり、応答性の低下が懸念される。これに関して、高い処理能力を有するCPUを使用すれば、良好な応答性が得られ得るが、この場合、ハードウェア資源の高コスト化の問題が生じる。また、CPUでPID制御を実行するためのソフトウェアの作製は容易ではない。一方で、種々の分野で適用可能なPIDコントローラが市場で入手可能であるが、上述同様にハードウェア資源の高コスト化の問題が生じるとともに、装置のフットプリントの増大の問題も生じる。
【0007】
本発明は上記事情に着目してなされたものであり、簡素なハードウェア資源及びソフトウェアの処理によって流量制御を好適に実施できる流量制御装置及び方法、並びにチラーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施の形態にかかる流量制御装置は、ブラシレスモータ又は交流モータの駆動により流体機械から吐出される流体の流量を検出する流量計と、前記流量計が検出した前記流体の流量と目標流量との差分に応じて、前記ブラシレスモータ又は交流モータを駆動させるための駆動入力電圧の周波数を変更するコントローラと、を備え、前記コントローラは、前記流体の流量と前記目標流量との差分の絶対値が属する範囲を、それぞれが有する下限値及び上限値によって定める複数の差分範囲と、前記複数の差分範囲それぞれに対応して定められる複数の調整周波数との関係を記録する調整周波数テーブルを保持しており、前記コントローラは、前記流体の流量と前記目標流量との差分と、前記調整周波数テーブルとに基づいて、前記複数の調整周波数の中から前記流体の流量と前記目標流量との差分に対応する前記調整周波数を特定し、当該特定した前記調整周波数を、当該調整周波数を特定した際の前記駆動入力電圧の周波数に対し加算又は減算するための指令を出力することで、前記駆動入力電圧の周波数を変更する、流量制御装置、である。
【0009】
本発明にかかる流量制御装置では、シンプルに構成された調整周波数テーブルを用いて、流体の流量が目標流量に近づくようにブラシレスモータ又は交流モータを制御することが可能となり、複雑な論理演算をすることなく流量制御を実施できる。これにより、簡素なハードウェア資源及びソフトウェアの処理によって流量制御を好適に実施できる。
【0010】
前記コントローラは、
前記調整周波数(Δf)が1回加算又は減算された後、前記流体の流量と前記目標流量との差分が、前記調整周波数(Δf)を特定した際の前記流体の流量と前記目標流量との差分である周波数特定時差分の符号に対して反転しない場合又は無くならない場合に、前記流体の流量と前記目標流量との差分が、前記調整周波数(Δf)を特定した際の前記周波数特定時差分の符号に対して反転するまで又は無くなるまで、前記調整周波数(Δf)を、さらに1回又は複数回繰り返し加算又は減算するように動作する前段調整動作をまず行い、
前記前段調整動作後、前記流体の流量と前記目標流量との差分が無くならない場合に、前記前段調整動作で用いた前記調整周波数(Δf)よりも小さい微調整周波数(Δfn)を、前記駆動入力電圧に対して1回又は複数回繰り返し加算又は減算するように動作する微調整単位処理を、前記流体の流量と前記目標流量とが一致するまでn回行う後段調整動作を行ってもよい。
この際、前記微調整単位処理が複数回(n≧2で)行われる場合、前記微調整単位処理で用いられる前記微調整周波数(Δfn)を、1回前の前記微調整単位処理で用いられた前記微調整周波数(Δfn)よりも小さくなるように設定してもよい。
【0011】
ここで、前記前段調整動作を0回目の前記微調整単位処理として定義したとき、
前記後段調整動作におけるn回目の前記微調整単位処理では、
n-1回目の前記微調整単位処理後に算出される前記流体の流量が前記目標流量を上回っている場合には、前記流体の流量と前記目標流量との差分の符号がマイナスに転じるまで又は前記流体の流量と前記目標流量との差分が無くなるまで、前記微調整周波数(Δfn)を、n-1回目の前記微調整単位処理後の前記駆動入力電圧の周波数に対して1回又は複数回繰り返し減算するための動作が行われ、
n-1回目の前記微調整単位処理後に算出される前記流体の流量が前記目標流量を下回っている場合には、前記流体の流量と前記目標流量との差分の符号がプラスに転じるまで又は前記流体の流量と前記目標流量との差分が無くなるまで、前記微調整周波数(Δfn)を、n-1回目の前記微調整単位処理後の前記駆動入力電圧の周波数に対して1回又は複数回繰り返し加算するための動作が行われてもよい。
そして、n回目の前記微調整単位処理後に前記流体の流量と前記目標流量との差分が無くならない場合、前記コントローラは、前記後段調整動作において次の前記微調整単位処理を行ってもよい。
【0012】
ここで、n回目の前記微調整単位処理で用いられる前記微調整周波数(Δfn)は、前記前段調整動作で用いられた前記調整周波数(Δf)を、2のn乗で割った値に設定されてもよい。
【0013】
以上の場合、複雑な論理演算をすることなく、流体の流量が目標流量に徐々に近づくようにブラシレスモータ又は交流モータを制御することが可能となる。詳しくは、微調整単位処理が複数回行われる場合に、微調整単位処理で用いられる微調整周波数(Δfn)が、1回前のそれよりも小さくなるように簡易的な所定の規則に従って導出されるようにしておけば、流体の流量を目標流量に徐々に近づけるための操作量の演算に対する負荷を効果的に抑制できる。
特にn回目の微調整単位処理で用いる微調整周波数を、最初に特定した調整周波数を2のn乗で割ることで定める場合には、流体の流量を目標流量に徐々に近づけるための操作量の演算に対する負荷を効果的に抑制できる。さらには、流量が大きく変動することに起因して生じ得る目標流量への応答性の低下及び流体機械への負荷を抑制できる。
【0014】
また、前記調整周波数(Δf)は、前記調整周波数(Δf)を前記駆動入力電圧の周波数に対して加算又は減算した場合に増加又は減少する前記流体の流量変化量の絶対値が、前記調整周波数(Δf)に対応する前記差分範囲の前記下限値よりも小さくなるように設定されてもよい。
【0015】
この場合、調整する流量が大きく変動することに起因して生じ得る目標流量への応答性の低下を抑制できる。
【0016】
また、前記上限値は、前記下限値を2倍した値よりも小さくなるように設定されており、前記調整周波数(Δf)は、前記調整周波数(Δf)を前記駆動入力電圧の周波数に対して加算又は減算した場合に増加又は減少する前記流体の流量変化量の絶対値が、前記調整周波数(Δf)に対応する前記差分範囲の前記上限値の半分の値よりも大きくなるように設定されてもよい。
【0017】
この場合、流量調整が過剰に小刻みになることによる目標流量への応答性の低下を抑制できる。
【0018】
また、本発明の一実施の形態にかかる流量制御方法は、ブラシレスモータ又は交流モータの駆動により流体機械から吐出される流体の流量を検出する流量検出工程と、前記流量検出工程で検出した前記流体の流量と目標流量との差分に応じて、前記ブラシレスモータ又は交流モータを駆動させるための駆動入力電圧の周波数を変更する制御工程と、を備え、前記制御工程は、前記流体の流量と前記目標流量との差分の絶対値が属する範囲をそれぞれが有する下限値及び上限値によって定める複数の差分範囲と、前記複数の差分範囲それぞれに対応して定められる複数の調整周波数との関係を記録する調整周波数テーブルを用いて行われ、前記制御工程では、前記流体の流量と前記目標流量との差分と、前記調整周波数テーブルとに基づいて、前記複数の調整周波数の中から前記流体の流量と前記目標流量との差分に対応する前記調整周波数を特定し、当該特定した前記調整周波数を、当該調整周波数を特定した際の前記駆動入力電圧の周波数に対し加算又は減算することで、前記駆動入力電圧の周波数を変更する、流量制御方法、である。
【0019】
また、本発明の一実施の形態にかかるチラーは、前記の流量制御装置と、冷却された液体を通流させる液体通流装置と、を備え、前記液体の流量を前記流量制御装置によって制御する、チラー、である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、簡素なハードウェア資源及びソフトウェアの処理によって流量制御を好適に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施の形態にかかる流量制御装置を備えるチラーの概略構成を示す図である。
図2】本発明の一実施の形態にかかる流量制御装置の機能構成を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施の形態にかかる流量制御装置が備える流量計が生成するパルス信号、及び、流量制御装置が備えるFV変換部による周波数/電圧変換を説明する図である。
図4】本発明の一実施の形態にかかる流量制御装置が備えるコントローラに保持される調整周波数テーブルの一例を概念的に示す図である。
図5】本発明の一実施の形態にかかる流量制御装置による流量制御が行われた場合の流量変化の様子を表すグラフを示した図である。
図6】本発明の一実施の形態にかかる流量制御装置による流量制御の動作の一例を説明するフローチャートを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施の形態にかかる流量制御装置100を備えるチラー1について説明する。図1は、チラー1の概略構成を示す図である。
【0023】
図1に示すように、チラー1は、ポンプ10と、ポンプ10の吸込口に接続された上流側流路20と、ポンプ10の吐出口に接続された下流側流路30と、流量制御装置100と、を備える。
【0024】
ポンプ10は、羽根車をケーシングに収容したポンプ本体11と、羽根車を回転させるモータ12と、を有している。
【0025】
チラー1は、モータ12によってポンプ本体11の羽根車を回転させることで上流側流路20からポンプ10内に吸い込んだ液体を、下流側流路30へ吐出する。下流側流路30に流入した液体は熱交換器40で冷却された後、下流側流路30の出口から図示しない温度制御対象に供給される。
【0026】
本実施の形態では、下流側流路30の出口から温度制御対象に供給された液体が温度制御対象を通過した後、上流側流路20に流入し、ポンプ10に再度吸い込まれる。すなわち、チラー1は液体を循環させるように構成される。
【0027】
ただし、チラー1は上記のような循環タイプに限られるものではなく、いわゆる放出タイプとして構成されてもよい。放出タイプのチラーは、例えば温度制御対象に供給する液体を液体源から順次吸い込み、温度制御対象に供給後の液体を液体源に循環させないように構成される。
【0028】
本実施の形態におけるチラー1は、通流させる液体としてブラインを用いるが、当該液体は特に限られるものではない。
【0029】
モータ12は、駆動回路60に電気的に接続されており、駆動回路60から供給される駆動入力電圧を動力として駆動する。本実施の形態におけるモータ12は、ブラシレスDCモータであり、駆動回路60から供給される駆動入力電圧の周波数に比例して回転速度を増加させる。詳しくは、本実施の形態におけるモータ12は三相のブラシレスDCモータであるが、モータ12の相数は特に限られるものではない。
【0030】
駆動回路60は、流量制御装置100からの指令に応じて駆動入力電圧の周波数を変更する機能を有しており、流量制御装置100は、駆動入力電圧の周波数変更によってモータ12の回転速度を調整することで、ポンプ10から吐出される液体の流量を制御できる。なお、モータ12は交流モータでもよく、この場合も、供給される駆動入力電圧の周波数に比例して回転速度が増加する。モータ12が交流モータである場合、駆動回路60はインバータとして構成される。
【0031】
流量制御装置100は、下流側流路30に設けられた流量計110と、流量計110に電気的に接続されたFV変換部120と、FV変換部120及び駆動回路60に電気的に接続されたコントローラ130と、を有している。図2は、流量制御装置100の機能構成を示すブロック図である。以下、図1及び図2を参照しつつ、流量制御装置100各部の詳細を説明する。
【0032】
流量計110は、ポンプ10から吐出される液体の通流に応じてパルス信号を繰り返し生成するものであって、生成されるパルス信号のパルス幅が液体の流量に反比例するようにルス信号を形成する。流量計110で生成されるパルス信号は、液体の流量が大きいほど、そのパルス幅及び周期が小さくなり、その周波数が大きくなる。
【0033】
図示の流量計110は羽根車式流量計により構成されるが、パドル式流量計等であってもよい。また、図1に示すように本実施の形態では流量計110が下流側流路30の出口と熱交換器40との間に設けられるが、流量計110の配置位置は特に限られるものではない。
【0034】
FV変換部120は、流量計110が生成したパルス信号を周波数/電圧変換(以下、FV変換)し、流量計110が生成したパルス信号に対応する電圧値を生成するものである。詳しくは、FV変換部120は、流量計110が繰り返し生成するパルス信号を電圧値からなる連続した物理量(アナログ信号)に変換するようになっている。
【0035】
FV変換部120は、一つのパルス信号に対して一つの電圧値を生成し、FV変換部120により生成される電圧値は、流量計110が生成したパルス信号の周波数に比例して大きくなる。
【0036】
また本実施の形態におけるFV変換部120は、生成した複数の電圧値の移動平均によって参照用電圧値を算出するようになっている。この参照用電圧値は、40個以上80個以下の電圧値の移動平均によって算出することが好ましく、より具体的には1秒以上4秒以下の周期で行われる40個以上80個以下の電圧値の移動平均から、参照用電圧値が算出されるのが良い。この場合、FV変換部120は、流量計110が生成したパルス信号を、例えば1秒間に10個以上120個以下のペースでFV変換することが好ましい。このようなペースでのFV変換を実現するためには、流量計110が液体の流量に応じて10Hz~120Hzの周波数でパルス信号を出力できるように、流量計110の仕様を決定することが良い。
【0037】
FV変換部120は従来から種々の構成が提案されているが、本実施の形態では、FV変換部120が流量計110から矩形パルスのみを取得するため、正弦波のFV変換等の機能は有さなくてもよい。したがって、FV変換部120は、必要最低限のFV変換が可能な比較的小型のものであって、とりわけモノリシックICで構成されるものが好ましい。このような比較的小型のFV変換部を採用した場合には、フットプリントに関して有利となり得る。
【0038】
図3は、流量計110が生成するパルス信号、及び、FV変換部120による周波数/電圧変換を説明する図である。図3には、上下に並ぶ3つのグラフが示され、各グラフの横軸は時間(t)をそれぞれ示し、縦軸はそれぞれ電圧(V)を示す。上段のグラフは、液体の通流の時間経過に応じて、流量計110が生成するパルス信号を示し、中段のグラフは、流量計110が生成したパルス信号を、FV変換部120がFV変換して生成する電圧値を示し、下段のグラフは、FV変換部120が生成した複数の電圧値の移動平均によって算出された参照用電圧値を示している。
【0039】
図3の上段のグラフにおいて、Lで示す範囲は、液体の流量が比較的小さい範囲を示し、Hで示す範囲は、範囲Lでの液体の流量よりも流体の流量が大きい範囲を示し、Mで示す範囲は、範囲Lでの液体の流量よりも液体の流量が大きく且つ範囲Hでの液体の流量よりも液体の流量が小さい範囲を示している。
【0040】
図3の上段グラフから明らかなように、範囲Hで生成されるパルス信号のパルス幅(周期)は、範囲L,Mで生成されるパルス信号のパルス幅(周期)よりも小さい。そして、範囲Mで生成されるパルス信号のパルス幅(周期)は、範囲Lで生成されるパルス信号のパルス幅(周期)よりも小さい。なお、図3の上段のグラフにおける各範囲L,H,Mに示されるパルス信号は、図示の簡略化のために実際よりも少ない数で図示されている。
【0041】
図3の中段のグラフは、FV変換部120が、上記各範囲L,H,Mに示されるパルス信号をFV変換した際の電圧値を示している。範囲Hのパルス信号に対応する電圧値は、他の範囲L,Mのパルス信号に対応する電圧値よりも大きい。そして、範囲Mのパルス信号に対応する電圧値は、範囲Lのパルス信号に対応する電圧値よりも大きい。
【0042】
ここで、図3の中段のグラフでは、各範囲L,H,Mのパルス信号に対応する一連の電圧値において、ノイズ成分である可能性の高い電圧値が含まれている。そこで、本実施の形態におけるFV変換部120は移動平均によって参照用電圧を算出している。
【0043】
図3の下段のグラフは、FV変換部120が移動平均によって算出した参照用電圧値を示しており、当該グラフにおける参照用電圧値は平滑に推移しており、ノイズ成分である可能性の高い電圧値の発生が抑制されている。
【0044】
FV変換部120は、一例として、最新の電圧値と、最新の電圧値よりも前に検出された数点の電圧値との移動平均から、参照用電圧値を算出してもよい。具体的には、図3の中段のグラフにおける点Pで参照用電圧値を算出する際、点Pと、点Pよりも前の期間xの間に検出された数点の電圧値との移動平均から、図3の下段のグラフの点P’における参照用電圧値を算出してもよい。本実施の形態におけるコントローラ130は、参照用電圧値をサンプリングし、参照用電圧値に基づいて液体の流量を換算し、その後、流量制御を行う。すなわち、本実施の形態では、コントローラ130が電圧値のノイズ成分をサンプリングして、これに基づく流量制御を行ってしまう状況が回避され得るため、流量制御の安定性を向上できる。
【0045】
次いでコントローラ130について説明する。コントローラ130は、FV変換部120が生成した電圧値に基づいて換算する液体の換算流量と予め設定される目標流量との差分に応じて、モータ12を駆動させるための駆動入力電圧の周波数を変更するものである。
【0046】
コントローラ130は、CPU、ROM等を有するコンピュータで構成されてもよく、この場合、ROMに格納されたプログラムに従い、電圧値の取得処理、電圧値に基づく液体の流量換算処理、換算流量と目標流量との差分の特定処理、及び差分に基づく駆動入力電圧の周波数変更処理等の各種処理を行う。とりわけ本実施の形態では、以後の説明で明らかになるが、このような各種処理を簡素に実施する工夫を行うことで、例えばシングルコアのCPUを用いた場合でも好適な制御を実施し得る。そのため、例えばシングルコアのCPUの使用によるハードウェア資源の簡素化が図り易くなる。ただし、CPUの形式は特に限られるものではない。また、コントローラ130は、その他のプロセッサや電気回路(例えばFPGA(Field Programmable Gate Alley)等)で構成されてもよい。
【0047】
図2に示すように、コントローラ130は、機能構成部として、流量換算部131と、テーブル保持部132と、調整周波数決定部133と、調整周波数出力部134と、を有している。
【0048】
流量換算部131は、FV変換部120が生成した電圧値、本実施の形態では参照用電圧値をサンプリングするとともに、参照用電圧値から換算流量、つまり現在の液体の流量を換算する。流量換算部131が換算する換算流量は、参照用電圧値が大きいほど大きい値となる。
【0049】
テーブル保持部132は、流量換算部131が換算した換算流量と目標流量との差分の絶対値が属する範囲を、それぞれが有する下限値及び上限値によって定める複数の差分範囲と、これら複数の差分範囲それぞれに対応して定められる複数の調整周波数との関係を記録する調整周波数テーブルTaを保持している。
【0050】
流量換算部131が換算した換算流量と対比される上記目標流量は、ユーザによってコントローラ130に入力され、本実施の形態では、入力された目標流量が調整周波数決定部133及び調整周波数出力部134に送信され、調整周波数決定部133及び調整周波数出力部134のそれぞれに保持される。
【0051】
調整周波数決定部133は、流量換算部131が換算した換算流量と目標流量との差分を特定するとともに、この差分とテーブル保持部132が保持する調整周波数テーブルTaとに基づいて、調整周波数テーブルTaに記録された複数の調整周波数の中から、特定した差分に対応する調整周波数を特定する。
【0052】
調整周波数決定部133によって特定された調整周波数は、調整周波数出力部134に送信され、調整周波数出力部134は、調整周波数決定部133から送信された調整周波数を、これを特定した際の駆動入力電圧の周波数に対し加算又は減算するための指令を駆動回路60に出力する。これにより、駆動回路60がモータ12に入力する駆動入力電圧の周波数が変更されることになる。
【0053】
図4は、テーブル保持部132に保持される調整周波数テーブルTaを概念的に示す図である。図4においては、差分範囲と調整周波数との紐付け関係の一部が示されている。具体的には、下限値D1と上限値D2とによって定められる差分範囲と、これ対応する調整周波数Δf1との関係、下限値D2と上限値D3とによって定められる差分範囲と、これ対応する調整周波数Δf2との関係、下限値D3と上限値D4とによって定められる差分範囲と、これ対応する調整周波数Δf3との関係、及び下限値D4と上限値D5とによって定められる差分範囲と、これ対応する調整周波数Δf4との関係が示されている。
【0054】
調整周波数テーブルTaでは、流量換算部131が換算した換算流量と目標流量との差分Δdが大きいほど、調整周波数によって調整される流量が大きくなるように、複数の調整周波数の値が設定されている。したがって、図4においては、Δf1<Δf2<Δf3<Δf4の関係が成り立つ。
【0055】
調整周波数決定部133は、流量換算部131が換算した換算流量と目標流量との差分Δdを特定した後、調整周波数テーブルTaを参照し、現在の駆動入力電圧の周波数を変更するために調整周波数を特定する。その後、調整周波数出力部134は、調整周波数決定部133から送信された調整周波数を、これを特定した際の駆動入力電圧の周波数に加算又は減算させるための指令(電圧信号)を生成し、この指令を駆動回路60に出力する。ここで、調整周波数を特定した際の換算流量と目標流量との差分Δdの符号がマイナスである場合には、調整周波数を加算させるための指令が生成及び出力され、差分Δdの符号がプラスである場合には、調整周波数を減算させるための指令が生成及び出力されることになる。
【0056】
以下、調整周波数決定部133が特定した調整周波数のことを、説明の明瞭化のために「調整周波数(Δf)」と表記しつつ、本実施の形態における調整周波数出力部134の動作を詳述する。
【0057】
本実施の形態における調整周波数出力部134は、まず、調整周波数決定部133が特定した調整周波数(Δf)を、この調整周波数(Δf)が特定された際の駆動入力電圧の周波数に1回又は複数回繰り返し加算又は減算するための前段調整動作を行い、この前段調整動作後に、液体の流量と目標流量との差分が無くならない場合に、後段調整動作を行うようになっている。
【0058】
前段調整動作において、調整周波数出力部134はまず、調整周波数(Δf)が、この調整周波数(Δf)が特定された際の駆動入力電圧の周波数に1回加算又は減算されるように指令を出力する。その後、液体の流量と目標流量との差分が、調整周波数(Δf)を特定した際の換算流量と目標流量との差分(以下、周波数特定時差分と呼ぶ)の符号に対して反転しない場合又は無くならない場合に、液体の流量と目標流量との差分が、調整周波数(Δf)を特定した際の差分である上記周波数特定時差分の符号に対して反転するまで又は無くなるまで、調整周波数(Δf)を、1回目の調整周波数(Δf)の加算又は減算がされた駆動入力電圧に対してさらに1回又は複数回繰り返し加算又は減算するように動作する。なお、前段調整動作では、流量換算部131が参照用電圧値を適宜サンプリングするとともに換算流量を換算しており、調整周波数出力部134は、換算流量を必要に応じて参照している。
【0059】
ここで、本実施の形態における調整周波数(Δf)は、当該調整周波数(Δf)を駆動入力電圧の周波数に対して加算又は減算した場合に増加又は減少する液体の流量変化量の絶対値が、当該調整周波数(Δf)に対応する差分範囲の下限値よりも小さくなるように設定されている。したがって、本実施の形態では、基本的に、前段調整動作における1回目の調整周波数(Δf)の加算又は減算処理により、液体の流量と目標流量との差分が無くなることはない。このような調整周波数(Δf)の設定は、調整する流量が大きく変動することに起因して生じ得る目標流量への応答性の低下を抑制するためになされている。
【0060】
より詳しくは、調整周波数テーブルTaで定められた差分範囲の上限値は、下限値を2倍した値よりも小さくなるように設定されている。そして、調整周波数(Δf)は、当該調整周波数(Δf)を駆動入力電圧の周波数に対して加算又は減算した場合に増加又は減少する液体の流量変化量の絶対値が、当該調整周波数(Δf)に対応する差分範囲の上限値の半分の値よりも大きくなるように設定されている。つまり、図4の例で言うと、D2/2<調整周波数(Δf1)による流量変化量<D1、という関係が成り立つ。この場合、調整する流量が過剰に小さくなることによる目標流量への応答性の低下が抑制される。
【0061】
そして、上記前段調整動作後、液体の流量と目標流量との差分が無くならない場合に、調整周波数出力部134は、後段調整動作を行う。後段調整動作において、調整周波数出力部134は、前段調整動作で用いた調整周波数(Δf)よりも小さい微調整周波数(Δfn)を、駆動入力電圧に対して1回又は複数回繰り返し加算又は減算するように動作する微調整単位処理を、液体の流量と目標流量とが一致するまでn回行う後段調整動作を行う。そして、上記微調整単位処理が、複数回(n≧2で)行われる場合、微調整単位処理で用いられる微調整周波数(Δfn)は、1回前の微調整単位処理で用いられる微調整周波数(Δfn)よりも小さくなるように設定される。なお、上記「n」は言うまでも無く整数である。
【0062】
より詳しく説明すると、前段調整動作を0回目の前記微調整単位処理として定義したとき、後段調整動作におけるn回目の前記微調整単位処理では、n-1回目の微調整単位処理後に算出される液体の流量が目標流量を上回っている場合(液体の流量>目標流量)には、液体の流量と目標流量との差分の符号がマイナスに転じるまで又は液体の流量と目標流量との差分が無くなるまで、微調整周波数(Δfn)を、n-1回目の微調整単位処理後の駆動入力電圧の周波数に対して、1回又は複数回繰り返し減算するための動作が行われる。つまり、調整周波数出力部134は、微調整周波数(Δfn)を減算させるための指令(電圧信号)を、液体の流量と目標流量との差分の符号がマイナスに転じるまで又は液体の流量と目標流量との差分が無くなるまで、1回又は複数回繰り返し駆動回路60に出力するようになっている。
【0063】
一方、n-1回目の微調整単位処理後に算出される液体の流量が目標流量を下回っている場合(液体の流量<目標流量)におけるn回目の微調整単位処理では、液体の流量と目標流量との差分の符号がプラスに転じるまで又は液体の流量と目標流量との差分が無くなるまで、微調整周波数(Δfn)を、n-1回目の前記微調整単位処理後の駆動入力電圧の周波数に対して1回又は複数回繰り返し加算するための動作が行われる。つまり、調整周波数出力部134は、微調整周波数(Δfn)を加算させるための指令(電圧信号)を、液体の流量と目標流量との差分の符号がマイナスに転じるまで又は液体の流量と目標流量との差分が無くなるまで、1回又は複数回繰り返し駆動回路60に出力するようになっている。
【0064】
そして、上記のようなn回目の微調整単位処理後に液体の流量と目標流量との差分が無くならない場合に、調整周波数出力部134は後段調整動作において次の前記微調整単位処理を行う。なお、後段調整動作でも、流量換算部131は参照用電圧値を適宜サンプリングするとともに換算流量を換算しており、調整周波数出力部134は、換算流量を必要に応じて参照している。また、液体の流量と目標流量との差分が無くならないという概念及び液体の流量と目標流量とが一致するという概念は、液体の流量と目標流量とが完全に一致する場合だけでなく、一致と見なせる概念を含む。一致と見なす基準は、取り扱う液体の流量等に応じて、ユーザ側で適宜定めることができる。
【0065】
また本実施の形態では、上述したように上記微調整単位処理が複数回(n≧2で)行われる場合、微調整単位処理で用いられる微調整周波数(Δfn)は、1回前の微調整単位処理で用いられた微調整周波数(Δfn)よりも小さくなるように設定される。これにより、液体の流量を次第に目標流量に近づけることができる。より詳しくは、本実施の形態においては、n回目(n≧1)の微調整単位処理で用いられる微調整周波数(Δfn)が、前段調整動作で用いられた調整周波数(Δf)を、2のn乗で割った値に設定される。この場合、微調整周波数(Δfn)を簡易な処理で決定することができる。
【0066】
図5は、流量制御装置100による流量制御が行われた場合の流量変化の様子を示している。より詳しくは、上述した前段調整動作と、その後の後段調整動作とが行われる様子が示されている。図5のグラフにおける横軸は時間(t)を示し、縦軸は流量(L/min)を示す。
【0067】
図5の例では、流量換算部131が換算した換算流量と目標流量との差分(Δd)が、図4に示す調整周波数テーブルTaにおける下限値D1及び上限値D2によって定められる差分範囲に含まれている。そのため、調整周波数決定部133が、差分(Δd)に対応する調整周波数として、調整周波数(Δf1)を特定している。
【0068】
そして、前段調整動作前の液体の流量が目標流量TLを下回っており(液体の流量<目標流量TL)、前段調整動作において、調整周波数(Δf1)が2回加算される処理が行われている。そして、これにより、液体の流量と目標流量TLとの差分が、調整周波数(Δf1)を特定した際の差分(Δd)の符号(マイナス)に対して反転している。
【0069】
そして、前段調整動作後に液体の流量と目標流量TLとの差分が無くなっていないため、後段調整動作が行われている。後段調整動作では、1回目の微調整単位処理において、微調整周波数(Δfn1)が2回減算される処理が行われている。1回目の微調整単位処理における微調整周波数(Δfn1)は、調整周波数(Δf1)/2になっている。そして、1回目の微調整単位処理後に液体の流量と目標流量TLとの差分が無くなっていないため、2回目の微調整単位処理が行われている。そして、2回目の微調整単位処理では、微調整周波数(Δfn2)が2回加算される処理が行われている。2回目の微調整単位処理における微調整周波数(Δfn2)は、調整周波数(Δf1)/2になっている。そして、2回目の微調整単位処理後に液体の流量と目標流量TLとの差分が無くなっていないため、3回目の微調整単位処理が行われている。そして、3回目の微調整単位処理では、微調整周波数(Δfn3)が2回減算される処理が行われている。3回目の微調整単位処理における微調整周波数(Δfn3)は、調整周波数(Δf1)/2になっている。以上のようにして、液体の流量は目標流量TLに次第に近づく。
【0070】
図6は、流量制御装置100による流量制御の動作の一例を説明するフローチャートを示した図である。以下、図6を参照しつつ、流量制御装置100による流量制御の動作の一例を説明する。
【0071】
図6の処理は、例えば流量制御開始イベントの発生により開始される。この流量制御開始イベントは定期的に生じるものでもよいし、液体の流量と目標流量との差分が一定値以上になった場合に生じるものでもよい。
【0072】
本例では、まず流量換算部131が、ステップS1においてFV変換部120が生成した電圧値(本実施の形態では参照用電圧値)をサンプリングし、次いでステップS2において参照用電圧値から換算流量を換算する。
【0073】
次いでステップS3において、調整周波数決定部133が、流量換算部131が換算した換算流量と目標流量との差分を特定する。そして、調整周波数決定部133は、ステップS4において、特定した差分とテーブル保持部132が保持する調整周波数テーブルTaとに基づいて、調整周波数テーブルTaに記録された複数の調整周波数の中から、特定した差分に対応する調整周波数を特定する。
【0074】
次いでステップS5においては、調整周波数出力部134が、調整周波数決定部133が特定した調整周波数を、これを特定した際の駆動入力電圧の周波数に対し1回加算又は減算するための指令(調整周波数指令)を駆動回路60に出力する。これにより、駆動回路60がモータ12に入力する駆動入力電圧の周波数が変更され、ポンプ10が吐出する液体の流量が変更される。
【0075】
その後、ステップS6において、調整周波数出力部134は、1回目の調整周波数の加算又は減算後の液体の流量と目標流量との差分の符号が、ステップS4で調整周波数を特定した際の差分(周波数特定時差分)の符号に対して反転したか否かを判定する。ステップS6において、差分が反転していない場合、調整周波数出力部134は、ステップS7において、現在の流体の流量と目標流量との間に差分が無いか否かを判定する。ステップS7において差分がある場合、調整周波数出力部134は、ステップS5に戻り、調整周波数を、さらに1回加算又は減算するための指令を駆動回路60に出力する。ステップS7において差分が無い場合には、液体の流量が目標流量と一致したため、流量制御の動作は終了する。
【0076】
ステップS5における調整周波数を加算又は減算するための処理は、ステップS6において差分の符号が反転するまで又はステップS7において差分が無いと判定されるまで繰り返される。すなわち、ステップS5~S7の処理は、上述した前段調整動作に対応する。
【0077】
一方で、ステップS6において、液体の流量と目標流量との差分の符号が、ステップS4で調整周波数を特定した際の差分の符号に対して反転した場合、ステップS8に処理が移行する。ステップS8では、調整周波数出力部134が、微調整周波数を、前段調整動作後の駆動入力電圧の周波数に対し1回加算又は減算するための指令(調整周波数指令)を駆動回路60に出力する。すなわち、後段調整動作における1回目の微調整単位処理が行われる。1回目の微調整単位処理における微調整周波数は、上述したように、前段調整動作で用いられた調整周波数を、2の1乗で割った値に設定される。
【0078】
そして、ステップS9において、調整周波数出力部134は、現在の液体の流量と目標流量との差分の符号が、ステップS6における差分反転時の液体の流量と目標流量との差分の符号に対して反転したか否かを判定する。ステップS9において、差分が反転していない場合、調整周波数出力部134は、ステップS10において、現在の流体の流量と目標流量との間に差分が無いか否かを判定する。ステップS10において差分がある場合、調整周波数出力部134は、ステップS8に戻り、微調整周波数を、さらに1回加算又は減算するための指令を駆動回路60に出力する。ステップS10において差分が無い場合には、液体の流量が目標流量と一致したため、流量制御の動作は終了する。
【0079】
ステップS8における微調整周波数を加算又は減算するための処理は、ステップS9において差分の符号が反転するまで又はステップS10において差分が無いと判定されるまで繰り返される。
【0080】
そして、ステップS9において、液体の流量と目標流量との差分の符号が、ステップS6における差分反転時の液体の流量と目標流量との差分の符号に対して反転した場合、処理はステップS11に移行し、後段調整動作における2回目の微調整単位処理が行われる。
【0081】
ステップS11では、調整周波数出力部134が、微調整周波数を、駆動入力電圧の周波数に対し1回加算又は減算するための指令(調整周波数指令)を駆動回路60に出力する。この2回目の微調整単位処理における微調整周波数は、上述したように、前段調整動作で用いられた調整周波数を、2の2乗で割った値に設定される。
【0082】
次いで、ステップS12において、調整周波数出力部134は、現在の液体の流量と目標流量との差分の符号が、ステップS9における差分反転時の液体の流量と目標流量との差分の符号に対して反転したか否かを判定する。ステップS12において、差分が反転していない場合、調整周波数出力部134は、ステップS13において、現在の液体の流量と目標流量との間に差分が無いか否かを判定する。ステップS13において差分がある場合、調整周波数出力部134は、ステップS11に戻り、微調整周波数を、さらに1回加算又は減算するための指令を駆動回路60に出力する。ステップS13において差分が無い場合には、液体の流量が目標流量と一致したため、流量制御の動作は終了する。
【0083】
ステップS11における微調整周波数を加算又は減算するための処理は、ステップS12において差分の符号が反転するまで又はステップS13において差分が無いと判定されるまで繰り返される。そして、ステップS12において、差分の符号が反転した場合には、ステップS14において、微調整周波数をステップS11で使用した微調整周波数の半分の値に書き換えた後、ステップS8の処理に戻る。ステップS8においては、ステップS14で書き換えられた微調整周波数を、駆動入力電圧の周波数に対し1回加算又は減算するための指令(調整周波数指令)を駆動回路60に出力する。ステップS8~ステップS14の処理は、後段調整動作に対応する。
【0084】
なお、以上に説明した図6に示す動作の流れは一例であり、本発明は図6に示す動作に限られるものではない。
【0085】
以上に説明した本実施の形態にかかる流量制御装置100は、流量計110と、コントローラ130と、を備える。流量計110は、ブラシレスモータであるモータ12の駆動により流体機械であるポンプ10から吐出される液体の流量を検出するコントローラ130は、流量計110が検出した流体の流量と目標流量との差分に応じて、モータ12を駆動させるための駆動入力電圧の周波数を変更する。そして、コントローラ130は、液体の流量と目標流量との差分の絶対値が属する範囲を、それぞれが有する下限値及び上限値によって定める複数の差分範囲と、複数の差分範囲それぞれに対応して定められる複数の調整周波数との関係を記録する調整周波数テーブルTaを保持する。そして、コントローラ130は、流体の流量と目標流量との差分と、調整周波数テーブルTaとに基づいて、複数の調整周波数の中から流体の流量と目標流量との差分に対応する調整周波数を特定し、当該特定した前記調整周波数を、当該調整周波数を特定した際の駆動入力電圧の周波数に対し加算又は減算するための指令を出力することで、駆動入力電圧の周波数を変更する。
【0086】
すなわち、流量制御の手順で説明すると、本実施の形態では、流量検出工程と、駆動入力電圧の周波数を変更する制御工程と、が行われる。流量検出では、モータ12の駆動によりポンプ10から吐出される流体の流量を検出する。制御工程では、流量検出工程で検出した流体の流量と目標流量との差分に応じて、モータ12を駆動させるための駆動入力電圧の周波数を変更する。詳しくは、制御工程は、液体の流量と目標流量との差分の絶対値が属する範囲を、それぞれが有する下限値及び上限値によって定める複数の差分範囲と、複数の差分範囲それぞれに対応して定められる複数の調整周波数との関係を記録する調整周波数テーブルTaを用いて行われる。より詳しくは、制御工程は、液体の流量と目標流量との差分と、調整周波数テーブルTaとに基づいて、複数の調整周波数の中から液体の流量と目標流量との差分に対応する調整周波数を特定し、当該特定した調整周波数を、当該調整周波数を特定した際の前記駆動入力電圧の周波数に対し加算又は減算することで、駆動入力電圧の周波数を変更する。
【0087】
このような本実施の形態では、シンプルに構成された調整周波数テーブルを用いて、液体の流量が目標流量に近づくようにモータ12を制御することが可能となり、複雑な論理演算をすることなく流量制御を実施できる。これにより、簡素なハードウェア資源及びソフトウェアの処理によって流量制御を好適に実施できる。
【0088】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は以上に説明した実施の形態に限られるものではなく、上述の実施の形態には種々の変更を加えることができる。例えば、上述の実施の形態にかかる流量制御装置100は、ポンプ10が吐出する液体の流量制御に適用されるが、流量制御装置100は、送風機が吐出する気体の流量制御等に適用されてもよい。
【0089】
また、以上に説明した実施の形態では、流量計110が流体の流量に応じて生成するパルス信号を、FV変換部120によってFV変換した後、流量を換算するが、流量計110が流体の流量に応じて生成するパルス信号から直接的に流量を換算し、これを目標流量と対比して、調整周波数を特定してもよい。この場合、流量計110の形式は特に限られるものではなく、ダイヤフラム式流量計、浮き子式流量計、カルマン渦式流量計等の他の形式でもよい。
【符号の説明】
【0090】
1…チラー
10…ポンプ
11…ポンプ本体
12…モータ
20…上流側流路
30…下流側流路
40…熱交換器
60…駆動回路
100…流量制御装置
110…流量計
120…FV変換部
130…コントローラ
131…流量換算部
132…テーブル保持部
133…調整周波数決定部
134…調整周波数出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6