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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】除草機
(51)【国際特許分類】
   A01B 39/18 20060101AFI20240401BHJP
【FI】
A01B39/18 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020141820
(22)【出願日】2020-08-25
(65)【公開番号】P2022037599
(43)【公開日】2022-03-09
【審査請求日】2023-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000100469
【氏名又は名称】みのる産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108958
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 英一
(72)【発明者】
【氏名】陶山 純
(72)【発明者】
【氏名】山本 明
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-201467(JP,A)
【文献】特表2002-541864(JP,A)
【文献】特開2005-287366(JP,A)
【文献】特開2002-034425(JP,A)
【文献】特開2019-170224(JP,A)
【文献】特開2006-340652(JP,A)
【文献】特開2004-024077(JP,A)
【文献】実公昭46-025058(JP,Y1)
【文献】特開2003-230305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 39/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場を走行可能に構成された走行機体に支持された除草部を備える除草機において、
前記走行機体は、機体フレームと、該機体フレームに対して昇降自在に支持されるとともに前記除草部が搭載されている昇降フレームとを備え、前記昇降フレームは、前記機体フレームに対して感知バネを介して吊り下げ支持されており、前記感知バネは、その前記支持の強さが感知バネ強度調節手段により調節可能になっており、
前記除草部は、弾力性を有する材料により形成されている多数の線材を下向きに突出させて配したブラシを前記走行機体の進行方向と交差する左右方向に揺動させるように構成されているとともに、該ブラシに沿って設けられた表面追従部を備えており、該表面追従部は、前記除草部に対して昇降自在に支持されるとともに、表面追従部高さ位置調節手段によって該除草部に対する昇降位置が調節可能に構成されており、
前記走行機体により植付苗の条方向に沿って進行しているときに、前記除草部により前記ブラシが揺動されることにより、前記線材の先端で圃場の雑草を除草するように構成されており、
前記除草時における前記走行機体の進行速度と、前記ブラシの揺動速度とを連動させるように構成されている除草機。
【請求項2】
前記ブラシは、ブラシ中央部と、その左右両側にそれぞれ取り付けられたブラシ端部とを備え、該ブラシ端部が交換可能に構成されている請求項1記載の除草機。
【請求項3】
前記走行機体は、一輪の主車輪を備え、
前記除草部は、左右一対の補助車輪を備え、
該左右一対の補助車輪は、圃場に接地して前記除草部及び前記表面追従部を圃場の上方に位置させる走行位置と、圃場の上方に待避するとともに、前記除草部及び前記表面追従部を圃場に接触させる非走行位置との間で前記除草部に対して昇降自在に支持されるとともに、補助車輪係止手段によって前記走行位置及び前記非走行位置のいずれかの位置に係止可能に構成されている請求項1又は2記載の除草機。
【請求項4】
前記除草部は、圃場に接触して雑草を除草可能な除草位置と、圃場の上方に待避する非除草位置との間で前記昇降自在に支持されるとともに、除草部係止手段によって前記除草位置と前記非除草位置のいずれかの位置に係止可能に構成されている請求項1~3のいずれか一項に記載の除草機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水田や畑の雑草を除草する除草機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の除草機としては、特許文献1に記載された水田用除草機を例示する。この除草機101は、図12(a)に示すように、植付苗Pの条間及び株間の除草が均一に行えるように、ブラシ本体103に対し、左右方向において共通の形状のブラシ部材128を配置し、ブラシ部材128を直線状又は緩やかな円弧状に形成し、直線状又は円弧状の先端が田面に挿入されるようになっている。ブラシ部材128を前後に分けて複数列設け、進行方向前列側に対し後列側ブラシ部材128の配置密度を高密度にして配置している。ブラシ本体103を左右方向にスライド駆動させる駆動装置110と、田面に接して走行又は滑走し除草フレーム102を支持するフロート111とを除草フレーム102に取付けている。除草機101には、それを手押し走行させるための走行ハンドル129が設けられている。
【0003】
また、特許文献1には、図12(b)に示すように、前記除草機101のフロート111及びフロート関連の機構を取り外したものを、公知の専用田植機(走行車両)131の昇降リンク132のヒッチ部133に、ブラケット134と取付フレーム135を介して取付けてそのまま使用する変更例も開示されている。この変更例では、除草機101の高さ制御は、昇降リンク132を昇降駆動する公知のリフトシリンダー136の制御によって行うことができるが、植付作業機のセンサーフロートが使用できない場合は、ヒッチ部133側に又は除草機101側に、除草機101の沈み具合を感知して除草機自体の高さ制御、即ちブラシ部材128の田面挿入深さの制御を行わせるセンサーフロート137を取付けることができる旨が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-170224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、図12(a)の除草機101や図12(b)の変更例の除草機101は、走行とブラシの揺動が別動力源であるので、速度に合わせたブラシの揺動速度が得られ難いという課題がある。
【0006】
また、図12(a)の除草機101や図12(b)の変更例の除草機101は、所定形状のブラシを所定幅で揺動させるように構成されているため、圃場や植付苗の状態に応じて適宜除草幅を変えることができないという課題がある。
【0007】
また、図12(a)の除草機101は、前後にフロート111を備えているため、フロート111により除草フレーム102を支持させる機構や、フロート111に対する除草フレーム102の相対高さを調節する機構等を前後それぞれに備える必要があり、構造が複雑になっているという課題がある。
【0008】
また、図12(a)の除草機101は、機体が前後左右4カ所のフロート111で支持されているとともに該機体と除草部が一体になっているため、各フロート111の接地位置における圃場の状態の違いにより前後左右でブラシ部材128の先端の圃場への挿入深さに差が生じ易いという課題がある。また、非除草時に機体を移動させるときはブラシ部材128の先端が圃場に接触しないようにハンドル129を支持する必要があるという課題がある。
【0009】
また、図12(a)の除草機101は、圃場での旋回時に、フロート111やブラシ部材128の先端が圃場に接触しないように機体を持ち上げて行う必要があり、労力を要するという課題がある。
【0010】
また、図12(a)の除草機101は、機体と除草部が一体になっているため、軟弱圃場でフロートが沈み易く、ブラシ部材128の先端の圃場への挿入深さが安定しないという課題がある。
【0011】
さらに、図12(a)の除草機101は、機体と除草部が一体になっているため、機体の前後方向への傾きに応じて、前後でブラシ部材128の先端の圃場への挿入深さに差が生じ易いという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために、第1の発明の除草機は、
圃場を走行可能に構成された走行機体に支持された除草部を備える除草機において、
前記走行機体は、機体フレームと、該機体フレームに対して昇降自在に支持されるとともに前記除草部が搭載されている昇降フレームとを備え、前記昇降フレームは、前記機体フレームに対して感知バネを介して吊り下げ支持されており、前記感知バネは、その前記支持の強さが感知バネ強度調節手段により調節可能になっており、
前記除草部は、弾力性を有する材料により形成されている多数の線材を下向きに突出させて配したブラシを前記走行機体の進行方向と交差する左右方向に揺動させるように構成されているとともに、該ブラシに沿って設けられた表面追従部を備えており、該表面追従部は、前記除草部に対して昇降自在に支持されるとともに、表面追従部高さ位置調節手段によって該除草部に対する昇降位置が調節可能に構成されており、
前記走行機体により植付苗の条方向に沿って進行しているときに、前記除草部により前記ブラシが揺動されることにより、前記線材の先端で圃場の雑草を除草するように構成されており、
前記除草時における前記走行機体の進行速度と、前記ブラシの揺動速度とを連動させるように構成されている。
【0013】
前記圃場としては、特に限定されないが、水田や畑等を例示する。
【0014】
前記線材としては、弾力性を有する材料により直線状又は緩やかな円弧状に形成されている態様を例示する。そして、前記線材は、前記除草時において、その先端で圃場面の泥や土等を弾力的に掻き均しながら雑草を掻き取り、植付苗に当接しても弾力的に変形しながら植付苗を押し倒すことなく通過して除草するように構成されることが好ましい。
【0015】
前記走行機体の進行速度と、前記ブラシの揺動速度とを連動させる態様としては、特に限定されないが、次の態様を例示する。
(1)走行機体の進行の駆動と、前記ブラシの駆動とを同一の動力源により駆動する態様。
(2)走行機体の進行の駆動のための動力源と、前記ブラシの駆動のための動力源とを別個に設け、それらの動作を機械的又は/及び電気的に連動させるように制御する態様。
【0016】
前記動力源としては、特に限定されないがエンジン、モーター等を例示する。
前記表面追従部としては、特に限定されないが、次の態様を例示する。
(1)前記圃場が水田の場合に、水田の地面に追従するフロート、車輪、ローラ、又はスキー状部材等とする態様。
(2)前記圃場が畑の場合に、畑の地面に追従する車輪、ローラ、又はスキー状部材等とする態様。
【0017】
この構成によれば、前記走行機体の進行と前記ブラシの左右への揺動とによって、植付苗やその根張り部分を倒したり損傷したりしないで、生育初期の雑草のみを掻き取るように、予め前記走行機体の進行速度と前記ブラシの揺動速度との関係を、前記ブラシ、前記圃場、植付苗、雑草等の種類や状態等に応じて適宜設定しておくことができる。そのため、例えば、前記進行速度に対して前記揺動速度が速すぎるために植付苗を損傷してしまったり、その逆に前記進行速度に対して前記揺動速度が遅すぎるために雑草を十分に掻き取ることができなかったりという不具合を防止できる。
また、前記走行機体は、機体フレームと、該機体フレームに対して昇降自在に支持されるとともに前記除草部が搭載されている昇降フレームとを備え、前記昇降フレームは、前記機体フレームに対して感知バネを介して吊り下げ支持されており、前記感知バネは、その前記支持の強さが感知バネ強度調節手段により調節可能になっているため、圃場の硬軟や植付苗の生長・種類等の状態に応じて圃場に対する前記除草部の下方への押圧力を適宜調節できる。
また、前記除草部は、前後にフロートを備える従来例とは異なり、前記表面追従部を備えているだけなので、構造をシンプルにすることができるとともに、前記表面追従部の高さ位置を前記表面追従部高さ位置調節手段により調節するだけで、前記ブラシにおける前記線材の先端部の圃場への挿入深さを調節することができる。
さらに、前記除草部は、前記機体フレームに対して相対的に昇降自在に支持されているため、除草中に前記走行機体が前後に傾斜した場合でも、前記除草部が前記機体フレームに対して昇降し、圃場への接触を維持させることができるので、前記ブラシの圃場への挿入深さを安定させることができる。
【0018】
第2の発明の除草機としては、前記第1の発明において、
前記ブラシは、ブラシ中央部と、その左右両側にそれぞれ取り付けられたブラシ端部とを備え、該ブラシ端部が交換可能に構成されている態様を例示する。
【0019】
この構成によれば、圃場や植付苗等の状態に応じた左右方向の長さを備える前記ブラシ端部を前記ブラシ中央部に取り付けることにより、適宜除草幅を変更することができる。
【0023】
第3の発明の除草機としては、前記第1又は2の発明において、
前記走行機体は、一輪の主車輪を備え、
前記除草部は、左右一対の補助車輪を備え、
該左右一対の補助車輪は、圃場に接地して前記除草部及び前記表面追従部を圃場の上方に位置させる走行位置と、圃場の上方に待避するとともに、前記除草部及び前記表面追従部を圃場に接触させる非走行位置との間で前記除草部に対して昇降自在に支持されるとともに、補助車輪係止手段によって前記走行位置及び前記非走行位置のいずれかの位置に係止可能に構成されている態様を例示する。
【0024】
この構成によれば、非除草時(移動時)は、前記両補助車輪を前記走行位置に係止することにより、前記主車輪及び前記両補助車輪により走行自在な状態にすることができる。一方、除草時は、前記両補助車輪を前記非走行位置に係止することにより、前記一輪の主車輪が接地するとともに前記表面追従部が圃場に接触し、その間で前記除草部における前記ブラシの先端が圃場に挿入されるようにすることができる。そして、除草時は、前記主車輪が一輪であるため、該主車輪の接地箇所では、該主車輪を中心に前記走行機体を左右へ傾斜自在であるため、前記ブラシに沿って設けられた前記表面追従部の接触箇所の傾斜に応じて前記ブラシを傾斜させることができる。
【0025】
第4の発明の除草機としては、前記第1~3のいずれかの発明において、
前記除草部は、圃場に接触して雑草を除草可能な除草位置と、圃場の上方に待避する非除草位置との間で前記昇降自在に支持されるとともに、除草部係止手段によって前記除草位置と前記非除草位置のいずれかの位置に係止可能に構成されている態様を例示する。
【0026】
この構成によれば、前記除草部を前記非除草位置に係止させることにより、圃場で前記走行機体を容易に旋回させることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る除草機によれば、走行機体の進行と除草部の動作とを連動させることができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明を具体化した一実施形態に係る水田用の除草機の全体構成を模式的に表した側面図である。
図2】同除草機の全体構成を模式的に表した平面図である。
図3】同除草機の除草部に関わる要部を模式的に表した背面図である。
図4】同除草機の表面追従部に関わる構成を模式的に表した背面図である。
図5】同表面追従部に関わる構成を模式的に表した側面図であり、(a)は表面追従部を下降させた状態を、(b)は表面追従部を上昇させた状態を、それぞれ示している。
図6】同除草機の補助車輪に関わる構成を模式的に表した背面図である。
図7】同補助車輪に関わる構成を模式的に表した側面図であり、(a)は補助車輪を下降させた状態を、(b)は補助車輪を上昇させた状態を、それぞれ示している。
図8】同除草機の除草部の昇降に関わる構成模式的に表した平面図である。
図9】同除草部の昇降に関わる構成を模式的に表した側面図であり、(a)は除草部を下降させた状態を、(b)は除草部を昇降自在にした状態を、(c)は除草部を上昇させた状態を、それぞれ示している。
図10】同除草機の除草部を吊り下げ支持する感知バネに関わる構成を模式的に表した背面図である。
図11】同除草機のブラシに関わる構成を模式的に表した平面図である。
図12】従来の水田用除草機を示す図であり、(a)は手押し走行させるように構成された除草機の側面図を、(b)は専用田植機に取り付けて使用するように構成された除草機の側面図を、それぞれ示している。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1図11は本発明の除草機を水田用の歩行式除草機1として具体化した一実施形態を示しており、各図において、矢印Fは機体前側を指し示している。図1図3に示すように、この除草機1は、圃場を走行可能に構成された走行機体2に支持された除草部3を備えている。
【0034】
走行機体2は、平面視で略矩形枠状に形成され、前後方向に延びる機体フレーム4と、該機体フレーム4の後部に設けられた昇降フレーム5とを備えている。機体フレーム4は、前後方向の略中央部が一輪の主車輪6により支持されている。機体フレーム4の前部には動力源としてのエンジン7と該エンジン7の回転数を減速する減速ミッション8とが搭載され、同後部にはハンドル9が後方に向けて突設されている。昇降フレーム5は、機体フレーム4の後部に対して上下一組のリンク11a、11bから構成された、左右一対の平行リンク11を介して昇降自在に支持されている。左右一対の平行リンク11、11は、下側のリンク11b、11b同士がリンク連結金具12で連結されている。これにより左右の平行リンク11、11が一体的に動作するように構成されている。昇降フレーム5には、除草部3と、左右一対の補助車輪13とが搭載されている。
【0035】
機体フレーム4には、図8及び図9に示すように、前後に揺動自在にロック金具15が設けられるとともに、該ロック金具15を後方へ回動させるように付勢する付勢手段としてのロックバネ16と、該ロック金具15を前方へ回動させるように操作するためのロックレバー17(後述)とを備える除草部係止手段23が設けられている。ロック金具15は、下端に設けられた下フック15bと、該下フック15bの上方に設けられた上フック15aとを備えており、該下フック15b及び上フック15aには、リンク連結金具12が係止可能になっている。そして、除草機1による移動時には、下フック15bにリンク連結金具12を係止させることにより、昇降フレーム5を下降位置に固定するとともに、後述する補助車輪13を走行位置に固定することにより、主車輪6及び補助車輪13で圃場を走行可能にする。また、除草機1による除草時には、ロックレバー17を操作することによりロック金具15を前方に回動させた状態にし、平行リンク11、11が上下に昇降自在の状態にするとともに、後述する補助車輪13を非走行位置に固定することにより、除草部3及び表面追従部40(後述)を圃場に接触させ、除草可能にする。さらに、除草機1による除草中における旋回時には、上フック15aにリンク連結金具12を係止させることにより、昇降フレーム5を上昇位置に固定して、主車輪6のみが接地した状態にすることにより、旋回可能にする。
【0036】
また、昇降フレーム5は、図10に示すように、感知バネ21を介して、機体フレーム4に対して吊り下げ支持されている。感知バネ21の前記支持の強さは、感知バネ強度調節手段22により調節可能になっている。本例の感知バネ強度調節手段22は、機体フレーム4に対する感知バネ21の上端部の支持高さをネジ22aで調節することにより、前記支持強さを調節するように構成されている。
【0037】
そして、昇降フレーム5は、除草部3が圃場に接触して雑草Wを除草可能な除草位置と、除草部3が圃場の上方に待避する非除草位置との間で前記昇降自在に支持されるとともに、除草部係止手段23によって前記除草位置と前記非除草位置のいずれかの位置に係止可能に構成されている。
【0038】
エンジン7は、その動力が、減速ミッション8、動力伝動機構としてのギヤ伝動機構及び主車輪駆動用チェーン伝動機構25を介して主車輪6に伝動されるとともに、減速ミッション8、動力伝動機構としてのギヤ伝動機構及び除草部駆動用チェーン伝動機構26を介して除草部3に伝動されるように構成されている。この構成により、本例の除草機1では主車輪6の回転と、除草部3におけるブラシ36(後述)の揺動とを連動させることにより、除草時における走行機体2の進行速度と、ブラシ36の揺動速度とを連動させるように構成されている。なお、本例では、前記動力伝動機構としてギヤ伝動機構及びチェーン伝動機構(25、26)を採用しているが、例示であって、特に限定されず、フレキシブル軸伝動機構等の他の動力伝動機構を適宜採用することができる。
【0039】
ハンドル9には、エンジン7のスロットルレバー27と、ロック金具15を操作するためのロックレバー17と、エンジン7の動力の除草部3への伝動を入切する除草クラッチレバー28と、エンジン7の動力の主車輪6への伝動を入切する走行クラッチレバー29とが設けられている。ロックレバー17、除草クラッチレバー28及び走行クラッチレバー29には、レバーを握った状態でロックしたり、該ロックを解除したりするロック手段がそれぞれ設けられている。
【0040】
左右一対の補助車輪13は、図6及び図7に示すように、除草部3に対して補助車輪支軸30を介して上下に回動自在に支持された左右一対の脚部31の先端にそれぞれ回転自在に設けられており、圃場に接地して除草部3及び表面追従部40(後述)を圃場の上方に位置させる走行位置と、圃場の上方に待避するとともに、除草部3及び前記表面追従部を圃場に接触させる非走行位置との間で除草部3に対して脚部31を介して昇降自在に支持されている。そして、両補助車輪13は、補助車輪係止手段32によって前記走行位置及び前記非走行位置のいずれかの位置に係止可能に構成されている。本例の補助車輪係止手段32は、補助車輪支軸30を介して脚部31に連結され、該脚部31の回動角度を調節することにより補助車輪13の高さ位置を調節する補助車輪位置切替レバー32aと、該補助車輪位置切替レバー32aの回動角度を固定するための固定手段32bとにより構成されている。
【0041】
除草部3は、左右方向に延びるブラシフレーム35と、該ブラシフレーム35の前後にそれぞれ配設された一対のブラシ36、36と、ブラシフレーム35に対して一対のブラシ36、36を左右に揺動させる揺動駆動機構37とを備えており、前側が走行機体2に対して昇降自在に支持され、後ろ側にブラシ36に沿って設けられた表面追従部40を備えている。ブラシ36は、左右方向に延びるブラシ取付座38を備え、該ブラシ取付座38の底面には、多数の線材39が下向きに突出させて配されている。本例の揺動駆動機構37は、エンジン7の回転力を、クランク機構を用いて左右方向への揺動に変換するように構成されている。そして、本例の除草機1では、走行機体2により植付苗Pの条方向に沿って進行しているときに、除草部3によりブラシ36が揺動されることにより、線材39の先端で圃場の雑草Wを除草するように構成されている。
【0042】
ブラシ36は、図11に示すように、ブラシ中央部36aと、その左右両側にそれぞれブラシ接続金具36cを介して取り付けられたブラシ端部36b、36bとを備え、該ブラシ端部36bが取り外し可能に構成されている。そのため、ブラシ36は、ブラシ端部36bを取り外してブラシ中央部36aのみで使用したり、ブラシ端部36bをその左右方向の長さが異なるものに交換して使用したりすることができるように構成されている。ブラシフレーム35は、図11に示すように、ブラシフレーム中央部35aと、その左右両側にそれぞれ取り付けられたブラシフレーム端部35b、35bとを備え、ブラシフレーム中央部35aに対するブラシフレーム端部35bの左右方向への取付位置が調節可能に構成されている。
【0043】
表面追従部40(本例ではフロートとして具体化)は、図4及び図5に示すように、除草部3の後部に対して平行リンク41を介して昇降自在に支持されている。平行リンク41は上下一対のリンク41a、41bにより構成されており、下側のリンク41bにおける除草部側の支点はリンク支軸41cに連結されている。そして、表面追従部40は表面追従部高さ位置調節手段42によって除草部3の後部に対する高さ位置が調節可能に構成されている。表面追従部高さ位置調節手段42は、リンク支軸41cに連結され、該平行リンク41の回動角度を調節することにより表面追従部40の高さ位置を調節する表面追従部高さ位置調節レバー42aと、該高さ位置調節レバー42aの回動角度を固定するための固定手段42bとにより構成されている。
【0044】
本例の除草機1の使用方法について説明する。
(1)除草機1の移動時には、ロックレバー17を握ることにより、ロック金具15を前方に回動させて、平行リンク11が上下に昇降自在な状態にしておき、その状態でハンドル9を上方に持ち上げると、機体フレーム4に対して昇降フレーム5が相対的に下がるので、ロックレバー17を解放することにより、ロック金具15を後方に回動させ、ロック金具15の下フック15bにリンク連結金具12を係止させ、ハンドル9を元の高さに戻す(図9(a)参照)。これにより、昇降フレーム5を下降位置に固定する。次いで、補助車輪係止手段32を操作して、補助車輪13を走行位置に固定する(図7(a)参照)。すると、主車輪6及び補助車輪13で圃場が走行可能な状態になる。
(2)除草機1の除草時には、ロックレバー17を握った状態でロックすることにより、ロック金具15を前方に回動させて、平行リンク11が上下に昇降自在な状態にしておく(図9(b)参照)。次いで、補助車輪係止手段32を操作して、補助車輪13を非走行位置に固定する(図7(b)参照)。すると、除草部3及び表面追従部40を圃場に接触させた、除草可能な状態になる(図1参照)。さらに、表面追従部高さ位置調節手段42により、表面追従部40の高さ位置を適宜調節する(図5参照)とともに、感知バネ強度調節手段22により感知バネ21の支持の強さを調節する(図10参照)。
(3)除草時における走行機体2の旋回時には、ロックレバー17を握ることにより、ロック金具15を前方に回動させて、平行リンク11が上下に昇降自在な状態にしておき、その状態でハンドル9を下方に押し下げると、機体フレーム4に対して昇降フレーム5が相対的に上がるので、ロックレバー17を解放することにより、ロック金具15を後方に回動させ、ロック金具15の上フック15aにリンク連結金具12を係止させ、ハンドル9を元の高さに戻す(図9(c)参照)。これにより、昇降フレーム5を上昇位置に固定する。すると、主車輪6のみが接地した状態の旋回容易な状態になる。
【0045】
以上のように構成された本例の除草機1は、圃場を走行可能に構成された走行機体2に支持された除草部3を備え、該除草部3は、多数の線材39を下向きに突出させて配したブラシ36を走行機体2の進行方向と交差する左右方向に揺動させるように構成されており、走行機体2により植付苗Pの条方向に沿って進行しているときに、除草部3によりブラシ36が揺動されることにより、線材39の先端で圃場の雑草を除草するように構成されているものであって、除草時における走行機体2の進行速度と、ブラシ36の揺動速度とを連動させるように構成されている。
この構成によれば、走行機体2の進行とブラシ36の左右への揺動とによって、植付苗Pやその根張り部分を倒したり損傷したりしないで、生育初期の雑草Wのみを掻き取るように、予め走行機体2の進行速度とブラシ36の揺動速度との関係を、ブラシ36、前記圃場、植付苗P、雑草W等の種類や状態等に応じて適宜設定しておくことができる。そのため、例えば、前記進行速度に対して前記揺動速度が速すぎるために植付苗Pを損傷してしまったり、その逆に前記進行速度に対して前記揺動速度が遅すぎるために雑草Wを十分に掻き取ることができなかったりという不具合を防止できる。
【0046】
また、本例の除草機1としては、ブラシ36は、ブラシ中央部36aと、その左右両側にそれぞれ取り付けられたブラシ端部36b、36bとを備え、該ブラシ端部36bが交換可能に構成されている。
この構成によれば、圃場や植付苗P等の状態に応じた左右方向の長さを備えるブラシ端部36bをブラシ中央部36aに取り付けることにより、適宜除草幅を変更することができる。
【0047】
また、除草部3は、前後にフロートを備える従来例とは異なり、前記後部に表面追従部40を備えているだけなので、構造をシンプルにすることができるとともに、該後部における表面追従部40の高さ位置を表面追従部高さ位置調節手段42により調節するだけで、ブラシ36における線材39の先端部の圃場への挿入深さを調節することができる。
【0048】
また、本例の除草機1としては、走行機体2は、一輪の主車輪6を備え、除草部3は、左右一対の補助車輪13を備え、該左右一対の補助車輪13は、圃場に接地して除草部3及び表面追従部40を圃場の上方に位置させる走行位置と、圃場の上方に待避するとともに、除草部3及び表面追従部40を圃場に接触させる非走行位置との間で除草部3に対して昇降自在に支持されるとともに、補助車輪係止手段32によって前記走行位置及び前記非走行位置のいずれかの位置に係止可能に構成されている。
この構成によれば、非除草時(移動時)は、両補助車輪13を前記走行位置に係止することにより、主車輪6及び両補助車輪13により走行自在な状態にすることができる。一方、除草時は、両補助車輪13を前記非走行位置に係止することにより、一輪の主車輪6が接地するとともに表面追従部40が圃場に接触し、その間で除草部3におけるブラシ36の先端が圃場に挿入されるようにすることができる。そして、除草時は、主車輪6が一輪であるため、該主車輪6の接地箇所では、該主車輪6を中心に走行機体2を左右へ傾斜自在であるため、ブラシ36に沿って設けられた表面追従部40の接触箇所の傾斜に応じてブラシ36を傾斜させることができる。
【0049】
また、本例の除草機1としては、除草部3は、圃場に接触して雑草Wを除草可能な除草位置と、圃場の上方に待避する非除草位置との間で前記昇降自在に支持されるとともに、除草部係止手段23によって前記除草位置と前記非除草位置のいずれかの位置に係止可能に構成されている。
この構成によれば、除草部3を前記非除草位置に係止させることにより、圃場で走行機体2を容易に旋回させることができる。
【0050】
また、本例の除草機1としては、走行機体2の機体フレーム4に対して除草部3を吊り下げ支持する感知バネ21と、該感知バネ21の前記支持強さを調節する調節手段22とを備えている。
この構成によれば、走行機体2の機体フレーム4に対して除草部3が感知バネ21を介して吊り下げ支持されているとともに、その支持強さが調整可能であるため、圃場の硬軟や植付苗Pの生長・種類等の状態に応じて圃場に対する除草部3の下方への押圧力を適宜調節できる。
【0051】
さらに、本例の除草機1としては、除草部3は、機体フレーム4に対して相対的に昇降自在に支持されている。
この構成によれば、除草中に走行機体2が前後に傾斜した場合でも、除草部3が機体フレーム4に対して昇降し、圃場への接触を維持させることができるので、ブラシ36の圃場への挿入深さを安定させることができる。
【0052】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)本発明の除草機を畑用の除草機として具体化し実施すること。
(2)本発明の除草機を乗用式に構成すること。
(3)除草時における走行機体2の進行速度とブラシ36の揺動速度との関係を変更できるように構成すること。例えば、前記動力伝動機構におけるギヤを交換又は組換えできるようにしたり、前記動力伝動機構に変速機構を介装したりすることが挙げられる。
【符号の説明】
【0053】
1 除草機
2 走行機体
3 除草部
4 機体フレーム
5 昇降フレーム
6 主車輪
7 エンジン
8 減速ミッション
9 ハンドル
11 平行リンク
11a リンク
11b リンク
12 リンク連結金具
13 補助車輪
15 ロック金具
15a 上フック
15b 下フック
16 ロックバネ
17 ロックレバー
21 感知バネ
22 感知バネ強度調節手段
22a ネジ
23 除草部係止手段
25 主車輪駆動用チェーン伝動機構
26 除草部駆動用チェーン伝動機構
27 スロットルレバー
28 除草クラッチレバー
29 走行クラッチレバー
30 補助車輪支軸
31 脚部
32 補助車輪係止手段
32a 補助車輪位置切替レバー
32b 固定手段
35 ブラシフレーム
35a ブラシフレーム中央部
35b ブラシフレーム端部
36 ブラシ
36a ブラシ中央部
36b ブラシ端部
36c ブラシ接続金具
37 揺動駆動機構
38 ブラシ取付座
39 線材
40 表面追従部
41 平行リンク
41a リンク
41b リンク
41c リンク支軸
42 表面追従部高さ位置調節手段
42a 位置調節レバー
42b 固定手段
F 機体前側
P 植付苗
W 雑草
図1
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図3
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図12