(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】構造物用枠材の連結構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/58 20060101AFI20240401BHJP
F16B 7/18 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
E04B1/58 506F
F16B7/18 D
(21)【出願番号】P 2020158600
(22)【出願日】2020-09-23
【審査請求日】2023-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000136170
【氏名又は名称】株式会社ピカコーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】阿部 史日呼
【審査官】荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-061302(JP,A)
【文献】実開昭63-044904(JP,U)
【文献】特開平05-118307(JP,A)
【文献】特開2016-156390(JP,A)
【文献】特開2010-014209(JP,A)
【文献】特開2019-129856(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0094422(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/58
F16B 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの長尺の枠材相互を直角に連結固定する構造物用枠材の連結構造であって、
第1枠材の側面部に沿って延設された溝部に掛合可能な掛合部材と、
第2枠材の端面部相互間に延設された中空部に挿通可能な筒状のスリーブ部材と、
前記スリーブ部材に前記第2枠材を固定させるボルト部材とを備え、
前記掛合部材は、
前記スリーブ部材の筒内空部に挿通可能な支軸部と、
前記支軸部の一端部に設けられ、前記溝部の内側面に設けられたフランジ部に前記溝部の内側から掛合可能な引掛け部と、
前記支軸部の他端部に設けられ、前記スリーブ部材の周壁に設けられた切欠部に掛合可能な突起部と、を備え、
前記支軸部を前記筒内空部に挿通させるとともに、前記スリーブ部材を前記中空部に挿通させ、且つ前記突起部を前記切欠部に掛合させ、前記引掛け部を前記フランジ部に掛合させた状態で、前記スリーブ部材に前記第2枠材を前記ボルト部材により固定させるように構成した、構造物用枠材の連結構造。
【請求項2】
前記スリーブ部材は、一端部に設けられ、前記溝部に嵌挿可能な爪部を備えた、請求項1に記載の構造物用枠材の連結構造。
【請求項3】
前記スリーブ部材は、外周面に設けられ、前記中空部の内周面に設けられた被嵌合部に嵌合可能な嵌合部を備えた、請求項1または2に記載の構造物用枠材の連結構造。
【請求項4】
前記突起部は、前記支軸部を前記筒内空部に挿通させたときに、前記スリーブ部材の外周面より外側に突出し、前記中空部の内周面に設けられた内溝に嵌挿可能に構成された、請求項1から3のいずれか1項に記載の構造物用枠材の連結構造。
【請求項5】
前記スリーブ部材は、他端部に設けられ、前記ボルト部材を螺合接続可能なネジ孔を備え、
前記ボルト部材は、前記ネジ孔に螺合接続されたときに、前記第2枠材の他端面部に外側から当接掛合可能なヘッド部を備えた、請求項1から4のいずれか1項に記載の構造物用枠材の連結構造。
【請求項6】
前記第2枠材の他端面部に連設され、前記ボルト部材を前記他端面部の外側から被蓋可能なキャップ部材を備えた、請求項5に記載の構造物用枠材の連結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場の仕切壁や架台、棚などの構造物を組立形成するのに用いられる構造物用枠材の連結構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
押出成形等により一方向に連続して形成される2つの長尺の枠材相互を連結固定させる構造として、第1枠材の側面部に沿って設けられた溝部に掛合部材を挿通掛合させ、ボルト部材によって第2枠材に連結固定させることで、第1枠材の側面部に第2枠材を直角に連結支持させるように構成されたものが知られている(例えば、特許文献1~4)。
【0003】
特許文献1の構造物用枠材の連結構造は、2つのT字状の掛合部材と、ボルト部材とを備えており、第1枠材の側面部に沿って設けられた溝部に掛合部材の端部の引掛け部をそれぞれ挿通嵌合させるとともに、第2枠材の対向する側面相互の溝部に沿って掛合部材の本体部を挿通させ、この状態で両掛合部材相互をボルト部材によって連結させることで、第1枠材の側面部に第2枠材を直立固定させるように構成されている。
【0004】
特許文献2~4の構造物用枠材の連結構造は、半円柱状またはC字状の駒部材と、板状またはT字状の掛合部材と、ボルト部材とを備えており、第1枠材の側面部に設けられた孔部に駒部材を嵌挿させるとともに、第1枠材の溝部に掛合部材を挿通掛合させ、この状態でボルト部材を第2枠材の溝部に沿って挿通させ、ヘッド部を駒部材の孔部又は切欠部に掛合させるとともに、掛合部材に螺合接続させることで、第1枠材の側面部に第2枠材を直立固定させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-063707号
【文献】特開2005-290771号
【文献】特開2000-64437号
【文献】特開平7-26636号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1~4の構造物用枠材の連結構造は、2つの掛合部材またはボルト部材を、第2枠材の対向する2つの側面の溝部に沿ってその外側から挿入させるように構成されているため、ボルト部材を掛合部材に連結させる際に、掛合部材が第2枠材の側面外側、即ち、第1枠材の溝部の延長方向にずれたり外れたりし易く、枠材の組み付け状態にばらつきが生じたり、組み付け作業に手間がかかったりする問題があった。また、これらのものでは、第2枠材の溝部に沿って、駒部材や掛合部材、ボルト部材などが露出して配されるから、外観を損なう問題もあった。
【0007】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、2つの長尺の枠材相互を、外観を損なうことなく適切且つ容易に連結可能な構造物用枠材の連結構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の構造物用枠材の連結構造は、以下の技術的手段を講じている。
【0009】
本発明は、2つの長尺の枠材相互を直角に連結固定する構造物用枠材の連結構造であって、
第1枠材の側面部に沿って延設された溝部に掛合可能な掛合部材と、
第2枠材の端面部相互間に延設された中空部に挿通可能な筒状のスリーブ部材と、
前記スリーブ部材に前記第2枠材を固定させるボルト部材とを備え、
前記掛合部材は、
前記スリーブ部材の筒内空部に挿通可能な支軸部と、
前記支軸部の一端部に設けられ、前記溝部の内側面に設けられたフランジ部に前記溝部の内側から掛合可能な引掛け部と、
前記支軸部の他端部に設けられ、前記スリーブ部材の周壁に設けられた切欠部に掛合可能な突起部と、を備え、
前記支軸部を前記筒内空部に挿通させるとともに、前記スリーブ部材を前記中空部に挿通させ、且つ前記突起部を前記切欠部に掛合させ、前記引掛け部を前記フランジ部に掛合させた状態で、前記スリーブ部材に前記第2枠材を前記ボルト部材により固定させるように構成したことを特徴としている。
【0010】
好ましくは、前記スリーブ部材は、一端部に設けられ、前記溝部に嵌挿可能な爪部を備えている。
【0011】
好ましくは、前記スリーブ部材は、外周面に設けられ、前記中空部の内周面に設けられた被嵌合部に嵌合可能な嵌合部を備える。
【0012】
好ましくは、前記突起部は、前記支軸部を前記筒内空部に挿通させたときに、前記スリーブ部材の外周面より外側に突出し、前記中空部の内周面に設けられた内溝に嵌挿可能に構成される。
【0013】
好ましくは、前記スリーブ部材は、他端部に設けられ、前記ボルト部材を螺合接続可能なネジ孔を備え、
前記ボルト部材は、前記ネジ孔に螺合接続されたときに、前記第2枠材の他端面部に外側から当接掛合可能なヘッド部を備える。
【0014】
好ましくは、前記第2枠材の他端面部に連設され、前記ボルト部材を前記他端面部の外側から被蓋可能なキャップ部材を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明の構造物用枠材の連結構造によれば、掛合部材の支軸部をスリーブ部材の筒内空部に挿通させるとともに、スリーブ部材を第2枠材の中空部に挿通させ、且つ掛合部材の突起部をスリーブ部材の切欠部に掛合させ、さらに掛合部材の引掛け部を第1枠材の溝部のフランジ部に掛合させた状態とし、この状態で、スリーブ部材に第2枠材をボルト部材によって固定させるから、そのボルト部材の固定作業を行う際に、掛合部材が第2枠材からずれたり外れたりし難い。これにより、枠材相互を適切に連結固定させることができる。また、組み付け作業時の手間も軽減できる。しかも、このものでは、掛合部材の支軸部がスリーブ部材の筒内空部に挿通され、且つスリーブ部材が第2枠材の中空部に挿通されるように構成されており、掛合部材やスリーブ部材が第2枠材の外部に露出しないから、その周辺部の外観も損なわない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態の構造物用枠材の連結構造を示す斜視分解図である。
【
図2】実施形態の構造物用枠材の連結構造を示す背面視分解図である。
【
図3】実施形態の構造物用枠材の連結構造を示す背面視一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係る構造物用枠材の連結構造を、図面に基づき説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を具体化した一例であって、その具体例をもって本発明の構成を限定するものではない。
【0018】
図1~
図3に示すように、本実施形態の構造物用枠材の連結構造は、2つの長尺の枠材1,2を直角に組み合わせて連結固定するものであって、一方の第1枠材(以下、「支持枠」という)1の側面部10に沿って延設された溝部12に掛合可能な掛合部材としてのロックピン3と、他方の第2枠材(以下、「連結枠」)2の端面部21A,21B相互間に延設された中空部23に挿通可能なスリーブ部材としての中枠4と、中枠4を連結枠2に固定させるボルト部材5と、連結枠2の他端面部21Bを被蓋するキャップ部材6とを備えている。
【0019】
支持枠1および連結枠2はいずれも、アルミニウムやマグネシウム合金などの金属材料を押出成形により一方向に連続して形成される断面略正方形状の部材であり、支持枠1の一の側面部10に連結枠2の一端面部21Aを当接させた状態で連結固定される。
【0020】
なお、以降の説明においては、支持枠1の延長方向(
図2および
図3に示す図の表示面に対して垂直に交差する方向)を本連結部における前後方向、連結枠2の延長方向(同図の上下方向)を本連結部における上下方向、支持枠1および連結枠2の延長方向にそれぞれ直交する方向(同図の左右方向)を本連結部における左右方向とする。
【0021】
図1~
図4に示すように、支持枠1の4つの側面部10にはそれぞれ、支持枠1の端面部11A,11B相互間に亘って支持枠1の延長方向に連続する断面略コ字状の溝部(以下、「支持枠溝部」という)12が形成されている。支持枠1の中心部には、端面部11A,11B相互間に亘って支持枠1の延長方向に連続する断面略円形状の中空部(以下、「支持枠中空部」という)13が形成されている。
【0022】
図4に示すように、支持枠溝部12は、側面部10における長縁相互間の中央部に設けられている。支持枠溝部12の対向する両内側面にはそれぞれ、上記中央部に向かって突出するフランジ部14が形成されている。フランジ部14は、支持枠溝部12の開口側の端縁部に沿って形成されており、これらフランジ部14の端面相互の間隙Sが支持枠溝部12の開口部となる。
【0023】
支持枠中空部13は、端面部11A,11Bにおける上下左右の側縁相互間の中央部、即ち、4つの支持枠溝部12の底部構成壁で囲われた領域の中心位置に設けられている。
【0024】
図1~
図3、および
図5に示すように、連結枠2の4つの側面部20にはそれぞれ、連結枠2の端面部21A,21B相互間に亘って連結枠2の延長方向に連続する断面略コ字状の溝部(以下、「連結枠溝部」という)22が形成されている。連結枠2の中央部には、端面部21A,21B相互間に亘って連結枠2の延長方向に連続する断面略円形状の中空部(以下、「連結枠中空部」という)23が形成されている。連結枠2の4つのコーナー部にはそれぞれ、端面部21A,21B相互間に亘って連結枠2の延長方向に連続する
断面略矩形状の肉抜き部24が形成されている。
【0025】
図5に示すように、連結枠溝部22は、側面部20における長縁相互間の中央部に設けられている。連結枠溝部22の対向する両内側面にはそれぞれ、上記中央部に向かって突出するフランジ部25が形成されている。フランジ部25は、連結枠溝部22の開口側の端縁部に沿って形成されている。
【0026】
連結枠中空部23は、端面部21A,21Bにおける前後左右の側縁相互間の中央部、即ち、4つの連結枠溝部22の底部構成壁で囲われた領域の中心位置に設けられている。
【0027】
連結枠中空部23の内周面230には、ロックピン3の支軸部30に設けられた掛合ピン32の被嵌合部として、連結枠2の各側面部20の中央部、即ち、連結枠溝部22に向かって凹没する4つの断面略コ字状の第1内溝26と、中枠4の外周面40に設けられた突起44の被嵌合部として、連結枠2の各コーナー部、即ち、肉抜き部24に向かって凹没する4つの断面略コ字状の第2内溝27とが設けられている。これら内溝26,27はいずれも、端面部21A,21B相互間に亘って連結枠2の延長方向に連続して形成されている。
【0028】
図1~
図3、および
図6に示すように、ロックピン3は、中枠4の筒内空部43に挿通可能な略円柱状の支軸部30と、支軸部30の一端部の周面から外向き対角方向に突出して設けられる略四角柱状の引掛け部31と、支軸部30の他端部の周面から外向きに突出して設けられる略円柱状の突起部(以下、「掛合ピン」という)32とを備えている。
【0029】
なお、本実施形態では、ロックピン3は、ステンレスやアルミニウムなどの金属材料により形成されるが、支持枠1と中枠4とを所望の強度で連結固定可能であれば、高強度高弾性率を有する合成樹脂やセラミックなど、その形成材料に何ら限定されない。
【0030】
支軸部30は、支持枠溝部12の間隙Sの幅寸法(以下、「溝開口幅」という)S1と略同一の直径に形成されている。引掛け部31は、前後幅D1が支軸部30の直径と略同一に形成され、左右幅W1が溝開口幅S1より大きく形成されている。従って、引掛け部31は、その長手方向(左右方向)を支持枠溝部12の延長方向と一致させることで(
図1および
図2参照)、支持枠溝部12に側面部10の外側から挿入させることができる。また、上記のように支持枠溝部12に挿入させた後、支軸部30を中心として左右に回動させることで、フランジ部14に支持枠溝部12の内側から掛合させることができる(
図3参照)。
【0031】
掛合ピン32は、支軸部30の周面から引掛け部31の長手方向と同方向に突出形成されている。従って、引掛け部31を支持枠溝部12に挿入させるとき、掛合ピン32は、支持枠溝部12の延長方向と同じ方向(ここでは、前方または後方)に延設される(
図1および
図2参照)。また、引掛け部31を支持枠溝部12内で略90度回動させてフランジ部14に掛合させたとき、掛合ピン32は、支持枠溝部12の延長方向と直交する方向(ここでは、右方または左方)に延設される(
図3参照)。
【0032】
掛合ピン32の突出長さ(支軸部30の中心から掛合ピン32の先端部までの寸法)L1は、中枠4の直径より大きく、且つ連結枠中空部23の中心から第1内溝26の底部までの寸法H2より小さく形成されている。また、掛合ピン32の直径は、連結枠中空部23の内周面230に設けられた第1内溝26の幅寸法S2と略同一に形成されている。従って、中枠4の筒内空部43に支軸部30を挿通させ、且つ連結枠中空部23に中枠4を挿通させたとき、掛合ピン32は、中枠4の外周面40より外側に突出し、第1内溝26に嵌挿される(
図3参照)。これにより、支軸部30に対する連結枠2の周方向への回動
が阻止される。
【0033】
図1~
図3、および
図7に示すように、中枠4は、アルミニウムやマグネシウム合金などの金属材料を押出成形により一方向に連続して形成される断面略C字状の筒体であり、その外周面40には、端部41A,41B相互間に亘って中枠4の延長方向に連続する細幅のスリット部42が形成されている。
【0034】
筒内空部43の内径は、支軸部30の外径と略同一に形成されており、筒内空部43に支軸部30を挿通させることで、中枠4は、支軸部30に対してガタツキなく環装保持される。一方、中枠4の外径は、連結枠中空部23の内径と略同一に形成されており、中枠4を連結枠中空部23に挿通させることで、連結枠2は、中枠4に対してガタツキなく環装保持される。
【0035】
スリット部42は、掛合ピン32の直径より大きな開口幅に形成されており、中枠4の筒内空部43に支軸部30を挿通させる際、掛合ピン32は、スリット部42に沿って挿通される(
図2参照)。
【0036】
中枠4の外周面40には、連結枠中空部23の第2内溝27に嵌合可能な嵌合部として、連結枠中空部23の内周面230に設けられた4つの第2内溝27に対向する位置にそれぞれ、端部41A,41B相互間に亘って中枠4の延長方向に連続するリブ状の突起(以下、「外リブ」という)44が形成されている。
【0037】
外リブ44は、連結枠中空部23の第2内溝27と略同一の断面形状を有しており、連結枠中空部23に中枠4を挿通させたとき、外リブ44が第2内溝27に沿って嵌挿される。これにより、中枠4に対する連結枠2の周方向への回動が阻止される。
【0038】
中枠4の一端部41Aには、支持枠1の延長方向に突出する爪部45が形成されている。爪部45は、支持枠溝部12の溝開口幅S1と略同一幅に形成されており、支軸部30に中枠4を環装させる際、爪部45を支持枠溝部12の間隙Sに嵌挿させることで、中枠4は、支持枠1の側面部10に対して周方向への回動が阻止された状態で起立保持される。
【0039】
爪部45は、一端部41Aの中心を挟んでスリット部42の対角位置に設けられている。従って、爪部45を支持枠溝部12の間隙Sに嵌挿させたとき、スリット部42は、支持枠溝部12の延長方向の一方側(爪部45と反対側)に面して配される。
【0040】
中枠4の周壁における一端部41A寄りの位置には、スリット部42の一方の内側縁部から周方向に延長する切欠部46が形成されている。切欠部46は、掛合ピン32の直径と略同一の幅寸法に形成されており、上記のように中枠4を支軸部30に環装させ、支持枠1の側面部10に起立保持させた状態から、ロックピン3を支軸部30の周方向に略90度回動させることで、掛合ピン32が切欠部46に挿通掛合される。
【0041】
図2に示すように、中枠4の他端部41Bには、ボルト部材5を筒内空部43に中枠4の延長方向から螺合接続させるためのネジ孔47が形成されている。ボルト部材5は、一端にネジ軸50より大径の薄肉円板状のヘッド部51を備えた極低頭六角穴付きボルトであり、中枠4に連結枠2が環装された状態で、ネジ孔47に螺合接続させることで、ヘッド部51が連結枠2の他端面部21Bに外側から掛合する。これにより、中枠4に対して連結枠2が抜け止め状態で固定される。
【0042】
なお、本実施形態では、ボルト部材2は、ステンレスやアルミニウムなどの金属材料に
より形成されるが、連結枠2と中枠4とを所望の強度で連結固定可能であれば、高強度高弾性率を有する合成樹脂やセラミックなど、その形成材料に何ら限定されない。
【0043】
図1~
図3に示すように、ネジ軸50の外周には、平座金52およびバネ座金53が環装されており、ボルト部材5を連結枠2の他端面部21Bに螺合接続させたとき、ヘッド部51は、連結枠2の他端面部21Bに平座金52およびバネ座金53を介して押接掛合される。
【0044】
図1~
図3、および
図8に示すように、キャップ部材6は、連結枠2の端面部21A,21Bと略同一の外周形状に形成されており、連結枠2の他端面部21Bの略全面を覆うようにして連結される。キャップ部材6の下面部61の4つのコーナー部にはそれぞれ、連結枠2のコーナー部に設けられた肉抜き部24に嵌挿され、連結枠2の他端面部21Bに対してキャップ部材6を抜け止め状態で保持可能な突片62が形成されている。
【0045】
キャップ部材6の中央部には、連結枠2の他端面部21Bに螺合接続されたボルト部材5のヘッド部51に、ボルト部材5の締め付け用の工具をキャップ部材6の外側から挿通可能とする貫通孔63が形成されている。これにより、キャップ部材6を取り外すことなく、ボルト部材5の締め直しをすることができる。
【0046】
本実施形態の構造物用枠材の連結構造において、枠材1,2相互を連結固定させる手順について説明する。まず、ロックピン3の引掛け部31を支持枠溝部12の所定の位置にその外側から挿通させる。このとき、支軸部30は、支持枠溝部12からその外側へ突出した状態で保持される。また、掛合ピン32は、支持枠溝部12の延長方向と同方向に延出される。
【0047】
次に、上記支軸部30に対して中枠4を、掛合ピン32がスリット部42に挿通され、且つ爪部45が支持枠溝部12の間隙Sに嵌挿される向きで環装させる。これにより、中枠4が支持枠1の側面部10に起立状態で保持される。なお、このとき、掛合ピン32は、スリット部42を通じて中枠4の外周面40より外側に突出している。
【0048】
そしてこの状態で、掛合ピン32を支軸部30の周方向に略90度回動させて、中枠4の切欠部46に挿通掛合させれば、中枠4がロックピン3に対して抜け止め状態で保持される。またそれに合わせて、ロックピン3の引掛け部31が支持枠溝部12の内部で回動し、フランジ部14に掛合される。これにより、中枠4が支持枠1の側面部10に対して直角に支持される。
【0049】
さらに、上記中枠4に対して連結枠2を、各外リブ44がそれぞれ第2内溝27に嵌挿される向きで環装させる。これにより、連結枠2が中枠4に対して回り止め状態で保持される。なお、このとき、中枠4の一端面部41A、および連結枠2の一端面部21Aはそれぞれ、支持枠1の側面部10に面接触される。
【0050】
また、このとき、掛合ピン32は、切欠部46を通じて中枠4の外周面40より外側に突出しており、連結枠中空部23の内周面230に設けられた一の第1内溝26に嵌挿される。これにより、中枠4に対する支軸部30の周方向への回動が阻止され、掛合ピン32が切欠部46に掛合された状態で保持される。
【0051】
そして、中枠4の他端部41Bに設けられたネジ孔47に、ボルト部材5を連結枠2の他端面部21B側から螺合接続させれば、中枠4が他端部41B側へ引き寄せられて、切欠部46に掛合されたロックピン5を同方向、即ち、支持枠1の側面部10の外側へ引っ張る。その結果、ロックピン3の引掛け部31がフランジ部14に支持枠溝部12の内側
から押接掛合される。一方、連結枠2は、ボルト部材5のヘッド部51によってその延長方向(軸線方向)へ押されて、一端面部21Aが支持枠1の側面部10に押し付けられる。これにより、両枠材1,2相互が強固に連結固定される。
【0052】
その後、連結枠2の他端面部21Bにキャップ部材6を連結させ、中枠4に接続されたボルト部材5のヘッド部51や平座金52、バネ座金53を他端面部21Bの外側から被蓋する。
【0053】
このように、本実施形態の構造物用枠材の連結構造によれば、まず、ロックピン3の支軸部30を中枠4の筒内空部43に一端部41A側から挿通させるとともに、中枠4を連結枠中空部23に一端面21A側から挿通させ、且つ掛合ピン32を中枠4の周壁に形成された切欠部46に掛合させ、引掛け部31を支持枠溝部12のフランジ部14に掛合させた状態とする。そしてこの状態で、中枠4の他端部41Bにボルト部材5を連結枠2の他端面部21B側から螺合接続させ、中枠4に連結枠2を固定させるから、そのボルト部材5の固定作業を行う際に、ロックピン3が連結枠2からずれたり外れたりし難い。これにより、枠材1,2相互を適切に連結固定させることができるし、組み付け作業時の手間も軽減できる。
【0054】
しかも、このものでは、ロックピン3の支軸部30が中枠4の筒内空部43に挿通され、且つ中枠4が連結枠中空部23に挿通されるように構成されていることで、ロックピン3や中枠4が連結枠2の外部に露出しないから、その周辺部の外観も損なわれない。
【0055】
また、このものでは、連結枠2の他端面部21Bに連設されるキャップ部材6によって、中枠4の他端部41Bに接続されたボルト部材5が他端面部21Bの外側から被蓋され、外部に露出しないから、その周辺部の外観も損なわれない。
【0056】
しかも、このものでは、ボルト部材5を中枠4の他端部41Bのネジ孔47に螺合接続させたときに、中枠4がボルト部材5側へ引き寄せられる応力が、ロックピン3に対してその支軸部30の延長方向(軸線方向)に作用するから、引掛け部31とフランジ部14との掛合部周辺が変形したり、ロックピン3が支持枠溝部12からずれたりし難い。これにより、枠材1,2相互をより適切に連結固定させることができる。
【0057】
また、このものでは、ロックピン3の支軸部30を中枠4の筒内空部43に挿通させる際、中枠4の一端部41Aに設けられた爪部45を支持枠溝部12の間隙Sに嵌挿させることで、中枠4の周方向への回動が阻止されるから、支持枠溝部12に対して中枠4に挿通されたロックピン3の向きを合わせる作業の手間もかからない。よって、組み付け作業の手間を一層低減できる。
【0058】
さらに、このものでは、中枠4を連結枠中空部23に挿通させたとき、中枠4の外周面40に設けられた外リブ44が連結枠中空部23の内周面230に設けられた第2内溝27に沿って嵌挿されることで、上記のように回動阻止状態で支持枠1の側面部10に連結支持される中枠4に対して、連結枠2の周方向への回動が阻止されるから、支持枠1と連結枠2との連結向きを合わせる作業の手間もかからない。よって、組み付け作業の手間をより一層低減できる。
【0059】
また、上記のように中枠4を連結枠中空部23に挿通させたとき、ロックピン3の支軸部30に設けられた掛合ピン32が連結枠中空部23の内周面230に設けられた第1内溝26に嵌挿されることで、支軸部30の周方向への回動が阻止されるから、振動や外部応力などによって切欠部46に対する掛合ピン32の掛合状態が容易に解除されるのも防止できる。これにより、枠材1,2相互をより安定して連結固定させることができる。
【0060】
なお、上記実施形態では、支持枠1と連結枠2とが異なる端面形状を有しており、支持枠1の側面部10に連結枠2の一端面部21Aを当接させた状態で連結固定させるように構成されたものを説明したが、支持枠1に連結枠2と同一の端面形状(
図5参照)の枠材を用い、それら両枠材1,2を上記のように連結固定させるように構成されたものとしてもよい。
【0061】
また、上記実施の形態では、中枠4の他端部41Bにネジ孔47が設けられており、ネジ孔47にボルト部材5を連結枠2の軸線方向から螺合接続させることで、中枠4に連結枠2を抜け止め状態で固定するように構成されたものを説明したが、中枠4および連結枠2を上記軸線方向に直交する方向からボルト部材およびナット部材によって連結させることによって、中枠4に連結枠2を抜け止め状態で固定するように構成されたものとしてもよい。
【0062】
また、上記実施の形態では、連結枠中空部23の内周面230に設けられた第2内溝27と、中枠4の外周面40に設けられた外リブ44とが、略同一の断面略コ字状に形成されたものを説明したが、中枠4に対する連結枠2の周方向への回動を適切に阻止可能であれば、両者異なる断面形状に形成されてもよいし、円形状や矩形状、曲線状など、その凹凸形状に何ら限定されない。
【0063】
また、上記実施形態では、連結枠中空部23の内周面230に溝状の凹部(第2内溝27)が設けられる一方、中枠4の外周面40にリブ状の凸部(外リブ44)が設けられ、それら凹部および凸部相互が嵌合することで、中枠4に対する連結枠2の周方向への回動が阻止されるように構成されたものを説明したが、連結枠中空部23の内周面230に、被嵌合部としての凸部が設けられる一方、中枠4の外周面40に、嵌合部としての凹部が設けられ、それら凹部および凸部相互が嵌合することで、中枠4に対する連結枠2の周方向への回動が阻止されるように構成されたものとしてもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、ロックピン3の掛合ピン32は、支軸部30の周面から引掛け部31の長手方向と同方向に突出形成されたものを説明したが、中枠4のスリット部42に挿通可能で、且つ連結枠中空部23の第1内溝26に嵌挿可能であれば、その突出方向に何ら限定されない。
【0065】
また、上記実施形態では、連結枠中空部23の内周面230に、第1内溝26が連結枠2の側面部20の中央に向かって凹没形成される一方、第2内溝27が連結枠2のコーナー部に向かって凹没形成されたものを説明したが、第1内溝26にロックピン3の掛合ピン32が適切に嵌挿可能で、且つ第2内溝27に中枠4の外リブ44が適切に嵌挿可能であれば、それら第1内溝26および第2内溝27の凹没方向や数についても何ら限定されない。
【符号の説明】
【0066】
1 支持枠(第1枠材)
2 連結枠(第2枠材)
3 ロックピン(掛合部材)
4 中枠(スリーブ部材)
5 ボルト部材
6 キャップ部材
10 側面部(第1枠材の側面部)
12 溝部(第1枠材の溝部)
14 フランジ部
21A 一端面部(第2枠材の端面部)
21B 他端面部(第2枠材の端面部)
23 中空部(第2枠材の中空部)
26 第1内溝
27 第2内溝
30 支軸部
31 引掛け部
32 掛合ピン(突起部)
40 外周面(スリーブ部材の外周面)
41A 一端部(スリーブ部材の一端部)
41B 他端部(スリーブ部材の他端部)
43 筒内空部
46 切欠部