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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】薬剤分包装置
(51)【国際特許分類】
   A61J 3/00 20060101AFI20240401BHJP
   B65B 1/30 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
A61J3/00 310F
A61J3/00 310E
B65B1/30 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020164023
(22)【出願日】2020-09-29
(65)【公開番号】P2022056166
(43)【公開日】2022-04-08
【審査請求日】2023-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000151472
【氏名又は名称】株式会社トーショー
(74)【代理人】
【識別番号】100107928
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正則
(72)【発明者】
【氏名】大村 司郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 繁幸
(72)【発明者】
【氏名】深津 邦夫
【審査官】山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-006132(JP,A)
【文献】特開2020-039829(JP,A)
【文献】特開2020-028513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 3/00
B65B 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に収容した薬剤を放出する薬剤収容容器から放出された薬剤を収容する薬剤計量容器の重量を測定することにより、前記薬剤計量容器に収容された薬剤の重量を測定する薬剤計量部と、
前記薬剤が収容された薬剤計量容器から薬剤を放出する薬剤放出部と、
前記薬剤放出部で放出された薬剤を1包ずつに分包して包装する包装装置と、
装置筐体の前面側に設けられ、前記薬剤収容容器及び前記薬剤計量容器を複数載置可能な容器棚と、
前記容器棚の奥側に設けられ、前記容器棚と、前記薬剤計量部と、前記薬剤放出部との間で、前記薬剤収容容器及び前記薬剤計量容器を移送する容器移送装置と、
前記容器棚の前面に、前記容器棚に載置された一部の前記薬剤収容容器又は前記薬剤計量容器を前面から取出し可能に設けられ、開閉自在な充填扉と、
前記充填扉を閉状態に電気的に施錠する第1の施錠機構と、
前記充填扉と対向した位置の前記容器棚と前記容器移送装置との間に開閉可能に設けられた遮蔽体と、
前記遮蔽体が閉状態であることを検出する検出器と、
前記充填扉の開放が指示されたとき、前記検出器が前記遮蔽体の閉状態を検出しているときのみ前記第1の施錠機構を解錠する制御部と、
を有する薬剤分包装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1の施錠機構が解錠状態であるときに、前記検出器が前記遮蔽体の閉状態が検出されなくなったとき、少なくとも前記容器移送装置の駆動を停止させる、
請求項1に記載の薬剤分包装置。
【請求項3】
前記容器棚の前面に設けられ、開放することにより、容器棚に載置された全ての薬剤収容容器及び薬剤計量容器を取出し可能となる前面扉と、
前記前面扉に設けられ、装置の動作時に前記前面扉の開放を制限する第2の施錠機構と、
を有する請求項1又は請求項2に記載の薬剤分包装置。
【請求項4】
前記容器棚は開閉自在に設けられ、開放時に前記容器移送装置の点検を可能にする開閉機構と、
前記容器棚に設けられ、装置の動作時に前記開閉機構の開放を制限する第3の施錠機構と、
を有する請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の薬剤分包装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、散薬等の薬剤を処方箋に従って服用分毎あるいは所定薬剤量毎の個包に分包する薬剤分包装置において、使用する薬剤収容容器の安全で効率的な取出しと装着とができる扉構造を有する薬剤分包装置に関する。
【背景技術】
【0002】
微紛末から顆粒等の紛体からなる薬剤を服用分毎あるいは所定薬剤量毎の個包に分包する薬剤分包作業においては、事前に当該薬剤の1処方分の重量を人手によって電子天秤にて秤量する作業を薬剤師が実施していた。しかしながら、この秤量作業は神経を使う作業であり時間もかかってしまうので、この秤量作業を自動化することが求められていた。その一つの方法として、特許文献1の如くの自動秤量式の散薬分包機が実用化されている。この装置では、一旦複数の電子処方箋のデータを入力してしまえば、全く係員を介在することなく、連続的に動作することが可能である。従って、係員の負担を大幅に低減することで、調剤業務の効率化に寄与している。
【0003】
この特許文献1では、散薬収容容器と散薬一時保管容器の2種の容器を使用しており、それらの全てが装置前面からアクセス可能な平面配列した棚に載置できることを特徴としている。装置の連続動作に伴って、散薬収容容器の薬剤の不足や、散薬一時保管容器の清掃等へ対応するために、当該容器を装置内から取外したり、容器を装置内に装着する動作が必要となる。
【0004】
そのような容器の取出しや、容器の装着の際には、該当の棚位置をLED表示等で案内し、棚の前扉を開けて、該当の容器を取出し、容器の収容を行う。このとき棚の背面では、容器移送装置が動作している場合があり、棚の内部にまで手を挿入してしまうと、手が容器移送装置に接触する虞があった。
【0005】
そこで、棚の前扉は、容器移送装置が動作中にはロックをかけて手では開けることができないようにして、安全対策を行うようにするが、動作が連続していると、常にロックがかかった状態となり、結局は、装置を停止する処置をしてから扉を開閉するという運用となる。これでは、装置としては連続動作が可能であるにも関わらず、ときどき容器の交換のために装置を停止する必要があり、作業効率が低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許6406785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、散薬等の薬剤を処方箋に従って服用分毎あるいは所定薬剤量毎の個包に分包する薬剤分包装置において使用する薬剤収容容器の安全で効率的な取外しと装填ができる装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、実施形態の薬剤分包装置は、内部に収容した薬剤を放出する薬剤収容容器から放出された薬剤を収容する薬剤計量容器の重量を測定することにより、前記薬剤計量容器に収容された薬剤の重量を測定する薬剤計量部と、前記薬剤が収容された薬剤計量容器から薬剤を放出する薬剤放出部と、前記薬剤放出部で放出された薬剤を1包ずつに分包して包装する包装装置と、装置筐体の前面側に設けられ、前記薬剤収容容器及び前記薬剤計量容器を複数載置可能な容器棚と、前記容器棚の奥側に設けられ、前記容器棚と、前記薬剤計量部と、前記薬剤放出部との間で、前記薬剤収容容器及び前記薬剤計量容器を移送する容器移送装置と、前記容器棚の前面に、前記容器棚に載置された一部の前記薬剤収容容器又は前記薬剤計量容器を前面から取出し可能に設けられ、開閉自在な充填扉と、前記充填扉を閉状態に電気的に施錠する第1の施錠機構と、前記充填扉と対向した位置の前記容器棚と前記容器移送装置との間に開閉可能に設けられた遮蔽体と、前記遮蔽体が閉状態であることを検出する検出器と、前記充填扉の開放が指示されたとき、前記検出器が前記遮蔽体の閉状態を検出しているときのみ前記第1の施錠機構を解錠する制御部と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係る薬剤分包装置の正面図である。
図2】一実施形態に係る薬剤分包装置の前面カバーを取外した状態を示す正面図である。
図3】一実施形態に係る薬剤分包装置の正面断面図である。
図4】一実施形態に係る薬剤分包装置の側断面図である。
図5】一実施形態に係る薬剤収容容器及び薬剤計量容器の斜視図である。
図6】一実施形態の薬剤計量容器の回転機構の斜視図である。
図7】一実施形態の薬剤放出部の側断面図である。
図8】一実施形態の円盤配分装置の斜視図である。
図9】一実施形態の容器載置棚の装置動作中の平面断面図である。
図10】一実施形態の容器載置棚の装置停止中の平面断面図である。
図11】一実施形態の背面シャッタの斜視図である。
図12】一実施形態の電磁ロック機構の概念図である。
図13】一実施形態のタッチディスプレーの画面図である。
図14】一実施形態の薬剤分包装置の制御ブロック図である。
図15】一実施形態の薬剤分包装置の動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態に係る自動計量式の薬剤分包装置を、図面を用いて説明する。図1は実施形態に係る薬剤分包装置1の正面図、図2は実施形態に係る薬剤分包装置1の前面カバーを外した正面図、図3は実施形態に係る薬剤分包装置1の正面断面図、図4は実施形態に係る薬剤分包装置1の側断面図、図5は実施形態に係る薬剤収容容器2及び薬剤計量容器3の斜視図、図6は実施形態に係る薬剤計量容器3の回転機構の斜視図である。また、ここで言う散薬とは、微粒粉から顆粒まで、各々その性状の異なる粉粒体薬剤を意味するものである。
【0011】
自動計量式の薬剤分包装置1で取り扱う薬剤容器は2種類あり、その一つである薬剤収容容器2は、それぞれ個別の散薬を大量に収容するものである。もう一つは薬剤計量容器3であり、薬剤収容容器2から処方箋に従って特定量の散薬を放出し、この放出された散薬の重量を計量しながら薬剤計量容器3に落下収容するものである。薬剤分包装置1ではこの計量された散薬を収容した薬剤計量容器3から、さらに配分円盤に散薬を放出して、処方箋によって指定される包数の個包に分包するものである。
【0012】
ここで、薬剤収容容器2は、特定の薬剤のみを収容する専用容器であるのに対して、薬剤計量容器3も薬剤ごとに専用化すると、薬剤収容容器2と同数の数量が必要となってしまう。その結果、自動計量式の薬剤分包装置1として大型化してしまうので、少ない数の薬剤計量容器3を、各薬剤に対して使い回しするようにしている。
【0013】
薬剤分包装置1は、図1に示すように、筐体4の前面に、ヒンジ701a、701b、701c、701dで保持されて、観音開きができる左扉702aと右扉702bが取り付けられている。そして、それぞれの扉の上部には透明カバー703a、703bが取り付けられていて、扉が閉の状態でも、透明カバー703a、703bを介してその内側が装置前面側から目視可能となっている。薬剤分包装置1の筐体4の前面側には、容器棚5a、5bが設けられ、透明カバー703a、703bを介して容器棚5a、5bに載置された薬剤収容容器2、薬剤計量容器3の一部と、その載置された部位のLED表示705を目視できるようになっている。
【0014】
上記の自動計量及び自動分包を実行するために、筐体4の正面側には、薬剤収容容器2と薬剤計量容器3とを載置・保管することができる左右の容器棚5a,5bが設けられている。容器棚5a,5bの奥側には、これらの容器棚5a,5bと後述の他の装置との間で、薬剤収容容器2と薬剤計量容器3とを移送する容器移送装置6が設けられている。また、図2に示すように、容器棚5a,5bの左右下部には、2台の薬剤計量装置7a、7bが設けられ、容器棚5a,5bの下方には2台の円盤配分装置8a、8bが設けられている。さらに、円盤配分装置8a、8bの下方には、分包用用紙を取付け、後述する上下ホッパ9から落下する1個包分ずつの薬剤を連続して分包する包装装置10が設けられている。
【0015】
薬剤計量装置7a,7bは図2に示すように薬剤放出部500の上に薬剤収容容器2が載置され、薬剤放出部500の下に薬剤計量容器3が配置されて薬剤の放出がなされる。このとき、薬剤計量容器3は薬剤の重量を測定する電子はかり600の上に載置され、薬剤計量容器3と薬剤収容容器2から放出される薬剤との総重量を測定することによって、収容された薬剤の重量を求めるものである。なお、薬剤放出部500については後に詳述する。
【0016】
また、円盤配分装置8a,8bには、薬剤計量装置7a,7bに設けられている薬剤放出部500と同じ薬剤放出部500が設けられている。そして、薬剤計量装置7a,7bで秤量された薬剤が収容された薬剤計量容器3が薬剤放出部500の上に載置され、薬剤放出部500の動作によって薬剤計量容器3から薬剤が放出されるものである。円盤配分装置8a,8bにはそれぞれ2つの薬剤放出部500が設けられている。なお、円盤配分装置8a,8bについては後に詳述する。
【0017】
図3に示すように、円盤配分装置8a、8bの間の上方には後に詳述する薬剤計量容器3を清掃する清掃装置100が設けられている。さらに、包装装置10の下方には、上位のPCサーバ上の電子処方箋システム11から、処方情報を取得して自動計量式の薬剤分包装置1全体を制御する制御部12が設けられている。そして、電子処方箋システム11には薬剤ごとに、使用後の薬剤計量容器3の清掃が必要であるか否かを示す情報を記憶する記憶部11aが設けられている。また、制御部12にも、電子処方箋システム11の記憶部11aから取得した使用後の薬剤計量容器3の清掃が必要であるか否かを示す情報を記憶する記憶部12aが設けられている。
【0018】
さらに、包装装置10の下方には、清掃装置100や他の部位の空気源として、集塵・排気用の吸引装置13a、13bと、高圧空気吹き出し用のコンプレッサ14も具備している。
【0019】
容器棚5a,5bは、正面から見て平面的に配置しているので、薬剤収容容器2と薬剤計量容器3とに装置前面からアクセス可能になっている。また、容器棚5a,5bの背面である奥側に配置されている容器移送装置6は、XYZ軸の電動直交スライド装置であることが好適である。図3及び図4に示すように、筐体4の左右の垂直Z軸6Z1、6Z2に対して上下方向(Z軸方向)にスライド可能に設けられた可動片6X1,6X2が設けられている。これらの可動片6X1,6X2には水平X軸6Xが取付けられている。また、この水平X軸6Xには左右方向(X軸方向)にスライド可能に設けられた可動片6Y1が設けられている。そしてこの可動片6Y1には奥行き方向に延びる前後Y軸6Yが設けられている。さらにこの前後Y軸6Yに対して筐体の前後方向(奥行き方向)に移動可能な可動片6Aを設けている。これによって可動片6Aは、3軸直交移動装置を実現している。
【0020】
さらに、前後Y軸6Yの可動片6Aに180度回転アクチュエータ6Rを取付け、この可動片6Aに電磁石による容器把持機構6Cを取付けている。そして、例えば薬剤計量容器3の把持部3aを容器把持機構6Cによって把持して、薬剤計量容器3を容器棚5a,5b、2台の薬剤計量装置7a、7b、及び2台の円盤配分装置8a、8bとの間で移動させる。さらに、薬剤計量容器3を清掃装置100へ移動する場合には、薬剤計量容器3の開放された上面3bを下向きに回転させて移動することができるものである。
【0021】
図5(a)は、薬剤収容容器2の斜視図で図5(b)は薬剤収容容器2の上蓋2bを開放した状態の斜視図である。また、図5(c)は薬剤計量容器3の斜視図で、この薬剤計量容器3の上面3bは開放されている。さらに図5(d)は薬剤計量容器3を180度回転させて、開放している上面3bを下方に向けた図である。なお、2aは薬剤収容容器2の把持部、3aは薬剤計量容器3の把持部である。図5から判るように、薬剤収容容器2と薬剤計量容器3とは上面に蓋を有するか否かの違いのみで、形状や容器からの散薬の放出機構は同一である。また、把持部2a,3aについても同一であり、容器把持機構6Cによって共通に把持できるようになっている。
【0022】
薬剤収容容器2と薬剤計量容器3の底面にはRFIDタグMが貼り付けられており、それぞれの容器の移動先の各棚番、薬剤放出部500及び薬剤計量部600に取付けられたRFIDリーダ・ライタ(図示せず)との間で情報を読み取ったり、書き込んだりすることができる。これによって、それぞれ薬剤収容容器2と薬剤計量容器3の現在位置が把握できるようになっている。
【0023】
図6は薬剤計量容器3を容器移送装置6の回転アクチュエータ6Rと容器把持機構6Cによって把持している状態の斜視図で、図6(a)は、薬剤計量容器3の開放している上面3bが上向きの状態を、図6(b)は薬剤計量容器3の上面3bが下向きの状態を示している。図6(b)の状態になると、薬剤計量容器3の内部に付着している薬剤が落下する場合があるので、図3及び図6に示すように、筐体4内に落下薬剤受け皿15を設けてある。そして、落下薬剤受け皿15に対向する位置でのみ、薬剤計量容器3を回転アクチュエータ6Rによる下向きへの回転を実行するようにしている。
【0024】
以上の平面配置された容器棚5a,5bおよび3軸直交した電動スライダによる容器移送装置6は、別に多関節ロボット等を利用することで、容器棚の配置の自由度を増すことができるものであり、それは本発明の応用の一例である。
【0025】
図7は実施形態に係る薬剤分包装置1の円盤配分装置8a,8bに於ける薬剤計量容器3から薬剤を放出するための薬剤放出部500の側断面図である。薬剤計量装置7a,7bに於ける薬剤収容容器2からの薬剤放出部500についても同じ構成である。薬剤放出部500は薬剤計量容器3を載置可能な容器載置台510と、容器載置台510に載置された薬剤計量容器3を振動させて薬剤を放出する振動台520とを有する。
【0026】
振動台520は、固定板521と、固定板521の上に複数のコイルスプリング522を介して設置される中間台523とを有する。そして、中間台523の上に複数の板バネ524を介して容器載置台510が取付けられている。中間台523には電磁石525が取付けられており、容器載置台510には磁性を有する鉄板511が、電磁石525とわずかな間隙を有してそれぞれ配置されている。
【0027】
このような構成で、薬剤計量容器3から薬剤を放出するときは、電磁石525に交流電流を印加することにより、鉄板511が電磁石525に引寄せられたり、離れたりする。その結果、容器載置台510が板バネ524を介して中間台523に取付けられているので、容器載置台510が振動を行う。これによって、薬剤計量容器3の排出口3Cから薬剤が少量ずつ落下するものである。
【0028】
図8は、薬剤分包装置1の円盤配分装置8a,8bの斜視図である。円盤配分装置8a,8bは左右2セットの円盤811a,811bを有し、その各々に対して薬剤放出部500を2台配置している。従って、1台の薬剤分包装置1に対して4台の薬剤放出部500a,500b,500c,500d,が設けられている。これらの薬剤放出部500a,500b,500c,500d,に薬剤計量容器3が載置されて、薬剤が円盤811の上に放出されるものである。また、図示しない薬剤切り出し装置が設けられており、円盤811上にドーナツ状に形成された薬剤を1包分ずつ切り出し、図3に示す上下ホッパ9から包装装置10に落下させるものである。この薬剤切り出し装置については、例えば特開2020-340号公報記載のように周知の技術である。
【0029】
なお、100は薬剤計量容器3を清掃する清掃装置である。薬剤の放出を終えた薬剤計量容器3は、装置内での清掃が必要であるときに、容器移送装置6によって把持され、図6(b)に示すように落下薬剤受け皿15の上で180度回転させられ、その後、清掃装置100に被せられた状態で高圧空気を吹き付けるとともに、空気の吸引を行うことにより清掃される。
【0030】
次に、実施形態に係る自動計量式の薬剤分包装置1の要部である容器棚5a,5bについて詳述する。
図9は実施形態の容器棚5a,5bの装置動作中の平面の断面図、図10は実施形態の容器棚5a,5bの装置停止中の平面の断面図、図11は実施形態の安全シャッタ(遮蔽体)709の斜視図、図12は各扉をロックする電磁ロック機構717の概念図である。
【0031】
図1も参照して説明すると、薬剤分包装置1は、筐体4の前面側に容器棚5a、5bが設けられている。この容器棚5a、5bの前面側には図1に示すように、ヒンジ701a、701b、701c、701dで保持されて、観音開きができる左扉702aと右扉702bが取り付けられている。これら、左扉702aと右扉702bを前面扉とも呼ぶ。そして、それぞれの扉の上部には透明カバー703a、703bが取り付けられていて、扉が閉の状態でも、透明カバー703a、703bを介してその内側が装置前面側から目視可能となっている。また、容器棚5a、5bに載置された薬剤収容容器2、薬剤計量容器3の一部と、その載置された部位(以下、棚番とも呼ぶ)のLED表示705も目視できるようになっている。
【0032】
さらに左扉702aと右扉702bの下部には、それぞれタッチ式ディスプレイ704a、704bが取り付けられている。これらのタッチ式ディスプレイ704a、704bは、薬剤分包装置1の操作用に用いるものであり、現在処理中の処方、さらに次以降の処方の順番や、各棚番に載置された薬剤収容容器2の薬剤名称、収容量、等の情報が表示される。通常は装置の動作開始入力をするだけで、指示される処方を順次実行し、薬剤収容容器2内の薬剤の残量不足や、新たな薬剤の薬剤収容容器2が必要なこと、薬剤計量容器3の清掃が必要なこと等のアラームも行うことができる。
【0033】
この左右扉702を図10(a)のように開けると図2のように、上下6段の棚になっていて、各段に8ないし6カ所の容器載置部を有する容器棚5a、5bが設けられている。この容器棚5a、5bは左容器棚5aと右容器棚5bとに分割されている。そしてそれぞれの容器棚5a、5bはヒンジ706a、706bによって開閉自在に構成されており、図10(a)は容器棚5a、5bを閉じた状態を、図10(b)は容器棚5a、5bを開いた状態を示している。容器棚5a、5bを図10(b)に示すように観音開きすることで、容器棚5a、5bの後方に位置する容器移送装置6(図10では図示せず)の保守・点検を行うことができるようになっている。
【0034】
この容器棚5a、5bには、薬剤収容容器2と薬剤計量容器3とのいずれもが載置できるようになっている。これは薬剤収容容器2と薬剤計量容器3の底部の形状を同一としているので、どの棚番位置でも、薬剤収容容器2と薬剤計量容器3のいずれをも載置可能となっている。
【0035】
さらに左扉702aと右扉702bの上部左右には透明板による充填扉707a、707bがそれぞれヒンジ708a、708b、708c、708dで保持されて開閉可能に設けられている。これらの充填扉707a、707bを図9(b)のように開くと、対応する上方3段の棚番に載置された薬剤収容容器2又は薬剤計量容器3にアクセスが可能となる。すなわち、左扉702aと右扉702bを開放すると、装置の前面から薬剤収容容器2又は薬剤計量容器3が取出し可能となっている。
【0036】
一方、容器棚5a、5bの後面側には、充填扉707a、707bの棚番と対向した位置の容器棚5a、5bと容器移送装置6との間に安全シャッタ709a、709b(遮蔽体)が設けられている。これは充填扉707を開いて、薬剤収容容器2と薬剤計量容器3を取外したり、装填する場合に、容器棚5a、5bの後方の開口を閉鎖して、係員の手が入らなくするために設けるものである。通常の動作中は充填扉707a、707bを閉じて、安全シャッタ709a、709bを開いておいて、容器移送装置6が、薬剤収容容器2と薬剤計量容器3とにアクセス可能としてある。
【0037】
図11は安全シャッタ709a、709bの構造を示すもので、安全シャッタ709aと709bは実質的に左右対称形であるので、右側の安全シャッタ709bで説明する。垂直の基板710の上下にボール軸受けによって左右に移動自在なリニアガイド711aと711bとが設けられ、その固定子711は基板710に取付けられている。また、棒状の移動子712はシャッタ面713側に取付けられ、シャッタ面713は左右に移動可能となり、図11(a)が容器棚5bの後方の開口を開放した状態であり、図11(b)が開口を閉鎖した状態を示している。
【0038】
このシャッタ面713を開閉駆動するためのステッピングモータ714が基板710に取付けられ、このステッピングモータ714の軸端のピニオンがシャッタ面713に取付けられたラック715と噛み合うようになっている。そして、ステッピングモータ714の往復回転で、シャッタ面713は左右に移動できるものである。シャッタ面713の開位置と閉位置とにはそれぞれセンサ716a、716b(検出器)が設けられ、このセンサ716a、716bをシャッタ面713が遮ることで、ステッピングモータ714の開動作及び閉動作を停止するように制御される。また、センサ716bは安全シャッタ(遮蔽体)が閉状態であることを検出する検出器を構成している。
【0039】
図12は、電磁ロック機構717で、各開閉部(扉)が閉じた状態で、プランジャ・ソレノイド718に通電されると、プランジャ・ピン719が右方向に移動して相手側の掛け金720に係合する。その結果、各開閉部が閉じた状態となって、係員の手によって開くことができなくなる。一方、プランジャ・ソレノイド718の通電が解除されるとバネ721に付勢されてプランジャ・ピン719が左方向に移動して相手側の掛け金720との係合が解除される。その結果、各開閉部は係員の手による開放が可能となる。722はマイクロスイッチで、掛け金720に取付けられ、プランジャ・ピン719が、このマイクロスイッチ722を押すことで、開閉部がロック状態となっていることを検知するようになっている。
【0040】
図9に示すように、充填扉707a、707bに設けられている電磁ロック機構を717-1(第1の施錠機構)と記す。また、左扉702aと右扉702bに設けられている電磁ロック機構を717-2(第2の施錠機構)と記す。さらに、容器棚5a、5b自体に設けられている電磁ロック機構を717-3(第3の施錠機構)と記す。
【0041】
次に、薬剤分包装置1の制御ブロック図について、図14を参照して説明する。薬剤分包装置1内には制御部12が設けられ、この制御部12には筐体内通信路を介して、包装装置10、容器移送装置6、及び入出力制御部70が接続されている。なお、図14では、本実施形態に関係する主要な物のみを記載し、一部省略して記載してある。また、制御部12はLANを経由して薬局内の処方箋システム11に接続されている。制御部12には処方箋システム11から取得した各種情報を記憶するための記憶部12aが設けられている。
【0042】
入出力制御部70には薬剤計量容器3の重量を計測する計量部600と、薬剤収容容器2又は薬剤計量容器3から薬剤を放出するための放出部500と、薬剤計量容器3を装置内で清掃するための清掃装置100と、薬剤分包装置1の状態を表示したり、各種情報を入力、又は操作を指示入力するためのタッチ式ディスプレイ704が接続されている。
【0043】
さらに、入出力制御部70には扉制御部700が接続されている。この扉制御部700には、容器棚5a、5bと容器移送装置6との間に設けられた安全シャッタ709の開閉を駆動するパルスモータ714の駆動部とシャッタ面713の開閉検出センサ716が接続され、安全シャッタ709の開閉を駆動するとともに、シャッタ面713の開閉状態を検知するようになっている。また、扉制御部700には、左右扉702、充填扉709、及び容器棚5a、5b等の扉に設けられた電磁ロック機構717-1乃至717-3の電磁ソレノイド(プランジャ・ソレノイド)718-1乃至718-3を駆動したり、各扉の施錠状態を検出するセンサ722-1乃至722-3が接続されている。
【0044】
以上のごとくの構成とした自動計量式の薬剤分包装置1の動作の全体の流れを各扉の開閉とロックとの関係で説明する。
【0045】
(S-1)通常運転モード
実施形態に係る自動計量式の薬剤分包装置1には薬剤収容容器2と薬剤計量容器3を合計42ケ載置する容器棚5a、5bの棚番がある。初期状態では、左右の充填扉707a、707bに対応する棚番6ケ所には、薬剤収容容器2も薬剤計量容器3も載置しないで空けて置く。そして、残りの36ケ所に例えば薬剤収容容器2を33ケと薬剤計量容器3を3ケ載置しておき、図示しない主電源を投入する。すると、図13のようにタッチ式ディスプレイ704a、704bに初期操作画面が表示されと共に、各扉の電磁ロック機構717-1乃至717-3をロック状態にする。これによって電磁ロック機構717を取付けた各開閉部は、手で開けることができなくなる。
【0046】
ここで「通常運転」ボタンを押下すると、処方箋情報が入力されたら動作可能な状態で待機すると共に、容器棚5a、5bの各棚番に設けたRFIDリーダによって、各薬剤収容容器2と各薬剤計量容器3のRFIDタグMを読み取る。制御部12は読取ったRFIDタグMの情報、すなわち、各薬剤収容容器2と各薬剤計量容器3の番号を電子処方箋システム11に送信する。あらかじめ電子処方箋システム11では、各薬剤収容容器2に特定の薬剤が何g収容しているかを記録しているので、薬剤分包装置1側にどのような薬剤がそれぞれ何g収容されているかが把握される。
【0047】
この状態で最初の処方箋情報が電子処方箋システム11から制御部12に送られてくると、制御部12は、必要な薬剤が、必要な量だけ薬剤分包装置1側の薬剤収容容器2に収容されていることが確認できれば、当該処方について以下の一連動作が実行開始される。
【0048】
すなわち、処方すべき薬剤が収容されている薬剤収容容器2を容器移送装置6によって、容器棚5a、5bから薬剤計量装置7a、7bの薬剤放出機構500の上に移送する。また、薬剤計量容器3を容器移送装置6によって、電子はかり600の上に移送する。
【0049】
薬剤計量装置7a、7bは、例えば振動による薬剤放出機構500と、ロードセル等の電子はかり600から構成されている。容器移送装置6によって容器棚5a,5bから移送された薬剤収容容器2と薬剤計量容器3を、それぞれ薬剤収容容器2は薬剤放出機構500の上に、薬剤計量容器3は電子はかり600の上に載置する。その後、薬剤収容容器2から薬剤を下方に放出させ、放出させた薬剤を薬剤計量容器3に収容させていくと、その収容薬剤の重量が電子はかり600によって計測される。電子処方箋システム11から指定された薬剤種の指定重量分になったら、放出を停止するように制御される。
【0050】
薬剤の放出が完了すると、再び、容器移送装置6によって薬剤収容容器2は容器棚5a,5bに返却され、計量済みの薬剤の入った薬剤計量容器3は、円盤配分装置8a、8bに移送される。この公知の円盤配分装置8a、8bは、計量済みの薬剤計量容器3から薬剤を回転している円盤811上に落下させることにより、円周状にドーナツ状の積層とする円周撒きを実行する。薬剤の円周撒きの後に、円盤を指定角度ずつ回動しながら、薬剤を上下ホッパ9へ落下させ、さらに上下ホッパ9の出口から個包分ずつの薬剤を受け入れる包装装置10にて包装用紙内に連続して分包する。
【0051】
円盤配分装置8a、8bで薬剤計量容器3から薬剤を円周状にドーナツ状の積層を作る時には、図示しないセンサで薬剤計量容器3からの薬剤の放出が完了したことを検知した後に、例えば振動による薬剤計量容器3からの薬剤放出部500は、その振動を強くするとともに、別に設けた薬剤計量容器3の外面に対する叩き振動付与機構と同時に動作させて、容器内に残っている薬剤を出来るだけ放出するように制御することは、この後、容器清掃装置100での清掃動作の負担を低減しうるものである。
【0052】
なお、薬剤によっては、薬剤計量容器3をその都度清掃しなくともよい薬剤と、その都度清掃する必要がある薬剤と、さらには装置の外に取出して水洗い等による清掃が必要な薬剤とが存在する。このため、電子処方箋システム11には、薬剤収容容器2毎に、内蔵薬剤の種別に対応して、装置内で清掃を行うか否か、装置外で清掃を行うかの事前情報を記憶部11aに記憶している。
【0053】
制御部12は、電子処方箋システム11の記憶部11aから、薬剤の種別毎に清掃が必要か否かの情報を取得し、制御部12内の記憶部12aにこの情報を記憶する。薬剤計量容器3から薬剤の放出が完了したときに、制御部12はこの記憶部12aに記憶されている情報を参照して、当該放出が完了した薬剤計量容器3の清掃が必要か否かを判断する。
【0054】
このような清掃不要の判断には他のケースもある。すなわち、当該薬剤計量容器3からの薬剤放出が完了したときに、電子処方箋システム11上の処方実行待ちの処方箋の中に、当該薬剤計量容器3と同一薬剤を使用するもの(処方箋Aという)がある場合は、清掃を実行せずに、そのまま空いている棚番に当該薬剤計量容器3を保管しておく。その後、処方箋Aの分包実行する順番まで、当該薬剤計量容器3の使用を禁止し、処方箋Aの分包実行時に、当該薬剤計量容器3を使用するように制御することもできる。
【0055】
このように制御することで、比較的多用される薬剤種に対して、毎回清掃することなく、複数回の処方で使用した後に清掃を行うことで装置の動作の効率化を図ることができる。
【0056】
以上の判断の結果、清掃が不要であると判断されると、薬剤計量容器3を清掃せずに容器移送装置6によって、容器棚5a,5bの取出した棚番に戻す。装置内での清掃が必要な薬剤計量容器3は、容器移送装置6によって清掃装置100に移送して清掃動作を行う。また、装置から取り外して清掃が必要な薬剤計量容器3は、容器移送装置6によって、充填扉707a、707b部の空きスペースに移送して保管する。そして、保管した棚番のLED表示705を黄色点灯し、タッチ式ディスプレイ704bの[要清掃計量容器]のC1~C2に薬剤名を表示する。
【0057】
薬剤分包装置1では処方情報に基づいて、薬剤収容容器2から薬剤計量容器3への薬剤の放出、薬剤計量容器3から円盤配分装置8a、8bへの薬剤の放出、さらには、放出した薬剤の包装という一連の動作を、処方情報が入力される都度実行していくが、薬剤分包装置1に搭載されている薬剤収容容器2に収容されている薬剤は、使用され分包されることによって減少していく。このため、初期の収容質量から、特定の処方で指定された質量を減算して、これを各薬剤収容容器2の在庫質量として制御部12の記憶部12aに記憶しておく。そして、この値があらかじめ指定した数値を下回った場合には、当該薬剤収容容器2は容器棚5a,5bの充填扉707a、707b部の空きスペースに移送して保管する。そして、保管した棚番のLED表示705を黄色点灯し、タッチ式ディスプレイ704bの[要補充薬剤]のB1~B4に薬剤名を表示する。
【0058】
また、電子処方箋システム11から入力される処方情報において、薬剤分包装置1に搭載されていない薬剤が指定される場合が発生する。しかしながら、この処方は実行できないので、当該薬剤が搭載されるまで待機させられ、当該薬剤を準備すべきことをタッチ式ディスプレイ、704bの[要新規薬剤]のA1~A4に薬剤名を表示するとともに、当該薬剤収容容器2の装填を予約する棚番のLED表示705を赤色点灯する。
【0059】
次に、薬剤分包装置1の各モードにおける各扉の制御について、図15のフローチャートを参照して説明する。
【0060】
(S-2)容器交換・補充モード
複数の処方を実行する間に、充填扉707a、707b部のスペースは清掃が必要な薬剤計量容器3である「要清掃計量容器」や、薬剤の補充が必要な薬剤収容容器2である「要補充薬剤容器」が載置されたりする。また、薬剤分包装置1に収容されていない薬剤の処方が必要になったことから、[要新規薬剤]の場所として予約されていく。
【0061】
薬剤分包装置1は、処方箋情報に基づいて、前述したような通常運転モードで動作している(ST1)。この通常運転モードでの動作中に、タッチ式ディスプレイの「容器交換・補充」ボタンが押されたか否かをチェックしている(ST2)。「容器交換・補充」ボタンが押されていなければ(ST2;N)、「容器棚卸」ボタンが押されたか否かをチェックする(ST3)。「容器棚卸」ボタンが押されていなければ(ST3;N)、「点検・清掃」ボタンが押されたか否かをチェックする(ST4)。「点検・清掃」ボタンが押されていなければ(ST4;N)、ST1に戻り、通常運転を継続する。
【0062】
通常運転を行っているときに、係員は都合のよい時間に、タッチ式ディスプレイ704aの「容器交換・補充」ボタンを押下することで充填扉707a、707bの開放指示を行う。「容器交換・補充」ボタンが押されると(ST2;Y)、制御部12は安全シャッタ709を閉じるように扉制御部700を介してステッピングモータ714を駆動する(ST5)。その後、シャッタ面713が閉じたことをセンサ716bによって検出されると(ST6;Y)、第1の施錠機構である電磁ロック717-1のプランジャ・ソレノイド718-1の励磁を遮断する(ST7)。これによって、安全シャッタ709a、709bが遮蔽されるとともに、充填扉707a、707bに設けられた電磁ロック機構717-1が解除され、これらの棚番に保管された各容器に対する処理を行うことができる。このときに[通常運転]モードは継続し、処方情報が入力されると、容器移送装置6によって処方情報に対応する薬剤収容容器2及び薬剤計量容器3の移送が行われるとともに、分包動作を継続して実施することができる。
【0063】
このように、「容器交換・補充」ボタンが押下されると、同ボタンは点滅状態に変わり、安全シャッタ709a、709bの双方または片方、すなわち 「要清掃計量容器」や、「要補充薬剤容器」が保管されたり、[要新規薬剤]の場所として予約されている側を遮蔽する(ST5)。安全シャッタ709a、709bが遮蔽し、検知器であるセンサ716bがオンすることで(ST6;Y)、確実に遮蔽されていることが確認された後に、該当の充填扉707a、707bの双方または片方の電磁ロック機構717-1を解除する(ST7)。これによって、該当する充填扉707a、707bは手で開けることができる。そのときに該当棚番に係員の手が挿入されても、安全シャッタ709a、709bが閉鎖しているので、容器移送装置6の動作範囲に手が入ることはないので安全である。
【0064】
なお、電磁ロック機構717-1が解除されている状態、すなわち、マイクロスイッチ722-1がオフの状態で、係員の手によって安全シャッタ709が開放される虞がある。その場合は係員の手が容器移送装置6の動作範囲にまで挿入し得る。そのような危険を防止するために、安全シャッタ709のシャッタ面713の閉状態が検出されなくなったことをセンサ716bによって検知されると(ST8;N)、容器移送装置6の電源が遮断され(ST9)、駆動機構は強制的に停止させられる。従って、容器移送装置6の移動範囲に係員の手指が挿入されても駆動機構は停止されているので、安全である。
【0065】
係員は、「要清掃計量容器」や、「要補充薬剤容器」については、各容器を取出して、必要な処置を行っていく。また、「要新規薬剤」に対しては、別に準備された薬剤収容容器2に、必要な薬剤を収容し、また「要補充薬剤」については、薬剤を追加投入した上で、それぞれ図示しないはかりシステムで、その収容量と容器のRFID番号を紐付けて、制御部12及び電子処方箋システム11に登録し、また「要清掃計量容器」は水洗い等、本薬剤分包装置1で行うより厳密な洗浄を行い、別の清掃済みの「薬剤計量容器」を装填する。
【0066】
以上の係員操作が完了し、充填扉707a、707bを手で閉じた後、点滅している「容器交換・補充」ボタンを再度押下すると(ST10;Y)、該当の電磁ロック機構717-1をロック(ST11)した後に、安全シャッタ709a、709bを開放駆動する(ST12)。そして、安全シャッタ709a、709bの開放がセンサ716aによって検出されると(ST13;Y)、ST1に戻って通常運転モードとなる。また、安全シャッタ709a、709bが開放することで、容器移送装置6が、充填扉707a、707b側の各容器にアクセスを可能となるとともに、電子処方箋システム11に登録された情報から、タッチ式ディスプレイ704bの情報を更新し、「容器交換・補充」ボタンの点滅を停止する。
【0067】
(S-3)容器棚卸しモード
各薬剤の在庫を一斉棚卸しする場合に、充填扉707a、707b側に都度移送するのは効率的ではないので、観音開きができる前面扉である左扉702aと右扉702bを開放することで、全容器が平面配列しているので、全ての容器にアクセスが可能となる。
【0068】
「容器棚卸し」ボタンが押下されると(ST3;Y)、同ボタンは点滅状態に変わり、「通常運転」ボタンを消灯し、容器移送装置6の電源をオフ(ST14)にした上で、左扉702aと右扉702bの電磁ロック機構717-2を解除する(ST15)ことで、左扉702aと右扉702bは手で開けることができ、全容器にアクセスができ、棚卸し作業を効率的に実施することができる。
【0069】
棚卸しは一般には、図示しない別のはかりシステムで各薬剤収容容器2の重量測定を行い、電子処方箋システム11及び制御部12の記憶部12aに登録された情報と照合して、現品量の確認を行う。重量測定が終了した薬剤収容容器2は元の棚の位置に戻される。すべての薬剤収容容器2に対しての重量測定が完了したら、左扉702aと右扉702bとを閉じた後で点滅している「容器棚卸し」ボタンを押下する(ST16;Y)。その結果、電磁ロック機構717-2が駆動される(ST17)ことで施錠されるとともに、「容器棚卸し」ボタンの点滅を停止し、電子処方箋システム11及び制御部12に登録された各容器と薬剤の関係を更新するものである。また、この時、電源が遮断されていた容器移送装置6に電源が印加される(ST18)。
【0070】
(S-4)点検・清掃モード
「点検・清掃」ボタンが押下されると(ST4;Y)、同ボタンは点滅状態に変わり、「通常運転」ボタンを消灯し、容器移送装置6の電源をオフ(ST19)した上で、全ての電磁ロック機構717-1乃至717-3を解除する(ST20)ことで、各開閉部を全て開放可能として、係員による点検や清掃のために、容器移送装置6等へのアクセスを可能とするものである。すなわち、図10(b)に示すように、容器棚5a,5b自体を開いて、図示しない容器移送装置6の各部の清掃や調整が可能になるものである。各部の清掃や調整が完了して、容器棚5a,5bを閉じた後に、「点検・清掃」ボタンが再度押下されると(ST21;Y)、全ての電磁ロック機構717-1乃至717-3を駆動する(ST22)ことで、各開閉部が係員の手による開放ができなくなる。その後、容器移送装置6への電源が印加され(ST23)、薬剤の分包動作が可能となる。
【0071】
なお、[容器棚卸]モードや[点検・清掃]モードのときに、容器移送装置6の電源のみを遮断したが、配分円盤8a,8bや包装装置10等の他の駆動装置の電源も遮断するようにしてもよい。
【0072】
以上詳述したように本発明によって、散薬計量式の薬剤分包装置において、薬剤の補充や新規薬剤の追加が、処方動作実行中にできるだけでなく、棚卸しの場合には、全容器に前面からアクセスできるようになるという、効率的なシステムを提供できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明に係る装置は、調剤薬局などで幅広く利用されることが期待されており、大いに産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0074】
1 薬剤分包装置
2 薬剤収容容器
3 薬剤計量容器
5 容器棚
6 容器移送装置
7 薬剤計量装置
8 円盤配分装置
10 包装装置
11 電子処方箋システム
12 制御部
500 薬剤放出部
600 電子はかり(薬剤計量部)
702 左右扉(前面扉)
707 充填扉
709 安全シャッタ(遮蔽体)
716 検出器
717-1 電磁ロック機構(第1の施錠機構)
717-2 電磁ロック機構(第2の施錠機構)
717-3 電磁ロック機構(第3の施錠機構)
722 マイクロスイッチ(センサ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15