IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ラングペーサー メディカル インコーポレイテッドの特許一覧

特許7462946呼吸筋を強化するためのシステム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】呼吸筋を強化するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/36 20060101AFI20240401BHJP
   A61N 1/05 20060101ALI20240401BHJP
   A61N 7/00 20060101ALI20240401BHJP
   A61N 5/06 20060101ALI20240401BHJP
   A61N 2/00 20060101ALI20240401BHJP
   A61B 5/08 20060101ALI20240401BHJP
   A61B 5/0245 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
A61N1/36
A61N1/05
A61N7/00
A61N5/06 Z
A61N2/00
A61B5/08
A61B5/0245 100A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020531639
(86)(22)【出願日】2018-11-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 US2018063013
(87)【国際公開番号】W WO2019118186
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-11-26
(31)【優先権主張番号】15/837,519
(32)【優先日】2017-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517325113
【氏名又は名称】ラングペーサー メディカル インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】LUNGPACER MEDICAL INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】タッカー、バイラル エス.
(72)【発明者】
【氏名】エバンス、ダグラス ジー.
【審査官】滝沢 和雄
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0030488(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0045848(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0165207(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0288609(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0093032(US,A1)
【文献】米国特許第06463327(US,B1)
【文献】米国特許第07167751(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/36
A61N 1/05
A61N 7/00
A61N 5/06
A61N 2/00
A61B 5/08
A61B 5/0245
A61B 5/352
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の呼吸筋を刺激するためのシステムであって、
前記呼吸筋を活性化することができる神経に隣接して配置するための刺激装置と、
前記刺激装置に刺激エネルギーを供給するための信号発生器と、
前記刺激エネルギーに対する前記呼吸筋の反応を検出するためのセンサと、
コントローラであって、
i.前記信号発生器に刺激エネルギーを前記刺激装置へ供給させて、前記呼吸筋の少なくとも1回かつ100回以下の収縮のみを引き起こし、
ii.前記少なくとも1回かつ100回以下の収縮のみを引き起こした後、前記刺激装置へ刺激エネルギーを供給しない1~48時間の期間を前記信号発生器に提供させる
ようにプログラムされたコントローラと
を含む、システム。
【請求項2】
前記刺激エネルギーは、電気的エネルギーまたは電磁エネルギーを含むエネルギー形態で送達され、前記刺激装置が、神経刺激用電極、気管内用電極、食道内用電極、血管内用電極、経皮用電極、皮内用電極、電磁ビーム電極、バルーン型電極、バスケット型電極、傘型電極、テープ型電極、吸引型電極、ねじ型電極、バーブ型電極、双極電極、単極電極、金属電極、ワイヤ電極、パッチ電極、カフ電極、クリップ電極、針電極、またはプローブ電極の1つ以上を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記コントローラに通信可能に連結されたスイッチをさらに備え、
前記スイッチは、ハンドスイッチ、フットスイッチ、タッチスクリーン、音声作動スイッチ、またはリモートスイッチのうちの1つを含み、前記スイッチは、ため息の呼吸の開始、刺激治療の開始、刺激治療の停止、刺激パラメータの増加、または刺激パラメータの減少を行うことが可能である、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記刺激エネルギーは、機械的エネルギー、電気的エネルギー、超音波エネルギー、フォトニックエネルギー、または電磁エネルギーのうちの少なくとも1つを含むエネルギー形態によって送達される、請求項1または3に記載のシステム。
【請求項5】
前記神経が第1の横隔神経であり、前記刺激装置が、前記第1の横隔神経に隣接して配置された第1のセットの電極及び第2の横隔神経に隣接して配置された第2のセットの電極を含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記センサは、気道センサであり、前記センサは、最大吸気圧を検出するように構成されている、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記コントローラは、
最大吸気圧の所定の値を選択し、
最大吸気圧の前記所定の値を検出すると、刺激エネルギーの供給を停止する
ようにさらにプログラムされている、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記コントローラは、刺激閾値を判定するようにさらにプログラムされている、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
外部呼吸補助システムをさらに備える、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記コントローラは、前記外部呼吸補助システムから圧力データまたは体積データの少なくとも1つを受信するようにさらにプログラムされている、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記コントローラは、前記外部呼吸補助システムによって提供される呼吸補助のタイミングまたは程度を調整するようにさらにプログラムされている、請求項9または10に記載のシステム。
【請求項12】
前記刺激エネルギーは、1つまたは複数の刺激パラメータを含み、前記コントローラは、
前記センサから収縮信号を受信し、
前記収縮信号に基づいて1つまたは複数の刺激パラメータを調整する
ようにさらにプログラムされている、請求項1乃至11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記収縮は、第1の収縮であり、前記コントローラは、
前記1~48時間の期間後に、前記信号発生器に刺激エネルギーを前記刺激装置へ供給させて、前記呼吸筋の少なくとも1回かつ100回以下の第2の収縮のみを引き起こし、
前記少なくとも1回かつ100回以下の第2の収縮のみを引き起こした後、前記刺激装置へ刺激エネルギーを供給しない30秒~2時間の期間を前記信号発生器に提供させる
ようにさらにプログラムされている、請求項1乃至12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記刺激装置は、複数の電極を含み、前記コントローラは、前記複数の電極のうちの電極の組み合わせを決定するようにさらにプログラムされている、請求項1、3、4、および6-13のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2017年12月11日に提出された米国特許出願第15/837,519号に対する優先権を主張し、その開示全体は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
参照による組み込み
全般的に、本明細書で言及したすべての公開、特許出願、及び特許は、あたかも各個々の文書が参照により組み込まれることが具体的に個別に示されているかのように、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本開示は、概して、呼吸筋の強さ及び/または最大吸気力及び/または持久力を増加させるための方法及びデバイス(システムを含む)に関する。いくつかの例では、本開示は、生物(例えば、患者)が侵襲的または非侵襲的な機械的換気の必要なしに、または他の外部呼吸補助の必要なしに呼吸できるようになるまで、呼吸筋の強さを増強させる方法を説明する。
【0004】
いくつかの例では、本開示は、数日または数週間の期間にわたって、間隔または低いデューティサイクルでエネルギーを呼吸筋に送達して、生物が外部呼吸補助を低減させて、または外部呼吸補助なしに呼吸できるようになるまで、それらの最大の強さを増強させ、及び/または疲労閾値を改善するシステム及び方法を説明する。
【0005】
加えて、本開示は、生物の呼吸筋の最大吸気力の損失を軽減するためのシステム及び方法を説明し、より具体的には、患者が外部呼吸補助を受けている間のそのような力の損失の程度を低減する。
【背景技術】
【0006】
救命治療の患者、特に侵襲的機械的換気(MV)を必要とする患者は、横隔膜、肺、脳、心臓、及び他の臓器の損傷のレベルが高いことが知られている。呼吸筋(横隔膜、胸鎖乳突筋、斜角筋、小胸筋、外肋間筋、内肋間筋、腹筋、方形筋など)は、MVの間に急速に質量と筋力を失うことが知られている。肺は、高圧と低圧両方での傷害を含む人工呼吸器誘発性外傷に苛まれる。MVの認知される作用は、異常な神経信号や炎症性反応を含むいくつかの要因によって引き起こされると考えられている。心臓は、a)人工呼吸器などの呼吸デバイスによって血流の抵抗が増加する、b)呼吸筋の収縮が低下することで静脈の血流の補助が少なくなる、c)持続的な終末呼気陽圧により血流抵抗が生じるなどで、より懸命に作動する必要がある。これらのそれぞれは、患者がMVを行う期間が長いほど悪化する。これらの負の副作用を防ぐために、患者をMVにできるだけ短い時間維持することが重要である。しかし、MV患者の急速な呼吸筋の萎縮により、多くの患者はMVへの依存から遠のくことが困難になっている。現在、外部呼吸補助なしで迅速に呼吸できるよう回復させ得る、特にMVを使用している救急患者の呼吸筋を強化する市販の選択肢はない。
【0007】
多くの場合、鎮静されて人工呼吸器に繋がれた患者は、中枢神経が横隔膜及び呼吸筋副筋を作動させることが得てして抑制されるため、正常に呼吸することができない。MVは呼吸不全に苛まれる患者に対する生命を救う介入となる可能性があるが、長時間のMVは呼吸筋の萎縮を助長する可能性がある。特に注目されているのは、人工呼吸器誘発性横隔膜萎縮(VIDD)と呼ばれる、長時間の機械的換気に起因する横隔膜の萎縮と収縮機能の障害である。この種の横隔膜の損傷及び付随する横隔膜の疲労は、MVからウィーニングするのを困難にする一助となっている見込みがあると認識されている。提供される臓器が採取されるまで18~69時間だけMVを維持した脳死のICUの患者を対象とした画期的な研究では、横隔膜の筋線維が通常の大きさの半分未満に収縮した(Levine et al., New England Journal of Medicine, 358: 1327-1335, 2008)。そのような深刻な萎縮は、数日または数週間進行した場合、多数のMV患者においてMVからウィーニングするのを失敗する主な原因になると考えられている(Demoule et al., Relevance of Ventilator-induced Diaphragm Dysfunction in ICU patients, Clinical Pulmonary Medicine, Volume 19, Number 6 (November 2012))。
【0008】
機械的換気が短時間でも、肺の損傷(例えば、気圧外傷、無気肺など)、肺の感染(例えば、肺炎)、脳損傷(例えば、認知機能障害、認知症)、及び心臓の損傷につながる可能性があることが示されている。
【0009】
600,000名を超える米国人の患者が人工呼吸器に依存し、2020年までに長期の人工呼吸を必要とし、米国のヘルスケアシステムに600億ドルを超えるコストをかけることが推定されている(Zilberberg et al., “Growth in adult prolonged acute mechanical ventilation: implications for healthcare delivery,” Crit Care Med., 2008 May, 36(5): 1451-55)。
【0010】
したがって、人工呼吸器を短い時間及び長い時間付けることは両方共、医療費を増加させ、患者の罹患率と死亡率を大幅に増加させる。MVを12時間超受けた20か国の5,183名の患者を含むMVの実践に関する国際的な前向き観察研究では、患者が平均してMVの持続時間の40%をウィーニングの過程で費やしていることが明らかになった(Esteban et al., Evolution of mechanical ventilation in response to clinical research, Am J. Respir. Crit. Care Med., 2008 Jan 15;177(2):170-7)。
【0011】
MVで治療された患者の大多数は、呼吸不全の解決または手術からの回復時に人工呼吸器の補助から容易に解放されるが、約3分の1は、自発呼吸能力を取り戻すという課題に遭遇する。予後は、最初の試みでうまくウィーニングした患者(単純ウィーニング-ICU死亡率-5%)の場合は良好であるが、残りの患者(ウィーニング困難または長期ウィーニング-ICU死亡率-25%)の場合はそれほど良好ではない(Boles et al., Weaning from mechanical ventilation, Eur. Respir. J., 2007 May;29(5):1033-56)。
【0012】
MVからのウィーニングの困難は、世界中で多くの研究努力の対象となっている。なぜなら、多くの場合患者は元々MVを必要とした状態から回復することはできるが、MVの影響により、完全な健康を取り戻すことはできないからである。
【0013】
一部の研究者は、横隔膜筋萎縮を軽減する方法を検討してきた。Reynoldsらは頻繁な横隔神経の刺激が動物モデルの横隔膜筋萎縮を緩和するのを促進し得ることを示した(Reynolds et al., Mitigation of Ventilator-induced Diaphragm Atrophy by Transvenous Phrenic Nerve Stimulation, Am J. Respir. Crit. Care Med., 2017 Feb l;195(3):339-348)。Lungpacer Medicalは、横隔膜筋萎縮を予防するためのいくつかのデバイス、システム、及び方法を開示している。
【0014】
患者を機械的換気からウィーニングさせることに関する文献は、患者が横隔膜筋の持久力を取り戻すことへの必要性に焦点を当ててきた。1つの理論は、患者には長期間の独立した呼吸を補助するための呼吸筋の持久力が必要であるというものである。
【発明の概要】
【0015】
本開示の実施形態は、とりわけ、筋肉を強化する及び/または筋肉の持久力を向上させるために、患者に送達されるまたは患者によって必要とされる呼吸のわずかな割合について呼吸筋を刺激するためのシステム、デバイス、及び方法に関する。本明細書で開示される実施形態のそれぞれは、他の開示される実施形態のいずれかと関連して説明される1つまたは複数の特徴を含み得る。
【0016】
本開示は、患者の呼吸筋を刺激する方法を含む。いくつかの態様では、方法は、(a)呼吸筋を活性化できる神経に隣接して刺激装置を配置すること、(b)刺激装置を作動させて呼吸筋を100回以下だけ収縮させること、(c)刺激装置の作動を1時間以上停止すること、及び(d)ステップ(b)及び(c)を少なくとも1回繰り返すことを含み得る。患者はステップ(b)の少なくとも1つの呼吸筋の収縮を開始し得る。
【0017】
いくつかの例では、方法は、患者の最大吸気圧の所定の値を選択すること、及び患者の最大吸気圧が所定の値に増加するまでステップ(b)及び(c)を繰り返すことをさらに含み得る。所定の値は少なくとも30cmHOになることがある。神経が第1の神経であり得、呼吸筋が第1の呼吸筋であり得、方法が、第2の神経及び第2の呼吸筋に対してステップ(a)から(d)を実行することをさらに含み得る。刺激装置が、経血管用電極、経皮用電極、皮下用電極、または神経と接触して配置されるように構成された電極のうちの1つ以上を含み得る。
【0018】
いくつかの例では、方法は、刺激閾値を判定することをさらに含み得る。判定するステップは、呼吸筋を触診することを含み得る。代替的または追加的に、判定するステップは、外部呼吸補助システムからの圧力データまたは体積データの少なくとも1つを観察することを含み得る。方法は、ステップ(b)の少なくとも一部の間患者に呼吸補助をもたらすために機械換気を用いることをさらに含み得る。
【0019】
いくつかの態様において、患者の呼吸筋を刺激する方法は、(a)呼吸筋を活性化できる神経に隣接して刺激装置を配置すること、(b)刺激装置に対して第1の作動をさせて呼吸筋を100回以下だけ収縮させること、(c)刺激装置の第1の作動を少なくとも30秒停止すること、及び(d)ステップ(c)の後、刺激装置に対して第2の作動をさせて呼吸筋を100回以下だけ収縮させること、(e)刺激装置の第2の作動を1時間以上停止すること、及び(f)ステップ(b)~(e)を少なくとも1回繰り返すことを含み得る。神経は、横隔神経または迷走神経のうちの少なくとも1つであり得る。一例では、ステップ(b)が、呼吸筋の100回以下の収縮に対応する100回以下の刺激を含み得、ステップ(b)が、100回以下の刺激の第1の刺激と100回以下の刺激の第2の刺激との間の少なくとも1つの刺激パラメータを調整することを含み得る。
【0020】
いくつかの例では、神経が第1の神経であり得、呼吸筋が第1の呼吸筋であり得、刺激装置が、第1の呼吸筋または第2の呼吸筋のいずれかを活性化することができる、第1の神経に隣接して配置された第1のセットの電極及び第2の神経に隣接して配置された第2のセットの電極を含み得、方法は(g)第2のセットの電極に対して第1の作動をさせて、第1の呼吸筋または第2の呼吸筋を100回以下だけ収縮させること、(h)第2のセットの電極の第1の活性化を少なくとも30秒間停止すること、(i)ステップ(h)の後、第2のセットの電極に対して第2の活性化をして、第1の呼吸筋または第2の呼吸筋を100回以下だけ収縮させること、(j)第2のセットの電極の第2の活性化を1時間以上停止すること、及び(k)ステップ(g)~(j)を少なくとも1回繰り返すことをさらに含み得る。ステップ(b)及び(g)は同時に行われ得る。
【0021】
いくつかの例では、方法は、呼吸筋の収縮を感知すること、及び呼吸筋の所望の収縮を達成するために少なくとも1つの刺激パラメータを調整することをさらに含み得る。感知及び調整のステップが、コントローラによって自動的に実行され得る。コントローラは患者に植込まれていてもよい。
【0022】
いくつかの態様では、患者の呼吸筋を刺激する方法は、(a)呼吸筋を活性化できる神経に隣接して刺激装置を配置すること、及び(b)刺激装置を作動させて、24時間で患者が得る、または患者に送達する呼吸の20%以下で呼吸筋を収縮させることを含み得る。ステップ(b)は、刺激装置を作動させて、24時間で患者が得る、または患者に送達する呼吸の10%以下で呼吸筋を収縮させることを含み得る。
【0023】
いくつかの例では、方法は、24時間の患者の呼吸の60%以上の外部呼吸補助を提供することをさらに含み得、ステップ(b)に続いて、外部呼吸補助によって提供される圧力を低減すること、または外部呼吸補助によって補助される呼吸の割合を低減することの少なくとも1つをさらに含み得る。外部呼吸補助は、機械的換気、BiPAP、CPAP、または鼻カニューレ酸素投与のうちの少なくとも1つを含み得る。いくつかの例では、刺激装置は複数の電極を含み得、方法は、コントローラを使用して、神経を刺激して呼吸筋を収縮させるための複数の電極から電極の組み合わせを自動的に選択することをさらに含み得る。いくつかの例では、方法は、センサを使用して患者の生理学的パラメータを測定することをさらに含み得、生理学的パラメータが呼吸数、心拍数、ECG、体温、運動、血中酸素濃度、血中CO濃度、または気流のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0024】
いくつかの態様では、患者の呼吸筋を刺激する方法であって、(a)呼吸筋を活性化できる神経に隣接して刺激装置を配置すること、(b)患者に外部呼吸補助を提供すること、(c)COを除去するか、患者の血液に酸素を追加するかの少なくとも1つのために、患者に体外式膜型酸素供与を提供すること、及び(d)刺激装置を作動させて、呼吸筋を24時間で累積5時間以内収縮させることを含み得る。ステップ(d)における刺激装置の作動中の少なくともいくつかの刺激が、ステップ(b)で提供される外部呼吸補助の吸気期間中に発生し得る。
【0025】
いくつかの例では、ステップ(d)における刺激装置の作動の間の第1の対の連続する刺激の間の第1の期間が、ステップ(d)の刺激装置の作動中の第2の対の連続する刺激の間の第2の期間と異なり得る。刺激装置の複数の電極が、経皮的切開を通して患者の体内に配置され得る。刺激装置の複数の電極が、患者の体外に配置され得る。
【0026】
いくつかの例では、方法は代替的または追加的に、ステップ(d)の前に、少なくとも1つの薬物を患者に送達することを含み得る。
いくつかの態様では、患者の呼吸筋を刺激する方法は、(a)呼吸筋を活性化できる神経に隣接して刺激装置を配置すること、(b)24時間の患者の呼吸の少なくとも90%に対して外部呼吸補助を提供すること、(c)刺激装置を作動させて、呼吸筋を24時間で累積5時間以内収縮させること、(d)ステップ(b)と(c)を48時間繰り返すこと、及び(e)患者から外部呼吸補助を取り外すことを含み得る。方法は、患者から外部呼吸補助を取り外した後、少なくとも1日の間ステップ(c)を繰り返すことをさらに含み得る。
【0027】
いくつかの態様では、患者の呼吸筋を刺激する方法は、(a)呼吸筋を活性化できる神経に隣接して刺激装置を配置すること、及び(b)刺激装置を作動させて、患者が呼吸している間累積で1日に2時間以下呼吸筋を収縮させることをさらに含み得る。
【0028】
いくつかの態様では、患者の呼吸筋を刺激する方法は、(a)呼吸筋を活性化できる神経または筋肉に隣接して刺激装置を配置すること、(b)24時間で患者の呼吸の少なくとも90%外部呼吸補助を提供すること、(c)刺激装置を作動させて呼吸筋を収縮させること、(d)刺激強度または刺激レートの少なくとも一方を変化させること、及び(e)患者から外部呼吸補助を取り外すことを含み得る。
【0029】
本開示は、患者の呼吸筋を刺激するためのシステムをさらに含む。いくつかの例では、システムは、呼吸筋を活性化することができる神経に隣接して配置するための刺激装置、刺激装置に刺激エネルギーを供給するための信号発生器、刺激エネルギーに対する呼吸筋の反応を検出するためのセンサ、及び(i)信号発生器が刺激エネルギーを刺激装置に供給させて、呼吸筋の100回以下のみの収縮を引き起こし、(ii)信号発生器が、100回以下の収縮を引き起こした後に、1時間以上の期間供給させるようにプログラムされたコントローラを含み得る。刺激装置は、神経刺激用電極、気管内用電極、食道内用電極、血管内用電極、経皮用電極、皮内用電極、電磁ビーム電極、バルーン型電極、バスケット型電極、傘型電極、テープ型電極、吸引型電極、ねじ型電極、バーブ型電極、双極電極、単極電極、金属電極、ワイヤ電極、パッチ電極、カフ電極、クリップ電極、針電極、またはプローブ電極の1つ以上を含み得る。刺激エネルギーは、機械的エネルギー、電気的エネルギー、超音波エネルギー、フォトニックエネルギー、または電磁エネルギーのうちの少なくとも1つを含むエネルギー形態によって送達され得る。いくつかの例では、システムは、コントローラに通信可能に連結されたスイッチをさらに備え得て、スイッチは、ハンドスイッチ、フットスイッチ、タッチスクリーン、音声作動スイッチ、またはリモートスイッチのうちの1つを含む。
【0030】
先行の一般的な説明及び以下の詳細な説明はどちらも例示的かつ説明的であるにすぎず、特許請求するように係る発明を限定するものではないと理解され得る。本明細書で使用される場合、「comprises(含む)」、「comprising(含む)」という用語、またはこれらの任意の他の変形版は、排他的ではない包含を網羅することが意図されており、そのため、要素の列挙を含むプロセス、方法、物品、または器具は、それらの要素のみを含むのではなく、明示的に収載されていない他の要素、またはこのようなプロセス、方法、物品、または器具に固有の他の要素を含んでもよい。「例示的」という用語は、「理想的」ではなく「例」の意味で使用される。
【0031】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、本開示の非限定的な実施形態を示し、説明とともに、本開示の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】例示的な実施形態による、人の頸部及び胴体上部の選択された神経及び血管、横隔膜及び肋間呼吸筋の解剖学的構造、1つの静脈に配置された例示的な刺激カテーテル、制御ユニット、センサ(例えば、運動センサ、気流センサ、及び/または圧力センサ)、例示的な遠隔制御デバイス、グラフィカルユーザインターフェース、パルス発生器、及び外部呼吸補助デバイスを示す。
図2】例示的な実施形態による、胴体の呼吸筋の解剖学的構造、肋間筋上の患者の皮膚上に配置された電極の経皮呼吸筋刺激アレイ、経食道用電極、及び外部呼吸補助デバイスを示す。
図3】例示的な実施形態による、血管内カテーテル及びコントローラを有する呼吸筋刺激システムのブロック図を示す。
図4-1】呼吸筋の強さを増強するための例示的な治療を説明するフローチャートを示す。
図4-2】呼吸筋の強さを増強するための例示的な治療を説明するフローチャートを示す(図4-1の続き)。
図5-1】呼吸筋の持久力を増強させるための代替の例示的な治療を説明するフローチャートを示す。
図5-2】呼吸筋の持久力を増強させるための代替の例示的な治療を説明するフローチャートを示す(図5-1の続き)。
図6】本開示の一例のシステム及び方法を使用して治療を受けている2つの例示的な生物の呼吸筋の強さの増強に関連するデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
当業者に対してより十分な理解をもたらすために、以下の説明を通じて、特定の詳細が示される。技術の例の以下の説明は、網羅的であること、またはシステムを任意の例示的な実施形態の正確な形態に限定することを意図していない。したがって、説明及び図面は、限定的な意味ではなく、例示的な意味で見なされるべきである。
【0034】
背景技術のセクションで上述したように、呼吸筋の持久力は先行する研究の焦点であった。本開示は、部分的には最大呼吸筋力を増強することに関し、これはまた、独立した呼吸を成功させるために有用である。これまでに、呼吸筋の力及び/または持久力を迅速かつ効率的に構築または維持して、患者が機械的換気などの外部呼吸補助に依存しているときに頻繁に起こる筋肉の損傷を逆転または制限する、使いやすいデバイス、システム、及び方法に対する満たされていないニーズが依然として在る。
【0035】
本開示は、呼吸筋の疲労した患者の最大吸気力及び/または持久力の急速な増大をもたらし、外部呼吸補助からのウィーニングを助力することができるシステム及び方法を含む。システムは、毎日患者が得る、または外部の手段によって患者に送達される呼吸の比較的小さい割合について呼吸筋(複数可)を活性化するために、患者にエネルギーベースの治療を送達することを含み得る。治療は、断続的に1日あたりに得られる呼吸の25%、または場合によっては、各々の日に患者により得られるまたは外部の手段により送達される呼吸の10%未満、1%未満、または0.2%未満が送達できる。システム及び方法は、所定の間隔、周波数、またはデューティサイクルで、直接的または間接的(例えば、神経を介して)に、所望の筋肉を自動的に刺激することができる。治療は、必要に応じて、所定の間隔または条件で自動的に有効にしたり、医療専門家が有効にしたり、患者自身が有効にしたりすることができる。治療は、外部呼吸補助に依存する患者の呼吸筋の強さ及び/または持久力を増加または維持するように設計することができる。
【0036】
概して、本開示の実施形態は、患者の神経を電気的に刺激して、頻繁ではない間隔で呼吸筋を活性化するための医療機器及び方法に関する。場合によっては、患者が外部呼吸補助なしで呼吸できるようになるまで、筋肉を強化することができる。
【0037】
図1を参照すると、本明細書に記載のシステムはいくつかの構成要素を含み得、刺激電極(図1)または経皮刺激アレイ13(図2);電極アセンブリに刺激エネルギーを提供する信号発生器14;患者の状態を感知し、刺激信号及び/または外部呼吸補助に対する調整を通知するための1つまたは複数のセンサ16または感知手段;及び電極への刺激信号の送達に関連するパラメータを管理する制御ユニット18を含む経血管神経刺激カテーテル12などの1つ以上の電極または電極アセンブリを有する刺激装置を含む。いくつかの実施形態では、システムは、リモートコントローラ20、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)21、タッチスクリーン(例えば、GUI21の一部として)、ハンドヘルドコントローラ(例えば、リモートコントローラ20)、キーボード、コンピュータ(例えば、制御ユニット18)、スマートフォン、タブレット、または別の入力デバイスを組み込んでもよい。
【0038】
いくつかの例では、刺激装置デバイス(例えば、カテーテル12)は、患者に容易に適用または挿入され、一時的であり、後で外科手術を必要とせずに患者から容易に取り外される。カテーテル12または他の刺激アレイなどの刺激装置は、患者の頸部の経皮的切開を介して患者の内部に配置することができる。場合によっては、刺激装置は、患者の鎖骨下、大腿、または橈骨領域に近接して挿入されてもよい。他の例では、本明細書で説明されるように、刺激装置は患者の外部に配置されてもよい。
【0039】
本明細書で説明される様々なシステムの構成要素は、任意の論理的な配置で組み合わされ、一緒に使用され得る。さらに、任意の記載された例の個々の特徴または要素は、他の実施形態の個々の特徴または要素と組み合わされ得る、またはそれらと関連して使用され得る。様々な例は、本明細書で具体的に説明されているものとは異なる状況でさらに使用され得る。例えば、開示された電極構造物は、様々な診断及び/または治療の用途のために、当技術分野で知られている様々な展開システムと組み合わせる、または組み合わせて使用することができる。
【0040】
図1はさらに、頸部及び胸部の解剖学的構造、特に、左右の横隔神経(L.PhN 26及びR.PhN 28)、迷走神経(L.VN 7及びR.VN 9)、左右の内頸静脈(L.IJV 32及びR.IJV 33)、左右の腕頭静脈(L.BCV 25及びR.BCV 27)、左右の鎖骨下静脈(L.SCV 22及びR.SCV 23)、上大静脈(SVC 24)、及び肋間神経(IN 29)の相対的な位置を示す。図1は、横隔膜30及び肋間筋39をさらに示す。横隔神経26、28は、鎖骨下静脈22、23に対して、またはいくつかの場合では、内頸静脈32、33と腕頭静脈25、27の接合部の近くにある腕頭静脈25、27に対してほぼ垂直にまた近くに延びる。各横隔神経26、28には、複数の分岐があり得る。分枝は、内頸静脈32、33と腕頭静脈25、27の間の接合部の下方にある頸部領域から胸部領域の範囲の様々な場所で一緒に合わさることがある。後者の場合、体のいずれの側の横隔神経26、28の分枝も腕頭静脈25、27の両側に沿って進み得る。右横隔神経28は、上大静脈24のいずれかの側に沿って進む分岐を含み得る。左右の横隔神経26、28は、左右の半横隔膜に対して互いに延在する。
【0041】
図1はまた、経血管神経刺激カテーテル12及び制御ユニット18を含む医療システム100を示す。カテーテル12は、複数の電極34を含み得る。カテーテル12は、制御ユニット18に動作可能に接続され得る(例えば、ケーブル5を介して有線、無線など)。制御ユニット18は、システム100に関連して本明細書で説明される機能のいずれかを実行するようにプログラムされ得る。いくつかの実施形態では、制御ユニット18は、患者または医療専門家が制御ユニット18の動作を制御ユニット18から離れて制御できるようにするリモートコントローラ20を含み得る。図1に示すように、リモートコントローラ20は、ハンドヘルドデバイスを含むことができる。いくつかの例では、リモートコントローラ20は、フットスイッチ/ペダル、音声作動式、タッチ作動式、または圧力作動式スイッチ、または任意の他の形態のリモートアクチュエータを含み得る。制御ユニット18は、タッチスクリーンを含み得、カート41によって補助され得る。
【0042】
リモートコントローラ20は、呼吸のパターンを制御するために患者または他の使用者が押すことができるボタン17、19を含むことができる。一例では、ボタン17、19の1つを押すと、「ため息」の呼吸を開始することができ、それにより、前の呼吸よりも大量の空気が患者の肺に入る可能性がある。ため息の呼吸は、カテーテル12の電極34が1つ以上の横隔神経26、28を通常の呼吸よりも高いレベルで刺激するように指示された場合に発生し得る(例えば、刺激の持続時間が長い、またはより高い振幅、パルス幅、または周波数のパルスを有する刺激の列)。より高い振幅の刺激パルスは、追加の神経線維をリクルートすることができ、これがひいては、追加の筋線維と関与して、より強い及び/またはより深い筋収縮を引き起こすことができる。刺激の列のパルス幅または持続時間を延長すると、刺激をより長い時間送達して、筋収縮の持続時間を延長できる。横隔膜筋刺激の場合、より長いパルス幅または延長された刺激期間(パルス列)は、肺の外側の周囲に、より大きなまたは拡張させた陰圧を与えることにより、肺葉の下部を拡張するのに寄与する潜在可能性がある。このような陰圧は、無気肺として知られている低圧の肺の損傷形態を防止または緩和するのに役立つ潜在可能性がある。刺激周波数の増加は、横隔膜30のより強力な収縮をもたらし得る。1つ以上の横隔神経26、28の増加した刺激(例えば、より高い振幅、パルス幅、刺激持続時間、または周波数)は、横隔膜30のより強力な収縮をもたらし得、それにより患者に大量の空気を吸入させ、それにより、より多くの量の酸素を患者に供給できる。ため息の呼吸は患者の快適さを向上させ得る。
【0043】
他の例では、ボタン17、19は、患者または他の使用者が刺激治療を開始及び停止すること、または刺激電荷(振幅×パルス幅)、刺激列のパルスの周波数、または呼吸数を含む刺激パラメータを増減することを可能にし得る。リモートコントローラ20または制御ユニット18上のLEDインジケータまたは小さなLCDスクリーン(図示せず)は、刺激パラメータ、システムセンサからのフィードバック、または患者の状態に関して操作者を誘導または通知する他の情報を提供し得る。
【0044】
あるいは、制御ユニット18の機能を有する制御ユニットを、カテーテル12と共に患者に植込むことができる。この例では、リモートコントローラ20及びプログラマ(図示せず)は、植込まれた制御ユニットと無線で通信することができる。プログラマ、植込まれた制御ユニット、及びリモートコントローラ20のそれぞれは、3つの構成要素のそれぞれが互いに無線で通信できるように無線トランシーバを含み得る。植込まれた制御ユニットは、本明細書に記載の機能を遂行するために必要なすべての電子機器、ソフトウェア、及び機能論理を含むことができる。制御ユニットを植込むことにより、カテーテル12が永久呼吸ペースメーカーとして機能することを可能にすることができる。プログラマは、患者または医療専門家が神経刺激または感知パラメータを変更またはプログラムすることを可能にすることができる。いくつかの例では、リモートコントローラ20は、図1及び図2に関連して説明されたように使用され得る。他の例では、リモートコントローラ20は、スマートフォン、タブレット、時計、または他の適切な入力デバイスの形態であり得る。
【0045】
さらに別の追加または代替の例では、システム100の制御ユニットは、携帯型であり得る。携帯型制御ユニットは、図1の制御ユニット18の機能のすべてを含み得るが、これは、患者または他の使用者が携帯して患者に可動性を提供でき、カート41から切断することができる。携帯型制御ユニットを携帯することに加えて、患者は制御ユニットをベルト、他の衣料品、または自分の頸部の周りなどにおいて着用することができる。他の例では、携帯型制御ユニットは、患者のベッドに取り付けて、患者の周りの領域におけるシステム100のフットプリントを最小化することができ、または寝たきりの患者を別の場所に輸送または移動させる必要がある場合に移動可能な筋肉刺激を提供し得る。
【0046】
カテーテル12の遠位先端は、カテーテル12の先細の遠位端部分であり得、カテーテル12の本体よりも小さい周囲を有し得る。遠位先端は、ガイドワイヤが通ることを可能にするために、またカテーテル12を遠位に超えるよう遠位端で開いていてもよい。また、遠位先端は、カテーテル12の他の部分よりも柔らかく、非外傷性であり、丸い縁を有し得る。カテーテル12はまた、カテーテルの側壁に2つのポートまたは開口部を有し得る。第1の開口部は、カテーテル12の中間部分に配置され得、第2の開口部は、カテーテル12の近位端の近くに配置され得る。各開口部は、カテーテル12内のそれぞれの管腔と流体連通でき、それを通して流体を注入することができる。流体は、ポートから出て、血管に送達され得る。
【0047】
使用中、カテーテル12の近位部分は、左鎖骨下静脈22に配置され得、カテーテル12の遠位部分は、上大静脈24に配置され得る。このように配置された、カテーテル12の近位部分上の電極34は、左横隔神経26に近接して配置され得、カテーテル12の遠位部分上の電極34は、右横隔神経28に近接して配置され得る。代替挿入部位として、カテーテル12は、左頸静脈32及び上大静脈24に挿入され得、近位電極は左横隔神経26を刺激するように配置され、遠位電極は右横隔神経28を刺激するように配置される。
【0048】
左右の横隔神経26、28は、横隔膜30を刺激し得る。したがって、カテーテル12は、左右の横隔神経26、28の一方または両方を電気的に刺激して、横隔膜筋30の収縮を引き起こして患者の呼吸を開始または補助するように配置することができる。
【0049】
さらなる例では、カテーテル12は、頸静脈、腋窩静脈、橈側皮静脈、心膜周囲静脈、上腕静脈、または径脈などの標的神経(複数可)(例えば、横隔神経)に隣接する場所へのアクセスを提供する他の血管内に配置され、それを通して前進され得る。さらに、刺激装置(例えば、カテーテル12またはアレイ13)は、超音波などの他の形態の刺激エネルギーを使用して、標的神経を活性化することができる。いくつかの例では、システム100は、横隔膜30に加えて、またはそれに代えて、他の呼吸筋(例えば肋間)を標的とすることができる。エネルギーは、経血管用電極、皮下用電極、神経(例えば、神経カフ)と接触して配置されるように構成された電極、経皮用電極/刺激、または当技術分野で公知の他の技術を含む1つまたは複数のタイプの電極/方法を介して送達できる。
【0050】
本明細書に記載される神経刺激システム及び方法は、患者が外部呼吸補助を受ける必要性を低減または排除し得る。図1及び図2の外部呼吸補助部88は、血液ガスを修正またはそうでなければ増強すること、及び/または患者の呼吸の仕事を減らすことに寄与する任意のデバイスまたは方法を含むことができる。いくつかの非限定的な例には、以下で説明するように、機械的換気、非侵襲的換気(NIV)、CPAP、BiPAP、鼻カニューレ酸素投与、DPS(Synapse、Averyなど)、及びECMOが含まれる。
【0051】
機械的換気は、自発呼吸を補助または置換するための人工呼吸器の使用を指す場合がある。機械的換気は、口(気管内チューブなど)または皮膚(気管切開チューブなど)を貫くいずれかの器具が関与する場合、「侵襲的」と呼ばれる。機械的換気には主に2つのタイプがある。空気(または別のガスの混合物)が陽圧によって気管に押し込まれる陽圧換気と、肺に空気が引き込まれる(例えば吸い込まれる)陰圧換気(例えば、鉄の肺など)である。機械的換気には多くのモードがある。機械的換気は、患者の自発換気が肺において効果的なガス交換を提供できない場合に示されることがある。
【0052】
換気はまた、麻酔または無意識の間に患者の気道を開いたままにするように設計されている喉頭用マスクの気道(例えば、喉頭用マスク)を介して提供することもできる。それはよく声門上気道の一種と称されている。喉頭用マスクには、カフ付きの楕円形マスクに接続する気道用チューブが含まれ得、患者の口から気管に沿って挿入される。展開されると、デバイスは声門の上に気密シールを形成し(声門を通る気管チューブとは異なり)、安全または安定した気道を提供する。
【0053】
非侵襲的換気(NIV)は、気管内チューブの代わりに顔面(例えば、経口、経鼻、経鼻経口)マスク/カニューレを通して管理される気道の補助の使用である。吸入ガスは、呼気終末陽圧で、多くの場合、圧力の補助または設定された一回換気量と速度での補助的な換気の制御で与えられる。このタイプの治療は、顔にぴったりとはまっているが気管挿管を必要としないマスクで送出されるため、「非侵襲的」と呼ばれる。
【0054】
連続気道陽圧(CPAP)は、陽の気道圧での換気の一形態であり、穏やかな空気圧を継続的に加えて、気道を連続的に開いた状態に保つ。CPAPは、自然発生的に自ら呼吸できるが、あるレベルの圧力の補助を必要とし得る患者に使用できる。これは、呼気終末陽圧(PEEP)に代わるものである。どちらのモダリティのステントも、肺の肺胞を広げ、そのため換気のために肺の表面積をより多くリクルートするのに寄与する。PEEPは一般に、呼気の最後にのみ陽圧をかけるデバイスを指す。CPAPデバイスは、呼吸サイクル全体を通じて継続的な陽の気道圧を加える。したがって、人工呼吸器自体はCPAPの間循環せず、CPAPのレベルを超える追加の圧力は供給されず、患者は各自で各呼吸を開始せねばならない。
【0055】
バイレベル気道陽圧(BiPAP)治療は、機能及び設計においてCPAPと非常に類似している。BiPAPは、人が得るべき1分あたりの呼吸量を測定する呼吸タイミング機能を含むように設定することもできる。呼吸と呼吸の間の時間が設定された制限を超えると、機械は一時的に空気圧を上げることによって、人に強制的に呼吸をさせることができる。BiPAPの機械とCPAPの機械の主な違いは、BiPAPの機械には通常、2つの圧力設定があることである。吸入用の規定圧力(ipap)と呼気用の低い圧力(epap)があるのである。デュアル設定により、患者はより多くの空気を肺の内外に移動できる。
【0056】
体外生命維持装置(ECLS)としても知られる体外式膜型人工肺(ECMO)は、心臓及び肺が十分な量のガス交換を供給できない患者に長期の心臓及び呼吸の補助をもたらすための体外技術である。ECMOの技術は、心肺バイパス手術中に使用される技術に似ており、これは、通常、短期の補助を提供するために使用される。ECMOの間、血液は、人の体から取り出されて、二酸化炭素を除去して赤血球に酸素を供給する装置を通る。長期ECMO患者は、筋肉の不活動やその他の原因により、呼吸筋の疲労をよく引き起こし得る。本明細書に記載される特定の治療方法は、ECMO及び別の形態の外部呼吸補助の両方を受ける患者に刺激治療を送達することを含み得る。本開示の特定の治療方法は、刺激アレイを含み得るECMOデバイスを利用して、記載された治療を送達し得る。
【0057】
引き続き図1を参照すると、カテーテル12は、複数の電極34または他のエネルギー送達要素を含む刺激アレイを含み得る。一例では、電極34は、カテーテル12の外壁に位置する表面電極であり得る。別の例では、電極34は、カテーテル12の外壁に対して半径方向内側に配置され得る(例えば、外壁の開口部を通して露出される)。さらに別の例では、電極34は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,242,088号に記載されているようなプリントされた電極を含むことができる(下記参照)。
【0058】
電極34は、カテーテル12の周囲に部分的に延在し得る。この「部分的な」電極構成物は、電極34が刺激のために所望の神経を標的とすることを可能にする一方で、患者の解剖学的構造の望ましくない領域(例えば、他の神経または心臓)への電荷の印加を最小化し得る。図1に示されるように、カテーテル12は、左横隔神経26に近接して配置され刺激するように構成された電極34の近位セット35と、右横隔神経28に近接して配置され刺激するように構成された電極34の遠位セット37とを含み得る。電極34は、カテーテル12の長さに沿って延びる列に配置されてもよい。一例では、近位セット35は、カテーテル12の長手軸に平行に延びる2列の電極34を含み得、遠位セット37は、カテーテル12の長手軸に平行に延びる2列の電極34を含み得る。
【0059】
さらに、本明細書に記載されるカテーテルは、以下の文献に記載される神経刺激デバイス及び感知デバイスの任意の特徴を含み得、それらはすべて、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる:米国特許第8,571,662号(「Transvascular Nerve Stimulation Apparatus and Methods」という題で、2013年10月29日発行);米国特許第9,242,088号(「Apparatus and Methods for Assisted Breathing by Transvascular Nerve Stimulation」という題で、2016年1月26日発行);米国特許第9,333,363号(「Systems and Related Methods for Optimization of Multi-Electrode Nerve Pacing」という題で、2016年5月10日発行);米国特許出願第14/383,285号(「Transvascular Nerve Stimulation Apparatus and Methods」という題で、2014年9月5日出願);米国特許出願公開第14/410,022号(「Transvascular Diaphragm Pacing Systems and Methods of Use」という題で、2014年12月19日に出願);米国特許出願第15/606,867号(「Apparatus and Methods for Assisted Breathing by Transvascular Nerve Stimulation」という題で、2017年5月26日に出願);または米国特許出願第15/666,989号(「Systems And Methods For Intravascular Catheter Positioning and/or Nerve Stimulation」という題で、2017年8月2日に出願)。さらに、本明細書に記載の制御ユニットは、上記で参照した特許文献に記載の制御ユニットの機能のいずれかを有することができる(例えば、本明細書に記載の制御ユニットは、組み込まれた文献に記載の神経刺激の方法を実施できる)。
【0060】
神経刺激の間に、1つ以上の電極34が、左横隔神経26の刺激のために近位セット35から選択され得、1つ以上の電極34が、右横隔神経28の刺激のために遠位セット37から選択され得る。カテーテル12は、単極、双極、または三極電極の組み合わせを使用して、または電極34の任意の他の適切な組み合わせを使用して神経を刺激し得る。いくつかの例では、電極の第2または第3のグループを使用して他の呼吸筋を刺激できる。一般に、刺激装置または刺激アレイは、電極の複数のセットを含むことができ、各セットは、同じまたは異なる神経または筋肉を刺激するように構成されている。複数の神経または筋肉が刺激されているときに、本明細書に記載のコントローラ及びセンサを使用して刺激を調整し、所望の筋肉の活性化、呼吸、または呼吸補助のレベルを達成することができる。
【0061】
カテーテル12はさらに、1つ以上の管腔を含み得る。各管腔は、カテーテル12の近位端からカテーテル12の遠位端まで、またはカテーテル12の遠位端に近接する位置まで延在し得る。いくつかの例では、管腔は、血液ガスセンサ、電気センサ、モーションセンサ、フローセンサ、または圧力センサなどのセンサを含み得る、またはセンサに流体接続され得る。いくつかの例では、カテーテル12は、ハブ36から近位に延びる延長管腔(図示せず)と接続し得る3つの管腔(図示せず)を含み得る。カテーテル12内の任意の管腔は、カテーテル12の遠位端またはカテーテル12の側壁のいずれかで1つ以上の遠位ポート(図示せず)で終結し得る。一例では、管腔は、薬物を送達するあるいは血液または他の体液を引き出すため、COを除去するため及び/または酸素を注入するためなど、患者に流体を移送するために使用されてもよい。他の例では、これらの管腔は、ガイドワイヤ、補強ワイヤ、光ファイバカメラ、センサ、または他の医療機器を保持するために使用され得る。
【0062】
カテーテル12、または本開示の他の刺激デバイスは、デバイスの位置決め及び配向を誘導するのを助けるために、その外側にマーキングまたは他のインジケータを組み込める。カテーテル12、または本開示の他の刺激デバイスはまた、所望の場所に刺激装置を位置決めするのを補助するために、X線、超音波または他の撮像技術によって可視である内部インジケータ(例えば、放射線不透過性マーカー、硫酸バリウムなどの造影剤、エコー源性マーカーなど)を含み得る。カテーテル12は、本明細書に記載される特徴の任意の組み合わせを含み得る。したがって、カテーテル12の特徴は、図1に示される特定の組み合わせに限定されない。
【0063】
依然図1を参照すると、ハブ36が、カテーテル12の近位端に接続され得る。ハブ36は、導電性の表面を含み得、単極の刺激または感知の間に参照電極として作用し得る。いくつかの実施形態では、ハブ36は、患者の皮膚に縫合されてもよい。さらに、ハブ36は、ECG電極として使用されてもよい。
【0064】
一例では、カテーテル12の遠位部分または近位部分は、患者の体内に配置されたときに螺旋形状をとるように構成され、神経刺激中にカテーテル12を血管壁に固定するのを補助する、またはカテーテル12を安定させることができる。螺旋形状は、血管内及び標的神経に対して、電極34を異なる半径方向位置に配置することができる。血管内の様々な半径方向位置(いずれかの螺旋形状によるものでもそうでなくても)、または標的ネブから様々な距離(いずれかの螺旋形状によるものでもそうでなくても)で電極34を選択することは、神経の刺激に役立ち得る。例えば、特定の例では、神経により近い電極34で神経を刺激することが望ましい(例えば、より強い呼吸筋反応を得る)ことがあり、他の例では、神経から遠く離れている電極34で神経を刺激することが望ましい(例えば、呼吸筋の反応を弱める、または不要な神経の刺激を防ぐため)場合がある。
【0065】
カテーテル12の電極34は、参照により本明細書に組み込まれる(上記を参照)米国特許第9,242,088号に記載されているように、カテーテル12の表面に印刷された導電性インク(ポリマーまたは他の媒体に懸濁された銀、金、グラフェンまたはカーボンフレークなど)によって形成され得る。これらの導電性インクは、カテーテル12上に直接堆積及び付着され、露出した電極34以外、外側ポリウレタンまたは他の可撓性の絶縁フィルム/材料で封止させてもよい。
【0066】
横隔神経に電荷が送達されると、横隔膜筋が収縮し、胸腔内に陰圧を生成することができる。次に、肺が拡張して、ある量の空気を吸い込む。この横隔膜筋の収縮は、図1に示すように、触診または胸腔に手を置くことによって手動で感知できる。あるいは、図1に示されるように、呼吸回路に気流または気道圧センサを配置するか、センサ16、例えば加速度計またはジャイロスコープを胸部領域の皮膚の表面にて配置することによって、呼吸活動を感知できる。センサ16は、制御ユニット18にハードワイヤードされ得る、または無線の送信機及び受信機を使用して接続され得る。
【0067】
いくつかの例では、カテーテル12は、患者に容易に挿入する(または患者に対して固定する)ことができる。多くの実施形態では、カテーテル12は、外科手術を必要とせずに、望むときに患者の身体から容易に取り外すことができる。例えば、図1のカテーテル12は、患者が独立して呼吸したら、簡単に引き出すことができる。
【0068】
図2は、図1と同様に、頸部と胸部の解剖学的構造を示している。図2はまた、肋間筋の領域を概略的に示している。肋間筋には、肋骨の間を延び、胸壁の形成と移動に寄与するいくつかの筋肉群が含まれる。肋間筋は呼吸の機械的側面に関与している。これらの筋肉は、胸腔の大きさを拡大及び縮小して、呼吸を促進するのに寄与する。
【0069】
図2は、経皮電極アレイ13を含む医療システム200を示す。アレイ13は、肋間筋に近接して患者の皮膚の表面に配置された一連の電極44を含む。電極44は、任意の適切な形状及び大きさを有することができ、電気的活動を感知することや、皮膚を通して筋肉または神経を刺激することなどの、様々な機能を果たすことができる。電極44は、ステンレス鋼、導電性炭素繊維を装填したABSプラスチック、銀/塩化銀イオン化合物、または他の任意の適切な材料、または材料の任意の組み合わせを含むことができる。各電極44は、電極44を皮膚に取り付けるための接着剤を含むことができるポリマーまたはエラストマーのフィルムで覆うことができる。あるいは、電極フィルムは、信号のより良い伝導のために電解質ゲルを含んでもよい。いくつかの実施形態では、他の形態の電極、例えば皮下または針電極を使用して肋間筋を刺激することができ、またはシステムは超音波などの他の形態の刺激エネルギーを使用して標的神経または筋肉を活性化することができる。
【0070】
図2はさらに、チューブ上、及び/またはチューブ46の全部または一部を取り囲む膨張可能なバルーン上に、電極48を有する経食道チューブ46を示す。電極48は、銀のインク、金のインク、グラフェンインク、または炭素ベースのインクなどの導電性インクを使用して、チューブ46(またはバルーン)の表面にプリントすることができる。あるいは、接着剤を使用して、白金イリジウム、ステンレス鋼、チタン、または同様の材料などの電極材料をチューブ46に固定し、電極48を制御ユニット18に1つまたは複数の導線で接続することによって、電極48を形成することができる。電極48は、横隔神経または迷走神経またはいくつかの他の神経学的要素からの信号を感知するために使用され得る。電極48はまた、例えば、迷走神経、横隔神経、または交感神経節のうちの少なくとも1つなどの神経を刺激するために使用され得る。
【0071】
追加または代替として、図2のシステム200は、図1に記載されるように、電極及び/またはセンサを有するカテーテルを含み得る。陰圧換気を回復するために、システム200は、一方または両方の横隔神経を刺激して、肋間筋を刺激するとともに横隔膜筋を活性化し、胸腔内に陰圧を生成することができる。システムは、血管内カテーテル(使用されている場合)または経食道チューブ46の電極の1つから横隔神経または迷走神経の活動を感知することによってフィードバックを受け取ることができる。神経活動からのフィードバックを使用して、適切な換気を維持するために必要な刺激パラメータ、及び刺激パラメータの調整が必要であるか否かを判定できる。システムは、他のいずれかの適切なセンサからフィードバックを受信して、適切な刺激パラメータを判定することもできる。システム100またはシステム200のいずれかに、以下の各センサの1つ以上を含めることができる:気流センサ、気道内圧センサ、加速度計、ジャイロスコープ、血液ガスセンサ、または炎症性物質を検出するためのセンサである。いくつかの例では、システム100またはシステム200は、炎症性物質を検出するためのセンサを含み得る。そのような炎症性物質の例には、C反応性タンパク質、一酸化窒素、または炎症性疾患(例えば、炎症性腸疾患)のバイオマーカーが含まれるが、これらに限定されない。
【0072】
図3は、例示的な刺激治療システム300の様々な構成要素のブロック図を示す。カテーテル12またはアレイ13などの刺激装置は、任意の数の電極(電極34a~34jとして示される)を有し得る。電極がカテーテルに含まれている場合、カテーテルは任意の数の管腔(管腔38、40、42、58、及び60として示されている)を含むことができ、それぞれが1つ以上のガイドワイヤまたは光ファイバカメラを保持し得る、または流体の送達や血液サンプルの抽出に使用され得る。システム300の任意の管腔は、本明細書に記載されるデバイス(例えば、センサ、ガイドワイヤ、光ファイバカメラ)のいずれかを含み得る、またはそれに流体接続され得る、及び/または本明細書に記載される機能(例えば、流体の送達、血液サンプルの抽出)のいずれかのために使用できることを理解されたい。
【0073】
システム300は、本明細書で説明される制御ユニットのいずれかの一部であり得るコントローラ64を含み得る。システム300の構成要素のそれぞれは、コントローラ64に動作可能に連結され得、コントローラ64は、神経刺激中の電極34の動作を管理し、様々なセンサ及び電極34による情報の収集を制御し、流体用管腔についてこれらの実施形態の流体の送達または抽出を制御し得る。本明細書で説明される様々なモジュールは、コンピューティングシステムの一部であり得、図3で説明目的のみで分離されており、モジュールを物理的に分離する必要はないことを理解されたい。
【0074】
電極34a~34jは、コントローラ64に通信可能に連結され得るスイッチング電子機器56に電子的に連結され得る。図3に示されるように、電極34の一部は、遠位電極34a~34dであり得、電極34の一部は、近位電極34g~34jであり得る。電極34e及び34fなどの他の電極34は、近位電極と遠位電極との間に配置され得、カテーテル12の配置に応じて、左右いずれかの横隔神経26、28を刺激するために使用され得る。また、ハブ36がスイッチング電子機器56に接続されてもよく、電極として使用されてもよい。
【0075】
電極34a~34jは、神経を電気的に刺激するため、及び生理学的情報を収集するための両方について使用され得る。神経刺激に使用される場合、電極の第1の組み合わせ(例えば、1つ、2つ、3つ、またはそれより多い電極)は、第1の神経(例えば、右横隔神経)の刺激のために第1の刺激モジュールチャネル70に電気的に連結され得、電極の第2の組み合わせ(例えば、1つ、2つ、3つ、またはそれより多い電極)は、第2の神経(例えば、左横隔神経)の刺激のために第2の刺激モジュールチャネル72に電気的に連結され得る。電気信号は、第1及び第2の刺激モジュールチャネル70、72から電極の組み合わせに送られ、電極に神経を刺激させることができる。他の例では、2つを超える電極の組み合わせ(例えば、3つ、4つ、またはそれより多く)を使用して1つまたは複数の標的神経を刺激することができ、システム300は2つを超える刺激モジュールチャネルを含むことができる。
【0076】
電極34a~34fは、以下でさらに説明されるように、神経活動、ECG、または電気インピーダンス、呼吸などのような患者からの生理学的情報を感知するようにさらに構成され得る。感知に使用されるとき、電極34a~34fの1つまたは複数は、信号取得モジュール68に電子的に連結され得る。信号取得モジュール68は、電極34から信号を受信し得る。
【0077】
スイッチング電子機器56は、電極34を第1の刺激モジュールチャネル70、第2の刺激モジュールチャネル72、または信号取得モジュール68に選択的に連結し得る。例えば、電極34(例えば、電極34a)がECG信号のような信号を取得するために使用されている場合、その電極34は、スイッチング電子機器56を介して信号取得モジュール68に連結され得る。同様に、一対の電極(例えば、電極34b及び34d)が右横隔神経28を刺激するために使用されている場合、これらの電極は、第1の刺激モジュールチャネル70に、スイッチング電子機器56を介して連結され得る。最終的に、一対の電極(例えば、電極34g及び34h)が左横隔神経26を刺激するために使用されている場合、これらの電極は、スイッチング電子機器56を介して第2の刺激モジュールチャネル72に連結され得る。スイッチング電子機器56は、どの電極34が刺激に使用され、どの電極34が任意の所与の時の感知に使用されるかを変更することができる。一例では、任意の電極34を神経刺激に使用することができ、任意の電極34を本明細書で説明する感知機能に使用することができる。言い換えれば、各電極34は神経を刺激するように構成でき、各電極34は生理学的情報を感知するように構成できる。
【0078】
信号取得モジュール68はさらに、患者から生理学的情報を収集するように構成された1つまたは複数のセンサに連結されてもよい。例えば、システム300は、血液ガスセンサ62または圧力センサ90の1つ以上を含み得る。これらのセンサは、カテーテル12の外表面上の、管腔との流体連通において、患者の外側のカテーテル12の管腔、または他の適切な場所に配置され得る。一例では、血液ガスセンサ62は、管腔60に収容される、または流体的に接続され得る一方で、圧力センサ90は、管腔58に収容される、または流体接続され得る。血液ガスセンサ62は、患者の血液中のOまたはCOの量を測定し得る。圧力センサ90は、患者の中心静脈圧(CVP)を測定することができる。システム300は、追加または代替として、呼吸数、心拍数、ECG、体温、動き、または気流など、患者の他の生理学的パラメータを測定するように構成された他のセンサを含み得る。
【0079】
信号取得モジュール68は、電極34、血液ガスセンサ62、神経センサ(図示せず)、及び/または圧力センサ90のうちの1つまたは複数から受信した信号をシステム300の適切な処理/フィルタリングモジュールに送信することができる。例えば、圧力センサ90からの信号は、中心静脈圧力信号処理/フィルタリングモジュール84に送信することができ、そこで信号は、CVP情報の解釈を助けるために処理及びフィルタリングされる。同様に、血液ガスセンサ62からの信号は、血液ガスレベルを判定するために処理及びフィルタリングするために、血液ガス信号処理/フィルタリングモジュール86に送信され得る。電極34からの信号は、それらが感知に使用される場合、神経信号処理/フィルタリングモジュール80、ECG信号処理/フィルタリングモジュール82、またはインピーダンス信号処理/フィルタリングモジュール88に適宜送られ得る。電極34または他のセンサからの信号は、必要に応じて、適切な処理/フィルタリングモジュールに送られる前に信号を増幅するために、増幅モジュール78に送られてもよい。
【0080】
一実施形態では、センサは、神経信号から情報を検出することができ、患者への治療の送達の管理を促すことに寄与するために使用することができる。例えば、呼吸筋(例えば、横隔膜)の電気的活動、ならびに肺伸展受容器からの迷走神経信号は、外部呼吸補助及び/または呼吸筋の刺激の送達に関連するパラメータを最適化するために使用され得る。
【0081】
中程度から高程度の意識の患者に対して、横隔膜の電気的活動は、患者の神経が呼吸を駆立てる正確な反射をもたらすことができる。いくつかの例では、横隔膜の電気的活動は、横隔神経の活動を感知することによって測定され得る。そのような測定は、横隔神経の近くにある電極を使用して、または筋電図検査によって実行することができる。この神経信号に加えて、肺の伸展を感知して吸気の量を制限し、それにより過膨張を防止し(へーリング・ブロイエル膨張反射)、呼気の最中に肺のデクルートメントを防ぐ(へーリング・ブロイエル収縮反射)、迷走神経を介した反射がある。
【0082】
外部呼吸補助によって与えられる陽圧、及び刺激された呼吸筋系によって与えられる陰圧は、これらの神経信号に応答するように調節及び調整することができる。例えば、電気的に刺激された呼吸筋(例えば、陰圧呼吸)によって提供される呼吸の仕事を増加させることは、人工呼吸器から必要とされる陽圧の減少を可能にし得る。陽圧の低下は、気圧外傷や肺の伸展の損傷の可能性を減らすことができる。
【0083】
人工呼吸器は、呼気の終末において肺の開いた部分を保持するために呼気終末陽圧(PEEP)を利用して、デクルートメント及び無気肺から保護することが多い。しかし、PEEPは肺心血管抵抗を増加させる可能性があり(例えば、心係数に影響を与える)、死亡率を増加させ、一定の患者で他の合併症を引き起こすことが示されている(Gavalcanti et al., Effect of Lung Recruitment and Titrated Positive End-Expiratory Pressure (PEEP) vs Low PEEP on Mortality in Patients With Acute Respiratory Distress Syndrome: A Randomized Clinical Trial, JAMA, 2017 Oct 10;318(14):1335-1345)。PEEPの負の副作用を回避しながら、デクルートメント及び無気肺を防ぐために、本明細書に記載の方法は、フィードバックシステムを使用して、肺への陰圧の送達とタイミングを正確に合わせることができる。一例では、センサを使用して、迷走神経、横隔神経、または他の神経からの信号とともに、患者モニタリングシステムまたは外部呼吸補助デバイスからの信号を測定して、「活動情報」を提供することができる。次に、活動情報(例えば、神経活動情報)を評価して、呼吸サイクル全体、すなわち吸気と呼気の間の筋肉刺激(例えば、電気刺激)のタイミング及び振幅をガイドすることができる。一例では、吸気の終末に肺の開いた部分を保持するために、外部呼吸補助(例えば、人工呼吸器)からの吸気サイクルの完了後、横隔膜または他の呼吸筋に、いくつかの例では異なる大きさで、刺激を送達し続けることができる。結果として生じる呼気終末陰圧(NEEP)は、肺組織のデクルートメントを軽減し、無気肺を防ぐことができる。一般に、本明細書で説明する様々な治療では、刺激は、吸気期間中、呼気期間中、吸気/呼気間の休止中、または患者の呼吸サイクルの任意の所望の部分の最中に、患者が外部呼吸補助を受けているかどうかに関係なく、発生のタイミングを合わせることができる。電気インピーダンストモグラフィ(EIT)などのデバイスは、患者の胸壁にある電極を利用して、胸部インピーダンスが変化するに至る換気中の肺の容量の変化を測定する。EITは、呼吸機能を評価し、NEEPの適用を誘導するために、単独で、または外部呼吸補助と併用して使用できる。
【0084】
非限定的な例として、横隔膜の電気的活動は、カテーテル12上の電極(2017年8月2日に出願された米国特許出願第15/666,989号に開示され、参照により本明細書に組み込まれるようなもの)などのいくつかのデバイス/方法のうちの1つ、及び食道用プローブ、またはいくつかの他のセンサによって、感知され得る。別個に、迷走神経の電気信号は、カテーテル12(米国特許出願公開第20050131485号(A1)に開示されているようなもの)または他のセンサによって検出することができる。肺には、肺の拡張を感知する肺伸展受容体が含まれている。肺の過剰膨張は、迷走神経を介して脳に伝達される疼痛の信号を生成し得る。疼痛の信号の検出は、外部呼吸補助デバイス(例えば、人工呼吸器)からの圧力の大きさを低下させるべきであることの指標となり得る。この状況では、本明細書に記載のシステム及び方法を使用して、人工呼吸器の補助と刺激とのバランスを取り、陽圧換気システムの有害な影響を減らすことにより、患者への呼吸の支援を「神経的に最適化」することができる。外部呼吸補助と神経及び/または筋肉の刺激を組み合わせることで、適切な呼吸補助(ガス交換など)を提供し、呼吸筋の活性化/運動を導きながら、過度の伸展の肺損傷及び確実な肺のリクルートメント低下の潜在可能性を最小限に抑えることができる。
【0085】
いくつかの例では、本明細書で説明されるシステムは、呼吸筋刺激装置(例えば、カテーテル12、電極44、及び/またはチューブ46)、神経センサ(例えば、本明細書で説明される任意の電極、または神経または筋肉の電気的活動を感知するように構成される別のセンサ)、外部呼吸補助デバイス(例えば、外部呼吸補助部88)、及び患者の呼吸の努力に比例し、同期して、疼痛受容体の信号伝達を考慮して、1つ以上の電気神経信号の測定に基づいて、刺激の送達と換気補助を管理するための制御システム(例えば、コントローラ64、または本明細書に記載の制御ユニットのいずれか)を含み得る。外部呼吸補助デバイス(例えば、人工呼吸器)と筋肉刺激装置の間のタイミングと調整は、患者が必要とする補助を最適化するために同期させることができる。
【0086】
コントローラ64はさらに、ディスプレイ74と通信し得、ディスプレイ74は、ユーザインターフェースとして機能し得、a2を有し得る(図1を参照のこと)。システム300は、ソフトウェア/ファームウェア76をさらに含み得、これは、本明細書に記載される様々な機能を実行するために必要な命令を含み得る。システム300はまた、カテーテル12の感知動作中に収集された情報を格納するため、及び/または任意のモジュールの動作に関連する命令または本明細書に記載の任意の機能を実行するための命令を格納するためのデータストレージ79を含み得る。カテーテル12またはアレイ13などの刺激装置は、独自の識別機能(RFIDなど)を含むことができ、本明細書で説明するシステム(例えば、1つまたは複数のコントローラ/プログラマ18、64を有する)が複数の患者の治療に同時に使用される場合、識別機能により、システムは各患者を独自に識別し、その患者の保存された患者のデータにアクセスできる。
【0087】
電極(例えば、カテーテル12またはアレイ13の一部として)が患者または体内に配置されると、様々な電極または電極の組み合わせを試験して、対象の神経を特定し、どの電極が最も効果的に対象の神経を刺激するかを判定することができる。例えば、試験は、右横隔神経を特定し、遠位電極アセンブリ内のどのグループの(例えば、カテーテル12の)遠位電極が右横隔神経を最も効果的に刺激するかを判定するために行われてもよい。同様に、試験は、左横隔神経を特定し、近位電極アセンブリ内の近位電極の(例えば、カテーテル12の)どのグループが左横隔神経を最も効果的に刺激するかを判定するために行うことができる。同様に、試験は、肋間神経(複数可)を特定し、どのグループの電極(例えば、カテーテル12、経皮電極アレイ13、またはその他いずれかの電極アレイ)が肋間神経(複数可)を最も効果的に刺激するかを判定するために、行うことができる。
【0088】
この試験及び神経位置は、コントローラ64/制御ユニット18を介して制御及び/またはモニタリングすることができ、これは試験プログラミング及び/または適用を含み得る。簡単に言及すると、「コントローラ」は、コントローラ64、制御ユニット18、または本明細書で説明される任意の他の制御システム/ユニットを指し得る。コントローラは、電極、及び電極の組み合わせを試験して、電極のどの組み合わせ(双極、三極、四極、多極)が右横隔神経、左横隔神経、迷走神経、及び/または肋間筋を最も効果的に刺激するかを判定できる。
【0089】
非限定的な例として、試験は、選択された電極に電気インパルスを系統的に送るための信号発生器(例えば、図1の信号発生器14)の使用を含み得る。患者の状態を観察することにより、または(カテーテル内またはカテーテルとは別個の)センサを使用することにより、理想的な刺激電極を識別することができる。電極は、刺激電極及び感知電極の両方として機能することができ、医療システムは、患者の状態を感知するために使用できる人工呼吸器に統合することができる。さらに、例えば、コントローラは、(a)電極アセンブリから第1の刺激グループの電極を選択して左横隔神経を刺激する、(b)電極アセンブリから第2の刺激グループの電極を選択して右横隔神経を刺激する、(c)電極アセンブリから第3の刺激グループの電極を選択して迷走神経を刺激する、(d)第1の刺激グループの電極に対して第1の刺激電流を選択して左横隔神経を刺激する(e)第2の刺激グループの電極に対して第2の刺激電流を選択して右横隔神経を刺激する、(f)第3の刺激グループの電極に対して第3の刺激電流を選択して迷走神経を刺激するようにプログラム及び/または活性化され得る。電極と電流レベルの選択は、事前にプログラムするか、患者の特性に基づいて入力するか、コントローラで様々な電極グループと電流レベルを試験し、患者の反応をモニタリングして電極対と電流レベルを判定することができる。
【0090】
あるいは、小さなハンドヘルドデバイスからの電流を使用して呼吸筋の神経を刺激する経皮的非侵襲性神経刺激デバイスを使用し、皮膚を通して標的神経を刺激することができる。あるいは、1つまたは複数の他の方法を使用して、例えば、コントローラに接続された皮下電極または神経カフなどの神経を刺激することができる。
【0091】
より多大な横隔膜応答が望まれる場合、標的筋肉の感知された反応に基づいて判定されるとき、神経刺激のために、神経に近い電極34が選択され得る。他の場合では、より低次の横隔膜応答が望まれる場合、感知された筋肉反応に基づいて判定されるとき、神経刺激のために、神経から遠い電極34が選択され得る。
【0092】
一例では、神経刺激のために1つ以上の電極を選択する方法は、血管内カテーテル12を、a)左鎖骨下静脈22または左頸静脈32のうちの少なくとも1つ、及びb)上大静脈24に挿入すること、この場合カテーテル12は、複数の電極34を含み、複数の電極34の各電極34は、神経を刺激するために電気信号を放出するように構成される;複数の電極34のうちの1つ以上の電極34を使用して、神経から放出された電気信号を取得すること;取得した電気信号に基づいて、神経刺激のための電極34または電極の組み合わせを選択すること;及び選択された電極34または電極の組み合わせを使用して、神経を刺激することを含み得る。
【0093】
血液ガスセンサ62からの情報は、刺激パラメータを調整するために、医療専門家によって、またはコントローラ64によって使用されてもよい。例えば、血中O濃度が低い(または血中CO濃度が高い)場合、コントローラ64は、電極34に信号を送信して、より高い電荷(振幅×パルス幅)または周波数を有する刺激信号を放出し、ため息の呼吸を刺激することができる。逆に、血中O濃度が高い(または血中CO濃度が低い)場合、コントローラ64は、電極34に、より低い電荷または周波数を有する刺激信号を放出させることができる。血液ガスセンサ62からの情報に基づいて、以下のパラメータを調整することができる:刺激パルスの振幅、刺激パルスの幅、刺激パルスの周波数、刺激の持続時間、及び刺激/パルス列間の間隔(例えば、刺激された呼吸数)。
【0094】
本明細書に記載されているパラメータ調整のいずれについても、刺激パルスの振幅、幅、及び/または周波数を増加させると、刺激された呼吸の最中に肺の体積が増加し得る。刺激の持続時間を長くすると、肺の体積が増加、及び/または呼吸を刺激している間に空気が肺に留まる時間の長さが増加し、そのため、ガス交換時間が延長される。呼吸刺激数を増加させると、所与の期間にわたって追加のガス交換期間が可能になり、それによりガス交換の量及び/または速度が増加し得る。
【0095】
本明細書に記載のシステム及びカテーテル12は、感知機能の任意の組み合わせを含み得る。例えば、カテーテル12は、ECG、インピーダンス、神経活動、血液ガスレベル、及びCVPを感知するように構成され得、システムは、カテーテル12を配置し、刺激のための電極34を選択し、センサまたは電極34が受け取る情報の1つ以上の種類に基づいて刺激パラメータを選択するように構成され得る。
【0096】
呼吸筋を強化するための例示的な方法
前述のように、本明細書に記載のシステム及び方法は、患者が外部呼吸補助(例えば、血液ガスを修正または他の方法で強化し、及び/または患者の呼吸の仕事を減らすのに役立つ任意のデバイスまたは方法)を受ける必要性を低減または排除し得る。外部呼吸補助を受けている多くの患者は呼吸筋の萎縮に苛まれているため、本明細書に記載のシステム及び方法を使用して、これらの筋肉の強度を時間をかけて構築することができる。後述するように、比較的少数の刺激サイクルは、患者がもはや外部呼吸補助を必要としなくなるまで、呼吸筋の強さを大幅に改善することができる。
【0097】
患者の呼吸筋を刺激するための様々な例示的な方法及びシステムでは、刺激装置は、呼吸筋を活性化することができる神経に隣接して配置されてもよい。刺激装置は、本明細書に記載される任意の刺激デバイスであり得、1つ以上の神経または筋肉を刺激するための1つ以上の電極のセットを含み得る。
【0098】
最大吸気圧(MIPまたはPIMax)は、呼吸筋の疲労が疑われる患者における呼吸筋の強さの広く使用されている尺度である。これは、最大の随意吸気努力の間の上気道圧(外来患者の場合は口、挿管または気管切開された患者の場合は気管)を測定することによって判定される。測定された圧力は、吸気筋によって生成された圧力と、肺と胸壁の弾性反跳圧力の複合である。多くの場合、絶対的なMIP値が約30cmHO以下の患者は、ある程度の外部呼吸補助を必要とする。本開示の様々な例では、患者のMIPが所定の値に達するまで刺激治療を施すことができる。場合によっては、所定の値は少なくとも30cmHOになることがある。他の場合では、所定の値は、少なくとも35cmHO、少なくとも40cmHO、少なくとも45cmHO、または少なくとも50cmHOであってよい。
【0099】
いくつかの治療方法では、最初に外部呼吸補助が24時間の期間の患者の呼吸の一部に提供されてもよい。様々な例において、外部呼吸補助は、最初に24時間で患者の呼吸の少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%提供され得る。本明細書に記載されるように、刺激治療は、患者が外部呼吸補助を受けている間に施されてもよい。少なくともいくつかの刺激治療を施した後、患者の呼吸筋が刺激から強化し始めると、外部呼吸補助のレベルが低下する可能性がある。一例では、外部呼吸補助によって提供される圧力、または外部呼吸補助によって支援される呼吸の割合の少なくとも1つは、少なくともいくつかの刺激治療を施した後に低減されてもよい。いくつかの例では、外部呼吸補助は、少なくともいくつかの刺激治療を施した後に患者から取り外される。刺激治療は、外部呼吸補助を取り外した後に継続できる(例えば、少なくとも1日間、少なくとも2日間、少なくとも3日間など)。いくつかの例では、薬物は、刺激治療の前、最中、または後に患者に送達されてもよい。
【0100】
図4図4-1及び図4-2)のフローチャートは、例示的な実施形態による治療方法を説明する。治療を提供するための例示的な方法は、ステップ4000で開始することができる。ステップ4010では、電極を有する刺激装置、例えばカテーテル12または経皮刺激装置を、呼吸筋、または呼吸筋に近接する神経を活性化する神経に隣接して配置することができ、ステップ4020において、電極は制御ユニットに接続されてもよい。いくつかの例では、刺激装置は、血管内用電極及び経皮用電極、または食道用電極及び経皮用電極などの電極の複数のセットを含むことができる。刺激装置の電極は、一度に1つ以上の呼吸筋を刺激するために使用できる。例えば、第1のセットを使用して第1の呼吸筋を刺激でき、第2のセットを使用して第2の呼吸筋を刺激することができる。他の例では、両方の電極のセットを使用して、同じ呼吸筋を刺激することができる。第1及び第2の呼吸筋は、横隔膜、肋間筋、または呼吸に影響を与える他の任意の筋肉であり得る。ステップ4010及び4020は任意の順序で実行できる。
【0101】
ステップ4030~4070は、1つ以上の呼吸筋に治療を送達するための1つ以上の電極を選択するために使用され得るマッピング(例えば、電極識別)プロセスを示す。マッピングプロセスは、操作者によって実行されてもよく、または事前にプログラムされたコントローラによって自動的に実行されてもよい。操作者は試験のために様々な電極または電極の組み合わせを選択できる。さらに、操作者または自動化システムは、刺激閾値を判定し、刺激治療のための電極を選択し、及び/または治療のための理想的な刺激レベルを判定することができる。
【0102】
ステップ4030において、第1の電極または電極の組み合わせ(例えば、電極対)は、選択された1つまたは複数の電極が治療に適しているかどうかを判定するための試験のために選択されてもよい。ステップ4040を参照すると、電極または電極の組み合わせは、電気信号を放出するように活性化/刺激され得る。電気信号は、呼吸筋の収縮を引き起こせる神経または筋肉を刺激できる。図4の例では、ステップ4050において、横隔膜筋反応が観察されるかどうかについて判定が行われる。観察される場合、識別された1つまたは複数の電極を使用して、検討中の呼吸筋(例えば、横隔膜)に治療を送達すること(ステップ4070)ができる。横隔膜の応答が観察されない場合、次の電極または電極の組み合わせが選択され(ステップ4060)、ステップ4040及び4050に関連して前述したように試験されてもよい。
【0103】
呼吸筋の収縮は、視覚的に、または操作者による触覚フィードバックを介して検出することができる。呼吸センサ、気流センサ、モーションセンサ、EMG検出器などのセンサを同様にまたは代替的に使用して、刺激装置が目的の呼吸筋を所望のレベルで効果的に活性化していることを確認できる。人工呼吸器の圧力波形などの患者用モニタからのデータを使用して、筋肉の刺激/収縮のレベルを評価できる。呼吸筋の収縮を感知すると、電極の選択及び/または刺激レベルは、適切な治療を提供するために、操作者によって、またはコントローラ64によって自動的に、所望のレベルに調整され得る。一例では、少なくとも1つの刺激パラメータは、呼吸筋の所望の収縮を達成するように調整される。ステップ4040~4070は、複数の電極セットのそれぞれに対して繰り返され、検討中の各呼吸筋(例えば、左半横隔膜、右半横隔膜、及び/または肋間筋)に治療を提供するための電極を識別する。
【0104】
ステップ4080で、選択された各電極または電極の組み合わせの閾値が識別される。閾値は、筋肉反応を誘発するのに必要な刺激の1つ以上のパラメータ(例えば、電荷、振幅、周波数、またはパルス幅)のレベルであり得る。刺激閾値は、図1の手書きの図によって示されるような患者の呼吸筋を触診することによって判定され得る。他の例では、刺激閾値は、外部呼吸補助システムからの圧力または体積のデータの少なくとも1つを観察することによって判定され得る。特定の例では、刺激閾値は、中心静脈圧によって判定され得る。いくつかの例では、刺激閾値は、例えば、加速度計またはインピーダンスセンサなどのデバイスを使用して測定され得る。ステップ4090において、選択された各電極または電極の組み合わせに対する刺激パラメータが判定され得る。刺激パラメータは、振幅、周波数、刺激レート、刺激の保持、または本開示で言及される任意の他のパラメータを含み得る。
【0105】
ステップ4100では、1つまたは複数の呼吸筋を強化するために治療を送達することができる。神経/筋肉の刺激は、操作者によって、コントローラによって自動的に、または患者によって開始されてもよい。例えば、患者が治療セッションを開始してもよく、または治療セッションの1つ以上の呼吸(例えば、呼吸筋の収縮)を開始してもよい。一例では、治療は、それぞれが10の刺激を含み、各治療セットの間に休息期間がある4つの治療セットを含むことができる。他の特定の治療が以下でより詳細に説明されており、ステップ4100で送達され得る。ステップ4110では、患者は、次の治療セッションの前に休息できる。言い換えると、電気刺激は、次の治療セッションまでの期間、中断されてもよい。一部の例では、休息期間は1~3時間のことがある。他の例では、休息期間は24~48時間のことがある。さらに他の例では、休息期間は3~5時間、5~7時間、8~24時間、または48時間より長くてもよい。
【0106】
ステップ4120では、呼吸筋に対してより多くの筋力トレーニングが必要である、または望まれるかどうかについての判定を行うことができる。いくつかの例では、外部呼吸補助が患者から取り外せるまで、追加の治療セッションが実行され得る。追加の治療が必要な場合、プロセスはステップ4030で再び開始され、電極が選択され、次いで治療を1つ以上の呼吸筋に送達するのに使用できる。追加の治療が必要でない場合、電極を患者から取り外してもよい(ステップ4130)。ステップ4140において、治療が施された方法は終了され得る。
【0107】
治療セッションの前または最中のいずれかであるステップ4090及び4100を再び参照すると、操作者または自動コントローラは、以下の入力のうちの1つまたは複数を選択及び調整することができる。場合によっては、治療セッションの連続する刺激の間で1つまたは複数のパラメータを調整することができる。
【0108】
・刺激振幅:電極(複数可)の電流または電圧の振幅によって特徴付けられる、神経に供給されるエネルギーの量。
・刺激パルス幅または刺激パルス長:電気刺激パルスが送達される時間であり、一般に10~1200マイクロ秒、または100~300マイクロ秒の範囲である。
【0109】
・刺激レート:刺激列(一連の刺激パルス)が供給されるレート。いくつかの例では、刺激治療中に刺激レートを調整することができる。一例では、第1の対の連続する刺激の間の第1の期間は、第2の対の連続する刺激の間の第2の期間とは異なる。
【0110】
・刺激周波数:刺激列で刺激パルスを供給する周波数。様々な例において、刺激周波数の範囲は、1Hzから50Hzの間、10Hzから40Hzの間、または11Hzから25Hzの間である。
【0111】
・刺激の保持:標的の筋肉をさらに運動させるために、刺激パルス列の長さ/期間を延長することにより、筋肉または筋線維が収縮状態で保持される期間。
・刺激から刺激までの休息:治療セットまたは治療セッションのいずれかにおける、連続して刺激される横隔膜の収縮の間の休息期間。1つの例では、0.5秒から120秒の範囲である。刺激が一定期間それぞれの患者の呼吸に与えられる場合、刺激から刺激までの休息は、0.5から4秒の範囲であり得る。あるいは、代替的な例として、患者の筋肉を休息させたり、各刺激または刺激される呼吸の間に患者が外部呼吸補助を受けたりすることができる場合、刺激から刺激までの休息期間は最長で30秒以上にすることができる。
【0112】
・治療セッション:一例では、治療セッションは、比較的短い期間(例えば、約1時間以下)に患者に提供される、刺激された横隔膜の収縮の数を含むことができる。
・治療セッションあたりの刺激:結果として、通常1~150、またはより具体的には10~50の範囲の明確な筋収縮が発生する、治療セッション中の刺激パルス列の数。
【0113】
・刺激セット:場合によっては、治療セッションが治療セットに分割されることがある。例えば、1回の治療セッションで40回の呼吸を刺激すべき場合、これら40回の呼吸は、セットとセットの間の短い時間(例えば、30秒から5分)の休息(例えば、セットからセットまでの休息)を伴う、10回の呼吸の4つの治療セットで刺激することができる。
【0114】
・セットあたりの刺激:セットにおいて送達される刺激の数。1セットあたり5から100回、より具体的には5から20回の刺激の範囲であり得る。
・セッションからセッションまでの休息期間:治療セッション同士の間の時間は、1時間以上、2時間以上、または3時間以上の場合がある。毎日1つのセッションが提供される例では、休息期間は約24時間であり得る。
【0115】
医学的/その他の理由で、または週末などに治療セッションが飛ばされた場合、セッションからセッションまでの休息期間は2~3日になることがある。
・1日あたりの治療セッション:1日あたりの治療セッション数は1~3セッションで、各セッションには10~150回の刺激が含まれ得る。持続時間が約5分以下などの比較的短い治療セッションの場合、状況によっては、特定の患者が1時間に1回または2回の治療セッションを、1日に数時間にわたって受けることが望ましい場合がある。状況によっては、治療セッションが日中の時間に制限され、患者が夜通し回復する機会が与えられる場合がある。
【0116】
・外部呼吸補助の程度:操作者は、治療セッションの様々な部分の間に提供される外部呼吸補助のレベルとタイプを判定できる。外部呼吸補助の程度は、患者の状態、適切なガス交換を提供するのに十分な空気を独立して動かす自身の能力、刺激によって提供される呼吸補助の量、及び患者の意識のレベルに依拠し得る。
【0117】
・毎週の頻度:一部の例では、患者はもはや外部呼吸補助に依存しなくなるまで、週に4~7日間刺激治療を受けることができる。
一実施形態では、操作者は、通常1から150回の刺激に及ぶ治療セットまたは治療セッションのいずれかに対して、操作者インターフェースを介してシステムに関与し、所望の数の刺激パルス列(刺激)を選択して、標的神経または筋肉に送達することができる。あるいは、所望であれば刺激の数を増やすことができる。操作者は、各刺激の持続時間と、各刺激の供給同士の間隔時間、刺激の期間を選択できる。一例では、刺激の各パルスのパルス幅は、50~300マイクロ秒であり得るが、代替としてこの範囲外であってもよい。刺激から刺激までの休息期間、セットまたは治療セッションにおける連続する刺激の間の時間は、0.5~60秒の間であり得る。いくつかの例では、操作者は、様々なランプ形状及び他の特性を含む刺激パルスの振幅及びプロファイルを選択することもできる。プロファイルは、刺激エネルギーが神経に送達される方法、アレイから神経への位置、刺激される筋肉のタイプ、及びそれらの治療のその段階で各患者に望まれる刺激のレベルに応じて異なる場合がある。
【0118】
1つの例示的な治療セッションでは、カテーテル12は、左右の横隔神経26、28に隣接してまたはそれを横切って延びるように脈管構造内に配置されてもよい。適切な遠位及び近位電極対を選択して、呼吸筋、この場合は左及び右の両半横隔膜筋の治療的収縮を引き起こすことができる。操作者は、刺激パルス列の長さを1.2秒に、パルス振幅を閾値の100%に、初期パルス幅を閾値の100%に設定できる。パルス幅は、刺激パルス列の刺激パルス間で変調することができる。場合によっては、パルス振幅は、刺激パルス列の刺激パルス間で変調させることがある。遠隔の手持ち式コントローラ20を使用して、操作者は、10の刺激パルス列の治療セットを提供することができる。いくつかの例では、刺激パルス列のそれぞれは、人工呼吸器によって送達される呼吸または患者の自発呼吸と一致するようにタイミングを合わせることができる。
【0119】
いくつかの実施形態では、治療システムは、人工呼吸器または他の外部呼吸補助システム(例えば、外部呼吸補助部88)と直接通信して、外部のデバイスによって提供される補助と、治療の送達を調整することができる。前述のように、横隔膜筋、神経(横隔神経、迷走神経など)または他の患者用モニタまたは人工呼吸器からの活動を検出するセンサを使用して、人工呼吸器からの刺激及び/または呼吸の送達をトリガーできる。また、非限定的な例として、本明細書に記載のシステムは、患者への呼吸の開始を示す人工呼吸器からの信号を受信するように動作可能に接続(例えば、有線、無線など)でき、システムは刺激パルス列の送達と同期して、呼吸の所望のフェーズと調整することができる。別の例では、操作者は刺激パラメータを設定し、患者に呼吸筋を活性化するように求めることができる。次に、操作者は、筋肉の最大限の運動をもたらすべく患者の努力と電気刺激のトリガーを調整することができる。別の例では、外部呼吸補助部88は、刺激セットまたは刺激セッションの供給の一部またはすべての間に低減または排除さえすることができる。
【0120】
10回の刺激パルス列が提供される例では、それらは10回の連続する呼吸にタイミングを合わせることができ、または操作者は1回以上の呼吸をスキップして患者が刺激同士の間で定期的に休むことを可能にし得る。10回の刺激パルス列が送達された後、患者は、ある期間、例えば、30秒から5分の間休むことが許容され得る。適切な休息の後、操作者は第2のセット、例えば10回の呼吸を開始させ、その後再び休息期間が続くようにすることができる。操作者は、それぞれが10回の刺激を含むいくつかのセット、この例では4セットを送達できる。1回の刺激で筋収縮が起こり得、1~15分の間に合計40回の筋収縮が起こり得る。当然、所望であれば、セッションに必要な数の刺激を単一のセットで供給できる。次に、患者は、別の治療セッションを開始する前に、1時間以上、場合によっては少なくとも3時間、潜在的に24時間または48時間も休むことが許容され得る。場合によっては、2~3回、またはそれより多い治療セッションが毎日行われる。いずれにせよ、呼吸筋に付与される刺激の数は、毎日患者が必要とする呼吸のごく一部であり得る。前述の刺激40回/日の例では、送達される刺激の数は、1日に患者が得る、または患者に送出する呼吸の約0.2%未満である。
【0121】
一例では、刺激パラメータは、筋収縮を引き起こす1つの刺激から次の刺激まで、ある治療セットから次の治療セットまで、あるセッションから次のセッションまで、またはある日から次の日まで、同一であり続けることができる。他の例では、刺激の振幅、刺激の周波数、刺激の保持時間、または呼吸回路の抵抗などのパラメータの1つが、筋肉の収縮を引き起こす2つの刺激の間、2つのセットの間、2つのセッションの間、または2つの日の間で増加または減少し得る。パラメータを変更する際に考慮すべき要因は、患者の忍容性、他の構造の意図しない刺激、疲労、または力の向上に対する望みなどであり得る。
【0122】
図5図5-1及び図5-2)のフローチャートは、別の例示的な実施形態による、呼吸筋の持久力を高めるための治療方法を説明する。ステップ5000~5080は、図4のステップ4000~4080に類似しており、したがって、この場で再度説明しはしない。ステップ5090及び5100を参照すると、治療の2つまたは3つのセッションが1日で送達され得る。治療が毎日繰り返される場合もある。あるいは、1~3日またはそれより多い日のうちの2つの治療日の間に休みがあり得る。
【0123】
ステップ5090を参照すると、1日の第1のセッションは第1のセットを含むことができ、これは、筋肉を収縮させる10~60の高振幅の刺激列(例えば、閾値の150%~300%の電荷または20Hz~40Hzの周波数を有する列のパルスによる刺激)が1~5分間、または1~3分間、低刺激レート(例えば、1分あたり2~15回の刺激)で送達され、その後60秒~3分の短い休息期間が続く。第1のセッションの第2のセットは、高刺激レート(例えば、1分あたり10~40回の刺激)で5~10分、低振幅刺激(例えば、閾値または8Hz~15Hzの周波数に近い電荷を有する列のパルスによる刺激)を含み得る。その日の第2のセッションは、第1のセッションとまったく同じであってもよく、または刺激パラメータの一部を調整することもできる。ステップ5100を参照すると、第3のセッションは、中~高の振幅の刺激(例えば、閾値の100%から150%までの電荷または15Hz~20Hzまでの周波数を有する列のパルスによる刺激)を低刺激レートで(例えば、1分あたり2~12回の刺激)5~10分間、送達することを含み得る。患者は、2つの治療セッションの間に1時間以上、場合によっては少なくとも3時間、潜在的に24時間~48時間もの長い間、休息することが許容され得る。ステップ5120~5140は、図4のステップ4120~4140に類似しており、したがって、この場で再度説明しはしない。
【0124】
図6は、ある期間にわたる2人の患者の最大吸気圧(MIP)の改善に関連する臨床データを示す。2人の患者はそれぞれ、最初に同じ刺激パラメータの刺激治療を受けており、刺激パラメータは、下のグラフの「例示的なパラメータの値」の列に示されている。患者1は、3週間の期間の大半の日の間、治療セッションを受け、絶対的なMIPのレベルは、7日ごとに約12cmHO、または1日あたり1.7cmHO増加した。患者2は6日間にわたって治療を受け、その間、患者の絶対的なMIPは10cmHOから24cmHOに増加し、1日あたり2.33cmHOの増加率となり、その後治療は中止され、MIPは基本的に23~32cmHOの間で一定に留まり、患者が外部呼吸補助を受け続けている間、次の2週間でほとんど改善しないこと、または遅い改善を示した。患者1は、MIP値が約40cmHOに達すると、外部呼吸補助とは関係なく呼吸することができた。
【0125】
ステップ4090または本明細書に記載されている任意の他の治療セッションを再度参照すると、治療セッションの例示的なパラメータは、特定の範囲内に収まり得る。下記の表の「治療パラメータ」と題された第1列目は、治療セッションの様々な特性を示している。「例示的なパラメータの値」と題された第2列目は、列挙された治療パラメータに対応する例示的な数または期間を含む。残りの2つの列は、列挙された治療パラメータの範囲の例示的な下限と上限を示している。一例では、治療セッションは、「例示的なパラメータの値」の列に対応する設定を含み得る。しかし、他の例では、治療セッションは、下限の列と上限の列によって記述された範囲の間の各治療パラメータの設定を含み得る。さらに他の例において、治療セッションは、下記の表に列挙された範囲内にパラメータがほとんど入っていてもよいが、特定のパラメータが列挙された範囲から外れていてもよい。
【0126】
【表1】
【0127】
治療セッションの別の例では、呼吸筋が最大100回収縮することを可能にするために、治療セッションの第1のセットの間に最大100回の刺激を送達することができる。刺激は、少なくとも30秒間、場合によっては1分以上休止することができ、その後、最大100回の刺激の第2のセットを送達することができる。次に、第2の治療セッションが送達されるまで、1時間以上のセッションからセッションまでの休息時間の間、刺激を休止することができる。次のセッションでは、刺激装置が再びアクティブになり、呼吸筋を100回まで収縮させることができる。本明細書に記載されている任意の治療の活性化及び活性化の停止は、1回または複数回繰り返すことができる。
【0128】
さらに、任意の刺激治療または外部呼吸補助と刺激治療の組み合わせは、24時間または48時間など、設定された数の時間または日数の間繰り返されてもよい。
本明細書に記載される任意の例において、刺激装置は、複数の電極のセットを含み得る。第1のセットの電極は、第1の神経または直接呼吸筋に治療を送達するために使用でき、第2のセットの電極は、同じ治療(例えば、同じ刺激パターン)を、同じまたは異なる筋肉を活性化するべく同じまたは異なる神経に送達する、または異なる筋肉に直接送達するために使用され得る。
【0129】
治療セッションの別の例では、24時間の期間で1回以上の治療セッション間が合計2時間以下であり、刺激信号がその合計約2時間以下の期間にわたって送達されることがある。別の例では、刺激信号は、24時間の期間の間で、合計5時間以下の期間にわたって送達されることがある。
【0130】
治療セッションの他の例では、刺激信号は、1つ以上の呼吸筋を収縮させるために、24時間の期間に患者によって得られるまたは患者に送達される呼吸の20%、24時間の期間に患者によって得られるまたは患者に送達される呼吸の10%、24時間の期間に患者によって得られるまたは患者に送達される呼吸の2%、または24時間の期間に患者によって得られるまたは患者に送達される呼吸の0.2%以下が送達されてもよい。
【0131】
別の例では、約3から10分間続く短い刺激治療セッションが、24時間にわたって12~24回、24時間で6~12回、または24時間に1回送達されてもよい。
別の例では、患者がもはや外部呼吸補助を必要としなくなるまで、または、患者が外部呼吸補助をもはや必要としないか、もはや受けていない時間から最長48時間、治療セッションを管理することができる。
【0132】
主題の開示の様々な例は、患者が外部呼吸補助(例えば、機械的換気)の使用を開始した直後に実装されて、呼吸筋の強さ及び/または持久力の損失を低減するのに寄与できる。本開示の様々な例は、患者の肺、心臓、脳、及び/または身体の他の器官に対する損傷のレベルの低減を助長するために使用することができる。
【0133】
本明細書で説明されるシステムは、刺激パルス列のプロファイルを時々変化させるようにプログラムすることができる。例えば、10回ごとの刺激パルス列は、より深いまたは長い呼吸(例えば、ため息の呼吸)を生成するために、他のものより長くなるようにプログラムすることができる。この場合、2つの隣接するパルス列間の刺激パルス列の持続時間は変動する。
【0134】
いくつかの例で、治療が継続されることがあり、刺激装置の作動及び刺激装置の作動の停止に関連するステップは、MIPが所定の値に達するまで繰り返されてもよい。
さらに、本明細書に記載される任意の治療処置のステップは、複数の神経及び複数の呼吸筋に関して実行されてもよい。複数の神経(及び1つ以上の呼吸筋)の刺激を同期させて、患者の1つまたは複数の筋肉を同時に刺激することができる。この同期を達成するために、選択された電極の2つ以上の組み合わせが、治療セッションの最中に同時に活性化され得る。例えば、第1のセットの電極が最大100回電気信号を放出する場合、第2のセットの電極は最大100回電気を放出でき、第2のセットの各放出は第1のセットの電極の放出に対応する。一例では、第1及び第2のセットの電極を使用して、左右の横隔神経を刺激して、左右の半横隔膜の同期した収縮を引き起こすことができる。別の例では、第1のセットを使用して横隔膜を刺激することができ、第2のセットを使用して肋間筋を刺激することができる。両方の刺激は、患者の呼吸サイクルで同時に発生できる。さらに別の例では、患者の人工呼吸器または他の外部呼吸補助の吸気期間中に、患者の神経/筋肉を刺激することができる。
【0135】
本明細書で説明する例は、大半が、治療セッションが医療専門家によって送達されることを考慮しているが、強さを構築するために頻度の低い呼吸筋刺激を同様に送達する治療送達の他の手法を利用することができる。非限定的な例として、本開示のシステムの閉ループで自動化されている例は、X回の呼吸ごとに1回の刺激などの特定のデューティサイクルで呼吸筋に刺激を送達するように設計することができ、この場合Xは、呼吸筋の強さを構築する場合、10から1000の範囲であり得る。この手法は、その間に所定の数の呼吸の休息を伴う周期的な筋肉刺激をもたらすことができる。様々な例では、Xは小さくて2、大きくて10,000にすることができる。本明細書に記載のシステム及び方法を使用して呼吸筋の萎縮ならびに肺及び脳の損傷を防止する場合、より頻繁に、潜在的にはすべての呼吸と同程度に頻繁に刺激を与えることができる。
【0136】
本開示に記載されるように、神経及び/または筋肉を刺激するために、様々な電極が使用されてもよい。例として、本明細書に記載の刺激装置は、神経刺激用電極、気管内用電極、食道内用電極、血管内用電極、経皮用電極、皮内用電極、電磁ビーム電極、バルーン型電極、バスケット型電極、傘型電極、テープ型電極、吸引型電極、ねじ型電極、バーブ型電極、双極電極、単極電極、金属電極、ワイヤ電極、パッチ電極、カフ電極、クリップ電極、針電極、またはプローブ電極の1つ以上を含み得る。さらに、刺激エネルギーは、機械的、電気的、超音波、フォトニック、または電磁エネルギーのうちの少なくとも1つを含むエネルギー形態によって送達され得る。
【0137】
本開示の原理は、特定の用途の例示的な実施形態を参照して本明細書で説明されているが、本開示はそれらに限定されないことが理解されるべきである。当業者及び本明細書で提供される教示へのアクセスを有する者は、さらなる修正、応用、実施形態、及び同等物の代用がすべて、本明細書で説明される実施形態の範囲内にあることを認識する。したがって、本発明は、前述の説明によって限定されると見なされるべきではない。
図1
図2
図3
図4-1】
図4-2】
図5-1】
図5-2】
図6