(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】眼鏡ヒンジ、ヒンジセット、眼鏡フレーム、眼鏡フレームセット及びバネ要素の使用
(51)【国際特許分類】
G02C 5/22 20060101AFI20240401BHJP
G02C 5/02 20060101ALI20240401BHJP
G02C 5/14 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
G02C5/22
G02C5/02
G02C5/14
(21)【出願番号】P 2020535309
(86)(22)【出願日】2018-09-12
(86)【国際出願番号】 EP2018074674
(87)【国際公開番号】W WO2019053093
(87)【国際公開日】2019-03-21
【審査請求日】2021-06-08
(32)【優先日】2017-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】523421007
【氏名又は名称】ロルフ.プロダクションズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】イリャゾヴィチ, マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフ, ローラント
(72)【発明者】
【氏名】ヴァッカー, ヨハネス
【審査官】小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0033790(US,A1)
【文献】米国特許第05410374(US,A)
【文献】米国特許第05631719(US,A)
【文献】国際公開第2009/057171(WO,A1)
【文献】特開2000-098309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 1/00 ― 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼鏡フレーム用の眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)であって、前記眼鏡フレームのリムに帰属する第1のヒンジ部(12)と、前記眼鏡フレームの眼鏡テンプルに帰属する第2のヒンジ部(14)と、を備え、前記ヒンジ部(12, 14)は、2つの前記ヒンジ部(12, 14)に固定された少なくとも1つのバネ要素(16, 102, 104, 216)によって互いに可動に連結されており、前記バネ要素(16, 102, 104, 216)は閉じられ且つゴム弾性を有するように形成されており、2つの前記ヒンジ部(12, 14)はそれぞれ1つの保持要素(18, 218)を含み、当該保持要素の周りには前記バネ要素(16, 102, 104, 216)が少なくとも部分的に巻き付けられており、それぞれの前記保持要素(18, 218)はそれぞれの前記ヒンジ部(12, 14)と一体
に形成されており、
前記ヒンジ部(12, 14)のうちの一方は収容領域(24)を備え、前記収容領域(24)上において前記ヒンジ部(12, 14)のうちの他方の対応する転動領域(22)がヒンジ運動中に転動及び/又は摺動し、
前記収容領域(24)及び/又は前記転動領域(22)は、それぞれ少なくとも2つの接触面(36)を備え、前記接触面(36)は互いに75°~105°の角を有し、
前記第1のヒンジ部(12)及び/又は前記第2のヒンジ部(14)は、少なくとも1つの凹部(34, 106)及び/又は1つの貫通開口を備え、前記凹部内には、前記バネ要素(16, 102, 104, 216)及び/又はそれぞれの保持要素(18, 218)が少なくとも部分的に配置されて
おり、
前記保持要素(18)は運動平面内を延びている、眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)。
【請求項2】
2つの前記ヒンジ部(12, 14)は、前記バネ要素(16, 102, 104, 216)によって、その可動な接続のために互いに張力をかけられている、請求項1に記載の眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)。
【請求項3】
前記ヒンジ部(12, 14)のうちの一方が、前記ヒンジ部(12, 14)のうちの他方に対して、前記眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)がその収納位置と使用位置との間で位置調整され得るよう、
前記運動平面内で運動し得るように形成されている、請求項1又は2に記載の眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)。
【請求項4】
前記ヒンジ部(12, 14)は、前記眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)を、前記収納位置及び/又は前記使用位置において、少なくとも1つのストッパー(28, 52, 110)及び/又は前記収容領域(24)及び/又は前記転動領域(22)の係止面(36)によって安定化させるように形成されている、請求項3に記載の眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)。
【請求項5】
前記眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)は、第1のヒンジ位置領域において、前記運動平面内の第1の角度範囲において、前記バネ要素(16, 102, 104, 216)によって自動的に前記収納位置に位置調整されるように形成されている、
及び/又は
前記眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)は、第2のヒンジ位置領域において、前記運動平面内の第2の角度範囲において、前記バネ要素(16, 102, 104, 216)によって自動的に前記使用位置に位置調整されるように形成されている、
及び/又は
前記眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)は、前記ヒンジ部(12, 14)の互いに対する前記運動平面内における運動が、前記収納位置及び/又は前記使用位置を超えて許容されるように形成されており、前記眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)は、前記バネ要素(16, 102, 104, 216)によって自動的に前記収納位置又は前記使用位置に戻るように形成されている、請求項3又は4に記載の眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)。
【請求項6】
前記眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)は、少なくとも1つの自由度において最大限許容された運動領域を超えた場合に、前記バネ要素(16, 102, 104, 216)が、自動的に前記ヒンジ部(12, 14)のうちの少なくとも一方から緩むように形成されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)。
【請求項7】
前記バネ要素(16, 102, 104, 216)は、取り外し可能に、前記第1のヒンジ部(12)及び/又は前記第2のヒンジ部(14)と接続されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)。
【請求項8】
前記第1のヒンジ部(12)及び/又は前記第2のヒンジ部(14)は、少なくとも1つの支持要素(54)を備え、前記支持要素(54)には前記バネ要素(16, 216)が特定のヒンジ位置領域においてのみ支持されている、請求項1~7のいずれか1項に記載の眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)。
【請求項9】
前記ヒンジ部(12, 14)は、2つのヒンジ部(12, 14)にそれぞれ固定された少なくとも2つのバネ要素(102, 104)によって互いに可動に接続されており、
少なくとも2つのバネ要素(102, 104)は、前記第1のヒンジ部(12)及び/又は前記第2のヒンジ部(14)の凹部(106)内に一緒に配置されている、及び/又は、
前記少なくとも2つのバネ要素(102, 104)のうちの一方は、同一の伸びの下で、前記少なくとも2つのバネ要素(102, 104)のうちの他方とは異なるテンションを有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)。
【請求項10】
前記バネ要素(16, 102, 104)のリング形状によって定義される平面は前記運動平面に対して横方向に延びている、
あるいは
、
前記バネ要素(216)のリング形状によって定義される平面は、前記運動平面に対して平行に延びている、請求項3~5のいずれか1項に記載の眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)を調整可能に形成するためのヒンジセットであって、
前記ヒンジセットは、形成されるべき前記眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)を調整するために選択可能な複数の異なるバネ要素(16, 102, 104, 216)を含み、前記異なるバネ要素(16, 102, 104, 216)は、同一の伸びの下でのテンションに関して及び/又は伸ばされていない状態における長さに関して異なっており、
及び/又は
前記ヒンジセットは、形成されるべき前記眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)を調整するために選択可能な複数の異なる第1のヒンジ部(12)及び/又は複数の異なる第2のヒンジ部(14)を含み、前記異なる第1及び/又は第2のヒンジ部(12, 14)は、それらの収容領域(24)又は転動領域(22)の幾何学的形状に関して異なっている、ヒンジセット。
【請求項12】
少なくとも1つの眼鏡レンズのためのリムと、2つの眼鏡テンプルと、請求項1~10のいずれか1項に記載の眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)と、を有する眼鏡フレームであって、各眼鏡テンプルは、それぞれ2つの前記眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)のうちの1つによって前記リムと可動に接続されている、眼鏡フレーム。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか1項に記載の眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)、及び/又は、請求項11に記載のヒンジセット、及び/又は、請求項12に記載の眼鏡フレー
ムにおける、環状に閉じられた、及び/又は、ゴム弾性を有するように形成されたバネ要素の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼鏡フレーム用の眼鏡ヒンジに関する。更に、本発明は、眼鏡ヒンジを調整可能に形成するためのヒンジセットに関する。それに加えて、本発明は、眼鏡フレーム及び眼鏡フレームセットに関する。そのうえ、本発明は、バネ要素の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の眼鏡は、それぞれのレンズを保持するためのリムと、眼鏡を使用者の頭部に保持するための眼鏡テンプルと、を備えている。そのようなリムと、それぞれの眼鏡テンプルとの間には、大抵の場合、単純な蝶番が設けられている。この蝶番は、通常、特に小さなネジの形態のアクスルピン(Achsstift)によって連結されている。ネジは、蝶番の運動軸を規定している。ヒンジは、眼鏡を眼鏡装着者の頭部の上に載せることができるように、それぞれの眼鏡テンプルをこの運動軸の周りで開くことを可能とする。スペースを節約しつつ安全に眼鏡を収納するために、それぞれの眼鏡テンプルは、それらを一緒にリムの上に又はその近傍に折り畳むために、再び閉じることができる。それにより、眼鏡ははるかに平坦であり、例えば適切なケース内にスペースを節約して収納することができる。これはまた、テンプルが壊れたり、ヒンジが損傷を受けたりするリスクを減少させる。しかしながら、この蝶番は、開く際に過剰に伸展された場合、閉じる際に過剰に圧縮された場合、及び/又は、運動軸によって規定される運動平面に対して横方向に作用する力を受けた場合、容易に損傷を受ける可能性があるという点で不利である。それに加えて、そのような眼鏡ヒンジは、異なる装着者の個々のニーズに適合させることができず、最大限にギャップ及び/又は遊びがなく、眼鏡の確実な座りを保障するために、精密で費用のかかる製造を必要とする。
【0003】
特許文献1から、少なくとも1つの金属製の連結クリップを用いて2つのヒンジ部が互いに連結された眼鏡ヒンジが公知である。このヒンジは、特定のヒンジ位置から使用位置及び収納位置に自動的にジャンプすることができるよう意図されている。それに加えて、ヒンジの特定の過剰伸長が、当該ヒンジが直接的に損傷を受けることなく可能となるよう意図されている。しかしながら、このヒンジにおいて不利なのは、組み立て及びメンテナンスに費用がかかることである。特に、過剰伸展及び/又は連結クリップの永久変形につながるヒンジの運動があった場合には、当該ヒンジはもはや容易に元の形状に戻ることはできない。その際、眼鏡の所有者は、場合によっては、眼鏡技師の下でのメンテナンスのために眼鏡を引き渡すことが必要である。最後に、ヒンジの機能性にも改良の余地がある。
【0004】
デザイナーのフィリップ・スタルク(Philippe Starck)によっても、リムに対するそれぞれの眼鏡テンプルの運動を、単一の軸によって規定された運動平面の外側においても可能とするよう意図された眼鏡ヒンジが公知である。例えば、この眼鏡ヒンジの場合、それぞれの眼鏡テンプルは、直接的に眼鏡ヒンジの損傷に至ることなく、眼鏡のリムに対して下方へ又は上方へ回転され得るよう意図されている。そのために、この眼鏡ヒンジは、間に保持されたボールに支持された2つのヒンジ部を備えている。更に、ヒンジ部のうちの一方は、初期位置への自動的な復帰をもたらすために、金属製の圧縮コイルバネを有するスリーブを介してボールに対して固定される。したがって、この眼鏡ヒンジは、多数の部品を必要とし、製造及び組み立ての両方において複雑且つ高価である。それに加えて、この眼鏡ヒンジは、使用者が自ら容易にメンテナンスすることもできない。特に、ヒンジのバネ要素は、それぞれの眼鏡の眼鏡テンプル内に完全に埋没しているので、外側から容易にアクセスすることができない。最後に、ヒンジの機能性にも改良の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、眼鏡フレーム用の改良された又は少なくとも代替的な眼鏡ヒンジを創作することである。とりわけ、特に頑丈で取り扱いが容易な眼鏡ヒンジを提供することが意図されている。更に、本発明の有利な課題は、眼鏡ヒンジを調整可能に形成するためのヒンジセットを創作することであり、それにより、眼鏡ヒンジを、眼鏡装着者の異なるニーズに容易に適合させることができる。また、本発明の有利な課題は、特に頑丈で取り扱いが容易な眼鏡フレームを創作することである。本発明の別の有利な課題は、それを用いて眼鏡フレームをそれぞれの装着者の異なるニーズに特に良好に適合させることができる眼鏡フレームセットを創作することである。それに加えて、本発明の有利な課題は、バネ要素の新規な使用を創作することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これらの課題は、本発明によって、独立請求項の主題によって解決される。本発明の実用的な発展形態を伴う有利な構成は、それぞれの従属請求項で提示されており、本発明のそれぞれの主題の有利な構成は、本発明のそれぞれの他の主題の有利な構成と見なすことができ、逆もまた同様である。
【0008】
本発明の第1の態様は、眼鏡フレーム用の眼鏡ヒンジであって、前記眼鏡フレームのリムに帰属する第1のヒンジ部と、前記眼鏡フレームの眼鏡テンプルに帰属する第2のヒンジ部と、を備え、前記ヒンジ部は、2つの前記ヒンジ部に固定された少なくとも1つのバネ要素によって互いに可動に連結されているものに関する。バネ要素は、好ましくは環状に閉じられており及び/又はゴム弾性を有するように形成されている。眼鏡ヒンジは3つの異なる部材から成ることができ、それにより、眼鏡ヒンジは構造的に特に単純である。それに応じて、眼鏡ヒンジは、特に容易に製造、組み立て及び/又はメンテナンスすることができる。バネ要素は、それに加えて、過剰負荷に対して特に頑丈であり得る。最後に、そのようなヒンジは、使用者のニーズに個別に適合された有利なモジュール構造を有することができる。
【0009】
2つのヒンジ部は、剛性の軸によってではなくバネ要素によって連結されているので、眼鏡ヒンジは、通常は剛性の軸によって規定される運動平面の外側での運動によって、直接的に損傷を受ける可能性はない。眼鏡ヒンジにおいては、剛性の軸は省略することができる。それにより、眼鏡ヒンジは、特に取り扱いが容易である。特に、それぞれの眼鏡装着者自身が、眼鏡技師に相談する必要なく、眼鏡ヒンジをメンテナンスすることが可能であり得る。それに加えて、2つのヒンジ部がネジによって連結されている蝶番とは対照的に、眼鏡ヒンジは、ヒンジ部が互いに対して繰り返し運動することに起因して緩む傾向がない。それに加えて、特にゴム弾性のバネ要素を使用する場合、過剰伸長及び/又は過剰圧縮は、ヒンジの永久変形をもたらさないが、当該バネ要素は、メンテナンス及び/又は装着者への眼鏡の新たな位置合わせを必要とする。
【0010】
環状に閉じられたバネ要素は、特に容易且つ安価に製造可能である。それに加えて、バネ要素は、特に容易にそれぞれのヒンジ部に固定することができる。また、ゴム弾性のバネ要素も特に安価であり、それに加えて、特に眼鏡テンプルの開閉により規定される通常の運動領域の外側のヒンジ位置に起因して、伸展が大きい場合に特に頑丈である。例えば金属製のバネ要素とは対照的に、ゴム弾性のバネ要素は、永久的に変形しにくく、そのような変形の後、より安価に交換可能である。そのうえ、ゴム弾性材料から成るバネ要素は、特に、同一の又はより少ない製造コスト及び/又は同一の又はより高いロバスト性の下で、金属材料から成るバネ要素よりも軽くすることができる。
【0011】
バネ要素は、例えばゴム材料から形成することができる。バネ要素の材料としては、例えば天然ゴム、ブタジエン-アクリロニトリルゴム、スチレン-ブタジエンゴム、水素化ニトリルゴム、エチレン-プロピレンゴム、熱可塑性ポリウレタンエラストマー及び/又はクロロプレンゴムを使用することができる。特に、バネ要素は、これらの材料のうちの1つ又はそれらの混合物から成ることができる。
【0012】
リムは、眼鏡のそれぞれのレンズを保持するために形成することができる。眼鏡フレームの眼鏡テンプルは、イヤーフック及び/又はヘッドバンドとして形成することができる。例えば、眼鏡テンプルは、眼鏡装着者の耳を少なくとも部分的に取り囲み、それによって眼鏡を装着者の頭部に保持するために形成することができる。代替的に又は付加的に、眼鏡テンプルは、特定のテンションを有する状態で装着者の頭部に横方向において接触することができ、それによって、同様に、眼鏡が鼻から前方及び/又は下方にずれることを防止する。このテンションは、それに応じて、装着者の頭部の上にそれぞれの眼鏡を掛ける際に、眼鏡ヒンジによって、特にバネ要素によって発生させることができる。その場合、眼鏡テンプルの対応する弾性変形性も省略することができ、又は、少なくとも低減することができる。眼鏡ヒンジにおいて、これは特に、眼鏡の装着の間、バネ要素がある程度引っ張られ、それによって、例えば開かれた位置を超える僅かな過剰伸展によっても、眼鏡テンプルが装着者の頭部に対して押し付けられることを意味し得る。
【0013】
好ましくは、バネ要素は、特定のプリテンションが生成されるように2つのヒンジ部に固定され、それにより、第1及び第2のヒンジ部は、バネ要素によって互いに対して保持される。特に、2つのヒンジ部は、それらが特定のプリテンションで互いに対して押し付けられるように、及び/又は、ヒンジ部のうちの一方の少なくともそれぞれ1つの部分領域が、ヒンジ部のうちの他方の1つの部分領域と接触するように、バネ要素によって常に保持され得る。好ましくは、バネ要素は、漸進的且つ実質的に連続的なバネ特性を有する。バネ要素は、圧縮バネ又は引張バネとして形成することができ、バネ要素は、有利には引張バネとして形成されている。引張バネを設けることにより、眼鏡ヒンジは、特にコンパクト且つ頑丈であり得る。好ましくは、それぞれのバネ要素を除いて、2つのヒンジ部の間に連結は設けられていない。それにより、眼鏡ヒンジの構造は、特に単純且つ頑丈である。
【0014】
バネ要素は、例えば取り外し可能に、それぞれのヒンジ部に固定することができる。それにより、眼鏡ヒンジを分解することができる。それに加えて、バネ要素は、損傷した場合に容易に交換することができる。同様に、それぞれのヒンジ部も、損傷した場合に容易に交換することができる。それにより、眼鏡ヒンジは、特にメンテナンスが容易である。それに加えて、内蔵されたバネ要素は、眼鏡ヒンジを異なる要件に適合させることができるように、他のバネ要素、例えば異なるプリテンションを有するバネ要素と容易に交換することもできる。しかしながら、同様に、眼鏡ヒンジ及び/又は眼鏡フレームを異なる要件に適合させることができるように、それぞれのヒンジ部を、例えばリム又はテンプルのような異なる幾何学的形状を有する眼鏡フレーム部品を有する又は有さないヒンジ部と、交換することもできる。
【0015】
バネ要素は、例えば、単純なバンド及び/又はコードとしても形成することができる。バネ要素の断面は、例えば角張った、特に矩形の、及び/又は、丸いものであり得る。角張った、特に矩形の断面は、ヒンジ部に特に容易に保持されることができ、一方、丸い断面は、ヒンジ部上を良好に摺動し、及び/又は、特に安価に製造可能であり且つ頑丈であり得る。バネ要素の材料は、耐UV性のものとして形成することができる。そのために、例えばゴム材料を、耐UV性に処理することができる。
【0016】
それぞれのヒンジ部は、実質的に剛性のものとして形成することができる。それぞれのヒンジ部の材料としては、例えば木材、石材、鼈甲、プラスチック及び/又は金属が適している。
【0017】
眼鏡ヒンジは、通常の蝶番とは対照的に、2つ以上の自由度を有する。それにより、対応する眼鏡を装着者の頭部の上に置くことができる使用位置と、それぞれの眼鏡テンプルが実質的に眼鏡のリムに接触し及び/又は折り畳まれ、眼鏡を例えば眼鏡ケース内に容易に収納することができる収納位置と、の間でのヒンジの位置調整をもたらさない望ましくない運動が、眼鏡ヒンジの損傷につながる可能性は、より低い。
【0018】
眼鏡ヒンジは、以下においては、単にヒンジと称することもある。環状に閉じられたゴム弾性を有するバネ要素は、ゴムバンド又はゴムリングと称することもある。眼鏡ヒンジは、2つのヒンジ部のみを含み、それぞれのバネ要素を除いて別のヒンジ部及び/又は別の連結要素を含まないことができる。
【0019】
眼鏡ヒンジの別の有利な構成においては、ヒンジ部のうちの少なくとも一方、好ましくは両方のヒンジ部が、それぞれ、バネ要素が固定される保持要素を含むことが企図されている。保持要素は、好ましくは、ピン状及び/又はフック状である。好ましくは、バネ要素は、少なくとも部分的に保持要素の周りに巻き付けられている。これは、バネ要素とそれぞれのヒンジ部との構造的に特に単純な且つ頑丈な連結である。特に、バネ要素は、例えば保持要素からの単純な抜き取りによって、それぞれのヒンジ部から非常に容易に取り外すことができる。その場合、バネ要素は、特に特定のプリテンションによって保持することができる。プリテンションは、伸ばされていない長さ、特に緩んだ長さを超えてバネ要素を引き伸ばすことによって発生させることができる。ピン状の形状は、特に安価に製造することができ、それぞれのバネ要素の組み立て及び分解は特に容易である。フック状の形状は、とりわけ、特に大きなヒンジ位置領域に亘って、バネ要素の望ましくない緩みを特に良好に防止する。フックは、バネ要素が、それにもかかわらず、特定のヒンジ位置において自動的にフックから飛び出すように形成することができる。それにより、許容できないヒンジ位置における眼鏡ヒンジの損傷が防止される。
【0020】
第1のヒンジ部は、例えば第1の保持要素を備え、第2のヒンジ部は、第2の保持要素を備えることができる。それぞれの保持要素は、ヒンジの回転軸又は旋回点、ヒンジ部の間のそれぞれの接触面、及び/又は、互いに対向するヒンジ部のそれぞれの端部に対して、対称に配置することができる。特に、それぞれの保持要素は、2つのヒンジ部のそれぞれの接触面に対して対称に配置することができる。それぞれの保持要素は、2つのヒンジ部において同一のものとして形成することができる。それぞれの保持要素は、それぞれのヒンジ部と一体的に及び/又は統合して形成することができる。そのような構造により、例えば環状のバネ要素を案内する貫通開口において、当該環状のバネ要素をブロックするためのピンのような、それぞれの付加的な要素を省略することができる。それに応じて、バネ要素を固定するための要素が失われる可能性はなく、したがって眼鏡ヒンジの構造は、全体的に特に単純且つ頑丈である。
【0021】
一方のヒンジ部上の一方の保持要素は、他方のヒンジ部上の他方の保持要素と比較して、ヒンジの回転軸又は旋回点、ヒンジ部の間のそれぞれの接触面、及び/又は、互いに対向するヒンジ部のそれぞれの端部から遠く離れて配置することができる。例えば、第2のヒンジ部上の保持要素は、第1のヒンジ部上の対応する保持要素と比較して、ヒンジの旋回点又はヒンジ部の回転領域から、より遠くに隔てられていることができる。それにより、特に長いバネ要素を使用可能とするために、既存の組み立てスペースを特に良好に利用することができる。長いバネ要素は、短いバネ要素と比較して、バネ要素、したがって眼鏡ヒンジを損傷することなく、より大きな伸長を可能とする。通常、眼鏡テンプル上には、バネ要素のより長い部分をそこに配置するために、眼鏡のリムに帰属するヒンジ部上と比較して、より多くのスペースが存在する。そこでは、より長いバネ要素部分が、それぞれの眼鏡レンズを設けるためのスペースを場合によっては制限する可能性がある。更に、リム側でより長いヒンジ部によって、閉じられた状態においてリム高さがより高くなる可能性がある。即ち、眼鏡テンプルが折り畳まれている場合に、眼鏡テンプルとリムとの間の距離がより大きくなり得る。
【0022】
眼鏡ヒンジの別の有利な構成においては、ヒンジ部のうちの少なくとも一方が、バネ要素をこのヒンジ部の異なる位置に固定するために、互いに隔てられた複数の保持要素を備えることが企図されている。それにより、バネ要素を保持するためのそれぞれの保持要素を交換することによって、バネ要素のプリテンションを容易に調整することができる。したがって、装着者の希望に応じて、眼鏡テンプルを開閉するために、即ち収納位置と使用位置との間の位置調整のために、より大きな力又はより小さな力を企図することができる。それに加えて、このようにして、それぞれの眼鏡テンプルを装着者の頭部に押し付ける異なる力を予め決定することもできる。それに加えて、異なる長さのバネ要素を、特に前述の作動力を変えることなく、同一の眼鏡ヒンジに使用することもできる。
【0023】
眼鏡ヒンジの別の有利な構成においては、2つのヒンジ部が、それらの可動連結のために、バネ要素によって互いに対してテンションをかけられていることが企図されている。それにより、特定の接触領域を予め決定することができ、当該接触領域の周りでは、2つのヒンジ部が互いに対して運動し、それに加えて、好ましくは各ヒンジ位置においてヒンジギャップが最小化される。それにより、少なくとも特定の運動領域において、眼鏡ヒンジの回転軸を予め決定することができる。代替的に、眼鏡ヒンジの旋回点も、そのようにして予め決定することができる。それに加えて、2つのヒンジ部は、実質的に、定義された相対位置において互いに連結されている。例えば、2つのヒンジ部の規定された位置及び/又は接触平面が、使用位置及び収納位置において予め決定され得る。それにより、眼鏡ヒンジは、特に高価値の印象を有し、特に、2つのヒンジ部ががたつく及び/又は互いに緩く連結されているのみであるという印象は生じない。プリテンションによってヒンジギャップを最小化することにより、それぞれの製造公差を特に大きくすることもでき、それにより、製造を特に安価且つ簡易にすることができる。
【0024】
眼鏡ヒンジの別の有利な構成においては、ヒンジ部のうちの一方が収容領域を備えることが企図されており、当該収容領域上では、ヒンジ部のうちの他方の対応する転動領域(Abrollbereich)が、ヒンジ運動の間に転動及び/又は摺動する。例えば、アクスルピンを有する蝶番及び/又は2つのヒンジ部の間に配置されたボールを有するヒンジとは対照的に、ここでは、ヒンジ部の互いに対する相対運動を予め決定するための付加的な部材を設けることはできない。特に、ヒンジの運動の予め厳密に決定された軸を省略することが可能であり、この軸から逸脱する運動の際にヒンジは迅速に損傷を受ける可能性がある。その代わりに、ヒンジの運動は、ヒンジ部の互いに対する転動及び/又は摺動と、バネ要素によって生成される接触圧力と、場合によっては生じるその伸長とによって、予め決定される。ヒンジ部、特に転動領域及び収容領域の幾何学的形状は、特に、例えば使用位置及び/又は収納位置のような保持又は休止位置における定義された位置決めと同様に、ヒンジ部の互いに対する的を絞った運動を可能とする。
【0025】
収容領域は、例えばヒンジソケットとして形成することができ、転動領域は、ヒンジボールとして形成することができる。転動領域は、摺動領域と称することもできる。したがって、2つの領域は、2つのヒンジ部の間のそれぞれの接触面であってもよく、これらは、少なくとも特定のヒンジ位置において、及び/又は、少なくとも部分的に、互いに接触している。
【0026】
例えば、転動領域は、丸み付けされたコーナーを有する正方形又は直方体として形成することができる。これらの丸み付けされたコーナーのうちの1つは、使用位置及び/又は収納位置において、他方のヒンジ部と対向することができる。それに応じて、収容領域は、他方のヒンジ部における対応する正方形又は直方体の凹部として形成することができる。次に、転動領域の丸み付けされたコーナーは、収容領域のそれぞれの表面上を摺動及び/又は転動し、2つの正方形の形状のそれぞれの平坦な領域が互いに接近して接触すると直ちに、及び/又は、収容領域の凹部のコーナーが転動領域の対応するコーナーを通過すると直ちに、ヒンジは対応する位置にジャンプする。それにより、それぞれの眼鏡テンプルは、収納位置及び使用位置のそれぞれの終端位置に、特に予め決定されたヒンジ位置領域から外へ、ジャンプ又は移行することができる。これらのヒンジ位置領域は、それぞれ、これらの位置のうちの1つに割り当てられ、任意選択で互いに直接的に隣接することができる。
【0027】
代替的な実施形態は、例えば、円筒形の転動領域と、収容領域としての対応する円筒形の凹部とである。転動領域及び収容領域のそのような形状は、(仮想)回転軸のヒンジ運動の追従を特に良好に予め決定することができ、それにより、例えば、眼鏡テンプルの位置を調整する際、眼鏡テンプルを捩じること、及び/又は、上及び/又は下に曲げることを特に良好に回避することができ、それにもかかわらず、そのような逸脱した運動は、ヒンジを損傷することなく許容され得る。上下方向は、例えば、眼鏡ヒンジを有する眼鏡の装着位置によって定義することができる。それに加えて、そのような実施形態における2つのヒンジ部は、特に容易に且つ均一なに互いに対して摺動する。それにより、眼鏡ヒンジは、特に異なる位置の間での位置調整の際、取り扱いが特に容易である。
【0028】
多角形の形状、例えばヒンジ部の上面図において六角形の基本形状を、収容領域及び/又は転動領域として設けることもできる。それにより、それぞれの端部位置において、それぞれの係合効果を低減することができる。
【0029】
眼鏡ヒンジの別の有利な構成においては、収容領域及び/又は転動領域が、それぞれ少なくとも2つの接触面、特に実質的に平坦な接触面を備え、当該接触面が互いに75°~105°、好ましくは87°~93°の角度を有することが企図されている。特に、2つの平坦な接触面は、互いに垂直であってもよい。3つ以上の接触面がある場合、これらは、それぞれ対になって互いにそのような角度を有することができる。接触面によって、準安定的なヒンジ位置を定義することができる。これらのヒンジ位置は、例えば面の対の平坦な接触及びバネ要素に起因するプリテンションによって、準安定的である。即ち、眼鏡ヒンジは、外部の予め決定された最小力が加えられた場合にのみ、このヒンジ位置を再び離れることができ、その他の場合には、この位置に留まる。
【0030】
有利には、好ましくは2つの接触面のうちの1つは、特に使用位置及び/又は収納位置において、有利には、運動平面に対して実質的に垂直な上面図(
図3参照)内において2つのヒンジ部のうちの少なくとも1つの少なくとも1つの主延在軸に対して傾斜している。更に有利には、接触面のうちのそれぞれ他方は、特に収納位置及び/又は使用位置において、2つのヒンジ部のうちの少なくとも1つの他方の主延在軸に対しても傾斜している。特に、これに加えて又はこれに代えて、各接触面は、使用位置及び収納位置の両方において、2つのヒンジ部の主延在軸に対して傾斜して配向することができる。主延在軸に対する接触面の傾斜は、好ましくは、それぞれの接触面が形成されていないヒンジ部におけるヒンジ位置にのみ依存する。接触面が形成されているヒンジ部では、対応する主延在軸に対するその傾斜は、好ましくはヒンジ位置に左右されない。好ましくは、主延在軸のうちの少なくとも1つは、第2のヒンジ部と連結された眼鏡テンプルの長手軸に対して実質的に平行である。特に、接触面(ここでは、対応する軸に対してそれぞれより小さい角度に関する)は、運動平面においてこれらの軸に対してそれぞれ30°~70°、有利には40°~50°、傾斜させることができる。更に有利には、当該角度は90°ではない。
【0031】
特に、上述した特徴に加えて又はこれに代えて、個々のヒンジ部に形成された2つの接触面は、好ましくは、特にその転動領域又は収容領域においてV字形を形成する。このV字形は、好ましくは運動平面内で延びており、その角二等分線は、好ましくは、接触面が形成されているヒンジ部の主延在軸に対して、実質的に平行であり、有利には約±20°まで、更に有利には±10°まで、同じく有利には±5°まで(特に運動平面内で)傾斜して形成されている。好ましくは、使用位置又は収納位置における角二等分線は、接触面が形成されていない主延在面に対して、実質的に平行であり、有利には約±20°まで、更に有利には±10°まで、同じく有利には±5°まで(特に運動平面内で)傾斜して形成されている。この構成により、眼鏡ヒンジの特に良好な自己調整がもたらされる。2つのV字形の接触面は、両方のヒンジ部に形成することができ、これらは、好ましくは互いに対応している。
【0032】
それぞれのヒンジ部の主延在軸は、それらの長手方向の広がりによって定義することができる。特に、少なくとも、両方のヒンジ部の主延在方向が実質的に1つの軸の上にある程度にまで眼鏡ヒンジが広く開かれた位置において、第2のヒンジ部の主延在軸は眼鏡テンプルの長手方向の広がりに、第1のヒンジ部の主延在軸は眼鏡テンプルの長手方向の広がりに、それぞれ実質的に対応することができる。これは、例えば使用位置であり得る。使用位置及び収納位置については、後で更に説明する。
【0033】
それに加えて、眼鏡ヒンジは、バネ要素によって自動的に、特にこのヒンジ位置への特定のアプローチから、準安定的なヒンジ位置へ、自動的に位置調整される。それにより、例えば眼鏡ヒンジのそれぞれの終端位置への移行が生じ得る。それにより、眼鏡ヒンジは、例えば、装着者が眼鏡ヒンジを後述する位置の方向に調整したとき、使用位置及び/又は収納位置に自動的にジャンプすることができる。それぞれの接触面は、互いに直接的に隣接することができ、又は、湾曲した部分領域及び/又は丸み付けされたコーナーを介して互いに連結されることもできる。特に、湾曲した部分領域及び/又は丸み付けされたコーナーは、両方のヒンジ部が互いに特に容易に摺動及び/又は転動することを可能とし、それにより、2つの準安定的なヒンジ位置の間での位置調整が特に容易となる。
【0034】
眼鏡ヒンジの別の有利な構成においては、眼鏡ヒンジが眼鏡フレームの収納位置と使用位置との間で位置調整され得るよう、ヒンジ部のうちの一方が実質的に運動平面内でヒンジ部のうちの他方に対して運動することができるように、眼鏡ヒンジが形成されていることが企図されている。収納位置は、折り畳まれた眼鏡テンプルに実質的に対応することができ、それにより、対応する眼鏡を、例えばスペースを節約してケース内に収納することができる。この位置では、両方のヒンジ部の2つの主延在軸は、互いに、例えば約90°の角度をなすことができる。使用位置は、実質的に、折り畳まれていない眼鏡テンプルに対応することができる。使用位置において、眼鏡は、装着者の頭部の上に置かれるか又は装着されることができ、特に、リムは眼鏡装着者の鼻の上に置かれることができ、一方、それぞれの眼鏡テンプルは、頭部を取り囲むと共に、少なくとも部分的にそれぞれの耳に接触する。好ましくは、ヒンジは、ここでは、特にそれぞれのヒンジ部のそれぞれの主延在軸に対して約180°の開き角を有する。上述した2つの有利な角度は、両方のヒンジ部の両方の主延在方向が、使用位置において、実質的に1つの軸の上にある構造に対応する。即ち、両方のヒンジ部は、使用位置における主延在方向によって、眼鏡テンプルの主延在部の延長部を形成する。代替的に、例えば、第1のヒンジ部も、その主延在方向が実質的に眼鏡リム又はそれぞれの眼鏡レンズの主延在平面内にあるように配置することができる。使用位置において、眼鏡ヒンジは、例えば、両方のヒンジ部の間に約90°の角度を形成することができる。収納位置において、両方のヒンジ部は実質的に互いに平行であり、それにより、実質的に0°のヒンジ角が形成される。ヒンジ角は、対応する眼鏡を使用する際に装着者の頭部と対向する側の内面で測定することができる。
【0035】
好ましくは、両方のヒンジ部は、収納位置と使用位置との間での位置調整のために、運動平面内において少なくとも70°、特に有利には少なくとも90°以上、互いに対して回転可能である。使用位置と収納位置との間の運動は、両方のヒンジ部の接触面によって互いに予め決定されている軸を中心とする回転であってもよい。次に、ヒンジは、ヒンジ部の幾何学的形状と、位置調整の際にバネ要素によって生成されるテンションとによって、この軸の周りで回転する。しかしながら、横方向の力による逸脱が可能であり、それに応じて、運動平面又は運動軸は、準安定的に形成されていることができ、及び/又は、準安定的と見なすことができる。
【0036】
使用位置と収納位置との間の運動は、回転運動と並進運動との重ね合わせであることができ、これは、特に、それぞれのヒンジ部の互いに対する転動及び/又は摺動によって予め決定されることができる。収納位置と使用位置との間の運動は、旋回運動として構成することもできる。眼鏡ヒンジの運動学は、特に、それぞれのヒンジ部の幾何学的形状、特に、収容領域及び転動領域のそれぞれの幾何学的形状、及び/又は、バネ要素、特にそのバネ特性、並びに、収納位置及び使用位置のうちの一方及び/又は両方におけるプリテンションによって、予め決定されている。
【0037】
眼鏡ヒンジの別の有利な構成においては、両方のヒンジ部が、収容領域及び対応する転動領域によって、運動平面内において少なくとも部分的に互いに対してガイドされることが企図されている。このガイドにより、運動平面内における定義された回転運動を予め決定することができ、それにより、眼鏡ヒンジは、使用位置と収納位置との間で特に容易に位置調整されることができ、したがって、取り扱いが容易である。
【0038】
例えば、このガイドは、この平面内及び/又はこの平面に対して平行な転動領域の対応する接触面の上側及び/又は下側の収容領域の接触面によって、即ち、特に当該平面に対して垂直な軸に沿ったそれぞれの平面によって、構成することができる。したがって、例えば、直方体形状の転動領域は、運動平面の上側及び下側において支持され得る。したがって、位置調整の間、任意選択で収納位置及び/又は使用位置においても、転動領域をこれらのガイド面上に支持することができ、その結果、両方のヒンジ部は、運動平面内において互いに対してガイドされる。これらの面、特にそれらのサイズ、及び/又は、それぞれの嵌め合わせは、両方のヒンジ部のうちの一方を他方のヒンジ部に対して運動平面外へ傾けることが依然として可能となるように構成することができ、その結果、それぞれのヒンジ部及び/又はバネ要素は、容易に損傷には至り得ない。それにより、例えば、収納位置にある眼鏡が押し付けられた場合、又は、使用位置にある眼鏡がその上に置かれた状態で枕の上に頭部が置かれた場合のような、予期しない荷重の場合であっても、眼鏡の損傷が回避される。
【0039】
使用位置において、ヒンジ部は、実質的に互いに面一に連結することができる。特に、それぞれの外表面は、互いに面一に隣接することができる。しかしながら、眼鏡を装着したときに見えるそれぞれの外表面のみが、互いに面一に連結されることが企図されていてもよい。両方のヒンジ部の間の接触面は、例えば、装着者の頭部とは反対側で面取りすることができ、及び/又は、ヒンジ部は、それぞれのヒンジギャップを覆い隠すように、そこでオーバーラップを有することができ、例えば、留め継ぎすることができる。
【0040】
眼鏡ヒンジの別の有利な構成においては、ヒンジ部、特に収容領域及び/又は転動領域が、特に収容領域及び/又は転動領域上の少なくとも1つのストッパー及び/又は少なくとも1つの係止面によって、眼鏡ヒンジを収納位置及び/又は使用位置において安定させるように構成されていることが企図されている。それにより、眼鏡ヒンジは、収納位置及び/又は使用位置において、準安定的な状態を有することができる。特に、これらの2つの位置の間のいくつかの又は全ての中間位置は、不安定であり得る。また、バネ要素が、眼鏡ヒンジが不安定な状態から自動的に準安定的な状態に位置調整されるようなプリテンションを発生させることも企図することができる。
【0041】
それぞれのストッパーは、各ジヒンジ部に、又は、両方のヒンジ部のうちの一方のみに設けることができる。ストッパーは、例えば、ノッチ及び/又はエッジの形態で、例えば、転動領域及び/又は収容領域に設けることができる。それぞれの係止面は、2つの対応する係止面がそれぞれ準安定的な状態のための接触面を形成するように、両方のヒンジ部に互いに対応して形成することができる。係止面は、それに応じて接触面として形成することができる。係止面は、ストッパーに対応することができ、及び/又は、ストッパーの一部であり得る。係止面、それぞれのストッパー、及び/又は、転動領域及び収容領域の幾何学的形状は、全体として、眼鏡ヒンジを準安定的な状態、即ち特に使用位置及び/又は収納位置にロックさせることもできる。例えば、両方のヒンジ部のうちの一方は溝を備えることができ、両方のヒンジ部のうちの他方は、使用位置及び/又は収納位置において対応する溝内に係合する対応する突起を備えることができる。溝を対応する凹部内に移動させることができることにより、眼鏡ヒンジは、全体として弾性変形することができる。この弾性変形は、特に、バネ要素の弾性変形によって提供することができ、その結果、弾性変形は、それぞれのヒンジ部によって提供される必要はない。例えば、係合のために、バネ要素の付加的な伸張の下で、ヒンジ部のうちの一方の、ヒンジ部のうちの他方から離れる離脱運動を行うことができる。それにより、両方のヒンジ部は、特に剛性且つ頑丈であることができ、それにより、眼鏡ヒンジも全体として特に頑丈であることができる。
【0042】
眼鏡ヒンジの別の有利な構成においては、眼鏡ヒンジは、第1のヒンジ位置領域内、特に運動平面内の第1の角度範囲内でバネ要素によって自動的に収納位置に位置調整されるように形成されている、及び/又は、眼鏡ヒンジは、第2のヒンジ位置領域内、特に運動平面内の第2の角度範囲内でバネ要素によって自動的に使用位置に位置調整されるように形成されていることが企図されている。例えば、使用位置よりも収納位置に近いヒンジ位置の場合、眼鏡ヒンジは、自動的に収納位置に位置調整されることができる。それに応じて、使用位置により近い他のヒンジ位置領域において、眼鏡ヒンジは、自動的に使用位置に位置調整されることができる。
【0043】
しかしながら、例えば、運動平面内の少なくとも1つの角度範囲において、より大きな角度範囲が、使用位置よりも収納位置への自動的な位置調整につながることが企図されていてもよい。例えば、眼鏡の使用者が、眼鏡ヒンジが自動的に使用位置に移行する前に、眼鏡ヒンジを少なくとも70°開かなければならないことが企図されていてもよい。逆に、使用者が、眼鏡ヒンジが自動的に収納位置に移行する前に、眼鏡ヒンジを約20°折り畳むだけでよいことが企図されていてもよい。そのような不均一な準安定性によって、眼鏡を特に快適に使用することができる。したがって、例えば、眼鏡ヒンジが特に早期に保護収納位置に位置調整されることが保障される。逆に、眼鏡ヒンジが特に早期に使用位置に移行し、その結果、眼鏡装着者が眼鏡を開いて装着することが特に容易であることも、言うまでもなく企図され得る。
【0044】
ヒンジ位置領域は、両方のヒンジ部の互いに対する特定の相対的な空間位置であり得る。対応する角度範囲は、例えば、転動領域及び/又は収容領域のそれぞれの幾何学的形状によって、特に、それぞれの接触面及び/又は特に丸み付けされていることができるコーナーによって、予め決定することができる。それぞれの角度範囲は、眼鏡ヒンジのそれぞれの準安定的な位置を定義することができる。それに加えて、それぞれの角度範囲は、設けられたバネ要素のプリテンションによっても、予め決定又は調整され得る。特に、バネ要素は、非常に高いプリテンションで両方のヒンジ部に固定され得るので、眼鏡ヒンジは使用位置及び収納位置の外側の如何なる位置にも留まらない。即ち、別の準安定的な領域は存在しない。相応して高いプリテンションによって、2つの角度範囲の間の移行領域は、眼鏡ヒンジの通常の運動においては、眼鏡ヒンジがいわば不注意によって2つの位置の間に留まることを想定し得ないほど、小さくすることができる。
【0045】
眼鏡ヒンジの別の有利な構成においては、眼鏡ヒンジが、ヒンジ部の互いに対する運動が、運動平面内において収納位置及び使用位置を超えて許容されるように形成されており、眼鏡ヒンジは、バネ要素によって自動的に収納位置又は使用位置に戻るように形成されていることが企図されている。収納位置及び/又は使用位置を超えたヒンジ部の互いに対する運動は、眼鏡ヒンジの過剰伸張及び/又は過剰伸展と称することもできる。収納位置を超える運動は、過剰圧縮と称することもできる。単純な蝶番の場合、例えば、それぞれの眼鏡テンプルをあまりにも広く開くと、ヒンジ又はそれぞれのヒンジ部が破損し、及び/又は、永久変形する可能性がある。バネ要素を有する本発明による眼鏡ヒンジの場合、代わりにバネ要素の更なる伸長が起こり得る。なぜなら、両方のヒンジ部は、バネ要素によってのみ互いに連結され得るからである。それにより、眼鏡ヒンジは、それぞれの眼鏡テンプルがあまりにも広く曲げ開かれ、及び/又は、あまりにも遠くに押し付けられても、直接的に損傷に至ることはない。特に、過剰伸長及び/又は過剰圧縮の場合、眼鏡ヒンジの如何なる剛性部分も永久変形しないので、損傷が生じない可能性がある。
【0046】
それにより、例えば、眼鏡は、装着者がその頭部を枕の上に横向きに置いた場合に、快適に装着することができる。同様に、眼鏡は、シャツの襟ぐりに装着され、別の人が装着者を押し、眼鏡が2つの胸郭の間に挟まれる場合に、損傷から保護され得る。
【0047】
好ましくは、眼鏡ヒンジは、少なくとも1つのヒンジ位置、特に少なくとも1つの過剰に伸展された及び/又は過剰に圧縮されたヒンジ位置において、バネ要素の構造的な負荷限界を超える一方で、他の部品、特に両方のヒンジ部及び/又はそれぞれの保持要素の構造的な負荷限界に依然として達しないように、形成されている。したがって、バネ要素のそれぞれの構造的な負荷限界は、過剰に伸展された及び/又は過剰に圧縮されたヒンジ位置における負荷よりも小さくすることができ、一方、他の部品の構造的な負荷限界はより大きくすることができる。それにより、眼鏡ヒンジが過剰負荷になると、先ずバネ要素の破損に至り、それにより、ヒンジ部間の連結が解除され、ヒンジを介してもはや更なる力は伝達されない。それにより、眼鏡ヒンジの他の部品、特に両方のヒンジ部及び/又はそれぞれの保持要素は、損傷から保護される。それにより、例えば、比較的安価なゴム弾性のバネ要素は、過剰負荷時に破断に至るのみであるが、比較的高価なヒンジ部は損傷のないままである。バネ要素は、この場合、容易に、迅速に且つ安価に交換することができ、それにより、眼鏡ヒンジは、過剰負荷による損傷の後であっても、安価に且つ容易に修理することができる。
【0048】
代替的に又は付加的に、眼鏡ヒンジは、最大限に過剰伸展及び/又は過剰圧縮されたヒンジ位置において、それぞれの部品、特にバネ要素、両方のヒンジ部及び/又はそれぞれの保持要素の構造的な負荷限界にまだ到達しないように形成することができる。したがって、それぞれの部品のそれぞれの構造的な負荷限界は、最大限に過剰伸展された及び/又は最大限に過剰圧縮されたヒンジ位置における負荷よりも、高くすることができる。それにより、それぞれの最大限位置におけるヒンジの損傷が防止され得る。このために、特に十分に安定的な及び/又は伸縮可能なバネ要素を設けることができる。最大限に過剰伸展された及び/又は最大限に過剰圧縮されたヒンジ位置は、運動平面内の運動によって定義することができ、当該運動は、それぞれの部品の接触によって制限される。例えば、それぞれの眼鏡テンプルが眼鏡リム及び/又は眼鏡レンズの内側に接触し、更なる運動を阻止する場合、最大限に過剰圧縮されたヒンジ位置に到達し得る。同様に、第2のヒンジ部及び/又はそれぞれの眼鏡テンプルがリム及び/又は第1のヒンジ部の外側に接触する場合に、最大限に過剰伸展されたヒンジ位置に到達し得る。そのような曲げ開かれた位置は、360°のヒンジのおおよその開き角にも対応し得る。
【0049】
眼鏡ヒンジの別の有利な構成においては、それぞれのピン状及び/又はフック状の保持要素が、実質的に運動平面内を延びている、及び/又は、バネ要素のリング形状によって定義される平面が、運動平面に対して横方向に、特に垂直に延びていることが企図されている。それにより、バネ要素は、運動面内において保持要素上に容易に差し込むことができる。バネ要素のリング形状が横方向に延びる平面は、伸展されたヒンジにおいて、即ちそれぞれのヒンジ部が互いに対して180°開かれた使用位置において定義することができる。それ以外に、環状のバネ要素は折り曲げることができる。その場合、代替的に、例えばそれぞれの終端点が、平面を定義することができる。
【0050】
バネ要素及び/又は保持要素のこの配向によって、これらは、眼鏡ヒンジのうち頭部に面する側に特に容易に配置され、眼鏡を装着する際、それに応じて両方のヒンジ部によって隠されることができる。それにより、眼鏡ヒンジは、眼鏡が装着された際、外側から特に滑らかな外観を有することができ、それに加えて、損傷及び/又は汚染から特に良好に保護されることができる。それに加えて、バネ要素は、保持要素上に特に容易に差し込むことができる。それに加えて、そのような構成は、眼鏡ヒンジが使用位置又は収納位置を超えて過剰に伸展され及び/又は過剰に折り畳まれる場合に、それぞれの保持要素からのバネ要素のジャンプを、特に容易に組み込むことを可能とする。それによっても、眼鏡ヒンジは損傷から特に良好に保護され得る。
【0051】
別の有利な構成においては、それぞれのピン状及び/又はフック状の保持要素が、運動平面に対して斜めに、特に実質的に垂直に延びており、及び/又は、バネ要素のリング形状によって定義される平面が、実質的に運動平面に対して平行に、特に運動平面内を延びていることが企図されている。眼鏡ヒンジのそのような構成により、特に平坦な眼鏡ヒンジを創作することができる。対応するヒンジを有する眼鏡の装着者の顔に沿って、上下方向に特に僅かしか延びないような眼鏡ヒンジを、平坦な眼鏡ヒンジと見なすことができる。したがって、運動平面に対して垂直な広がりは、特に小さくすることができる。特に、眼鏡ヒンジの最小高さは、実質的にバネ要素の厚さによってのみ、予め決定することができる。それに対して、バネ要素のリング形状によって定義される平面が、運動平面に対して実質的に横方向に配向される場合、眼鏡ヒンジの最小高さは、実質的にバネ要素のリング形状の直径によって予め決定され得る。
【0052】
保持要素の配向は、特に、その長手方向の広がりに対応することができ、それは、主延在方向に対応し得る。保持要素の配向、したがってそれらの広がりは、例えば、バネ要素の接触する輪によって定義される平面に対して垂直な広がりによって、予め決定することができる。例えば、保持要素の広がりは、バネ要素が接触する保持要素の円筒形の領域の長手方向に対応することができる。
【0053】
好ましくは、バネ要素は、ヒンジを有する眼鏡が装着されたとき、使用位置においてヒンジ部によって上方、下方及び/又は外側から覆い隠されるように、ヒンジ部のそれぞれの凹部及び/又は溝の内部に収容されている。
【0054】
好ましくは、ピン状及び/又はフック状の保持要素が、各ヒンジ部に形成されており、これらは逆方向に配向されている。これは、特に、一方の保持要素が上側においてヒンジ部と一体に連結され、他方の保持要素が、その下側においてヒンジ部と一体に連結されることを意味し得る。したがって、保持要素は、バネ要素が2つの逆の方向において保持要素上に押されるように、形成することができる。第1の保持要素において、バネ要素は、例えば下から押され、残りの第1のヒンジ部は、上向きにストッパーを形成し、一方、第2の保持要素上のバネ要素は、上から押され、残りの第2のヒンジ部は、下向きにストッパーを形成する。したがって、バネ要素は、特に安定的にそれぞれの保持要素に装着されており、特に、意図せずに容易に取り外すことはできない。上及び下は、再び、眼鏡ヒンジを有する眼鏡を装着する際の上下方向と関連し得る。
【0055】
眼鏡ヒンジの別の有利な構成においては、バネ要素が、実質的に、ヒンジ部のうち収納位置において眼鏡ヒンジの内角に面する側に配置されており、特にそこに固定されていることが企図されている。更に、それぞれの保持要素も、これらの側に配置することができる。これらの側は、対応する眼鏡を装着する際に装着者の頭部に面する内側と称することもできる。それぞれの内側は、眼鏡ヒンジの折り畳まれた状態において、互いに向き合うことができる。これによっても、それぞれの保持要素及び/又はバネ要素は、眼鏡が装着される際、特に良好に隠されている。それに加えて、保持要素及びバネ要素は、外部からの汚染及び損傷に対して特に良好に保護されている。特に、これらの部品は、眼鏡ヒンジの折り畳まれた状態において、両方のヒンジ部によって保護されており、その結果、対応する眼鏡は、例えばケース縁部に引っ掛かることによってバネ要素が損傷を受けることを懸念する必要なく、収納することができる。
【0056】
眼鏡ヒンジの別の有利な構成においては、収容領域及び/又は転動領域が、摺動層を備える、及び/又は、少なくとも1つの摺動スリーブ及び/又は摺動層が間に配置されていることが企図されている。例えば硬化された樹脂コーティング及び/又はテフロン(登録商標)コーティングの形態の、それぞれのヒンジ部の摺動層によって、眼鏡ヒンジの摩耗を特に少なくすることができる。摺動スリーブを使用することによって、ヒンジ部は、眼鏡ヒンジの摩耗を懸念する必要なく、特に柔らかい材料から形成することができる。それに加えて、それぞれの接触面のそれぞれの摺動特性も特に良好であることができ、それにより、眼鏡ヒンジの位置を調整する際の摩擦及びそれに必要な労力を低減することができる。対応するコーティング及び/又はスリーブを、バネ要素とそれぞれのヒンジ部との間の接触部位又は接触面、例えば保持要素に設けることもできる。それによっても、ヒンジ部に対するバネ要素の相対運動及びそれにより生じる摩擦による眼鏡ヒンジの摩耗を、特に少なくすることができる。摺動層又は摺動スリーブは、例えば接着剤によって、両方のヒンジ部のうちの一方と強固に接合することができる。それにより、眼鏡ヒンジは特に頑丈である。しかしながら、摺動層又は摺動スリーブは、例えば、両方のヒンジ部のうちの一方に緩く差し込まれるだけでもよい。それにより、組み立ては、特に迅速かつ安価である。摩耗した場合、摺動層又は摺動スリーブは、それに加えて、特に容易に交換可能である。摺動層又は摺動スリーブは、ヒンジの2つの側又は2つのヒンジ部の間の中間部分と見なすこともできる。
【0057】
好ましくは、摺動層及び/又は摺動スリーブは、収容領域及び/又は転動領域を、それ自体で形成することもできる。そのために、摺動層は、例えば異なる厚さによって、3次元的な形状を形成することもできる。この場合、摺動層及び/又は摺動スリーブは、それぞれが帰属するヒンジ部の一部と見なすこともでき、及び/又は、これと好ましくは強固に連結され得る。例えば、摺動スリーブ及び/又は摺動層は、それぞれのヒンジ部の残りの部分と面一に接続し、それぞれのヒンジ部から他のヒンジ部に面する端部を形成することができる。摺動スリーブ及び/又は摺動層は、好ましくは、例えば摩損による摩耗を早期に検出できるように、例えばラッカーによって又は着色ラッカーとして、彩色形成することもできる。それに加えて、着色は、デザイン要素としても機能することができる。
【0058】
眼鏡ヒンジの別の有利な構成においては、収容領域及び/又は転動領域が、2つの領域を互いに押し付けるバネ力の作用下で眼鏡ヒンジの自己調整がもたらされるように形成されていることが企図されている。例えば、バネ要素はプリテンションを有することができ、当該プリテンションによって両方のヒンジ部は互いに張力をかけられ、また、当該プリテンションは収容領域も転動領域に押し付ける。自己調整は、予め決定された初期位置への復帰を意味し得る。例えば、収容領域及び転動領域の幾何学的形状によって及び張力をかけられたバネ要素に起因して、両方のヒンジ部がそれらの空間位置において互いに整列することができ、それにより、眼鏡ヒンジは、自動的に調整される。そのために、例えば、互いに横方向に整列された2対の接触面を設けることができ、当該接触面上にヒンジ部が載置される。接触面のうちの少なくとも一方は、使用位置にある両方のヒンジ部のうちの少なくとも一方の主延在軸に対して横方向に、接触面のうちの他方は、収納位置にある両方のヒンジ部のうちの少なくとも一方の主延在軸に対して横方向に、それぞれ配向することができる。代替的に又は付加的に、収容領域は楔形のセグメントを備えることができ、転動領域は対応する凹部を備えることができる。例えば、直方体形状の転動領域及び対応する収容領域は、各領域の互いに曲げられた面によって、自己調整をもたらすことができる。したがって、眼鏡用の従来の蝶番の場合にしばしばそうであるように、それぞれのヒンジ部をヒンジ調整のために変形させる必要はない。特に、眼鏡ヒンジは、収納位置及び/又は使用位置で自己調整することができ、これは、眼鏡のスペースを節約した収納及び/又は眼鏡の快適な使用のために、特に有利である。
【0059】
眼鏡ヒンジの別の有利な構成においては、眼鏡ヒンジが、全ての自由度で互いに対するヒンジ部の運動を許容するように形成されており、ヒンジ部が、運動平面外に向けられる場合、及び/又は、特に運動平面内で軸の周りを回転する場合、バネ要素によって自動的に運動平面内の初期位置に戻るように移動することが企図されている。初期位置は、特に、収納位置及び/又は使用位置であってもよいが、運動平面内の他の位置であってもよい。このように、眼鏡ヒンジは、両方のヒンジ部を、損傷を受けることなく、運動平面から逸脱した平面内に誤って移動させることを可能とする。そのような望ましくない移動は、実質的に、バネ要素の破断時の伸び、及び/又は、例えば、それらの強度によって予め決定することができる、それぞれのヒンジ部の構造的な過剰負荷によってのみ制限される。特に、ゴム弾性のバネ要素は、全ての自由度で変形することができ、それにもかかわらず、自動的に変形してその初期位置に戻る。同様に、両方のヒンジ部が互いに対して引き離され、この場合、例えば、蝶番の場合のように、アクスルピンが破断する虞がなく、むしろ、先ずバネ要素のみが可逆的に引き伸ばされるようにすることもできる。
【0060】
バネ要素は、好ましくは、2つのヒンジ部が任意の大きさで全ての方向に互いに離れるように移動し得るように形成されることもできる。バネ要素は、例えば、眼鏡ヒンジが開かれた位置及び/又は閉じられた位置にある、あるいは、使用位置及び/又は収納位置にある初期位置から、少なくとも50%、有利には100%、特に有利には200%、更に有利には300%、とりわけ少なくとも400%だけ伸張するように形成することができる。それに応じて、眼鏡ヒンジは、ほとんど任意に過剰伸展させることができ、別の方法で過度に引き伸ばすことができる。
【0061】
転動領域及び/又は収納領域のそれぞれの幾何学的形状の構成は、例えば、準安定的な位置の外側ではもはや実質的に平坦には接触せず、これらの位置から位置調整され、したがって付加的に引き伸ばされたバネ要素と共に戻り移動を引き起こす、復元効果を支援することができる。全体として、収納位置と使用位置との間を移動するために1つの平面内にのみ準安定的な位置を有し、更に、バネ要素によってこの平面内又は収納位置及び使用位置に自動的に位置調整されるような眼鏡ヒンジを形成することができる。
【0062】
眼鏡ヒンジの別の有利な構成において、眼鏡ヒンジは、最大許容移動範囲を超えたときに、バネ要素がヒンジ部のうちの少なくとも一方から少なくとも1つの自由度で自動的に解放されるように設計されている。最大許容移動領範囲は、使用位置及び/又は収納位置によって定義することができる。例えば、最大許容移動範囲は、収納位置と使用位置との間での運動平面内の移動に対応し得る。例えば、ヒンジ部上の保持要素のうちの少なくとも1つは、最大許容移動範囲を超えたときにバネ要素が保持要素から滑り落ちるように配置することができる。例えば、保持要素は、眼鏡ヒンジが過剰に伸展されたときに、バネ要素の伸びにより生成される力によってバネ要素がピン状の保持要素から滑り落ちるように配向することができる。それにより、バネ要素が許容されない伸びによって損傷を受ける前に、及び/又は、ヒンジ部が強すぎるバネ力によって構造的に過剰に負荷を受ける前に、両方のヒンジ部は互いに分離する。それによって、眼鏡ヒンジは損傷から特に良好に保護され得る。そのために、例えば対応する湾曲部及び/又はアンダーカットによって、保持要素の対応する幾何学的形状を設けることができる。許容移動範囲は、使用位置及び収納位置によって予め決定されるものよりも著しく大きくすることができる。それにより、眼鏡ヒンジが、僅かな超過においても既に保護のために部分的に自ら分解されることが、防止される。例えば、運動平面内で使用位置を20°以上超えて移動する場合、眼鏡ヒンジを損傷から保護するために、バネ要素が保持要素から取り外されるようにすることができる。
【0063】
別の有利な構成においては、バネ要素が、第1のヒンジ部及び/又は第2のヒンジ部と、取り外し可能に連結されていることが企図されている。したがって、バネ要素を容易に交換及び/又は修理することができる。特に、眼鏡ヒンジを容易に分解することができる。片側のみが取り外し可能である場合、眼鏡ヒンジは、特に取り扱いが容易であり、両方のヒンジ部は、互いからの取り外し及び再連結が特に容易である。両側が取り外し可能である場合、構造は特に単純であり、それぞれのバネ要素は特に容易に交換することができる。例えば、環状のゴム弾性のバネ要素は、2つの円錐形の要素の上に容易に引き上げることができ、これらから再び引き下げることもできる。バネ要素が取り外し可能であることにより、当然ながら、それぞれのヒンジ部も容易に交換することができる。
【0064】
眼鏡ヒンジの別の有利な構成においては、第1のヒンジ部及び/又は第2のヒンジ部が、少なくとも1つの凹部、特に溝及び/又は貫通開口を備え、バネ要素及び/又はそれぞれの保持要素が、少なくとも部分的に当該凹部内に配置されていることが企図されている。それにより、バネ要素は、特に確実に収容されることができ、したがって、外部損傷から特に良好に保護されている。同様に、それぞれの保持要素を、例えば、引っ掛かり又は外部から保持要素への許容できない直接的な負荷による破断から、保護することができる。それぞれの負荷は、実質的にバネ要素によってのみ、溝内に配置された保持要素に加えられ得る。溝は、リング及び/又は凹部の少なくとも一部を形成することができ、その中央領域には保持要素が配置されている。貫通開口によって、特に、バネ要素が両方のヒンジ部から同時に飛び出し、したがって失われることを防止することができる。
【0065】
それぞれの溝、貫通開口及び/又はアンダーカットによって、バネ要素を、保持要素の外側の領域において付加的に支持することができる。それにより、例えば、例えばバネ要素の曲率の最小半径が予め決定され得ることによって、バネ要素が、眼鏡ヒンジの折り畳まれた状態又は収納位置においても、特定のプリテンションを及ぼし続けることが保証され得る。したがって、バネ要素は、収納位置においても、例えばそれぞれのヒンジ部の輪郭に追従することができる。
【0066】
溝は、バネ要素を損傷から特に良好に保護するために、それぞれのヒンジ部の内側に設けることができる。代替的に、溝は、対応する眼鏡を装着したときに見ることができるように配置することもできる。それにより、バネ要素も見ることができ、それに応じてデザイン要素として組み込むことができる。更に、バネ要素の損傷を、視覚的に容易に検査することができる。対照的に、内側に配置された場合、バネ要素は覆い隠されると共に環境の影響から保護され、特に、バネ要素にはごく僅かなUV光しか到達しない。溝あるいは凹部及び/又は貫通開口は、実質的に、両方のヒンジ部におけるバネ要素の広がりに対応し得る。凹部あるいは溝及び/又は貫通開口は、少なくとも部分的に環状に形成されており、運動平面に対して横方向に、特に垂直に延びることができる。
【0067】
眼鏡ヒンジの別の有利な構成においては、第1のヒンジ部及び/又は第2のヒンジ部が、特に凹部上のアンダーカットの形態の少なくとも1つの支持要素を備え、その上でバネ要素が特定のヒンジ位置領域においてのみ支持されることが企図されている。支持要素は、眼鏡ヒンジが折り畳まれた状態にある場合であっても、バネ要素の最小の伸びを保障し、及び/又は、引き伸ばされたバネ要素の力の偏向を引き起こすように、機能することができる。更に、両方のヒンジ部が折り畳まれる際に互いに向かって移動されるとき、特に収容領域又は転動領域から隔てられた2つの保持要素の間に直接的な連結が生じることができ、その結果、バネ要素は、もはや、ほとんどギャップが無い状態でそれらを一緒に保持するのに十分なプリテンションをヒンジ部に及ぼさない。例えば、このようにして、バネ要素及び両方のヒンジ部が、折り畳まれた状態においても実質的にV字形を形成し、ヒンジ部がV字形を形成するだけでなく、バネ要素が三角形の形態でこのV字形を閉じることを保障することができる。
【0068】
眼鏡ヒンジの別の有利な構成においては、ヒンジ部が、それぞれ両方のヒンジ部に固定された少なくとも2つのバネ要素によって、互いに可動に連結されていることが企図されている。2つ以上のバネ要素を設けることにより、これらは、眼鏡ヒンジにおける別個の機能を引き継ぐことができ、及び/又は、小さな伸張の下で特に高いプリテンション及び/又は高い力を提供することができる。例えば、一方のバネ要素は、収納位置におけるプリテンションを実質的に決定し、他方のバネ要素は、使用位置におけるプリテンションを決定することができる。それにより、両方のヒンジ部の間の連結は、異なる位置において異なる剛性を有することができる。それに加えて、眼鏡ヒンジを開閉するために必要となる異なる力を、予め決定することができる。それに加えて、眼鏡ヒンジは、それぞれのプリテンションに関して、それぞれの位置において調整可能である。同様に、異なるバネ要素によって、眼鏡ヒンジを自動的に位置調整するためのそれぞれの角度範囲を、異なるものとして予め決定することができる。
【0069】
眼鏡ヒンジの別の有利な構成においては、少なくとも2つのバネ要素が、第1のヒンジ部及び/又は第2のヒンジ部の凹部内に一緒に配置されることが企図されている。凹部は、上述したような溝であってもよい。同様に、上述したような支持要素を設けることができ、その際、この支持要素には例えば第1のバネ要素のみが支持され、第2のバネ要素は第1のバネ要素を介して支持要素に支持される。凹部内では、バネ要素が互いに接触することができる。それにより、眼鏡ヒンジは、複数のバネ要素にもかかわらず、特にコンパクトである。
【0070】
眼鏡ヒンジの別の有利な構成においては、少なくとも2つのバネ要素のうちの一方が、同一の伸びの下で、少なくとも2つのバネ要素のうちの他方とは異なる張力を有することが企図されている。この異なる張力は、例えば、異なる材料を使用することによって、異なる弾性率を提供することによって、異なる断面を提供することによって、異なる熱処理によって、異なる予備伸長によって、及び/又は、延伸されていない状態での異なるバネ要素の長さによって、提供することができる。それにより、眼鏡ヒンジは、特に異なる位置及び異なるプリテンションに関して、特に良好に調整可能である。
【0071】
眼鏡ヒンジの別の有利な構成においては、第1のヒンジ部、第2のヒンジ部及び/又はそれぞれのバネ要素が、天然材料、特にプレス木材、石材、鼈甲又はゴムから成ることが企図されている。特にバネ要素は、天然ゴムから成ることができる。プレス木材は、合板(Panzerholz)と称することもでき、これは、樹脂を有する層状材木構造であることができる。石材としては、例えば、花こう岩、大理石又はスレートを想定することができる。ゴムは、ゴム弾性のバネ要素を形成するために特に適した材料である。したがって、天然資源及び/又は再生可能資源を使用することが可能である。特に、眼鏡ヒンジは金属を含まなくてもよく、それにより、特に自然な印象を与えることができる。それに加えて、腐食保護を省略することができる。それに加えて、眼鏡は、例えば堆肥化することにより、非常に容易にリサイクルすることができる。
【0072】
眼鏡ヒンジの別の有利な構成においては、第1のヒンジ部が眼鏡フレームのリムとして形成されており、及び/又は、第2のヒンジ部が眼鏡フレームの眼鏡テンプルとして形成されていることが企図されている。しかしながら、代替的に、例えば接着/又はネジ締結によって、第1のヒンジ部は眼鏡フレームのリムと、第2のヒンジ部は眼鏡フレームの眼鏡テンプルと、それぞれ接続されることもできる。しかしながら、好ましくは、それぞれのヒンジ部は、眼鏡フレームのリム又はそれぞれの眼鏡テンプルと、一体的に及び/又は統合して形成されている。それにより、付加的な部品を省略することができる。眼鏡フレームは、特に安価に組み立てることができ、また、特に小さく、軽く且つ頑丈であることができる。
【0073】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様による眼鏡ヒンジを調整可能に形成するためのヒンジセットに関する。したがって、本発明の第1の態様から生じる特徴及び利点は、本発明の第1の態様の説明から読み取ることができ、本発明の第1の態様の有利な構成は、本発明の第2の態様の有利な構成と見なされ、その逆も同様である。
【0074】
ヒンジセットは、好ましくは、形成されるべき眼鏡ヒンジを調整するために選択可能な複数の異なるバネ要素を含み、当該異なるバネ要素は、特に同一の伸びの下でのテンションに関して及び/又は伸ばされていない状態における長さに関して異なっている。代替的に又は付加的に、ヒンジセットは、形成されるべき眼鏡ヒンジを調整するために選択可能な複数の異なる第1のヒンジ部及び/又は複数の異なる第2のヒンジ部を含み、当該異なる第1及び/又は第2のヒンジ部は、特にそれらの収容領域又は転動領域の幾何学的形状に関して異なっている。
【0075】
したがって、眼鏡ヒンジは、例えば収納位置及び/又は使用位置に関して、例えば復元力のような、それを自動的に移動させるそれぞれの力、並びに、開放及び/又は閉鎖に必要な力を、使用者の希望に適合させることができる。特に、ヒンジが、眼鏡装着者によって、眼鏡技師の助けを借りることなく組み立て及び分解され得ることにより、眼鏡装着者は、眼鏡ヒンジを、自分の個人的な希望に自ら適合させることができる。例えば、眼鏡の所有者は、眼鏡を開閉するための力が自分にとって大きすぎる場合、バネ要素を自ら交換することができる。同様に、眼鏡所有者は、眼鏡を保持するためにそれぞれの眼鏡テンプルが頭部に如何なるプリテンションで押し付けられるかを、非常に容易に自ら調整することができる。特に高齢で力の弱い人々にとっては、眼鏡を装着することが容易となり、スポーティな人々には十分な眼鏡の保持を提供することができる。
【0076】
例えば、ヒンジセットは、複数のバネ要素を含むことができ、当該バネ要素は、異なるゴム混合物を有する、及び/又は、伸ばされていない状態で異なる長さを有する。有利には、それぞれのバネ要素は、それらが常に均等にヒンジ部に嵌まり、及び/又は、保持要素に固定することができるように、同一の断面を有する。しかしながら、それぞれのバネ要素の断面は、例えば、ヒンジ溝内への組み込みを容易にするために、及び/又は、ヒンジ部への保持力を高めるために、異なっていてもよい。それに加えて、同一の材料を用いた場合にも、異なるバネ特性を予め容易に決定することができる。ヒンジセットは、例えば、複数の異なるゴム及び/又は異なるヒンジ部を含むことができる。それぞれのバネ要素は、少なくとも部分的にヒンジ部に強固に固定されることができ、その結果、それぞれのバネ要素は、関連するヒンジ部と一緒に交換することができる。
【0077】
ヒンジ部がリム及び/又は眼鏡テンプルと一体的に形成されている場合、眼鏡は、異なる使用目的に関して迅速且つ容易に調整することができる。例えば、通常のレンズを有するリムを、読書用レンズを有するリムと交換することができる。同様に、通常の装着のためのそれぞれの眼鏡テンプルを、スポーツ用途のためのそれぞれの眼鏡テンプルと交換することができる。ヒンジセットは、ホームユーザー、即ち例えば眼鏡のそれぞれの所有者のために形成することができる。特に、眼鏡ヒンジを調整するために、眼鏡技師に相談すること、及び/又は、工具、特に特別な工具を使用することは、必要ではない。
【0078】
しかしながら、組み立て及びメンテナンスを更に容易にするために、眼鏡ヒンジに帰属する特別な工具を使用可能とすることもできる。特に、工具は、バネ要素をそれぞれの保持要素から引っ張り、及び/又は、その上に通すために形成することができる。工具は、組み立て及び/又はメンテナンスの際にヒンジ部を損傷から保護するために、ヒンジ部の材料よりは柔らかいが、バネ要素の材料よりは硬い材料から成ることができる。例えば、工具は、その幅が、その内部でバネ要素がそれぞれのヒンジ部に配置されている溝の幅よりも小さいか又は実質的に等しい、マイナスドライバーの態様で設計され得る。
【0079】
代替的に又は付加的に、ヒンジセットは、バネ要素をヒンジ部から取り外すために想定された工具、特に特別な工具を含むこともできる。工具は、それぞれの部品を損傷することなくバネ要素を保持要素から引き離すことができるように、バネ要素と保持要素との間の凹部に挿入可能な工具ヘッドを備えることができる。
【0080】
ヒンジセットの別の有利な構成において、それぞれのバネ要素は色分けされ、及び/又は、それぞれの異なるヒンジ部は色分けされている。例えば、眼鏡の両方の眼鏡ヒンジが同一に形成されるように、互いに属する第1及び第2のヒンジ部は、同じ色で構成することができる。同様に、カラーコーディングによって、バネ要素が如何なる特性を有するかを示すことができる。例えば、第1の赤いゴム弾性のバネ要素は、同一の伸びにおいて、第2の青いゴム弾性のバネ要素よりも、強いプリテンションを有することができる。好ましくは、ヒンジセットは、常に、2つの同一の眼鏡ヒンジを形成するように構成されている。即ち、好ましくは、各第2のヒンジ部及び/又は各バネ要素が、ヒンジセット内に2つ存在する。対照的に、第1のヒンジ部は、例えばリムと共に形成することができ、言うまでもなく各眼鏡テンプルについて第1のヒンジ部がリムに設けられており、それに応じて、コストを節約するために1つのリムのみがヒンジセッ内に存在することができる。
【0081】
本発明の第3の態様は、少なくとも1つの眼鏡レンズ用のリムと、2つの眼鏡テンプルと、を有する眼鏡フレームに関する。更に、本発明の第3の態様による眼鏡フレームは、本発明の第1の態様による2つの眼鏡ヒンジを含み、これらは、本発明の第2の態様によるヒンジセットから形成することができ、各眼鏡テンプルは、両方の眼鏡ヒンジのうちの一方によってリムと可動に連結されている。したがって、本発明の第3の態様による眼鏡フレームは、本発明の第1の態様による眼鏡ヒンジを含むことができ、当該眼鏡ヒンジは、本発明の第2の態様によるヒンジセットから調整可能に形成することができる。本発明の第1の態様による眼鏡ヒンジ及び本発明の第2の態様によるヒンジセットの使用から生じる特徴及び利点は、本発明の第1及び第2の態様の説明から読み取ることができ、本発明の第1及び第2の態様の有利な構成は、本発明の第3の態様の有利な構成であると見なされ、その逆も同様である。両方の眼鏡ヒンジは、眼鏡の鉛直中心面に対して鏡面対称に形成することができる。
【0082】
第1のヒンジ部は、眼鏡フレームのリムとして形成されることができ、及び/又は、第2のヒンジ部は、眼鏡フレームの眼鏡テンプルとして形成されることができる。代替的に、各第2のヒンジ部は、それぞれの眼鏡テンプルと強固に接続、例えば接着されることができ、又は、例えば合板眼鏡テンプルの更なる層として一体に形成されることができる。各第1のヒンジ部は、対向する側又は端部においてリムと強固に接続又は接着されることができ、又は、合板リムの更なる層として一体に形成されることができる。好ましくは、2つの眼鏡レンズは、特に眼鏡装着者の弱視を光学的に矯正するために、眼鏡フレームのリム内に保持されている。
【0083】
本発明の第4の態様は、少なくともそれぞれ1つの眼鏡レンズのための少なくとも2つのリム及び/又は少なくとも2対の眼鏡テンプルを有する眼鏡フレームセットに関し、当該眼鏡フレームセットからの眼鏡テンプルの選択された対によって及び選択されたリムによって、眼鏡フレームが組み立て可能であり、組み立てられた状態において、それぞれ選択された各眼鏡テンプルは、本発明の第1の態様による眼鏡ヒンジによって、選択されたリムと可動に連結されており、眼鏡フレームセットの各リムは、対応する第1のヒンジ部を備え、眼鏡フレームセットの各眼鏡テンプルは、対応する第2のヒンジ部を備える。眼鏡フレームセットは、それぞれ1つの本発明の第1の態様による眼鏡ヒンジを形成するために、本発明の第2の態様による1つのヒンジセットをも含むことができる。
【0084】
眼鏡ヒンジは、ホームユーザーによっても容易に組み立て及び分解され得るので、眼鏡をそれぞれのユーザーの希望に関して自由に調整することが可能な眼鏡フレームセットが提供され得る。例えば、複数のリム及び/又は複数の対の眼鏡テンプルを設けることができ、その結果、用途に応じて、スポーツ用眼鏡、読書用眼鏡、又は、従来の意味での通常の眼鏡を形成することができる。したがって、眼鏡フレームセットの所有者は、例えば、1つのリムと2対の眼鏡テンプルとを持つことができる。第1の対の眼鏡テンプルは、例えば、特に快適であり、日常的な使用が想定されている。第2の対の眼鏡テンプルは、例えば、特に確実な保持を提供し、その結果、眼鏡又は同一のリムを、動きの多いスポーツにも使用することができる。したがって、2つの別個のリム、特に2つの別個の眼鏡を使用可能とすることは、不要である。したがって、例えば、眼鏡装着者の弱視を矯正するために、高価で洗練された2対の眼鏡レンズを入手しなくてもよい。眼鏡フレームセットにおいても、有利には、カラーコーディングを設けることができる。
【0085】
それぞれのリム及びそれぞれの眼鏡テンプルは、光学的な矯正及び/又は日除けのために眼鏡の通常の寸法を有することができる。バネ要素は、例えば、張力を掛けられていない状態で2mm~35mm、有利には3.5mm~8mmの内径及び/又は長さを有することができる。長さは、環状に閉じられたバネ要素の場合、それに応じて、緩んだ状態において対向する2つの側の間の直径として定義され得る。バネ要素の断面の直径は、例えば0.5mm~5mm、有利は1.5mm~3mmとすることができる。バネ要素は、例えばOリングのように形成することができる。
【0086】
本発明の第5の態様は、特に環状に閉じられた、及び/又は、ゴム弾性を有するものとして形成されたバネ要素の使用に関する。このバネ要素は、本発明の第1の態様による眼鏡ヒンジにおいて、及び/又は、本発明の第2の態様によるヒンジセットにおいて、及び/又は、本発明の第3の態様による眼鏡フレームにおいて、及び/又は、本発明の第4の態様による眼鏡フレームセットにおいて、使用することができる。それにより、本発明の前述した態様による利点が得られる。
【0087】
別の態様は、少なくとも1つの本発明の第1の態様による眼鏡ヒンジを有する眼鏡に関する。この眼鏡は、対応する眼鏡フレームを含むことができ、光学的な誤差を補正するため及び/又は日除けのために、少なくとも1つの眼鏡レンズを備えることができる。
【0088】
本発明の更なる構成の可能性及び特徴は、以下の態様のリストから得られる:
【0089】
1.眼鏡フレーム用の眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)であって、前記眼鏡フレームのリムに帰属する第1のヒンジ部(12)と、前記眼鏡フレームの眼鏡テンプルに帰属する第2のヒンジ部(14)と、を備え、前記ヒンジ部(12, 14)は、2つの前記ヒンジ部(12, 14)に固定された少なくとも1つのバネ要素(16, 102, 104, 216)によって互いに可動に連結されており、前記バネ要素(16, 102, 104, 216)は好ましくは閉じられ且つゴム弾性を有するように形成されている。
【0090】
2.態様1による眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)であって、
前記ヒンジ部(12, 14)のうちの少なくとも一方、好ましくは両方のヒンジ部(12, 14)は、それぞれ、好ましくはピン状及び/又はフック状の保持要素(18, 218)を含み、当該保持要素の周りには前記バネ要素(16, 102, 104, 216)が少なくとも部分的に巻き付けられている。
【0091】
3.態様2による眼鏡ヒンジであって、
前記ヒンジ部(12, 14)のうちの少なくとも一方は、前記バネ要素(16, 102, 104, 216)をこのヒンジ部(12, 14)の異なる位置に固定するための互いに隔てられた複数の保持要素(18, 218)を備える。
【0092】
4.前述した態様のうちの1つによる眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)であって、
2つの前記ヒンジ部(12, 14)は、前記バネ要素(16, 102, 104, 216)によって、その可動な接続のために互いに張力を付与されている。
【0093】
5.前述した態様のうちの1つによる眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)であって、
前記ヒンジ部(12, 14)のうちの一方は収容領域(24)を備え、前記収容領域(24)上には前記ヒンジ部(12, 14)のうちの他方の対応する転動領域(22)がヒンジ移動中に転動及び/又は摺動する。
【0094】
6.態様5による眼鏡ヒンジ(10, 50, 200)であって、
前記収容領域(24)及び/又は前記転動領域(22)は、それぞれ少なくとも2つの接触面(36)、特に実質的に平坦な接触面(36)を備え、前記接触面(36)は互いに75°~105°、好ましくは87°~93°の角を有する。
【0095】
6a.態様6による眼鏡ヒンジ(10, 50, 200)であって、
使用位置及び/又は収納位置において、両方の接触面は、特に運動平面に垂直な平面図において、2つのヒンジ部の主延在軸に対して及び/又はそれぞれの眼鏡テンプルの長手軸に対して傾斜している。
【0096】
7.前述した態様のうちの1つによる眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)であって、
前記眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)は、前記ヒンジ部(12, 14)のうちの一方が、前記ヒンジ部(12, 14)のうちの他方に対して、前記眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)が収納位置と使用位置との間で位置調整可能であるよう、実質的に運動平面内で移動し得るように形成されている。
【0097】
8.前述した態様のうちの1つによる眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)であって、
前記2つのヒンジ部(12, 14)は、前記収容領域(24)及び対応する前記転動領域(22)によって、前記運動平面内で互いに対して少なくとも部分的に案内されている。
【0098】
9.態様7又は8による眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)であって、
前記ヒンジ部(12, 14)、特に前記収容領域(24)及び/又は前記転動領域(22)は、前記眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)を、前記収納位置及び前記使用位置において、特に少なくとも1つのストッパー(28, 52, 110)及び/又は前記収容領域(24)及び/又は前記転動領域(22)の係止面(36)により安定化させるように形成されている。
【0099】
10.態様7~9のうちの1つによる眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)であって、
前記眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)は、第1のヒンジ位置領域において、特に前記運動平面内の第1の角度範囲において、前記バネ要素(16, 102, 104, 216)によって自動的に前記収納位置に位置調整されるように形成されている、
及び/又は
前記眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)は、第2のヒンジ位置領域において、特に前記運動平面内の第2の角度範囲において、前記バネ要素(16, 102, 104, 216)によって自動的に前記使用位置に位置調整されるように形成されている。
【0100】
11.態様7~10のうちの1つによる眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)であって、
前記眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)は、前記ヒンジ部(12, 14)の互いに対する移動が、前記運動平面内において前記収納位置及び/又は前記使用位置を超えて許容されるように形成されており、前記眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)は、前記バネ要素(16, 102, 104, 216)によって自動的に前記収納位置又は前記使用位置に戻るように形成されている。
【0101】
12.態様7~11のうちの1つによる眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150)であって、
それぞれのピン状及び/又はフック状の保持要素(18)は、実質的に前記運動平面内を延びている、及び/又は、前記バネ要素(16, 102, 104)の前記リング形状によって定義される平面は前記運動平面に対して横方向に、特に垂直に延びている。
【0102】
12a.態様7~11のうちの1つによる眼鏡ヒンジ(200)であって、
それぞれのピン状及び/又はフック状の保持要素(218)は、前記運動平面に対して斜めに、特に実質的に垂直に延びており、及び/又は、前記バネ要素(216)の前記リング形状によって定義される平面は、実質的に前記運動平面に対して平行に、特に前記運動平面内を延びている。
【0103】
13.態様7~12又は12aのうちの1つによる眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)であって、
前記バネ要素(16, 102, 104, 216)は実質的に、前記ヒンジ部(12, 14)のうち収納位置において前記眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)の内角に面する側の上に配置されている、特にそこに固定されている。
【0104】
14.態様7~13のうちの1つによる眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)であって、
前記収容領域(24)及び/又は前記転動領域(22)は摺動層(308)を備え、及び/又は、その間に少なくとも1つの摺動スリーブ及び/又は摺動層(308)が配置されている。
【0105】
15.態様7~14のうちの1つによる眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150)であって、
前記収容領域(24)及び/又は前記転動領域(22)は、特に前記収納位置及び/又は前記使用位置において、前記両領域を互いに対して押し付けるバネ力の下で、前記眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200) の自己調整が引き起こされるように形成されている。
【0106】
15a.態様15による眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)であって、
前記収容領域はV字形又は楔形のセグメントを備え、前記転動領域は対応する凹部を備え、前記V字形又は楔形の角二等分線は、ヒンジ部の主延在方向及び/又は眼鏡テンプルの長手軸に対して、実質的に平行に延びている。
【0107】
16.前述した態様のうちの1つによる眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)であって、
前記眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)が、全ての自由度で互いに対する前記ヒンジ部(12, 14)の運動を許容するように形成されており、前記ヒンジ部(12, 14)が、前記運動平面外に向けられる場合、及び/又は、前記運動平面内で軸の周りを回転する場合、前記バネ要素(16, 102, 104, 216)によって自動的に前記運動平面内の初期位置に戻るように移動する。
【0108】
17.前述した態様のうちの1つによる眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)であって、
前記眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)は、前記バネ要素(16, 102, 104, 216)が少なくとも1つの自由度において最大限許容された移動領域を超えた場合に、自動的に前記ヒンジ部(12, 14)のうちの少なくとも一方から緩むように形成されている。
【0109】
18.前述した態様のうちの1つによる眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)であって、
前記バネ要素(16, 102, 104, 216)は、取り外し可能に、前記第1のヒンジ部(12)及び/又は前記第2のヒンジ部(14)と接続されている。
【0110】
19.前述した態様のうちの1つによる眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)であって、
前記第1のヒンジ部(12)及び/又は前記第2のヒンジ部(14)は、少なくとも1つの凹部(34, 106)、特に溝(34, 106)及び/又は1つの貫通開口を備え、前記凹部内には、前記バネ要素(16, 102, 104, 216)及び/又はそれぞれの保持要素(18, 218)が少なくとも部分的に配置されている。
【0111】
20.前述した態様のうちの1つによる眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)であって、
前記第1のヒンジ部(12)及び/又は前記第2のヒンジ部(14)は、特に凹部(34)におけるアンダーカット(54)の形態の少なくとも1つの支持要素(54)を備え、前記支持要素(54)には前記バネ要素(16, 216)が特定のヒンジ位置領域においてのみ支持されている。
【0112】
21.前述した態様のうちの1つによる眼鏡ヒンジ(100, 150)であって、
前記ヒンジ部(12, 14)は、2つのヒンジ部(12, 14)にそれぞれ固定された少なくとも2つのバネ要素(102, 104)によって互いに可動に連結されている。
【0113】
22.態様21よる眼鏡ヒンジ(100, 150)であって、
少なくとも2つの前記バネ要素(102, 104)は、前記第1のヒンジ部(12)及び/又は前記第2のヒンジ部(14)の凹部(106)内に共に配置されている。
【0114】
23.態様21又は22よる眼鏡ヒンジ(100, 150)であって、
前記少なくとも2つのバネ要素(102, 104)のうちの一方は、同一の伸びの下で、前記少なくとも2つのバネ要素(102, 104)のうちの他方とは異なるテンションを有する。
【0115】
24.前述した態様のうちの1つによる眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)であって、
前記第1のヒンジ部(12)、前記第2のヒンジ部(4)及び/又はそれぞれのバネ要素(16, 102, 104, 216)が、天然材料、特にプレス木材、石材、鼈甲又はゴムから成り、前記バネ要素(16)は好ましくは天然ゴムから成る。
【0116】
25.前述した態様のうちの1つによる眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)であって、
前記第1のヒンジ部(12)は、前記眼鏡フレームのリムとして形成されており、及び/又は、前記第2のヒンジ部(14)は、前記眼鏡フレームの眼鏡テンプルとして形成されている。
【0117】
26.前述した態様のうちの1つによる眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)を調整可能に形成するためのヒンジセットであって、
前記ヒンジセットは、形成されるべき前記眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)を調整するために選択可能な複数の異なるバネ要素(16, 102, 104, 216)を含み、前記異なるバネ要素(16, 102, 104, 216)は、特に同一の伸びの下でのテンションに関して及び/又は伸ばされていない状態における長さに関して異なっており、
及び/又は
前記ヒンジセットは、形成されるべき前記眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)を調整するために選択可能な複数の異なる第1のヒンジ部(12)及び/又は複数の異なる第2のヒンジ部(14)を含み、前記異なる第1及び/又は第2のヒンジ部(12, 14)は、特にそれらの収容領域(24)又は転動領域(22)の幾何学的形状に関して異なっている。
【0118】
27.態様26によるヒンジセットであって、
それぞれの異なるバネ要素(16, 102, 104, 216)は色分けされ、及び/又は、それぞれの異なるヒンジ部(12, 14)は色分けされている。
【0119】
28.少なくとも1つの眼鏡レンズのためのリムと、2つの眼鏡テンプルと、前述した態様のうちの1つによる2つの眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)と、を有する眼鏡フレームであって、それぞれの眼鏡テンプルは、それぞれ2つの前記眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)のうちの1つによって前記リムと可動に連結されている。
【0120】
29.少なくともそれぞれ1つの眼鏡レンズのための少なくとも2つのリム及び/又は少なくとも2対の眼鏡テンプルを有する眼鏡フレームセットであって、当該眼鏡フレームセットからの眼鏡テンプルの選択された対によって及び選択されたリムによって、眼鏡フレームが組み立て可能であり、組み立てられた状態において、それぞれ選択された各眼鏡テンプルは、前述した態様のうちの1つによる眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)によって、選択されたリムと可動に連結されており、眼鏡フレームセットの各リムは、対応する第1のヒンジ部(12)を備え、眼鏡フレームセットの各眼鏡テンプルは、対応する第2のヒンジ部(14)を備える。
【0121】
30.態様1~25のうちの1つによる眼鏡ヒンジ(10, 50, 100, 150, 200)、及び/又は、態様26又は27によるヒンジセット、及び/又は、態様28による眼鏡フレーム、及び/又は、態様29による眼鏡フレームセットにおける、特に環状に閉じられた、及び/又は、ゴム弾性を有するように形成されたバネ要素(16, 102, 104, 216)の使用。
【0122】
本発明の更なる特徴は、特許請求の範囲、実施例及び図面から明らかになる。本明細書において上述した特徴及び特徴の組み合わせ、並びに、以下で実施例において説明する特徴及び特徴の組み合わせは、それぞれ提示された組み合わせにおいてのみならず、本発明の範囲を逸脱することなく、他の組み合わせにおいても用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【
図1】その使用位置にある眼鏡フレーム用眼鏡ヒンジの第1の実施形態を、概略的な斜視図で示している。
【
図2】その収納位置にある
図1の眼鏡ヒンジを、概略的な斜視図で示している。
【
図3】その使用位置にある
図1の眼鏡ヒンジを、概略的な上面図で示している。
【
図4】その収納位置にある
図1の眼鏡ヒンジを、概略的な上面図で示している。
【
図5】その使用位置にある眼鏡ヒンジの別の実施形態を、概略的な斜視図で示している。
【
図6】その収納位置にある
図5の眼鏡ヒンジを、概略的な斜視図で示している。
【
図7】
図5の眼鏡ヒンジを、概略的な前面図で示している。
【
図8】その使用位置にある
図5の眼鏡ヒンジを、概略的な上面図で示している。
【
図9】その収納位置にある
図5の眼鏡ヒンジを、概略的な上面図で示している。
【
図10】その使用位置にある眼鏡ヒンジの別の実施形態を、概略的な斜視図で示している。
【
図11】その収納位置にある
図10の眼鏡ヒンジを、概略的な斜視図で示している。
【
図12】その使用位置にある
図10の眼鏡ヒンジを、概略的な上面図で示している。
【
図13】その収納位置にある
図10の眼鏡ヒンジを、概略的な上面図で示している。
【
図14】その使用位置にある眼鏡ヒンジの別の実施形態を、概略的な斜視図で示している。
【
図15】その収納位置にある
図14の眼鏡ヒンジを、概略的な斜視図で示している。
【
図16】その使用位置にある
図14の眼鏡ヒンジを、概略的な上面図で示している。
【
図17】その収納位置にある
図14の眼鏡ヒンジを、概略的な上面図で示している。
【
図18】過剰に圧縮されたヒンジ位置にある
図5の眼鏡ヒンジを、概略的な斜視図で示している。
【
図19】過剰に伸展されたヒンジ位置にある
図5の眼鏡ヒンジを、概略的な斜視図で示している。
【
図20】その運動平面から上方へ外れたヒンジ位置にある
図5の眼鏡ヒンジを、概略的な斜視図で示している。
【
図21】その使用位置にある眼鏡ヒンジの別の実施形態を、概略的な斜視図で示している。
【
図22】その収納位置にある
図21の眼鏡ヒンジを、概略的な斜視図で示している。
【
図23】前に示した眼鏡ヒンジを有する眼鏡フレームにおける眼鏡テンプルのリムに対する可能な運動を、概略的な斜視図で示している。
【発明を実施するための形態】
【0124】
以下において、眼鏡フレーム用眼鏡ヒンジの様々な実施形態が議論される。その際、同一の機能及び/又は同一の構成を有する部分には、部分的に同一の参照符号が付与され、更に、それぞれの実施形態について重複する説明は省略される。
【0125】
図1は、眼鏡フレーム用眼鏡ヒンジ10の第1の実施形態を、概略的な斜視図で示している。眼鏡ヒンジは、眼鏡フレームのリムに帰属する第1のヒンジ部12を含む。更に、眼鏡ヒンジ10は、眼鏡フレームの眼鏡テンプルに帰属する第2のヒンジ部14を含む。しかしながら、この割り当ては、それぞれの眼鏡ヒンジの機能を制限することなく、容易に交換することができる。
【0126】
例えば、第1のヒンジ部12は、眼鏡フレームのリムと一体に形成することができ、その場合、リムは、眼鏡のそれぞれのレンズを保持するために機能し、装着の際、少なくとも部分的に装着者の鼻の上に載る。第2のヒンジ部14も同様に、眼鏡テンプルと一体に形成することができ、眼鏡フレームを眼鏡装着者の頭部に保持するために機能し得る。例えば、第1のヒンジ部12も第2のヒンジ部14も、均質的に、例えば木材、特にプレス木材、合板、石材、鼈甲、プラスチック及び/又は金属のような単一の材料から成ることができる。それに応じて、リム及びそれぞれの眼鏡テンプルも、同一の材料から形成することができる。
【0127】
2つのヒンジ部12,14は、これらに固定されたバネ要素16によって、互いに可動に連結されている。バネ要素16は、ここでは環状に閉じられており、ゴム弾性材料で形成されている。バネ要素16用の材料としては、例えば様々なタイプのゴムが適している。バネ要素16は、2つのヒンジ部12,14の各々の保持要素18に保持されている。2つの保持要素18は、バネ要素16が保持要素18から滑り落ちるのを防止するアンダーカット20を、それぞれ互いに反対側に備えている。バネ要素16によって、2つのヒンジ部12,14は、接触領域において互いに対して張力をかけられている。そのために、バネ要素16は、特定のプリテンションが作用した状態で、2つの保持要素18に固定されている。即ち、バネ要素16は、テンションをかけられていない弛緩した状態に対して、引き伸ばされている。
【0128】
バネ要素16による以外に、2つのヒンジ部12,14は、互いに連結されていない。バネ要素16は弾性を有するため、それにより、2つのヒンジ部12,14の原則として全ての自由度における相対移動が許容される。特に、2つのヒンジ部12,14は、それぞれの眼鏡テンプルがリムから離れるように開かれ、眼鏡が装着者の頭部の上に載せられる使用位置と、眼鏡テンプルが実質的に眼鏡フレームのリムに接触するか又はそれぞれの眼鏡レンズに向かって折り畳まれている収納位置と、の間で位置を調整することができる。
【0129】
眼鏡ヒンジ10の収納位置は、例えば
図2の概略的な斜視図において認識することができ、2つのヒンジ部12,14は、運動平面内において、
図1に示された使用状態に対して、相対的に90°だけ回転されている。2つのヒンジ部12,14の相対的な運動を少なくとも部分的に案内するために、第1のヒンジ部12は転動領域22を備え、第2のヒンジ部14は対応する収容領域24を備える。
図1及び2、並びに、
図3及び4の概略的な上面図においても認識され得るように、転動領域22は、実質的に立方体形状又は直方体形状に形成されている。それに応じて、収容領域24は、矩形の断面を有する対応する凹部によって形成されている。2つのヒンジ部12,14が可能な限り均等に互いに対して摺動及び/又は転動することを可能とするために、それぞれのコーナーは丸みを付けて形成されている。転動領域及び収容領域をそれぞれ対応する直方体形状に形成することにより、特に、以下においても説明されるように、それぞれの互いに対する載置の際に収納又は使用位置を形成する、それぞれ少なくとも2対の対応する支持面36,22が設けられる。それぞれの支持面の対は、好ましくは、直方体形状の構成の場合、斜交いに形成されており、例えば、実質的に90°だけ互いに対してオフセットされている。
【0130】
収容領域24及び転動領域22は、眼鏡ヒンジ10のための一種のガイドを形成する。特に、これら2つの領域22,24は、例えば
図2において矢印26で示されるように、上方又は下方への傾斜運動に関してヒンジ部12,14を安定させる。それにより、眼鏡ヒンジ10が、意図せず他の空間方向に捩じられることなく、使用位置と収納位置との間で快適に位置を調整され得ることが保証される。
【0131】
2つの保持要素18は、それぞれ転動領域22又は収容領域24の一部をも形成すると共に、それぞれ対向する接触面を備えている。
【0132】
2つのヒンジ部12,14はバネ要素16によってのみ互いに接触して保持されているので、例えば矢印26によって示された運動方向に対応する、第1のヒンジ部12に対する第2のヒンジ部14の運動は、十分に可能である。したがって、眼鏡テンプルは、リムに対して上方又は下方に折り曲げることができ、それぞれの空間的配向は、眼鏡装着者の頭部の上における眼鏡フレームの装着位置に応じて理解され得る。それにより、眼鏡ヒンジ10は、2つのヒンジ部12,14のうちの一方に意図せず上下方向に力が作用した場合に、損傷から保護され得る。
【0133】
転動領域22及び収容領域24における上下方向のそれぞれの真っ直ぐな支持面と、そのような運動によって生じるバネ要素16の更なる伸びとに起因して、復元力が生成され、当該復元力により、眼鏡ヒンジ10のそれぞれのヒンジ部12,14は、使用位置と収納位置との間の運動平面内に再び自動的に位置調整される。この運動平面は、直立した眼鏡装着者の装着位置に対して実質的に水平である。それにより、眼鏡ヒンジは、特に頑丈で取り扱いが容易である。
【0134】
更に、転動領域22及び収容領域24が部分領域28にストッパー28を形成しており、当該ストッパーにより、収納位置が静止位置として予め決定されていることが認識され得る。バネ要素16のプリテンションに起因して、眼鏡ヒンジ10は、特定の角度範囲だけ又は特定のヒンジ位置領域内へ使用位置から位置を調整された後、自動的に収納位置へ移行する。引き続き、眼鏡ヒンジ10は、収納位置において、自動的にバネ要素16によってストッパー28に保持されている。したがって、眼鏡ヒンジ又はそれぞれのヒンジ部12,14が、特定の最小強度の外力の作用によってのみ離れる、準安定的な位置が利用可能となる。眼鏡ヒンジ10が自動的に収納位置へ移行し始める角度範囲は、実質的に、収容領域24及び転動領域22の立方体形状の真っ直ぐな面によって予め決定されている。例えば、収容領域24の対応するコーナーが転動領域22の対応するコーナーを通過する際、眼鏡ヒンジ10は、ある位置から他の位置へ移行する。
【0135】
同様に、眼鏡ヒンジ10は、使用位置にも準安定的な位置を備えている。例えば、
図3の上面図において、収容領域24が、2つの真っ直ぐな又は平坦な面36で、転動領域22のそれぞれの対応する真っ直ぐな面と接触することが、特に良好に認識され得る。この位置において、バネ要素16は、例えば、その最小の伸びを有し得る。したがって、眼鏡ヒンジ10が使用位置から位置を調整される際、増大した引張力が自動的にバネ要素16によって生成され、当該引張力が最初に使用位置へと戻す復元力を生じさせる。使用位置は、それに応じて、転動領域22及び収容領域24の幾何学的形状によって予め決定されている。特に互いに角度を成す真っ直ぐな面36によって、使用位置における2つのヒンジ部12,14の互いに対する安定的な位置がもたらされる。それに応じて、眼鏡ヒンジ10は、特定の角度範囲内においても自動的に使用位置へ移行し、それぞれの面36は係止面として機能し、2つのヒンジ部12,14の互いに対する安定的な位置がもたらされる。
【0136】
更に、
図3において、転動領域22及び収容領域24が矢印30の方向から見て傾斜していることが認識され得る。矢印30は、眼鏡ヒンジ10を備える眼鏡フレームが眼鏡装着者によって装着される間、当該眼鏡ヒンジが実質的にどの方向から他人によって見られるかを示している。換言すれば、視線の方向は、例えば眼鏡テンプルの長手方向に対して垂直に延びている。それに応じて、2つのヒンジ部12,14の間に場合によっては存在する間隙は、傾斜面のように覆い隠されている。それにより、見苦しい間隙が見えないので、それぞれの製造公差を特に大きくすることができる。更に、2つのヒンジ部12,14はバネ要素によっても互いに押し付けられ、その結果、自動的に可能な限り最小の間隙が設定される。
【0137】
更に、この配置によって、V字形の収容部が形成されることが達成され、当該収容部によって、ヒンジ部は安定的に保持され得る。
【0138】
図4の眼鏡ヒンジ10の上面図では、更に、収納位置における眼鏡ヒンジ10の内角とは反対側の領域32が、第1及び第2のヒンジ部12,14の間に重なりを有していないことが認識され得る。それにより、2つのヒンジ部12,14の互いに隣接する領域に構造的な負荷をかけることなく、眼鏡ヒンジ10を更に折り畳むことが可能である。特に、接触領域に引張力は負荷されず、代わりに、2つのヒンジ部12,14は、眼鏡ヒンジ10が意図された領域にわたってそのようにストッパー28に押し付けられる際、互いに対して転動する。その際、領域32において、2つのヒンジ部12,14は、眼鏡ヒンジ10の構造的な負荷を軽減するために、互いに離れていることができる。したがって、眼鏡ヒンジ部10は、同様に損傷から保護されている。通常、バネ要素16は、損傷を受けることなく、それでもなお十分にプリテンションを利用可能とすべく、付加的に引き伸ばされ得るよう、容易に設計され得る。
【0139】
バネ要素16は、2つの保持要素18又は2つのヒンジ部12,14に、取り外し可能に固定されている。それにより、特に、バネ要素16を、異なるバネ特性曲線を有する他のバネ要素と交換することが可能となる。例えば、バネ要素16は異なるラバーコンパウンドから構成されることができ、それにより、これらの異なるバネ要素は、同一の伸びの下で異なる力を生成する。それにより、使用されるバネ要素に応じて、一方では、眼鏡ヒンジ10をそれぞれ使用位置及び/又は収納位置へ移行させる異なる力を予め決定することができ、更に、それに応じて、これらの位置の間で眼鏡ヒンジ10の位置を調整するためにどのような力が必要とされるかも予め決定することができる。同様に、それにより、眼鏡ヒンジ10を使用位置に保持するために、特定の力が必要であるようにすることもできる。それにより、対応する眼鏡フレームを装着者の頭部に付加的に保持するために、それぞれの眼鏡テンプルが装着者の頭部に押し付けられるという結果がもたらされ得る。
【0140】
眼鏡ヒンジ10は、容易に組み立て及び分解することができる。特に、付加的な工具及び/又は訓練なしに眼鏡ヒンジ10を組み立てることが可能であり得る。したがって、ホームユーザーが、例えばバネ要素16のような眼鏡ヒンジ10の個々の部品を交換することも可能である。眼鏡ヒンジ10は、収容領域24及び転動領域22並びにバネ要素16自体によって自己調整され、その結果、眼鏡ヒンジ10のそれぞれの部分の永久変形を通じて、眼鏡ヒンジ10を更に微調整し、装着者に適合させることは、必要ではない。それにより、眼鏡ヒンジ10は、ホームユーザーにとって調整可能であり得る。
【0141】
特に
図1及び2において認識され得るように、2つのヒンジ部12,14は、それぞれ、その内部にバネ要素16が配置される溝34を備えている。したがって、バネ要素16は、2つのヒンジ部12,14のそれぞれの外面に対して埋め込まれて配置されており、それにより、一方では、バネ要素16を損傷から保護することができ、他方では、例えば毛髪がバネ要素16に挟み込まれることを特に良好に回避することができる。溝34は、2つのヒンジ部12,14の凹部と解釈することもでき、その中央領域にはそれぞれ保持要素18が配置されている。溝34及び/又は保持要素は、それぞれのヒンジ部ブランク、特に合板ブランクをフライス加工することによって製造することができる。
【0142】
第1のヒンジ部12の溝34は、収納位置にある眼鏡ヒンジ10において、もはや外側からアクセスできないように構成されている。これは、特に
図2において認識され得る。それにより、バネ要素16は、収納位置において、溝34から滑り出ること、又は、第1のヒンジ部12の保持要素18から横滑りすることから保護される。これは、バネ要素16が、ここでの場合のように、収納位置において使用位置と比較してより小さく引き伸ばされている場合に、特に有意義である。伸長比が逆である場合、使用位置における第1及び/又は第2のヒンジ部14の溝34の逆の構造又はブロックも考慮に入れることができる。この場合、例えば第2のヒンジ部14の溝34は、使用位置において覆われ得る。
【0143】
例えば
図1において認識され得るように、眼鏡ヒンジ10の第2のヒンジ部14における保持要素18は、第1のヒンジ部12の保持要素18よりも、2つのヒンジ部12,14のそれぞれの接触面から更に離れて延びている。それにより、リムよりも眼鏡テンプルに、対応してより多くの組み立てスペースが存在することを考慮することができる。なぜなら、当該スペースは、それぞれの眼鏡レンズも収容しなければならず、更に、大抵の場合、第1のヒンジ部12への接続部において約90°の湾曲を有するからである。第2のヒンジ部14におけるバネ要素16のこの大きな広がりにより、全体としてより長いバネ要素16を使用することができる。より長いバネ要素16によって、眼鏡ヒンジ10がその全長に関連して運動する際、バネ要素は、対応するより短いバネ要素と比較して相対的により小さく引き伸ばされる。それにより、バネ要素16は、全体としてより小さな負荷を受ける。特に、多数回のヒンジ運動の後に初めて、バネ要素16を形成するゴム弾性材料の疲労が生じる。
【0144】
図5は、眼鏡ヒンジの第2の実施形態を概略的な斜視図で示しており、当該眼鏡ヒンジには参照符号50が付与されている。眼鏡ヒンジ50において、転動領域22は第2のヒンジ部14に、収容領域24は第1のヒンジ部12に、それぞれ配置されている。したがって、ここでの配置は、眼鏡ヒンジ10に対して逆になっている。代替的に、ここでも、ヒンジ部12が眼鏡テンプルに、ヒンジ部14がリムに、それぞれ帰属することができる。この場合、
図5では例えば左側の眼鏡ヒンジ50が、
図1では右側の眼鏡ヒンジ10が、それぞれ示される。それぞれの左右の眼鏡ヒンジは、好ましくは、リムの中央を通る鏡軸に対して対称に形成されている。
【0145】
眼鏡ヒンジ10の図と同様に、眼鏡ヒンジ50は
図5においてその使用位置で示されており、
図6は、その収納位置にある眼鏡ヒンジ50を概略的な斜視図で示しており、
図8は、使用位置にある眼鏡ヒンジ50を概略的な上面図で示しており、
図9は、その収納位置にある眼鏡ヒンジ50を概略的な上面図で示している。上面図は、眼鏡を装着して真っ直ぐに保持した場合の身体の上下方向における上方からの俯瞰図に対応し得る。対称的な構造のゆえに、上面図での図示は、下面図にも対応する。
【0146】
特に
図5及び
図6において認識され得るように、眼鏡ヒンジ50は、ストッパー28だけでなく、別のストッパー52も備えている。ストッパー52によって、使用位置は特に正確に予め決定され、眼鏡ヒンジ50は、更に、この位置において安定化される。
【0147】
更に、2つのヒンジ部12,14が、それぞれの接触面とは反対側で、特に2つのヒンジ部12,14の主延在方向に対して横方向に、又は、眼鏡を装着して真っ直ぐに保持した場合に鉛直面に対して実質的に垂直に、先細りになっていることが認識され得る。この先細りは、眼鏡フレームの特に繊細な外観をもたらす。先細りは、特に、それぞれのヒンジ部12,14の構造的な負荷に関して設計することができる。当該負荷は、それぞれの接触面の領域において、したがって転動領域22及び収容領域24の領域において特に高く、逆にそれぞれの反対側において相対的に見てより小さくなる。したがって、眼鏡ヒンジ50は、特に軽量であり得る。
【0148】
それに加えて、眼鏡ヒンジ50においては、第1の実施形態(眼鏡ヒンジ10)に対して、それぞれの保持要素18及び溝34が異なる構成とされている。
【0149】
眼鏡ヒンジ50の保持要素18は、アンダーカット20を備えていない。その代わりに、保持要素18は、バネ要素16(
図5~9においては認識することが困難であり、したがって参照番号が付与されていないが、溝34内に配置されている)によって使用位置において形成される平面に対して、僅かに傾斜している。保持要素18のこの傾斜は、アンダーカット20と同様に、先ず、バネ要素16をそれぞれの溝34内に保持させる。しかしながら、眼鏡ヒンジ50が収納位置を超えて押し付けられた場合、即ち、2つのヒンジ部12,14が
図6及び
図9に示された位置を超えて互いに重なり合って閉じられた場合、バネ要素16は、保持要素18から、ひとりでに滑り落ちることができる。それにより、2つのヒンジ部12,14は互いに分離し、それによって、過大に折り畳まれた際の眼鏡ヒンジ50の損傷が回避され得る。引き続き、バネ要素16は、眼鏡ヒンジ50を分解するために、保持要素18の上に再び容易に引っ張られることができる。したがって、眼鏡ヒンジ50は特に頑丈である。全体として、バネ要素16の組み立て及び分解は、斜めの保持要素18に起因して、更にアンダーカット20を有する保持要素18を備える眼鏡ヒンジ10と比較して、単純化されている。
【0150】
更に、第1のヒンジ部12の溝34は、第2のヒンジ部14に面する側にアンダーカット54を備えるように形成されている。したがって、バネ要素16は、組み立て及び分解のために、開口56とも称され得る中間ギャップ56を通されなければならない。この中間ギャップ56は、2つのヒンジ部12,14の組み立てられた状態において、少なくとも正規に企図されたヒンジ位置において、第2のヒンジ部14の保持要素18によって閉じられている。正規に企図されたヒンジ位置は、通常、収納位置、使用位置、及び、運動平面内におけるその間の全ての位置に対応する。したがって、眼鏡ヒンジ50における第2のヒンジ部14の保持要素18は、中間開口56を通って摺動し、それにより、ヒンジ部12,14は、更に、コンパクトな構造でありながら互いに接して案内される。それに応じて、バネ要素16は、先ず眼鏡ヒンジ50を組み立てるために第1のヒンジ部12に配置され、その後に初めて第2のヒンジ部14の保持要素18に配置されなければならない。それにより、バネ要素16は、望ましくない弛緩に対して、また紛失に対しても保護されている。
【0151】
同時に、アンダーカット54は、眼鏡ヒンジ50の収納位置においてもバネ要素16の更なるプリテンションを提供する機能を果たす。したがって、アンダーカット54は、眼鏡ヒンジ50の収納位置において、バネ要素16が2つの溝34の輪郭に実質的に従わなければならないという結果をもたらす。さもなければ、バネ要素は、例えば、眼鏡ヒンジ50の収納位置において、少なくとも部分的に溝34の外側に配置されている。バネ要素16のそのような経過は、例えば
図9において破線58で示されている。しかしながら、アンダーカット54によって、バネ要素16は、破線60によって示された経過に従う。したがって、使用位置において非常に強いプリテンションが必要とされることなく、2つのヒンジ部12,14を互いに接して保持するために、バネ要素16の十分なプリテンションが、収納位置においても保障され得る。それにより、眼鏡ヒンジ50の負荷が軽減される。それに加えて、バネ要素16は、眼鏡ヒンジ50の収納位置において、損傷から保護された態様で溝34内に配置されている。
【0152】
したがって、眼鏡ヒンジ50のバネ要素16は、特に収納位置に隣接する特定のヒンジ位置領域においてのみ、アンダーカット54において支持される。溝34、保持要素18及び眼鏡ヒンジ50のアンダーカット54を更に示すために、眼鏡ヒンジ50が更に内側から見た側面透視図で
図7に示されている。
【0153】
眼鏡ヒンジ50においては、更に、特に例えば
図8において、転動領域22及び収容領域24の平坦な支持面36の間のコーナーに特定の間隙が設けられていることが、特に良好に認識され得る。この間隙は、収納位置と使用位置との間の特に均一な位置調整を可能とし、即ち、それぞれのヒンジ部12,14は、相対的に特に均一に運動することができる。対照的に、丸みが付けられていないコーナー及び/又は間隙のない嵌め合いの場合、眼鏡ヒンジ50の位置の調整において、容易に引っ掛かり及び/又はがたつきが生じ得る。
【0154】
図10の概略的な斜視図に示された眼鏡ヒンジの第3の実施形態は、ここでは参照符号100が付与されているが、最初の2つの実施形態に対して、特に、2つのヒンジ部12,14が第1のバネ要素102及び第2のバネ要素104によって互いに接続されている点で異なる。これらは、同様にその使用位置にある眼鏡ヒンジ100を示す
図12の眼鏡ヒンジ100の概略的な上面図において、特に良好に認識され得る。眼鏡ヒンジ100の第3の実施形態は、更に、
図11の概略的な斜視図で、その収納位置において示されている。同様に、
図13の概略的な上面図は、その収納位置にある眼鏡ヒンジ100を示している。
【0155】
2つのヒンジ部12,14は新たにそれぞれ保持要素18を備え、その各々はアンダーカットを備え、当該アンダーカットには、内側のバネ要素102が、眼鏡フレームの装着位置において眼鏡装着者の頭部に面する側で支持される。この側とは反対側に、それに応じて、第2のバネ要素104が支持され、その結果、2つのバネ要素102,104は、2つの保持要素18を取り囲む凹部106内に確実に収容されている。2つのヒンジ部102,104は、付加的に、凹部106にバルジ状の窪み108を備え、当該窪みによって、バネ要素104は、付加的に凹部106内のその位置において固定される。このバルジ状の窪み108は、バネ要素104のリング形状に従って全周に、又は、凹部106のそれぞれ転動領域22及び収容領域24とは反対側にのみ、形成することができる。
【0156】
それに加えて、眼鏡ヒンジ100においては、収容領域24及び転動領域22が、認識可能に異なって構成されている。眼鏡ヒンジ100においては、転動領域22及び収容領域24が、対応して眼鏡ヒンジ100の使用位置及び/又は収納位置を予め決定する平坦な係止面を形成しない。その代わりに、眼鏡ヒンジ100の使用位置は、
図10及び12に示されているように、ストッパー110によってのみ予め決定されている。
図11の概略的な斜視図及び
図13の上面図に示されている眼鏡ヒンジ100の収納位置は、ここでは参照符号112によって識別しやすくされた、眼鏡ヒンジ100の内面上の中央領域における交互の窪み及び隆起によって予め決定される。領域112におけるこれらの交互の隆起及び窪みは、同時に、収納位置と使用位置との間の眼鏡ヒンジ100の運動平面に対して実質的に平行に配置された支持面114を形成する。これらの接触面114によって、眼鏡ヒンジは、これらの位置の間での位置調整中に、付加的に、2つのヒンジ部12,14のうちの一方の他方に対する上方又は下方への傾斜に対して支持される。それにより、2つの位置の間での均一な位置調整をもたらすと共に、望ましくない傾斜を防止する付加的なガイドが提供される。
【0157】
2つの設けられたバネ要素102,104によって、眼鏡ヒンジ100は、それぞれの位置調整力及び自動的な復元力に関して特に良好に適合され得る。例えば、バネ要素104は、実質的に使用位置への移行効果を、バネ要素102は、実質的に収納位置への移行効果を、それぞれ規定することができる。それに応じて、これらのそれぞれの位置からの運動のためのそれぞれの力は、少なくとも部分的に、互いに独立して予め決定することができる。その他に、眼鏡ヒンジ100が一方又は他方の位置へ移行する角度範囲を変更又は予め決定することもできる。
【0158】
そのような変更のために、眼鏡ヒンジ100においては、転動領域22及び収容領域24の幾何学的形状は必ずしも変更される必要はなく、バネ要素102,104のみを交換することもできる。これは、特に、例えば眼鏡ヒンジ10及び眼鏡ヒンジ50においては、転動領域22及び収容領域24の立方体形状によって予め決定されているように、どの角度範囲から眼鏡ヒンジ100が一方の又は他方の位置へ移行するかを実質的に予め決定する、対応する接触面が予め決定されていないために、可能である。対照的に、眼鏡ヒンジ100においては、転動領域22及び収容領域24が、実質的に丸みを付けて形成されている。
【0159】
図14の概略的な斜視図には、ここでは参照符号150が付与された眼鏡ヒンジの第4の実施形態が示されている。眼鏡ヒンジ150は、眼鏡ヒンジ100と同様に形成されており、特に、ここでも2つのバネ要素102,104が設けられている。これらの2つのバネ要素102,104は、
図16及び
図17の眼鏡ヒンジ150の概略的な上面図において、特に良好に認識され得る。眼鏡ヒンジ150の使用位置は
図14及び
図16に示されており、眼鏡ヒンジ150の収納位置は
図15及び
図17の概略的な斜視図に示されている。
【0160】
眼鏡ヒンジ150は、眼鏡ヒンジ100の単純化されたバージョンとして理解することもできる。ここでは、2つのヒンジ部12,14の間のそれぞれの接触面のそれぞれ反対側における先細りは省略された。同様に、収容領域24又は転動領域22に相互の隆起はない。更に、バルジ状の窪みが、バネ要素104を凹部106内に保持するために設けられている。したがって、眼鏡ヒンジ150の2つのヒンジ部12,14は、特に安価に製造することができる。
【0161】
それぞれの眼鏡ヒンジ10,50,100,150を特に耐摩耗性とするために、それらは、それぞれの接触面の領域、即ち、特に転動領域22及び収容領域24に付加的な摺動層を備えることができる。この摺動層は、例えば、エポキシ樹脂によって形成することができ、それにより、2つのヒンジ部12,14の摩擦摩耗を特に最小限に抑えることができる。代替的に又は付加的に、潤滑剤、例えばテフロン(登録商標)粉末を、2つのヒンジ部12,14の間に設けることもできる。代替的に又は付加的に、2つのヒンジ部12,14は、強固に塗布されたテフロン(登録商標)層を備えることもできる。
【0162】
眼鏡ヒンジ10,50,150及び200が、特に容易に組み立て及び分解され得ることにより、これらはヒンジセット及び/又は眼鏡フレームセットの一部であることができる。したがって、複数の異なるヒンジ部12,14及び/又は複数の異なるバネ要素16,102,104を提供することができる。更に、ホームユーザーは、自らの個人的な要件に従って、対応する眼鏡ヒンジを組み合わせ、組み立てることができる。同様に、例えばリム及び/又は眼鏡テンプルは、異なる要件に従って交換することができる。同時に、眼鏡ヒンジ10,50,100,150は、個々の部品の容易な交換及び/又は修理をも可能とする。
【0163】
2つのヒンジ部12,14が、それぞれのバネ要素16又は102及び104によってのみ互いに対して保持されることにより、対応する眼鏡ヒンジのための剛な回転軸は生じない。その代わりに、2つのヒンジ部12,14は、回転運動及び並進運動の両方によって、互いに対して位置を調整することができる。特に、収納位置と使用位置との間での位置調整は、摺動と転動とを組み合わせることにより行うことができる。
【0164】
それぞれの製造公差は、特に、転動領域22及び収容領域24の領域においても、特に大きくなり得る。バネ要素16又は102及び104によって2つのヒンジ部12,14を圧縮することにより、公差補償が自動的に行われ、2つのヒンジ部12,14は、各位置において最小のギャップで隣接して保持されている。即ち、眼鏡ヒンジ10,50,100,150は、統合された公差補償を有しており、それにより、特に安価に製造することができる。それぞれの製造公差は大きくなり得る。特に、製造誤差によって、従来のヒンジの場合に即座にそうであるように、眼鏡ヒンジ10,50,100,150の割れ及び/又はブロッキングが即座に生じる可能性はない。それに加えて、対応するヒンジは、位置調整を繰り返した場合であっても緩むことはなく、及び/又は、例えばネジ込み式の眼鏡ヒンジの場合に即座にそうであるように、眼鏡技師によって再調節されなければならない。特に、眼鏡ヒンジ10,50,100,150は、過剰負荷及び/又は過剰伸長及び/又は過剰圧縮によって永久変形されず、そのような負荷の後に必ずしもメンテナンスを必要としない。
【0165】
眼鏡ヒンジ10,50,100,150は、それらの上下方向に関して対称に形成されており、これは製造技術的に有利である。
【0166】
図18、
図19及び
図20は、それぞれ、
図5の眼鏡ヒンジ50を概略的な斜視図で示している。ここでは、眼鏡ヒンジ50が、その収納位置とその使用位置との間での位置調整中に通常は占めるべきではなく、従来の眼鏡ヒンジでは即座に損傷及び/又は永久変形につながる様々な位置が示されている。しかしながら、眼鏡ヒンジ50は、そのようなヒンジ位置及びそれに伴う負荷を、損傷されることなく受容することができる。そのようなヒンジ位置は、眼鏡ヒンジ10、100及び150に損傷を与えることなく占められ得る。
【0167】
図18は、過剰に圧縮された位置にある眼鏡ヒンジ50を示す。2つのヒンジ部12,14は、ここでは、収納位置を超えて矢印62の方向に重なり合うように移動されており、この運動は、依然として、収納位置と使用位置との間の運動平面内で行われている。そのような過剰圧縮は、例えば、シャツに留められた眼鏡を圧縮することによって生じ得る。認識され得るように、2つのヒンジ部12,14は、この場合、ストッパー28において互いに接しながら転動し、一方、それぞれの真っ直ぐな面36は互いに離れる。バネ要素16は、その後もアンダーカット54に接触し、したがって、収納位置に対して更に引き伸ばされる。それにより、眼鏡に対する圧縮が終了した後に眼鏡ヒンジ50を再び収納位置へ自動的に位置調整する、付加的な復元力が生じる。
【0168】
アクスルピンが設けられておらず、バネ要素16は損傷することなくそのような付加的な伸びを受容するように構成されているので、眼鏡ヒンジ50は、これにより損傷を受けず及び/又は永久変形しない。その代わりに、眼鏡ヒンジ50は、バネ要素16によって互いに張力をかけられているヒンジ部12,14に起因して、真っ直ぐな面36上で再び自動的に調整される。2つのヒンジ部12,14はストッパー28に接しながら転動し、ヒンジ部12,14のどの領域もそれに対応して許容し得ない負荷を受けないので、そのような乱用的な荷重は、眼鏡ヒンジ50によって容易に受容され得る。
【0169】
図19は、過剰に伸長された位置にある眼鏡ヒンジ50を示す。2つのヒンジ部12,14は、ここでは、使用位置を超えて矢印64の方向に互いに離れるように移動されており、この運動は、依然として、収納位置と使用位置との間の運動平面内で行われている。このような過剰伸長は、例えば、眼鏡を装着した状態で枕の上に頭部を横向きに載せることによって生じ得る。認識され得るように、2つのヒンジ部12,14は、この場合、ストッパー52において互いに接しながら転動し、一方、それぞれの真っ直ぐな面36は互いに離れる。特に、ヒンジ部12の楔形の領域66は、ストッパー52に形成されたヒンジ部14の対応する凹部68上を横滑りする。バネ要素16は、その後も溝34の底部に接触し続け、したがって、収納位置に対して更に引き伸ばされる。それにより、過剰伸展を引き起こす力が終了した後に眼鏡ヒンジ50を再び使用位置へ自動的に位置調整する、付加的な復元力が生じる。それに応じて、眼鏡ヒンジ50は、過剰伸展による損傷からも保護されており、そのような乱用的な荷重の後にメンテナンスを必要としないため、取り扱いが容易である。
【0170】
眼鏡ヒンジ50が、楔形の領域66が対応する凹部68から完全に滑り出る程度に過剰に伸展されると、更に眼鏡ヒンジ50の負荷が付加的に軽減される。この場合、ヒンジ部12は、ヒンジ部14から、ほとんど離脱することができる。それにより、バネ要素は、この点から伸びが少なくなり始め、その結果、ヒンジ部12,14の、特にストッパー50のヒンジ部14のうち溝34とは反対側の壁厚の薄い領域の負荷、並びに、バネ要素16自体の負荷が、減少する。そのような状態は、部分的に緩んだヒンジ接続として理解することもできる。なぜなら、2つのヒンジ部12,14は、更に過剰に伸展される場合、もはや実質的に転動領域22及び収容領域24と接触しておらず、したがって、更に過剰に伸展される場合、もはや実質的に互いに接して転動及び/又は摺動しないからである。
【0171】
それにより、2つのヒンジ部12,14のうち溝34とは反対側のそれぞれの外側が、少なくとも部分的に互いに接触するまで、損傷することなく眼鏡ヒンジ50を大きく曲げ開くことが可能である。バネ要素16のプリテンション及びヒンジ部12,14の幾何学的形状に応じて、部分的に緩んだヒンジ接続を再び手動で接続することが、場合によっては必要である。これは、例えば、2つのヒンジ部12,14のうちの一方を使用位置の方向に逆回転させることにより行うことができ、楔形の領域66は対応する凹部68に通される。その後にも、眼鏡ヒンジ50は再び自然に調整される。それに応じて、この部分的に手動の接続は、眼鏡技師、工具及び/又は付加的な訓練の助けを借りずに、眼鏡所有者によって直感的に実行することもできる。
【0172】
図20は、運動平面から上方に回転された使用位置にある眼鏡ヒンジ50を示す。2つのヒンジ部12,14は、ここでは、収納位置と使用位置との間の直接的な接続、又は、これらの位置の間での旋回運動によって定義され得る運動平面から、上方へ矢印70の方向に移動された。そのような曲がりは、例えば、使用位置においてテーブル上に置かれた眼鏡に、誤って負荷をかけることにより生じ得る。
【0173】
認識され得るように、2つのヒンジ部12,14は、この場合、上縁部において互いに接しながら転動し、一方、それぞれの真っ直ぐな面36は新たに互いに離れる。バネ要素16は、その後も溝34の底部に接触し続け、したがって、使用位置に対して更に引き伸ばされる。それにより、曲がりを引き起こす力が終了した後に眼鏡ヒンジ50を再び使用位置へ自動的に位置調整する、付加的な復元力が生じる。それに応じて、眼鏡ヒンジ50は、運動平面からの曲がりによる損傷からも保護されており、そのような乱用的な荷重の後にメンテナンスを必要としないため、取り扱いが容易である。
【0174】
そのような曲がりは、既に記述された過剰伸展及び過剰圧縮と組み合わせられた状態でも、眼鏡ヒンジ50が損傷を受けることなく生じ得る。同様に、代替的に又は付加的に、2つのヒンジ部12,14の引き離し、及び/又は、主延在方向によって予め決定され得る及び/又は運動平面内に存在し得る長手軸の周りでのそれぞれのヒンジ部12,14の回転も、眼鏡ヒンジ50が損傷を受けることなく行い得る。全ての場合において、バネ要素16は更に引き伸ばすことができ、その結果、復元力も、運動平面内における開始位置への自動的な復帰、及び、2つのヒンジ部12,14の、特に収納位置又は使用位置への正確な方向付けを引き起こす。
【0175】
言うまでもなく、それぞれのヒンジ部12,14を有する他の実施形態(眼鏡ヒンジ10,100,150)も、眼鏡ヒンジ50と同様に、損傷を受けることなく、過剰に伸長され、過剰に圧縮され、曲げられ、引き離され及び/又は回転されることができる。特に、ヒンジ部12,14は、そこでも、再び自動的に開始位置に戻ることができる。
【0176】
図21は、眼鏡ヒンジ200の別の実施形態を、概略的な斜視図で示している。眼鏡ヒンジ200は、眼鏡ヒンジ10、50及び100と基本的に同様の機能及び構造を有する。例えば複数のバネ要素を設けるなど、これらの実施形態のそれぞれの特徴は、眼鏡ヒンジ200の実施形態においても設けることができる。先に示した眼鏡ヒンジ10、50及び100とは異なり、眼鏡ヒンジ200のそれぞれのピン状及び/又はフック状の保持要素218は、実質的に運動平面内を延びておらず、それぞれのバネ要素16,102,104のリング形状によって定義される平面も、運動平面に対して垂直に延びていない。その代わりに、それぞれのピン状及び/又はフック状の保持要素218は、眼鏡ヒンジ200の運動平面に対して斜めに、この場合は実質的に垂直に延びており、眼鏡ヒンジ200のバネ要素216のリング形状によって定義される平面は、実質的に運動平面に対して平行に、この場合は運動平面内を延びている。
【0177】
保持要素218のこの配向により、眼鏡ヒンジ200は、特に上下方向において平坦であることができ、当該上下方向は、
図21及び
図22において二重矢印220によって示されていると共に、眼鏡ヒンジ200を有する眼鏡を装着する際の上下方向に対応する。バネ要素が上下方向において必要とする組み立てスペースは、もはや、保持要素218の周り巻き付けられたバネ要素により形成される輪の半径の2倍には対応せず、実質的に環状のバネ要素216自体の直径のみに対応する。それに応じて、眼鏡ヒンジ200は、この方向においてより平坦に形成することができる。
【0178】
更に、
図21において特に良好に認識され得るように、保持要素218は、バネ要素216を通すために反対方向に開いている。例えば、
図21の左側に示された保持要素218では、バネ要素216は下側からのみ引き上げることができ、右側に示された保持要素218では、上側からのみ引き上げることができる。対照的に、それぞれの他の方向には、この場合はそれぞれの保持要素218と一体に形成されたそれぞれのヒンジ部が、ストッパーを形成している。それにより、例えば対応する眼鏡の着脱時に、平坦な構造の眼鏡ヒンジ200において、バネ要素218が不注意により滑り落ちたり外れたりすることが確実に防止される。それにより、眼鏡ヒンジ200は、意図せず容易に分解される可能性もない。
【0179】
眼鏡ヒンジ200の運動平面は、
図21を
図22と比較することによって良好に認識することができ、そこでは、それぞれ破線222で示されている。
図21は使用位置にある眼鏡ヒンジ200を、
図22は収納位置にある眼鏡ヒンジ200を、それぞれ概略的な斜視図で示しており、これら2つの位置の間の運動は、運動平面を定義する。運動平面は、この場合、矢印220によって示された上下方向に対して垂直に延びている。特に、運動平面は、ここでは、バネ要素216のリング形状によって形成された平面内にあり、逆もまた同様である。
【0180】
図23は、残りの図に示された全ての眼鏡ヒンジ10、50、100及び200について、眼鏡フレーム302の眼鏡テンプル300が、それぞれの眼鏡ヒンジを損傷することなく、眼鏡フレーム302のリム304に対してどのように移動され得るかを、概略的な斜視図で示している。2つの眼鏡テンプル300のうちの一方は、収納位置において示されている。他方の眼鏡テンプル300は、使用位置において示されており、更に、この位置からの可能な偏向を示す矢印306も示されている。更に、この眼鏡テンプル300の例示的な位置が示されており、当該位置において、眼鏡ヒンジは損傷を受けず、眼鏡テンプル306も自動的に使用位置に戻る。
【0181】
図23には、それに加えて、そこに示される眼鏡ヒンジの収容領域を形成する摺動層又は摺動片308が示されている。摺動層又は摺動片308は、そのために、異なる領域において厚さが異なっており、摺動層308が塗布される表面の形状とは独立した3次元的に成形された表面を形成している。この場合、摺動層308は、例えばプラスチック部品として形成されている。摺動層308は、2つのヒンジ部の間の中間部材と見なすこともできる。摺動層308は、その他の眼鏡テンプル300に接着されており、摩耗に対して特に頑丈であり、リム304の対応する転動領域上を特に良好に摺動する。それにより、図示された眼鏡は、収納位置と使用位置との間で特に容易に位置調整可能である。摺動層308が摩耗した場合、眼鏡テンプル300を完全に交換する必要なく、摺動層を交換することもできる。
【0182】
摺動層308は、例えば、この場合のように中実に形成されていなくてもよく、収容領域又は転動領域に容易に差し込むことができる薄いスリーブ状の要素として形成されていてもよい。この場合、摺動層308は、摺動スリーブと称することもできる。摺動層308は、実質的に一定の厚さを有する薄い層として形成することもでき、その形状は、その下に位置するヒンジ部の形状、特にそこに成形される収容領域又は転動領域に対応する。
【符号の説明】
【0183】
10 眼鏡ヒンジ
12 第1のヒンジ部
14 第2のヒンジ部
16 バネ要素
18 保持要素
20 アンダーカット
22 転動領域
24 収容領域
26 矢印
28 ストッパー
30 矢印
32 領域
34 溝
36 真っ直ぐな面
50 眼鏡ヒンジ
52 ストッパー
54 アンダーカット
56 中間ギャップ
58 破線
60 破線
62 矢印
64 矢印
66 楔形の領域
68 凹部
70 矢印
100 眼鏡ヒンジ
102 バネ要素
104 バネ要素
106 凹部
108 窪み
110 ストッパー
112 領域
114 接触面
200 眼鏡ヒンジ
216 バネ要素
218 保持要素
220 二重矢印
222 破線
300 眼鏡テンプル
302 眼鏡フレーム
304 リム
306 矢印
308 摺動層