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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】通信装置
(51)【国際特許分類】
   F04B 53/00 20060101AFI20240401BHJP
   F04B 23/02 20060101ALI20240401BHJP
   F04B 49/06 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
F04B53/00 J
F04B23/02 E
F04B49/06 311
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021025078
(22)【出願日】2021-02-19
(65)【公開番号】P2022127122
(43)【公開日】2022-08-31
【審査請求日】2023-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000148209
【氏名又は名称】株式会社川本製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】藤田 雅之
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 裕大
(72)【発明者】
【氏名】豊田 耕司
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-176677(JP,A)
【文献】特開平9-228962(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0363639(US,A1)
【文献】特開平9-133080(JP,A)
【文献】特開2002-130139(JP,A)
【文献】特開2006-63815(JP,A)
【文献】特開2002-349442(JP,A)
【文献】特開2021-12169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 53/00
F04B 23/02
F04B 49/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプのイベントごとに信号を出力可能な複数の出力端子を有するポンプ装置に取り付け可能な通信装置であって、
前記複数の出力端子の各々に電気的に個別に接続されることにより、前記複数の出力端子の各々から前記信号が個別に入力される複数の入力端子と、
前記複数の入力端子の各々から入力された信号を個別に検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づいて、前記イベントに応じた出力情報であって、前記信号が入力された入力端子の端子番号を含む前記出力情報を管理装置に送信する通信部と、
を備え、
前記管理装置は、予め前記複数の入力端子の各々の端子番号と、当該入力端子に入力される信号が示すイベントとを関連付けて設定し、前記送信された出力情報に基づいて前記イベントを管理する、通信装置。
【請求項2】
前記複数の入力端子に個別に入力される複数の信号は、前記ポンプの運転に関するイベントに応じた信号、前記ポンプの故障に関するイベントに応じた信号、前記ポンプが接続する受水槽の水位に関するイベントに応じた信号、のうちの少なくとも1つを含む、
請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記検出部は、前記信号の立ち上がりを検出した第1の検出結果と、前記信号の立ち下がりを検出した第2の検出結果との各々を通信部に送出する、
請求項1又は2に記載の通信装置。
【請求項4】
入力基板と、
通信基板と、
を備え、
前記入力基板は、前記複数の入力端子及び前記検出部が実装され、
前記通信基板は、前記通信部が実装される、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項5】
電源ノイズをフィルタする電源基板の二次側に電源端子を有する前記ポンプ装置に対し、前記電源端子に電気的に接続されることにより、前記電源端子から電源を取得し、当該取得した電源の電圧を調整して前記検出部及び前記通信部に供給する電源部、
を備えた請求項1乃至4のいずれか一項に記載の通信装置。
【請求項6】
前記通信部は、前記出力情報をシリアル通信により前記管理装置に送信する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ装置に取り付け可能な通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ポンプ装置では、メンテナンス作業を行う作業者の高齢化や後継者不足に伴い、遠距離通信を用いた遠隔地から監視可能な製品が望まれている。例えば、ポンプ装置の故障状況や運転状況などの情報を遠距離通信により取得したい要望がある。しかしながら、ポンプ装置は、一般的に10年程度の製品寿命を有して長持ちするため、あらかじめ遠距離通信機能をもつ新機種に置き換えにくい状況にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5007411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、既設のポンプ装置に後付け可能な通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る通信装置は、ポンプのイベントごとに信号を出力可能な複数の出力端子を有するポンプ装置に取り付け可能な装置である。前記通信装置は、複数の入力端子と、検出部と、通信部とを備えている。前記複数の入力端子は、前記複数の出力端子の各々に電気的に個別に接続されることにより、前記複数の出力端子の各々から前記信号が個別に入力される。前記検出部は、前記複数の入力端子の各々から入力された信号を個別に検出する。前記通信部は、前記検出部の検出結果に基づいて、前記イベントに応じた出力情報であって、前記信号が入力された入力端子の端子番号を含む前記出力情報を管理装置に送信する。前記管理装置は、予め前記複数の入力端子の各々の端子番号と、当該入力端子に入力される信号が示すイベントとを関連付けて設定し、前記送信された出力情報に基づいて前記イベントを管理する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、既設のポンプ装置に後付け可能な通信装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態に係る通信装置が取り付けられたポンプ装置を管理する管理システムを例示するブロック図。
図2図1の通信装置及びポンプ装置などを例示するブロック図。
図3図2の通信装置及びその周辺構成を例示する模式図。
図4図3の通信装置の基板配置を例示する模式図。
図5図3の入力部及びその周辺構成を例示するブロック図。
図6図5の入力部が形成する等価回路を例示する模式図。
図7図5の入力部が形成する等価回路を例示する模式図。
図8図1のユーザ端末の構成を例示するブロック図。
図9図1の管理サーバの構成を例示するブロック図。
図10図9の管理サーバに保存される設定テーブルを例示する模式図。
図11図1の管理システムにおける動作を例示するシーケンス図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら実施形態の説明を述べる。なお、以降、説明済みの要素と同一または類似の要素には同一または類似の符号を付し、重複する説明については基本的に省略する。例えば、複数の同一または類似の要素が存在する場合に、各要素を区別せずに説明するために共通の符号を用いることがあるし、各要素を区別して説明するために当該共通の符号に加えて枝番号及び/又は英小文字を用いることもある。
【0009】
<一実施形態>
図1は、一実施形態に係る通信装置が取り付けられたポンプ装置を管理する管理システムを例示するブロック図であり、図2は、当該通信装置及びポンプ装置などを例示するブロック図である。この管理システムは、管理されるポンプ装置10-1、10-2、10-3、・・・と、後付け可能な通信装置30-1、30-2、・・・と、ユーザ端末50-1、50-2、・・・と、社内サーバとしての管理サーバ60と、クラウドサーバとしての管理サーバ70と、を備えている。
【0010】
なお、図1における各装置の数は例示に過ぎない。例えば、管理サーバ60は、複数台のサーバとして冗長化されてもよい。ポンプ装置10の台数は任意であるので、3台より多くても少なくてもよい。通信装置40及びユーザ端末50の台数も任意である。
【0011】
一方、ポンプ装置10は、例えば建物に給水し、故障状況や運転状況といった、ポンプのイベントごとに信号を出力可能な複数の出力端子を有する装置である。係るポンプ装置10は、例えば、水道本管に直結され、水道本管を流れる水を直接増圧し、建造物に設けられた蛇口やシャワーヘッド、あるいは高架水槽や受水槽等といった供給先に給水する、いわゆる直結増圧型給水装置であり得る。なお、本実施形態のポンプ装置10は、例えば、管理サーバ70やユーザ端末50といった外部装置との通信機能を持たない装置である。
【0012】
このポンプ装置10は、図2に例示するように、ポンプ部20と、制御装置30と、図示されない吸込配管および吐出配管とを含む。ポンプ装置10は、ポンプ部20により、吸込配管を介して一次側にある水を取り込み、吐出配管を介して二次側へ給水する。吸込配管は、例えば、水道本管から分岐された水道分管およびポンプ部20を接続する。吐出配管は、ポンプ部20とその二次側の給水先とを接続する。
【0013】
制御装置30は、ポンプ部20(のモータ)と電気的に接続され、当該ポンプ部20を制御する。具体的には、制御装置30は、各種のセンサ21からのセンシング信号に基づいて、インバータ31を介してポンプ部20のモータの駆動を制御する。
【0014】
例えば、制御装置30は、ポンプ装置10の吸込配管および吐出配管に取り付けられポンプの吸込圧力および吐出圧力を検出可能な圧力センサからのセンシング信号に基づいて、ポンプの運転中に例えば推定末端圧力一定制御等の目標圧力一定制御を行い得る。また、制御装置30は、ポンプの運転中にモータを所望の回転数で駆動するように制御することができ、必要に応じてモータの回転数を増減させる。
【0015】
さらに、制御装置30は、ポンプ部20に含まれるポンプの二次側の配管に取り付けられ当該配管に流れる水の流量を検出可能な流量センサからのセンシング信号に基づいて、流量が小水量であることを検知するとポンプを停止させ得る。そして、制御装置30は、圧力センサからのセンシング信号に基づいてポンプの二次側の圧力が予め定められた始動圧力以下に低下したことを検知すると、ポンプを再駆動する。制御装置30は、制御盤と呼んでもよい。
【0016】
制御装置30は、図2に示すように、インバータ31、電源部32、操作表示部33及び制御入出力基板34を備えている。
【0017】
ここで、インバータ31は、制御入出力基板34の制御部346により制御され、ポンプ部20を駆動する。具体的には、インバータ31は、制御部346からインバータ制御信号を受け取る。インバータ31は、このインバータ制御信号に応じて動作する。例えば、インバータ31は、運転停止信号または運転開始信号に相当するインバータ制御信号に応じてポンプ部20の運転を停止または開始し得る。また、インバータ31は、回転数制御信号に相当するインバータ制御信号に応じて、ポンプ部20のモータの回転数を制御し得る。係るインバータ31は、制御装置30を構成する制御盤とは別体であってもよいし、制御盤に組み込まれていてもよい。インバータ31が制御盤とは別体の場合、インバータ31は、例えばポンプ部20に搭載される。インバータ31が制御盤に組み込まれた場合、制御装置30は、制御盤と呼んでもよい。
【0018】
電源部32は、ノイズフィルタ321を介してインバータ31及び制御入出力基板34に電源を供給する。また、電源部32は、ノイズフィルタ321及び制御入出力基板34を介して操作表示部33に電源を供給する。
【0019】
操作表示部33は、例えば、操作パネル、タッチパネルなどのユーザ入力を受け付ける装置と、典型的には液晶ディスプレイ、または有機ELディスプレイなどの表示デバイスとを含み得る。また、操作表示部33は、表示デバイスの代わりにまたは表示デバイスに加えて、スピーカ、LED(Light Emitting Diode)点灯部などを含み得る。
【0020】
制御入出力基板34は、制御電源部341、スイッチ342、端子台343、入力部344、メモリ345、制御部346及び出力部347を備えている。
【0021】
制御電源部341は、電源部32からノイズフィルタ321を介して供給された電源の電圧を調整して制御入出力基板34内のメモリ345及び制御部346と、制御入出力基板34の外部の操作表示部33とに供給する。
【0022】
スイッチ342は、操作者の操作に応じて、電源部32からノイズフィルタ321を介して供給された電源と、電源端子を有する端子台343との間の電気的な接続をオン状態又はオフ状態に切り替える。
【0023】
端子台343は、電源部32からノイズフィルタ321及びスイッチ342を介して供給される電源を外部出力するための1つ以上の電源端子を有している。端子台343の電源端子は、例えば、受水槽に水を流入させるための流入弁や、後付け可能な通信装置40といった外部装置に配線ケーブル等を介して電気的に接続可能な端子であり、当該外部装置に電源を供給するために用いられる。
【0024】
入力部344は、各種のセンサ21から入力される信号を制御部346に入力する。入力部344としては、例えば、コネクタやA/D変換器が適宜、使用可能となっている。入力部344がA/D変換器を含む場合、入力部344は、制御電源部341からの電源供給を受けて動作する。
【0025】
メモリ345は、制御部346が各処理を実現するために当該制御部346によって実行されるプログラムおよび当該制御部346によって使用されるデータなどを記憶する。プログラムとしては、例えば、ファームウェア、OS、表示制御プログラム、ポンプ制御プログラムなどが適宜、記憶される。データとしては、例えば、ポンプ制御のパラメータやしきい値、テーブルなどが適宜記憶される。メモリ345は、かかるプログラム/データが展開されるワークエリアを有するRAMを含み得る。メモリ345は、記憶部の一例である。
【0026】
制御部346は、典型的にはマイコンであるが、CPU、GPU、FPGA、DSP、またはその他の汎用または専用のプロセッサなどであってもよい。制御部346は、例えば、通信制御、表示制御、ポンプ制御などの任意の処理を行う。
【0027】
制御部346は、メモリ345に保存されたプログラムを実行することで、インバータ31の制御、操作表示部33の制御、出力部347の制御、などを実行する。例えば、制御部346は、メモリ345内のプログラムによって決まる制御ポリシーに従い、各種のセンサ21からのセンシング信号に応じてインバータ制御信号を生成し、これをインバータ31へ送る。また例えば、制御部346は、各種のセンサ21からのセンシング信号に基づいて、ポンプ装置10の運転状態を示す運転データを取得し、当該運転データを操作表示部33及びメモリ345に出力する。また、制御部346は、積算運転時間、および/または積算運転回数を、ポンプ装置10の運転実態に応じて算出し、メモリ345に書き込んでもよい。また、制御部346は、ポンプ装置10のイベントごとに信号を出力部347に出力する。イベント毎の信号としては、例えば、ポンプ装置10の運転に関するイベントに応じた信号、ポンプ装置10の故障に関するイベントに応じた信号、ポンプ装置10が接続する受水槽の水位に関するイベントに応じた信号、などが適宜、使用可能となっている。運転に関するイベントに応じた信号は、例えば、操作表示部33の切り替えスイッチにおける1号機運転/停止、2号機運転/停止、1・2号機運転/停止、の操作内容を示す信号である。故障に関するイベントに応じた信号は、例えば、各種のセンサ21のセンシング信号に基づく故障内容を示す信号である。受水槽の水位に関するイベントに応じた信号は、各種のセンサ21のうちの受水槽水位を検出するセンサのセンシング信号における満水、減水を示す信号である。なお、受水槽の水位に関するイベントに応じた信号は、これに限らず、流入弁のオン状態(開)、オフ状態(閉)を示す信号を含んでもよい。
【0028】
出力部347は、図2及び図3に示すように、制御部346からの信号を受けて接点が開閉する複数のリレーRy2,Ry3,Ry5~Ry10と、いずれかのリレーRy2、3、・・・の接点に電気的に接続された複数の出力端子を有する端子台34Aとを備えている。図3の例では、出力端子A1は、リレーRy2を介して出力端子A2に接続されると共に、リレーRy3を介して出力端子A3に接続されている。すなわち、出力端子A2,A3は、それぞれリレーRy2,Ry3がオン状態のとき、出力端子A1に導通する。同様に、出力端子A4は、リレーRy5を介して出力端子A5に接続されると共に、リレーRy6を介して出力端子A6に接続されている。また、出力端子A4は、リレーRy7を介して出力端子A7に接続されると共に、リレーRy8を介して出力端子A8に接続されている。また、出力端子A4は、リレーRy9を介して出力端子A9に接続されると共に、リレーRy10を介して出力端子A10に接続されている。すなわち、出力端子A5,・・・,A10は、それぞれリレーRy5,・・・,Ry10がオン状態のとき、出力端子A4に導通する。言い換えると、端子台34Aが有する出力端子A2,A3,A5~A10は、リレーRy2,Ry3,Ry5~Ry10の接点の開閉に応じた無電圧信号を出力する。なお、これに限らず、出力部347は、リレーRy2,Ry3,Ry5~Ry10の接点の開閉に応じた有電圧信号を端子台34Aの出力端子から出力するように変形してもよい。この場合、出力部347は、制御電源部341から供給される電源を用い、有電圧信号を生成すればよい。
【0029】
一方、通信装置40は、図2及び図3に示すように、入力部411が実装された入力基板41と、通信部421が実装された通信基板42とを備えている。なお、通信装置40は、図4に示すように、入力基板41に対向配置された通信基板42を、コネクタ43を介して入力基板41に着脱自在に接続してもよい。この場合、通信基板42の四隅が支柱44により固定されることが好ましい。支柱44は、例えば、入力基板41と通信基板42との間に筒状部材を配置した構造をボルト・ナットで固定する構成としてもよい。
【0030】
また、通信基板42は、シリアル通信に対応する新機種のポンプ装置に連携可能とする場合、当該新機種のポンプ装置との間でシリアル通信可能なコネクタ(図示せず)を更に備えてもよい。言い換えると、通信基板42は、シリアル通信に対応していない旧機種のポンプ装置10に接続するための入力基板41に接続可能なコネクタ43と、前述したシリアル通信可能なコネクタ(図示せず)とを備えた構成としてもよい。この構成によれば、通信基板42は、ポンプ装置の機種の新旧に応じて、コネクタ43及びコネクタ(図示せず)のうち、いずれか一方のコネクタを用いる反面、他方のコネクタを用いない。
【0031】
例えばコネクタ43を用いる場合、通信基板42は、通信部421がコネクタ43及び入力基板41を介して旧機種のポンプ装置10に接続する反面、前述したシリアル通信可能なコネクタ(図示せず)を備えているが使用しない。また例えばシリアル通信可能なコネクタ(図示せず)を用いる場合、通信基板42は、通信部421がコネクタ(図示せず)及びシリアル通信ケーブルを介して新機種のポンプ装置に接続する反面、コネクタ43を備えているが使用しない。なお、コネクタ43を使用しない場合、通信装置40は、入力基板41を備えず、通信基板42のみを備えている。
【0032】
なお、旧機種のポンプ装置10は、シリアル通信機能を持たないため、オン/オフ信号しか通知できない。例えば、ポンプ1号機及びポンプ2号機を有するポンプ部20のうちのポンプ1号機が故障した場合、旧機種のポンプ装置10は、故障した事実(1号機故障)のみを伝えるオン/オフ信号を出力端子から通信装置40に出力する。通信装置40は、出力されたオン/オフ信号が入力端子から入力されると、例えば、当該入力端子の端子番号と、当該オン/オフ信号のオン/オフ状態とを含む出力情報をシリアル通信で管理サーバ70に送信する。但し、出力情報は、端子番号を含めばよいので、必ずしもオン/オフ状態を含まなくてもよい。管理サーバ70は、予め複数の入力端子の各々の端子番号と、当該入力端子に入力される信号が示すイベントとを関連付けて設定し、送信された出力情報に基づいてイベントを管理する。
【0033】
一方、新機種のポンプ装置は、シリアル通信機能を持つため、故障の内容(1号機過電流)を伝える情報をシリアル通信で通信装置40に出力する。通信装置40は、当該故障の内容(「1号機過電流」などの項目)を伝える出力情報をシリアル通信で管理サーバ70に送信する。管理サーバ70は、送信された出力情報に基づいてイベントを管理する。なお、新機種のポンプ装置の場合、出力情報に故障の内容が含まれるので、旧機種とは異なり、管理サーバ70では、端子番号とイベントとを関連付けた設定を行わずに、イベントを管理できる。
【0034】
図2及び図3に戻り、入力部411は、複数の入力端子を有する端子台41Bと、電源部412と、信号検出部413とを備えている。端子台41Bは、制御装置30の端子台34Aの各々の出力端子A1~A10に配線ケーブル等を介して接続可能な複数の入力端子B1~Bnを備えている(n:任意の自然数)。複数の入力端子B1~Bnは、複数の出力端子A1~A10の各々に電気的に個別に接続されることにより、複数の出力端子A1~A10の各々から信号が個別に入力される。なお、複数の入力端子B1~Bnに個別に入力される複数の信号は、ポンプの運転に関するイベントに応じた信号、ポンプの故障に関するイベントに応じた信号、ポンプが接続する受水槽の水位に関するイベントに応じた信号、のうちの少なくとも1つを含んでもよい。係る入力端子B1~Bnは、信号検出部413に電気的に接続されている。
【0035】
電源部412は、制御装置30の端子台343から供給された電源の電圧を調整して信号検出部413及び通信部421に供給する。例えば、電源部412は、図5に示すように、信号検出部413に第1電圧を供給する第1の共通電源E1と、信号検出部413に第2電圧を供給する第2の共通電源E2と、通信部421に通信用の電圧を供給する通信用電源E3とを備えている。
【0036】
信号検出部413は、複数の入力端子B1~Bnの各々から入力された信号を個別に検出する検出部である。信号検出部413は、信号を検出した検出結果を通信部412に送出してもよい。また、信号検出部413は、信号の立ち上がりを検出した第1の検出結果と、信号の立ち下がりを検出した第2の検出結果との各々を通信部412に送出してもよい。また、信号検出部413は、例えば、電源設定スイッチ413aと、検出設定スイッチ413bと、接続線/検出回路413cと、出力部413dとを備えている。
【0037】
電源設定スイッチ413aは、入力端子B1~Bnの各々に対応して設けられたスイッチ群であり、操作者の操作に応じて、接続線/検出回路413cと、第1の共通電源E1又は第2の共通電源E2との電気的な接続を切り替える。なお、操作者は、例えば、ポンプ装置10の取扱説明書における外部出力端子の説明を参照して、共通電源でまとめるように、電源設定スイッチ413aの設定を切り替えればよい。
【0038】
検出設定スイッチ413bは、操作者の操作に応じて、入力端子B1~Bnの各々と、接続線/検出回路413c内の接続線又は検出回路dc1,・・・の各々との電気的な接続を切り替える。操作者は、例えば、ポンプ装置10の取扱説明書における外部出力端子の説明を参照して、複数のリレーRy2,Ry3に接続される入力端子B1を接続線に接続し、1つのリレーRy2,Ry3に接続される入力端子B2,B3を検出回路dc2,dc3に接続するように、検出設定スイッチ413bの設定を切り替えればよい。
【0039】
接続線/検出回路413cは、電源設定スイッチ413aと検出設定スイッチ413bとの間に設けられ、入力端子B1~Bn毎に、両スイッチを個別に接続する接続線及び検出回路dc1,・・・を備えている。
【0040】
なお、図5の例では、電源設定スイッチ413aのうち、入力端子B1~B3の各々に対応して設けられたスイッチ群が接続線/検出回路413cと、第1の共通電源E1とを電気的に接続している。また、検出設定スイッチ413bが、入力端子B1と、接続線/検出回路413c内の接続線とを電気的に接続し、入力端子B2,B3の各々と、接続線/検出回路413c内の検出回路dc2,dc3の各々とを電気的に接続している。この場合、図6に示すように、リレーRy2,Ry3のオン/オフ状態を個別に検出可能な検出回路dc2,dc3を備えた電気回路が形成される。
【0041】
同様に、図5の例では、電源設定スイッチ413aのうち、入力端子B4~B10の各々に対応して設けられたスイッチ群が接続線/検出回路413cと、第2の共通電源E2とを電気的に接続しているとする。また、検出設定スイッチ413bが、入力端子B4と、接続線/検出回路413c内の接続線とを電気的に接続し、入力端子B5~B10の各々と、接続線/検出回路413c内の検出回路dc5~dc10の各々とを電気的に接続しているとする。この場合、図7に示すように、リレーRy5,・・・,Ry10のオン/オフ状態を個別に検出可能な検出回路dc5,・・・,dc10を備えた電気回路が形成される。なお、図6及び図7に示す電気回路は、一例であり、電源設定スイッチ413a及び検出設定スイッチ413bの設定に応じて、別々の電気回路が形成され得る。
【0042】
検出回路dc1,・・・は、例えば、抵抗及びフォトカプラを有する回路が簡便である。リレーRyのオン/オフ状態に対応するフォトカプラの検出結果は、例えば、出力部413dに送出される。
【0043】
出力部413dは、電源設定スイッチ413aと検出設定スイッチ413bとの設定に基づいて、接続線/検出回路413c内の検出回路dc1,・・・の検出結果を通信部421に出力する。例えば、出力部413dは、検出設定スイッチ413bにより入力端子B2,B3,B5~B10に接続された検出回路dc2,dc3,dc5~dc10からの検出結果のみを通信部421に出力する。ここで、出力部413dは、当該検出結果に入力端子B2,B3,B5~B10の端子番号を付して出力してもよい。また、出力部413dは、電源設定スイッチ413aにより、第1の共通電源E1に接続された検出回路dc2,dc3からの検出結果と、第2の共通電源E2に接続された検出回路dc5~dc10からの検出結果とを別々の電源識別情報を付して出力してもよい。また、出力部413dは、信号の立ち上がりを検出した第1の検出結果と、信号の立ち下がりを検出した第2の検出結果との各々を通信部421に送出してもよい。あるいは、出力部413dは、信号の立ち上がり/立ち下がりに限らず、信号のオン/オフ状態を検出した検出結果を通信部421に送出してもよい。
【0044】
通信部421は、信号検出部413の検出結果に基づいて、イベントに応じた出力情報であって、信号が入力された入力端子B2,B3,B5~B10の端子番号を含む当該出力情報を管理サーバ70に送信する。係る通信部421は、例えば、有線又は無線でのシリアル通信を行う通信回路であり、信号検出部413から出力された検出結果及び端子番号を含む出力情報をシリアル通信によって管理サーバ70に送信する。なお、シリアル通信の規格としては、例えば、RS-232C、RS-422、RS-485等が適宜、使用可能となっている。また、通信部421は、シリアル通信を無線で行うための規格として、例えば、Bluetooth(登録商標)のSPP(Serial Port Profile)を用いてもよい。なお、これらに限らず、通信部421は、適宜、所定の標準通信規格に従って、基地局及びネットワーク経由で管理サーバ70に有線又は無線でのシリアル通信を行う。なお、無線の場合、管理サーバ70が無線の届く範囲にあれば通信部421と管理サーバ70との間を無線でシリアル通信可能である。但し、通常は無線の届く範囲にないので、通信部421と基地局との間が無線でのシリアル通信となり、基地局と管理サーバ70との間のネットワークが有線でのシリアル通信となる。また、通信部421は、信号の立ち上がりを検出した第1の検出結果と、信号の立ち下がりを検出した第2の検出結果との各々を受ける場合、第1の検出結果から第2の検出結果までの時間をカウンタ等で計測し、カウント値又はその時間換算値などの計測結果を検出結果に含めて送信してもよい。計測結果は、例えば、イベントがポンプの運転に関する場合、運転時間に対応する。このような運転時間は、例えば、部品のメンテナンス時期に関する目安となり、管理サーバ70側で管理される。また、計測結果は、例えば、イベントがポンプの故障に関する場合、故障時間に対応する。このような故障時間は、例えば、作業者を派遣する緊急度合いの目安となり、管理サーバ70側で管理される。また、通信部421は、管理サーバ70から受けた信号に基づいて、図示しないLEDの点灯表示を行ってもよい。
【0045】
また一方、ユーザ端末50は、建物に給水するポンプ装置10と、ポンプ装置10を管理する管理サーバ70とに通信可能な情報処理装置である。ユーザ端末50は、例えば、PC、モバイル端末(例えば、タブレット、スマートフォン、ラップトップ、フィーチャーフォンなど)などであり得るが、これらに限られない。
【0046】
このようなユーザ端末50は、図8に例示するように、通信部51、入力部52、表示部53、メモリ54及びプロセッサ55を備えている。プロセッサ55は、後述するように、通信制御部55a、処理部55b等の機能を実現可能となっている。なお、プロセッサ55内の各部の機能分担は、便宜的なものであり、適宜、変更可能である。通信制御部55aと通信部51との機能分担も便宜的なものであり、適宜、変更可能である。
【0047】
通信部51は、プロセッサ55により制御され、例えば、遠距離通信技術を用いて、管理サーバ70などの外部装置と通信可能な任意の通信インタフェースである。具体的には、通信部51は、例えば、移動通信(3G、4G、5G)、Wimaxなどの無線通信技術を用いて、基地局及びネットワーク経由で管理サーバ70等の外部装置に接続可能となっている。
【0048】
入力部52は、ユーザ入力を受け付けるための入力I/Fであり、ユーザ端末50に内蔵されてもよいし、ユーザ端末50に外付けされてもよい。入力部52は、例えば、キーボード、マウス、テンキー、マイクロフォン、カメラなどを含んでもよいし、タッチスクリーンのように出力I/Fの機能を備えていてもよい。ユーザ入力は、典型的には、タップ、クリック、ドラッグ、特定のキーの押下などであり得る。このほか、ユーザ入力は、例えば、マイクロフォンによって捉えられる音声などを含むこともできる。
【0049】
表示部53は、プロセッサ55の処理に応じて、画像及び/又は音声を出力するための出力I/Fの一例であり、動画像、静止画像、テキストなどを表示するための表示デバイスを含み得る。表示デバイスは、例えば、液晶ディスプレイ、有機EL(electroluminescence)ディスプレイ、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイなどである。表示デバイスは、コンテンツを含む表示データを表示する。なお、表示デバイスは、タッチスクリーンのように入力I/Fの機能を備えていてもよい。
【0050】
メモリ54は、プロセッサ55が各処理を実現するために当該プロセッサ55によって実行されるプログラム、および当該プロセッサ55によって使用されるデータなどを記憶する。メモリ54は、かかるプログラム/データが展開されるワークエリアを有するRAMを含み得る。プログラムとしては、例えば、ファームウェア、OS、通信プログラムなどが適宜、記憶される。データとしては、例えば、コード、運転データ、テーブルなどが適宜、記憶される。
【0051】
プロセッサ55は、典型的にはCPUであるが、マイコン、GPU、FPGA、DSP、またはその他の汎用または専用のプロセッサなどであってもよい。プロセッサ55は、メモリ54に保存されたプログラムを実行することで、図8の通信制御部55a、処理部55bとして機能し得る。
【0052】
通信制御部55aは、通信部51を介して、管理サーバ70との遠距離通信を行う。
【0053】
処理部55bは、ポンプ装置10の点検、メンテナンス及び管理など、作業者の作業に応じた情報処理を実行する。例えば、処理部55bは、作業者によるポンプ装置10からの運転データの収集を支援する。また例えば、処理部55bは、操作者の操作に応じて、管理サーバ70にアクセスし、ポンプ装置10の製造番号と、通信装置40の入力端子B1~B10の端子番号と、信号名とを管理サーバ70に送信する。なお、「信号名」は、イベントを識別する情報であればよく、例えば、「信号種類」、「信号項目」、「信号内容」、「イベント名」、「イベント種類」、「イベント項目」又は「イベント内容」等といった任意の名称に変更してもよい。このことは、後述する管理サーバ70等でも同様である。また、処理部55bは、管理サーバ70からの受信内容を表示部53に表示させる。
【0054】
管理サーバ60は、例えばポンプ装置10を生産、販売および/または保守する業者によって運用されるオンプレミスサーバである。管理サーバ60は、管理サーバ70と連携して、運転データを集中管理および利活用し得る。管理サーバ60は、例えば、新たに製造されたポンプ装置10の製造番号の登録を管理サーバ70に要求してもよい。
【0055】
管理サーバ70は、ポンプ装置10を管理するための社内サーバ又はクラウドサーバであり、通信装置40及びユーザ端末50と通信可能となっている。なお、クラウドサーバおよびオンプレミスサーバを併用することはオプションであり、管理サーバ60及び管理サーバ70はそのどちらかに統合させることもできる。また、クラウドサーバ及びオンプレミスサーバとしては、例えば、Amazon(登録商標)のAWS(登録商標)を用いてもよい。AWSは、Amazon Web Services(登録商標)の略語である。本明細書中では、理解を容易にする観点から、管理サーバ60を統合させた管理サーバ70により、ポンプ装置10を管理する場合を例に挙げて述べる。
【0056】
管理サーバ70は、通信部71と、インタフェース72と、メモリ73と、プロセッサ74とを備えている。プロセッサ74は、管理部74a及び処理部74b等の機能を実現可能となっている。
【0057】
ここで、通信部71は、プロセッサ74により制御され、例えば、遠距離通信技術を用いて、ユーザ端末50と通信可能な任意の通信インタフェースである。具体的には、通信部71は、例えば、移動通信(3G、4G、5G)、Wimaxなどの無線通信技術を用いて、図示しない基地局及びネットワーク経由でユーザ端末50に接続可能となっている。
【0058】
インタフェース72は、ネットワーク、典型的にはインターネット経由で、図示しない他の装置(通信装置40、他の管理サーバ等)と通信をする通信インタフェースである。
【0059】
メモリ73は、プロセッサ74が各処理を実現するために当該プロセッサ74によって実行されるプログラム、および当該プロセッサ74によって使用されるデータなどを記憶する。データとしては、例えば、コード、運転状況データ、メンテナンス情報、図10に示す如き、設定テーブル73aなどがある。設定テーブル73aは、ポンプ装置10の製造番号毎に、後付けした通信装置40における入力端子B1~Bnの各々の端子番号と、入力端子B1~Bnに入力される信号の信号名とを関連付けて設定している。なお、「信号の信号名」は、「信号が示すイベント」を意味している。図10の例では、入力端子B1の端子番号「B1」と、信号名「第1の共通電源」とが対応づけられている。また、入力端子B2,B3の端子番号「B2」,「B3」と、信号名「1号機運転」,「2号機運転」とが対応づけられている。また、入力端子B4の端子番号「B4」と、信号名「第2の共通電源」とが対応づけられている。また、入力端子B5,B6の端子番号「B5」,「B6」と、信号名「1号機故障」,「2号機故障」とが対応づけられている。また、入力端子B7,B8の端子番号「B7」,「B8」と、信号名「吸込圧力低下」,「点検作業中」とが対応づけられている。また、入力端子B9,B10の端子番号「B9」,「B10」と、信号名「高架水槽液面異常」,「制御基板圧力発信器異常」とが対応づけられている。また、入力端子B11~Bnの端子番号「B11」,・・・,「Bn」と、信号名「使用なし」,・・・,「使用なし」とが対応づけられている。ここで、信号名「1号機運転」,「2号機運転」,「点検作業中」は、ポンプの運転に関するイベントに応じた信号の信号名である。また、信号名「1号機故障」,「2号機故障」,「吸込圧力低下」,「制御基板圧力発信器異常」は、ポンプの故障に関するイベントに応じた信号の信号名である。また、信号名「高架水槽液面異常」は、ポンプが接続する受水槽の水位に関するイベントに応じた信号の信号名である。
【0060】
補足すると、制御装置30(制御盤)のリレー出力はオン/オフ信号であり、端子台34Aを介して通信装置40に送信される。また、制御装置30は複数の出力端子A1~A10を持ち、通信装置40も複数の入力端子B1~Bnを持つ。このため、制御装置30のどの出力端子A1~A10が、通信装置40のどの入力端子B1~Bnに接続されるかわからない。また、制御装置30(制御盤)ごとに出力端子A1~A10のもつ情報(運転なのか故障なのか)も異なるため、通信装置40の入力端子B1~B10に割り当てられる情報は自由に変更することが必要である。これに伴い、管理サーバ70は通信装置40の入力端子B1~B10ごとに情報を設定可能に構成されており、ポンプ装置10の個体ごとに自由に変更可能である。
【0061】
例えば、あるポンプ装置(#1)のリレー出力は2つあり、それは1号機/2号機故障であり、あるポンプ装置(#2)のリレー出力は3つあり、それは1号機/2号機/3号機運転であって、通信装置40の入力端子B1~B3に接続するとする。あるポンプ装置(#1)の場合、通信装置40の入力端子B1、B2にそれぞれ1号機故障/2号機故障を接続し、入力端子B3には接続せず、管理サーバ70にB1=1号機故障、B2=2号機故障、B3=使用なしと設定する。あるポンプ装置(#2)の場合、通信装置40の入力端子B1~B3にそれぞれ1号機運転/2号機運転/3号機運転を接続し、管理サーバ70にB1=1号機運転、B2=2号機運転、B3=3号機運転と設定する。この例の通りであれば、接続する制御装置30(制御盤)の種類を問わず、自由に出力情報を判別することが可能となる。通信装置40の入力端子と制御装置30の信号名との組み合わせは、管理サーバ70に設定せず、通信装置40に設定することも可能であるが、管理サーバ70で行う方が、通信装置40に操作部と表示器を構成せずに済むため、好ましい。但し、設定テーブル73aは、自由に設定可能である一方、ポンプ装置10の製造番号又は型番・品番に基づいて、制御装置30の外部出力を示す信号名の初期値が設定されていてもよい。
【0062】
プロセッサ74は、典型的にはCPUであるが、マイコン、GPU、FPGA、DSP、またはその他の汎用または専用のプロセッサなどであってもよい。プロセッサ74は、ポンプ装置10を管理する処理を実行する。プロセッサ74は、メモリ73に保存されたプログラムを実行することで、図9の管理部74a及び処理部74bとして機能し得る。
【0063】
管理部74aは、ポンプ装置10を管理する。例えば、管理部74aは、通信装置40又はユーザ端末50から受けた運転状況データを保存したり、ポンプ装置10をオーバーホールした時期などといったメンテナンス情報を保存する。処理部74bは、ユーザ端末50から受けたポンプ装置10の製造番号毎に、入力端子B1~Bnの端子番号と、入力端子B1~Bnに対応する信号名とを関連付けて設定テーブル73aに保存(設定)する。また、処理部74bは、通信装置40から送信された出力情報に基づいて、ポンプのイベントを管理する。例えば、処理部74bは、通信装置40から受けたポンプ装置10の製造番号、入力端子B1~Bnの端子番号、端子番号に対応する信号のオン/オフ状態に基づいて、設定テーブル73aを参照し、当該信号のオン/オフ状態を、ポンプ装置10の信号名のオン/オフ状態として検出する。これにより、処理部74bは、ポンプ装置10の信号名のオン/オフ状態に応じて、ポンプ装置10のイベントの発生/消失状態を管理する。
【0064】
以下、図11を参照しながら、通信装置40を後付けしてシリアル通信を行う時の動作例を説明する。この動作例は、後付け時のステップS10と、通信時のステップS20とを含んでいる。後付け時のステップS10は、最初の1回だけ行われる。通信時のステップS20は、適宜、繰り返し実行される。
【0065】
(ステップS10:後付け時)
始めに、通信装置40を後付けするステップS10は、ステップS11~S14により実行される。まず、作業者により、通信装置40を既設のポンプ装置10に後付けする後付け作業が行われる(ステップS11)。例えば、通信装置40の入力端子B1~B10を、配線ケーブルを介して制御装置30の出力端子A1~A10に接続する。また、通信装置40の電源部412を、配線ケーブルを介して制御装置30の端子台343の電源端子に接続する。なお、端子台343の電源端子は、電源ノイズをフィルタする電源基板の二次側にある。電源部412は、このような電源端子から電源を取得し、当該取得した電源の電圧を調整して信号検出部413及び通信部412に供給する
ステップS11の後、ユーザ端末50は、作業者の操作に応じて、ポンプ装置10の製造番号、通信装置40の入力端子B1~B10の端子番号、入力端子B1~B10に入力される信号の信号名、を含む設定要求を管理サーバ70に送信する(ステップS12)。入力される信号名は、例えば、ポンプ装置10の取扱説明書を参照して、当該入力端子B1~B10に電気的に接続されるポンプ装置10の出力端子A1~A10の信号名を用いればよい。
【0066】
ステップS12の後、管理サーバ70は、ユーザ端末50から受けた製造番号、端子番号及び信号名をメモリ73の設定テーブル73aに保存する(ステップS13)。
【0067】
ステップS13の後、管理サーバ70は、設定完了をユーザ端末50に通知する(ステップS14)。以上のステップS11~S14の実行により、ステップS10が終了する。
【0068】
(ステップS20:通信時)
ステップS10の終了後、制御装置30は、イベント毎に信号を出力端子A2,A3,A5~A10から出力する(ステップS21)。出力された信号は、入力端子B2,B3,B5~B10を介して通信装置40に入力される。当該イベントとしては、例えば、ポンプの運転に関するイベント、ポンプの故障に関するイベント、ポンプが接続する受水槽の水位に関するイベント、のうちの少なくとも1つを含んでいる。
【0069】
ステップS21の後、通信装置40は、入力された信号を検出し、検出結果に基づいて、イベントに応じた出力情報を管理サーバ70に送信する(ステップS22)。出力情報は、信号が入力された入力端子の端子番号を含んでいる。例えば、出力情報は、ポンプ装置10の製造番号、入力端子B2,B3,B5~B10の端子番号毎にオン/オフ状態を示す情報、が使用可能となっている。但し、通常がオフ状態であれば、オン状態のときだけ端子番号を送信することで、別途、オン/オフ状態を示す情報を送信しなくてもよい。逆に、通常がオン状態であれば、オフ状態のときだけ端子番号を送信することで、別途、オン/オフ状態を示す情報を送信しなくてもよい。オン/オフ状態を示す情報は、信号の立ち上がりを検出した第1の検出結果と、信号の立ち下がりを検出した第2の検出結果とのいずれか一方としてもよい。なお、通信装置40は、出力情報をシリアル通信により管理サーバ70に送信してもよい。
【0070】
ステップS22の後、管理サーバ70は、出力情報を受信すると、当該出力情報に基づいて、設定テーブル73aを参照し、故障の有無や、運転状態を判別する(ステップS23)。
【0071】
ステップS23の後、管理サーバ70は、判別結果を通信装置40に送信する(ステップS24)。なお、管理サーバ70は、判別結果をユーザ端末50に送信してもよい(ステップS25)。以上により、ステップS20が終了する。通信時のステップS20は、定期的に、又は信号の立ち上がり/立ち下がり時のような不定期に、繰り返し実行される。
【0072】
上述したように一実施形態によれば、通信装置は、ポンプのイベントごとに信号を出力可能な複数の出力端子を有するポンプ装置に取り付け可能な装置である。通信装置は、複数の入力端子と、検出部と、通信部とを備えている。複数の入力端子は、複数の出力端子の各々に電気的に個別に接続されることにより、複数の出力端子の各々から信号が個別に入力される。検出部は、複数の入力端子の各々から入力された信号を個別に検出する。通信部は、検出部の検出結果に基づいて、イベントに応じた出力情報であって、当該信号が入力された入力端子の端子番号を含む当該出力情報を管理装置に送信する。これにより、既設のポンプ装置に後付け可能な通信装置を提供することができる。従って、係る通信装置を後付けすることにより、通信非対応の既設のポンプ装置にも通信対応化を実現させることができる。また、管理装置は、予め複数の入力端子の各々の端子番号と、当該入力端子に入力される信号が示すイベントとを関連付けて設定し、送信された出力情報に基づいてイベントを管理することができる。
【0073】
補足すると、ポンプ装置のメンテナンス作業において、作業者の高齢化、後継者不足により、遠距離通信を用いた遠隔地での監視が望まれる。故障情報、故障を予知するための情報を遠距離通信により取得したいが、ポンプ装置の製品寿命は一般的に10年程度であり、あらかじめ遠距離通信を取り入れた製品が市場に投入されづらい。新機種に置き換えるのではなく、製品寿命を迎えつつある既設のポンプ装置に対して、後付けによる遠隔監視対応が望まれる。また、遠隔監視で望まれるのは異常監視が多く、異常に迅速に対応したいというニーズがある。ポンプ装置の多くは経年劣化とともに異常が増加する傾向にあり、新製品への置き換えからではなく、旧機種のまま対応したいということも望まれている。この種の要望に対し、一実施形態によれば、既設のポンプ装置に後付け可能な通信装置を提供することができるので、好ましい。
【0074】
また、一実施形態によれば、複数の入力端子に個別に入力される複数の信号は、ポンプの運転に関するイベントに応じた信号、ポンプの故障に関するイベントに応じた信号、ポンプが接続する受水槽の水位に関するイベントに応じた信号、のうちの少なくとも1つを含むようにしてもよい。この場合、運転、故障、水位、の少なくとも一つに関するイベントに応じた出力情報を管理装置に送信することができる。
【0075】
補足すると、旧機種のポンプ装置を利用しているプラントや大型設備では、ポンプ装置に備えた運転状態(運転、故障)や受水槽の水位(満水、減水、渇水)をリレー出力し、統合制御盤で故障検知を行うことがある。これに対し、一実施形態では、統合制御盤の代わりに、リレー出力情報をポンプ装置に後付け可能な通信装置に入力し、通信装置は入力を受けると管理装置に遠距離通信を行う。これにより、一実施形態では、統合制御盤のようなシステムを構築することなく、ユーザーへイベント情報を迅速に通知可能となる通信装置を提供可能としている。
【0076】
また、一実施形態によれば、上記検出部は、信号の立ち上がりを検出した第1の検出結果と、信号の立ち下がりを検出した第2の検出結果との各々を通信部に送出するようにしてもよい。この場合、信号の状態が変化したときのみ、通信部を介して管理装置に出力情報を送信するので、通信処理の負荷を軽減させることができる。
【0077】
また、一実施形態によれば、上記通信装置は、入力基板と、通信基板と、を備え、入力基板は複数の入力端子及び検出部が実装され、通信基板は通信部が実装される、ようにしてもよい。この場合、既設のポンプ装置のうち、比較的旧機種には入力基板と通信基板とを後付けし、比較的新機種に通信基板のみを後付けするといった使い分けを行うことが期待できる。
【0078】
補足すると、通信装置は、ポンプ装置の旧製品にも新製品にも対応できていると兼用化によりコストを抑えることができる。このため、通信装置において、リレー入力が可能な回路は別基板にして取り外し可能に構成すると、新製品で使用する際、コストを抑えることができる(リレーは端子台受けが一般的で、基板サイズも大きくなる傾向にあり、新製品では使用しない。)。
【0079】
また、一実施形態によれば、電源ノイズをフィルタする電源基板の二次側に電源端子を有するポンプ装置に対し、通信装置は、電源部を備えてもよい。電源部は、ポンプ装置の当該電源端子に電気的に接続されることにより、電源端子から電源を取得し、当該取得した電源の電圧を調整して検出部及び通信部に供給する。この場合、通信装置は、ポンプ装置の電源基板の二次側から電源を取得することができる。
【0080】
補足すると、通信装置はポンプ装置に構成される制御盤に取り付けることを想定している為、電源を制御盤でフィルタされた二次側から取得すると、通信装置に余分なフィルタ回路を設ける必要がなく、コンパクトで安価な製品を提供することができる。
【0081】
また、一実施形態によれば、通信部は、出力情報をシリアル通信により管理装置に送信するようにしてもよい。この場合、パラレル通信に比べ、簡素な構成で実現することができる。また、新製品のポンプ装置でも通信基板は兼用化して使用するため、通信装置はシリアル通信に対応していればよい。
【0082】
上述の実施形態は、本発明の概念の理解を助けるための具体例を示しているに過ぎず、本発明の範囲を限定することを意図されていない。実施形態は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、様々な構成要素の付加、削除または転換をすることができる。
【0083】
上述の実施形態では、いくつかの機能部を説明したが、これらは各機能部の実装の一例に過ぎない。例えば、1つの装置に実装されると説明された複数の機能部が複数の別々の装置に亘って実装されることもあり得るし、逆に複数の別々の装置に亘って実装されると説明された機能部が1つの装置に実装されることもあり得る。
【0084】
上記各実施形態において説明された種々の機能部は、回路を用いることで実現されてもよい。回路は、特定の機能を実現する専用回路であってもよいし、プロセッサのような汎用回路であってもよい。
【0085】
上記各実施形態の処理の少なくとも一部は、例えば汎用のコンピュータに搭載されたプロセッサを基本ハードウェアとして用いることでも実現可能である。上記処理を実現するプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に格納して提供されてもよい。プログラムは、インストール可能な形式のファイルまたは実行可能な形式のファイルとして記録媒体に記憶される。記録媒体としては、磁気ディスク、光ディスク(CD-ROM、CD-R、DVD等)、光磁気ディスク(MO等)、半導体メモリなどである。記録媒体は、プログラムを記憶でき、かつ、コンピュータが読み取り可能であれば、何れであってもよい。また、上記処理を実現するプログラムを、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピュータ(サーバ)上に格納し、ネットワーク経由でコンピュータ(クライアント)にダウンロードさせてもよい。
【0086】
また、以上のような通信装置は、以下の[1]~[4]に示すように、表現してもよい。
【0087】
[1]ポンプと、ポンプを制御する制御部と、ポンプのイベントごとに信号出力可能な出力端子とを備えたポンプ装置に取り付け可能な通信装置であって、ポンプ装置の出力端子から出力される信号ごとに入力可能な入力端子を備え、入力端子に入力された信号を、入力端子ごとにイベントを割り付け可能に構成される管理装置に送信可能な通信装置。
【0088】
[2]当該イベントごとに出力可能な信号は、ポンプの運転情報、ポンプの故障情報、ポンプが接続する受水槽の水位情報であって、通信装置は信号の入力があったときと、入力がなくなったときに管理装置に信号を送信する、上記[1]に記載の通信装置。
【0089】
[3]通信装置は、通信部を備えた通信基板と、入力部を備えた入力基板で構成される、上記[1]又は[2]に記載の通信装置。
【0090】
[4]制御盤は、更に電源ノイズをフィルタする電源基板をもち、通信装置は電源基板の二次側から電源を取得する、上記[1]乃至[3]のいずれかに記載の通信装置。
【0091】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0092】
10,10-1,10-2,10-3・・・ポンプ装置、20・・・ポンプ部、21・・・センサ、30・・・制御装置、31・・・インバータ、32・・・電源部、321・・・ノイズフィルタ、33・・・操作表示部、34・・・制御入出力基板、341・・・制御電源部、342・・・スイッチ、343,34A,41B・・・端子台、344・・・入力部、345・・・メモリ、346・・・制御部、347・・・出力部、34A1~34A10・・・出力端子、40・・・通信装置、41・・・入力基板、411・・・入力部、412・・・電源部、413・・・信号検出部、413a・・・電源設定スイッチ、413b・・・検出設定スイッチ、413c・・・接続線/検出回路、413d・・・出力部、42・・・通信基板、43・・・コネクタ、44・・・支柱、421・・・通信部、50,50-1,50-2・・・ユーザ端末、51,71・・・通信部、52・・・入力部、53・・・表示部、54,73・・・メモリ、55,74・・・プロセッサ、55a・・・通信制御部、55b,74b・・・処理部、60,70・・・管理サーバ、74a・・・管理部、dc1~dc10・・・検出回路、E1・・・第1の共通電源、E2・・・第2の共通電源、E3・・・通信用電源、Ry2,Ry3,Ry5~Ry10・・・リレー。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図9
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図11