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  • 特許-通信装置、通信システム、及び通信方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】通信装置、通信システム、及び通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/42 20060101AFI20240401BHJP
   H04L 12/28 20060101ALI20240401BHJP
   H04W 72/0457 20230101ALI20240401BHJP
   H04W 84/10 20090101ALI20240401BHJP
【FI】
H04L12/42 Z
H04L12/28 400
H04W72/0457 110
H04W84/10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021056983
(22)【出願日】2021-03-30
(65)【公開番号】P2022154103
(43)【公開日】2022-10-13
【審査請求日】2023-08-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500112146
【氏名又は名称】サイレックス・テクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】桑原 哲也
【審査官】鈴木 香苗
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-029790(JP,A)
【文献】特開2020-161964(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102271100(CN,A)
【文献】国際公開第2016/111155(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/029728(WO,A1)
【文献】長川 大介 ほか,モーションネットワーク向けフレームの連結中継を用いた高速通信方式 High Speed Communication Protocol with Concatenation Forwarding Frame for Motion Network,情報処理学会論文誌 論文誌ジャーナル Vol.54 No.2 [CD-ROM] IPSJ Journal,日本,一般社団法人情報処理学会,2013年02月15日,pp.972-981
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/42
H04L 12/28
H04W 72/0457
H04W 84/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有線親機と、複数の通信装置と、複数の無線子機とを備え、前記有線親機と前記複数の通信装置がデイジーチェーン方式又はリング方式で接続された有線ネットワークにおける、通信システムの通信装置であって、
前記有線親機に対して、子機として動作して有線通信を行う有線通信部と、
前記無線子機に対して、親機として動作して無線通信を行う無線通信部と、
を備え、
前記有線親機が送信したフレームが前記有線通信部を通過する際に当該有線通信部が前記フレームに対してデータの入出力を行う方式で有線通信が行われており、
前記無線通信部と前記無線子機で行われる通信は、近距離無線通信であって、データを送受信する周期が一定であり、予め割り振られたチャンネルでデータを送受信することを特徴とする通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の通信装置であって、
前記無線通信部は、共通のチャンネルを用いて複数の前記無線子機に対してまとめてデータを送信することを特徴とする通信装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の通信装置であって、
前記有線通信部は、前記無線通信部が前記無線子機から受信したデータを前記フレームに入力して前記有線親機に送信することを特徴とする通信装置。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の前記通信装置の複数台が前記有線親機と有線で接続され、それぞれの前記通信装置は一又は複数前記無線子機と無線通信が可能である通信システムにおいて、
前記通信装置の前記無線通信部と一又は複数前記無線子機との間の無線通信は、それぞれ互いに独立して行われることを特徴とする通信システム。
【請求項5】
有線通信の親機として動作する有線親機と、
前記有線親機の子機として動作し、前記有線親機と有線通信を行うとともに、無線通信の親機として動作する複数の通信装置と、
無線通信において前記通信装置の子機として動作する無線子機と、
を備え、
前記有線親機と複数の前記通信装置は、デイジーチェーン方式又はリング方式で有線接続されており、
前記有線親機が送信したフレームが前記通信装置を通過する際に当該通信装置が前記フレームに対してデータの入出力を行う方式で有線通信が行われており、
前記通信装置と前記無線子機で行われる通信は、近距離無線通信であって、データを送受信する周期が一定であり、予め割り振られたチャンネルでデータを送受信することを特徴とする通信システム。
【請求項6】
有線通信の親機として動作する有線親機と、前記有線親機の子機として動作する複数の通信装置と、の間で有線通信を行う有線通信ステップと、
無線通信の子機として動作する無線子機と、前記通信装置と、の間で無線通信を行う無線通信ステップと、
を含み、
前記有線親機と複数の前記通信装置は、デイジーチェーン方式又はリング方式で有線接続されており、
前記有線親機が送信したフレームが前記通信装置を通過する際に当該通信装置が前記フレームに対してデータの入出力を行う方式で有線通信が行われており、
前記通信装置と前記無線子機で行われる通信は、近距離無線通信であって、データを送受信する周期が一定であり、予め割り振られたチャンネルでデータを送受信することを特徴とする通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、無線通信及び有線通信を行う通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、工場等に設けられる産業機器の制御等に用いられる通信システムを開示する。この通信システムは、複数の機器がデイジーチェーン方式(数珠繋ぎ方式)若しくはリング方式で接続された有線ネットワークであるEtherCAT(Ethernet or Control Automation Technology、登録商標)、又はFL-net等の通信方式で通信を行う。EtherCAT通信は、低遅延及び定周期が利点となっている。有線ネットワークを構成する機器の1つは、無線通信の基地局としても機能する。基地局と子機が無線通信する規格としては、例えばIEEE802.11a、b、g、nが挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-29790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
IEEE802.11a、b、g、nによる無線通信では、例えば無線通信が広範囲に及ぶことによる電波干渉や無線フレームの衝突が生じたり、その衝突を回避するための処理が行われたりすることにより、遅延が生じ易い。このため、特許文献1に記載の通信システムでは、EtherCAT通信又はFL-net等の通信方式の利点を十分に活かせていない。
【0005】
本発明は以上の事情に鑑みてなされたものであり、その主要な目的は、有線と無線で構築されたネットワークにおいて、低遅延で通信を行うことができる通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0007】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の通信装置が提供される。通信装置は、通信システムを構成する。通信システムは、有線親機と、複数の通信装置と、複数の無線子機とを備え、前記有線親機と前記複数の通信装置がデイジーチェーン方式又はリング方式で接続された有線ネットワークを有する。通信装置は、有線通信部と、無線通信部と、を備える。前記有線通信部は、前記有線親機に対して、子機として動作して有線通信を行う。前記無線通信部は、前記無線子機に対して、親機として動作して無線通信を行う。前記有線親機が送信したフレームが前記有線通信部を通過する際に当該有線通信部が前記フレームに対してデータの入出力を行う方式で有線通信が行われている。前記無線通信部と前記無線子機で行われる通信は、近距離無線通信であって、データを送受信する周期が一定であり、予め割り振られたチャンネルでデータを送受信する。
【0008】
これにより、有線通信ではデイジーチェーン方式又はリング方式で接続された機器に共通のフレームを用いて通信を行うため、低遅延となる。無線通信においても、データを送受信する周期が一定であり、チャンネルが予め割り振られており、かつ近距離無線通信であるため干渉も生じにくく、低遅延となる。以上により、有線と無線が混在するネットワークで低遅延の通信が可能となる。
【0009】
前記の通信装置においては、前記無線通信部は、共通のチャンネルを用いて複数の無線子機に対してまとめてデータを送信することが好ましい。
【0010】
これにより、短時間で複数の無線子機にデータを送信できる。
【0011】
前記の通信装置においては、前記有線通信部は、前記無線通信部が前記無線子機から受信したデータを前記フレームに入力して前記有線親機に送信することが好ましい。
【0012】
これにより、有線親機は低遅延で無線子機のデータを取得できる。
【0013】
本発明の第2の観点によれば、前記通信装置の複数台が前記有線親機と有線で接続され、それぞれの前記通信装置は一又は複数前記無線子機と無線通信が可能である通信システムが提供される。前記の通信システムにおいては、前記通信装置の前記無線通信部と一又は複数の前記無線子機との間の無線通信は、それぞれ互いに独立して行われる。
【0014】
これにより、無線通信を独立して行うことができるので、通信待ちの時間が短くなり、結果として遅延時間を低減できる。
【0015】
本発明の第3の観点によれば、以下の構成の通信システムが提供される。即ち、通信システムは、有線親機と、複数の通信装置と、無線子機と、を備える。前記有線親機は、有線通信の親機として動作する。前記通信装置は、前記有線親機の子機として動作し、前記有線親機と有線通信を行うとともに、無線通信の親機として動作する。前記無線子機は、無線通信において前記通信装置の子機として動作する。前記有線親機と複数の前記通信装置は、デイジーチェーン方式又はリング方式で有線接続されている。前記有線親機が送信したフレームが前記通信装置を通過する際に当該通信装置が前記フレームに対してデータの入出力を行う方式で有線通信が行われている。前記通信装置と前記無線子機で行われる通信は、近距離無線通信であって、データを送受信する周期が一定であり、予め割り振られたチャンネルでデータを送受信する。
【0016】
本発明の第4の観点によれば、以下の通信方法が提供される。即ち、通信方法は、有線通信ステップと、無線通信ステップと、を含む。前記有線通信ステップでは、有線通信の親機として動作する有線親機と、前記有線親機の子機として動作する複数の通信装置と、の間で有線通信を行う。前記無線通信ステップでは、無線通信の子機として動作する無線子機と、前記通信装置と、の間で無線通信を行う。前記有線親機と複数の前記通信装置は、デイジーチェーン方式又はリング方式で有線接続されている。前記有線親機が送信したフレームが前記通信装置を通過する際に当該通信装置が前記フレームに対してデータの入出力を行う方式で有線通信が行われている。前記通信装置と前記無線子機で行われる通信は、近距離無線通信であって、データを送受信する周期が一定であり、予め割り振られたチャンネルでデータを送受信する。
【0017】
これにより、有線通信ではデイジーチェーン方式又はリング方式で接続された機器に共通のフレームを用いて通信を行うため、低遅延となる。無線通信においても、データを送受信する周期が一定であり、チャンネルが予め割り振られているので干渉も生じにくいため、低遅延となる。以上により、有線と無線が混在するネットワークで低遅延の通信が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る通信システムの概要図。
図2】無線通信で用いるチャンネル、独立チャンネルID、共有チャンネルIDを示す表。
図3】通信装置が独立チャンネルIDを用いて1つの無線子機と通信する処理を示す図。
図4】通信装置が共有チャンネルIDを用いて複数の無線子機と通信する処理を示す図。
図5】通信装置が有線親機からデータを受信したときに行う処理を示すフローチャート。
図6】通信装置が無線子機にデータを送信するときに行う処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。初めに、図1を参照して通信システム100の概要について説明する。
【0020】
通信システム100は、工場等の施設に設けられている。通信システム100は、産業機械4を管理及び制御するために用いられる。産業機械4は、例えば、産業用ロボット又は工作機械等である。通信システム100は、有線親機1と、複数の通信装置2と、複数の無線子機3と、を備える。
【0021】
有線親機1は、サーバ又はパーソナルコンピュータであり、産業機械4の制御又は設定に関するデータを送信したり、産業機械4の状態に関するデータを受信したりする。
【0022】
通信装置2は、有線接続と無線接続が可能な装置である。通信装置2は、処理装置21と、記憶装置22と、有線通信部23と、無線通信部24と、を備える。
【0023】
処理装置21は、CPU又はSoC等である。記憶装置22は、フラッシュメモリ、HDD、又はSSD等であり、通信装置2の制御で用いられる設定及びプログラム等を記憶する。処理装置21は、記憶装置22に記憶されたプログラムを図略のRAMに読み出して実行することにより、通信装置2に関する制御を行う。
【0024】
有線通信部23は、有線通信を行うためのモジュールであり、コネクタ及び信号変換器等で構成されている。無線通信部24は、無線通信を行うためのモジュールであり、アンテナ及び増幅回路等で構成されている。
【0025】
無線子機3は、無線通信が可能であるとともに、産業機械4に有線で接続される。これにより、無線子機3は、産業機械4を無線で通信システム100に接続する中継器として機能する。具体的には、例えば無線子機3は、産業機械4との間で有線によりデータの入出力を行い、通信システム100との間で当該データを無線で通信する。なお、無線子機3は、産業機械4の筐体内に組み込まれていてもよい。
【0026】
有線親機1と複数の通信装置2は、有線ネットワークで接続されている。具体的には、有線親機1と複数の通信装置2は、デイジーチェーン方式又はリング方式で接続されている。また、通信装置2と無線子機3は無線ネットワークで接続されている。このように、通信システム100は、有線と無線の両方のネットワークを含んで構成されている。
【0027】
次に、有線ネットワークの通信方式について説明する。本実施形態では、EtherCAT(登録商標)により有線親機1と通信装置2が通信を行う。具体的には、有線親機1が有線通信の親機(マスター機)として動作し、通信装置2が有線通信の子機(スレーブ機)として動作する。有線親機1と複数の通信装置2は、当該有線ネットワークの通信方式を採用することで、定周期及び低遅延の通信に対応できる。
【0028】
本実施形態の通信方式では、有線親機1は、図1に示すフレーム10を送信する。有線親機1が送信したフレーム10は、有線ネットワークを構成する全ての通信装置2を経由し、有線親機1に戻る。このフレーム10は、ヘッダと、複数のデータグラムと、誤り検知のためのFCS等を含んでいる。1つのデータグラムは、1つの通信装置2に対応している。通信装置2は、データグラムに記述された情報に基づいて、フレーム10に応答データを格納したり、フレーム10に記述されたデータを記憶したりする(詳細は後述)。
【0029】
一般的な有線LANによる通信では、送信を行う主体が複数あり、フレームの送信先が様々であるため、フレームが衝突することを回避するために待ち時間等が設定される。その結果、遅延が生じるとともに、遅延時間にもバラツキが生じる。この点、本実施形態の通信方式では、送信を行う主体は有線親機1のみであり、フレームの送信経路も1つであるため、遅延が生じにくい。本実施形態では、有線ネットワークとしてEtherCATを用いたが、同種の通信を行う他の通信方式、例えばメカトロリンク(登録商標)又はSERCOS(登録商標)等を用いてもよい。
【0030】
次に、図2から図4を参照して、無線ネットワークの通信方式について説明する。本実施形態では、ANT通信を用いて、通信装置2と無線子機3との間で無線通信を行う。ANT通信は、近距離無線通信を代表する例である。
【0031】
ANT通信は、マスタースレーブ方式であり、全ての通信装置2はANT通信の親機として動作する。つまり、図1に示す例では、通信装置2A、2B及び2Cをそれぞれ親機とする3つのANT通信の無線ネットワークが存在することとなる。ANT通信では、事前にチャンネル及びIDが割り振られる。そのため、通信中に空いているチャンネルを探索する処理が不要であるため、ANT通信は、通信状況に応じてチャンネルを変更する方式と比較して、遅延が生じにくい。また、ANT通信は、無線通信の範囲が近距離(例えば、5m~10mなど)であり、予め決められた周期(定周期)でマスタースレーブ間の通信が行われ得る。
【0032】
図2には、通信装置2及び無線子機3に割り振られたチャンネル及びIDが示されている。図1に示すように、通信装置2Aは無線子機3A,3Bと通信を行う。無線通信の親機と子機は同じチャンネルを用いて通信を行う。従って、通信装置2Aのチャンネルと、無線子機3A,3Bのチャンネルは同じである。通信装置2Bについても同様に、同じチャンネルを用いて無線子機3C、3D及び3Eと通信する。
【0033】
ANT通信では、独立チャンネルIDを用いた1対1の通信が可能である。独立チャンネルIDを用いる場合、通信装置2と無線子機3で予め定めた独立チャンネルIDを設定した後に、図3に示すようにANT通信を行う。具体的には、通信装置2と無線子機3でペアリングを行った後に、無線通信を開始する。1回(1スロット)の通信は送受信をペアとして行う。つまり、親機である通信装置2が無線子機3にデータを送信した後に、無線子機3が通信装置2にデータを送信する。また、1スロットの通信周期も予め定められている。
【0034】
ANT通信では、更に、共有チャンネルIDを用いた1対多の通信も可能である。共有チャンネルIDを用いる場合、通信装置2と複数の無線子機3で予め定めた共有チャンネルIDを設定した後に、図4に示すようにANT通信を行う。具体的には、通信装置2と複数の無線子機3でそれぞれペアリングを行った後に、無線通信を開始する。1回の通信は送受信をペアとして行う。つまり、通信装置2は、複数の無線子機3にブロードキャストでデータを送信した後に、無線子機3がブロードキャストにより通信装置2にデータを送信する。また、通信周期も予め定められている。
【0035】
通信周期が予め定められていることにより、送信時間のバラツキを軽減したり、遅延時間を短くしたりすることができる。また、予めチャンネルを割り振って、定められた周期で無線通信を行うのであれば、ANT通信に限られず、他の通信方式を用いてもよい。
【0036】
次に、図5及び図6を参照して、通信装置2が行う有線通信及び無線通信の流れを説明する。初めに、図5を参照して、通信装置2が有線親機1からフレーム10を受信したときに行う処理を説明する。
【0037】
通信装置2は、有線通信のデータ(フレーム10)を受信した場合(S101)、データグラムのデバイスアドレスが自身のアドレスに一致するか否かを判断する(S102)。データグラムのデバイスアドレスが自身のアドレスに一致する場合、通信装置2は、データグラムにwriteコマンドが含まれているか否かを判断する(S103)。
【0038】
データグラムには、writeコマンドとreadコマンドの何れかが含まれている。writeコマンドとは、フレーム10を受信した通信装置2がデータグラムに含まれているデータを制御先である無線子機3(結果的には産業機械4)に対して書き込みを行うことを指示するコマンドである。本実施形態では、データグラムにwriteコマンドが含まれている場合、通信装置2は、無線送信バッファに指定されたデータを格納する(S104)。無線送信バッファとは無線送信を行うために一時的にデータを記憶しておく領域である。具体的には、無線送信バッファは記憶装置22により実現される。
【0039】
データグラムにwriteコマンドが含まれていない場合(言い換えればデータグラムreadコマンドが含まれている場合)、通信装置2は、無線受信バッファにデータが格納されているか否かを判断する(S105)。無線受信バッファとは、無線子機3を介して産業機械4から無線で受信したデータを一時的に記憶しておく領域である。具体的には、無線受信バッファは記憶装置22により実現される。無線受信バッファにデータが格納されている場合、通信装置2は、このデータを有線親機1から送信されたフレーム10のデータグラムに格納する(S106)。
【0040】
次に、図6を参照して、通信装置2が無線子機3との間で無線通信を行う処理を説明する。
【0041】
上述したように、通信装置2と無線子機3の間の無線通信は予め定められた周期で行われる。通信装置2は、その通信周期が到来したか否かを判断する(S201)。通信装置2は、通信周期が到来したと判断した場合、無線送信バッファにデータが格納されているか否かを判断する(S202)。
【0042】
無線送信バッファにデータが格納されている場合、通信装置2は、このデータを無線子機3に送信する(S203)。一方、無線送信バッファにデータが格納されていない場合、通信装置2は、無線子機3からの受信データが有るか否かを判断する(S204)。通信装置2は、無線子機3からの受信データがある場合、このデータを無線受信バッファに格納する(S205)。
【0043】
図5及び図6で示す各処理を繰り返すことにより、通信装置2は、有線親機1から受信したデータを産業機械4に送信したり、産業機械4から受信したデータを有線親機1に送信したりすることができる。また、上述したように、本実施形態の有線通信及び無線通信は低遅延かつ定周期である。従って、遅延等の影響が大きい産業機械4を適切に制御できる。
【0044】
以上に説明したように、本実施形態の通信装置2は、通信システム100を構成する。通信システム100は、有線親機1と、複数の通信装置2と、複数の無線子機3とを備え、有線親機1と複数の通信装置2がデイジーチェーン方式又はリング方式で接続された有線ネットワークを有する。通信装置2は、有線通信部23と、無線通信部24と、を備える。有線通信部23は、有線親機1に対して、子機として動作して有線通信を行う。無線通信部24は、無線子機3に対して、親機として動作して無線通信を行う。有線親機1が送信したフレーム10が有線通信部23を通過する際に有線通信部23がフレーム10に対してデータの入出力を行う方式で有線通信が行われている。無線通信部24と無線子機3で行われる通信は、近距離無線通信であって、データを送受信する周期が一定であり、予め割り振られたチャンネルでデータを送受信する。
【0045】
これにより、有線通信ではデイジーチェーン方式又はリング方式で接続された機器に共通のフレーム10を用いて通信を行うため、低遅延となる。無線通信においても、データを送受信する周期が一定であり、チャンネルが予め割り振られており、かつ近距離無線通信であるため干渉も生じにくく、低遅延となる。以上により、有線と無線が混在するネットワークで低遅延の通信が可能となる。
【0046】
本実施形態の通信装置2において、無線通信部24は、共通のチャンネルを用いて複数の無線子機3に対してまとめてデータを送信する。
【0047】
これにより、短時間で複数の無線子機3にデータを送信できる。
【0048】
本実施形態の通信装置2において、有線通信部23は、無線通信部24が無線子機3から受信したデータをフレーム10に入力して有線親機1に送信する。
【0049】
これにより、有線親機1は低遅延で無線子機のデータを取得できる。
【0050】
以上に本発明の好適な実施形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0051】
上述の実施形態では、通信装置2が無線子機3との間で無線通信を行う構成で説明したが、複数の通信装置2と複数の無線子機3との間で連携して無線通信を行う場合について説明する。例えば、有線親機1が複数の産業機械4の管理及び制御をできるだけ同じタイミングで処理したいことがある。具体的には、産業用ロボットを用いて、複数の製品を同時に効率よく製造する場合などにおいては、複数の産業用ロボットが同じタイミングで同じ動作(例えば、物を掴むなど)を行う必要がある。図1及び図2を用いて説明すると、複数の産業機械4に有線で接続される無線子機3Aから3Eは、それぞれが接続する産業機械4とできるだけ同じタイミングで通信する必要がある。このような場合、1つの通信装置2と複数の無線子機3(3A~3E)との間で無線通信を行うと、その通信装置2の負荷が大きくなり、遅延が生じ得るため、上述の複数の産業機械4の管理及び制御をできるだけ同じタイミングで処理することが困難になり得る。そこで、複数の通信装置2を用いて、複数の無線子機3A~3Eとの通信が同じタイミングになるよう連携しつつも、各々独立チャンネルIDで通信する複数の通信装置2(例えば、2A及び2B)に無線子機3を振り分け、通信装置2Aは無線子機3A及び3Bと、通信装置2Bは無線子機3C,3D及び3Eとそれぞれ独立に通信させる結果、1つの通信装置2あたりの負荷を下げることが可能となり、遅延時間を低減できる。
【0052】
これにより、無線通信を独立して行うことができるので、通信待ちの時間が短くなり、結果として遅延時間を低減できる。
【0053】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0054】
通信システム100が設けられる施設は工場に限られず、例えばオフィス又は店舗等であってもよい。
【0055】
上記実施形態で示したフローチャートは一例であり、一部の処理を省略したり、一部の処理の内容を変更したり、新たな処理を追加したりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、有線と無線が混在するネットワークで低遅延を要する無線通信システムに適用できる。特に、デイジーチェーン方式又はリング方式で接続された有線ネットワーク(例えば、EtherCAT)などに有用である。
【符号の説明】
【0057】
1 有線親機
2 通信装置
3 無線子機
21 処理装置
22 記憶装置
23 有線通信部
24 無線通信部
100 通信システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6