(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】パイロット式電磁弁
(51)【国際特許分類】
F16K 31/06 20060101AFI20240401BHJP
【FI】
F16K31/06 305L
F16K31/06 305K
(21)【出願番号】P 2021187122
(22)【出願日】2021-11-17
【審査請求日】2022-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 尚敬
(72)【発明者】
【氏名】宗像 恭輔
【審査官】藤森 一真
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-352473(JP,A)
【文献】実開昭59-035750(JP,U)
【文献】実開昭52-116720(JP,U)
【文献】特開2007-092826(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0178410(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0037018(KR,A)
【文献】特開2017-101833(JP,A)
【文献】特開2015-224649(JP,A)
【文献】特開2015-081632(JP,A)
【文献】特開2019-148279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 1/00 - 6/00
F16K 31/06 - 31/11
F16K 31/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口開口および出口開口に連通する弁室を備えた弁本体と、
前記弁本体に対して相対移動可能なパイロット弁体と、
前記パイロット弁体により開閉可能なパイロットポートを備え、前記弁本体に対して相対移動することにより、前記弁室内の弁座に対し着座または離間する主弁体と、
前記主弁体を、前記弁座から離間する側に付勢するバネ部材と、を有し、
前記バネ部材は、弾性変形可能な板材から形成されており、前記主弁体又は前記弁本体のいずれか一方に取り付けられるバネ本体と、前記バネ本体から延在して前記主弁体又は前記弁本体のいずれか他方に当接する爪板部と、を有
し、
前記バネ本体は、前記主弁体の周面に密着して取り付けられる筒状をなす、
ことを特徴とするパイロット式電磁弁。
【請求項2】
入口開口および出口開口に連通する弁室を備えた弁本体と、
前記弁本体に対して相対移動可能なパイロット弁体と、
前記パイロット弁体により開閉可能なパイロットポートを備え、前記弁本体に対して相対移動することにより、前記弁室内の弁座に対し着座または離間する主弁体と、
前記主弁体を、前記弁座から離間する側に付勢するバネ部材と、を有し、
前記バネ部材は、弾性変形可能な板材から形成されており、前記主弁体又は前記弁本体のいずれか一方に取り付けられるバネ本体と、前記バネ本体から延在して前記主弁体又は前記弁本体のいずれか他方に当接する爪板部と、を有し、
前記バネ本体は、前記弁本体の内周面に密着して取り付けられる筒状をなす、
ことを特徴とす
るパイロット式電磁弁。
【請求項3】
入口開口および出口開口に連通する弁室を備えた弁本体と、
前記弁本体に対して相対移動可能なパイロット弁体と、
前記パイロット弁体により開閉可能なパイロットポートを備え、前記弁本体に対して相対移動することにより、前記弁室内の弁座に対し着座または離間する主弁体と、
前記主弁体を、前記弁座から離間する側に付勢するバネ部材と、を有し、
前記バネ部材は、弾性変形可能な板材から形成されており、前記主弁体又は前記弁本体のいずれか一方に取り付けられるバネ本体と、前記バネ本体から延在して前記主弁体又は前記弁本体のいずれか他方に当接する爪板部と、を有し、
前記主弁体は、金属製の弁体ケース部と、前記弁体ケース部に保持され前記弁座に着座可能な樹脂製の弁体とを有し、
前記バネ本体は、前記弁体ケース部に配設されたカシメ壁部を塑性変形させることにより、前記主弁体に取り付けられる、
ことを特徴とす
るパイロット式電磁弁。
【請求項4】
入口開口および出口開口に連通する弁室を備えた弁本体と、
前記弁本体に対して相対移動可能なパイロット弁体と、
前記パイロット弁体により開閉可能なパイロットポートを備え、前記弁本体に対して相対移動することにより、前記弁室内の弁座に対し着座または離間する主弁体と、
前記主弁体を、前記弁座から離間する側に付勢するバネ部材と、を有し、
前記バネ部材は、弾性変形可能な板材から形成されており、前記主弁体又は前記弁本体のいずれか一方に取り付けられるバネ本体と、前記バネ本体から延在して前記主弁体又は前記弁本体のいずれか他方に当接する爪板部と、を有し、
前記主弁体は、金属製の弁体ケース部と、前記弁体ケース部に保持され前記弁座に着座可能な樹脂製の弁体とを有し、
前記バネ本体は、前記弁体ケース部と前記弁体との間に挟持されることにより、前記主弁体に取り付けられる、
ことを特徴とす
るパイロット式電磁弁。
【請求項5】
前記爪板部は、前記主弁体又は前記弁本体の係止部に当接し、
前記係止部は、前記入口開口よりも前記パイロット弁体側に配置されてお
り、
前記爪板部は、前記主弁体が最大開弁位置に到達しても、前記係止部から係脱しない、
ことを特徴とする請求項1
~4のいずれか一項に記載のパイロット式電磁弁。
【請求項6】
前記バネ本体は、周方向の1か所が途切れてなるカット部を有し、前記カット部を挟んだ前記バネ本体の周方向両端の間隔は、前記バネ本体を前記主弁体に取り付ける前よりも、前記バネ本体を前記主弁体に取り付けた後の方が大きい、
ことを特徴とする請求項
1に記載のパイロット式電磁弁。
【請求項7】
前記バネ本体は、周方向の1か所が途切れてなるカット部を有し、前記カット部を挟んだ前記バネ本体の周方向両端の間隔は、前記バネ本体を前記主弁体に取り付ける前よりも、前記バネ本体を前記主弁体に取り付けた後の方が小さい、
ことを特徴とする請求項
1に記載のパイロット式電磁弁。
【請求項8】
前記主弁体は、前記バネ本体に係合する溝部を有する、
ことを特徴とする請求項
6または7に記載のパイロット式電磁弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイロット式電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電磁式アクチュエータによりパイロット弁体を駆動し、このパイロット弁体に応動して主弁体を開閉動作させることによって、流体の流路を開閉するパイロット式電磁弁が知られている。
【0003】
特許文献1には、通電励磁用のコイル、該コイルの内周側に配在された吸引子、及び吸引子に対向配置されたプランジャからなる電磁式アクチュエータによりパイロット弁体を開閉駆動し、このパイロット弁体に応動して主弁体を開閉するようにされたパイロット式電磁弁が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のパイロット式電磁弁においては、弁室内において冷媒が流入する入口開口に対向する位置に、コイルバネが位置されている。したがって、入口開口から冷媒が弁室に流入する際に、高い流体圧でコイルバネを側方から押圧し、それによりコイルバネに振動を発生させたり変位を生じさせることがあり、主弁体の不安定な動作を招くおそれがある。
【0006】
かかる問題を解消するには、コイルバネの位置を入口開口に対して軸線方向にシフトさせ、入口開口から流入する冷媒がコイルバネに直接当たらないようにすることが一案である。しかしながら、コイルバネの位置を入口開口に対して軸線方向にシフトさせると、主弁体の軸線方向長が長くなるため、閉弁時に主弁体の軸ずれを招きやすく、またパイロット式電磁弁も大型化することから、周囲部品との干渉やコストの増大などを招くため好ましくない。
【0007】
本発明は、コストを抑え小型化を図りつつも、安定した弁動作を実現するパイロット式電磁弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかるパイロット式電磁弁は、
入口開口および出口開口に連通する弁室を備えた弁本体と、
前記弁本体に対して相対移動可能なパイロット弁体と、
前記パイロット弁体により開閉可能なパイロットポートを備え、前記弁本体に対して相対移動することにより、前記弁室内の弁座に対し着座または離間する主弁体と、
前記主弁体を、前記弁座から離間する側に付勢するバネ部材と、を有し、
前記バネ部材は、弾性変形可能な板材から形成されており、前記主弁体又は前記弁本体のいずれか一方に取り付けられるバネ本体と、前記バネ本体から延在して前記主弁体又は前記弁本体のいずれか他方に当接する爪板部と、を有し、
前記バネ本体は、前記主弁体の周面に密着して取り付けられる筒状をなす、ことを特徴とする。
本発明にかかるパイロット式電磁弁は、
入口開口および出口開口に連通する弁室を備えた弁本体と、
前記弁本体に対して相対移動可能なパイロット弁体と、
前記パイロット弁体により開閉可能なパイロットポートを備え、前記弁本体に対して相対移動することにより、前記弁室内の弁座に対し着座または離間する主弁体と、
前記主弁体を、前記弁座から離間する側に付勢するバネ部材と、を有し、
前記バネ部材は、弾性変形可能な板材から形成されており、前記主弁体又は前記弁本体のいずれか一方に取り付けられるバネ本体と、前記バネ本体から延在して前記主弁体又は前記弁本体のいずれか他方に当接する爪板部と、を有し、
前記バネ本体は、前記弁本体の内周面に密着して取り付けられる筒状をなす、ことを特徴とする。
本発明にかかるパイロット式電磁弁は、
入口開口および出口開口に連通する弁室を備えた弁本体と、
前記弁本体に対して相対移動可能なパイロット弁体と、
前記パイロット弁体により開閉可能なパイロットポートを備え、前記弁本体に対して相対移動することにより、前記弁室内の弁座に対し着座または離間する主弁体と、
前記主弁体を、前記弁座から離間する側に付勢するバネ部材と、を有し、
前記バネ部材は、弾性変形可能な板材から形成されており、前記主弁体又は前記弁本体のいずれか一方に取り付けられるバネ本体と、前記バネ本体から延在して前記主弁体又は前記弁本体のいずれか他方に当接する爪板部と、を有し、
前記主弁体は、金属製の弁体ケース部と、前記弁体ケース部に保持され前記弁座に着座可能な樹脂製の弁体とを有し、
前記バネ本体は、前記弁体ケース部に配設されたカシメ壁部を塑性変形させることにより、前記主弁体に取り付けられる、ことを特徴とする。
本発明にかかるパイロット式電磁弁は、
入口開口および出口開口に連通する弁室を備えた弁本体と、
前記弁本体に対して相対移動可能なパイロット弁体と、
前記パイロット弁体により開閉可能なパイロットポートを備え、前記弁本体に対して相対移動することにより、前記弁室内の弁座に対し着座または離間する主弁体と、
前記主弁体を、前記弁座から離間する側に付勢するバネ部材と、を有し、
前記バネ部材は、弾性変形可能な板材から形成されており、前記主弁体又は前記弁本体のいずれか一方に取り付けられるバネ本体と、前記バネ本体から延在して前記主弁体又は前記弁本体のいずれか他方に当接する爪板部と、を有し、
前記主弁体は、金属製の弁体ケース部と、前記弁体ケース部に保持され前記弁座に着座可能な樹脂製の弁体とを有し、
前記バネ本体は、前記弁体ケース部と前記弁体との間に挟持されることにより、前記主弁体に取り付けられる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コストを抑え小型化を図りつつも、安定した弁動作を実現するパイロット式電磁弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1実施形態のパイロット式電磁弁を示す縦断面図である。
【
図2】
図2(a)は、本実施形態のバネ部材の上面図であり、
図2(b)は、本実施形態のバネ部材の縦断面図である。
【
図3】
図3は、主弁体にバネ部材を組み付ける際の相互関係を示す縦断面図である。
【
図4】
図4は、閉弁時におけるパイロット式電磁弁のパイロット弁体の付近を拡大して示す縦断面図である。
【
図5】
図5は、開弁時におけるパイロット式電磁弁のパイロット弁体の付近を拡大して示す縦断面図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態のパイロット式電磁弁を示す縦断面図である。
【
図7】
図7(a)は、本実施形態のバネ部材の上面図であり、
図7(b)は、本実施形態のバネ部材の縦断面図である。
【
図8】
図8は、主弁体にバネ部材を組み付ける際の相互関係を示す縦断面図である。
【
図9】
図9は、第3実施形態のパイロット式電磁弁を示す縦断面図である。
【
図10】
図10は、本実施形態の主弁体を下面視した図である。
【
図11】
図11(a)は、本実施形態のバネ部材の上面図であり、
図11(b)は、本実施形態のバネ部材の縦断面図である。
【
図12】
図12は、主弁体にバネ部材を組み付ける際の相互関係を示す縦断面図である。
【
図13】
図13は、第4実施形態のパイロット式電磁弁を示す縦断面図である。
【
図14】
図14は、本実施形態の主弁体を下面視した図である。
【
図15】
図15(a)は、本実施形態のバネ部材の上面図であり、
図15(b)は、本実施形態のバネ部材の縦断面図である。
【
図16】
図16は、主弁体にバネ部材を組み付ける際の相互関係を示す縦断面図である。
【
図17】
図17は、第4実施形態の変形例にかかるバネ部材の縦断面図である。
【
図18】
図18は、第4実施形態の別の変形例にかかるバネ部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るパイロット式電磁弁の実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書では、パイロット弁体から吸引子に向かう方向を上方とし、その逆方向を下方とする。
【0012】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態のパイロット式電磁弁1を示す縦断面図であり、閉弁時の状態で示している。
図2(a)は、本実施形態のバネ部材17の上面図であり、
図2(b)は、本実施形態のバネ部材17の縦断面図であり、それぞれ自由状態で示している。
図3は、主弁体15にバネ部材17を組み付ける際の相互関係を示す縦断面図である。
【0013】
図示例のパイロット式電磁弁1は、例えば冷却機等の冷凍サイクルに使用されるものであり、電磁式アクチュエータ20と組み合わされて使用される。
【0014】
パイロット式電磁弁1は、弁本体10と、弁本体10に摺動自在に嵌挿された主弁体15と、主弁体15に対して相対移動可能なパイロット弁体35と、パイロット弁体35を保持するプランジャ30と、プランジャ30をガイドするガイドパイプ32と、を備える。パイロット式電磁弁1の軸線をLとする。
【0015】
金属(例えばステンレス)製である弁本体10は、その内部に弁室CAを備えてなり、側壁12と底壁13とを連設した有底円筒形状を有する。底壁13の中央上面には、側壁12と同軸に上方に突出する中空の内側円筒部13bが連設され、その内側に、弁本体10の外部と弁室CAとを連通する出口開口13aが形成される。内側円筒部13bの上端近傍は下部側よりも薄肉の形状となっている。また、内側円筒部13bの上端内周が円錐状となり、弁座14を構成する。出口開口13aに連通するようにして、流出管OTが底壁13にロウ付けなどにより接続固定されている。
【0016】
弁本体10の側壁12は、底壁13側の厚肉部12aと、厚肉部12aよりも肉厚が薄い薄肉部12bとを連設してなる。厚肉部12aと薄肉部12bとの境界近傍内周には、段部12cが形成されている。
【0017】
厚肉部12aには入口開口12dが形成されており、入口開口12dに連通するようにして、流入管ITがロウ付けなどにより厚肉部12aに接続固定されている。流入管ITの軸線をOとする。
【0018】
入口開口12dの上方(パイロット弁体35側)における側壁12の内周において、全周にわたって径方向内側に環状に突出した係止部12eが形成されている。係止部12eは、後述するバネ部材17を弁本体10に対して支持する機能を有する。
【0019】
図3において、金属(例えばステンレス)製である略円筒状の主弁体15は、中央円筒部15aと、中央円筒部15aの周囲に同軸に配置された周囲円筒部15bと、中央円筒部15aの上端と周囲円筒部15bの中央とを連結するフランジ部15cとを連設してなる。周囲円筒部15bの外径は、弁本体10の側壁12の内径にほぼ等しく、弁本体10の弁室CA内に主弁体15が組み付けられたとき、側壁12の内周面に対して周囲円筒部15bの外周面が摺動可能に嵌合する。
【0020】
中央円筒部15aの軸線方向中間位置における外周に、外周溝(溝部)15dが形成されている。外周溝15dの底面の外径をφAとし、外周溝15dの幅(軸線方向長さ)をW1とする。外周溝15dの下方側壁の縁には、面取り部(第1円錐部15e)が形成されており、また中央円筒部15aの下端外周には、第1円錐部15eに対向して第2円錐部15fが形成されている。第2円錐部15fは、シール部であり、弁座14に着座可能となっている。
【0021】
周囲円筒部15bの下端内周に、径方向内側に突出するように環状凸部15gが形成されており、環状凸部15gの下端内周には、第3円錐部15hが形成されている。なお、本実施の形態では、環状凸部15g及び第3円錐部15hは必ずしも配設する必要はない。
【0022】
主弁体15の中央には、軸線Lと同軸に、連通孔15iが上下に貫通して形成されている。連通孔15iの上端近傍には、それ以外の部位よりも縮径した縮径孔(パイロットポート)15jが形成されている。縮径孔15jの上端は主弁体15の上面に形成された浅皿状の凹部15sにて開口している。凹部15sにパイロット弁体35が着座可能となっており、パイロット弁体35が凹部15sに着座することにより縮径孔15jが閉止される。
【0023】
主弁体15のフランジ部15cには、軸線方向に貫通する貫通孔15kが形成されている。
【0024】
図2において、金属(例えばばね鋼材)製の板材から形成されるバネ部材17は、筒状のバネ本体17aと、バネ本体17aの下端に連結された複数(ここでは4つ)の爪板部17bとが連設されてなる。略矩形状の爪板部17bは、周方向に等間隔に配置され、径方向及びバネ本体17aから軸線方向に沿って離間する方向に延在している。軸線に直交する面に対する爪板部17bの角度θ1は、30度以上、60度以下であると好ましい。
【0025】
バネ本体17aは、隣接する爪板部17bの間の1か所で途切れており、ここにカット部17cを形成している。バネ本体17aの軸線方向高さW2(
図3)は、主弁体15の外周溝15dの幅W1と等しいか、それより小さい。また、自由状態(外力が付与されない状態)で、バネ本体17aの内径φB(
図2)は、主弁体15の外周溝15dの底面の外径φAより小さい。バネ部材17(後述する実施形態を含む)は、板材をプレス成形により加工することで安価に製造できる。
【0026】
バネ部材17を主弁体15に組み付ける場合、
図3に示すように、バネ本体17aを中央円筒部15aの第2円錐部15fに対向させて、バネ部材17と主弁体15とを整列させる。さらに、カット部17cを広げるように力を付与することによりバネ本体17aを拡径して弾性変形させ、中央円筒部15aの第2円錐部15f側からバネ本体17aに嵌挿し、外周溝15dに到達した時点で、バネ本体17aを拡径させた力を除荷する。
【0027】
外周溝15dにてバネ本体17aを拡径させた力を除荷することにより、バネ本体17aの持つ弾性力で、バネ本体17aの内周面は外周溝15dの底面に向かって押し付けられて密着係合し、摩擦により周方向に拘束される。このときφA>φBの関係より、カット部17cを挟んだバネ本体17aの周方向両端の間隔は、バネ本体17aを主弁体15に取り付ける前よりも、取り付けた後の方が大きくなる。バネ本体17aの上端及び下端は、外周溝15dの両壁に当接することで、軸線方向に拘束される。以上で、バネ部材17の主弁体15への組み付けが完了する。
【0028】
図1において、電磁式アクチュエータ20は、樹脂モールドされた通電励磁用のコイルユニット22、このコイルユニット22を覆うように配在されたハウジング21、コイルユニット22の上部内周側に配在されてボルト28によりハウジング21に固定された有底円筒状ないし円柱状の吸引子25を備えている。吸引子25は、プランジャ30の上端に対向している。
【0029】
プランジャ30は、下端近傍に縮径部30aを有し、また軸線Lに沿って貫通した縦穴31を有する。縮径部30aの内部には、縦穴31に連通した保持部31aが下端に開口して形成されており、保持部31a内にはボールからなるパイロット弁体35が収容されている。パイロット弁体35は、その下面の一部を露出させた状態で、プランジャ30の下端から筒状に突出したカシメ部31bを内側にカシメることで固定されている。
【0030】
プランジャ30の下方移動とともに、パイロット弁体35が閉弁方向に移動し、プランジャ30の上方移動と共に、パイロット弁体35が開弁方向に移動する。プランジャ30と主弁体15との間に、背圧室CDが形成される。
【0031】
一方、縦穴31の上端近傍は拡径され、ばね収容室31cが形成されている。ばね収容室31cには、コイルばねからなる閉弁ばね26が収容され、閉弁ばね26の上端は吸引子25の下面に当接し、閉弁ばね26の下端は、ばね収容室31cの底部に当接し、吸引子25とプランジャ30とが離間する方向に付勢している。縦穴31に対し、保持部31aの近傍において、縦穴31とプランジャ30の外部とを連通する横穴(均圧穴)33が形成されている。
【0032】
コイルユニット22と吸引子25との間に、薄肉のガイドパイプ32が配置されている。ガイドパイプ32の外径は、側壁12の薄肉部12bの内径に略等しい。ガイドパイプ32内に、プランジャ30が摺動自在に嵌挿されている。ガイドパイプ32の上端32aは、吸引子25の外周段差部にTIG溶接などによって固定されている。ガイドパイプ32の下端32bは、弁本体10の段部12cに嵌合配置された環状板からなるストッパ18の上面に当接している。
【0033】
ストッパ18の外径は、側壁12の薄肉部12bの内径に略等しく、その内径は、プランジャ30の縮径部30aの外径より大きい。ガイドパイプ32の下端32b側の外周は、弁本体10の薄肉部12bの内周に嵌合した状態でロウ付け等により固定されている。
【0034】
(パイロット式電磁弁の組付)
パイロット式電磁弁1の組み付けについて説明する。
図3を参照して上述したように、まず弁本体10に対して、流入管IT及び流出管OTをロウ付けにより接続固定する。次いで、バネ部材17を主弁体15に組み付ける。さらに、弁本体10に対して、バネ部材17を組み付けた主弁体15を上方から挿入する。このとき、爪板部17bの外端部は周囲円筒部15bの外周部よりも内側に位置するため、段部12cに引っかかることを回避してスムーズな組み付けを行える。
【0035】
側壁12の内周面に対して周囲円筒部15bの外周面を摺動させつつ、バネ部材17の爪板部17bの先端が係止部12eに当接するまで、主弁体15を弁本体10に挿入する。その後、薄肉部12b側からストッパ18を接近させ、ストッパ18の外周を薄肉部12bの内周に嵌合させる。ただし、バネ部材17の爪板部17bの弾性力により主弁体15が弁本体10に対して上方に付勢され、それにより周囲円筒部15bの上端が段部12cよりも上方に位置するため、ストッパ18は段部12cに到達せず、周囲円筒部15bの上端に当接した状態となる。
【0036】
さらに、ガイドパイプ32の下端を弁本体10の薄肉部12b内へと挿入し、ストッパ18を間に挟んだ状態で段部12cに突き当てる。このとき、主弁体15がストッパ18により下方に押されて、爪板部17bが弾性変形する。かかる状態を維持しつつ、例えば高周波ロウ付けなどの手法で、ガイドパイプ32の下端、ストッパ18、及び段部12cを固定する。高周波ロウ付けによれば、局所的な加熱によりロウ材を溶融させることができるため、例えばロウ付け時の熱の影響が主弁体15全体に及ぶことが抑制される。
【0037】
次に、ガイドパイプ32内に、パイロット弁体35を保持したプランジャ30、閉弁ばね26、及び吸引子25をこの順序で挿入して、ガイドパイプ32の上端32aと吸引子25とを溶接する。その後、ガイドパイプ32の上端周囲に、コイルユニット22を組み付けたハウジング21を嵌合配置して、ボルト28を用いて吸引子25とハウジング21の上板とを締結する。以上により、電磁式アクチュエータ20とパイロット式電磁弁1とを組み合わせた弁装置を形成することができる。
【0038】
(パイロット式電磁弁の動作)
パイロット式電磁弁1の動作について説明する。
図4は、閉弁時におけるパイロット式電磁弁1のパイロット弁体35の付近を拡大して示す縦断面図であり、
図5は、開弁時におけるパイロット式電磁弁1のパイロット弁体35の付近を拡大して示す縦断面図である。
【0039】
ここで、流入管IT内の圧力は、流出管OT内の圧力よりも高いものとする。
図1、4に示す閉弁状態では、閉弁ばね26の弾性力によりプランジャ30と共に下方に付勢されるパイロット弁体35が凹部15sに着座して、連通孔15iの縮径孔15jの上端を閉止する。このため、主弁体15を挟んで背圧室CD内の圧力と出口開口13aの圧力との間に圧力差が生じて、バネ部材17の弾性力に抗して主弁体15は下方に押され、第2円錐部15fが弁座14に着座する。
【0040】
閉弁状態では、流入管ITから入口開口12dを介して弁室CAに導入された流体は、爪板部17bの周方向間隙と、主弁体15の貫通孔15k及び周囲円筒部15bと弁本体10の側壁12との隙間を通って、背圧室CDに導入される。したがって、背圧室CD内の圧力と出口開口13aの圧力との圧力差が維持されるため、第2円錐部15fが弁座14に着座した状態が維持される。また、背圧室CDに導入された流体は、
図1を参照して、プランジャ30の外周面とガイドパイプ32の内周面との間、横穴33及び縦穴31を通って、吸引子25とプランジャ30との間に形成される間隙空間CEにも導かれる。
【0041】
閉弁状態のパイロット式電磁弁1において、不図示の電源からコイルユニット22に通電されると、吸引子25にプランジャ30が引き寄せられて吸着し、これによりパイロット弁体35が開弁方向に上昇する。このとき、背圧室CDと間隙空間CEの内圧は等しいため、プランジャ30の動作を妨げることがない。
【0042】
パイロット弁体35の上昇によって、
図5に示すように、主弁体15の縮径孔15jが開放されると、背圧室CD内の流体が連通孔15i(パイロットポートを含む)を介して出口開口13aへと流出する。これにより、背圧室CD内の圧力が低下するため、背圧室CD内の圧力と出口開口13aの圧力との圧力差が減少し、ばね荷重と圧力差により主弁体15が上昇する。上昇した主弁体15の上端は、ストッパ18の下面に当接して、圧力差により付勢された状態で安定して保持される。このとき、主弁体15が最大開弁位置まで上昇しても、バネ部材17の爪板部17bが係止部12eから離間しないことが好ましい。それにより、爪板部17bが係止部12eから係脱することが抑制される。
【0043】
コイルユニット22の通電が停止されると、閉弁ばね26の弾性力によりプランジャ30と共にパイロット弁体35が下降して凹部15sに着座し、
図4に示すように、連通孔15iの縮径孔15jの上端を閉止する。すると、背圧室CD内の圧力が上昇するため、バネ部材17の弾性力に抗して主弁体15が下方に付勢され、第2円錐部15fが弁座14に着座する。
【0044】
本実施形態のパイロット式電磁弁1によれば、バネ部材17を用いることで、弁本体10の軸線方向長を抑制することができる。また、バネ部材17が入口開口12dよりもパイロット弁体35側に配置されているため、開弁時に流入管ITから弁室CAに流入する冷媒が、バネ部材17に直接当たらないため、スムーズな冷媒の流入が確保される。さらに、バネ部材17の爪板部17bは、コイルバネに比べて比較的剛性が高いため、爪板部17bの周方向間隙を冷媒が通過する際に、振動などが生じるおそれが少なく、それにより主弁体15の安定した開弁動作を実現できる。
【0045】
なお、上記実施形態は、バネ部材17のバネ本体17aを主弁体15に取り付け、爪板部17bによって弁本体10の係止部12eを押圧する構成であるが、バネ本体17aを弁本体10に取り付け、爪板部17bによって主弁体15を押圧する構成でもよい。この場合、例えば、バネ本体を弁本体10の内周面に密着させるとともに係止部12eに載置するように配置し(つまり、弁本体10の内周面にバネ本体の外周面が接するように配置し)、爪板部で主弁体15の係止部(例えば、入口開口12dよりもパイロット弁体35側に配置されている周囲円筒部15bの下端部)を上方に押圧する。
【0046】
[第2実施形態]
図6は、第2実施形態のパイロット式電磁弁1Aを示す縦断面図であり、閉弁時の状態で示しているが、プランジャ30、閉弁ばね26、及び吸引子25以外の電磁式アクチュエータを取り外して示している。第2実施形態において使用できる電磁式アクチュエータは、第1実施形態の電磁式アクチュエータ20と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0047】
本実施形態においては、バネ部材17Aの形状が異なる。それ以外の構成は、第1実施形態と同様であるため、同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0048】
図7(a)は、本実施形態のバネ部材17Aの上面図であり、
図7(b)は、本実施形態のバネ部材17Aの縦断面図であり、それぞれ自由状態で示している。
図8は、主弁体15にバネ部材17Aを組み付ける際の相互関係を示す縦断面図である。
【0049】
本実施形態の主弁体15は、第1実施形態と共通である。ただし、
図8を参照して、周囲円筒部15bの内周において、フランジ部15cと環状凸部15gとの間を、嵌合面15m(または溝部)として、その幅(軸線方向距離)をW3とし、嵌合面15mの内径をφCとする。また環状凸部15gの軸線方向厚さをW4とし、環状凸部15gの内径をφDとする。なお、本実施形態では、外周溝15d及び第1円錐部15e(
図3)は必ずしも配設する必要はない。
【0050】
図7において、金属(例えばばね鋼材)製の板材から形成されるバネ部材17Aは、大径バネ本体17Aaと、大径バネ本体17Aaの下方に連設された小径バネ本体17Adと、大径バネ本体17Aaと小径バネ本体17Adとを連結する環状バネ本体17Afと、小径バネ本体17Adの下端に連設された複数(ここでは4つ)の爪板部17Abとを有する。略矩形状の爪板部17Abは、周方向に等間隔に配置され、径方向及び小径バネ本体17Adから軸線方向に沿って離間する方向に延在している。軸線に直交する面に対する爪板部17Abの角度θ2は、30度以上、60度以下であると好ましい。
【0051】
大径バネ本体17Aa及び小径バネ本体17Adは、隣接する爪板部17Abの間の1か所で途切れており、ここにカット部17Acを形成している。大径バネ本体17Aaの軸線方向高さW5(
図8)は、主弁体15の嵌合面15mの幅W3と等しいか、それより小さく、また小径バネ本体17Adの軸線方向高さW6は、環状凸部15gの軸線方向厚さW4と等しいか、それより大きい。また、自由状態(外力が付与されない状態)で、大径バネ本体17Aaの外径φE(
図7(a))は、主弁体15の嵌合面15mの内径φCより大きい。ただし、主弁体15に組み付けた状態で、小径バネ本体17Adの外径φF(
図7(b))は、主弁体15の環状凸部15gの内径φDより小さいと好ましい。
【0052】
バネ部材17Aを主弁体15に組み付ける場合、
図8に示すように、大径バネ本体17Aaを小径バネ本体17Adとともに中央円筒部15aの径方向外側を通過させながら、周囲円筒部15bの第3円錐部15hに対向させる。さらに、カット部17Acを狭めるように力を付与することにより大径バネ本体17Aa及び小径バネ本体17Adを縮径して弾性変形させ、大径バネ本体17Aaが第3円錐部15h側から環状凸部15gを乗り越えて、嵌合面15mに嵌合した時点で、大径バネ本体17Aa及び小径バネ本体17Adを縮径させた力を除荷する。
【0053】
これにより、大径バネ本体17Aa及び小径バネ本体17Adの持つ弾性力で、大径バネ本体17Aaの外周面は嵌合面15mに向かって押し付けられて密着係合し、摩擦により周方向に拘束される。このときφE>φCの関係より、カット部17Acを挟んだ大径バネ本体17Aaの周方向両端の間隔は、大径バネ本体17Aaを主弁体15に取り付ける前よりも、主弁体15に取り付けた後の方が小さくなる。大径バネ本体17Aaの上端及び下端は、フランジ部15c及び環状凸部15gとの段部に当接することで、軸線方向に拘束される。このとき、小径バネ本体17Adは、環状凸部15gの径方向内側に位置する。以上で、バネ部材17Aの主弁体15への組み付けが完了する。
【0054】
本実施形態のパイロット式電磁弁1Aにおいても、不図示の電源から電磁式アクチュエータに給電されると、パイロット弁体35が上昇することによって、主弁体15の縮径孔15jが開放され、これにより背圧室CD内の圧力が低下するため、上述したようにばね荷重と圧力差により主弁体15が上昇する。上昇した主弁体15の上端は、ストッパ18の下面に当接して、圧力差により付勢された状態で安定して保持される。このとき、主弁体15が最大開弁位置まで上昇しても、バネ部材17Aの爪板部17Abが係止部12eから離間しないことが好ましい。それにより、爪板部17Abが係止部12eから係脱することが抑制される。
【0055】
電磁式アクチュエータへの給電が停止されると、閉弁ばね26の弾性力によりプランジャ30と共にパイロット弁体35が下降して凹部15sに着座し、
図6に示すように、連通孔15iの縮径孔15jの上端を閉止する。すると、背圧室CD内の圧力が上昇するため、バネ部材17Aの弾性力に抗して主弁体15が下方に付勢され、第2円錐部15fが弁座14に着座する。
【0056】
[第3実施形態]
図9は、第3実施形態のパイロット式電磁弁1Bを示す縦断面図であり、閉弁時の状態で示しているが、プランジャ30B、閉弁ばね26B、及び吸引子25以外の電磁式アクチュエータを取り外して示している。第3実施形態において使用できる電磁式アクチュエータは、第1実施形態の電磁式アクチュエータ20と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0057】
パイロット式電磁弁1Bは、弁本体10Bと、弁本体10Bに摺動自在に嵌挿された主弁体15Bと、主弁体15Bに対して相対移動可能なパイロット弁体35Bと、パイロット弁体35を保持するプランジャ30Bと、プランジャ30Bをガイドするガイドパイプ32Bと、を備える。パイロット式電磁弁1Bの軸線をLとする。
【0058】
金属(例えばステンレス)製である弁本体10Bは、その内部に弁室CAを備えてなり、側壁12Bと底壁13Bとを連設した有底円筒形状を有する。底壁13Bの中央上面には、側壁12Bと同軸に上方に突出する中空の内側円筒部13Bbが連設され、その内側に、弁本体10Bの外部と弁室CAとを連通する出口開口13Baが形成される。内側円筒部13Bbの上端近傍は下部側よりも薄肉の形状となっており、その上端が弁座14Bを構成する。出口開口13Baに連通するようにして、流出管OTが底壁13Bにロウ付けなどにより接続固定されている。
【0059】
弁本体10Bの側壁12Bは、底壁13B側の厚肉部12Baと、厚肉部12Baよりも肉厚が薄く薄肉部12Bbとを連設してなる。厚肉部12Baの上端近傍内周には、段部12Bcが形成されている。
【0060】
厚肉部12Baには入口開口12Bdが形成されており、入口開口12Bdに連通するようにして、流入管ITがロウ付けなどにより厚肉部12Baに接続固定されている。流入管ITの軸線をOとする。
【0061】
入口開口12Bdの上方(薄肉部12Bb側)における側壁12Bの内周において、径方向内側に環状に突出した係止部12Beが形成されている。係止部12Beは、後述するバネ部材17Bを弁本体10Bに対して支持する機能を有する。
【0062】
図10は、主弁体15Bを下面視した図である。
図11(a)は、本実施形態のバネ部材17Bの上面図であり、
図11(b)は、本実施形態のバネ部材17Bの縦断面図であり、それぞれ自由状態で示している。
図12は、主弁体15Bにバネ部材17Bを組み付ける際の相互関係を示す縦断面図であり、(a)は組付け前の状態を示し、(b)は組付け後の状態を示す。
【0063】
図12において、主弁体15Bは、金属(例えばステンレス)製である弁体ケース部15B1と、樹脂(例えばPTFE)製である弁体15B2とを有する。
【0064】
略円筒状の弁体ケース部15B1は、周壁部15Baと、周壁部15Baの上端に連結され径方向内側に突出する環状壁部15Bbと、カシメ加工前の状態で周壁部15Baの下端内周から軸線方向に突出する複数の(ここでは4つの)カシメ壁部15Bcとを連設してなる。カシメ壁部15Bcは周方向に等間隔に配置されており、その間隔D’は、後述するバネ部材17Bの爪板部17Bbの周方向の幅Tよりも大きい(
図10参照)。カシメ加工前のカシメ壁部15Bcの内接円内径をφGとする。なお、カシメ壁部15Bcは4つに限られず、3つまたは5つ以上でもよい。
【0065】
周壁部15Baの外径は、弁本体10Bの側壁12Bの内径にほぼ等しく、弁本体10Bの弁室CA内に主弁体15Bが組み付けられたとき、側壁12Bの内周面に対して周壁部15Baの外周面が摺動可能に嵌合する。環状壁部15Bbの上面から周壁部15Baの内周にわたって、貫通孔15Bdが形成されている。
【0066】
略円筒状の弁体15B2は、大径弁体部15Beと、大径弁体部15Beよりも小径の小径弁体部15Bfとを同軸に連設してなる。また、弁体ケース部15B1の高さ(軸線方向距離)は、弁体15B2の高さにほぼ等しい。
図12に示すように、弁体ケース部15B1内に弁体15B2を組付けたとき、大径弁体部15Beの外周は、周壁部15Baの内周に密着し、また小径弁体部15Bfの外周は、環状壁部15Bbの内周に密着し、弁体ケース部15B1及び弁体15B2の上面及び下面は略同一面となる。
【0067】
弁体15B2の中央には、軸線Lと同軸に、連通孔15Biが上下に貫通して形成されている。連通孔15Biの上端近傍には、それ以外の部位よりも縮径した縮径孔(パイロットポート)15Bjが形成されている。
【0068】
図11において、金属(例えばばね鋼材)製の板材から形成されるバネ部材17Bは、環状のバネ本体17Baと、バネ本体17Baの外周に連結された複数(ここでは4つ)の爪板部17Bbとが連設されてなる。略矩形状の爪板部17Bbは、周方向に等間隔に配置され、径方向及びバネ本体17Baから軸線方向に沿って離間する方向に延在している。軸線に直交する面(ここではバネ本体17Baの上面)に対する爪板部17Bbの角度θ3は、30度以上、60度以下であると好ましい。
【0069】
バネ本体17Baの外径φH(
図11)は、カシメ壁部15Bcの内接円内径φG(
図12)よりも小さい。
【0070】
弁体ケース部15B1と弁体15B2とを組み合わせた主弁体15Bに対して、バネ部材17Bを組み付ける場合、
図12に示すように、バネ部材17Bのバネ本体17Baを弁体15B2の大径弁体部15Beの下面に対向させて、バネ部材17Bと主弁体15Bとを同軸になるよう整列させる。さらに、
図10に示すように、周方向に沿って間隔D’で隣接するカシメ壁部15Bcの間に、幅Tの爪板部17Bbが収まるような位相で、バネ部材17Bを主弁体15Bに接近させる。このとき、カシメ壁部15Bcは、バネ本体17Baの径方向外側に位置する。
【0071】
バネ部材17Bが主弁体15Bに到達した時点で、カシメ壁部15Bcを径方向内側にカシメて塑性変形させる。
図12(b)に示すように軸線直交方向に曲がったカシメ壁部15Bcにより、弁体15B2及びバネ部材17Bを、弁体ケース部15B1に同時に固定できる。以上で、バネ部材17Bの主弁体15Bへの組み付けが完了する。
【0072】
図9において、プランジャ30Bの下端には、保持穴31Bが設けられている。この保持穴31Bにボールからなるパイロット弁体35Bが収容されている。パイロット弁体35Bは、その下面の一部を露出させた状態で、プランジャ30B下端から筒状に突出したカシメ部31Baを内側にカシメることで固定されている。
【0073】
プランジャ30Bの下方移動とともに、パイロット弁体35Bが閉弁方向に移動し、プランジャ30Bの上方移動と共に、パイロット弁体35Bが開弁方向に移動する。プランジャ30Bと主弁体15Bとの間に、背圧室CDが形成される。
【0074】
プランジャ30Bの上端には、コイルばねからなる閉弁ばね26Bが挿入係止される縦穴(ばね室)30Baと、縦穴30Baの底部とプランジャ30Bの外部とを連通する横穴(均圧穴)30Bbが形成されている。
【0075】
不図示のコイルユニットと吸引子25との間に、薄肉のガイドパイプ32Bが配置されている。ガイドパイプ32B内に、プランジャ30Bが摺動自在に嵌挿されている。ガイドパイプ32Bの上端32Baは、吸引子25の外周段差部にTIG溶接などによって固定されている。ガイドパイプ32Bの下端には、径方向外方に折り曲げられて延在するフランジ部32Bbが形成されている。ストッパを兼ねるフランジ部32Bbは、弁本体10Bの段部12Bcに当接して配置されている。
【0076】
環状体16Bが、弁本体10Bの側壁12Bの薄肉部12Bbの内周に嵌合し、その下端をフランジ部32Bbの上面に当接させている。薄肉部12Bbの上端近傍は、カシメ加工されることにより環状体16Bを保持している。ガイドパイプ32Bと、弁本体10Bの薄肉部12Bbとの間はロウ付け等により固定される。
【0077】
(パイロット式電磁弁の組付)
パイロット式電磁弁1Bの組み付けについて説明する。弁本体10Bの側壁12Bの薄肉部12Bbは、カシメ加工前は円筒状であるものとする。
図3を参照して上述したように、まず弁本体10Bに対して、流入管IT及び流出管OTをロウ付けにより接続固定する。次いで、バネ部材17Bを主弁体15Bに組み付ける。さらに、弁本体10Bに対して、バネ部材17Bを組み付けた主弁体15Bを上方から挿入する。このとき、爪板部17Bbの外端部は周壁部15Baの外周よりも内側に位置するため、段部12Bcに引っかかることを回避してスムーズな組み付けを行える。
【0078】
かかる状態で、ガイドパイプ32B、閉弁ばね26B、プランジャ30B、吸引子25を組み付けたユニットを弁本体10Bの上方から接近させると、パイロット弁体35Bが主弁体15Bの上面に当接して、バネ部材17Bの付勢力に抗しながら主弁体15Bを押し下げる。フランジ部32Bbが、弁本体10Bの段部12Bcに当接した後、環状体16Bを薄肉部12Bbに嵌合させ、その下端をフランジ部32Bbの上面に当接させる。その後、薄肉部12Bbの上端近傍を径方向内側に折り曲げるようにカシメて塑性変形させ、環状体16Bを保持する。かかる状態で、ガイドパイプ32Bと、弁本体10Bの薄肉部12Bbとの間をロウ付け等により固定する。その後、
図1に示す実施形態と同様に、ボルト28を用いて吸引子25とハウジング21の上板とを締結することにより、電磁式アクチュエータとパイロット式電磁弁1Bとを組み合わせた弁装置を形成することができる。
【0079】
(パイロット式電磁弁の動作)
パイロット式電磁弁1Bの動作について説明する。
ここで、流入管IT内の圧力は、流出管OT内の圧力よりも高いものとする。
図9に示す閉弁状態では、閉弁ばね26Bの弾性力によりプランジャ30Bと共に下方に付勢されるパイロット弁体35Bが、連通孔15Biの縮径孔15Bjの上端を閉止する。このため、主弁体15Bを挟んで背圧室CD内の圧力と出口開口13Baの圧力との間に圧力差が生じて、バネ部材17Bの弾性力に抗して主弁体15Bは下方に押され、弁体15B2の下面が弁座14Bに着座する。弁体15B2は、金属に比して柔軟な樹脂製であるため、弁座14Bに着座した際の密封性が高く、また長期間にわたって使用しても弁座14Bの摩耗などが生じにくい。
【0080】
閉弁状態では、流入管ITから入口開口12Bdを介して弁室CAに導入された流体は、爪板部17Bbの周方向間隙と、主弁体15Bの弁体ケース部15B1及び弁体15B2との間、貫通孔15Bd、及び主弁体15Bの周壁部15Baと弁本体10Bの側壁12Bとの間を通って、背圧室CDに導入される。したがって、背圧室CD内の圧力と出口開口13Baの圧力との圧力差が維持されるため、弁体15B2が弁座14に着座した状態が維持される。また、背圧室CDに導入された流体は、
図9を参照して、プランジャ30Bの外周面とガイドパイプ32Bの内周面との間、横穴30Bb及び縦穴30Baを通って、吸引子25とプランジャ30Bとの間に形成される間隙空間CEにも導かれる。
【0081】
閉弁状態のパイロット式電磁弁1Bにおいて、不図示の電源から電磁式アクチュエータに給電されると、吸引子25にプランジャ30Bが引き寄せられて吸着し、これによりパイロット弁体35Bが開弁方向に上昇する。このとき、背圧室CDと間隙空間CEの内圧は等しいため、プランジャ30Bの動作を妨げることがない。
【0082】
パイロット弁体35Bの上昇によって、主弁体15Bの縮径孔15Bjが開放されると、背圧室CD内の流体が連通孔15Bi(パイロットポートを含む)を介して出口開口13Baへと流出する。これにより、背圧室CD内の圧力が低下するため、背圧室CD内の圧力と出口開口13Baの圧力との圧力差が減少し、上述したようにばね荷重と圧力差により主弁体15Bが上昇する。上昇した主弁体15Bの上端は、フランジ部32Bbの下面に当接して、圧力差により付勢された状態で安定して保持される。このとき、主弁体15Bが最大開弁位置まで上昇しても、バネ部材17Bの爪板部17Bbが係止部12Beから離間しないことが好ましい。それにより、爪板部17Bbが係止部12Beから係脱することが抑制される。
【0083】
電磁式アクチュエータへ給電が停止されると、閉弁ばね26Bの弾性力によりプランジャ30Bと共にパイロット弁体35Bが下降して、連通孔15Biの縮径孔15Bjの上端を閉止する。すると、背圧室CD内の圧力が上昇するため、バネ部材17Bの弾性力に抗して主弁体15Bが下方に付勢され、弁体15B2が弁座14Bに着座する。
【0084】
[第4実施形態]
図13は、第4実施形態のパイロット式電磁弁1Cを示す縦断面図であり、閉弁時の状態で示しているが、プランジャ30B、閉弁ばね26B、及び吸引子25以外の電磁式アクチュエータを取り外して示している。第4実施形態において使用できる電磁式アクチュエータは、第1実施形態の電磁式アクチュエータ20と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0085】
本実施形態においては、主弁体15C及びバネ部材17Cの構成が異なる。それ以外の構成は、第3実施形態と同様であるため、同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0086】
図14は、主弁体15Cを下面視した図である。
図15(a)は、本実施形態のバネ部材17Cの上面図であり、
図15(b)は、本実施形態のバネ部材17Cの縦断面図であり、それぞれ自由状態で示している。
図16は、主弁体15Cにバネ部材17Cを組み付ける際の相互関係を示す縦断面図であり、(a)は組付け前の状態を示し、(b)は組付け後の状態を示す。
【0087】
図16において、主弁体15Cは、金属(例えばステンレス)製である弁体ケース部15C1と、樹脂(例えばPTFE)製である弁体15C2とを有する。
【0088】
略円筒状の弁体ケース部15C1は、周壁部15Caと、周壁部15Caの上端に連結され径方向内側に突出する頂壁部15Cbと、カシメ加工前の状態で頂壁部15Cbの中央から軸線方向に下方に向かって延在するカシメ円筒部15Ccとを連設してなる。カシメ加工前の状態で、カシメ円筒部15Ccの下端は、周壁部15Caの下端よりも下方に位置する。
【0089】
周壁部15Caの外径は、弁本体10Bの側壁12Bの内径にほぼ等しく、弁本体10Bの弁室CA内に主弁体15Cが組み付けられたとき、側壁12Bの内周面に対して周壁部15Caの外周面が摺動可能に嵌合する。頂壁部15Cbの上面から周壁部15Caの内周にわたって、貫通孔15Cdが形成されている。
【0090】
略環状の弁体15C2の高さは、弁体ケース部15C1の周壁部15Caの下端から頂壁部15Cbの下面までの距離にほぼ等しいが、弁体15C2の外径は、周壁部15Caの内径より、バネ部材17Cの板厚の2倍だけ小さくなっている。
【0091】
カシメ円筒部15Ccの中央には、軸線Lと同軸に、連通孔15Ciが形成され、それによりカシメ円筒部15Ccの肉厚がカシメ加工が可能になる程度に薄く形成される。連通孔15Ciの上部には、頂壁部15Cbを貫通するようにして縮径孔(パイロットポート)15Cjが形成されており、縮径孔15Cjは、それ以外の連通孔15Ciよりも内径が小さい。
【0092】
図15において、金属(例えばばね鋼材)製の板材から形成されるバネ部材17Cは、環状部17Caと、環状部17Caの外周に上端を連結した外周部17Cdと、外周部17Cdの下端に連結された複数(ここでは4つ)の爪板部17Cbとが連設されてなる。環状部17Caと外周部17Cdとで、バネ本体を構成する。略矩形状の爪板部17Cbは、周方向に等間隔に配置され、径方向及び外周部17Cdから軸線方向に沿って離間する方向に延在している。軸線に直交する面(ここでは環状部17Caの上面)に対する爪板部17Cbの角度θ4は、30度以上、60度以下であると好ましい。
【0093】
外周部17Cdの高さ(軸線方向距離)は、弁体15C2の高さにほぼ等しく、また外周部17Cdの内径は、弁体15C2の外径にほぼ等しい。
【0094】
組み付けに際し、
図16(a)を参照して、まず弁体ケース部15C1の内部に、バネ部材17Cを挿入することにより、環状部17Caを頂壁部15Cbの下面に当接させ、外周部17Cdを周壁部15Caの内周に嵌合させる。かかる状態で、爪板部17Cbは、周壁部15Caの下端から突出して配置される。
【0095】
その後、カシメ円筒部15Ccを挿通させるようにして、弁体15C2をバネ部材17Cの内側に接近させて、弁体15C2の上面の一部が頂壁部15Cbの下面に当接するまで相対移動させる。かかる状態で、環状部17Caは、弁体15C2の上面と頂壁部15Cbの下面とに挟持され、また外周部17Cdは、弁体15C2の外周面と周壁部15Caの内周とに挟持される。その後、弁体15ケース部C1の下面から突き出たカシメ円筒部15Ccの下端を拡径させるようにカシメて塑性変形させる。
図16(b)に示すように、拡径したカシメ円筒部15Ccの下端により弁体ケース部15C1の下面が保持されて固定され、またバネ部材17Cが主弁体15Cから係脱することなく保持される。以上で、バネ部材17Cの主弁体15Cへの組み付けが完了する。
【0096】
本実施形態のパイロット式電磁弁1Cにおいても、不図示の電源から電磁式アクチュエータに給電されると、パイロット弁体35Bが上昇することによって、主弁体15Cの縮径孔15Cjが開放され、これにより背圧室CD内の圧力が低下するため、上述したようにばね荷重と圧力差により主弁体15Bが上昇する。上昇した主弁体15Bの上端は、フランジ部32Bbの下面に当接して、圧力差により付勢された状態で安定して保持される。このとき、主弁体15Bが最大開弁位置まで上昇しても、バネ部材17Cの爪板部17Cbが係止部12Beから離間しないことが好ましい。それにより、爪板部17Cbが係止部12Beから係脱することが抑制される。
【0097】
電磁式アクチュエータへの給電が停止されると、閉弁ばね26Bの弾性力によりプランジャ30Bと共にパイロット弁体35Bが下降して、
図13に示すように、連通孔15Ciの縮径孔15Cjの上端を閉止する。すると、背圧室CD内の圧力が上昇するため、バネ部材17Cの弾性力に抗して主弁体15Bが下方に付勢され、弁体15C2が弁座14Bに着座する。
【0098】
[変形例1]
図17は、第4実施形態の変形例にかかるバネ部材17D~17Gの縦断面図である。バネ部材17D~17Gにおいて、爪板部以外の構成は、バネ部材17Cと同様である。
【0099】
図17(a)に示すバネ部材17Dの爪板部17Dbは、外周部17Ddから軸方向に離間するにつれて径方向外側に延在しつつ中間位置に到達し、その後は外周部17Ddから軸方向に離間するにつれて径方向内側に延在する。このように、爪板部17Dbを断面がU字状に曲がるように形成することにより、径方向外側(軸線Lに対する径方向外側)への張り出し寸法を少なくし、弁本体の大径化を抑えることができる。
【0100】
図17(b)に示すバネ部材17Eの爪板部17Ebは、外周部17Edから離間するにつれて径方向内側に延在し、その後は径方向外側に延在する。このように、爪板部17Ebを径方向内側にV字状に折れ曲がるように形成することにより、弁本体の大径化を抑えることができる。
【0101】
図17(c)に示すバネ部材17Fの爪板部17Fbは、外周部17Fdから離間するにつれて径方向外側に延在し、下端近傍においては、その後は外周部17Fdに向かうと共に径方向外側に延在する。このように、爪板部17Fbを径方向外側にV字状に折れ曲がるように形成することにより、爪板先端と弁本体の接触によるバネ部材17Fの意図しない変形や破損を防止できる。
【0102】
図17(d)に示すバネ部材17Gの爪板部17Gbは、外周部17Gdから離間するにつれて曲線を描くように径方向外側に延在している。爪板部17Gbを、上述した実施形態のように平面状とせず、円弧状に曲げて形成することにより、爪板先端と弁本体の接触によるバネ部材17Gの意図しない変形や破損を防止できる。なお、変形例1にかかる爪板部の形状については、第1実施形態~第3実施形態の爪板部にも同様に適用が可能である。
【0103】
[変形例2]
図18は、第4実施形態の別の変形例にかかるバネ部材17Hの斜視図である。
図18において、金属(例えばばね鋼材)製の板材から形成されるバネ部材17Hは、環状部17Haと、環状部17Haの外周に上端を連結した複数(ここでは4つ)の外周部17Hdと、各外周部17Hdの下端に連結された中間部17Heと、中間部17Heの端部に連結された爪板部17Hbとが連設されてなる。
【0104】
略矩形板状の外周部17Hdは、周方向に等間隔に配置されて、軸線方向に延在しており、中間部17Heは、径方向外方に短く(例えば環状部17Haの外径の1/10以下の長さで)延在している。中間部17Heの周方向端から周方向に沿って、中間部17Heと等幅の爪板部17Hbが円弧状に延在している。爪板部17Hbの長さは、爪板部17Hbの幅の5倍以上であると好ましい。外周部17Hd、中間部17He、及び爪板部17Hbは、それぞれ90度位相で共通の関係にある。
【0105】
バネ部材17Hの爪板部17Hbの先端が、例えば
図13に示す弁本体10Bの係止部12Beの上面に当接する。バネ部材17Hが上下方向に圧縮されたときに、爪板部17Hbは、中間部17Heとの接合部を支点として揺動するように弾性変形するため、爪板部17Hbの先端は、軸線Lからの距離がほとんど変化しない。このため、主弁体15Cの移動量に関わらず、係止部12Beから係脱しにくいバネ部材17Hを実現できる。さらに、径方向外側(軸線Lに対する径方向外側)への張り出し寸法を小さくできるため弁本体の大径化を抑えることができる。なお、本変形例にかかる中間部17He及び爪板部17Hbについては、第1実施形態~第3実施形態の爪板部と置換して適用が可能である。
【0106】
以上の実施形態において、爪板部の枚数を4枚としているが、3枚、あるいは5枚以上であってよい。また爪板部の形状は、矩形に限らず、例えば台形であってもよい。
【0107】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されない。本発明の範囲内において、上述の実施形態の任意の構成要素の変形が可能であり、また、上述の実施形態において任意の構成要素の追加または省略が可能である。例えば、バネ部材のバネ本体を、周方向の1か所が途切れていない完全な筒状体として、主弁体に圧入により取り付けるようにしてもよい。さらに、爪板部が当接する係止部として、弁本体の内周から環状に突出した例を示したが、代わりに爪板部が当接可能な周溝を弁本体の内周に設けて、係止部として用いてもよい。
【0108】
また、例えば電磁式アクチュエータ20に替えて、ネジ昇降機構を有するモータ式アクチュエータを用いてもよいし、また、ノーマルオープン式の電磁式アクチュエータを用いてもよい。
【符号の説明】
【0109】
1、1A、1B、1C パイロット式電磁弁
10、10B 弁本体
14、14B 弁座
15、15A、15B、15C 主弁体
16B 環状体
17、17A、17B、17C、17D、17E、17F、17G、17H バネ部材
18 ストッパ
20 電磁式アクチュエータ
22 コイルユニット
30、30B プランジャ
35、35B パイロット弁体
CA 弁室
CD 背圧室