(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】有機エレクトロルミネッセンス素子
(51)【国際特許分類】
H10K 50/155 20230101AFI20240401BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20240401BHJP
H10K 50/15 20230101ALI20240401BHJP
H10K 85/60 20230101ALI20240401BHJP
H10K 101/40 20230101ALN20240401BHJP
H10K 101/30 20230101ALN20240401BHJP
【FI】
H10K50/155
H05B33/14 A
H05B33/22 D
H10K85/60
H10K101:40
H10K101:30
(21)【出願番号】P 2022110577
(22)【出願日】2022-07-08
【審査請求日】2022-07-08
(31)【優先権主張番号】202110771635.1
(32)【優先日】2021-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519333413
【氏名又は名称】北京夏禾科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】謝 夢▲蘭▼
(72)【発明者】
【氏名】▲クアン▼ 志遠
(72)【発明者】
【氏名】▲ホウ▼ 惠▲卿▼
(72)【発明者】
【氏名】崔 至皓
(72)【発明者】
【氏名】王 静
(72)【発明者】
【氏名】丁 華龍
(72)【発明者】
【氏名】夏 伝軍
【審査官】渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-538282(JP,A)
【文献】特表2012-527089(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0231602(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第112552270(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0088896(US,A1)
【文献】特開2021-090055(JP,A)
【文献】特開2021-070681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/15
H10K 50/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極、陰極、および陽極と陰極との間に設けられた有機層を含む有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記有機層には、第1有機材料および第2有機材料を含む第1有機層が含まれ、
前記第1有機材料のLUMOエネルギーレベルがLUMO
第1有機材料であり、前記第2有機材料のHOMOエネルギーレベルがHOMO
第2有機材料であり、且つ前記HOMO
第2有機材料≦-5.1eVであり、LUMO
第1有機材料-HOMO
第2有機材料≧
0.33eVであり、
前記第1有機層の導電率≧
10*10
-5S/mであ
り、
前記第1有機材料は、式1~式3のうちの1つで表される構造を有する、
有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化1】
(式1、式2または式3中、
Eは、出現毎に同一または異なってNまたはCR
1から選ばれ、
Xは、出現毎に同一または異なってNR’、CR’’R’’’、O、SまたはSeからなる群から選ばれ、
環Aは、出現毎に同一または異なって1つの環内二重結合、少なくとも1つのN原子および少なくとも1つのQを含む5員ヘテロ環であり、
Qは、出現毎に同一または異なってO、S、SeおよびNR
Nからなる群から選ばれ、
Rは、出現毎に同一または異なって一置換、複数置換または無置換を表し、
R、R
1、R’、R’’、R’’’、R
Nは、出現毎に同一または異なって水素、重水素、ハロゲン、ニトロソ基、ニトロ基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、シアノ基、イソシアノ基、SCN、OCN、SF
5、ボラニル基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスホノキシ基、ヒドロキシ基、スルファニル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のヘテロアルキル基、置換または非置換の環原子数3~20のヘテロ環基、置換または非置換の炭素原子数7~30のアラルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルコキシ基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリールオキシ基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルケニル基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルキニル基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルシリル基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールシリル基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルゲルマニウム基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールゲルマニウム基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれ、
置換基R、R
1、R’、R’’およびR’’’のうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの電子求引性基を有する基であり、
隣り合う置換基R、R’、R’’、R’’’は、結合して環を形成していてもよい。)
【請求項2】
陽極、陰極、および陽極と陰極との間に設けられた有機層を含む
、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記有機層には、第1有機材料および第2有機材料を含む第1有機層が含まれ、
前記第1有機材料のLUMOエネルギーレベルがLUMO
第1有機材料であり、前記第2有機材料のHOMOエネルギーレベルがHOMO
第2有機材料であり、
且つ前記HOMO
第2有機材料
≦-5.1eVであり、前記LUMO
第1有機材料-HOMO
第2有機材料≧
0.33eVであり、前記第1有機層の導電率≧
10*10
-5S/mであり、
前記第2有機材料は、モノアリールアミン化合物であり、且つ式Hで表される構造を有する、有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化2】
(式H中、
Ar
1、Ar
2およびAr
3は、出現毎に同一または異なって置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、或いは、置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基から選ばれ、
Ar
1、Ar
2およびAr
3が出現毎に同一または異なって置換の炭素原子数6~30のアリール基、または置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基から選ばれる場合、前記アリール基またはヘテロアリール基は、重水素、ハロゲン、非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、非置換の炭素原子数1~20のヘテロアルキル基、非置換の環原子数3~20のヘテロ環基、非置換の炭素原子数7~30のアラルキル基、非置換の炭素原子数1~20のアルコキシ基、非置換の炭素原子数6~30のアリールオキシ基、非置換の炭素原子数2~20のアルケニル基、非置換の炭素原子数2~20のアルキニル基、非置換の炭素原子数6~30のアリール基、非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基、非置換の炭素原子数3~20のアルキルシリル基、非置換の炭素原子数6~20のアリールシリル基、非置換の炭素原子数3~20のアルキルゲルマニウム基、非置換の炭素原子数6~20のアリールゲルマニウム基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、シアノ基、イソシアノ基、ヒドロキシル基、スルファニル基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスフィノ基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれる1つまたは複数の基で置換され、
隣り合う置換基Ar
1、Ar
2およびAr
3は、結合して環を形成していてもよい。)
【請求項3】
LUMO
第1有機材料-HOMO
第2有機材料≧0.4eVである、請求項1または2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
LUMO
第1有機材料-HOMO
第2有機材料≧0.45eVである、請求項1または2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
前記HOMO
第2有機材料≦-5.13eVである、請求項1または2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
前記第1有機層の導電率が
30*10
-5S/m以上である、請求項1または2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
前記第1有機材料の第1有機層に対する重量比が0.1%~90%である、請求項1または2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
前記第1有機層の厚さが1~30nmである、請求項1または2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項9】
前記有機エレクトロルミネッセンス素子は、第2有機材料を含む第2有機層をさらに含み、
前記第2有機層の厚さが10~200nmである、請求項1または2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項10】
前記第1有機層が陽極に直接接触する、請求項1または2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項11】
前記第1有機材料は、式1または式3のうちの1つで表される構造を有する、請求項1
または2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【化3】
(式1、または式3中、
Xは、出現毎に同一または異なってNR’、CR’’R’’’、O、SまたはSeからなる群から選ばれ、
環Aは、出現毎に同一または異なって1つの環内二重結合、少なくとも1つのN原子および少なくとも1つのQを含む5員ヘテロ環であり、
Qは、出現毎に同一または異なってO、S、SeおよびNR
Nからなる群から選ばれ、
Rは、出現毎に同一または異なって一置換、複数置換または無置換を表し、
R、R’、R’’、R’’’、R
Nは、出現毎に同一または異なって水素、重水素、ハロゲン、ニトロソ基、ニトロ基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、シアノ基、イソシアノ基、SCN、OCN、SF
5、ボラニル基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスホノキシ基、ヒドロキシ基、スルファニル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のヘテロアルキル基、置換または非置換の環原子数3~20のヘテロ環基、置換または非置換の炭素原子数7~30のアラルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルコキシ基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリールオキシ基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルケニル基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルキニル基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルシリル基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールシリル基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルゲルマニウム基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールゲルマニウム基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれ、
置換基R、R’、R’’およびR’’’のうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの電子求引性基を有する基であり、
隣り合う置換基R、R’、R’’、R’’’は、結合して環を形成していてもよい。)
【請求項12】
前記Xは、出現毎に同一または異なってCR’’R’’’またはNR’から選ばれ、且つR’、R’’およびR’’’は、それぞれ、少なくとも1つの電子求引性基を有する基である、請求項11に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項13】
前記Xは、出現毎に同一または異なって
【化4】
からなる群から選ばれる、請求項
11に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項14】
前記Qは、出現毎に同一または異なってOまたはSから選ばれる、請求項
11に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項15】
前記Rは、出現毎に同一または異なって、水素、重水素、ハロゲン、ニトロソ基、ニトロ基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、シアノ基、イソシアノ基、SCN、OCN、SF
5、ボラニル基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスホノキシ基、非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、非置換の炭素原子数1~20のアルコキシ基、非置換の炭素原子数2~20のアルケニル基、非置換の炭素原子数6~30のアリール基、非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基、およびハロゲン、ニトロソ基、ニトロ基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、シアノ基、イソシアノ基、SCN、OCN、SF
5、ボラニル基、スルフィニル基、スルホニル基およびホスホノキシ基のうちの1つまたは複数で置換された、炭素原子数1~20のアルキル基、環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、炭素原子数1~20のアルコキシ基、炭素原子数2~20のアルケニル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数3~30のヘテロアリール基、並びにこれらの組合せからなる群から選ばれる、請求項
11に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項16】
前記Rは、出現毎に同一または異なって水素、重水素、メチル基、イソプロピル基、NO
2、SO
2CH
3、SCF
3、C
2F
5、OC
2F
5、OCH
3、ジフェニルメチルシリル基、フェニル基、メトキシフェニル基、p-メチルフェニル基、2、6-ジイソプロピルフェニル基、ビフェニル基、ポリフルオロフェニル基、ジフルオロピリジル基、ニトロフェニル基、ジメチルチアゾール基、CNまたはCF
3のうちの1つまたは複数で置換されたビニル基、CNまたはCF
3のうちの1つで置換されたエチニル基、ジメチルホスホノキシ基、ジフェニルホスホノキシ基、F、CF
3、OCF
3、SF
5、SO
2CF
3、シアノ基、イソシアノ基、SCN、OCN、トリフルオロメチルフェニル基、トリフルオロメトキシフェニル基、ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、ビス(トリフルオロメトキシ)フェニル基、4-シアノテトラフルオロフェニル基、F、CNまたはCF
3のうちの1つまたは複数で置換されたフェニル基またはビフェニル基、テトラフルオロピリジン基、ピリミジン基、トリアジン基、ジフェニルボラニル基、オキサボランアントリル基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれる、請求項
11に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電子素子、たとえば有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。特に、特定のエネルギーレベル要求を満たす第1有機材料および第2有機材料を含み、且つ導電率≧3*10-5S/mである第1有機層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電子素子は、有機発光ダイオード(OLEDs)、有機電界効果トランジスタ(O-FETs)、有機発光トランジスタ(OLETs)、有機起電セル(OPVs)、色素-増感太陽電池(DSSCs)、有機光検出器、有機感光装置、有機電界効果素子(OFQDs)、発光電気化学セル(LECs)、有機レーザダイオードおよび有機プラズマ発光素子を含むが、それに限定されない。
【0003】
有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)は、陰極、陽極、および陰極と陽極との間に設けられた一連の有機発光材料により堆積されて構成されている。素子の陰極および陽極に電圧を印加することにより、電気エネルギーを光に変換することができ、広角が広く、コントラストが高く、応答時間がより速いなどの利点を有する。イーストマンコダック(Eastman Kodak)のTangおよびVan Slykeにより、1987年にて、有機発光素子、アリールアミン正孔輸送層およびトリス-8-ヒドロキシキノリン-アルミニウム層を電子輸送層および発光層として用いることが報道されている(Applied Physics Letters、1987、51(12):913-915)。素子の両端に電圧を印加した後、緑色光を素子から発射するという発明は、現代の有機発光ダイオード(OLEDs)の発展のために基礎を築き上げている。最も先進的なOLEDsは、電荷注入・輸送層、電荷・励起子ブロッキング層、および陰極と陽極との間に設けられた1つまたは複数の発光層などの複数の層を含んでもよい。OLEDsは、自発光性ソリッドステート素子であるので、表示および照明の適用に対して極めて大きな潜在力を提供している。また、有機材料の固有な特性、例えばそれらの可撓性は、可撓性基板で行った製造などの特殊な適用に非常に適合するようになっている。OLEDは、コストが低く、エネルギー消費が低く、輝度が高く、視角が広く、厚さが薄いなどの利点を有し、数十年の発展を経験して、すでに表示および照明の分野において広く使用されている。
【0004】
OLEDは、その発光メカニズムに応じて、3種の異なるタイプに分けられている。Tangおよびvan Slykeにより発明されたOLEDは、蛍光OLEDであり、一重項発光のみを使用する。素子において生成した三重項が非輻射減衰通路により浪費され、蛍光OLEDの内部量子効率(IQE)が25%に過ぎないため、この制限はOLEDの商業化を妨害している。1997年、ForrestおよびThompsonにより、錯体含有重金属からの三重項発光を発光体として用いるりん光OLEDが報道されている。そのため、一重項および三重項を収穫し、100%のIQEを実現することができる。その効率が高いため、りん光OLEDの発見および発展は、直接的にアクティブマトリクスOLED(AMOLED)の商業化に貢献する。最近、Adachiは、有機化合物の熱活性化遅延蛍光(TADF)によって高効率を実現している。これらの発光体は、小さい一重項-三重項ギャップを有するため、励起子が三重項から一重項に戻るトランジションが可能となる。TADF素子において、三重項励起子がリバースシステム間で貫通すること(逆項間交差)によって一重項励起子を生成することに起因してIQEが高くなっている。
【0005】
OLEDsは、さらに、所用材料の形態に応じて、小分子とポリマーOLEDに分けられてもよい。小分子とは、ポリマーではない、有機または有機金属のいずれかの材料を指し、精確な構造を有すれば、小分子の分子量が大きくてもよい。明確な構造を有するデンドリマーは、小分子と認められている。ポリマーOLEDは、共役ポリマーと、側鎖の発光基を有する非共役ポリマーとを含む。製造過程において後重合を発生すると、小分子OLEDがポリマーOLEDになり得る。
【0006】
様々なOLEDの製造方法が公知されている。小分子OLEDは、一般的に、真空熱蒸発により製造されるものである。ポリマーOLEDは、例えばスピンコート、インクジェット印刷およびノズル印刷などの溶液法により製造されるものである。材料が溶剤に溶解または分散することが可能であれば、小分子OLEDも溶液法により製造されることができる。
【0007】
OLED素子は、一般的に、多層の積層された有機機能層により構成され、発光層(EML)を加えて、正孔注入層(HIL)、正孔輸送層(HTL)、電子ブロッキング層(EBL)、正孔ブロッキング層(HBL)、電子輸送層(ETL)、電子注入層(EIL)などの機能層をさらに含む。正孔注入層および電子注入層により、それぞれ正孔および電子が陽極と陰極から素子に注入され、この2種類のキャリアが継続して輸送層を通して発光層に遷移するとともに、発光層において複合して励起子が形成され、励起子が励起状態から基底状態に戻る過程中で発射することで、発光を実現する。
【0008】
電子、正孔の有効な複合は、素子の発光量子効率に影響を与える1つの重要な要因である。現在、OLED素子のキャリアのバランスを向上させる方法は、主に、以下の3つの方向に分けられている。一は、適当な電子および正孔注入材料を用いて注入されたキャリアを平衡することである。二は、電子および正孔輸送材料を改良して、キャリアの有機輸送材料の輸送能力を変更することにより、平衡を達成することである。三は、素子の構造を改善することにより、キャリアの平衡を達成することである。従来のOLED素子における有機正孔輸送層材料(HTM)は、芳香族アミン化合物のものが多く、強い電子供給能力を有するため、良好な正孔注入を実現することができる。電子の注入および輸送の一方側において選択可能な有機材料の種類が少ない。陰極および陽極から注入された電子および正孔の濃度が同様であるとすれば、材料自身の性能の相違により、OLED構造における正孔移動度(10-6~10-4cm2/Vs)が電子移動度(10-5~10-3cm2/Vs)よりも1~3桁高くなる、即ち発光層に輸送される正孔の濃度が遥かに電子の濃度よりも大きくなることに起因して、キャリアの濃度が不平衡になってしまう。キャリアの不平衡は、キャリアが膜層の界面で蓄積し、発熱することを引き起こしやすく、素子の老化を加速させ、耐用年数を低減させるだけでなく、励起子の複合確率を低下させて、素子の効率を低下させる恐れがある。そのため、正孔が発光領域に達することを効果的に緩和することは、素子の効率を向上させるための1つの効果的な手段である。
【0009】
正孔注入能力を調節するために、M.A.Abkowitzらは、論文(J.Phys.Chem.B 2000、104、3948-3952)において、ITOから正孔輸送層NPBへの正孔注入能力、およびITOとNPBとの間に厚さの異なる1層のCuPcが設けられた後の正孔注入能力を検討し比較した。CuPcの導入により素子の正孔注入能力が弱くなるが、対応する素子の効率が顕著して向上しながら、素子の電圧も向上することが発見されている。M.A.Abkowitzらは、正孔注入能力の低減によりキャリアをより良く平衡させ、つまり発光領域に達する正孔の数が相対的に低減するため、素子の効率を向上させると考えている。しかし、正孔注入を阻害するCuPcを用いて正孔注入の効率を抑制するため、素子の効率が向上されるが、素子の電圧の急激な向上も引き起こしてしまう。実際使用において、電圧が高すぎると、素子の消費電力が向上され、製造過程が複雑になる場合がある。
【0010】
従来のOLED素子における正孔注入層(HIL)は、一般的に、正孔輸送材料(HTM)を用いて、適量のP型導電性ドープ材料(PD)をドーピングして正孔注入能力を調節することにより、陽極とHIL層との間のオーム接触を実現する。HILの導電率は、ある程度で正孔注入能力の強さを反映することができる。通常、適当なp型導電性ドープ材料を用いて、そのドーピング割合を調節することにより、薄膜の導電率を制御し、HILの正孔注入能力を調節することができる。よく用いられるp型導電性ドープ材料は、有機材料である。たとえば、TWI330047では、p型ドーピングされたHILの導電率の範囲が10-6~1S/mであるHTM:PD組合せが開示されている。しかし、現在の検討において、p型導電性ドープ材料のLUMOエネルギーレベルと正孔輸送材料のHOMOエネルギーレベルとの差が小さいので、低いドーピング濃度(たとえば1~3wt%)の条件下で、導電率が高いHILを取得することができる。高すぎる導電率が正孔と電子のアンバランスを悪化させやすく、素子の性能の向上に不利である一方、用量がより低いp型ドーパンドが素子の製造過程で精確に制御されにくく、さらにHILの導電率が調節・制御されにくい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【文献】Applied Physics Letters、1987、51(12):913-915
【文献】J.Phys.Chem.B 2000、104、3948-3952
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、少なくとも一部の上述した問題を解決するために、新規な有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することを目的とする。前記新規な有機エレクトロルミネッセンス素子は、陽極、陰極、および陽極と陰極との間に設けられた有機層を含む。前記有機層には、特定のエネルギーレベル要求を満たす第1有機材料および第2有機材料を含み、且つ導電率≧3*10-5S/mである第1有機層が含まれる。前記新規な有機エレクトロルミネッセンス素子は、正孔注入能力を効果的に調節・制御することにより、素子の総合的な性能を効果的に向上させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施例によれば、陽極、陰極、および陽極と陰極との間に設けられた有機層を含む有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記有機層には、第1有機材料および第2有機材料を含む第1有機層が含まれ、
前記第1有機材料のLUMOエネルギーレベルがLUMO第1有機材料であり、前記第2有機材料のHOMOエネルギーレベルがHOMO第2有機材料であり、且つ前記HOMO第2有機材料≦-5.1eVであり、LUMO第1有機材料-HOMO第2有機材料≧0.3eVであり、
前記第1有機層の導電率≧3*10-5S/mである、有機エレクトロルミネッセンス素子が開示される。
【0014】
本発明の他の実施例によれば、
陽極、陰極、および陽極と陰極との間に設けられた有機層を含む有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記有機層には、第1有機材料および第2有機材料を含む第1有機層が含まれ、
前記第1有機材料のLUMOエネルギーレベルがLUMO
第1有機材料であり、前記第2有機材料のHOMOエネルギーレベルがHOMO
第2有機材料であり、且つ前記LUMO
第1有機材料-HOMO
第2有機材料≧0.3eVであり、前記第1有機層の導電率≧3*10
-5S/mであり、
前記第2有機材料は、式Hで表される構造を有する、有機エレクトロルミネッセンス素子がさらに開示される。
【化1】
(式H中、
Ar
1、Ar
2およびAr
3は、出現毎に同一または異なって置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、或いは、置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基から選ばれ、
Ar
1、Ar
2およびAr
3が出現毎に同一または異なって置換の炭素原子数6~30のアリール基、または置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基から選ばれる場合、前記アリール基またはヘテロアリール基は、重水素、ハロゲン、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のヘテロアルキル基、置換または非置換の環原子数3~20のヘテロ環基、置換または非置換の炭素原子数7~30のアラルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルコキシ基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリールオキシ基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルケニル基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルキニル基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルシリル基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールシリル基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルゲルマニウム基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールゲルマニウム基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、シアノ基、イソシアノ基、ヒドロキシル基、スルファニル基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスフィノ基、およびこれらの組合せからなる群からら選ばれる1つまたは複数の基で置換され、
隣り合う置換基Ar
1、Ar
2およびAr
3は、結合して環を形成していてもよい。)
【0015】
本発明の他の実施例によれば、陽極、陰極、および陽極と陰極との間に設けられた有機層を含む第1有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記有機層には、陽極に直接接触する第1有機層が含まれ、前記第1有機層は、第1有機材料および第2有機材料を含み、
前記第1有機層の導電率≧3*10-5S/mであり、
前記第1有機エレクトロルミネッセンス素子の同じ電流密度下での効率電圧比ηが、第2有機エレクトロルミネッセンス素子のηの104%以上であり、
ただし、前記η=EQE/(電圧*ξ)であり、ξは、量子力学における発射許可な励起子の割合であり、
前記第2有機エレクトロルミネッセンス素子において、陽極に直接接触した有機層が第3有機材料および第4有機材料を含む第3有機層である以外、前記第2有機エレクトロルミネッセンス素子の構造が前記第1有機エレクトロルミネッセンス素子と同様であり、前記第1有機材料と前記第3有機材料、前記第2有機材料と前記第4有機材料の2グループの材料のうちの少なくとも1グループの材料が同様であり、
且つ前記第2有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記第3有機層が、下記の条件の1つを少なくとも満たす、第1有機エレクトロルミネッセンス素子がさらに開示される。
1)前記第4有機材料のHOMOエネルギーレベルがHOMO第4有機材料であり、且つHOMO第4有機材料>-5.1eVであり、
2)前記第3有機材料のLUMOエネルギーレベルがLUMO第3有機材料であり、前記第4有機材料のHOMOエネルギーレベルがHOMO第4有機材料であり、LUMO第3有機材料-HOMO第4有機材料<0.3eVであり、
3)前記第3有機層の導電率が3*10-5S/m未満である。
【0016】
本発明に係る新規な有機エレクトロルミネッセンス素子は、陽極、陰極、および陽極と陰極との間に設けられた有機層を含む。前記有機層には、特定のエネルギーレベル要求を満たす第1有機材料および第2有機材料を含み、且つ導電率≧3*10-5S/mである第1有機層が含まれる。前記新規な有機エレクトロルミネッセンス素子は、正孔注入能力を効果的に調節・制御することにより、素子の総合的な性能を効果的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子を含んでもよい有機発光装置の模式図である。
【
図2】本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子を含んでもよいほかの有機発光装置の模式図である。
【
図3】化合物1-2および化合物HT-7からなる有機薄膜の導電率が化合物1-2のドーピング割合に従って変化するトレンドグラフである。
【
図4】化合物3-2および化合物HT-7からなる有機薄膜の導電率が化合物3-2のドーピング割合に従って変化するトレンドグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
OLEDは、ガラス、プラスチック、および金属などの様々な基板で製造することができる。
図1は、有機発光装置100を例示的に制限せずに示している。図面に対して、必ずしも縮尺どおりに製作するわけではなく、図において、必要に応じて一部の層構造を省略してもよい。装置100には、基板101、陽極110、正孔注入層120、正孔輸送層130、電子ブロッキング層140、発光層150、正孔ブロッキング層160、電子輸送層170、電子注入層180および陰極190が含まれてもよい。装置100は、記載される層を順に堆積することにより製造されてもよい。各層の性質、機能および例示的な材料については、米国特許US7279704B2の第6~10欄においてより詳細に記載されており、そのすべての内容を本明細書に援用する。
【0019】
これらの層のそれぞれには、より多くの実例がある。例示的には、全文を援用するように組み込まれた米国特許第5844363号において、可撓性で透明な基板-陽極の組合せが開示されている。例えば、全文を援用するように組み込まれた米国特許出願公開第2003/0230980号において、p型ドープの正孔輸送層の実例は50:1のモル比でF4-TCNQがドーピングされたm-MTDATAであることが開示されている。全文を援用するように組み込まれた、トンプソン(Thompson)らによる米国特許第6303238号において、ホスト材料の実例が開示されている。例えば、全文を援用するように組み込まれた米国特許出願公開第2003/0230980号において、n型ドープの電子輸送層の実例は1:1のモル比でLiがドーピングされたBPhenであることが開示されている。全文を援用するように組み込まれた米国特許第5703436号および第5707745号において、例えばMg:Agなどの金属薄層と、その上に被覆された、スパッタ堆積された透明な導電ITO層とを有する複合陰極を含む陰極の実例が開示されている。全文を援用するように組み込まれた米国特許第6097147号および米国特許出願公開第2003/0230980号において、より詳細に、ブロッキング層の原理と使用が記載されている。全文を援用するように組み込まれた米国特許出願公開第2004/0174116号において注入層の実例が提供されている。全文を援用するように組み込まれた米国特許出願公開第2004/0174116号において、保護層が記載されている。
【0020】
非限定的な実施例により上述した分層構造が提供される。上述した各種の層を組み合わせることによってOLEDの機能が実現することができ、或いは、一部の層を完全に省略することができる。それは、明確に記載されていない他の層を含んでもよい。それぞれの層内に、最適な性能を実現するように、単一の材料または多種の材料の混合物を使用することができる。機能層はいずれも、複数なサブ層を含んでもよく、例えば、発光層は、所望の発光スペクトルを実現するように、2層の異なる発光材料を有してもよい。
【0021】
一実施例において、OLEDは、陰極と陽極との間に設けられた「有機層」を有すると記載されてもよい。当該有機層は、1つまたは複数の層を含んでもよい。
【0022】
OLEDにもカプセル化層が必要であり、
図2に示すように、有機発光装置200が例示的に制限せずに示されている。
図1との相違点は、水分および酸素などの外界からの有害物質を防止するように、陰極190上にカプセル化層102を含んでもよい。ガラス、または有機-無機混合層などのカプセル化機能を提供可能ないかなる材料も、カプセル化層として用いられてもよい。カプセル化層は、OLED素子の外部に、直接または間接的に配置されるべきである。多層薄膜カプセル化については、米国特許US7968146B2において記載されており、そのすべての内容を本明細書に援用する。
【0023】
本発明の実施例により製造される素子は、当該素子の1つまたは複数の電子部材モジュール(或いは、ユニット)を有する各種の消費製品に組み込まれてもよい。これらの消費製品は、例えば、フラットパネルディスプレイ、モニタ、医療用モニタ、テレビ、ビルボード、室内または室外用照明ランプおよび/または信号ランプ、ヘッドアップディスプレイ、全部または一部透明のディスプレイ、可撓性ディスプレイ、スマートフォン、フラットパネルコンピューター、フラットパネル携帯電話、ウェアラブル素子、スマートウォッチ、ラップトップコンピューター、デジタルカメラ、携帯型ビデオカメラ、ファインダー、マイクロディスプレイ、3-Dディスプレイ、車載ディスプレイおよびテールライトを含む。
【0024】
本明細書に記載される材料および構造は、上述にて列挙されている他の有機電子素子にも用いられてもよい。
【0025】
「頂部」とは、基板から最も遠く、「底部」とは、基板から最も近いことを意味する。第1層が第2層「上」に設けられていると記載されている場合、第1層が基板から相対的に遠いように設けられている。第1層が第2層「と」「接触する」ことを規定していない限り、第1層と第2層との間に他の層が存在してもよい。例示的には、陰極と陽極との間に各種の有機層が存在しても、依然として、陰極が陽極「上」に設けられていると記載されることができる。
【0026】
「溶液が処理可能である」とは、溶液または懸濁液の形態で液体媒体に溶解、分散または輸送可能であり、および/または液体媒体から堆積可能であることを意味する。
【0027】
配位子は、直接的に発射材料の感光性質を促成すると、「感光性」と呼ばれてもよいことが信じられている。配位子は、発射材料の感光性質を促成しないと、「補助性」と呼ばれてもよい。しかし、補助性の配位子は、感光性配位子の性質を変更することができることが信じられている。
【0028】
蛍光OLEDの内部量子効率(IQE)は、遅延蛍光の存在によって25%のスピン統計による制限を超えてもよいことが信じられている。遅延蛍光は、一般的に2つのタイプ、すなわちP型遅延蛍光およびE型遅延蛍光に分けられてもよい。P型遅延蛍光は、三重項-三重項消滅(TTA)により生成される。
【0029】
一方、E型遅延蛍光は、2つの三重項の衝突ではなく、三重項と一重項との励起状態の変換に依存する。E型遅延蛍光を生成可能な化合物は、エネルギー状態の変換を行うように、極めて小さい一重項-三重項ギャップを有することが必要である。熱エネルギーは、三重項から一重項までの遷移を活性化することができる。このようなタイプの遅延蛍光は、熱活性化遅延蛍光(TADF)とも呼ばれる。TADFの顕著な特徴は、遅延成分が温度の上昇と伴って向上することにある。リバースシステム(RISC)間の貫通(逆項間交差)の速度が十分に速いと、三重項からの非輻射減衰を最小化させ、バックフィルした一重項の励起状態の割合は75%に達することができる。一重項の合計割合は100%であってもよく、エレクトロによる励起子のスピン統計の25%をはるかに超えている。
【0030】
E型遅延蛍光の特徴は、励起複合物系または単一の化合物から見える。理論に限定されず、E型遅延蛍光は、発光材料が小さい一重項-三重項エネルギーギャップ(ΔES-T)を有する必要がある。有機非金属含有の供与体・受容体発光材料は、この点を実現する可能性がある。これらの材料の発射は、通常、供与体・受容体電荷遷移(CT)型発射であると特徴付けられる。これらの供与体・受容体型化合物において、HOMOとLUMOとの空間分離は、一般的に小さいΔES-Tを生成することになる。これらの状態は、CT状態を含んでもよい。通常、供与体・受容体発光材料は、電子供与体部分(例えば、アミン基またはカルバゾール誘導体)と電子受容体部分(例えば、N含有の六員芳香族環)を結合することにより構築される。
【0031】
本明細書において、有機材料のHOMOエネルギーレベル(最高被占分子軌道:highest occupied molecular orbital)およびLUMOエネルギーレベル(最低未占有分子軌道:lowest unoccupied molecular orbital)は、電気化学的サイクリックボルタンメトリーにより測定される。本明細書において、すべての「HOMOエネルギーレベル」、「LUMOエネルギーレベル」は、いずれも負値で表され、数値が小さいほど(すなわち絶対値が大きいほど)、エネルギーレベルが深くなることを示す。本明細書において、エネルギーレベルがある値よりも小さいという記述は、エネルギーレベルが数値的にこの値よりも小さい、すなわちよりマイナスな値を有することを示す。たとえば、本明細書において「第2有機材料のHOMOエネルギーレベル≦-5.1eVである」とは、第2有機材料のHOMOエネルギーレベルが数値的に-5.1eVであるか、または-5.1eVよりもマイナス、たとえば、第2有機材料のHOMOエネルギーレベルが-5.13eVであることを示す。本明細書において、第1有機材料(p型導電性ドープ材料、PD)のLUMOと第2有機材料(正孔輸送材料、HTM)のHOMOとのエネルギーレベル差は、LUMOPD-HOMOHTMと定義される。通常、輸送材料のHOMOエネルギーレベルがより深いので、この差は、正の値である。
【0032】
本明細書において、HILおよび/またはHTLにおけるHTMのHOMOエネルギーレベル≦-5.1eVの場合のみに予期可能な効果を有する。OLED素子において、通常、ホスト材料のHOMOエネルギーレベルが-5.4eVであるか、またはより深いので、ホスト材料とよく組み合わせるために、HTMのHOMOエネルギーレベルを深くする必要がある。また、その構造に限定されるので、現在、既存のHTMのHOMOエネルギーレベルは、一般的に-5.9eVを下回らず、すなわち-5.9eV以上である。
【0033】
用語「正孔注入能力」とは、素子において、正孔が陽極から有機層に注入される効率を指し、導電率により判断される。
【0034】
用語「導電率」とは、測定待ちのサンプル材料を、高真空中(たとえば、10-6Torr)で、一定のドーピング割合で共蒸着により、アルミニウム電極が予め製造されたテスト基板に蒸着し、厚さ100nm、長さ6mm、幅1mmのテスト待ち領域を形成し、室温下で、電極に電圧を印加して電流を測定する方法により、該領域の抵抗値を得、さらに、オームの法則および幾何学的寸法に基づき所定の薄膜の導電率を算出することを指す。なお、HTMおよびPDの材料をそのまま維持しても、即ちエネルギーレベル差が変化しなくても、ドーピング割合を調節することにより、ある程度で正孔注入能力を調節することができる。有機半導体薄膜の導電率と、薄膜形成用の材料およびドーピング割合とが直接関係があるので、構造が確定された2種または複数種の有機材料によりある一定のドーピング割合で形成された有機薄膜に対しては、その導電率が確定されたものである。本願の検討において、構造が確定された第1有機材料および第2有機材料により一定のドーピング割合で形成された有機層の導電率は、いずれも上述した方法により測定される。
【0035】
用語「ドーピング割合」とは、有機薄膜のうちの1種の材料の、薄膜の合計質量に対する百分比を指す。
【0036】
図3は、化合物1-2および化合物HT-7からなる有機薄膜の導電率が化合物1-2のドーピング割合に従って変化するトレンドグラフを示す。化合物1-2のLUMOエネルギーレベルとHT-7のHOMOエネルギーレベルとの差が0.5eVであり、化合物1-2のドーピング割合の向上に従って得た有機層の導電率が向上する。化合物1-2のドーピング割合が0%の場合、得た有機層の導電率が8.1*10
-6S/mであり、化合物1-2のドーピング割合が3%の場合、得た有機層の導電率が2.4*10
-5S/mであり、化合物1-2のドーピング割合が20%の場合、得た有機層の導電率が8.9*10
-4S/mであり、化合物1-2のドーピング割合が25%の場合、得た有機層の導電率が9.2*10
-4S/mである。化合物1-2のドーピング割合が20%~25%に達した場合、得た有機層の導電率が大体安定し、ドーピングされていない場合の導電率よりも2桁向上することを分かることができる。化合物1-2のドーピング割合を調節することにより、得た有機層の導電率を効果的に調節して、得た有機層の導電率≧3*10
-5S/mとなることができる。
【0037】
図4は、化合物3-2および化合物HT-7からなる有機薄膜の導電率が化合物3-2のドーピング割合に従って変化するトレンドグラフを示す。化合物3-2のLUMOエネルギーレベルとHT-7のHOMOエネルギーレベルとの差が0.33eVであり、化合物3-2のドーピング割合の向上に従って、得た有機層の導電率が向上する。化合物3-2のドーピング割合が2%の場合、得た有機層の導電率が2.6*10
-5S/mであり、化合物3-2のドーピング割合が3%の場合、得た有機層の導電率が8.0*10
-5S/mであり、化合物3-2のドーピング割合が5%の場合、得た有機層の導電率が3.9*10
-4S/mである。同様に、化合物3-2のドーピング割合を調節することにより、得た有機層の導電率を効果的に調節して、得た有機層の導電率≧3*10
-5S/mとなることができる。
【0038】
一般的に言えば、OLED素子において、HILにおけるp型導電性ドープ材料(PD)のドーピング割合の向上に従って、HILの導電率が向上するが、OLED素子に対しては、導電率の範囲が3*10-5S/m~1*10-2S/mにあればよい。導電率が低すぎると、正孔の注入に影響を与えて、素子の電圧が向上することで、消費電力を向上させる。導電率が高すぎると、ディスプレイにおいて横クロストーク効果を引き起こしやすい。そして、導電率が高すぎるとは、往々にしてPDのドーピング濃度が高すぎることを意味し、この際に、キャリアの蓄積が発生して素子の耐用年数が低下するとともに、素子の製造コストが大幅に向上する恐れがある。
【0039】
素子に順方向バイアスを印加した後、電流が素子を流れ始め、電圧が素子のスタート電圧に達した後、素子が発光し始める。そのため、同じ電流密度下での電圧が低いほど、素子の消費電力が小さくなることを意味する。
【0040】
OLED素子の「EQE(外部量子効率)」とは、観察方向において素子の表面から出射した光子の数と、電子が注入される数との比を指す。OLEDが電流により駆動されるものであるため(電子、正孔の注入後の再結合)、EQEは、ある程度でOLED発光メカニズムの良否を反映するために用いられる。注意すべきことに、高いEQEの一途を追求していることは業界の最初の選択ではなく、最も重要なのは、EQE、電圧、耐用年数などの複数種の要因により影響される素子の総合的な性能の良否を総合的に考慮することである。
【0041】
本明細書におけるOLED素子については、蘇州弗士達科学計器有限公司による型番FS-1000GA3の計器でI-V-L(電流-電圧-輝度)光電特性テストが行われる。素子のEQEについては、その内蔵された下記数式から算出される。
【数1】
【数2】
(ただし、LightingAreaは、素子の発光面積であり、Currentは、電流であり、電流は、Keithley2400により測定され、単位がアンペア(A)である。
Photorad(発射強度)は、380nm~780nm下で、1波長ごとの発射強度値に該波長を乗算して加算することにより得られ、発射強度は、分光計FS-1000GA3に内蔵された分光計により測定される。)
【0042】
置換基の専門用語の定義について
【0043】
ハロゲンまたはハロゲン化物とは、本明細書に用いられるように、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を含む。
【0044】
アルキル基とは、本明細書に用いられるように直鎖および分岐鎖のアルキル基を含む。アルキル基は、炭素原子数1~20のアルキル基であってもよく、炭素原子数1~12のアルキル基であることが好ましく、炭素原子数1~6のアルキル基であることがより好ましい。アルキル基の実例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル、n-ヘキサデシル、n-ヘプタデシル、n-オクタデシル、ネオペンチル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、1-ペンチルヘキシル、1-ブチルペンチル、1-ヘプチルオクチル、および3-メチルペンチルを含む。そのうち、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチルおよびn-ヘキサンであることが好ましい。また、アルキル基は、置換されていてもよい。
【0045】
シクロアルキル基とは、本明細書に用いられるように環状のアルキル基を含む。シクロアルキル基は、環炭素原子数3~20のシクロアルキル基であってもよく、炭素原子数4~10のシクロアルキル基であることが好ましい。シクロアルキル基の実例は、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4-メチルシクロヘキシル、4,4-ジメチルシクロヘキシル、1-アダマンチル、2-アダマンチル、1-ノルボルニル基、2-ノルボルニル基などを含む。そのうち、シクロペンチル、シクロヘキシル、4-メチルシクロヘキシル、4,4-ジメチルシクロヘキシルであることが好ましい。また、シクロアルキル基は、置換されていてもよい。
【0046】
ヘテロアルキル基とは、本明細書に用いられるように、アルキル鎖のうちの1つまたは複数の炭素が、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、リン原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子およびホウ素原子からなる群から選ばれるヘテロ原子で置換されてなる。ヘテロアルキル基は、炭素原子数1~20のヘテロアルキル基であってもよく、炭素原子数1~10のヘテロアルキル基であることが好ましく、炭素原子数1~6のヘテロアルキル基であることがより好ましい。ヘテロアルキル基の実例は、メトキシメチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、メチルチオメチル基、エチルチオメチル基、エチルチオエチル基、メトキシメトキシメチル基、エトキシメトキシメチル基、エトキシエトキシエチル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、メルカプトメチル基、メルカプトエチル基、メルカプトプロピル基、アミノメチル基、アミノエチル基、アミノプロピル基、ジメチルアミノメチル基、トリメチルゲルマニルメチル基、トリメチルゲルマニルエチル基、トリメチルゲルマニルイソプロピル基、ジメチルエチルゲルマニルメチル基、ジメチルイソプロピルゲルマニルメチル基、tert-ブチルジメチルゲルマニルメチル基、トリエチルゲルマニルメチル基、トリエチルゲルマニルエチル基、トリイソプロピルゲルマニルメチル基、トリイソプロピルゲルマニルエチル基、トリメチルシリルメチル基、トリメチルシリルエチル基、トリメチルシリルイソプロピル基、トリイソプロピルシリルメチル基、トリイソプロピルシリルエチル基を含む。また、ヘテロアルキル基は、置換されていてもよい。
【0047】
アルケニル基とは、本明細書に用いられるように、直鎖、分岐鎖および環状オレフィン基を含む。鎖状のアルケニル基は、炭素原子数2~20のアルケニル基であってもよく、炭素原子数2~10のアルケニル基であることが好ましい。アルケニル基の例は、ビニル基、プロピレン基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1,3-ブタジエニル基、1-メチルビニル基、スチリル基、2,2-ジフェニルビニル基、1,2-ジフェニルビニル基、1-メチルアリル基、1,1-ジメチルアリル基、2-メチルアリル基、1-フェニルアリル基、2-フェニルアリル基、3-フェニルアリル基、3,3-ジフェニルアリル基、1,2-ジメチルアリル基、1-フェニル-1-ブテニル基、3-フェニル-1-ブテニル基、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、シクロヘプタトリエニル基、シクロオクテニル基、シクロオクタテトラエニル基およびノルボルニルアルケニル基を含む。また、アルケニル基は、置換されていてもよい。
【0048】
アルキニル基とは、本明細書に用いられるように、直鎖のアルキニル基を含む。アルキニル基は、炭素原子数2~20のアルキニル基であってもよく、炭素原子数2~10のアルキニル基であることが好ましい。アルキニル基の実例は、エチニル基、プロピニル基、プロパルギル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1-ペンチニル基、2-ペンチニル基、3,3-ジメチル-1-ブチニル基、3-エチル-3-メチル-1-ペンチニル基、3,3-ジイソプロピル1-ペンチニル基、フェニルエチニル基、フェニルプロピニル基などを含む。そのうち、エチニル基、プロピニル基、プロパルギル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1-ペンチニル基、フェニルエチニル基であることが好ましい。また、アルキニル基は、置換されていてもよい。
【0049】
アリール基または芳香族基とは、本明細書に用いられるように、非縮合および縮合系を考慮する。アリール基は、炭素原子数6~30のアリール基であってもよく、炭素原子数6~20のアリール基であることが好ましく、炭素原子数6~12のアリール基であることがより好ましい。アリール基の例は、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、トリフェニレン、テトラフェニレン、ナフタレン、アントラセン、フェナレン、フェナントレン、フルオレン、ピレン、クリセン、ペリレン、およびアズレンを含み、フェニル、ビフェニル、ターフェニル、トリフェニレン、フルオレンおよびナフタレンであることが好ましい。非縮合アリール基の例は、フェニル、ビフェニル-2-イル、ビフェニル-3-イル、ビフェニル-4-イル、p-ターフェニル-4-イル、p-ターフェニル-3-イル、p-トリビフェニル-2-イル、m-ターフェニル-4-イル、m-ターフェニル-3-イル、m-ターフェニル-2-イル、o-トリル、m-トリル、p-トリル、p-(2-フェニルプロピル)フェニル、4’-メチルビフェニル、4’’-tert-ブチル-p-ターフェニル-4-イル、o-クミル、m-クミル、p-クミル、2,3-キシリル、3,4-キシリル、2,5-ジメチルフェニル、メシチレンおよびm-テトラフェニルを含む。また、アリール基は、置換されていてもよい。
【0050】
複素環基または複素環とは、本明細書に用いられるように、非芳香族の環状基を考慮する。非芳香族複素環基は、環原子数3~20の飽和複素環基および環原子数3~20の不飽和非芳香族複素環基を含み、そのうちの少なくとも1つの環原子は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、ケイ素原子、リン原子、ゲルマニウム原子およびホウ素原子からなる群から選ばれ、非芳香族複素環基は、環原子数3~7のものであることが好ましく、窒素、酸素、ケイ素または硫黄などの少なくとも1つのヘテロ原子を含む。非芳香族複素環基の実例は、オキシラニル、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ジオキソペンチル、ジオキサニル、アジリジニル、ジヒドロピロール、テトラヒドロピロリル、ピペリジニル、オキサゾリジニル、モルホリニル、ピペラジニル、オキサシクロヘプタトリエニル、チアシクロヘプタトリエニル、アザシクロヘプタトリエニルおよびテトラヒドロシロールを含む。また、複素環基は、置換されていてもよい。
【0051】
ヘテロアリール基とは、本明細書に用いられるように、ヘテロ原子数1~5の非縮合および縮合ヘテロ芳香族基を含んでもよく、そのうちの少なくとも1つのヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、ケイ素原子、リン原子、ゲルマニウム原子およびホウ素原子からなる群から選ばれる。イソアリール基とは、ヘテロアリール基も指す。ヘテロアリール基は、炭素原子数3~30のヘテロアリール基であってもよく、炭素原子数3~20のヘテロアリール基であることが好ましく、炭素原子数3~12のヘテロアリール基であることがより好ましい。好適なヘテロアリール基は、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ジベンゾセレノフェン、フラン、チオフェン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾセレノフェン、カルバゾール、インドロカルバゾール、ピリドインドール、ピロロピリジン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、オキサトリアゾール、ジオキサゾール、チアジアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、オキサジン、オキサチアジン、オキサジアジン、インドール、ベンズイミダゾール、インダゾール、インデノアジン、ベンゾオキサゾール、ベンズイソオキサゾール、ベンゾチアゾール、キノリン、イソキノリン、シンノリン、キナゾリン、キノキサリン、ナフチリジン、フタラジン、プテリジン、キサンテン、アクリジン、フェナジン、フェノチアジン、ベンゾフランピリジン、フランジピリジン、ベンゾチエノピリジン、チエノビピリジン、ベンゾセレノピリジン、およびセレンベンゾピリジンを含み、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ジベンゾセレノフェン、カルバゾール、インドロカルバゾール、イミダゾール、ピリジン、トリアジン、ベンズイミダゾール、1,2-アザボラン、1,3-アザボラン、1,4-アザボラン、ボラゾールおよびそのアザ類似物を含むことが好ましい。また、ヘテロアリール基は、置換されていてもよい。
【0052】
アルコキシ基とは、本明細書に用いられるように、-O-アルキル基、-O-シクロアルキル基、-O-ヘテロアルキル基または-O-複素環基で表される。アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロアルキル基および複素環基の例および好ましい例は、上記例と同様である。アルコキシ基は、炭素原子数1~20のアルコキシ基であってもよく、炭素原子数1~6のアルコキシ基であることが好ましい。アルコキシ基の例は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ、テトラヒドロフラニルオキシ、テトラヒドロピラニルオキシ、メトキシプロピルオキシ、エトキシエチルオキシ、メトキシメチルオキシおよびエトキシメチルオキシを含む。また、アルコキシ基は、置換されていてもよい。
【0053】
アリールオキシ基とは、本明細書に用いられるように、-O-アリール基または-O-ヘテロアリール基で表される。アリール基およびヘテロアリール基の例および好ましい例は、上記例と同様である。アリールオキシ基は、炭素原子数6~30のアリールオキシ基であってもよく、炭素原子数6~20のアリールオキシ基であることが好ましい。アリールオキシ基の例は、フェノキシおよびビフェノキシを含む。また、アリールオキシ基は、置換されていてもよい。
【0054】
アラルキル基とは、本明細書に用いられるように、アリール基で置換されたアルキル基を含む。アラルキル基は、炭素原子数7~30のアラルキル基であってもよく、炭素原子数7~20のアラルキル基であることが好ましく、炭素原子数7~13のアラルキル基であることがより好ましい。アラルキル基の例は、ベンジル、1-フェニルエチル、2-フェニルエチル、1-フェニルイソプロピル、2-フェニルイソプロピル、フェニル-tert-ブチル、α-ナフチルメチル、1-α-ナフチルエチル、2-α-ナフチルエチル、1-α-ナフチルイソプロピル、2-α-ナフチルイソプロピル、β-ナフチルメチル、1-β-ナフチル-エチル、2-β-ナフチル-エチル、1-β-ナフチルイソプロピル、2-β-ナフチルイソプロピル、p-メチルベンジル、m-メチルベンジル、o-メチルベンジル、p-クロロベンジル、m-クロロベンジル、o-クロロベンジル、p-ブロモベンジル、m-ブロモベンジル、o-ブロモベンジル、p-ヨードベンジル、m-ヨードベンジル、o-ヨードベンジル、p-ヒドロキシベンジル、m-ヒドロキシベンジル、o-ヒドロキシベンジル、p-アミノベンジル、m-アミノベンジル、o-アミノベンジル、p-ニトロベンジル、m-ニトロベンジル、o-ニトロベンジル、p-シアノベンジル、m-シアノベンジル、o-シアノベンジル、1-ヒドロキシ-2-フェニルイソプロピルおよび1-クロロ-2-フェニルイソプロピルを含む。そのうち、ベンジル、p-シアノベンジル、m-シアノベンジル、o-シアノベンジル、1-フェニルエチル、2-フェニルエチル、1-フェニルイソプロピルおよび2-フェニルイソプロピルであることが好ましい。また、アラルキル基は、置換されていてもよい。
【0055】
アルキルシリル基とは、本明細書に用いられるように、アルキル基で置換されたシリル基を含む。アルキルシリル基は、炭素原子数3~20のアルキルシリル基であってもよく、炭素原子数3~10のアルキルシリル基であることが好ましい。アルキルシリル基の例は、トリメチルシリル、トリエチルシリル、メチルジエチルシリル、エチルジメチルシリル、トリプロピルシリル、トリブチルシリル、トリイソプロピルシリル、メチルジイソプロピルシリル、ジメチルイソプロピルシリル、トリ-tert-ブチルシリコン、トリイソブチルシリル、ジメチル-tert-ブチルシリル、およびメチルジ-tert-ブチルシリルを含む。また、アルキルシリル基は、置換されていてもよい。
【0056】
アリールシリル基とは、本明細書に用いられるように、少なくとも1つのアリール基で置換されたシリル基を含む。アリールシリル基は、炭素原子数6~30のアリールシリル基であってもよく、炭素原子数8~20のアリールシリル基であることが好ましい。アリールシリル基の例は、トリフェニルシリル、フェニルジビフェニルシリル、ジフェニルビフェニルシリル、フェニルジエチルシリル、ジフェニルエチルシリル、フェニルジメチルシリル、ジフェニルメチルシリル、フェニルジイソプロピルシリル、ジフェニルイソプロピルシリル、ジフェニルブチルシリル、ジフェニルイソブチルシリル、ジフェニル-tert-ブチルシリルを含む。また、アリールシリル基は、置換されていてもよい。
【0057】
アルキルゲルマニウム基とは、本明細書に用いられるように、アルキル基で置換されたゲルマニウム基を含む。アルキルゲルマニウム基は、炭素原子数3~20のアルキルゲルマニウム基であってもよく、炭素原子数3~10のアルキルゲルマニウム基であることが好ましい。アルキルゲルマニウム基の例は、トリメチルゲルマニウム基、トリエチルゲルマニウム基、メチルジエチルゲルマニウム基、エチルジメチルゲルマニウム基、トリプロピルゲルマニウム基、トリブチルゲルマニウム基、トリイソプロピルゲルマニウム基、メチルジイソプロピルゲルマニウム基、ジメチルイソプロピルゲルマニウム基、トリ-tert-ブチルゲルマニウム基、トリイソブチルゲルマニウム基、ジメチル-tert-ブチルゲルマニウム基、メチルジ-tert-ブチルゲルマニウム基を含む。また、アルキルゲルマニウム基は、置換されていてもよい。
【0058】
アリールゲルマニウム基とは、本明細書に用いられるように、少なくとも1つのアリール基またはヘテロアリール基で置換されたゲルマニウム基を含む。アリールゲルマニウム基は、炭素原子数6~30のアリール基ゲルマニウム基であってもよく、炭素原子数8~20のアリールゲルマニウム基であることが好ましい。アリールゲルマニウム基の例は、トリフェニルゲルマニウム基、フェニルジビフェニルゲルマニウム基、ジフェニルビフェニルゲルマニウム基、フェニルジエチルゲルマニウム基、ジフェニルエチルゲルマニウム基、フェニルジメチルゲルマニウム基、ジフェニルメチルゲルマニウム基、フェニルジイソプロピルゲルマニウム基、ジフェニルイソプロピルゲルマニウム基、ジフェニルブチルゲルマニウム基、ジフェニルイソブチルゲルマニウム基、ジフェニル-tert-ブチルゲルマニウム基を含む。また、アリールゲルマニウム基は、置換されていてもよい。
【0059】
アザジベンゾフラン、アザジベンゾチオフェンなどにおける「アザ」とは、対応する芳香族フラグメントにおける1つまたは複数のC-H基が窒素原子に置換されることを指す。例えば、アザトリフェニレンは、ジベンゾ[f,h]キノキサリン、ジベンゾ[f,h]キノリン、および環系において2つ以上の窒素を有する他の類似物を含む。当業者であれば、上述したアザ誘導体の他の窒素類似物を容易に想到することができ、且つこれらの類似物は、すべて本明細書に記載される専門用語に含まれるものとして確定される。
【0060】
本発明において、特に断りのない限り、置換のアルキル基、置換のシクロアルキル基、置換のヘテロアルキル基、置換の複素環基、置換のアラルキル基、置換のアルコキシ基、置換のアリールオキシ基、置換のアルケニル基、置換のアルキニル基、置換のアリール基、置換のヘテロアリール基、置換のアルキルシリル基、置換のアリールシリル基、置換のアルキルゲルマニウム基、置換のアリールゲルマニウム基、置換のアミノ基、置換のアシル基、置換のカルボニル基、置換のカルボキシル基、置換のエステル基、置換のスルフィニル基、置換のスルホニル基、置換のホスフィノ基からなる群のうちのいずれかの用語を使用すると、アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロアルキル基、ヘテロシクリル基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルケニル基、アルキニル、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルシリル基、アリールシリル基、アミノ基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、スルフィニル基、スルホニル基、およびホスフィノ基のうちのいずれか1つの基が、重水素、ハロゲン、非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、非置換の炭素原子数1~20のヘテロアルキル基、非置換の環原子数3~20の複素環基、非置換の炭素原子数7~30のアラルキル基、非置換の炭素原子数1~20のアルコキシ基、非置換の炭素原子数6~30のアリールオキシ基、非置換の炭素原子数2~20のアルケニル基、非置換の炭素原子数2~20のアルキニル基、非置換の炭素原子数6~30のアリール基、非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基、非置換の炭素原子数3~20のアルキルシリル基、非置換の炭素原子数6~20のアリールシリル基、非置換の炭素原子数3~20のアルキルゲルマニウム基、非置換の炭素原子数6~20のアリールゲルマニウム基、非置換の炭素原子数0~20のアミノ基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、シアノ基、イソシアノ基、ヒドロキシル基、スルファニル基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスフィノ基およびこれらの組合せから選ばれる1つまたは複数により置換され得ることを意味する。
【0061】
分子フラグメントについて、置換基または他の形態で他の部分に結合させると記載する場合、フラグメント(例えば、フェニル基、フェニレン基、ナフチル基、ジベンゾフラニル基)であるか否か、或いは、分子全体(例えば、ベンゼン、ナフタレン、ジベンゾフラン)であるか否かにより、その名称を確定することができることを理解すべきである。本明細書に用いられるように、置換基の指定、或いはフラグメントの結合の異なる形態は、均等であると認められている。
【0062】
本明細書で言及される化合物において、水素原子が重水素で一部または全部置換されてもよい。他の原子、例えば炭素および窒素も、それらの他の安定した同位体で置換されてもよい。素子の効率および安定性を向上させるために、化合物において他の安定した同位体の置換が好ましい可能性がある。
【0063】
本明細書で言及される化合物において、複数置換とは、二重置換を含む、最も多くの使用可能な置換に達するまでの範囲を指す。本明細書で言及される化合物中のある置換基は、複数置換(二重置換、三重置換、四重置換などを含む)を意味すると、その置換基はその結合構造上の複数の利用可能な置換位置に存在してもよいことを意味し、複数の利用可能な置換位置にいずれも存在する当該置換基は、同じ構造であってもよいし、異なる構造であってもよい。
【0064】
本明細書で言及される化合物において、隣り合う置換基が結合して環を形成していてもよいように特に限定されない限り、前記化合物における隣り合う置換基は結合して環を形成することができない。本明細書で言及される化合物において、隣り合う置換基が結合して環を形成していてもよいことは、隣り合う置換基が結合して環を形成してもよい情況を含むだけでなく、隣り合う置換基が結合して環を形成しない情況を含む。隣り合う置換基が結合して環を形成していてもよい場合、形成される環は、単環または多環、および脂環、ヘテロ脂環、アリール環、またはヘテロアリール環であってもよい。このような記述において、隣り合う置換基は、同一の原子に結合された置換基、互いに直接結合する炭素原子に結合された置換基、または、さらに離れた炭素原子に結合された置換基を指してもよい。好ましくは、隣り合う置換基は、同一の炭素原子に結合された置換基および互いに直接結合する炭素原子に結合された置換基を指す。
【0065】
隣り合う置換基が結合して環を形成していてもよいという記述も、同一の炭素原子に結合された2つの置換基が化学結合により互いに結合して環を形成することを意味すると認められ、下記式で例示することができる。
【化2】
【0066】
隣り合う置換基が結合して環を形成していてもよいという記述も、互いに直接結合する炭素原子に結合された2つ置換基が化学結合により互いに結合して環を形成することを意味すると認められ、下記式で例示することができる。
【化3】
【0067】
隣り合う置換基が結合して環を形成していてもよいという記述も、さらに離れる炭素原子に結合された2つの置換基が化学結合により互いに結合して環を形成することを意味すると認められ、下記式で例示することができる。
【化4】
【0068】
また、隣り合う置換基が結合して環を形成していてもよいという記述も、互いに直接結合する炭素原子に結合された2つ置換基の一方が水素を表す場合に、第2置換基は水素原子が結合された位置に結合されて環を形成することを意味すると認められている。下記式で例示する。
【化5】
【0069】
本発明の一実施例によれば、
陽極、陰極、および陽極と陰極との間に設けられた有機層を含む有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記有機層には、第1有機材料および第2有機材料を含む第1有機層が含まれ、
前記第1有機材料のLUMOエネルギーレベルがLUMO第1有機材料であり、前記第2有機材料のHOMOエネルギーレベルがHOMO第2有機材料であり、且つ前記HOMO第2有機材料≦-5.1eVであり、LUMO第1有機材料-HOMO第2有機材料≧0.3eVであり、
前記第1有機層の導電率≧3*10-5S/mである、有機エレクトロルミネッセンス素子が開示される。
【0070】
本発明の一実施例によれば、
陽極、陰極、および陽極と陰極との間に設けられた有機層を含む有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記有機層には、第1有機材料および第2有機材料を含む第1有機層が含まれ、
前記第1有機材料のLUMOエネルギーレベルがLUMO
第1有機材料であり、前記第2有機材料のHOMOエネルギーレベルがHOMO
第2有機材料であり、且つ前記LUMO
第1有機材料-HOMO
第2有機材料≧0.3eVであり、前記第1有機層の導電率≧3*10
-5S/mであり、
前記第2有機材料は、式Hで表される構造を有する、有機エレクトロルミネッセンス素子がさらに開示される。
【化6】
(式H中、
Ar
1、Ar
2およびAr
3は、出現毎に同一または異なって置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、或いは、置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基から選ばれ、
Ar
1、Ar
2およびAr
3が出現毎に同一または異なって置換の炭素原子数6~30のアリール基、または置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基から選ばれる場合、前記アリール基またはヘテロアリール基は、重水素、ハロゲン、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のヘテロアルキル基、置換または非置換の環原子数3~20のヘテロ環基、置換または非置換の炭素原子数7~30のアラルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルコキシ基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリールオキシ基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルケニル基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルキニル基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルシリル基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールシリル基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルゲルマニウム基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールゲルマニウム基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、シアノ基、イソシアノ基、ヒドロキシル基、スルファニル基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスフィノ基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれる1つまたは複数の基で置換され、
隣り合う置換基Ar
1、Ar
2およびAr
3は、結合して環を形成していてもよい。)
【0071】
本実施例において、隣り合う置換基Ar1、Ar2およびAr3が結合して環を形成していてもよいとは、隣り合う置換基グループ、たとえば隣り合う置換基Ar1とAr2、隣り合う置換基Ar1とAr3、および隣り合う置換基Ar2とAr3のうちのいずれか1つまたは複数が結合して環を形成してもよいことを意味する。明らかには、これらの隣り合う置換基がいずれも結合して環を形成しなくてもよい。
【0072】
本発明の一実施例によれば、式Hで表される構造を有する第2有機材料は、モノアリールアミン化合物である。
【0073】
本発明の一実施例によれば、LUMO第1有機材料-HOMO第2有機材料は、≧0.33eVである。
【0074】
本発明の一実施例によれば、LUMO第1有機材料-HOMO第2有機材料は、≧0.4eVである。
【0075】
本発明の一実施例によれば、LUMO第1有機材料-HOMO第2有機材料は、≧0.45eVである。
【0076】
本発明の一実施例によれば、前記HOMO第2有機材料は、≦-5.13eVである。
【0077】
本発明の一実施例によれば、HOMO第2有機材料は、≦-5.2eVである。
【0078】
本発明の一実施例によれば、前記第1有機層の導電率は、≧5*10-5S/mである。
【0079】
本発明の一実施例によれば、前記第1有機層の導電率は、≧7*10-5S/mである。
【0080】
本発明の一実施例によれば、前記第1有機層の導電率は、≧10*10-5S/mである。
【0081】
本発明の一実施例によれば、前記第1有機層の導電率は、≧30*10-5S/mである。
【0082】
本発明の一実施例によれば、前記第1有機層の導電率は、≧50*10-5S/mである。
【0083】
本発明の一実施例によれば、前記第1有機材料の第1有機層に対する重量比は、0.1%~90%である。
【0084】
本発明の一実施例によれば、前記第1有機材料の第1有機層に対する重量比は、1%~50%である。
【0085】
本発明の一実施例によれば、前記第1有機材料の第1有機層に対する重量比は、2%~30%である。
【0086】
本発明の一実施例によれば、前記第1有機層の厚さは、1~30nmである。
【0087】
本発明の一実施例によれば、前記第1有機層の厚さは、5~15nmである。
【0088】
本発明の一実施例によれば、前記有機エレクトロルミネッセンス素子が赤色光を発射する場合、前記有機エレクトロルミネッセンス素子の15mA/cm2条件下でのEQEが22%を下回らず、電圧が4.5Vを上回らない。前記有機エレクトロルミネッセンス素子が緑色光を発射する場合、前記有機エレクトロルミネッセンス素子の15mA/cm2条件下でのEQEが21%を下回らず、電圧が4.5Vを上回らない。当前記有機エレクトロルミネッセンス素子が青色光を発射する場合、前記有機エレクトロルミネッセンス素子の15mA/cm2条件下でのEQEが6%を下回らず、電圧が5Vを上回らない。
【0089】
本発明の一実施例によれば、前記有機エレクトロルミネッセンス素子が赤色光を発射する場合、前記有機エレクトロルミネッセンス素子の15mA/cm2条件下でのEQEが24%を下回らず、電圧が4.8Vを上回らない。前記有機エレクトロルミネッセンス素子が緑色光を発射する場合、前記有機エレクトロルミネッセンス素子の15mA/cm2条件下でのEQEが23%を下回らず、電圧が4.8Vを上回らない。前記有機エレクトロルミネッセンス素子が青色光を発射する場合、前記有機エレクトロルミネッセンス素子の15mA/cm2条件下でのEQEが7%を下回らず、電圧が5.3Vを上回らない。
【0090】
本発明の一実施例によれば、前記有機エレクトロルミネッセンス素子が赤色光を発射する場合、前記有機エレクトロルミネッセンス素子の15mA/cm2条件下でのEQEが25%を下回らず、電圧が4.5Vを上回らない。前記有機エレクトロルミネッセンス素子が緑色光を発射する場合、前記有機エレクトロルミネッセンス素子の15mA/cm2条件下でのEQEが24%を下回らず、電圧が4.5Vを上回らない。前記有機エレクトロルミネッセンス素子が青色光を発射する場合、前記有機エレクトロルミネッセンス素子の15mA/cm2条件下でのEQEが8%を下回らず、電圧が5.5Vを上回らない。
【0091】
本発明の一実施例によれば、前記第1有機層は、陽極に接触する。
【0092】
本発明の一実施例によれば、前記有機エレクトロルミネッセンス素子は、第2有機材料を含む第2有機層をさらに含む。
【0093】
本発明の一実施例によれば、前記第2有機層の厚さは、10~200nmである。
【0094】
本発明の一実施例によれば、前記第2有機材料は、
【化7-1】
【化7-2】
から選ばれる。
【0095】
本発明の一実施例によれば、
陽極、陰極、および陽極と陰極との間に設けられた有機層を含む第1有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記有機層には、陽極に直接接触する第1有機層が含まれ、前記第1有機層は、第1有機材料および第2有機材料を含み、
前記第1有機層の導電率≧3*10-5S/mであり、
前記第1有機エレクトロルミネッセンス素子の同じ電流密度下での効率電圧比ηが、第2有機エレクトロルミネッセンス素子のηの104%以上であり、
ただし、前記η=EQE/(電圧*ξ)であり、ξは、量子力学における発射許可な励起子の割合であり、
前記第2有機エレクトロルミネッセンス素子において、陽極に直接接触した有機層が第3有機材料および第4有機材料を含む第3有機層である以外、前記第2有機エレクトロルミネッセンス素子の構造が前記第1有機エレクトロルミネッセンス素子と同様であり、前記第1有機材料と前記第3有機材料、前記第2有機材料と前記第4有機材料の2グループの材料のうちの少なくとも1グループの材料が同様であり、
且つ前記第2有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記第3有機層が、下記の条件の1つを少なくとも満たす、第1有機エレクトロルミネッセンス素子がさらに開示される。
1)前記第4有機材料のHOMOエネルギーレベルがHOMO第4有機材料であり、且つHOMO第4有機材料>-5.1eVであり、
2)前記第3有機材料のLUMOエネルギーレベルがLUMO第3有機材料であり、前記第4有機材料のHOMOエネルギーレベルがHOMO第4有機材料であり、LUMO第3有機材料-HOMO第4有機材料<0.3eVであり、
3)前記第3有機層の導電率が3*10-5S/m未満である。
【0096】
本発明の一実施例によれば、前記第1有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記第1有機材料のLUMOエネルギーレベルがLUMO第1有機材料であり、前記第2有機材料のHOMOエネルギーレベルがHOMO第2有機材料であり、且つ前記LUMO第1有機材料-HOMO第2有機材料≧0.3eVである。
【0097】
本発明の一実施例によれば、前記第1有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記第2有機材料のHOMOエネルギーレベルがHOMO第2有機材料であり、且つ前記HOMO第2有機材料≦-5.1eVである。
【0098】
本発明の一実施例によれば、同じ電流密度下で、前記第1有機エレクトロルミネッセンス素子のEQEは、前記第2有機エレクトロルミネッセンス素子のEQEの103%を上回る。
【0099】
本発明の一実施例によれば、同じ電流密度下で、前記第1有機エレクトロルミネッセンス素子のEQEは、前記第2有機エレクトロルミネッセンス素子のEQEの110%を上回る。
【0100】
本発明の一実施例によれば、同じ電流密度下で、前記第1有機エレクトロルミネッセンス素子のEQEは、前記第2有機エレクトロルミネッセンス素子のEQEの120%を上回る。
【0101】
本発明の一実施例によれば、前記第1有機エレクトロルミネッセンス素子の15mA/cm2条件下でのηは、>7.19である。
【0102】
本発明の一実施例によれば、前記第1有機エレクトロルミネッセンス素子の15mA/cm2条件下でのηは、>7.2である。
【0103】
本発明の一実施例によれば、前記第1有機エレクトロルミネッセンス素子の15mA/cm2条件下でのηは、>7.3である。
【0104】
本発明の一実施例によれば、前記第1有機エレクトロルミネッセンス素子の15mA/cm2条件下でのηは、>7.4である。
【0105】
本発明の一実施例によれば、同じ電流密度下で、前記第1有機エレクトロルミネッセンス素子のηは、前記第2有機エレクトロルミネッセンス素子のηの106%以上である。
【0106】
本発明の一実施例によれば、同じ電流密度下で、前記第1有機エレクトロルミネッセンス素子のηは、前記第2有機エレクトロルミネッセンス素子のηの110%以上である。
【0107】
本発明の一実施例によれば、同じ電流密度下で、前記第1有機エレクトロルミネッセンス素子のηは、前記第2有機エレクトロルミネッセンス素子のηの120%以上である。
【0108】
本発明の一実施例によれば、同じ電流密度下で、前記第1有機エレクトロルミネッセンス素子のηは、前記第2有機エレクトロルミネッセンス素子のηの130%以上である。
【0109】
本発明の一実施例によれば、前記第1有機材料は、p型導電性ドープ材料であり、前記第2有機材料は、正孔輸送材料である。
【0110】
本発明の一実施例によれば、前記第1有機材料は、式1~式3のうちの1つで表される構造を有する。
【化8】
(式1、式2または式3中、
Eは、出現毎に同一または異なってNまたはCR
1から選ばれ、
Xは、出現毎に同一または異なってNR’、CR’’R’’’、O、SまたはSeからなる群から選ばれ、
環Aは、出現毎に同一または異なって1つの環内二重結合、少なくとも1つのN原子および少なくとも1つのQを含む5員ヘテロ環であり、
Qは、出現毎に同一または異なってO、S、SeおよびNR
Nからなる群から選ばれ、
Rは、出現毎に一置換、複数置換または無置換を表し、
R、R
1、R’、R’’、R’’’、R
Nは、出現毎に同一または異なって水素、重水素、ハロゲン、ニトロソ基、ニトロ基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、シアノ基、イソシアノ基、SCN、OCN、SF
5、ボラニル基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスホノキシ基、ヒドロキシ基、スルファニル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のヘテロアルキル基、置換または非置換の環原子数3~20のヘテロ環基、置換または非置換の炭素原子数7~30のアラルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルコキシ基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリールオキシ基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルケニル基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルキニル基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルシリル基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールシリル基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルゲルマニウム基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールゲルマニウム基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれ、
置換基R、R
1、R’、R’’およびR’’’のうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの電子求引性基を有する基であり、
隣り合う置換基R、R’、R’’、R’’’は、結合して環を形成していてもよい。)
【0111】
本実施例において、隣り合う置換基R、R’、R’’、R’’’が結合して環を形成していてもよいとは、隣り合う置換基グループ、たとえば隣り合う置換基R、隣り合う置換基R’’とR’’’、隣り合う置換基RとR’’、隣り合う置換基RとR’’’、および隣り合う置換基RとR’のうちのいずれか1つまたは複数が結合して環を形成してもよいことを意味する。明らかには、これらの隣り合う置換基がいずれも結合して環を形成しなくてもよい。
【0112】
本発明の一実施例によれば、式2中、前記Eは、出現毎に同一または異なってCR1から選ばれる。
【0113】
本発明の一実施例によれば、前記第1有機材料は、式1または式3で表される構造を有する。
【0114】
本発明の一実施例によれば、前記第1有機材料は、式3-1で表される構造を有する。
【化9】
(Xは、出現毎に同一または異なってNR’、CR’’R’’’、O、SまたはSeから選ばれ、
R、R’、R’’およびR’’’のうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの電子求引性基を有する基であり、
Qは、出現毎に同一または異なってO、S、SeおよびNR
Nからなる群から選ばれ、
R、R’、R’’、R’’’、R
Nは、出現毎に同一または異なって水素、重水素、ハロゲン、ニトロソ基、ニトロ基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、シアノ基、イソシアノ基、SCN、OCN、SF
5、ボラニル基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスホノキシ基、ヒドロキシ基、スルファニル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、置換または非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のヘテロアルキル基、置換または非置換の環原子数3~20のヘテロ環基、置換または非置換の炭素原子数7~30のアラルキル基、置換または非置換の炭素原子数1~20のアルコキシ基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリールオキシ基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルケニル基、置換または非置換の炭素原子数2~20のアルキニル基、置換または非置換の炭素原子数6~30のアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルシリル基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールシリル基、置換または非置換の炭素原子数3~20のアルキルゲルマニウム基、置換または非置換の炭素原子数6~20のアリールゲルマニウム基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれる。)
【0115】
本発明の一実施例によれば、式1、式2、式3または式3-1中、前記Xは、出現毎に同一または異なってCR’’R’’’またはNR’から選ばれ、且つR’、R’’およびR’’’は、それぞれ、少なくとも1つの電子求引性基を有する基である。
【0116】
本発明の一実施例によれば、式1、式2、式3または式3-1中、前記Xは、出現毎に同一または異なってCR’’R’’’またはNR’から選ばれ、前記R、R’、R’’およびR’’’は、それぞれ、少なくとも1つの電子求引性基を有する基である。
【0117】
本発明の一実施例によれば、式1、式2、式3または式3-1中、前記Xは、出現毎に同一または異なって
【化10】
からなる群から選ばれる。
【0118】
本発明の一実施例によれば、式1、式2、式3または式3-1中、前記Xは、X-1から選ばれる。
【0119】
本発明の一実施例によれば、式1、式2、式3または式3-1中、Qは、出現毎に同一または異なってOまたはSから選ばれる。
【0120】
本発明の一実施例によれば、式1、式2、式3または式3-1中、前記R、R1は、出現毎に同一または異なって、水素、重水素、ハロゲン、ニトロソ基、ニトロ基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、シアノ基、イソシアノ基、SCN、OCN、SF5、ボラニル基、スルフィニル基、スルホニル基、ホスホノキシ基、非置換の炭素原子数1~20のアルキル基、非置換の環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、非置換の炭素原子数1~20のアルコキシ基、非置換の炭素原子数2~20のアルケニル基、非置換の炭素原子数6~30のアリール基、非置換の炭素原子数3~30のヘテロアリール基、およびハロゲン、ニトロソ基、ニトロ基、アシル基、カルボニル基、カルボキシル基、エステル基、シアノ基、イソシアノ基、SCN、OCN、SF5、ボラニル基、スルフィニル基、スルホニル基およびホスホノキシ基のうちの1つまたは複数で置換された、炭素原子数1~20のアルキル基、環炭素原子数3~20のシクロアルキル基、炭素原子数1~20のアルコキシ基、炭素原子数2~20のアルケニル基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数3~30のヘテロアリール基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれる。
【0121】
本発明の一実施例によれば、式1、式2、式3または式3-1中、前記R、R1は、出現毎に同一または異なって水素、重水素、メチル基、イソプロピル基、NO2、SO2CH3、SCF3、C2F5、OC2F5、OCH3、ジフェニルメチルシリル基、フェニル基、メトキシフェニル基、p-メチルフェニル基、2、6-ジイソプロピルフェニル基、ビフェニル基、ポリフルオロフェニル基、ジフルオロピリジル基、ニトロフェニル基、ジメチルチアゾール基、CNまたはCF3のうちの1つまたは複数で置換されたビニル基、CNまたはCF3のうちの1つで置換されたエチニル基、ジメチルホスホノキシ基、ジフェニルホスホノキシ基、F、CF3、OCF3、SF5、SO2CF3、シアノ基、イソシアノ基、SCN、OCN、トリフルオロメチルフェニル基、トリフルオロメトキシフェニル基、ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、ビス(トリフルオロメトキシ)フェニル基、4-シアノテトラフルオロフェニル基、F、CNまたはCF3のうちの1つまたは複数で置換されたフェニル基またはビフェニル基、テトラフルオロピリジン基、ピリミジン基、トリアジン基、ジフェニルボラニル基、オキサボランアントリル基、およびこれらの組合せからなる群から選ばれる。
【0122】
本発明の一実施例によれば、前記第1有機材料は、
【化11-1】
【化11-2】
【化11-3】
【化11-4】
からなる群から選ばれる。
【0123】
本発明の一実施例によれば、前記素子は、第5有機材料を含む第4有機層を含み、前記第5有機材料のLUMOエネルギーレベルがLUMO第5有機材料であり、且つLUMO第五有機材料<-2.6eVである。
【0124】
本発明の一実施例によれば、前記素子は、第5有機材料を含む第4有機層を含み、前記第5有機材料のLUMOエネルギーレベルがLUMO第5有機材料であり、且つLUMO第五有機材料<-2.8eVである。
【0125】
本発明の一実施例によれば、前記素子は、発光層を含み。前記第4有機層は、前記発光層と陰極との間に設けられ、前記発光層に直接接触する。
【0126】
本発明の一実施例によれば、前記第4有機層は、電子輸送層であり、前記発光層に直接接触する。
【0127】
他の材料との組合せ
【0128】
本発明に記載される有機発光素子に用いられる特定層の材料は、素子に存在する各種の他の材料と組み合わせて使用することができる。これらの材料の組合せについて、米国特許出願US2016/0359122A1の第0132~0161段落において詳細に記載されており、その内容を全て本明細書に援用する。記載または言及された材料は、本明細書に開示される化合物と組み合わせて使用可能な材料の非限定的な実例であり、且つ当業者にとっては、文献を容易に参照して組み合わせて使用可能な他の材料を識別することができる。
【0129】
本明細書において、有機発光素子に用いられる具体的な層の材料は、前記素子に存在する多種の他の材料と組み合わせて使用することができると記載されている。例示的には、本明細書に開示される材料は、多種多様なドーパント、輸送層、ブロッキング層、注入層、電極および他の存在可能な層と組み合わせて使用することができる。これらの材料の組合せは、特許出願US2015/0349273A1の第0080~0101段落において詳細に記載されており、その内容を全て本明細書に援用する。記載または言及された材料は、本明細書に開示される化合物と組み合わせて使用可能な材料の非限定的な実例であり、且つ当業者にとっては、文献を容易に参照して組み合わせて使用可能な他の材料を識別することができる。
【0130】
本発明に係る素子は、電荷注入・輸送層、たとえば正孔輸送層、電子輸送層および電子注入層を含んでもよいし、蛍光発光ドーパンドおよび/またはりん光発光ドーパンドであってもよい1種の発光ドーパンドおよび少なくとも1種のホスト化合物を少なくとも含む発光層を含んでもよいし、ブロッキング層、たとえば正孔ブロッキング層、電子ブロッキング層を含んでもよい。
【0131】
正孔輸送層において、従来技術における通常の正孔輸送材料が用いられてもよい。たとえば、正孔輸送層は、典型的であるが非限定的に以下の正孔輸送材料を含んでもよい。
【化12】
【0132】
電子輸送層において従来技術における通常の電子輸送材料が用いられてもよい。たとえば、電子輸送層は、典型的であるが非限定的に以下の電子輸送材料を含んでもよい。
【化13】
【0133】
発光層において従来技術における通常の発光材料およびホスト材料が用いられてもよい。たとえば、発光層は、典型的であるが非限定的に以下の蛍光発光材料および蛍光ホスト材料を含んでもよい。
【化14-1】
【化14-2】
【化14-3】
【化14-4】
【0134】
発光層は、さらに、典型的であるが非限定的に以下のりん光発光材料およびりん光ホスト材料を含んでもよい。
【化15-1】
【化15-2】
【化15-3】
【化15-4】
【化15-5】
【化15-6】
【化15-7】
【化15-8】
【化15-9】
【化15-10】
【化15-11】
【化15-12】
【0135】
電子ブロッキング層において、従来技術における通常の電子ブロッキング材料が用いられてもよい。たとえば、電子ブロッキング層は、典型的であるが非限定的に以下の電子ブロッキング材料を含んでもよい。
【化16】
【実施例】
【0136】
素子の実施例において、素子の特性に対しても、本分野における通常の機器(Angstrom Engineering製の蒸着機、蘇州弗士達製の光学テストシステム、耐用年数テストシステム、北京量拓製のエリプソメーターなどを含むがそれに限定されず)を用いて、当業者にとって熟知の方法でテストを行った。当業者は上述した機器の使用、テスト方法などの関連内容を知っているので、サンプルの固有データを確実に、影響を受けずに取得することができるため、上記関連内容を本明細書において繰り返し説明はしない。
【0137】
本明細書において材料のLUMOエネルギーレベル、HOMOエネルギーレベルは、いずれもサイクリックボルタンメトリーにより測定された。測定方法は、武漢科思特計器有限公司製の型番CorrTest CS120の電気化学的ステーションが用いられるとともに、プラチナディスク電極を作業電極、Ag/AgNO3電極を参照電極、プラチナワイヤ電極を補助電極とする3電極作業体系が用いられた。無水DCMを溶剤、0.1mol/Lのテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェートを支持電解質として、測定待ち化合物を10-3mol/Lの溶液に調製し、テスト前に、溶液に窒素ガスを10min導入して酸素を除去した。計器のパラメータ設定は、以下の通りである。走査速度100mV/s、電位間隔0.5mV、テストウィンドウ-1V~1V。
【0138】
上記サイクリックボルタンメトリーにより、第1有機材料のLUMOエネルギーレベル、第2有機材料のHOMOエネルギーレベルが測定され、第1有機材料および第2有機材料からなる有機層の導電率が測定された。アルミニウム電極が予め製造されたテスト基板に蒸着し、測定待ちのサンプルHTMおよびPD材料を、高真空中(たとえば、10-6Torr)で、一定のドーピング割合でテスト基板に共蒸着し、厚さ100nm、長さ6mm、幅1mmのテスト待ち領域を形成し、室温下で、電極に電圧を印加して電流を測定する方法により、該領域の抵抗値を得、さらに、オームの法則および幾何学的寸法に基づき所定の薄膜の導電率を算出した。関連データを以下の表に示す。
【0139】
【0140】
素子の実施例
【0141】
以下は、幾つかの実施例によって、該有機エレクトロルミネッセンス素子の作動原理を具体的に説明する。明らかには、以下の実施例は、例示的なものに過ぎず、本発明の範囲を限定するためのものではない。以下の実施例に基づき、当業者は、それを改良することによって本発明の他の実施例を取得することができる。
【0142】
実施例1-1~1-5、比較例1-1~1-5は、赤色りん光発光素子である。
【0143】
実施例1-1
実施例1-1の実施形態は、以下の通りである。まず、厚さが1200Åのインジウムスズ酸化物(ITO)陽極を有するガラス基板を洗浄した後、酸素プラズマおよびUVオゾンで処理した。処理した後、窒素ガスで満たされたグローブボックスで基板を乾燥させて水を除去した。その後、基板を基板ホルダ上に取り付けて真空室に置いた。真空度が約10-6Torrの場合、0.01~10Å/sの速度でホット真空によって順にITO陽極上に有機層を蒸着した。まず、HT-7および化合物1-2を共蒸着して正孔注入層(HIL)として用い、そのうち、化合物1-2がHILの合計重量に対して20%であり、厚さが100Åである。そして、化合物HT-7を蒸着して正孔輸送層(HTL)として用い、厚さが250Åである。化合物EB1を蒸着して電子ブロッキング層(EBL)として用い、厚さが50Åである。次に、赤色光の発光ドーパンド化合物D-1をホスト化合物RHにドーピングして赤色光発光層(EML)を形成し、そのうち、化合物D-1ドーピング割合が2wt%、厚さが400Åである。そして、化合物HB1を蒸着して正孔ブロッキング層(HBL)として用い、厚さが50Åである。HBL上において、化合物ETおよびLiQを共蒸着して電子輸送層(ETL)として用い、厚さが350Åであり、そのうち、LiQがETL層の合計重量に対して60%である。ETL上において、10ÅのLiQを蒸着して電子注入層(EIL)として用いた。最後、1200ÅのAlを蒸着して陰極として用いた。蒸着した該素子をグローブボックスに遷移させ、ガラスカバーを用いてカプセル化して該素子を完成させた。
【0144】
実施例1-2
実施例1-2の実施形態は、HILにおいて化合物1-2のドーピング割合を25%に調節する以外、実施例1-1と同様である。
【0145】
実施例1-3
実施例1-3の実施形態は、HILにおいて化合物3-2で化合物1-2を代替して化合物3-2のドーピング割合を3%に調節する以外、実施例1-1と同様である。
【0146】
実施例1-4
実施例1-4の実施形態は、HILにおいて化合物3-2のドーピング割合を5%に調節する以外、実施例1-3と同様である。
【0147】
実施例1-5
実施例1-5の実施形態は、HILおよびHTLにおいて化合物HT-12で化合物HT-7を代替する以外、実施例1-1と同様である。
【0148】
比較例1-1
比較例1-1の実施形態は、HILにおいて化合物1-2のドーピング割合を3%に調節する以外、実施例1-1と同様である。
【0149】
比較例1-2
比較例1-2の実施形態は、HILにおいて化合物PD-1で化合物1-2を代替して化合物PD-1のドーピング割合を2%に調節する以外、実施例1-1と同様である。
【0150】
比較例1-3
比較例1-3の実施形態は、HILにおいて化合物3-2のドーピング割合を2%に調節する以外、実施例1-3と同様である。
【0151】
比較例1-4
比較例1-4の実施形態は、HILおよびHTLにおいて化合物HTM-Aで化合物HT-7を代替する以外、実施例1-1と同様である。
【0152】
比較例1-5
比較例1-5の実施形態は、HILおよびHTLにおいて化合物HTM-Bで化合物HT-7を代替する以外、実施例1-1と同様である。
【0153】
実施例1-1~1-5および比較例1-1~1-5における一部の素子の構造は、以下の表に示される。そのうち、HILは、2種の化合物を用いて、下記表に記載の重量比でドーピングすることにより得られる。
【0154】
【0155】
素子に用いられる化合物の構造は、以下のように示される。
【化17】
【0156】
実施例1-1~1-5および比較例1-1~1-5における素子の性能を測定した。そのうち、色座標(CIE)、電圧および外部量子効率(EQE)は、電流密度15mA/cm2の条件下で測定されたものであり、素子のηは、EQE/(電圧*ξ)およびξが1であることに従って算出されたものであり、素子の耐用年数(LT95)は、定電流密度80mA/cm2の駆動下で輝度が初期輝度の95%に減衰した実際測定時間である。これらのデータは、表2に示される。
【0157】
【0158】
色座標から分かるように、示された実施例と比較例の色座標が一致した。
【0159】
EQEが高く、電圧が低いOLEDは、所望する良好な素子である。素子のEQEが高く、電圧も高ければ、このような素子は、望ましいものではない。例えば、表2には、比較例1-1のEQEが33%に達し、電圧も5.7Vに達した。実施例1-1のEQEが31%であり、比較例1-1よりもやや6%低いけれども、依然として非常に高い効果レベルである。そして、実施例1-1の電圧が僅かに3.8Vであり、比較例1-1よりも大幅に33%低下した。そのため、実施例1-1は、総合的な性能に優れたOLED素子であり、比較例1-1は、業界内で追求しているOLEDではないことを分かることができる。
【0160】
上記分析によれば、本発明は、素子の総合的な性能を反映するために、効率電圧比(η)というパラメータを導入し、η=EQE/(電圧*ξ)であり、ただし、ξは、量子力学における発射許可な励起子の割合である。理論的には、りん光発光素子および熱活性化遅延蛍光(TADF)素子における発射許可な励起子の割合がいずれも100%であり、すなわちξが1であり、蛍光発光素子における発射許可な励起子の割合が25%であり、即ちξが0.25である。ηが大きいほど、素子が低い電圧および高いEQEを有し、総合的な性能が優れていることを意味する。そのため、本発明におけるηが7.19よりも大きければ、該素子が総合的な性能に優れたOLED素子であることを意味する。実施例1-1を例としては、EQE=31%、V=3.8V、りん光発光素子であるため、ξが1であり、η=31/(3.8*1)=8.16であり、総合的な性能に優れた素子である。
【0161】
以上のように、実施例1-1~1-5および比較例1-1~1-5は、いずれもりん光発光素子であり、そのξがいずれも1である。
【0162】
実施例1-1のHILおよび比較例1-1のHILにおいて同様な材料が用いられているが、比較例1-1のHILにおいて、化合物1-2のドーピング割合が3%であり、HILの導電率が僅かに2.4*10-5S/mである。導電率が低すぎるため、このHILの正孔注入能力が弱くなり、素子の電圧が急激に向上した。比較例1-1のEQEが33%に達したが、その素子のηが僅かに5.79であるため、依然としてよくない素子総合的な性能しか示すことができない。それと同時に、そのHILの弱い正孔注入能力も、素子の不安定な悪影響をもたらした。逆に、実施例1-1のHILにおいて、第1有機材料である化合物1-2のドーピング割合が20%であり、HILの導電率が89*10-5S/mであり、3*10-5S/mよりも大きいので、このHILを用いることにより総合的な性能に優れた赤色光素子を取得することができる。15mA/cm2下での電圧が僅かに3.8Vであり、EQEが31%に達し、ηが8.16に達し、且つ80mA/cm2下での素子の耐用年数(LT95)が176hであり、比較例1-1の素子の耐用年数に対して約2倍向上した。これから分かるように、本発明は、第1有機層導電率を3*10-5S/m以上に制御することにより、素子総合的な性能を向上させることができる。
【0163】
実施例1-2のHILにおいて、化合物1-2のドーピング割合が25%に向上し、導電率が92*10-5S/mに向上し、素子の電圧がさらに3.5Vに低下し、素子の耐用年数が184hに向上し、EQEがやや27%に低下したが、依然として高いレベルとなり、より重要なのは、そのηが7.71であり、現在広く用いられている素子、たとえば比較例1-2(ηが7.14である)に対してより優れた総合的な性能を示した。また、比較例1-2のHILにおいて、化合物PD-1のLUMOエネルギーレベルと化合物HT-7のHOMOエネルギーレベルとの差が僅かに0.09eVであり、遥かに0.30eVよりも小さいので、化合物PD-1のドーピング割合が2%の場合、HILの導電率が110*10-5S/mに達し、HILの良好な正孔注入能力を実現し、レベルの高い素子の性能を取得することができるが、HILにおける化合物PD-1のLUMOエネルギーレベルと化合物HT-7のHOMOエネルギーレベルとの差が僅かに0.09eVであり、0.30eVよりも小さいので、素子におけるキャリアのバランスを調節・制御することに不利である。逆に、実施例1-2は、HILの材料を合理的に選択することにより、素子の性能が比較例1-2の高いレベルを基にさらに向上し、効率が8%向上し、耐用年数が12%向上し、電圧が一致するように維持した。これは、非常にありがたいである。
【0164】
上記比較結果から分かるように、本発明は、第1有機層においてHOMOエネルギーレベル≦-5.1eVの第2有機材料、およびLUMOエネルギーレベルがHOMO第2有機材料よりも少なくとも0.3eV高い第1有機材料をドーピングし、第1有機材料のドーピング割合を制御してHILの導電率を効果的に制御することにより、実施例1-1および1~2に示される総合的な性能に優れた赤色光素子を取得することができる。
【0165】
実施例1-3のHILにおいて、第1有機材料が化合物3-2であり、そのLUMOエネルギーレベルと第2有機材料HT-7のHOMOエネルギーレベルとの差が0.33eVであり、エネルギーレベル差が0.3eVよりも大きい。比較例1-3のHILにおいて、化合物3-2のドーピング割合が2%であり、そのHILの導電率が2.6*10-5S/mであり、3*10-5S/mよりも小さい。導電率が低いため、正孔が陽極からHILに注入されにくいことで、素子の電圧が高くなり、そのηが僅かに6.0であり、耐用年数が短くなった。実施例1-3において、化合物3-2のドーピング割合を3%に向上させることにより、HILの導電率が7.9*10-5S/mとなり、3*10-5S/mよりも大きくなった。比較例1-3に対して、その電圧が大幅に24%~3.8V低下し、EQEが30%の極めて高いレベルに維持し、耐用年数が86%向上することで、総合的な性能に優れた赤色光素子を得ることができる。
【0166】
実施例1-4において、化合物3-2のドーピング割合を5%に向上させることにより、HILの導電率が39*10-5S/mに向上するため、素子の電圧がさらに3.5Vに低下し、素子の耐用年数が172hに向上し、EQEがやや27%に低下したが、依然として非常に高いレベルであり、より重要なのは、ηが依然として7.71である。この素子は、現在広く用いられている、たとえば比較例1-2(η=7.14)に示される素子に対して、総合的な性能がより優れている。実施例1-4と比較例1-2を比較すると、その効率が8%向上し、耐用年数が5%向上し、電圧が一致するように維持した。
【0167】
要するに、実施例1-1~1-4と比較例1-1~1-3の比較によれば、第2有機材料のHOMO≦-5.1eV、LUMO第1有機材料-HOMO第2有機材料≧0.3eVの場合、第1有機材料のドーピング割合を制御して第1有機層HILの導電率を制御することにより、第1有機層の導電率≧3*10-5S/mの場合、総合的な性能に優れた赤色光素子を取得することができる。
【0168】
また、実施例1-1および実施例1-5に用いられた第2有機材料は、それぞれHT-7およびHT-12であり、そのHOMOエネルギーレベルがそれぞれ-5.13eVおよび-5.11eVであり、-5.1eVよりも小さく、LUMO化合物1-2-HOMOHT-7、LUMO化合物1-2-HOMOHT-12がいずれも0.3eVよりも大きく、第1有機層HILの導電率がそれぞれ8.9*10-4S/m、2.4*10-4S/mであり、いずれも3*10-5S/mよりも大きい。そのため、上記HILを用いた素子の総合的な性能が優れており、15mA/cm2下での電圧がそれぞれ3.8V、3.9Vであり、EQEがそれぞれ31%、29%であり、ηがそれぞれ8.16、7.44であり、優れた総合的な性能を示し、80mA/cm2下でのLT95がそれぞれ176h、153hであり、極めて長い素子の耐用年数を示した。比較例1-4および比較例1-5に用いられた第2有機材料は、それぞれHTM-AおよびHTM-Bであり、対応するHOMOエネルギーレベルがいずれも-5.09eVであり、HOMOエネルギーレベルが-5.1eVよりも大きい。そのため、LUMO化合物1-2-HOMOHTM-A、LUMO化合物1-2-HOMOHTM-Bのエネルギーレベル差がいずれも0.3eVよりも大きく、導電率がいずれも3*10-5S/mよりも大きくても、上記HILを用いた素子総合的な性能が望ましくなく、ηがそれぞれ僅かに5.56、5.69であり、EQEと実施例1-1との相違が大きくないけれども、電圧が高く、それぞれ5.4V、5.1Vであり、耐用年数がそれぞれ僅かに28h、61hである。
【0169】
実施例2-1~2-3、比較例2-1~2-3は、緑色りん光発光素子である。
【0170】
実施例2-1
実施例2-1の実施形態は、以下の通りである。まず、厚さが800Åのインジウムスズ酸化物(ITO)陽極を有するガラス基板を洗浄した後、酸素プラズマおよびUVオゾンで処理した。処理した後、窒素ガスで満たされたグローブボックスで基板を乾燥させて水を除去した。その後、基板を基板ホルダ上に取り付けて真空室に置いた。真空度が約10-6Torrの場合、0.01~10Å/sの速度でホット真空によって順にITO陽極上に有機層を蒸着した。まず、HT-7および化合物1-2を含む正孔注入層(HIL)を蒸着し、そのうち、化合物1-2がHILの合計重量に対して20%であり、HILの厚さが100Åである。そして、化合物HT-7を蒸着して正孔輸送層(HTL)として用い、厚さが350Åである。化合物EB2を蒸着して電子ブロッキング層(EBL)として用い、厚さが50Åである。次に、化合物EB2、GHおよび緑色光発光ドーパンドD-2を共蒸着して発光層(EML)として用い、そのうち、EB2、GHおよびD-2がEMLの合計重量に対してそれぞれ48%、48%および4%であり、厚さが400Åである。そして、化合物HB1を蒸着して正孔ブロッキング層(HBL)として用い、厚さが50Åである。HBL上において、化合物ETおよびLiQを共蒸着して電子輸送層(ETL)として用い、厚さが350Åであり、そのうち、LiQがETL層の合計重量に対して60%である。ETL上において、10ÅのLiQを蒸着して電子注入層(EIL)として用いた。最後、1200ÅのAlを蒸着して陰極として用いた。蒸着した該素子をグローブボックスに遷移させ、ガラスカバーを用いてカプセル化して該素子を完成させた。
【0171】
実施例2-2
実施例2-2の実施形態は、HILにおける化合物1-2のドーピング割合を25%に調節する以外、実施例2-1と同様である。
【0172】
実施例2-3
実施例2-3の実施形態は、HILにおいて化合物3-2で化合物1-2を代替して化合物3-2のドーピング割合を5%に調節する以外、実施例2-1と同様である。
【0173】
比較例2-1
比較例2-1の実施形態は、HILにおける化合物1-2のドーピング割合を3%に調節する以外、実施例2-1と同様である。
【0174】
比較例2-2
比較例2-2の実施形態は、HILにおいて化合物PD-1で化合物1-2を代替して化合物PD-1のドーピング割合を2%に調節する以外、実施例2-1と同様である。
【0175】
比較例2-3
比較例2-3の実施形態は、HILにおける化合物3-2のドーピング割合を2%に調節する以外、実施例2-3と同様である。
【0176】
実施例2-1~2-3、比較例2-1~2-3における一部の素子の構造は、以下の表に示される。そのうち、HILは、下記表に記載の重量比で2種の化合物をドーピングすることにより得られる。
【0177】
【0178】
素子に新たに用いられる材料の構造は、以下のように表される。
【化18】
【0179】
実施例2-1~2-3および比較例2-1~2-3の素子の性能を測定した。そのうち、色座標(CIE)、電圧および外部量子効率(EQE)は、電流密度15mA/cm2の条件下で測定されたものであり、素子のηは、EQE/(電圧*ξ)およびξが1であることに従って算出されたものであり、素子の耐用年数(LT95)は、定電流密度80mA/cm2の駆動下で輝度が初期輝度の95%に減衰した実際測定時間である。これらのデータは、表4に示される。
【0180】
【0181】
色座標から分かるように、示された実施例と比較例の色座標が一致した。
【0182】
実施例2-1~2-3、比較例2-1~2-3は、いずれもりん光発光素子であり、そのξがいずれも1である。
【0183】
実施例2-1のHILおよび比較例2-1のHILにおいて同様な材料が用いられているが、比較例2-1のHILにおいて、化合物1-2のドーピング割合が3%であり、HILの導電率が僅かに2.4*10-5S/mである。導電率が低すぎるため、このHILの正孔注入能力が弱くなり、素子の電圧が急激に向上した。比較例2-1のEQEが28%に達したが、その素子のηが僅かに5.71であり、依然としてよくない素子総合的な性能しか示すことができない。それと同時に、そのHILの弱い正孔注入能力も、素子の不安定な悪影響をもたらした。逆に、実施例2-1のHILにおいて、第1有機材料である化合物1-2のドーピング割合が20%であり、HILの導電率が89*10-5S/mであり、3*10-5S/mよりも大きいので、このHILを用いることにより総合的な性能に優れた緑色光素子を取得することができる。15mA/cm2下での電圧が僅かに3.7Vであり、EQEが27%に達し、ηが7.30に達し、80mA/cm2下での素子の耐用年数(LT95)が74hであり、比較例2-1の素子に対して耐用年数が約2倍向上した。これから分かるように、本発明は、第1有機層の導電率を3*10-5S/m以上に制御することにより、素子総合的な性能を向上させることができる。
【0184】
実施例2-2において、化合物1-2のドーピング割合を25%に向上させ、実施例2-1における化合物1-2ドーピング割合が20%である場合に対して、HILの導電率がやや92*10-5S/mに向上した。そのため、素子の電圧がさらに3.5Vに低下し、素子の耐用年数が86hに向上し、EQEがやや26%に低下したが、この素子のηが7.43であり、現在広く用いられている、比較例2-2(η=6.86)に示される素子に対して、総合的な性能がより優れている。比較例2-2において、第1有機材料は、化合物PD-1であり、そのLUMOエネルギーレベルと化合物HT-7のHOMOエネルギーレベルとの差が僅かに0.09eVであり、0.30eVよりも小さい。ドーピング割合が2%の場合、導電率が110*10-5S/mに達し、HILの良好な正孔注入能力を実現し、レベルの高い素子の性能を取得することができるが、そのHILにおける化合物PD-1のLUMOエネルギーレベルと化合物HT-7のHOMOエネルギーレベルとの差が僅かに0.09eVであり、0.30eVよりも小さいので、素子におけるキャリアのバランスを調節・制御することに不利である。逆に、実施例2-2は、HILの材料を合理的に選択することにより、素子の性能が比較例2-2の高いレベルを基にさらに向上し、効率が8%向上し、耐用年数が21%向上し、電圧が一致するように維持した。これは、非常にありがたいである。
【0185】
上記比較結果から分かるように、本発明は、第1有機層においてHOMO≦-5.1eVの第2有機材料、およびLUMOエネルギーレベルがHOMO第2有機材料よりも少なくとも0.3eV高い第1有機材料をドーピングし、第1有機材料のドーピング割合を制御してHILの導電率を効果的に制御することにより、総合的な性能に優れた緑色光素子を取得することができる。
【0186】
実施例2-3において、第1有機材料は、化合物3-2であり、そのLUMOエネルギーレベルと化合物HT-7のHOMOエネルギーレベルとの差が0.33eVであり、エネルギーレベル差が0.3eVよりも大きく、化合物3-2のドーピング割合が5%、HILの導電率が39*10-5S/mであり、3*10-5S/mよりも大きい。上記HILを用いて総合的な性能に優れた緑色光素子を得た。15mA/cm2下での電圧が僅かに3.4Vであり、EQEが25%であり、ηが7.35であり、80mA/cm2下での素子の耐用年数(LT95)が95hに達した。比較用の比較例2-3としては、導電率が低いので、正孔が陽極からHILに注入されにくいことで、素子の電圧が高くなり、実施例2-3の電圧よりも47%高くなり、HILの導電率の低下によりEQEがやや向上したが、ηが僅かに5.6である。また、正孔の注入が困難となることにより、素子の不安定性を引き起こし、実施例2-3の耐用年数が比較例2-3よりも228%長くなった。実施例2-3と比較例2-2の比較から分かるように、比較例2-2の導電率が3*10-5S/mよりも大きいけれども、化合物PD-1のLUMOとHT-7のHOMOエネルギーレベルとの差が0.09eVであり、エネルギーレベル差が0.3eVよりも小さい。そのため、実施例2-3および比較例2-2は、いずれも正孔の注入を確保し、両者の電圧がそれぞれ3.4V、3.5Vであり、大体一致するように維持した。しかし、実施例2-3は、キャリアをより良く平衡することができるが、素子の効率が比較例2-2よりも7%向上し、耐用年数が34%向上した。
【0187】
要するに、実施例2-1~2-3および比較例2-1~2-3の比較から分かるように、第2有機材料のHOMO≦-5.1eV、LUMO第1有機材料-HOMO第2有機材料≧0.3eVの場合、第1有機材料のドーピング割合を制御して第1有機層HILの導電率を制御することにより、第1有機層の導電率≧3*10-5S/mの場合、総合的な性能に優れた緑色光素子を取得することができる。
【0188】
実施例3-1~3-3、比較例3-1~3-3は、青色蛍光発光素子である。
【0189】
実施例3-1
実施例3-1の実施形態は、以下の通りである。まず、厚さが800Åのインジウムスズ酸化物(ITO)陽極を有するガラス基板を洗浄した後、酸素プラズマおよびUVオゾンで処理した。処理した後、窒素ガスで満たされたグローブボックスで基板を乾燥させて水を除去した。その後、基板を基板ホルダ上に取り付けて真空室に置いた。真空度が約10-6Torrの場合、0.01~10Å/sの速度でホット真空によって順にITO陽極上に有機層を蒸着した。まず、HT-7および化合物1-2を含む正孔注入層(HIL)を蒸着し、そのうち、化合物1-2がHILの合計重量に対して20%であり、HILの厚さが100Åである。そして、化合物HT-7を蒸着して正孔輸送層(HTL)として用い、厚さが250Åである。化合物HT-15を電子ブロッキング層(EBL)として用い、厚さが50Åである。その後、青色光ドーパンド化合物D-3を青色光ホスト化合物BHにドーピングし共蒸着して青色光発光層(EML)として用い、ドーピング割合が4wt%であり、合計厚さが250Åである。そして、化合物HB2を蒸着して正孔ブロッキング層(HBL)として用い、厚さが50Åである。HBL上において、化合物ETおよびLiQを共蒸着して電子輸送層(ETL)として用い、厚さが300Åであり、そのうち、LiQがETL層の合計重量に対して60%である。ETL上において、10ÅのLiQを蒸着して電子注入層(EIL)として用いた。最後、1200ÅのAlを蒸着して陰極として用いた。蒸着した該素子をグローブボックスに遷移させ、ガラスカバーを用いてカプセル化して該素子を完成させた。
【0190】
実施例3-2
実施例3-2の実施形態は、HILにおける化合物1-2のドーピング割合を30%に調節する以外、実施例3-1と同様である。
【0191】
実施例3-3
実施例3-3の実施形態は、HILにおいて化合物3-2で化合物1-2を代替して化合物3-2のドーピング割合を10%に調節する以外、実施例3-1と同様である。
【0192】
比較例3-1
比較例3-1の実施形態は、HILにおける化合物1-2のドーピング割合を3%に調節する以外、実施例3-1と同様である。
【0193】
比較例3-2
比較例3-2の実施形態は、HILにおいて化合物PD-1で化合物1-2を代替して化合物PD-1のドーピング割合を2%に調節する以外、実施例3-1と同様である。
【0194】
比較例3-3
比較例3-3の実施形態は、HILにおける化合物3-2のドーピング割合を2%に調節する以外、実施例3-3と同様である。
【0195】
実施例3-1~3-3および比較例3-1~3-3における一部の素子の構造は、以下の表に示される。そのうち、HILは、下記表に記載の重量比で2種の化合物をドーピングすることにより得られる。
【0196】
【0197】
素子に新たに用いられる材料の構造は、以下のように表される。
【化19】
【0198】
実施例3-1~3-3および比較例3-1~3-3の素子の性能を測定した。そのうち、色座標(CIE)、電圧および外部量子効率(EQE)は、電流密度15mA/cm2の条件下で測定されたものであり、素子のηは、EQE/(電圧*ξ)およびξが0.25であることに従って算出されたものであり、素子の耐用年数(LT95)は、定電流密度80mA/cm2の駆動下で輝度が初期輝度の95%に減衰した実際測定時間である。これらのデータは、表6に示される。
【0199】
【0200】
色座標から分かるように、示された実施例と比較例の色座標が一致した。
【0201】
実施例3-1~3-3および比較例3-1~3-3は、いずれも蛍光発光素子であり、そのξがいずれも0.25である。
【0202】
実施例3-1のHILおよび比較例3-1のHILにおいて同様な材料が用いられているが、比較例3-1のHILにおいて、化合物1-2のドーピング割合が3%であり、HILの導電率が僅かに2.4*10-5S/mである。導電率が低すぎるので、このHILの正孔注入能力が弱くなり、素子の電圧が急激に向上した。比較例3-1のEQEが9.7%に達したが、素子のηが僅かに6.26であり、依然としてよくない素子総合的な性能しか示すことができない。それと同時に、そのHILの弱い正孔注入能力も、素子の不安定な悪影響をもたらした。逆に、実施例3-1のHILにおいて、第1有機材料である化合物1-2のドーピング割合が20%であり、HILの導電率が89*10-5S/mであり、3*10-5S/mよりも大きいので、このHILを用いて総合的な性能に優れた青色光素子を取得することができる。15mA/cm2下での電圧が僅かに4.4Vであり、EQEが9.0%に達し、ηが8.18に達し、80mA/cm2下での素子の耐用年数(LT95)が79hであり、比較例3-1の素子に対して耐用年数が約19倍向上した。これから分かるように、本発明は、第1有機層の導電率を3*10-5S/m以上に制御することにより、素子総合的な性能を向上させることができる。
【0203】
実施例3-2のHILにおいて、化合物1-2のドーピング割合が30%に向上し、HILの導電率は化合物1-2ドーピング割合が20%である場合よりもやや向上した。そのため、素子の電圧がさらに4.2Vに低下し、素子の耐用年数が170hに向上した。EQEがやや8.3%に低下したが、ηが依然として7.90に達し、この素子の総合的な性能が、現在広く用いられている、比較例3-2に示される素子(ηが7.18)よりもより優れている。比較例3-2に用いられたドープ材料が化合物PD-1であり、化合物PD-1のLUMOとHT-7のHOMOエネルギーレベルとの差が僅かに0.09eVであり、ドーピング割合が2%の場合、導電率が1.1*10-3S/mに達し、HILの良好な正孔注入能力を実現し、レベルの高い素子の性能を取得することができるが、そのHILにおける化合物PD-1のLUMOエネルギーレベルと化合物HT-7のHOMOエネルギーレベルとの差が僅かに0.09eVであり、さらに素子におけるキャリアのバランスを調節・制御することに不利である。逆に、実施例3-2は、HILの材料を合理的に選択することにより、素子の性能が比較例3-2の高いレベルを基にさらに向上した。EQEが5%向上し、耐用年数が139%向上し、電圧が一致するように維持した。要するに、第2有機材料のHOMO≦-5.1eV、LUMO第1有機材料-HOMO第2有機材料≧0.3eVの場合、第1有機材料のドーピング割合を制御して第1有機層HILの導電率を制御することにより、総合的な性能に優れた青色光素子を取得することができる。
【0204】
実施例3-3のHILにおいて、ドープ材料は、化合物3-2であり、化合物3-2のLUMOおよびHT-7のHOMOエネルギーレベルとの差が0.33eVであり、エネルギーレベル差が0.3eVよりも大きいので、化合物3-2のドーピング割合を調節することによりHILの導電率を調節・制御しやすい。化合物3-2のドーピング割合が10%の場合、HILの導電率が1.4*10-3S/mであり、3*10-5S/mよりも大きいので、上記HILを用いて総合的な性能に優れた青色光素子を取得することができる。15mA/cm2下での電圧が僅かに4.2Vであり、EQEが8.0%であり、ηが7.62であり、80mA/cm2下での素子の耐用年数(LT95)が149hに達した。比較用の比較例3-3としては、化合物3-2のドーピング割合が2%であり、導電率が僅かに2.6*10-5S/mである。導電率が低いので、正孔が陽極からHILに注入されにくいことで、素子の電圧が高くなり、実施例3-3の電圧よりも43%高くなり、HILの導電率の低下によりEQEがやや向上したが、ηが僅かに6.27であり、正孔の注入が困難となることにより素子の不安定性を引き起こし、実施例3-3の耐用年数が比較例3-3よりも23.8倍向上した。
【0205】
そのため、実施例3-1~3-3と比較例3-1~3-3の比較から分かるように、第2有機材料のHOMO≦-5.1eV、LUMO第1有機材料-HOMO第2有機材料≧0.3eVの場合、第1有機材料のドーピング割合を制御して第1有機層HILの導電率を制御することにより、第1有機層の導電率≧3*10-5S/mの場合、総合的な性能に優れた青色光素子を取得することができる。
【0206】
実施例4
実施例4の実施形態は、以下の通りである。まず、厚さが1200Åのインジウムスズ酸化物(ITO)陽極を有するガラス基板を洗浄した後、酸素プラズマおよびUVオゾンで処理した。処理した後、窒素ガスで満たされたグローブボックスで基板を乾燥させて水を除去した。その後、基板を基板ホルダ上に取り付けて真空室に置いた。真空度が約10-6Torrの場合、0.01~10Å/sの速度でホット真空によって順にITO陽極上に有機層を蒸着した。まず、HT-7および化合物1-2を含む正孔注入層(HIL)を蒸着し、そのうち、化合物1-2がHILの合計重量に対して25%であり、HILの厚さが100Åである。そして、化合物HT-7を蒸着して正孔輸送層(HTL)として用い、厚さが400Åである。化合物EB1を電子ブロッキング層(EBL)として用い、厚さが50Åである。次に、赤色光発光ドーパンド化合物D-4をホスト化合物RHにドーピングして赤色光発光層(EML)を形成し、そのうち、化合物D-4ドーピング割合が3wt%であり、厚さが400Åである。そして、化合物ET1およびLiQを共蒸着して電子輸送層(ETL)として用い、厚さが350Åであり、そのうち、LiQがETL層の合計重量に対して60%である。ETL上において、10ÅのLiQを蒸着して電子注入層(EIL)として用いた。最後、1200ÅのAlを蒸着して陰極として用いた。蒸着した該素子をグローブボックスに遷移させ、ガラスカバーを用いてカプセル化して該素子を完成させた。
【0207】
実施例4における一部の素子の構造は、以下の表に示される。用いられる材料が1種超えの有機層は、下記表に記載の重量比で異なる化合物をドーピングすることにより得られる。
【0208】
【0209】
素子に新たに用いられる材料の構造は、以下のように表される。
【化20】
【0210】
実施例4の素子の性能を測定した。そのうち、色座標(CIE)、電圧および外部量子効率(EQE)は、電流密度15mA/cm2の条件下で測定されたものであり、素子のηは、EQE/(電圧*ξ)およびξが1であることに従って算出されたものであり、素子の耐用年数(LT95)は、定電流密度80mA/cm2的の駆動下で輝度が初期輝度の95%に減衰した実際測定時間である。これらのデータは、表8に示される。
【0211】
【0212】
実施例4において、LUMOエネルギーレベルが深いET1およびLiQを用いて共蒸着しETLを形成した。ET1のLUMOエネルギーレベルが-2.859eVであり、-2.8eVよりも小さく、且つETLが発光層に直接接触したので、追加のHBL構造を用いる必要がなく、素子の製造に寄与している。表8における素子のデータから分かるように、素子の実施例4の電圧が僅かに3.2Vであり、EQEが28%に達し、素子の耐用年数がさらに342hに達し、より重要なのは、そのηが8.75であり、極めて高いレベルに達したので、本発明の素子は、非常に優れた総合的な性能を有する。
【0213】
上記実施例および比較例の比較分析から分かるように、本発明は、特に選択された第1有機材料および第2有機材料を第1有機層(HIL)として用い、第1有機材料の濃度を調節・制御してHILの導電率を制御することにより、HILの導電率≧3*10-5S/mとなった。本発明に係る上記特徴を備えた第1有機層を含む有機エレクトロルミネッセンス素子は、発光顔色が異なる素子において、いずれも、効率電圧比が高く(低い電圧および高い効率を併せ持つ)、耐用年数が長いなどの優れた総合的な素子の性能を示すことができ、商用素子に広く使用される極めて大きな潜在力を有する。
【0214】
ここで記載される各種の実施例は、例示的なものに過ぎず、本発明の範囲を限定するためのものではないことを理解すべきである。そのため、当業者にとって、保護しようとする本発明は、本明細書に記載される具体的な実施例および好ましい実施例の変形を含むことが自明である。本発明の構想を逸脱しない前提で、本明細書に記載される材料および構造の多くは、他の材料および構造で代替することができる。本発明がなぜ機能するかについての様々な理論は、限定的ではないことを理解すべきである。