(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】野菜等自動収穫装置
(51)【国際特許分類】
A01D 45/00 20180101AFI20240401BHJP
【FI】
A01D45/00 Z
(21)【出願番号】P 2022123350
(22)【出願日】2022-08-02
(62)【分割の表示】P 2020167273の分割
【原出願日】2020-10-01
【審査請求日】2022-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】521507198
【氏名又は名称】プロダクトソリューションエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104569
【氏名又は名称】大西 正夫
(72)【発明者】
【氏名】畝村 暢一
(72)【発明者】
【氏名】中田 健信
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-046752(JP,A)
【文献】特許第3506779(JP,B2)
【文献】米国特許第09462749(US,B1)
【文献】特開平07-203744(JP,A)
【文献】特開平11-075800(JP,A)
【文献】特開2014-187925(JP,A)
【文献】特開2016-021944(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロッコリーその他の野菜又は果実を選別して自動的に収穫する野菜等自動収穫装置において、前記野菜等を撮影する撮影部と、前記撮影の準備のために当該野菜等に向けてエアーその他の流体を斜め下向きに噴射して当該野菜等の表面に重なった葉その他の撮影障害物を除去する流体噴射部とを備え、
前記野菜がブロッコリーであり且つ前記撮影障害物がブロッコリーの外葉である場合、
前記ブロッコリーの外葉に接触可能な位置に設けられており且つ走行台車の走行に伴って当該外葉を押し倒す接触部を更に備え、前記流体噴射部は、前記接触部との接触から離れて元の状態に戻ろうとする当該ブロッコリーの外葉に対し前記流体の後方噴射により当該外葉を押し広げる構成になっていることを特徴とする野菜等自動収穫装置。
【請求項2】
請求項1記載の野菜等自動収穫装置において、収穫対象の前記ブロッコリーの茎を切断する茎切断部と、当該ブロッコリーを収穫する収穫部とを更に備えることを特徴とする野菜等自動収穫装置。
【請求項3】
請求項1記載の野菜等自動収穫装置において、
前記ブロッコリーの外葉を除去するための葉除去部と、前記葉除去部を移動させて収穫対象の当該ブロッコリーにセットさせる移動部とを更に備え、前記撮影部が前記葉除去部に配設された構成になっていることを特徴とする野菜等自動収穫装置。
【請求項4】
請求項3記載の野菜等自動収穫装置において、
前記葉除去部は、全体として円筒状の形状をなしており且つ前記ブロッコリーを取り囲んだ状態で当該ブロッコリーの外葉を切除するカッター部と、前記カッター部を回転させる回転駆動部とを有し、前記撮影部が前記カッター部の回転中心線上に配置された構成になっていることを特徴とする野菜等自動収穫装置。
【請求項5】
請求項2記載の野菜等自動収穫装置において、
前記茎切断部は、前記収穫部に隣接して配設された開閉アーム機構であって、先端側で前記ブロッコリーを挟んで保持可能な一対のアームと、前記一対のアームの間に配置されており且つ当該アームを開閉可能に支持する支持部と、前記一対のアームを開閉させる開閉部と、前記一対のアームの一方の先端部に設けられており且つ前記ブロッコリーの茎を切断するための刃と、前記一対のアームの他方の先端部に設けられており且つ前記ブロッコリーの一部に当接する当接部と、当該ブロッコリーを前記収穫部に移す移送部とを有した構成になっていることを特徴とする野菜等自動収穫装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はブロッコリー等の野菜又は果実を自動的に選別して収穫する野菜等自動収穫装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の野菜等自動収穫装置は、現代の農業が抱える人手不足や経営課題の解決に貢献可能なものとして注目されている。本出願人は、ブロッコリーを対象とし、その外葉を広げて当該ブロッコリーの該当面を露出させ、その撮影画像から当該ブロッコリーの育成状況等を把握して収穫するか否かを判定する機能を有した野菜自動収穫装置を提案した(特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来例による場合、下記のような問題が指摘されていた。第1には、ブロッコリーは生育上のバラツキが大きいことから、平面ブラシを用いた機構では、その外葉を上手く広げることができないことがある。第2には、ブロッコリーを収穫するか否かを判別するためのカメラと外葉をカットする機構とが離れた位置にあったため、同機構がブロッコリーに対して位置ずれし、これに伴って同機構のカッターによりブロッコリーに傷を与えることがあった。第3には、収穫したブロッコリーを圃場上に落下させていたことから、これを拾い上げて運ぶ作業が必要となっていた。第4には、ブロッコリーの外葉を広げる機構が大型であり組み立て等が大変になっていた。
【0005】
このような問題が内在していたことから、所望のブロッコリーを安定して収穫することができないばかりか、装置の高性能化及び低コスト化を図ることが困難になっていた。このような問題は、ブロッコリー以外の他の野菜や果実を収穫する装置についても同様の問題が指摘されると推測される。
【0006】
本発明は上記した背景の下で想作されたものであって、その目的とするところは、所望のブロッコリーを安定して収穫することが可能な野菜等自動収穫装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る野菜等自動収穫装置は、ブロッコリーその他の野菜又は果実を選別して自動的に収穫する野菜等自動収穫装置であって、前記野菜等を撮影する撮影部と、前記撮影の準備のために当該野菜等に向けてエアーその他の流体を斜め下向きに噴射して当該野菜等の表面に重なった葉その他の撮影障害物を除去する流体噴射部とを備え、
前記野菜がブロッコリーであり且つ前記撮影障害物がブロッコリーの外葉である場合、ブロッコリーの外葉に接触可能な位置に設けられており且つ走行台車の走行に伴って当該外葉を押し倒す接触部を更に備え、前記流体噴射部は、前記接触部との接触から離れて元の状態に戻ろうとする当該ブロッコリーの外葉に対し前記流体の後方噴射により当該外葉を押し広げる構成になっている。
【0008】
このような構成の野菜等自動収穫装置による場合、ブロッコリーの表面上に重なった外葉である撮影障害物を流体噴射方式により除去する構成になっていることから、ブロッコリーの生育上のバラツキが大きいときであっても撮影障害物を効果的に除去することが可能になる。その結果、ブロッコリーの育成状態を正確に把握することができ、この点で所望のブロッコリーを安定して収穫することが可能になる。また、その方式上、撮影障害物を除去するための機構がシンプルになり、組み立ての容易化も図ることが可能になった。よって、装置の高性能化及び低コスト化を図ることが可能になる。特に、接触部及び流体噴射部により、ブロッコリーの外葉を効果的に押し広げることが可能になり、この点で装置の高性能化を一層図ることが可能になった。
【0009】
好ましくは、収穫対象の前記ブロッコリーの茎を切断する茎切断部と、当該ブロッコリーを収穫する収穫部とを更に備えた構成にすることが望ましい。
【0010】
このような構成の野菜等自動収穫装置による場合、茎が切断されたブロッコリーが収穫部に移される構成になっていることから、ブロッコリーの収穫が全自動となり、この点で装置の高性能化を一層図ることが可能になった。
【0011】
好ましくは、前記ブロッコリーの外葉を除去するための葉除去部と、前記葉除去部を移動させて収穫対象の当該ブロッコリーにセットさせる移動部とを更に備え、前記撮影部が前記葉除去部に配設された構成にすることが望ましい。
【0012】
このような構成の野菜等自動収穫装置による場合、葉除去部と撮影部との間の位置関係が同一である構成になっていることから、ブロッコリーに対する葉除去部の位置制御の精度が良好になり、その結果、ブロッコリーを痛めることなくその外葉を除去することが可能になる。この点で装置の高性能化を一層図ることが可能になった。
【0013】
好ましくは、前記葉除去部は、全体として円筒状の形状をなしており且つ前記ブロッコリーを取り囲んだ状態で当該ブロッコリーの外葉を切除するカッター部と、前記カッター部を回転させる回転駆動部とを有し、前記撮影部が前記カッター部の回転中心線上に配置された構成にすることが望ましい。
【0014】
このような構成の野菜等自動収穫装置による場合、撮影部を含めた葉除去部の構成がシンプルとなり、その組み立ても容易となる。この点で、装置の高性能化及び低コスト化を一層図ることが可能になった。
【0015】
好ましくは、前記茎切断部は、前記収穫部に隣接して配設された開閉アーム機構であって、先端側で前記ブロッコリーを挟んで保持可能な一対のアームと、前記一対のアームの間に配置されており且つ当該アームを開閉可能に支持する支持部と、前記一対のアームを開閉させる開閉部と、前記一対のアームの一方の先端部に設けられており且つ前記ブロッコリーの茎を切断するための刃と、前記一対のアームの他方の先端部に設けられており且つ前記ブロッコリーの一部に当接する当接部と、当該ブロッコリーを前記収穫部に移す移送部とを有した構成にすることが望ましい。
【0016】
このような構成の野菜等自動収穫装置による場合、片刃方式である構成になっていることから、茎の切断面が綺麗だけでなく部品点数が少なくなりメンテナンスが容易となる。また、ブロッコリーの茎を切断した直後に収穫部に移す構成となっていることから、収穫作業が楽になる。この点で装置の高性能化及び低コスト化を一層図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る野菜等自動収穫装置の一部省略斜視図である。
【
図3】同装置の送風ノズル及び葉カット機構等が示された斜視図である。
【
図4】同装置の葉カット機構の構成を説明するための概略構成図であって、(a)は同機構の側面図、(b)は同機構に含まれたカッター部等の部分の底面図である。
【
図6】同装置の除去バー及び送風ノズルの機能を説明するための模式図であって、(a)は圃場に生育するブロッコリーを示した図、(b)はブロッコリーが除去バーで押し倒される様子を示した図、(c)はブロッコリーの外葉がエアーにより押し広げられる様子を示した図である。
【
図7】同装置の茎カット機構及び飛ばし機構の機能を説明するための図であって、(a)はブロッコリーの茎が切断される前の状態を示した図、(b)はは切断直前の状態を示した図、(c)は切断直後の状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。本実施形態に係る野菜等自動収穫装置Aは、
図1に示されているように、ブロッコリー1(野菜に相当)を選定して自動的に収穫する装置であって、作業者が乗って操作することにより圃場上を一定速度で走行可能なクローラ100(走行台車に相当)に備えられている。同装置Aは、ブロッコリー1の花蕾11のサイズを画像認識により測定し、所定以上のサイズであると判定したときには、そのブロッコリー1の外葉12及び茎13を順次的にカットして収穫し、そのブロッコリー1をクローラ100の後方に連結された運搬車110に乗せられた容器111に収容する機能を有している。また、ブロッコリー1の花蕾11のサイズを正確に測定するために、撮影前の準備として、ブロッコリー1の花蕾11の表面に部分的に重なった外葉12(撮影障害物に相当)を押し広げて花蕾11を露出させる機能(花蕾11を撮影する上で邪魔になる外葉12を除けて除去する機能)を併有している。
【0019】
同装置Aは2条収穫用の装置であって、
図2に示されているように下記の主要構成部がクローラ100内の左右対象な位置に各々配設されている。なお、右側に位置する構成部の番号については、末尾にRを付して表す一方、左側に位置する構成部の番号については、末尾にLを付して表すことにする。
【0020】
同装置Aは、ブロッコリー1の外葉12に接触可能な位置に設けられており且つクローラ100の走行に伴って外葉12を押し倒す除去バー10R,10L(接触部に相当)と、ブロッコリー1を撮影するカメラ40R,40L (撮影部に相当)と、その撮影の準備のためにブロッコリー1に向けてエアーα(流体に相当)を噴射して花蕾11の表面に重なった外葉12を押し広げる送風ノズル20R,20L(流体噴射部に相当)と、ブロッコリー1の外葉12を除去する葉カット機構30L,30R(葉除去部に相当)と、葉カット機構30L,30Rを移動させてブロッコリー1にセットさせる移動機構50L,50R(移動部に相当)と、ブロッコリー1の茎13を切断する茎カット機構60L,60R(茎切断部に相当)と、ブロッコリー1を収穫する搬送コンベア80(収穫部に相当)と、茎13が切断されたブロッコリー1を搬送コンベア80に移送する飛ばし移送機構70L,70R(移送部に相当)等を備えている。また、クローラ100には、同装置Aの各構成部を制御するコントローラ90が備えられている。
【0021】
除去バー10Rについては、
図2及び
図3に示されているように円筒状のローラーであって、クローラ100内の前方右寄りの位置に横方向に取り付けられている。除去バー10Rは、ブロッコリー1の花蕾11に接触することなく外葉12の先端部分のみ接触可能な高さ位置に配置されており、図外のハンドル機構により高さ調整可能になっている。なお、除去バー10Lについても同様な構成になっている。
【0022】
カメラ40Rについては、
図2乃至
図4に示されているように、クローラ100内の除去バー10Rの後方位置で且つブロッコリー1の撮影のために真下に向けて設けられており、具体的には葉カット機構30Rの内部に配設されている。詳しいことは後述する。なお、カメラ40Lについても同様な構成になっている。
【0023】
送風ノズル20Rについては、
図3に示されているようにクローラ100内の除去バー10Rの上側近くに取り付けられており、送風ブロア21Rから送り込まれたエアーαを常時噴射させる構成になっている。ブロッコリー1の外葉12を効果的に押し広げるために、ノズル先のエアー排出口は横に延びた長方形とされ、ノズル先が後方斜め下向きにされている。なお、送風ノズル20Lについても同様な構成になっている。
【0024】
葉カット機構30Rについては、
図4に示されているように、移動機構50Rにより三次元的(XYZ)に移動可能に保持されている。具体的には、全体として円筒状の形状をなしており且つブロッコリー1の花蕾11を取り囲んだ状態でブロッコリー1の外葉12を切除するカッター部31Rと、カッター部31Rを回転させる回転駆動部32Rとを有し、カメラ40Rがカッター部31Rの回転中心線上に配置された構成になっている。なお、葉カット機構30Lについても同様な構成になっている。
【0025】
カッター部31Rは、移動機構50Rの移動テーブル551Rに軸支されており、軸状をなした支持軸部313Rに下向き刃311R及び横向き刃312Rが120度ピッチ間隔で各々取り付けられた構成になっている。下向き刃311Rについては、ブロッコリー1のうち主として側方に放射状に延びた外葉12を切断するにようになっている一方、横向き刃312Rについては、ブロッコリー1のうち主として上方に延びた外葉12を切断するようになっている。カメラ40Rは、釣り下げ部41Rの先端側に固定され、支持軸部313Rの基端側の内部に移動自在に配設されている。カメラ40Rの撮影レンズ部は、支持軸部313Rの下面中央に形成された開口314Rを通じて露出している。
【0026】
回転駆動部32Rはモータ、減速機構及びタイミングベルト等からなる機構であって、移動機構50Rの移動テーブル551Rに設けられている。即ち、同タイミングベルトが支持軸部313Rの外周面に掛け回され、同モータが駆動すると、カッター部31Rを所定速度で回転させる構成になっている。
【0027】
移動機構50Rについては、クローラ100内の茎カット機構60Rの近くに設けられた3軸移動機構であって、移動テーブル551Rが取り付けられた移動部55Rと、移動テーブル551Rを鉛直方向(Z軸)に移動自在に支持するガイド部54Rと、移動テーブル551RをZ軸に沿って移動可能な直線駆動部53Rと、移動テーブル551RをY軸に沿って移動可能な直線駆動部52Rと、移動テーブル551RをX軸に沿って移動する直線駆動部51Rとを有している。即ち、カッター部31Rを移動させてブロッコリー1にセットし、下向き刃311Rの各間に花蕾11を入れることが可能な構成になっている。
【0028】
茎カット機構60R及び飛ばし移送機構70Rについては、クローラ100内の移動機構50Rの後方位置で且つ搬送コンベア80の水平部81に隣接して配設された開閉アーム機構である。茎カット機構60Rについて、
図5を参照してその構成を説明する。但し、
図5に示されものは正確には茎カット機構60Lである。具体的には、先端側でブロッコリー1を挟んで保持可能な一対のアーム61と、一対のアーム611を構成するアーム611(一方のアームに相当)とアーム612(他方のアームに相当)との間に配置されており且つ一対のアーム61を図示矢印方向に開閉可能に支持する支持部62と、一対のアーム61を開閉させる電動シリンダ63,63(開閉部に相当)と、アーム611Rの先端部に設けられており且つブロッコリー1の茎13を切断するための板状の刃64と、アーム612の先端部に設けられており且つブロッコリー1の茎13の反対面に当接する断面L状の当接部65と、ブロッコリー1を搬送コンベア80の水平部81に移す飛ばし移送機構70とを有した構成になっている。支持部62は、一対のアーム61を逆V状に開閉自在に軸支するアングル部材であり、その上側に電動シリンダ63,63が取り付けられている。なお、茎カット機構60Lについては、左右逆となる点を除いて上記したものと同様な構成になっている。
【0029】
飛ばし移送機構70Rについて、
図5を参照してその構成を説明する。但し、
図5に示されたものは正確には飛ばし移送機構70Lである。具体的には、ブロッコリー1の側方に当接可能な飛ばし板71と、アーム612の中央部分に揺動可能に設けられており且つ先端側に飛ばし板71が設けられた支持アーム部72と、支持アーム部72の基端側と支持部62との間に介在されたショックアブゾーバ73(弾性体に相当)とを有する。支持アーム部72とショックアブゾーバ73とはリンク機構となっている。支持アーム部72は、アーム612に取り付けられた支持部材6121に保持されて揺動可能になっている。
【0030】
このような茎カット機構60及び飛ばし移送機構70の動作を
図7を参照して説明する。電動シリンダ63,63の初期状態では、
図7(a)に示されているように、一対のアーム61が開状態であり、当接部65と刃64との間が開いてブロッコリー1が素通り可能になっている。
【0031】
電動シリンダ63,63が動作してロッドが伸びると、
図7(b)に示されているように、一対のアーム61が閉状態になり、当接部65と刃64との間にブロッコリー1の茎13が挟まれる。この状態では、飛ばし板71がブロッコリー1の主として花蕾11の側面に当接し、アーム611の先端部との間に挟まれる。飛ばし板71が押し戻されて若干移動すると、これに伴ってショックアブゾーバ73が収縮し、弾性エネルギーが蓄えられる状態になる。その後、ブロッコリー1の茎13が刃64により切断されると、ショックアブゾーバ73の弾性エネルギーが開放され、そのときの弾性力により、飛ばし板71が
図7(c)に示されているように逆方向に移動し、その勢いによりブロッコリー1が搬送コンベア80の水平部81に向けて飛ばされる。ショックアブゾーバ73の弾性力については、ブロッコリー1が水平部81に受け止められる位置にまで飛ばされるに適した値に設定されている。なお、茎カット機構60L及び飛ばし移送機構70Lについても上記と同様になっている。
【0032】
搬送コンベア80は、飛ばし移送機構70R,70Lにより各々飛ばされたブロッコリー1を受け止めて運搬車110上の容器111に搬送する機器であって、クローラ100の中央部に前後方向に向けて設けられている。搬送コンベア80は、収穫したブロッコリー1を水平方向に搬送する水平部81と、引き続いて斜め上方向に搬送する傾斜部82から構成されており、収穫後のブロッコリー1を容器111まで常時搬送可能になっている。水平部81についてはクローラ100内の飛ばし移送機構70Rと飛ばし移送機構70Lとの間に位置するが、傾斜部82については、クローラ100の下側位置から運搬車110の上方位置まで延びている。
【0033】
コントローラ90については、カメラ40Rの撮影画像に基づいて画像認識の処理を行い、以下のような処理を行っている。まず、カメラ40Rの撮影画像中にブロッコリー1の花蕾11が含まれるか否かを判定する。含まれると判定したときは、その花蕾11のサイズを計測し、その計測結果が所定の基準を超えたときは収穫対象であると判定する。収穫対象ではないと判定したときには、葉カット機構30R等を動作させずにブロッコリー1を素通りさせる一方、収穫対象であると判定したときには、葉カット機構30Rを初期位置から移動させる。即ち、花蕾11の中心位置がカメラ40Rの撮影画像中の所定の基準位置に一致するように、移動機構50Rの直線駆動部51R、52Rを各々動作させる。花蕾11の中心位置がカメラ40Rの撮影画像中の所定の基準位置に一致すると、移動機構50Rの直線駆動部53Rを所定量動作させる。すると、葉カット機構30Rのカッター部31Rがブロッコリー1にセットされる。回転駆動部32Rは常時駆動していることから、ブロッコリー1の外葉12がカッター部31Rにより切断される。その後、葉カット機構30Rを初期位置に戻す。
【0034】
ブロッコリー1の外葉12が葉カット機構30Rにより切断した時点から所定時間経過後に茎カット機構60Rを上記の通りに動作させる。すると、ブロッコリー1の茎13が切断され、その後、飛ばし移送機構70Rによりブロッコリー1が搬送コンベア80に搬送される。なお、コントローラ90によるカメラ40Lの画像データに基づく葉カット機構30L等の制御についても上記と同様であり、2つの処理が同時並行的に行われる。
【0035】
野菜等自動収穫装置Aにおいては、ブロッコリー1を収穫するか否かを正確に判定するために、ブロッコリー1の花蕾11の表面に部分的に重なった外葉12を押し広げて花蕾11を完全に露出させる機能を有しているが、その原理を
図6を参照して説明する。
【0036】
クローラ100が
図6(a)に示された圃場上のブロッコリー1の上をクローラ100が通ると、
図6(b)に示されているように、ブロッコリー1の外葉12の先端部が除去バー10Rに接触して前方に押し倒される。その後、前方に押し倒された外葉12の先端部が除去バー10Rから離れると、外葉12自体の弾力により、
図6(c)に示されているように後方に押し戻されて元の位置に戻る。
【0037】
除去バー10Rと送風ノズル20Rとの間の位置関係上、外葉12が後方に押し戻される過程でエアーαが外葉12の表面に直接的に当たる。しかもエアーαの当たる方向が斜め下向きであり、エアーαの噴射範囲が広がることから、ブロッコリー1に育成上のバラツキがあっても特に問題なく、外葉12を効果的に押し広げることが可能になる。
【0038】
上記実施形態に係る野菜等自動収穫装置Aによる場合、ブロッコリー1の生育上のバラツキが大きいときであっても、エアーαの噴射により外葉12を効果的に押し広げることができ、ブロッコリー1の育成状態を正確に把握することが可能になる。また、葉カット機構30Rの位置制御の精度が良好になることから、従来とは異なりブロッコリー1の花蕾11が傷付くこともない。加えて、片刃方式によりブロッコリー1の茎13を切断していることから、その切断面が綺麗である。これらの結果、所望のブロッコリー1を安定して収穫することが可能になる。更に、外葉12及び茎13が切断されたブロッコリー1が自動的に容器111に収容されることから、従来とは異なり収穫作業が楽になる。特に装置Aの構成がシンプルであることから、部品点数が少なく組立ても容易になる。また、カメラ40Rが支持軸部313Rの基端側の内部に位置していることから、ブロッコリー1の外葉12の切断時に生じる切りクズがカメラ40Rの撮影レンズ部に付着することが殆どなくなり、メンテナンスが容易となる。よって、装置Aの高性能化及び低コスト化を大幅に図ることが可能になった。
【0039】
なお、本発明に係る野菜等自動収穫装置は上記実施形態に限定されず、収穫対象としては、カリフラワー、キャベツ、スイカ等の野菜があり、野菜以外はミカン、リンゴ、メロン等の果実がある。これらの場合の撮影障害物としては、具体的には、野菜等の表面に覆われる葉又はその周辺にある枝等がある。このような果実等を収穫するに適した装置の基本構成については、走行台車に装備されたロボットアーム等により自動的に収穫する形態が考えられる。野菜等のサイズだけでなく、その病害虫被害、病気等の有無を併せて判定し、ランク毎に分けて容器に収穫する形態をとってもよい。
【0040】
流体噴射部については、流体につきエアー等の気体だけでなく水等の液体でも良く、これを野菜等に向けて噴射可能な構成であれば足り、野菜等の葉を除ける形態だけでなく、野菜等の表面に付着した土等を除去する形態でもかまわない。流体を噴射するノズルについては、野菜等の形状・サイズ等に応じて適宜設計変更すれば良く、異なる方向から複数の流体を噴射させる形態でも構わない。
【0041】
接触部については、野菜等の葉に接触する部材を回転させる構成でも良く、流体噴射部だけで撮影障害物を除去可能であれば省略した形態でも構わない。
【0042】
撮影部については、野菜等を撮影可能であれば足り、走行台車の外側に取り付ける形態でも良い。
【0043】
葉除去部については、野菜等の葉の形状等に応じて適宜設計変更すれば良く、葉を切断する必要がない対象については省略した形態でも構わない。
【0044】
茎切断部については、野菜等の茎の形状等に応じて適宜設計変更すれば良い。例えば、野菜等の対象につき茎が土に埋まっているときには、掘り起こすための部材と一体的な構成とし、木の枝に結実された果実等であるときは、ロボットアーム等の先端側に設けられたカッターを開閉する構成とし、ロボットアーム等の先端側に設けられる形態にすると良い。
【符号の説明】
【0045】
A 野菜等自動収穫装置
10L,10R 除去バー(接触部)
20L,20R 送風ノズル(流体噴射部)
30L,30R 葉カット機構(葉除去部)
40L,40R カメラ(撮影部)
50L,50R 移動機構(移動部)
60L,60R 茎カット機構(茎切断部)
70L,70R 飛ばし移送機構(移送部)
80 搬送コンベア(収穫部)
90 コントローラ
100 走行台車
1 ブロッコリー(野菜)
11 花蕾
12 外葉(撮影障害物)
13 茎
α エアー(流体)