(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】安全アクセスシステムを備えた自動倉庫
(51)【国際特許分類】
B65G 1/04 20060101AFI20240401BHJP
G05B 9/02 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
B65G1/04 535
B65G1/04 547Z
B65G1/04 521
B65G1/04 555A
G05B9/02 A
(21)【出願番号】P 2022503419
(86)(22)【出願日】2020-07-17
(86)【国際出願番号】 IB2020056727
(87)【国際公開番号】W WO2021009718
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】102019000012081
(32)【優先日】2019-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】522021240
【氏名又は名称】ユーロフォーク・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】EUROFORK S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】ガローラ,アレッサンドロ
(72)【発明者】
【氏名】ロルフォ,ジャンルカ
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102013205397(DE,A1)
【文献】国際公開第2017/162606(WO,A1)
【文献】特開2016-113240(JP,A)
【文献】国際公開第2022/166643(WO,A1)
【文献】特開2017-160040(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/04
G05B 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動倉庫であって、
少なくとも1つの主経路(10)と、前記主経路(10)を横断する複数の二次経路であって、前記二次経路に沿って配置された複数の保管ステーション(12)を備える前記二次経路(11)と、
前記主経路に沿って移動可能な、電動牽引式の少なくとも1つの主車両(20)と、
前記二次経路に沿って移動可能であり、前記主車両(20)によって搬送可能であり、バッテリおよび/またはスーパーキャパシタを電源とする電動牽引式の少なくとも1つの補助車両(30)と、
前記倉庫内の定位置にある少なくとも1つのアクセスポイント(40)と、を備え、
主車両および補助車両(20、30)のそれぞれは、
無線信号を送受信するように配置された無線デバイス(21、31)と、
安全モジュールに関連するそれぞれの制御ユニット(22、32)であって、前記安全モジュールが、それぞれの安全認証されたウォッチドッグタイマ(23、33)およびカウンタを含む、前記制御ユニット(22、32)と、
を搭載しており、
各車両の前記無線デバイス(21、31)が、検証信号を伝送する前記車両の前記カウンタの値を含む検証信号を、所定の時間間隔で、前記アクセスポイント(40)に直接的または間接的に送信するように配置され、
前記アクセスポイント(40)が前記受信した検証信号に応答して信号を前記無線デバイス(21、31)に送信するように設定され、
各無線デバイス(21、31)が前記応答信号を受信するたびに、前記それぞれのカウンタはインクリメントまたはデクリメントされて、前記それぞれの関連するウォッチドッグタイマは、前記それぞれの車両のカウンタの値が、前記検証信号を介して受信した前記カウンタの値と異なる時点から、時間の計測を開始し、
各制御ユニットは、前記ウォッチドッグタイマを介して、所定時間よりも長い時間が経過したことを検出するときに、関連する車両を通電解除するように設定されている、
自動倉庫。
【請求項2】
前記アクセスポイント(40)が、安全認証された通信を特徴とするデバイスではない、請求項1に記載の自動倉庫。
【請求項3】
前記無線デバイス(21、31)が、安全認証された通信を有するデバイスではない、請求項1または2に記載の自動倉庫。
【請求項4】
前記制御ユニットがPLCである、請求項1または2または3に記載の自動倉庫。
【請求項5】
各ウォッチドッグタイマ(23、33)が、前記それぞれの安全モジュールに組み込まれている、請求項1から4のいずれか一項に記載の自動倉庫。
【請求項6】
前記所定時間は、所与の倉庫に対して最長持続時間を有するミッションと推定されるミッションを補助車両に実行させる時間間隔を、十分にカバーする長さとなるように選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の自動倉庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間の安全を確保するシステムを備えた自動倉庫に関する。本発明の適用分野は、例えば国際公開第2015/011575号に記載されているような、シャトルおよびサテライトによって貨物ユニットを移動させるシステムを備えた自動倉庫の分野である。
【背景技術】
【0002】
前述のタイプの自動倉庫は、少なくとも1つの主経路と、主経路に直交する複数の二次側路とを備え、これらの経路に沿って貨物ユニットの受け入れに適した保管ステーションが画定される。貨物ユニットは、第1の主自走車両(「シャトル」と呼ばれる。または、代替的には「スタッカクレーン」と呼ばれる。)と、第1の主自走車両によって搬送可能な第2の補助自走車両(「サテライト」と呼ばれる)との2種類の車両によって移動される。シャトルは主経路に沿って移動し、サテライトを搬送する。貨物ユニットを格納またはピックアップするステーションのある二次経路にシャトルが到達すると、サテライトはシャトルを離れ、二次経路に沿って移動して、貨物ユニットを格納するか、または受け取ることができる。
【0003】
サイクルタイムを短縮し、時間単位で出入りするパレットまたは貨物ユニットの数を増やすことへの需要はますます高まっている。サイクルタイムを最適化するために、サテライトがシャトルを離れた後、シャトルが倉庫内を移動し、サテライトによって実行される動作と少なくとも部分的に同時に、別のピックアップまたは荷下ろしの動作を実行することができる。
【0004】
シャトルおよびサテライトを動かすための制御信号は、倉庫内の定位置から無線制御信号を伝送するWi-Fi(登録商標)のアクセスポイントを介してサーバから与えられる。アクセスポイントはコマンドを与え、引き換えに車両からリアルタイムでの位置情報を含む信号を受信する。アクセスポイントは、シャトルとサテライトとの両方の動きを制御する信号をシャトルに伝送する。シャトルは中継器として機能し、サテライトのための制御信号をシャトルに搭載されたアンテナを介して受信し、サーバに再送信する。サテライトの制御信号は、シャトル(またはスタッカクレーン)に搭載された処理および制御ユニットによって処理され、制御信号が生成されてサテライトに伝播される。
【0005】
自動倉庫では、人間の安全が確保された状態で作業する必要がある。オペレータが自動倉庫内に手動で介入する必要がある場合、車両移動システムは、自動化領域に入るオペレータの安全を危険にさらすことなく、アクセスが安全に行われることを保証しなければならない。信号が無線で伝送されて車両がバッテリを電源としているため、オペレータが倉庫内にアクセスする際には、車両の動作がすべて通電解除されることによってマシンは安全モードになっているとみられ得るという絶対的な確実性が特に必要である。倉庫へのアクセスドアは、すべてのマシンが緊急状態にある限り、すなわち通電解除されているのでない限り、人の立ち入りを可能としない。
【0006】
現在の最新技術で人間の安全を確保するために、制御信号伝送システムの一部であるコンポーネントは、コンポーネントが動作していない場合でも、不具合が事故を引き起こすか、または事故の発生を可能にする確率が無視できるほど低いことを保証する、コンポーネントの安全認証と通信(プロトコル)の安全認証との両方を取得している必要がある。自動倉庫での適用には、通常、最低限でパフォーマンスレベル「D」(PLd)の認証を必要とする。
【0007】
必要な安全レベルを達成するために、サテライトを備えたシャトル(またはスタッカクレーン)を有する倉庫に適用される当技術分野では、データが安全に伝送されるという確実性を備えた、信号を無線で伝送する専用コンポーネントを使用する「安全な」通信の使用が知られている。倉庫内のすべてのポイントで信号カバレッジ(signal coverage)を保証する安全な無線データ伝送ネットワークを倉庫内に実装することは、非常に多くのアンテナおよびアクセスポイントが必要となり、個別の用途に合わせたカスタマイズプランも必要となるため、費用がかかり、技術的な観点から限界がある。
【0008】
現在の通信システムでは、シャトルとサテライトとが互いに離れると、2つの車両間の距離によってシャトルとサテライトとの間の通信が一時的に失われる可能性があるため、完全な無線カバレッジの欠如によって使用される通信プロトコル(Profisafe)の安全要件を満たさない。これにより、シャトルは遮蔽時間(masked time)中にミッションを実行すること、サテライトから離れること、サテライトがミッションを実行中のアイドルタイムを利用することができない。さらに、オペレータが自動倉庫内に手動で介入する必要がある場合、アクセスポイントは、それぞれのサテライトに伝送される通電解除コマンドをシャトルに通信する。しかし、シャトルとサテライトとの間の距離が離れすぎると、両者間の無線通信が中断される可能性があり、その結果、シャトルからサテライトへの通電解除コマンドの伝送が妨げられ、アクセスポイントから通電解除要求が送信されても通常の動作が継続される。したがって、オペレータは、すべての車両が通電解除されていることを確信できない。
【発明の概要】
【0009】
本発明の全般的な目的は、現在の安全認証された伝送システムの設置に関連するコストおよび機能上の不利益を被ることなく、安全認証された条件で動作可能な自動倉庫またはシステムを提供することである。本発明の特定の目的は、シャトルと1つまたは複数の移動サテライトとの間の「安全な」通信がなくても、倉庫にアクセスする場合に人間の安全を保証することである。
【0010】
本発明の別の特定の目的は、オペレータが保護された自動化領域に入ることを可能にするために自動化システムを緊急モードにするコマンドが与えられるとき、すべての無線制御自動デバイスが認証された緊急状態にあるという確実性を獲得することである。
【0011】
前述および他の目的および利点は、本発明の一態様によれば、請求項1に定義された特徴を有する自動倉庫によって達成される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項に定義されている。
ここで、本発明による自動倉庫の少数の好ましい実施形態の特徴を説明する。添付の図面を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態による自動倉庫の概略平面図
【
図2】本発明の異なる実施形態による自動倉庫の概略平面図
【
図4】倉庫のアクセスドアが開いており、倉庫内の車両が安全モードになっている動作状態の自動倉庫を概略的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず、
図1を参照すると、自動倉庫は、少なくとも1つの通路または主経路10と、主経路10に対して直交または横断する複数の二次経路11とを備える。典型的には、主経路は倉庫内の中央に延在する直線路であり、二次経路は主経路に直交してその両側に分岐する直線の側路である。
【0014】
二次経路11に沿って、貨物ユニット(図示せず)の受け入れに適した保管ステーション12が画定される。貨物ユニットは、第1の主自走車両20(「シャトル」と呼ばれる)と、第1の車両によって搬送可能な第2の補助自走車両30(「サテライト」と呼ばれる)とによって移動される。本発明が適用可能な自動倉庫の例は、国際公開第2015/011575号により知られている。
【0015】
シャトル20は、1つ、2つ、またはそれ以上のサテライト30の動作を管理して、複数のミッションを少なくとも部分的に同時に実行することができる。
【0016】
任意選択で、倉庫は、多層構造によって複数階に拡張することができ、この配置では、リフタまたはエレベータ35(
図1)を設けてシャトル20を倉庫のある階から別の階へ上下に運ぶことができる。あるいは、倉庫の各階に1つまたは複数の関連するサテライトを備えたシャトルを設置することもできる。
【0017】
シャトル20およびサテライト30は、電動牽引式の車両である。
図1に示す実施形態では、シャトル20およびサテライト30のいずれも、搭載されたバッテリおよび/またはスーパーキャップ(スーパーキャパシタ)によって通電される。
図2に示す実施形態では、サテライト30はバッテリによって通電されるが、シャトル20は、主経路10に沿って延在して、バッテリ/スーパーキャップ駆動のサテライトを搭載したシャトル20またはスタッカクレーンに電流を供給するバスバー13によって通電することができる。
【0018】
アクセスポイント40は、倉庫の固定部分、例えば壁に、好都合には主経路または通路10に対向する中央位置に設置される。アクセスポイント40は、安全認証された通信を特徴とするデバイスではない。「アクセスポイント」とは、有線ネットワーク、または、例えばルータに接続されて、別のモバイルデバイスが無線モードで直接アクセスすることを可能にする電子通信デバイスを意味する。
【0019】
一例として、WPA2-PSK(AES)暗号化による安全な接続を備えた5-GHzの無線デバイスをアクセスポイント40として選択することができる。
【0020】
これに関連して、「安全な」または「安全」という表現は、パフォーマンスレベルPLに基づく安全性に関連付けられた電気機械式、機械式、または油圧式の制御システム部品に関するEN 13849-1:2008に準拠したデバイス、およびSIL(安全度水準)に基づく、プログラマブル電子/電気コマンドおよび制御システムの信頼性と安全性に関するIEC EN 62061-1:2005に準拠したデバイスを意味する。PLとSILとの間には対応関係があり、表にまとめられている。
【0021】
アクセスポイント40は、好ましくはイーサネット技術を用いて、自動倉庫の動作全体を、したがってここで説明する車両の動作も監視するサーバ41(
図3)に接続される。
【0022】
シャトル20には無線デバイス21が設置され、サテライト30には無線デバイス31が設置される。無線デバイス21、31は、Wi-Fi、Bluetooth(登録商標)または他の技術を使用して、信号を受信および/または送信するように適切に構成することができる。アクセスポイント40は、サーバ20から受信した情報をシャトル41に送信する。
【0023】
シャトル20およびサテライト30は安全モジュールに関連する制御ユニット22、32をそれぞれに搭載し、安全モジュールはアプリケーションの安全面の管理に特化している。
【0024】
好ましくは、制御ユニットは、プログラマブルロジックコントローラ(Programmable Logic Controller、PLC)とすることができる。あるいは、制御ユニットは、例えば、マイクロプロセッサまたはマイクロコントローラとすることができる。
【0025】
サーバ41に接続されたアクセスポイント40は、シャトルの無線デバイス21との間で無線通信信号を送受信する。アクセスポイントとシャトルとの間の通信は、安全規格に則って行われても、そうでなくてもよい。安全規格に準拠していない通信の場合、安全認証されていない(例えば、Profisafeプロトコルに準拠していない)通信プロトコルを介して行われる。
【0026】
サテライト30の無線デバイス31は、シャトル20の無線デバイス21による信号の伝送を介して、アクセスポイントから到来するこれらの通信信号を間接的に受信し、シャトル20の無線デバイス21によるこれらの信号の伝送を介して、アクセスポイントに通信信号を送信することができる。シャトルとサテライトとの間のこれらの通信は、安全規格に準拠して行われてはいない。代替的な実施形態では、サテライト30の無線デバイス31は、シャトルの無線デバイス21から独立して、通信信号を直接アクセスポイントとの間で通信(受信および送信)することもできる。
【0027】
したがって、シャトルとサテライトとの間の通信(および場合によってはアクセスポイントとシャトルとの間の通信)の安全規格への非準拠(non-compliance)を補うため、システムがアプリケーションによって要求される安全規格を満たせるように、各制御ユニット22、32は安全モジュールに関連付けられ、当該安全モジュールは、シャトル20およびサテライト30に搭載され、かつ、安全認証されたウォッチドッグタイマ23、33(例えば、シーメンス(Siemens、登録商標)の安全プラットフォーム上で利用可能)を含む。
【0028】
各制御ユニット22、32は、様々な無線デバイス間の通信の中断を検出するために、それぞれのウォッチドッグタイマ23、33を使用して、所定の時間通信に失敗した場合には安全機能を作動させる。
【0029】
各ウォッチドッグタイマ23、33は、それぞれの安全モジュールに組み込まれたそれぞれのカウンタ(監視タイマ)に関連付けられる。
【0030】
アクセスポイント40は、閉じた信号ループにしたがって、受信した検証信号に応答して、シャトルの無線デバイス21とサテライトの無線デバイス31とに信号を送信するように設定される。
【0031】
特に、通常の動作中、シャトル20の無線デバイス21は、検証信号を所定の時間間隔で定期的にアクセスポイント40に、ひいてはサーバ41に送信する。サテライト30の無線デバイス31もまた、シャトル20の無線デバイス21を介して、検証信号をアクセスポイント40に定期的に送信する。
【0032】
応答信号を受信するたびに、この応答信号を受信した車両のそれぞれのカウンタがインクリメント(または設定によってはデクリメント)される。受信した値が送信した値と異なる場合、この差異が発生した車両のウォッチドッグタイマは経過時間の計測を開始する。
【0033】
ウォッチドッグタイマによって計測された時間は、それぞれのカウンタが変更されるたびにリセットされる。時間計測値が所定の非通信時間を超える場合、問題の車両に搭載された制御ユニットは自動的に車両を通電解除する。
【0034】
図3を参照すると、それぞれの安全コンタクタまたは安全リレー24、34は、シャトル20、およびサテライト30に搭載され、シャトル20またはサテライト30の制御ユニット22、32と、電気推進システム(図示せず)を制御する駆動ユニット25、35とにそれぞれに動作可能に接続される。安全リレー24、34は、搭載された制御ユニット22、32から通電解除コマンドを受信して、バッテリおよび/またはスーパーキャップから(またはシャトルがバッテリを電源としない場合はバスバーから)駆動ユニット25、35への、ひいては推進システムへの電力の供給を遮断するために開くことによって、車両を安全モードにするように設けられる。
【0035】
好ましくは、所定時間は、最長持続時間のミッションと推定されるミッションをサテライトに実行させる時間間隔を、十分にカバーする長さとなるように選択される。これにより、サテライトとシャトルとの間の距離がシステムのリスク分析を満たすものの、安全モードに移行する必要のない一時的な通信の喪失が実際に生じる場合に、サテライトは安全モードに移行することが防がれる。このため、所定時間は、倉庫内でサテライトに移動可能な最大経路の長さにしたがって算出することができる。
【0036】
自動化機器が動作する倉庫の領域はフェンス60(
図4)に囲まれており、アクセス要求を介して、または適切に設計されたアクセスによって、1つまたは複数の安全ドア61からのみアクセスが可能である。
【0037】
上記の安全システムを備えた自動倉庫への安全なアクセス手順を以下に説明する。自動倉庫にアクセスするには、オペレータ/保守技術者は、まず、安全ドア61の近くの電気キャビネットまたは「主制御キャビネット」63に配置されたコントローラ65の入庫ボタン62(入庫要求ボタン)を押さなければならない。主制御キャビネット63は、安全ドア61を介して倉庫アクセス信号を管理するために使用される。主制御キャビネットは、無線アクセスポイントデバイス40の電力供給を遮断するために使用される安全モジュール64を備えている。
【0038】
入庫ボタン62が作動すると、サーバ41は、倉庫内のすべての自動化されたシャトルおよびサテライトの無線デバイス21、31に緊急信号の送信を試みる。前述のように、サーバ41は、アクセスポイント40を介してシャトル20およびサテライト30と通信し、そして選択的にシステムの電気キャビネット63のコントローラ65とも通信する。安全ドアからアクセス要求が行われると、コントローラ65はそれをサーバ41に通信し、次にサーバ41が「非」安全通信チャネル、例えばイーサネットチャネル42を介して伝播緊急信号「Propagate EM to Shuttle」をコマンドする。この時点で、定置されたキャビネットである「主制御キャビネット」63のコントローラ65は、アクセスポイント40への電力供給を遮断する。
【0039】
通常の動作時には、無線デバイス21(WLAN中継器であってもよい)を介して、シャトル20がアクセスポイント40からコマンドを受信してサーバ41に応答を送信し、場合によってはサーバ41から受信したコマンドをサテライト30の無線デバイス31に伝送する。
【0040】
シャトルの無線デバイス21がサーバから「Propagate EM to shuttle」信号を受信すると、次に同じ無線デバイス21は、サテライトの無線デバイス31に「非」安全伝播緊急信号「Propagate EM to Satellite」を送信する。安全リレーを介して、駆動ユニット25への安全トルクオフ(safety torque off、STO)信号が解放され、シャトル推進システムの電源が切られる。
【0041】
アクセスポイントの電力が遮断されると、サーバはシャトル20の無線デバイス21と通信しなくなるため、ウォッチドッグタイマ23がトリガされる。ウォッチドッグタイマ23が特定の閾値に達すると、安全リレー24は駆動ユニット25のSTO(安全トルクオフ)信号を解放する。STO信号が解放されると、シャトルの推進システムに送られる電力を管理する駆動ユニットへのすべての電気信号が遮断される。
【0042】
同様に、サテライト30は、通常はシャトルの無線デバイス21を介し、無線デバイス31によってサーバコマンドを受信する。「Propagate EM to Satellite」信号が「非」安全チャネルを介して受信されると、サテライト制御ユニット32は、安全リレー34を介して、サテライトの駆動ユニット35のSTO(安全トルクオフ)信号を解放する。アクセスポイントへの電力が遮断されると、サーバはサテライトの制御ユニット32と通信しなくなり、ウォッチドッグタイマ33がトリガされる。これにより、ウォッチドッグタイマ23が特定の閾値に達すると、安全リレー34は駆動ユニット35のSTO信号を解放する。STO信号が解放されると、サテライトの推進システムに送られる電力を管理する駆動ユニットへのすべての電気信号が遮断される。
【0043】
その後、サーバは、すべての無線デバイス21および31からの確認を待つが、安全なプロトコルを介した信号伝送の確実性がなければ、システムが安全モードになっていることは保証されない。実際には、自動化境界内の1つまたは複数の車両が通信していない可能性があり、したがって安全モードへの移行要求を受信していない可能性がある。
【0044】
しかし、同時に、定置された安全システムは、適切なパフォーマンスレベルを備えた定置アクセスポイント40への電力を遮断している。したがって、マシンがサーバからの応答信号を受信しなくなっている場合でも、カウンタのインクリメントが中断される。よって、シャトル20およびサテライト30のそれぞれの制御ユニット22および32に関連する安全モジュールに含まれるウォッチドッグタイマを作動させることが保証される。
【0045】
同時に、サーバが緊急信号を受信すると、1つまたは複数の安全コンタクタは、自動的に作動し、対応する回路を開いてケーブルまたはバスバーを電源とするデバイスへの電力供給を遮断する。ケーブルまたはバスバーを電源とする機器も即座に停止され、障害またはエラー状態が解消されるまで待機する。すべてのシャトルおよびサテライトが直接的または間接的な緊急状態になると、安全ドアが開く。
【0046】
安全ドア61は、ウォッチドッグタイマによって設定された時間が経過した時点で、シャトルおよびサテライト車両がすべて緊急状態となっている安全モードにおいて、自動的にロック解除される。無線で制御されたシャトルおよびサテライトとアクセスポイントとの間で通信の失敗がある場合にも、安全モードへの移行条件を満たす。
【0047】
アクセスポイントをオフにすると、シャトルおよびサテライトの無線デバイス21および31は、検証信号に応答するアクセスポイントからの応答信号を受信しなくなる。この場合、関連の車両20または30の無線デバイス21または31はアクセスポイント40からの応答信号を受信することなく、検証信号の送信から事前設定時間が経過後、それぞれの制御ユニットは、それぞれの車両を自動的に緊急状態にする通電解除コマンドを生成する。
【0048】
したがって、緊急事態は、信号、すなわちアクセスポイントからの応答信号の欠如を検出することによって認識される。無線で制御される車両の停止は、高価な安全認証されたアクセスポイントデバイスがなくても、最低限のパフォーマンスレベルd(PL d)を備え、かつ適切なサイズで実装された安全モードによって実行される。安全モードは、アクセスポイントからのリターン信号がない場合、各車両に搭載されたカウンタおよびウォッチドッグタイマ(安全認証済)が迅速に反応し、車両に搭載された安全認証回路に設けられ挿入された安全コンタクタを介して、モータの電力供給を遮断することで実現される。
【0049】
結論として、定置アクセスポイントの電力を安全に遮断し、安全タイマを採用した無線システムを使用することにより、上記の車両は、現在の最新技術による安全な無線の使用を必要とすることなく、設計によって最初に設定された安全タイマにプログラムされた時間の経過を待つだけで、現在の法律で要求される安全要件を満たすことができる。
【0050】
本発明の様々な態様および実施形態について説明してきたが、各実施形態が他の任意の実施形態と組み合わせられ得ることを理解されたい。さらに、実施形態および構成の詳細は、純粋に非限定的な例として説明および図示されたものに対して大きく異なる場合があるが、それによって添付の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲から逸脱するものではない。