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特許7462983乳清タンパク加水分解物を有効成分として含有する筋減少症の改善、予防又は治療用組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】乳清タンパク加水分解物を有効成分として含有する筋減少症の改善、予防又は治療用組成物
(51)【国際特許分類】
   A23C 21/02 20060101AFI20240401BHJP
   A23L 33/18 20160101ALI20240401BHJP
   A23L 33/19 20160101ALI20240401BHJP
   A61K 38/01 20060101ALI20240401BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20240401BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20240401BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
A23C21/02
A23L33/18
A23L33/19
A61K38/01
A61P21/00
A61P21/04
A61P25/02
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2022518411
(86)(22)【出願日】2020-09-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-30
(86)【国際出願番号】 KR2020013116
(87)【国際公開番号】W WO2021060927
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-05-31
(31)【優先権主張番号】10-2019-0118146
(32)【優先日】2019-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0124083
(32)【優先日】2020-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517429259
【氏名又は名称】ネオ クレマー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】パク,ヒョンス
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジェファン
(72)【発明者】
【氏名】シン,ジュンチョル
(72)【発明者】
【氏名】アン,スンイル
(72)【発明者】
【氏名】チョン,セヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ソクチュン
(72)【発明者】
【氏名】パク,チュンシク
【審査官】関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-333794(JP,A)
【文献】特開2016-220628(JP,A)
【文献】特開2010-150160(JP,A)
【文献】特開2014-193821(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0009261(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0095901(KR,A)
【文献】Hyung Joo Suh, et al.,Optimal Enzyme Selection for Organic Whey Protein Hydrolysis,Korean J. Food Nutr.,2017年,Vol.30, No.6,p.1359-1363
【文献】下戸秀聡,蛋白質加水分解酵素を用いた蛋白質の高度加水分解,食品と開発2月号,第31巻, 第2号,1996年,20-22頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23C
A23L 33/
A61K
A61P
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳清タンパク加水分解物を製造する方法であって、乳清タンパクをバチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)由来エンドプロテアーゼ(Endo protease)で1次加水分解し、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)由来エキソプロテアーゼ(Exo protease)で2次加水分解し、
前記バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)由来エンドプロテアーゼ(Endo protease)は、タンパク質分解最適pHが7.0~8.5である第1酵素およびタンパク質分解最適pHが5.0~11.0であり、最適温度が60℃である第2酵素の混合酵素であり、
前記混合酵素が、第1酵素第2酵素とが1:0.5~2の重量比で混合されたことを特徴とする乳清タンパク加水分解物を製造する方法。
【請求項2】
前記乳清タンパクが、チーズ乳清由来であることを特徴とする、請求項1に記載の乳清タンパク加水分解物を製造する方法。
【請求項3】
前記乳清タンパクが、一般乳清粉末(Normal whey powder)、脱塩乳清粉末(Demineralized whey powder)、乳清タンパク濃縮物(Whey protein concentrate)又は乳清タンパク分離物(Whey protein isolate)であることを特徴とする、請求項1に記載の乳清タンパク加水分解物を製造する方法。
【請求項4】
前記2次加水分解後に、不溶性物質を除去し、水溶性にすることを特徴とする、請求項1に記載の乳清タンパク加水分解物を製造する方法。
【請求項5】
前記アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)由来エキソプロテアーゼ(Exo protease)は、タンパク質分解最適pHが5.0~7.0であり、最適温度が50℃である第3酵素であることを特徴とする、請求項1に記載の乳清タンパク加水分解物を製造する方法。
【請求項6】
前記2次加水分解後の乳清タンパク加水分解物が、Cys 9~11mg/g、Tyr 19~22mg/g、Arg 18~19mg/g、Ala 37~39mg/g、Pro 43~45mg/g、Lys 68~72mg/g、His 13.5~14mg/g、Ile 40~41mg/g、Leu 77~80mg/g、Met 15~17mg/g、Phe 24~25mg/g、Val 36~37mg/g、Glu 120~130mg/g、Asp 80~82mg/g、Ser 35~41mg/g、Gly 14.5~15mg/g、Thr 54~55mg/g及びTrp 10~11mg/gのアミノ酸からなることを特徴とする、請求項1に記載の乳清タンパク加水分解物を製造する方法。
【請求項7】
前記2次加水分解後の乳清タンパク加水分解物が、全アミノ酸中に遊離アミノ酸を1~5重量%含むことを特徴とする、請求項1に記載の乳清タンパク加水分解物を製造する方法。
【請求項8】
前記2次加水分解後の乳清タンパク加水分解物が、BCAAアミノ酸を155~180mg/g含むことを特徴とする、請求項1に記載の乳清タンパク加水分解物を製造する方法。
【請求項9】
前記2次加水分解後の乳清タンパク加水分解物が、指標ペプチドの含有量を、10~40mg/gとすることを特徴とする、請求項1に記載の乳清タンパク加水分解物を製造する方法。
【請求項10】
筋機能改善用食品組成物を製造する方法であって、請求項1に記載の方法により製造された乳清タンパク加水分解物を有効成分として用いて筋機能改善用食品組成物を製造する方法。
【請求項11】
筋減少症の改善又は予防用食品組成物を製造する方法であって、請求項1に記載の方法により製造された乳清タンパク加水分解物を有効成分として用いて食品組成物を製造する方法。
【請求項12】
前記筋減少症が、筋萎縮症、筋無力症、筋異栄養症、筋強直症、筋緊張低下、筋力弱化、筋肉退行萎縮、筋萎縮性側索硬化症又は重症筋無力症であることを特徴とする、請求項11に記載の食品組成物を製造する方法。
【請求項13】
筋減少症の予防又は治療用薬学組成物を製造する方法であって、請求項1に記載の方法により製造された乳清タンパク加水分解物を有効成分として用いて薬学組成物を製造する方法。
【請求項14】
筋肉の大きさを増加させる薬学組成物を製造することを特徴とする、請求項13に記載の薬学組成物を製造する方法。
【請求項15】
前記筋減少症が、筋萎縮症、筋無力症、筋異栄養症、筋強直症、筋緊張低下、筋力弱化、筋肉退行萎縮、筋萎縮性側索硬化症又は重症筋無力症であることを特徴とする、請求項13に記載の薬学組成物を製造する方法。
【請求項16】
(A)乳清タンパクと水を1:3~10の重量比で混合して前記乳清タンパクを溶解させる段階と、
(B)前記溶解された乳清タンパク溶解物100重量部に、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)由来エンドプロテアーゼ(Endo protease)を0.1~1の重量部で投入して1次加水分解を行う段階と、
(C)前記1次加水分解された分解物にアスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)由来エキソプロテアーゼ(Exo protease)を0.1~1の重量部で投入して2次加水分解を行う段階と、
(D)前記2次加水分解された分解物を濾過させて不溶性物質を除去することで、水溶性乳清タンパク加水分解物を得る段階と、を含み、
前記バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)由来エンドプロテアーゼ(Endo protease)は、タンパク質分解最適pHが7.0~8.5である第1酵素およびタンパク質分解最適pHが5.0~11.0であり、最適温度が60℃である第2酵素の混合酵素であり、
前記混合酵素が、第1酵素第2酵素とが1:0.5~2の重量比で混合されたことを特徴とする水溶性乳清タンパク加水分解物の製造方法。
【請求項17】
前記(D)段階後に、
(E)前記得られた水溶性乳清タンパク加水分解物を殺菌後に室温で冷却させる段階と
(F)前記殺菌及び冷却された水溶性乳清タンパク加水分解物を乾燥させて濾過する段階と、をさらに含むことを特徴とする、請求項16に記載の水溶性乳清タンパク加水分解物の製造方法。
【請求項18】
前記アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)由来エキソプロテアーゼ(Exo protease)が、タンパク質分解最適pHが5.0~7.0であり、最適温度が50℃である第3酵素であることを特徴とする、請求項16に記載の水溶性乳清タンパク加水分解物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筋減少を抑制させ、筋肉の大きさ及び筋力を増加させるための乳清タンパク加水分解物を有効成分として含有する筋減少症の改善、予防又は治療用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
骨格筋は人体において最大の割合を占める器官であり、全体重の40~50%を占め、エネルギー恒常性及び熱生成などをはじめとする体内の様々な代謝機能にも重要な働きをする。人の筋肉は40歳から毎年1%以上ずつ減少していき、80歳になると最大筋肉量の50%水準まで減少する。このような老年の筋肉減少は身体機能全般を低下させる最も重要な要素として認識されている。老化が進行するにつれて筋肉と脂肪の含有量、骨格歪みなどの体型が変化することを認知するようになり、老年期の筋減少による肥満有病率は、全世界的に30%以上のレベルで持続した増加の趨勢を示している。
【0003】
インスリン分泌異常である場合は、細胞にエネルギーを十分に供給できず、筋肉発達障害につながることがあり、一般人に比べて糖尿病患者において筋減少症が増加する。また、筋肉の減少は、関節炎、腰痛、慢性疼痛をさらに増加させる原因となり、腹部肥満による尿失禁症状が悪化することになり、骨折による負傷が老年のうつ病を増加させ、死亡に至ることになるため、老年の筋減少症は様々な疾患と関連して生活の質を低下させる主要原因となる。
【0004】
筋減少症は、骨多孔症、インスリン抵抗性及び関節炎のような老人性慢性疾患とも密接な関係があるものと知られており、筋減少症の予防又は改善を用いて、老化による身体活動力の減少を抑制することができる。世界の進行性運動失調症及び筋力弱化治療剤市場は、2011年に約140億ドル規模を記録して以来、9.4%の年平均複合成長率で成長し続け、2017年には約235億ドルに達する見込みである。
【0005】
筋減少症患者において、筋芽細胞の幹細胞である衛星細胞の募集、活性又は増殖の障害によって筋芽細胞(myoblast)の個数が減少し、筋芽細胞の増殖及び分化が減少する。これにより、筋減少症患者の筋肉は組織学的なレベルで筋線維の大きさ及び数が減少して筋機能が減少する症状が現れる。
【0006】
ここ10年余り、米国及びヨーロッパを中心に筋減少症の力学に対する研究が活発に行われる中、最近では筋減少症の臨床的重要性に対する関心が急増している。初期研究では、筋減少症が全身衰弱、活動障害及び筋力減少によって生活の質の低下を誘発するという結果が主流であったが、最近に発表される研究では、生活の質の他にも、骨多孔症性骨折の危険が顕著に増加し得ることも報告された。また、筋減少症患者において糖尿病及び代謝症候群、肥満、慢性腎不全、慢性肝不全などの慢性疾患が誘発され、究極的には死亡率も増加させるため、筋減少症は適切な治療を要する疾患として関心を集めている。
【0007】
近年、米国では、筋減少症患者にとっての身体障害発生の可能性が約1.5倍~約3.5倍に増加し、年間185億USDの社会的費用を誘発すると報告されたことがある。韓国の国民健康栄養調査によれば、筋減少症は、60歳以上において有病率が男性42.0%、女性42.7%である一般的な疾患である。特に、韓国の高齢化速度は世界的にも速いため、将来、重要な社会的問題になることは明らかである。
【0008】
現在、筋減少症には、運動、タンパク質及びカロリーの補充が有益であるとされているが、筋減少症患者の大部分を占める老人にはさほど有益ではなく、筋減少症治療剤が切実に必要とされている。しかしながら、現在筋減少症に使用される治療剤によれば、筋肉減少改善及び筋肉量増進に直接の効果を示す薬物は、いまだに臨床実験レベルの段階である。また、現在、最終的にFDA承認を受けた薬剤がない状況である。このため、筋減少症治療のため、一部の選択的アンドロゲン受容体修飾薬(selective androgen receptor modulator)、アクチビン受容体アンタゴニスト(activin receptor antagonist)、骨格筋速筋トロポニン阻害剤(fast skeletal muscle troponin inhibitor)などを筋減少症治療剤として開発しようとする努力がある一方で、これらの開発は未だに初期臨床を試みるレベルである。
【0009】
筋減少症治療剤動向に関するレポートによれば、2010年の全世界筋減少症治療剤市場は約1000万ドル(US)であり、2018年には2000万ドル(US)の規模に成長すると予測されることが報告された(「Sarcopenia Therapeutics-Pipeline Assessment and Market Forecasts to 2018」,2011.11.17)。また、2013年EU傘下の民間保管協力体であるInnovative Meticines Initiativeは、4大保健研究主題の一つとして老人筋減少症治療剤の開発に約5千万ユーロを投資すると発表し、その開発を進行中している。
【0010】
したがって、老人が安全に摂取できるとともに、長期服用できる天然物質を用いた筋減少症治療剤が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、筋減少を低下させて筋肉の大きさ及び筋力を増加させる乳清タンパク加水分解物を提供することである。
【0012】
また、本発明の他の目的は、前記乳清タンパク加水分解物を有効成分として含有する筋機能改善用食品組成物を提供することである。
【0013】
また、本発明のさらに他の目的は、前記乳清タンパク加水分解物を有効成分として含有する筋減少症の予防又は治療用薬学組成物を提供することである。
【0014】
また、本発明のさらに他の目的は、前記乳清タンパク加水分解物を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するための本発明の乳清タンパク加水分解物は、乳清タンパクをバチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)由来エンドプロテアーゼ(Endo protease)で1次加水分解し、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)由来エキソプロテアーゼ(Exo protease)で2次加水分解したものであってよい。
【0016】
前記乳清タンパクは、チーズ乳清に由来するものであってよい。
【0017】
前記乳清タンパクは、一般乳清粉末(Normal whey powder)、脱塩乳清粉末(Demineralized whey powder)、乳清タンパク濃縮物(Whey protein concentrate)又は乳清タンパク分離物(Whey protein isolate)であってよい。
【0018】
前記乳清タンパク加水分解物は、不溶性物質が除去された水溶性乳清タンパク加水分解物であってよい。
【0019】
前記バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)由来エンドプロテアーゼ(Endo protease)は、アルカラーゼ(Alcalase)、プロタメックス(Protamax)又はそれらの混合酵素であり;前記アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)由来エキソプロテアーゼ(Exo protease)は、フラボザイム(Flavourzyme)であってよい。
【0020】
前記混合酵素は、アルカラーゼ(Alcalase)とプロタメックス(Protamax)が1:0.5~2の重量比で混合されたものであってよい。
【0021】
乳清タンパク加水分解物は、Cys 9~11mg/g、Tyr 19~22mg/g、Arg 18~19mg/g、Ala 37~39mg/g、Pro 43~45mg/g、Lys 68~72mg/g、His 13.5~14mg/g、Ile 40~41mg/g、Leu 77~80mg/g、Met 15~17mg/g、Phe 24~25mg/g、Val 36~37mg/g、Glu 120~130mg/g、Asp 80~82mg/g、Ser 35~41mg/g、Gly 14.5~15mg/g、Thr 54~55mg/g、及びTrp 10~11mg/gのアミノ酸からなるものであってよい。
【0022】
前記乳清タンパク加水分解物は、全アミノ酸中に遊離アミノ酸が1~5重量%で含まれたものであってよい。
【0023】
前記乳清タンパク加水分解物は、BCAAアミノ酸が155~180mg/gで含まれたものであってよい。
【0024】
前記乳清タンパク加水分解物の指標ペプチドの含有量は10~40mg/gであってよい。
【0025】
また、上記の他の目的を達成するための本発明の筋機能改善用食品組成物は、乳清タンパクをバチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)由来エンドプロテアーゼ(Endo protease)で1次加水分解し、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)由来エキソプロテアーゼ(Exo protease)で2次加水分解した乳清タンパク加水分解物を有効成分として含有できる。
【0026】
また、上記のさらに他の目的を達成するための本発明の筋減少症の改善又は予防用食品組成物は、乳清タンパクをバチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)由来エンドプロテアーゼ(Endo protease)で1次加水分解し、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)由来エキソプロテアーゼ(Exo protease)で2次加水分解した乳清タンパク加水分解物を有効成分として含有できる。
【0027】
前記筋減少症は、筋萎縮症、筋無力症、筋異栄養症、筋強直症、筋緊張低下、筋力弱化、筋肉退行萎縮、筋萎縮性側索硬化症又は重症筋無力症であってよい。
【0028】
また、上記のさらに他の目的を達成するための本発明の筋減少症の予防又は治療用薬学組成物は、乳清タンパクをバチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)由来エンドプロテアーゼ(Endo protease)で1次加水分解し、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)由来エキソプロテアーゼ(Exo protease)で2次加水分解した乳清タンパク加水分解物を有効成分として含有できる。
【0029】
前記組成物は、筋肉の大きさを増加させることができる。
【0030】
前記筋減少症は、筋萎縮症、筋無力症、筋異栄養症、筋強直症、筋緊張低下、筋力弱化、筋肉退行萎縮、筋萎縮性側索硬化症又は重症筋無力症であってよい。
【0031】
また、上記のさらに他の目的を達成するための本発明の水溶性乳清タンパク加水分解物を製造する方法は、(A)乳清タンパクと水を1:3~10の重量比で混合して前記乳清タンパクを溶解させる段階と、(B)前記溶解された乳清タンパク溶解物100重量部に、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)由来エンドプロテアーゼ(Endo protease)を0.1~1の重量部で投入して1次加水分解を行う段階と、(C)前記1次加水分解された分解物にアスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)由来エキソプロテアーゼ(Exo protease)を0.1~1の重量部で投入して2次加水分解を行う段階と、(D)前記2次加水分解された分解物を濾過させて不溶性物質を除去することで、水溶性乳清タンパク加水分解物を得る段階と、を含むことができる。
【0032】
前記(D)段階後に、(E)前記得られた水溶性乳清タンパク加水分解物を殺菌後に室温で冷却させる段階と、(F)前記殺菌及び冷却された水溶性乳清タンパク加水分解物を乾燥させて濾過する段階と、をさらに含むことができる。
【0033】
前記バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)由来エンドプロテアーゼ(Endo protease)は、アルカラーゼ(Alcalase)、プロタメックス(Protamax)又はそれらの混合酵素であってよい。
【0034】
前記アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)由来エキソプロテアーゼ(Exo protease)は、フラボザイム(Flavourzyme)であってよい。
【発明の効果】
【0035】
本発明の乳清タンパク加水分解物及びこれを有効成分として含有する組成物によれば、筋肉の肥大が誘導され、筋機能が改善され、対照群に比べて筋減少関連遺伝子が優れたレベルで発現したので、筋減少を抑制させ、筋肉の大きさ及び筋力を増加させることができる。
【0036】
特に、本発明によれば、筋肉合成関連遺伝子の発現が正常群と類似のレベルで発現するので、筋肉の大きさ及び筋力を顕著に増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1は、本発明の正常群、対照群、実施例1の投与群、実施例2の投与群、比較例1の投与群及び比較例2の投与群に供給されたタンパク質の含有量を示すグラフである。
図2図2は、本発明の正常群、対照群、実施例1の投与群、実施例2の投与群、比較例1の投与群及び比較例2の投与群において時間の経過による握力変化を示すグラフである。
図3A図3Aは、本発明の正常群、対照群、実施例1の投与群、実施例2の投与群、比較例1の投与群及び比較例2の投与群マウスの大腿四頭筋(quadriceps)の重さを測定したグラフである。
図3B図3Bは、本発明の正常群、対照群、実施例1の投与群、実施例2の投与群、比較例1の投与群及び比較例2の投与群マウスの腓腹筋(Gastrocnemius)の重さを測定したグラフである。
図3C図3Cは、本発明の正常群、対照群、実施例1の投与群、実施例2の投与群、比較例1の投与群及び比較例2の投与群マウスのヒラメ筋(Soleus)の重さを測定したグラフである。
図4図4は、本発明の正常群、対照群、実施例1の投与群、実施例2の投与群、比較例1の投与群及び比較例2の投与群マウスの筋線維断面積を染色した写真である。
図5A図5Aは、本発明の正常群、対照群、実施例1の投与群、実施例2の投与群、比較例1の投与群及び比較例2の投与群マウスの筋線維断面積を定量化したグラフである。
図5B図5Bは、本発明の正常群、対照群、実施例1の投与群、実施例2の投与群、比較例1の投与群及び比較例2の投与群マウスの筋肉において筋線維CSAの分布を示すグラフである。
図6A図6Aは、本発明の正常群、対照群、実施例1の投与群、実施例2の投与群、比較例1の投与群及び比較例2の投与群マウスの筋肉分解関連因子の発現を示すウェスタンブロットである。
図6B図6Bは、本発明の正常群、対照群、実施例1の投与群、実施例2の投与群、比較例1の投与群及び比較例2の投与群マウスのp-Foxo3a因子の発現程度を示すグラフである。
図6C図6Cは、本発明の正常群、対照群、実施例1の投与群、実施例2の投与群、比較例1の投与群及び比較例2の投与群マウスのAtrogin-1タンパク質因子の発現程度を示すグラフである。
図6D図6Dは、本発明の正常群、対照群、実施例1の投与群、実施例2の投与群、比較例1の投与群及び比較例2の投与群マウスのMuRF-1タンパク質因子の発現程度を示すグラフである。
図6E図6Eは、本発明の正常群、対照群、実施例1の投与群、実施例2の投与群、比較例1の投与群及び比較例2の投与群マウスのAtrogin-1 mRNA因子の発現程度を示すグラフである。
図6F図6Fは、本発明の正常群、対照群、実施例1の投与群、実施例2の投与群、比較例1の投与群及び比較例2の投与群マウスのMuRF-1 mRNA因子の発現程度を示すグラフである。
図6G図6Gは、本発明の正常群、対照群、実施例1の投与群、実施例2の投与群、比較例1の投与群及び比較例2の投与群マウスのBnip3 mRNA因子の発現程度を示すグラフである。
図7A図7Aは、本発明の正常群、対照群、実施例1の投与群、実施例2の投与群、比較例1の投与群及び比較例2の投与群マウスの筋肉合成関連因子の発現を示すウェスタンブロットである。
図7B図7Bは、筋肉合成関連因子(PI3K)のリン酸化比率を示すグラフである。
図7C図7Cは、筋肉合成関連因子(Akt)のリン酸化比率を示すグラフである。
図7D図7Dは、筋肉合成関連因子(S6K1)のリン酸化比率を示すグラフである。
図7E図7Eは、筋肉合成関連因子(4E―BP1)のリン酸化比率を示すグラフである。
図8図8は、本発明の実施例1によって製造された加水分解物の分子量を測定したグラフである。
図9A図9Aは、実施例1の各乳清タンパク質加水分解物に対する細胞毒性を示すグラフである。
図9B図9Bは、比較例3の各乳清タンパク質加水分解物に対する細胞毒性を示すグラフである。
図9C図9Cは、比較例4の各乳清タンパク質加水分解物に対する細胞毒性を示すグラフである。
図9D図9Dは、比較例5の各乳清タンパク質加水分解物に対する細胞毒性を示すグラフである。
図10図10は、対照群(無処理)、デキサメタゾン処理群、実施例1及び比較例3~5で処理時の筋管細胞の厚さを顕微鏡で測定した写真である。
図11図11は、対照群(無処理)、デキサメタゾン処理群、実施例1及び比較例3~5で処理時の筋管細胞の厚さを顕微鏡で測定した結果をデータ化して示すグラフである。
図12図12は、対照群(無処理)、デキサメタゾン処理群、実施例1及び比較例3~5で処理時の筋管細胞の厚さを顕微鏡で測定した写真である。
図13図13は、対照群(無処理)、デキサメタゾン処理群、実施例1及び比較例3~5で処理時の筋管細胞の厚さを顕微鏡で測定した結果をデータ化して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
(発明を実施するための最良の形態)
本発明は、筋減少を抑制させて筋肉の大きさ及び筋力を増加させる、乳清タンパク加水分解物を有効成分として含有する、筋減少症の改善、予防又は治療用組成物に関する。
【0039】
本発明の原材料として使用される乳清タンパクは、牛乳タンパク質からカードを分離してチーズを製造しながら作られたチーズ乳清由来のものである。
【0040】
このような乳清タンパクは、一般乳清粉末(Normal whey powder)、脱塩乳清粉末(Demineralized whey powder)、乳清タンパク濃縮物(Whey protein concentrate)又は乳清タンパク分離物(Whey protein isolate)であってよい。
【0041】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0042】
本発明の乳清タンパク加水分解物は、乳清タンパクをバチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)由来エンドプロテアーゼ(Endo protease)で1次加水分解し、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)由来エキソプロテアーゼ(Exo protease)で2次加水分解したものである。
【0043】
本発明の乳清タンパク加水分解物は、乳清タンパクをタンパク質分解酵素で分解したものであれば特に限定されないが、好ましくは、濾過によって不溶性物質が除去された水溶性乳清タンパク加水分解物である。
【0044】
前記乳清タンパクを1次加水分解するバチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)由来エンドプロテアーゼ(Endo protease)としては、タンパク質分解最適pHが7.0~8.5であるアルカラーゼ(Alcalase)、タンパク質分解最適pHが5.0~11.0であり、最適温度が60℃であるプロタメックス(Protamax)、又はタンパク質分解最適pHが8.0~12.0であり、最適温度が40~50℃であるフードプロアルカラインプロテアーゼ(Foodpro Alkaline protease)であることが好ましい。また、2次加水分解するアスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)由来エキソプロテアーゼ(Exo protease)としては、タンパク質分解最適pHが5.0~7.0であり、最適温度が50℃であるフラボザイム(Flavourzyme)又はプロザイム(Prozyme 2000P)であることが好ましい。前記タンパク質分解酵素ではなく別のタンパク質分解酵素を使用する場合には、当該別のタンパク質分解酵素は筋減少症の改善、予防又は治療への効果が低い或いはないことが好ましい。
【0045】
前記タンパク質分解酵素で加水分解された乳清タンパク加水分解物は、Cys 9~11mg/g、Tyr 19~22mg/g、Arg 18~19mg/g、Ala 37~39mg/g、Pro 43~45mg/g、Lys 68~72mg/g、His 13.5~14mg/g、Ile 40~41mg/g、Leu 77~80mg/g、Met 15~17mg/g、Phe 24~25mg/g、Val 36~37mg/g、Glu 120~130mg/g、Asp 80~82mg/g、Ser 35~41mg/g、Gly 14.5~15mg/g、Thr 54~55mg/g、及びTrp 10~11mg/gのアミノ酸からなる。
【0046】
また、本発明の乳清タンパク加水分解物によれば、全アミノ酸中に遊離アミノ酸が1~5重量%、好ましくは2~3重量%含まれる。ここで、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Ile)及びバリン(Val)を総称するBCAAアミノ酸が、155~180mg/g、好ましくは155~170mg/g含まれる。
【0047】
前記アミノ酸成分の含有量、全アミノ酸中の遊離アミノ酸の含有量、及びBCAAアミノ酸の含有量が前記範囲を満たす場合に、筋減少症の改善、予防又は治療に優れた効果を発揮することができる。
【0048】
また、本発明の乳清タンパク加水分解物の分子量は、100~5000Da、好ましくは200~3500Daである。
【0049】
また、本発明の乳清タンパク加水分解物の指標ペプチドの含有量は、10~40mg/g、好ましくは10~20mg/gである。
【0050】
本発明の乳清タンパク加水分解物は、筋減少症の改善、予防又は治療の効果に優れているので、筋機能改善用食品組成物又は筋減少症の改善又は予防用食品組成物として使用可能である他、筋減少症の予防又は治療用薬学組成物としても使用可能である。
【0051】
本明細書において「筋減少症」という用語は、筋肉の体積及び筋力が漸進的に衰退する疾患を意味する。前記筋減少症としては、筋萎縮症、筋無力症、筋異栄養症、筋強直症、筋緊張低下、筋力弱化、筋肉退行萎縮、筋萎縮性側索硬化症又は重症筋無力症が挙げられる。
【0052】
また、本明細書において「筋機能改善」という用語は、筋肉の筋力及び/又は大きさを増加させる効果を意味する。
【0053】
また、本発明は、水溶性乳清タンパク加水分解物を製造する方法を提供する。
【0054】
本発明の水溶性乳清タンパク加水分解物を製造する方法は、(A)乳清タンパクと水とを1:3~10の重量比で混合して前記乳清タンパクを溶解させる段階と、(B)前記溶解された乳清タンパク溶解物100重量部に、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)由来エンドプロテアーゼ(Endo protease)を0.1~1の重量部で投入して1次加水分解を行う段階と、(C)前記1次加水分解された分解物にアスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)由来エキソプロテアーゼ(Exo protease)を0.1~1の重量部で投入して2次加水分解を行う段階と、(D)前記2次加水分解された分解物を濾過させて不溶性物質を除去することで、水溶性乳清タンパク加水分解物を得る段階と、を含む。
【0055】
また、前記(D)段階後に、(E)前記得られた水溶性乳清タンパク加水分解物を殺菌後に室温で冷却させる段階と、(F)前記殺菌及び冷却された水溶性乳清タンパク加水分解物を乾燥させて濾過する段階と、をさらに含むことができる。
【0056】
まず、前記(A)段階では、乳清タンパクと水とを1:3~10の重量比で混合し、pH7.0~7.5下で40~60℃、好ましくは50~55℃の環境で前記乳清タンパクを水に溶解させる。
【0057】
乳清タンパクの溶解時に温度及びpHが前記範囲を外れる場合には乳清タンパクが溶解されないので、前記範囲を満たすことが好ましい。
【0058】
次に、前記(B)段階では、前記溶解された乳清タンパク溶解物にバチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)由来エンドプロテアーゼ(Endo protease)が投入され、1次加水分解が行われる。
【0059】
前記バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)由来エンドプロテアーゼ(Endo protease)は、異なる2種のバチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)由来エンドプロテアーゼ(Endo protease)を混合したものが好ましく、アルカラーゼ(Alcalase)とプロタメックス(Protamax)が混合された混合酵素であることがより好ましい。
【0060】
前記アルカラーゼ(Alcalase)とプロタメックス(Protamax)は、1:0.5~2の重量比、好ましくは1:1~1.5の重量比で混合される。アルカラーゼ(Alcalase)を基準にプロタメックス(Protamax)の含有量が前記範囲を外れる場合には、筋減少症の改善、予防又は治療への効果が低下することがある。
【0061】
前記アルカラーゼ(Alcalase)とプロタメックス(Protamax)が混合された混合酵素を使用すると、混合酵素がタンパク質を鎖の内側から分解する特性を有する。したがって、タンパク質を途中で分解して中間長さのペプチド、特に疎水性ペプチドが末端部分に露出する。しかし、このようにペプチドが末端部分に露出される場合には苦味が強くて官能性が低下してしまい、これを改善するために、次の段階において、第2タンパク質分解酵素を用いて2次加水分解が行われる。
【0062】
また、前記アルカラーゼ(Alcalase)とプロタメックス(Protamax)が混合された混合酵素は、前記溶解された乳清タンパク溶解物100重量部に対して0.1~1の重量部、好ましくは0.1~0.4の重量部で使用される。混合酵素の含有量が前記下限値未満である場合には、短い長さのペプチドが多量に生成されないことがあり、前記上限値を超える場合には、中間長さのペプチドのみが多量に生成され、筋減少症の改善、予防又は治療への効果が低下することがある。
【0063】
また、前記1次加水分解は、40~60℃、好ましくは45~55℃で、2~5時間、好ましくは3~4時間行われる。1次加水分解時に反応温度及び時間が前記下限値未満である場合には、1次加水分解が完全に行われないことがあり、前記上限値を超える場合には副産物が多量に発生することがある。
【0064】
このように1次加水分解された分解物のpHは、6.0~7.0である。
【0065】
次に、前記(C)段階では、前記1次加水分解された分解物に、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)由来エキソプロテアーゼ(Exo protease)が投入され、2次加水分解が行われる。
【0066】
前記(B)段階では、混合酵素によって官能性が低下するので、(C)段階において、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)由来エキソプロテアーゼ(Exo protease)を使用することによってより短い長さのペプチドが生成され、官能性が向上する。
【0067】
前記アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)由来エキソプロテアーゼ(Exo protease)は、フラボザイム(Flavourzyme)であってよい。
【0068】
前記アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)由来エキソプロテアーゼ(Exo protease)は、前記溶解された乳清タンパク溶解物100重量部に、0.1~1の重量部、好ましくは0.2~0.5の重量部で投入される。第2タンパク質分解酵素の含有量が前記下限値未満である場合には、より短い長さのペプチドが少なく生成されることがあり、前記上限値を超える場合には、副産物が多量に発生することがある。
【0069】
前記2次加水分解は、40~60℃、好ましくは45~55℃で、10~20時間、好ましくは13~17時間行われる。2次加水分解時に、反応温度及び時間が前記下限値未満である場合には、2次加水分解が完全に行われないことがあり、前記上限値を超える場合には、副産物が多量に発生することがある。
【0070】
次に、前記(D)段階では、前記2次加水分解された分解物を濾過させて不溶性物質を除去することにより、水溶性乳清タンパク加水分解物が得られる。前記(D)段階前に2次加水分解された分解物を、80~100℃で5~15分間処理して酵素を失活させた後、常温(23~26℃)で冷却させ、冷却された2次加水分解された分解物が(D)段階で使用される。
【0071】
本発明では、より優れた筋減少症の改善、予防又は治療効果のために、前記2次加水分解された分解物を濾過させて不溶性物質の除去された水溶性乳清タンパク加水分解物が得られる。
【0072】
前記不溶性物質を除去していない加水分解物は、不溶性物質が除去された加水分解物に比べて効果が3~20倍低い。
【0073】
前記濾過は、不溶性物質を除去できる方法であれば特に限定されないが、ハウジングフィルターを用いた濾過であることが好ましい。
【0074】
次に、前記(E)段階では、前記得られた水溶性乳清タンパク加水分解物が80~100℃で20~60分間殺菌され、その後、室温で冷却される。
【0075】
次に、前記(F)段階では、前記殺菌及び冷却された水溶性乳清タンパク加水分解物が乾燥され、濾過される。
【0076】
前記水溶性乳清タンパク加水分解物を噴霧乾燥方法で乾燥させ、磁性物質を除去し、30~40meshの濾過装置で濾過させ、最終水溶性乳清タンパク加水分解物が得られる。
【0077】
一方、本明細書において「有効成分として含有する」という用語は、乳清タンパク加水分解物の効能を達成するのに十分な量を含むことを意味する。一例として、前記乳清タンパク加水分解物は、10~1500μg/ml、好ましくは50~1000μg/mlの濃度で使用される。乳清タンパク加水分解物は人体に副作用がないので、本発明の組成物中に含まれる乳清タンパク加水分解物の量的上限は、当業者が適切な範囲内で選択して実施すればよい。
【0078】
本発明の薬剤学的組成物は、前記有効成分に加えて、薬剤学的に適合しており、生理学的に許容される補助剤を使用して製造されてよく、前記補助剤としては、賦形剤、崩壊剤、甘味剤、結合剤、被覆剤、膨張剤、潤滑剤、滑沢剤又は香味剤などを使用することができる。
【0079】
前記薬剤学的組成物は、投与のために、前記記載した有効成分に加えて、薬剤学的に許容可能な担体を1種以上さらに含み、薬剤学的組成物として適当に製剤化されることが好ましい。
【0080】
前記薬剤学的組成物の製剤形態は、顆粒剤、散剤、錠剤、被覆錠、カプセル剤、坐剤、液剤、シロップ、汁、懸濁剤、乳剤、点滴剤又は注射可能な液剤などであってよい。例えば、錠剤又はカプセル剤の形態への製剤化のために、有効成分は、エタノール、グリセロール、水などのような経口、無毒性の薬剤学的に許容可能な不活性担体と結合してよい。また、所望又は必要な場合、適宜の結合剤、潤滑剤、崩壊剤及び発色剤も混合物に含まれてよい。適宜の結合剤は、これに制限されるものではないが、澱粉、ゼラチン、グルコース又はベータ-ラクトースのような天然糖、とうもろこし甘味剤、アカシア、トラガカント又はオレイン酸ナトリウムのような天然及び合成ガム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどを含む。崩壊剤は、これに制限されるものではないか、澱粉、メチルセルロース、アガー、ベントナイト、キサンタンガムなどを含む。
【0081】
液状溶液として製剤化される組成物において許容可能な薬剤学的担体は、滅菌及び生体に適合するものとして、食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、アルブミン注射溶液、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール及びこれらの成分のうち1成分以上を混合して使用することができ、必要によって、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤などの別の通常の添加剤を添加できる。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤及び潤滑剤を付加的に添加し、水溶液、懸濁液、乳濁液などのような注射用剤形、丸薬、カプセル、顆粒又は錠剤として製剤化してよい。
【0082】
さらに、当該分野における適切な方法としてRemington’s Pharmaceutical Science,Mack Publishing Company,Easton PA開示の方法を用いて、各疾患又は成分によって適当に製剤化するのが好ましい。
【0083】
本発明の薬剤学的組成物は、経口又は非経口で投与でき、非経口投与である場合には、静脈内注入、皮下注入、筋肉注入、腹腔注入、経皮投与などで投与できるが、好ましくは、経口投与である。
【0084】
本発明の薬剤学的組成物の適切な投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性別、病的状態、食べ物、投与時間、投与経路、排泄速度及び反応感応性のような要因によって様々であり、熟練した通常の医師は、所望する治療又は予防に効果的な投与量を容易に決定及び処方できる。本発明の好ましい具現例によれば、本発明の薬剤学的組成物の1日投与量は、0.001~10g/kgである。
【0085】
本発明の薬剤学的組成物は、薬剤学的に許容される担体及び/又は賦形剤を用いて製剤化することによって単位容量の形態で製造される或いは多回容量容器内に内入させて製造されてよい。このとき、剤形は、オイル又は水性媒質中の溶液、懸濁液又は乳化液の形態である、或いはエキス剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤又はカプセル剤の形態であってもよく、分散剤又は安定化剤をさらに含むことができる。
【0086】
また、本発明は、乳清タンパク加水分解物を有効成分として含有する筋減少症の改善、予防又は治療用食品組成物を提供する。
【0087】
本発明に係る食品組成物は、前記薬剤学的組成物と同じ方式で製剤化され、機能性食品として利用するか、各種食品に添加することができる。本発明の組成物を添加できる食品には、例えば、飲料類、アルコール飲料類、菓子類、ダイエットバー、乳製品、肉類、チョコレート、ピザ、ラーメン、その他麺類、ガム類、アイスクリーム類、ビタミン複合剤、健康補助食品類などがある。
【0088】
本発明の食品組成物は、有効成分として乳清タンパク加水分解物の他に、食品製造時に、通常添加される成分も含むことができ、例えば、タンパク質、炭水化物、脂肪、栄養素、調味剤及び香味剤を含む。上述した炭水化物の例は、例えば、ブドウ糖、果糖などのモノサッカライド、例えばマルトース、スクロース、オリゴ糖などのジサッカライド及び、例えばデキストリン、シクロデキストリンなどのポリサッカライドのような通常の糖並びにキシリトール、ソルビトール、エリトリトールなどの糖アルコールである。香味剤としては、天然香味剤[タウマチン、ステビア抽出物(例えば、レバウジオシドA、グリチルリチンなど])及び合成香味剤(サッカリン、アスパルテームなど)を使用することができる。例えば、本発明の食品組成物がドリンク剤と飲料類として製造される場合には、本発明の乳清タンパク加水分解物の他に、クエン酸、液状果糖、砂糖、ブドウ糖、酢酸、リンゴ酸、果汁、及び各種植物抽出液などをさらに含むことができる。
【0089】
本発明は、前記乳清タンパク加水分解物を有効成分として含む筋減少症の改善、予防又は治療用食品組成物を含む健康機能食品を提供する。健康機能食品とは、乳清タンパク加水分解物を飲料、茶類、香辛料、ガム、菓子類などの食品素材に添加するか、或いはカプセル化、粉末化、懸濁液などとして製造した食品であり、これを摂取すると健康上に特定の効果をもたらすものを意味するが、一般薬品とは違い、食品を原料とすることにより、薬品の長期服用時に発生し得る副作用などがない長所がある。このようにして得られる本発明の健康機能食品は、日常的に摂取することが可能なので、非常に有用である。このような健康機能食品における乳清タンパク加水分解物の添加量は、対象である健康機能食品の種類によって異なり、一様に規定することはできないが、食品本来の味を損ねない範囲で添加すればよく、対象食品に対して通常0.01~50重量%、好ましくは0.1~20重量%の範囲である。また、丸剤、顆粒剤、錠剤又はカプセル剤の形態の健康機能食品では、通常0.1~100重量%、好ましくは0.5~80重量%の範囲で添加すればよい。一具体例において、本発明の健康機能食品は、丸剤、錠剤、カプセル剤又は飲料の形態であってよい。
【0090】
また、本発明は、筋減少症の改善、予防又は治療用医薬又は食品の製造のための乳清タンパク加水分解物の用途を提供する。上述したように、乳清タンパク加水分解物は、筋減少症の改善、予防又は治療の用途に利用されてよい。
【0091】
また、本発明は、哺乳動物に有効量の乳清タンパク加水分解物を投与することを含む筋減少症の改善、予防又は治療方法を提供する。
【0092】
ここで使用される「哺乳動物」という用語は、治療、観察又は実験の対象である哺乳動物をいい、好ましくはヒトをいう。
【0093】
ここで使用される「有効量」という用語は、研究者、獣医師、医師又はその他臨床医によって考えられる組織系、動物又はヒトから生物学的又は医学的反応を誘導する有効成分又は薬学的組成物の量を意味し、これは、該当の疾患又は障害の症状の緩和を誘導する量を含む。本発明の有効成分に対する有効量及び投与回数は、所望の効果によって異なってよい。したがって、投与される最適の投与量は、当業者によって容易に決定されてよく、疾患の種類、疾患の重症度、組成物に含まれた有効成分及び他の成分の含有量、剤形の種類、及び患者の年齢、体重、一般健康状態、性別及び食餌、投与時間、投与経路及び組成物の分泌率、治療期間、同時使用される薬物をはじめとする様々な因子によって調節されてよい。本発明の予防、治療又は改善方法において、成人の場合、アナカルジン酸又はその許容可能な塩を1日1回~数回投与時に、0.001g/kg~10g/kgの容量で投与することが好ましい。
【0094】
本発明の治療方法において、乳清タンパク加水分解物を有効成分として含む組成物は、経口、直腸、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、胸骨内、経皮、局所、眼球内又は皮内経路を通じて通常の方式で投与できる。
【実施例
【0095】
(発明を実施するための形態)
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、下記の実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範囲及び技術思想の範囲内で様々な変更及び修正が可能であることは、当業者にとって明白であり、このような変形及び修正が添付する特許請求の範囲に属することも当然であろう。
【0096】
水溶性乳清タンパク加水分解物と乳清タンパク加水分解物との比較。
【0097】
実施例1.水溶性乳清タンパク加水分解物(WP-S)
乳清タンパク(WPC)と50℃の水を1:5の重量比で混合した後、重曹を用いてpHを7.0~7.5に調節して前記乳清タンパクを溶解させた後、該溶解された乳清タンパク溶解物100重量部に混合酵素(アルカラーゼ(Alcalase2.4L FG,Novo Nordisk社):プロタメックス(Protamax,Novo Nordisk社)=1:1の重量比)を0.4重量部で投入し、50℃で4時間1次加水分解を行った。ここで、1次加水分解反応終了時のpHは。6.0~7.0である。
【0098】
前記1次加水分解された分解物にフラボザイム(Flavourzyme 1000L,Novo Nordisk社)0.2重量部を投入して50℃で15時間2次加水分解を行った後、該2次加水分解された分解物をハウジングフィルター(1μm)で濾過させて物質を除去することで、水溶性乳清タンパク加水分解物を得る。
【0099】
前記得られた水溶性乳清タンパク加水分解物を90℃で30分間殺菌した後、室温で冷却後に噴霧乾燥(温度条件はinlet:190℃、outlet:100℃;水分蒸発量は1~3kg/hr)で乾燥させ、10,000Gausの強い磁力を有する磁石を用いて不純物を除去した後、40メッシュ(mesh)の濾過紙で濾過させ、粉末の水溶性乳清タンパク加水分解物を得た。
【0100】
実施例2.乳清タンパク加水分解物(WP-H)
前記実施例1と同一に実施するが、2次加水分解された分解物をハウジングフィルターで濾過せずにそのまま使用し、水溶性でない乳清タンパク加水分解物を得た。
【0101】
比較例1.水溶性酸性乳清タンパク加水分解物(AW-S)
前記実施例1と同一に実施するが、乳清タンパクの代わりに酸性乳清タンパクを用いて水溶性酸性乳清タンパク加水分解物を得た。
【0102】
前記酸性乳清タンパク(acid whey)は、質量差ではなくpH調節を用いた等電点原理を用いて乳清タンパクを分離したものである。
【0103】
比較例2.酸性乳清タンパク加水分解物(AW-H)
前記比較例1と同一に実施するが、2次加水分解された分解物をハウジングフィルターで濾過せずにそのまま使用し、水溶性でない酸性乳清タンパク加水分解物を得た。
【0104】
<試験例I>
実験動物
マウスの後肢固定(hindlimb immobilization,IM)を実施する筋肉萎縮動物モデルを用いて筋肉萎縮を形成させた後、実施例及び比較例で製造された加水分解物を投与し、筋肉萎縮が回復するかを調べようとした。
【0105】
1週間IMを行った後、2週間IMと同時に、実施例及び比較例で製造された加水分解物4種をそれぞれ投与した。5週齢雄C57BL/6マウス42匹を購入し、本動物室環境に1週間適応させた後、実験を行った。実験群は、何の処理もしていない正常群(Normal)、対照群(筋肉萎縮誘導群、IM)、及び加水分解物4種投与群(AW-H、AW-S、WP-H、WP-S)の合計6群であり、各群当たりに7匹ずつ行った。試料は、精製水に溶かして800mg/kg/dayで使用され、肢の固定は、参考文献(Disease models & mechanisms,8(9)、1059-1069,2015)の方法を用いて、1.5mlマイクロチューブ(microtube)、クリップ、ベルクロ(登録商標)テープで製作した固定機構をマウスの片方の後肢に嵌めて行った。実験期間において3日ごとにマウスの食餌及び水摂取量、体重を測定した。
【0106】
-6つの群のマウス-
正常群(Normal):筋肉萎縮を形成していない群。
対照群(IM):筋肉萎縮後に加水分解物の代わりに飲料水投与。
実施例1(WP-S):筋肉萎縮後に加水分解物(WP-S)800mg/kg/day投与。
実施例2(WP-H):筋肉萎縮後に加水分解物(WP-H)800mg/kg/day投与。
比較例1(AW-S):筋肉萎縮後に加水分解物(AW-S)800mg/kg/day投与。
比較例2(AW-H):筋肉萎縮後に加水分解物(AW-H)800mg/kg/day投与。
【0107】
試験例1.タンパク質供給差測定。
図1は、本発明の正常群、対照群、実施例1の投与群、実施例2の投与群、比較例1の投与群及び比較例2の投与群に供給されたタンパク質の含有量を示すグラフである。
【0108】
供給された加水分解物がタンパク質であるので、食餌摂取量による差を鑑みて、食餌摂取量と加水分解物摂取量を計算して1日タンパク質摂取量を計算したが、図1に示すように、加水分解物の投与によるタンパク質供給差は、群間において有意性が見られないことを確認した。
【0109】
試験例2.各群の握力変化測定。
図2は、本発明の正常群、対照群、実施例1の投与群、実施例2の投与群、比較例1の投与群及び比較例2の投与群において時間の経過による握力変化を示すグラフである(P<0.05、##P<0.01、###P<0.001)。
【0110】
肢の固定及び試料投与を行う間に、握力試験(grip strength test)(Bioseb,Fracne)機器を用いて、実験動物の握力変化を3日ごと測定した。この時、マウスが四肢で握力測定機のメッシュ(mesh)を握るようにした後、実験者が尾を取ってメッシュから引き離した時の最大握力値(g)を測定し、マウス1匹当たりに5回測定した値の平均を記録した。その後、前記平均値を体重に対する割合で標準化した。
【0111】
図2に示すように、正常群では、時間が経つにつれて握力が体重に比例して増加し、対照群では、正常群に比べて握力が有意に減少した。
【0112】
また、加水分解物の経口投与9日後から、実施例1の投与群において握力が対照群に比べて有意に増加したことを確認した。
【0113】
特に、実施例1の投与群は、12日後から他の群に比べて握力が有意に増加したことを確認した。
【0114】
試験例3.筋肉組織の重さの変化測定。
図3Aは、本発明の正常群、対照群、実施例1の投与群、実施例2の投与群、比較例1の投与群及び比較例2の投与群マウスの大腿四頭筋(quadriceps)の重さを測定したグラフであり、図3Bは、本発明の正常群、対照群、実施例1の投与群、実施例2の投与群、比較例1の投与群及び比較例2の投与群マウスの腓腹筋(Gastrocnemius)の重さを測定したグラフであり、図3Cは、本発明の正常群、対照群、実施例1の投与群、実施例2の投与群、比較例1の投与群及び比較例2の投与群マウスのヒラメ筋(Soleus)の重さを測定したグラフである(P<0.05、##P<0.01、###P<0.001)。
【0115】
実験終了後にマウスを犠牲死させ、片方の後肢の大腿四頭筋(quadriceps)と腓腹筋(Gastrocnemius)及びヒラメ筋(Soleus)を摘出して重さを測定し、測定したデータを体重と比例して標準化した後に、それぞれについて比較した。
【0116】
図3に示すように、正常群に比べて対照群において筋肉萎縮が発生し、大腿四頭筋の重さが約20%、腓腹筋の重さが約23%、及びヒラメ筋の重さが約37%減少したことを確認した。
【0117】
実施例1(WP-S)投与群では、大腿四頭筋約13%、腓腹筋約18%及びヒラメ筋約18%が減少し、全ての筋肉においてそれぞれ36%、20%、52%の筋肉重さ減少に対する保護能力を示すことを確認した。
【0118】
これに対し、比較例2(AW-H)投与群では、大腿四頭筋約19%、腓腹筋約22%及びヒラメ筋約23%が減少し、ヒラメ筋において有意に37%の筋肉重さ減少に対する保護能力が確認され、比較例1(AW-S)投与群では、大腿四頭筋約21%、腓腹筋約22%及びヒラメ筋約25%が減少し、実施例2(WP-H)投与群では、大腿四頭筋約20%、腓腹筋約22%及びヒラメ筋約23%が減少したことを確認した。
【0119】
したがって、加水分解物4種のうち実施例1(WP-S)が筋肉重さに対する最も優れた保護能力を示すことを確認した。
【0120】
試験例4.筋線維断面積減少緩和効果確認。
図4は、本発明の正常群、対照群、実施例1の投与群、実施例2の投与群、比較例1の投与群及び比較例2の投与群マウスの筋線維断面積を染色した写真であり、図5Aは、本発明の正常群、対照群、実施例1の投与群、実施例2の投与群、比較例1の投与群及び比較例2の投与群マウスの筋線維断面積を定量化したグラフであり、図5Bは、本発明の正常群、対照群、実施例1の投与群、実施例2の投与群、比較例1の投与群及び比較例2の投与群マウスの筋肉において筋線維CSAの分布を示すグラフである(P<0.05、##P<0.01、###P<0.001)。
【0121】
加水分解物が筋肉萎縮マウスモデルにおいて筋線維断面積減少を改善させるかどうか確認するために組織学的分析を行った。前記試験例3で得られた腓腹筋組織を、4%パラホルムアルデヒド(paraformaldehyde)を用いて固定した後に断面積を観察するために染色した筋肉組織を、筋肉のきめの90°方向から切り取って4μm厚のパラフィン切片として作製した。前記切片をH&E(hematoxylin and eosin)で13時間染色した後、光学顕微鏡(Olympus,Tokyo,Japan)を用いて100倍で観察した。その後、Image Jソフトウェアで各筋線維の断面積(cross-sectional area,CSA)の定量化を行った。
【0122】
図4及び図5に示すように、正常群に比べて対照群において筋肉萎縮が発生し、47%筋線維断面積が減少したことを確認した。
【0123】
また、正常群に比べて比較例2(AW-H)投与群では約37%、比較例1(AW-S)投与群では約47%、実施例2(WP-H)投与群では約47%、及び実施例1(WP-S)投与群では約34%筋線維断面積が減少し、実施例1(WP-S)投与群においてのみ筋線維断面積減少に対して有意に25%の保護能を示すことを確認した。
【0124】
各筋線維の頻度を筋線維断面積に対する分布で示したとき、実施例1(WP-S)投与群が正常群と最も類似の分布を示すことが確認された。
【0125】
試験例5.筋肉分解関連因子の発現調節確認。
図6Aは、本発明の正常群、対照群、実施例1の投与群、実施例2の投与群、比較例1の投与群及び比較例2の投与群マウスの筋肉分解関連因子の発現を示すウェスタンブロットであり、図6B図6Gはそれぞれ、本発明の正常群、対照群、実施例1の投与群、実施例2の投与群、比較例1の投与群及び比較例2の投与群マウスのp-Foxo3a、Atrogin-1タンパク質、MuRF-1タンパク質、Atrogin-1 mRNA、MuRF-1 mRNA及びBnip3 mRNA因子それぞれの発現程度を示すグラフである(P<0.05、##P<0.01、###P<0.001)。
【0126】
筋肉萎縮マウスモデルにおいて筋肉分解と関連した因子であるFoxo3a、MuRF-1、Atrogin-1及びBnip3のタンパク質及び遺伝子発現程度を変化させるかを確認するためにウェスタンブロットとqRT-PCRを行った。Foxo3aは、筋肉萎縮関連因子の転写因子でリン酸化(phosphorylation)すると、細胞質ゾル(cytosol)に局在化(localization)して活動が阻害されことが知られている。また、Atrogin-1とMurF1は、筋肉でのみ特異的に発現するユビキチンリガーゼ(ubiquitin ligase)であり、筋肉萎縮時に筋肉タンパク質を分解する最も代表的な因子として知られている。Bnip3は、マイトファジー(mitophagy)及びオートファジー(autophagy)に関連した因子であり、筋肉萎縮時にその発現が増加することが知られている。
【0127】
前記試験例3で摘出した腓腹筋から、Roche Diagnostics社(米国,インディアナポリス)のcompleteTM(登録商標)プロテアーゼインヒビターカクテルタブレット(protease inhibitor cocktail tablets)が含まれた溶解緩衝液(lysis buffer)を用いてタンパク質を抽出した。抽出したタンパク質は、Thermo Fisher Scientific社(米国,ロックフォード)のPierceTM(登録商標) BCAタンパク質分析キット(Protein Assay Kit)を用いて製品説明書に従ってタンパク質濃度を確認した後、一定のタンパク質濃度に調整した。同じ量のタンパク質を12%ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル(Sodium Dodecyl Sulfate(SDS)-polyacrylamide gel)で電気泳動させた後、エレクトロブロッティング(electroblotting)を用いてポリフッ化ビニリデン(Polyvinylidene fluoride,PVDF)膜に移動(transfer)させた。前記膜が5%脱脂乳(skim milk)を用いて常温で1時間ブロッキング(blocking)された後、4℃で1次抗体と一晩インキュベーションされた。その翌日、前記膜がHRP(horseradish peroxidase)-結合した2次抗体と1時間30分以上インキュベーションされた後、富士フィルム社(日本,東京)のLAS3000発光イメージ分析機(luminescent image analyzer)を用いて現像された。このとき、Foxo3a、p-Foxo3a抗体は、セルシグナリング社(Cell Signaling Technology,米国,ダンバーズ)から購入し、MuRF-1、Atrogin-1、2次抗体は、サンタクルーズバイオテクノロジー社(Santa Cruz Biotechnology,米国,サンタクルーズ)から購入し、β-actin抗体は、ジーンテックス(GeneTex,米国,カリフォルニア)から購入した。
【0128】
前記試験例3で摘出した腓腹筋から、easy-RED(iNtRON Biotechnology,韓国、ソンナム)を用いてmRNAを抽出した後、RevoScriptTM(登録商標) Reverse Transcriptase premix kit(iNtRON Biotechnology)を用いて総体積20μLで反応させ、cDNAとして合成した。SYBR premix EX Taq(Takara,日本)10μL、cDNA 2μL、それぞれのプライマー(10pmol/μL)1μL、Rox dye 1μL及びRnase/Dnase free water 6μLを混ぜてstepone plusリアルタイムPCR(Applied Biosystems,CA,USA)を利用した。プライマーは、BIONICS社から購入して使用し、それぞれの配列は、下記表1の通りである。
【0129】
【表1】
【0130】
図6に示すように、p-Foxo3aとFoxo3aのリン酸化比率は、正常群に比べて対照群において有意に減少しており、実施例1(WP-S)投与群のみにおいて比率が有意に増加することを確認した。
【0131】
また、Atrogin-1の蛋白体及び遺伝体発現の結果は、正常群に比べて対照群で有意に増加しており、加水分解物投与によって有意に発現が減少することを確認した(WP-S>AW-H>=WP-H)。
【0132】
また、MurF1の蛋白体及び遺伝体発現の結果は、正常群に比べて対照群において発現が有意に増加しており、実施例1(WP-S)投与群において有意に発現が減少している。
【0133】
また、Bnip3の遺伝体発現の結果も、正常群に比べて対照群において有意に増加しており、加水分解物投与によって有意に減少している(WP-S>AW-S)。
【0134】
結論的に、筋肉萎縮マウスモデルにおいて実施例1(WP-S)の投与は、筋肉萎縮によって増加した筋肉分解関連因子の蛋白体及び遺伝体発現を減少させ、筋肉萎縮を解消している。
【0135】
試験例6.筋肉合成関連因子の発現調節確認。
図7Aは、本発明の正常群、対照群、実施例1の投与群、実施例2の投与群、比較例1の投与群及び比較例2の投与群マウスの筋肉合成関連因子の発現を示すウェスタンブロットであり、図7B図7Eは、筋肉合成関連因子のリン酸化比率を示すグラフである(P<0.05、##P<0.01、###P<0.001)。
【0136】
筋肉萎縮マウスモデルにおいて筋肉合成と関連した因子であるPI3K、Akt、S6K1及び4E-BP1のリン酸化比率を変化させることを確認するためにウェスタンブロット(Western blot)を行った。PI3K- Akt pathwayは、IGF-1のような成長因子(growth factor)などによって活性化され、最終的には筋肉合成を増加させる信号伝達経路としてよく知られている。PI3Kのリン酸化、Aktのリン酸化などによってS6K1と4E-BP1がリン酸化され、S6リボソームタンパク質(S6 ribosomal protein)がリン酸化される、或いはeIF4E(eukaryotic translation initiation factor 4E)を遊離させてタンパク質合成が誘導される。したがって、ウェスタンブロットを用いて4因子のリン酸化比率を測定し、乳タンパク加水分解物の投与時に筋肉合成が増加することを測定した。
【0137】
前記試験例3で摘出した腓腹筋において試験例5と同じ方法でウェスタンブロットを行った。p-PI3K抗体は、アブカム社(abcam ,England)から購入し、PI3K、p-Akt、Akt、p-S6K1、S6K1、p-4E-BP1、4E-BP1抗体は、セルシグナリング社(Cell Signaling Technology、米国,ダンバーズ)から購入し、Gapdh抗体はジーンテックス社(GeneTex、米国,カリフォルニア)から購入した。
【0138】
図7に示すように、p-PI3KとPI3Kのリン酸化比率は、正常群に比べて残りの群において比率が有意に減少した。
【0139】
また、p-AktとAktのリン酸化比率は、正常群に比べて対照群において比率が有意に減少しており、実施例1(WP-S)投与によって有意に増加していることを確認した。
【0140】
また、p-S6K1とS6K1のリン酸化比率は、正常群に比べて対照群において比率が有意に減少しており、加水分解物投与によって有意に増加した(WP-S>AW-H)。
【0141】
また、p-4E-BP1と4E-BP1のリン酸化比率は、正常群に比べて対照群に比べて比率が有意に減少しており、加水分解物投与によって有意に増加した(WP-S>WP-H>AW-S)。
【0142】
結論的に、筋肉萎縮マウスモデルにおいて実施例1(WP-S)投与は、筋肉萎縮によって減少した筋肉合成関連因子のリン酸化を増加させ、筋肉萎縮を解消した。
【0143】
本発明の乳清タンパク加水分解物と他社乳清タンパク加水分解物との比較。
【0144】
実施例1.水溶性乳清タンパク加水分解物(WP-S)。
前記実施例1の水溶性乳清タンパク加水分解物を利用した。
【0145】
比較例3.アーラ乳清タンパク加水分解物。
アーラ乳清タンパク加水分解物(Arla Foods Ingredients,Arla SP-8011、アーラウェイプロテイン)を利用した。
【0146】
比較例4.ヒルマ乳清タンパク加水分解物。
ヒルマ乳清タンパク加水分解物(Hilmar Ingredients,Hilmar8010)を利用した。
【0147】
比較例5.マリー ゴールバーン乳清タンパク加水分解物。
マリー ゴールバーン乳清タンパク加水分解物(韓国登録特許第1311318号公報の実施例2)を利用した。
【0148】
<試験例II>
試験例7.構成アミノ酸測定。
構成アミノ酸組成は、乳清タンパク質加水分解物を酸加水分解法で分解した後、アミノ酸自動分析機で組成を測定した。すなわち、乳清タンパク質加水分解物25mgをキャップチューブ(cap tube)に正確に称量して入れた後、2.5mLの6N HClを加え、110℃で24時間加水分解した。3G-4ガラスフィルターで未加水分解物質を除去した濾液は、回転真空蒸発器(N-1110,EYELA,Tokyo,Japan)を用いて、50℃で完全に溶媒を揮発させた後、0.01N HClを用いて25mLに定溶し、アミノ酸分析用試料として使用した。アミノ酸分析は、試料溶液40uLを注入してアミノ酸自動分析機(Biochrom 30,Cambridge,UK)で分析した。
【0149】
【表2】
【0150】
試験例8.分子量測定。
図8は、本発明の実施例1によって製造された加水分解物の分子量を測定したグラフである。
【0151】
実施例1の加水分解物0.01gに二次蒸留水490uLと0.1% TFAを含むアセトニトリル500uLを加えて溶解した後、MALDI-Tof質量分析機(4700Proteomics Analyzer,Applied Biosystems,MA,USA)で質量分布を確認した。
【0152】
図8に示すように、実施例1の分子量は、210~2800Daであり、CHCAマトリックスピークを排除した主要ペプチドのピークは、324m/z、496m/z、611m/z、1375m/z、1700m/z、1880m/zであり、主に1700m/z以下において多くのペプチドピークが検出されることを確認した。
【0153】
試験例9.指標ペプチド含有量測定。
指標ペプチド合成。
アミノ酸配列分析によって確認した指標ペプチドLeu-Asp-Ile-Gln-Lys(LDIQK)は、一般固相合成法によってアブクロン社(ソウル,韓国)で合成し、合成ペプチドLDIQKの分子量と純度はそれぞれ、615.73Daと95.05%であった。
【0154】
指標ペプチドの定量。
指標ペプチドの定量は、Watchers 120 ODS-BP(.6×250mm,5um)を装着したAgilent 1260 infinity HPLCシステム(Santa Clara,CA,USA)とShimdzu HPLC prominenceシステムで実施した。分析装備以外の分析条件は同一に適用した。実施例1の試料は、別の前処理をせず、実施例1の試料粉末0.5gをHPLC級蒸留水に完全に溶かして10mLに定溶した後、遠心分離(7,500xg、20分)して得た上清液を0.20umシリンジフィルターで濾過し、分析用試料として使用した。タンパク質濃度確認のためにビウレット(Biuret)法で可溶性タンパク質の濃度を測定した。それぞれのHPLCシステムにおいて指標ペプチド定量のための分析条件は表3の通りであり、指標ペプチド(LDIQK)の含有量は表4に示した。
【0155】
【表3】
【0156】
【表4】
【0157】
上の表4に示すように、本発明の実施例1によって製造された水溶性乳清タンパク加水分解物は、比較例3~5に比べて、指標ペプチドの含有量が格段に高いことを確認した。
【0158】
試験例10.細胞毒性測定。
図9A図9Dは、実施例1及び比較例3~5の各乳清タンパク質加水分解物に対する細胞毒性を示すグラフである。
【0159】
マウス根源細胞株であるC12細胞をシード(seeding)した後、90%満たされたときに、分化培地(2% ウマ血清)に入れ替えた後、7日間分化させた。分化後に、実施例1及び比較例3~5の乳清タンパク質加水分解物を濃度別(0,50、100、250、500μg/ml)に処理し、48時間後に細胞毒性を測定した。
【0160】
図9A図9Dに示すように、実施例1及び比較例3~5の各乳清タンパク質加水分解物は、500μg/mlまで細胞毒性がないことを確認した。
【0161】
試験例11.筋管細胞厚さ(myotube diameter)測定。
図10は、対照群(無処理)、デキサメタゾン処理群、実施例1及び比較例3~5で処理時の筋管細胞の厚さを顕微鏡で測定した写真である。
【0162】
図11は、対照群(無処理)、デキサメタゾン処理群、実施例1及び比較例3~5で処理時の筋管細胞の厚さを顕微鏡で測定した結果をデータ化して示すグラフである。
【0163】
マウス筋芽細胞であるC12細胞をシードした後、飽和度が80%以上になるときに、分化培地(2%ウマ血清培地)に入れ替えた後、筋芽細胞を筋管細胞に7日間分化させた。筋萎縮抑制効果を確認するために、筋管細胞に分化誘導7日目から2日(48時間)間、培地に、50μMデキサメタゾン(dexamethasone,dexa;sigma Aldrich,USA)と共に実施例1及び比較例3~5の乳清タンパク質加水分解物100μg/mlを同時に処理した。培養終了後に、光学顕微鏡(CKX41,Olympus)を用いてx400倍率で撮影した後、image Jソフトウェア(USA)を用いて分析した。各ウェル部分を無作為に選択して顕微鏡撮影し、各ウェルから最小10個の筋管厚さを分析した(6反復/群)。
【0164】
対照群(無処理)は、処理していないC12細胞であり、デキサメタゾン処理群は、C12細胞に50μMデキサメタゾンを処理した群である。
【0165】
図10に示すように、本発明の実施例1によって製造された水溶性乳清タンパク加水分解物が、デキサメタゾン処理群及び比較例3~5に比べて、筋管細胞の厚さが広いことを確認した。
【0166】
図11は、図10の結果をデータ化したグラフであり、対照群(無処理)に比してデキサメタゾン処理群は、筋管細胞厚さが30.4%減少しており、デキサメタゾン処理群に比して実施例1は、筋管細胞厚さが21%(回復率48%)増加したことを確認した。
【0167】
一方、デキサメタゾン処理群に比して比較例3は、筋管細胞厚さが12%(回復率28%)増加しており、デキサメタゾン処理群に比して比較例4及び比較例5は、筋管細胞厚さがそれぞれ9%(回復率21%)ずつ増加しているので、実施例1の水溶性乳清タンパク質加水分解物が比較例3~5に比べて、デキサメタゾンの処理で減少した筋管細胞厚さを最も良好に増加させることを確認した。
【0168】
試験例12.タンパク質含有量補正後筋管細胞厚さ(myotube diameter)測定。
図12は、対照群(無処理)、デキサメタゾン処理群、実施例1及び比較例3~5で処理時の筋管細胞の厚さを顕微鏡で測定した写真である。
【0169】
図13は、対照群(無処理)、デキサメタゾン処理群、実施例1及び比較例3~5で処理時の筋管細胞の厚さを顕微鏡で測定した結果をデータ化して示すグラフである。
【0170】
マウス筋芽細胞であるC12細胞をシードした後、飽和度が80%以上になるときに、分化培地(2% ウマ血清培地)に入れ替えた後、筋芽細胞を筋管細胞に7日間分化させた。筋萎縮抑制効果を確認するために筋管細胞に分化誘導7日目から2日(48時間)間、培地に、50μMデキサメタゾン(dexamethasone,dexa;sigma Aldrich,USA)と共にタンパク質含有量をそれぞれ80μg/mlに補正した実施例1及び比較例3~5の乳清タンパク質加水分解物を同時に処理した。培養終了後に、光学顕微鏡(CKX41,Olympus)を用いてx400倍率で撮影した後、image Jソフトウェア(USA)を用いて分析した。各ウェル部分を無作為に選択して顕微鏡撮影し、各ウェルから最小10個の筋管厚さを分析した(6反復/群)。
【0171】
対照群(無処理)は、処理していないC12細胞であり、デキサメタゾン処理群はC12細胞に50μMデキサメタゾンを処理した群である。
【0172】
図12に示すように、本発明の実施例1によって製造された水溶性乳清タンパク加水分解物による筋管細胞の厚さが、デキサメタゾン処理群及び比較例3~5による筋管細胞の厚さに比べて広いことを確認した。
【0173】
図13は、図12の結果をデータ化したグラフである。対照群(無処理)に比べてデキサメタゾン処理群は、筋管細胞厚さが32%減少しており、デキサメタゾン処理群に比べて実施例1は、筋管細胞厚さが35%(回復率74%)増加したことを確認した。
【0174】
一方、デキサメタゾン処理群に比して比較例3は、筋管細胞厚さが16%(回復率33%)増加し、デキサメタゾン処理群に比して比較例4及び比較例5は、筋管細胞厚さがそれぞれ13%(回復率29%)ずつ増加しているので、実施例1の水溶性乳清タンパク質加水分解物が比較例3~5に比べて、デキサメタゾンの処理で減少した筋管細胞厚さを最も良好に増加させることを確認した。
【0175】
下記に、本発明の粉末を含有する組成物の製剤例を説明するが、本発明は、これを限定するためのものではなく、単に具体的に説明するためのものである。
【0176】
製剤例1.散剤の製造。
実施例1で得た水溶性乳清タンパク加水分解物500mg。
乳糖100mg。
タルク10mg。
前記の成分を混合して気密布に充填して散剤を製造する。
【0177】
製剤例2.錠剤の製造。
実施例1で得た水溶性乳清タンパク加水分解物300mg。
とうもろこし澱粉100mg。
乳糖100mg。
ステアリン酸マグネシウム2mg。
前記の成分を混合した後、通常の錠剤の製造方法によって打錠して錠剤を製造する。
【0178】
製剤例3.カプセル剤の製造。
実施例1で得た水溶性乳清タンパク加水分解物200mg。
結晶性セルロ-ス3mg。
ラクトース14.8mg。
ステアリン酸マグネシウム0.2mg。
通常のカプセル剤の製造方法によって前記の成分を混合し、ゼラチンカプセルに充填してカプセル剤を製造する。
【0179】
製剤例4.注射剤の製造。
実施例1で得た水溶性乳清タンパク加水分解物600mg。
マンニトール180mg。
注射用滅菌蒸留水2974mg。
NaHPO4、12HO 26mg。
通常の注射剤の製造方法によって1アンプル当たりに前記の成分含有量で製造する。
【0180】
製剤例5.液剤の製造。
実施例1で得た水溶性乳清タンパク加水分解物4g。
異性化糖10g。
マンニトール5g。
精製水 適量。
通常の液剤の製造方法によって精製水にそれぞれの成分を加えて溶解させ、レモン香を適量加えた後、前記の成分を混合後に精製水を加え、全体に精製水を加えて全体100gに調節した後、褐色瓶に充填後に滅菌させ、液剤を製造する。
【0181】
製剤例6.顆粒剤の製造。
実施例1で得た水溶性乳清タンパク加水分解物1,000mg。
ビタミン混合物 適量。
ビタミンAアセテート70μg。
ビタミンE 1.0mg。
ビタミンB 10.13mg。
ビタミンB 20.15mg。
ビタミンB 60.5mg。
ビタミンB 120.2μg。
ビタミンC 10mg。
ビオチン10μg。
ニコチン酸アミド1.7mg。
葉酸50μg。
パントテン酸カルシウム0.5mg。
無機質混合物 適量。
硫酸第一鉄1.75mg。
酸化亜鉛0.82mg。
炭酸マグネシウム25.3mg。
第1リン酸カリウム15mg。
第2リン酸カルシウム55mg。
クエン酸カリウム90mg。
炭酸カルシウム100mg。
塩化マグネシウム24.8mg。
上記のビタミン及びミネラル混合物の組成比は、比較的顆粒剤に適合した成分を好ましい実施例で混合組成したが、その配合比を任意に変形実施しても構わなく、通常の顆粒剤製造方法によって上記の成分を混合した後、顆粒を製造し、通常の方法によって健康機能食品組成物の製造に使用することができる。
【0182】
製剤例7.機能性飲料の製造。
実施例1で得た水溶性乳清タンパク加水分解物1,000mg。
クエン酸1,000mg。
オリゴ糖100g。
梅の実濃縮液2g。
タウリン1g。
精製水を加えて全体900mL。
通常の健康飲料の製造方法によって上記の成分を混合した後、約1時間85℃で撹拌加熱した後、作られた溶液を濾過し、滅菌された2L容器に取って密封滅菌した後に冷蔵保管し、本発明の機能性飲料組成物の製造に使用する。
【0183】
前記組成比は、比較的嗜好飲料に適合した成分を好ましい実施例で混合組成したが、需要階層、需要国、使用用途などの地域的、民族的嗜好度によってその配合比を任意に変形実施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0184】
本発明の乳清タンパク加水分解物及びこれを有効成分として含有する組成物は、筋減少症を改善、予防又は治療が可能な組成物として利用可能である。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図10
図11
図12
図13