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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】杭抜き方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 9/02 20060101AFI20240401BHJP
【FI】
E02D9/02
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023136572
(22)【出願日】2023-08-24
【審査請求日】2023-08-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520124383
【氏名又は名称】株式会社CSPホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【弁理士】
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 稔
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-022543(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2008/0164447(US,A1)
【文献】特開2008-297823(JP,A)
【文献】特開2017-101531(JP,A)
【文献】特開2016-056572(JP,A)
【文献】中国実用新案第217128226(CN,U)
【文献】中国実用新案第218386133(CN,U)
【文献】中国実用新案第216529805(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭を地中から引き抜くための杭抜き装置を用いた杭抜き方法であって、
前記杭抜き装置は、
地面に設置される板状の台座と、
前記杭の被係合部に対して上下方向に係合可能な係合部と、
前記台座の上に固定され、前記係合部によって前記杭を係合させて前記杭を地中から押し上げるジャッキと、
前記台座及び前記係合部にそれぞれ形成され、前記ジャッキを前記杭に対して水平方向に近づける側へスライド移動させることが可能となるように、前記杭が入り込むスリットと、を備え、
前記台座の前記スリットは、水平方向において前記ジャッキの基盤に向かって凹むように形成され、前記杭を前記ジャッキの基盤の近くに案内するスリットであり、
前記係合部の前記スリットは、前記ジャッキの荷受部から突出する先端部に形成され、前記台座に形成される前記スリットと同じ方向に凹むスリットであり、
前記係合部の前記スリットに前記杭が案内されることによって複数に分かれた前記先端部の間に前記杭が挟まれるように配置され、
平面視において、前記台座の前記スリットの奥側端部と、前記係合部の前記スリットの奥側端部とが同じ位置となっており、
前記ジャッキは、ひし形のアームを有し、アームの中心に配置されたねじ棒を回転させることにより高さが変わるパンタグラフジャッキであり、
平面視において、前記アームが延びる第1方向に対して直交する第2方向に、前記台座及び前記係合部の前記スリットがそれぞれ延びており、
前記アームが取り付けられる前記ジャッキの基盤は、前記第1方向における両側に、前記第2方向にその幅が広がる幅広部をそれぞれ有し、
平面視においてそれらの前記幅広部の間に至るまで前記台座の前記スリットが延びているものであり、
前記台座の前記スリット及び前記係合部のスリットの開口部を、地中に埋め込まれた前記杭の方向に向けるステップと、
前記杭抜き装置を水平方向に移動させ、前記杭を前記台座の前記スリット及び前記係合部の前記スリットに案内し、前記杭が前記係合部の基端部分と接するように前記杭が前記台座の前記スリットの奥側端部と前記係合部の前記スリットの奥側端部に達するまで前記杭抜き装置を移動させ、前記杭の被係合部に対して、前記係合部の前記先端部及び前記基端部分をその下側に配置させるステップと、
前記ねじ棒を回転させて、前記係合部によって前記杭の被係合部を押し上げ、前記杭を地中から押し上げて引き抜くステップと、を含む杭抜き方法。
【請求項2】
前記台座の前記スリットにおいて、その開口部からの奥行寸法は、前記杭の直径よりも大きい、請求項1に記載の杭抜き方法
【請求項3】
前記台座に対して立設し、前記台座の前記スリットの少なくとも一部を囲むガイド壁を備える、請求項1又は2に記載の杭抜き方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭抜き方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地中に埋め込まれた杭に単管クランプや専用の金具を取り付け、それをジャッキと係合させ、ジャッキを操作することにより、杭を曲げずに地中から引き抜いていた。このような杭抜き装置は、例えば、非特許文献1に示すカタログの20ページに記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】“くい丸(登録商標)のカタログ”、[online]、[令和5年7月13日検索]、インターネット<URL:https://www.kuimaru.com/pages/catalog.php>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ジャッキなどの杭抜き装置の設置面が柔らかい地面である場合、杭を引き抜く際、反作用により杭抜き装置の一部が地面に埋まり、杭に対して杭抜き装置が傾くことがあった。この場合、引き抜きにくくなり、また、場合によっては杭が曲がってしまう可能性もあった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、杭を真っすぐ引き抜くことができる杭抜き方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段は、杭を地中から引き抜くための杭抜き装置であって、地面に設置される板状の台座と、前記杭の被係合部に対して上下方向に係合可能な係合部と、前記台座の上に固定され、前記係合部によって前記杭を係合させて前記杭を地中から押し上げるジャッキと、前記台座及び前記係合部にそれぞれ形成され、前記ジャッキを前記杭に対して水平方向に近づける側へスライド移動させることが可能となるように、前記杭が入り込むスリットと、を備えることを要旨とする。
【0007】
ジャッキは、板状の台座の上に固定されており、台座は、ジャッキに比較して広い範囲で地面と面接触するため、杭を地中から押し上げる際、地面に埋まることなく、安定して杭を引き抜くことができる。
【0008】
ところで、ジャッキと杭との位置が離れてしまうと、杭と係合する係合部に力がかかり、しなって杭に力を伝達しにくくなったり、係合部が曲がってしまったりする場合がある。また、杭がジャッキに対して傾いた場合も、係合部から杭に対して力を伝達しにくくなり、杭が曲がってしまう場合がある。
【0009】
そこで、台座及び係合部に、杭をジャッキの近くに案内することができるように、スリットをそれぞれ形成した。これにより、ジャッキの近くに杭を配置して、係合部から杭に対して力を伝達しやすくなる。係合部にもスリットを形成しているため、杭の上下で位置決めすることができ、杭がジャッキに対して傾くことを抑制することができる。また、水平方向にスライド移動させることが可能なスリットであるため、杭の長さに関わらず、杭をジャッキの近くに案内しやすくなっている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】杭抜き装置の斜視図。
図2】杭抜き装置の正面図。
図3】杭抜き装置の平面図。
図4】ジャッキが上下方向に延びたときにおける杭抜き装置の正面図。
図5】台座の平面図。
図6】杭が配置されたときの係合部の平面図。
図7】(a)は、初期状態における杭抜き装置の側面図、(b)は、杭がスリットに案内されたときにおける杭抜き装置の側面図、(c)は、杭を押し上げる際の杭抜き装置の側面図。
図8】変形における杭の側面図。
図9】変形例における台座の平面図。
図10】変形例における台座の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明にかかる「杭抜き装置」を具体化した実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施形態及び変形例相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。また、実施形態及び変形例の説明において、明示している構成の組み合わせだけでなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、実施形態及び変形例を組み合わせることも可能である。
【0012】
図1に示す杭抜き装置10は、杭100を地中から引き抜くための装置である。杭100は、金属の棒状に形成されている。なお、杭100の形状は、長尺状であれば任意であり、鋼管であってもよい。この杭100には、直交クランプや、自在クランプ、若しくは単管クランプのような金具101(図8(a)等参照)が取り付け可能となっている。また、杭100の先端(地中から吐出する部分)には、図8(b)に示すような鍔状の凹凸102が設けられていてもよい。なお、以下では、まとめて杭100の被係合部103と示す。
【0013】
図1図3に示すように、この杭抜き装置10は、杭100を地中から押し上げるジャッキ20と、ジャッキ20が固定される台座30と、ジャッキ20に固定され、杭100と係合する係合部40と、を備える。なお、図1では、説明の都合上、杭100の被係合部103の図示を省略している。
【0014】
ジャッキ20は、周知のパンタグラフジャッキであり、基盤21と、基盤21に回動可能に固定されるひし形のアーム部22と、荷受部23とを備える。
【0015】
アーム部22は、一対の下部アーム22a,22bと、一対の上部アーム22c,22dから構成されている。下部アーム22a,22bと、上部アーム22c,22dは、ほぼ同じ長さに形成されている。下部アーム22a,22bの両端のうち第1端は、基盤21に対して回動可能にそれぞれ固定されており、下部アーム22a,22bは、所定方向(アーム部22が延びる方向)に回動可能とされている。下部アーム22a,22bの第2端には、上部アーム22c,22dの両端のうち第1端がそれぞれ回動可能に固定されている。そして、上部アーム22c,22dの第2端は、荷受部23に対して回動可能に固定されている。
【0016】
これにより、図2及び図4に示すように、アーム部22を上下方向に延ばすことにより、基盤21と荷受部23とを遠ざけることができ、アーム部22を左右方向(図2,4における左右方向)に延ばすことにより、基盤21と荷受部23とを近づけることができる。
【0017】
下部アーム22aと上部アーム22cとが接続される第1関節部分と、下部アーム22bと上部アーム22dとが接続される第2関節部分との間に、ネジ棒24が架け渡されている。ネジ棒24の両端のうち第1端は、第2関節部分に設けられた軸受け25を介して回転可能に固定されている。なお、ネジ棒24の第1端側の先端には、四角柱24aが形成されており、四角柱24aをレンチなどで回すことにより、ネジ棒24を回転させることができるようになっている。なお、ネジ棒24の第1端側の先端形状は、任意に変更可能であり、六角柱状であっても、環状に形成されていてもよい。
【0018】
また、ネジ棒24の第2端側には、雄ネジが設けられており、第1関節部分に設けられた雌ネジと螺合するようになっている。これにより、ネジ棒24を所定方向に回転させると、アーム部22を上下方向に延ばして、基盤21と荷受部23とを遠ざけることができ、ネジ棒24を反対方向に回転させると、アーム部22を左右方向(横方向)に延ばして、基盤21と荷受部23とを近づけることができる。
【0019】
また、図3に示すように、ジャッキ20の基盤21は、アーム部22が延びる第1方向(図3において上下方向に相当)の両側に、第1方向に直交する第2方向(図3において左右方向に相当)に幅が広がる幅広部21aが設けられている。つまり、ジャッキ20の基盤21は、第1方向の中央において、第2方向の幅が狭い幅狭部21bが設けられていることとなる。
【0020】
台座30は、略正方形の金属板により形成されており、台座30の上にジャッキ20の基盤21が溶接などで固定されている。本実施形態において、台座30の縦寸法は、200mmであり、その横寸法は200mmである。また、台座30の厚さ寸法は、2mm~5mm程度となっている。なお、台座30の各寸法は任意に変更してもよく、長方形状であってもよい。
【0021】
また、ジャッキ20の固定方法は任意であり、ねじ止めや接着剤などにより固定されていてもよい。台座30の下面(地面に当接する面)の面積は、ジャッキ20の基盤21の底面の面積に比較して大きく形成されている。ジャッキ20の基盤21は、台座30の中央付近に固定されている。
【0022】
ところで、ジャッキ20の基盤21を、台座30の中央付近に固定すると、ジャッキ20から台座30の外縁までの距離が遠くなり、このままだと、杭100と係合する係合部40を長く(大きく)する必要がある。そして、係合部40が長くなると、杭100と係合する係合部40に力がかかり、しなって杭100に力を伝達しにくくなったり、係合部40が曲がってしまったりする場合がある。
【0023】
そこで、台座30に、ジャッキ20を杭100に対して水平方向に近づける側へスライド移動させることが可能となるように、杭100をジャッキ20の近くに案内するスリット31を形成した。このスリット31は、水平方向にジャッキ20の基盤21に向かって凹むように形成されており、杭100が入り込むものである。また、図5に示すように、台座30のスリット31は、台座30の外縁から、ジャッキ20に向かって真っすぐに凹むように形成されている。このスリット31の幅寸法L11は、杭100の直径(例えば、48.6mm)よりも大きく、例えば、52mm程度に形成されている。また、スリット31の開口部からの奥行寸法L12は、杭100の直径よりも大きく、例えば、65mm程度に形成されている。なお、スリット31の基盤21の側(奥側)は、杭100の外径に応じた半径26cm程度の半円形状(円弧状)の切欠きとなっている。
【0024】
そして、杭抜き装置10の平面視において、すなわち、杭抜き装置10を上方から見たとき、図3に示すように、アーム部22が延びる第1方向に対して直交する第2方向に、台座30のスリット31は、延びるように設けられている。また、平面視において、台座30のスリット31は、基盤21の第1方向両側に設けられている一対の幅広部21aの間に至るまで(つまり、基盤21の幅狭部21bの近傍まで)延びている。
【0025】
係合部40は、ジャッキ20の荷受部23に固定されている。固定方法は、溶接、接着、ねじ止めなどの任意の方法である。係合部40は、10cm×10cmの板状に形成されており、荷受部23から水平方向に突出するように設けられている。具体的には、荷受部23から台座30のスリット31の方向と同じ方向に沿って突出するように設けられている。なお、本実施形態では、係合部40の大きさは、台座30の大きさよりも小さくしているが、係合部40の各種寸法や形状は、任意に変更してもよい。
【0026】
また、係合部40にも、台座30と同様に、ジャッキ20を杭100に対して水平方向に近づける側へスライド移動させることが可能となるように、杭100が入り込むスリット41が設けられている。図6(a)に示すように、この係合部40のスリット41は、ジャッキ20の荷受部23から突出する先端部42に形成され、台座30に形成されるスリット31と同じ方向に凹むように形成されている。このため、係合部40の先端部42は、2つに分かれて、爪状となっている。
【0027】
また、係合部40のスリット41は、台座30と同様に、ジャッキ20に向かって真っすぐに凹むように形成されている。そして、係合部40のスリット41に杭100が案内されることによって2つに分かれた先端部42の間に杭100が挟まれるように配置される。
【0028】
係合部40のスリット41の幅寸法L21は、杭100の直径(例えば、48.6mm)よりもわずかに大きく、例えば、台座30のスリット31の幅寸法L11と同じ(52mm)程度に形成されている。なお、杭100がスリット41に案内されたとき、杭100の被係合部103に対して、先端部42が上下方向に係合可能であれば、スリット41の幅寸法L21は、任意に変更してもよい。また、スリット41の開口部からの奥行寸法L22は、杭100の半径よりも大きく、例えば、30mm程度に形成されている。
【0029】
また、杭抜き装置10の平面視において、すなわち、杭抜き装置10を上方から見たとき、図3に示すように、係合部40のスリット41の奥側端部と、台座30のスリット31の奥側端部の位置が同じとなるように、各スリット31,41が設けられている。
【0030】
次に、このように形成された杭抜き装置10の使用方法について説明する。
【0031】
まず、ネジ棒24を回転させて、アーム部22を左右方向に延ばして、基盤21と荷受部23とを近づけ、ジャッキ20を初期状態にする。初期状態とは、図2に示すように、アーム部22を縮めて基盤21と荷受部23とを最も近づけた状態のことを指す。
【0032】
そして、台座30のスリット31及び係合部40のスリット41の開口部を、地中に埋め込まれた杭100の方向に向ける。そして、図7(a)に示すように、杭抜き装置10を水平方向に移動させ、杭100をスリット31,41に案内し、図1に示すように、杭100がジャッキ20の近くに配置されるまで杭抜き装置10を移動させる。そして、図6(b)や図7(b)に示すように、杭100の被係合部103に対して、係合部40の先端部42をその下側に配置させる。
【0033】
そして、ネジ棒24を回転させ、係合部40の先端部42を、杭100の被係合部103に対して下側から上下方向に係合させて、アーム部22を上下方向に延ばす。その状態からさらにネジ棒24を回転させ、図7(c)に示すように、係合部40によって杭100の被係合部103を押し上げ、杭100を地中から押し上げて引き抜く。
【0034】
以上のように構成することにより、本実施形態では、次のような効果を奏する。
【0035】
ジャッキ20は、平板状の台座30の上に固定されており、台座30は、ジャッキ20の基盤21に比較して広い範囲で地面と面接触する。このため、杭100を地中から押し上げる際、地面に埋まることなく、安定して杭100を引き抜くことができる。
【0036】
ところで、ジャッキ20と杭100との位置が離れてしまうと、杭100の被係合部103と係合する係合部40に力がかかり、しなって杭100に力を伝達しにくくなったり、係合部40が曲がってしまったりする場合がある。また、杭100がジャッキ20に対して傾いた場合も、係合部40から杭100に対して力を伝達しにくくなり、杭100が曲がってしまう場合がある。
【0037】
そこで、台座30及び係合部40に、ジャッキ20を杭100に対して水平方向に近づける側へスライド移動させることが可能となるように、杭100が入り込むスリット31,41をそれぞれ形成した。すなわち、台座30及び係合部40に、杭100をジャッキ20の近くに案内するためのスリット31,41をそれぞれ形成した。これにより、ジャッキ20の近くに杭100を配置して、係合部40から杭100に対して力を伝達しやすくなる。係合部40にもスリット41を形成しているため、杭100の上下で位置決めすることができ、杭100がジャッキ20に対して傾くことを抑制することができる。また、杭100に対して水平方向に杭抜き装置10をスライド移動させることが可能なスリット31,41であるため、杭100の長さに関わらず、杭100をジャッキ20の近くに案内しやすくなっている。
【0038】
台座30のスリット31は、水平方向にジャッキ20の基盤21に向かって凹むように形成され、杭100をジャッキ20の基盤21の近くに案内するスリットである。また、係合部40のスリット41は、ジャッキ20の荷受部23から突出する係合部40の先端部42に形成され、台座30に形成されるスリット31と同じ方向に凹む。杭抜き装置10を所定方向に移動することにより、杭100をスリット31,41の奥に案内することが可能となる。
【0039】
また、係合部40のスリット41に杭100が案内されることによって複数に分かれた先端部42に杭100が挟まれるように配置することができる。杭100を上下2か所で挟み込むようにすることにより、杭100が杭抜き装置10に対して傾くことを抑制することができる。
【0040】
また、図6(b)に示すように、係合部40は、水平方向において杭100を中心とする離れた2か所でその先端部42が杭100の被係合部103と係合する。このため、押し上げる際、両側から力を加えて安定して押し上げることができ、杭100が傾くことを抑制することができる。また、係合部40と杭100の被係合部103とが接触する面積が増えるため、安定して力を加えることができる。
【0041】
また、図6(b)に示すように、スリット31の奥まで杭100を案内することにより、係合部40の本体部分に、被係合部103を係合させることができる。これにより、係合部40と杭100の被係合部103とが接触する面積がより増えるため、安定して力を加えることができる。
【0042】
台座30のスリット31において、その開口部からの奥行寸法L12は、杭100の直径よりも大きい。これにより、杭100をジャッキ20の近くに案内したとき、すなわち、杭100を押し上げる際、台座30を杭100の反対側まで及ぶように配置することができる。つまり、杭100をジャッキ20の近傍に配置したとき、台座30をジャッキ20から杭100の向こう側(ジャッキ20が配置されていない側)まで延びるように配置することができる。これにより、杭100を引き抜くとき、台座30、より詳しくはスリット41の両側に配置される台座30の部分により、ジャッキ20が杭100側に傾くことを効果的に抑制することができる。
【0043】
同様に、係合部40のスリット41において、その開口部からの奥行寸法L22は、杭100の半径よりも大きい。これにより、被係合部103と係合部40、特に係合部40の先端部42との接触面積を広くすることができ、安定的に押し上げることができる。
【0044】
また、ジャッキ20を、パンタグラフジャッキとすることにより、油圧式のジャッキなどに比較して、簡易な構造で杭抜き装置10を実現することができる。
【0045】
また、図3に示すように、平面視において、台座30のスリット31の奥側端部と、係合部40のスリット41の奥側端部を同じ位置としている。すなわち、第2方向において、台座30のスリット31の奥側端部の位置と、係合部40のスリット41の奥側端部の位置とが揃うようになっている。それとともに、台座30のスリット31の奥側端部と、係合部40のスリット41の奥側端部における形状は、杭100の外形形状に応じて、半円形状としている。これにより、杭100が、スリット31,41の奥側端部における半円形状の部分に当接するまで、杭抜き装置10をスライド移動させることが可能となり、杭100をスリット31,41によって確実に保持することが可能となる。
【0046】
平面視において、アーム部22が延びる第1方向に対して直交する第2方向に、スリット31,41がそれぞれ延びている。また、平面視において第1方向の両側に配置されている幅広部21aの間に至るまでスリット31,41が延びている。これにより、杭100をジャッキ20により押し上げる際、第1方向の両側において、杭100をしっかりと支えることができる。
【0047】
(変形例)
上記実施形態の杭抜き装置10の一部の構成を、以下に示すように変更してもよい。以下、杭抜き装置10の一部の構成を変更した変形例について説明する。
【0048】
・上記実施形態において、台座30のスリット31の開口部側の幅寸法を、ジャッキ20の基盤21側に比較して広くしてもよい。例えば、図9に示すように、スリット31の開口部32を広くしてもよい。同様に、係合部40のスリット41の開口部を広くしてもよい。これにより、杭100をスリット31,41の内部に案内するために、スライド移動させる際、案内しやすくなる。
【0049】
・上記実施形態において、スリット31,41は、ジャッキ20に向かって真っすぐに凹むように形成されていたが、スリット31,41の形状は任意に変更してもよい。例えば、L字状に曲がっていてもよい。
【0050】
・上記実施形態において、台座30のスリット31の奥側端部と、係合部40のスリット41の奥側端部とが平面視において同じ位置となっていなくてもよい。
【0051】
・上記実施形態において、係合部40の2つに分かれた先端部42が、杭100の被係合部103と係合したが、係合部40の基端部分と係合してもよい。つまり、杭100をスリット41の最も奥まで差し込むようにして係合部40と係合させてもよい。これにより、係合箇所を増やして、より安定的に杭100を引き抜くことができる。
【0052】
・上記実施形態において、台座30に対して立設し、台座30のスリット31の少なくとも一部を囲むガイド壁を備えてもよい。例えば、図10に示すように、スリット31の周囲を囲むように立設するガイド壁35を備えてもよい。これにより、スリット31に杭100を案内したとき、ガイド壁35によって杭100が傾くことを抑制することができる。
【0053】
・上記実施形態において、ジャッキ20は、ねじ式のジャッキとしたが、これ以外のジャッキでもよく、例えば、油圧式のジャッキやエアー式のジャッキであってもよい。また、ジャッキ20の形状は、パンタグラフジャッキに限らず、任意に変更してもよい。例えば、フロアジャッキを流用してもよい。
【0054】
・上記実施形態において、スリット31,41の形状は、任意に変更してもよい。例えば、スリット31,41の奥側に、半円形状の切欠きがなくてよい。また、係合部40のスリット41と、台座30のスリット31とで、その形状を異ならせてもよい。
【符号の説明】
【0055】
10…杭抜き装置、20…ジャッキ、21…基盤、22…アーム部、22a,22b…下部アーム、22c,22d…上部アーム、23…荷受部、24…ネジ棒、30…台座、31…台座30のスリット、40…係合部、41…係合部のスリット、42…先端部、100…杭、103…被係合部。
【要約】
【課題】杭を真っすぐ引き抜くことができる杭抜き装置を提供すること。
【解決手段】杭抜き装置10は、地面に設置される板状の台座30と、杭100に形成された凹凸102に対して上下方向に係合可能な係合部40と、台座30の上に固定され、係合部40によって杭100を係合させて杭100を地中から押し上げるジャッキ20と、台座30及び係合部40にそれぞれ形成されるスリット31,41であって、ジャッキ20を杭100に対して水平方向に近づける側へスライド移動させることが可能となるように、杭100が入り込むスリット31,41と、を備える。
【選択図】 図1
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図10