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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】心臓ネットの装着器具及び装着方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/00 20060101AFI20240401BHJP
【FI】
A61B17/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023553113
(86)(22)【出願日】2022-02-21
(86)【国際出願番号】 JP2022006827
(87)【国際公開番号】W WO2023157272
(87)【国際公開日】2023-08-24
【審査請求日】2023-08-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】317009765
【氏名又は名称】株式会社iCorNet研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100165663
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 光宏
(72)【発明者】
【氏名】秋田 利明
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 敏哉
【審査官】鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-501652(JP,A)
【文献】米国特許第06569082(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0004248(US,A1)
【文献】特開2014-140456(JP,A)
【文献】特開2014-166234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓に心臓ネットを装着するために使用する装着器具であって、
前記心臓ネットは、前記心臓ネットへの心臓の入り口となる開口部の周囲に該装着器具を取り付けるための取付部を有しており、
前記装着器具は、第1パーツおよび第2パーツを有しており、
前記第1パーツおよび第2パーツは、それぞれ
前記取付部に取り付けて前記心臓ネットの開口部が開いた状態で支持する支持部と、
手で保持するための柄と、
該第1パーツおよび第2パーツを分離したり結合したりできる結合部とを備える装着器具。
【請求項2】
請求項1記載の装着器具であって、
前記第1パーツおよび第2パーツの支持部は、
それぞれ開口状態の前記開口部の輪郭の一部を形成するように湾曲するとともに、
先端の一部が相互に重なり合う形状となっている装着器具。
【請求項3】
請求項2記載の装着器具であって、
前記第1パーツおよび第2パーツの支持部は、前記開口部が前記柄に対して傾斜した状態となるように、前記柄に傾斜して取り付けられている装着器具。
【請求項4】
請求項1記載の装着器具であって、
前記第1パーツおよび第2パーツは、
前記開口部の径が開いた状態と、閉じた状態に変更可能な開閉機構を有する装着器具。
【請求項5】
請求項4記載の装着器具であって、
前記結合部は、前記第1パーツおよび第2パーツを、それぞれの前記柄の一部において回動可能に結合しており、前記開閉機構として機能する装着器具。
【請求項6】
請求項1記載の装着器具であって、
前記第2パーツは、取り付けられた前記心臓ネットが前記支持部から前記柄にずれることを防止する防止機構を備える装着器具。
【請求項7】
請求項6記載の装着器具であって、
前記防止機構は、前記第2パーツの前記支持部と前記柄とが屈曲している構造である装着器具。
【請求項8】
請求項1記載の装着器具であって、
前記第1パーツは、前記支持部と前記柄とが滑らかに接続している装着器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心臓ネットの装着器具及び装着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
心臓疾患への処置として、心臓への心臓ネットの装着が行われている。心臓ネットとしては、主として心拡張に対して用いられる電極のないものや、除細動、心室ペーシング・心臓の動作状況のセンシングなどの目的で電極が設けられたものなどが用いられている。
心臓ネットを心臓に装着するための装着器具として、次の技術が開示されている。
特許文献1は、開閉可能な複数の支持部で心臓ネットを支持できる装着器具を開示している。この装着器具を用いれば、患者の心臓の下方から装着器具を閉じた状態で体内に挿入した後、装着器具を開いて心臓に装着し、その後、再び装着器具を閉じて体外に抜き取ることで心臓ネットを装着することができる。
特許文献2は、先端が湾曲した一対の支持部に心臓ネットを支持する装着器具を開示している。この装着器具を用いれば、患者の胸の正面もしくは側方から体内に心臓ネットを挿入した後、心臓を救うようにして心臓に装着することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-166234号公報
【文献】意匠登録1666593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
心臓ネットを心臓に装着する場合、患者への侵襲が生じるが、その程度は、可能な限り低い方が好ましい。しかし、特許文献1の装着器具では、心臓の下方から挿入するため、患者の開胸が必要となり、侵襲が大きくなる傾向にあった。また、体の中央付近に手術痕が残る点でも好ましくなかった。
特許文献2の装着器具では、胸部正中からではなく患者の側方から挿入した場合、装着器具によって心臓をすくうようにして心臓ネットを装着するため、体の中央付近に手術痕が残るという弊害は回避できる。しかし、限られた手術創からの操作となるため、装着時には十分な剛性を求められる一方、脱着時には心臓を傷つけないよう、心臓形状に追従しつつ脱着を可能にする機構が求められる。一体型では、形状が決まっているので、装着時の剛性と脱着時の柔軟性のバランスが課題となっている。すなわち装着器具の先端部分内側に湾曲しているため、一体型では心臓をひっかくように脱着する操作になるため柔軟性を維持しなければならず、装着時の剛性をあげることには限界があった。
本発明は、かかる課題に鑑み、心臓ネットを心臓に装着する際の相反する二つの要求、すなわち装着時に必要な装着器具の剛性と脱着時に求められる心臓形状への追従性の両方を満たし、患者への侵襲を一層、低くする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、
心臓に心臓ネットを装着するために使用する装着器具であって、
前記心臓ネットは、前記心臓ネットへの心臓の入り口となる開口部の周囲に該装着器具を取り付けるための取付部を有しており、
前記装着器具は、第1パーツおよび第2パーツを有しており、
前記第1パーツおよび第2パーツは、それぞれ
前記取付部に取り付けて前記心臓ネットの開口部が開いた状態で支持する支持部と、
手で保持するための柄と、
該第1パーツおよび第2パーツを相互に一時的に結合する結合部とを備える装着器具と構成することができる。
【0006】
装着器具は、体内に挿入した後、心臓ネットを心臓に装着するための動作、心臓ネットから装着器具を取り外すための動作、体内から装着器具を抜き取るための動作などを行う必要がある。開胸範囲は、挿入のために必要な範囲だけでなく、これらの動作に必要な範囲が確保される必要があるため、広くなる傾向にある。
しかし、本発明の装着器具によれば、第1パーツと第2パーツとは一時的に結合された状態であるから容易に分離可能である。従って、心臓ネットを取り付けて、体内に挿入し、心臓に心臓ネットを装着した後、第1パーツと第2パーツを分離すれば、心臓ネットから装着器具を取り外すための動作、体内から装着器具を抜き取るための動作に対する制約が低くなり、開胸の範囲が狭い場合でも、これらの動作を比較的容易に行うことが可能となる。従って、本発明によれば、患者への侵襲を抑制して、心臓ネットを装着することが可能となる。
【0007】
本発明において、第1パーツおよび第2パーツは、種々の材料で形成可能であるが、樹脂、薄い金属など可撓性の材料を用いることが好ましい。
支持部と柄とは、一体成形されていてもよいし、別体のものを接合してもよい。
また、心臓ネットは、電極付のもの、電極がないもののいずれでもよい。心臓の入り口となる開口部以外に、例えば、右心室に対応する部位に第2の開口部を設けるなどしてもよい。
心臓ネットに装着器具を取り付けるための取付部も種々の構造を適用可能である。例えば、心臓ネットの上側の開口部を折り返して開口部の周囲に、パンツのゴムを通す部分のような環状の部位を設け、ここに装着器具の支持部を挿入するようにしてもよい。また、このような環状の部位に代えて、ズボンのベルト通しのような部位を心臓ネットの外部に設け、ここに装着器具の支持部を挿入するようにしてもよい。
【0008】
本発明の装着器具においては、
前記第1パーツおよび第2パーツの支持部は、
それぞれ開口状態の前記開口部の輪郭の一部を形成するように湾曲するとともに、
先端の一部が相互に重なり合う形状となっているものとしてもよい。
【0009】
こうすることにより、装着器具に心臓ネットを取り付けたときに、第1パーツ、第2パーツの湾曲した部分が開口部の輪郭を形成するから、心臓ネットをきれいに開口することができる。また、第1パーツ、第2パーツの先端の一部が相互に重なり合うため、心臓ネットの全体にわたってきれいに開口させることができる。この結果、心臓ネットを心臓に装着しやすくなる利点がある。
【0010】
また、上述の態様においては、
前記第1パーツおよび第2パーツの支持部は、前記開口部が前記柄に対して傾斜した状態となるように、前記柄に傾斜して取り付けられているものとしてもよい。
【0011】
傾斜とは、支持部および柄の下面の角度が0度および90度ではないことを意味する。傾斜をもたせることにより、装着器具に心臓ネットを取り付けたときに、開口部が傾斜した捕虫網のような形状となる。こうすることにより、心臓ネットで心臓をすくうような動作によって、患者の側方から開胸した状態で心臓ネットを心臓に装着する動作を行いやすくなる利点がある。
上記態様において、傾斜の角度は、任意に決めることができ、例えば、10度程度としてもよい。
【0012】
本発明においては、
前記第1パーツおよび第2パーツは、
前記開口部の径が開いた状態と、閉じた状態に変更可能な開閉機構を有するものとしてもよい。
【0013】
こうすることにより、心臓ネットの開口部の径を閉じた状態で体内に挿入することが可能となり、患者への侵襲をさらに抑制することができる。
もっとも、第1パーツおよび第2パーツを可撓性の材料で形成し、手でこれらを撓ませて心臓ネットの開口部が閉じた状態で体内に挿入する方法を排除するものではない。ただし、上述の機構を備えていれば、体内においても、心臓ネットの開閉状態を任意に調整できる点でより好ましい。
なお、開閉機構は、開口部を厳密に閉じた状態とするものである必要はない。開口部を開いた状態よりも狭くできれば良い。
【0014】
開閉機構は、種々の態様をとり得るが、
一例として、
前記結合部は、前記第1パーツおよび第2パーツを、それぞれの前記柄の一部において回動可能に結合しており、前記開閉機構として機能するものとしてもよい。
【0015】
例えば、支持部とは反対側の端で第1パーツおよび第2パーツを結合すれば、トングのように両者を開閉することが可能となる。また、柄の途中や、柄と支持部との境目で、第1パーツおよび第2パーツを結合すれば、はさみのように両者を開閉することが可能となる。
【0016】
開閉機構としても機能する上述の結合部は、第1パーツ、第2パーツを結合させるとともに、心臓に心臓ネットを装着した後は分離できるようになっていることを要する。トングのように両者を開閉することができるよう結合部を設けた場合には、その結合部は、体内に挿入されないため、分離しやすいという利点がある。
【0017】
一方、はさみのように両社を開閉できるように結合部を設ける場合には、ネットを装着した先端部分が開いた状態でも、第1パーツ、第2パーツの間隔が体内で大きく開くことを抑制でき、体への侵襲度を抑制できる利点がある。
この場合、結合部は、種々の構成をとることができる。例えば、第1パーツまたは第2パーツに柱状の凸部を設け、他方に凸部にはまる孔を設けても良い。こうすれば、両パーツを凸部の軸方向に相対的に離れるように移動させれば、両パーツを容易に分離することができる。この場合、凸部と孔の間の遊びを抑えて成形すれば、ネットを装着する作業中に第1パーツ、第2パーツが分離することを抑制できる。また、凸部の頂上付近に、若干径が大きい部分を設けることにより、作業中の分離を抑制するようにしてもよい。径の大きい部分の寸法を、孔が弾性変形できる範囲に抑えておけば分離することは可能である。
これらの態様は、第1パーツおよび第2パーツを水平に保持したときに、両者を相対的に垂直方向に移動させることで分離する態様に相当する。
また、結合部は、第1パーツおよび第2パーツを長手方向に相対的にずらすことで分離可能な機構としてもよい。さらに、第1パーツ、第2パーツを所定の角度まで開いた時に分離できる機構としてもよい。
【0018】
本発明の装着器具においては、
前記第2パーツは、取り付けられた前記心臓ネットが前記支持部から前記柄にずれることを防止する防止機構を備えるものとしてもよい。
【0019】
こうすることにより、先に第1パーツを抜き取る際に、心臓ネットが支持部から柄にずれることなく保持されるため、心臓に装着した位置に適切に保持できる利点がある。
防止機構は、種々の構成を採用でき、例えば、支持部と柄の間に支持部よりも太い部分や凸部などを設けてもよい。ただし、防止機構は、第2パーツを心臓ネットから抜き取る際に支障にならないよう構成することが好ましい。
【0020】
前記防止機構は、前記第2パーツの前記支持部と前記柄とが屈曲している構造であるものとしてもよい。
【0021】
こうすることにより、簡易な構造で心臓ネットのずれを抑制できる。また、第2パーツを心臓ネットから抜き取る時には、屈曲は支障とならない利点もある。
なお、屈曲とは、支持部と柄とが境目において折れ曲がっていること、厳密に言えば、外表面の微分係数が不連続に変化する箇所が存在することを言う。
【0022】
本発明の装着器具においては、
前記第1パーツは、前記支持部と前記柄とが滑らかに接続しているものとしてもよい。
【0023】
こうすることにより、第1パーツを心臓ネットから円滑に抜き取ることが可能となる。従って、第1パーツを抜き取る際に、装着した位置から心臓ネットがずれる可能性を抑制できる。
【0024】
本発明は、以上で説明した種々の特徴を、必ずしも全てが備えている必要はなく、適宜、一部を省略したり、組み合わせたりして適用してもよい。
また、本発明は、装着器具としての態様だけでなく、かかる装着器具を用いた心臓ネットの装着方法として構成することもできる。
【0025】
例えば、
心臓に心臓ネットを装着する装着方法であって、
(a) 前記心臓ネットへの心臓の入り口となる開口部の周囲に該装着器具を取り付けるための取付部を有する心臓ネットを用意するステップと、
(b) 第1パーツおよび第2パーツを有し、前記第1パーツおよび第2パーツは、それぞれ前記取付部に取り付けて前記心臓ネットの開口部が開いた状態で支持する支持部と、手で保持するための柄と、該第1パーツおよび第2パーツを相互に一時的に結合する結合部とを備える装着器具を用意するステップと、
(c) 前記装着器具に前記心臓ネットを取り付けるステップと、
(d) 開胸した患者の体内に前記装着器具とともに前記心臓ネットを挿入するステップと、
(e) 前記心臓ネットを前記心臓に装着した後、前記装着器具を分離して、前記第2パーツまたは第1パーツの一方を前記体内から抜き取るステップと、
(f) 前記第2パーツまたは第1パーツの他方を前記体内から抜き取るステップとを備える装着方法としてもよい。
【0026】
かかる装着方法によれば、本発明の装着装置において述べたのと同様、患者への侵襲を抑えて心臓ネットを装着することが可能となる。
装着方法においても、装着装置で述べた種々の特徴を適用することができる。
【0027】
例えば、上記装着方法において、
前記第1パーツおよび第2パーツは、前記開口部の径が開いた状態と、閉じた状態に変更可能な開閉機構を有しており、
前記ステップ(d)では、前記開閉機構によって、前記開口部の径を閉じた状態で、前記挿入を行う装着方法としてもよい。
【0028】
こうすることにより、装着器具を閉じた状態で体内に挿入でき、一層、侵襲を抑制することができる。
【0029】
また、上述の装着方法において、
前記第2パーツの前記支持部と前記柄とが屈曲している構造をなしており、
前記ステップ(e)では、前記第1パーツを抜き取り、
前記ステップ(f)では、前記第2パーツを抜き取る装着方法としてもよい。
【0030】
こうすることにより、心臓ネットを装着した後、第1パーツを抜き取る際に、第2パーツの柄の方に心臓ネットがずれることを抑制でき、装着した心臓ネットの位置を適切に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】心臓ネットを装着器具に取り付けた状態を示す説明図である。
図2】心臓ネットの概略構成を示す説明図である。
図3】装着器具の全体概要を示す説明図である。
図4】装着器具を第1パーツ、第2パーツに分離した状態を示す説明図である。
図5】第1パーツ、第2パーツを結合した状態を示す説明図である。
図6】心臓ネットを取り付けた装着器具を閉じた状態を示す説明図である。
図7】第1パーツの形状を示す説明図である。
図8】第2パーツの形状を示す説明図である。
図9】第2パーツの結合部の形状を示す説明図である。
図10】第1パーツの結合部の形状を示す説明図である。
図11】第1パーツ、第2パーツの結合部の変形例(1)を示す説明図である。
図12】第1パーツ、第2パーツの結合部の変形例(2)を示す説明図である。
図13】心臓ネットを心臓に装着する状態を示す説明図である。
図14】心臓ネットを心臓に装着した状態を示す説明図である。
図15】装着器具の第1パーツを抜き取る状態を示す説明図である。
図16】装着器具の第2パーツを抜き取る状態を示す説明図である。
図17】人体模型に対して、装着器具に装着した心臓ネットを挿入した状態を示す説明図である。
図18】人体模型に対して、心臓ネットを心臓に装着した状態を示す説明図である。
図19】装着器具の第1パーツを抜き取る状態を示す説明図である。
図20】装着器具の第2パーツを抜き取る状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施例について説明する。最初に、実施例における装着器具の構成について説明し、次に、装着器具を用いて心臓に心臓ネットを装着する方法について説明する。
【0033】
A.装着器具:
図1は、心臓ネットを装着器具に取り付けた状態を示す説明図である。図示する通り、実施例の装着器具100の先端に心臓ネット10が装着されている。
【0034】
図2は、心臓ネットの概略構成を示す説明図である。心臓に装着する際に心臓の入り口にあたる開口部を上側にした状態を示した。実施例の心臓ネット10は、伸縮性のある繊維を編むことで形成されている。心臓ネット10には、種々の素材を適用可能であるが、特に生体適合性材料とすることが好ましく、例えば、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン等を用いることができる。心臓ネット10には、電極を取り付けてもよいし、その一部を導電性の糸で編むことにより電極を形成してもよい。心臓ネット10の編み方も、種々の方法を適用可能であり、例えば、天竺編み、メッシュ編みなどを適用することができる。
また、心臓ネット10には、心臓に装着したときに左心室のみを覆うよう、右心室用の開口部13が設けられている。こうした開口部13は、省略しても差し支えない。
【0035】
心臓ネット10の開口部は、一部が折り返されることにより、図中の破線にそって、外周全体にわたって筒状部11が形成されている。また、筒状部11には、2カ所に、装着器具100を挿入するための挿入孔12が形成されている。挿入孔12から装着器具100の先端を挿入することにより、図1で示したように心臓ネット10を装着器具100に取り付けることができるのである。
装着器具100を心臓ネット10に取り付けるための取付部は、このような筒状部11に代えて、ズボンのベルト通しのような構造であってもよい。
【0036】
図3は、装着器具の全体概要を示す説明図である。実施例の装着器具100は、第2パーツ50と第1パーツ30を結合して構成されている。湾曲している側が、心臓ネットを支持する部分である。柄の先端を矢印aのように開閉すれば、はさみのように、心臓ネットを取り付ける側の端が矢印bのように開閉する機構となっている。
第1パーツ30、第2パーツ50は、いずれも樹脂製であるが、種々の材料を用いることができる。人体に用いるものであるから、生体適合性に優れる材料であることが好ましく、また可撓性を有する材料が好ましい。
【0037】
図4は、装着器具を第1パーツ、第2パーツに分離した状態を示す説明図である。第1パーツ30および第2パーツ50のいずれも、樹脂の一体成形で作られている。
第1パーツ30は、手で把持するための柄31、心臓ネット10を支持するよう湾曲した支持部32を備えている。柄31には、第2パーツの孔53にはまる凸部33が形成されている。
第2パーツ50は、手で把持するための柄51、心臓ネット10を支持するよう湾曲した支持部52を備えている。柄51の途中には、第1パーツ30と結合する結合機構となる構成する孔53が形成されている。
第1パーツ30、第2パーツ50を重ね合わせるようにして凸部33を孔53にはめ込むことで、第1パーツ30、第2パーツ50を結合できる。また、第1パーツ30、第2パーツ50を凸部33の軸方向に相対的に離れるように移動させて凸部33を孔53から抜くことで、第1パーツ30、第2パーツ50を容易に分離することができる。
なお、凸部33と孔53は、若干、いびつな形状をなしているが、その理由は後述する。
第1パーツ30、第2パーツ50を結合するための結合機構は、上述の態様に限らず、両者を分離したり結合したりできる種々の機構を利用することができる。もっとも、第1パーツ30、第2パーツ50の分離は、患者の体内で行われるため、大きな荷重をかけることなく容易に分離できる機構とすることが好ましい。
【0038】
図5は、第1パーツ、第2パーツを結合した状態を示す説明図である。先に説明した通り、凸部33を孔53にはめ込むことで、第1パーツ30、第2パーツ50を結合できる。このとき、両者の支持部32、52は、湾曲しているとともに、先端が重なっているため、心臓ネット10の開口部の輪郭の一部を形成している。かかる形状により、装着器具100は、適切に開口した状態で心臓ネット10を支持することが可能となる。
【0039】
図6は、心臓ネットを取り付けた装着器具を閉じた状態を示す説明図である。先に説明した通り、第1パーツ30、第2パーツ50の柄31、51を閉じれば、はさみのように先端の支持部32、52を閉じることができる。従って、図示するように心臓ネットを閉じた状態とすることができる。こうすることで、患者の開胸の範囲を抑えながら、心臓ネットおよび装着器具を体内に挿入することが可能となる。
【0040】
図7は、第1パーツの形状を示す説明図である。左側に平面図を示し、右側に側面図を示した。既に説明した通り、第1パーツ30は、直線状にのびる柄31と、湾曲した支持部32を備えている。両者は、境目Cで滑らかにつながっている。つまり、平面図における外形線のいずれの箇所においても1次微分は連続値となる。
【0041】
側面図に示すように、支持部32は、柄31に対して若干傾斜して取り付けられている。柄31および支持部32のそれぞれ下面がなす傾斜角Aは10度とした。傾斜角Aは任意に設定可能である。
【0042】
第1パーツ30には、第2パーツ50と結合するための凸部が設けられている。先に図4においては、いびつな形状の凸部33を例示したが、図7では、その変形例として円柱状の凸部33Mを例示した。凸部33Mも、第1パーツ30と第2パーツ50とを結合するために用いられることに変わりはない。
【0043】
図8は、第2パーツの形状を示す説明図である。左側に平面図を示し、右側に側面図を示した。既に説明した通り、第2パーツ50は、直線状にのびる柄51と、湾曲した支持部52を備えている。両者は、境目で屈曲部54を有している。つまり、平面図における外形線は、屈曲部54で1次微分が不連続となる。このように屈曲部54を設けることにより、支持部52に支持された心臓ネットが、柄51の方にずれるのを防ぐ効果がある。
【0044】
側面図に示すように、支持部52は、柄51に対して若干傾斜して取り付けられている。柄51および支持部52のそれぞれ下面がなす傾斜角Bは10度とした。傾斜角Bは任意に設定可能である。ただし、心臓ネットを無理なく取り付けるため、第1パーツ30の傾斜角A(図7参照)と、第2パーツ50の傾斜角Bとはほぼ同じ角度としておくことが好ましい。
【0045】
第2パーツ50には、第1パーツ30と結合するための孔が設けられている。先に図4においては、いびつな形状の孔53を例示したが、図8では、その変形例として円形の孔53Mを例示した。孔53Mも、第1パーツと第2パーツとを結合するために用いられることに変わりはない。
【0046】
図9は、第2パーツの結合部の形状を示す説明図である。図4で示した孔53を拡大して示した。孔53は、円形の部分53aと、扇形の部分53bをつなげた形状となっている。
図10は、第1パーツの結合部の形状を示す説明図である。図4で示した凸部33を拡大して示した。凸部33は、円柱状の部分33aと、角柱状の部分33bをつなげた形状となっている。
かかる形状の凸部33を孔53にはめ込むと、円形の部分53aと円柱状の部分33aとがはまり込むことで第1パーツおよび第2パーツは回動することができる。一方、角柱状の部分33bは、扇形の部分53bの内部でのみ移動することができるから、第1パーツおよび第2パーツの回転は、これによって規制されることになる。このように、実施例で示した孔53と凸部33は、第1パーツ、第2パーツを回動可能に結合するとともに、その回転範囲を規制する機能を奏する。
【0047】
これに対して、変形例で示した孔53M(図8)、および凸部33Mを用いてもよい。こうすれば、第1パーツ、第2パーツを規制なく回動可能に結合することができる。本実施例では、心臓ネットを取り付けることにより、第1パーツ、第2パーツの回転範囲は自ずと規制されるため、変形例の機構であっても支障はない。
【0048】
次に、第1パーツ、第2パーツの結合部の変形例を示す。
図11は、第1パーツ、第2パーツの結合部の変形例(1)を示す説明図である。第2パーツ50の下から第1パーツを重ねるようにはめ込んだ状態の平面視を示している。なお、図の煩雑さを回避するため、第1パーツの外形形状については図示を省略している。
変形例では、第2パーツ50に小径円の部分55aと、大径円の部分55bを部分的に重ねた形状の孔55が形成されている。第1パーツには、円柱状の軸部35bと、その頂上部分に形成された円板部35aを有する凸部35が形成されている。軸部35bの径は、小径円の部分55aと、大径円の部分55bとを移動可能な範囲となっている。また円板部35aの径は、小径円の部分55aの径よりも大きく、大径円の部分55bの径よりも小さい範囲となっている。
図11(a)に示す通り、凸部35が、小径円の部分55aに位置しているときは、円板部35aが干渉するため、第1パーツ、第2パーツは結合した状態に保たれる。
次に、第1パーツ、第2パーツを相対的に長手方向にずらすことで、図11(b)に示すように凸部35を大径円の部分55bに位置させると、円板部35aが大径円の部分55bを通り抜けるため、第1パーツ、第2パーツを分離することが可能となる。
【0049】
図12は、第1パーツ、第2パーツの結合部の変形例(2)を示す説明図である。第2パーツ50の下から第1パーツを重ねるようにはめ込んだ状態の平面視を示している。なお、図の煩雑さを回避するため、第1パーツの外形形状については図示を省略している。
変形例では、第2パーツ50の一方の辺に開口部を設けるように、孔56が形成されている。第1パーツには、円柱状の部分36aと、その一部を切り落とした平面の部分366bを有する凸部36が形成されている。凸部36の頂上部分には、孔56の径よりも大きい円板部が形成されているが、図の煩雑化を回避するため図示を省略した。
平面の部分36bが形成されているため、凸部36の幅d1は、図12(b)に示す状態で最小となる。この幅d1が、第2パーツ50の開口部の幅d2よりも小さくなるようにしておけば、図12(b)に示す状態になるように第1パーツ、第2パーツを開くことで、両者を分離することができる。
一方、第1パーツ、第2パーツが、それ以外の姿勢になっているときは、図12(a)に示すように、凸部36の幅が開口部よりも狭くなるため、両者は分離せず、結合した状態に保たれる。
結合部は、他にも種々の変形例を構成可能である。
【0050】
B.心臓ネットの装着方法:
図13は、心臓ネットを心臓に装着する状態を示す説明図である。心臓の上部が紙面の奥側、下部が手前側となる状態で示している。即ち、心臓を下から見た状態を表していることになる。図示する通り、第1パーツ30、第2パーツ50を開くと装着器具に取り付けられた心臓ネット10は開口した状態となるから、心臓を下側からすくうようにして、心臓に装着することができる。
【0051】
図14は、心臓ネットを心臓に装着した状態を示す説明図である。このように第1パーツ30、第2パーツ50を開いた状態で、心臓の上までしっかりと心臓ネットを装着させる。図2で説明した通り、実施例の心臓ネット10は、右心室用の開口部を有しているから、図中でも心臓の一部がこの開口部から露出した状態となっている。
【0052】
図15は、装着器具の第1パーツを抜き取る状態を示す説明図である。心臓に心臓ネット10を装着すると、図示するように、第2パーツ50と第1パーツ30とを分離し、第1パーツ30を抜き取る。第1パーツ30の支持部32は、心臓ネット10に挿入されているだけであるから、引っ張ることにより容易に抜き取ることができる。第1パーツ30は、この抜き取りを容易に行うことができる程度の可撓性を有していることが好ましい。
【0053】
第1パーツ30を抜き取る際には、第2パーツ50は、心臓ネット10を装着したときの状態で保持される。第2パーツ50には、屈曲部54が設けられているため、心臓ネット10はその柄51の方にはずれてこない。このように屈曲部54があることにより、第1パーツ30を抜きとるときにも、心臓ネット10が適切な装着状態に保持される利点がある。
【0054】
図16は、装着器具の第2パーツを抜き取る状態を示す説明図である。第1パーツ30の抜き取りが完了すると、図示するように第2パーツ50の抜き取りを行う。第2パーツ50の支持部52は、心臓ネット10に挿入されているだけであるから、引っ張ることにより容易に抜き取ることができる。第2パーツ50は、この抜き取りを容易に行うことができる程度の可撓性を有していることが好ましい。
【0055】
図17は、人体模型に対して、装着器具に装着した心臓ネットを挿入した状態を示す説明図である。
第2肋骨、第3肋骨に該当する部位において、患者の開胸を行い、装着器具100を挿入する。装着器具100は、心臓ネット10が支持され、図6で示したように、閉じた状態で第2肋骨、第3肋骨の間から、心臓に向けてこれらを挿入する。
【0056】
図18は、人体模型に対して、心臓ネットを心臓に装着した状態を示す説明図である。
体内に装着器具100を挿入すると、図示するように第1パーツ30、第2パーツ50を開くことで心臓ネット10の開口部を開き、心臓を下側からすくうようにして心臓ネット10を心臓に装着する。
【0057】
図19は、装着器具の第1パーツを抜き取る状態を示す説明図である。
心臓ネット10の装着が完了すると、第1パーツ30、第2パーツ50を分離し、第1パーツ30を抜き取る。
本実施例では、第1パーツ30、第2パーツ50が分離できるため、このように装着器具を抜き取るときに、その姿勢に対する制約条件が少なく、開胸の範囲が小さくても、十分に装着器具を引き抜くことができる利点がある。
【0058】
図20は、装着器具の第2パーツを抜き取る状態を示す説明図である。
最後に、第2パーツ50を抜き取ることにより、心臓ネット10の装着が完了する。
【0059】
C.効果および変形例:
以上で説明した実施例の装着器具および装着方法によれば、第1パーツ、第2パーツを分離できることにより、患者への侵襲を抑えて心臓ネットを装着することが可能となる。
また、実施例で説明した装着器具に設けられた種々の特徴により、心臓ネットの装着方法をより容易かつ適切に行うことが可能となる。
【0060】
本発明は、実施例で説明した種々の特徴を必ずしも全て備えている必要はなく、適宜、その一部を省略したり組み合わせたりして構成することもできる。
また、本発明は、実施例に限らず種々の変形例を構成可能である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、心臓ネットの装着器具および装着方法に利用可能である。
【符号の説明】
【0062】
10 心臓ネット
11 筒状部
12 挿入孔
13 開口部
30 第1パーツ
31、51 柄
32、52 支持部
33、33M 凸部
33a、33b 部分
35 凸部
35a 円板部
35b 軸部
36 凸部
36a、36b 部分
50 第2パーツ
52 支持部
53、53M 孔
53a、53b 部分
54 屈曲部
55 孔
55a、55b 部分
56 孔
100 装着器具
図1
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