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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】アーム機構
(51)【国際特許分類】
   B25J 3/00 20060101AFI20240401BHJP
   B25J 13/02 20060101ALI20240401BHJP
   A61B 34/30 20160101ALI20240401BHJP
【FI】
B25J3/00 Z
B25J13/02
A61B34/30
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023571753
(86)(22)【出願日】2022-05-24
(86)【国際出願番号】 JP2022021265
【審査請求日】2023-11-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515075692
【氏名又は名称】リバーフィールド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122183
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 一郎
(72)【発明者】
【氏名】只野 耕太郎
【審査官】牧 初
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-124877(JP,A)
【文献】国際公開第2017/033353(WO,A1)
【文献】特開平02-274482(JP,A)
【文献】特開2020-069631(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0042247(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
A61B 34/30-34/37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の関節と、
第2の関節と、
第3の関節と、
前記第1の関節と前記第2の関節を連結し、前記第1の関節に対する前記第2の関節の姿勢を維持しながら相対的に移動できるように構成された第1の連結機構と、
前記第2の関節と前記第3の関節を連結し、前記第2の関節に対する前記第3の関節の姿勢を維持しながら相対的に移動できるように構成された第2の連結機構と、
前記第1の関節と前記第2の連結機構を連結し、前記第1の関節に対する前記第3の関節の姿勢を維持しながら相対的に移動できるように構成された第3の連結機構と、
前記第1の連結機構を構成する第1の回転軸を回転する力を発生する第1の駆動源と、
前記第3の連結機構を構成する第2の回転軸を回転する力を発生する第2の駆動源と、を備え、
前記第1の回転軸及び前記第2の回転軸は、前記第1の関節に支持されており
前記第1の連結機構は、第1の平行リンク機構を有し、
前記第2の連結機構は、第2の平行リンク機構を有し、
前記第3の連結機構は、第3の平行リンク機構を有し、
前記第3の平行リンク機構は、前記第1の平行リンク機構を構成する第1のリンクを共有しており、
前記第3の連結機構は、前記第3の平行リンク機構を構成する第2のリンクを共有する第4の平行リンク機構を更に有し、
前記第4の平行リンク機構は、第3の回転軸及び第4の回転軸が前記第2の関節に支持されており、
前記第3の回転軸は、前記第2のリンクの一端に設けられていることを特徴とするアーム機構。
【請求項2】
前記第4の回転軸は、前記第2の平行リンク機構と共有されていることを特徴とする請求項に記載のアーム機構。
【請求項3】
前記第3の平行リンク機構は、前記第2の回転軸と前記第3の回転軸とを連結する前記第1のリンクに対して平行移動する第3のリンクを有し、
前記第3のリンクは、前記第1のリンクに対して平行移動する際に前記第2の回転軸又は前記第3の回転軸と干渉しない逃げ部を有することを特徴とする請求項に記載のアーム機構。
【請求項4】
前記第4の平行リンク機構は、前記第3の回転軸と前記第4の回転軸とを連結する第4のリンクに対して平行移動する第5のリンクを有し、
前記第5のリンクは、前記第4のリンクに対して平行移動する際に前記第3の回転軸又は前記第4の回転軸と干渉しない逃げ部を有することを特徴とする請求項に記載のアーム機構。
【請求項5】
前記第3の関節に連結される操作部と、
前記第1の駆動源及び前記第2の駆動源が前記第1の関節とともに固定される台部と、
前記台部を回転する第3の駆動源と、を更に備えることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のアーム機構。
【請求項6】
第1の関節と、
第2の関節と、
第3の関節と、
前記第1の関節と前記第2の関節を連結し、前記第1の関節に対する前記第2の関節の姿勢を維持しながら相対的に移動できるように構成された第1の連結機構と、
前記第2の関節と前記第3の関節を連結し、前記第2の関節に対する前記第3の関節の姿勢を維持しながら相対的に移動できるように構成された第2の連結機構と、
前記第1の関節と前記第2の連結機構を連結し、前記第1の関節に対する前記第3の関節の姿勢を維持しながら相対的に移動できるように構成された第3の連結機構と、
前記第1の連結機構を構成する第1の回転軸を制動する力を発生する第1の制動部と、
前記第3の連結機構を構成する第2の回転軸を制動する力を発生する第2の制動部と、を備え、
前記第1の回転軸及び前記第2の回転軸は、前記第1の関節に支持されており、
前記第1の連結機構は、第1の平行リンク機構を有し、
前記第2の連結機構は、第2の平行リンク機構を有し、
前記第3の連結機構は、第3の平行リンク機構を有し、
前記第3の平行リンク機構は、前記第1の平行リンク機構を構成する第1のリンクを共有しており、
前記第3の連結機構は、前記第3の平行リンク機構を構成する第2のリンクを共有する第4の平行リンク機構を更に有し、
前記第4の平行リンク機構は、第3の回転軸及び第4の回転軸が前記第2の関節に支持されており、
前記第3の回転軸は、前記第2のリンクの一端に設けられていることを特徴とするアーム機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アーム機構に関し、例えば、医療用ロボットに適用できるアーム機構に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の医療現場において、手術中の術者への負担を低減させることを目的とした手術ロボット(マニピュレータ)が普及してきている。例えば、術者が1つまたは複数のマスタ入力装置を制御することによって、対応する遠隔操作ツールの動きで患者に手術処置を施す低侵襲のコンピュータ支援遠隔操作手術システムが考案されている(特許文献1参照)。
【0003】
一方、これらの手術ロボットを使用する際に術者が操作するマスタ入力装置は、術者が直接操作する操作子を有する姿勢部の姿勢が位置によらず変化しないように構成されているとよい。このように構成されている場合、遠隔操作の際の各部の動きや姿勢の、演算や制御が容易となる。このような装置として、特許文献2には、デルタ機構で構成された3自由度の並進部と、並進部に連結され、ジンバル機構で構成された4自由度の姿勢部とを備えたマスタマニピュレータが開示されている。このマスタマニピュレータの並進部は、姿勢部と接続される部分の位置によらず姿勢が変化しないという特徴を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2022-48173号
【文献】国際公開第08/108289号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その例示的な目的の一つは、従来と異なる新たなアーム機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のアーム機構は、第1の関節と、第2の関節と、第3の関節と、第1の関節と第2の関節を連結し、第1の関節に対する第2の関節の姿勢を維持しながら相対的に移動できるように構成された第1の連結機構と、第2の関節と第3の関節を連結し、第2の関節に対する第3の関節の姿勢を維持しながら相対的に移動できるように構成された第2の連結機構と、第1の関節と第2の連結機構を連結し、第1の関節に対する第3の関節の姿勢を維持しながら相対的に移動できるように構成された第3の連結機構と、第1の連結機構を構成する第1の回転軸を回転する力を発生する第1の駆動源と、第3の連結機構を構成する第2の回転軸を回転する力を発生する第2の駆動源と、を備える。第1の回転軸及び第2の回転軸は、第1の関節に支持されている。
【0007】
この態様によると、第3の関節の動きに応じて回転する力を発生する第2の駆動源を、第2の関節の動きに応じて回転する力を発生する第1の駆動源と一緒に第1の関節の近くに配置できる。換言すると、第2の駆動源を第1の関節と第3の関節との間にある第2の関節に配置せずにすむ。なお、回転軸はリンクのジョイントと称することもある。
【0008】
第1の連結機構は、第1の平行リンク機構を有してもよい。第2の連結機構は、第2の平行リンク機構を有してもよい。第3の連結機構は、第3の平行リンク機構を有してもよい。第3の平行リンク機構は、第1の平行リンク機構を構成する第1のリンクを共有していてもよい。これにより、簡易な構成で第3の関節の姿勢を維持しながら所定の平面内で第3の関節を自由に動かせる。
【0009】
第3の連結機構は、第3の平行リンク機構を構成する第2のリンクを共有する第4の平行リンク機構を更に有してもよい。第4の平行リンク機構は、第3の回転軸及び第4の回転軸が第2の関節に支持されており、第3の回転軸は、第2のリンクの一端に設けられていてもよい。これにより、第3の連結機構は、2つの平行リンク機構を介して、第1の関節と第2の連結機構を連結し、第1の関節に対する第3の関節の姿勢を維持しながら相対的に移動できるように構成される。
【0010】
第4の回転軸は、第2の平行リンク機構と共有されていてもよい。これにより、第2の回転軸を回転する力を第3の連結機構により直接第2の平行リンク機構に伝達できる。
【0011】
第3の平行リンク機構は、第2の回転軸と第3の回転軸とを連結する第1のリンクに対して平行移動する第3のリンクを有してもよい。第3のリンクは、第1のリンクに対して平行移動する際に第2の回転軸又は第3の回転軸と干渉しない逃げ部を有してもよい。逃げ部とは、例えば直線状のリンクの凹んだ領域である。これにより、第1のリンクと第3のリンクとをより近づけることが可能となり、第1の関節と第2の関節との間の各リンク全体が占めるスペースを小さくできる。
【0012】
第4の平行リンク機構は、第3の回転軸と第4の回転軸とを連結する第4のリンクに対して平行移動する第5のリンクを有してもよい。第5のリンクは、第4のリンクに対して平行移動する際に第3の回転軸又は第4の回転軸と干渉しない逃げ部を有してもよい。逃げ部とは、例えば直線状のリンクの凹んだ領域である。これにより、第4のリンクと第5のリンクとをより近づけることが可能となり、第2の関節や第4の平行リンク機構を含むスペースを小さくできる。
【0013】
第3の関節に連結される操作部と、第1の駆動源及び第2の駆動源が第1の関節とともに固定される台部と、台部を回転する第3の駆動源と、を更に備えてもよい。操作部は、少なくとも3自由度の動きが可能なように構成されていてもよい。これにより、このようなアーム機構を遠隔操作システムのマスタ側マニピュレータアームとして利用する場合、並進3自由度を実現する3つの駆動源を第1の関節近傍に集められるため、操作部を操作する際のアームの慣性(慣性モーメント)を小さくできる。
【0014】
本発明の別の態様もまた、アーム機構である。このアーム機構は、第1の関節と、第2の関節と、第3の関節と、第1の関節と第2の関節を連結し、第1の関節に対する第2の関節の姿勢を維持しながら相対的に移動できるように構成された第1の連結機構と、第2の関節と第3の関節を連結し、第2の関節に対する第3の関節の姿勢を維持しながら相対的に移動できるように構成された第2の連結機構と、第1の関節と第2の連結機構を連結し、第1の関節に対する第3の関節の姿勢を維持しながら相対的に移動できるように構成された第3の連結機構と、第1の連結機構を構成する第1の回転軸を制動する力を発生する第1の制動部と、第3の連結機構を構成する第2の回転軸を制動する力を発生する第2の制動部と、を備える。第1の回転軸及び第2の回転軸は、第1の関節に支持されている。
【0015】
この態様によると、第3の関節の動きに応じて制動する力を発生する第2の制動部を、第2の関節の動きに応じて制動する力を発生する第1の制動部と一緒に第1の関節の近くに配置できる。換言すると、第2の制動部を第1の関節と第3の関節との間にある第2の関節に配置せずにすむ。
【0016】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、従来と異なる新たなアーム機構を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】参照例に係るマスタ側マニピュレータを説明するための模式図である。
図2図1に示す並進部のうちアームの動きを説明するための模式図である。
図3】本実施の形態に係るアーム機構の概略構成を説明するための模式図である。
図4図3に示すアーム機構のリンク機構を説明するための模式図である。
図5図3に示すアーム機構をA方向から見た側面図である。
図6図3に示すアーム機構をB方向から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一又は同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述される全ての特徴やその組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0020】
本実施の形態に係るアーム機構は、マスタスレーブ方式の手術支援ロボットにおけるマスタ側マニピュレータの操作に用いられる。手術支援ロボットとしては、例えば、内視鏡外科手術に用いられる鉗子の操作を行うものが挙げられる。なお、遠隔操作システムの用途は手術支援ロボットに限らない。例えば、物流工場や製造工場において用いられるロボットを遠隔操作する際のシステムとして用いてもよい。特に、繊細な作業を長時間行う必要のある工程を、ロボットを介して遠隔で実行する際の遠隔操作システムとして好適である。
【0021】
なお、遠隔とは、操作者と操作対象との距離が物理的に遠隔である場合だけでなく、操作者が操作するマスタ機と操作対象であるスレーブ機とが機構的に分離されている場合も含まれる。この場合、マスタ機とスレーブ機とが近くに配置されていても遠隔操作であることに違いはない。
【0022】
また、本実施の形態に係るアーム機構は、マスタスレーブ方式の手術支援ロボットにおけるスレーブ側マニピュレータの鉗子や内視鏡といった術具を手術部位で移動したり保持したりする用途にも適用可能である。
【0023】
はじめに、マスタ側マニピュレータの概略構成を説明する。図1は、参照例に係るマスタ側マニピュレータを説明するための模式図である。図1に示すマスタ側マニピュレータ10は、3自由度の並進部12と、並進部12と連結された3自由度の姿勢部14とを備える。姿勢部14は、操作者が手で把持できるように構成されている。
【0024】
図2は、図1に示す並進部のうちアームの動きを説明するための模式図である。図2に示す並進部12は、第1の関節としての肩関節16と、第2の関節としての肘関節18と、第3の関節としての手首関節20と、肩関節16と肘関節18を連結し、肩関節16に対する肘関節18の姿勢を維持しながら相対的に移動できるように構成された第1の連結機構22と、肘関節18と手首関節20を連結し、肘関節18に対する手首関節20の姿勢を維持しながら相対的に移動できるように構成された第2の連結機構24と、を備える。
【0025】
第1の連結機構22は、肩関節16に支持されている2つの回転軸26a,26bと、肘関節18に支持されている2つの回転軸28a,28bと、回転軸26aと回転軸28aとに接続されているロッド状のリンク30aと、回転軸26bと回転軸28bとに接続されているロッド状のリンク30bとを備えており、これら各部から構成された平行リンク機構22aを有している。肩関節16には、回転軸26aを回転する力を発生する駆動源としてのアクチュエータ32が設けられている。
【0026】
参照例に係るアクチュエータ32はモータであり、モータの回転力が減速機構34を介して回転軸26aに伝達される。アクチュエータの他の例としては空気圧を用いたものであってもよい。平行リンク機構22aは、アクチュエータ32の回転によって、矢印のように回転軸26aを支点として上下に揺動する。その際、肘関節18は、肩関節16に対して姿勢を維持しながら相対的に移動することになる。
【0027】
第2の連結機構24は、肘関節18に支持されている2つの回転軸36a,36bと、手首関節20に支持されている2つの回転軸38a,38bと、回転軸36aと回転軸38aとに接続されているロッド状のリンク40aと、回転軸36bと回転軸38bとに接続されているロッド状のリンク40bとを備えており、これら各部から構成された平行リンク機構24aを有している。肘関節18には、回転軸36bを回転する力を発生する駆動源としてのアクチュエータ42が設けられている。
【0028】
参照例に係るアクチュエータ42はモータであり、モータの回転力が減速機構44を介して回転軸36bに伝達される。アクチュエータの他の例としては空気圧を用いたものであってもよい。平行リンク機構24aは、アクチュエータ42の回転によって、矢印のように回転軸36bを支点として上下に揺動する。その際、手首関節20は、肘関節18に対して姿勢を維持しながら相対的に移動することになる。
【0029】
このように、参照例に係る並進部12では、平行リンク機構24aを揺動するために回転軸36bを回転(駆動)する力を発生するアクチュエータ42を肘関節18に設けている。そのため、肘関節18のサイズが大きくなりまた重量も重くなる。そこで、本発明者が鋭意検討した結果、以下に述べる新たなリンク機構を備えるアーム機構に想到した。
【0030】
図3は、本実施の形態に係るアーム機構の概略構成を説明するための模式図である。図4は、図3に示すアーム機構のリンク機構を説明するための模式図である。図5は、図3に示すアーム機構をA方向から見た側面図である。図6は、図3に示すアーム機構をB方向から見た側面図である。以下では、参照例と同様の構成には同じ符号を付して説明を適宜省略する。
【0031】
本実施の形態に係るアーム機構100は、前述の第1の連結機構22や第2の連結機構24に加えて第3の連結機構46を備える。第3の連結機構46は、肩関節16と第2の連結機構24を連結し、肩関節16に対する手首関節20の姿勢を維持しながら相対的に移動できるように構成されている。また、アーム機構100は、第3の連結機構46を構成する回転軸26bを回転(駆動)する力を発生する、第2の駆動源としてのアクチュエータ48を備える。本実施の形態に係るアクチュエータ48はモータであり、モータの回転力が減速機構50を介して回転軸26bに伝達される。また、アーム機構100の回転軸26a,26bは、図3に示すように、肩関節16に支持されている。
【0032】
これにより、手首関節20が矢印R1の方向に回転すると、平行リンク機構24aを構成する回転軸36bが矢印R2の方向に回転する。第2の連結機構24の一部を構成する回転軸36bは、第3の連結機構46の一部も構成している。第3の連結機構46を構成する回転軸52aは、回転軸36b及び回転軸38bとともに1本のリンク40b上に設けられている。そして、肘関節18に支持されている回転軸36bが矢印R2の方向に回転すると、回転軸52aは回転軸36bを支点として矢印R3の方向に移動する。
【0033】
回転軸52bは、回転軸52aとリンク54を介して接続されており、回転軸52aの矢印R3の方向の移動とともにスライド(揺動)する。なお、回転軸52a,52bは肘関節18を構成するプレート18aに対して一定の範囲で動けるように構成されている。回転軸52bが矢印R3の方向に動くと、リンク56を介して回転軸28bが矢印R4の方向に回転する。
【0034】
回転軸52bは、リンク58を介して肩関節16に設けられている回転軸60と連結されている。また、回転軸60は、リンク62を介して肩関節16のプレート16aに支持されている回転軸26bと連結されている。そして、回転軸52bの移動に伴い、リンク58及び回転軸60が矢印R5の方向に移動し、回転軸60の移動に連動してリンク62を介して回転軸26bが矢印R6の方向に回転する。
【0035】
このように、本実施の形態に係るアーム機構100は、手首関節20の動きが、第3の連結機構46を介してアクチュエータ48まで伝達される。したがって、手首関節20の動きに応じて回転する力を発生するアクチュエータ48を、肘関節18の動きに応じて回転する力を発生するアクチュエータ32と一緒に肩関節16の近くに配置できる。換言すると、本実施の形態に係るアーム機構100においては、アクチュエータ48を肩関節16と手首関節20との間にある肘関節18に配置せずにすむ。
【0036】
また、例えば、手首関節20の動きによって回転軸26bが回転したことをエンコーダ等の回転検出装置で検出した場合、その回転方向への力をアクチュエータ48によって発生することで手首関節20を操作する操作者の負担を軽減することができる。あるいは、回転方向と反対方向への力をアクチュエータ48によって発生することで手首関節20を操作する操作者へ適度な反力や保持力を感じさせることができる。
【0037】
第3の連結機構46は、肩関節16に支持されている回転軸26bと、肘関節18に支持されている回転軸28bと、回転軸26bと回転軸28bとに接続されているリンク30bと、回転軸26bとリンク62を介して接続されている回転軸60と、回転軸28bとリンク56を介して接続されている回転軸52bと、回転軸60と回転軸52bとに接続されているリンク58とを備えており、これら各部から構成された平行リンク機構46aを有している。したがって、平行リンク機構46aは、平行リンク機構22aを構成するリンク30bを共有している。これにより、簡易な構成で手首関節20の姿勢を維持しながら所定の平面内で手首関節20を自由に動かせる。
【0038】
また、第3の連結機構46は、平行リンク機構46aを構成するリンク56を共有する、もう一つの平行リンク機構46bを有している。平行リンク機構46bは、肘関節18に支持されている回転軸28bと、肘関節18に支持されている回転軸36bと、回転軸28bと回転軸36bとに接続されているリンクとしてのプレート18aと、回転軸28bとリンク56を介して接続されている回転軸52bと、回転軸36bとリンク64を介して接続されている回転軸52aと、回転軸52aと回転軸52bとに接続されているリンク54とを有している。
【0039】
平行リンク機構46bは、回転軸28b及び回転軸36bが肘関節18を構成するプレート18aに支持されており、回転軸28bは、リンク56の一端に設けられている。これにより、第3の連結機構46は、平行リンク機構46a及び平行リンク機構46bを介して、肩関節16と第2の連結機構24を連結し、肩関節16に対する手首関節20の姿勢を維持しながら相対的に移動できるように構成されている。
【0040】
また、回転軸36bは、平行リンク機構24aと共有されている。これにより、アクチュエータ48によって発生する回転軸26bを回転する力を第3の連結機構46により直接平行リンク機構24aに伝達できる。
【0041】
次に、図4乃至図6を参照して、各リンクの形状やレイアウトについて更に詳述する。平行リンク機構46aは、回転軸26bと回転軸28bとを連結するリンク30bに対して平行移動するリンク58を有している。リンク58は、リンク30bに対して平行移動する際に回転軸26bや回転軸28bと干渉しない逃げ部58a,58bを有している。本実施の形態に係る逃げ部58a,58bは、直線状のリンク58の凹んだ領域である。これにより、リンク30bとリンク58とをより近づけることが可能となり、肩関節16と肘関節18との間の各リンク全体が占めるスペースを小さくできる。
【0042】
平行リンク機構46bは、回転軸28bと回転軸36bとを連結するリンクとしてのプレート18a(18b)に対して平行移動するリンク54を有している。リンク54は、プレート18aに対して揺動しながら平行移動する際に回転軸28bや回転軸52aと干渉しない逃げ部54aを有している。本実施の形態に係る逃げ部54aは、リンク54の凹んだ領域である。これにより、プレート18aとリンク54とをより近づけることが可能となり、肘関節18や平行リンク機構46bを含むスペースを小さくできる。
【0043】
本実施の形態に係るリンク58は、回転軸52bと接続される側の端部58cがU字型リンクであり、U字の間にリンク54とリンク56が回転軸52bで回転可能に支持されている。また、リンク40bは、回転軸52aと接続される側の端部40cがU字型のリンクであり、U字の間にリンク54が回転軸52aで回転可能に支持されている。また、リンク62は、回転軸60と接続される側の端部62aがU字型のリンクであり、U字の間にリンク58が回転軸60に回転可能に支持されている。
【0044】
次に、アーム機構100全体の回転機構について説明する。図3に示すように、本実施の形態に係るアーム機構100は、アクチュエータ32及びアクチュエータ48が肩関節16とともに固定される台部66と、台部66を回転する第3の駆動源としてのアクチュエータ68とを備える。また、アーム機構100は、医療用のマスタ側マニピュレータとしては、操作部としての姿勢部14が手首関節20に連結されている。姿勢部14は、前述のように、少なくとも3自由度の動きが可能なように構成されている。これにより、アーム機構100を遠隔操作システムのマスタ側マニピュレータアームとして利用する場合、並進3自由度を実現する3つの駆動源(モータ等のアクチュエータ)を肩関節16近傍に集められるため、姿勢部14を操作する際のアームの慣性(慣性モーメント)を小さくできる。
【0045】
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【0046】
(変形例)
前述のアーム機構100は、入力軸である回転軸26aや回転軸26bを駆動(入力)軸とし、駆動源としてアクチュエータを例に説明した。以下では、アクチュエータ32やアクチュエータ48の代わりに制動部材(ブレーキ)を用いたアーム機構について説明する。変形例に係るアーム機構は、例えば、ブレーキを回転軸26aや回転軸26bに連結することで、通常は制動力を利用して姿勢を維持し、緊急時にはブレーキを解除することで、手首関節20に接続された手術用のエンドエフェクト(例えば、眼内内視鏡)を術部から退避させやすくすることもできる。これにより、手首関節20の動きに応じて制動する力を発生する制動部材を、もう一つの制動部材と一緒に肩関節16の近くに配置できる。
【符号の説明】
【0047】
10 マスタ側マニピュレータ、 12 並進部、 14 姿勢部、 16 肩関節、 18 肘関節、 20 手首関節、 22 第1の連結機構、 22a 平行リンク機構、 24 第2の連結機構、 24a 平行リンク機構、 26a 回転軸、 26b 回転軸、 28a 回転軸、 28b 回転軸、 30a リンク、 30b リンク、 32 アクチュエータ、 36a 回転軸、 36b 回転軸、 38a 回転軸、 38b 回転軸、 40a リンク、 40b リンク、 42 アクチュエータ、 46 第3の連結機構、 46a 平行リンク機構、 46b 平行リンク機構、 52a 回転軸、 52b 回転軸、 54 リンク、 54a 逃げ部、 56 リンク、 58 リンク、 58a 逃げ部、 60 回転軸、 62 リンク、 64 リンク、 66 台部、 100 アーム機構。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、医療や運搬等のマニピュレータに利用できる。
【要約】
アーム機構100は、第1の関節と、第2の関節と、第3の関節と、第1の関節と第2の関節を連結し、第1の関節に対する第2の関節の姿勢を維持しながら相対的に移動できるように構成された第1の連結機構22と、第2の関節と第3の関節を連結し、第2の関節に対する第3の関節の姿勢を維持しながら相対的に移動できるように構成された第2の連結機構24と、第1の関節と第2の連結機構24を連結し、第1の関節に対する第3の関節の姿勢を維持しながら相対的に移動できるように構成された第3の連結機構46と、第1の連結機構22を構成する第1の回転軸26aを回転する力を発生する第1の駆動源と、第3の連結機構46を構成する第2の回転軸26bを回転する力を発生する第2の駆動源と、を備える。第1の回転軸26a及び第2の回転軸26bは、第1の関節に支持されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6