IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エルジー エナジー ソリューション リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許-電池セル診断装置および方法 図1
  • 特許-電池セル診断装置および方法 図2
  • 特許-電池セル診断装置および方法 図3a
  • 特許-電池セル診断装置および方法 図3b
  • 特許-電池セル診断装置および方法 図4
  • 特許-電池セル診断装置および方法 図5
  • 特許-電池セル診断装置および方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】電池セル診断装置および方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20240401BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240401BHJP
   G01R 31/382 20190101ALI20240401BHJP
   G01R 31/385 20190101ALI20240401BHJP
【FI】
H01M10/48 P
H02J7/00 Y
G01R31/382
G01R31/385
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021566059
(86)(22)【出願日】2020-07-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-15
(86)【国際出願番号】 KR2020008751
(87)【国際公開番号】W WO2021006566
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2021-11-05
(31)【優先権主張番号】10-2019-0081391
(32)【優先日】2019-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】スン・ユル・ユン
(72)【発明者】
【氏名】ドン・クン・クォン
(72)【発明者】
【氏名】ヒュン・チュル・イ
(72)【発明者】
【氏名】スン・ヒョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】アン・ス・キム
【審査官】早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0183252(US,A1)
【文献】特開2007-040991(JP,A)
【文献】国際公開第2015/019834(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0071798(KR,A)
【文献】特開2014-026732(JP,A)
【文献】特開2010-208539(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/42-10/48
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
G01R31/36-31/396
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池の開路電圧(Open Circuit Voltage)状態で、電池モジュールの各電池セルの電圧を測定する電圧測定部と、
前記測定された電圧に基づいて、前記電池モジュールの各電池セルのSOCを算出するSOC算出部と、
前記測定された電圧と前記算出されたSOCを一定の時間間隔で格納するメモリと、
前記各電池セルに対する現在の測定電圧と予め設定された時間以前の測定電圧とを比較し、前記各電池セルに対して現在のSOCと予め設定された時間以前のSOCとを比較して、前記現在の測定電圧と前記予め設定された時間以前の測定電圧との差が第1基準値を超過し、前記現在のSOCと予め設定された時間以前のSOCとの差が第2基準値を超過する場合に、前記電池セルに異常が発生したと判断する異常検出部と、
を含み、
前記異常検出部は、前記現在の測定電圧と前記予め設定された時間以前の測定電圧との差が第1基準値を超過する状態が連続して2回以上発生した場合に、前記電池セルに異常が発生したと判断する、電池セル診断装置。
【請求項2】
前記予め設定された時間は5秒である、請求項1に記載の電池セル診断装置。
【請求項3】
前記異常検出部は、前記電池モジュールに流れる電流が0である状態が10秒以上持続し、前記電池セルのSOC(State of Charge)が予め設定された数値以上である場合に、前記電池セルの異常診断を行う、請求項1又は2に記載の電池セル診断装置。
【請求項4】
前記異常検出部は、前記電池の充電または放電が終了した時点から10秒が経過し、前記電池モジュールに流れる電流が0である場合に、前記電池セルの異常診断を行う、請求項1又は2に記載の電池セル診断装置。
【請求項5】
前記SOCの予め設定された数値は30%である、請求項3に記載の電池セル診断装置。
【請求項6】
前記現在の測定電圧と前記予め設定された時間以前の測定電圧との差は、前記電池セルの電圧降下量および電圧上昇量を全て含む、請求項1に記載の電池セル診断装置。
【請求項7】
前記第1基準値は10mVである、請求項1~6のいずれか一項に記載の電池セル診断装置。
【請求項8】
電池の開路電圧状態で、電池モジュールの各電池セルの電圧を測定するステップと、
前記測定された電圧に基づいて、前記電池モジュールの各電池セルのSOCを算出するステップと、
前記測定された電圧と前記算出されたSOCを一定の時間間隔で格納するステップと、
前記各電池セルに対して現在の測定電圧と予め設定された時間以前の測定電圧とを比較し、前記各電池セルに対して現在のSOCと予め設定された時間以前のSOCとを比較するステップと、
前記現在の測定電圧と前記予め設定された時間以前の測定電圧との差が第1基準値を超過し、前記現在のSOCと予め設定された時間以前のSOCとの差が第2基準値を超過する場合に、前記電池セルに異常が発生したと判断するステップと、
を含み、
前記電池セルに異常が発生したと判断するステップにおいて、前記現在の測定電圧と前記予め設定された時間以前の測定電圧との差が第1基準値を超過する場合が連続して2回以上発生した場合に、前記電池セルに異常が発生したと判断する、電池セル診断方法。
【請求項9】
前記予め設定された時間は5秒である、請求項に記載の電池セル診断方法。
【請求項10】
前記各電池セルに対して現在の測定電圧と予め設定された時間以前の測定電圧とを比較するステップ以前に、電池モジュールに流れる電流および前記電池セルのSOCを測定するステップをさらに含み、
前記電池モジュールに流れる電流および前記電池セルのSOCを測定するステップにおいて、前記電池モジュールに流れる電流が0である状態が10秒以上持続し、前記電池セルのSOCが予め設定された数値以上である場合に、前記各電池セルに対して現在の測定電圧と予め設定された時間以前の測定電圧とを比較するステップが行われる、請求項8又は9に記載の電池セル診断方法。
【請求項11】
前記各電池セルに対して現在の測定電圧と予め設定された時間以前の測定電圧とを比較するステップ以前に、電池モジュールに流れる電流を測定するステップをさらに含み、
前記電池モジュールに流れる電流を測定するステップにおいて、前記電池の充電または放電が終了した時点から10秒が経過し、前記電池モジュールに流れる電流が0である場合に、前記各電池セルに対して現在の測定電圧と予め設定された時間以前の測定電圧とを比較するステップが行われる、請求項8又は9に記載の電池セル診断方法。
【請求項12】
前記SOCの予め設定された数値は30%である、請求項10に記載の電池セル診断方法。
【請求項13】
前記現在の測定電圧と前記予め設定された時間以前の測定電圧との差は、前記電池セルの電圧降下量および電圧上昇量を全て含む、請求項8~12のいずれか一項に記載の電池セル診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年07月05日付けの韓国特許出願第10-2019-0081391号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、電池セルの内部短絡により発生し得る瞬間的な電圧変動を検出するための電池セル診断装置および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
最近、二次電池に関する研究開発が活発に行われている。ここで、二次電池は、充放電が可能な電池であって、従来のNi/Cd電池、Ni/MH電池などと、最近のリチウムイオン電池とを全て含む意味である。二次電池の中でもリチウムイオン電池は、従来のNi/Cd電池、Ni/MH電池などに比べて、エネルギー密度が遥かに高いという長所がある、また、リチウムイオン電池は、小型、軽量に製作することができるため、移動機器の電源として用いられる。このようなリチウムイオン電池は、電気自動車の電源にその使用範囲が拡張され、次世代エネルギー貯蔵媒体として注目を浴びている。
【0004】
また、二次電池は、一般的に複数個の電池セルが直列および/または並列に連結された電池モジュールを含む電池パックとして用いられる。そして、電池パックは、電池管理システムにより状態および動作が管理および制御される。
【0005】
特に、ESS(Energy Storage System)分野において、電池モジュールのセル内部に短絡が発生する場合には、電池だけでなく、ESSシステムの全体に損傷を与え得る。しかし、従来は、電池セルの内部短絡を早期に検出できる方案がなかった。
【0006】
また、従来は、電池モジュール内の各セル両端の電圧をリアルタイムで測定して、低電圧または高電圧などの運営範囲を外れる部分に対してのみ検出を行ってきた。よって、従来のESSシステムにおいては、電池セルの瞬間的な内部短絡によるセル電圧挙動の異常に対する検出は行われることができなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、電池セルの瞬間的な内部短絡によるセル電圧挙動の異常を早期に検出できる電池セル診断装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係る電池セル診断装置は、電池の開路電圧(Open Circuit Voltage)状態で、電池モジュールの各電池セルの電圧を測定する電圧測定部と、前記測定された電圧を一定の時間間隔で格納するメモリと、前記各電池セルに対する現在の測定電圧と予め設定された時間以前の測定電圧とを比較して、前記現在の測定電圧と前記予め設定された時間以前の測定電圧との差が基準値を超過する場合に、前記電池セルに異常が発生したと判断する異常検出部と、を含むことができる。
【0009】
本発明の一実施形態に係る電池セル診断装置の前記予め設定された時間は5秒であってもよい。
本発明の一実施形態に係る電池セル診断装置の前記異常検出部は、前記電池モジュールに流れる電流が0である状態が10秒以上持続し、前記電池セルのSOC(State of Charge)が予め設定された数値以上である場合に、前記電池セルの異常診断を行うことができる。
【0010】
本発明の一実施形態に係る電池セル診断装置の前記異常検出部は、前記電池の充電または放電が終了した時点から10秒が経過し、前記電池モジュールに流れる電流が0である場合に、前記電池セルの異常診断を行うことができる。
【0011】
本発明の一実施形態に係る電池セル診断装置の前記SOCの予め設定された数値は30%であってもよい。
本発明の一実施形態に係る電池セル診断装置の前記現在の測定電圧と前記予め設定された時間以前の測定電圧との差は、前記電池セルの電圧降下量および電圧上昇量を全て含むことができる。
【0012】
本発明の一実施形態に係る電池セル診断装置の前記異常検出部は、前記現在の測定電圧と前記予め設定された時間以前の測定電圧との差が基準値を超過する状態が連続して2回以上発生した場合に、前記電池セルに異常が発生したと判断することができる。
本発明の一実施形態に係る電池セル診断装置の前記基準値は10mVであってもよい。
【0013】
本発明の他の実施形態に係る電池セル診断装置は、電池の開路電圧状態で、電池モジュールの各電池セルの電圧を測定する電圧測定部と、前記測定された電圧に基づいて前記電池モジュールの各電池セルのSOCを算出するSOC算出部と、前記測定された電圧と前記算出されたSOCとを一定の時間間隔で格納するメモリと、前記各電池セルに対して現在のSOCと予め設定された時間以前のSOCとを比較して、前記現在のSOCと前記予め設定された時間以前のSOCとの差が基準値を超過する場合に、前記電池セルに異常が発生したと判断する異常検出部と、を含むことができる。
【0014】
本発明の一実施形態に係る電池セル診断方法は、電池の開路電圧状態で、電池モジュールの各電池セルの電圧を測定するステップと、前記測定された電圧を一定の時間間隔で格納するステップと、前記各電池セルに対して現在の測定電圧と予め設定された時間以前の測定電圧とを比較するステップと、前記現在の測定電圧と前記予め設定された時間以前の測定電圧との差が基準値を超過する場合に、前記電池セルに異常が発生したと判断するステップと、を含むことができる。
【0015】
本発明の一実施形態に係る電池セル診断方法の前記予め設定された時間は5秒であってもよい。
本発明の一実施形態に係る電池セル診断方法は、前記各電池セルに対して現在の測定電圧と予め設定された時間以前の測定電圧とを比較するステップ以前に、電池モジュールに流れる電流および前記電池セルのSOCを測定するステップをさらに含み、前記電池モジュールに流れる電流および前記電池セルのSOCを測定するステップにおいて、前記電池モジュールに流れる電流が0である状態が10秒以上持続し、前記電池セルのSOCが予め設定された数値以上である場合に、前記各電池セルに対して現在の測定電圧と予め設定された時間以前の測定電圧とを比較するステップが行われることができる。
【0016】
本発明の一実施形態に係る電池セル診断方法は、前記各電池セルに対して現在の測定電圧と予め設定された時間以前の測定電圧とを比較するステップ以前に、電池モジュールに流れる電流を測定するステップをさらに含み、前記電池モジュールに流れる電流を測定するステップにおいて、前記電池の充電または放電が終了した時点から10秒が経過し、前記電池モジュールに流れる電流が0である場合に、前記各電池セルに対して現在の測定電圧と予め設定された時間以前の測定電圧とを比較するステップが行われることができる。
【0017】
本発明の一実施形態に係る電池セル診断方法の前記SOCの予め設定された数値は30%であってもよい。
本発明の一実施形態に係る電池セル診断方法の前記現在の測定電圧と前記予め設定された時間以前の測定電圧との差は、前記電池セルの電圧降下量および電圧上昇量を全て含むことができる。
【0018】
本発明の一実施形態に係る電池セル診断方法は、前記電池セルに異常が発生したと判断するステップにおいて、前記現在の測定電圧と前記予め設定された時間以前の測定電圧との差が基準値を超過する場合が連続して2回以上発生した場合に、前記電池セルに異常が発生したと判断することができる。
【0019】
本発明の他の実施形態に係る電池セル診断方法は、電池の開路電圧状態で、電池モジュールの各電池セルの電圧を測定するステップと、前記測定された電圧に基づいて前記電池モジュールの各電池セルのSOCを算出するステップと、前記算出されたSOCを一定の時間間隔で格納するステップと、前記各電池セルに対して現在のSOCと予め設定された時間以前のSOCとを比較するステップと、前記現在のSOCと前記予め設定された時間以前のSOCとの差が基準値を超過する場合に、前記電池セルに異常が発生したと判断するステップと、を含むことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一実施形態に係る電池セル診断装置および方法によると、電池セルの瞬間的な内部短絡によるセル電圧挙動の異常を早期に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】一般的な電池管理システムの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態に係る電池セル診断装置の構成を示すブロック図である。
図3a】本発明の一実施形態に係る電池セル診断装置により電池セルの瞬間的な内部短絡によるセル電圧挙動の異常を検出する方法を示す。
図3b】本発明の一実施形態に係る電池セル診断装置により電池セルの瞬間的な内部短絡によるセル電圧挙動の異常を検出する方法を示す。
図4】本発明の一実施形態に係る電池セル診断方法を示すフローチャートである。
図5】本発明の他の実施形態に係る電池セル診断方法を示すフローチャートである。
図6】本発明の一実施形態に係る電池セル診断装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して本発明の多様な実施形態について詳細に説明する。本文書において、図面上の同一の構成要素に対しては同一の参照符号を付し、同一の構成要素に対して重複した説明は省略する。
【0023】
本文書に開示されている本発明の多様な実施形態に対して、特定の構造的、機能的説明は、単に本発明の実施形態を説明するための目的で例示されたものであり、本発明の多様な実施形態は、種々の形態で実施されてもよく、本文書に説明された実施形態に限定されるものと解釈されてはならない。
【0024】
多様な実施形態で用いられた「第1」、「第2」、「1番目」、または「2番目」などの表現は、多様な構成要素を、順序および/または重要度に関係なく修飾してもよく、当該構成要素を限定しない。例えば、本発明の権利範囲から逸脱せずに、第1構成要素は第2構成要素と命名してもよく、それと同様に第2構成要素も第1構成要素に変更して命名してもよい。
【0025】
本文書で用いられた用語は、単に特定の実施形態を説明するために用いられたものであって、他の実施形態の範囲を限定しようとするものではない。単数の表現は、文脈上、明らかに他を意味しない限り、複数の表現を含んでもよい。
【0026】
技術的または科学的な用語を含めてここで用いられる全ての用語は、本発明の技術分野における通常の知識を有する者により一般的に理解されるものと同一の意味を有する。一般的に用いられる辞書に定義された用語は、関連技術の文脈上有する意味と同一または類似の意味を有するものと解釈されてもよく、本文書で明らかに定義しない限り、理想的または過度に形式的な意味に解釈されない。場合によっては、本文書で定義された用語であっても、本発明の実施形態を排除するように解釈されてはならない。
【0027】
図1は、電池制御システムの構成を示すブロック図である。図1を参照すると、本発明の一実施形態に係る電池パック1と上位システムに含まれている上位コントローラ2とを含む電池制御システムを概略的に示す構成図が示される。
【0028】
図1に示すように、電池パック1は、1つ以上の電池セルからなり、充放電可能な電池モジュール10と、電池モジュール10の+端子側または-端子側に直列に連結され、電池モジュール10の充放電電流の流れを制御するためのスイッチング部14と、電池モジュール10の電圧、電流、温度などをモニターして、過充電および過放電などを防止するように制御管理する電池管理システム(BMS)20と、を含む。ここでは、電池管理システム20が電池モジュールに連結されている構成として説明するが、電池セルごとにも連結され、電池セルの電圧、電流、温度などをモニターし測定することができる。電池セルごとに電池セル管理システムを配置し、複数の電池セル管理システムそれぞれは、電池モジュールをモニターし制御する電池管理システム20とデータを送受信することができる。電池セル管理システムは、電池管理システム20と動作と機能が類似している。
【0029】
ここで、スイッチング部14は、電池モジュール10の充電または放電に対する電流の流れを制御するための半導体スイッチング素子であり、例えば、少なくとも1つのMOSFETを用いることができる。
【0030】
また、BMS20は、電池モジュール10の電圧、電流、温度などをモニターするために、半導体スイッチング素子のゲート、ソース、およびドレインなどの電圧および電流を測定するかまたは計算することができ、また、半導体スイッチング素子14に隣接して備えられたセンサ12を用いて電池モジュールの電流、電圧、温度などを測定することができる。BMS20は、上述した各種パラメータを測定した値の入力を受けるインターフェースであり、複数の端子、およびこれらの端子と連結され、入力を受けた値の処理を実行する回路などを含むことができる。
【0031】
また、BMS20は、スイッチング素子14、例えば、MOSFETのON/OFFを制御することもでき、電池モジュール10に連結され、電池モジュール10の状態を監視することができる。
【0032】
上位コントローラ2は、BMS20に電池モジュールに対する制御信号を伝送することができる。それにより、BMS20は、上位コントローラから印加される信号に基づいて動作が制御されることができる。本発明の電池セルがESSまたは車両などに用いられる電池パックに含まれた構成であってもよい。但し、このような用途に限定されるものではない。
【0033】
このような電池パック1の構成およびBMS20の構成は公知の構成であるため、より具体的な説明は省略することにする。
一方、本発明の実施形態に係る電池セル診断装置は、前記電池モジュール10内に直列に連結される複数の電池セルそれぞれに連結され、電池セルの異常を判断することができる。
【0034】
図2は、本発明の一実施形態に係る電池セル診断装置の構成を示すブロック図である。ここで、電池セル診断装置は、上述した電池セル管理システムに対応する。
【0035】
図2を参照すると、本発明の一実施形態に係る電池セル診断装置100は、電圧測定部110、メモリ120、異常検出部130、およびSOC算出部140を含むことができる。
【0036】
電圧測定部110は、電池の開路電圧状態で、電池モジュールの各電池セルの電圧を測定することができる。この際、電池の開路電圧とは、電池セルが充電または放電ではない状態、すなわち、Rest状態で測定された電圧を意味する。
【0037】
また、電圧測定部110は、電池の開路電圧状態での各電池セルの電圧を一定の時間間隔で測定することができる。例えば、電圧測定部110は、毎秒ごとに電池セルの電圧を測定することができる。しかし、これに制限されるものではなく、電圧測定部110は、ユーザにより多様に設定された時間間隔で電圧を測定することができる。
【0038】
メモリ120は、電圧測定部210により測定された電圧とSOC算出部140により算出されたSOCとを一定の時間間隔で格納することができる。例えば、メモリ120は、毎秒ごとに電圧測定部110により測定された電圧とSOC算出部140により算出されたSOCとを格納することができる。
【0039】
異常検出部130は、電池の各電池セルに対して現在の測定電圧と予め設定された時間以前の測定電圧とを比較して、現在の測定電圧と予め設定された時間以前の測定電圧との差が基準値を超過する場合に、電池の電池セルに異常が発生したと判断することができる。
【0040】
例えば、予め設定された時間以前の測定電圧は、現在から5秒以前の測定電圧であってもよい。この場合、異常検出部130は、次の式により電池の電池セルの異常を判断することができる。
【0041】
【数1】
【0042】
前記式は、基準値が10mVである場合を示したものである。しかし、これに制限されるものではなく、基準値は場合に応じて適切に設定可能である。例えば、基準値は、電圧測定部110の誤差範囲を考慮して設定可能である。現在の測定電圧と予め設定された時間以前の測定電圧との差は、絶対値として電池セルの電圧降下量だけでなく電池セルの電圧上昇量も含むことができる。
【0043】
異常検出部130は、各電池セルに対してSOC算出部140により算出された現在のSOCと予め設定された時間以前のSOCとを比較して、現在のSOCと予め設定された時間以前のSOCとの差が基準値を超過する場合に、電池セルに異常が発生したと判断することができる。例えば、基準値は全体SOCの3%であってもよい。
【0044】
また、異常検出部130は、予め設定された条件を満たす場合にのみ、前記各電池セルに対して現在の測定電圧(またはSOC)と予め設定された時間以前の測定電圧(またはSOC)との比較を行うことができる。この際、予め設定された条件は、電池モジュールに流れる電流が0である状態が10秒以上持続し、電池セルのSOCが予め設定された数値以上であるものを含むことができる。例えば、SOCの予め設定された数値は、SOCが30%以上であるものを含むことができる。その理由は、電池セルモデルごとにOCV特性曲線を有するが、急激な傾きが現れるSOC区間を除くことによって誤検出を防止するためである。
【0045】
また、異常検出部130は、電池の充電または放電が終了した時点から10秒が経過し、電池モジュールに流れる電流が0である場合に、電池セルの異常診断を行うことができる。
【0046】
異常検出部130は、現在の測定電圧と予め設定された時間以前の測定電圧との差が基準値を超過する状態が連続して2回以上発生した場合に、電池セルに異常が発生したと判断することができる。それにより、異常検出部130は、電池の電池セルの異常検出の正確性を高めることができる。
【0047】
SOC算出部140は、電圧測定部110により測定された電圧に基づいて、電池モジュールの各電池セルのSOCを算出することができる。SOC算出部140は、電池モジュールの各電池セルの電圧だけでなく、各電池セルの電流、温度、圧力などの多様な要因を考慮してSOCを算出することができる。
【0048】
ここで、電池のSOC算出方法は、残存量判断の基準として用いるパラメータに応じて分類することができる。Ah法は、使用電流と時間の関係を利用して使われた容量を求めてSOCに反映する方法であり、抵抗測定法は、電池の内部抵抗(IR-drop;Internal Resistance-drop)とSOCの関係に基づいて残存量を計算する方法である。また、電圧測定法は、電池端子の開路電圧(OCV;Open Circuit Voltage)を測定し、予め測定されたOCVとSOCの関係に基づいて残存量を計算する方法である。
【0049】
例えば、本発明の一実施形態に係る電池セル診断装置の場合は、電圧測定法を用いてSOCを算出することができる。しかし、これは例示的なものに過ぎず、SOC算出方法が上述した方法に制限されるものではない。
【0050】
また、図2の実施形態に係る電池セル診断装置100によると、異常検出部130は、電池の各電池セルに対して現在の測定電圧およびSOCと、予め設定された時間以前の測定電圧およびSOCと、を共に比較して、現在の測定電圧およびSOCと、予め設定された時間以前の測定電圧およびSOCと、の差が全て基準値を超過する場合に、電池セルに異常が発生したと判断することができる。
【0051】
このように電池セルの測定電圧とSOCとを全て用いることにより、電池の各電池セルの瞬間的な内部短絡によるセル電圧挙動の異常を検出するにおいて精度を向上させることができる。
【0052】
図3aおよび図3bは、本発明の一実施形態に係る電池セル診断装置により電池セルの瞬間的な内部短絡によるセル電圧挙動の異常を検出する方法を示す。
図3aおよび図3bの上段のグラフにおいて、横軸は時間(秒)を示し、縦軸は電圧(V)を示す。また、図3aおよび図3bの下段の表は、時間別に電池モジュールの各電池セルの測定電圧および一定時間以前の電圧を示す。この際、図3aおよび図3bの例示において、電池セルの瞬間的な内部短絡によるセル電圧挙動の異常を検出するための基準値は10mVとする。
【0053】
図3aを参照すると、43秒に測定した電圧4.117Vに対して、4秒以前の電圧が4.129Vであり、5秒以前の電圧が4.128Vであるため、その差はそれぞれ12mVと11mVとなる。よって、本発明の一実施形態に係る電池セル診断装置は、43秒に電池セルの瞬間的な内部短絡によるセル電圧挙動の異常が発生したと判断することができる。
【0054】
また、44秒に測定した電圧4.117Vに対して、5秒以前の電圧が4.129Vであるため、その差が12mVとなる。よって、本発明の一実施形態に係る電池セル診断装置は、44秒に電池セルの瞬間的な内部短絡によるセル電圧挙動の異常が発生したと判断することができる。
【0055】
図3bの場合も図3aと同様に、37秒~40秒に測定した電圧に対して、一定時間(例えば、1秒以上)以前の電圧との差が10mV以上であるため、電池セルの瞬間的な内部短絡によるセル電圧挙動の異常が発生したと判断することができる。
【0056】
図4は、本発明の一実施形態に係る電池セル診断方法を示すフローチャートである。
先ず、本発明の一実施形態に係る電池セルを診断する場合、電池の開路電圧状態で、電池モジュールの各電池セルの電圧を測定することができる(S110)。この際、電池の開路電圧とは、電池セルが充電または放電ではない状態、すなわち、Rest状態で測定された電圧を意味する。
この場合、電池の開路電圧状態での各電池セルの電圧を一定の時間、例えば、毎秒間隔で電池セルの電圧を測定することができる。
【0057】
次に、測定された電圧を一定の時間間隔で格納することができる(S120)。この際、毎秒ごとに測定された電圧をメモリに格納することができる。そして、各電池セルに対して、現在の測定電圧と予め設定された時間以前の測定電圧とを比較することができる(S130)。この際、予め設定された時間は5秒であってもよい。
【0058】
また、各電池セルに対して現在の測定電圧と予め設定された時間以前の測定電圧とを比較する前に、電池モジュールに流れる電流および電池セルのSOCを測定するステップをさらに含むことができる。このような電池モジュールに流れる電流および前記電池セルのSOCを測定するステップにおいて、電池モジュールに流れる電流が0である状態が10秒以上持続し、電池セルのSOCが予め設定された数値以上である場合に、各電池セルに対して現在の測定電圧と予め設定された時間以前の測定電圧とを比較するステップが行われることができる。この際、SOCの予め設定された数値は、SOCが30%以上であるものを含むことができる。
【0059】
また、各電池セルに対して現在の測定電圧と予め設定された時間以前の測定電圧とを比較するステップ以前に、電池モジュールに流れる電流を測定するステップをさらに含むことができる。このような電池モジュールに流れる電流を測定するステップにおいて、前記電池の充電または放電が終了した時点から10秒が経過し、電池モジュールに流れる電流が0である場合に、各電池セルに対して現在の測定電圧と予め設定された時間以前の測定電圧とを比較するステップが行われることができる。
【0060】
前述したように、現在の測定電圧と予め設定された時間以前の測定電圧との差は、絶対値として電池セルの電圧降下量だけでなく電池セルの電圧上昇量も含むことができる。
【0061】
そして、現在の測定電圧と予め設定された時間以前の測定電圧との差が基準値を超過する場合に、電池セルに異常が発生したと判断することができる(S140)。この場合、現在の測定電圧と予め設定された時間以前の測定電圧との差が基準値を超過する場合が連続して2回以上発生した場合に、電池セルに異常が発生したと判断することができる。
【0062】
図5は、本発明の他の実施形態に他の電池セル診断方法を示すフローチャートである。
先ず、電池の開路電圧状態で、電池モジュールの各電池セルの電圧を測定することができる(S210)。そして、測定された電圧に基づいて、電池モジュールの各電池セルのSOCを算出することができる(S220)。この際、電池モジュールの各電池セルの電圧だけでなく、各電池セルの電流、温度、圧力などの多様な要因を考慮してSOCを算出することができる。
【0063】
次に、測定された電圧と算出されたSOCとを一定の時間間隔で格納することができる(S230)。そして、各電池セルに対して現在のSOCと予め設定された時間以前のSOCとを比較することができる(S240)。仮に現在のSOCと予め設定された時間以前のSOCとの差が基準値を超過する場合に、電池セルに異常が発生したと判断することができる(S250)。
【0064】
一方、図5には図示していないが、電池モジュールの各電池セルの測定電圧およびSOCを全て比較することにより、電池セルの瞬間的な内部短絡によるセル電圧挙動の異常を早期に検出するようにすることができる。
【0065】
図6は、本発明の一実施形態に係る電池セル診断装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図6に示すように、電池セル診断装置600は、各種処理および各構成を制御するマイクロコントローラ610(MCU)と、オペレーティングシステムプログラム、および各種プログラム(例えば、電池パックの異常診断プログラムまたは電池パックの温度推定プログラム)などが記録されるメモリ620と、電池セルモジュールおよび/またはスイッチング部(例えば、半導体スイッチング素子)との間で入力インターフェースおよび出力インターフェースを提供する入出力インターフェース630と、有無線通信網を介して外部(例えば、上位コントローラ)と通信可能な通信インターフェース640と、を備えることができる。このように、本発明に係るコンピュータプログラムは、メモリ620に記録され、マイクロコントローラ610により処理されることで、例えば、図2に示した各機能ブロックを実行するモジュールとして実現されてもよい。
【0066】
このように、本発明の一実施形態に係る電池セル診断装置および方法によると、電池セルの瞬間的な内部短絡によるセル電圧挙動の異常を早期に検出することができる。
【0067】
以上、本発明の実施形態を構成する全ての構成要素が1つに結合するかまたは結合して動作するものと説明されたからといって、本発明が必ずしもこのような実施形態に限定されるものではない。すなわち、本発明の目的の範囲内であれば、その全ての構成要素が1つ以上に選択的に結合して動作してもよい。
【0068】
また、以上に記載された「含む」、「構成する」、または「有する」などの用語は、特に反する記載がない限り、当該構成要素が内在できることを意味するため、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいものと解釈されなければならない。技術的または科学的な用語を含む全ての用語は、別に定義しない限り、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者により一般的に理解されるものと同一の意味を有する。辞書に定義された用語のように一般的に用いられる用語は、関連技術の文脈上の意味と一致するものと解釈されなければならず、本発明で明らかに定義しない限り、理想的または過度に形式的な意味に解釈されない。
【0069】
以上の説明は本発明の技術思想を例示的に説明したものに過ぎず、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の本質的な特性から逸脱しない範囲内で多様な修正および変形が可能であろう。よって、本発明に開示された実施形態は本発明の技術思想を限定するためのものではなく説明するためのものであって、このような実施形態により本発明の技術思想の範囲が限定されるものではない。本発明の保護範囲は後述の請求範囲により解釈されなければならず、それと同等な範囲内にある全ての技術思想は本発明の権利範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
【0070】
1 電池パック
2 上位コントローラ
10 電池モジュール
12 センサ
14 スイッチング部、半導体スイッチング素子、スイッチング素子
20 BMS、電池管理システム
100 電池セル診断装置
110 電圧測定部
120 メモリ
130 異常検出部
140 SOC算出部
210 電圧測定部
600 電池セル診断装置
610 マイクロコントローラ
620 メモリ
630 入出力インターフェース
640 通信インターフェース
図1
図2
図3a
図3b
図4
図5
図6