(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】電池モジュールおよびそれを含む電池パック
(51)【国際特許分類】
H01M 50/204 20210101AFI20240401BHJP
H01M 50/211 20210101ALI20240401BHJP
H01M 50/271 20210101ALI20240401BHJP
H01M 50/588 20210101ALI20240401BHJP
H01M 50/591 20210101ALI20240401BHJP
H01M 50/507 20210101ALI20240401BHJP
【FI】
H01M50/204 201
H01M50/211
H01M50/271 B
H01M50/271 S
H01M50/588
H01M50/591
H01M50/507
(21)【出願番号】P 2022546113
(86)(22)【出願日】2021-07-30
(86)【国際出願番号】 KR2021009946
(87)【国際公開番号】W WO2022065666
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】10-2020-0122292
(32)【優先日】2020-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・ウク・ジョン
【審査官】儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-192536(JP,A)
【文献】特開2016-031895(JP,A)
【文献】特表2020-522849(JP,A)
【文献】国際公開第2013/179798(WO,A1)
【文献】中国実用新案第210167432(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20
H01M 50/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルが積層されている電池セル積層体;
前記電池セル積層体を収容するモジュールフレーム;および
前記電池セル積層体の前後面をカバーするエンドプレートを含み、
前記モジュールフレームと接する前記エンドプレートの両側下端コーナー部には、排水路が形成され
、
前記エンドプレートの縁に沿って枠部が形成され、前記枠部は前記モジュールフレームに向かって突出形成されており、
前記排水路は、前記枠部から前記エンドプレートの両側下端コーナー部に延在している、電池モジュール。
【請求項2】
前記排水路が形成された部分を除いた前記エンドプレートと前記モジュールフレームとが接する部分は、溶接で結合されている、請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項3】
前記排水路は、前記エンドプレートの下端外側コーナー部に向かって第1傾斜を有するように形成され、前記排水路と連結される前記エンドプレートの内側下端部は、前記排水路に向かって第2傾斜を有するように形成される、請求項1または2に記載の電池モジュール。
【請求項4】
前記第1傾斜は、前記第2傾斜より傾斜角がさらに大きい、請求項3に記載の電池モジュール。
【請求項5】
前記排水路は、前記エンドプレートの下端内側コーナー部で下端外側コーナー部に向かって形成された、請求項1~4のいずれか一項に記載の電池モジュール。
【請求項6】
前記電池セル積層体と前記エンドプレートとの間には、絶縁カバーが形成され、
前記エンドプレートの内側下端部は、前記絶縁カバーの下側に形成される、請求項1~
5のいずれか一項に記載の電池モジュール。
【請求項7】
前記電池セル積層体の前後面には、バスバーフレームが形成され、
前記バスバーフレームは、前記エンドプレートの内側下端部の上側空間と連結される、請求項1~
6のいずれか一項に記載の電池モジュール。
【請求項8】
前記バスバーフレームの外側面には、複数のバスバーが取り付けられ、前記複数のバスバーは、前記内側下端部の上側空間と連結される、請求項
7に記載の電池モジュール。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか一項に記載の電池モジュール;および
前記電池モジュールの前記排水路と連結された排水装置を含む、電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互引用]
本出願は2020年9月22日付韓国特許出願第10-2020-0122292号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は電池モジュールおよびそれを含む電池パックに関し、より詳細にはバスバー間のショート防止のための電池モジュールおよびそれを含む電池パックに関する。
【背景技術】
【0003】
二次電池はモバイル機器および電気自動車などの多様な製品群でエネルギ源として多くの関心を集めている。このような二次電池は化石燃料を使用する既存製品の使用に代える有力なエネルギ資源であって、エネルギ使用による副産物が発生しないため環境に優しいエネルギ源として脚光を浴びている。
【0004】
最近二次電池のエネルギ貯蔵源としての活用をはじめとして大容量二次電池構造に対する必要性が高まるにつれ、多数の二次電池が直列/並列に連結された電池モジュールを集合させたマルチモジュール構造の電池パックに対する需要が増加している。
【0005】
なお、複数の電池セルを直列/並列に連結して電池パックを構成する場合、少なくとも一つの電池セルからなる電池モジュールを構成し、このような少なくとも一つの電池モジュールを用いてその他構成要素を追加して電池パックを構成することが一般的な方法である。
【0006】
このような電池モジュールは、複数の電池セルが積層されている電池セル積層体、前記電池セル積層体を収容するモジュールフレームおよび電池セル積層体の前後面をカバーするエンドプレートを含む。
【0007】
図1は従来の電池モジュールの底部を示す斜視図である。
図2は
図1のA部分を拡大した図である。
図3はエンドプレートの内側面を見た図である。
【0008】
図1ないし
図3を参照すると、従来の電池モジュールは、電池セル積層体を収容するモジュールフレーム20および電池セル積層体の前後面をカバーするエンドプレート30を含む。この時、
図3に示すように、エンドプレートに別途の水分排出構造が存在しないことを確認できる。電池モジュールに水分排出構造が存在しない場合、外部から電池モジュール内部に水分が流入し得る。また、電池モジュール内部に流入した水蒸気が凝縮して凝縮水が発生し得る。また、電池セルから電解液が漏液してモジュールフレームの内側を漏液した電解液が占める。
【0009】
このように電池モジュール内部に液体が発生する場合、電池セルと連結されたバスバーが液体によって浸漬され、浸漬されたバスバーが腐食することによりバスバー間のショート(short)現象が発生し得る。ショート現象が発生する場合、ショートによる火災が発生し得、電池モジュールの性能が低下し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、電池モジュール内部の液体を排出する構造を含む電池モジュールを提供することにある。
【0011】
本発明の課題は以上で言及した課題に制限されず、言及されていないまた他の課題は以下の記載から当業者に明確に理解されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を実現するための本発明の一実施形態による電池モジュールは、複数の電池セルが積層されている電池セル積層体;前記電池セル積層体を収容するモジュールフレーム;および前記電池セル積層体の前後面をカバーするエンドプレートを含み、前記モジュールフレームと接する前記エンドプレートの両側下端コーナー部には、排水路が形成される。
【0013】
前記排水路が形成された部分を除いた前記エンドプレートと前記モジュールフレームが接する部分は、溶接で結合され得る。
【0014】
前記排水路は、前記エンドプレートの下端外側コーナー部に向かって第1傾斜を有するように形成され、前記排水路と連結される前記エンドプレートの内側下端部は、前記排水路に向かって第2傾斜を有するように形成され得る。
【0015】
前記第1傾斜は、前記第2傾斜より傾斜角がさらに大きくてもよい。
【0016】
前記排水路は、前記エンドプレートの下端内側コーナー部で下端外側コーナー部に向かって形成され得る。
【0017】
前記エンドプレートの縁には、前記モジュールフレームに向かって突出形成された枠部が形成され、前記排水路は前記枠部に形成され得る。
【0018】
前記電池セル積層体と前記エンドプレートとの間には、絶縁カバーが形成され、前記エンドプレートの内側下端部は、前記絶縁カバーの下側に形成され得る。
【0019】
前記電池セル積層体の前後面には、バスバーフレームが形成され、前記バスバーフレームは、前記エンドプレートの内側下端部の上側空間と連結され得る。
【0020】
前記バスバーフレームの外側面には、複数のバスバーが取り付けられ、前記複数のバスバーは、前記内側下端部の上側空間と連結され得る。
【0021】
本発明の他の一実施形態による電池パックは、前記電池モジュールおよび前記電池モジュールの前記排水路と連結された排水装置を含み得る。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一実施形態による電池モジュールおよびそれを含む電池パックは、エンドプレートの両側下端コーナー部に排水路が形成されて電池モジュール内部の液体を外部に排出することができる。
【0023】
本発明の効果は、以上で言及した効果に制限されず、言及されていないまた他の効果は特許請求の範囲の記載から当業者に明確に理解されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】従来の電池モジュールの底部分を示す斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態による電池モジュールの底部分を示す斜視図である。
【
図5】
図4のモジュールフレームの内部に挿入されている部品を示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態によるエンドプレートの内側面を示す平面図である。
【
図8】本発明の一実施形態によるエンドプレートの内側面を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下で説明される実施形態は発明の理解を深めるために例示的に示したものであり、本発明はここで説明される実施形態とは異に多様に変形して実施できることが理解されなければならない。ただし、本発明を説明するにあたり関連する公知機能あるいは構成要素に係る具体的な説明が本発明の要旨を不要に曖昧にすると判断される場合はその詳細な説明および具体的な図示を省略する。また、添付する図面は発明の理解を深めるために実際の縮尺のとおり図示されたものでなく一部構成要素の寸法を誇張して示す場合もある。
【0026】
本出願で使用される第1、第2の用語は多様な構成要素を説明するために使用できるが、構成要素は用語によって限定されるべきではない。用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的にのみ使用される。
【0027】
また、本出願で使用される用語は単に特定の実施形態を説明するために使用されたものであり、権利範囲を限定しようとする意図ではない。単数の表現は文脈上明白に異なる意味を示さない限り、複数の表現を含む。本出願で「含む」、「からなる」または「構成される」などの用語は明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらの組み合わせたものが存在することを指定するためであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらの組み合わせたものの存在または付加の可能性をあらかじめ排除しないものとして理解されなければならない。
【0028】
以下、
図4ないし
図6を参照して本発明の一実施形態による排水路が形成された電池モジュールについて説明する。
【0029】
図4は本発明の一実施形態による電池モジュールの底部分を示す斜視図である。
図5は
図4のモジュールフレームの内部に挿入されている部品を示す図である。
図6は
図4のB部分を拡大した図である。
【0030】
図4ないし
図6を参照すると、本発明の一実施形態による電池モジュールは、複数の電池セルが積層されている電池セル積層体100、電池セル積層体100を収容するモジュールフレーム200、電池セル積層体100の前後面をカバーするエンドプレート300を含む。
【0031】
電池セルは二次電池として、パウチ型二次電池で構成される。このような電池セルは複数で構成され、複数の電池セルは相互電気的に連結されるように相互積層されて電池セル積層体100を形成する。このような複数の電池セルはそれぞれ電極組立体、電池ケースおよび電極組立体から突出した電極リードを含み得る。
【0032】
モジュールフレーム200は電池セル積層体100を収容する。モジュールフレーム200によりモジュールフレーム200の内部に収容された電池セル積層体100を物理的に保護する。
【0033】
バスバーフレーム500は電池セル積層体100の前後面をカバーするように形成され、電池セル積層体100の前後面に位置して複数の電池セルから延長形成された電極リードと連結される。より詳細には、バスバーフレーム500の外側面に取り付けられた複数のバスバー510にバスバーフレーム500を貫通して延長した電極リードが結合されることによって電池セルとバスバー510との間に電気的に連結される。
【0034】
エンドプレート300は電池セル積層体100を基準としてバスバーフレーム500の外側にそれぞれ形成され、電池セル積層体100およびバスバーフレーム500をカバーするように形成される。バスバーフレーム500は
図8に示されたエンドプレート300の内側下端部313と連結される。
【0035】
エンドプレート300は外部の衝撃からバスバーフレーム500、電池セル積層体100およびこれと連結された複数の電装品を保護し、同時に電池セル積層体100と外部電源との電気的連結を案内する。エンドプレート300とバスバーフレーム500との間には
図8に示された絶縁カバー400が挿入される。絶縁カバー400はバスバーフレーム500と外部との電気的連結を遮断して電池モジュールの絶縁性能を確保する。
【0036】
本実施形態によれば、モジュールフレーム200と接するエンドプレート300の両側下端コーナー部310には排水路Lが形成される。排水路Lを介して電池モジュール内部の液体を外部に排出することができる。
【0037】
従来には電池モジュールに液体排出構造が別に設けられておらず、電池モジュールの内部に液体が集まる場合、電池セルと連結されたバスバーが液体によって浸漬され、浸漬されたバスバーが腐食することによりバスバー間のショート(short)現象が発生し得る。ショート現象が発生する場合、ショートによる火災が発生し得、電池モジュールの性能が低下し得る。
【0038】
そこで本実施形態によれば、エンドプレート300の両側下端コーナー部310に排水路Lを形成し、排水路Lを介して電池モジュール内部の液体を外部に排出できるようにすることによって、バスバー間のショート現象を防止できる。また、バスバーを除いたモジュール内部の電装品が液体によって浸水する現象も防止できる。
【0039】
以下、
図6ないし
図8を参照して、本発明の一実施形態による排水構造をより詳細に説明する。
【0040】
図7は本発明の一実施形態によるエンドプレートの内側面を示す平面図である。
図8は本発明の一実施形態によるエンドプレートの内側面を示す斜視図である。
【0041】
図6ないし
図8を参照すると、本実施形態による電池モジュールで、エンドプレート300とモジュールフレーム200が接する部分は溶接で結合される。
図6に示すように、溶接ラインは排水路Lが形成された部分を除いて形成される。すなわち、エンドプレート300とモジュールフレーム200の結合時排水路Lが形成された部分を除いて残りの接する部分を溶接により結合させ得る。エンドプレート300の両側下端コーナー部310とモジュールフレーム200のコーナー部の部分は従来にも溶接が行われない部分であり、排水路Lの形成によりエンドプレート300とモジュールフレーム200との間の溶接結合力が低下しない。
【0042】
図7および
図8に示すように、排水路Lはエンドプレート300の下端内側コーナー部311で下端外側コーナー部312に向かって第1傾斜S1を有するように形成される。また、排水路Lと連結されるエンドプレート300の内側下端部313は排水路Lに向かって第2傾斜S2を有するように形成される。この時、第1傾斜S1は第2傾斜S2より傾斜角がさらに大きくてもよい。
【0043】
本実施形態によれば、第2傾斜S2は2度の勾配が適用される。電池モジュールの内部に形成された液体が重力によってエンドプレート300の内側下端部313に集まるが、この時、内側下端部313の第2傾斜S2が排水路Lが位置した方向に2度の傾斜を有するように形成されることによって、内側下端部313に集まった液体が内側下端部313を伝って流れて排水路Lに流入する。排水路Lの第1傾斜S1は内側下端部313の第2傾斜S2より傾斜角がさらに大きいので、排水路Lに流入した液体は第2傾斜S2で形成された排水路Lを伝って電池モジュールの外部に排出される。
【0044】
エンドプレート300の縁にはモジュールフレーム200に向かって突出形成された枠部320が形成され、排水路Lは枠部320に形成される。
図8を参照すると、排水路Lおよび内側下端部313の上側空間は絶縁カバー400の下端部と連結される。したがって、絶縁カバー400の表面にできた凝縮水などが重力によって絶縁カバー400の表面を伝って絶縁カバー400の下側に形成された内側下端部313上に流れた後、再び内側下端部313の第2傾斜S2を伝って排水路Lに流入し得る。
【0045】
図5に示されたバスバーフレーム500もまた、
図7および
図8に示された排水路Lおよび内側下端部313の上側空間と連結される。したがって、バスバーフレーム500の表面にできた凝縮水などが重力によってバスバーフレーム500およびバスバーフレーム500の外側に取り付けられた複数のバスバー510の表面を伝ってバスバーフレーム500の下側に形成された内側下端部313上に流れた後、再び内側下端部313の第2傾斜S2を伝って排水路Lに流入し得る。
【0046】
図8を参照すると、電池モジュールの排水路Lの外には排水装置Dが形成される。排水装置Dは排水路Lと連結されて排水路Lに排出された液体を収集し、少なくとも一つの電池モジュールが取り付けられた電池パックの外部に前記液体を排出することができる。
【0047】
前記電池パックは、本実施形態による電池モジュールを一つ以上集めて電池の温度や電圧などを管理する電池管理システム(Battery Management System;BMS)と冷却装置などを追加してパッキングした構造であり得る。
【0048】
前記電池パックは多様なデバイスに適用できる。このようなデバイスには、電気自転車、電気自動車、ハイブリッド自動車などの運送手段に適用できるが、本発明はこれに制限されず電池モジュールを使用できる多様なデバイスに適用することが可能であり、これもまた本発明の権利範囲に属する。
【0049】
以上では本発明の好ましい実施形態について図示して説明したが、本発明は上述した特定の実施形態に限定されず、特許請求の範囲で請求する本発明の要旨を逸脱することなく当該発明が属する技術分野における通常の知識を有する者によって多様な変形実施が可能であることは勿論であり、このような変形実施は本発明の技術的思想や展望から個別に理解されるべきではない。
【符号の説明】
【0050】
200 モジュールフレーム
300 エンドプレート
310 両側下端コーナー部
L 排水路
311 下端内側コーナー部
312 下端外側コーナー部
313 内側下端部
320 枠部
400 絶縁カバー
500 バスバーフレーム
510 バスバー
D 排水装置
S1 第1傾斜
S2 第2傾斜