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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】引き抜き試験機及び引き抜き試験方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/08 20060101AFI20240401BHJP
【FI】
G01N3/08
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020047477
(22)【出願日】2020-03-18
(65)【公開番号】P2021148544
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000151058
【氏名又は名称】株式会社電業社機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100120396
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】稲木 喜良
【審査官】西浦 昌哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-166293(JP,A)
【文献】特開昭63-241219(JP,A)
【文献】特開2016-085115(JP,A)
【文献】特開2001-228066(JP,A)
【文献】国際公開第1986/001294(WO,A1)
【文献】特開2019-191022(JP,A)
【文献】中国実用新案第208505762(CN,U)
【文献】特開2001-271817(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/00- 3/62
G01N 17/00-19/10
G01M 13/00-13/045
G01M 99/00
E21D 20/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面の孔に埋め込まれたスリーブ内に挿入されたアンカーボルトの突出端部に連結可能なアタッチメントと、
前記アタッチメントに先端が接続されたピストンロッド部と前記ピストンロッド部の基端に接続されたピストン部と前記ピストン部が内部で進退可能なシリンダ部とを備え前記アンカーボルトを引き抜く方向に前記ピストンロッド部を引っ張る油圧ジャッキ部と、
前記油圧ジャッキ部に接続された油圧計と、
前記シリンダ部に基端部が直接又は別部材を介して固定され前記壁面に先端部が当接される支柱部材と、
前記支柱部材の先端部側に固定され前記スリーブの端部に直接又は別部材を介して当接して前記スリーブを支持可能な反力板とを備え、
前記アンカーボルトの引き抜き試験を行う際に、前記力板が、前記スリーブの支持を解除可能であると共に、前記油圧ジャッキ部が、前記スリーブの支持が解除された状態で前記アンカーボルトを引き抜く方向に前記ピストンロッド部を引っ張って前記アンカーボルトを引っ張ることを特徴とする引き抜き試験機。
【請求項2】
請求項1に記載の引き抜き試験機において、
前記スリーブの端部に当接状態で前記反力板と前記スリーブとの間に配されるスペーサを備えていることを特徴とする引き抜き試験機。
【請求項3】
請求項2に記載の引き抜き試験機において、
前記スペーサが、前記アンカーボルトと前記アタッチメントとが連結された状態のまま前記反力板と前記スリーブとの間から退避可能であることを特徴とする引き抜き試験機。
【請求項4】
請求項3に記載の引き抜き試験機において、
前記スペーサの一端部が、前記反力板に回動可能に支持され、前記スペーサの他端部が、前記回動により前記反力板と前記スペーサとの間に進退可能であることを特徴とする引き抜き試験機。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか一項に記載の引き抜き試験機において、
前記反力板と前記スペーサとの間に配されて前記スペーサに当接可能であると共に、前記アンカーボルトと前記アタッチメントとが連結された状態のまま前記反力板と前記スペーサとの間から退避可能であるスペーサ支持部材を備えていることを特徴とする引き抜き試験機。
【請求項6】
請求項5に記載の引き抜き試験機において、
前記スペーサ支持部材の一端部が、前記反力板に回動可能に支持され、前記回動により他端部が前記反力板と前記スペーサとの間に進退可能であることを特徴とする引き抜き試験機。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の引き抜き試験機において、
前記アンカーボルトが、ジェットファンを固定するためのアンカーボルトであることを特徴とする引き抜き試験機。
【請求項8】
壁面の孔にスリーブと前記スリーブ内に挿入されたアンカーボルトとを埋め込む工程と、
埋め込まれた前記アンカーボルトの突出端部に請求項1から7のいずれか一項に記載の引き抜き試験機の前記アタッチメントを連結する工程と、
前記引き抜き試験機の前記アタッチメントに先端が接続された前記ピストンロッド部を前記油圧ジャッキ部により引っ張ると共に前記スリーブの端部に直接又は別部材を介して前記引き抜き試験機の前記反力板を当接させて前記スリーブを支持する引き抜き抵抗力発現工程と、
前記引き抜き抵抗力発現工程後に前記反力板により前記スリーブの支持を解除して前記アンカーボルトを引き抜く方向に引っ張って引き抜き試験を行う試験工程とを有していることを特徴とする引き抜き試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジェットファン等を吊り下げる金具として用いられるアンカーボルトの引き抜き力試験を行う引き抜き試験機及び引き抜き試験方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トンネル等の壁面にはジェットファンやブースターファンが吊り下げ固定されているが、これらの吊り下げる金具用のアンカーボルトは、許容荷重に十分に耐えうる引張耐力を有しているかの全数引き抜き試験が課せられている。
この引き抜き試験は、従来、油圧ジャッキやナット及びシャフト等を用いて行っている。例えば、特許文献1には、複数の支柱に支持され、被引張部材に連結した連結部材を介して下端が接続されたシャフトと、このシャフトに螺着された負荷ナットとを備えた引張試験機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-185769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の技術において、以下の課題が残されている。
従来、トンネル等の壁面にスリーブとスリーブに挿通させたアンカーボルトとを埋め込んで施工するが、アンカーボルトをセットした後に引き抜き試験を行うため、アンカーボルトが挿通されたスリーブの先端が開き難く、引き抜き抵抗力発現までにはアンカーボルト全体が抜けてくる現象がある。その際、スリーブが壁面から飛び出ると吊り下げ金具が所定の位置に設置できなかったり、壁面と面接触できなかったりと吊り下げ金具の強度性能に影響を及ぼしてしまう不都合があった。
【0005】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたもので、スリーブが飛び出てしまうことを抑制し、スリーブ先端を開かせて引き抜き抵抗力を発現させることができる引き抜き試験機及び引き抜き試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明に係る引き抜き試験機は、壁面の孔に埋め込まれたスリーブ内に挿入されたアンカーボルトの突出端部に連結可能なアタッチメントと、前記アタッチメントに先端が接続されたピストンロッド部と前記ピストンロッド部の基端に接続されたピストン部と前記ピストン部が内部で進退可能なシリンダ部とを備え前記アンカーボルトを引き抜く方向に前記ピストンロッド部を引っ張る油圧ジャッキ部と、前記シリンダ部に基端部が直接又は別部材を介して固定され前記壁面に先端部が当接される支柱部材と、前記支柱部材の先端部側に固定され前記スリーブの端部に直接又は別部材を介して当接して前記スリーブを支持可能な反力板とを備えていることを特徴とする。
【0007】
この引き抜き試験機では、シリンダ部に基端部が固定され壁面に先端部が当接される支柱部材と、支柱部材の先端部側に固定されスリーブの端部に直接又は別部材を介して当接してスリーブを支持可能な反力板とを備えているので、油圧ジャッキ部によりアンカーボルトを引き抜く方向に引っ張ると同時にシリンダ部及び支柱部材を介して力板又は上記別部材が、スリーブを壁面に押し込む方向に押圧する。したがって、アンカーボルトの引き抜き抵抗力発現作業時にスリーブが壁面から飛び出ることを抑制できる。すなわち、反力板の反力によりスリーブの移動が規制されると共に、引っ張られるアンカーボルトの太い先端部がスリーブの先端部にくい込むことで、スリーブの先端部が塑性変形して外側に開くことができ、引き抜き抵抗力を発現させることができる。そして、引き抜き抵抗力発現後、引き抜き試験を行う際には、力板又は上記別部材をスリーブの端部から離間させる又は取り外すことで、スリーブに反力を加えずにアンカーボルトの引き抜き試験を行って引き抜き力を測定することができる。
【0008】
第2の発明に係る引き抜き試験機は、第1の発明において、前記スリーブの端部に当接状態で前記反力板と前記スリーブとの間に配されるスペーサを備えていることを特徴とする。
すなわち、この引き抜き試験機では、スリーブの端部に当接状態で反力板とスリーブとの間に配されるスペーサを備えているので、反力板とスリーブとの間に隙間がある場合、スペーサを上記別部材として介在させることで、スペーサを介してスリーブの突出を抑えることができる。
【0009】
第3の発明に係る引き抜き試験機は、第2の発明において、前記スペーサが、前記反力板と前記スリーブとの間から退避可能であることを特徴とする。
すなわち、この引き抜き試験機では、スペーサが、反力板とスリーブとの間から退避可能であるので、引き抜き抵抗力発現作業時にはスペーサを介してスリーブを支持し、引き抜き試験時にはスペーサを退避させることで、スリーブに反力を加えずに容易にアンカーボルトの引き抜き試験を行うことができる。また、装置全体を取り外すことなく、少ない作業量で引き抜き力を測定することができる。
【0010】
第4の発明に係る引き抜き試験機は、第3の発明において、前記スペーサの一端部が、前記反力板に回動可能に支持され、前記スペーサの他端部が、前記回動により前記反力板と前記スペーサとの間に進退可能であることを特徴とする。
すなわち、この引き抜き試験機では、スペーサの一端部が、反力板に回動可能に支持され、スペーサの他端部が、回動により反力板とスペーサとの間に進退可能であるので、スペーサを回動させることで、容易にスリーブ端部との当接及びスリーブ端部からの退避を行うことができる。
【0011】
第5の発明に係る引き抜き試験機は、第2から第4の発明のいずれかにおいて、前記反力板と前記スペーサとの間に配されて前記スペーサに当接可能であると共に、前記アンカーボルトと前記アタッチメントとが連結された状態のまま前記反力板と前記スペーサとの間から退避可能であるスペーサ支持部材を備えていることを特徴とする。
すなわち、この引き抜き試験機では、反力板とスペーサとの間に配されてスペーサに当接可能であると共に、反力板とスペーサとの間から退避可能であるスペーサ支持部材を備えているので、引き抜き抵抗力発現作業時にはスペーサ支持部材によりスペーサを支持すると共に、引き抜き試験時にはスペーサ支持部材を退避させることでスペーサもスリーブから離間・退避させることができる。
【0012】
第6の発明に係る引き抜き試験機は、第5の発明において、前記スペーサ支持部材の一端部が、前記反力板に回動可能に支持され、前記回動により他端部が前記反力板と前記スペーサとの間に進退可能であることを特徴とする。
すなわつ、この引き抜き試験機では、スペーサ支持部材の一端部が、反力板に回動可能に支持され、回動により他端部が反力板とスペーサとの間に進退可能であるので、容易にスペーサの支持及びスペーサからの退避を行うことができる。
【0013】
第7の発明に係る引き抜き試験機は、第1から第6の発明のいずれかにおいて、前記アンカーボルトが、ジェットファンを固定するためのアンカーボルトであることを特徴とする。
すなわち、この引き抜き試験機では、アンカーボルトが、ジェットファンを固定するためのアンカーボルトであるので、トンネル等の壁面に施工されたアンカーボルトについてスリーブが壁面から飛び出ることを抑制しつつ引張試験を行うことができる。
【0014】
第8の発明に係る引き抜き試験方法は、壁面の孔にスリーブと前記スリーブ内に挿入されたアンカーボルトとを埋め込む工程と、埋め込まれた前記アンカーボルトの突出端部に第1から第7の発明のいずれかの引き抜き試験機の前記アタッチメントを連結する工程と、前記引き抜き試験機の前記アタッチメントに先端が接続された前記ピストンロッド部を前記油圧ジャッキ部により引っ張ると共に前記スリーブの端部に直接又は別部材を介して前記引き抜き試験機の前記反力板を当接させて前記スリーブを支持する引き抜き抵抗力発現工程と、前記引き抜き抵抗力発現工程後に前記反力板により前記スリーブの支持を解除して前記アンカーボルトを引き抜く方向に引っ張って引き抜き試験を行う試験工程とを有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明の引き抜き試験機及び引き抜き試験方法によれば、シリンダ部に基端部が固定され壁面に先端部が当接される支柱部材と、支柱部材の先端部側に固定されスリーブの端部に直接又は別部材を介して当接してスリーブを支持可能な反力板とを用いるので、アンカーボルトの引き抜き抵抗力発現作業時にスリーブが壁面から飛び出ることを抑制できる。そして、引き抜き試験を行う際には、力板又は上記別部材をスリーブの端部から離間させる又は取り外すことで、スリーブに反力を加えずにアンカーボルトの引き抜き試験を行って引き抜き力を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る引き抜き試験機及び引き抜き試験方法の第1実施形態において、引き抜き試験機を示す断面図である。
図2】本発明に係る引き抜き試験機及び引き抜き試験方法の第2実施形態において、引き抜き試験機の要部を示す斜視図である。
図3】第2実施形態において、反力板及びスペーサ支持部材を示す平面図である。
図4】第2実施形態において、引き抜き抵抗力発現作業時の断面図である。
図5】第2実施形態において、引き抜き試験時の断面図である。
図6】本発明に係る引き抜き試験機及び引き抜き試験方法の第3実施形態において、引き抜き抵抗力発現作業時の断面図である。
図7】第3実施形態において、引き抜き試験時の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明における引き抜き試験機及び引き抜き試験方法の第1実施形態を、図1に基づいて説明する。
【0018】
本実施形態における引き抜き試験機1は、トンネル等の壁面にジェットファンを取り付け固定する吊り下げ金具用のアンカーボルトについて引き抜き試験を行う試験機であって、図1に示すように、壁面W中に穿孔した孔に埋め込まれたスリーブ2内に挿入されたアンカーボルト3の突出端部に連結可能なアタッチメント4と、アタッチメント4に先端が接続されたピストンロッド部5aとピストンロッド部5aの基端に接続されたピストン部5bとピストン部5bが内部で進退可能なシリンダ部5cとを備えアンカーボルト3を引き抜く方向にピストンロッド部5aを引っ張る油圧ジャッキ部5と、シリンダ部5cに基端部が直接又は別部材を介して固定され壁面Wに先端部が当接される支柱部材6と、支柱部材6の先端部側に固定されスリーブ2の端部に直接又は別部材(支持板6a)を介して当接してスリーブ2を支持可能な反力板7とを備えている。
【0019】
また、本実施形態の引き抜き試験機1は、スリーブ2の端部に当接状態で反力板7とスリーブ2との間に配されるスペーサ8を備えている。
さらに、本実施形態の引き抜き試験機1は、反力板7とスペーサ8との間に配されてスペーサ8に当接可能であるスペーサ支持部材9を備えている。
すなわち、本実施形態では、力板7が別部材としてスペーサ支持部材9及びスペーサ8を介してスリーブ2の端部に当接してスリーブ2を支持可能である。
【0020】
上記アタッチメント4は、アンカーボルト3の突出端部に形成された雄ねじ部に螺着可能な雌ねじ孔を有している。
上記アンカーボルト3は、壁面W内に埋め込まれた先端部が先端に向かって漸次太くなるテーパ形状とされている。また、アンカーボルト3の少なくとも先端部には雄ねじ部が形成されており、アタッチメント4に形成された雌ねじ部(図示略)に螺着される。
上記スリーブ2は、壁面W内に埋め込まれた先端部にスリット2aが形成されて先割れ形状とされている。
【0021】
上記反力板7は、中央にアンカーボルト3が挿通可能な貫通孔7aが形成され、両端部に一対の支柱部材6の先端部が挿通状態で固定される一対の第1取付孔7bが形成されている。
なお、支柱部材6の先端部は雄ねじ部とされ、第1取付孔7bに挿通させた状態で、ナットと螺着させて反力板7に固定される。
上記スペーサ8は、反力板7とスリーブ2との間に配されアンカーボルト3が挿通可能な筒状又は円環状の部材である。
上記スペーサ支持部材9は、アンカーボルト3が挿通可能でスペーサ8に当接する円環状の部材であり、反力板7上に設置されている。
【0022】
上記油圧ジャッキ部5には、油圧ポンプ10が接続配管10aを介して接続されており、接続配管10aには圧力計11が接続されている。
油圧ジャッキ部5のシリンダ部5c上には、支持板6aを介して一対の支柱部材6の基端部が固定されている。
すなわち、支持板6aの中央下面にシリンダ部5cの上部が溶接等で接合、固定され、支持板6の両端には、一対の支柱部材6の基端部が固定されている。
【0023】
なお、一対の支柱部材6の基端部は雄ねじ部とされ、支持板6の両端に形成された一対の第2取付孔6bに挿通させた状態で、ナットと螺着させて支持板6に固定されている。
上記アンカーボルト3は、反力板7に形成された貫通孔7aに挿通された状態でアタッチメント4に連結される。
【0024】
本実施形態の引き抜き試験機1を用いてアンカーボルト3の引き抜き試験を行う場合について説明する。
まず、アンカーボルト3の突出端部をスペーサ8,スペーサ支持部材9及び反力板7の貫通孔7aにこの順で挿通させ、この突出端部をアタッチメント4に連結する。
さらに、スペーサ8をスリーブ2の端部に当接させた状態で、一対の支柱部材6の先端部を壁面Wに当接させる。
【0025】
また、このときスペーサ8と反力板7との間にスペーサ支持部材9が配される。
この状態で、油圧ポンプ10により油圧ジャッキ部5を操作し、アタッチメント4に連結されているアンカーボルト3を壁面Wから引き抜く方向に引っ張ると、テーパ形状のアンカーボルト3の先端部がスリーブ2の先端部にくい込んでスリット2aを拡げるようにしてスリーブ2の先端部外径が拡がる。
【0026】
すなわち、スリーブ2の先端部が拡径されて壁面Wに対して強い引き抜き抵抗力が発現する。
また、スリーブ2は、アンカーボルト3が引っ張られると一緒に壁面Wから突出する方向に引っ張られるが、反力板7により支持されたスペーサ8及びスペーサ支持部材9によってスリーブ2が押さえられ、その移動が制限されているため、壁面Wからの突出が抑制される。
【0027】
上記引き抜き抵抗力発現後、油圧ジャッキ部5の圧力を抜いてアンカーボルト3を引き抜く方向に引っ張る力を除去した後、一旦アンカーボルト3とアタッチメント4との連結を外し、さらにスペーサ8又はスペーサ支持部材9を取り外してスリーブ2の押さえを解除する。
スリーブ2の押さえを解除した状態で、アンカーボルト3とアタッチメント4とを再び連結し、油圧ジャッキ部5によりアンカーボルト3を引っ張ることでアンカーボルト3の引き抜き力測定を行うことができる。
【0028】
このように本実施形態の引き抜き試験機1は、シリンダ部5cに基端部が固定され壁面Wに先端部が当接される支柱部材6と、支柱部材6の先端部側に固定されスリーブ2の端部に直接又は別部材を介して当接してスリーブ2を支持可能な反力板7とを備えているので、油圧ジャッキ部5によりアンカーボルト3を引き抜く方向に引っ張ると同時にシリンダ部5c及び支柱部材6を介して力板7又は上記別部材が、スリーブ2を壁面に押し込む方向に押圧する。
【0029】
したがって、アンカーボルト3の引き抜き抵抗力発現作業時にスリーブ2が壁面Wから飛び出ることを抑制できる。すなわち、反力板7の反力によりスリーブ2の移動が規制されると共に、引っ張られるアンカーボルト3の太い先端部がスリーブ2の先端部にくい込むことで、スリーブ2の先端部が塑性変形して外側に開くことができ、引き抜き抵抗力を発現させることができる。
【0030】
そして、引き抜き抵抗力発現後、引き抜き試験を行う際には、力板7又は上記別部材(スペーサ8及びスペーサ支持部材9)をスリーブ2の端部から離間させる又は取り外すことで、スリーブ2に反力を加えずにアンカーボルト3の引き抜き試験を行って引き抜き力を測定することができる。
また、スリーブ2の端部に当接状態で反力板7とスリーブ2との間に配されるスペーサ8を備えているので、反力板7とスリーブ2との間に隙間がある場合、スペーサ8を上記別部材として介在させることで、スペーサ8を介してスリーブ2の突出を抑えることができる。
【0031】
次に、本発明に係る引き抜き試験機及び引き抜き試験方法の第2及び第3実施形態について、図2から図7を参照して以下に説明する。なお、以下の各実施形態の説明において、上記実施形態において説明した同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0032】
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、スペーサ支持部材9が円環状であり、引っ張り試験時には取り外していたのに対し、第2実施形態の引き抜き試験機21では、図2から図5に示すように、スペーサ支持部材29が一対設けられ、引っ張り試験時には反力板27とスペーサ28との間から退避可能である点である。
すなわち、第2実施形態の引き抜き試験機21は、反力板27とスペーサ28との間に配されてスペーサ28に当接可能であると共に、アンカーボルト3とアタッチメント4とが連結された状態のまま反力板27とスペーサ28との間から退避可能であるスペーサ支持部材29を備えている。
【0033】
第2実施形態のスペーサ支持部材29の一端部は、反力板27に回動可能に支持され、回動により他端部29aが反力板27とスペーサ28との間に進退可能とされている。
すなわち、第2実施形態では、板部材であるスペーサ支持部材29が反力板27上に一対設けられている。
一対のスペース支持部材29は、一端部側の回動軸29cを中心に回動可能になっており、半円形状とされた他端部29aがアンカーボルト3を挟むようにして反力板27とスペーサ28との間に配されると共に、回動により反力板27とスペーサ28との間から離間可能とされている。
また、反力板27の貫通孔27aは、スペーサ28が挿通可能な直径に設定されている。
【0034】
本実施形態の引き抜き試験機21を用いてアンカーボルト3の引き抜き試験を行う場合、図4に示すように、スペーサ28をスリーブ2の端部に当接させた状態で一対のスペーサ支持部材29を回動させ他端部29aをアンカーボルト3を挟むようにしてスペーサ28と反力板27との間に配する。
この状態で、第1実施形態と同様に引き抜き力を発現させる。
【0035】
上記引き抜き力発現後、図3に示すように、一対のスペーサ支持部材29を回動させて他端部をスペーサ28と反力板27との間から退避させ、さらに貫通孔27a内を通してスペーサ28を反力板27下方のアタッチメント4側まで移動、退避させる。
この状態で、油圧ジャッキ部5によりアンカーボルト3を引っ張ることでアンカーボルト3の引き抜き力測定を行うことができる。
【0036】
このように第2実施形態の引き抜き試験機21では、反力板27とスペーサ28との間に配されてスペーサ28に当接可能であると共に、反力板27とスペーサ28との間から退避可能であるスペーサ支持部材29を備えているので、引き抜き抵抗力発現作業時にはスペーサ支持部材29によりスペーサ28を支持すると共に、引き抜き試験時にはスペーサ支持部材29を退避させることでスペーサ28もスリーブ2から離間・退避させることができる。
【0037】
特に、スペーサ支持部材29の一端部が、反力板27に回動可能に支持され、回動により他端部29aが反力板27とスペーサ28との間に進退可能であるので、容易にスペーサ28の支持及びスペーサ28からの退避を行うことができる。
また、スペーサ28が、反力板27とスリーブ2との間から退避可能であるので、引き抜き抵抗力発現作業時にはスペーサ28を介してスリーブ2を支持し、引き抜き試験時にはスペーサ28を退避させることで、スリーブ2に反力を加えずに容易にアンカーボルト3の引き抜き試験を行うことができる。
このように装置全体を取り外すことなく、少ない作業量で引き抜き力を測定することができる。
【0038】
次に、第3実施形態と第2実施形態との異なる点は、第2実施形態では、スリーブ支持部材29が回動してスペーサ28を退避可能にしているのに対し、第3実施形態の引き抜き試験機31では、図6及び図7に示すように、一対のスペーサ38の一端部が、反力板7に回動可能に支持され、スペーサ38の他端部38aが、回動により反力板7とスリーブ2との間に進退可能である点である。
【0039】
すなわち、第3実施形態では、スペーサ支持部材が無く、一対のスペーサ38自身が回動可能になっており、反力板27とスリーブ2との間から退避可能になっている。
一対のスペーサ38は、一端部が支柱部材6の先端部を回動軸として回動可能に支持されており、第2実施形態のスペーサ支持部材29の他端部29aと同様に他端部38aが半円形状とされ、図6に示すように、引き抜き抵抗力発現作業時にはアンカーボルト3を挟みようにして反力板7とスリーブ2との間に配される。
【0040】
また、引き抜き試験時には、図7に示すように、一対のスペーサ38を回動させて他端部38aをスリーブ2と反力板7との間から退避させ、この状態で、油圧ジャッキ部5によりアンカーボルト3を引っ張ることでアンカーボルト3の引き抜き力測定を行うことができる。
【0041】
このように第3実施形態の引き抜き試験機21では、スペーサ38の一端部が、反力板7に回動可能に支持され、スペーサ38の他端部38aが、回動により反力板7とスリーブ2との間に進退可能であるので、スペーサ38を回動させることで、容易にスリーブ2の端部との当接及びスリーブ2の端部からの退避を行うことができる。
また、第3実施形態では、スペーサ支持部材が不要になり、部品点数を削減することができる。
【0042】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述したように、スペーサを介して反力板でスリーブを支持することが好ましいが、反力板自体をスリーブに当接させ反力板自体でスリーブを支持しても構わない。
また、上記各実施形態の引き抜き試験機では、一対の支柱部材を備えているが、3以上の支柱部材を設け、これらの支柱部材に対応した反力板としても構わない。
【符号の説明】
【0043】
1,21,31…引き抜き試験機、2…スリーブ、3…アンカーボルト、4…アタッチメント、5…油圧ジャッキ部、5a…ピストンロッド部、5b…ピストン部、5c…シリンダ部、6…支柱部材、7,27…反力板、8,28,38…スペーサ、9,29…スペーサ支持部材、10…油圧ポンプ、11…圧力計、W…壁面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7