(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】吊り足場設備および吊り足場運用方法
(51)【国際特許分類】
E01D 22/00 20060101AFI20240401BHJP
E04G 3/30 20060101ALI20240401BHJP
E04G 3/32 20060101ALI20240401BHJP
E04G 5/08 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
E01D22/00 A
E04G3/30 301N
E04G3/32 A
E04G5/08 P
(21)【出願番号】P 2020112646
(22)【出願日】2020-06-30
【審査請求日】2023-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000222668
【氏名又は名称】東洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】谷田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】山本 健太
(72)【発明者】
【氏名】川上 幸一
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-102468(JP,A)
【文献】特開2001-323415(JP,A)
【文献】特開昭62-268464(JP,A)
【文献】特開2003-232011(JP,A)
【文献】特開2015-229850(JP,A)
【文献】特開2012-077578(JP,A)
【文献】特開2005-111543(JP,A)
【文献】実公昭47-034191(JP,Y1)
【文献】特許第6018691(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 22/00
E04G 3/30
E04G 3/32
E04G 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水域の上方に設置された構築物から吊らされ、前記構築物の下方に配設された吊り足場と、
前記吊り足場を昇降させる昇降手段と、
前記吊り足場が第1の高さのときに、前記吊り足場を支持する支持手段と、を備え、
前記支持手段が、上端部が前記構築物の下面に固定され、下端部が前記吊り足場に固定されている複数の吊りチェーンを含み、
前記吊り足場に作業者が乗って作業を行う作業時には、前記昇降手段によって前記吊り足場を
前記第1の高さに配設可能で、前記作業時以外の所定時には、前記昇降手段によって前記吊り足場を前記第1の高さよりも前記構築物側に近い第2の高さに配設可能となっている、
ことを特徴とする吊り足場設備。
【請求項2】
前記吊り足場は、孔の占有率が非孔部よりも大きい多孔板で構成されている、
ことを特徴とする請求項
1に記載の吊り足場設備。
【請求項3】
前記昇降手段を複数備え、複数の前記昇降手段を同時に起動可能となっている、
ことを特徴とする請求項1
または2のいずれか1項に記載の吊り足場設備。
【請求項4】
水域の上方に設置された構築物の下方に配設され昇降自在な吊り足場を、前記吊り足場に作業者が乗って作業を行う作業時には第1の高さに配設し、前記作業時以外の所定時には前記第1の高さよりも前記構築物側に近い第2の高さに配設する
吊り足場運用方法であって、
前記吊り足場が、上端部が前記構築物の下面に固定され、下端部が前記吊り足場に固定されている複数の吊りチェーンによって、前記第1の高さに支持される、
ことを特徴とする吊り足場運用方法。
【請求項5】
前記吊り足場を昇降させる昇降手段を複数備える場合に、複数の前記昇降手段を同時に起動させる、
ことを特徴とする請求項
4に記載の吊り足場運用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
護岸設備などを工事する際に使用する吊り足場設備およびその運用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、海域沿岸部の土木構築物である桟橋・護岸設備を新設したり改修・修繕したりする工事においては、仮設工として吊り足場を桟橋から吊って桟橋の下側に配置する必要が生じる場合がある。この際、吊り足場の設置高さは、周辺海域の海象条件に基づいて海面から所定の高さ以上になり、かつ、吊り足場に乗って作業ができるように設定されている。
【0003】
一方、吊り足場を容易に橋梁に架設できる、という吊り足場の架設方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この架設方法は、フロート付き吊り足場を橋梁の下方まで水上に浮かべて移動させ、フロート付き吊り足場を水面から橋梁裏面に向かって引き上げて、フロート付き吊り足場を橋梁に固定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、吊り足場を設置した後に、台風などの荒天によって海象が荒れた場合、高潮や波浪、強風などの影響で吊り足場が損傷し、その復旧に多大な労力と時間、費用を要することがあった。このような損傷を防ぐには、荒天が予測される場合に予め吊り足場を撤去する必要があったが、その撤去と再設置に多大な労力と時間、費用を要していた。また、特許文献1に記載の架設方法においても、フロート付き吊り足場を吊り下げて橋梁に固定するため、フロート付き吊り足場の高さが常に作業ができる高さのままであり(海面に近いため)、海象が荒れた場合、フロート付き吊り足場が損傷してしまうおそれがある。
【0006】
そこでこの発明は、海象が荒れたりしても吊り足場の損傷を防止、抑制可能な吊り足場設備および吊り足場運用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、水域の上方に設置された構築物から吊らされ、前記構築物の下方に配設された吊り足場と、前記吊り足場を昇降させる昇降手段と、前記吊り足場が第1の高さのときに、前記吊り足場を支持する支持手段と、を備え、前記支持手段が、上端部が前記構築物の下面に固定され、下端部が前記吊り足場に固定されている複数の吊りチェーンを含み、前記吊り足場に作業者が乗って作業を行う作業時には、前記昇降手段によって前記吊り足場を前記第1の高さに配設可能で、前記作業時以外の所定時には、前記昇降手段によって前記吊り足場を前記第1の高さよりも前記構築物側に近い第2の高さに配設可能となっている、ことを特徴とする吊り足場設備である。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の吊り足場設備において、前記吊り足場は、孔の占有率が非孔部よりも大きい多孔板で構成されている、ことを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の吊り足場設備において、前記昇降手段を複数備え、複数の前記昇降手段を同時に起動可能となっている、ことを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、水域の上方に設置された構築物の下方に配設され昇降自在な吊り足場を、前記吊り足場に作業者が乗って作業を行う作業時には第1の高さに配設し、前記作業時以外の所定時には前記第1の高さよりも前記構築物側に近い第2の高さに配設する吊り足場運用方法であって、前記吊り足場が、上端部が前記構築物の下面に固定され、下端部が前記吊り足場に固定されている複数の吊りチェーンによって、前記第1の高さに支持される、ことを特徴とする吊り足場運用方法である。
【0012】
請求項5の発明は、請求項4に記載の吊り足場運用方法において、前記吊り足場を昇降させる昇降手段を複数備える場合に、複数の前記昇降手段を同時に起動させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、作業時以外の所定時には、昇降手段によって吊り足場を第1の高さよりも構築物側に近い第2の高さ、つまり、水面からより離れた高さに配設可能となっている。このため、例えば、1日の作業が終了した後に(所定時に)、吊り足場を構築物側に近い第2の高さに配設することで、たとえ海象が荒れたりしても、高潮や波浪、強風などの影響で吊り足場が損傷するのを防止、抑制することが可能となる。この結果、その復旧に要する労力と時間、費用を削減することが可能となる。
【0014】
請求項1の発明によれば、吊り足場が第1の高さのとき、つまり、吊り足場に作業者が乗って作業を行う作業時には、支持手段で吊り足場が支持されるため、吊り足場上で安定して作業を行うことが可能となる。
【0015】
請求項2の発明によれば、多孔板で吊り足場が構成されているため、吊り足場が海水などから受ける水圧が緩和され、吊り足場が損傷するのをより防止、抑制することが可能となる。また、多孔板で吊り足場が構成されているため、吊り足場を軽量化することが可能となり、さらに、吊り足場を昇降させる昇降手段を簡易化、軽量用化することが可能となる。
【0016】
請求項3の発明によれば、複数の昇降手段を同時に起動可能なため、複数の昇降手段で同時に吊り足場を昇降させることができ、偏りなどなく適正(平行)に安定して吊り足場を昇降させることが可能となる。
【0017】
請求項4の発明によれば、作業時以外の所定時には、吊り足場を第1の高さよりも構築物側に近い第2の高さ、つまり、水面からより離れた高さに配設する。このため、請求項1の発明と同様に、例えば、1日の作業が終了した後に(所定時に)、吊り足場を構築物側に近い第2の高さに配設することで、たとえ海象が荒れたりしても、高潮や波浪、強風などの影響で吊り足場が損傷するのを防止、抑制することが可能となる。この結果、その復旧に要する労力と時間、費用を削減することが可能となる。
【0018】
請求項5の発明によれば、複数の昇降手段を同時に起動させるため、請求項3の発明と同様に、複数の昇降手段で同時に吊り足場を昇降させることができ、偏りなどなく適正(平行)に安定して吊り足場を昇降させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】この発明の実施の形態に係る吊り足場設備の作業時の状態を示す正面図である。
【
図2】
図1の吊り足場設備の吊り足場の枠体を示す平面図(a)と、枠体を吊るチェーンの配設位置を示す正面図(b)である。
【
図3】
図1の吊り足場設備のA-A断面図(ハッチング省略)である。
【
図4】
図1の吊り足場設備の吊り足場のエキスパンドパネルを示す平面図である。
【
図5】
図1の吊り足場設備のエキスパンドパネルの連結構造を示す図である。
【
図6】
図1の吊り足場設備の吊り足場の吊り状態を示す斜視図である。
【
図7】
図1の吊り足場設備の電動ホイスト周辺を示す側面図(a)と正面図(b)である。
【
図8】
図1の吊り足場設備の所定時の状態を示す正面図である。
【
図9】
図8のB-B断面図(ハッチング省略)である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0021】
図1~
図9は、この実施の形態を示し、
図1は、この実施の形態に係る吊り足場設備1の作業時の状態を示す正面図であり、
図8は、吊り足場設備1の作業時以外の所定時の状態を示す正面図である。この吊り足場設備1は、水域の上方に設置された構築物を工事等する際に作業者が乗るための足場設備であり、この実施の形態では、水域が海域Wで海域沿岸部に構築物である桟橋101が設置されている場合を例に、以下に説明する。
【0022】
ここで、桟橋101は、ドルフィン(大柱)102間にスラブ(主桁)103が架設され、スラブ103の中央部が中間柱104で支持されており、このような構造が連続して構成されている。また、スラブ103の長手方向の両側縁には、
図3に示すように、落下防止柵(手すり)103aが設けられている。
【0023】
吊り足場設備1は、主として、吊り足場2と、各種チェーン(支持手段)31、32と、電動ホイスト(昇降手段)4と、を備える。
【0024】
吊り足場2は、桟橋101から吊らされ、桟橋101の下方(スラブ103の真下)に配設されて作業者などが乗るための足場であり、枠体21とエキスパンドパネル(多孔板)22などから構成されている。枠体21は、
図2(a)に示すように、複数の単管(金属パイプ)211~213を格子板状に組み付けた枠であり、格子孔が略長方形となっている。この枠体21の平面の外輪郭は略長方形で、短尺方向の長さは、スラブ103の幅よりも長く設定され、長尺方向の長さは、この実施の形態では、ドルフィン102と中間柱104との間のスラブ103の長さよりもやや小さく設定されている。これに対して、複数の枠体21をスラブ103の長手方向に沿って、ドルフィン102と中間柱104との間に配設してもよい。また、枠体21の両長辺部には、
図3に示すように、枠体21の平面に対して垂直に立ち上がる手すり214が配設されている。
【0025】
エキスパンドパネル22は、
図4に示すように、孔22aの占有率が非孔部22bの占有率よりも大きい板で、この実施の形態では、千鳥状に切れ目が設けられた金属板を押し広げて、菱形や亀甲形の孔22aが形成された網状の板である。このエキスパンドパネル22の平面形状は枠体21の格子孔を塞ぐような略長方形で、複数のエキスパンドパネル22が連結されて枠体21の上面に配設されている。
【0026】
具体的には、隣接するエキスパンドパネル22の端部同士を単管211~213の上で重ねながら、複数のエキスパンドパネル22が枠体21の上に敷き詰められている。そして、
図5に示すように、エキスパンドパネル22の端部の重なり部に、単管211~213を挟むようにしてU字ボルト221の両ネジ部221aが挿入され、この両ネジ部221aにナット222が締め付けられている。これにより、複数のエキスパンドパネル22が隙間なく連結されながら、枠体21に取り付けられている。
【0027】
チェーン31、32は、変形自在な金属製の鎖で、吊り足場2が第1の高さのとき、つまり、吊り足場2に作業者が乗って作業を行う作業時に、吊り足場2を支持するものである。吊りチェーン31は、
図2(b)に示すように、略垂直方向に延びて吊り足場2を支持するチェーンであり、上端部がスラブ103の下面または後述する吊りチェーン架台5に固定・接続され、下端部が吊り足場2に固定されている。具体的には、
図2(a)、
図6に示す枠体21の中央部で長手方向に沿った第1の支持ポイントP1に下端部が固定された吊りチェーン31は、その上端部がスラブ103の下面に固定されている。また、枠体21の両長辺部側の第2の支持ポイントP2に下端部が固定された吊りチェーン31は、その上端部が吊りチェーン架台5に固定されている。
【0028】
この吊りチェーン31の長さ、つまり、作業時における吊り足場2の第1の高さは、吊り足場2に作業者が乗って適正に作業を行え、かつ、周辺海域の海象条件に基づいて平常時に、吊り足場2が海面から所定距離以上離れて安全が確保されるように設定されている。ここで、この発明における作業には、工事、点検、修理など、桟橋101に対して行うすべてのオペレーションを含む。また、吊りチェーン31の強度と配設数は、作業者が乗った吊り足場2を安定して支持できるように設定されている。
【0029】
振り止めチェーン32は、
図2(b)に示すように、吊り足場2が揺れるのを防止するチェーンであり、吊り足場2の両縁側(枠体21の両長辺部側)に配設されている。すなわち、上端部がドルフィン102または中間柱104の側面に固定・接続され、斜め下方に向かって下端部が吊り足場2の枠体21の中央部に固定されている。また、振り止めチェーン32の強度と配設数は、作業者が乗った吊り足場2が揺れるのを効果的に防止、抑制できるように設定されている。
【0030】
電動ホイスト4は、吊り足場2を昇降させる昇降機であり、スラブ103の長手方向に沿って複数配設されている。すなわち、
図1、
図3に示すように、スラブ103の両側面に所定の間隔で、複数の吊りチェーン架台5が連続的に配設されている。この吊りチェーン架台5は、この実施の形態では、断面がL字状のアングル材で構成され、
図7に示すように、垂直部51と、この垂直部51の上部に接続され略水平に延びる水平部52とを有する。垂直部51は、アンカーボルト53でスラブ103の側面に固定され、垂直部51と水平部52とは、斜めに延びる補強板54で連結されている。
【0031】
このような複数の吊りチェーン架台5のうち所定の吊りチェーン架台5に、電動ホイスト4が取り付けられている。すなわち、吊り足場2の大きさ、重量および電動ホイスト4の容量(昇降可能重量)などに基づいて、安定して吊り足場2を昇降できるように、電動ホイスト4の配設数、配設位置が設定されている。ここで、スラブ103を挟んで電動ホイスト4が対向するように、配設位置が設定されている。
【0032】
また、電動ホイスト4は、吊りチェーン架台5の水平部52に吊り下げられて取り付けられ、
図3に示すように、電動ホイスト4のロードチェーン41の先端部が、上述した枠体21の対向する第2の支持ポイントP2に接続されている。従って、電動ホイスト4が取り付けられていない吊りチェーン架台5の水平部52に、吊りチェーン31の上端部が固定され、その下端部が対向する第2の支持ポイントP2に固定されている。すなわち、一部の第2の支持ポイントP2にロードチェーン41が接続され、残りの第2の支持ポイントP2に吊りチェーン31が固定されている。
【0033】
このような電動ホイスト4はグループ化され、グループ化された複数の電動ホイスト4を同時に起動可能となっている。すなわち、この実施の形態では、1つの吊り足場2を昇降させるための複数(例えば、この実施の形態では4台)の電動ホイスト4を1グループとし、この複数の電動ホイスト4を1台のリモコン42で同時に制御可能となっている。具体的には、短距離無線システムにおいて1台のリモコン42と4台の電動ホイスト4をグループ化して、1台のリモコン42から4台の電動ホイスト4に対して同時に制御信号を送信できるようになっている。なお、リモコン42は、各電動ホイスト4を個別に起動制御できるようにもなっている。
【0034】
このような電動ホイスト4によって、作業時には吊り足場2を第1の高さに配設し、作業時以外の所定時には、吊り足場2を第1の高さよりもスラブ103側に近い第2の高さに配設できるようになっている。すなわち、作業前に電動ホイスト4で吊り足場2を降下させることで、
図1、
図3に示すように、吊り足場2の高さが第1の高さとなり、上記のように吊り足場2に作業者が乗って適正に作業を行えるようになる。ここで、電動ホイスト4には下限リミッターを備え、吊り足場2が第1の高さに達するとそれ以上降下できないようになっており、このとき、チェーン31、32も張った状態になって適正に吊り足場2を支持する。
【0035】
また、例えば、1日の作業が終了した後に(所定時に)、電動ホイスト4で吊り足場2を上昇させることで、
図8、
図9に示すように、吊り足場2が第1の高さよりもスラブ103側に近い第2の高さ、つまり、水面からより離れた高さに配設される。ここで、第2の高さとは、スラブ103の下面により近く、海象が荒れたりしても、高潮や波浪、強風などの影響で吊り足場2が損傷するのを防止、抑制可能な高さである。また、電動ホイスト4には上限リミッターを備え、吊り足場2が第2の高さに達するとそれ以上上昇せずにスラブ103に当たらないようになっており、このとき、チェーン31、32は緩んだ状態となる。
【0036】
次に、このような構成の吊り足場設備1の運用方法(吊り足場運用方法)について説明する。
【0037】
まず、吊り足場2に作業者が乗って作業を行う作業時には、上記のように、1台のリモコン42で4台の電動ホイスト4を同時に降下起動させて、吊り足場2を第1の高さまで降下させる。このような降下操作をすべての吊り足場2に対して行った後に、工事、点検などの作業を吊り足場2上で行う。
【0038】
また、例えば、1日の作業が終了した後や海象が荒れたため作業を中断する場合、あるいは荒天が予測される場合など(所定時)には、1台のリモコン42で4台の電動ホイスト4を同時に上昇起動させて、吊り足場2をスラブ103側に近い第2の高さまで上昇させる。このような上昇操作をすべての吊り足場2に対して行う。そして、再び作業を開始する場合には、同様にして吊り足場2を第1の高さまで降下させるものである。
【0039】
このような構成の吊り足場設備1および吊り足場運用方法によれば、作業時以外の所定時には、電動ホイスト4によって吊り足場2を第1の高さよりもスラブ103側に近い第2の高さ、つまり、水面からより離れた高さに配設可能となっている。このため、例えば、1日の作業が終了した後に(所定時に)、吊り足場2をスラブ103側に近い第2の高さに配設することで、たとえ台風などの荒天によって海象が荒れたりしても、高潮や波浪、強風などの影響で吊り足場2が損傷するのを、吊り足場2を撤去することなく防止、抑制することが可能となる。この結果、その復旧に要する労力と時間、費用を削減することが可能となる。
【0040】
また、吊り足場2が第1の高さのとき、つまり、吊り足場2に作業者が乗って作業を行う作業時には、チェーン31、32で吊り足場2が支持されるため、吊り足場2上で安定して作業を行うことが可能となる。
【0041】
さらに、多くの孔を有するエキスパンドパネル22で吊り足場2が構成されているため、吊り足場2が海水などから受ける水圧が緩和され、吊り足場2が損傷するのをより防止、抑制することが可能となる。また、エキスパンドパネル22で吊り足場2が構成されているため、吊り足場2を軽量化することが可能となり、さらに、吊り足場2を昇降させる電動ホイスト4を簡易化、軽量用化(軽容量化)することが可能となる。
【0042】
また、複数の電動ホイスト4を同時に起動可能なため、複数の電動ホイスト4で同時に吊り足場2を昇降させることができ、偏りなどなく適正(平行)に安定して吊り足場2を昇降させることが可能となる。しかも、1台のリモコン42で複数の電動ホイスト4を起動制御できるため、電動ホイスト4の操作に要する人員を削減することができる。
【0043】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、水域が海域Wの場合について説明したが、水域が河川などであってもよく、また、構築物が桟橋101の場合について説明したが、その他の構造物であってもよい。さらに、複数の電動ホイスト4をグループ化して1台のリモコン42で同時に起動できるようにしているが、複数の操作者がそれぞれ1台の電動ホイスト4のリモコン42を持って、合図者の合図・誘導に従って複数の電動ホイスト4を同時に起動させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 吊り足場設備
2 吊り足場
21 枠体
22 エキスパンドパネル(多孔板)
31 吊りチェーン(支持手段)
32 振り止めチェーン(支持手段)
4 電動ホイスト(昇降手段)
42 リモコン
5 吊りチェーン架台
101 桟橋(構築物)
102 ドルフィン
103 スラブ
104 中間柱
W 海域(水域)