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▶ 矢崎総業株式会社の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/68 20110101AFI20240401BHJP
【FI】
H01R13/68
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022081355
(22)【出願日】2022-05-18
(65)【公開番号】P2023169972
(43)【公開日】2023-12-01
【審査請求日】2023-09-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 克哉
(72)【発明者】
【氏名】曽根 隆
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-41632(JP,A)
【文献】特開2014-107151(JP,A)
【文献】特開2015-5397(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体空間部を有する絶縁性の筐体と、
前記筐体を収容するシェル空間部を有するシールドシェルと、
前記シールドシェルの外部から前記筐体空間部に一部が配索される電線と、
前記筐体空間部に収容され、かつ前記筐体空間部で前記電線に対して電気的に接続されると共に、相手側コネクタ内の相手側コネクタ端子に対して電気的に接続されるコネクタ端子と、
前記筐体空間部で前記コネクタ端子と前記電線との間に電気的に接続され、かつ前記電線を流れる過電流により電流を遮断する遮断部材と、
前記筐体空間部で前記遮断部材と前記電線とを接触させることで前記遮断部材と前記電線とを電気的に接続させる締結部材及び被締結部材と、
絶縁性を有する固体の熱伝導部材と、を備え、
前記筐体は、
当該筐体の外面より前記筐体空間部に向けて凹み、かつ内側に前記熱伝導部材が充填される充填空間部を有する凹部を有し、
前記締結部材及び前記被締結部材のうち、一方が前記筐体に固定される固定部材であり、
前記固定部材は、少なくとも一部が前記充填空間部に露出する露出面を有し、
前記熱伝導部材は、
当該熱伝導部材が前記充填空間部に充填された充填状態において、前記シールドシェルの内面と前記露出面に直接接触する、
ことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記シールドシェルは、
前記内面から前記シェル空間部に向けて突出する凸部を有し、
前記熱伝導部材は、
前記内面のうち、前記凸部に直接接触する、
請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記熱伝導部材は、
熱硬化性シリコンであり、前記露出面と前記凸部の頂面との間に充填され、かつ前記凹部の内周面と前記凸部の外周面との間に形成される隙間に充填される、
請求項2に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エアコン等の車載機器にバッテリー等の電源から電力を供給する電線の端末に設けられ、内部にヒューズ等の遮断部材を有するコネクタが知られている。このようなコネクタでは、例えば、遮断部材から生じた熱を放散させる必要がある。特許文献1では、複数のバスバーが積層されるバスバー基板と、ヒートシンク等の放熱部材とを備える回路構成体であって、複数のバスバーのうち、グランド接続用のバスバーが放熱部材に直接接触するように配される一方、グランド接続用のバスバー以外の他のバスバーは、絶縁性および伝熱性を有する絶縁伝熱部材を介して放熱部材に重ねられている。また、特許文献2のコネクタでは、ヒューズ本体を覆う放熱部材が筐体内に設けられており、この放熱部材の一部分を筐体に接触させることで、ヒューズの熱を外部に逃がしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-99071号公報
【文献】特開2018-41632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1のように、筐体のみであれば熱源であるグランド接続用のバスバーに放熱部材を直接接触させて放熱を行うことも可能であるが、筐体全体がシールドシェルで覆われているコネクタの場合、シールドシェルを使って放熱する必要がある。
【0005】
本発明は、遮断部材に生じた熱を、シールドシェルを介して容易に外部に放出することができるコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るコネクタは、筐体空間部を有する絶縁性の筐体と、前記筐体を収容するシェル空間部を有するシールドシェルと、前記シールドシェルの外部から前記筐体空間部に一部が配索される電線と、前記筐体空間部に収容され、かつ前記筐体空間部で前記電線に対して電気的に接続されると共に、相手側コネクタ内の相手側コネクタ端子に対して電気的に接続されるコネクタ端子と、前記筐体空間部で前記コネクタ端子と前記電線との間に電気的に接続され、かつ前記電線を流れる過電流により電流を遮断する遮断部材と、前記筐体空間部で前記遮断部材と前記電線とを接触させることで前記遮断部材と前記電線とを電気的に接続させる締結部材及び被締結部材と、絶縁性を有する固体の熱伝導部材と、を備え、前記筐体は、当該筐体の外面より前記筐体空間部に向けて凹み、かつ内側に前記熱伝導部材が充填される充填空間部を有する凹部を有し、前記締結部材及び前記被締結部材のうち、一方が前記筐体に固定される固定部材であり、前記固定部材は、少なくとも一部が前記充填空間部に露出する露出面を有し、前記熱伝導部材は、当該熱伝導部材が前記充填空間部に充填された充填状態において、前記シールドシェルの内面と前記露出面に直接接触する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るコネクタによれば、遮断部材に生じた熱を、シールドシェルを介して容易に外部に放出することができる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係るコネクタの斜視図である。
図2図2は、実施形態に係るコネクタの分解斜視図である。
図3図3は、実施形態における筐体の斜視図である。
図4図4は、実施形態に係るコネクタの第一断面図である。
図5図5は、実施形態に係るコネクタの第二断面図である。
図6図6は、実施形態に係るコネクタの要部の断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明に係る実施形態を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施形態により本発明が限定されるものではない。すなわち、以下の実施形態における構成要素には、いわゆる当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれ、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【0010】
[実施形態]
図1に示す本実施形態のコネクタ1は、所謂シールドコネクタと称されるものであり、相手側コネクタ100と接続することにより、相手側コネクタ100内の相手側コネクタ端子101に対して電気的に接続するものである。相手側コネクタ100は、例えば、自動車等の車両に搭載され、バッテリー等の電源から供給される電力により駆動する車載機器(例えば、エアコンディショナー)等に設けられている。コネクタ1は、筐体10と、シールドシェル20と、コネクタ端子30と、遮断部材40と、電線側締結機構81,端子側締結機構82と、熱伝導部材50,51とを備える。
【0011】
なお、以下の説明では、図示のX方向は、本実施形態におけるコネクタ1の第一方向である。Y方向は、本実施形態におけるコネクタ1の第一方向に直交する第二方向である。Z方向は、本実施形態におけるコネクタ1の第一方向及び第二方向に直交する第三方向である。第一方向は、例えば、コネクタ1の挿抜方向であり、延在方向でもある。第二方向は、例えば、コネクタ1の幅方向である。第三方向は、例えば、コネクタ1の上下方向である。第一方向、第二方向、及び第三方向は、相互に直交するものとする。第一方向~第三方向は、鉛直方向、鉛直方向と直交する水平方向に限られない。
【0012】
筐体10は、筐体空間部11dを有し、当該筐体空間部11dにコネクタ端子30と電線Weとの電気的な接続部分を収容するものである。筐体10は、合成樹脂等の絶縁性材料で成形される。筐体10は、第一方向における一方の機器側端部に筒状部10aを有する。筒状部10aは、相手側コネクタ100に嵌合される嵌合部15が組み付けられる。筒状部10aは、筐体10において突出させ且つ第一方向における一方の端部を開口させた筒状に形成されており、その開口が相手側コネクタ100側を向くように配置される。嵌合部15は、筒状部10aに組み付けられた状態でコネクタ端子30を内側に収容し、当該嵌合部15と相手側コネクタ100との嵌合に伴い、コネクタ端子30と相手側コネクタ端子101とを電気的に接続させる。筒状部10aの外周面には、筒状部10aと相手側コネクタ100との間の液密性を確保するための環状のパッキン16が配置されている。パッキン16は、嵌合部15と相手側コネクタ100とを嵌合させることによって、相手側コネクタ100の内周面にも密着し、相手側コネクタ100の内周面と筒状部10aの外周面との環状の空間を塞ぐ。筐体10は、筐体空間部11dと外部とを連通する筒状の電線引出部10bを2つ有している(図1及び図3)。電線Weは、シールドシェル20の外部から電線引出部10bを介して筐体空間部11dに一部が配索される。電線引出部10bは、コネクタ端子30毎に設けられている。筐体10は、複数の筐体部材に分けられた分割構造になっており、その各筐体部材を組み付けることで箱体として形成する。筐体10は、第1筐体部材としてのハウジング11と、第2筐体部材としてのカバー12と、を備える(図1図3)。
【0013】
ハウジング11は、第三方向における一方の端部に開口11aを有し、内側に筐体空間部11dが形成される。ハウジング11には、開口11aからコネクタ端子30、電線We、遮断部材40、及び熱伝導部材50,51等が収容される。ハウジング11は、第一方向における機器側端部から突出する筒状部10aと、第一方向における他方の電線側端部から突出する電線引出部10bとを有する。ハウジング11は、図3図6に示すように、当該ハウジング11のハウジング外面11bより筐体空間部11dに向けて凹む筐体凹部18,19を有する。筐体凹部18,19は、第二方向に配列され、かつ第三方向に延在して同一の深さを有する。筐体凹部18,19は、第三方向から見た場合、円形状を有する。筐体凹部18,19は、内側に熱伝導部材50,51が充填される充填空間部18c,19cを有する。筐体凹部18,19は、その底部を貫通し、かつ充填空間部18c,19cと筐体空間部11dとを連通する貫通孔18a,19aを有する。貫通孔18a,19aは、図3に示すように、第三方向から見た場合、円形状を有する。貫通孔18a,19aは、図5に示すように、ハウジング外面11bからハウジング内面11cまで第三方向に沿って傾斜することなく貫通している。
【0014】
カバー12は、ハウジング11の開口11aを塞ぐものである。カバー12は、開口12a側をハウジング11の開口11aから筐体空間部11dに挿入させることによって、ハウジング11に対して嵌合される。ハウジング11とカバー12との間には、その間の液密性を確保するための環状のパッキン13が配置されている。パッキン13は、カバー12の外周面に取り付けられており、ハウジング11とカバー12とを嵌合させることによって、ハウジング11の内周面にも密着し、ハウジング11の内周面とカバー12の外周面との環状の空間を塞ぐ。また、ハウジング11とカバー12との間には、互いの嵌合状態を保つためのロック構造14が複数箇所(ここでは4箇所)に設けられている(図2)。ロック構造14は、ハウジング11に設けた第1係合部14aと、カバー12に設けた第2係合部14bとを備えたものであり、これらを互いに係合させることによって、ハウジング11とカバー12との間の嵌合状態を保持させる。ロック構造14は、例えば、爪状の突出体と、この突出体が挿入されると共に、ハウジング11とカバー12との間の嵌合方向(第三方向)とは逆向きへの突出体の移動を係止する係止体(片体に貫通孔や溝を設けたもの)とで構成される。本実施形態では、ハウジング11の外周面に、第1係合部14aとしての爪状の突出体を突出させている。また、第2係合部14bとしては、カバー12に対して、その外周面から間隔を空けた位置に係止体を設けている。
【0015】
シールドシェル20は、筐体10を収容するシェル空間部20aを有する。シールドシェル20は、金属等の導電性材料で成形され、内側のコネクタ端子30や電線Weに対してのノイズの侵入を抑制する。シールドシェル20は、複数のシェル部材に分けられた分割構造になっており、その各シェル部材を組み付けることで箱体として形成する。シールドシェル20は、第一シェル部材21と第二シェル部材22とを備える(図1から図3)。
【0016】
第一シェル部材21は、第三方向における一方の端部に開口21aを有し、内側にシェル空間部20aが形成される。第一シェル部材21には、開口21aから筐体10が収容される。第一シェル部材21は、図1図2図4図6に示すように、シェル内面21cからシェル空間部20aに向けて突出するシェル凸部24,25を有する。第一シェル部材21は、シェル外面21bよりシェル空間部20aに向けて凹むシェル凹部24c,25cを有する。シェル凹部24cは、シェル凸部24に対応して形成され、シェル凹部25cは、シェル凸部25に対応して形成される。シェル凹部24c,25cの底部は、シェル外面21bの一部であるが、当該底部以外のシェル外面21bと比較して、当該底部と充填空間部18c,19cに充填された熱伝導部材50,51との距離が短い。シェル凸部24,25は、ハウジング11の筐体凹部18,19と同様に、第二方向に配列され、かつ第三方向に延在して同一の高さを有する。シェル凸部24,25は、第三方向から見た場合、円形状を有する。シェル凸部24,25は、シェル空間部20aに筐体10が完全に収容された完全収容状態において、ハウジング11の筐体凹部18,19に挿入される。具体的には、シェル凸部24が筐体凹部18に挿入され、シェル凸部25が筐体凹部19に挿入される。完全収容状態において、シェル凸部24の外周面24bと筐体凹部18の内周面18bとの間、及び、シェル凸部25の外周面25bと筐体凹部19の内周面19bとの間には、それぞれ隙間Sが形成される。これら隙間Sは、充填空間部18c,19cの一部である。シェル凸部24は、完全収容状態で、当該シェル凸部24の外周面24bが筐体凹部18の内周面18bに対して充填空間部18cの一部を介して対向する。同様に、シェル凸部25は、完全収容状態で、当該シェル凸部25の外周面25bが筐体凹部19の内周面19bに対して充填空間部19cの一部を介して対向する。
【0017】
第二シェル部材22は、第一シェル部材21の開口21aを塞ぐ平板を主体とするものである。第二シェル部材22は、筐体10が収容された第一シェル部材21の開口21aを塞ぐものである。第一シェル部材21と第二シェル部材22は、例えば、ネジ部材23で互いに結合される。
【0018】
コネクタ端子30は、金属等の導電性材料によって所定形状に成形される。本実施形態では、コネクタ1のコネクタ端子30を雌端子として成形し、相手側コネクタ端子101を雄端子として成形している。なお、コネクタ端子30と相手側コネクタ端子101は、互いに嵌合された上で物理的且つ電気的に接続されるものであるならば、その何れが雌端子であってもよく雄端子であってもよい。本実施形態では、2つのコネクタ端子30が設けられている。2つのコネクタ端子30の内の一方を第1コネクタ端子30Aと称し、他方を第2コネクタ端子30Bと称する。電線Weについては、第1コネクタ端子30Aに対して電気的に接続されるものを第1電線WeAと称し、第2コネクタ端子30Bに対して電気的に接続されるものを第2電線WeBと称する。本実施形態のコネクタ1では、第1コネクタ端子30Aと第1電線WeAとの電気的な接続が遮断部材40を介して直接的に行われる一方、第2コネクタ端子30Bと第2電線WeBとの電気的な接続が直接的なものとして行われる。例えば、第2コネクタ端子30Bは、第2電線WeBの端末の芯線に対して、圧着や溶着等の所定の接続形態で物理的且つ電気的に接続させる。
【0019】
遮断部材40は、図2図4及び図5に示すように、筐体空間部11dに収容される。遮断部材40は、筐体空間部11d内でコネクタ端子30と電線Weとの間に電気的に接続され、かつ電線Weを流れる過電流により電流を遮断するものである。遮断部材40は、第1コネクタ端子30Aと第1電線WeAとの間に電気的に接続される。遮断部材40としてヒューズを用いている。遮断部材40は、過電流により溶断する可溶体(不図示)が設けられた本体部41と、本体部41の一端(通電経路上の一端)に対して電気的に接続され、かつ、第1電線WeA側に電気的に接続された第1導体部42と、本体部41の他端(通電経路上の他端)に対して電気的に接続され、かつ、第1コネクタ端子30A側に電気的に接続された第2導体部43と、を有している(図2)。本体部41は、光の透過性を有する絶縁性材料で成形された円筒状の容器と、当該容器の内側に配置された可溶体とを備える。第1導体部42と第2導体部43は、金属等の導電性材料で円筒状に成形されたものであり、一方が本体部41の一端に配置され、他方が本体部41の他端に配置されている。また、第1導体部42と第2導体部43は、それぞれのコネクタ端子30の配列方向に沿って配置されている。
【0020】
遮断部材40は、更に、第1導体部42及び第1連結導体60に対して電気的に接続された第1連結部44と、第2導体部43及び第2連結導体70に対して電気的に接続された第2連結部45と有する(図2)。
【0021】
第1連結導体60は、第1電線WeAと第1導体部42とに対して各々物理的且つ電気的に接続させるものであり、その接続に伴い、第1電線WeAと第2導体部43とを電気的に接続させる。第1連結導体60は、金属等の導電性材料で成形された丸型端子61であり、第1電線WeAの端末の芯線に対して物理的且つ電気的に接続させる(図2)。その接続は、圧着や溶着等の所定の接続形態で行えばよい。
【0022】
第2連結導体70は、第1コネクタ端子30Aと第2導体部43とに対して各々物理的且つ電気的に接続させるものであり、その接続に伴い、第1コネクタ端子30Aと第2導体部43とを電気的に接続させる。第2連結導体70は、金属等の導電性材料で成形された丸型端子71と、丸型端子71を第1コネクタ端子30Aに対して電気的に接続させる連結電線72とを備える(図2)。連結電線72は、芯線の一端を第1コネクタ端子30Aに対して物理的且つ電気的に接続させ、かつ、芯線の他端を丸型端子71に対して物理的且つ電気的に接続させる。その接続は、圧着や溶着等の所定の接続形態で行えばよい。
【0023】
第1連結部44は、第1導体部42から突出して形成された板状部材であり、板厚方向に貫通する貫通孔44aを有する。貫通孔44aは、丸型端子61の貫通孔61aと同心上に配置され、電線側締結機構81で第1連結部44と丸型端子61とが共締め固定される。電線側締結機構81は、筐体空間部11d内で遮断部材40と電線Weとを接触させることで遮断部材40と電線Weとを電気的に接続させるものである。
【0024】
電線側締結機構81は、ハウジング11に固定される固定部材であるスタッドボルト81aと、スタッドボルト81aに螺合させるナット81bとで構成されている。第1連結部44と丸型端子61は、被締結部材であるスタッドボルト81aをそれぞれの貫通孔44a,61aに挿通させ、これらの貫通孔44a,61aから突出しているスタッドボルト81aに締結部材であるナット81bを螺合させることで、共締め固定する。第1連結導体60と第1連結部44とは、電線側締結機構81によって連結される。
【0025】
スタッドボルト81aは、図5に示すように、ハウジング11に固定された状態において、一部が充填空間部18cに露出する露出面81cを有する。露出面81cは、平坦面であり、スタッドボルト81aの軸部と反対側の頭部に設けられている。スタッドボルト81aの頭部は、少なくとも一部がハウジング11に埋め込まれて固定されている。露出面81cは、貫通孔18aを介して充填空間部18cに露出する。露出面81cは、露出面81cは、その形状及びサイズが、貫通孔18aを第三方向から見たときの形状及びサイズにより決定される。
【0026】
第2連結部45は、第2導体部43から突出して形成された板状部材であり、板厚方向に貫通する貫通孔45aを有する。貫通孔45aは、丸型端子71の貫通孔71aと同心上に配置され、端子側締結機構82で第2連結部45と丸型端子71とが共締め固定される。端子側締結機構82は、筐体空間部11d内で遮断部材40と電線Weとを接触させることで遮断部材40と電線Weとを電気的に接続させるものである。
【0027】
端子側締結機構82は、ハウジング11に固定される固定部材であるスタッドボルト82aと、スタッドボルト82aに螺合させるナット82bとで構成されている。第2連結部45と丸型端子71は、被締結部材であるスタッドボルト82aをそれぞれの貫通孔45a,71aに挿通させ、これらの貫通孔45a,71aから突出しているスタッドボルト82aに締結部材であるナット82bを螺合させることで、共締め固定する。第2連結導体70と第2連結部45とは、端子側締結機構82によって連結される。
【0028】
スタッドボルト82aは、図5に示すように、ハウジング11に固定された状態において、一部が充填空間部19cに露出する露出面82cを有する。露出面82cは、平坦面であり、スタッドボルト82aの軸部と反対側の頭部に設けられている。スタッドボルト82aの頭部は、少なくとも一部がハウジング11に埋め込まれて固定されている。露出面82cは、貫通孔19aを介して充填空間部19cに露出する。露出面82cは、その形状及びサイズが、貫通孔19aを第三方向から見たときの形状及びサイズにより決定される。
【0029】
熱伝導部材50,51は、絶縁性及び熱伝導性を有する材料で構成され、充填空間部18c,19cに充填されるものである。熱伝導部材50,51は、例えば、熱硬化性シリコン等で成形される。熱伝導部材50,51は、例えば、熱硬化前の液体状態において、充填空間部18c,19cに充填され、遮断部材40から伝わる熱により硬化し、液体から固体に相変化する。熱伝導部材50,51は、当該熱伝導部材50,51が充填空間部18c,19cに充填された充填状態において、シールドシェル20のシェル内面21cと露出面81c,82cに直接接触する。熱伝導部材50,51は、シェル内面21cのうち、シェル凸部24,25に直接接触する。また、シェル内面21cとシェル外面21bとの距離(第一シェル部材21の第三方向における開口21aと反対側の端部の板厚)は、シェル凸部24,25が設けられていても、当該シェル凸部24,25に対応するシェル凹部24c,25cにより略一定に保たれる。そのため、充填空間部18c,19cに充填される熱伝導部材50,51の第三方向における長さ(充填空間部18c,19cの第三方向における深さ)は、シェル凹部24c,25cが無いものと比較して短い。熱伝導部材50,51は、露出面81c,82cとシェル凸部24,25の頂面24a,25aとの間に充填される。さらに、熱伝導部材50,51は、筐体凹部18,19の内周面18b,19bとシェル凸部24,25の外周面24b,25bとの間に形成される隙間Sに充填される(図6)。熱伝導部材50は、電線側締結機構81とシールドシェル20との間で熱伝導を行う。熱伝導部材51は、端子側締結機構82とシールドシェル20との間で熱伝導を行う。熱伝導部材50,51は、大気(気体層)及び筐体10よりも熱伝導性が高いものが好ましい。
【0030】
本実施形態のコネクタ1は、遮断部材40の通電に伴い、当該遮断部材40が発熱源となる。遮断部材40で生じた熱は、一部が気体層を介して筐体10に伝わるが、他の一部が第1連結部44、第2連結部45を介して直接スタッドボルト81a,82aに伝わる。スタッドボルト81a,82aに伝わった熱は、一部がハウジング11に伝わるが、当該ハウジング11より熱伝導性が高い熱伝導部材50,51に対して露出面81c,82cを介して伝わる。また、第1連結部44、第2連結部45に生じた熱は、第1連結導体60,第2連結導体70を介してナット81b,82bにも伝わる。熱伝導部材50,51に伝わる熱は、シェル凸部24,25の頂面24a,25a、及び、外周面24b,25bを介してシールドシェル20に伝わり、シールドシェル20を介して外部に放出される。これにより、遮断部材40で生じた熱が、遮断部材40と筐体10との間の大気(気体層)、及び、筐体10とシールドシェル20との間の大気を経由することなく、熱伝導部材50,51を介してシールドシェル20に伝えることができる。
【0031】
以上説明したように、本実施形態のコネクタ1は、電線Weに接続されるコネクタ端子30と、電線Weを流れる過電流により電流を遮断する遮断部材40と、遮断部材40と電線Weとを接続するスタッドボルト81a,82a及びナット81b,82bとを筐体空間部11dに備える。筐体10が、ハウジング外面11bより筐体空間部11dに向けて凹み、かつ内側に熱伝導部材50,51が充填される充填空間部18c,19cを有する筐体凹部18,19を有する。スタッドボルト81a,82aが筐体10に固定され、一部が充填空間部18c,19cに露出する露出面81c,82cを有する。熱伝導部材50,51は、当該熱伝導部材50,51が充填空間部18c,19cに充填された充填状態において、シェル内面21cと露出面81c,82cに直接接触する。
【0032】
上記構成により、遮断部材40に生じた熱の一部がスタッドボルト81a,82a等を介して熱伝導部材50,51に伝達され、当該熱伝導部材50,51からシールドシェル20を介して外部に放熱される。このように、遮断部材40の周囲に放出された熱が筐体10を介してシールドシェル20に伝わり、シールドシェル20を介して外部に放出される従来の放熱経路と比較して、遮断部材40と筐体10との間の大気(気体層)及び筐体10とシールドシェル20との間の大気を経由することなく、熱伝導部材50,51を介してシールドシェル20から外部に放熱することができる。つまり、遮断部材40で生じた熱が、熱伝導率が低い大気を経由することなくシールドシェル20から外部に放出されるので、遮断部材40に生じた熱をシールドシェル20から外部に容易に放出することが可能となる。
【0033】
また、本実施形態のコネクタ1は、シールドシェル20が、シェル内面21cからシェル空間部20aに向けて突出するシェル凸部24,25を有し、熱伝導部材50,51が、シェル内面21cのうち、シェル凸部24,25に直接接触する。これにより、露出面81c,82cとシールドシェル20との間の距離を短くすることで、露出面81c,82cとシールドシェル20との間に充填された熱伝導部材50,51の厚みを薄くすることができ、シールドシェル20がシェル凸部24,25を有していない場合と比較して、熱伝導部材50,51が露出面81c,82cで受けた熱をシールドシェル20に素早く渡すことができる。
【0034】
また、本実施形態のコネクタ1は、熱伝導部材50,51が、熱硬化性シリコンであり、露出面81c,82cとシェル凸部24,25の頂面24a,25aとの間に充填され、かつ筐体凹部18,19の内周面18b,19bとシェル凸部24,25の外周面24b,25bとの間に形成される隙間Sに充填される。これにより、熱伝導部材50,51が熱硬化性シリコンである場合、熱硬化前は液状であることから、充填空間部18c,19cに対して液状の熱伝導部材50,51を充填したときに、筐体凹部18,19の内周面18b,19bとシェル凸部24,25の外周面24b,25bとの隙間Sに入り込む。この結果、隙間Sに大気があることで熱伝導部材50,51から大気を経由してシールドシェル20に伝熱される従来の放熱経路と比較して、熱伝導部材50,51からシールドシェル20に対する伝熱を向上させることができる。
【0035】
なお、上記実施形態では、スタッドボルト81a,82aの一部がハウジング11に固定されているが、これに限定されず、スタッドボルト81a,82aの一部に代えて、ナット81b,82bがハウジング11に固定されていてもよい。つまり、電線側締結機構81は、ハウジング11に固定される固定部材であるナット81bと、ナット81bが螺合するスタッドボルト81aとで構成されていてもよい。また、端子側締結機構82は、ハウジング11に固定される固定部材であるナット82bと、ナット82bが螺合するスタッドボルト82aとで構成されていてもよい。この場合、ナット81b,82bは、例えば袋ナット等が好ましい。また、スタッドボルト81a,82aは、例えば、通常のボルト等であることが好ましい。
【0036】
また、上記実施形態では、貫通孔18a,19aは、図5に示すように、ハウジング外面11bからハウジング内面11cまで第三方向に沿って傾斜することなく貫通しているが、これに限定されるものではない。例えば、貫通孔18a,19aは、ハウジング外面11bからハウジング内面11cまで第三方向における一方から他方に向けて傾斜しながら貫通していてもよい。この場合、例えば、貫通孔18a,19aを第三方向と直交する方向からみた断面形状がテーパー状に形成されていてもよい。
【0037】
また、上記実施形態では、熱伝導部材50,51は、熱硬化前が液体状態である熱硬化性シリコンであるとしたが、これに限定されるものではなく、絶縁性を有し、大気(気体層)及び筐体の材料より熱伝導性が高いものであれば、どのようなものであってもよい。また、熱伝導部材50,51は、充填空間部18c,19cを充填させることが可能であれば、熱硬化性シリコンに限定せず、弾性を有する固体状のシリコンであってもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 コネクタ
10 筐体
11b ハウジング外面
11d 筐体空間部
18,19 筐体凹部
18c,19c 充填空間部
20 シールドシェル
20a シェル空間部
21c シェル内面
24,25 シェル凸部
30 コネクタ端子
40 遮断部材
50,51 熱伝導部材
81a,82a スタッドボルト
81b,82b ナット
81c,82c 露出面
100 相手側コネクタ
101 相手側コネクタ端子
We 電線
図1
図2
図3
図4
図5
図6