(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】二元燃料システム、該二元燃料システムを有する内燃機関、及び該内燃機関を動作させるための方法
(51)【国際特許分類】
F02M 61/16 20060101AFI20240401BHJP
F02D 19/08 20060101ALI20240401BHJP
F02M 25/00 20060101ALI20240401BHJP
F02M 43/04 20060101ALI20240401BHJP
F02M 55/00 20060101ALI20240401BHJP
F02M 61/10 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
F02M61/16 U
F02D19/08 D
F02M25/00 T
F02M43/04
F02M55/00 D
F02M61/10 C
F02M61/16 K
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018189962
(22)【出願日】2018-10-05
【審査請求日】2021-07-02
(31)【優先権主張番号】10 2017 123 315.6
(32)【優先日】2017-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510153962
【氏名又は名称】マン・エナジー・ソリューションズ・エスイー
【氏名又は名称原語表記】MAN ENERGY SOLUTIONS SE
【住所又は居所原語表記】Stadtbachstr.1 86153 Augsburg,GERMANY
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヨハン・ヴロカ
(72)【発明者】
【氏名】ルートヴィヒ・マイアー
(72)【発明者】
【氏名】ホルガー・シャール
【審査官】楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-055456(JP,A)
【文献】特開平02-033463(JP,A)
【文献】特開昭61-138873(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0130685(US,A1)
【文献】特開昭62-038867(JP,A)
【文献】特開平05-180112(JP,A)
【文献】特開2001-280223(JP,A)
【文献】特開平01-227864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 39/00~71/04
F02D 19/08
F02M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の二元燃料システムであって、
前記内燃機関の各シリンダ(2)のそれぞれは、二元燃料噴射装置(6)を有し、
第1の燃料供給システム(11)であって、第1の燃料が前記第1の燃料供給システム(11)を経由して
各々の前記
二元燃料噴射装置(6)に供給され得る、第1の燃料供給システム(11)を有し、
第2の燃料供給システム(14)であって、第2の燃料が前記第2の燃料供給システム(14)を経由して
各々の前記
二元燃料噴射装置(6)に供給され得る、第2の燃料供給システム(14)を有し、
シーリングおよび潤滑オイルシステム(19)であって、
各々の前記
二元燃料噴射装置(6)が前記シーリングおよび潤滑オイルシステム(19)を経由して前記シーリングおよび潤滑オイルの供給を受け得る、シーリングおよび潤滑オイルシステム(19)を有し、
前記第2の燃料供給システム(14)は、所定の燃料圧力を前記第2の燃料に与え、
前記シーリングおよび潤滑オイルシステム(19)は、前記第2の燃料の前記燃料圧力よりも低い所定のオイル圧力を前記シーリングおよび潤滑オイルに与える、内燃機関の二元燃料システムにおいて、
前記二元燃料噴射装置(6)が、
少なくとも1つの第1のノズル弁(7)であって、第1の燃料が、前記少なくとも1つの第1のノズル弁(7)を経由して前記各シリンダ(2)の燃焼チャンバ(5)内に導入されることが可能である、少なくとも1つの第1のノズル弁(7)と、
前記第1のノズル弁(7)の周囲に配置された複数の第2のノズル弁(9)であって、第2の燃料が、前記
複数の第2のノズル弁(9)を経由して前記各シリンダ(2)の前記燃焼チャンバ(5)内に導入されることが可能である、
複数の第2のノズル弁(9)と
、を有し、
各々の前記
複数の第2のノズル弁(9)の領域において、
各々の前記
複数の第2のノズル弁(9)のノズルニードル(21)が、前記第2のノズル弁(9)のニードルガイド(22)内で案内され、前記ニードルガイド(22)が、ニードル燃料チャンバ(24)を少なくともいくつかのセクションにおいて画定し、前記ニードル燃料チャンバ(24)は、供給ライン(25)を経由して所定の燃料圧力を有する前記第2の燃料の供給を受けることが可能であり、
各々の前記
複数の第2のノズル弁(9)の前記領域において、
前記ニードルガイド(22)は、一方では前記第2の燃料が前記ニードルガイド(22)を経由して周囲に漏れ入るのを回避し、他方では前記ニードルガイド(22)内で前記
ノズルニードル(21)を潤滑化するために、シーリングおよび潤滑オイルの供給を受け得る、二元燃料
システム。
【請求項2】
各々の前記
複数の第2のノズル弁(9)には、切換弁(18)が割り当てられ、前記切換弁(18)は、前記供給ライン(25)を経由して前記各シリンダ(2)の噴射サイクルに応じて前記第2の燃料を
各々の前記
複数の第2のノズル弁(9)の前記
ニードル燃料チャンバ(24)に供給し、それにより前記第2の燃料の燃料圧力が、前記噴射サイクルに応じて前記ニードル燃料チャンバ(24)内に発生し、
各々の前記
複数の第2のノズル弁(9)の前記ニードルガイド(22)は、前記シーリングおよび潤滑オイルの供給を受け得るニードル潤滑チャンバ(29)を少なくともいくつかのセクションにおいて画定し、前記ニードル潤滑チャンバ(29)は、前記
ニードル燃料チャンバ(24)内で前記噴射サイクルに応じた前記燃料圧力が発生する場合に、前記第2の燃料が前記ニードル潤滑チャンバ(29)の領域に進入しないように寸法設定された、前記
ニードル燃料チャンバ(24)からの距離(X)を有することを特徴とする、請求項1に記載の二元燃料システム。
【請求項3】
単一の中央の第1のノズル弁(7)を備えることを特徴とする、請求項1または2に記載の二元燃料システム。
【請求項4】
前記
複数の第2のノズル弁(9)には、共通切換弁(18)が割り当てられていることを特徴とする、請求項
1~3のいずれか一項に記載の二元燃料システム。
【請求項5】
前記切換弁(18)は、前記二元燃料噴射装置(6)の基体(23)の外部に配置されることを特徴とする、請求項1から
4のいずれか一項に記載の二元燃料システム。
【請求項6】
少なくとも1つのシリンダ(2)を有し、
請求項1から
5のいずれか一項に記載の二元燃料システムを有する、内燃機関。
【請求項7】
請求項
6に記載の内燃機関を動作させるための方法であって、各々の
前記複数の第2のノズル弁(9)は、各々の前記シリンダ(2)の噴射サイクルに応じて前記第2の燃料の供給を受ける、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二元燃料噴射装置に関する。さらに、本発明は、二元燃料システム、内燃機関、およびかかる内燃機関を動作させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
第1の動作モードにおいて第1の燃料を、および第2の動作モードにおいて第2の燃料を燃焼する二元燃料内燃機関が、慣例から広く知られている。第1の動作モードで燃焼される燃料は、優先的には例えばディーゼルなどの液体燃料である。第2の動作モードで燃焼される第2の燃料は、気体燃料、またはさらには例えばメタノールなどの液体燃料のいずれかであることが可能である。第2の動作モードで、第1の燃料は、優先的には第2の燃料を点火するために使用される。本明細書に示される本発明は、具体的には、いずれの場合も液体燃料を第1の燃料および第2の燃料として燃焼する二元燃料内燃機関に関する。
【0003】
二元燃料内燃機関は、内燃機関の各シリンダ用の二元燃料噴射装置を備える二元燃料システムを備える。慣例から知られている二元燃料噴射装置は、典型的には第1のノズル弁および複数の第2のノズル弁を備え、第1のノズル弁は、各シリンダの燃焼チャンバ内に第1の燃料を導入する役割を果たし、第2のノズル弁は、各シリンダの燃焼チャンバ内に第2の燃料を導入する役割を果たす。既に説明したように、第1の燃料は、とりわけディーゼルであり、第2の燃料は、とりわけメタノールであり、代替的にはエタノールまたはLPGである。
【0004】
各ノズル弁の領域において、特に各第2のノズル弁の領域において、各ノズル弁のノズルニードルが、ノズル弁のニードルガイド内で案内され、各ノズル弁のノズルニードルのニードルガイドは、少なくともいくつかのセクションでニードル燃料チャンバを画定する。各ノズル弁の各ニードル燃料チャンバは、供給ラインを経由して所定の燃料圧力を有する各燃料の供給を受け得る。これは、第1のノズル弁の領域およびさらに第2のノズル弁の領域の両方に該当する。
【0005】
第1のノズル弁を経由して各シリンダの燃焼チャンバ内に導入され得るディーゼル燃料は、各ノズルニードルに対して潤滑化機能をもたらすことが可能であり、さらにこのディーゼル燃料は、無毒性である。対照的に、第2のノズル弁を経由して各シリンダの燃焼チャンバ内に導入され得るメタノールは、潤滑化機能をもたらすことができない一方でさらに有毒性であるため、一方では第2の燃料がニードルガイドを経由して周囲に漏れ入るのを回避し、他方ではニードルガイド内の各ノズルニードルを潤滑化させるために、第2のノズル弁の領域内の各第2のノズル弁のニードルガイドにシーリングおよび潤滑オイルを供給することが慣例的には普通である。
【0006】
慣例から知られている二元燃料噴射装置では、第2の燃料の燃料圧力が、各第2のノズル弁のニードル燃料チャンバ内において内燃機関の第2の動作モードで優先的に発生し、この燃料圧力は、数百バール、特に約600バールの規模に相当し得る。この理由から、慣例から知られている二元燃料噴射装置では、第2の燃料の燃料圧力を超過する圧力をシーリングおよび潤滑オイルに与えることが必要であり、したがって、二元燃料噴射装置は、高圧下にあるシーリングおよび潤滑オイルの供給を受けなければならない。これは、複雑かつ不利である。
【0007】
特許文献1は、第1の燃料用の第1のノズル弁および第2の燃料用の複数の第2のノズル弁を有する先行技術による二元燃料噴射装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここを出発点として、本発明は、新たなタイプの二元燃料噴射装置、二元燃料システム、内燃機関、およびかかる内燃機関を動作させるための方法を生み出す目的に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、請求項1に記載の二元燃料噴射装置により達成される。本発明によれば、第2のノズル弁が、切換弁を割り当てられ、切換弁は、供給ラインを経由して各シリンダの噴射サイクルに応じて第2の燃料を各第2のノズル弁の各ニードル燃料チャンバに供給し、それにより第2の燃料の燃料圧力が、噴射サイクルに応じてニードル燃料チャンバ内に発生する。各第2のノズル弁のニードルガイドは、シーリングおよび潤滑オイルの供給を受け得るニードル潤滑チャンバを少なくともいくつかのセクションにおいて画定し、ニードル潤滑チャンバは、特に各ニードル燃料チャンバ内で第2の燃料の燃料圧力が噴射サイクルに応じて発生する場合に、第2の燃料がニードル潤滑チャンバの領域に進入しないように寸法設定された、各ニードル燃料チャンバからの距離を有する。
【0011】
本発明による二元燃料噴射装置では、第2の燃料が各シリンダの噴射サイクルに応じて各第2のノズル弁のニードル燃料チャンバに供給され、したがってそれにより第2の燃料の燃料圧力が各第2のノズル弁のニードル燃料チャンバ内において永久的に発生するのではなく、各噴射サイクルに応じて発生するに過ぎないということにより、ちょうどニードル燃料チャンバとシーリングおよび潤滑オイルの供給を受けるニードル潤滑チャンバとの間の距離が所定の様式で寸法設定されるということと同様に、高圧下のシーリングおよび潤滑オイルをなくすことが可能となる。
【0012】
また、対照的に、オイルのシーリング機能および潤滑化機能は、特にシーリングおよび潤滑オイルのオイル圧力が第2の動作モードにおいて第2の燃料の燃料圧力未満である場合でも、完全に確保され得る。各第2のノズル弁のニードル燃料チャンバとニードル潤滑チャンバとの間の距離は、特に各ニードル燃料チャンバ内でシーリングおよび潤滑オイルのオイル圧力よりも高い第2の燃料の燃料圧力が発生するように寸法設定されることにより、第2の燃料は、ニードル潤滑チャンバの領域に進入しない。その限りにおいて、シーリングおよび潤滑オイルのシーリングおよび潤滑化機能は、完全に実現され得る。
【0013】
本発明の有利なさらなる展開によれば、二元燃料噴射装置は、複数の第2のノズル弁を備え、第2のノズル弁は、共通切換弁を割り当てられる。これは、二元燃料噴射装置の単純な設計の一実施形態にとって有利である。
【0014】
有利なさらなる展開によれば、切換弁は、二元燃料噴射装置の基体の外部に配置される。これにより、切換弁を簡単に交換することが可能となる。
【0015】
二元燃料システムは、請求項7において定義され、内燃機関は、請求項9において定義される。内燃機関を動作させるための方法は、請求項10に定義される。
【0016】
本発明の好ましいさらなる展開が、従属請求項および以下の説明から得られる。本発明の例示の実施形態が、非限定的な図面を用いてさらに詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】閉状態にある第2のノズル弁の領域における二元燃料システムの二元燃料噴射装置からの抜粋図である。
【
図3】第2のノズル弁が開状態にある
図2からの抜粋図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書に示される本発明は、二元燃料噴射装置と、二元燃料システムと、かかる二元燃料噴射装置を有する内燃機関と、二元燃料内燃機関を動作させるための方法とに関する。
【0019】
図1は、二元燃料内燃機関1、または内燃機関のシリンダ2の領域における二元燃料内燃機関1の二元燃料システムの非常に概略的な抜粋を示す。シリンダ2のシリンダヘッド3およびピストン4が示されるが、シリンダヘッド3およびピストン4は、各シリンダ2の燃焼チャンバ5をいくつかのセクションにおいて画定する。
【0020】
シリンダヘッド3は、各シリンダ2ごとに二元燃料噴射装置6を受け、図示する例示の実施形態では二元燃料噴射装置6は、第1のノズル弁7を備え、第1の燃料8が、この第1のノズル弁7を経由してシリンダ2の燃焼チャンバ5内に導入され得る。また、二元燃料噴射装置6は、複数の第2のノズル弁9を備え、第2の燃料10が、これらの複数の第2のノズル弁9を経由してシリンダ2の燃焼チャンバ5内に導入され得る。
【0021】
第1の燃料8は、第1の液体燃料であり、特にディーゼルである。第2の燃料10は、やはり液体燃料であり、特にメタノール、エタノール、またはLPG(液化石油ガス)である。
【0022】
各シリンダ2の二元燃料噴射装置6の第1のノズル弁7は、第1の燃料供給システム11の補助により第1の燃料の供給を受けることが可能である。第1の燃料は、第1の燃料供給システム11の第1の燃料タンク12内に用意されており、第1の燃料タンク12から出ると各第1の燃料ポンプ13を介して各シリンダ2に、すなわち各シリンダ2の各二元燃料噴射装置6に供給され得る。各第1の燃料ポンプ13は、いわゆるシリンダごとのプラグインポンプであることが可能であり、これは、例えば少なくとも1,500バールまたは1,500~2,500バールの間の規模である第1の燃料圧力を第1の燃料に与える。
【0023】
各シリンダ2の二元燃料噴射装置6の第2のノズル弁9は、第2の燃料供給システム14を経由して第2の燃料の供給を受けることが可能である。第2の燃料は、第2の燃料供給システム14の第2の燃料タンク15内に用意されている。第2の燃料供給システム14の第2の燃料ポンプ16が、第2の燃料タンク15から出る第2の燃料を燃料貯蔵ユニット17内に送達し、この燃料貯蔵ユニット17内において特に約600バールの規模である燃料は第2の燃料圧力で用意される。この貯蔵ユニット17から出て、第2の燃料は、第2のノズル弁9に供給されることが可能であり、貯蔵ユニット17と各二元燃料噴射装置6の第2のノズル弁9との間には切換弁18が結合され、この切換弁18は、第2の燃料圧力を有する第2の燃料を第2のノズル弁9に永久的に供給するわけではなく、第2のノズル弁9が各シリンダ2の燃焼チャンバ5内に第2の燃料10を実際に噴射する時点における各シリンダの噴射サイクルに応じて供給するに過ぎない。
【0024】
さらに、
図1は、シーリングおよび潤滑オイル用のリザーバ20を有するシーリングおよび潤滑オイルシステム19を示し、このシーリングおよび潤滑オイルは、特に各二元燃料噴射装置6のノズル弁の領域内でシーリング機能および潤滑化機能をもたらすために二元燃料噴射装置6に供給され得る。
【0025】
図2および
図3は、各シリンダ2の燃焼チャンバ5内に第2の燃料を噴射する役割を果たす、第2のノズル弁9の領域内の二元燃料噴射装置6からの抜粋を示す。
図2では、図示される第2のノズル弁9は閉じられ、
図3では、この第2のノズル弁9は開かれる。
【0026】
したがって、
図2および
図3に示す二元燃料噴射装置6の第2のノズル弁9は、ニードルガイド22内で上下に可動に案内されるノズルニードル21を備え、このニードルガイド22は、二元燃料噴射装置6の基体23により形成される。各第2のノズル弁9のニードルガイド22は、少なくともいくつかのセクションにおいてニードル燃料チャンバ24を画定し、このニードル燃料チャンバ24は、各切換弁18と、シリンダ2のまたは二元燃料噴射装置6の切換弁18から各ニードル燃料チャンバ24に至る第2の燃料用の供給ライン25とを経由して噴射サイクルに応じて第2の燃料の供給を受け得る。
【0027】
既に説明したように、二元燃料噴射装置6の第2のノズル弁9に割り当てられる切換弁18は、各第2のニードル弁9の各ニードル燃料チャンバ24に第2の燃料を供給せず、しかし各シリンダ2の噴射サイクルに応じて供給するに過ぎない。そのため、第2の燃料の燃料圧力は、各シリンダ2の噴射サイクルに応じてニードル燃料チャンバ24内に発生し、すなわち具体的には
図3による各第2のノズル弁9が開かれた時に、すなわちノズルニードル21の輪郭部26がニードルガイド22の対応する弁座27から離れて引き上げられた時に発生する。具体的には、対照的に
図2によれば、各第2のノズル弁9が、ノズルニードル21の輪郭部26がニードルガイド22の弁座27に対接して載置されることに起因して閉じられた時に、切換弁18は、閉じられ、それによりニードル燃料チャンバ24は、供給ライン25を経由して第2の燃料の供給を受けず、およびしたがって第2の燃料の燃料圧力は、ニードル燃料チャンバ24内に発生しない。
【0028】
図3では、第2のノズル弁9が開いた状態での第2の燃料の流れが、実線矢印で示され、これは、開いた切換弁18から出ると供給ライン25を経由してニードル燃料チャンバ24へと供給され、ノズルニードル21が弁座27から離れて引き上げられた状態において、二元燃料噴射装置6の基体23中のオリフィス28を経由して各シリンダ2の燃焼チャンバ5内に導入され得る。これと比較して、
図3は、各ニードル燃料チャンバ24内で第2のノズル弁9がそれぞれ閉じられた状態では、第2の燃料が供給されないことを破線で示す。供給されない理由は、この場合には、切換弁18が閉じられ、それによりニードル燃料チャンバ24内の第2のノズル弁9が閉じられた状態において、第2の燃料の燃料圧力が発生しないからである。
図3の状態では、シーリングおよび潤滑オイルは、ニードル燃料チャンバ24の領域に流入することが可能である。
【0029】
図2および
図3によれば、各第2のノズル弁9のニードルガイド22は、シーリングおよび潤滑オイルの供給を受け得るニードル潤滑チャンバ29を少なくともいくつかのセクションにおいて画定する。
図2および
図3に示す破線矢印によれば、各ニードル潤滑チャンバ29は、一方では各ニードルガイド22内の各シーリングニードル21を潤滑させ、他方では第2の燃料がニードルガイド22を経由して周囲に漏れ入り得るのを回避するために、シーリングおよび潤滑オイルシステム19のオイルタンク20から出るシーリングおよび潤滑オイルの供給を受け得る。
【0030】
ここで、二元燃料噴射装置6の各第2のノズル弁9のノズルニードル21の軸方向すなわち移動方向に見た場合に、ニードル燃料チャンバ24とニードル潤滑チャンバ29との間の距離Xは、特にニードル燃料チャンバ24内において第2の燃料の燃料圧力(
図3を参照)が噴射サイクルに応じて発生する場合に、ニードル燃料チャンバ24から出る第2の燃料が、ニードル潤滑チャンバ29の方向へとニードルガイド22を経由して移動することが可能となるが、ニードル潤滑チャンバ29の領域には進入せず、それによりしたがってシーリングおよび潤滑オイルが、特にシーリングおよび潤滑オイルの圧力が第2の燃料の燃料圧力よりも低い場合でも、ニードル潤滑チャンバ29から変位されることが不可能となるように、寸法設定される。
【0031】
したがって、本発明による二元燃料噴射装置6では、第2のノズル弁9は、各シリンダ2の噴射サイクルに応じて各ニードル燃料チャンバ24に第2の燃料を供給可能にし、したがってそれによりニードル燃料チャンバ24内における第2の燃料の燃料圧力が、永久的には発生せず各噴射サイクルに応じて発生するに過ぎないものとなるように、切換弁18を割り当てられる。ニードル燃料チャンバ24から所定の距離Xを有するニードル潤滑チャンバ29は、第2の燃料の燃料圧力よりも低いオイル圧力を有するシーリングおよび潤滑オイルを永久的に供給される。典型的には、第2の燃料の燃料圧力は、約600バールであり、シーリングおよび潤滑オイルのオイル圧力は、100バール未満であり、例えば約10バールである。ニードル燃料チャンバ24とニードル潤滑チャンバ29との間の所定の距離Xにより、第2の燃料は、特に噴射サイクルに応じて第2の燃料の燃料圧力がニードル燃料チャンバ24内に発生する場合には、実際にニードル潤滑チャンバ29の方向に移動し得るが、ニードル潤滑チャンバ29の領域に進入せず、したがってニードル潤滑チャンバ29からシーリングおよび潤滑オイルを変位させない。したがって、ニードル燃料チャンバ24とニードル潤滑チャンバ29との間の距離Xは、噴射サイクルに応じて、および優先的にはさらにシーリングおよび潤滑オイルのオイル圧力と第2の燃料の燃料圧力との間の圧力差に応じて寸法設定される。
【0032】
既に説明したように、二元燃料噴射装置6は、優先的には第1の中央の第1のノズル弁7と、複数の第2のノズル弁9とを備え、これらの第2のノズル弁9は、第1のノズル弁7の上方に位置決めされる。各シリンダ2の二元燃料噴射装置6の複数の第2のノズル弁9は、共通切換弁18が割り当てられ、この共通切換弁18は、二元燃料噴射装置6の基体23の外部に配置され、したがって容易に交換することが可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 内燃機関
2 シリンダ
3 シリンダヘッド
4 ピストン
5 燃焼チャンバ
6 二元燃料噴射装置
7 ノズル弁
8 第1の燃料
9 ノズル弁
10 第2の燃料
11 燃料供給システム
12 リザーバ
13 燃料ポンプ
14 燃料供給システム
15 リザーバ
16 燃料ポンプ
17 リザーバ
18 切換弁
19 シーリングおよび潤滑オイルシステム
20 リザーバ
21 ノズルニードル
22 ニードルガイド
23 基体
24 ニードル燃料チャンバ
25 供給ライン
26 輪郭部
27 弁座
28 オリフィス
29 ニードル潤滑チャンバ