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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】ACE阻害活性を有する組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/105 20160101AFI20240401BHJP
   A61K 36/484 20060101ALI20240401BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240401BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20240401BHJP
   A61K 125/00 20060101ALN20240401BHJP
   A61K 135/00 20060101ALN20240401BHJP
【FI】
A23L33/105
A61K36/484
A61P43/00 116
A61P9/12
A61K125:00
A61K135:00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019021538
(22)【出願日】2019-02-08
(65)【公開番号】P2020128355
(43)【公開日】2020-08-27
【審査請求日】2022-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】521357375
【氏名又は名称】アリナミン製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】井本 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】小池 智弘
【審査官】堂畑 厚志
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2005-0090972(KR,A)
【文献】国際公開第02/047699(WO,A1)
【文献】特開2002-114695(JP,A)
【文献】特表2008-530000(JP,A)
【文献】特表2014-513723(JP,A)
【文献】特開2019-178123(JP,A)
【文献】Recent Progress In Medicinal Plants, Phytopharmacology and therapeutic Values V,Vol. 23,2009年,pp. 171-179
【文献】SHIN, Sunhee et al.,Licorice Extract Does Not Impair the Male Reproductive Function of Rats,Experimental Animals,2008年,vol. 57, issue 1,p. 11-17
【文献】第十七改正 日本薬局方,2016年,p. 1774-1777
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A23L 33/
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マメ科カンゾウ属に属する植物の抽出物を含有することを特徴とする、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害活性作用を有する組成物を有効成分とする、血圧改善または血圧降下のための食品または医薬品であって、マメ科カンゾウ属に属する植物の抽出物が、マメ科カンゾウ属ウラルカンゾウ種に属する植物の根および/またはストロンの水抽出物である、食品または医薬品
【請求項2】
マメ科カンゾウ属に属する植物の抽出物の濃度が、0.10mg/mL以上である、請求項1に記載の食品または医薬品
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の抽出物を含有し、アンギオテンシン変換酵素(Angiotensin Converting Enzyme:ACE)阻害活性を有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
マメ科カンゾウ属に属する植物を原料とする甘草は、古くから生薬として用いられており、鎮痙、鎮痛、鎮咳、去痰など様々な作用を有することが知られている。
【0003】
また、甘草疎水性抽出物を含有する高血圧症などを予防または改善するための組成物(特許文献1および2)、グリチルリチン酸を含まない甘草抽出物を含んでなる血圧などを低下させるための調製物(特許文献3)も知られている。
【0004】
さらに、甘草抽出物は、血圧降下作用を有するサーデンペプチド(イワシペプチド)を含有する組成物において、甘草抽出物を加えることによりサーデンペプチドに固有の不快臭を抑制する作用も有することが知られている(特許文献4)。
【0005】
しかしながら、甘草抽出物が、ACE阻害作用を有することは、これまで知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2002/047699号
【文献】国際公開第2008/143182号
【文献】特開第2002-114695号
【文献】特開第2009-284900号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ACE阻害活性を有する組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、当該組成物を有効成分とするACEに関連する疾患の予防あるいは軽減のための食品または医薬品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討した結果、マメ科カンゾウ属に属する植物からの抽出物が、ACE阻害活性を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
[1]マメ科カンゾウ属に属する植物の抽出物を含有することを特徴とする、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害活性作用を有する組成物。
[2]マメ科カンゾウ属に属する植物の抽出物が、水、有機溶媒、またはこれらの混合物で抽出された抽出物である、[1]に記載の組成物。
[3]有機溶媒が、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、アセトン、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-2-プロパノール、プロピレングリコール、グリセリン、酢酸メチル、酢酸エチル、ヘキサン、ジエチルエーテル、2-ブタノン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、食用油脂、プロパン、ブタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタンおよび1,1,2-トリクロロエテンからなる群から選択される少なくとも1つである、[1]または[2]に記載の組成物。
[4]マメ科カンゾウ属に属する植物の抽出物が、根および/またはストロンからの抽出物である、[1]~[3]いずれか記載の組成物。
[5]マメ科カンゾウ属に属する植物の抽出物の濃度が、0.10mg/mL以上である、[1]~[4]いずれか記載の組成物。
[6]マメ科カンゾウ属に属する植物が、ウラルカンゾウ種である、[1]~[5]いずれか記載の組成物。
[7][1]~[6]いずれか記載の組成物を有効成分とする、アンギオテンシン変換酵素(ACE)に関連する疾患の予防あるいは軽減のための食品または医薬品。
【発明の効果】
【0009】
本発明の組成物は、ACE阻害活性を有するので、ACEに関連する疾患を予防あるいは軽減することができる。さらに、本発明の組成物は、天然由来の抽出物を含有しており、安全性が高い。したがって、本発明の組成物は、ACEに関連する疾患の予防あるいは軽減のための食品または医薬品として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の組成物は、マメ科カンゾウ属に属する植物からの抽出物を含む。マメ科カンゾウ属に属する植物としては、例えばGlycyrrhiza acanthocarpa、G.aspera、G.astragalina、G.bucharica、G.echinata(ロシアカンゾウ種)、G.eglandulosa、G.foetida、G.foetidissima、G.glabra(スペインカンゾウ種)、G.gontscharovii、G.iconica、G.inflate(新疆カンゾウ種)、G.korshinskyi、G.lepidota(アメリカカンゾウ種)、G.pallidiflora、G.squamulosa、G.triphylla、G.uralensis(ウラルカンゾウ種)、G.yunnanensis、などが挙げられ、これらマメ科カンゾウ属に属する植物の変種も使用できる。好ましくは、スペインカンゾウ種およびウラルカンゾウ種であり、より好ましくは、ウラルカンゾウ種である。本発明では、例えば、マメ科カンゾウ属ウラルカンゾウ種に属する都甘草(「都1号」とも称される)が用いられる。
【0011】
都甘草の特性は、「草丈はかなり高、根の数はかなり多、根の太さはかなり太、根の表皮の色は褐、根の横断面の黄色系着色の強弱は強、茎の数は中、茎のアントシアニン着色の強弱は無、茎の毛の粗密は無または粗、葉の長さは長、葉の幅はかなり広、葉の波打ちの強弱は中、小葉の数は中、小葉の葉身の長さはかなり長、小葉の葉身の幅はかなり広、花序の数はやや多、花序の長さは中、小花の数はかなり多、花の色はN81A、乾燥根の重量はかなり重、グリチルリチン酸含量はやや多である(カラーチャートはRHSを使用)」である。「都甘草」は、「北農試系」と比較して、草丈がかなり高であること、小葉の葉身の長さがかなり長であること等で区別性が認められる。また、「北大系」と比較して、草丈がかなり高であること、小葉の葉身の長さがかなり長であること等で区別性が認められる。さらに、「医療大系」と比較して、草丈がかなり高であること、小葉の葉身の長さがかなり長であること、枯れ上がりの早晩性が晩であること等で区別性が認められる。
【0012】
本発明の組成物に含まれる抽出物は、例えば、上記マメ科カンゾウ属に属する植物の根、ストロン、葉、茎またはこれらの部位の混合物からの抽出物である。本発明の組成物において、根および/またはストロンからの抽出物であってもよく、葉および/または茎からの抽出物であってもよい。好ましくは、マメ科カンゾウ属に属する植物の根および/またはストロンからの抽出物であり、より好ましくは都甘草の根および/またはストロンからの抽出物である。
【0013】
本発明における抽出物は、通常植物抽出に使用される溶媒を用いて、定法に従って抽出することにより得られる。例えば、植物を抽出溶媒に浸漬し、静置または撹拌することにより得られる。
【0014】
抽出に用いる植物は、そのまま(生)、その乾燥物、またはそれらの裁断もしくは粉砕したものであり得る。
【0015】
抽出に用いる溶媒としては、植物の抽出に従来使用されていた溶媒が挙げられ、例えば、水、有機溶媒、またはこれらの混合物が挙げられる。
有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、アセトン、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-2-プロパノール、プロピレングリコール、グリセリン、酢酸メチル、酢酸エチル、ヘキサン、ジエチルエーテル、2-ブタノン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、食用油脂、プロパン、ブタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタンおよび1,1,2-トリクロロエテンが挙げられる。
好ましくは、水、エタノールまたはこれらの混合物が挙げられる。また、水とエタノールの混合物を使用する場合、該混合物中のエタノール濃度は、例えば0.1~99.5v/v%、好ましくは5~80v/v%、より好ましくは10~70v/v%である。
【0016】
抽出方法は、通常用いられる方法であればよく、例えば、室温または加熱下で任意の装置を用いて抽出することができる。具体的には、溶媒を満たした処理層に植物を投入し、時々撹拌して溶出させ、その後、必要に応じて遠心分離、ろ過に供して抽出残渣を除去することにより抽出物を得ることができる。また、抽出方法として、水、亜酸化窒素、二酸化炭素等からなる超臨界流体を用いた方法を使用してもよい。
【0017】
抽出に用いる溶媒の量は、特に限定されないが、例えば植物(乾燥重量換算)1gに対して1~100mL、好ましくは5~50mLである。
抽出条件は、十分に抽出される条件であれば特に限定されないが、通常、抽出温度が低温であればより長時間の抽出を行い、抽出溶媒が高温であればより短時間の抽出を行う。抽出温度は、0~100℃の範囲で適宜設定され、好ましくは室温(約25℃)から抽出溶媒の沸点以下の範囲である。抽出時間は、10分~24時間の範囲で設定され、好ましくは30分~5時間の範囲である。抽出溶媒として水を用いる場合、抽出条件は、例えば約20~95℃で約30分~3時間である。抽出溶媒としてエタノールまたは水とエタノールとの混合溶媒を用いる場合、抽出条件は、例えば約20~80℃で約30分~3時間である。
抽出回数は単回でもよく、収率を上げるために複数回であってもよい。
【0018】
得られた抽出物は、そのまま本発明の組成物として用いることができる。また、抽出物を、必要に応じて、脱色または脱臭などを目的として精製に供してもよい。精製方法としては、例えば、活性炭処理、吸着処理、イオン交換樹脂処理などが挙げられる。
【0019】
抽出物を、さらに濃縮または濃縮乾固してもよく、適当な溶媒で希釈してもよく、または必要に応じて賦形剤を添加後乾燥して粉体状にしてもよい。濃縮または濃縮乾固の方法としては、例えば、減圧濃縮(エバポレーターを用いる方法など)、膜濃縮が挙げられる。粉末状にする方法としては、例えば、噴霧乾燥、凍結乾燥、流動層乾燥が挙げられる。抽出物を粉末状にする際に用いられる賦形剤としては、従来使用されているものが挙げられ、例えば、加工デンプン、デキストリンなどが挙げられる。
【0020】
本発明における「抽出物」は、上記のような抽出方法で得られた各種溶剤抽出液、その精製画分、その希釈液、その濃縮液、およびその乾燥物(粉末等)を含む。
【0021】
本発明の組成物中に含まれるマメ科カンゾウ属に属する植物からの抽出物の量は、所望の効果を発揮できる量であれば特に限定されない。例えば、本発明の組成物が液体組成物である場合、液体組成物中の濃度(抽出物の乾燥重量/液体組成物の体積)として、その下限は、例えば0.01mg/mL以上、好ましくは0.10mg/mL以上であり、その上限は、例えば100mg/mL以下、好ましくは10mg/mL以下である。
また、本発明の組成物が固体組成物である場合、固体組成物中の配合割合(抽出物の乾燥重量/組成物の乾燥重量)として、その下限は、例えば0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上であり、その上限は、例えば99重量%以下、好ましくは50重量%以下である。
【0022】
本発明における抽出物は、ACE活性阻害作用を有するので、ACEに関連する疾患を予防あるいは軽減することができる。ACEは、昇圧系であるレニン・アンギオテンシン系において血管収縮作用を有するアンギオテンシンIIを生成する一方、降圧作用を有するブラジキニンの分解酵素でもある。このためACE活性を阻害することは、アンギオテンシンIIの生成抑制およびブラジキニンの不活性化抑制という二つの機序による降圧効果を生じる。したがって、本発明の組成物は、ACE活性阻害作用を通じて、血圧改善効果、例えば血圧降下効果を示す。
【0023】
ここでいう「血圧改善」には、ヒトなどの哺乳類の血管拡張を改善する、正常な血管拡張を維持する、血圧を低下させる、安定な血圧を維持する、ならびに血管の内皮細胞を変性から保護することなどが含まれる。また、血管拡張は、血管の拡張、特に血管の一部への血流の増加をもたらす細動脈の拡張を意味する。
【0024】
また、本発明における抽出物は、天然のマメ科カンゾウ属に属する植物由来であるので、安全性も高い。したがって、本発明の組成物は、食品および医薬品として、特にACEに関連する疾患の予防あるいは軽減のための食品および医薬品として有用である。
【0025】
本発明の医薬品は、上記抽出物または上記組成物を用いて、常法に従って製造される。例えば、上記抽出物または上記組成物を、製剤技術分野において慣用の薬学的に許容される担体または添加剤に添加・混合するなど公知の方法を用いて、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、経口液剤、シロップ剤などの経口投与のための剤形にすることができる。
担体または添加剤としては、例えば賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、着色剤、pH調整剤、界面活性剤、安定化剤、酸味料、香料などが挙げられる。これら添加剤は、製剤技術分野において慣用の量が用いられる。
【0026】
賦形剤としては、例えば、トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、コムギコデンプン、コメデンプン、部分アルファー化デンプン、アルファー化デンプン、有孔デンプンなどのデンプン類;乳糖水和物、ショ糖、果糖、ブドウ糖、マンニトール、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、トレハロース、マルチトール、粉末還元麦芽糖水アメ、ラクチトールなどの糖または糖アルコール類;無水リン酸水素カルシウム、結晶セルロース、粉末セルロース、沈降炭酸カルシウム、炭酸カルシウムなどが挙げられる。
崩壊剤としては、例えば、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、ヒドロキシプロピルスターチなどが用いられ、好ましくは、クロスカルメロースナトリウム、L-HPCである。
結合剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、コポリビドン、アラビアゴム末、メチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、カルメロースナトリウム、デキストリン、部分アルファー化デンプン、プルラン、アラビアゴム、カンテン、ゼラチン、トラガント、アルギン酸ナトリウムなどが用いられ、好ましくは、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
流動化剤としては、例えば、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、タルクなどが用いられ、好ましくは、軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムである。
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、ショ糖脂肪酸エステルなどが挙げられる。
着色剤としては、例えば、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、食用青色1号、食用青色2号、食用黄色4号、食用黄色5号、食用緑色3号、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102号、食用赤色104号、食用赤色105号、食用赤色106号、食用レーキ色素、リボフラビン、リボフラビンリン酸エステルナトリウムなどが挙げられる。
pH調整剤としては、例えば、クエン酸、リン酸、炭酸、酒石酸、フマル酸、酢酸、アミノ酸およびそれらの塩類などが挙げられる。
界面活性剤として、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコールなどが挙げられる。
安定化剤としては、例えばトコフェロール、エデト酸四ナトリウム、ニコチン酸アミド、シクロデキストリン類などが挙げられる。
酸味料としては、例えば、アスコルビン酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸などが挙げられる。
香料としては、例えば、L-メントール、ハッカ油、レモン油、バニリンなどが挙げられる。
上記した担体または添加剤は、2種以上を適宜、混合して用いてもよい。
【0027】
本発明の医薬品は、抽出物を乾燥重量換算で0.05~5g、好ましくは0.1~1.5g含有する単位投与量形態であるのが好ましい。ここで「単位投与量形態」とは、物理的に分けた単位を意味し、各単位は所望の効果が得られるように計算した予め定められた量の有効成分を担体または添加剤と共に含んでいる。
【0028】
本発明の医薬品の投与量は、投与する対象体の年齢、性別体重および状態ならびに投与経路、投与スケジュール、剤形および製剤組成などにより異なるが、例えば1~1000mg、好ましくは5~500mgである。当該投与量は、1日に1回、または2回もしくは3回以上に分けて投与してもよい。
【0029】
本発明の食品は、上記抽出物または上記組成物を用いて常法に従い製造される。例えば、上記抽出物または上記組成物を食品、その食材またはその食品中間素材に添加するなどの公知の手段でもって製造される。例えば、マメ科カンゾウ属に属する植物を水やエタノールで抽出したのち、濃縮し、得られた濃縮抽出物を食品材料に添加し、次いで常法により食品とすることにより製造される。
【0030】
上記食品としては、例えば、菓子類(例えばポテトチップスをはじめとするスナック菓子、ビスケットまたはクッキーなどの焼菓子、チョコレート、ガム、またはキャンディ等)、デザート類(例えばプリン、ゼリー、ヨーグルトまたはアイスクリーム等)のような嗜好食品の他、麺類(例えば、そば、うどん、ラーメンまたはパスタ等)、シリアルフーズ(例えばコーンフレークまたはオートミール等)のような主食に準ずるもの、調味食品(例えばスープ、カレーまたはシチュー等)、農産加工品(例えばジャム等)、乳油食品(例えばスプレッド類またはチーズ等)、健康食品(例えばプロテインまたはファイバー等)、カロリー調整食品、ノンアルコール飲料(例えば大豆焙煎茶飲料、穀物茶、コーヒー飲料、紅茶飲料、緑茶飲料、麦茶飲料、抹茶飲料、野菜汁飲料、オレンジジュース、グレープフルーツジュース、清涼飲料等)、またはアルコール飲料(例えばビール、ワイン、清酒、発泡酒、梅酒、ウィスキー、ブランデー、焼酎、ウォッカ、ラム、ジン、リキュール類またはカクテル類等)などが挙げられる。
【0031】
本発明の食品は、例えば、栄養補助食品、健康補助食品、栄養調整食品などを含む一般食品、ならびに特定保健用食品、栄養機能食品および機能性表示食品を含む保健機能食品とすることができる。例えば、本発明の食品は、特定の保健の目的が期待できる旨(例えば、「血圧を低下させる機能が報告されており、血圧が高めの方に適しています。」)を科学的根拠に基づいて表示する機能性表示食品とすることができる。また、本発明の食品は、錠剤、カプセル、粉末、顆粒、液体、シロップなどの経口摂取のための形態を有するサプリメントであってもよい。
【0032】
本発明の食品中に含まれる抽出物含有組成物の量は、所望の効果を発揮できる量であればよく、食品の一般的な摂取量、食品の種類、組成などに応じて適宜決定すればよい。例えば、本発明の食品は、抽出物含有組成物を、乾燥重量として0.1~99.0重量%の範囲で含むことができる。
【0033】
本発明の食品の摂取量は、摂取する対象体の年齢、性別体重および状態ならびに食品の種類、組成などにより異なり得て、例えば1~1000mg、好ましくは5~500mgである。当該摂取量は、1日に1回、または2回もしくは3回以上に分けて摂取してもよい。
【0034】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例
【0035】
[実施例1~5]都甘草の根およびストロンからの水製エキスの調製
都甘草の根およびストロン3kgに水約30Lを加え、90℃で約2時間抽出した後、メッシュろ過し、23.2Lの抽出液を得た。さらにこの抽出液を約60℃で減圧濃縮し、2544gの濃縮液を得た。この濃縮液2511gを噴霧乾燥し、乾燥抽出物608gを得た。
上記乾燥抽出物約1.0gを50%エタノール溶液20mlで抽出後、0.1mol/l HEPES緩衝液(pH8.3)にて適宜希釈して、0.1mg/mL(実施例1)、0.125mg/mL(実施例2)、0.15mg/mL(実施例3)、0.2mg/mL(実施例4)および0.225mg/mL(実施例5)の試料濃度を有する都甘草の根およびストロンからの水製エキス含有組成物を得た。
【0036】
[実施例6~10]都甘草の根およびストロンからのエタノールエキスの調製
都甘草の根およびストロン3kgに30%エタノール約30Lを加え、60℃で約2時間抽出した後、メッシュろ過し、25.2Lの抽出液を得た。さらにこの抽出液を約60℃で減圧濃縮し、2849gの濃縮液を得た。この濃縮液2802gを噴霧乾燥し、乾燥抽出物636gを得た。
上記乾燥抽出物約1.0gを50%エタノール溶液20mlで抽出後、0.1mol/l HEPES緩衝液(pH8.3)にて適宜希釈して、0.1mg/mL(実施例6)、0.125mg/mL(実施例7)、0.15mg/mL(実施例8)、0.175mg/mL(実施例9)および0.2mg/mL(実施例10)の試料濃度を有する都甘草の根およびストロンからのエタノールエキス含有組成物を得た。
【0037】
[試験例]
1.試験概要
アンギオテンシン変換酵素(ACE)活性試験はNakno etal. Biosci Biotechnol. Biochem., 70, 1118-1126(2006)に記載の方法に基づき、基質(His-His-Leu)からACEにより分解されるジペプチドをオルトフタルアルデヒド(以下「OPA」と略す。)により蛍光化した後、反応物の蛍光強度を測定することで実施した。ACE活性阻害は試験溶液を加えない未処置区の活性を100%とした場合の相対ACE活性をもとに評価した。IC50値は試料濃度(mg/ml)と阻害率(%)のグラフから算出した。
【0038】
2.検体
下記検体1)および2)の試験溶液として、上記実施例で得られた組成物を使用した。また、ポジティブコントロール(検体3))として、サーデンペプチド(商品名:サーデンペプチドN100、製造者:仙味エキス株式会社)を使用した。
1)都甘草の根およびストロンからの水製エキス(実施例1~5)
2)都甘草の根およびストロンからのエタノールエキス(実施例6~10)
3)サーデンペプチド(ポジティブコントロール)
【0039】
3.試験方法
0.1mol/l HEPES緩衝液(pH8.3)(未処置区)または各試験溶液を96穴マイクロプレートに25μl加え、20mU/ml ACE溶液を25μl加えて37℃で5分間インキュベートした。8mmol/l His-His-Leu溶液を25μl加え、37℃で30分間反応した。その後、0.1mol/l 水酸化ナトリウム溶液を25μl加えて反応を停止し、1%OPA溶液を25μl加え、室温で20分間放置した。さらに、0.1mol/l 塩酸を25μl入れて室温で10分間放置し、マイクロプレートリーダーで蛍光強度を測定した。なお、ブランクは20mU/ml ACE溶液の代わりにPBSを用いて同様に試験した。

<マイクロプレートリーダー操作条件>
機種:SpectraMax M2e
測定条件:蛍光、endpointモード、ボトムリード
励起波長:355nm
蛍光波長:460nm
【0040】
4.試験結果
各試験溶液中の阻害率の結果を表1に示した。この結果、濃度依存的なACE活性阻害の増強が認められた。試料濃度と阻害率の関係を示すグラフから算出されたIC50値を表2に示した。
【表1】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の組成物は、ACE阻害活性を有するので、ACEに関連する疾患を予防あるいは軽減することができる。さらに、本発明の組成物は、天然由来の抽出物を含有しており、安全性が高い。したがって、本発明の組成物は、ACEに関連する疾患の予防あるいは軽減のための食品または医薬品として利用することができる。