(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】熱源システムの制御装置、熱源システム、熱源システムの制御方法、及び熱源システムの制御プログラム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/86 20180101AFI20240401BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20240401BHJP
F24F 5/00 20060101ALI20240401BHJP
F24F 11/64 20180101ALI20240401BHJP
F24F 11/63 20180101ALI20240401BHJP
F24F 140/20 20180101ALN20240401BHJP
【FI】
F24F11/86
F25B1/00 399Y
F24F5/00 101Z
F24F11/64
F24F11/63
F24F140:20
(21)【出願番号】P 2019149919
(22)【出願日】2019-08-19
【審査請求日】2022-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】516299338
【氏名又は名称】三菱重工サーマルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】坂口 勝哉
(72)【発明者】
【氏名】二階堂 智
(72)【発明者】
【氏名】竹中 悠
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-134361(JP,A)
【文献】特開2014-077621(JP,A)
【文献】特開2001-221541(JP,A)
【文献】特開2009-002635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00-11/89
F25B 1/00、49/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の熱源機を備えた熱源システムの制御装置であって、
前記熱源機の入口側の熱媒温度である熱媒入口温度を検知する入口温度センサ及び出口側の熱媒温度である熱媒出口温度を検知する出口温度センサが前記熱源機毎にそれぞれ設置され、
前記制御装置は、前記熱媒入口温度及び前記熱媒出口温度を取得し、また前記熱源機の前記熱媒出口温度の設定値である熱媒出口温度設定値に初期値を設定し、
前記熱源機は、前記熱媒入口温度が軽負荷停止温度を下回ると該熱源機の圧縮機が停止する軽負荷停止となり、軽負荷停止中に前記熱媒入口温度が前記軽負荷停止温度よりも大きい値であ
り、かつ前記熱媒出口温度設定値に所定の値を加えた値である軽負荷復帰温度を上回ると該熱源機の圧縮機が起動する軽負荷復帰となり、
いずれかの前記熱源機が軽負荷停止に至ると、前記熱媒出口温度設定値を前記初期値よりも小さい値である下限値に変更する強制復帰制御を行う熱源システムの制御装置。
【請求項2】
複数の熱源機を備えた熱源システムの制御装置であって、
前記熱源機の入口側の熱媒温度である熱媒入口温度を検知する入口温度センサ及び出口側の熱媒温度である熱媒出口温度を検知する出口温度センサが前記熱源機毎にそれぞれ設置され、
前記制御装置は、前記熱媒入口温度及び前記熱媒出口温度を取得し、また前記熱源機の前記熱媒出口温度の設定値である熱媒出口温度設定値に初期値を設定し、
前記熱源機は、前記熱媒入口温度が軽負荷停止温度を下回ると該熱源機の圧縮機が停止する軽負荷停止となり、軽負荷停止中に前記熱媒入口温度が前記軽負荷停止温度よりも大きい値であ
り、かつ前記熱媒出口温度設定値に所定の値を加えた値である軽負荷復帰温度を上回ると該熱源機の圧縮機が起動する軽負荷復帰となり、
いずれかの前記熱源機が軽負荷停止に至ると、前記熱媒出口温度設定値を前記軽負荷復帰温度と前記熱源機の前記熱媒入口温度との差分に第1補正値を加えた値だけ前記初期値から下げた値に変更する強制復帰制御を行う熱源システムの制御装置。
【請求項3】
強制的に前記熱源機をローテーション運転させる強制ローテーション制御が行われている場合は強制復帰制御を行い、前記強制ローテーション制御が行われていない場合は軽負荷停止とする通常制御を行い強制復帰制御を行わない請求項1または請求項2に記載の熱源システムの制御装置。
【請求項4】
強制復帰制御により軽負荷復帰すると、強制復帰制御によって変更された前記熱媒出口温度設定値を前記初期値に至るまで所定の割合で漸次増加させる請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の熱源システムの制御装置。
【請求項5】
前記熱媒出口温度設定値は、前記熱媒出口温度設定値の設定可能上限値まで増加させるとし、
前記設定可能上限値は、前記熱媒出口温度設定値と、前記熱媒入口温度と軽負荷停止温度との差分との和から第2補正値を減算した値とする請求項4に記載の熱源システムの制御装置。
【請求項6】
複数の熱源機と、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の制御装置とを備える熱源システム。
【請求項7】
複数の熱源機を備えた熱源システムの制御方法であって、
前記熱源機の入口側の熱媒温度である熱媒入口温度を検知する入口温度センサ及び出口側の熱媒温度である熱媒出口温度を検知する出口温度センサが前記熱源機毎にそれぞれ設置され、
前記熱源機は、前記熱媒入口温度が軽負荷停止温度を下回ると該熱源機の圧縮機が停止する軽負荷停止となり、軽負荷停止中に前記熱媒入口温度が前記軽負荷停止温度よりも大きい値であ
り、かつ前記熱媒出口温度設定値に所定の値を加えた値である軽負荷復帰温度を上回ると該熱源機の圧縮機が起動する軽負荷復帰となり、
前記熱媒入口温度及び前記熱媒出口温度を取得する工程と、
前記熱源機の前記熱媒出口温度の設定値である熱媒出口温度設定値に初期値を設定する工程と、
いずれかの前記熱源機が軽負荷停止に至ると、前記熱媒出口温度設定値を前記初期値よりも小さい値である下限値に変更する強制復帰制御を行う工程とを有する熱源システムの制御方法。
【請求項8】
複数の熱源機を備えた熱源システムの制御プログラムであって、
前記熱源機の入口側の熱媒温度である熱媒入口温度を検知する入口温度センサ及び出口側の熱媒温度である熱媒出口温度を検知する出口温度センサが前記熱源機毎にそれぞれ設置され、
前記熱源機は、前記熱媒入口温度が軽負荷停止温度を下回ると該熱源機の圧縮機が停止する軽負荷停止となり、軽負荷停止中に前記熱媒入口温度が前記軽負荷停止温度よりも大きい値であり、かつ前記熱媒出口温度設定値に所定の値を加えた値である軽負荷復帰温度を上回ると該熱源機の圧縮機が起動する軽負荷復帰となり、
前記熱媒入口温度及び前記熱媒出口温度を取得するステップと、
前記熱源機の前記熱媒出口温度の設定値である熱媒出口温度設定値に初期値を設定するステップと、
いずれかの前記熱源機が軽負荷停止に至ると、前記熱媒出口温度設定値を前記初期値よりも小さい値である下限値に変更する強制復帰制御を行うステップとを
コンピュータに実行させる熱源システムの制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱源システムの制御装置、熱源システム、熱源システムの制御方法、及び熱源システムの制御プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱源システムにおいて、負荷が低い状況下で、外部負荷の要求負荷が熱源機の運転最小能力以下の値である場合や、熱源機の熱媒入口温度が熱媒出口温度設定値近傍の値となる場合などには圧縮機を停止して熱源機を停止する軽負荷停止制御が行われている。
軽負荷停止制御により熱源機が軽負荷停止となると、例えば熱媒が冷水である場合は熱媒入口温度が熱媒出口温度設定値を所定の値以上超えた温度となるまで熱源機は通常制御による通常運転に復帰しない。そのため熱源機の軽負荷停止からの復帰には時間を要する。よって外部負荷の要求負荷が急激に増加したとしても、軽負荷停止から復帰するまで熱源機は能力を発揮することができない。
このような状況に対し、例えば特許文献1には外部負荷の要求負荷が熱源機の能力の10%以下であっても熱源機の圧縮機が停止せずに運転を継続する超低負荷モードを備えることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された発明では、熱源システムが許容する最低温度を冷水入口温度が下回ると熱源機は軽負荷停止となるため、熱源機が軽負荷停止に至ると復帰には時間を要するという問題があった。
【0005】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、軽負荷停止から通常制御への強制復帰を可能とする熱源システムの制御装置、熱源システム、熱源システムの制御方法、及び熱源システムの制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示の熱源システムの制御装置は複数の熱源機を備えた熱源システムの制御装置であって、前記熱源機の入口側の熱媒温度である熱媒入口温度を検知する入口温度センサ及び出口側の熱媒温度である熱媒出口温度を検知する出口温度センサが前記熱源機毎にそれぞれ設置され、前記制御装置は、前記熱媒入口温度及び前記熱媒出口温度を取得し、また前記熱源機の熱媒出口温度の設定値である熱媒出口温度設定値に初期値を設定し、前記熱源機は、前記熱媒入口温度が軽負荷停止温度を下回ると該熱源機の圧縮機が停止する軽負荷停止となり、軽負荷停止中に前記熱媒入口温度が前記軽負荷停止温度よりも大きい値であり、かつ前記熱媒出口温度設定値に所定の値を加えた値である軽負荷復帰温度を上回ると該熱源機の圧縮機が起動する軽負荷復帰となり、いずれかの前記熱源機が軽負荷停止に至ると、前記熱媒出口温度設定値を前記初期値よりも小さい値である下限値に変更する強制復帰制御を行う。
【0007】
また本開示の熱源システムは、複数の熱源機と、上述の制御装置とを備える。
【0008】
また本開示の熱源システムの制御方法は、複数の熱源機を備えた熱源システムの制御方法であって、前記熱源機の入口側の熱媒温度である熱媒入口温度を検知する入口温度センサ及び出口側の熱媒温度である熱媒出口温度を検知する出口温度センサが前記熱源機毎にそれぞれ設置され、前記熱源機は、前記熱媒入口温度が軽負荷停止温度を下回ると該熱源機の圧縮機が停止する軽負荷停止となり、軽負荷停止中に前記熱媒入口温度が前記軽負荷停止温度よりも大きい値であり、かつ前記熱媒出口温度設定値に所定の値を加えた値である軽負荷復帰温度を上回ると該熱源機の圧縮機が起動する軽負荷復帰となり、前記熱媒入口温度及び前記熱媒出口温度を取得する工程と、前記熱源機の前記熱媒出口温度の設定値である熱媒出口温度設定値に初期値を設定する工程と、いずれかの前記熱源機が軽負荷停止に至ると、前記熱媒出口温度設定値を前記初期値よりも小さい値である下限値に変更する強制復帰制御を行う工程とを有する。
【0009】
また本開示の熱源システムの制御プログラムは、複数の熱源機を備えた熱源システムの制御プログラムであって、前記熱源機の入口側の熱媒温度である熱媒入口温度を検知する入口温度センサ及び出口側の熱媒温度である熱媒出口温度を検知する出口温度センサが前記熱源機毎にそれぞれ設置され、前記熱源機は、前記熱媒入口温度が軽負荷停止温度を下回ると該熱源機の圧縮機が停止する軽負荷停止となり、軽負荷停止中に前記熱媒入口温度が前記軽負荷停止温度よりも大きい値であり、かつ前記熱媒出口温度設定値に所定の値を加えた値である軽負荷復帰温度を上回ると該熱源機の圧縮機が起動する軽負荷復帰となり、前記熱媒入口温度及び前記熱媒出口温度を取得するステップと、前記熱源機の前記熱媒出口温度の設定値である熱媒出口温度設定値に初期値を設定するステップと、いずれかの前記熱源機が軽負荷停止に至ると、前記熱媒出口温度設定値を前記初期値よりも小さい値である下限値に変更する強制復帰制御を行うステップとを有する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、熱源機が軽負荷停止すると熱媒出口温度設定値を下限値に変更するので、軽負荷停止した熱源機を強制的に軽負荷復帰することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の幾つかの実施形態に係る熱源システムの概略構成図である。
【
図2】本開示の幾つかの実施形態に係る熱源システムの制御装置を示すブロック図である。
【
図3】参考例としての軽負荷停止からの復帰制御を示すフローチャートである。
【
図4】本開示の幾つかの実施形態に係る強制復帰制御を示すフローチャートである。
【
図5】本開示の幾つかの実施形態に係る強制復帰制御を示すタイムチャートである。
【
図6】本開示の幾つかの実施形態に係る強制復帰制御を示すフローチャートである。
【
図7】本開示の幾つかの実施形態に係る強制復帰制御を示すフローチャートである。
【
図8】本開示の幾つかの実施形態に係る強制復帰制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本開示に係る熱源システムの制御装置、熱源システム、熱源システムの制御方法、及び熱源システムの制御プログラムの一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
〔第1実施形態〕
図1には、本開示の幾つかの実施形態に係る熱源システムの一態様の概略構成が示されている。
図1に示されるように、熱源システム1は、冷凍機(熱源機)2と、ポンプ3と、サプライヘッダ4と、リターンヘッダ5と、外部負荷6と、バイパス弁7と、入口温度センサ8と、出口温度センサ9とを主な構成として備えている。
冷凍機2は、冷凍機2a、2b、2c及び2dから構成される。各冷凍機2a、2b、2c及び2dは、外部負荷6に対して各々並列に設置されている。
ポンプ3は、冷水ポンプ3a、3b、3c及び3dとから構成される。
なお、以下の説明において、各冷凍機2a、2b、2c及び2dを区別する場合は、符号の末尾にa~dの何れかを付し、各冷凍機2a、2b、2c及び2dを区別しない場合は、a~dを省略する。また、他の部についても同様に、特に区別しない場合は、アルファベットを省略して示す。
【0014】
冷熱出力運転を行う場合の冷水(熱媒)流れからみた各冷凍機2a、2b、2c及び2dの上流側には、それぞれ、冷水を圧送する冷水ポンプ3a、3b、3c及び3dが設置されている。これら冷水ポンプ3a、3b、3c及び3dによって、リターンヘッダ5からの冷水が各冷凍機2a、2b、2c及び2dへと送られる。
【0015】
サプライヘッダ4には、各冷凍機2a、2b、2c及び2dを経由した冷水が集められる。サプライヘッダ4に集められた冷水は、外部負荷6に供給される。外部負荷6にて空調などに供され昇温した冷水は、リターンヘッダ5に送られる。冷水は、リターンヘッダ5において分岐され、上述したように各冷凍機2a、2b、2c及び2dへと送られる。
【0016】
またサプライヘッダ4に集められた冷水を外部負荷6を経由せず直接リターンヘッダ5へ送るバイパスライン上にバイパス弁7が設けられている。バイパス弁7の開度を調整することにより、外部負荷6へ供給する冷水量を調整することができる。
【0017】
冷水流れから見た各冷凍機2a、2b、2c及び2dの上流側には、それぞれ冷凍機2の入口側の冷水温度(熱媒温度)である冷水入口温度(熱媒入口温度)を検知する入口温度センサ8a、8b、8c及び8dが設置されている。また冷水流れから見た各冷凍機2a、2b、2c及び2dの下流側には、それぞれ冷凍機2の出口側の冷水温度(熱媒温度)である冷水出口温度(熱媒出口温度)を検知する出口温度センサ9a、9b、9c及び9dが設置されている。
【0018】
図2には、本開示の幾つかの実施形態に係る熱源システムの制御装置を示したブロック図が示されている。
図2に示されるように、各冷凍機2a、2b、2c及び2dの制御装置である冷凍機制御装置10a、10b、10c及び10dは、制御装置20と接続されている。制御装置20は、例えば熱源システム1全体を制御する装置である。制御装置20は、冷凍機制御装置10a、10b、10c及び10dを介して各冷凍機2a、2b、2c及び2dを制御する他、例えば冷水ポンプ3a、3b、3c及び3dの回転数制御、入口温度センサ8a、8b、8c及び8dが検知した各冷水入口温度及び出口温度センサ9a、9b、9c及び9dが検知した各冷水出口温度の取得等を行う。
【0019】
制御装置20及び冷凍機制御装置10a、10b、10c及び10dは、例えばMPU(Micro Processing Unit)であり、各処理を実行するためのプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体を有しており、CPU(Central Processing Unit)がこの記録媒体に記録されたプログラムをRAM(Random Access Memory)等の主記憶装置に読み出して実行することにより、各処理が実現される。コンピュータ読み取り可能な記録媒体としては、例えば、磁気ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリなどが挙げられる。
制御装置20及び冷凍機制御装置10a、10b、10c及び10dは、一つのMPUによって具現化されてもよいし、個別のMPUによって具現化されてもよい。
【0020】
図3には、参考例としての軽負荷停止からの復帰制御がフローチャートに示されている。
ステップS301にて運転している冷凍機2が軽負荷停止中であるかどうかを判定する。
軽負荷停止中であると判定された場合はステップS302へ遷移する。軽負荷停止中ではないと判定された場合はステップS306へ遷移し、軽負荷停止制御ではない通常制御が行われる。
【0021】
ステップS301にて冷凍機2が軽負荷停止中であると判定された場合は、冷凍機2は圧縮機が停止された軽負荷停止状態とされる(S302)。
【0022】
次に、制御装置20は冷凍機制御装置10を介して入口温度センサ8から冷凍機2の冷水入口温度Tinを取得し(S305)、冷水入口温度Tinが軽負荷復帰温度Ta以上であるか否かを判定する(S303)。ここで、軽負荷復帰温度Taは、軽負荷停止中に冷水入口温度が上昇し軽負荷停止から通常制御へ復帰可能な温度に到達したことを判定するために設定された値であり、冷凍機2の冷水出口温度設定値(熱媒出口温度設定値)Tsetに所定の値αを加えた値である。冷水出口温度設定値Tsetは、初期値Tinitが設定されている。初期値Tinitは任意で設定可能な値である。所定の値αは、任意で設定可能な値であり、例えば3が設定される。
【0023】
ステップS303において冷水入口温度Tinが軽負荷復帰温度Ta以上であると判定されると、冷凍機2は軽負荷停止から通常制御による通常運転へ復帰可能であるとして軽負荷停止から復帰し(S304)、通常制御に戻る(S306)。
【0024】
一方、ステップS303において冷水入口温度Tinが軽負荷復帰温度Taより小さい値であると判定されると、ステップS302へ戻り、冷凍機2は引き続き軽負荷停止状態とされる。
【0025】
このように、従来の軽負荷停止制御では、冷水入口温度が軽負荷復帰温度に到達するまでは軽負荷停止状態から復帰することができなかった。
【0026】
図4には、本開示の幾つかの実施形態に係る強制復帰制御がフローチャートに示されている。
【0027】
ステップS401にて運転している冷凍機2が軽負荷停止されたかどうかを判定する。
軽負荷停止されたか否かについては、例えば冷凍機2の冷水入口温度Tinが軽負荷停止温度Tbを下回った場合に軽負荷停止された、と判定する。ここで軽負荷停止温度Tbは、通常制御による通常運転中に冷水入口温度が下降し軽負荷停止となる温度に到達したことを判定するために設定された値であり、冷凍機2の冷水出口温度設定値Tsetに所定の値βを加えた値である。所定の値βは、任意で設定可能な値で所定の値αよりも小さい値である。所定の値βには例えば1が設定される。
軽負荷停止されたと判定された場合はステップS402へ遷移する。軽負荷停止されていないと判定された場合はステップS407へ遷移し、軽負荷停止制御ではない通常制御が行われる。
【0028】
ステップS401にて冷凍機2が軽負荷停止されたと判定された場合は、制御装置20は、冷凍機制御装置10を介して軽負荷停止に該当する冷凍機2(ここでは冷凍機2aとする)の冷水出口温度設定値Tsetを、冷水出口温度設定値の初期値であるTinitから下限値Tsminに変更する(強制復帰制御)(S402)。ここで下限値Tsminは、冷水出口温度設定値Tsetの下限値であり、初期値Tinitよりも小さい値であるとする。
このように、冷水出口温度設定値Tsetを初期値Tinitよりも小さい値である下限値Tsminとすることにより、軽負荷復帰温度Ta=Tset+α、及び軽負荷停止温度Tb=Tset+βも値が小さくなる。
【0029】
次にステップS403へ遷移し、制御装置20は、冷凍機2aが軽負荷復帰したか否かを判定する。具体的には制御装置20は、冷凍機制御装置10aを介して冷凍機2aの冷水入口温度Tin(Tina)を取得し(S406)、冷水入口温度Tinが軽負荷復帰温度Ta以上であるか否かを判定する。
【0030】
ステップS403にて冷水入口温度Tinが軽負荷復帰温度Ta以上であると判定された場合は、軽負荷復帰することとなり、ステップS405へ遷移する。
【0031】
ステップS405では、制御装置20は、冷凍機制御装置10aを介して冷凍機2aの冷水出口温度設定値Tsetを下限値Tsminから初期値Tinitへ変更する。
【0032】
冷凍機2aの冷水出口温度設定値Tsetが初期値Tinitへ変更されると、ステップS407へ遷移する。本実施形態に係る強制復帰制御が終了され、冷凍機2aは通常制御による通常運転へ復帰する。
【0033】
一方、ステップS403にて冷水入口温度Tinが軽負荷復帰温度Taを下回ると判定された場合は、制御装置20は、ステップS401にて軽負荷停止であることが検知されてから所定時間以上経過したか否かを判定する(S404)。ここで所定時間は、任意で設定可能な値であり、例えば300秒が設定される。
【0034】
ステップS404にて軽負荷停止であることが検知されてから所定時間以上経過したと判定された場合は、ステップS405へ遷移する。ステップS405では、冷水出口温度設定値Tsetが下限値Tsminから初期値Tinitへ変更される。冷水入口温度Tinが上昇せず、軽負荷復帰温度Taに至らないまま所定時間経過した場合は、本実施形態に係る強制復帰制御が終了され、通常制御による軽負荷停止からの復帰が行われる(S407)。
ここで、軽負荷停止からの復帰時、冷水出口温度設定値Tsetを下限値Tsminからすぐに初期値Tinitに変更すると、再び軽負荷停止に至る可能性がある。よって、本実施形態では冷水出口温度設定値Tsetを初期値Tinitに至るまで所定の割合で漸次増加させるとしてもよい。
【0035】
一方ステップS404にて軽負荷停止であることが検知されてからの時間経過が所定時間を下回ると判定された場合は、ステップS403へ戻り、再度復帰可否の判定が行われる。
【0036】
図5には、本開示の幾つかの実施形態に係る強制復帰制御がタイムチャートに示されている。
図5において、縦軸は温度(℃)、横軸は時間(s)であり、太線が冷凍機2の冷水入口温度Tin、実線が冷水出口温度設定値Tset、破線が軽負荷停止温度Tb、一点鎖線が軽負荷復帰温度Taである。
【0037】
通常制御による通常運転を行っている場合、冷水出口温度設定値Tsetには初期値Tinitが設定されている。通常制御が行われている場合に冷水入口温度Tinが下がり(時間t0からt1の期間)、時間t1において冷水入口温度Tinが軽負荷停止温度Tbに到達する。
【0038】
冷水入口温度Tinが軽負荷停止温度Tbに到達すると、冷凍機2は軽負荷停止となる。軽負荷停止が検知されると、制御装置20は冷水出口温度設定値Tsetを初期値Tinitから下限値Tsmin(Tsmin<Tinit)に変更する。同様にして、軽負荷停止温度Tb(Tset+β)がTsmin+βに、軽負荷復帰温度Ta(Tset+α)がTsmin+αにそれぞれ変更される。
【0039】
軽負荷停止中、冷凍機2は圧縮機が停止した状態であるため、冷水入口温度Tinは徐々に上昇を始める。そして、時間t2において冷水入口温度Tinは軽負荷復帰温度Ta=Tsmin+αに到達し、軽負荷停止から軽負荷復帰する。
【0040】
以上説明した本実施形態に係る熱源システムの制御装置、熱源システム、熱源システムの制御方法、及び熱源システムの制御プログラムが奏する作用および効果について説明する。
本実施形態に係る熱源システム1の制御装置20では、いずれかの冷凍機2が軽負荷停止に至ると、冷水出口温度設定値を初期値よりも小さい値である下限値に変更する強制復帰制御を行う。
いずれかの冷凍機2が軽負荷停止に至った場合に冷水出口温度設定値を下限値に変更すると、冷水出口温度設定値を下げたことにより軽負荷復帰温度も下がる。冷水出口温度設定値を下げる強制復帰制御を行うと冷水入口温度が軽負荷復帰温度に到達しやすくなるため、冷水出口温度設定値を変更しない制御と比較して早く軽負荷復帰に至ることが可能である。
よって本実施形態に係る熱源システム1の制御装置20によれば、軽負荷停止に至った状態で負荷が急激に増加しても、軽負荷停止から早急に復帰し冷凍機2が能力を発揮することができる。
【0041】
また本実施形態に係る熱源システム1の制御装置20では、強制復帰制御により軽負荷復帰すると、強制復帰制御によって変更された冷水出口温度設定値を所定の割合で漸次増加させて初期値に戻す。
軽負荷停止から復帰した後すぐに冷水出口温度設定値を初期値に戻すと、冷水入口温度が冷水出口温度設定値に基づく温度である軽負荷停止温度に近付き、場合によっては再び軽負荷停止に至る可能性がある。
よって本実施形態に係る熱源システム1の制御装置20によれば、冷水出口温度設定値を軽負荷停止から復帰後すぐに初期値に戻すのではなく、所定の割合で漸次増加させて初期値に戻すことから、冷水入口温度が軽負荷停止温度を下回るのを防ぎ、再び軽負荷停止に至るのを抑制することができる。
【0042】
〔第2実施形態〕
第1実施形態では熱媒出口温度設定値を下限値に変更するとしたが、本実施形態では軽負荷復帰温度と熱媒入口温度との差分を用いた値に変更するものとする。その他の点については第1実施形態と同様であるので、同様の構成については同一符号を付しその説明は省略する。
【0043】
図6には、本開示の幾つかの実施形態に係る強制復帰制御がフローチャートに示されている。
【0044】
ステップS601にて運転している冷凍機2が軽負荷停止したか否かを判定する。
軽負荷停止したと判定された場合はステップS602へ遷移する。軽負荷停止していないと判定された場合はステップS608へ遷移し、軽負荷停止制御ではない通常制御が行われる。
【0045】
ステップS601にて冷凍機2が軽負荷停止したと判定された場合は、ステップS602へ遷移する。制御装置20は、冷凍機制御装置10aを介して冷凍機2aの冷水入口温度Tin(Tina)を取得し(S607)、軽負荷復帰温度Taと冷水入口温度Tinとの差分ΔT=Ta-Tinを算出する。
【0046】
次にステップS603へ遷移し、制御装置20は、ステップS602で算出した差分ΔTに第1補正値γを加えた値ΔT´=ΔT+γを算出する。さらに制御装置20は、冷水出口温度設定値Tsetを、初期値TinitからTinit-ΔT´に変更する(強制復帰制御)。ここで第1補正値γは、任意で設定可能な値であり、例えば1℃が設定される。
【0047】
このように冷水出口温度設定値Tsetを変更することで、軽負荷復帰温度Taが冷水入口温度Tinよりも下がる。これにより冷水入口温度Tinが軽負荷復帰温度Ta以上となり、冷凍機2aは軽負荷停止から軽負荷復帰することとなる。
また差分ΔTではなく第1補正値γを加えたΔT´だけ冷水出口温度設定値Tsetを下げることで、すぐに再び軽負荷停止に至るのを防ぐことができる。
【0048】
次にステップS604へ遷移し、制御装置20は、冷凍機2aが軽負荷復帰したか否かを判定する。
冷凍機2が軽負荷復帰したか否かについては、例えば冷凍機2の冷水入口温度Tinが軽負荷復帰温度Taを上回った場合に軽負荷復帰した、と判定する。
軽負荷復帰したと判定された場合はステップS606へ遷移する。軽負荷復帰していないと判定された場合はステップS605へ遷移する。
【0049】
ステップS604において軽負荷復帰したと判定された場合は、制御装置20は冷凍機2aの冷水出口温度設定値TsetをTinit-ΔT´から初期値Tinitへ変更する(S606)。
次にステップS608へ遷移し、本実施形態に係る強制復帰制御が終了され、通常制御が行われる。
【0050】
一方、ステップS604において軽負荷復帰していないと判定された場合は、制御装置20は、ステップS601にて軽負荷停止であることが検知されてから所定時間以上経過したか否かを判定する(S605)。
【0051】
ステップS605にて冷水出口温度設定値Tsetを変更してから所定時間以上経過したと判定された場合は、ステップS606へ遷移する。ステップS606では、冷凍機2aの冷水出口温度設定値TsetがTinit-ΔT´から初期値Tinitへ変更される。軽負荷復帰に至らないまま所定時間経過した場合は、本実施形態に係る強制復帰制御が終了され、通常制御による軽負荷停止からの復帰が行われる(S607)。
【0052】
一方ステップS605にて冷水出口温度設定値Tsetを変更してからの時間経過が所定時間を下回ると判定された場合は、所定時間以上経過するまで繰り返し判定が行われる。
【0053】
以上説明した本実施形態に係る熱源システムの制御装置、熱源システム、熱源システムの制御方法、及び熱源システムの制御プログラムが奏する作用および効果について説明する。
本実施形態に係る熱源システム1の制御装置20では、いずれかの冷凍機2が軽負荷に至ると、冷水出口温度設定値を軽負荷復帰温度と冷凍機2の冷水入口温度との差分に第1補正値を加えた値だけ初期値から下げた値に変更する強制復帰制御を行う。
いずれかの冷凍機2が軽負荷停止に至った場合に冷水出口温度設定値を軽負荷復帰温度と冷凍機2の冷水入口温度との差分に第1補正値を加えた値だけ初期値から下げた値に変更すると、冷水出口温度設定値を下げたことにより軽負荷復帰温度も下がる。冷水出口温度設定値を下げる強制復帰制御を行うと冷水入口温度が軽負荷復帰温度に到達しやすくなるため、冷水出口温度設定値を変更しない通常制御と比較して早く軽負荷復帰に至ることが可能である。
よって本実施形態に係る熱源システム1の制御装置20によれば、軽負荷停止に至った状態で負荷が急激に増加しても、軽負荷停止から早急に復帰し冷凍機2が能力を発揮することができる。
【0054】
〔第3実施形態〕
第1実施形態では軽負荷復帰すると熱媒出口温度設定値を初期値に変更するとしたが、本実施形態では熱媒出口温度設定値、熱媒入口温度及び軽負荷停止温度に基づく値に変更するものとする。その他の点については第1実施形態と同様であるので、同様の構成については同一符号を付しその説明は省略する。
【0055】
図7及び
図8には、本開示の幾つかの実施形態に係る強制復帰制御がフローチャートに示されている。
【0056】
図7のステップS701にて運転している冷凍機2が軽負荷停止したか否かを判定する。
軽負荷停止したと判定された場合はステップS702へ遷移する。軽負荷停止していないと判定された場合は
図8のステップS710へ遷移し、軽負荷停止制御ではない通常制御が行われる。
【0057】
図7のステップS701にて冷凍機2が軽負荷停止したと判定された場合は、制御装置20は、冷凍機制御装置10を介して軽負荷停止に該当する冷凍機2(ここでは冷凍機2aとする)の冷水出口温度設定値Tsetを、冷水出口温度設定値の初期値であるTinitから下限値Tsminに変更する(強制復帰制御)(S702)。
このように、冷水出口温度設定値Tsetを初期値Tinitよりも小さい値である下限値Tsminとすることにより、軽負荷復帰温度Ta及び軽負荷停止温度Tbも値が小さくなる。
【0058】
次にステップS703へ遷移し、制御装置20は、冷凍機2aが軽負荷復帰したか否かを判定する。具体的には制御装置20は、冷凍機制御装置10aを介して冷凍機2aの冷水入口温度Tin(Tina)を取得し(S706)、冷水入口温度Tinが軽負荷復帰温度Ta以上であるか否かを判定する。
【0059】
ステップS703にて冷水入口温度Tinが軽負荷復帰温度Ta以上であると判定された場合は、軽負荷復帰することとなり、
図8のステップS707へ遷移する。
【0060】
図8のステップS707では、制御装置20は、冷水出口温度設定値Tsetの設定可能上限値Tmaxを算出する。設定可能上限値Tmaxは、冷水出口温度設定値Tsetを下限値Tsminから初期値Tinitへ変更する場合に、冷水入口温度Tinがすぐに軽負荷停止温度Tbに到達し再度軽負荷停止に至るのを防ぐために設定される値である。
【0061】
設定可能上限値Tmaxは、以下の(1)式で表される。
[数1]
Tmax=Tset+(Tin-Tb)-ζ
=Tset+{Tin-(Tset+β)}-ζ
=Tin-β-ζ ・・・(1)
【0062】
(1)式において、ζは第2補正値である。ここで第2補正値ζは、任意で設定可能な値であり、例えば0.5℃が設定される。
(1)式に表されるように、設定可能上限値Tmaxは、冷水入口温度Tin及び軽負荷停止温度Tbから算出される。余裕度として第2補正値ζを減算することで、軽負荷停止から復帰後、すぐに再度軽負荷停止に至るのを防ぐことができる。
【0063】
次にステップS708へ遷移し、制御装置20は、冷凍機2aの冷水出口温度設定値Tsetを設定可能上限値Tmaxに変更する。強制復帰制御のために初期値Tinitから下限値Tsminまで下げた冷水出口温度設定値Tsetを、(1)式で算出した設定可能上限値Tmaxまで上げる。冷水出口温度設定値Tsetの値を下限値Tsminから初期値Tinitまでただちに上げるのではなく、冷水入口温度Tinの変化に合わせて冷水出口温度設定値Tsetの値を上げる。
【0064】
次にステップS709へ遷移し、制御装置20は、冷水出口温度設定値Tsetが初期値Tinitに到達したか否かを判定する。冷水出口温度設定値Tsetが初期値Tinitに到達したと判定された場合は、ステップS710へ遷移する。本実施形態に係る強制復帰制御が終了され、通常制御が行われる。
【0065】
一方ステップS709において冷水出口温度設定値Tsetが初期値Tinitに到達していないと判定された場合は、ステップS707へ戻る。ステップS707からS709の処理を繰り返すことにより、強制復帰制御によって下限値Tsminまで下げられた冷水出口温度設定値Tsetは、徐々に温度が上げられる。冷水出口温度設定値Tsetが初期値Tinitに到達するまでステップS707からS709の処理が繰り返されることとなる。
【0066】
一方、
図7のステップS703にて冷水入口温度Tinが軽負荷復帰温度Taを下回ると判定された場合は、制御装置20は、ステップS701にて軽負荷停止であることが検知されてから所定時間以上経過したか否かを判定する(S704)。
【0067】
ステップS704にて軽負荷停止であることが検知されてから所定時間以上経過したと判定された場合は、ステップS705へ遷移する。ステップS705では、冷水出口温度設定値Tsetが下限値Tsminから初期値Tinitへ変更される。冷水入口温度Tinが上昇せず、軽負荷復帰温度Taに至らないまま所定時間経過した場合は、本実施形態に係る強制復帰制御が終了され、通常制御による軽負荷停止からの復帰が行われる(
図8のS710)。
【0068】
一方
図7のステップS704にて軽負荷停止であることが検知されてからの時間経過が所定時間を下回ると判定された場合は、ステップS703へ戻り、再度復帰可否の判定が行われる。
【0069】
以上説明した本実施形態に係る熱源システムの制御装置、熱源システム、熱源システムの制御方法、及び熱源システムの制御プログラムが奏する作用および効果について説明する。
本実施形態に係る熱源システム1の制御装置20では、冷水出口温度設定値は、冷水出口温度設定値の設定可能上限値まで増加させ、設定可能上限値は、冷水出口温度設定値と、冷水入口温度と軽負荷停止温度との差分との和から第2補正値を減算した値とする。
本実施形態に係る熱源システム1の制御装置20によれば、余裕度として第2補正値を減算することにより、冷水出口温度設定値を初期値に戻すまでに再度軽負荷停止となるのを防ぐことができる。軽負荷復帰により冷水入口温度が漸次上昇することから、冷水出口温度設定値の設定可能上限値も初期値まで漸次上昇し、軽負荷停止に至るのを抑制することができる。
【0070】
以上、本開示の各実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではない。
上述した各実施形態においては、冷凍機2a、2b、2c及び2dは、冷水を冷却するもの、すなわち冷熱出力の場合における説明としたが、冷水を加熱するもの、すなわち温熱出力の場合であってもよい。また、冷却機能と加熱機能とを兼ね備えるものであってもよい。また、熱媒は、冷水に代えてブラインなどの他の熱媒を冷却または加熱するシステムであってもよい。
温熱出力の場合は、温度の取り扱いが冷熱出力の場合の逆になる。
【0071】
また本開示の各実施形態は、特に強制的に熱源機をローテーション運転させる強制ローテーション制御を行う場合に好適である。熱源システム1において強制ローテーション制御が行われている場合に強制復帰制御を行い、強制ローテーション制御が行われていない場合は強制復帰制御を行わず、通常の軽負荷停止制御を行うとしてもよい。
【0072】
以上説明した各実施形態に記載の熱源システムの制御装置、熱源システム、熱源システムの制御方法、及び熱源システムの制御プログラムは例えば以下のように把握される。
本開示に係る熱源システム(1)の制御装置(20)は、複数の熱源機(2)を備えた熱源システム(1)の制御装置(20)であって、前記熱源機(2)の入口側の熱媒温度である熱媒入口温度を検知する入口温度センサ(8)及び出口側の熱媒温度である熱媒出口温度を検知する出口温度センサ(9)が前記熱源機(2)毎にそれぞれ設置され、前記制御装置(20)は、前記熱媒入口温度及び前記熱媒出口温度を取得し、また前記熱源機(2)の熱媒出口温度の設定値である熱媒出口温度設定値に初期値を設定し、前記熱源機(2)は、前記熱媒入口温度が軽負荷停止温度を下回ると該熱源機(2)の圧縮機が停止する軽負荷停止となり、軽負荷停止中に前記熱媒入口温度が前記軽負荷停止温度よりも大きい値である軽負荷復帰温度を上回ると該熱源機(2)の圧縮機が起動する軽負荷復帰となり、いずれかの前記熱源機(2)が軽負荷停止に至ると、前記熱媒出口温度設定値を前記初期値よりも小さい値である下限値に変更する強制復帰制御を行う。
【0073】
本開示では、いずれかの熱源機(2)が軽負荷停止に至ると、熱媒出口温度設定値を初期値よりも小さい値である下限値に変更する強制復帰制御を行う。
いずれかの熱源機(2)が軽負荷停止に至った場合に熱媒出口温度設定値を下限値に変更すると、熱媒出口温度設定値を下げたことにより軽負荷復帰温度も下がる。熱媒出口温度設定値を下げる強制復帰制御を行うと熱媒入口温度が軽負荷復帰温度に到達しやすくなるため、熱媒出口温度設定値を変更しない通常制御と比較して早く軽負荷復帰に至ることが可能である。
よって本開示によれば、軽負荷停止に至った状態で負荷が急激に増加しても、軽負荷停止から早急に復帰し熱源機(2)が能力を発揮することができる。
【0074】
本開示に係る熱源システム(1)の制御装置(20)は、複数の熱源機(2)を備えた熱源システム(1)の制御装置(20)であって、前記熱源機(2)の入口側の熱媒温度である熱媒入口温度を検知する入口温度センサ(8)及び出口側の熱媒温度である熱媒出口温度を検知する出口温度センサ(9)が前記熱源機(2)毎にそれぞれ設置され、前記制御装置(20)は、前記熱媒入口温度及び前記熱媒出口温度を取得し、また前記熱源機(2)の熱媒出口温度の設定値である熱媒出口温度設定値に初期値を設定し、前記熱源機(2)は、前記熱媒入口温度が軽負荷停止温度を下回ると該熱源機(2)の圧縮機が停止する軽負荷停止となり、軽負荷停止中に前記熱媒入口温度が前記軽負荷停止温度よりも大きい値である軽負荷復帰温度を上回ると該熱源機(2)の圧縮機が起動する軽負荷復帰となり、いずれかの前記熱源機(2)が軽負荷停止に至ると、前記熱媒出口温度設定値を前記軽負荷復帰温度と前記熱源機(2)の前記熱媒入口温度との差分に第1補正値を加えた値だけ前記初期値から下げた値に変更する強制復帰制御を行う。
【0075】
本開示では、いずれかの熱源機(2)が軽負荷に至ると、熱媒出口温度設定値を軽負荷復帰温度と熱源機(2)の熱媒入口温度との差分に第1補正値を加えた値だけ初期値から下げた値に変更する強制復帰制御を行う。
いずれかの熱源機(2)が軽負荷停止に至った場合に熱媒出口温度設定値を軽負荷復帰温度と熱源機(2)の熱媒入口温度との差分に第1補正値を加えた値だけ初期値から下げた値に変更すると、熱媒出口温度設定値を下げたことにより軽負荷復帰温度も下がる。熱媒出口温度設定値を下げる強制復帰制御を行うと熱媒入口温度が軽負荷復帰温度に到達しやすくなるため、熱媒出口温度設定値を変更しない通常制御と比較して早く軽負荷復帰に至ることが可能である。
よって本開示によれば、軽負荷停止に至った状態で負荷が急激に増加しても、軽負荷停止から早急に復帰し熱源機(2)が能力を発揮することができる。
【0076】
本開示に係る熱源システム(1)の制御装置(20)は、強制的に前記熱源機(2)をローテーション運転させる強制ローテーション制御が行われている場合は強制復帰制御を行い、前記強制ローテーション制御が行われていない場合は軽負荷停止とする通常制御を行い強制復帰制御を行わない。
【0077】
本開示では、強制ローテーション制御が行われている場合にのみ強制復帰制御を行う。
強制ローテーション制御が行われている場合は、停止対象の熱源機(2)から運転対象の熱源機(2)へ入れ替える(ローテーションする)場合に、一時的に停止対象の熱源機(2)と運転対象の熱源機(2)とが同時に運転する期間が発生する。この時、外部負荷(6)の要求能力よりも運転中の熱源機(2)の能力が上回り、熱媒入口温度が低下して軽負荷停止に至る場合がある。
本開示によれば、軽負荷停止の状態で負荷が急激に増加しても、軽負荷停止から早急に復帰し熱源機(2)が能力を発揮することができる。
【0078】
本開示に係る熱源システム(1)の制御装置(20)は、強制復帰制御により軽負荷復帰すると、強制復帰制御によって変更された前記熱媒出口温度設定値を前記初期値に至るまで所定の割合で漸次増加させる。
【0079】
本開示では、強制復帰制御により軽負荷復帰すると、強制復帰制御によって変更された熱媒出口温度設定値を所定の割合で漸次増加させて初期値に戻す。
軽負荷停止から復帰した後すぐに熱媒出口温度設定値を初期値に戻すと、熱媒入口温度が熱媒出口温度設定値に基づく温度である軽負荷停止温度に近付き、場合によっては再び軽負荷停止に至る可能性がある。
本開示によれば、熱媒出口温度設定値を軽負荷停止から復帰後すぐに初期値に戻すのではなく、所定の割合で漸次増加させて初期値に戻すことから、熱媒入口温度が軽負荷停止温度を下回るのを防ぎ、再び軽負荷停止に至るのを抑制することができる。
【0080】
本開示に係る熱源システム(1)の制御装置(20)は、前記熱媒出口温度設定値は、前記熱媒出口温度設定値の設定可能上限値まで増加させるとし、前記設定可能上限値は、前記熱媒出口温度設定値と、前記熱媒入口温度と軽負荷停止温度との差分との和から第2補正値を減算した値とする。
【0081】
本開示では、熱媒出口温度設定値は、熱媒出口温度設定値の設定可能上限値まで増加させ、設定可能上限値は、熱媒出口温度設定値と、熱媒入口温度と軽負荷停止温度との差分との和から第2補正値を減算した値とする。
本開示によれば、余裕度として第2補正値を減算することにより、熱媒出口温度設定値を初期値に戻すまでに再度軽負荷停止となるのを防ぐことができる。軽負荷復帰により熱媒入口温度が漸次上昇することから、熱媒出口温度設定値の設定可能上限値も初期値まで漸次上昇し、軽負荷停止に至るのを抑制することができる。
【0082】
本開示に係る熱源システム(1)は、複数の熱源機(2)と、前述の制御装置(20)とを備える。
【0083】
本開示に係る熱源システム(1)の制御方法は、複数の熱源機(2)を備えた熱源システム(1)の制御方法であって、前記熱源機(2)の入口側の熱媒温度である熱媒入口温度を検知する入口温度センサ(8)及び出口側の熱媒温度である熱媒出口温度を検知する出口温度センサ(9)が前記熱源機(2)毎にそれぞれ設置され、前記熱源機(2)は、前記熱媒入口温度が軽負荷停止温度を下回ると該熱源機(2)の圧縮機が停止する軽負荷停止となり、軽負荷停止中に前記熱媒入口温度が前記軽負荷停止温度よりも大きい値である軽負荷復帰温度を上回ると該熱源機(2)の圧縮機が起動する軽負荷復帰となり、前記熱媒入口温度及び前記熱媒出口温度を取得する工程と、前記熱源機(2)の熱媒出口温度の設定値である熱媒出口温度設定値に初期値を設定する工程と、いずれかの前記熱源機(2)が軽負荷停止に至ると、前記熱媒出口温度設定値を前記初期値よりも小さい値である下限値に変更する強制復帰制御を行う工程とを有する。
【0084】
複数の熱源機(2)を備えた熱源システム(1)の制御プログラムであって、前記熱源機(2)の入口側の熱媒温度である熱媒入口温度を検知する入口温度センサ(8)及び出口側の熱媒温度である熱媒出口温度を検知する出口温度センサ(9)が前記熱源機(2)毎にそれぞれ設置され、前記熱源機(2)は、前記熱媒入口温度が軽負荷停止温度を下回ると該熱源機(2)の圧縮機が停止する軽負荷停止となり、軽負荷停止中に前記熱媒入口温度が前記軽負荷停止温度よりも大きい値である軽負荷復帰温度を上回ると該熱源機(2)の圧縮機が起動する軽負荷復帰となり、前記熱媒入口温度及び前記熱媒出口温度を取得するステップと、前記熱源機(2)の熱媒出口温度の設定値である熱媒出口温度設定値に初期値を設定するステップと、いずれかの前記熱源機(2)が軽負荷停止に至ると、前記熱媒出口温度設定値を前記初期値よりも小さい値である下限値に変更する強制復帰制御を行うステップとを有する。
【符号の説明】
【0085】
1 熱源システム
2、2a、2b、2c、2d 冷凍機(熱源機)
3 ポンプ
3a、3b、3c、3d 冷水ポンプ
4 サプライヘッダ
5 リターンヘッダ
6 外部負荷
7 バイパス弁
8、8a、8b、8c、8d 入口温度センサ
9、9a、9b、9c、9d 出口温度センサ
10、10a、10b、10c、10d 冷凍機制御装置
20 制御装置