(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 7/28 20210101AFI20240401BHJP
G03B 5/08 20210101ALI20240401BHJP
G03B 13/36 20210101ALI20240401BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20240401BHJP
H04N 23/54 20230101ALI20240401BHJP
H04N 23/67 20230101ALI20240401BHJP
【FI】
G02B7/28 N
G03B5/08
G03B13/36
G03B15/00 S
H04N23/54
H04N23/67 100
(21)【出願番号】P 2019200145
(22)【出願日】2019-11-01
【審査請求日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】P 2019006071
(32)【優先日】2019-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】川崎 諒
【審査官】登丸 久寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-325199(JP,A)
【文献】特開2011-059283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/28
G03B 5/08
G03B 13/36
G03B 15/00
H04N 23/54
H04N 23/67
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子を撮像光学系の光軸と直交する面に対して回転軸を中心として傾けるチルト制御およびフォーカスレンズを光軸方向に駆動するフォーカス制御を行う制御部と、
撮影画像における前記回転軸に対応する第一領域を決定する第一領域決定部と、
前記チルト制御によってピントを合わせるべき領域である第二領域を決定する第二領域決定部と、
前記第一領域と前記第二領域とが重複する第三領域を決定する第三領域決定部と、を有し、
前記制御部は、前記第三領域に対してピントが合うように前記フォーカスレンズを駆動した後、前記チルト制御を行い、
前記第二領域決定部は、前記
撮影画像における複数の個別領域のうち前記回転軸と直交する方向に最下段の前記個別領域から順に被写体距離情報を取得し、上下方向において隣り合う一対の前記個別領域の被写体距離が所定値以上離れている場合に、前記一対の個別領域における下方の個別領域を前記第二領域として決定することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記第一領域は、前記回転軸を中心に所定の幅を設けた領域であることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記個別領域は、単一画素または複数の画素の集まりから成ることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
第四領域を決定する第四領域決定部を更に有し、
前記第四領域決定部は、コントラスト情報、輝度情報、ノイズ情報、動き情報の少なくとも一つの情報に基づいて、前記第三領域から前記第四領域を決定し、
前記制御部は、前記第四領域に対してピントが合うように前記フォーカスレンズを駆動することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記第四領域決定部は、前記第三領域を複数の個別領域に分割し、各個別領域ごとにコントラスト情報、輝度情報、ノイズ情報、動き情報の少なくとも一つの情報に基づいて、前記第三領域から前記第四領域を決定することを特徴とする請求項4に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記第三領域決定部が、前記第三領域を決定できなかった場合、
前記制御部は、
前記チルト制御を禁止すること、
ユーザへ通知を行うこと、
前記第一領域のうち、最も前記第二領域に近い領域を前記第三領域とすること、
前記第三領域を決定できるように撮影画角を調整すること、の少なくとも一つを実行することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記撮像素子を前記回転軸の周りに回転させる回転部を更に有する請求項1から6のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項8】
撮像素子を撮像光学系の光軸と直交する面に対して回転軸を中心として傾けるチルト制御およびフォーカスレンズを光軸方向に駆動するフォーカス制御を行う撮像装置の制御方法であって、
撮影画像における前記回転軸に対応する第一領域を決定する第一領域決定工程と、
前記チルト制御によってピントを合わせるべき領域である第二領域を決定する第二領域決定工程であって、前記
撮影画像における複数の個別領域のうち前記回転軸と直交する方向に最下段の前記個別領域から順に被写体距離情報を取得し、上下方向において隣り合う一対の前記個別領域の被写体距離が所定値以上離れている場合に、前記一対の個別領域における下方の個別領域を前記第二領域として決定する第二領域決定工程と、
前記第一領域と前記第二領域とが重複する第三領域を決定する第三領域決定工程と、
前記第三領域に対してピントが合うように前記フォーカスレンズを駆動した後、前記チルト制御を行う制御工程と、を有することを特徴とする撮像装置の制御方法。
【請求項9】
請求項8に記載の制御方法をコンピュータに実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チルト制御及びフォーカス制御を備えた撮像装置に関し、特にフォーカス制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、駅のホームや駐車場など様々な場所で、セキュリティを目的としてカメラが設置されている。またセキュリティ用途以外にも工場のレーンなどでも製品の管理でカメラの画像が使用されている。このような様々な用途においては、被写界深度の深い映像を得たいという需要がある。しかし、レンズ性能や画角や絞りなどの撮影条件よっては深い被写界深度を得られない場合がある。例えば、天井に設置したネットワークカメラから道路や通行人や車を撮影する奥行きのあるシーンでは、フォーカスが合う撮影領域は一部となってしまう場合がある。一般的に、絞りを絞ることにより被写界深度を深くする手法があるが、低照度下では絞りを開くことで光量を稼ぐ場合や被写体のブレを抑制するためにシャッタースピードを短くし絞りを開くことで光量を維持する場合も多い。結果として、それらの条件では被写界深度は浅くなってしまい、撮影領域全体にフォーカスが合わずピントがぼけた状態で撮影がおこなわれてしまう場合ある。
【0003】
このような課題を解決するために、被写体を撮影する撮影光軸系と直交する撮像光軸面に対して撮像面を傾くように回転させること(以下、チルト制御)で焦点面を調整して、撮影シーンの被写界深度を深くするシャインプルーフの原理と呼ばれる技術が一般的に知られている。なお、焦点面は撮像面の回転軸を中心に変化するため、チルト制御においては事前に回転軸に重なる被写体に対して、フォーカスを調節してピントを合わせておく必要がある。
【0004】
特許文献1には、傾き情報、被写体距離情報、焦点距離に基づいて、チルト角度を算出してチルト制御を行う撮像装置が開示されている。また、特許文献2には、複数の焦点検出エリアの焦点ズレ量に基づいて算出されるチルト角を用いてチルト制御を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-130633号公報
【文献】特開2017-173802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2に開示された撮像装置では、被写体の位置に応じてユーザがフォーカスを調節してピントを合わせる必要があり、手間がかかる。また、撮像面の回転軸に重ならない被写体に対してピントを合わせてしまった場合、チルト制御を行っても所望の被写界深度拡大効果が得られない。
【0007】
そこで本発明の目的は、チルト制御に適したフォーカス調節を容易に行うことができる撮像装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る撮像装置は、撮像素子を撮像光学系の光軸と直交する面に対して回転軸を中心として傾けるチルト制御およびフォーカスレンズを光軸方向に駆動するフォーカス制御を行う制御部と、撮影画像における前記回転軸に対応する第一領域を決定する第一領域決定部と、前記チルト制御によってピントを合わせるべき領域である第二領域を決定する第二領域決定部と、前記第一領域と前記第二領域とが重複する第三領域を決定する第三領域決定部と、を有し、前記制御部は、前記第三領域に対してピントが合うように前記フォーカスレンズを駆動した後、前記チルト制御を行い、前記第二領域決定部は、前記撮影画像における複数の個別領域のうち前記回転軸と直交する方向に最下段の前記個別領域から順に被写体距離情報を取得し、上下方向において隣り合う一対の前記個別領域の被写体距離が所定値以上離れている場合に、前記一対の個別領域における下方の個別領域を前記第二領域として決定することを特徴とする。
本発明の他の側面としての撮像装置の制御方法は、撮像素子を撮像光学系の光軸と直交する面に対して回転軸を中心として傾けるチルト制御およびフォーカスレンズを光軸方向に駆動するフォーカス制御を行う撮像装置の制御方法であって、撮影画像における前記回転軸に対応する第一領域を決定する第一領域決定工程と、前記チルト制御によってピントを合わせるべき領域である第二領域を決定する第二領域決定工程であって、前記撮影画像における複数の個別領域のうち前記回転軸と直交する方向に最下段の前記個別領域から順に被写体距離情報を取得し、上下方向において隣り合う一対の前記個別領域の被写体距離が所定値以上離れている場合に、前記一対の個別領域における下方の個別領域を前記第二領域として決定する第二領域決定工程と、前記第一領域と前記第二領域とが重複する第三領域を決定する第三領域決定工程と、前記第三領域に対してピントが合うように前記フォーカスレンズを駆動した後、前記チルト制御を行う制御工程と、を有することを特徴とする。
本発明の他の側面としてのコンピュータプログラムは、前記撮像装置の制御方法をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0009】
本発明の他の目的及び特徴は、以下の実施形態において説明される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、チルト制御に適したフォーカス調節を容易に行うことができる撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態1及び2に係る撮像装置の構成例を示すブロック図
【
図5】実施形態1に係る撮像装置が実行するメイン処理のフローチャート
【
図8】実施形態2に係る撮像装置が実行するメイン処理のフローチャート
【
図9】最適フォーカス領域検出処理のフローチャート
【
図11】実施形態3に係る撮像装置が実行するメイン処理のフローチャート
【
図12】実施形態4に係る撮像装置が実行するメイン処理のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。
(全体構成)
図1は、本発明の実施形態にかかわる撮像装置100の構成を示している。撮像光学系は、光軸方向に移動して焦点距離を変更するズームレンズ101と、光軸方向に移動して焦点調節を行うフォーカスレンズ102と、光量を調整する絞りユニット103とを有する。撮像光学系を通過した光は、バンドパスフィルタ(以下、BPF)104及びカラーフィルタ105を介して撮像素子106上に光学像としての被写体像を形成する。
【0013】
BPF104は撮像光学系の光路に対し進退可能なものもある。被写体像は、撮像素子106により光電変換される。撮像素子106から出力されたアナログ電気信号(撮像信号)は、AGC107によりゲイン調整され、AD変換器108によりデジタル信号に変換された後、カメラ信号処理部109に入力される。
【0014】
カメラ信号処理部109では、デジタル撮像信号に対して各種画像処理を行って映像信号を生成する。映像信号は、通信部110を介して撮像装置に有線または無線通信により接続された監視モニタ装置111に出力される。通信部110は、外部からのコマンドを受けて撮像装置内のチルト/ズーム/フォーカス制御部115(制御部、フォーカス位置決定部)にコマンドなどの制御信号を出す。
【0015】
評価値算出部112は、画面内に複数設定された評価枠ごとに、AD変換機108もしくはカメラ信号処理部109からRGBの画素値、もしくは輝度値を受け取る。そして、チルト制御やAF制御で使用する特定周波数のコントラストに係る評価値(以下、コントラスト評価値)を算出する。チルトピント領域検出部(第二領域検出部)113は、評価値算出部112で得られた各評価枠のコントラスト評価値に基づいて、チルト制御によってピントを合わせるべき領域(以下、チルトピント領域(第二領域))を検出する。
【0016】
フォーカス領域検出部(第三領域検出部、第四領域検出部)114は、チルトピント領域検出部113で検出したチルトピント領域と、回転軸領域検出部(第一領域検出部)119で検出した撮像素子の回転軸領域(第一領域)に基づいて、フォーカス領域(第三領域)を検出する。
【0017】
チルト/ズーム/フォーカス制御部115は、通信部110からの指示に基づいて撮像素子駆動部116(回転部)、フォーカス駆動部117、ズーム駆動部118に対して、それぞれチルト角設定位置、ズーム設定位置、フォーカス設定位置を指示する。ここで、チルト制御前のフォーカス設定位置に関してはフォーカス領域検出部114で検出されたフォーカス領域に基づいて決定する。
【0018】
撮像素子駆動部116は、チルト/ズーム/フォーカス制御部115から指示されたチルト角設定位置に基づいて撮像素子106を傾ける。大抵の場合、撮像素子106を傾ける撮像素子回転軸は、
図3に示すように撮影画面の中心に位置し、撮像素子回転軸を中心に撮像素子106は傾く。
【0019】
フォーカス駆動部117は、チルト/ズーム/フォーカス制御部115から指示されたフォーカスの設定位置に基づいてフォーカスレンズ102の位置を制御する。ズーム駆動部118は、チルト/ズーム/フォーカス制御部115から指示されたズームの設定位置に基づいてズームレンズ101の位置を制御する。
【0020】
チルト制御について、
図2を用いて説明する。
図2(a)は、光学系と撮像素子とが平行である状態を示している。被写体距離Lにピントが合うようにフォーカスが調節されており、そのピント面は光学系および撮像素子と平行となる。
図2(b)には、
図2(a)の状態から撮像素子を撮像素子回転軸を中心に回転させ、チルト制御を行った状態を示している。チルト制御を行うと、シャインプルーフの原理に基づいてピント面も撮像素子回転軸に対応したピント面回転軸を中心に回転するため、ある平面に関して近距離から遠距離まですべての被写体にピントを合わせることが可能となる。シャインプルーフの原理は、光学系の主面と撮像素子の撮像面がある1つの直線で交わるとき、ピント面も同じ直線上で交わるという原理であり、焦点距離f、被写体距離L、俯角αとするとチルト角bはシャインプルーフの原理より、次式(1)で算出される。
【0021】
【0022】
なお、撮像素子を回転させる代わりに、撮像光学系を回転させることでチルト制御を行っても同様の効果が得られる。
【0023】
チルト制御におけるフォーカス調節について説明する。
【0024】
図2より、チルト制御によって所望の平面にピントを合わせるには、撮像素子回転軸に対応する領域(以下、撮像素子回転軸領域(第一領域))で、その平面にピントが合うようにフォーカスを調節する必要があることがわかる。
図3と
図4を用いて、より詳細に説明する。
図3は撮影画像の例であり、
図4は
図3に各エリアを図示したものである。領域401は撮像素子回転軸領域であり、撮像素子回転軸を中心に所定の幅を設けた領域である。また、領域402はチルトピント領域である。このとき、撮像素子回転軸領域401かつチルトピント領域402である領域403をフォーカス領域とする。このフォーカス領域403に対してピントが合うようにフォーカス調節を行うことで、チルト制御でチルトピント領域402にピントを合わせることが可能となる。逆に、フォーカス領域403以外に対してフォーカス調節を行ってしまうと、チルト制御を行ってもチルトピント領域402にピントを合わせることができず、ユーザは満足のいく結果を得られない。
【0025】
なお、
図3の撮影画像は一例であり、実際には撮影シーンや撮像素子回転軸の位置によってフォーカス調節領域は異なる。したがって、チルト制御におけるフォーカス調節を確実に行うためには、フォーカス領域をユーザに提示する、または撮像装置が自動でフォーカス領域を検出してフォーカス調節を行う必要がある。
(実施形態1)
以下、実施形態1に係る撮像装置が実行する処理について説明する。
【0026】
図5は本実施例におけるメイン処理を示したフローチャートである。
<ステップS501>
ステップS501では、撮像素子回転軸領域を取得する。撮像素子回転軸領域は、
図4の401でも示した通り、撮像素子回転軸を中心に所定幅を設けた領域であり、予め設定しておく。
<ステップS502>
ステップS502では、チルトピント領域を検出する。検出方法については後述する。
<ステップS503>
ステップS503では、フォーカス領域を取得する。フォーカス領域は、
図4の403でも示した通り、撮像素子回転軸領域かつチルトピント領域である。
<ステップS504>
ステップS504では、ステップS503で取得したフォーカス領域が存在するか否かを判断し、存在する場合にはステップS505へ進み、存在しない場合にはステップS506へ進む。
<ステップS505>
ステップS505では、ステップS504にてフォーカス領域が存在した場合に、そのフォーカス領域に対してピントが合うように、AF制御を行う。
<ステップS506>
ステップS506では、ステップS504にてフォーカス領域が存在しなかった場合に、チルト制御を禁止する。これはフォーカス領域が存在しない場合、チルトピント領域にピント面を合わせるためのフォーカス調節が正しく行えず、チルト制御を行うことで却って意図しないピント面となり得るからである。なお、ここではフォーカス領域が存在しない場合の処理としてチルト制御を禁止したが、例えば、ユーザへ通知を出したり、フォーカス領域が存在するように撮影画角を調整するようにしてもよい。あるいは、チルトピント領域のうち最も撮像素子回転軸領域に近い領域をフォーカス領域とすることで、大まかにフォーカス調節することも可能である。
【0027】
次にチルトピント領域検出(ステップS502)の処理について、
図6のフローチャートを用いて説明する。
<ステップS601>
ステップS601では、撮影画像を複数の個別領域に分割する。例として、
図3の撮影画像を64個の個別領域に分割したものを
図7(a)に示す。個別領域は、単一画素または複数の画素の集まりから成る。
<ステップS602>
ステップS602では、各個別領域の被写体距離情報を取得する。
図7(b)は、
図7(a)における被写体距離情報であり、濃度が濃いほど被写体距離が遠いことを表している。被写体距離情報は、フォーカスレンズ102を駆動させながら、コントラスト評価値を個別領域毎に取得して、評価値がピークとなる最適フォーカス位置を検出することで推定できる。ただし、被写体距離情報の取得方法は最適フォーカス位置による推定に限定されず、例えば測距センサ等を用いて取得してもよい。
<ステップS603>
ステップS603では、ステップS602で得られた各個別領域における被写体距離情報に基づいて、チルトピント領域を検出するための判定を行う。チルトピント領域は、
図2(b)でのピント面であるため、手前から奥にかけて被写体距離が徐々に遠くなっている領域と考えることができる。したがって、個別領域の列ごとに、最下段の個別領域から順に上の個別領域へと被写体距離を比較して、上の個別領域の被写体距離の方が所定以上遠くなっている(つまり、隣り合う一対の個別領域の被写体距離情報が所定値以上離れている)かどうかを判定(以下、被写体距離判定)することで、チルトピント領域の検出が可能である。1列分の被写体距離判定を、A列を例に説明する。A列8行目と1つ上の7行目では、7行目の方が被写体距離が遠いため、後のステップS604において、A列8行目をチルトピント領域として検出する。次に7行目と6行目の被写体距離判定に移行する。このように被写体距離判定を順に繰り返していくと、6行目と5行目の被写体距離判定において、被写体距離が同等となる。この場合、立体物(撮影画像300においては木)があるため、チルトピント領域として検出を行わない。以降1列目までの被写体距離判定では、被写体距離が同等の領域が続くため、チルトピント領域は検出されず、結果A列においては8行目と7行目がチルトピント領域として検出されたことになる。以上と同様の処理を、他の個別領域列に対しても行うと、
図7(c)のようにチルトピント領域が検出される。つまり、チルトピント領域は、個別領域における被写体距離情報が、撮像素子回転軸と直交する方向に連続的に変化している領域である。より正確には、撮像素子回転軸と直交する方向に最下段の個別領域から順に被写体距離情報を取得していった場合において、隣り合う一対の個別領域の被写体距離情報が所定値以上離れていれば、その一対の個別領域における下方の個別領域がチルトピント領域に該当する。
【0028】
なお、ここに示した例は、チルト方向のチルト制御の場合を考え、上下の個別領域同士の被写体距離判定を行ったが、パン方向のチルト制御の場合には、個別領域の各行ごとに、左右の個別領域同士の被写体距離判定を行うことになる。
<ステップS604>
ステップS604では、ステップS603における被写体距離判定に基づいて、チルトピント領域の検出を行う。
【0029】
以上に説明した実施形態1では、撮影シーンに応じて撮像装置が自動でフォーカス領域を検出してフォーカス調節を行う。これにより、チルト制御に適したフォーカス調節を容易に行うことができ、その後のチルト制御において所望の被写界深度拡大効果を得ることが可能である。
(実施形態2)
以下、実施形態2に係る撮像装置が実行する処理について説明する。なお、実施形態1と同様の処理については同符号を付し、説明を省略する。
【0030】
図8は本実施例におけるメイン処理を示したフローチャートである。
<ステップS801>
ステップS801では、ステップS504でフォーカス領域が存在した場合に、のちのAF制御において合焦精度が相対的に高くなる領域である最適フォーカス領域(第四領域)を、フォーカス領域内から検出する。検出方法については後述する。
<ステップS802>
ステップS802では、ステップS801で検出した最適フォーカス領域に対してピントが合うように、AF制御を行う。
【0031】
次にフォーカス領域内から最適フォーカス領域を検出する処理(ステップS801)について、
図9のフローチャートを用いて説明する。
<ステップS901>
ステップS901では、フォーカス領域を複数の個別領域に分割する。例として、
図4の領域403を4個の個別領域に分割したものを
図10に示す。
<ステップS902>
ステップS902では、各個別領域のコントラスト評価値(コントラスト情報)及び輝度情報を取得する。
<ステップS903>
ステップS903では、ステップS902で取得した輝度情報に基づいて、白とびや黒つぶれしている個別領域を検出し、これらを除外する。これは、白とび、黒つぶれしている領域に対してAF制御を行うと、合焦精度が損なわれる可能性があるためである。
<ステップS904>
ステップS904では、白とびや黒つぶれを除いた個別領域のうち、ステップS902で取得したコントラスト評価値が最も高い個別領域を最適フォーカス領域として検出する。例えば、
図10において、A、Cの個別領域は道路の白線を多く含むためコントラスト評価値が高く、Dの個別領域は道路の白線を含まないためコントラスト評価値は低い。この場合、AまたはCの個別領域を最適フォーカス位置として検出することで、のちのAF制御の合焦精度を高くすることができる。
【0032】
以上に説明した実施形態2では、撮影シーンに応じて撮像装置が自動でフォーカス領域を検出してフォーカス調節を行う。実施形態1に対して、コントラスト評価値が高い領域を検出することでAFによる合焦精度を高める効果がある。これにより、チルト制御に適したフォーカス調節を容易に行うことができ、その後のチルト制御において所望の被写界深度拡大効果を得ることが可能である。なお、ここで説明した最適フォーカス領域検出は代表例であり、コントラスト評価値や輝度情報以外のAF合焦精度に関わる要素(ノイズ情報、動体の有無等の動き情報)を追加してもよい。また、ここではコントラスト方式のAFを想定しており、その他のAF方式における検出方法はこの限りではない。
(実施形態3)
以下、実施形態3に係る撮像装置が実行する処理について
図11のフローチャートを用いて説明する。なお、実施形態1、2と同様の処理については同符号を付し、説明を省略する。
<ステップS1101>
ステップS1101では、ステップS501で取得した撮像素子回転軸領域を監視モニタ装置111等のユーザインターフェース(UI)(表示部)に表示する。これは、チルト制御におけるフォーカス調節領域をユーザに示すことで、フォーカス調節ミス、ひいてはチルト制御によって所望の被写界深度拡大効果が得られないといった障害を防止するためである。なお、ここでは撮像素子回転軸領域を表示しているが、実施形態1、2と組み合わせて、ステップS502で検出したチルトピント領域、ステップS503で検出したフォーカス領域、あるいはステップS801で検出した最適フォーカス領域を表示するようにしてもよい。
<ステップS1102>
ステップS1102では、ユーザがフォーカス領域を設定する。具体的には、ステップS1101によって表示された撮像素子回転軸領域の中から、ユーザが所望のチルトピント領域を選択することで、チルト制御に適したフォーカス領域が設定されることになる。
<ステップS1103>
ステップS1103では、ステップS1102にてユーザが設定したフォーカス領域に対してピントが合うように、AF制御を行う。
【0033】
以上に説明した実施形態3では、チルト制御におけるフォーカス調節を行うべき領域をユーザに提示する。これにより、チルト制御に適したフォーカス調節を確実に行うことができ、その後のチルト制御において所望の被写界深度拡大効果を得ることが可能である。
【0034】
(実施形態4)
以下、実施形態4に係る撮像装置が実行する処理について説明する。なお、実施形態1、2、3と同様の処理については同符号を付し、説明を省略する。
【0035】
図12は本実施例におけるメイン処理を示したフローチャートである。
<ステップS1201>
ステップS1201では、領域指定手段を用いてチルトピント領域をユーザが指定する。チルトピント領域の指定は、監視モニタ装置111等のユーザインターフェース(UI)(表示部)を介して行う。例えば、チルトピント領域は複数の頂点を有する多角形にて表示される(
図13(a))。初期位置やサイズはユーザ操作(クリックやドラック等)に応じたものとしてもよい。多角形の頂点をそれぞれ任意の位置に配置することで、チルトピント領域を自由に指定可能となる(
図13(b))。
【0036】
以上に説明した実施形態4では、チルトピント領域をユーザが任意に指定する。指定されたチルトピント領域に応じて、撮像装置が自動でフォーカス領域を検出してフォーカス調節を行う。これにより、チルト制御に適したフォーカス調節を確実に行うことができ、その後のチルト制御において所望の被写界深度拡大効果を得ることが可能である。
【0037】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0038】
100 撮像装置
106 撮像素子
113 チルトピント面検出部
115 チルト/ズーム/フォーカス制御部
119 回転軸領域検出部