(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-29
(45)【発行日】2024-04-08
(54)【発明の名称】地震波記録装置および地震波記録方法
(51)【国際特許分類】
G01V 1/24 20060101AFI20240401BHJP
G04G 5/00 20130101ALI20240401BHJP
G04F 10/00 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
G01V1/24
G04G5/00 J
G04F10/00 Z
(21)【出願番号】P 2019206273
(22)【出願日】2019-11-14
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000143396
【氏名又は名称】株式会社高見沢サイバネティックス
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 勝則
(72)【発明者】
【氏名】篠原 芳紀
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-322840(JP,A)
【文献】特開平09-119992(JP,A)
【文献】特開2009-222486(JP,A)
【文献】特開2013-024796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 1/24
G04G 5/00
G04F 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
現在時刻をカウントするリアルタイムクロックと、
正確な時刻情報を外部から入力する時刻情報受信部と、
地動の速度及び加速度のうち少なくとも一方を測定する地動センサからの信号に基づく測定情報を、前記リアルタイムクロックから出力された測定時の時刻に応じた時系列データとして記憶するとともに、前記時系列データに含まれるタイミングにおいて前記時刻情報受信部にて入力された前記正確な時刻情報を記憶する記憶部と、
前記時系列データに含まれる前記現在時刻と該現在時刻に対応する前記正確な時刻情報とのずれに基づいて、前記時系列データの時間軸を補正する時刻補正部と、
を備え、
前記時刻補正部は、前記時刻情報受信部において前記正確な時刻情報を外部から取得できなかった期間に対してのみ、前記時系列データの時間軸を補正し、
前記時刻補正部は、前記時系列データに対してローパスフィルタによる処理を施したのち、リサンプリングを行うことによって前記時系列データの時間軸を補正する、地震波記録装置。
【請求項2】
前記時刻補正部は、前記現在時刻に基づく時間間隔と、前記正確な時刻情報に基づく時間間隔との比に基づいて、前記時系列データの時間軸の伸縮を行う、請求項1に記載の地震波記録装置。
【請求項3】
地動の速度及び加速度のうち少なくとも一方を地動センサにより測定するとともにリアルタイムクロックから現在時刻を取得し、前記地動センサからの信号に基づく測定情報を、前記リアルタイムクロックから出力された測定時の時刻に応じた時系列データとして記憶部に記憶させる第1ステップと、
前記時系列データに含まれるタイミングにおいて正確な時刻情報を外部から入力し、前記正確な時刻情報を前記記憶部に記憶させる第2ステップと、
前記時系列データに含まれる前記現在時刻と該現在時刻に対応する前記正確な時刻情報とのずれに基づいて、前記時系列データの時間軸を補正する第3ステップと、
を含み、
前記第3ステップでは、前記第2ステップにおいて前記正確な時刻情報を外部から取得できなかった期間に対してのみ、前記時系列データの時間軸を補正し、
前記第3ステップでは、前記時系列データに対してローパスフィルタによる処理を施したのち、リサンプリングを行うことによって前記時系列データの時間軸を補正する、地震波記録方法。
【請求項4】
前記第3ステップでは、前記現在時刻に基づく時間間隔と、前記正確な時刻情報に基づく時間間隔との比に基づいて、前記時系列データの時間軸の伸縮を行う、請求項
3に記載の地震波記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震波記録装置および地震波記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び2には、地震計に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-44784号公報
【文献】特開2006-10520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
地震波を測定する際には、地動の速度や加速度に関する地動データと、その地動データが測定された測定時刻とを関連付けて記録することが重要である。地動データとその測定時刻とを分析することにより、その地震に関する解析を精度良く行い得るからである。通常、地震波記録装置は、水晶振動子を含むシステムクロック生成回路、および該システムクロック生成回路からのクロックに基づいて現在時刻を出力するリアルタイムクロック(Real Time Clock:RTC)を備える。そして、地震波記録装置は、RTCから出力される現在時刻を、地動データとともに記録する。また、地震波記録装置は、RTCの正確性を担保するため、例えば全地球測位システム(Global Positioning System:GPS)と同期した1秒パルス信号や時刻校正情報などを外部機器から受け取り、RTCの時刻を定期的に校正する。
【0005】
しかしながら、地震波記録装置の設置条件によっては、1秒パルス信号や時刻校正情報などを外部機器から入力できないことがある。その場合、RTCの時刻を校正できないので、地動データとともに記録された測定時刻の精度は、システムクロック生成回路の精度に依存することとなる。通常、システムクロック生成回路から出力されるクロックは僅かな誤差を含んでおり、その誤差に起因して、RTCの時刻に遅れ又は進みが生じる。しかし、地震波記録装置から取り出された地動データの測定時刻にどの程度の遅れ又は進みが生じているかはわからない。長期間、外部から時刻校正情報を受け取らずに記録された測定時刻は、正しい時刻からずれている可能性があり、このことは測定データを基にした様々な解析の結果の信憑性を損ねることとなる。
【0006】
本発明は、上記課題の解決のためになされたものであり、地動データに関する測定時刻の正確性を高めることができる地震波記録装置および地震波記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る第1の地震波記録装置は、現在時刻をカウントするRTCと、正確な時刻情報を外部から入力する時刻情報受信部と、地動の速度及び加速度のうち少なくとも一方を測定する地動センサからの信号に基づく測定情報を、RTCから出力された測定時の時刻に応じた時系列データとして記憶するとともに、時系列データに含まれるタイミングにおいて時刻情報受信部にて入力された正確な時刻情報を記憶する記憶部と、時系列データに含まれる現在時刻と該現在時刻に対応する正確な時刻情報とのずれに基づいて、時系列データの時間軸を補正する時刻補正部とを備える。時刻補正部は、時刻情報受信部において正確な時刻情報を外部から取得できなかった期間に対してのみ、時系列データの時間軸を補正する。時刻補正部は、時系列データに対してローパスフィルタによる処理を施したのち、リサンプリングを行うことによって時系列データの時間軸を補正する。
【0008】
また、本発明に係る第1の地震波記録方法は、地動の速度及び加速度のうち少なくとも一方を地動センサにより測定するとともにRTCから現在時刻を取得し、地動センサからの信号に基づく測定情報を、RTCから出力された測定時の時刻に応じた時系列データとして記憶部に記憶させる第1ステップと、時系列データに含まれるタイミングにおいて正確な時刻情報を外部から入力し、正確な時刻情報を記憶部に記憶させる第2ステップと、時系列データに含まれる現在時刻と該現在時刻に対応する正確な時刻情報とのずれに基づいて、時系列データの時間軸を補正する第3ステップとを含む。第3ステップでは、第2ステップにおいて正確な時刻情報を外部から取得できなかった期間に対してのみ、時系列データの時間軸を補正する。第3ステップでは、時系列データに対してローパスフィルタによる処理を施したのち、リサンプリングを行うことによって時系列データの時間軸を補正する。
【0009】
これらの装置及び方法では、時刻補正部が(または第3ステップにおいて)、時系列データに含まれる現在時刻と該現在時刻に対応する正確な時刻情報とのずれに基づいて、時系列データの時間軸を補正する。例えば、地震波記録装置を設置して測定を開始する際に、正確な時刻情報を外部から入力できたとする。そして、その後に何らかの理由により正確な時刻情報を外部から入力できなくなり、測定を終了する際に、正確な時刻情報を再び外部から入力できたとする。この場合、測定開始時と測定終了時にそれぞれ得られた正確な時刻情報に基づいて、時系列データの時間軸を補正する。この装置及び方法によれば、正確な時刻情報を取得できない期間においても時系列データの測定時刻を正確な値に近づけることができる。すなわち、地動データに関する測定時刻の正確性を高めることができる。
【0010】
第1の地震波記録装置において、時刻補正部は、現在時刻に基づく時間間隔と、正確な時刻情報に基づく時間間隔との比に基づいて、時系列データの時間軸の伸縮を行ってもよい。同様に、第1の地震波記録方法の第3ステップでは、現在時刻に基づく時間間隔と、正確な時刻情報に基づく時間間隔との比に基づいて、時系列データの時間軸の伸縮を行ってもよい。例えばこのような構成及び方法により、時系列データの時間軸を好適に補正することができる。
【0011】
本発明に係る第2の地震波記録装置は、現在時刻をカウントするRTCと、現在温度を測定する温度センサと、地動の速度及び加速度のうち少なくとも一方を測定する地動センサからの信号に基づく測定情報、及び温度センサにより測定された現在温度を、RTCから出力された測定時の時刻に応じた時系列データとして記憶する記憶部と、現在温度の履歴から推定される、現在時刻と正確な時刻情報とのずれに基づいて、時系列データの時間軸を補正する時刻補正部とを備える。
【0012】
本発明に係る第2の地震波記録方法は、地動の速度及び加速度のうち少なくとも一方を地動センサにより測定し、現在温度を温度センサにより測定し、RTCから現在時刻を取得し、地動センサからの信号に基づく測定情報及び温度センサによる温度測定結果を、RTCから出力された測定時の時刻に応じた時系列データとして記憶部に記憶させる第1ステップと、現在温度の履歴から推定される、現在時刻と正確な時刻情報とのずれに基づいて、時系列データの時間軸を補正する第2ステップとを含む。
【0013】
これらの装置及び方法では、時刻補正部が、温度履歴から推定される、現在時刻と正確な時刻情報とのずれに基づいて、時系列データの時間軸を補正する。前述したシステムクロック生成回路の誤差は、多くの場合、周囲温度に依存する。従って、システムクロック生成回路の誤差と周囲温度との関係が予め判明している場合、現在時刻と正確な時刻情報とのずれを、温度履歴に基づいて精度良く推定することができる。故に、この装置及び方法によれば、正確な時刻情報を取得できない期間においても時系列データの測定時刻を正確な値に近づけることができる。すなわち、地動データに関する測定時刻の正確性を高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一側面に係る地震波記録装置および地震波記録方法によれば、地動データに関する測定時刻の正確性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る地震波記録装置1Aの構成を概略的に示すブロック図である。
【
図3】測定情報時刻補正部10における処理を示すフローチャートである。
【
図4】第1実施形態に係る地震波記録方法を示すフローチャートである。
【
図5】ステップS3の詳細を示すフローチャートである。
【
図6】一変形例に係る地震波記録装置1Bの構成を概略的に示すブロック図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る地震波記録装置1Cの構成を概略的に示すブロック図である。
【
図8】第2実施形態に係る地震波記録方法を示すフローチャートである。
【
図9】ステップS5の詳細を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら本発明による地震波記録装置および地震波記録方法の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る地震波記録装置1Aの構成を概略的に示すブロック図である。地震波記録装置1Aは、可搬型の装置であって、時刻校正部2と、システムクロック生成回路3と、RTC4と、A/D変換器5と、測定部6と、記憶部7A及び7Bと、測定情報時刻補正部10とを備えている。
【0018】
システムクロック生成回路3は、水晶振動子(Xtal)を含む電子回路によって構成され、水晶振動子の振動に基づく周期的なパルス信号であるクロック信号を生成する。システムクロック生成回路3において生成されたクロック信号は、RTC4に提供される。RTC4は、システムクロック生成回路3と電気的に接続されており、クロック信号に基づいて、現在時刻をカウントする。RTC4は、例えばデジタル回路によって構成される。RTC4において生成された現在時刻情報は、配線を介してRTC4と接続された測定部6に提供される。
【0019】
時刻校正部2は、地震波記録装置1Aの外部に接続された外部機器21と電気的に接続されているか、または有線または無線の通信回線を介して外部機器21と接続されている。外部機器21は、例えばGPSと同期した1秒パルス信号や時刻校正情報などの正確な時刻情報を出力する機器である。時刻校正部2は、本実施形態における時刻情報受信部であり、外部機器21から正確な時刻情報を入力する。時刻校正部2は、正確な時刻情報に基づいて、システムクロック生成回路3に含まれる水晶振動子の発振周期を補正し、また、RTC4の時刻を校正する。加えて、時刻校正部2は、正確な時刻情報そのものを測定部6に提供する。時刻校正部2は、例えばCPU及びメモリを含むコンピュータなどの大規模集積回路により構成され得る。
【0020】
A/D変換器5は、地震波記録装置1Aの外部に接続された地動センサ22と電気的に接続されている。地動センサ22は、地動の速度及び加速度のうち少なくとも一方を測定するセンサである。地動センサ22は、観測地点において地動を観測し、地震動を検出する。一例では、地動センサ22は3つの加速度計を有する。3つの加速度計は、例えば東西方向、南北方向、及び上下方向といった3方向における地震動の加速度を検出する。3つの加速度計は、該3方向の地震動の加速度の大きさを示すアナログ信号を、所定のサンプリング周期に同期させてA/D変換器5に出力する。加速度計は、サーボ加速度計であってもよく、或いは、サーボ加速度計に代えてMEMS(Micro Electro Mechanical System)加速度センサであってもよい。なお、加速度計は、上記3方向の加速度の大きさを計測できれば、4つ以上設けられてもよい。A/D変換器5は、地動センサ22から出力されたアナログ信号を、デジタル信号(例えば加速度データなどの地動データ)に変換する。A/D変換器5は、例えば1秒ごとに地動データを生成する。A/D変換器5は、地動データを測定部6に提供する。
【0021】
測定部6は、地動センサ22からの信号に基づく測定情報を生成し、RTC4から出力された測定時の時刻に応じた時系列データとして記憶部7Aに記憶させる。具体的には、測定部6は、A/D変換器5と電気的に接続された信号入力端6aと、RTC4と電気的に接続された信号入力端6bとを有する。測定部6は、A/D変換器5から出力された地動データを、信号入力端6aを介して入力する。また、測定部6は、RTC4から出力された現在時刻情報を、信号入力端6bを介して入力する。測定部6は、地動データ及び現在時刻情報を互いに関連付け、時系列データを生成する。また、測定部6は、地動データから所定の演算により付加的な測定情報を生成し、現在時刻情報と関連付けて時系列データを生成する。測定部6は、地動センサ22からの信号に基づくこれらの時系列データを、測定情報Daとして記憶部7Aに記憶させる。
【0022】
また、測定部6は、信号入力端6cを更に有する。測定部6は、信号入力端6cを介して時刻校正部2から正確な時刻情報を入力する。測定部6は、上記の時系列データに含まれる複数のタイミングにおいて、時刻校正部2から得られた正確な時刻情報を記憶部7Aに記憶させる。この動作は、時刻校正部2が外部機器21から正確な時刻情報を得ることが可能な場合には定期的に行われる。正確な時刻情報は、上記の時系列データと関連付けて(言い換えると、時系列データに含まれる時刻情報と対応付けて)、測定情報Daの一部として記憶される。
【0023】
測定部6は、例えばCPU、揮発性メモリ(RAM)及び不揮発性の記憶手段(ROMまたはハードディスク)を含むコンピュータにより構成され、不揮発性の記憶手段に記憶されたプログラムを読み出すことによって所定の動作を行う。記憶部7A及び7Bは、測定部6と共通または別個に設けられた不揮発性の記憶手段(ROMまたはハードディスク)によって構成され得る。或いは、記憶部7A及び7Bは、例えばCFカードといった記憶媒体であってもよい。測定情報Daは、例えばパソコンを用いて閲覧が可能なフォーマットにて記録される。
【0024】
測定情報時刻補正部10は、本実施形態における時刻補正部である。測定情報時刻補正部10は、記憶部7Aから測定情報Daを読み出し、時系列データに含まれるRTC4による現在時刻と、この現在時刻に対応する正確な時刻情報とのずれに基づいて、時系列データの時間軸を補正する。
図2は、時間軸の補正方法を概念的に示す図である。いま、
図2(a)に示す時系列データDの或る時刻t
1及びt
2のそれぞれにおいて、正確な時刻t
01及びt
02が得られているとする。この場合、時刻t
1と時刻t
2との時間間隔Tと、正確な時刻t
01と時刻t
02との時間間隔Tsとの比(T/Ts)を用いて時系列データDのリサンプリング(再標本化)を行うことにより、
図2(b)に示すように、時系列データの時間軸の伸縮を行うことができる。
【0025】
リサンプリングでは、いわゆるサンプリング定理によるエリアシングの対策として、適切なローパスフィルタを使用する。
図3は、測定情報時刻補正部10における処理を示すフローチャートである。まず、ステップS11として、時系列データに対し、デジタルフィルタのローパスフィルタによる処理を施す。これにより、時系列データに含まれる高周波数成分が除去される。次に、ステップS12として、データの先頭からT/Ts間隔でリサンプリング(再標本化)を行う。具体的には、サンプルのT/Tsおきにサンプルの補間値を求める。補間値の算出には線形補間法を用いる。なお、補間法は線形補間法に限るものではなく、例えば、ローパスフィルタの機能を包含しているものを用いてもよい。補間法がローパスフィルタの機能を包含している場合、ステップS11,S12は、合わせて単一のステップとして表される。
【0026】
測定情報時刻補正部10は、時間軸を補正した時系列データを、補正後測定情報Dbとして記憶部7Bに記憶させる。なお、本実施形態では、測定情報Daを記憶させる記憶部7Aと、補正後測定情報Dbを記憶させる記憶部7Bとを個別に構成しているが、これらを共通に構成してもよい。これらを個別に構成する場合、例えば補正後測定情報Dbを記憶させる記憶部7Bのみを、例えばCFカードといった記憶媒体によって構成してもよい。
【0027】
また、測定情報時刻補正部10は、上記の動作を、何らかの理由により時刻校正部2が外部機器21から正確な時刻情報を取得できない場合にのみ行ってもよい。時刻校正部2が外部機器21から正確な時刻情報を取得できる場合、測定情報Daの時系列データに含まれる現在時刻は時刻校正部2によって継続的に校正されている時刻であり、正確な時刻情報とのずれは殆ど無いと考えられるからである。従って、時刻校正部2は、外部機器21から正確な時刻情報を取得できているか否かを示す信号を測定情報時刻補正部10に提供してもよい。
【0028】
測定情報時刻補正部10は、例えばCPU、揮発性メモリ(RAM)及び不揮発性の記憶手段(ROMまたはハードディスク)を含むコンピュータにより構成され、不揮発性の記憶手段に記憶されたプログラムを読み出すことによって所定の動作を行う。なお、測定情報時刻補正部10は、測定部6と共通のコンピュータにより構成されてもよい。
【0029】
図4は、本実施形態に係る地震波記録方法を示すフローチャートである。まず、第1ステップS1として、地動の速度及び加速度のうち少なくとも一方を地動センサ22により測定するとともに、RTC4から現在時刻を取得する。そして、地動センサ22からの信号に基づく測定情報を、RTC4から出力された測定時の時刻に応じた時系列データとして記憶部7Aに記憶させる。
【0030】
次に、第2ステップS2として、時系列データに含まれるタイミングにおいて正確な時刻情報を外部機器21から入力し、正確な時刻情報を記憶部7Aに記憶させる。なお、上記のステップS1とこのステップS2とは、並行して行われてもよい。
【0031】
続いて、第3ステップS3として、時系列データに含まれる現在時刻と、現在時刻に対応する正確な時刻情報とのずれに基づいて、時系列データの時間軸を補正する。
図5は、このステップS3の詳細を示すフローチャートである。まず、ステップS31として、時系列データ及び正確な時刻情報を含む測定情報Daを記憶部7Aから読み出す。次に、ステップS32として、補正対象区間(例えば二以上の正確な時刻情報が存在する区間。
図2の例では、時刻t
01から時刻t
02まで)の時間間隔Tを計算する。続いて、ステップS33として、補正対象区間の正確な時間間隔Tsを計算する。なお、ステップS32及びS33はどちらを先に行ってもよく、並行して行ってもよい。
【0032】
続いて、ステップS34として、時間軸の伸縮比R(=T/Ts)を計算する。そして、ステップS35として、測定情報Daに含まれる時系列データの時間軸を比率Rで伸縮する。その際の詳細な方法は前述したとおりである。続いて、ステップS36として、時系列データの時刻の振り直しを行い、時系列データを更新する。最後に、ステップS37として、時刻補正後の時系列データを含む補正後測定情報Dbを記憶部7Bに記憶させる。
【0033】
以上に説明した本実施形態による地震波記録装置1A及び地震波測定方法によって得られる効果について述べる。本実施形態では、測定情報時刻補正部10が(またはステップS3において)、時系列データDに含まれる現在時刻と該現在時刻に対応する正確な時刻情報とのずれに基づいて、時系列データDの時間軸を補正する。例えば、地震波記録装置1Aを設置して測定を開始する際に、正確な時刻情報を時刻校正部2が外部機器21から入力できたとする。そして、その後に何らかの理由により正確な時刻情報を外部機器21から入力できなくなり、測定を終了する際に、正確な時刻情報を再び時刻校正部2が外部機器21(または他の外部機器)から入力できたとする。この場合、測定開始時と測定終了時にそれぞれ得られた正確な時刻情報に基づいて、時系列データDの時間軸を補正することができる。このような本実施形態の装置及び方法によれば、正確な時刻情報を取得できない期間においても時系列データDの測定時刻を正確な値に近づけることができる。すなわち、地動データに関する測定時刻の正確性を高めることができる。
【0034】
すなわち、本実施形態の地震波記録装置1Aは、外部機器21から正確な時刻情報を入力できない設置環境下において、長期間にわたり装置を稼働させた場合であっても、従来の装置と比べてより正確な測定時刻が記録された測定情報を提供できるものである。従って、測定情報を基にした様々な解析結果、特に時間的な要素が含まれる解析結果の信憑性が向上する。
【0035】
なお、正確な時刻情報を取得するタイミングは、測定開始時及び測定終了時に限られない。時系列データDに含まれるタイミングであれば、任意の二以上のタイミングにおいて得られた正確な時刻情報に基づいて、時系列データDの時間軸を補正することができる。
【0036】
また、地動データに関する測定時刻の正確性を高めるために、例えば、システムクロック生成回路3として温度補償型の高精度な発振器を用いることも考えられるが、そのような発振器は高額であるため、地震波記録装置1Aの製造コストの抑制を妨げてしまう。また、例えば、システムクロック生成回路3の電気的特性に合わせて、システムクロック生成回路3の一部をソフトウェアによりリアルタイムで制御する等の自己補正手段も考えられるが、専用のシステムが必要になり、地震波記録装置1Aの回路構成が複雑になってしまう。本実施形態の地震波記録装置1Aによれば、高額な高精度発振器や複雑な自己補正手段を用いることなく、地動データに関する測定時刻の正確性を高めることができる。
【0037】
また、本実施形態のように、測定情報時刻補正部10は(ステップS3では)、現在時刻に基づく時間間隔Tと、正確な時刻情報に基づく時間間隔Tsとの比(T/Ts)に基づいて、時系列データの時間軸の伸縮を行ってもよい。例えばこのような構成及び方法により、時系列データDの時間軸を好適に補正することができる。
【0038】
(変形例)
図6は、上記実施形態の一変形例に係る地震波記録装置1Bの構成を概略的に示すブロック図である。本変形例の地震波記録装置1Bにおいて上記実施形態の地震波記録装置1Aと相違する点は、地震波記録装置1Bが2つの部分12a,12bに分割されている点である。部分12aは、時刻校正部2と、システムクロック生成回路3と、RTC4と、A/D変換器5と、測定部6と、記憶部7Aとを含む。記憶部7Aは、測定部6が生成した測定情報Daを記憶する。部分12bは、測定情報時刻補正部10と、記憶部7Bとを含む。記憶部7Bは、測定情報時刻補正部10が生成した補正後測定情報Dbを記憶する。記憶部7A,7Bの具体的構成は、上記実施形態の記憶部7と同様である。
【0039】
本変形例のように、地震波記録装置1Bは、測定部6及び記憶部7A等を含む部分12aと、測定情報時刻補正部10及び記憶部7Bを含む部分12bとに分離していてもよい。そして、部分12aと部分12bとは、互いに離れた別の場所に設置されてもよい。部分12bは、例えばパソコンといった汎用のコンピュータによって構成されてもよい。このような場合であっても、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。なお、記憶部7Aから測定情報時刻補正部10への測定情報Daの移動は、CFカードといった記憶媒体の持ち運びのほか、通信網を介したデータ通信等によっても実現可能である。
【0040】
(第2実施形態)
図7は、本発明の第2実施形態に係る地震波記録装置1Cの構成を概略的に示すブロック図である。本実施形態の地震波記録装置1Cは、可搬型の装置であって、時刻校正部2と、システムクロック生成回路3と、RTC4と、A/D変換器5と、記憶部7A及び7Bと、温度センサ8と、測定部9と、測定情報時刻補正部11とを備えている。このうち、システムクロック生成回路3、RTC4、及びA/D変換器5の詳細については第1実施形態と同様である。また、時刻校正部2は、正確な時刻情報を測定部9に提供しない点を除いて、第1実施形態と同様である。
【0041】
温度センサ8は、現在温度を周期的に測定する。現在温度の測定周期は、例えば60分である。具体的には、温度センサ8は、地震波記録装置1Cの筐体内部に配置され、より好ましくはシステムクロック生成回路3の近傍に配置される。温度センサ8は、地震波記録装置1Cの筐体内部の温度、より好ましくはシステムクロック生成回路3の周囲温度を測定する。温度センサ8は、例えばサーミスタであり、温度に応じた電気信号を出力することができる。温度センサ8は、温度を示す電気信号(温度信号)を、測定部9に提供する。
【0042】
測定部9は、第1実施形態の測定部6と同様に、地動センサ22からの信号に基づく測定情報を生成し、RTC4から出力された測定時の時刻に応じた時系列データとして記憶部7Aに記憶させる。具体的には、測定部9は、A/D変換器5と電気的に接続された信号入力端9aと、RTC4と電気的に接続された信号入力端9bとを有する。測定部9は、A/D変換器5から出力された地動データを、信号入力端9aを介して入力する。また、測定部9は、RTC4から出力された現在時刻情報を、信号入力端9bを介して入力する。測定部9は、地動データ及び現在時刻情報を互いに関連付け、時系列データを生成する。また、測定部9は、地動データから所定の演算により付加的な測定情報を生成し、現在時刻情報と関連付けて時系列データを生成する。測定部9は、これらの時系列データを測定情報Dcとして記憶部7Aに記憶させる。
【0043】
また、測定部9は、信号入力端9cを更に有する。測定部9は、温度センサ8により測定される現在温度を信号入力端9cを介して周期的に読み込み、RTC4から出力された測定時の時刻に応じた時系列データとして記憶部7Aに記憶させる。この動作は、地動センサ22から測定情報を取得する間、継続して行われる。現在温度に関する時系列データは、地動データに関する時系列データと関連付けて、測定情報Dcの一部として記憶される。
【0044】
測定部9は、第1実施形態の測定部6と同様に、例えばCPU、揮発性メモリ(RAM)及び不揮発性の記憶手段(ROMまたはハードディスク)を含むコンピュータにより構成され、不揮発性の記憶手段に記憶されたプログラムを読み出すことによって所定の動作を行う。測定情報Dcは、例えばパソコンを用いて閲覧が可能なフォーマットにて記録される。
【0045】
測定情報時刻補正部11は、本実施形態における時刻補正部である。測定情報時刻補正部11は、記憶部7Aから測定情報Dcを読み出し、現在温度の履歴から推定される、現在時刻と正確な時刻情報とのずれに基づいて、地動データに関する時系列データの時間軸を補正する。すなわち、システムクロック生成回路3の温度特性が既知である場合に、システムクロック生成回路3の温度特性と温度変化の履歴(温度差を含む)とに基づいて、時系列データの現在時刻と正確な時刻情報とのずれを推定する。言い換えると、例えば
図2に示された時刻t
1及びt
2とその間の温度変化とに基づいて、正確な時刻t
01及びt
02を推定する。なお、システムクロック生成回路3の温度特性とは、システムクロック生成回路3のクロックの誤差と周囲温度との相関をいう。システムクロック生成回路3の温度特性は、予め測定情報時刻補正部11が有する不揮発性の記憶手段または記憶部7Aに記憶されている。
【0046】
そして、測定情報時刻補正部11は、第1実施形態の測定情報時刻補正部10と同様に、時刻t
1と時刻t
2との時間間隔Tと、正確な時刻t
01と時刻t
02との時間間隔Tsとの比(T/Ts)を用いて時系列データDのリサンプリング(再標本化)を行うことにより、
図2(b)に示すような、時系列データの時間軸の伸縮を行う。なお、時間軸の伸縮の詳細は、第1実施形態と同様である。
【0047】
測定情報時刻補正部11は、時間軸を補正した時系列データを、補正後測定情報Ddとして記憶部7Bに記憶させる。なお、本実施形態においても、測定情報Dcを記憶させる記憶部と、補正後測定情報Ddを記憶させる記憶部とを個別に構成してもよい。また、測定情報時刻補正部11は、上記の動作を、何らかの理由により時刻校正部2が外部機器21から正確な時刻情報を取得できない場合にのみ行ってもよい。従って、時刻校正部2は、外部機器21から正確な時刻情報を取得できているか否かを示す信号を測定情報時刻補正部11に提供してもよい。
【0048】
測定情報時刻補正部11は、第1実施形態の測定情報時刻補正部10と同様に、例えばCPU、揮発性メモリ(RAM)及び不揮発性の記憶手段(ROMまたはハードディスク)を含むコンピュータにより構成され、不揮発性の記憶手段に記憶されたプログラムを読み出すことによって所定の動作を行う。なお、測定情報時刻補正部11は、測定部9と共通のコンピュータにより構成されてもよい。
【0049】
図8は、本実施形態に係る地震波記録方法を示すフローチャートである。まず、第1ステップS4として、地動の速度及び加速度のうち少なくとも一方を地動センサ22により測定し、現在温度を温度センサ8により測定するとともに、RTC4から現在時刻を取得する。そして、地動センサ22からの信号に基づく測定情報と、温度センサ8による温度測定結果とを、RTC4から出力された測定時の時刻に応じた時系列データとして記憶部7Aに記憶させる。
【0050】
次に、第2ステップS5として、現在温度の履歴から推定される、現在時刻と正確な時刻情報とのずれに基づいて、時系列データの時間軸を補正する。
図9は、このステップS5の詳細を示すフローチャートである。まず、ステップS51として、地動データ及び現在温度に関する時系列データを含む測定情報Dcを記憶部7Aから読み出す。次に、ステップS52として、補正対象区間の時間間隔Tを計算する。続いて、ステップS53として、補正対象区間における温度変化(温度差等)と、システムクロック生成回路3の温度特性とに基づいて、補正対象区間の正確な時間間隔Tsを推定する。
【0051】
続いて、ステップS54として、時間軸の伸縮比R(=T/Ts)を計算する。そして、ステップS55として、測定情報Dcに含まれる時系列データの時間軸を比率Rで伸縮する。その際の詳細な方法は第1実施形態と同様である。続いて、ステップS56として、時系列データの時刻の振り直しを行い、時系列データを更新する。最後に、ステップS57として、時刻補正後の時系列データを含む補正後測定情報Ddを記憶部7Bに記憶させる。
【0052】
本実施形態においては、測定情報時刻補正部11が(またはステップS5において)、温度履歴から推定される正確な時刻情報と現在時刻とのずれに基づいて、時系列データDの時間軸を補正する。システムクロック生成回路3の誤差は、多くの場合、周囲温度に依存する。従って、システムクロック生成回路3の誤差と周囲温度との関係が予め判明している場合、現在時刻と正確な時刻情報とのずれを、温度履歴に基づいて精度良く推定することができる。故に、本実施形態の装置及び方法によれば、正確な時刻情報を取得できない期間においても時系列データの測定時刻を正確な値に近づけることができる。すなわち、地動データに関する測定時刻の正確性を高めることができる。
【0053】
本発明による地震波記録装置および地震波記録方法は、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態では、地動センサ22が地震波記録装置1Aの外部に設けられているが、地震波記録装置1Aが地動センサ22を備えてもよい。また、上記実施形態では、地震波記録装置1AがA/D変換器5を備えているが、A/D変換器5は地震波記録装置1Aの外部に設けられてもよい。
【0054】
また、上記各実施形態を互いに組み合わせてもよい。すなわち、地震波記録装置の測定部は、外部から入力された正確な時刻情報とRTCによる現在時刻とのずれに基づいて時系列データの時間軸を伸縮する機能と、システムクロック生成回路の温度特性及び温度履歴に基づいて推定される、正確な時刻情報と現在時刻とのずれに基づいて時系列データの時間軸を伸縮する機能との双方を有してもよい。そして、外部から正確な時刻情報が全く入力できない場合には、温度履歴に基づいて時系列データの時間軸を伸縮するなど、状況に応じて2つの機能を使い分けてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1A,1B,1C…地震波記録装置、2…時刻校正部、3…システムクロック生成回路、4…リアルタイムクロック(RTC)、5…A/D変換器、6…測定部、6a,6b,6c…信号入力端、7A,7B…記憶部、8…温度センサ、12a,12b…部分、9…測定部、9a,9b,9c…信号入力端、10,11…測定情報時刻補正部、21…外部機器、22…地動センサ、D…時系列データ、Da,Dc…測定情報、Db,Dd…補正後測定情報、T,Ts…時間間隔。